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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】ワーク分割装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
H01L21/78 X
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020117763
(22)【出願日】2020-07-08
(65)【公開番号】P2022015117
(43)【公開日】2022-01-21
【審査請求日】2023-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】新井 裕介
(72)【発明者】
【氏名】清水 翼
(72)【発明者】
【氏名】田母神 崇
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-186445(JP,A)
【文献】特開平06-344435(JP,A)
【文献】特開2010-177322(JP,A)
【文献】特開2019-121760(JP,A)
【文献】特開2019-016634(JP,A)
【文献】特開2018-067668(JP,A)
【文献】ハロゲンスポットヒーター LCB-50 仕様,製品案内,日本,インフリッヂ工業株式会社,2016年09月15日,https://web.archive.org/web/20160915020100/http://inflidge.co.jp/products/lcb-50/specification.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイシングテープをエキスパンドし、前記ダイシングテープに貼付されたワークを個々のチップに分割するワーク分割装置において、
前記ダイシングテープをエキスパンドするエキスパンド手段と、
前記エキスパンドにより前記ダイシングテープの弛んだ部分を加熱する加熱手段と、を備え、
前記加熱手段は、
前記弛んだ部分のみに赤外光を照射する光照射手段と、
前記ダイシングテープを挟んで前記光照射手段と対向配置され、前記弛んだ部分を透過した前記赤外光の少なくとも一部を前記弛んだ部分のみに反射する光反射手段と、
を有する、ワーク分割装置。
【請求項2】
前記光照射手段は、
前記赤外光を出射する光源と、
前記光源から出射された前記赤外光を前記弛んだ部分のみ選択的に照射させる光学部材と、を有し、
前記光反射手段は、凹面鏡を含む、
請求項1に記載のワーク分割装置。
【請求項3】
前記光照射手段は、前記赤外光を前記ダイシングテープから離間した集光点に集光し、
前記光反射手段は、前記赤外光が前記集光点に集光するように前記弛んだ部分を透過した前記赤外光の少なくとも一部を反射する、
請求項1又は2に記載のワーク分割装置。
【請求項4】
前記光照射手段は、
前記赤外光を出射する光源と、
前記光源から出射された前記赤外光を前記弛んだ部分のみ選択的に照射させる光学部材と、を有し、
前記光反射手段は、前記ワークの外周部に沿う円環状に対応して形成された半円管形状に構成され、
前記光照射手段は、リフレクタ部材を有し、
前記リフレクタ部材は、前記光反射手段で反射した前記弛んだ部分を透過した前記赤外光の一部を前記光源に向けて反射する反射面を含む、
請求項1に記載のワーク分割装置。
【請求項5】
前記リフレクタ部材は、前記光反射手段で反射した前記赤外光の一部を内部に取り込む開口部と、前記開口部から取り込んだ前記赤外光の一部を前記光源に向けて反射する前記反射面としての内周鏡面と、を有する中空の円錐台形状に構成され、
前記開口部は、前記円環状に対応した方向の開口幅が他の方向に沿った開口幅よりも長い、
請求項に記載のワーク分割装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はワーク分割装置に係り、特にワークのダイシング加工後にダイシングテープを拡張してワークを個々のチップに分割するワーク分割装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体チップの製造にあたり、例えば、予めレーザ照射等によりその内部に分断予定ラインが形成された半導体ウェーハをダイシングテープに貼付して、このダイシングテープを拡張(エキスパンド)することにより、半導体ウェーハを個々のチップに分割するワーク分割装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ダイシングテープのうちワーク分割装置によって拡張された部分は、ワーク分割後においても拡張して弛んだ状態のままである。このような状態でワークを搬送した場合、ダイシングテープ上で個片化されたチップ同士が互いに接触したり、過度の曲げ応力を受けたりすることがある。
