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特許7567317光反射用熱硬化性樹脂組成物、光半導体素子搭載用基板及び光半導体装置
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  • 特許-光反射用熱硬化性樹脂組成物、光半導体素子搭載用基板及び光半導体装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】光反射用熱硬化性樹脂組成物、光半導体素子搭載用基板及び光半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/68 20060101AFI20241008BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20241008BHJP
   C08K 3/32 20060101ALI20241008BHJP
   C08K 3/38 20060101ALI20241008BHJP
   C08K 7/24 20060101ALI20241008BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20241008BHJP
   H01L 33/60 20100101ALI20241008BHJP
【FI】
C08G59/68
C08K3/013
C08K3/32
C08K3/38
C08K7/24
C08L63/00 C
H01L33/60
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020159593
(22)【出願日】2020-09-24
(65)【公開番号】P2022053019
(43)【公開日】2022-04-05
【審査請求日】2023-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100221992
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真由美
(72)【発明者】
【氏名】山本 高士
(72)【発明者】
【氏名】須藤 光
(72)【発明者】
【氏名】中村 龍汰
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 由則
【審査官】古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-130476(JP,A)
【文献】国際公開第2013/146081(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/013257(WO,A1)
【文献】特開2010-047740(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/68
C08K 3/013
C08K 3/32
C08K 3/38
C08K 7/24
C08L 63/00
H01L 33/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂、硬化剤、リン系硬化促進剤、無機充填剤、及び白色顔料を含有し、
前記リン系硬化促進剤が、ホスホニウム・ボレート塩と、ホスホニム・ホスフェート塩とを含み、
前記ホスホニウム・ボレート塩の含有量が、前記エポキシ樹脂の100質量部に対して、0.4~2.2質量部であり、前記ホスホニウム・ホスフェート塩の含有量が、前記エポキシ樹脂の100質量部に対して、0.2~1.0質量部である、光反射用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記硬化剤が、酸無水物系硬化剤を含む、請求項に記載の光反射用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記無機充填剤が、中心粒径が1~25μmの無機中空粒子を含む、請求項1又は2に記載の光反射用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記白色顔料が、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン及び酸化ジルコニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の光反射用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載の光反射用熱硬化性樹脂組成物の硬化物を備える、光半導体素子搭載用基板。
【請求項6】
底面及び壁面から構成される凹部を有し、当該凹部の前記底面が光半導体素子の搭載部であり、
前記凹部の前記壁面の少なくとも一部が、請求項1~のいずれか一項に記載の光反射用熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる、光半導体素子搭載用基板。
【請求項7】
基板と、当該基板上に設けられた第1の接続端子及び第2の接続端子とを備え、
前記第1の接続端子と前記第2の接続端子との間に、請求項1~のいずれか一項に記載の光反射用熱硬化性樹脂組成物の硬化物を有する、光半導体素子搭載用基板。
【請求項8】
請求項のいずれか一項に記載の光半導体素子搭載用基板と、当該光半導体素子搭載用基板に搭載された光半導体素子と、を有する、光半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光反射用熱硬化性樹脂組成物、光半導体素子搭載用基板及び光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)等の光半導体素子と蛍光体とを組み合わせた光半導体装置は、エネルギー効率が高く、寿命が長いことから、屋外用ディスプレイ、携帯液晶バックライト、車載用途等の様々な用途に使用され、その需要が拡大している。これに伴い、LEDデバイスの高輝度化が進んでおり、素子の発熱量増大によるジャンクション温度の上昇、又は、直接的な光エネルギーの増大による光半導体装置の劣化を防ぐことが求められている。
