IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • -撮像装置および制御プログラム 図1
  • -撮像装置および制御プログラム 図2
  • -撮像装置および制御プログラム 図3
  • -撮像装置および制御プログラム 図4
  • -撮像装置および制御プログラム 図5
  • -撮像装置および制御プログラム 図6
  • -撮像装置および制御プログラム 図7
  • -撮像装置および制御プログラム 図8
  • -撮像装置および制御プログラム 図9
  • -撮像装置および制御プログラム 図10
  • -撮像装置および制御プログラム 図11
  • -撮像装置および制御プログラム 図12
  • -撮像装置および制御プログラム 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】撮像装置および制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   G03B 9/36 20210101AFI20241008BHJP
   G03B 5/00 20210101ALI20241008BHJP
   G03B 7/091 20210101ALI20241008BHJP
   H04N 23/68 20230101ALI20241008BHJP
   H04N 23/54 20230101ALI20241008BHJP
   H04N 25/53 20230101ALI20241008BHJP
【FI】
G03B9/36 C
G03B5/00 J
G03B7/091
H04N23/68
H04N23/54
H04N25/53
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020121354
(22)【出願日】2020-07-15
(65)【公開番号】P2022018316
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】水井 研吾
【審査官】殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-086190(JP,A)
【文献】特開2017-005563(JP,A)
【文献】特開2006-071743(JP,A)
【文献】特開2002-290816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 5/00 - 5/08
G03B 9/08 - 9/54
H04N 5/222- 5/257
H04N 23/00
H04N 23/40 - 23/76
H04N 23/90 - 23/959
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体からの光を光電変換した電荷を蓄積する画素が複数配置され、前記被写体を撮像する撮像素子と、
前記画素の電荷の蓄積を開始させる制御および前記画素の電荷の蓄積を終了させる制御を行う画素制御部と、
前記撮像素子の前記被写体側に配置され、移動することで前記画素を前記被写体からの光に露光させる先幕と、移動することで前記画素を前記被写体からの光を遮光する後幕とを備えるシャッターと、
前記先幕および後幕の移動を制御するシャッター制御部と、
前記画素が配置されている撮像面に交差する軸を中心にして前記撮像素子を回転させる回転機構と、
第1撮像および第2撮像では前記撮像素子を第1回転量以下で回転させる制御を行い、第3撮像では前記撮像素子を前記第1回転量よりも小さい第2回転量以下で回転させる制御を行う回転制御部と、を有し、
前記第1撮像は、前記画素制御部により前記画素の電荷の蓄積を開始し、蓄積を終了する制御による撮像であり、
前記第2撮像は、前記シャッター制御部により前記画素を露光し遮光する制御による撮像であり、
前記第3撮像は、前記画素制御部により前記画素の電荷の蓄積を開始し前記シャッター制御部により後幕を移動させ前記画素を遮光する制御による撮像である、撮像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の撮像装置において、
前記撮像装置の振れを検出する検出部を有し、
前記回転制御部は、前記検出部によって検出された振れに基づいて前記撮像素子を回転させる、撮像装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の撮像装置であって、
前記被写体の明るさに応じて前記被写体を撮像する時間を算出する露出演算部を有し、
前記回転制御部は、前記露出演算部によって算出された前記被写体を撮像する時間に基づいて、前記第2回転量を変更する、撮像装置。
【請求項4】
請求項2に記載の撮像装置であって、
前記回転制御部は、前記第3撮像の時間が短くなるほど前記第2回転量が小さくなるように制御する、撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置および制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、手振れ補正機能を有する撮像装置がある(たとえば、下記特許文献1を参照、)。しかしながら、電子先幕とメカ後幕との間に形成される撮像素子の露光領域において、メカ後幕の羽根元側と羽根先側との露光差については考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-261524号公報
【発明の概要】
【0004】
