(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】水処理装置及び水処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/44 20230101AFI20241008BHJP
B01D 65/06 20060101ALI20241008BHJP
B01D 61/22 20060101ALI20241008BHJP
C02F 1/52 20230101ALI20241008BHJP
【FI】
C02F1/44 A
B01D65/06
B01D61/22
C02F1/52 Z
(21)【出願番号】P 2020100317
(22)【出願日】2020-06-09
【審査請求日】2023-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100192773
【氏名又は名称】土屋 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【氏名又は名称】服部 映美
(72)【発明者】
【氏名】多田 景二郎
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-177326(JP,A)
【文献】国際公開第2011/122658(WO,A1)
【文献】特開2007-245084(JP,A)
【文献】特開昭54-163787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/44
B01D 21/01
B01D 53/22
B01D 61/00-71/82
C02F 1/52- 1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝集フロックを含む凝集処理水を生成させる凝集処理ユニットと、
前記凝集処理ユニットの後段に設置され
、前記凝集処理水が流入される膜ろ過処理ユニットと、
前記凝集処理ユニットと前記膜ろ過処理ユニットとを連結する連結流路と、
制御部と、を備え、
前記凝集処理ユニットには、被処理水の流路に対して並列に配置された複数の凝集処理装置と、前記複数の凝集処理装置によって凝集処理された
前記凝集処理水を合流させて前記連結流路に送る合流流路と、が備えられ、
前記膜ろ過処理ユニットには、凝集処理水の流路に対して並列に配置され、かつ、前記凝集処理装置よりも多い数の複数の膜ろ過処理装置と、前記連結流路から送られた前記凝集処理水を分流させて前記複数の膜ろ過処理装置に供給可能とする分流流路と、が備えられ、
前記制御部は、前記複数の膜ろ過処理装置の少なくとも1つを、前記凝集処理水を通水させない休止状態とし、かつ、休止状態とする膜ろ過処理装置を切替可能とするように、前記分流流路における前記凝集処理水の流通を制御するものである、水処理装置。
【請求項2】
さらに、前記被処理水が滞留されている原水槽と、
前記原水槽と前記複数の凝集処理装置のそれぞれとを接続する分岐部を有する被処理水供給流路と、
前記被処理水供給流路の前記分岐部の上流側に配置されたポンプと、を備える被処理水供給装置を有し、
前記被処理水供給流路、前記複数の凝集処理装置、前記合流流路、前記連結流路及び前記分流流路のそれぞれが密閉されている、請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
さらに、前記膜ろ過処理装置のそれぞれには、ろ過膜洗浄剤添加装置が備えられている、請求項1または請求項2に記載の水処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の水処理装置を用いた水処理方法であって、
前記凝集処理ユニットに備えられた前記複数の凝集処理装置のそれぞれにおいて、被処理水を凝集処理する凝集処理工程と、
前記複数の凝集処理装置によって凝集処理された凝集処理水を、前記合流流路で合流させて、前記連結流路に送る合流工程と、
前記連結流路から送られた前記凝集処理水を前記分流流路で分流させて、前記制御部により、前記複数の膜ろ過処理装置の少なくとも1つを、前記凝集処理水を通水させない休止状態とし、残りの膜ろ過処理装置を、凝集処理水を通水させた運転状態とする分流工程と、
前記運転状態の膜ろ過処理装置を用いて、前記凝集処理水を膜ろ過処理する膜ろ過処理工程と、を備える、水処理方法。
【請求項5】
前記分流工程において、前記制御部により、休止状態とする膜ろ過処理装置を、膜ろ過処理装置の運転時間もしくは通水量または運転圧力に基づいて切替える、請求項4に記載の水処理方法。
【請求項6】
さらに、休止状態された前記膜ろ過処理装置に、ろ過膜洗浄剤を添加してろ過膜を洗浄するろ過膜洗浄工程を含む、請求項4または請求項5に記載の水処理方法。
【請求項7】