【0003】
特許文献1には、樹脂硬化後の可視光から近紫外光領域において高い反射率を有する熱硬化性樹脂組成物を用いた光半導体素子搭載用基板が開示されている。また、特許文献2には、光漏れを低減した光半導体素子搭載用部材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-254633号公報
【文献】特開2010-287837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、熱硬化性樹脂組成物を用いてLEDのリフレクターを形成する際には、トランスファーモールド成形が用いられている。熱硬化性樹脂組成物には、成形時の流動性に優れることが求められる。そして、熱硬化性樹脂組成物から形成される硬化物には、光反射率をより高めるだけでなく、高温下で長時間使用された際にも光学特性を維持できる耐熱性が求められる。
【0006】
本発明は、流動性及び耐熱性に優れる光反射用熱硬化性樹脂組成物、これを用いた光半導体素子搭載用基板及び光半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面は、エポキシ樹脂、硬化剤、リン系硬化促進剤、無機充填剤、及び白色顔料を含有し、リン系硬化促進剤が、ホスホニウム・ボレート塩と、ホスホニム・ホスフェート塩とを含む、光反射用熱硬化性樹脂組成物に関する。
【0008】
別の側面において、本発明は、上記光反射用熱硬化性樹脂組成物の硬化物を備える光半導体素子搭載用基板に関する。本発明に係る光半導体素子搭載用基板は、底面及び壁面から構成される凹部を有し、当該凹部の底面が光半導体素子の搭載部であってよい。この場合、凹部の壁面の少なくとも一部が、上記光反射用熱硬化性樹脂組成物の硬化物である。
【0009】
さらに別の側面において、本発明は、上記光半導体素子搭載用基板と、該光半導体素子搭載用基板に搭載された光半導体素子とを有する光半導体装置に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、流動性及び耐熱性に優れる光反射用熱硬化性樹脂組成物、これを用いた光半導体素子搭載用基板及び光半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】光半導体素子搭載用基板の一実施形態を示す斜視図である。
図2】光半導体素子搭載用基板を製造する工程の一実施形態を示す概略図である。
図3】光半導体素子搭載用基板に光半導体素子を搭載した状態の一実施形態を示す斜視図である。
図4】光半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。
図5】光半導体装置の他の実施形態を示す模式断面図である。
図6】光半導体装置の他の実施形態を示す模式断面図である。
図7】銅張積層板の一実施形態を示す模式断面図である。
図8】銅張積層板を用いて作製された光半導体装置の一例を示す模式断面図である。
図9】光半導体装置の他の実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されない。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られない。
【0013】
本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。本明細書に例示する材料は、特に断らない限り、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びそれに対応するメタクリレートの少なくとも一方を意味する。
【0014】
[光反射用熱硬化性樹脂組成物]
本実施形態の光反射用熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂、硬化剤、リン系硬化促進剤、無機充填剤、及び白色顔料を含有し、リン系硬化促進剤は、ホスホニウム・ボレート塩と、ホスホニム・ホスフェート塩とを含んでいる。
【0015】
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂としては、電子部品封止用エポキシ樹脂成形材料で一般に使用されているエポキシ樹脂を用いることができる。本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂を含有することで、熱時硬度及び曲げ強度が高く、機械的特性を向上した硬化物を形成することができる。エポキシ樹脂として、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のフェノール類とアルデヒド類のノボラック樹脂をエポキシ化したエポキシ樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、アルキル置換ビスフェノール等のジグリシジルエーテル;ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のポリアミンとエピクロルヒドリンとの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂;オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂;及び脂環族エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