第1開示技術の撮像装置は、被写体からの光を光電変換した電荷を蓄積する画素が複数配置され、前記被写体を撮像する撮像素子と、前記画素の電荷の蓄積を開始させる制御および前記画素の電荷の蓄積を終了させる制御を行う画素制御部と、前記撮像素子の前記被写体側に配置され、移動することで前記画素を前記被写体からの光に露光させる先幕と、移動することで前記画素を前記被写体からの光を遮光する後幕とを備えるシャッターと、前記先幕および後幕の移動を制御するシャッター制御部と、前記画素が配置されている撮像面に交差する軸を中心にして前記撮像素子を回転させる回転機構と、第1撮像および第2撮像では前記撮像素子を第1回転量以下で回転させる制御を行い、第3撮像では前記撮像素子を前記第1回転量よりも小さい第2回転量以下で回転させる制御を行う回転制御部と、を有し、前記第1撮像は、前記画素制御部により前記画素の電荷の蓄積を開始し、蓄積を終了する制御による撮像であり、前記第2撮像は、前記シャッター制御部により前記画素を露光し遮光する制御による撮像であり、前記第3撮像は、前記画素制御部により前記画素の電荷の蓄積を開始し前記シャッター制御部により後幕を移動させ前記画素を遮光する制御による撮像である。
【0005】
開示技術の制御プログラムは、被写体からの光を光電変換した電荷を蓄積する画素が複数配置され前記被写体を撮像する撮像素子と、前記撮像素子の前記被写体側に配置され、移動することで前記画素を前記被写体からの光に露光させる先幕と、移動することで前記画素を前記被写体からの光を遮光する後幕とを備えるシャッターと、前記画素が配置されている撮像面に交差する軸を中心にして前記撮像素子を回転させる回転機構と、を有する撮像装置を制御する制御プログラムであって、前記撮像装置内のプロセッサに、前記画素の電荷の蓄積を開始させる制御および前記画素の電荷の蓄積を終了させる画素制御と、前記先幕および後幕を移動させるシャッター制御と、第1撮像および第2撮像では前記撮像素子を第1回転量以下で回転させる制御を行い、第3撮像では前記撮像素子を前記第1回転量よりも小さい第2回転量以下で回転させる制御を行う回転制御と、を実行させ、前記第1撮像は、前記画素制御部により前記画素の電荷の蓄積を開始し、蓄積を終了する制御による撮像であり、前記第2撮像は、前記シャッター制御部により前記画素を露光し遮光する制御による撮像であり、前記第3撮像は、前記画素制御部により前記画素の電荷の蓄積を開始し前記シャッター制御部により後幕を移動させ前記画素を遮光する制御による撮像である。
【0006】
開示技術の撮像装置は、被写体からの光を光電変換した電荷を蓄積する画素が第1方向および前記第1方向と交差する第2方向に複数配置され、前記被写体を撮像する撮像素子と、前記第1方向に配置された複数の画素の電荷の蓄積を前記第2方向に順次開始させる画素制御部と、前記画素が配置された撮像面に交差する軸を中心に前記撮像素子を回転させる回転機構と、前記撮像素子の前記被写体側に配置され、移動することで前記画素を前記被写体からの光を遮光する幕と、前記第1方向の前記幕に対する傾きに基づいて前記回転機構を制御する駆動制御部と、を有する。
【0007】
開示技術の制御プログラムは、被写体からの光を光電変換した電荷を蓄積する画素が第1方向および前記第1方向と交差する第2方向に複数配置され前記被写体を撮像する撮像素子と、前記画素が配置された撮像面に交差する軸を中心に前記撮像素子を回転させる回転機構と、前記撮像素子の前記被写体側に配置され、移動することで前記画素を前記被写体からの光を遮光する幕と、を有する撮像装置を制御する制御プログラムであって、前記撮像装置内のプロセッサに、前記第1方向に配置された複数の画素の電荷の蓄積を前記第2方向に順次開始させる画素制御と、前記第1方向の前記幕に対する傾きに基づいて前記回転機構を制御する駆動制御と、を実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第一実施形態にかかる撮像装置の回転軸および回転方向の一例を示す説明図である。
図2図2は、第一実施形態にかかる撮像装置内における露光スリット形状の一例を示す説明図である。
図3図3は、第一実施形態にかかる撮像装置の構成例を示す説明図である。
図4図4は、ボディ制御部による撮像素子のロール方向の回転補正処理手順例1を示すフローチャートである。
図5図5は、撮像素子のロール方向の回転角と露光差の絶対値との特性を示すグラフである。
図6図6は、ボディ制御部による撮像素子のロール方向の回転補正処理手順例2を示すフローチャートである。
図7図7は、第二実施形態にかかる撮像装置内における露光スリット形状の一例を示す説明図である。
図8図8は、第二実施形態にかかる撮像装置の構成例を示す説明図である。
図9図9は、第二実施形態にかかる防振制御処理手順例1を示すフローチャートである。
図10図10は、図9に示した傾き角の更新処理手順例を示すフローチャートである。
図11図11は、撮像素子とメカ後幕との間に傾き角分の角度ずれがある場合のメカ後幕の走行例を示す説明図である。
図12図12は、図11に示したメカ後幕の走行例におけるフォトインタラプタのタイミングチャートである。
図13図13は、第二実施形態にかかる防振制御処理手順例2を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第一実施形態]
図1は、第一実施形態にかかる撮像装置の回転軸および回転方向の一例を示す説明図である。撮像装置100は、たとえば、レンズ鏡筒101とカメラボディ102とが着脱可能または一体的に構成された、静止画を撮像するデジタルスチルカメラである。レンズ鏡筒101に設けられているレンズの光軸をZ軸とし、Z軸回りの回転方向をロール方向とし、その回転角をロール角θとする。なお、Z軸において、撮像装置から無限遠に向かう方向をZプラス方向Z+と称し、無限遠から撮像装置100に向かう方向をZマイナス方向Z-と称す。また、反時計回りのロール方向をロールプラス(+)方向とし、時計回り方向のロール方向をロールマイナス(-)方向とする。
【0010】
また、Z軸に直交する軸をX軸およびY軸とする。X軸およびY軸もまた直交しあう。X軸回りの回転方向をピッチ方向とし、その回転角をピッチ角とする。Y軸回りの回転方向をヨー方向とし、その回転角をヨー角とする。
【0011】
