(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】R-T-B系焼結磁石用合金粉末の製造方法およびジェットミル粉砕システム
(51)【国際特許分類】
B22F 9/04 20060101AFI20241008BHJP
B02C 19/06 20060101ALI20241008BHJP
B02C 23/10 20060101ALI20241008BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20241008BHJP
H01F 41/02 20060101ALI20241008BHJP
B22F 1/14 20220101ALI20241008BHJP
C22C 38/00 20060101ALN20241008BHJP
【FI】
B22F9/04 C
B02C19/06 B
B02C23/10
B22F1/00 Y
H01F41/02 G
B22F1/14 100
C22C38/00 303D
(21)【出願番号】P 2020159620
(22)【出願日】2020-09-24
【審査請求日】2023-09-11
(31)【優先権主張番号】P 2020057386
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100180529
【氏名又は名称】梶谷 美道
(72)【発明者】
【氏名】森本 仁
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-137619(JP,A)
【文献】特開平11-290711(JP,A)
【文献】特開2002-175931(JP,A)
【文献】特開2003-262981(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107464645(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0279530(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 19/06,23/10
B22F 1/00,1/14,9/04
C22C 38/00
H01F 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分級ロータを備えるジェットミル粉砕装置にR-T-B系焼結磁石用合金(Rは希土類元素のうち少なくとも1種であり、Nd及びPrの少なくとも1種を必ず含み、Tは遷移金属元素のうち少なくとも1種でありFeを必ず含む。Bはホウ素である)の粗粉砕粉を供給する工程と、
前記ジェットミル粉砕装置の内部で前記粗粉砕粉を粉砕して微粉砕粉を形成し、前記分級ロータによって前記微粉砕粉を排出する粉砕工程と、を含み、
前記粉砕工程では、ジェットミル粉砕装置の内部における停留粉末重量および前記分級ロータの回転速度の両方の制御を行
い、
前記粉砕工程中に前記停留粉末重量の測定値または推定値に応じて前記分級ロータの回転速度を変えて前記制御を行う、R-T-B系焼結磁石用合金粉末の製造方法。
【請求項2】
前記制御は、停留粉末量を増加させつつ、前記分級ロー
タの回転速度を低下させる、請求
項1に記載のR-T-B系焼結磁石用合金粉末の製造方法。
【請求項3】
前記粉砕工程は、前記ジェットミル粉砕装置の内部における停留粉末重量の測定値または推定値が第一の停留粉末重量になる状態で粉砕を行う工程と、
前記停留粉末重量の測定値または推定値が、前記第一の停留粉末重量の1.05倍以上3倍以下の範囲にある第二の停留粉末重量になる状態で粉砕を行う工程と
を含み、
前記停留粉末重量の測定値または推定値が第二の停留粉末重量になる状態で粉砕を行う工程において、前記分級ロータの回転速度を前記停留粉末重量の測定値または推定値に応じて設定する、請求項
1または2に記載のR-T-B系焼結磁石用合金粉末の製造方法。
【請求項4】
前記停留粉末重量の測定値または推定値が前記第一の停留粉末重量になる状態で粉砕を行う工程における前記分級ロータの回転速度を100%とするとき、
前記停留粉末重量の測定値または推定値が前記第二の停留粉末重量になる状態で粉砕を行う工程における前記分級ロータの回転速度を70%以上97%以下の範囲に設定する、請求
項3に記載のR-T-B系焼結磁石用合金粉末の製造方法。
【請求項5】