着色が少ないことから、エポキシ樹脂は、ジグリシジルイソシアヌレート、トリグリシジルイソシアヌレート、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸又は1,4-シクロヘキサンジカルボン酸から誘導されるジカルボン酸ジグリシジルエステルを含んでよい。同様の理由から、エポキシ樹脂は、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、ナジック酸、メチルナジック酸等のジカルボン酸のジグリシジルエステルも好適である。芳香環が水素化された脂環式構造を有する核水素化トリメリット酸、核水素化ピロメリット酸等のグリシジルエステルを含んでよい。エポキシ樹脂は、シラン化合物を有機溶媒、有機塩基及び水の存在下に加熱して、加水分解して縮合させることにより製造される、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを含んでもよい。
【0017】
エポキシ樹脂は、市販品を使用してもよい。3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートとして、例えば、株式会社ダイセルの製品名「セロキサイド2021」、「セロキサイド2021A」及び「セロキサイド2021P」、ダウ・ケミカル日本株式会社の製品名「ERL4221」、「ERL4221D」及び「ERL4221E」を入手できる。ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペートとして、例えば、ダウ・ケミカル日本株式会社の製品名「ERL4299」、DIC株式会社の製品名「EXA-7015」を入手できる。1-エポキシエチル-3,4-エポキシシクロヘキサン又はリモネンジエポキシドとして、例えば、三菱ケミカル株式会社の製品名「jER YX8000」、「jER YX8034」及び「jER YL7170」、株式会社ダイセルの製品名「セロキサイド2081」、「セロキサイド3000」、「エポリードGT301」、「エポリードGT401」及び「EHPE3150」を入手できる。トリスグリシジルイソシアヌレートとしては、例えば、日産化学工業株式会社の製品名「TEPIC-S」を入手できる。
【0018】
(硬化剤)
硬化剤としては、電子部品封止用エポキシ樹脂成形材料で一般に使用されている硬化剤を用いることができる。硬化剤は、エポキシ樹脂と反応して硬化物が得られるものであれば、特に限定されないが、着色の少ない硬化剤が好ましく、無色又は淡黄色の硬化剤がより好ましい。硬化剤としては、例えば、酸無水物系硬化剤、イソシアヌル酸誘導体系硬化剤及びフェノール系硬化剤が挙げられる。硬化剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
本実施形態に係る硬化剤は、酸無水物系硬化剤として、融点が180~400℃のテトラカルボン酸二無水物(以下、単に「テトラカルボン酸二無水物」という場合がある。)を含んでよい。このようなテトラカルボン酸二無水物を硬化剤として用いることで、熱硬化性樹脂組成物の耐熱性を更に向上することができる。樹脂組成物中に均一に分散させる点から、テトラカルボン酸二無水物の融点は、200~380℃又は210~350℃であってもよい。
【0020】
耐熱性をより向上することから、テトラカルボン酸二無水物は、芳香環又は脂環を有してよい。芳香環を有するテトラカルボン酸二無水物は、ベンゼン環を2以上有するテトラカルボン酸二無水物及びナフタレン環を有するテトラカルボン酸二無水物からなる群より選ばれる少なくとも1種であってよい。
【0021】
ベンゼン環を2以上有するテトラカルボン酸二無水物は、下記式(1)で表される化合物であってよい。式(1)中、Rは、単結合、エーテル結合、カルボニル基、スルホニル基、ヘキサフルオロイソプロピリデン基、又はフルオレン基を示す。
【化1】
【0022】
脂環を有するテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。芳香環を有するテトラカルボン酸二無水物として、例えば、4,4’-ビフタル酸無水物、4,4’-カルボニルジフタル酸無水物、4,4’-スルホニルジフタル酸無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物、及び2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0023】
本実施形態に係る硬化剤は、融点が180℃未満の酸無水物系硬化剤を含んでよい。融点が180℃未満の酸無水物系硬化剤としては、例えば、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、無水グルタル酸、無水ジメチルグルタル酸、無水ジエチルグルタル酸、無水コハク酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、及び下記式(2)で表されるテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0024】
【化2】

式(2)中、Rxは、2価の有機基を示し、nは1~10の整数を示す。2価の有機基は、飽和炭化水素環を有する2価の飽和炭化水素基であってよく、飽和炭化水素としては、例えば、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロへプタン、シクロオクタン、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、アダマンタン、水素化ナフタレン、及び水素化ビフェニルが挙げられる。
【0025】
イソシアヌル酸誘導体としては、例えば、1,3,5-トリス(1-カルボキシメチル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(2-カルボキシエチル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3-カルボキシプロピル)イソシアヌレート、及び1,3-ビス(2-カルボキシエチル)イソシアヌレートが挙げられる。
【0026】