図2は、第一実施形態にかかる撮像装置100内における露光スリット形状の一例を示す説明図である。撮像素子201には、撮像素子201が回転していない状態を基準として、回転方向の+側と-側とで、同じ量の制限範囲が設定される。なお、図2の(a)において、Dは、電子先幕202およびメカニカルシャッター幕である後幕(以下、メカ後幕)203の走行方向である。電子先幕202とは、撮像素子201の画素への電荷蓄積の開始制御により、被写体からの光が露光可能な画素領域を走行方向Dに移動させる電子的なシャッターである。
【0012】
撮像素子201は、被写体からの光を光電変換した電荷を蓄積する画素が複数配置され、被写体を撮像し、その画像信号を図3に示すボディ制御部310に出力する。なお、撮像素子201が配置されている原点位置は、たとえば、撮像素子201の撮像面がX軸とY軸とで張られるXY平面に平行で、かつ、撮像面の中心をZ軸が通る。
【0013】
走行方向Dは、たとえば、Y軸方向と平行である。Hは、メカ後幕203を構成する羽根204の長手方向であり、たとえば、X軸方向と平行である。Sは、撮像素子201の画素が配列する行方向である。電子先幕202では行方向の画素に順次電荷を蓄積するため、行方向は走査方向となる。なお、行方向Sに直交する画素の配列方向を列方向とする。撮像素子201がロール方向に回転していない原点位置では、行方向SはY軸に平行であり、列方向はX軸に平行である。また、羽根204のモータに接続される一端を羽根元204aと称し、他端を羽根先204bと称す。
【0014】
また、後幕についても、メカ後幕203の代わりに電子後幕として実行することができる。電子後幕は、撮像素子201の画素への電荷蓄積の終了制御により、被写体からの光が遮光可能な画素領域を走行方向Dに移動させる電子的なシャッターである。
【0015】
図2において、露光スリット形状200a~200c(以下、露光スリット形状200a~200cを区別しない場合は、露光スリット形状200と表記)は、撮像素子201をレンズ鏡筒101側からZマイナス方向に見た場合に、撮像素子201の電子先幕202とメカ後幕203との間に形成される撮像素子201の露光領域(ドットで表記)である。撮像装置100には、防振機構324が撮像素子201に設けられている。撮像素子201は、Z軸に直交するように設けられる。撮像素子201は、振れ補正のために防振機構324によって駆動移動され、Z軸と垂直な面(XY平面)に沿って移動したり、防振機構324によりロール方向に回転したりする。
【0016】
図2の(a)は、撮像素子201がロール方向に回転していない状態を示す。この状態では、撮像素子201の行方向Sが羽根204の長手方向Hと平行となる。したがって、露光スリット形状200aは長方形となり、羽根元204a側と羽根先204b側とで露光差が生じない。
【0017】
図2の(b)は、撮像素子201がロールプラス方向にロール角θ回転している状態を示す。この状態では、撮像素子201の行方向Sが羽根204の長手方向Hと平行にならない。したがって、露光スリット形状200bは台形となり、羽根元204a側で露出オーバー、羽根先204b側で露光アンダーになりやすくなり、撮像素子201から得られる画像上に露光むらが発生する可能性が高くなる。
【0018】
図2の(c)は、撮像素子201がロールマイナス方向にロール角θ回転している状態を示す。この状態では、撮像素子201の行方向Sが羽根204の長手方向Hと平行にならない。したがって、露光スリット形状200cは台形となり、羽根元204a側で露出アンダー、羽根先204b側で露光オーバーになりやすくなり、撮像素子201から得られる画像信号によって生成される画像上に露光むらが発生する可能性が高くなる。
【0019】
このようなことから、第一実施形態では、撮像装置100は、撮像素子201のロール方向の回転に一定の制限を設定し、当該制限を超えて回転しないようにし、手振れ等による回転振れを打ち消す場合には、制限範囲内で撮像素子201を回転させる。これにより、羽根元204a側と羽根先204b側との露光差を抑制し、露出性能を良好に維持する。また、露光時間(いわゆるシャッタースピード)が短秒であるほど露光スリット形状200の面積が小さくなり、露出に対するロール角の影響が大きいため、撮像装置100は、露光時間に応じてロール角θの制限を変更する。これにより、羽根元204a側と羽根先204b側との露光差を露光時間に応じて抑制し、露出性能を良好に維持する。
【0020】
<撮像装置100の構成例>
図3は、第一実施形態にかかる撮像装置100の構成例を示す説明図である。図3では、例として、レンズ鏡筒101とカメラボディとが着脱可能な撮像装置100を示す。レンズ鏡筒101は、レンズ群301と、レンズ駆動部302と、レンズ制御部303と、鏡筒側マウント304と、鏡筒側コネクタ305と、を有する。
【0021】
レンズ群301は、Z軸方向に配列された複数のレンズにより構成され、フォーカシングレンズを含む。レンズ群301は、被写体光を集光し、撮像素子201に出射する。レンズ駆動部302は、レンズ群301を駆動制御する。レンズ駆動部302は、たとえば、モータであり、レンズ制御部303の制御により、レンズ群301をZ軸方向に移動させる。
【0022】
レンズ制御部303は、プログラムを記憶するメモリ(不図示)と当該プログラムを実行するプロセッサ(不図示)を有し、当該プロセッサからの指示によりレンズ駆動部302を制御する。鏡筒側マウント304は、ボディ側マウント315に着脱可能である。鏡筒側コネクタ305は、ボディ側コネクタ314と電気的に接続される。
【0023】
カメラボディ102は、図2で説明した撮像素子201およびメカ後幕203のほか、ボディ制御部310と、カードIF(INTERFACE)313と、ボディ側マウント314と、ボディ側コネクタ315と、メモリカード316と、ダイヤル317と、レリーズボタン318と、背面モニタ319と、メカニカルシャッターである先幕(以下、メカ先幕)320と、シャッター駆動部321と、位置検出部322と、振れ検出部323と、防振機構324と、を有する。
【0024】
