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特許7567298樹脂組成物、成形品、および、成形品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】樹脂組成物、成形品、および、成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20241008BHJP
   C08L 33/12 20060101ALI20241008BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
C08L69/00
C08L33/12
B29C45/00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020148441
(22)【出願日】2020-09-03
(65)【公開番号】P2022042826
(43)【公開日】2022-03-15
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】西野 陽平
【審査官】松村 駿一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-119816(JP,A)
【文献】特開2019-198974(JP,A)
【文献】特開2014-019843(JP,A)
【文献】特開2013-112780(JP,A)
【文献】特開2020-063332(JP,A)
【文献】特開2017-179331(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 69/00
C08L 33/12
B29C 45/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂と、芳香族(メタ)アクリレート構成単位(b1)とメチルメタクリレート構成単位(b2)を含む(メタ)アクリレート重合体を含み、
前記(メタ)アクリレート重合体は、芳香族(メタ)アクリレート構成単位(b1)とメチルメタクリレート構成単位(b2)の合計が、末端基を除く全構成単位の90質量%以上を占める(メタ)アクリレート重合体であり、
前記(メタ)アクリレート重合体の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、18~32質量部であり、
前記ポリカーボネート樹脂は、式(1)で表される構成単位と、式(2)で表される構成単位を含み、
式(1)で表される構成単位の含有量(質量部)≧式(2)で表される構成単位の含有量(質量部)≧(メタ)アクリレート重合体の含有量(質量部)を満たす、
樹脂組成物であって、
前記樹脂組成物を平板状試験片(150mm×100mm×2mm厚)に成形し、ISO 15184に準拠し、鉛筆硬度試験機を用いて、750g荷重にて測定した鉛筆硬度がFまたはそれより硬い、樹脂組成物。
式(1)
【化1】
(式(1)中、X1は下記のいずれかの式を表し、
【化2】
3およびR4は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、ZはCと結合して炭素数6~12の、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素を形成する基を表す。)
式(2)
【化3】
(式(2)中、R1はメチル基を表し、R2は水素原子またはメチル基を表し、X2は下記のいずれかの式を表し、
【化4】
3およびR4は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、ZはCと結合して炭素数6~12の、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素を形成する基を表す。)
【請求項2】
前記ポリカーボネート樹脂は、式(1)で表される構成単位53~90モル%と、式(2)で表される構成単位47~10モル%を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記(メタ)アクリレート重合体が、芳香族(メタ)アクリレート構成単位(b1)とメチルメタクリレート構成単位(b2)を、(b1)/(b2)の質量比が5~80/95~20となる割合で含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記(メタ)アクリレート重合体の重量平均分子量が5,000~30,000である、請求項1~3いずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記樹脂組成物を1.5mm厚の平板状試験片に成形したときのヘイズが2.0%以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記平板状試験片は、前記樹脂組成物を射出速度500mm/秒で射出成形したものである、請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記樹脂組成物をISO多目的試験片(4mm厚)に成形したときの、ISO179に準拠したノッチ無しシャルピー衝撃強さが80kJ/m2以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記樹脂組成物をISO多目的試験片(4mm厚)に成形したときの、ISO75-1およびISO75-2に準拠した荷重1.80MPaにおける荷重たわみ温度が98℃以上である、請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
射出速度200mm/秒以上の射出成形用である、請求項1~8のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
携帯電子機器の薄肉筐体形成用である、請求項1~9のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の樹脂組成物から形成された成形品。
【請求項12】
携帯電子機器の薄肉筐体である、請求項11に記載の成形品。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか1項に記載の樹脂組成物を、射出成形することを含む、成形品の製造方法。
【請求項14】
前記射出成形を射出速度200mm/秒以上で行う、請求項13に記載の成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、成形品、および、成形品の製造方法に関する。特に、ポリカーボネート樹脂を主成分とする樹脂組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、耐衝撃性、耐熱性、透明性に優れた熱可塑性樹脂として、自動車内装パネルや自動車のヘッドランプレンズ、携帯電話や携帯情報端末、液晶テレビ、パーソナルコンピューターの筐体等、幅広い用途があり、さらに、無機ガラスに比較して軽量で、生産性にも優れているので、自動車の窓用途等にも使用されている。
また、ポリカーボネート樹脂を用いたシートやフィルムもよく用いられており、それらを用いて積層体としたり、ハードコート処理を施したりと付加的な処理を施すことがしばしば行われ、各種表示装置用の各種部材、自動車用内装部品類または保護具用部材として広く使用されている。
【0003】
しかし、現在広く用いられている、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、すなわち、ビスフェノールAを用いたポリカーボネート樹脂は、優れた機械特性を示すのに反して、鉛筆硬度に代表される表面硬度が低いという問題点を有していた。
【0004】
ポリカーボネート樹脂の表面硬度を改善するために、これまでに多くのポリカーボネート樹脂、または、ポリカーボネート樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、特許文献1に記載のポリカーボネート樹脂組成物は、耐衝撃性および耐熱性が低下し、また、成形時に白化を起こし易く、特には、高速成形を行う際や薄肉成形品を成形する際に、白化の現象がより顕著となることが判明した。
かかる課題を解決すべく、特許文献2では、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、すなわち、ビスフェノールCを用いたポリカーボネート樹脂に所定のアクリル樹脂を配合することが記載されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-158364号公報
【文献】特開2014-065901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献2に記載の樹脂組成物は、表面硬度が高く、高速成形の際や薄肉成形品を成形する際にも、白化を効果的に抑制できる優れた樹脂組成物である。しかしながら、近年の技術革新に伴い、耐衝撃性や耐熱性について、より高い性能が求められるようになっている。
本発明は、かかる課題を解決することを目的とするものであって、表面硬度が高く、高速成形の際や薄肉成形品を成形する際にも、白化を効果的に抑制でき、かつ、耐衝撃性および耐熱性に優れた樹脂組成物、ならびに、前記樹脂組成物を用いた成形品、および、成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題のもと、本発明者が検討を行った結果、ビスフェノールAを用いたポリカーボネート樹脂と、ビスフェノールCを用いたポリカーボネート樹脂と、アクリル樹脂の比率を調整することにより、上記課題を解決しうることを見出した。
具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>ポリカーボネート樹脂と、(メタ)アクリレート重合体を含み、前記ポリカーボネート樹脂は、式(1)で表される構成単位と、式(2)で表される構成単位を含み、式(1)で表される構成単位の含有量(質量部)≧式(2)で表される構成単位の含有量(質量部)≧(メタ)アクリレート重合体の含有量(質量部)を満たす、樹脂組成物。
式(1)
【化1】