【0004】
そこで、特許文献1のワーク分割装置は、上記の問題を解消するために、拡張によって弛んだダイシングテープを選択的に加熱して再度緊張させる選択的加熱手段を備えている。また、上記のワーク分割装置では、選択的加熱手段の一例として、ハロゲンランプヒータが採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-123476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のワーク分割装置では、以下の問題が発生する。
【0007】
すなわち、上記の選択的加熱手段として、ハロゲンランプヒータを採用した場合であって、ダイシングテープとして赤外光の透過率が高いものが採用された場合、ハロゲンランプヒータからの熱を弛んだ部分に十分に伝えることができず、弛んだ部分を効率よく加熱することができない場合がある。このように、特許文献1のワーク分割装置では、弛んだ部分を効率よく加熱することができない場合があるので、弛んだ部分を確実に緊張させることができない場合がある。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、ダイシングテープの弛んだ部分を効率よく加熱して確実に緊張させることができるワーク分割装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のワーク分割装置は、本発明の目的を達成するために、ダイシングテープをエキスパンドし、ダイシングテープに貼付されたワークを個々のチップに分割するワーク分割装置において、ダイシングテープをエキスパンドするエキスパンド手段と、エキスパンドによりダイシングテープの弛んだ部分を加熱する加熱手段と、を備え、加熱手段は、弛んだ部分に向けて赤外光を照射する光照射手段と、弛んだ部分を挟んで光照射手段と対向配置され、弛んだ部分を透過した赤外光を弛んだ部分に向けて反射する光反射手段と、を有する。
【0010】
本発明の一形態によれば、光照射手段は、赤外光を出射する光源と、光源から出射された赤外光を弛んだ部分に照射させる光学部材と、を有し、光反射手段は、凹面鏡を含むことが好ましい。
【0011】
本発明の一形態によれば、光照射手段は、赤外光を出射する光源と、光源から出射された赤外光を弛んだ部分に照射させる光学部材と、を有し、光反射手段は、ワークの外周部に沿う円環状に対応して形成された半円管形状に構成され、光照射手段は、リフレクタ部材を有し、リフレクタ部材は、光反射手段で反射した赤外光を光源に向けて反射する反射面を含むことが好ましい。
【0012】
本発明の一形態によれば、リフレクタ部材は、光反射手段で反射した赤外光を内部に取り込む開口部と、開口部から取り込んだ赤外光を光源に向けて反射する反射面としての内周鏡面と、を有する中空の円錐台形状に構成され、開口部は、円環状に対応した方向の開口幅が他の方向に沿った開口幅よりも長い、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ダイシングテープの弛んだ部分を効率よく加熱して確実に緊張させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係るワーク分割装置の第1実施形態を示す要部断面図
図2図1に示した光照射部材を含むその近傍の要部拡大図
図3図1に示した光照射部材の構成を模式的に示した説明図
図4図1に示したワーク分割装置の動作を示すフローチャート
図5図1に示したワーク分割装置が拡張動作実行している状態を示す断面図
図6】ウェーハカバーを下降させた状態を示す断面図
図7】ダイシングテープを降下した状態を示す断面図
図8】弛んだ部分を加熱装置で加熱している状態を示す断面図
図9】第2実施形態のワーク分割装置の要部斜視図
図10図9に示した光反射部材の長手軸に沿った断面図
図11図9に示した光反射部材の短手軸に沿った断面図
図12図9に示したリフレクタ部材の構成を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面に従って本発明に係るワーク分割装置の実施形態を説明する。なお、本明細書では、同一の構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明は適宜省略する。
【0016】
〈第1実施形態のワーク分割装置〉