粉砕工程の開始前に前記ジェットミル粉砕装置の内部に前記粗粉砕粉を事前供給する工程を更に含む、請求項1か
ら4のいずれか一項に記載のR-T-B系焼結磁石用合金粉末の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、R-T-B系焼結磁石用合金粉末の製造方法およびジェットミル粉砕システムに関する。
【背景技術】
【0002】
R-T-B系焼結磁石(Rは希土類元素のうち少なくとも1種であり、Nd及びPrの少なくとも1種を必ず含み、Tは遷移金属元素のうち少なくとも1種でありFeを必ず含む。Bはホウ素である。)は、R2Fe14B型結晶構造を有する化合物の主相と、この主相の粒界部分に位置する粒界相及び微量添加元素や不純物の影響により生成する化合物相とから構成されており、永久磁石の中で最も高性能な磁石として知られている。このため、R-T-B系焼結磁石は、電気自動車(EV、HV、PHV)用モータ、ハードディスクドライブのボイスコイルモータ(VCM)、産業機器用モータなどの各種モータや家電製品など多種多様な用途に用いられている。
【0003】
このようなR-T-B系焼結磁石は、例えば、原料合金粉末を準備する工程、原料合金粉末をプレス成形して粉末成形体を作製する工程、粉末成形体を焼結する工程を経て製造される。原料合金粉末は、例えば、以下の方法で作製される。
【0004】
まず、インゴット法またはストリップキャスト法などの方法によって各種原料金属の溶湯から原料合金を製造する。得られた原料合金を粉砕工程に供し、所定の粒径分布を有する合金粉末を得る。この粉砕工程には、通常、粗粉砕工程と微粉砕工程が含まれており、前者は、例えば機械的粉砕または水素脆化現象を利用して行われ、後者は例えば気流式粉砕機(ジェットミル粉砕装置)を用いて行われる。
【0005】
特許文献1は、粉砕後の粒度分布の変動を抑制するために、粉砕室内に停留する被粉砕物が一定量となるように被粉砕物(粗粉砕粉)の供給量を設定するジェットミル粉砕装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ジェットミル粉砕装置内では、原料投入機から粉砕室内に投入された被粉砕物同士が、粉砕ノズルから噴射される高速の不活性ガスによって衝突して粉砕される。粉砕室内における粉末粒子は、細かく粉砕された後、分級ロータを介して取り出されて回収タンクに集められる。回収される微粉砕粉の粒度分布を同じにするためには、粉砕室内における粉砕条件を一定にする必要がある。
【0008】
従来、粉砕条件を一定にするためには、ジェットミル粉砕装置内に投入される被粉砕物の重量を一定に維持する必要があると考えられてきた。特許文献1は、そのような技術常識のもと、粉末の粒度分布が変動しないようにする目的のため、ジェットミル粉砕装置内に停留する被粉砕物の重量を測定して管理する構成を開示している。
【0009】
ジェットミル粉砕装置は、微粉砕を効率的に行うのに適した微粉砕装置であるが、目標粒度が小さくなるにつれて粉砕効率が低下してしまう。近年、R-T-B系焼結磁石の性能を更に高めるため、原料合金粉末として平均粒径(メジアン径)が4μm以下であるような微細粉末が要求されつつある。このため、ジェットミル粉砕装置では、粉末の微細化に対応可能な粉砕効率向上の方法が求められていた。本開示の実施形態は、このような課題を解決するR-T-B系焼結磁石の製造方法および粉砕システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示のR-T-B系焼結磁石用合金粉末の製造方法は、実施形態において、分級ロータを備えるジェットミル粉砕装置にR-T-B系焼結磁石用合金の粗粉砕粉を供給する工程と、前記ジェットミル粉砕装置の内部で前記粗粉砕粉を粉砕して微粉砕粉を形成し、前記分級ロータによって前記微粉砕粉を排出する粉砕工程と、を含み、前記粉砕工程では、ジェットミル粉砕装置の内部における停留粉末重量および前記分級ロータの回転速度の両方の制御を行う。
【0011】
ある実施形態において、前記粉砕工程中に前記停留粉末重量の測定値または推定値に応じて前記分級ロータの回転速度を変えて前記制御を行う。
【0012】
ある実施形態において、前記制御は、停留粉末量を増加させつつ、前記分級ロータ回転速度を低下させる。
【0013】