(式(1)中、Xは下記のいずれかの式を表し、
【化2】

3およびR4は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、ZはCと結合して炭素数6~12の、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素を形成する基を表す。)
式(2)
【化3】

(式(2)中、R1はメチル基を表し、R2は水素原子またはメチル基を表し、Xは下記のいずれかの式を表し、
【化4】

3およびR4は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、ZはCと結合して炭素数6~12の、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素を形成する基を表す。)
<2>前記ポリカーボネート樹脂は、式(1)で表される構成単位53~90モル%と、式(2)で表される構成単位47~10モル%を含む、<1>に記載の樹脂組成物。
<3>前記ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、前記(メタ)アクリレート重合体を5~40質量部の割合で含む、<1>または<2>に記載の樹脂組成物。
<4>前記(メタ)アクリレート重合体が、芳香族(メタ)アクリレート構成単位(b1)とメチルメタクリレート構成単位(b2)を、(b1)/(b2)の質量比が5~80/95~20となる割合で含む、<1>~<3>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<5>前記(メタ)アクリレート重合体の重量平均分子量が5,000~30,000である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<6>前記樹脂組成物を1.5mm厚の平板状試験片に成形したときのヘイズが2.0%以下である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<7>前記平板状試験片は、前記樹脂組成物を射出速度500mm/秒で射出成形したものである、<6>に記載の樹脂組成物。
<8>前記樹脂組成物をISO多目的試験片(4mm厚)に成形したときの、ISO179に準拠したノッチ無しシャルピー衝撃強さが80kJ/m以上である、<1>~<7>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<9>前記樹脂組成物をISO多目的試験片(4mm厚)に成形したときの、ISO75-1およびISO75-2に準拠した荷重1.80MPaにおける荷重たわみ温度が98℃以上である、<1>~<8>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<10>射出速度200mm/秒以上の射出成形用である、<1>~<9>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<11>携帯電子機器の薄肉筐体形成用である、<1>~<10>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<12><1>~<11>のいずれか1つに記載の樹脂組成物から形成された成形品。
<13>携帯電子機器の薄肉筐体である、<12>に記載の成形品。
<14><1>~<11>のいずれか1つに記載の樹脂組成物を、射出成形することを含む、成形品の製造方法。
<15>前記射出成形を射出速度200mm/秒以上で行う、<14>に記載の成形品の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、表面硬度が高く、高速成形の際や薄肉成形品を成形する際にも、白化を効果的に抑制でき、かつ、耐衝撃性および耐熱性に優れた樹脂組成物、ならびに、前記樹脂組成物を用いた成形品、および、成形品の製造方法を提供可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、各種物性値および特性値は、特に述べない限り、23℃におけるものとする。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さない基(原子団)と共に置換基を有する基(原子団)をも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。本明細書では、置換および無置換を記していない表記は、無置換の方が好ましい。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートの双方、または、いずれかを表す。
【0010】
本実施形態の樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂と、(メタ)アクリレート重合体を含み、ポリカーボネート樹脂は、式(1)で表される構成単位と、式(2)で表される構成単位を含み、式(1)で表される構成単位の含有量(質量部)≧式(2)で表される構成単位の含有量(質量部)≧(メタ)アクリレート重合体の含有量(質量部)を満たすことを特徴とする。
式(1)
【化5】

(式(1)中、Xは下記のいずれかの式を表し、
【化6】

3およびR4は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、ZはCと結合して炭素数6~12の、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素を形成する基を表す。)
式(2)
【化7】

(式(2)中、R1はメチル基を表し、R2は水素原子またはメチル基を表し、Xは下記のいずれかの式を表し、
【化8】

3およびR4は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、ZはCと結合して炭素数6~12の、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素を形成する基を表す。)
【0011】
このような構成とすることにより、表面硬度が高く、高速成形の際や薄肉成形品を成形する際にも、白化を効果的に抑制でき、かつ、耐衝撃性および耐熱性に優れた樹脂組成物を提供可能になる。
本実施形態のメカニズムは以下の通りであると推測される。すなわち、樹脂成分中の式(1)で表される構成単位の割合を多くすることによって、耐衝撃性と耐熱性を高めることができると推測される。そして、(メタ)アクリレート重合体を配合することにより、表面硬度と樹脂組成物の流動性を高くできると推測される。そして、流動性を高めることによって、高速成形性や薄肉成形品の成形性を高めることができる。しかしながら、本発明者が検討したところ、上記2成分のみを配合すると、樹脂組成物が白化してしまうことが分かった。そこで、種々検討した結果、樹脂成分中に式(2)で表される構成単位を配合し、3成分のブレンド比率を精密に調整することにより、白化を効果的に抑制できたと推測される。
以下、本実施形態の樹脂組成物について詳細に説明する。
【0012】
<ポリカーボネート樹脂>
本実施形態の樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂を含む。ポリカーボネート樹脂を用いることにより、耐衝撃性、耐熱性、透明性等のポリカーボネート樹脂が本来的に有する性能を効果的に利用することができる。
本実施形態で用いるポリカーボネート樹脂は、式(1)で表される構成単位と、式(2)で表される構成単位を、式(1)で表される構成単位の含有量(質量部)≧式(2)で表される構成単位の含有量(質量部)となるブレンド比で含む。式(1)で表される構成単位を含むことにより、樹脂組成物の耐衝撃性と耐熱性を向上させることができる。また、式(2)で表される構成単位を含むことにより、ポリカーボネート樹脂中の式(1)で表される構成単位と(メタ)アクリレート重合体の相溶性を向上させることができ、樹脂組成物の白化を効果的に抑制することができる。さらに、得られる成形品の表面硬度を向上させることができる。
【0013】
式(1)
【化9】

(式(1)中、Xは下記のいずれかの式を表し、
【化10】

3およびR4は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、ZはCと結合して炭素数6~12の、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素を形成する基を表す。)
式(2)
【化11】

(式(2)中、R1はメチル基を表し、R2は水素原子またはメチル基を表し、Xは下記のいずれかの式を表し、
【化12】

3およびR4は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、ZはCと結合して炭素数6~12の、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素を形成する基を表す。)
【0014】
<<式(1)で表される構成単位>>
本実施形態で用いるポリカーボネート樹脂は、式(1)で表される構成単位を含む。
式(1)
【化13】

