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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20241008BHJP
   B41J 2/21 20060101ALI20241008BHJP
   B41J 2/17 20060101ALI20241008BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B41J2/165 209
B41J2/21
B41J2/165 207
B41J2/17 207
B41J2/01 305
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020138640
(22)【出願日】2020-08-19
(65)【公開番号】P2022034779
(43)【公開日】2022-03-04
【審査請求日】2023-06-05
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】110004381
【氏名又は名称】弁理士法人ITOH
(72)【発明者】
【氏名】山中 邦裕
【審査官】佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-025743(JP,A)
【文献】特開2017-185824(JP,A)
【文献】特開2017-001242(JP,A)
【文献】特開2004-291483(JP,A)
【文献】特開2015-085557(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0240388(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/165
B41J 2/21
B41J 2/17
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データに基づき、記録媒体に液体で画像を形成する液体吐出装置であって、
搬送される複数の前記記録媒体同士の間に、前記液体を受ける液体受け部と、
前記記録媒体に前記画像を形成した際に余白となる領域を、前記画像データに基づいて特定する領域特定部と、
前記領域に形成されるパターン画像の前記画像データを、前記領域の大きさと、前記液体の種類と、に基づいて生成するパターン画像生成部と、
前記パターン画像におけるパターンの粗密を、前記領域の大きさと、前記液体の種類と、に基づいて決定する密度決定部と、
前記領域における液体による液滴数を、前記領域の大きさと、前記液体の種類と、に基づいて決定する液滴数決定部と、を備え
前記液滴数決定部は、前記液体を滴下する液滴数と、前記領域における前記液滴数と、に基づいて前記液体受け部への液滴数を決定する
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記パターン画像生成部は、前記液体の種類ごとで、前記パターン画像におけるパターンの大きさを決定する
ことを特徴とする請求項に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
記液体吐出装置は、前記領域、又は前記液体受け部の少なくとも一方に、前記パターン画像を形成する
ことを特徴とする請求項に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記液体の吐出速度は、前記領域に前記パターン画像を形成する際と、前記領域以外に前記画像を形成する際とで異なっている
ことを特徴とする請求項乃至の何れか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記領域に前記パターン画像を形成する際の前記液体の吐出速度は、前記領域以外に前記画像を形成する際の前記液体の吐出速度より速い
ことを特徴とする請求項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記液体を吐出させるための駆動波形は、前記領域に前記パターン画像を形成する際と、前記領域以外に前記画像を形成する際とで異なっている
ことを特徴とする請求項乃至の何れか1項に記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体吐出装に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送される記録媒体同士の間(頁間)等の画像を形成しない領域に、液滴等の色材を排出する画像形成装置が知られている。
【0003】
また画像形成速度の向上を目的とし、記録媒体に画像を形成した際に余白となる領域を所定のパターンデータに基づいて特定し、この領域に色材を排出することで、画像形成の中断をなくす構成が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら従来の構成では、記録媒体に画像を形成した際に余白となる領域に排出する色材の量を色材の種類ごとで適正化できない場合がある。
【0005】
本発明は、記録媒体に画像を形成した際に余白となる領域に排出する色材の量を色材の種類ごとで適正化することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る液体吐出装置は、画像データに基づき、記録媒体に液体で画像を形成する液体吐出装置であって、搬送される複数の前記記録媒体同士の間に、前記液体を受ける液体受け部と、前記記録媒体に前記画像を形成した際に余白となる領域を、前記画像データに基づいて特定する領域特定部と、前記領域に形成されるパターン画像の前記画像データを、前記領域の大きさと、前記液体の種類と、に基づいて生成するパターン画像生成部と、前記パターン画像におけるパターンの粗密を、前記領域の大きさと、前記液体の種類と、に基づいて決定する密度決定部と、前記領域における液体による液滴数を、前記領域の大きさと、前記液体の種類と、に基づいて決定する液滴数決定部と、を備え、前記液滴数決定部は、前記液体を滴下する液滴数と、前記領域における前記液滴数と、に基づいて前記液体受け部への液滴数を決定する
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、記録媒体に画像を形成した際に余白となる領域に排出する色材の量を色材の種類ごとで適正化できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る画像形成装置の構成例を示す図である。
図2】実施形態に係る作像ユニットの構成例を示す図である。
図3】実施形態に係る液体吐出ユニットの構成例を示す平面図である。
図4】スポンジの配置例を説明する図である。