前記分流工程において、前記制御部により、前記複数の膜ろ過処理装置のそれぞれに通水させる前記凝集処理水の通水量を、前記複数の膜ろ過処理装置の通水量の平均値に対する前記膜ろ過処理装置のそれぞれの通水量の割合が80%以上120%以下の範囲内となるように調整する、請求項4乃至請求項6のいずれか1項に記載の水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理装置及び水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ろ過膜を用いた膜ろ過処理は、被処理水中の無機物(濁質物質、コロイダル成分)や有機物を分離除去するための手段として、純水製造分野や排水回収分野で行なわれている。ろ過膜としては、精密ろ過膜(MF膜)や限界ろ過膜(UF膜)が使用されている。MF膜としては孔径が1μm前後のものが一般に使用され、UF膜としては孔径が0.005~0.5μmのものが一般に使用されている。これらのろ過膜を用いた膜ろ過処理では、被処理水に無機物や有機物が大量に含まれていると、ろ過膜が目詰まりが起こりやすくなる。このため、被処理水を膜ろ過処理する前に、被処理水に凝集剤を添加して、被処理水に含まれている無機物や有機物を凝集させて粗大な粒子(凝集フロック)とした後、膜ろ過処理により分離除去することが行なわれている。
【0003】
特許文献1には、粗大な凝集フロックを生成させることができる水処理装置として、凝集剤と被処理水とを混合する混合処理手段と、旋回流が発生するように被処理水を導入する凝集処理手段と、被処理水を固液分離処理する固液分離処理手段と、を有し、混合処理手段と凝集処理手段を、被処理水を大気に開放されない状態(密閉型)とした水処理装置が記載されている。この特許文献1に記載されている水処理装置では、固液分離処理手段は、沈殿処理、加圧浮上処理、濾過処理や、膜分離処理等、濁質等のフロックを除去する固液分離処理を行なえるものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されている水処理装置は、混合処理手段と、凝集処理手段と、固液分離処理手段とが直列で接続されている。このため、例えば、固液分離処理手段として膜ろ過処理装置を用いた場合には、ろ過膜の洗浄中は、水処理を行なうことができない。このため、多量の被処理水を連続的に安定して処理することが難しい。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、多量の被処理水を連続的に安定して処理することができる水処理装置及び水処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用する。
[1]凝集フロックを含む凝集処理水を生成させる凝集処理ユニットと、
前記凝集処理ユニットの後段に設置され、前記凝集処理水が流入される膜ろ過処理ユニットと、
前記凝集処理ユニットと前記膜ろ過処理ユニットとを連結する連結流路と、
制御部と、を備え、
前記凝集処理ユニットには、被処理水の流路に対して並列に配置された複数の凝集処理装置と、前記複数の凝集処理装置によって凝集処理された前記凝集処理水を合流させて前記連結流路に送る合流流路と、が備えられ、
前記膜ろ過処理ユニットには、凝集処理水の流路に対して並列に配置され、かつ、前記凝集処理装置よりも多い数の複数の膜ろ過処理装置と、前記連結流路から送られた前記凝集処理水を分流させて前記複数の膜ろ過処理装置に供給可能とする分流流路と、が備えられ、
前記制御部は、前記複数の膜ろ過処理装置の少なくとも1つを、前記凝集処理水を通水させない休止状態とし、かつ、休止状態とする膜ろ過処理装置を切替可能とするように、前記分流流路における前記凝集処理水の流通を制御するものである、水処理装置。
【0008】
[2]さらに、前記被処理水が滞留されている原水槽と、
前記原水槽と前記複数の凝集処理装置のそれぞれとを接続する分岐部を有する被処理水供給流路と、
前記被処理水供給流路の前記分岐部の上流側に配置されたポンプと、を備える被処理水供給装置を有し、
前記被処理水供給流路、前記複数の凝集処理装置、前記合流流路、前記連結流路及び前記分流流路のそれぞれが密閉されている、[1]に記載の水処理装置。
[3]さらに、前記膜ろ過処理装置のそれぞれには、ろ過膜洗浄剤添加装置が備えられている、[1]または[2]に記載の水処理装置。
【0009】
[4][1]乃至[3]のいずれか1つに記載の水処理装置を用いた水処理方法であって、
前記凝集処理ユニットに備えられた前記複数の凝集処理装置のそれぞれにおいて、被処理水を凝集処理する凝集処理工程と、
前記複数の凝集処理装置によって凝集処理された凝集処理水を、前記合流流路で合流させて、前記連結流路に送る合流工程と、
前記連結流路から送られた前記凝集処理水を前記分流流路で分流させて、前記制御部により、前記複数の膜ろ過処理装置の少なくとも1つを、前記凝集処理水を通水させない休止状態とし、残りの膜ろ過処理装置を、凝集処理水を通水させた運転状態とする分流工程と、
前記運転状態の膜ろ過処理装置を用いて、前記凝集処理水を膜ろ過処理する膜ろ過処理工程と、を備える、水処理方法。
【0010】
[5]前記分流工程において、前記制御部により、休止状態とする膜ろ過処理装置を、膜ろ過処理装置の運転時間もしくは通水量または運転圧力に基づいて切替える、[4]に記載の水処理方法。
[6]さらに、休止状態された前記膜ろ過処理装置に、ろ過膜洗浄剤を添加してろ過膜を洗浄するろ過膜洗浄工程を含む、[4]または[5]に記載の水処理方法。
