(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】希土類ボンド磁石の製造方法
(51)【国際特許分類】
B22F 3/02 20060101AFI20241008BHJP
B22F 3/00 20210101ALI20241008BHJP
H01F 1/053 20060101ALI20241008BHJP
H01F 41/02 20060101ALI20241008BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20241008BHJP
C08K 3/01 20180101ALI20241008BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B22F3/02 M
B22F3/00 C
H01F1/053 130
H01F41/02 G
C08L101/00
C08K3/01
C08L63/00 C
B22F3/02 R
(21)【出願番号】P 2020140974
(22)【出願日】2020-08-24
【審査請求日】2023-06-02
(31)【優先権主張番号】P 2020023969
(32)【優先日】2020-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】竹内 一雅
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 輝雄
(72)【発明者】
【氏名】石原 千生
【審査官】萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-156964(JP,A)
【文献】国際公開第2019/167182(WO,A1)
【文献】特開2015-160969(JP,A)
【文献】特開2014-107429(JP,A)
【文献】特開2003-142307(JP,A)
【文献】特開2019-104954(JP,A)
【文献】特開2018-203811(JP,A)
【文献】特開2017-183726(JP,A)
【文献】特開2003-272943(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0076974(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00-8/00
H01F 1/00-1/117
H01F 1/40-1/42
H01F 41/00-41/04
H01F 41/08
H01F 41/10
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類磁性粉と樹脂組成物を混合してコンパウンド粉を調製する工程と、
前記コンパウンド粉を金型内に充填して80~120℃で加熱しながら、前記コンパウンド粉に磁場を印加して成型体を得る工程と、
前記磁場を解除した後に前記成型体を冷却する工程と、
40~60℃に冷却された前記成型体を前記金型から取り出す工程と、
を備え、
前記樹脂組成物が、100℃での溶融粘度が1Pa・秒以上50Pa・秒以下であり、100℃で30分間加熱された後の50℃での溶融粘度が加熱前の50℃での溶融粘度に比べて高く、25℃で固体である樹脂組成物
である、
希土類ボンド磁石の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂組成物が、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、及びエポキシ基反応性基を有する化合物を含む、請求項1に記載の
製造方法。
【請求項3】
前記エポキシ基反応性基がアミノ基である、請求項2に記載の
製造方法。
【請求項4】
前記エポキシ基反応性基を有する化合物の含有量が、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂の合計100質量部に対して1~20質量部である、請求項2又は3に記載の
製造方法。
【請求項5】
前記エポキシ基反応性基を有する化合物の含有量が、エポキシ樹脂100質量部に対して1~30質量部である、請求項2~4のいずれか一項に記載の
製造方法。
【請求項6】
前記コンパウンド粉における、前記希土類磁性粉及び前記樹脂組成物の質量比(希土類磁性粉/樹脂組成物)が、94/6~99/1である、
請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、コンパウンド粉及び希土類ボンド磁石の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属粉末及び樹脂組成物を含むコンパウンド粉は、金属粉末の諸物性に応じて、例えば、インダクタ、電磁波シールド、又はボンド磁石等の多様な工業製品の原材料として利用される(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンパウンド粉から工業製品を製造する場合、工業製品の用途に応じた形状を有する成型体をコンパウンド粉から作製する。例えば、希土類ボンド磁石を製造する場合、コンパウンド粉を金型内に充填して加熱しながら、コンパウンド粉に磁場を印加して(すなわち、磁場中で加熱成型をして)成型体を得て、得られた成型体を適温まで冷却した後、金型から取り出すことで、希土類ボンド磁石の成型体を得ることができる。希土類ボンド磁石としての優れた物性を確保しつつ、成型体としての強度をより向上させる技術が求められている。