図5】実施形態に係る画像形成装置の構成例のブロック図である。
図6】実施形態に係る制御部の機能構成例のブロック図である。
図7】実施形態に係る制御部による処理例のフローチャートである。
図8】余白領域及びフラッシング領域の特定結果例を示す図である。
図9】色ごとのフラッシング領域の決定結果例を示す図である。
図10】パターン画像の画像データ例を示す図である。
図11】液体ごとのパターン画像の画像データ例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一の構成部には同一符号を付し、重複した説明を適宜省略する。
【0010】
また以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための画像形成装置、液体吐出装置、制御方法及びプログラムを例示するものであって、本発明を以下に示す実施形態に限定するものではない。以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置、パラメータの値等は特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張している場合がある。
【0011】
実施形態の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形はいずれも同義語とする。また実施形態において、液体吐出装置は、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて液体を吐出させる装置である。
【0012】
この液体吐出装置は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置等も含むことができる。例えば液体吐出装置として、インク等の液体を吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置等が挙げられる。
【0013】
上記の液体が付着可能なものとは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するもの等を意味し、記録媒体の一例である。また、液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、等を含む溶液、懸濁液、エマルジョン等であり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0014】
また、液体吐出装置は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置等が含まれる。
【0015】
液体吐出ユニットとは、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体である。例えば、液体吐出ユニットは、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたもの等が含まれる。
【0016】
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合等で互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていてもよい。
【0017】
例えば、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。また、チューブ等で互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
【0018】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。
【0019】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
【0020】
また、液体吐出ユニットとして、ヘッドタンク若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。このチューブを介して、液体貯留源の液体が液体吐出ヘッドに供給される。
【0021】
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものとする。
【0022】
液体吐出ヘッドとは、ノズルから液体を吐出・噴射する機能部品である。液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体等の電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータ等を使用するものが含まれる。
【0023】
以下、所定サイズに切り出されたシート材を記録媒体の一例とし、オンデマンドのライン走査型インクジェット方式の画像形成装置を液体吐出装置の一例として実施形態を説明する。
【0024】
シート材の具体例には、普通紙や、表面に所定のコーティングが施されたコート紙、フィルム等が挙げられる。また、液体は色材の一例である。
【0025】
[第1の実施形態]
<画像形成装置1の構成例>
図1は、実施形態に係る画像形成装置1の構成の一例を示す図である。図1に示すように、画像形成装置1は、給紙ユニット10と、先塗ユニット20と、作像ユニット30と、乾燥冷却ユニット40と、反転ユニット50と、排紙ユニット60とを備える。画像形成装置1は、給紙ユニット10から給紙されるシート状部材であるシート材に対し、先塗ユニット20によりアンダーコート液を予め塗布する。但し、シート材の種類によっては、アンダーコート液を塗布せず、シート材を作像ユニット30に搬送してもよい。
【0026】
作像ユニット30は、先塗ユニット20から搬送されてくるシート材を搬送ドラム31に吸着させ、搬送ドラム31の回転により搬送しながら液体吐出部32から吐出される液体をシート材に付与して画像形成を行う。液体が付与されたシート材は、乾燥冷却ユニット40に送られる。
【0027】
乾燥冷却ユニット40は、作像ユニット30でシート材上に付与された液体を乾燥させるための乾燥機構部と、作像ユニット30から搬送されてくるシート材を吸引した状態で搬送する(吸引搬送する)吸引搬送機構部とを備える。
【0028】
作像ユニット30から搬送されてきたシート材は、吸引搬送機構部に受け取られた後、乾燥機構部を通過するように搬送され、反転ユニット50へ受け渡される。乾燥機構部を通過するとき、シート材上の液体には乾燥処理が施される。これにより液体中の水分等の液分が蒸発し、シート材上の液体中に含まれる着色剤が定着し、また、シート材のカールが抑制される。また、シート材の種類によっては、シート材が高温になるため、乾燥冷却ユニット40は、冷却機構部を備えることもできる。冷却機構部は、乾燥機構部による乾燥処理により加熱されたシート材を冷却することができる。