図1は、第1実施形態のワーク分割装置1の要部断面図である。
【0017】
図1に示すように、第1実施形態のワーク分割装置1は、冷凍チャックテーブル10、突上げ用リング12、リング昇降機構14、フレーム固定機構16、ウェーハカバー18、カバー昇降機構20、光照射部材22、ヒータ昇降機構24及び光反射部材26等を備えている。
【0018】
図1に示すように、冷凍チャックテーブル10の上面には、分割対象の半導体ウェーハWがマウントされたワーク2が載置される。
【0019】
ワーク2は、上記の半導体ウェーハWがダイシングテープSを介してフレームFにマウントされることにより構成される。半導体ウェーハWは、予めレーザ照射等によりその内部に分断予定ラインが格子状に形成されたものであり、半導体ウェーハWの下面が、DAF(Die Attach Film)D(以下、DAF(D)と表示する。)を介してダイシングテープSに貼付されている。ここで、半導体ウェーハWの厚さは、例えば50μm程度であり、DAF(D)及びダイシングテープSの厚さは、それぞれ数μmから100μm程度である。また、半導体ウェーハWの基材としては、シリコーン製のものを例示することができ、ダイシングテープS及びDAF(D)としては、PO(Poly Olefine)製又はPVC(polyvinyl chloride)製のものを例示することができる。また、本例のダイシングテープSは、赤外光の透過率が高いものが採用されている。
【0020】
冷凍チャックテーブル10は、ダイシングテープSとDAF(D)とを介してウェーハWの下面を真空吸着する。また、冷凍チャックテーブル10は、ダイシングテープSを介して熱伝達によりDAF(D)を冷却する。その冷却温度は、0℃以下、例えば-5℃から-10℃程度であることが好ましい。これにより、常温で粘性の高いDAF(D)は、低温になることで脆性化する。このようにDAF(D)を脆性化することにより、DAF(D)の分断性が向上するので、ダイシングテープSを拡張(エキスパンド)したときに、半導体ウェーハWが分割されると同時にDAF(D)が分断される(図5参照)。なお、冷凍チャックテーブル10を冷凍にする方式としては、冷凍チャックテーブル10の内部に冷媒を供給して冷凍チャックテーブル10の全体を冷却する方式であってもよく、ペルチェ効果を利用して冷凍チャックテーブル10の上面のみを冷却する方式であってもよい。
【0021】
突上げ用リング12は、冷凍チャックテーブル10の周りを囲むように配置され、リング昇降機構14によって昇降動作される。突上げリング12の上部には、ダイシングテープSとの間の摩擦力を低減するための複数のローラ28が所定の間隔をもって設けられている。この突上げ用リング12は、エキスパンド手段として機能する。なお、図1では、突上げ用リング12は、下降位置(待機位置)に位置されており、ダイシングテープSを拡張する際にはリング昇降機構14によって上昇される(図5参照)。
【0022】
フレーム固定機構16は、ワーク2のフレームFの外周部を固定する機能を備えている。ワークWは、フレーム固定機構16にフレームFが固定された場合に、ダイシングテープSの下面が冷凍チャックテーブル10の上面に接触するように配置される。
【0023】
ウェーハカバー18は、有底の高さの低い円筒形状をしており、底板18aと側板18bとからなり、底板18aは半導体ウェーハWの直径よりもその直径が大きく形成されている。また、ウェーハカバー18は、カバー昇降機構20によって昇降動作され、下降した位置において、半導体ウェーハWを覆うように構成される(図6参照)。また、側板18bの下端面18cは、上昇した突上げ用リング12の上端面12aにDAF(D)とダイシングテープSとローラ28とを介して突き合わされる(図6参照)。
【0024】
次に、光照射部材22について説明する。
【0025】
図1に示すように、光照射部材22は、ウェーハカバー18の外側でワーク2の直径方向の対称的な位置に配置され、ヒータ昇降機構24によって昇降動作される。詳しくは後述するように、光照射部材22は、下降した位置においてダイシングテープSの周辺部、すなわち、拡張によって弛んだ部分Eを選択的に加熱するように構成されている(図7参照)。この光照射部材22は、加熱手段を構成する光照射手段として機能する。なお、図1では、光照射部材22は、ワーク2の直径方向の対称的な位置に2台配置されているが、光照射部材22の台数は2台に限定されるものではない。例えば、ワーク2の周囲に90度の間隔で4台、又は45度の間隔で8台配置するようにしてもよく、それ以上であってもよい、また、光照射部材22は、ダイシングテープSの周辺部に沿ったリング状の形状を有していてもよい。