(式(1)中、Xは下記のいずれかの式を表し、
【化14】

3およびR4は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、ZはCと結合して炭素数6~12の、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素を形成する基を表す。)
【0015】
ZがCと結合して形成される脂環式炭化水素としては、シクロヘキシリデン基、シクロヘプチリデン基、シクロドデシリデン基、アダマンチリデン基、シクロドデシリデン基等のシクロアルキリデン基が挙げられる。ZがCと結合して形成される置換基を有する脂環式炭化水素としては、上述した脂環式炭化水素基のメチル置換体、エチル置換体などが挙げられる。これらの中でも、シクロヘキシリデン基、シクロヘキシリデン基のメチル置換体(好ましくは3,3,5-トリメチル置換体)、シクロドデシリデン基が好ましい。
【0016】
式(1)中、Xは、
【化15】

である場合、RおよびRは、少なくとも一方がメチル基であることが好ましく、両方がメチル基であることがより好ましい。
またXが、
【化16】

の場合、Zは、上記式(1)中の2個のフェニル基と結合する炭素Cと結合して、炭素数6~12の2価の脂環式炭化水素基を形成するが、2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シキロヘキシリデン基、シクロヘプチリデン基、シクロドデシリデン基、アダマンチリデン基、シクロドデシリデン基等のシクロアルキリデン基が挙げられる。置換されたものとしては、これらのメチル置換基、エチル置換基を有するもの等が挙げられる。これらの中でも、シクロヘキシリデン基、シキロヘキシリデン基のメチル置換体(好ましくは3,3,5-トリメチル置換体)、シクロドデシリデン基が好ましい。
式(1)中、Xは下記構造が好ましい。
【化17】
【0017】
上記式(1)で表される構成単位の好ましい具体例としては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、すなわち、ビスフェノールAから構成される構成単位(カーボネート構成単位)である。
【0018】
本実施形態において、ポリカーボネート樹脂は、式(1)で表される構成単位を含まなくてもよいし、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。
【0019】
<<式(2)で表される構成単位>>
本実施形態で用いるポリカーボネート樹脂は、式(2)で表される構成単位を含むことが好ましい。
式(2)
【化18】

(式(2)中、R1はメチル基を表し、R2は水素原子またはメチル基を表し、Xは下記のいずれかの式を表し、
【化19】

3およびR4は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、ZはCと結合して炭素数6~12の、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素を形成する基を表す。)
式(2)中の2つのRは、それぞれ同一でも、異なっていてもよく、好ましくは同一である。Rは水素原子であることが好ましい。
【0020】
式(2)中、Xは、
【化20】