【0029】
反転ユニット50は、作像ユニット30で液体が付与された面とは反対側の面(裏面)に液体を付与させるために、シート材をスイッチバック反転させる。そして、裏面が液体吐出ユニット33に対向する状態で、作像ユニット30に搬送される。作像ユニット30で裏面に液体が付与されたシート材は、乾燥冷却ユニット40で乾燥、及び/又は冷却され、反転ユニット50を通って排紙ユニット60に送られる。
【0030】
排紙ユニット60は、複数のシート材が積載される搬出トレイを備える。反転ユニット50から搬送されてくるシート材は、搬出トレイ上に順次積み重ねられて保持される。なお、画像形成装置1には、乾燥冷却ユニット40と反転ユニット50との間に複数枚のシートを綴じる処理を行う綴じ処理ユニット等を設けてもよい。
【0031】
<作像ユニット30の構成例>
図2は、作像ユニット30の構成の一例を示す図である。なお、図2に示したX方向は搬送ドラム31の軸方向を表し、Y方向は搬送ドラム31の周方向を表し、Z方向は搬送ドラム31の半径方向を表している。
【0032】
図2に示すように、作像ユニット30は、シート材Pを外周面に担持して搬送する回転部材の一例としての搬送ドラム31と、搬送ドラム31に担持されたシート材Pに向けて液体を吐出する液体吐出部32とを備える。また、作像ユニット30は、送り込まれたシート材Pを受け取って搬送ドラム31へ渡す渡し胴34と、搬送ドラム31によって搬送されたシート材を乾燥冷却ユニット40へ受け渡す受け渡し胴35とを備える。
【0033】
搬送ドラム31と、渡し胴34と、受け渡し胴35は、ギア等で連結され駆動することができる。
【0034】
先塗ユニット20によりアンダーコート液が塗布され、作像ユニット30へ送り出されたシート材Pは、搬送方向11の方向に進む。そして、その先端がシート材先端検知センサ37を通過したタイミングと搬送ドラム31の回転角度を検出するエンコーダ信号とに基づいて調整された所定のタイミングで、レジストローラ対36が駆動することにより、シート材Pは受け渡し胴35へ送り出される。
【0035】
シート材Pは、渡し胴34の表面に設けられたメカニカルに開閉可能なシートグリッパ(図示を省略)によって先端が把持され、渡し胴34の矢印12に示す方向への回転に伴って搬送される。渡し胴34より搬送されたシート材Pは、搬送ドラム31との対向位置で搬送ドラム31へ受け渡される。
【0036】
搬送ドラム31の表面にもシートグリッパ(図示を省略)が設けられており、シート材Pの先端がシートグリッパによって把持される。搬送ドラム31の表面には、複数の吸引孔が分散して形成されている。
【0037】
搬送ドラム31の内部に設けられた吸着部である吸着装置によって搬送ドラム31の吸引孔から内側へ向かう吸い込み気流が発生されている。渡し胴34から搬送ドラム31へ受け渡されたシート材Pは、シートグリッパによって先端が把持されるとともに、吸着装置による吸い込み気流によって搬送ドラム31上に吸着され、搬送ドラム31の回転方向13への回転に伴って搬送される。
【0038】
液体吐出部32は、液体吐出ユニット33(33A~33E)を備えている。例えば、液体吐出ユニット33Aはシアン(C)の液体を、液体吐出ユニット33Bはマゼンタ(M)の液体を、液体吐出ユニット33Cはイエロー(Y)の液体を、液体吐出ユニット33Dはブラック(K)の液体を、それぞれ吐出する。また、液体吐出ユニット33Eは、YMCKの何れか、或いは、白色、金色(銀色)等の特殊な液体の吐出に使用される。さらに、表面コート液等の処理液を吐出する吐出ユニットを設けることもできる。
【0039】
液体吐出ユニット33は、図3に示すように、複数のノズルを配列したノズル列101を有する複数の液体吐出ヘッド(以下、単に「ヘッド」という。)100をベース部材52に配置したフルライン型ヘッド等である。
【0040】
液体吐出部32の各液体吐出ユニット33は、画像データに応じた駆動信号によりそれぞれ液体吐出動作が制御される。搬送ドラム31に担持されたシート材Pが液体吐出部32との対向領域を通過する際に液体吐出ユニット33から各色の液体が吐出され、シート材Pに付与されて、画像データに応じた画像が形成される。ここで、画像データとは、画像を形成するためのデータをいう。実施形態では、画像データとして、シート材Pに形成する画像の画像データと、フラッシング領域に形成するパターン画像の画像データ等が含まれる。
【0041】
液体が付与されたシート材Pは受け渡し胴35に受け渡され、受け渡し胴35の回転に伴って搬送され、乾燥冷却ユニット40へ送られる。
【0042】
また図2に示すように、搬送ドラム31には、3箇所にスポンジ39(39a~39c)が設置されている。スポンジ39は、フラッシングした液体を受ける液体受け部の一例であり、搬送ドラム31により搬送される複数のシート材P同士の間に設けられている。液体吐出ユニット33は、このスポンジ39に向けてフラッシングを行うことができる。
【0043】
ここでフラッシングとは、画像形成に寄与しない吐出をいう。フラッシングという用語は、空吐出、予備吐出、パージ、ダミージェット等の用語に置き換えることもできる。また液体受け部は空吐出受けと称することもできる。フラッシングを行うことでヘッド内部の増粘した液体等を排出でき、これにより、不吐出ノズル等の吐出異常がない良好な状態にヘッドを維持可能になっている。ここで、フラッシングのための液体の吐出は、「色材の排出」の一例である。
【0044】
スポンジ39は、フラッシングされた液体を受けて吸収し、廃液体としてスポンジ内に貯留する。スポンジ39が廃液体を十分受けた状態(満杯状態)になると、新品のスポンジに交換される。
【0045】
スポンジ39は、搬送ドラム31の表面近傍に設けられたX方向に貫通する溝にそれぞれ挿入され、搬送ドラム31に装着されている。スポンジ39は正のX方向に引き出すことで搬送ドラム31から取り外すことができ、負のX方向に押し入れることで、搬送ドラム31に装着される。なお、液体受け部はスポンジ39に限定されるものではなく、液体容器等の部材であってもよい。
【0046】
図4はスポンジ39の配置の一例をより詳細に説明する図である。図4に示すように、搬送ドラム31の外周面には3つのシート材P1,P2,P3が吸着され、搬送ドラム31の回転方向13への回転に伴って搬送される。図4に示すように、スポンジ39a,39b,39cは、シート材P1,P2,P3のそれぞれの間に配置される。
【0047】
先端部P1fは回転方向13におけるシート材P1の先端であり、先端部P2fは回転方向13におけるシート材P2の先端であり、先端部P3fは回転方向13におけるシート材P3の先端である。
【0048】
吐出開始位置P1p,P2p,P3pは、それぞれ液体吐出ユニット33(図3参照)が吐出を開始する位置を示している。