【0005】
本発明は、希土類磁性粉及び樹脂組成物を含むコンパウンド粉から得られる成型体の強度をより向上させることのできる、樹脂組成物を提供することを目的とする。本発明はまた、そのような樹脂組成物を含むコンパウンド粉、及び当該樹脂組成物を用いた希土類ボンド磁石の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る樹脂組成物は、100℃での溶融粘度が1Pa・秒以上50Pa・秒以下であり、100℃で30分間加熱された後の50℃での溶融粘度が加熱前の50℃での溶融粘度に比べて高く、25℃で固体である。
【0007】
一態様において、樹脂組成物は、希土類磁性粉と混合して希土類ボンド磁石を得るために用いられてよい。また、一態様において、樹脂組成物は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、及びエポキシ基反応性基を有する化合物を含んでよい。
【0008】
一態様において、エポキシ基反応性基はアミノ基であってよい。
【0009】
一態様において、エポキシ基反応性基を有する化合物の含有量は、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂の合計100質量部に対して1~20質量部であってよい。
【0010】
一態様において、エポキシ基反応性基を有する化合物の含有量は、エポキシ樹脂100質量部に対して1~30質量部であってよい。
【0011】
本発明の一側面に係るコンパウンド粉は、希土類磁性粉及び上記の樹脂組成物を含み、希土類磁性粉及び樹脂組成物の質量比(希土類磁性粉/樹脂組成物)が、94/6~99/1である。
【0012】
本発明の一側面に係る、希土類ボンド磁石の製造方法は、希土類磁性粉と上記の樹脂組成物を混合してコンパウンド粉を調製する工程と、コンパウンド粉を金型内に充填して80~120℃で加熱しながら、コンパウンド粉に磁場を印加して成型体を得る工程と、磁場を解除した後に成型体を冷却する工程と、40~60℃に冷却された成型体を金型から取り出す工程と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、希土類磁性粉及び樹脂組成物を含むコンパウンド粉から得られる成型体の強度をより向上させることのできる、樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、そのような樹脂組成物を含むコンパウンド粉、及び当該樹脂組成物を用いた希土類ボンド磁石の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施例1の溶融粘度測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。ただし、本発明は下記実施形態に何ら限定されるものではない。
【0016】
<コンパウンド粉>
本実施形態に係るコンパウンド粉は、複数(多数)の希土類磁性粒子と、個々の希土類磁性粒子を覆う樹脂組成物と、を備える。つまり、コンパウンド粉を構成する個々の粒子が、希土類磁性粒子と、希土類磁性粒子を覆う樹脂組成物と、を有している。例えば、樹脂組成物を含む層(樹脂組成物からなる層等)が、希土類磁性粒子の表面を覆っていてよい。希土類磁性粒子と、希土類磁性粒子を覆う樹脂組成物と、を備える個々の粒子は、「樹脂被覆粒子」と表記される場合がある。
【0017】
希土類磁性粒子は、少なくとも希土類金属を含有してよい。樹脂組成物は、少なくとも樹脂を含有する。樹脂組成物は、樹脂、硬化剤、硬化促進剤、添加剤等を包含し得る成分であって、例えば有機溶媒と希土類磁性粒子を除く残りの成分(不揮発性成分)であってよい。添加剤とは、樹脂組成物のうち、樹脂、硬化剤及び硬化促進剤を除く残部の成分である。添加剤とは、例えば、反応性希釈剤、カップリング剤、難燃剤等である。コンパウンド粉は、添加剤としてワックスを含んでいてもよい。樹脂組成物は、未硬化であってよい。樹脂組成物は、半硬化物であってもよい。
【0018】
100℃における樹脂組成物の溶融粘度は、1Pa・秒以上50Pa・秒以下である。100℃における樹脂組成物の溶融粘度は、1.5Pa・秒以上30Pa・秒以下であってよく、2.0Pa・秒以上10Pa・秒以下であってよい。なお、100℃というのは、コンパウンド粉を磁場中で加熱成型する際の温度の目安であり、樹脂組成物に適度な流動性を生じさせることのできる温度である。
【0019】