[7]前記分流工程において、前記制御部により、前記複数の膜ろ過処理装置のそれぞれに通水させる前記凝集処理水の通水量を、前記複数の膜ろ過処理装置の通水量の平均値に対する前記膜ろ過処理装置のそれぞれの通水量の割合が80%以上120%以下の範囲内となるように調整する、[4]乃至[6]のいずれか1つに記載の水処理方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の水処理装置によれば、凝集処理ユニットには複数の凝集処理装置が備えられているので、多量の被処理水を処理することができる。また、複数の凝集処理装置で凝集処理された凝集処理水を、合流流路で合流させるので、凝集処理水を、一つの膜ろ過処理ユニットで膜ろ過処理することが可能となる。このため、装置のサイズの小型化や省エネルギー化を図ることができる。そして、膜ろ過処理ユニットには、凝集処理装置よりも多い数の複数の膜ろ過処理装置が備えられていて、制御部により、複数の膜ろ過処理装置の少なくとも1つは、凝集処理水を通水させない休止状態とし、かつ、休止状態とする膜ろ過処理装置を切替可能とされているので、膜ろ過処理ユニット全体での運転状態の膜ろ過処理装置の個数は一定とすることができ、膜ろ過処理量が安定する。以上のように、本発明の水処理装置によれば、多量の被処理水を連続的に安定して処理することができる。
【0012】
また、本発明の水処理装置によれば、さらに、被処理水供給装置を有し、被処理水供給装置のポンプは被処理水供給流路の分岐部の上流側に配置され、被処理水供給流路、複数の凝集処理装置、合流流路、連結流路及び分流流路のそれぞれが密閉されている構成とすることによって、原水槽から分流流路までの流路が、大気で開放されている場合と比較して、ポンプの送水力が外部に放出されにくい。このため、ポンプの送水能力を効率よく発揮させることができるので、原水槽から膜ろ過処理装置まで被処理水を効率よく供給することが可能となる。よって、多量の被処理水を連続的に安定して処理することができると共に、省エネルギー化を図ることができる。
【0013】
また、本発明の水処理装置によれば、さらに、膜ろ過処理装置のそれぞれが、ろ過膜洗浄剤添加装置を備える構成とすることによって、休止状態の膜ろ過処理装置のろ過膜を洗浄して、ろ過膜のろ過効率を回復することができる。これにより、より確実に凝集処理水を連続的に安定して処理することができる。
【0014】
本発明の水処理方法によれば、凝集処理工程において、複数の凝集処理装置を用いるので、多量の被処理水を処理することができる。また、合流工程において、各凝集処理装置で調製された凝集処理水を合流させるので、一つの膜ろ過処理ユニットで膜ろ過処理することが可能となる。このため、装置のサイズの小型化や省エネルギー化を図ることができる。また、分流工程では、凝集処理装置よりも多い数の複数の膜ろ過処理装置の少なくとも1つを、凝集処理水を通水させない休止状態とし、残りの膜ろ過処理装置を、凝集処理水を通水させた運転状態とするので、膜ろ過処理ユニット全体での膜ろ過処理量が安定する。以上のように、本発明の水処理方法によれば、多量の被処理水を連続的に安定して処理することができる。
【0015】
また、本発明の水処理方法によれば、分流工程において、制御部により、休止状態とする膜ろ過処理装置を、膜ろ過処理装置の運転時間もしくは通水量または運転圧力に基づいて切替えることによって、膜ろ過処理装置のろ過膜のろ過効率が大きく低下する前に、ろ過効率が高い膜ろ過処理装置に切り替えることができる。よって、より確実に多量の被処理水を連続的に安定して処理することができる。
【0016】
また、本発明の水処理方法によれば、さらに、休止状態された膜ろ過処理装置に、ろ過膜洗浄剤を添加してろ過膜を洗浄するろ過膜洗浄工程を含むことによって、ろ過効率が低下した膜ろ過処理装置を再生して、再利用することができる。よって、より確実に多量の被処理水を連続的に安定して処理することができる。
【0017】
また、本発明の水処理方法によれば、分流工程において、制御部により、複数の膜ろ過処理装置のそれぞれに通水させる凝集処理水の通水量を、複数の膜ろ過処理装置の通水量の平均値に対する膜ろ過処理装置のそれぞれの通水量の割合が80%以上120%以下の範囲内となるように調整することによって、複数の膜ろ過処理装置のそれぞれの膜ろ過処理量を一定にできるので、膜ろ過処理装置のろ過効率が安定する。よって、より確実に多量の被処理水を安定して処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態である水処理装置を説明する模式図。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態である水処理方法を説明するフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態の水処理装置及び水処理方法について説明する。
図1は、本発明の実施形態である水処理装置を説明する模式図である。
図1に示すように、本実施形態の水処理装置1は、被処理水供給装置10と、凝集処理ユニット20と、膜ろ過処理ユニット40と、凝集処理ユニット20と膜ろ過処理ユニット40とを連結する連結流路60と、制御部70と、を有する。
【0020】
被処理水供給装置10は、被処理水W1を凝集処理ユニット20に供給するための装置である。被処理水供給装置10には、原水槽11と、被処理水供給流路12と、ポンプ14とが備えられている。原水槽11は、被処理水W1を一時的に滞留させる槽である。被処理水供給流路12には、原水槽11と、凝集処理ユニット20に備えられている3つの凝集処理装置21のそれぞれとを接続する分岐部13が備えられている。ポンプ14は、被処理水供給流路12の分岐部13の上流側に配置されている。このポンプ14によって、被処理水W1は凝集処理ユニット20に供給され、凝集処理ユニット20で生成した凝集処理水W2は膜ろ過処理ユニット40に供給される。