【0049】
搬送ドラム31上でのスポンジ39の配置位置は予め定められているため、搬送ドラム31に設けられたロータリエンコーダ、及びリニアエンコーダの出力信号に応答してスポンジ39にフラッシングを実行できる。
【0050】
また本実施形態では、スポンジ39のみでなく、画像データに基づいてシート材Pに画像を形成した際に、画像データが示す画像が形成されない余白となる領域(余白領域という)にもフラッシングを行えるようになっている。換言すると、本実施形態では、スポンジ39、又は余白領域の少なくとも一方にパターン画像を形成することでヘッド内部の増粘した液体等を排出して、フラッシングできるようになっている。
【0051】
但し、余白領域へのフラッシングのみで十分なフラッシング効果が得られる場合は、液体受け部へのフラッシングは行わなくてもよい。液体受け部によるフラッシングを行うと、満杯になったときに液体受け部を交換する必要が生じる。これに対し、余白領域のみでフラッシングを行うと、液体受け部の交換にかかる手間やコストを節約できる。従って、液体受け部へのフラッシングに対して余白領域へのフラッシングを優先させると好適である。また液体受け部へのフラッシングを行わない場合は、液体受け部を設けなくてもよい。
【0052】
<画像形成装置1のハードウェア構成例>
次に、画像形成装置1のハードウェア構成について説明する。図5は、画像形成装置1のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0053】
図5に示すように、画像形成装置1は、制御部401と、ドラム回転エンコーダ402と、シート材先端検知センサ37と、吐出タイミングセンサ404と、ドラム駆動モータ406と、液体吐出ユニット33と、駆動回路409~410と、操作パネル400とを備える。
【0054】
また制御部401は、CPU(Central Processing Unit)421と、ROM(Read Only Memory)422と、RAM(Random Access Memory)423と、NVRAM(Non-Volatile Random Access Memory)424とを備える。
【0055】
これらのうち、CPU421は、画像形成装置1全体の動作を制御する。ROM422は、IPL等のCPU421の駆動に用いられるプログラム等を記憶する。RAM423は、CPU421のワークエリアとして使用される。NVRAM424は、プログラムや各種データを記憶し、画像形成装置1の電源が遮断されている間も各種データを保持する。
【0056】
ドラム回転エンコーダ402は、搬送ドラム31の回転速度や回転角度や回転位置を検出する。ドラム回転エンコーダ402は、ロータリエンコーダ301、及び/又はリニアエンコーダ311を含んでいる。ドラム回転エンコーダ402は、搬送ドラム31の偏心ムラ等を除去するために、搬送ドラム31の複数箇所に設置されていると好適である。
【0057】
また、搬送ドラム31の回転の基準位置を検出するため、A相/B相信号に加えて、Z相信号を出力できるものが好ましい。但し、ドラム回転エンコーダ402とはホームポジションセンサ等の別のセンサを設けてもよい。
【0058】
シート材先端検知センサ37は、上述したようにシート材Pの先端を検出する。シート材先端検知センサ37として反射型光学センサ等を使用できる。
【0059】
吐出タイミングセンサ404は、各色の液体吐出ユニット33の吐出タイミングを生成するために用いられる。吐出タイミングセンサ404がシート材Pを検出したタイミング、つまり吐出タイミングセンサ404が配置された位置をシート材Pが通過したタイミングを基準として、ドラム回転エンコーダ402の出力パルスに基づき、各液体吐出ユニット33が吐出を行う。
【0060】
なお、吐出タイミングセンサ404を用いずに、シート材先端検知センサ37による検出タイミングを基準としてもよい。但し、ドラム回転エンコーダ402の検出誤差を抑えるために、吐出タイミングセンサ404は、液体吐出ユニット33が吐出タイミングセンサ404からの信号に応答できる距離の範囲内で、液体吐出ユニット33の近傍に設置されることが望ましい。
【0061】
ドラム駆動モータ406は、搬送ドラム31を回転駆動させるACサーボモータ等である。制御部401は、ドラム回転エンコーダ402の出力パルスに基づき、駆動回路409に制御信号を出力する。ドラム駆動モータ406は、駆動回路409からの駆動信号に応じて搬送ドラム31を回転させる。
【0062】
液体吐出ユニット33は、吐出タイミングセンサ404の出力に基づき決定されたタイミングで、液体吐出ユニット33を駆動させる駆動回路410からの駆動信号に応じて液体を吐出する。制御部401は、画像データに基づき、駆動波形を決定し、駆動波形に応じた信号を駆動回路410に出力することができる。
【0063】
操作パネル400は、現在の設定値や選択画面、画像形成装置1からの各種の通知等を表示させ、画像形成装置1の操作者からの入力を受け付けるタッチパネルやアラームランプ等により構成されている。
【0064】
<制御部401の機能構成例>
次に、図6は画像形成装置1の備える制御部401の機能構成の一例を示すブロック図である。図6に示すように、制御部401は、画像データ取得部71と、領域特定部72と、パターン画像生成部73と、液滴数決定部74と、吐出制御部75とを備えている。
【0065】
画像データ取得部71は、シート材Pに画像形成する対象となる印刷画像の画像データを、PC(Personal Computer)等の外部装置から取得し、取得した画像データを領域特定部72に出力する。
【0066】
領域特定部72は、画像形成装置1がシート材Pに画像形成した際に余白となる余白領域を、画像データ取得部71が取得した画像データに基づいて特定する。例えば搬送方向におけるシート材Pの先端側に位置する先端側余白領域と、後端側に位置する後端側余白領域が余白領域として特定される。
【0067】
また領域特定部72は、特定した余白領域内でフラッシングのために液体を吐出してパターン画像を形成する領域(フラッシング領域という)も特定できる。例えば搬送方向におけるシート材Pの先端側に位置する先端側フラッシング領域と、後端側に位置する後端側フラッシング領域等がフラッシング領域として特定される。
【0068】
なお領域特定部72は、余白領域及びフラッシング領域を特定するために、画像データに加えて画像形成条件(印刷条件)又は余白設定条件等の情報を用いることもできる。領域特定部72は、特定した余白領域の情報をパターン画像生成部73及び液滴数決定部74に出力する。
【0069】
パターン画像生成部73は、余白領域に形成するパターン画像の画像データを、領域特定部72が特定した余白領域の大きさと、液体の種類とに基づいて生成する。例えばパターン画像生成部73は、液体の種類ごとで、パターン画像におけるパターンの大きさを決定できる。このパターン画像をスポンジ39、又は余白領域の少なくとも一方に形成してフラッシングを行う。