である場合、RおよびRは、少なくとも一方がメチル基であることが好ましく、両方がメチル基であることがより好ましい。
またXが、
【化21】

の場合、Zは、上記式(2)中の2個のフェニル基と結合する炭素Cと結合して、炭素数6~12の2価の脂環式炭化水素基を形成するが、2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シキロヘキシリデン基、シクロヘプチリデン基、シクロドデシリデン基、アダマンチリデン基、シクロドデシリデン基等のシクロアルキリデン基が挙げられる。置換されたものとしては、これらのメチル置換基、エチル置換基を有するもの等が挙げられる。これらの中でも、シクロヘキシリデン基、シキロヘキシリデン基のメチル置換体(好ましくは3,3,5-トリメチル置換体)、シクロドデシリデン基が好ましい。
式(2)中、Xは下記構造が好ましい。
【化22】
【0021】
本実施形態では、ポリカーボネート樹脂は、式(2)で表される構成単位を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。
【0022】
本実施形態において、ポリカーボネート樹脂は、式(1)で表される構成単位および式(2)で表される構成単位以外の他の構成単位を含んでいてもよい。他の構成単位としては、以下に示すジヒドロキシ化合物由来の構成単位が例示される。
【0023】
ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-(1-メチルエチル)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-(1-メチルプロピル)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-シクロヘキシルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-(1-メチルエチル)フェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチルフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-(1-メチルプロピル)フェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-シクロヘキシルフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-35-ジメチルフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-(1-メチルエチル)フェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチルフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-(1-メチルプロピル)フェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-シクロヘキシルフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロオクタン、4,4’-(1,3-フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール、4,4’-(1,4-フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’-ジヒドロキシフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-6-メチル-3-tert-ブチルフェニル)ブタン。
【0024】
また、他の構成単位の一実施形態として、国際公開第2017/099226号の段落0008に記載の式(2)で表される構成単位、国際公開第2017/099226号の段落0043~0052の記載、特開2011-046769号公報の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0025】
本実施形態で用いるポリカーボネート樹脂において、式(1)で表される構成単位と式(2)で表される構成単位の比率は、式(1)で表される構成単位の含有量(質量部)≧式(2)で表される構成単位の含有量(質量部)である限り、特に定めるものではない。好ましくは、式(1)で表される構成単位の割合は、式(1)で表される構成単位と式(2)で表される構成単位を100質量部としたとき、50質量部以上であり、好ましくは55質量部以上であり、さらに好ましくは60質量部以上であり、一層好ましくは65質量部以上である。前記式(1)で表される構成単位の割合の上限値は、85質量部以下であることが好ましい。また、本実施形態で用いるポリカーボネート樹脂において、式(2)で表される構成単位の割合は、式(1)で表される構成単位と式(2)で表される構成単位を100質量部としたとき、50質量部以下であり、より好ましくは45質量部以下であり、さらに好ましくは40質量部以下、一層好ましくは35質量部以下である。また、前記式(2)で表される構成単位の割合の下限値は、式(1)で表される構成単位と式(2)で表される構成単位を100質量部としたとき、15質量部以上であることが好ましい。
【0026】
本実施形態で用いるポリカーボネート樹脂における、上記式(1)で表される構成単位と式(2)で表される構成単位の合計は、末端基を除く全構成単位の90質量%以上を占めることが好ましく、95質量%以上を占めることがより好ましく、99質量%以上を占めることがさらに好ましい。前記合計の上限としては、100質量%以下である。
【0027】
また、本実施形態で用いるポリカーボネート樹脂は、式(1)で表される構成単位53~90モル%と、式(2)で表される構成単位47~10モル%を含むことが好ましい。前記式(1)で表される構成単位の割合は、好ましくは58モル%以上であり、より好ましくは62モル%以上であり、一層好ましくは67モル%以上である。前記式(1)で表される構成単位の割合の上限値は、86モル%以下であることが好ましい。また、前記式(2)で表される構成単位の割合は、式(1)で表される構成単位と式(2)で表される構成単位を100モル%としたとき、好ましくは42モル%以下であり、より好ましくは38モル%以下であり、一層好ましくは33モル%以下である。また、前記式(2)で表される構成単位の割合の下限値は、式(1)で表される構成単位と式(2)で表される構成単位を100モル%としたとき、14モル%以上であることが好ましい。
【0028】
本実施形態で用いるポリカーボネート樹脂における、上記式(1)で表される構成単位と式(2)で表される構成単位の合計は、末端基を除く全構成単位の90モル%以上を占めることが好ましく、95モル%以上を占めることがより好ましく、99モル%以上を占めることがさらに好ましい。前記合計の上限としては、100モル%以下である。
【0029】
本実施形態で用いるポリカーボネート樹脂は、以下の形態が好ましい。本実施形態では、(A1)または(A2)が好ましく、(A1)がより好ましい。
(A1)式(1)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂と、式(2)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂のブレンド物
(A2)式(1)で表される構成単位と式(2)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂
(A3)式(1)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂と、式(1)で表される構成単位と式(2)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂のブレンド物
(A4)式(2)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂と、式(1)で表される構成単位と式(2)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂のブレンド物
(A5)式(1)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂と、式(2)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂と、式(1)で表される構成単位と式(2)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂のブレンド物
(A6)上記(A1)~(A5)において、ポリカーボネート樹脂またはそのブレンド物を構成するポリカーボネート樹脂が式(1)で表される構成単位と式(2)で表される構成単位以外の他の構成単位を含むポリカーボネート樹脂