【0026】
図2は、光照射部材22を含むその近傍の要部拡大図であり、図3は、光照射部材22と後述する光反射部材26の構成を模式的に示した説明図である。
【0027】
図2では、拡張後の弛んだ部分Eを含むダイシングテープSが示されており、その弛んだ部分Eの上方位置に光照射部材22が配置されている。また、弛んだ部分Eの下方位置には、光反射部材26が配置されており、光照射部材22と光反射部材26とは、弛んだ部分Eを挟んで対向配置されている。なお、上記の弛んだ部分Eとは、ダイシングテープSのうち、半導体ウェーハWの外周部とフレームFの内周部との間に位置するリング状の周辺部を指す。
【0028】
図3に示すように、光照射部材22は、赤外光を出射する光源30と、光源30から出射された赤外光を集光点Pに集光させる光学部材32と、を有している。この光学部材32は、光源30がその焦点位置f1に装着され、かつ、光源30からの赤外光を集光点Pに集光させる楕円面鏡34を有している。なお、本例の集光点Pの位置は、図2の二点鎖線に示すように、弛んだ部分Eが生じていない拡張前のダイシングテープSの上面(半導体ウェーハW側の面)から上方に2~3mm程度の位置に設定されている。また、光学部材32としては、光源30がその焦点位置f1に装着された放物面鏡と、この放物面鏡によって平行光とされた赤外光を集光点Pに集光させる集光レンズと、を有するものを適用してもよい。
【0029】
上記のように、第1実施形態のワーク分割装置1では、弛んだ部分Eを加熱する加熱手段として、赤外光を集光点Pに集光させるスポットタイプの光照射部材22が採用されている。このようなスポットタイプの光照射部材22を採用することにより、弛んだ部分Eのうち加熱したい部分のみを選択的(局所的)に加熱することができ、それ以外の部分への熱ストレスを最小限に抑制することができる。
【0030】
ここで、光照射部材22のみを使用して弛んだ部分Eを加熱する場合、以下の問題がある。
【0031】
すなわち、本例のように、ダイシングテープSとして赤外光の透過率が高いものが採用された場合、光照射部材22からの赤外光による熱を弛んだ部分Eに十分に伝えることができなくなるので、弛んだ部分Eを効率よく加熱することができない場合がある。また、上記の場合において、弛んだ部分Eが光照射部材22の集光点Pから離れるに従って、弛んだ部分Eに光照射部材22からの熱が伝わり難くなるので、弛んだ部分Eを加熱することが難しくなる場合がある。このように、光照射部材22のみを使用した場合、弛んだ部分Eを効率よく加熱することができない場合があるので、弛んだ部分を確実に緊張させることができない場合がある。
【0032】
そこで、図1に示す第1実施形態のワーク分割装置1では、上記の問題を解決するために、加熱手段として、上記の光照射部材22に加え、光反射部材26を備えている。この光反射部材26は、加熱手段を構成する光反射手段として機能する。
【0033】
図2に示すように、光照射部材22と光反射部材26とは、弛んだ部分Eを挟んで互いに上下に対向配置されており、光照射部材22は、前述したように弛んだ部分Eに向けて赤外光を出射する。そして、光反射部材26は、弛んだ部分Eを透過した上記の赤外光を弛んだ部分Eに向けて反射するために以下の機能を備えている。
【0034】
すなわち、光反射部材26は、図3に示すように、上記の機能を有する凹面鏡38を含んでおり、この凹面鏡38によって上記の赤外光を弛んだ部分Eに向けて反射する。また、凹面鏡38は、好ましい態様として、図2及び図3に示すように、凹面鏡38の焦点位置f2が集光点Pに設定されている。なお、第1実施形態で採用される光反射部材26については、光反射部材26の全体が凹面鏡38で構成されているものとして説明する。
【0035】
上記のように構成されたワーク分割装置1では、光照射部材22からの赤外光によって弛んだ部分Eを上方側から加熱することができる。そして、弛んだ部分Eを透過した赤外光は、光反射部材26によって弛んだ部分Eに向けて反射されるので、その反射した赤外光(以下、「戻り赤外光」と言う。)によって弛んだ部分Eを下方側から再加熱することが可能となる。
【0036】
特に上記のワーク分割装置1では、光反射部材26が、光照射部材22の集光点Pに焦点位置f2をもつ凹面鏡38によって構成されるので、凹面鏡38で反射された戻り赤外光は、図3に示した楕円面鏡34を介して光源30に戻され、その後、光源30から照射される赤外光と共に楕円面鏡34を介して弛んだ部分Eに向けて再度出射される。これにより、光源30から出射された赤外光を、弛んだ部分Eを挟んで凹面鏡38と光源30との間で往復させることが可能となる。したがって、戻り赤外光を拡散させることなく弛んだ部分Eを効率的に加熱することが可能となる。