ボディ制御部310は、プロセッサ311と、メモリ312と、を有し、メモリ312に記憶された制御プログラムをプロセッサ311が実行することにより、たとえば、電子先幕をおこなうための撮像素子201の画素への電荷蓄積の開始および終了を制御する画素制御や、メカ先幕320およびメカ後幕203の走行方向Dへの移動を制御するシャッター制御や、防振機構324により撮像素子201をロール方向に回転させる回転制御を実現する。
【0025】
回転制御については、具体的には、たとえば、ボディ制御部310は、撮像の種類に応じて異なる回転制御を実行する。たとえば、上述した画素制御により電子先幕202で画素の電荷の蓄積を開始し、電子後幕で蓄積を終了する画素を走行方向Dに移動させて遮光する制御によって被写体を撮像する場合(以下、第1撮像)、ボディ制御部310は、撮像素子201を第1回転量以下で回転させる。
【0026】
また、上述したシャッター制御によりメカ先幕320で画素を露光し、メカ後幕203を走行方向Dに移動させて遮光する制御によって被写体を撮像する場合(以下、第2撮像)、ボディ制御部310は、第1撮像と同様、撮像素子201を第1回転量以下で回転させる。
【0027】
また、上述した画素制御により電子先幕202で画素の電荷の蓄積を開始し、上述したシャッター制御によりメカ後幕203を走行方向Dに移動させて画素を遮光する制御によって撮像する場合(以下、第3撮像)、ボディ制御部310は、撮像素子201を第1回転量よりも小さい第2回転量以下で回転させる。
【0028】
また、ボディ制御部310は、シャッタースピード(露光時間)優先モードなど、あらかじめユーザ操作によって露光時間が設定されたモードである場合、当該設定された露光時間となるように、画素制御やシャッター制御を実行する。また、ボディ制御部310は、絞り優先モードやプログラムオートモードのように、被写体の明るさに応じて被写体を撮像するための露光時間を算出してもよい。この場合、ボディ制御部310は、算出された露光時間となるように、画素制御やシャッター制御を実行する。
【0029】
また、ボディ制御部310は、たとえば、色補間、ホワイトバランス調整、輪郭強調、ガンマ補正、階調変換などの画像処理や符号化処理、復号処理、圧縮伸張処理など、特定の処理を実行する集積回路も含む。集積回路は、具体的には、たとえば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)などのPLD(Programmable Logic Device)によって実現してもよい。
【0030】
カードIF313は、メモリカード316が挿抜可能なインタフェースである。ボディ側マウント314は、鏡筒側マウント304に着脱可能である。ボディ側コネクタ315は、鏡筒側コネクタ305と電気的に接続される。メモリカードは、データを記憶する記憶媒体である。メモリカード316は、カードIF313に挿入されることで、カードIFを介してボディ制御部310と電気的に接続される。
【0031】
ダイヤル317は、撮像装置100による撮像モード(プログラムオート、シャッタースピード優先オート、絞り優先オート、マニュアルなど)を設定可能な操作デバイスである。レリーズボタン318は、押下によりメカ先幕320およびメカ後幕203を開閉するためのボタンである。背面モニタ319は、撮像素子201からの出力によりスルー画を表示したり、メモリ312やメモリカード316に記憶された画像データに基づいて画像を表示したりする。背面モニタ319には、タッチパネルが搭載されていてもよい。この場合、ユーザはタッチパネルを操作することにより、オートフォーカスの種類の選択、露出補正、ISO感度、手振れ補正のON/OFFなど各種設定が可能となる。
【0032】
メカ先幕320は、メカ後幕203と同一構造であり、走行方向Dに羽根が下がることで、レンズ鏡筒101からの被写体光を遮光する。ボディ制御部310には、制御対象となる先幕が電子先幕202およびメカ先幕320のいずれの先幕であるかが設定されている。当該設定は、ユーザ操作により変更可能である。なお、先幕として電子先幕202のみを使用する撮像装置100については、メカ先幕320は不要である。シャッター駆動部321は、ボディ制御部310からの開閉指示により、メカ先幕320およびメカ後幕203を開閉駆動する。
【0033】
位置検出部322は、光センサまたはホール素子を用いた磁気センサによって構成され、Z軸と垂直な面(XY平面)に沿って移動する撮像素子201の位置を検出する。位置検出部は、撮像素子201の位置を所定の周期で検出し、撮像素子201の位置に関する情報(位置情報)を繰り返し生成する。位置検出部322は、生成した位置情報を防振制御部324に順次出力する。この位置情報には、X軸方向における撮像素子201の位置を示す情報や、Y軸方向における撮像素子201の位置を示す情報や、撮像素子201のZ軸を中心としたロール角が含まれる。
【0034】
振れ検出部323は、角速度センサ(ジャイロセンサ)または加速度センサによって構成され、撮像装置100を持つユーザの手振れなどによって撮像装置100に加えられた振れを検出する。振れ検出部323は、撮像装置100の振れ量に応じた振れ信号を生成し、生成した振れ信号を防振機構に出力する。
【0035】
防振機構324は、振れ検出部323から出力された振れ信号に基づき、撮像装置100の振れに起因する被写体像の像振れを打ち消すように振れ補正を行う。防振機構324は、振れ信号を用いて撮像装置100の振れ量を算出し、算出した撮像装置100の振れ量に基づいて、この振れ量による像振れを打ち消すための撮像素子201の移動量を算出する。
【0036】
撮像素子201の移動量は、現在の撮像素子201の位置から像振れを打ち消すために撮像素子201を移動させるための、X軸方向の移動量、Y軸方向の移動量、およびZ軸を中心としたロール角θが含まれる。
【0037】
防振機構324は、算出した移動量に従って撮像素子201の駆動制御を行い、撮像素子201の位置を調整する。防振機構324は、撮像装置100の振れ量に応じて、Z軸に垂直なXY平面において、撮像素子201を上下左右方向への移動およびロール方向への回転をさせる。このように、撮像装置100では、撮像装置100の振れ量に応じて撮像素子201の位置が調整されることで、被写体像の像振れが補正される。