(A7)上記(A1)~(A6)のポリカーボネート樹脂またはブレンド物と、他の構成単位とからなるポリカーボネート樹脂とのブレンド物
【0030】
本実施形態で用いるポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、下限値が5,000以上であることが好ましく、8,000以上であることがより好ましく、10,000以上であることがさらに好ましく、12,000以上であることが一層好ましい。また、Mvの上限値は、32,000以下であることが好ましく、30,000以下であることがより好ましく、29,000以下であることがさらに好ましく、27,000以下であることが一層好ましく、25,000以下であることがより一層好ましい。
2種以上のポリカーボネート樹脂を含む場合は、各ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量に質量分率をかけた値の合計とする。
粘度平均分子量を上記下限値以上とすることにより、成形性が向上し、かつ、機械的強度の高い成形品が得られる。また、上記上限値以下とすることにより、成形品の流動性が向上し、薄肉の成形品なども効率的に製造することができる。
特に、式(1)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、20,000~30,000であることが好ましく、20,000~25,000であることがより好ましい。また、式(2)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、12,000~28,000であることが好ましく、18,000~27,000であることがより好ましい。
粘度平均分子量(Mv)は、後述する実施例に記載の方法に従って測定される。
【0031】
本実施形態で用いるポリカーボネート樹脂(式(1)で表される構成単位と式(2)で表される構成単位を含む全ポリカーボネート樹脂)は、ISO 15184に従って測定した鉛筆硬度が3B~2Hであることが例示され、2B~2Hが好ましい。鉛筆硬度は、後述する実施例に記載の方法に従って測定される。
特に、式(1)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂の鉛筆硬度は、2B~HBであることが好ましく、式(2)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂の鉛筆硬度は、H~2Hであることが好ましい。
【0032】
本実施形態で用いるポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されないが、例えば、特開2014-065901号公報の段落0027~0043および実施例の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0033】
本実施形態の樹脂組成物におけるポリカーボネート樹脂の含有量は、70質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましく、77質量%以上であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることにより、樹脂組成物から形成された成形品の衝撃強度および耐熱性がより向上する傾向にある。また、前記上限値以下とすることにより、樹脂組成物のから形成された成形品の表面硬度、および、樹脂組成物の流動性等の観点から、97質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましく、92質量%以下であることがさらに好ましく、88質量%以下であってもよい。
【0034】
<(メタ)アクリレート重合体>
本実施形態の樹脂組成物は、(メタ)アクリレート重合体を含む。(メタ)アクリレート重合体を含むことにより、樹脂組成物から形成される成形品の表面硬度を高めることができ、また、樹脂組成物の流動性を高めることができる。すなわち、高速成形性や薄肉成形品の成形性を高めることができる。
本実施形態で用いる(メタ)アクリレート重合体は、その種類等定めるものではなく、公知の(メタ)アクリレート重合体を用いることができる。本実施形態で用いる(メタ)アクリレート重合体は、芳香族(メタ)アクリレート構成単位とメチルメタクリレート構成単位を含むことが好ましい。芳香族(メタ)アクリレート構成単位を含むことにより、ポリカーボネート樹脂との相溶性を高めることができ、メチルメタクリレート構成単位を含むことにより、樹脂組成物から形成される成形品の表面硬度を高めることができる。
【0035】
芳香族(メタ)アクリレート構成単位を構成する単量体である芳香族(メタ)アクリレートとは、芳香族基を有する(メタ)アクリレートのことをいう。芳香族(メタ)アクリレートとしては、例えば、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートを挙げることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、好ましくはフェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレートであり、より好ましくはフェニルメタクリレートである。
【0036】
メチルメタクリレート構成単位を構成する単量体は、メチルメタクリレートである。
【0037】
本実施形態で用いる(メタ)アクリレート重合体が、芳香族(メタ)アクリレート構成単位(b1)とメチルメタクリレート構成単位(b2)を含む場合、(b1)/(b2)の質量比が5~80/95~20であることが好ましい。(b1)/(b2)の質量比は、20~60/80~40であることがより好ましく、25~50/75~50であることがさらに好ましく、25~45/75~55であることが一層好ましく、30~40/70~60であることがより一層好ましい。
本実施形態で用いる(メタ)アクリレート重合体が、芳香族(メタ)アクリレート構成単位(b1)とメチルメタクリレート構成単位(b2)を含む場合、他の構成単位を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。他の構成単位を含む場合、スチレン構成単位、ならびに、(b1)と(b2)以外の(メタ)アクリレート構成単位が好ましく、(b1)と(b2)以外の(メタ)アクリレート構成単位がより好ましい。(b1)と(b2)以外の(メタ)アクリレート構成単位としては、メチルメタクリレート以外の脂肪族(メタ)アクリレートが例示される。
本実施形態で用いる(メタ)アクリレート重合体は、芳香族(メタ)アクリレート構成単位(b1)とメチルメタクリレート構成単位(b2)の合計が、末端基を除く全構成単位の90質量%以上を占めることが好ましく、95質量%以上を占めることがより好ましく、99質量%以上を占めることがさらに好ましい。前記合計の上限は末端基を除く全構成単位の100質量%以下であってもよい。
【0038】
本実施形態で用いられるアクリル樹脂は、上述の他、国際公開第2014/038500号、国際公開第2013/094898号公報、特開2006-199774号公報、特開2010-116501号公報、特開2014-065901号公報、特開2016-27068号公報に記載のものを採用することができ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0039】
本実施形態で用いる(メタ)アクリレート重合体の重量平均分子量は、好ましくは5,000以上であり、より好ましくは10,000以上であり、さらに好ましくは13,000以上である。前記下限値以上とすることにより、得られる成形品の衝撃強度、耐熱性がより向上する傾向にある。また、(メタ)アクリレート重合体の重量平均分子量は、好ましくは30,000以下であり、より好ましくは25,000以下であり、さらに好ましくは20,000以下であり、一層好ましくは16,000以下である。前記上限値以下とすることにより、樹脂組成物の流動性がより向上する傾向にある。
【0040】
本実施形態で用いる(メタ)アクリレート重合体のISO 15184に従って測定した鉛筆硬度は、2Hまたはそれよりも硬いことが好ましい。上限値は特に定めるものではないが、4Hまたはそれよりも柔らかいことが実際的である。鉛筆硬度が前記硬さより硬いものを用いることにより、得られる成形品の表面硬度を向上させることができる。
また、前記(メタ)アクリレート重合体のISO 15184に従って測定した鉛筆硬度は、実施形態で用いるポリカーボネート樹脂の鉛筆硬度よりも硬いことが好ましく、1~3段階硬いことがより好ましい。このような鉛筆硬度を有する(メタ)アクリレート重合体を用いることにより、得られる成形品の表面硬度を向上させることができる。