ある実施形態において、前記粉砕工程は、前記ジェットミル粉砕装置の内部における停留粉末重量の測定値または推定値が第一の停留粉末重量になる状態で粉砕を行う工程と、前記停留粉末重量の測定値または推定値が、前記第一の停留粉末重量の1.05倍以上3倍以下の範囲にある第二の停留粉末重量になる状態で粉砕を行う工程とを含み、前記停留粉末重量の測定値または推定値が第二の停留粉末重量になる状態で粉砕を行う工程において、前記分級ロータの回転速度を前記停留粉末重量の測定値または推定値に応じて設定する。
【0014】
ある実施形態において、前記停留粉末重量の測定値または推定値が前記第一の停留粉末重量になる状態で粉砕を行う工程における前記分級ロータの回転速度を100%とするとき、前記停留粉末重量の測定値または推定値が前記第二の停留粉末重量になる状態で粉砕を行う工程における前記分級ロータの回転速度を70%以上97%以下の範囲に設定する。
【0015】
ある実施形態において、粉砕工程の開始前に前記ジェットミル粉砕装置の内部に前記粗粉砕粉を事前供給する工程を更に含む。
【0016】
本開示のジェットミル粉砕システムは、実施形態において、ジェットミル粉砕装置と前記ジェットミル粉砕装置に接続され、前記ジェットミル粉砕装置にR-T-B系焼結磁石用合金の粗粉砕粉を供給する供給装置と、前記ジェットミル粉砕装置に接続された分級ロータと、前記分級ロータを制御する制御装置とを備え、前記分級ロータの回転速度を、前記ジェットミル粉砕装置の内部における停留粉末重量の測定値または推定値に応じて設定する。
【発明の効果】
【0017】
本開示の実施形態によれば、ジェットミル粉砕装置で微粉砕粉末の粒度を増加させることなく粉砕能率を向上させることが可能なR-T-B系焼結磁石用合金粉末の製造方法およびジェットミル粉砕システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本実施形態におけるジェットミル粉砕システム1000の構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本実施形態のジェットミル粉砕システム1000で使用され得るジェットミル粉砕装置100の構成例を示す図である。
【
図3】
図3は、ジェットミル粉砕装置100に粗粉砕粉60が供給され、内部で粉砕が行われる様子を模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、回転速度V
Rで回転する分級ロータ120を模式的に示す図である。
【
図5】
図5は、粉砕前、粉砕中、粉砕後における粉末の粒度分布を模式的に示すヒストグラムである。
【
図6】
図6は、本実施形態のジェットミル粉砕システム1000の構成例を模式的に示す図である。
【
図7】
図7は、本開示の実施例における微粉砕粉の粒度分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
まず、本開示のR-T-B系焼結磁石の製造方法に使用されるジェットミル粉砕システムの実施形態を説明する。なお本実施形態では衝突板を有する粉砕機構をもつジェットミル粉砕システムについて記載するが、ジェットミル粉砕システムにはこのほかに粉末同士の衝突による粉砕を主体とする流動層式の粉砕システムも多用されており、この流動層式ジェットミルシステムであっても粒度分級のための分級ロータを有する構造であれば適用できる。
【0020】
図1は、本実施形態におけるジェットミル粉砕システム1000の構成例を示すブロック図である。
【0021】
ジェットミル粉砕システム1000は、ジェットミル粉砕装置100と、ジェットミル粉砕装置100に接続された供給装置110と、ジェットミル粉砕装置100に接続された分級ロータ120と、分級ロータ120の回転速度を設定する制御装置130とを備えている。
【0022】
供給装置110は、ジェットミル粉砕装置100にR-T-B系焼結磁石用合金の粗粉砕粉(被粉砕物)を供給する。供給装置110の構成は任意であり、種々の公知の装置が使用され得る。後述するように、制御装置130は、ジェットミル粉砕装置100の内部における停留粉末重量の測定値または推定値に基づいて分級ロータ120の回転速度を可変に設定するように構成されていることが好ましい。制御装置130は、供給装置110およびジェットミル粉砕装置100の動作を制御して被粉砕物の供給レートおよび粉砕ガスの流量レートなどを調整するように構成されていてもよい。制御装置130の動作の詳細については、後述する。
【0023】
図2は、本実施形態のジェットミル粉砕システム1000で使用され得るジェットミル粉砕装置100の構成例を示す図である。参考のため、