【0037】
以下、図5から図8に示すワーク分割装置1の動作説明図を参照しながら図4に示すフローチャートを説明する。
【0038】
まず、図4のステップS100において、ワーク2のフレームFをフレーム固定機構16に固定する(図1参照)。そして、半導体ウェーハWが存在する領域が冷凍チャックテーブル10の上面に位置するようにワーク2を配置する。なお、半導体ウェーハWには、予めレーザ照射等によりその内部に分断予定ラインが格子状に形成されている。
【0039】
次に、図4のステップS110において、冷凍チャックテーブル10によってダイシングテープSを真空吸着により吸着して冷凍チャックテーブル10の上面に確実に接触させる。このとき、冷凍チャックテーブル10は低温状態にあるので、この接触により熱伝達でワーク2は冷却される。例えば、DAF(D)は、-5℃から-10℃程度に冷却され、これによりDAF(D)は脆性化し、外力を加えることにより容易に割れるようになる。冷凍チャックテーブル10は、所定時間真空吸着を行い、DAF(D)が上記の所定温度になるまでワーク2の冷却を行う。その後、冷凍チャックテーブル10は、真空吸着を解除する。
【0040】
次に、図4のステップS120において、図5に示すように、リング昇降機構14によって突上げ用リング12を上昇させて、ダイシングテープSを拡張(エキスパンド)する。
【0041】
これにより、ダイシングテープSがワーク2の中心から放射状に拡張されて半導体ウェーハWが分断予定ラインに沿ってDAF(D)と共に、各チップTに分割される。
【0042】
次に、図4のステップS130において、図6に示すように、ウェーハカバー18及び光照射部材22を、それぞれカバー昇降機構20及びヒータ昇降機構24によって下降させ、ウェーハカバー18でワーク2の半導体ウェーハWを被覆する。このとき、図6に示すように、ウェーハカバー18の側板18bの下端面18cと、突上げ用リング12の上端面12aとが、ダイシングテープSを介して突き合わされるので、ウェーハカバー18と突上げ用リング12との間でダイシングテープSが把持される。
【0043】
次に、図4のステップS140において、図7に示すように、ウェーハカバー18と突上げ用リング12との間でダイシングテープSを把持した状態で、ウェーハカバー18と突上げ用リング12を、ダイシングテープSの下面が冷凍チャックテーブル10の上面に接触する位置まで下降させる。これにより、ダイシングテープSのうち、半導体ウェーハWの外周部とフレームFの内周部との間に位置するリング状の周辺部が弛緩し、その周辺部に弛んだ部分Eが発生する。
【0044】
上記の弛んだ部分Eを弛んだままの状態でワーク2を搬送した場合、ダイシングテープS上で個片化されたチップT同士が互いに接触したり、過度の曲げ応力を受けたりすることがある。このため、後述するように、弛んだ部分Eを加熱して緊張させる工程が必要となる。
【0045】
ここで、上記の弛んだ部分Eは、図7に示すように、下方に向けて凸状に弛んでおり、つまり、光照射部材22の集光点Pから下方に遠ざかる方向に弛んでいる。また、ダイシングテープSは、前述したように赤外光の透過率が高いものが採用されている。すなわち、図7に示す弛んだ部分Eの態様は、光照射部材22のみでは効率よく加熱することが困難な態様の一つとなっている。
【0046】
そこで、第1実施形態のワーク分割装置1では、図4のステップS150において、図8に示すように、光照射部材22から弛んだ部分Eに赤外光を出射する。
【0047】
そうすると、弛んだ部分Eは、まず、光照射部材22からの赤外光によって上方側から加熱される。そして、弛んだ部分Eは、弛んだ部分Eを透過して光反射部材26によって反射された戻り赤外光によって下方側から再度加熱される(図3参照)。つまり、弛んだ部分Eは、光照射部材22からの赤外光だけではなく、光反射部材26からの戻り赤外光によっても加熱される。これにより、加熱することが困難な上記の態様の弛んだ部分Eであっても、弛んだ部分Eは効率よく加熱されていく。そして、弛んだ部分Eは、上記の加熱によって弛みが次第に解消して緊張する。以上で弛んだ部分Eを緊張させる工程が終了する。
【0048】
次に、図4のステップS160において、ウェーハカバー18及び光照射部材22を、それぞれカバー昇降機構20及びヒータ昇降機構24によって上昇させると共に、突上げ用リング12をリング昇降機構14によって下降させて、ダイシングテープSの把持を解除する。以上が、第1実施形態のワーク分割装置1の動作である。
【0049】