また、本実施形態の樹脂組成物が、2種以上の(メタ)アクリレート重合体を含む場合は、混合物の鉛筆硬度が上記範囲であることが好ましい。
【0041】
本実施形態の樹脂組成物における(メタ)アクリレート重合体の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、5質量部以上であることが好ましく、8質量部以上であることがより好ましく、10質量部以上であることがさらに好ましく、15質量部以上であってもよい。前記下限値以上とすることにより、樹脂組成物から形成される成形品の表面硬度、および、樹脂組成物の流動性がより向上する傾向にある。また、本実施形態の樹脂組成物における(メタ)アクリレート重合体の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、40質量部以下であることが好ましく、32質量部以下であることがより好ましく、30質量部以下であることがさらに好ましく、28質量部以下であることが一層好ましく、24質量部以下であってもよい。前記上限値以下とすることにより、樹脂組成物から形成される成形品の衝撃強度がより向上する傾向にあり、また、樹脂組成物の耐熱性の低下を効果的に抑制できる傾向にある。特に、本実施形態の樹脂組成物における(メタ)アクリレート重合体の含有量をポリカーボネート樹脂100質量部に対し、24質量部以下とすることにより、より耐衝撃性に優れた樹脂組成物が得られる。
【0042】
本実施形態の樹脂組成物中の(メタ)アクリレート重合体の含有量は、3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、8質量%以上であることがさらに好ましく、12質量%以上であってもよい。前記下限値以上とすることにより、樹脂組成物から形成された成形品の表面硬度、および、樹脂組成物の流動性がより向上する傾向にある。また、本実施形態の樹脂組成物中の(メタ)アクリレート重合体の含有量は、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましく、23質量%以下であることがさらに好ましい。前記上限値以下とすることにより、樹脂組成物から形成される成形品の衝撃強度がより向上する傾向にあり、また、樹脂組成物の耐熱性の低下を効果的に抑制できる傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、(メタ)アクリレート重合体を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0043】
次に、式(1)で表される構成単位、式(2)で表される構成単位、および、(メタ)アクリレート重合体のブレンド比について説明する。
本実施形態の樹脂組成物においては、式(1)で表される構成単位の含有量(質量部)≧式(2)で表される構成単位の含有量(質量部)≧(メタ)アクリレート重合体の含有量(質量部)を満たし、式(1)で表される構成単位の含有量(質量部)≧式(2)で表される構成単位の含有量(質量部)>(メタ)アクリレート重合体の含有量(質量部)を満たすことが好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、また、式(1)で表される構成単位、式(2)で表される構成単位、および、(メタ)アクリレート重合体の合計が樹脂組成物の90質量%以上を占めることが好ましく、95質量%以上を占めることがより好ましく、99質量%以上を占めることがさらに好ましい。前記合計の上限は、100質量%以下である。
【0044】
<その他の成分>
本実施形態の樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂と(メタ)アクリレート重合体に加え、所望の諸物性を著しく損なわない限り、必要に応じて、上記以外の他成分を含有していてもよい。その他の成分の例を挙げると、各種樹脂添加剤などが挙げられる。
樹脂添加剤としては、例えば、安定剤(熱安定剤、酸化防止剤等)、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、染料、顔料、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。なお、樹脂添加剤は1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせおよび比率で含有されていてもよい。これらの詳細は、特開2014-065901号公報の段落0059~0080の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
本実施形態の樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂と(メタ)アクリレート重合体と、必要に応じ配合される樹脂添加剤(例えば、安定剤)の合計が100質量%となるように調整される。
【0045】
<<安定剤>>
安定剤としては、熱安定剤や酸化防止剤が挙げられる。
熱安定剤としては、リン系安定剤が好ましく用いられる。
リン系安定剤としては、公知の任意のものを使用できる。具体例を挙げると、リン酸、ホスホン酸、亜リン酸、ホスフィン酸、ポリリン酸などのリンのオキソ酸;酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウムなどの酸性ピロリン酸金属塩;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛など第1族または第2B族金属のリン酸塩;有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物、有機ホスホナイト化合物などが挙げられるが、有機ホスファイト化合物が特に好ましい。
【0046】
有機ホスファイト化合物としては、トリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニル/ジノニル・フェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステアリルホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト等が挙げられる。
このような、有機ホスファイト化合物としては、具体的には、例えば、ADEKA社製「アデカスタブ(登録商標。以下同じ)1178」、「アデカスタブ2112」、「アデカスタブHP-10」、城北化学工業社製「JP-351」、「JP-360」、「JP-3CP」、BASF社製「イルガフォス(登録商標。以下同じ)168」等が挙げられる。
【0047】
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系安定剤が好ましく用いられる。
ヒンダードフェノール系安定剤の具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナミド]、2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフェート、3,3’,3’’,5,5’,5’’-ヘキサ-tert-ブチル-a,a’,a’’-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノール、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
【0048】
なかでも、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。このようなヒンダードフェノール系安定剤としては、具体的には、例えば、BASF社製「Irganox(登録商標。以下同じ)1010」、「Irganox1076」、ADEKA社製「アデカスタブAO-50」、「アデカスタブAO-60」等が挙げられる。
【0049】
本実施形態の樹脂組成物における安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.005質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.3質量部以下である。安定剤の含有量を前記範囲とすることにより、安定剤の添加効果がより効果的に発揮される。
本実施形態の樹脂組成物は、安定剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0050】
<樹脂組成物の物性>
本実施形態の樹脂組成物は、成形品としたときの表面硬度が高いことが好ましい。具体的には、本実施形態の樹脂組成物を平板状試験片(150mm×100mm×2mm厚)に成形し、ISO 15184に準拠し、鉛筆硬度試験機を用いて、750g荷重にて測定した鉛筆硬度がHBまたはそれより硬いことが好ましく、Fまたはそれより硬いことがより好ましい。前記鉛筆硬度の硬さの上限は、例えば、3Hまたはそれより柔らかいことが挙げられる。