100℃における樹脂組成物の溶融粘度が1Pa・秒以上であることにより、コンパウンド粉から形成された成型体の機械的強度を高くすることができる。一方、100℃における樹脂組成物の溶融粘度が50Pa・秒以下であることにより、コンパウンド粉に含まれる希土類磁性粒子と樹脂組成物との間の摩擦(界面摩擦)が低減される。したがって、コンパウンド粉から成型体が形成される過程において、希土類磁性粒子が樹脂組成物内を移動し易く、希土類磁性粒子が(樹脂組成物を介して)密に充填され易い。その結果、成型体に占める希土類磁性粒子の割合を大きくすることができ、成型体の密度を大きくすることができる。樹脂組成物の溶融粘度は、樹脂組成物に含まれる樹脂の組成、複数種の樹脂の組合せ及び配合比、樹脂及び反応性希釈剤其々の組合せ及び配合比、並びに、樹脂組成物における硬化剤、硬化促進剤及び添加剤其々の組成及び配合比等によって自在に調整することができる。ただし、本発明に係る作用効果は上記の事項に限定されない。
【0020】
100℃で30分間加熱された後の50℃での樹脂組成物の溶融粘度は、加熱前の50℃での溶融粘度に比べて高い。すなわち、100℃での加熱前の昇温時50℃での樹脂組成物の溶融粘度より、100℃での加熱後の冷却時50℃での樹脂組成物の溶融粘度の方が高い。50℃というのは、磁場中で加熱成型することにより得られた成型体を金型から取り出す際の温度の目安であり、室温まで冷却された場合に比べて成型体にわずかに柔軟性を残すことのできる温度である。熱履歴を掛けた後の樹脂組成物の溶融粘度が、熱履歴を掛ける前の値にまで戻らないことにより、成型体の機械的強度を高くすることができる。100℃で30分間加熱された後の50℃での溶融粘度と、加熱前の50℃での溶融粘度との大小関係は、例えば、エポキシ樹脂の溶融粘度、フェノール樹脂の溶融粘度、エポキシ基反応性基を有する化合物の構造、エポキシ樹脂とエポキシ基反応性基を有する化合物の配合比、等により調整することができる。
【0021】
100℃での加熱前の50℃での樹脂組成物の溶融粘度は、ハンドリング性の観点から80Pa・秒以上800Pa・秒以下とすることができ、90Pa・秒以上700Pa・秒以下であってよい。また、100℃で30分間加熱された後の50℃での樹脂組成物の溶融粘度は、300Pa・秒以上であってよく、800Pa・秒以上であってよい。これにより、成型体の機械的強度が高くなり易い。100℃で30分間加熱された後の50℃での樹脂組成物の溶融粘度は、1500Pa・秒以下であってよく、800Pa・秒以下であってよい。これにより、圧縮成型で得られた成型体に対し、さらに冷間等方性プレスを行って成型体を得る際に成型体を高密度化し易い。
【0022】
樹脂組成物は25℃において固体である。25℃で固体であることにより、流動性及びハンドリング性に優れるコンパウンド粉とすることができる。
【0023】
コンパウンド粉から樹脂組成物を除いた残りの複数(多数)の粒子は、「希土類磁性粉」と表記される場合がある。希土類磁性粉は、複数(多数)の希土類磁性粒子を備える。希土類磁性粉は、希土類磁性粒子のみからなっていてよい。樹脂組成物は、希土類磁性粉を構成する個々の粒子の少なくとも一部又は全体を覆っていてよい。樹脂組成物は、希土類磁性粉を構成する個々の粒子の表面に付着してよい。樹脂組成物は、希土類磁性粉を構成する個々の粒子の表面の全体に付着してもよく、当該粒子の表面の一部のみに付着してもよい。コンパウンド粉は、未硬化の樹脂組成物と、希土類磁性粉と、を備えてよい。コンパウンド粉は、樹脂組成物の半硬化物(例えばBステージの樹脂組成物)と、希土類磁性粉と、を備えてよい。コンパウンド粉は、希土類磁性粉と樹脂組成物とから形成されてよい。
【0024】
コンパウンド粉における希土類磁性粉の含有量は、コンパウンド粉全体の質量に対して、94質量%以上99質量%以下であってよく、95質量%以上97質量%以下であってよい。
【0025】
コンパウンド粉における樹脂組成物の含有量は、コンパウンド粉全体の質量に対して、1質量%以上6質量%以下であってよく、3質量%以上5質量%以下であってよい。コンパウンド粉における希土類磁性粉及び樹脂組成物の質量比(希土類磁性粉/樹脂組成物)が、94/6~99/1であってよく、95/5~97/3であってよい。
【0026】
コンパウンド粉を構成する個々の樹脂被覆粒子の平均粒子径は、例えば、1μm以上300μm以下であってよい。希土類磁性粒子を覆う樹脂組成物(層)の厚さは、例えば、0.1μm以上10μm以下であってよい。希土類磁性粒子の平均粒子径は、例えば、1μm以上300μm以下であってよい。平均粒子径は、例えば、粒度分布計によって測定されてよい。希土類磁性粒子の形状は、例えば、球状、扁平形状、角柱状又は針状であってよく、特に限定されない。希土類磁性粒子の形状が球状である場合、成型体の密度が大きくなり易い。コンパウンド粉は、平均粒子径が異なる複数種の希土類磁性粒子を含んでよい。
【0027】
コンパウンド粉に含まれる希土類磁性粒子の組成又は組合せに応じて、コンパウンド粉から形成される成型体の電磁気的特性等の諸特性を自在に制御し、当該成型体を様々な工業製品又はそれらの原材料に利用することができる。コンパウンド粉を用いて製造される工業製品は、例えば、自動車、医療機器、電子機器、電気機器、情報通信機器、家電製品、音響機器、及び一般産業機器であってよい。例えば、コンパウンド粉が希土類磁性粒子としてSmFeN系合金又はNdFeB系合金等の永久磁石を含む場合、コンパウンド粉は、ボンド磁石の原材料として利用されてよい。
【0028】
(樹脂組成物の詳細)