フェノール系硬化剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール類及び/又はα-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類と、ホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド類とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られる、ノボラック型フェノール樹脂;フェノール類及び/又はナフトール類と、ジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルとから合成されるフェノール・アラルキル樹脂;ビフェニレン型フェノール・アラルキル樹脂、ナフトール・アラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂;フェノール類及び/又はナフトール類と、ジシクロペンタジエンとの共重合によって合成される、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂;トリフェニルメタン型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂;パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂;メラミン変性フェノール樹脂;並びにこれら2種以上を共重合して得られるフェノール樹脂が挙げられる。
【0027】
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物において、硬化剤の含有量は、エポキシ樹脂100質量部に対して、10~150質量部、50~130質量部、又は60~120質量部であってよい。
【0028】
硬化剤の配合割合は、エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対して、当該エポキシ基と反応可能な硬化剤中の活性基(酸無水物基又は水酸基)が0.5~2.0当量、0.6~1.5当量、又は0.7~1.2当量であってよい。上記活性基が0.5当量以上であると、熱硬化性樹脂組成物から形成される硬化物のガラス転移温度が高くなり、充分な弾性率が得られ易くなる。一方、上記活性基が2.0当量以下であると、硬化後の強度が低下し難くなる。
【0029】
(硬化促進剤)
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、リン系硬化促進剤として、ホスホニウム・ボレート塩と、ホスホニム・ホスフェート塩とを併用することで、流動性と耐熱性とのバランスに優れる成形材料となる。
【0030】
ホスホニウム・ボレート塩は、例えば、下記式(3)で表される化合物であってもよい。
【化3】
【0031】
式(3)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1~16の炭化水素基を示し、炭素数1~8の炭化水素基又は炭素数1~6の炭化水素基であってもよい。R、R、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1~16の炭化水素基又はハロゲン原子を示し、炭素数1~8の炭化水素基、炭素数1~6の炭化水素基、又はフッ素原子であってよい。
【0032】
ホスホニウム・ボレート塩としては、例えば、テトラ-n-ブチルホスホニウム-テトラフェニルボレート、テトラ-n-ブチルホスホニウム-テトラフルオロボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、及びテトラフェニルホスホニウムテトラフルオロボレートが挙げられる。
【0033】
熱硬化性樹脂組成物中のホスホニウム・ボレート塩の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の成形時の流動性をより向上する観点から、エポキシ樹脂100質量部に対して、0.1~2.5質量部、0.4~2.2質量部、又は0.6~2.0質量部であってよい。
【0034】
ホスホニム・ホスフェート塩は、例えば、下記式(4)で表される化合物であってもよい。
【化4】
【0035】
式(4)中、R11、R12、R13及びR14は、それぞれ独立に炭素数1~16の炭化水素基を示し、炭素数1~8の炭化水素基又は炭素数1~6の炭化水素基であってもよい。R15及びR16は、それぞれ独立に炭素数1~16の炭化水素基を示し、炭素数1~8の炭化水素基、炭素数1~6の炭化水素基、又は炭素数1~3の炭化水素基であってもよい。
【0036】
ホスホニム・ホスフェート塩としては、例えば、トリ-n-ブチルメチルホスホニムジメチルホスフェート、トリ-n-ブチルメチルホスホニムジエチルホスフェート、テトラ-n-ブチルホスホニムジメチルホスフェート、トリフェニルメチルホスホニムジメチルホスフェート、及びテトラフェニルホスホニウムジメチルホスフェートが挙げられる。
【0037】
熱硬化性樹脂組成物中のホスホニウム・ホスフェート塩の含有量は、硬化物の耐熱性をより向上する観点から、エポキシ樹脂100質量部に対して、0.05~2.0質量部、0.1~1.5質量部、又は0.2~1.0質量部であってよい。
【0038】
熱硬化性樹脂組成物中の硬化促進剤の総量は、エポキシ樹脂100質量部に対して、0.15~4.5質量部、0.5~4.0質量部、又は1.0~3.0質量部であってよい。硬化促進剤の含有量が、0.1質量部以上であると、十分な硬化促進効果を得られ易く、5質量部以下であると、硬化物の変色を抑制し易くなる。
【0039】
(白色顔料)
白色顔料は、本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物から得られる硬化物(成形体)に白色系の色調を付与するために用いられ、特にその色調を高度の白色とすることにより、成形体の光反射率を向上させることができる。
【0040】