第1実施形態のワーク分割装置1によれば、弛んだ部分Eに向けて赤外光を照射する光照射部材22と、弛んだ部分Eを透過した赤外光を弛んだ部分Eに向けて反射する光反射部材26とを、弛んだ部分Eを挟んで互いに対向配置したので、ダイシングテープSの弛んだ部分Eを効率よく加熱して確実に緊張させることができる。
【0050】
特に、第1実施形態のワーク分割装置1では、光反射部材26が凹面鏡38によって構成されているので、戻り赤外光を拡散させることなく弛んだ部分Eに反射することができる。これにより、弛んだ部分Eを短時間で効率よく加熱することができる。
【0051】
更に、上記の凹面鏡38は、光照射部材22の集光点Pに焦点位置f2が設定されているので、凹面鏡38で反射された戻り赤外光は、図3に示した楕円面鏡34を介して光源30に戻され、その後、光源30から照射される赤外光と共に楕円面鏡34を介して弛んだ部分Eに向けて再度出射される。これにより、光源30から出射された赤外光を、弛んだ部分Eを挟んで凹面鏡38と光源30との間で往復させることが可能となるので、戻り赤外光を拡散させることなく弛んだ部分Eを更に効率的に加熱することが可能となる。このような構成を採用することにより、低出力の光源30であっても採用可能となる。
【0052】
更にまた、光照射部材22と光反射部材26とによって弛んだ部分Eを加熱する場合、光照射部材22を起動させてからその加熱状態が安定した後、光照射部材22と光反射部材26とをウェーハカバー18の周囲に沿って一定の速度で回転させることが好ましい。これにより、弛んだ部分Eの全域を均等に緊張させることが可能となる。この場合、ワーク分割装置1に、光照射部材22をウェーハカバー18の周囲に沿って回転させる照射用駆動機構と、光反射部材26をウェーハカバー18の周囲に沿って回転させる反射用駆動機構とをそれぞれ設け、照射用駆動機構及び反射用駆動機構による光照射部材22と光反射部材26の移動速度を制御する速度制御部を備えることが好ましい。
【0053】
なお、第1実施形態のワーク分割装置1では、光反射手段として、凹面鏡38によって構成された光反射部材26を例示したが、これに限定されるものではなく、例えば、平面鏡によって構成された光反射部材を採用してもよい。つまり、弛んだ部分Eを透過した赤外光を弛んだ部分Eに向けて反射可能な光反射部材であれば、光反射手段として適用できる。但し、戻り赤外光の拡散を防止でき、また、戻り赤外光を再利用可能な観点から、凹面鏡38によって構成された光反射部材26を光反射手段として採用することが好ましい。
【0054】
また、第1実施形態のワーク分割装置1では、図2に示すように、拡張前のダイシングテープSの上面から上方に2~3mm程度の位置に集光点Pを設定したが、集光点Pの位置は、上記の位置に限定されず、弛んだ部分Eの付近であればよい。集光点Pに関しては、例えば、拡張によりダイシングテープSの弛みがどの程度生じるかを実験的に求めて、ダイシングテープSの弛んだ部分Eの解消度合い(緊張度合い)と集光点Pの位置との関係から、効率的に加熱が可能と判断される集光点Pの範囲を特定しておき、この範囲に集光点Pが設定されることが好ましい。
【0055】
〈第2実施形態のワーク分割装置〉
図9は、第2実施形態のワーク分割装置50の要部斜視図である。ここで、ワーク分割装置50を説明するに際し、図1から図8に示した第1実施形態のワーク分割装置1と同一若しくは類似する部材については同一の符号を付して説明する。
【0056】
第2実施形態のワーク分割装置50と、第1実施形態のワーク分割装置1との構成の相違点は、ワーク分割装置50の光反射部材52が半円管形状に構成されている点と、ワーク分割装置50の光照射部材22にリフレクタ部材54が備えられている点とにある。それ以外の構成は同一であるので、ここでは説明を適宜省略する。
【0057】
まず、上記の光反射部材52について説明すると、この光反射部材52は、半導体ウェーハWの外周部に沿う円環状に対応して形成された半円管形状に構成される。すなわち、光反射部材52は、図中一点鎖線で示す円環状の軸(以下、「円環軸」とも言う。)Jに沿って形成されている。ここで、図9において、円環軸Jの中心Qと、円環軸Jと光照射部材22の光軸Lとの交点Rとを結ぶ方向を光反射部材52の幅方向Kという。この場合、幅方向Kに沿った光反射部材52の断面形状は、光照射部材22の集光点Pに曲率中心C(図12参照)をもつ円弧状に形成されている。なお、図9では、複数の光反射部材52が、円環軸Jに沿って間隔をもって配置された配置例が示されている。また、図9では、1個の光照射部材22のみが図示されているが、光照射部材22は、各々の光反射部材52に対応して複数配置されている。
【0058】