樹脂組成物は希土類磁性粉の結合材(バインダ)としての機能を有し、コンパウンド粉から形成される成型体に機械的強度を付与する。例えば、コンパウンド粉に含まれる樹脂組成物は、金型を用いてコンパウンド粉が高圧で成型される際に、希土類磁性粉を構成する粒子の間に充填され、当該粒子を互いに結着する。成型体中の樹脂組成物を硬化させることにより、樹脂組成物の硬化物が、希土類磁性粉を構成する粒子同士をより強固に結着して、成型体の機械的強度が向上する。
【0029】
樹脂組成物は、熱硬化性樹脂を含有してよい。熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂及びポリアミドイミド樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。樹脂組成物がエポキシ樹脂及びフェノール樹脂の両方を含む場合、フェノール樹脂は、エポキシ樹脂の硬化剤として機能してもよい。樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を含んでもよい。熱可塑性樹脂は、例えば、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、及びポリエチレンテレフタレートからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。樹脂組成物は、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の両方を含んでよい。樹脂組成物は、シリコーン樹脂を含んでもよい。
【0030】
エポキシ樹脂は、熱硬化性樹脂の中でも流動性に優れているので、樹脂組成物は、エポキシ樹脂を含有することが好ましい。エポキシ樹脂は、例えば、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する樹脂であってよい。
【0031】
エポキシ樹脂は、常温(25℃)で固体でありかつ100℃での溶融粘度が1Pa・秒以上50Pa・秒以下となる樹脂組成物を形成できればよい。一般的には固形エポキシ樹脂であって、ICI粘度が0.5Pa・秒以下であるものが好ましい。このようなエポキシ樹脂としては、NC-3000L、NC-3000、NC-3000H、NC-7300L、EPPN-502H、RE-3035-L、(以上、日本化薬株式会社製)、jER-YX-4000、jER-YX-4000H、jER-YL-6121、(以上、三菱ケミカル株式会社製)、エピクロンHP-7200L、エピクロンHP-4770、(以上、DIC株式会社製)が挙げられる。
【0032】
固体硬化材や固形エポキシ樹脂に添加することを前提に、半固形エポキシ樹脂を用いることも可能である。半固形エポキシ樹脂を固形硬化剤や固形エポキシ樹脂に添加することで、常温において樹脂組成物を固体に保ちつつ、樹脂組成物の溶融粘度を低下させることができる。このような半固形エポキシ樹脂としてはRE-303S-L、RE-303S(以上、日本化薬株式会社製)、エピコート825、エピコート827、エピコート828、エピコート828EL、エピコート828US、エピコート828XA、エピコート1001、(以上、三菱ケミカル株式会社製)、エピクロン860、エピクロン1050、エピクロン1055、エピクロンHP-4032、エピクロンHP-4032D、(以上、DIC株式会社製)が挙げられる。
【0033】
エポキシ基反応性基を有する化合物において、エポキシ基反応性を有する基としては、アミノ基、フェノール性水酸基、カルボキシル基、チオール基などが挙げられる。コンパウンド粉を得る工程で反応が進みにくく、加熱時は短時間で樹脂組成物の粘度を所定の粘度に上昇させることが可能である点でアミノ基が好ましい。
【0034】
アミノ基を有する化合物としては、一級アミノ基、または二級アミノ基を有する化合物が好ましい。またSmFeN等の希土類磁性粉の分散安定化、加熱処理後の強度保持の点からシラン化合物が好ましく、一般的にはカップリング材と称される化合物が好ましい。アミノ基を有するシラン化合物としては、KBM-602:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、KBM-603:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、KBM-903:3-アミノプロピルトリメトキシシラン、KBE-903:3-アミノプロピルトリエトキシシラン、KBE-9103P:3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブテリデン)プロピルアミン、KBM-573:N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、KBM-6803:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、(以上、信越化学株式会社製)が挙げられる。これらは単独で、または2種類以上を混合して用いることができる。
【0035】