白色顔料としては、例えば、酸化イットリウム等の希土類酸化物、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、硫酸亜鉛、酸化ジルコニウム、及び酸化ジルコニウムが挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。光反射性をより向上することから、白色顔料は、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、及び酸化ジルコニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、酸化チタン、酸化アンチモン、及び酸化ジルコニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0041】
白色顔料の中心粒径は、0.05~10μm、0.08~8μm、又は0.1~5μmであってよい。白色顔料の中心粒径が0.05μm以上であると分散性がより良好になり、10μm未満であると硬化物の光反射特性がより良好になる。本明細書において、中心粒径は、レーザー光回折法による粒度分布測定における質量平均値D50(又はメジアン径)として求めることができる。
【0042】
(無機充填剤)
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、成形性を向上する観点から、無機充填剤を含有する。無機充填剤としては、例えば、石英、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカ、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、チタン酸カリウム、ケイ酸カルシウム、及び無機中空粒子が挙げられる。
【0043】
成形性の点から、無機充填剤は溶融シリカを含んでよい。溶融シリカの中心粒径は、白色顔料とのパッキング性を向上させる観点から、1~100μm、1~50μm、又は1~40μmであってよい。
【0044】
熱硬化性樹脂組成物の粉砕性をより向上することから、無機充填剤は、中心粒径が1~25μmの無機中空粒子を含んでよい。無機中空粒子は、内部に空隙部を有する粒子である。無機中空粒子は、入射光を表面及び内壁で屈折及び反射するため、白色顔料と併用することで、光反射性及び機械的特性をより一層向上した硬化物を形成することができる。
【0045】
無機中空粒子としては、例えば、珪酸ソーダガラス、アルミ珪酸ガラス、硼珪酸ソーダガラス及びシラス(白砂)が挙げられる。耐熱性及び耐圧強度の観点からは、無機中空粒子の外殻は、珪酸ソーダガラス、アルミ珪酸ガラス、硼珪酸ソーダガラス、シラス、架橋スチレン系樹脂及び架橋アクリル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の材質から構成されることが好ましく、珪酸ソーダガラス、アルミ珪酸ガラス、硼珪酸ソーダガラス及びシラスからなる群より選ばれる少なくとも1種の材質から構成されることがより好ましい。
【0046】
熱硬化性樹脂組成物を調製する際に無機中空粒子を均一に分散し易いことから、無機中空粒子の中心粒径は、1μm以上、5μm以上、又は10μm以上であってよい。また、形成される硬化物の光反射特性を向上し易いことから、無機中空粒子の中心粒径は、30μm以下、25μm以下、又は22μm以下であってよい。
【0047】
熱硬化性樹脂組成物の機械的特性を向上することから、無機中空粒子の外殻の厚みは、0.4~1.5μm、0.45~1.2μm、0.5~1.1μm、又は0.55~1.0μmであってよい。
【0048】
光反射性を向上することから、無機中空粒子のかさ密度は、0.20~0.38g/cm、0.25~0.36g/cm、又は0.26~0.35g/cmであってよい。かさ密度は、ある容積の容器に無機中空粒子を充填し、その内容積を体積として算出した密度である。
【0049】
光反射性と機械的特性とのバランスに優れることから、無機中空粒子の真密度は、0.40~0.75g/cm、0.45~0.70g/cm、又は0.50~0.65g/cmであってよい。真密度は、ASTM D2840に準拠して測定することができる。
【0050】
熱硬化性樹脂組成物の硬化物の強度を向上することから、無機中空粒子の耐圧強度は、25℃で100MPa以上、110MPa以上、125MPa以上、又は150MPa以上であってよい。熱硬化性樹脂組成物の成形性を向上することから、無機中空粒子の耐圧強度は、25℃で500MPa以下、300MPa以下、又は200MPa以下であってよい。耐圧強度は、ASTM D3102に準拠して測定することができる。
【0051】
光反射率をより向上させる点から、無機中空粒子の含有量は、エポキシ樹脂100質量部に対して、10~200質量部であることが好ましく、30~180質量部であることがより好ましく、60~150質量部であることが更に好ましい。
【0052】
(カップリング剤)
熱硬化性樹脂組成物には、無機充填剤と、エポキシ樹脂との密着性を向上させるために、カップリング剤を添加してよい。カップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、シランカップリング剤及びチタネート系カップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、例えば、エポキシシラン化合物、アミノシラン化合物、カチオニックシラン化合物、ビニルシラン化合物、アクリルシラン化合物、及びメルカプトシラン化合物が挙げられる。カップリング剤の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の全量を基準として、5質量%以下であってよい。
【0053】
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、酸化防止剤、離型剤、イオン捕捉剤等の添加剤を添加してよい。
【0054】
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、上述した各種成分を均一に分散し混合することで作製することができる。作製手段、条件等は特に限定されない。熱硬化性樹脂組成物を作製する一般的な方法として、各成分をニーダー、ロール、エクストルーダー、らいかい機、又は、自転と公転を組み合わせた遊星式混合機によって混練する方法を挙げることができる。各成分を混練する際には、分散性を向上する観点から、溶融状態で行うことが好ましい。