鉛筆硬度は、後述する実施例の記載に従って測定される。
【0051】
本実施形態の樹脂組成物は、流動性が高いことが好ましい。具体的には、ISO1133に準拠して、測定温度300℃、荷重11.8Nの条件下におけるメルトボリュームレイト(MVR、単位:cm/10min)が65cm/10min以下であることが好ましく、60cm/10min以下であることがより好ましく、55cm/10min以下であることがさらに好ましく、52cm/10min以下であることが一層好ましく、49cm/10min以下であってもよい。また、前記MVRの下限値は、25cm/10min以上が実際的であり、30cm/10min以上であってもよい。
MVRは、後述する実施例の記載に従って測定される。
【0052】
本実施形態の樹脂組成物は、耐衝撃性に優れていることが好ましい。具体的には、本実施形態の樹脂組成物をISO多目的試験片(4mm厚)に成形したときの、ISO179に準拠したノッチ無しシャルピー衝撃強さが80kJ/m以上であることが好ましく、90kJ/m以上であることがより好ましく、100kJ/m以上であることがさらに好ましく、110kJ/m以上であることが一層好ましく、120kJ/m以上であることがより一層好ましい。上限値については、NBである(割れない)ことが好ましい。
ノッチ無しシャルピー衝撃強さは、後述する実施例の記載に従って測定される。
【0053】
本実施形態の樹脂組成物は、耐熱性に優れていることが好ましい。具体的には、本実施形態の樹脂組成物をISO多目的試験片(4mm厚)に成形したときの、ISO75-1およびISO75-2に準拠した荷重1.80MPaにおける荷重たわみ温度が98℃以上であることが好ましく、99℃以上であることがさらに好ましく、100℃以上であることが一層好ましく、102℃以上であることより一層好ましい。また、前記荷重たわみ温度の上限は特に定めるものではないが、120℃以下が実際的であり、115℃以下、112℃以下であっても十分に要求性能を満たすものである。
荷重たわみ温度は、後述する実施例の記載に従って測定される。
【0054】
本実施形態の樹脂組成物は、透明性に優れていることが好ましい。具体的には、本実施形態の樹脂組成物を1.5mm厚の平板状試験片に成形したときのヘイズが2.0%以下であることが好ましく、1.8%以下であることがより好ましく、1.4%以下であることがさらに好ましく、1.2%以下であることが一層好ましく、1.0%以下であることがより一層好ましい。また、前記ヘイズの下限値は、0%が理想であるが、0.1%以上が実際的である。本実施形態の樹脂組成物においては、前記平板状試験片が、前記樹脂組成物を高速成形(例えば、射出速度500mm/秒)で射出成形したものである場合に上記ヘイズを満たすことが特に好ましい。また、成形温度が高い(例えば、300℃)場合に上記ヘイズを満たすことが好ましい。
ヘイズは、後述する実施例の記載に従って測定される。
【0055】
<樹脂組成物の製造方法>
本実施形態の樹脂組成物の製造方法に制限はなく、公知の樹脂組成物の製造方法を広く採用でき、上記ポリカーボネート樹脂および(メタ)アクリレート重合体、ならびに、必要に応じて配合されるその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。なお、溶融混練の温度は特に制限されないが、通常240~320℃の範囲である。
【0056】
<成形品>
本実施形態の成形品は、本実施形態の樹脂組成物から形成された成形品である。従って、本実施形態の成形品は、表面硬度が高く、ヘイズが低く、耐衝撃性および耐熱性に優れたものとすることができる。
成形品の形状としては、特に制限はなく、成形品の用途、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、板状、プレート状、ロッド状、シート状、フィルム状、円筒状、環状、円形状、楕円形状、多角形形状、異形品、中空品、枠状、箱状、パネル状のもの等、また特殊な形状のもの等、各種形状のものが挙げられる。
本実施形態の成形品は、薄肉成形品に適している。例えば、厚さが0.8mm以下の薄肉部を有する薄肉成形品に好ましく用いることができる。前記薄肉部の厚さの下限は特に定めるものではないが、例えば、0.1mm以上とすることが挙げられる。
【0057】
本実施形態の樹脂組成物を成形した成形品は、表面硬度が高く、ヘイズが低く、耐衝撃性および耐熱性に優れるので、例えば、以下のようなものに好ましく適用できる。すなわち、本実施形態の樹脂組成物は、建物(ビル、家屋、温室等)の窓ガラス;車、飛行機、建設機械の窓ガラス;ガレージ、アーケード等の屋根;サンルーフ、ルーフパネル、日除け;各種のぞき窓;照灯用レンズ、信号機レンズ、光学機器のレンズ;レンズカバー;ミラー、眼鏡、ゴーグル、バイクの風防;太陽電池カバー;保護カバー;ヘッドランプ、インナーレンズ、リアランプ等の各種自動車用ランプカバー;自動車内装パネル;ディスプレイ装置用カバー、表示パネル用部材、遊技機(パチンコ等)用部品;各種携帯端末、カメラ、ゲーム機等、電気電子機器やOA機器の筺体;ヘルメット;シート、フィルムおよびその積層体等の用途の成形用として、好ましく用いられる。
本実施形態の成形品は、携帯電子機器(携帯電話、スマートフォン等)の筐体に好ましく用いられ、携帯電子機器の薄肉筐体により好ましく用いられる。携帯電子機器の筐体の一例は、背面板である。
【0058】
本実施形態の成形品は、表面に硬化物層を有していてもよい。硬化物層を形成することで、成形品に、さらに高い表面硬度を付与することができる。また、硬化物層を設けることにより、本実施形態の樹脂組成物から形成された成形品そのものの表面硬度を多少下げることもでき、本実施形態の樹脂組成物において、式(2)で表される構成単位の比率および/または(メタ)アクリル重合体の割合を減らすことができ、より安価に、成形品の耐衝撃性や耐熱性を向上させることができる。硬化物層としては、エネルギー線硬化性アクリル系樹脂組成物の硬化物層が例示される。硬化物層の詳細は、特開2014-065901号公報の段落0086~0091の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0059】
<成形品の製造方法>
本実施形態の樹脂組成物は、ペレットとした後、各種の成形法で成形して成形品とされる。またペレットを経由せずに、押出機で溶融混練された樹脂を直接、成形して成形品にすることもできる。
【0060】
成形品を成形する方法としては、特に制限されず、従来公知の成形法を採用でき、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、異形押出法、トランスファー成形法、中空成形法、ガスアシスト中空成形法、ブロー成形法、押出ブロー成形、IMC(インモールドコ-ティング成形)成形法、回転成形法、多層成形法、2色成形法、インサート成形法、サンドイッチ成形法、発泡成形法、加圧成形法等が挙げられる。
また、押出成形によりシートやフィルム等として使用してもよい。シートやフィルムとして使用する場合の詳細は、特開2014-065901号公報の段落0083の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0061】
本実施形態においては、本実施形態の樹脂組成物を射出成形することによって成形品を製造することが好ましい。従って、本実施形態の樹脂組成物は、射出成形用に好ましく用いられる。本実施形態の樹脂組成物から成形された成形品は白化の問題がほとんどなく、外観に優れる成形品が得られる。特に、高温および/または高速で薄肉成形行う際、成形品の端部が白化してしまう現象が発生し易いが、本実施形態の樹脂組成物を用いることにより、高温および/または高速で薄肉成形を行っても白化を効果的に抑制できる。
本実施形態の樹脂組成物を成形する場合、シリンダー温度を、例えば、260℃以上、さらには270℃以上、280℃以上、290℃以上、300℃以上としても、白化現象を効果的に抑制することができ、外観に優れた成形品が得られる。前記シリンダー温度の上限は、330℃以下が好ましく、320℃以下がより好ましい。また、本実施形態の樹脂組成物を用いることにより、射出速度が、200mm/秒以上、さらには500mm/秒以上の条件であっても、白化現象を起こすことなく、外観に優れた成形品が得られる。射出速度の上限は、例えば、1,000mm/秒以下である。
【実施例
【0062】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
実施例で用いた測定機器等が廃番等により入手困難な場合、他の同等の性能を有する機器を用いて測定することができる。
【0063】
1.原料
<製造例1:ポリカーボネート樹脂A2-1の製造>