図2には、互いに直交するX軸、Y軸、およびZ軸を含むXYZ座標系が示されている。
図2の例において、Z軸は鉛直方向を向いている。
【0024】
図2の例におけるジェットミル粉砕装置100は、内部で粉砕が行われる粉砕室(粉砕チャンバ)10と、粗粉砕粉末の供給を受ける原料投入口20と、粉砕室10の中心軸付近を囲む内筒30と、内筒30の内部に配置された衝突板40と、衝突板40に下方から粉砕ガスを吹き付ける粉砕ノズル50とを備えている。
図2の粉砕室10の内部に記載された矢印は、粉砕ガスの流れを模式的に示している。衝突板40は、例えば、粉砕室10に固定された支持部42に取り付けられている。内筒30および衝突板40は、被粉砕物による衝突に耐える高い硬度および摩耗性を有する材料から形成され、例えばジルコニウムなどから形成され得る。
【0025】
内筒30の下端および上端は解放されており、内筒30の上方には分級ロータ120が設けられている。分級ロータ120は、水平軸(X軸に平行)の周りに回転可能に支持されており、不図示のモータによって駆動力を得て所望の回転速度で回転することができる。分級ロータ120は、概略的には円筒状の構造を有しており、周面には回転の軸に平行な方向に延びる複数のスリット(開口)が周方向に沿って配列されている。粉砕ノズル50から粉砕室10の内部に噴出される粉砕ガスは、分級ロータ120のスリットを通って、排出口122から外部に出ていくことができる。なお分級ロータの設置方向についてはY軸に平行でも良い。また、図の例において、分級ロータ120はジェットミル粉砕装置100に内蔵されているが、本開示の実施形態における分級ロータ120の位置は、この例に限定されない。分級ロータ120が粉砕室10の外部に配置され、パイプなどによって分級ロータ120と粉砕室10とが連結されていてもよい。
【0026】
図3は、ジェットミル粉砕装置100に粗粉砕粉60が供給され、内部で粉砕が行われる様子を模式的に示す図である。本開示では、粉砕工程中のジェットミル粉砕装置100の内部において粉砕処理を受けている粉末を「停留粉末」と呼び、その重量を「停留粉末重量」と呼ぶことにする。
【0027】
ジェットミル粉砕装置100の内部では、粉末粒子同士の衝突、粉末粒子と装置内壁面との衝突によって粉砕が進行する。
図3の例では、内筒30および衝突板40が設けられているため、粉末粒子が衝突する装置内壁面の面積が拡大する。粉末粒子は、内筒30および衝突板40などに衝突することによって更に細かく粉砕され得る。
【0028】
分級ロータ120は、粉砕室10の内部で十分に細かく粉砕されて浮遊または移動する粉末粒子の一部を選択的に外部に移動させて分級を行う装置である。回転する分級ロータ120のスリットは、分級ロータ120に接近してきた粉末粒子のうち、相対的に細かい粒子を透過させる一方で、相対的に大きな粒子は押し返すように機能する。その結果、相対的に大きな粒子は、粉砕室10の内部を循環し、所定の粒径以下のサイズに粉砕されるまで粉砕が繰り返されることになる。
【0029】
図4は、回転速度V
Rで回転する分級ロータ120を模式的に示す図である。回転速度V
Rは、単位時間あたりの回転数、例えば1分あたりの回転数(rpm: Revolutions Per Minute)で表される。分級ロータ120は円周方向に沿って並んだ複数のスリット120Sと、各スリット120Sを区画する複数の羽根120Wとを有している。分級ロータ120の回転に伴い、隣接する羽根120Wで挟まれた各スリット120Sでは、径方向外側に向かう遠心力が発生する。このため、移動速度C
Rで分級ロータ120のスリット120S内に侵入する粉末粒子60Pは、周速度C
Sの2乗および粉末粒子60Pの質量の積に比例する遠心力F
Cを受ける。このため、大きくて重い粒子ほど大きな遠心力F
Cを受けて、スリット120Sを通過しにくくなる。
【0030】
分級ロータ120の半径をr、粉末粒子60Pの粒径(直径)をd、密度をρとするとき、その粉末粒子60Pの質量は球形近似すると、(π/6)・d3・ρで示される。このため、その粉末粒子60Pに働く遠心力FCは、(π/6)・d3・ρ・(CS)2/rである。
【0031】
一方、スリット120Sに流入する粉砕ガスの力(推進力FR)は、粉砕ガスの粘度をμとするとき、3π・d・μ・CRで表される。移動速度CRは、粉砕ガスの流量レートQを分級ロータ120の合計開口面積で割った値に比例する。このため、粉砕ガスの流量レートQを調整することにより、移動速度CRを制御することが可能である。