ここで、図10は、図9の円環軸Jに沿った光反射部材52の断面図であって、図9の一点鎖線で示す仮想平面Aに沿った断面図である。また、図11は、幅方向Kに沿った光反射部材52の断面図であって、図9の一点鎖線で示す仮想平面Bに沿った断面図である。なお、仮想平面A、Bは、それぞれ光照射部材22の光軸Lを含む平面である。また、図10及び図11においても、光照射部材22の構成が模式的に示されている。
【0059】
図10に示すように、光照射部材22から照射された赤外光のうち、円環軸Jに沿った方向の成分の赤外光成分(以下、「第1赤外光」と言う。)は、光照射部材22から集光点Pに集光される。そして、光反射部材52に入射した第1赤外光は、光反射部材52で反射される。その際、光反射部材52に入射する入射角度に応じて、第1赤外光は戻り赤外光として各種方向に拡散される。一方、図11に示すように、光照射部材22から照射された赤外光のうち、幅方向Kに沿った方向の成分の赤外光成分(以下、「第2赤外光」と言う。)は、光照射部材22から集光点Pに集光される。そして、光反射部材52に入射した第2赤外光は、光反射部材52で反射される。その際、光反射部材52に入射する入射角度に応じて、第2赤外光は戻り赤外光として集光点Pに集光される。
【0060】
上記のように、図11に示した第2赤外光の戻り赤外光は集光点Pに集光するので再利用可能である。これに対し、図10に示した第1赤外光の戻り赤外光のほとんどは、集光点Pに向かう戻り赤外光G(光軸L上に位置する光反射部材52から反射した戻り赤外光)から外れた戻り赤外光(以下、「外れ戻り赤外光D」と言う。)となるので、再利用することができないという問題がある。
【0061】
そこで、第2実施形態のワーク分割装置50では、上記の「外れ戻り赤外光D」を再利用するために、光照射部材22にリフレクタ部材54が備えられている。以下、リフレクタ部材54の一例について説明する。
【0062】
図12は、リフレクタ部材54の全体構成を示した斜視図である。
【0063】
このリフレクタ部材54は、第1赤外光による「外れ戻り赤外光D」を図10に示す光源30に向けて反射する機能を有している。
【0064】
具体的に説明すると、リフレクタ部材54は、図12に示すように、外周面60と、内周面62と、一端側に形成された楕円形状の開口部64と、他端側に形成された円形状の開口部66と、を有する中空の円錐台形状に構成される。
【0065】
また、第2実施形態のワーク分割装置50では、上記のリフレクタ部材54を以下のように配置することにより、「外れ戻り赤外光D」を効果的に取り込むことが可能となる。
【0066】
すなわち、図12に示す楕円形状の開口部64の長軸64Aを、図9に示す円環軸Jに沿って配置し、開口部64の短軸64Bを幅方向Kに沿って配置している。
【0067】
上記のリフレクタ部材54は、開口部66の側の端部が光照射部材22に取り付けられることにより光照射部材22に固定され、これによって楕円形状の開口部64が、図9に示すように光反射部材52に対向配置される。この開口部64は、光反射部材52で反射した戻り赤外光をリフレクタ部材54の内部に取り込む開口部として機能する。そして、リフレクタ部材54の内周面62は、内周面62を反射面として機能させるために反射コーティングが施されて内周鏡面として形成されている。この内周面62は、図10に示すように、開口部64から取り込んだ戻り赤外光のうち、上記の「外れ戻り赤外光D」を光源30に向けて反射する反射面を含んでいる。これにより、「外れ戻り赤外光D」は、光源30に戻された後、光源30から照射される赤外光と共に楕円面鏡34を介して再度出射される。なお、上記の反射面とは、「外れ戻り赤外光D」を光源30に向けて直接反射させる反射面、又は「外れ戻り赤外光D」を楕円面鏡34とを介して光源30に向けて反射させる反射面を指す。
【0068】
したがって、第2実施形態のワーク分割装置50によれば、上記のリフレクタ部材54を光照射部材22に備えることにより、「外れ戻り赤外光D」を再利用することができる。よって、光反射手段として「外れ戻り赤外光D」が発生する半円管形状の光反射部材52を採用したワーク分割装置50であっても、第1実施形態のワーク分割装置1と同様に、弛んだ部分Eを効率よく加熱することが可能となる。
【0069】
特に第2実施形態のワーク分割装置50によれば、リフレクタ部材54の開口部64の長軸64Aを、円環軸Jに沿って配置しているので、図10に示した「外れた戻り赤外光D」を、開口部64を介して広範囲で取り込むことが可能となる。これにより、上記の「外れ戻り赤外光D」を効果的に取り込むことが可能となるので、弛んだ部分Eをより一層効率よく加熱することが可能となる。