ビスフェノールC(BPC)26.14モル(6.75kg)と、ジフェニルカーボネート26.79モル(5.74kg)を、撹拌機および留出凝縮装置付きのアルミ(SUS)製反応器(内容積10リットル)内に入れ、反応器内を窒素ガスで置換後、窒素ガス雰囲気下で220℃まで30分間かけて昇温した。
次いで、反応器内の反応液を撹拌し、溶融状態下の反応液にエステル交換反応触媒として炭酸セシウム(CsCO)を、BPC1モルに対し1.5×10-6モルとなるように加え、窒素ガス雰囲気下、220℃で30分、反応液を撹拌醸成した。次に、同温度下で反応器内の圧力を40分かけて100Torrに減圧し、さらに、100分間反応させ、フェノールを留出させた。
次に、反応器内の温度を60分かけて284℃まで上げるとともに3Torrまで減圧し、留出理論量のほぼ全量に相当するフェノールを留出させた。次に、同温度下で反応器内の圧力を1Torr未満に保ち、さらに60分間反応を続け、重縮合反応を終了させた。このとき、撹拌機の撹拌回転数は38回転/分であり、反応終了直前の反応液温度は289℃、撹拌動力は1.00kWであった。
次に、溶融状態のままの反応液を二軸押出機に送入し、炭酸セシウムに対して4倍モル量のp-トルエンスルホン酸ブチルを二軸押出機の第1供給口から供給し、反応液と混練し、その後、反応液を二軸押出機のダイを通してストランド状に押し出し、カッターで切断してポリカーボネート樹脂A2-1のペレットを得た。
【0064】
<製造例2:ポリカーボネート樹脂A2-2の製造>
ビスフェノールC(BPC)26.14モル(6.75kg)と、ジフェニルカーボネート26.79モル(5.74kg)を、撹拌機および留出凝縮装置付きのアルミ(SUS)製反応器(内容積10リットル)内に入れ、反応器内を窒素ガスで置換後、窒素ガス雰囲気下で220℃まで30分間かけて昇温した。
次いで、反応器内の反応液を撹拌し、溶融状態下の反応液にエステル交換反応触媒として炭酸セシウム(CsCO)を、BPC1モルに対し1.5×10-6モルとなるように加え、窒素ガス雰囲気下、220℃で30分間、反応液を撹拌醸成した。次に、同温度下で反応器内の圧力を40分かけて100Torrに減圧し、さらに、100分間反応させ、フェノールを留出させた。
次に、反応器内の温度を60分かけて284℃まで上げるとともに3Torrまで減圧し、留出理論量のほぼ全量に相当するフェノールを留出させた。次に、同温度下で反応器内の圧力を1Torr未満に保ち、さらに60分間反応を続け、重縮合反応を終了させた。このとき、撹拌機の撹拌回転数は38回転/分であり、反応終了直前の反応液温度は289℃、撹拌動力は0.60kWであった。
次に、溶融状態のままの反応液を二軸押出機に送入し、炭酸セシウムに対して4倍モル量のp-トルエンスルホン酸ブチルを二軸押出機の第1供給口から供給し、反応液と混練し、その後、反応液を二軸押出機のダイを通してストランド状に押し出し、カッターで切断してポリカーボネート樹脂A2-2のペレットを得た。
【0065】
下記表1に記載の原料を用いた。
【表1】
【0066】
<ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)の測定>
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度20℃での極限粘度(η)(単位:dL/g)を求め、以下のSchnellの粘度式から算出した。
η=1.23×10-4Mv0.83
【0067】
<ポリカーボネート樹脂の鉛筆硬度の測定>
ポリカーボネート樹脂ペレットを100℃で5時間乾燥した後、射出成形機(ファナック株式会社製「α-2000i-150B」)を用い、シリンダー設定温度260℃、金型温度70℃にて、スクリュー回転数100rpm、射出速度30mm/秒の条件下にて、平板状試験片(150mm×100mm×2mm厚)を作製した。
上記で得られた平板状試験片(150mm×100mm×2mm厚)について、ISO 15184に準拠し、鉛筆硬度試験機を用いて、750g荷重にて測定した鉛筆硬度を求めた。
鉛筆硬度試験機は、東洋精機(株)製のものを用いた。
【0068】
<(メタ)アクリレート重合体の重量平均分子量(Mw)>
(メタ)アクリレート重合体の重量平均分子量はクロロホルムを溶媒としてゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定したポリスチレン(PS)換算の値である。
【0069】
<(メタ)アクリレート重合体の鉛筆硬度の測定>
(メタ)アクリレート重合体を80℃で5時間乾燥した後、射出成形機(ファナック株式会社製「α-2000i-150B」)を用い、シリンダー設定温度240℃、金型温度70℃にて、スクリュー回転数100rpm、射出速度30mm/秒の条件下にて、平板状試験片(150mm×100mm×2mm厚)を作製した。
上記で得られた平板状試験片(150mm×100mm×2mm厚)について、ISO 15184に準拠し、鉛筆硬度試験機を用いて、750g荷重にて測定した鉛筆硬度を求めた。
鉛筆硬度試験機は、東洋精機(株)製のものを用いた。
【0070】
2.実施例1~実施例12、比較例1~比較例5
<樹脂組成物ペレットの製造>
上記表1に記載した各成分を、下記の表2~表4に示す割合(特記しない限り、質量部にて表示)にて配合し、タンブラーミキサーにて均一に混合した後、二軸押出機((株)日本製鋼所社製TEX30α)を用いて、シリンダー設定温度260℃、スクリュー回転数180rpm、吐出量30kg/hrにて押出機上流部のバレルより押出機にフィードし、溶融混練して樹脂組成物ペレットを得た。
【0071】
<ポリカーボネート樹脂中の式(2)の比率(mol%)>
後述する表2~表4における「ポリカーボネート樹脂中の式(2)の比率(mol%)」は、ポリカーボネート樹脂100mol%中の式(2)で表される構成単位の含有量を示す指標であり、用いた樹脂の混合比率および式(2)で表される構成単位の分子量を用いて算出した。
【0072】
<樹脂組成物の鉛筆硬度の測定>
樹脂組成物ペレットを100℃で5時間乾燥した後、射出成形機(ファナック株式会社製「α-2000i-150B」)を用い、シリンダー設定温度280℃、金型温度70℃にて、スクリュー回転数100rpm、射出速度30mm/秒の条件下にて、平板状試験片(150mm×100mm×2mm厚)を作製した。
上記で得られた平板状試験片について、ISO 15184に準拠し、鉛筆硬度試験機を用いて、750g荷重にて測定した鉛筆硬度を求めた。
鉛筆硬度試験機は、東洋精機(株)製のものを用いた。
【0073】
<メルトボリュームレイト(MVR)>
上記樹脂組成物ペレットを100℃で5時間乾燥した後、メルトインデクサーにて、ISO1133に準拠して、測定温度300℃、荷重11.8Nの条件下で、MVR(単位:cm/10min)を測定した。
メルトインデクサーは、東洋精機社製のものを用いた。
【0074】
<ISO多目的試験片の作製>
上記樹脂組成物ペレットを80℃で5時間乾燥した後、射出成形機(日本製鋼所社製「J55-60H」)を用い、シリンダー設定温度280℃、金型温度70℃、スクリュー回転数100rpmの条件下にて、射出時間2.0秒、成形サイクル40秒の条件で、ISO多目的試験片(4mm厚)を成形した。
【0075】
<ノッチ無しシャルピー衝撃強さ>
ISO179に準拠して、上記ISO多目的試験片(4mm厚)について、23℃の温度でノッチ無しシャルピー衝撃強さ(単位:kJ/m)を測定した。
【0076】
<荷重たわみ温度>
上記ISO多目的試験片(4mm厚)を用い、ISO75-1およびISO75-2に準拠して、荷重1.80MPaの条件で、荷重たわみ温度(単位:℃)を測定した。
【0077】
<成形時の白化ヘイズ(%)>
上記で得られた樹脂組成物ペレットを100℃で5時間乾燥した後、射出成形機(住友重機械工業社製「SE100DU」)を用い、シリンダー設定温度300℃、金型温度70℃、スクリュー回転数100rpm、射出速度500mm/秒の条件下にて、90mm×60mm×1.5mm厚の平板状試験片を射出成形した。
上記で得られた平板状試験片について、ヘイズメーターを用いてヘイズ(単位:%)を測定した。
ヘイズメーターは、日本電色工業(株)製のNDH-2000型ヘイズメーターを用いた。
【0078】
【表2】
【0079】
【表3】
【0080】
【表4】
【0081】
上記結果から明らかなとおり、本発明の樹脂組成物は、成形品としたときの表面硬度が高く、高速成形の際や薄肉成形品を形成する際にも、白化を効果的に抑制でき、かつ、耐衝撃性および耐熱性に優れたものであった(実施例1~12)。これに対し、ポリカーボネート樹脂が式(2)で表される構成単位を含まない場合(比較例1、2)、白化が起こってしまい、ヘイズが高かった。また、(メタ)アクリレート重合体の含有量が多い場合(比較例3、4)、耐衝撃性が劣っていた。さらに、ポリカーボネート樹脂における式(1)で表される構成単位の割合が少ない場合(比較例5)、耐衝撃性や耐熱性が劣っていた。