【0038】
また、防振機構324は、位置検出部322から出力される撮像素子201の位置情報を、防振機構324の内部のメモリ(ボディ制御部310のメモリ312でもよい)に記憶させる。防振機構324の内部のメモリには、周期的に検出された複数の位置情報が記憶される。防振機構324は、内部のメモリに記憶された複数の位置情報を、所定の周期で読み出してボディ制御部310に出力する。以上のように、防振機構324は、振れ検出部323からの振れ信号、および位置検出部322からの位置情報を共に用いて撮像素子201の移動量(たとえば、ロール方向の回転を打ち消す回転量)を決定し、決定した撮像素子201の移動量に基づいて撮像素子201の位置を制御する。
【0039】
<撮像素子201のロール方向の回転補正処理手順例>
図4は、ボディ制御部310による撮像素子201のロール方向の回転補正処理手順例1を示すフローチャートである。ボディ制御部310は、制御対象の先幕および後幕の組み合わせが電子先幕202でかつメカ後幕203(すなわち、第3撮像)であるか否かを判断する(ステップS401)。第3撮像でない場合(ステップS401:No)、制御対象は、電子先幕202でかつ電子後幕(第1撮像)、または、メカ先幕320でかつメカ後幕203(第2撮像)である。そして、ボディ制御部310は、振れ検出部323によってロール方向の回転振れが検出されたか否かを判断する(ステップS402)。ロール方向の回転振れが検出されなかった場合(ステップS402:No)、ステップS401に戻る。
【0040】
一方、ロール方向の回転振れが検出された場合(ステップS402:Yes)、ボディ制御部310は、回転振れを打ち消す方向に防振機構324を駆動制御して(ステップS403)、ステップS401に戻る。
【0041】
また、ステップS401において、制御対象の先幕が電子先幕202である場合(ステップS401:Yes)、ボディ制御部310は、振れ検出部323によってロール方向の回転振れが検出されたか否かを判断する(ステップS404)。ロール方向の回転振れが検出されなかった場合(ステップS404:No)、ステップS401に戻る。
【0042】
一方、ロール方向の回転振れが検出された場合(ステップS404:Yes)、ボディ制御部310は、防振機構324を駆動制御して、ロール方向の回転角θを一定の上限回転角で制限する(ステップS405)。そして、ボディ制御部310は、当該制限した回転角θfullを上限としてロール方向の回転振れを打ち消す方向に防振機構324を駆動制御して(ステップS406)、ステップS401に戻る。
【0043】
これにより、メカ後幕203の羽根204の羽根元204a側と羽根先204b側との露光差が抑制され、露出性能を良好に保つことができる。
【0044】
図5は、撮像素子201のロール方向の回転角θと露光差の絶対値との特性を示すグラフ500である。グラフ500の横軸がロール方向の回転角θ、縦軸が露光差の絶対値である。露光差とは、メカ後幕203の羽根204の羽根元204a側と羽根先204b側との露光面積の差である。
【0045】
たとえば、露光スリット形状200が、図2の(b)または(c)のような露光スリット形状200b,200cになると、露光差の絶対値が大きくなる。露光差の絶対値が大きいほど、撮像素子201において本来露光されるべき領域に露光されなかったり、遮光されるべき領域に露光されたりして、露光ムラが発生する。
【0046】
グラフ500中、A~Dは、露光時間ごとの撮像素子201のロール方向の回転角θと露光差の絶対値との特性を示す。ボディ制御部310は、いずれの特性A~Dにおいても、撮像素子201のロール方向の回転により露光量が一定値limitとなるように、ロール方向の回転角θを露光時間に応じて上限回転角θA~θD(θA<θB<θC<θD)で可変制御する。θfull(>θD)は、撮像素子201のロール方向の最大回転角である。
【0047】
露光時間が短秒であるほど露光スリット形状200の面積自体が小さくなり、露出に対するロール角θの影響が大きくなる。このため、露光時間が短秒であるほど、上限回転角θA~θD(θA~θDを区別しない場合は、θXと表記)は小さく設定される。なお、グラフ500に関するデータは、たとえば、メモリ312に記憶され、プロセッサ311により参照可能である。
【0048】
図6は、ボディ制御部310による撮像素子201のロール方向の回転補正処理手順例2を示すフローチャートである。回転補正処理手順例2では、図5に示したように露光時間に応じて上限回転角θXで可変制御する例である。なお、図4と同一処理には同一ステップ番号を付し、その説明を省略する。
【0049】
ステップS401において、制御対象が電子先幕202でかつメカ後幕203(第3撮像)である場合(ステップS401:Yes)、ボディ制御部310は、振れ検出部323によるロール方向の回転振れの検出(ステップS404)に先立って、現在設定されている露光時間を読み出したり、露光時間を算出したりすることにより、露光時間を取得する(ステップS601)。そして、ボディ制御部310は、取得した露光時間に対応する上限回転角θXを設定する(ステップS602)。たとえば、図5の特性Aに示したように、露光時間が1/8000秒である場合、上限回転角はθAに設定される。
【0050】
これにより、ステップS405では、ボディ制御部310は、ロール方向の回転角θを、設定された上限回転角θXで制限し、上限回転角θXを上限として回転振れを打ち消す方向に防振機構324を駆動制御する(ステップS406)。
【0051】
このように、露光時間が短秒であるほど、撮像素子201のロール方向の回転を規制する上限回転角θXが小さくなるように設定されるため、メカ後幕203の羽根204の羽根元204a側と羽根先204b側との露光差を露光時間に応じて縮小して露光ムラを抑制する。これにより、露出性能を良好に維持することができる。