【0070】
ここで、液体の種類は、液体の組成の違いを示す情報である。液体の組成は液体の色によって異なるため、本実施形態では、液体の色を液体の種類の一例として扱う。但し、液体の種類は液体の色に限られるものではなく、液体の物性によっても異なる。従って同じ色であっても液体の種類が異なる場合もある。
【0071】
またパターン画像には、ストライプ状のパターンやクロスステッチ状のパターンの画像等が挙げられる。ストライプは周期的に形成された線により構成されるパターンであり、線の太さや周期を変えることで、パターン画像を形成する際の液体の吐出周期や吐出される液体量が変わる。またクロスステッチは周期的に形成された「X」の文字(記号)により構成されるパターンであり、「X」の文字の線の太さや周期を変えることで、ストライプとは異なる周期や液体量で液体を吐出できる。但し、パターン画像はストライプ状やクロスステッチ状のパターンに限られず、所望の吐出周期や液体量に応じて好適なパターンを適宜生成するように構成可能である。
【0072】
液滴数決定部74は、余白領域の大きさと、液体の種類とに基づき、吐出される液体による液滴の数を決定する。ここで液滴とは、ヘッド100のノズルから液体を吐出した直後に形成される液体の粒をいう。画像形成では、吐出された液体は液滴の状態でシート材Pに着弾し、その後シート材Pに付着して画像が形成される。
【0073】
液滴数の初期値には、シート材Pにフラッシングをせず、スポンジ39(空吐出受け)のみにフラッシングする場合のフラッシングのための液滴数が予め設定されている。シート材Pにフラッシングを行う場合には、空吐出受けより優先してシート材Pにフラッシングが行われる。
【0074】
液滴数決定部74は、シート材Pにフラッシングを行う場合に、生成されたパターン画像の大きさ及びパターンに基づき、シート材Pへのフラッシングの液滴数を決定できる。なお、液滴数を決定することでパターン画像におけるパターンの密度を決定できるため、液滴数決定部74は密度決定部の一例にも対応する。
【0075】
また、後述するパターン画像のパラメータにおいて、連続吐出回数、又は連続吐出の繰り返し回数の何れかは固定値であり、固定値ではない方は、この固定値とパターン画像の大きさから算出される。
【0076】
吐出制御部75は、パターン画像生成部73により生成されたパターン画像の画像データと、液滴数決定部74により決定された液滴数の情報に基づき、液体吐出ユニット33による液体の吐出を制御できる。
【0077】
<制御部401による処理例>
次に、制御部401による処理について説明する。図7は制御部401による処理の一例を示すフローチャートである。図7は、パターン画像の画像データを生成する処理と、余白領域と液体受けの両方にフラッシングする際の液滴数を決定する処理を示している。なお、ここでの液滴数は、ヘッド100(図3参照)における1個のノズルが吐出する液滴数を指す。
【0078】
また図7に示す処理は、フラッシングを行うたびに実行される処理である。フラッシングは、シート材Pへの画像形成中に行われてもよいし、シート材Pへの画像形成を開始する前に行われてもよく、液体の増粘特性等に応じて実行するタイミングを適宜選択可能である。
【0079】
本実施形態では、フラッシングのために吐出する液滴数の初期値として、スポンジ39のみにフラッシングする場合の液滴数Mが予め設定されている。
【0080】
まずステップS71において、画像データ取得部71は、PC等の外部装置から画像データを取得し、取得した画像データを領域特定部72及び液滴数決定部74に出力する。
【0081】
続いて、ステップS72において、領域特定部72は、画像データ取得部71が取得した画像データに基づいて余白領域を特定する。
【0082】
続いて、ステップS73において、パターン画像生成部73は、余白領域内でのフラッシング領域として、先端側フラッシング領域と後端側フラッシング領域を特定する。
【0083】
続いて、ステップS74において、パターン画像生成部73は、余白領域に形成するパターン画像の画像データを、領域特定部72が特定した余白領域の大きさと、液体の種類とに基づいて生成する。
【0084】
続いて、ステップS75において、液滴数決定部74は、余白領域内での先端側フラッシング領域の大きさに応じて、搬送方向におけるシート材Pの先端側フラッシング領域にフラッシングするための液滴数bを液体の色ごとに決定する。
【0085】
続いて、ステップS76において、液滴数決定部74は、余白領域内での後端側フラッシング領域の大きさに応じて、搬送方向におけるシート材Pの後端側フラッシング領域にフラッシングするための液滴数dを液体の色ごとに決定する。
【0086】
続いて、ステップS77において、余白領域にフラッシングするための液滴数に応じて、液体受けにフラッシングする液滴数MLを決定する。この際、フラッシングを行う場所を余白領域と液体空受けに分割することで液滴数の不足が生じる場合があるため、この不足を分割追加液滴数Vにより補うようにする。その結果、液体受けにフラッシングするための液滴数MLが次式により決定される。
ML=M-b-d+V
このようにして、制御部401は、パターン画像の画像データを生成し、また余白領域と液体受けのそれぞれにフラッシングするための液滴数を決定することができる。なお、余白領域のみにフラッシングする場合は、液滴数b,dのみを決定すればよい。
【0087】
<余白領域及びフラッシング領域の特定結果例>
次に、領域特定部72による余白領域及びフラッシング領域の特定結果について説明する。図8は、余白領域及びフラッシング領域の特定結果の一例を説明する図である。図8は、シート材P上での余白領域及びフラッシング領域の配置を示している。
【0088】
図8に示すように、画像形成の対象となる印刷画像が形成される印刷画像領域80は、シート材Pの中央部分に配置される。搬送方向11における印刷画像領域80の下流側に先端側余白領域81(斜線ハッチング部分)が、搬送方向11における印刷画像領域80の上流側に後端側余白領域82(梨地ハッチング部分)がそれぞれ特定される。また先端側余白領域81内に先端側フラッシング領域83が、後端側余白領域82内に後端側フラッシング領域84がそれぞれ特定される。これらの先端側余白領域81と後端側余白領域82は、それぞれ余白領域の一例である。
【0089】
また、図8に示した各パラメータの意味は以下の通りである。
L:搬送方向11における理想的なシート材Pの長さ
Y:搬送方向11における印刷画像領域80の長さ
T:シート材Pの公差が設定される変数
P1:シート材Pの先端のマスク量が設定される変数
P2:シート材Pの用紙後端のマスク量が設定される変数