【0021】
凝集処理ユニット20は、被処理水供給装置10の後段に設置されている。凝集処理ユニット20は、3つの凝集処理装置21、及び合流流路26を備える。3つの凝集処理装置21のそれぞれは、凝集剤添加装置30と接続されている。
【0022】
3つの凝集処理装置21(第一凝集処理装置21a、第二凝集処理装置21b及び第三凝集処理装置21c)は、被処理水W1の流路に対して並列に配置されている。凝集処理装置21は、凝集処理、すなわち、被処理水W1に凝集剤を添加して、被処理水W1中の無機物(濁質物質、コロイダル成分)や有機物を凝集させることによって凝集フロックを含む凝集処理水W2を生成させる処理を行なう装置である。なお、凝集処理装置の個数は3つに限定されるものではない。凝集処理装置の個数は複数(2つ以上)であれば特に制限はないが、2つ以上5つ以下の範囲内にあることが好ましい。
【0023】
3つの凝集処理装置21はそれぞれ運転状態において、被処理水W1の通水量にばらつきが少ないことが好ましい。3つの凝集処理装置21が運転状態である場合、3つの凝集処理装置21の被処理水W1の通水量の割合はそれぞれ、例えば、3つの凝集処理装置21の通水量の平均値に対して80%以上120%以下の範囲内となるように調整されていてもよい。3つの凝集処理装置21の通水量が上記のように調整されていることによって、3つの凝集処理装置21のそれぞれで被処理水W1を均一に凝集処理することが可能となり、より確実に、被処理水W1を連続的に安定して凝集処理することができる。
【0024】
3つの凝集処理装置21は、例えば、被処理水導入部22、凝集剤添加部23、混合部24及び凝集処理水滞留部25を備える構成とされている。3つの凝集処理装置21の被処理水導入部22は、それぞれ被処理水供給流路12に接続されている。なお、凝集処理装置21の構成は、上記の構成に制限されるものではない。例えば、各凝集処理装置の被処理水導入部22は、それぞれ被処理水供給流路12に接続されていなくてもよい。すなわち、第一凝集処理装置21a、第二凝集処理装置21b及び第三凝集処理装置21cの各凝集処理装置には、それぞれ異なる被処理水が導入されるようにされていてもよい。また、凝集剤添加部23を2つ以上設けてもよい。
【0025】
被処理水導入部22は、被処理水供給流路12を介して供給された被処理水W1を導入するものである。凝集剤添加部23は、凝集剤添加装置30から供給された凝集剤を添加するものである。混合部24は、被処理水W1と凝集剤とを混合して凝集処理水W2を調製するものである。混合部24としては、例えば、ラインミキサ―を用いることができる。凝集処理水滞留部25は、凝集処理水W2を一時的に滞留させて、凝集処理水W2中の無機物や有機物を凝集させて、凝集フロックを生成させるものである。なお、混合部24および/または凝集処理水滞留部25にpH調整剤添加装置を設置して、凝集処理水W2のpHを凝集剤に適した値に調整できるようにしてもよい。
【0026】
凝集剤添加装置30には、凝集剤が収容されている凝集剤タンク31と、凝集剤を第一凝集処理装置21a、第二凝集処理装置21b及び第三凝集処理装置21cのそれぞれに供給するポンプ32a、32b、32cが備えられている。凝集剤の種類は特に制限はなく、被処理水W1に含まれている無機物や有機物の種類及び含有量などの条件に合わせて、無機凝集剤や高分子凝集剤など水処理用の凝集剤として使用されている公知の凝集剤を利用することができる。無機凝集剤としては、例えば、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硫酸バンド、水酸化アルミニウム又は酸化アルミニウムを塩酸又は硫酸で溶解したものなどのアルミニウム塩、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硫酸第一鉄などを用いることができる。高分子凝集剤としては、例えば、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、尿素-ホルマリン樹脂などのノニオン製高分子凝集剤、ポリアミノアルキルメタクリレート、ポリエチレンイミン、ハロゲン化ポリジアリルアンモニウム、キトサンなどのカチオン性高分子凝集剤、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド部分加水分解物、部分スルホメチル化ポリアクリルアミド、ポリ(2-アクリルアミド)-2-メチルプロパン硫黄塩などのアニオン性高分子凝集剤を用いることができる。これらの凝集剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの凝集剤と共に、次亜塩素酸ナトリウムなどの酸化剤を添加してもよい。
【0027】
合流流路26は、3つの凝集処理装置21によって凝集処理された凝集処理水W2を合流させて、連結流路60に送るための流路である。合流流路26は、3つの凝集処理装置21の凝集処理水滞留部25に接続している。
【0028】
膜ろ過処理ユニット40は、凝集処理ユニット20の後段に設置されている。膜ろ過処理ユニット40は、4つの膜ろ過処理装置41と、分流流路44とが備えられている。4つの膜ろ過処理装置41のそれぞれには、ろ過膜洗浄剤添加装置50が備えられている。