【0032】
遠心力FCと推進力FRとが釣り合うときの粉末粒子60Pの粒径dは、FC=FCの等式から算出される。このときの粒径を理論計算分級径Dtとすると、Dt=((CR)1/2/CS)・(18μ・r/ρ)1/2が成立する。言い換えると、粒径が理論計算分級径Dtに等しい粉末粒子60Pでは、遠心力FCと粉砕ガスの推進力FRとが釣り合う。一方、粒径が理論計算分級径Dtよりも小さな粉末粒子60Pでは、遠心力FCが粉砕ガスの推進力FRよりも小さくなる。その結果、粒径が理論計算分級径Dtよりも小さな粉末粒子60Pは分級ロータ120の内部に進むことができ、ジェットミル粉砕装置100から外部に排出されて回収され得る。これに対して、粒径が理論計算分級径Dt以上の粉末粒子60Pは、粉砕ガスの推進力FRが遠心力FC以下になる。その結果、そのような大きさの粉末粒子60Pは、分級ロータ120を通過できず、粉砕室10の内部を循環または停留することになり、更なる粉砕によって理論計算分級径Dtよりも小さくなってから、分級ロータ120を通って排出口122から出ていくことが可能になる。
【0033】
図5は、粉砕前、粉砕中、粉砕後における粉末の粒度分布を模式的に示すヒストグラムである。ヒストグラムの横軸は粒度(粉末粒子の直径)、縦軸は頻度である。
図5には、参考のため、上述した理論計算分級径D
tに相当する粒度が破線によって示されている。
図5の(a)は粉砕前の原料合金(粗粉砕粉末)の粒度分布、(b)は粉砕中の粉砕室内に存在する停留粉末の粒度分布、(c)は分級ロータ120を通って排出口122から出てきた粉末(微粉細粉)の粒度分布である。これらの粒度分布は、例えばHe-Neレーザ光の回折・散乱現象を用いた粒度分布測定方法によって得ることができる。
【0034】
図5(a)に示されるような粒度分布を有する被粉砕物(粗粉砕粉)が、
図3に示されるジェットミル粉砕装置100の原料投入口20から粉砕室10に供給されると、粉砕工程の開始直後において粉砕室10の内部に存在する粉末(停留粉末)の粒度分布は、
図5(a)に示される通りの分布である。粉砕工程の開始後、粉砕処理が進行するに伴い、粉末粒子は粉砕されて小さくなるため、粒径が相対的に大きな粒子が減少し、粒径が相対的に小さな粒子が増加する。粉砕処理が定常的に進行しているとき、粉砕室10の内部には、
図5(b)に示されるような粒度分布を有する停留粉末が存在し、理論計算分級径D
tよりも小さく粉砕された粉末粒子は、分級ロータ120を通って回収され得る。
【0035】
粉砕処理中において、粉砕状態が実質的に定常であるとき、分級ロータ120から排出される粉末(微粉砕粉)の重量と、原料投入口20から粉砕室10の内部に供給される被粉砕物(粗粉砕粉)の重量とはバランスしている。より詳細には、定常的な粉砕処理が行われている間は、原料投入口20から単位時間に供給される粗粉砕粉の重量(供給量または供給レート)は、排出口122から単位時間に排出される微粉砕粉の重量(粉砕量または粉砕レート)に一致するように制御される。定常状態が維持されているとき、ジェットミル粉砕装置100の内部に存在する粉末の重量(停留粉末量)は、ほぼ一定の値を示すことになる。
【0036】
従来、回収すべき微細粉末の粒度を小さくするためには、分級ロータの回転速度をより高い値に設定し、粗大な粉末粒子が分級ロータを通過しにくくすることが行われている。前述した理論計算分級径Dt=((CR)1/2/CS)・(18μ・r/ρ)1/2の等式から明らかなように、分級ロータの周速度CSを大きくするほど、理論計算分級径Dtを低下させることができるからである。このことは、回収される微粉砕粉の粒度を低下させるには、分級ロータの回転速度VRを高めることが必須であることを意味し、その結果として回収率すなわち粉砕能率が低下することはやむを得ないと考えられてきた。
【0037】
また、従来、分級ロータを高速で回転させるときは、回収率が低下するため、ジェットミル粉砕装置への粗粉砕粉の供給量を少なく設定していた。これは、単位時間に回収される粉末(微粉砕粉)が少ないとき、被粉砕物の単位時間の供給量を低下させないと、粉砕室内の停留粉末量が速やかに増加していき、すぐに粉砕装置を停止せざるを得ない状況になるためである。
【0038】