P3:搬送方向11における先端側フラッシング領域83と印刷画像領域80の間隔
Y1:搬送方向11における先端側フラッシング領域83の端部位置
Y2:搬送方向11における後端側フラッシング領域84の端部位置
L1:搬送方向11における先端側フラッシング領域83の長さ
L2:搬送方向11における後端側フラッシング領域84の長さ
【0090】
具体例として、先端側フラッシング領域83の端部位置Y1は0以上100[mm]以下の範囲内で特定され、先端側フラッシング領域83の長さL1は0以上100[mm]以下の範囲内で特定される。但し、Y1+L1<100[mm]である。同様に、後端側フラッシング領域84の端部位置Y2は0以上100[mm]以下の範囲内で特定され、後端側フラッシング領域84の長さL2は0以上100[mm]以下の範囲内で特定される。但し、Y2+L2<100[mm]である。また余白領域にフラッシングを行うか否かもパラメータにより設定可能になっている。
【0091】
なお、図8では、変数P1と端部位置Y1は同じ長さを示しているが、端部位置Y1の値が変数P1より大きい値になる場合もある。例えば、フラッシングのための液体量が非常に少なくてもよい場合、つまり端部位置P1の後端(搬送方向11の上流側の端部)と、間隔P3の先端(搬送方向11の下流側の端部)との間の領域よりも狭い領域でフラッシングを行う場合には、端部位置Y1の値が変数P1より大きい値になる。
【0092】
<色ごとのフラッシング領域の決定結果例>
次に、パターン画像生成部73(図6参照)による色ごとのフラッシング領域の決定結果について説明する。図9は、色ごとのフラッシング領域の決定結果の一例を説明する図である。
【0093】
図9に示すように、搬送方向11の下流側から上流側に向けて、ブラックフラッシング領域Fk、シアンフラッシング領域Fc、マゼンタフラッシング領域Fm、及びイエローフラッシング領域Fyがそれぞれ決定される。
【0094】
間隔Nkは先端側フラッシング領域83の端部位置とブラックフラッシング領域Fkの搬送方向11における間隔であり、間隔Ncはブラックフラッシング領域Fkとシアンフラッシング領域Fcの搬送方向11における間隔である。
【0095】
また間隔Nmはシアンフラッシング領域Fcとマゼンタフラッシング領域Fmの搬送方向11における間隔であり、間隔Nyはマゼンタフラッシング領域Fmとイエローフラッシング領域Fyの搬送方向11における間隔である。
【0096】
長さLkはブラックフラッシング領域Fkの搬送方向11における長さであり、長さLcはシアンフラッシング領域Fcの搬送方向11における長さである。また長さLmはマゼンタフラッシング領域Fmの搬送方向11における長さであり、長さLyはイエローフラッシング領域Fyの搬送方向11における長さである。
【0097】
搬送方向11における長さLk,Lc,Lm,Lyを決定することで、フラッシングのために吐出される液体量の色割合(色ごとの比)Ck,Cc,Cm,Cyを決定できる。
【0098】
図9の例では、Ck:Cc:Cm:Cy=0.3:0.2:0.25:0.25となっている。これはフラッシングのために吐出される液体量として、ブラックが最も多く、シアンが最も少なく、マゼンタとイエローが同量であることを示している。
【0099】
但し、必ずしもフラッシングのために吐出される液体量に応じて決定しなくてもよい。例えばパターン画像におけるパターンの密度に基づき、多くの液体量の吐出が必要な場合には密なパターン画像を形成し、少量の液体量でよい場合には疎なパターン画像を形成する。
【0100】
具体的には、シート材P上での乾燥性の色による差異が大きい場合に、乾燥しやすい色では多くの液体量を吐出するために密なパターン画像を形成し、乾燥し難い色では少量の液体量を吐出するために疎なパターン画像を形成すると、フラッシングの効果を好適に得ることができる。
【0101】
また、シート材Pに対する液体の滲みやすさにより、色ごとのパターン画像が重なり、重なった部分でシート材Pの乾燥が不十分になって、画質劣化やシート材Pの汚れの要因になる場合がある。そのため、色ごとのパターン画像が重ならない範囲で、色ごとのフラッシング領域の搬送方向11における最小の間隔を決定することが好ましい。これらのパラメータの値は、シート材Pの種類や、画質等を定める画像形成モード、画像形成後の液体の乾燥条件等に応じて適宜変更可能である。
【0102】
領域特定部72(図6参照)は、まず先端側フラッシング領域83の長さL1(図8参照)を決定し、その後、先端側フラッシング領域83の中の色毎のフラッシング領域の長さLk、Lc、Lm及びLyを以下の式で算出して決定する。
Lk={L1-(Nk+Nc+Nm+Ny)}×Ck
Lc={L1-(Nk+Nc+Nm+Ny)}×Cc
Lm={L1-(Nk+Nc+Nm+Ny)}×Cm
Ly={L1-(Nk+Nc+Nm+Ny)}×Cy
【0103】
例えば、シート材Pの搬送方向11におけるブラックの先端側フラッシング領域の長さLkは以下の式で算出される。
Lk={L1-(Nk+Nc+Nm+Ny)}×0.3
【0104】
このように、特定された余白領域及びフラッシング領域に応じて、色ごとのフラッシング領域の搬送方向11における長さを変化できるようになっている。この長さLk,Lc,Lm,Lyは、それぞれパターン画像における液体の種類ごとでのパターンの大きさの一例に対応する。
【0105】
<パターン画像の画像データ例>
次に、パターン画像生成部73(図6参照)により生成されるパターン画像の画像データについて説明する。図10は、パターン画像の画像データの一例を示す図である。パターン画像の画像データ102kは、複数の画素Pixで構成されたストライプ状のパターンを含む画像データである。図10の例では、搬送方向11に直交する幅方向において、3画素中の1画素が黒色の列になるように構成されている。
【0106】
図10に示した(1)~(10)の番号は、パターン画像生成部73がパターン画像の画像データ102kを生成するために決定するパラメータである。またWはシート材Pの幅を示し、Mは搬送方向11に直交する幅方向におけるシート材Pの端部からの距離を示している。
【0107】
以下の表1に各パラメータの意味を示す。
【0108】
【表1】
図10及び表1に示すパラメータのうち、(1)搬送方向における連続吐出回数と、(5)搬送方向における連続吐出の繰り返し回数の何れか一方は、演算で取得される計算値であり、他方は予め定められた固定値である。(2)吐出開始点シフト数と、(3)吐出開始点シフトの回数、(4)搬送方向における連続吐出間のインターバル、(6)搬送方向におけるフラッシング領域の長さ、及び(7)幅方向におけるフラッシング領域の長さは、それぞれ固定値である。また(8)(1)と(5)の計算値/固定値の切替、(9)色間の間隔、(10)液滴数の色割合も、それぞれ固定値である。なお以下では、説明を簡単にするために、表1に示す各パラメータを(1)~(10)の番号のみで表記する。