【0052】
以上説明したように、第一実施形態によれば、撮像装置100は、撮像素子201のロール角θに上限を設定する。これにより、撮像装置100は、当該上限を超えて撮像素子201が回転しないようにし、手振れなどにより撮像装置100に回転振れが発生した場合は、この回転振れを打ち消す方向に撮像素子201を回転させる。このようにして、電子先幕202とメカ後幕203との間に形成される撮像素子201の露光スリット形状200において、メカ後幕203の羽根元204a側と羽根先204b側との露光差を抑制し、露出性能を良好に維持することができる。
【0053】
[第二実施形態]
つぎに、第二実施形態について説明する。第二実施形態では、第一実施形態との相違点を中心に説明するため、第一実施形態と同一内容には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0054】
図7は、第二実施形態にかかる撮像装置100内における露光スリット形状の一例を示す説明図である。図7の(a)に示すように、メカ後幕203の羽根204の長手方向Hは、行方向Sに対し平行であることが理想である。したがって、露光スリット形状700aは長方形となり、羽根元204a側と羽根先204b側とで露光差が生じない。
【0055】
しかし、図7の(b)に示すように、製造時の状態またはメカ後幕203の走行方向Dへの走行による経年的に生じたガタにより、メカ後幕203が傾き、撮像素子201の行方向Sが羽根204の長手方向Hと平行にならない。このときの長手方向Hと行方向Sとのなす傾き角を+φとする。したがって、露光スリット形状700bは台形となり、羽根元204a側で露出オーバー、羽根先204b側で露光アンダーになりやすくなり、撮像素子201から得られる画像信号によって生成される画像上に露光むらが発生する可能性が高くなる。
【0056】
同様に、図7の(c)に示すように、製造時の状態またはメカ後幕203の走行方向Dへの走行による経年的に生じたガタにより、メカ後幕203が傾き、撮像素子201の行方向Sが羽根204の長手方向Hと平行にならない。このときの長手方向Hと行方向Sとのなす傾き角を-φとする。したがって、露光スリット形状700cは台形となり、羽根元204a側で露出アンダー、羽根先204b側で露光オーバーになりやすくなり、撮像素子201から得られる画像信号によって生成される画像上に露光むらが発生する可能性が高くなる。
【0057】
そこで、第二実施形態では、撮像装置100は、メカ後幕203の行方向Sに対する傾き角φを測定した上で、羽根204の長手方向Hと行方向Sとが平行になるように、撮像素子201を傾き角φ分防振機構324により回転制御する。撮像装置100は、この回転制御後の撮像素子201を原点とする。これにより、羽根元204a側と羽根先204b側との露光差を抑制し、露出性能を良好に維持する。なお、手振れが発生した場合は、撮像装置100は、回転制御後の手振れによる撮像素子201のロール方向の回転を打ち消すように防振制御する。
【0058】
<撮像装置100の構成例>
図8は、第二実施形態にかかる撮像装置100の構成例を示す説明図である。第二実施形態では、第一実施形態にかかる撮像装置100の構成のほか、カメラボディ102は、走行するメカ後幕203の通過を検出する検出部の一例として、複数のフォトインタラプタP1,P2(P1、P2を区別しない場合は、単にPと表記する)を有する。フォトインタラプタPは、メカ後幕203の走行時の羽根元204a側および羽根先204b側のそれぞれを挟むように、対向しあう投受光素子と投受光素子からの光を投受光素子に反射する反射板とが設けられる。フォトインタラプタPは、対向しあう投光素子および受光素子でもよい。
【0059】
メカ後幕203が投受光素子と反射板との間を通過していない場合は、投光素子からの光を受光素子が受光することで、ボディ制御部310は、メカ後幕203の非通過を検出する。メカ後幕203が投受光素子と反射板との間を通過した場合は、投受光素子からの光がメカ後幕203で遮られて反射板で反射されないため、ボディ制御部310は、メカ後幕203の通過を検出する。
【0060】
保持機構800は、防振機構324に設けられる。保持機構800は、たとえば、カム機構およびバネを有し、カム機構により撮像素子201がロール方向に回転しないように撮像素子201を固定する。カム機構の固定または固定解除の制御は、ボディ制御部310によって実行される。バネは撮像素子201に接続され、カム機構により撮像素子201の固定が解除されても撮像素子201の脱落を防止する。
【0061】
また、ボディ制御部310は、手振れなどの撮像装置100に与えられる振れに応じて撮像素子201を駆動させる第1モードと撮像素子201を駆動させない第2モードと設定可能である。たとえば、手振れ補正をONにすることにより第1モードに設定され、手振れ補正をOFFにすることにより第2モードに設定される。第1モードでは、保持機構800は、カム機構により撮像素子201がロール方向に回転するように撮像素子201の固定を解除する。第2モードでは、保持機構800は、カム機構により撮像素子201がロール方向に回転しないように撮像素子201を固定する。
【0062】
<防振制御処理>
図9は、第二実施形態にかかる防振制御処理手順例1を示すフローチャートである。ボディ制御部310は、たとえば、ユーザ操作により、手振れ補正がONになるのを待ち受ける(ステップS901:No)。ONになった場合(ステップS901:Yes)、ボディ制御部310は、保持機構800による撮像素子201のロール方向の回転を規制するための撮像素子201の固定を解除する(ステップS902)。これにより、撮像素子201は、防振機構324によってロール方向に回転可能になる。
【0063】