しかしながら、本発明者の研究によると、粉砕室内の停留粉末量を従来よりも多く維持することで、粉末同士の衝突が推進されて微粉砕粉の粒度が小さくなる効果が得られることが分かった。同時に、流量レートQが同一であっても,移動させるべき微粉砕粉末の量も増加することから、粉末の移動速度CRが相対的に低下するため、分級ロータ回転数を低下させても、理論計算分級径Dtを変えることなく分級ロータを介して排出される粉末の量を増やす効果も達成されることがわかった。この方法によれば、分級ロータの回転速度を低く設定したにもかかわらず、微細化を実現することが可能になる。また、この効果は、粉砕ガスの比重に依存する流速のみにかかわることなので種類によらず、純度の高い窒素やアルゴンまたはヘリウムなどの粉砕ガスを用いても実現され、高い粉砕能率を達成できうる。
【0039】
図6は、本実施形態におけるジェットミル粉砕システムの1000の構成例を模式的に示す図である。この例において、ジェットミル粉砕システム1000は、前述したジェットミル粉砕装置100と、排出口122に接続されたサイクロン捕集装置200と、サイクロン捕集装置200の出口管240に接続されたバッグフィルタ装置300とを備えている。ジェットミル粉砕装置100には、脚部420が固定されており、脚部400は、ロードセルなどの重量センサ430を介して、台440上に配置されている。重量センサ430は、ジェットミル粉砕装置100の重量または重量の変動を検出し、それによって停留粉末重量を測定することができる。ジェットミル粉砕装置100は、供給装置110、制御装置130、およびサイクロン捕集装置200などの装置、配線、またはパイプなどに接続されているが、フレキシブルパイプなどの柔軟性のある部材を介して接続していため、重量センサ430は、他の装置の影響を排して、ジェットミル粉砕装置100の重量の変動を測定することが可能である。そして、ジェットミル粉砕装置100の重量は、粉砕室10の内部に存在する停留粉末の重量を含んでいる。停留粉末を除いたジェットミル粉砕装置100の本体の重量は既知であるため、重量センサ430によって計測される重量の値から停留粉末重量の測定値を求めることができる。
【0040】
ジェットミル粉砕装置100の排出口122はフレキシブルパイプ222を介してサイクロン捕集装置200の入口管210に連結されている。分級ロータ120の回転軸は、モータ124に連結されており、モータ124の駆動回路が制御装置130に接続されている。
【0041】
ジェットミル粉砕装置100は、原料タンクを含む供給装置110から原料投入口20を介して被粉砕物(粗粉砕粉)の供給を受ける。原料投入口20には不図示のバルブが設けられ、バルブの開閉によってジェットミル粉砕装置100の内部圧力が適切に維持される。ジェットミル粉砕装置100の内部に導入された被粉砕物は、粉砕ノズル50からの不活性ガスの高速噴射により、相互衝突や衝突板40との衝突によって細かく粉砕される。こうして粉砕された粉末粒子の一部は気流に乗って上部の分級ロータ120に達し、分級ロータ120から排出口122を通ってサイクロン捕集装置200に導かれる。粉砕が不十分な粗い粒子は、分級ロータ120により分別され、ジェットミル粉砕装置100の内部に残り、更に衝突による粉砕処理工程を受けることになる。ジェットミル粉砕装置100に投入された被粉砕物は、例えば中位径が2~5μm程度の粒度分布を持つ微粉砕粉としてサイクロン捕集装置200に移動することになる。
【0042】
サイクロン捕集装置200では、内部に供給された粉末及び気体の混合物から粉末と気体の分離を行う。気体から分離された粉末は、排出口220を介して粉末捕集器230で回収される。気体は出口管240を介してバックフィルタ装置300に供給される。バックフィルタ装置300では、不可避的に含まれ得る僅かな微粒子が回収され、清浄な気体が排気口310から外部に放出される。粉末捕集器230で回収した粉末は、磁場中プレス成型、焼結工程など、公知の製造工程を経て、焼結磁石の製造に用いられる。
【0043】