【0055】
混練の条件は、各成分の種類又は配合量により適宜決定すればよく、例えば、15~100℃で5~40分間混練することが好ましく、20~100℃で10~30分間混練することがより好ましい。混練温度が15℃以上であると、各成分を混練させ易くなり、分散性を向上できる。混練温度が100℃以下であると、混練時にエポキシ樹脂の高分子量化が進行して硬化することを抑制できる。混練時間が5分以上であると、十分な分散効果が得られ易くなる。混練時間が40分以下であると、混練時にエポキシ樹脂の高分子量化が進行して硬化することを抑制できる。
【0056】
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、高い光反射性及び耐熱性を必要とする光半導体素子実装用基板材料、電気絶縁材料、光半導体封止材料、接着材料、塗料材料、トランスファー成形用エポキシ樹脂成形材料等の様々な用途において有用である。以下、本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物をトランスファー成形用エポキシ樹脂成形材料として使用する際の例を述べる。
【0057】
機械的特性の点から、本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物を、成形金型温度が180℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間90秒間の条件でトランスファー成形した時の曲げ強度は、25℃で70MPa以上であることが好ましく、75MPa以上であることがより好ましい。曲げ強度が70MPa以上であると、強靭性に優れる。
【0058】
光半導体装置の輝度を向上させる点から、本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物の硬化物の波長460nmにおける初期光反射率は、91%以上であることが好ましく、92%以上であることがより好ましく、93%以上であることが更に好ましい。耐熱着色性を良好にする観点から、当該硬化物を150℃で168時間熱処理した後の波長460nmにおける光反射率は、88%以上であることが好ましく、89%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。
【0059】
[光半導体素子搭載用基板]
本実施形態の光半導体素子搭載用基板は、底面及び壁面から構成される凹部を有する。凹部の底面が光半導体素子搭載部(光半導体素子搭載領域)であり、凹部の壁面、すなわち凹部の内周側面の少なくとも一部が本実施形態の光反射用熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなるものである。
【0060】
図1は、光半導体素子搭載用基板の一実施形態を示す斜視図である。光半導体素子搭載用基板110は、Ni/Agめっき104が形成された金属配線105(第1の接続端子及び第2の接続端子)と、金属配線105(第1の接続端子及び第2の接続端子)間に設けられた絶縁性樹脂成形体103’と、リフレクター103とを備え、Ni/Agめっき104が形成された金属配線105及び絶縁性樹脂成形体103’とリフレクター103とから形成された光半導体素子搭載領域(凹部)200を有している。この凹部200の底面は、Ni/Agめっき104が形成された金属配線105及び絶縁性樹脂成形体103’から構成され、凹部200の壁面はリフレクター103から構成される。リフレクター103及び絶縁性樹脂成形体103’が、上述の本実施形態に係る光反射用熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる成形体である。
【0061】
光半導体素子搭載用基板の製造方法は特に限定されないが、例えば、光反射用熱硬化性樹脂組成物を用いたトランスファー成形により製造することができる。図2は、光半導体素子搭載用基板を製造する工程の一実施形態を示す概略図である。光半導体素子搭載用基板は、例えば、金属箔から打ち抜き、エッチング等の公知の方法により金属配線105を形成し、電気めっきによりNi/Agめっき104を施す工程(図2の(a))、次いで、該金属配線105を所定形状の金型151に配置し、金型151の樹脂注入口150から光反射用熱硬化性樹脂組成物を注入し、所定の条件でトランスファー成形する工程(図2の(b))、そして、金型151を外す工程(図2の(c))を経て製造することができる。このようにして、光半導体素子搭載用基板には、光反射用熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなるリフレクター103に周囲を囲まれてなる光半導体素子搭載領域(凹部)200が形成される。また、凹部200の底面は、第1の接続端子となる金属配線105及び第2の接続端子となる金属配線105と、これらの間に設けられ光反射用熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる絶縁性樹脂成形体103’とから構成される。なお、上記トランスファー成形の条件としては、金型温度170~200℃、より好ましくは170~190℃、成形圧力0.5~20MPa、より好ましくは2~8MPaで、60~120秒間、アフターキュア温度120℃~180℃で1~3時間が好ましい。
【0062】
[光半導体装置]
本実施形態に係る光半導体装置は、上記光半導体素子搭載用基板と、当該光半導体素子搭載用基板に搭載された光半導体素子とを有する。より具体的な例として、上記光半導体素子搭載用基板と、光半導体素子搭載用基板の凹部内に設けられた光半導体素子と、凹部を充填して光半導体素子を封止する蛍光体含有封止樹脂部とを備える光半導体装置が挙げられる。
【0063】