エポキシ基反応性基を有する化合物の含有量は、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂(エポキシ樹脂硬化剤)の合計100質量部に対して1~20質量部であってよく、7~19質量部であってよい。含有量が1質量部以上であることで加熱成型時間内での溶融粘度を所定の溶融粘度に到達させ易く、20質量部以下であることで成型体を高強度化し易い。
【0036】
エポキシ基反応性基を有する化合物の含有量は、エポキシ樹脂100質量部に対して1~30質量部であってよく、10~30質量部であってよい。含有量が1質量部以上であることで加熱成型時間内での溶融粘度を所定の溶融粘度に到達させ易く、30質量部以下であることで成型体を高強度化し易い。
【0037】
樹脂組成物は、反応性希釈剤を含有してよい。樹脂組成物は、エポキシ樹脂と反応性希釈剤とを含有してよい。エポキシ樹脂が反応性希釈剤で希釈されることで、樹脂組成物の溶融粘度が上記の範囲内に調整され易い。反応性希釈剤は、例えば、モノエポキシ化合物、及びジエポキシ化合物のうち少なくともいずれかであってよい。反応性希釈剤は、単官能のエポキシ樹脂であってよい。反応性希釈剤は、例えば、アルキルモノグリシジルエーテル、アルキルフェノールモノグリシジルエーテル、及びアルキルジグリシジルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。アルキルモノグリシジルエーテルの市販品としては、例えば、三菱ケミカル株式会社製のYED188又はYED111Nを用いてよい。アルキルフェノールモノグリシジルエーテルの市販品としては、例えば、DIC株式会社製のEPICLON520、又は三菱ケミカル株式会社製のYED122を用いてよい。アルキルジグリシジルエーテルの市販品としては、例えば、三菱ケミカル株式会社製のYED216M又はYED216Dを用いてよい。
【0038】
硬化剤は、低温から室温の範囲でエポキシ樹脂を硬化させる硬化剤と、加熱に伴ってエポキシ樹脂を硬化させる加熱硬化型硬化剤と、に分類される。低温から室温の範囲でエポキシ樹脂を硬化させる硬化剤は、例えば、脂肪族ポリアミン、ポリアミノアミド、及びポリメルカプタン等である。加熱硬化型硬化剤は、例えば、芳香族ポリアミン、酸無水物、フェノールノボラック樹脂、及びジシアンジアミド(DICY)等である。
【0039】
低温から室温の範囲でエポキシ樹脂を硬化させる硬化剤を用いた場合、エポキシ樹脂の硬化物のガラス転移点は低く、エポキシ樹脂の硬化物は軟らかい傾向がある。その結果、コンパウンド粉から形成された成型体も軟らかくなり易い。そのため、成型体の耐熱性を向上させる観点から、硬化剤は、好ましくは加熱硬化型の硬化剤である。加熱硬化型の硬化剤は、より好ましくはフェノール樹脂、さらに好ましくはフェノールノボラック樹脂であってよい。特に硬化剤としてフェノールノボラック樹脂を用いることで、ガラス転移点が高いエポキシ樹脂の硬化物が得られ易い。その結果、成型体の耐熱性及び機械的強度が向上し易い。
【0040】
フェノール樹脂は、例えば、アラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、サリチルアルデヒド型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ベンズアルデヒド型フェノールとアラルキル型フェノールとの共重合型フェノール樹脂、パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂、メラミン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型ナフトール樹脂、シクロペンタジエン変性フェノール樹脂、多環芳香環変性フェノール樹脂、ビフェニル型フェノール樹脂、及びトリフェニルメタン型フェノール樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。フェノール樹脂は、上記のうちの2種以上から構成される共重合体であってもよい。フェノール樹脂の市販品としては、例えば、荒川化学工業株式会社製のタマノル758、又は日立化成株式会社製のHP-850N等を用いてもよい。
【0041】
フェノールノボラック樹脂は、例えば、フェノール類及び/又はナフトール類と、アルデヒド類と、を酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られる樹脂であってよい。フェノールノボラック樹脂を構成するフェノール類は、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール及びアミノフェノールからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。フェノールノボラック樹脂を構成するナフトール類は、例えば、α‐ナフトール、β‐ナフトール及びジヒドロキシナフタレンからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。フェノールノボラック樹脂を構成するアルデヒド類は、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド及びサリチルアルデヒドからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。
【0042】