本実施形態におけるジェットミル粉砕システム1000では、制御装置130が分級ロータ120の回転速度を制御するように構成されている。制御装置130は、典型的には、デジタル演算を実行するプロセッサと、コンピュータプログラムを記録するメモリとを有している。コンピュータプログラムは、プロセッサの動作に必要な複数の指令を含む。本実施形態における制御装置130は、ジェットミル粉砕装置100の重量を測定する重量センサ430から停留粉末重量の測定値を取得しているが、他の方法によって停留粉末重量の測定値を取得してもよい。制御装置130は、供給装置110からの被粉砕物の供給レートおよび排出口122からの排出レートに基づいて、停留粉末重量を推定してもよい。そのような供給レートおよび排出レートは、測定値であってもよいし、推定値(であってもよい。推定値は、計算値によって得られる値だけではなく、使用者によって設定された値(設定値)を含むものとする。また、制御装置130は、分級ロータ120の回転速度についてユーザが入力した指定値に応じて、分級ロータ120を回転させるようにモータ124を駆動するインバータなどのモータ制御装置であってもよい。
【0044】
停留粉末重量の推定値は、粉砕条件を決定する複数のパラメータのセットと、それらのセットごとに実験的に測定された停留粉末重量とを関係づけるテーブルまたは近似式に基づいて得ることもできる。このようなパラメータのセットは、被粉砕物(粗粉砕粉)の供給量、微粉砕粉の粉砕量、分級ロータの回転速度、および粉砕ガスの流量などを含み得る。
【0045】
本実施形態では、停留粉末重量を管理し、停留粉末重量を単に一定値に維持するのではなく、従来よりも高めることにより、粉末粒子どうしの衝突回数を増加させ、より細かい粉末粒子の生成を促進する。また、停留粉末重量を増加させるだけではなく、分級ロータ120の回転速度を低下させることにより、見かけ上、理論計算分級径Dtは増加するようにみえるが粉末の移動速度CRは相対的に低下するため実質的な理論計算分級径Dtは変わらずに、微細な粉末粒子の粒径を維持したまま粉砕能率を向上させる。前述したように、理論計算分級径Dtの増加は粒度を上昇させると考えられているが、本開示の実施形態では、停留粉末重量の増加により、粒度の増大を抑制することを実現できる。
【0046】
以下、本実施形態におけるR-T-B系焼結磁石の製造方法の実施形態を説明する。
【0047】
本実施形態のR-T-B系焼結磁石の製造方法は、
・分級ロータを備えるジェットミル粉砕装置にR-T-B系焼結磁石用合金の粗粉砕粉を供給する工程と、
・ジェットミル粉砕装置の内部で粗粉砕粉を粉砕して微粉砕粉を形成し、分級ロータによって微粉砕粉を排出する粉砕工程と、
を含む。
【0048】
R-T-B系焼結磁石用合金(Rは希土類元素のうち少なくとも1種であり、Nd及びPrの少なくとも1種を必ず含み、Tは遷移金属元素のうち少なくとも1種でありFeを必ず含む。Bはホウ素である)の粗粉砕粉は、公知のR-T-B系焼結磁石用合金を水素粉砕または機械粉砕によって作製することができ、R-T-B系焼結磁石用合金の組成は限定されない。粗粉砕粉は、例えば、中位径が50~1000μm程度の粒度分布を持つ。粒度は、JIS Z 8801 (ISO 3310)にて規定された試験用ふるいによって測定され得る。
【0049】
本開示におけるR-T-B系焼結磁石の製造方法では、粉砕工程において、ジェットミル粉砕装置の内部における停留粉末重量および前記分級ロータの回転速度の両方の制御を行う。前記制御は、前記粉砕工程中に停留粉末重量の測定値または推定値に応じて前記分級ロータの回転速度を変えることが好ましく。更に具体的には、前記制御は、停留粉末量を増加させつつ、前記分級ロータ回転速度を低下させることが好ましい。このような粉砕工程は、例えば、ジェットミル粉砕装置の内部における停留粉末重量の測定値または推定値が第一の停留粉末重量になる状態で粉砕を行う工程と、停留粉末重量の測定値または推定値が第一の停留粉末重量の1.05倍以上3倍以下の範囲にある第二の停留粉末重量になる状態で粉砕を行う工程とを行う。そして、停留粉末重量の測定値または推定値が第二の停留粉末重量になる状態で粉砕を行う工程において、分級ロータの回転速度を停留粉末重量の測定値または推定値に応じて設定する。
【0050】
ここで、第一の停留粉末重量は、粉砕工程を開始した後、ジェットミル粉砕装置の内部における停留粉末重量が比較的安定した時(定常状態)における停滞粉末重量である。ジェットミル粉砕は、粗粉砕粉末の供給を開始しても所望の粒径になるまでに時間を要するため、直ぐには供給量と同じ量の粉末が分級ロータから回収されない。このため、粉砕工程の初期段階では、ジェットミル粉砕装置内の停留粉末重量は徐々に増加していく。また、それに伴って分級ロータからの回収量も増加していき、停留粉末重量は設定した量に安定する。このようにして停留粉末重量が安定したときにおいてジェットミル粉砕装置内にある粉末の重量が第一の停留粉末重量である。
【0051】