図3は、光半導体素子搭載用基板110に光半導体素子100を搭載した状態の一実施形態を示す斜視図である。図3に示すように、光半導体素子100は、光半導体素子搭載用基板110の光半導体素子搭載領域(凹部)200の所定位置に搭載され、金属配線105とボンディングワイヤ102により電気的に接続される。図4及び図5は、光半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。図4及び図5に示すように、光半導体装置は、光半導体素子搭載用基板110と、光半導体素子搭載用基板110の凹部200内の所定位置に設けられた光半導体素子100と、凹部200を充填して光半導体素子を封止する蛍光体106を含む透明な封止樹脂101からなる封止樹脂部とを備えており、光半導体素子100とNi/Agめっき104が形成された金属配線105とがボンディングワイヤ102又ははんだバンプ107により電気的に接続されている。
【0064】
図6もまた、光半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。図6に示す光半導体装置では、リフレクター303が形成されたリード304上の所定位置にダイボンド材306を介してLED素子300が配置され、LED素子300とリード304とがボンディングワイヤ301により電気的に接続され、蛍光体305を含む透明な封止樹脂302によりLED素子300が封止されている。
【0065】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はこれに制限されない。例えば、本実施形態の光反射用熱硬化性樹脂組成物を光反射コート剤として用いることができる。この実施形態として、銅張積層板、光半導体素子搭載用基板及び光半導体素子について説明する。
【0066】
本実施形態に係る銅張積層板は、上述の光反射用熱硬化性樹脂組成物を用いて形成された光反射樹脂層と、該光反射樹脂層上に積層された銅箔と、を備える。
【0067】
図7は、銅張積層板の好適な一実施形態を示す模式断面図である。図7に示すように、銅張積層板400は、基材401と、該基材401上に積層された光反射樹脂層402と、該光反射樹脂層402上に積層された銅箔403と、を備えている。ここで、光反射樹脂層402は、上述の光反射用熱硬化性樹脂組成物を用いて形成されている。
【0068】
基材401としては、銅張積層板に用いられる基材を特に制限なく用いることができるが、例えば、エポキシ樹脂積層板等の樹脂積層板、光半導体搭載用基板などが挙げられる。
【0069】
銅張積層板400は、例えば、本実施形態の光反射用熱硬化性樹脂組成物を基材401表面に塗布し、銅箔403を重ね、加熱加圧硬化して上記熱硬化性樹脂組成物からなる光反射樹脂層402を形成することにより作製することができる。
【0070】
熱硬化性樹脂組成物の基材401への塗布方法としては、例えば、印刷法、ダイコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ロールコート法等の塗布方法を用いることができる。このとき、熱硬化性樹脂組成物には、塗布が容易となるように溶媒を含有させてもよい。なお、溶媒を用いる場合、上述した各成分の配合割合で熱硬化性樹脂組成物の全量を基準としたものについては、溶媒を除いたものを全量として設定することが好ましい。
【0071】
加熱加圧の条件としては、特に限定されないが、例えば、130~180℃、0.5~4MPa、30~600分間の条件で加熱加圧を行うことが好ましい。
【0072】
上記銅張積層板を使用し、LED実装用等の光学部材用のプリント配線板を作製することができる。なお、図7に示した銅張積層板400は、基材401の片面に光反射樹脂層402及び銅箔403を積層したものであるが、銅張積層板は、基材401の両面に光反射樹脂層402及び銅箔403をそれぞれ積層したものであってもよい。また、銅張積層板は、基材401を用いることなく、光反射樹脂層402及び銅箔403のみで構成されていてもよい。この場合、光反射樹脂層402が基材としての役割をはたすこととなる。この場合、例えば、ガラスクロス等に本熱硬化性樹脂組成物を含浸させ、硬化させたものを光反射樹脂層402とすることができる。
【0073】
図8は、銅張積層板を用いて作製された光半導体装置の一例を示す模式断面図である。図8に示すように、光半導体装置500は、光半導体素子410と、光半導体素子410が封止されるように設けられた透明な封止樹脂404とを備える表面実装型の発光ダイオードである。光半導体装置500において、光半導体素子410は、接着層408を介して銅箔403に接着されており、ボンディングワイヤ409により銅箔403と電気的に接続されている。
【0074】
光半導体素子搭載用基板の他の実施形態として、上述の光反射用熱硬化性樹脂組成物を用いて、基材上の複数の導体部材(接続端子)間に形成された光反射樹脂層を備える光半導体素子搭載用基板が挙げられる。また、光半導体装置の他の実施形態は、上記の光半導体素子搭載用基板に光半導体素子を搭載してなるものである。
【0075】
図9は、光半導体装置の好適な一実施形態を示す模式断面図である。図9に示すように、光半導体装置600は、基材601と、該基材601の表面に形成された複数の導体部材602と、複数の導体部材(接続端子)602間に形成された、上記光反射用熱硬化性樹脂組成物からなる光反射樹脂層603と、を備える光半導体素子搭載用基板に、光半導体素子610が搭載され、光半導体素子610が封止されるように透明な封止樹脂604が設けられた、表面実装型の発光ダイオードである。光半導体装置600において、光半導体素子610は、接着層608を介して導体部材602に接着されており、ボンディングワイヤ609により導体部材602と電気的に接続されている。
【0076】
基材601としては、光半導体素子搭載用基板に用いられる基材を特に制限なく用いることができるが、例えば、エポキシ樹脂積層板等の樹脂積層板が挙げられる。
【0077】
導体部材602は、接続端子として機能するものであり、例えば、銅箔をフォトエッチングする方法等、公知の方法により形成することができる。
【0078】