硬化剤は、例えば、1分子中に2個のフェノール性水酸基を有する化合物であってもよい。1分子中に2個のフェノール性水酸基を有する化合物は、例えば、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、及び置換又は非置換のビフェノールからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。
【0043】
樹脂組成物は、上記のうち一種のフェノール樹脂を含有してよい。樹脂組成物は、上記のうち複数種のフェノール樹脂を含有してもよい。樹脂組成物は、上記のうち一種の硬化剤を含有してよい。樹脂組成物は、上記のうち複数種の硬化剤を含有してもよい。
【0044】
エポキシ樹脂中のエポキシ基と反応する硬化剤中の活性基(フェノール性OH基)の比率は、エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対して、好ましくは0.5~1.5当量、より好ましくは0.9~1.4当量、さらに好ましくは1.0~1.2当量であってよい。硬化剤中の活性基の比率が0.5当量未満である場合、硬化後のエポキシ樹脂の単位重量当たりのOH量が少なくなり、樹脂組成物(エポキシ樹脂)の硬化速度が低下する。また硬化剤中の活性基の比率が0.5当量未満である場合、得られる硬化物のガラス転移温度が低くなったり、硬化物の充分な弾性率が得られなかったりする。一方、硬化剤中の活性基の比率が1.5当量を超える場合、コンパウンド粉から形成された成型体の硬化後の機械的強度が低下する傾向がある。ただし、硬化剤中の活性基の比率が上記の範囲外である場合であっても、本発明に係る効果は得られる。
【0045】
樹脂組成物は、硬化触媒を含有してよい。硬化触媒を用いることで、成型体の機械的強度を高くすることができる。硬化触媒としては、例えばテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレ-トであるテトラブチルホスホニウム・テトラフェニルボレートが挙げられる。
【0046】
硬化促進剤は、例えば、エポキシ樹脂と反応してエポキシ樹脂の硬化を促進させる組成物であれば限定されない。硬化促進剤は、例えば、アルキル基置換イミダゾール、又はベンゾイミダゾール等のイミダゾール類であってよい。樹脂組成物は、一種の硬化促進剤を含有してよい。樹脂組成物は、複数種の硬化促進剤を含有してもよい。樹脂組成物の成分として、硬化促進剤を含有することにより、コンパウンドの成型性及び離型性が向上し易い。また樹脂組成物の成分として硬化促進剤を含有することにより、コンパウンドを用いて製造された成型体(例えば、電子部品)の機械的強度が向上したり、高温・高湿な環境下におけるコンパウンドの保存安定性が向上したりする。
【0047】
硬化促進剤の配合量は、硬化促進効果が得られる量であればよく、特に限定されない。ただし、樹脂組成物の吸湿時の硬化性及び流動性を改善する観点からは、硬化促進剤の配合量は、100質量部のエポキシ樹脂に対して、好ましくは0.1質量部以上30質量部以下、より好ましくは1質量部以上15質量部以下であってよい。硬化促進剤の含有量は、エポキシ樹脂及び硬化剤(例えばフェノール樹脂)の質量の合計に対して0.001質量部以上5質量部以下であることが好ましい。硬化促進剤の配合量が0.1質量部以上である場合、十分な硬化促進効果が得られ易い。硬化促進剤の配合量が30質量部以下である場合、コンパウンド粉の保存安定性が低下し難い。ただし、硬化促進剤の配合量及び含有量が上記の範囲外である場合であっても、本発明に係る効果は得られる。
【0048】
コンパウンド粉の環境安全性、リサイクル性、成型加工性及び低コストの観点から、樹脂組成物は難燃剤を含んでよい。難燃剤は、例えば、臭素系難燃剤、燐系難燃剤、水和金属化合物系難燃剤、シリコーン系難燃剤、窒素含有化合物、ヒンダードアミン化合物、有機金属化合物及び芳香族エンプラからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。コンパウンド粉は、上記のうち一種の難燃剤を含有してよく、上記のうち複数種の難燃剤を含有してもよい。
【0049】
希土類磁性粉としては、例えば、サマリウム-コバルト系磁性粉(SmCo)、ネオジム-鉄-ボロン系磁性粉(NdFeB)、サマリウム-鉄-窒化化合物系磁性粉(SmFeN)等が挙げられる。希土類磁性粉は、例えば、急冷凝固法により製造される。急冷凝固法では、磁石合金の溶湯を回転する水冷ロールの表面に放出することにより、磁石合金の溶湯を急冷して凝固させることにより急冷合金を作製する。そして、急冷合金を粉砕することにより希土類磁性粉を作製する。また、HDDR(Hydrogenation Disproportionation Desorption Recombination)法により作製した希土類磁性粉を使用してもよい。
【0050】