つぎに、ボディ制御部310は、メカ後幕203の傾き角φをメモリ312から読み込む(ステップS903)。そして、ボディ制御部310は、ロール方向の回転振れ補正の原点をステップS903で読み込んだ傾き角φに設定して撮像素子201を傾き角φ分ロール方向に回転させ、当該回転後の原点を基準として撮像素子201を防振制御する(ステップS904)。具体的には、たとえば、撮像素子201の回転角度の上限値が制限される場合には、撮像素子201の当該回転後の原点を基準として、回転方向の+側と-側とで、同じ量の制限範囲が設定される。
【0064】
これにより、図7の(a)に示すように、メカ後幕203の羽根204の長手方向Hは、行方向Sに対し平行になり、露光スリット形状700aは長方形となり、羽根元204a側と羽根先204b側とで露光差が生じない。そして、手振れなどにより撮像装置100に回転振れが発生すると、この回転振れを打ち消すように、防振機構324は制限範囲内で撮像素子201を回転させる。
【0065】
この防振制御中に、ボディ制御部310は、手振れ補正がONであるか否かを判断する(ステップS905)。手振れ補正がONである場合(ステップS905:Yes)、ステップS904に戻る。一方、手振れ補正がOFFになった場合(ステップS905:No)、ボディ制御部310は、撮像素子201を原点に戻すよう回転させ、保持機構800による撮像素子201のロール方向の回転を規制するために撮像素子201を固定する(ステップS906)。そして、ステップS901に戻る。
【0066】
これにより、手振れ補正がONの状態において、撮像素子201とメカ後幕203とのロール方向の角度ずれを調整することができ、図7の(a)に示すような露光スリット形状700aを維持することができ、羽根元204a側と羽根先204b側とでの露光差の低減化を図ることができる。
【0067】
図10は、図9に示した傾き角φの更新処理手順例を示すフローチャートである。ボディ制御部310は、メカ後幕203の傾き角φをメモリから読み込む(ステップS1001)。つぎに、ボディ制御部310は、たとえば、撮像時におけるメカ後幕203の走行をフォトインタラプタPにより検出する(ステップS1002)。そして、ボディ制御部310は、メカ後幕203の最新の傾き角φnewを算出する(ステップS1003)。最新の傾き角φnewについては、図11および図12で後述する。
【0068】
ボディ制御部310は、ステップS1001で読み込んだ傾き角φと最新の傾き角φnewとが一致するか否かを判定する(ステップS1004)。一致する場合(ステップS1005:Yes)、一連の処理を終了する。不一致である場合(ステップS1005:No)、ボディ制御部310は、傾き角φを最新の傾き角φnewに更新してメモリ312に格納する(ステップS1005)。これにより、一連の処理を終了する。
【0069】
図11は、撮像素子201とメカ後幕203との間に傾き角φ分の角度ずれがある場合のメカ後幕203の走行例を示す説明図である。ボディ制御部310は、メカ後幕203の走行を、フォトインタラプタP(羽根元204a側をP1、羽根先204b側をP2とする)により検出する。なお、フォトインタラプタP1、P2は、X方向において同じ高さに設置されている。
【0070】
また、図12は、図11に示したメカ後幕203の走行例におけるフォトインタラプタのタイミングチャートである。以下、図11および図12を用いて、メカ後幕203の走行例について説明する。
【0071】
図11では、(A)~(C)の順にメカ後幕203の走行の時系列を示す。図11の(A)は時刻t0でのメカ後幕203の状態を示す。時刻t0では、撮像素子201の行方向Sが羽根204の長手方向Hと平行ではなく、メカ後幕203が傾き角φ分傾いた状態となっている。時刻t0では、フォトインタラプタP1、P2はON(反射光を受光中)であり、メカ後幕203の走行が開始する。
【0072】
図11の(B)は、時刻t1(>t0)でのメカ後幕203の走行状態を示す。メカ後幕203の羽根が下降するが、撮像素子201の行方向Sが羽根204の長手方向Hと平行ではないため、羽根元204a側のフォトインタラプタP1のみが遮光されてOFFになる。
【0073】
図11の(C)は、時刻t2(>t1)でのメカ後幕203の走行状態を示す。メカ後幕203の羽根がさらに下降し、羽根元204a側のフォトインタラプタP1だけでなく、羽根先204b側のフォトインタラプタP2も遮光されてOFFになる。
【0074】
ここで、最新の傾き角φnewの算出方法を説明する。今回のメカ後幕203の走行時において羽根元204a側のフォトインタラプタP1がONからOFFに変化した時刻t1から羽根先204b側のフォトインタラプタP2がONからOFFに変化した時刻t2までの時間間隔をΔt21newとする。
【0075】
また、前回のメカ後幕203の走行時における時刻t1から時刻t2までの時間間隔をΔt21とし、前回のメカ後幕203の走行で更新された傾き角をφとすると、今回のメカ後幕203の走行時における傾き角φnewは、下記式(1)によってあらわされる。ボディ制御部310は、ステップS1003で下記式(1)を計算する。
【0076】
φnew=(Δt21new/Δt21)×φ・・・(1)
【0077】
これにより、ボディ制御部310は、メカ後幕203が走行する都度、傾き角φを最新の傾き角φnewに更新することができ、羽根元204a側と羽根先204b側との露光差を抑制し、露出性能を良好に維持することができる。
【0078】
図9では、ボディ制御部310は、手振れ補正のONによりメカ後幕203の傾き角φを打ち消すように撮像素子201のロール方向の回転を補正したが、電源OFFやスリープ状態では、撮像素子201は、ロール方向の回転防止のため保持機構800により固定されている方がよい。このため、ボディ制御部310は、電源のONやスリープモードの解除を契機として、保持機構800による撮像素子201の固定を解除する。以下、防振制御処理手順例2として説明する。
【0079】