【0029】
4つの膜ろ過処理装置41(第一膜ろ過処理装置41a、第二膜ろ過処理装置41b、第三膜ろ過処理装置41c及び第四膜ろ過処理装置41d)は、凝集処理水W2の流路に対して並列に配置されている。膜ろ過処理装置41は、ろ過膜(不図示)を用いて、凝集処理水W2を膜ろ過して、凝集処理水W2中の凝集フロックを分離除去して、膜ろ過処理水W3を生成させる処理を行なう装置である。膜ろ過処理装置41の個数は、凝集処理装置21よりも多い数とされている。膜ろ過処理装置41の個数は、凝集処理装置21の数をNとして、N+1以上、2×N以下の範囲内にあることが好ましい。
【0030】
4つの膜ろ過処理装置41はそれぞれ運転状態において、凝集処理水W2の通水量にばらつきが少ないことが好ましい。4つの膜ろ過処理装置41が運転状態である場合、4つの膜ろ過処理装置41の凝集処理水W2の通水量の割合はそれぞれ、例えば、膜ろ過処理装置41の通水量の平均値に対して80%以上120%以下の範囲内となるように調整されていてもよい。4つの膜ろ過処理装置41の通水量が上記のように調整されていることにより、4つの膜ろ過処理装置41のそれぞれで凝集処理水W2を均一に膜ろ過処理することが可能となり、より確実に、凝集処理水W2を連続的に安定して膜ろ過処理することができる。
【0031】
4つの膜ろ過処理装置41はそれぞれ、例えば、凝集処理水導入部42、及びろ過膜(不図示)を備える構成とされている。各膜ろ過処理装置41の凝集処理水導入部42は、凝集処理水を導入するものである。膜ろ過処理装置41のろ過膜としては、精密ろ過膜(MF膜)、限界ろ過膜(UF膜)を用いることができる。
【0032】
ろ過膜洗浄剤添加装置50は、膜ろ過処理装置41が休止状態(処理すべき凝集処理水が通水されない状態)とされたときに、膜ろ過処理装置41にろ過膜洗浄剤を添加して、ろ過膜を洗浄するための装置である。休止状態の膜ろ過処理装置41を洗浄することによって運転状態(処理すべき凝集処理水が通水される状態)とされたときのろ過効率を向上させることができる。ろ過膜洗浄剤添加装置50には、第一添加装置51aと第二添加装置51bの2つの添加装置が備えられている。第一添加装置51aには、第一洗浄剤が収容されている第一洗浄剤タンク52aと、第一洗浄剤を膜ろ過処理装置に供給するポンプ53aが備えられている。第一添加装置51aには、第一洗浄剤とは異なる第二洗浄剤が収容されている第二洗浄剤タンク52bと、第二洗浄剤を膜ろ過処理装置に供給するポンプ53bが備えられている。ろ過膜洗浄剤の種類は特に制限はなく、ろ過膜で分離除去される凝集フロックの組成及びろ過膜の凝集フロックの付着量などの条件に合わせて、酸性薬剤やアルカリ性薬剤などろ過膜の洗浄剤として使用されている公知の洗浄剤を利用することができる。ろ過膜洗浄剤としては、例えば、pHが2以下の酸溶液、pH12以上のアルカリ性溶液、次亜塩素酸ナトリウムを10mg/Lの濃度で含む溶液を用いることができる。なお、添加装置の個数は2つに限定されるものではない。添加装置の個数は1つ以上であれば特に制限はない。
【0033】
分流流路44は、連結流路60から送られた凝集処理水W2を分流させて膜ろ過処理装置41に供給可能とする。すなわち、第一膜ろ過処理装置41aは第一分流流路44aを介して連結流路60に接続されている。同様に、第二膜ろ過処理装置41bは第二分流流路44bを介して、第三膜ろ過処理装置41cは第三分流流路44cを介して、第四膜ろ過処理装置41dは第四分流流路44dを介して連結流路60に接続されている。
【0034】
制御部70は、膜ろ過処理装置41の少なくとも1つを、凝集処理水W2を通水させない休止状態とし、かつ、休止状態とする膜ろ過処理装置41を切替可能とするように、分流流路44における凝集処理水W2の流通を制御するものである。制御部70としては、例えば、開閉弁を用いることができる。
【0035】
制御部70は、分流流路44のそれぞれに、膜ろ過処理装置41の上流側の位置に備えられている。すなわち、第一制御部70aは第一分流流路44aの第一膜ろ過処理装置41aの上流側の位置に備えられている。同様に、第二制御部70bは第二分流流路44bの第二膜ろ過処理装置41bの上流側の位置に、第三制御部70cは第三分流流路44cの第三膜ろ過処理装置41cの上流側の位置に、第四制御部70dは第四分流流路44dの第四膜ろ過処理装置41dの上流側の位置に備えられている。
【0036】
本実施形態の水処理装置1では、第四制御部70dにより、第四分流流路44dにおける凝集処理水W2の流通が閉じられることにより、第四膜ろ過処理装置41dが休止状態とされている。一方、第一制御部70aにより、第一分流流路44aにおける凝集処理水W2の流通が解放されることにより、第一膜ろ過処理装置41aは運転状態とされている。同様に、第二制御部70b及び第三制御部70cにより、第二分流流路44b及び第三分流流路44cにおける凝集処理水W2の流通が解放されることにより、第二膜ろ過処理装置41b及び第三膜ろ過処理装置41cは運転状態とされている。
【0037】