希土類磁性粉の個々の粒子の形状は球状であってよい。また、希土類磁性粉の個々の粒子の形状は扁平形状(例えば粉末粒子の形状アスペクト比=短径/長径が0.3以下)であってもよい。このような粉末としては、例えば、国際公開第2006/064794号パンフレット及び国際公開第2006/101117号パンフレットに記載のTi含有ナノコンポジット磁石用粉末及び米国特許第4802931号明細書等に記載の粉末が挙げられる。扁平形状を有する希土類磁性粉を希土類ボンド磁石用コンパウンドに用いると、圧縮成型のとき、希土類磁性粉が比較的整然と積層する。これにより、希土類磁性粉間に空隙及び樹脂溜りができにくくなり、希土類磁性粉を高密充填し易くなる。したがって、希土類磁性粉は扁平形状を有することが好ましい。日亜化学工業株式会社のビルドアップ工法により得られる非粉砕粉(球状粉)を使用することもできる。
【0051】
希土類磁性粉の平均粒子径は、好ましくは1~200μm、より好ましくは2~100μmである。希土類磁性粉の平均粒子径は、レーザ回折法粒度分布測定器により測定することができる。
【0052】
<コンパウンド粉の製造方法>
コンパウンド粉の製造方法は、特に限定されないが、例えば、以下の通りであってよい。まず、樹脂、希土類磁性粉及び有機溶媒を均一に撹拌・混合することにより、樹脂溶液を調製する。換言すれば、上述の樹脂組成物、希土類磁性粉及び有機溶媒を混合することにより、樹脂溶液を調製する。樹脂溶液は、硬化剤を含んでもよい。樹脂溶液は、硬化促進剤や硬化触媒を含んでもよい。樹脂溶液は、反応性希釈剤、カップリング剤、流動助剤、難燃剤、及び潤滑剤等の添加剤を含んでもよい。有機溶媒は、樹脂組成物を溶解する液体であればよく、特に限定されない。有機溶媒は、例えば、アセトン、N-メチルピロリジノン(N-メチル-2-ピロリドン)、γ-ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン及びキシレンからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。
【0053】
続いて、樹脂溶液から有機溶媒を十分に除去することにより、コンパウンド粉が得られる。有機溶媒の除去に伴って、樹脂組成物が希土類磁性粉を構成する個々の粒子の表面に付着する。樹脂組成物は、希土類磁性粉を構成する個々の粒子の表面の全体に付着してもよく、当該粒子の表面の一部のみに付着してもよい。樹脂溶液から有機溶媒を除去する方法は、特に限定されない。例えば、樹脂溶液を乾燥することにより、樹脂溶液から有機溶媒を除去することができる。樹脂溶液を乾燥する方法は、例えば、真空乾燥であってよい。成型体を作製する際は、金型の損傷を低減するために、上記で得られたコンパウンド粉に潤滑剤を添加してもよい。潤滑剤は、特に限定されない。潤滑剤は、例えば、金属石鹸及びワックス系潤滑剤からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。以上の方法により、コンパウンド粉が得られる。なお、潤滑剤は必ずしもコンパウンド粉に添加する必要はない。すなわち、金型の損傷を低減するために、潤滑剤を適当な分散媒に分散して分散液を調製し、この分散液を金型ダイス内の壁面(パンチと接触する壁面)に塗布し、塗布された分散液を乾燥してもよい。
【0054】
<希土類ボンド磁石の製造方法>
コンパウンド粉を金型内に充填し、金型により成型体を成型するとともに磁界を印加して磁石粉を配向させた後に、金型から抜き出すことで成型体が得られる。得られた成型体を加熱工程経由で硬化させると、希土類ボンド磁石が得られる。成型体を成型する工程では、コンパウンド粉を加熱しながら成型することがより好ましい。
【0055】
希土類ボンド磁石の製造方法は、具体的には、希土類磁性粉と上記の樹脂組成物を混合してコンパウンド粉を調製する工程と、コンパウンド粉を金型内に充填して80~120℃で加熱しながら、コンパウンド粉に磁場を印加して成型体を得る工程と、磁場を解除した後に成型体を冷却する工程と、40~60℃に冷却された成型体を金型から取り出す工程と、を備える。
【0056】
コンパウンド粉の成型は、乾式成型及び湿式成型のいずれで行ってもよい。例えば、油圧プレス機を用いた乾式成型であれば、10~500MPaの成型圧力において、1~60分間保持しながらコンパウンド粉を圧縮成型し、圧縮成型体を作製することができる。なお、得られた成型体に対し、さらに冷間等方性プレスを行ってもよい。
【0057】
コンパウンド粉への磁場の印加は、非磁性体で磁場を通す金型を用い、印加電流の向きや大きさ等に応じた磁界を発生させることのできる配向装置により行うことができる。
【0058】
コンパウンド粉の加熱手段は、金型の種類に合わせて選択することができ、例えば、電気、赤外線、高周波等の方法が挙げられる。加熱温度は樹脂組成物に応じて適宜選択することができ、80~120℃であってよく、90~110℃であってよく、100℃であってよい。コンパウンド粉を適切な温度で加熱することで、樹脂組成物に適度な流動性を生じさせることができる。これにより、コンパウンド粉から成型体が形成される過程において、希土類磁性粒子が樹脂組成物内を移動し易く、希土類磁性粒子が(樹脂組成物を介して)密に充填され易い。最高加熱温度での保持時間は、樹脂組成物に応じて適宜選択することができ、20分以上であってよく、30分以上であってよく、50分以上であってよく、60分以上であってよい。保持時間の上限は特に制限されないが、圧縮成型で得られた成型体に対し、さらに冷間等方性プレスを行って高密度成形体を得る観点から、80分とすることができる。