【0109】
上記の(1)又は(5)における計算値は、搬送方向11における先端側フラッシング領域83の長さL1と、搬送方向11における後端側フラッシング領域84の長さL2(図8参照)に基づいて算出される。例えば(1)が計算値である場合には、ブラックの(1)は次式で算出できる。
(1)={L1-(Nk+Nc+Nm+Ny)}×Ck/{(5)×(1+(4))}
(1)の値が液滴数に対応する。なお、計算結果は幅方向に沿って配列する画素ラインのライン数であるため、小数点は切り捨てられる。
【0110】
また、先端側フラッシング領域83において、(1)が固定値で、(5)が長さL1に基づく算出値である場合には、ブラックの(5)は次式で算出できる。
(5)={L1-(Nk+Nc+Nm+Ny)}×Ck/{(1)×(1+(4)}
(5)の値が液滴数に対応する。なお、この場合も計算結果は幅方向に沿って配列する画素ラインのライン数であるため、小数点は切り捨てられる。
【0111】
なお、(8)は、(1)を計算値にする場合はパラメータに「0」を設定し、(5)を計算値にする場合はパラメータに「1」を設定することで切替を行う。また、(9)は間隔Nk,Nc,Nm,Ny(図9参照)に対応し、(10)は液体量の色割合Ck,Cc,Cm,Cy(図9参照)に対応する。
【0112】
パターン画像生成部73(図6参照)は、フラッシング領域の長さL1,L2に基づいて、(1)又は(5)の何れか一方の計算値を算出する。そして表1に示す各パラメータを用いて、パターン画像の画像データ102kを生成できる。
【0113】
各パラメータを用いてパターン画像の画像データ102kを生成するため、様々なパターンのパターン画像の画像データそのものを記憶装置に記憶する必要がない。従って、画像形成装置1は、パターン画像の画像データを記憶するための膨大なメモリ容量の記憶装置を備えることなく、パターン画像を余白領域又は液体受け部に形成してフラッシングを行うことができる。
【0114】
なお、図10ではブラック用のパターン画像の画像データ102kを一例として示したが、他色用のパターン画像の画像データも同様にして生成できる。
【0115】
次に図11は、4色の液体ごとに生成されたパターン画像の画像データの一例を示す図である。図11では、搬送方向11の下流側から上流側に向けて、ブラック用のパターン画像の画像データ102k、シアン用のパターン画像の画像データ102c、マゼンタ用のパターン画像の画像データ102m、及びイエロー用のパターン画像の画像データ102yが示されている。
【0116】
パターン画像の画像データ102k,102cはストライプ状のパターンのものであり、パターン画像の画像データ102m,102yはクロスステッチ状のパターンのものである。
【0117】
以下の表2に色ごとの各パラメータを示す。
【0118】
【表2】
【0119】
パターン画像の画像データ102kでは、次式のように(1)が算出され、液滴数が決定される。
(1)={L1-(Nk+Nc+Nm+Ny)}×Ck/{(5)×(1+(4))}
={60-(1+1+1+1)}×0.3/{1×(1+1)}
=8
【0120】
従って液滴数は8に決定される。この例の場合、1200[dpi;dot per inch]の解像度で、最高駆動周波数(例えば60kHz)で連続吐出される。5[pl]以上の液滴体積と高速の液滴速度で、吐出の安定性を確保することで増粘インクの排出性能を向上させることができる。また幅方向に隣接してパターンが形成されないため、シート材P上での液体の乾燥性も良好になる。なお、パターン画像の画像データ102cでは、上式のCkがCcになる点のみ異なり、液滴数は5になる。
【0121】
パターン画像の画像データ102mでは、次式のように(5)が算出され、液滴数が決定される。
(5)={L1-(Nk+Nc+Nm+Ny)}×Cm/{(1)×(1+(4)}
={60-(1+1+1+1)}×0.25/{1×(1+1)}
=7
【0122】
従って液滴数は7に決定される。この例の場合、1200[dpi]の1on1offの解像度で、最高駆動周波数の半分相当の駆動周波数で液滴が吐出される。フラッシングの液滴体積を大きくする場合や、液滴速度が速い液滴で最高駆動周波数での安定吐出が難しい場合等において吐出の安定性を確保できるため好適である。また、幅方向にも搬送方向にも隣接するパターンが形成されないため、シート材P上での液体の乾燥性も良好になる。
【0123】
パターン画像の画像データ102yは、1200[dpi]の1on1offの解像度で吐出したものである。また搬送方向におけるフラッシング領域の長さは32[pixel]である。次式で(5)が算出され、液滴数が決定される。
(5)=32/{(1)×(1+(4))}
=32/{(1)×(1+3)}
=8
【0124】
従って液滴数は8に決定される。この例の場合、パターンが疎であるため、非常に乾きにくい種類の液体やシート材Pに適用すると好適である。
【0125】
<画像形成装置1の作用効果>
次に、画像形成装置1の作用効果について説明する。
【0126】
従来、搬送される記録媒体同士の間等の画像を形成しない領域に、スポンジ等の液体受けを設け、増粘した液体を液体受けに吐出して排出することでヘッド内の液体をフレッシュにし、ヘッドによる吐出を正常に維持する構成が知られている。
【0127】
しかし、液体受けを記録媒体同士の間に設ける構成では、液体受けの廃液体が短期間で満杯になり、液体受けを交換する手間やコストがかかる場合がある。
【0128】
一方、画像形成速度の向上を目的とし、記録媒体に画像を形成した際に余白となる余白領域を所定のパターンデータに基づいて特定し、この領域に液体を吐出して排出することで画像形成の中断をなくす構成が開示されている。
【0129】
しかしながら、液体は組成の違いにより乾燥性や濡れ性等の特性が異なる。そのため吐出の周期や吐出する液体量等の条件を同じにして、異なる種類の液体を吐出すると、吐出によるフラッシングの効果が不十分になり、液体の種類ごとで余白領域に排出する液体量を適正化できない場合がある。また余白領域の大きさによってフラッシングで吐出可能な液体量が異なるため、吐出する液体量が不足するとフラッシングの効果が十分に得られない場合がある。
【0130】
本実施形態では、シート材Pに画像を形成した際に余白となる余白領域を画像データに基づいて特定し、この余白領域に形成するパターン画像の画像データを、余白領域の大きさと、液体の種類とに基づいて生成する。例えば、液体の種類ごとでパターン画像におけるパターンの大きさを決定する。
【0131】