【0070】
一方、第2実施形態のワーク分割装置50では、図9に示すように、ローラ28に近接した近接位置に光反射部材52が配置されている。
【0071】
具体的に説明すると、光反射部材52の円環軸Jに平行な一対の縁部のうち、ローラ28側に位置する縁部52Cがローラ28の水平方向側方に近接されている。このときのローラ28の位置は、弛んだ部分Eを加熱する図8に示した位置である。
【0072】
図8の位置において、例えば、上記の光反射部材52がローラ28から離間して配置されている場合、又は光反射部材52が存在しない場合、下方側に弛んだ弛み部分Eは、ローラ28に巻き付いてしまう場合があり、この場合、弛み部分Eが更に下方に弛んでしまう。この結果、弛み部分Eが集光点Pから下方側に更に離れてしまうので、弛み部分Eの加熱に影響を与える場合がある。
【0073】
そこで、第2実施形態のワーク分割装置50では、ローラ28の水平方向側方において、光反射部材52の縁部52Cをローラ28に近接配置したので、弛んだ部分Eは、ローラ28に巻き付く前に縁部52Cに接触する。これにより、弛んだ部分Eがローラ28に巻き付くことを防止することができる。また、例えば、図7に示したように、突上げ用リング12を下降させる最中に弛んだ部分Eがローラ28に巻き付いてしまったとしても、ローラ28に巻き付いた弛んだ部分Eは、突上げ用リング12が下降した図8の位置で、縁部52Cによってローラ28から剥離される。この場合も弛んだ部分Eがローラ28に巻き付くことを防止することができる。
【0074】
したがって、第2実施形態のワーク分割装置50によれば、ローラ28の水平方向側方において、光反射部材52の縁部52Cをローラ28に近接配置する構成を採用したので、弛んだ部分Eが下方に弛むことを抑制することができ、これにより、弛んだ部分Eを効率よく加熱することが可能となる。ここで、上記の縁部52Cの配置位置に関しては、例えば、拡張によりダイシングテープSの弛みがどの程度生じるかを実験的に求めて、ダイシングテープSの弛んだ部分Eと光反射部材52の縁部52Cの位置との関係から、弛んだ部分Eが下方に弛むことを効果的に抑制可能と判断される上記の縁部52Cの範囲を特定しておき、この範囲に縁部52Cが設定されている。
【0075】
なお、第2実施形態のワーク分割装置50では、リフレクタ部材54として円錐台形状に構成されたものを例示したが、リフレクタ部材54は、これに限定されるものではなく、上記の「外れ戻り赤外光D」を光源30に向けて反射可能な反射面を含むものであれば適用できる。また、上記のリフレクタ部材54では、開口部64の形状として楕円形状を例示したが、これに限定されるものではない。この開口部64は、円環軸Jに沿う開口幅が他の方向(例えば、幅方向K)に沿った開口幅よりも長い形状の開口部であればよく、例えば長円形又は長方形であってもよい。
【0076】
また、第2実施形態のワーク分割装置50では、光反射部材52の配置例として、複数の光反射部材52を半導体ウェーハWの外周部に沿って間隔をもって配置した配置例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、上記のような光反射部材52を半導体ウェーハWの外周部全体に沿ったリング形状に構成してもよい。
【0077】
また、第1実施形態及び第2実施形態で説明したワーク分割装置1、50は、光照射部材22から照射されて弛んだ部分Eを透過した赤外光を、光反射部材26、52によって弛んだ部分Eの再加熱に利用したので、弛んだ部分Eを透過した赤外光に起因するワーク分割装置1、50の温度上昇を抑制することが可能になる。
【0078】
また、光源30としてハロゲンランプを適用した場合、ハロゲンランプは紫外から可視を含む赤外まで帯域の広い光を照射するものである。この場合、弛み部分Eの加熱に寄与する光は赤外光のみに限定されず、他の帯域の光も赤外光と共に加熱に寄与する。
【0079】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0080】
1…ワーク分割装置、2…ワーク、10…冷凍チャックテーブル、12…突上げ用リング、14…リング昇降機構、16…フレーム固定機構、18…ウェーハカバー、20…カバー昇降機構、22…光照射部材、24…ヒータ昇降機構、26…光反射部材、28…ローラ、30…光源、32…光学部材、34…楕円面鏡、38…凹面鏡、50…ワーク分割装置、52…光反射部材、54…リフレクタ部材、60…外周面、62…内周面、64…開口部、66…開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12