【0059】
コンパウンド粉の冷却方法は特に制限されず、自然冷却、水冷等の方法が挙げられる。成型体を金型から取り出す際の温度は樹脂組成物に応じて適宜選択することができ、40~60℃であってよく、45~55℃であってよく、50℃であってよい。この程度の温度の成型体は、室温まで冷却されたものに比べてわずかに柔軟性を有することができる。これにより、成型体の損傷を抑制しつつ金型から取り出すことができる。
【実施例】
【0060】
以下では実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0061】
(各種原料の詳細)
YX-4000H(三菱ケミカル株式会社製):エポキシ樹脂、エポキシ当量192
NC-3000L(日本化薬株式会社製):エポキシ樹脂、エポキシ当量272
NC-3000H(日本化薬株式会社製):エポキシ樹脂、エポキシ当量290
NC-7300L(日本化薬株式会社製):エポキシ樹脂、エポキシ当量210
jER-YL-6121(三菱ケミカル株式会社製):エポキシ樹脂、エポキシ当量175
エピクロンHP-7200L(DIC株式会社製):エポキシ樹脂、エポキシ当量247
エピクロンHP-4770(DIC株式会社製):エポキシ樹脂、エポキシ当量205
HP860(DIC株式会社製):液状エポキシ樹脂、エポキシ当量245
HP-850N(日立化成株式会社製):フェノール樹脂、水酸基当量108
KBM-573(信越化学株式会社製):N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン
PX4PB(北興化学株式会社製):テトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレ-トであるテトラブチルホスホニウム・テトラフェニルボレート
SmFeN粉(日亜化学株式会社製):平均粒子径3.0μm、球状
【0062】
(実施例1)
(コンパウンド粉の作製)
300mlナス型フラスコに、エポキシ樹脂としてYX-4000Hを5.12g、フェノール樹脂としてHP-850Nを2.88g、エポキシ基反応性化合物としてKBM-573を0.6g、硬化触媒としてPX-4PBを0.248g秤量し、アセトン50mlに溶解した。材料が完全に溶解した後にさらにSmFeN粉を192g加えて10分間、撹拌した後にエバポレータにより25℃でアセトンを留去した。液体がほぼ見られなくなった時点で塊をほぐし、その後再度エバポレータで30分間、減圧した。内容物をバット上に広げ、減圧乾燥機に入れ、常温で真空にして1日間、真空乾燥した。乾燥物(塊)をビニール袋に入れてハンマーで粉砕し、コンパウンド粉とした。
【0063】
(溶融粘度測定用樹脂組成物の作製)
300mlナス型フラスコに、エポキシ樹脂としてYX-4000Hを5.12g、フェノール樹脂としてHP-850Nを2.88g、エポキシ基反応性化合物としてKBM-573を0.6g、硬化触媒としてPX-4PBを0.248g秤量し、アセトン50mlに溶解した。材料が完全に溶解した後に、エバポレータにより25℃でアセトンを留去した。液体がほぼ見られなくなった時点で、フラスコを減圧乾燥機に入れ、常温で真空にして1日間真空乾燥し、溶融粘度測定用の樹脂組成物を得た。
【0064】
(実施例2~11、比較例1~2)
各原料の添加量を表1及び表2(各原料の単位:g)に従って配合し、実施例1と同様の方法でコンパウンド粉及び溶融粘度測定用の樹脂組成物を得た。いずれの樹脂組成物も、25℃で固体であった。表中、「KBM-573量」の欄において、バインダ樹脂基準とはエポキシ樹脂及びフェノール樹脂の合計100質量部に対する量を示し、エポキシ樹脂基準とはエポキシ樹脂100質量部に対する量を示す。
【0065】
(溶融粘度の測定)
溶融粘度は、Anton Paar社製レオメータMCR301を用いて測定した。各例で得られた溶融粘度測定用の樹脂組成物を、昇温速度10℃/分で30℃から100℃まで昇温し、100℃で30分間保持、その後10℃/分で50℃まで冷却した。加熱前の昇温時50℃での溶融粘度(表中の「樹脂の初期粘度」)、100℃で保持しているときの最低溶融粘度(表中の「最低溶融粘度」)及び冷却時50℃での溶融粘度(表中の「熱処理後の粘度」)をそれぞれ測定値とした。
図1は、実施例1の溶融粘度測定結果を示す図である。
【0066】
(圧壊強度測定用成型体の作製)
各例で得られたコンパウンド粉を、油圧プレス機を用い、金型温度が100℃の状態で100MPaの成型圧力において、30分間保持しながら圧縮成型した。その後金型温度が50℃になるまで冷却した後、成型体を金型から取り出した。このようにして、7mm×7mm×7mmの立方体形状の圧縮成型体を作製した。比較例のコンパウンド粉より得られた成型体は、強度不充分のため、金型から取り出すことができなかった。
【0067】
(圧壊強度の測定)
圧壊強度は万能圧縮試験機(株式会社島津製作所製、AG-10TBR)を使用して測定した。上記で得られた圧縮成型体を試験片とし、25℃環境下で各試験片に対し高さ方向から圧縮圧力を印加し、圧縮圧力により試験片が破壊されたときの圧縮圧力の最大値から圧壊強度(MPa)を算出した。
【0068】
【0069】