図13は、第二実施形態にかかる防振制御処理手順例2を示すフローチャートである。ボディ制御部310は、電源ONまたはスリープ状態の解除を待ち受ける(ステップS1301:No)。電源ONまたはスリープ状態の解除が検出された場合(ステップS1301:Yes)、ボディ制御部310は、保持機構800による撮像素子201のロール方向の回転を規制するための撮像素子201の固定を解除する(ステップS1302)。これにより、撮像素子201は、防振機構324によってロール方向への回転が可能になる。
【0080】
つぎに、ボディ制御部310は、傾き角φをメモリ312から読み込む(ステップS1303)。そして、ボディ制御部310は、たとえば、ユーザ操作により、手振れ補正がONになるのを待ち受ける(ステップS1304:No)。ONになった場合(ステップS1304:Yes)、ロール方向の回転振れ補正の原点をステップS903で読み込んだ傾き角φに設定して撮像素子201を傾き角φ分ロール方向に回転させ、当該回転後の原点を基準として防振制御する(ステップS1305)。
【0081】
これにより、図7の(a)に示すように、メカ後幕203の羽根204の長手方向Hは、行方向Sに対し平行になり、露光スリット形状700aは長方形となり、羽根元204a側と羽根先204b側とで露光差が生じない。そして、この状態で、手振れにより撮像素子201がロール方向に回転しても、防振機構324は当該回転を打ち消す方向に回転する。
【0082】
この防振制御中に、ボディ制御部310は、手振れ補正がONであるか否かを判断する(ステップS1306)。手振れ補正がONである場合(ステップS1306:Yes)、ステップS1305に戻る。一方、手振れ補正がOFFになった場合(ステップS1306:No)、ボディ制御部310は、撮像素子201の回転角を傾き角φに設定し、傾き角φとなるように回転制御する(ステップS1307)。
【0083】
このあと、ボディ制御部310は、電源OFFまたはスリープモード突入を検出していなければ(ステップS1308:No)、ステップS1304に戻る。一方、ボディ制御部310は、電源OFFまたはスリープモード突入を検出した場合(ステップS1308:Yes)、ボディ制御部310は、撮像素子201の回転角を傾き角φの補正前の原点に戻し、保持機構800による撮像素子201のロール方向の回転を規制するために撮像素子201を固定する(ステップS1309)。そして、ステップS1301に戻る。
【0084】
これにより、手振れ補正がONの状態において、撮像素子201とメカ後幕203とのロール方向の角度ずれを調整することができる。したがって、図7の(a)に示すような露光スリット形状700aを維持することができ、羽根元204a側と羽根先204b側とでの露光差の低減化を図ることができる。
【0085】
また、撮像装置100が電源OFFまたはスリープ状態の場合は、保持機構800により撮像素子201のロール方向の回転角が傾き角φの補正前の原点で固定されるため、撮像素子201の補正前の原点が高精度に維持される。したがって、原点を傾き角φで補正した場合に、図7の(b)、(c)の状態になることを抑制することができる。
【0086】
以上説明したように、第二実施形態によれば、メカ後幕の走行やメカ後幕の個体差により、メカ後幕203の羽根204の長手方向Hが、撮像素子201の画素の行方向Sと平行でない状態であっても、撮像装置100は、その傾き角φに基づいて、防振制御していない状態では、メカ後幕203の羽根204の長手方向Hが、撮像素子201の画素の行方向Sと平行になるように、撮像素子201をロール方向に回転させて原点位置として固定する。
【0087】
これにより、電子先幕202とメカ後幕203との間に形成される撮像素子201の露光スリット形状700において、メカ後幕203の羽根元204a側と羽根先204b側との露光差を抑制し、露出性能を良好に維持することができる。また、撮像装置100の振れが検出された場合も原点位置を基準にして振れによる回転を打ち消すように撮像素子201を回転させる。これにより、撮像装置100の振れが生じた場合でも、メカ後幕203の羽根元204a側と羽根先204b側との露光差を抑制し、露出性能を良好に維持することができる。
【0088】
なお、上述した第一実施形態および第二実施形態では、電子先幕202とメカ後幕203とを有する撮像装置100について説明したが、当該撮像装置100は、静止画のみならず動画像の撮像が可能なビデオカメラでもよい。また、ボディ制御部310としてプロセッサ311を機能させる制御プログラムは、あらかじめメモリ312に実装されていてもよく、カードIF313を介してメモリカード316から導入されてもよい。また、制御プログラムは、ボディ制御部310内の図示しない通信インタフェースを介して導入されてもよい。
【0089】
上述した第一実施形態では、電子先幕202とメカ後幕203とによる撮像が設定されているときの撮像素子201のロール方向の最大回転角を、電子先幕202および電子後幕による撮影、メカ先幕320およびメカ後幕203による撮影が設定されている場合の最大回転角よりも小さい値に設定するとした。しかし、電子先幕202とメカ後幕203とによる撮像だけでなく、先幕と後幕とのうち一方がブレ補正と共に動き、他方がブレ補正と共に動かない撮影の場合には、撮像素子201のロール方向の最大回転角をより小さい値に設定すればよい。
【0090】
なお、本発明は上記の内容に限定されるものではなく、これらを任意に組み合わせたものであってもよい。また、本発明の技術的思想の範囲で考えられるその他の態様も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0091】
100 撮像装置、101 レンズ鏡筒、102 カメラボディ、200 露光スリット形状、201 撮像素子、202 電子先幕、203 メカ後幕、204 羽根、204a 羽根元、204b 羽根先、310 ボディ制御部、311 プロセッサ、312 メモリ、320 メカ先幕、321 シャッター駆動部、322 位置検出部、323 振れ検出部、324 防振機構、700 露光スリット形状、800 保持機構、P フォトインタラプタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13