制御部70によって、運転状態の膜ろ過処理装置41を休止状態に切替えるときは、休止状態の膜ろ過処理装置41を運転状態として、膜ろ過処理ユニット40全体における運転状態の膜ろ過処理装置41の個数を一定とする。例えば、運転状態の第一分流流路44a、第二分流流路44b及び第三分流流路44cのいずれかを休止状態とする際には、休止状態の第四膜ろ過処理装置41dを運転状態とする。膜ろ過処理ユニット40全体における運転状態の膜ろ過処理装置41の個数を一定とすることによって、膜ろ過処理ユニット40全体の被処理水W1を通水量の変動を小さくすることができる。これにより、より確実に、凝集処理水W2を連続的に安定して膜ろ過処理することができる。
【0038】
制御部70は、例えば、休止状態とする膜ろ過処理装置41を、膜ろ過処理装置41の運転時間もしくは通水量または運転圧力に基づいて切替えるようにしてもよい。すなわち、膜ろ過処理装置41の運転時間が、所定の時間を経過したときに、運転状態の膜ろ過処理装置41を休止状態に切替える。もしくは、膜ろ過処理装置41の通水量が所定の数値よりも低下したときに、通水量が低下した膜ろ過処理装置41を休止状態に切替える。または、膜ろ過処理装置41の運転圧力が所定の数値よりも上昇したときに、運転圧力が上昇した膜ろ過処理装置を休止状態に切替える。
【0039】
本実施形態の水処理装置1では、被処理水供給流路12、合流流路26、連結流路60及び分流流路44は、例えば配管とされている。また、被処理水供給流路12、凝集処理装置21、合流流路26、連結流路60及び分流流路44の各流路は、それぞれが密閉されている構成とされている。なお、各流路の一部は、大気で開放されていてもよい。
【0040】
また、凝集処理ユニット20の3つの凝集処理装置21と膜ろ過処理ユニット40の4つの膜ろ過処理装置41とは、例えば、それぞれの運転状態で通水量が同等である構成としてもよい。この場合、運転状態の凝集処理装置21と膜ろ過処理装置41の個数を同じとすることによって、被処理水W1を連続的に安定して処理することができる。このため、水処理装置1の構成が簡略化でき、装置のサイズの小型化できる。例えば、運転状態の凝集処理装置21の被処理水W1の通水量と運転状態の膜ろ過処理装置41の凝集処理水W2の通水量の平均に対する凝集処理装置21及び膜ろ過処理装置41のそれぞれの通水量の割合が80%以上120%以下の範囲内となるように調整する。
【0041】
次に、
図1に示す水処理装置を用いた本実施形態の水処理方法について説明する。
図2は、本発明の実施形態である水処理方法を説明するフロー図である。
図2に示すように、本実施形態の水処理方法は、被処理水供給S01と、凝集処理工程S02と、合流工程S03と、分流工程S04と、膜ろ過処理工程S05と、を備える。
【0042】
被処理水供給S01では、被処理水供給装置10に備えられた原水槽11に滞留されている被処理水W1を、ポンプ14によって、被処理水供給流路12を介して、凝集処理ユニット20の3つの凝集処理装置21のそれぞれの被処理水導入部22に供給する。
【0043】
凝集処理工程S02では、凝集処理ユニット20に備えられた3つの凝集処理装置21(第一凝集処理装置21a、第二凝集処理装置21b、第三凝集処理装置21c)のそれぞれを用いて、凝集処理を行なう。すなわち、凝集処理装置21の被処理水導入部22から導入された被処理水W1と、凝集剤添加部23から添加された凝集剤とを、混合部24で混合して凝集処理水W2を調製し、凝集処理水W2を凝集処理水滞留部25に滞留させる。そして、凝集処理水滞留部25に凝集処理水W2中の無機物や有機物を凝集させて、粗大な凝集フロックを生成させる。
【0044】
合流工程S03では、3つの凝集処理装置21によって凝集処理された凝集処理水W2を、合流流路26で合流させる。そして合流させた凝集処理水W2を、連結流路60に送る。
【0045】
分流工程S04では、連結流路60から送られた凝集処理水W2を、膜ろ過処理ユニット40に備えられた分流流路44で分流させて、制御部70により、4つの膜ろ過処理装置41の1つ(第四膜ろ過処理装置41d)を、凝集処理水W2を通水させない休止状態とする。一方、残りの膜ろ過処理装置41(第一膜ろ過処理装置41a、第二膜ろ過処理装置41b及び第三膜ろ過処理装置41c)は、凝集処理水を通水させた運転状態とする。
【0046】
膜ろ過処理工程S05では、運転状態の膜ろ過処理装置(第一膜ろ過処理装置41a、第二膜ろ過処理装置41b及び第三膜ろ過処理装置41c)を用いて、凝集処理水W2を膜ろ過処理する。すなわち、凝集処理水W2中の凝集フロックをろ過膜で分離除去する。
【0047】
休止状態とされた第四膜ろ過処理装置41dには、ろ過膜洗浄剤添加装置50を用いてろ過膜洗浄剤が添加されていて、ろ過膜が洗浄される(ろ過膜洗浄工程)。これによって、凝集フロックの付着による目詰まりによって低下したろ過効率が改善される。各膜ろ過処理装置のろ過効率を高いレベルで維持するために、第二分流工程S05では、凝集処理水W2を送水しないで休止させる膜ろ過処理装置を、例えば、膜ろ過処理装置の運転時間もしくは運転水量または運転圧力に基づいて切替えるようにしてもよい。
【0048】
また、運転中の膜ろ過処理装置41は、膜ろ過処理を安定に行なうために、通水量のばらつきを少なくしてもよい。例えば、制御部70により、運転状態の膜ろ過処理装置41のそれぞれに通水させる凝集処理水W2の通水量を、膜ろ過処理装置41の通水量の平均値に対する膜ろ過処理装置41のそれぞれの通水量の割合が80%以上120%以下の範囲内となるように調整する。
【0049】