パターンの大きさにより、パターン画像を形成するために吐出される液体量が変化するため、生成した画像データに基づき余白領域にパターン画像を形成することで、十分なフラッシング効果が得られるように液体の種類ごとで液体量を適正化できる。これによりフラッシングを好適に行い、液体吐出ヘッドを正常な状態に維持できる。
【0132】
また、パターン画像におけるパターンの密度等のパターンの大きさ以外の要因によっても吐出される液体量は異なるため、パターンの大きさを決定するだけでは精密に液体量を制御できない場合がある。本実施形態では、余白領域の大きさと、液体の種類とに基づいて、液体による液滴の数を決定する。これによりパターン画像におけるパターンの密度等を制御でき、より精密に液体量を適正化できる。
【0133】
また本実施形態では、搬送される複数の前記記録媒体同士の間に液体受け部を設けており、フラッシングのために余白領域、又は液体受け部の少なくとも一方にパターン画像を形成できる。そのため余白領域を十分な大きさで確保できない場合にも、液体受け部に液体を吐出することで十分な量の液体を吐出でき、フラッシング効果を好適に得ることができる。
【0134】
また本実施形態では、パラメータを用いてパターン画像の画像データを生成するため、様々なパターンのパターン画像の画像データを記憶装置に記憶する必要がない。これにより、パターン画像の画像データを記憶するための膨大なメモリ容量の記憶装置を備えることなく、パターン画像を余白領域又は液体受け部に形成してフラッシングを行うことが可能である。
【0135】
[その他の好適な実施形態]
画像形成装置では、画質を上げるために、シート材に印刷画像を形成する際に吐出される液滴を、サテライトがなく球形に近い形状で、またシート材Pに着弾したときに跳ね返ったりずれたりしない着弾安定性を考慮した形状にすることが多い。
【0136】
一方、フラッシングのための液滴では、ヘッド内の液体の鮮度を上げるというフラッシングの目的を達成するために、増粘等で吐出されにくくなった液体を強い力で吐出することが求められ、液滴の形状に特段の要求や制限はない。
【0137】
従って、それぞれの目的を好適に達成するために、シート材に印刷画像を形成するために吐出される液滴の形状と、フラッシングのために吐出される液滴の形状とを異ならせることが好ましい。
【0138】
また液体の吐出速度は、余白領域にパターン画像を形成する際と、余白領域以外に画像を形成する際とで異ならせることが好ましい。例えば、フラッシングを行う際の吐出速度を、印刷画像を形成する際の吐出速度より速くする。ここで、液体の吐出速度とは、ヘッドから吐出される時の液滴の速度をいう。
【0139】
このようにすることで、印刷画像を形成する際には画質を維持でき、フラッシングを行う際には吐出されにくくなった液体でも吐出でき、フラッシングを好適に実行できる。
【0140】
またヘッドから液体を吐出させる際には、所定の駆動波形の電圧をヘッドに印加する。この駆動波形を、余白領域にパターン画像を形成する際と、余白領域以外に画像を形成する際とで異ならせることで、液滴のサイズや液滴の吐出速度を変化させてもよい。
【0141】
駆動波形を変えることで、印刷画像を形成する際と比較して、フラッシングを行う際の液滴のサイズを大きくしたり、液滴の吐出速度を速くしたりすることができる。これにより、吐出されにくくなった液体でも吐出でき、フラッシングを好適に実行できる。
【0142】
以上、本発明の好ましい実施形態及び実施例について詳述したが、本発明はこれらの実施形態及び実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形又は変更が可能である。
【0143】
例えば、上述した実施形態では、ライン走査型インクジェット方式の画像形成装置を例に説明したが、これに限定されるものではない。シリアル走査型インク方式の画像形成装置においても実施形態を適用し、上述した画像形成装置1と同様の効果を得ることができる。
【0144】
また色材は、インク等の液体に限定されるものではなく、トナー等の粉体でもよい。従ってトナーを用いる電子写真方式の画像形成装置においても実施形態を適用し、上述した画像形成装置1と同様の効果を得ることができる。
【0145】
また、実施形態は、制御方法も含む。例えば、制御方法は、記録媒体に色材で画像を形成する画像形成装置の制御方法であって、前記記録媒体に前記画像を形成した際に余白となる領域を特定する工程と、前記領域に形成するパターン画像の画像データを、前記領域の大きさと、前記色材の種類と、に基づいて生成する工程と、を行う。このような制御方法により、上述した画像形成装置1と同様の効果を得ることができる。
【0146】
また、実施形態は、プログラムも含む。例えば、プログラムは、記録媒体に色材で画像を形成する画像形成装置で用いられるプログラムであって、前記記録媒体に前記画像を形成した際に余白となる領域を特定し、前記領域に形成するパターン画像の画像データを、前記領域の大きさと、前記色材の種類とに基づいて生成する処理をコンピュータに実行させる。このようなプログラムにより、上述した画像形成装置1と同様の効果を得ることができる。
【0147】
また、上記で説明した実施形態の各機能は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(digital signal processor)、FPGA(field programmable gate array)や従来の回路モジュール等のデバイスを含むものとする。
【符号の説明】
【0148】
1 画像形成装置(液体吐出装置の一例)
11 搬送方向
13 回転方向
30 作像ユニット
31 搬送ドラム
32 液体吐出部
33 液体吐出ユニット
39 スポンジ(液体受けの一例)
71 画像データ取得部
72 領域特定部
73 パターン画像生成部
74 液滴数決定部(密度決定部の一例)
75 吐出制御部
80 印刷画像領域
81 先端側余白領域(余白領域の一例)
82 後端側余白領域(余白領域の一例)
83 先端側フラッシング領域
84 後端側フラッシング領域
100 液体吐出ヘッド
102k、102c,102m,102y パターン画像の画像データ
401 制御部
Nk,Nc,Nm,Ny 間隔
Fk,Fc,Fm,Fy フラッシング領域
Lk,Lc,Lm,Ly 搬送方向におけるフラッシング領域の長さ
L1 搬送方向における先端側フラッシング領域の長さ
L2 搬送方向における後端側フラッシング領域の長さ
Pix 画素
P シート材(記録媒体の一例)
b 先端側フラッシング領域にフラッシングするための液滴数
d 後端側フラッシング領域にフラッシングするための液滴数
【先行技術文献】
【特許文献】
【0149】
【文献】特開平9-254735号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図9
図10
図11