光半導体素子搭載用基板は、上記光反射用熱硬化性樹脂組成物を基材601上の複数の導体部材602間に塗布し、加熱硬化して光反射用熱硬化性樹脂組成物からなる光反射樹脂層603を形成することにより作製することができる。
【0079】
光反射用熱硬化性樹脂組成物の基材601への塗布方法としては、例えば、印刷法、ダイコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ロールコート法等の塗布方法を用いることができる。このとき、光反射用熱硬化性樹脂組成物には、塗布が容易となるように溶媒を含有させることができる。なお、溶媒を用いる場合、上述した各成分の配合割合で樹脂組成物全量を基準としたものについては、溶媒を除いたものを全量として設定することが好ましい。
【0080】
光反射用熱硬化性樹脂組成物の塗膜を加熱硬化する際の加熱条件としては、特に限定されないが、例えば、130~180℃、30~600分間の条件で加熱を行ってもよい。
【0081】
その後、導体部材602表面に余分に付着した樹脂成分は、バフ研磨等により除去し、導体部材602からなる回路を露出させ、光半導体素子搭載用基板とする。また、光反射樹脂層603と導体部材602との密着性を確保するために、導体部材602に対して酸化還元処理、CZ処理(メック株式会社製)等の粗化処理を行なってもよい。
【0082】
本実施形態に係る光反射用熱硬化性樹脂組成物の硬化物を有する光半導体素子搭載用基板及び光半導体装置は、光反射率が高く、高温下で長時間使用された際にも光学特性を維持することができる。
【実施例
【0083】
以下、本発明を実施例により詳述するが、本発明はこれらに限定されない。
【0084】
[光反射用熱硬化性樹脂組成物の作製]
実施例及び比較例の熱硬化性樹脂組成物を作製するために、以下の成分を準備した。
【0085】
(エポキシ樹脂)
日産化学工業株式会社製の商品名「TEPIC-S」(トリスグリシジルイソシアヌレート、エポキシ当量:100)
(硬化剤)
式(2)のテトラカルボン酸二無水物(Rx:シクロヘキサン環、融点:40℃)
新日本理化株式会社製の商品名「リカシッドHH」(ヘキサヒドロ無水フタル酸、融点:35℃)
マナック株式会社製の商品名「ODPA-C」(4,4’-オキシジフタル酸無水物、融点:229℃)
(リン系硬化促進剤)
日本化学工業株式会社製の商品名「PX-4PB」(テトラブチルホスホニウムテトラフェニルボラート)
日本化学工業株式会社製の商品名「PX-4MP」(トリ-n-ブチルメチルホスホニムジメチルホスフェート)
(カップリング剤)
エポキシシラン化合物(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)
(離型剤)
日油株式会社製の商品名「ZNST」(ジンクステアレート)
(添加剤)
株式会社ADEKA製の商品名「アデカスタブ AO-60」(ヒンダードフェノール系酸化防止剤)
株式会社ADEKA製の商品名「アデカスタブ PEP-36A」(ホスファイト系酸化防止剤)
Gelest製の商品名「DBL-C32」(シリコーン系ワックス分散剤)
(無機中空粒子)
スリーエムジャパン株式会社製の商品名「iM30K」(中心粒径:18μm、シェル層の厚み:0.61μm、かさ密度:0.33g/cm、耐圧強度:186MPa)
(シリカ)
デンカ株式会社製の商品名「FB-950」(溶融シリカ)
株式会社アドマテックス製、商品名「SO-25R」(溶融シリカ)
富士シリシア化学株式会社製の商品名「サイロホービック702」(疎水性微粉末シリカ)
(白色顔料)
酸化チタン(中心粒径0.2μm)
【0086】
表1に示す配合比(質量部)に従い、各成分を配合し、ミキサーによって十分混練した後、ミキシングロールにより40℃で15分間溶融混練して混練物を得た。混練物を冷却し、粉砕することによって、実施例及び比較例の熱硬化性樹脂組成物をそれぞれ作製した。
【0087】
[評価]
(スパイラルフロー)
EMMI-1-66の規格に準じたスパイラルフロー測定用金型を用いて、熱硬化性樹脂組成物を成形金型温度180℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間90秒間の条件下でトランスファー成形した。トランスファー成形する際の熱硬化性樹脂組成物の流動距離(inch)を測定した。
【0088】
(光反射率)
熱硬化性樹脂組成物を、成形金型温度180℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間90秒間の条件でトランスファー成形した後、150℃で2時間ポストキュアすることによって、厚み3.0mmの試験片を作製した。分光測色計「CM-600d」(コニカミノルタ株式会社製)を用いて、波長460nmにおける試験片の光反射率を測定した。次いで、試験片を150℃に設定した恒温槽内で1000時間放置した後の光反射率を測定した。
【0089】
【表1】
【0090】
表1より、実施例の光反射用熱硬化性樹脂組成物は、優れた流動性を有し、耐熱性の高い硬化物(成形体)を形成できることが確認できる。
【符号の説明】
【0091】
100…光半導体素子、101…封止樹脂、102…ボンディングワイヤ、103…リフレクター、103’…絶縁性樹脂成形体、104…Ni/Agめっき、105…金属配線、106…蛍光体、107…はんだバンプ、110…光半導体素子搭載用基板、150…樹脂注入口、151…金型、200…光半導体素子搭載領域、300…LED素子、301…ボンディングワイヤ、302…封止樹脂、303…リフレクター、304…リード、305…蛍光体、306…ダイボンド材、400…銅張積層板、401…基材、402…光反射樹脂層、403…銅箔、404…封止樹脂、408…接着層、409…ボンディングワイヤ、410…光半導体素子、500,600…光半導体装置、601…基材、602…導体部材、603…光反射樹脂層、604…封止樹脂、608…接着層、609…ボンディングワイヤ、610…光半導体素子。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9