以上説明したように、本実施形態の水処理装置1によれば、凝集処理ユニット20には3つの凝集処理装置21(第一凝集処理装置21a、第二凝集処理装置21b、第三凝集処理装置21c)が備えられているので、多量の被処理水W1を処理することができる。また、3つの凝集処理装置21で凝集処理された凝集処理水W2を、合流流路26で合流させるので、凝集処理水W2を、一つの膜ろ過処理ユニット40で膜ろ過処理することが可能となる。このため、装置のサイズの小型化や省エネルギー化を図ることができる。そして、膜ろ過処理ユニット40には、凝集処理装置よりも多い4つの膜ろ過処理装置41(第一膜ろ過処理装置41a、第二膜ろ過処理装置41b、第三膜ろ過処理装置41c、第四膜ろ過処理装置41d)が備えられていて、制御部70により、4つの膜ろ過処理装置41の1つ(第四膜ろ過処理装置41d)は、凝集処理水W2を通水させない休止状態とし、かつ、休止状態とする膜ろ過処理装置を切替可能とされているので、膜ろ過処理ユニット40全体での運転状態の膜ろ過処理装置41の個数は一定とすることができ、膜ろ過処理量が安定する。以上のように、本実施形態の水処理装置によれば、多量の被処理水を連続的に安定して処理することができる。
【0050】
また、本実施形態の水処理装置1によれば、さらに被処理水供給装置10を有し、被処理水供給装置10のポンプ14が被処理水供給流路12の分岐部13の上流側に配置されていて、被処理水供給流路12、凝集処理装置21、合流流路26、連結流路60及び分流流路44のそれぞれが密閉されているので、原水槽11から分流流路44までの流路が、大気で開放されている場合と比較して、ポンプ14の送水力が外部に放出されにくい。このため、ポンプ14の送水能力を効率よく発揮させることができるので、原水槽11から膜ろ過処理装置41まで被処理水W1を効率よく供給することが可能となる。よって、多量の被処理水W1を連続的に安定して処理することができると共に、省エネルギー化を図ることができる。
【0051】
また、本実施形態の水処理装置1によれば、さらに、膜ろ過処理装置41のそれぞれが、ろ過膜洗浄剤添加装置50を備える構成とされているので、休止状態の膜ろ過処理装置41のろ過膜を洗浄して、ろ過膜のろ過効率を回復することができる。これにより、より確実に凝集処理水W2を連続的に安定して処理することができる。
【0052】
本実施形態の水処理方法によれば、凝集処理工程S02において、複数の凝集処理装置21を用いるので、多量の被処理水W1を処理することができる。また、合流工程S03において、各凝集処理装置21で調製された凝集処理水W2を合流させるので、一つの膜ろ過処理ユニット40で膜ろ過処理することが可能となる。このため、装置のサイズの小型化や省エネルギー化を図ることができる。また、分流工程S03では、凝集処理装置21よりも多い4つの膜ろ過処理装置41の1つを、凝集処理水W2を通水させない休止状態とし、残りの膜ろ過処理装置41を、凝集処理水W2を通水させた運転状態とするので、膜ろ過処理ユニット40全体での膜ろ過処理量が安定する。以上のように、本実施形態の水処理方法によれば、多量の被処理水W1を連続的に安定して処理することができる。
【0053】
また、本実施形態の水処理方法によれば、分流工程S04において、制御部70により、休止状態とする膜ろ過処理装置41を、膜ろ過処理装置41の運転時間もしくは通水量または運転圧力に基づいて切替えることによって、膜ろ過処理装置41のろ過膜のろ過効率が大きく低下する前に、ろ過効率が高い膜ろ過処理装置に切り替えることができる。よって、より確実に多量の被処理水W1を連続的に安定して処理することができる。
【0054】
また、本実施形態の水処理方法によれば、さらに、休止状態された膜ろ過処理装置に、ろ過膜洗浄剤を添加してろ過膜を洗浄するろ過膜洗浄工程を含むことによって、ろ過効率が低下した膜ろ過処理装置を再生して、再利用することができる。よって、より確実に多量の被処理水W1を連続的に安定して処理することができる。
【0055】
また、本実施形態の水処理方法によれば、分流工程において、制御部70により、運転状態の3つ膜ろ過処理装置41(第一膜ろ過処理装置41a、第二膜ろ過処理装置41b、第三膜ろ過処理装置41c)のそれぞれに通水させる凝集処理水W2の通水量を、3つの膜ろ過処理装置41の通水量の平均値に対する膜ろ過処理装置のそれぞれの通水量の割合が80%以上120%以下の範囲内となるように調整することによって、3つの膜ろ過処理装置41のそれぞれの膜ろ過処理量を一定にできるので、膜ろ過処理装置41のろ過効率が安定する。よって、より確実に多量の被処理水W1を安定して処理することができる。
【実施例】
【0056】
[実施例1]
凝集処理ユニットには、2つの凝集処理装置(第一凝集処理装置、第二凝集処理装置)が備えられ、膜ろ過処理ユニットには、3つの膜ろ過処理装置(第一膜ろ過処理装置、第二膜ろ過処理装置、第三膜ろ過処理装置)が備えられていること以外は、
図1に示す水処理装置と同じ構成の水処理装置を用意して、被処理水を30日間処理した。
【0057】
凝集処理ユニットの各凝集処理装置はそれぞれ、凝集剤添加部では、凝集剤としては、塩化第二鉄(濃度:38%)を用いた。凝集剤の添加量は100mg/Lとした。混合部では、スタティックミキサー(株式会社ノリタケカンパニーリミテド)を用いて、被処理水と凝集剤とを混合した。得られた凝集処理水は、滞留部で5分間滞留させた後、膜ろ過処理ユニットに供給した。
【0058】
膜ろ過処理ユニットの膜ろ過処理装置はそれぞれ、ろ過膜としてポリフッ化ビニルデン製のUF膜を用いた。膜ろ過処理ユニットに凝集処理水を2m3/hの流量で供給し、前半15日間は、第一膜ろ過処理装置と第二膜ろ過処理装置を運転状態とし、第三膜ろ過処理装置を休止状態として凝集処理水の膜ろ過処理を行なった。後半15日は、第二膜ろ過処理装置と第三膜ろ過処理装置を運転状態とし、第一膜ろ過処理装置を休止状態とした状態で凝集処理水の膜ろ過処理を行なった。
【0059】
水処理を30日間行なった後、水処理を停止した。次いで、各膜ろ過処理装置の性能(通水性)を評価するために、純水を用いてろ過したときの差圧(膜間差圧、入口圧力と透過水出口圧力との差)を測定した。その結果を、下記の表1に示す。
【0060】
[実施例2]
休止状態の膜ろ過処理装置を、第三膜ろ過処理装置、第一膜ろ過処理装置、第二膜ろ過処理装置、第三膜ろ過処理装置の順に7日毎に切替えたこと、休止状態の膜ろ過処理装置に対してろ過膜の洗浄を行なったこと以外は、実施例1と同様にして、水処理を行なった。ろ過膜の洗浄は、1.5日間薬剤洗浄を行なった後、水洗することによって行なった。薬剤洗浄は、前半は、シュウ酸による酸洗浄、後半は次亜塩素酸ナトリウムを含むアルカリ性溶液によりアルカリ洗浄を実施した。水処理を30日間行なった後、水処理を停止し、実施例1と同様に、各膜ろ過処理装置の性能(通水性)を評価した。その結果を、下記の表1に示す。
【0061】
[実施例3]
運転状態の膜ろ過処理装置の差圧が上昇して50kPaを超えた時点で、差圧が上昇した膜ろ過処理装置を休止状態に切替え、休止状態の膜ろ過処理装置を運転状態に切替えたこと、休止状態の膜ろ過処理装置は、上記実施例2と同様にして、ろ過膜の薬剤洗浄を行なったこと以外は、実施例1と同様にして水処理を行なった。なお、ろ過膜の薬剤洗浄中に、運転中の膜ろ過処理装置の差圧が50kPaを超えた場合には、ろ過膜の薬剤洗浄が終了するまで、差圧が50kPaを超えた状態のまま運転を継続した。水処理を30日間行なった後、水処理を停止し、実施例1と同様に、各膜ろ過処理装置の性能(通水性)を評価した。その結果を、下記の表1に示す。
【0062】
[実施例4]
運転状態の膜ろ過処理装置の凝集処理水の通水量を、制御部(開閉弁)の開度を調整することによって、それぞれ0.8~1.2m3/hに調整したこと以外は、実施例3と同様にして、水処理を行なった。なお、実施例1~3は実施例4のように膜ろ過処理装置の凝集処理水の導入量を調整することはしなかった。水処理を30日間行なった後、水処理を停止し、実施例1と同様に、各膜ろ過処理装置の性能(通水性)を評価した。その結果を、下記の表1に示す。
【0063】
[比較例1]
第一凝集処理装置と第一膜ろ過処理装置とを直接接続し、第二凝集処理装置と第二膜ろ過処理装置とを直接接続した構成の水処理装置を用意した。この水処理装置を、30日間、連続的に運転したこと以外は、実施例1と同様にして、水処理を行なった。水処理を30日間行なった後、水処理を停止し、実施例1と同様に、各膜ろ過処理装置の性能(通水性)を評価した。その結果を、下記の表1に示す。
【0064】
【0065】
純水でろ過したときの差圧が大きくなるのは、ろ過膜に凝集フロックが付着して目詰まりが起きているためである。比較例1では、膜ろ過処理装置を切替えずに、第一膜ろ過処理装置及び第二膜ろ過処理装置を連続的に運転状態としたため、ろ過膜への凝集フロックの付着量が多くなり、純水でろ過したときの差圧が高くなった。これに対して、実施例1では、第一膜ろ過処理装置と第三膜ろ過処理装置を切替えて運転したため、比較例1と比較して、ろ過膜への凝集フロックの付着量が少なくなり、第一膜ろ過処理装置と第三膜ろ過処理装置は純水でろ過したときの差圧が低くなった。さらに、実施例2~3では、膜ろ過処理装置を切替えるサイクルを短くし、休止状態の膜ろ過処理装置ではろ過膜を洗浄しているため、ろ過膜への凝集フロックの付着量がより少なくなり純水でろ過したときの差圧がさらに低くなった。またさらに、実施例4では、運転状態の膜ろ過処理装置の凝集処理水の通水量をそれぞれ0.8~1.2m3/hに調整したため、ろ過膜への凝集フロックの付着量がさらに少なくなり、純水でろ過したときの差圧がさらに低くなった。
【符号の説明】
【0066】
1…水処理装置、10…被処理水供給装置、11…原水槽、12…被処理水供給流路、13…分岐部、14…ポンプ、20…凝集処理ユニット、21…凝集処理装置、21a…第一凝集処理装置、21b…第二凝集処理装置、21c…第三凝集処理装置、22…被処理水導入部、23…凝集剤添加部、24…混合部、25…凝集処理水滞留部、26…合流流路、30…凝集剤添加装置、31…凝集剤タンク、32a、32b、32c…ポンプ、40…膜ろ過処理ユニット、41…膜ろ過処理装置、41a…第一膜ろ過処理装置、41b…第二膜ろ過処理装置、41c…第三膜ろ過処理装置、41d…第四膜ろ過処理装置、42…凝集処理水導入部、44…分流流路、44a…第一分流流路、44b…第二分流流路、44c…第三分流流路、44d…第四分流流路、50…ろ過膜洗浄剤添加装置、51a…第一添加装置、51b…第二添加装置、52a…第一洗浄剤タンク、52b…第二洗浄剤タンク、53a、53b…ポンプ、60…連結流路、70…制御部、70a…第一制御部、70b…第二制御部、70c…第三制御部、70d…第四制御部、W1…被処理水、W2…凝集処理水、W3…膜ろ過処理水