停留粉末重量の測定または推定は、ジェットミル粉砕装置における粉砕工程の途中に行う場合(オンラインでの測定または推定)だけではなく、粉砕工程の前に先行して行ってもよい(オフラインでの測定または推定)。
【0052】
本開示の実施形態では、粉砕工程において、ジェットミル粉砕装置の内部における停留粉末重量の測定値または推定値を増加させるとき、分級ロータ120の回転速度を低下させる。ただし、分級ロータ120の回転速度を低下させると、そのままでは、停留粉末重量が減少するため、粗粉砕粉の供給レートを高め、停留粉末重量を一定レベルに維持する必要がある。また、本開示の好ましい実施形態では、停留粉末重量を従来よりも高いレベルに維持している。具体的には、安定に粉砕が実行される第一の停留粉末重量から、さらに停留粉末重量の測定値または推定値を第一の停留粉末重量の1.05倍以上3倍以下の範囲にある第二の停留粉末重量にまで高める。その場合、分級ロータ120の回転数を、第一の停留粉末重量となる状態で粉砕を行うときの値に比べて3%以上30%以下の範囲で低下させる設定を行うことが好ましい。言い換えると、停留粉末重量の測定値または推定値が第一の停留粉末重量になる状態で粉砕を行う工程における分級ロータの回転速度を100%とすると、停留粉末重量の測定値または推定値が第二の停留粉末重量(=第一の停留粉末重量×1.05~3)になる状態で粉砕を行う工程における分級ロータの回転速度は、70%以上99%以下の範囲に設定され得る。好ましくは、70%以上98%以下であり、さらに好ましくは70%以上97%以下の範囲に設定される。より好ましくは、第二の停留粉末重量は第一の停留粉末重量の1.2倍以上3倍以下である。
【0053】
なお、ジェットミル粉砕装置100への粗粉砕粉の供給量を増加させるとき、供給装置110の動作の制御を制御装置130が実行してもよいし、他の制御装置または手動で実行してもよい。
【0054】
本開示の実施形態では、停留粉末重量を十分に高いレベルに維持することにより、分級ロータの回転速度を低下させても粒度の増加を招くことなく、粉砕能率の低下を抑制または粉砕能率を向上させることができる。停留粉末重量が増大することが停留粉末粒子の衝突頻度を高めることができるからである。なお、停留粉末重量(槽内滞留量)が少ない状態で分級ロータの回転速度を低下させると、粒度の増大を招いてしまう。このように分級ロータの回転速度のみを変化させると粒度分布が変化するため、従来は、粉砕能率を向上させるために分級ロータの回転速度を制御することは行われなかった。
【0055】
好ましい実施形態では、粉砕室の容積に対する停留粉末重量の比率(粉末濃度)を、通常の停留粉末量の1.05倍から2倍の範囲に調整する。なお、このような範囲にある粉末濃度を速やかに実現するため、粉砕開始前にジェットミル粉砕装置100の内部に粗粉砕粉を事前に供給しておいてもよい。
【0056】
R-T-B系焼結磁石の高性能化のため、分級ロータによって排出される微粉砕粉は、中位径が100~800μm程度の粒度分布を持つことが好ましい。
【0057】
(実施例1)
水素吸蔵粉砕法により、Nd+Pr:30.5mass%、B:0.95mass%、残部Feである希土類磁石合金の粗粉砕粉を準備した。具体的には、ストリップキャスト法によって合金を作製した。その後、水素吸蔵法を用いた粗粉砕を行い、ジェットミル粉砕前の粗粉末を準備した。なお、Co、Al、Cu、Ga、Ti、Zr、Mnなどの微量添加元素が合計で約3mass%添加されている。保磁力向上のため、(Nd+Pr)の一部をDy、Tbなどの重希土類元素で適当量置換してもよい。この合金の密度を測定した結果、7.55Mg/m3であった。
【0058】
本実施例で使用したジェットミル粉砕装置の基本的な構成は、
図1から
図3を参照しながら説明した通りである。本実施例で使用したジェットミル粉砕装置では、粉砕室10の直径が95.6mm、内筒30の直径が43mm、内筒30の長さが230mm、粉砕ノズル50の先端から衝突板40までの距離が26mmであった。
【0059】
本実施例では、純度99.9%以上の窒素ガスを用い、ガス中の酸素含有量を0.4mass%以下となる条件のもとで、平均粒度が3~4μmになるようにジェットミル粉砕を行った。サイクロン捕集装置への供給は、ジェッミル粉砕ガス(窒素)を用いた。ただし粉砕ガスは不活性ガスであればよくアルゴンやヘリウムでもよい。ジェットミル粉砕ガスの圧力は、0.5MPa、流量は1m3/minであった。
【0060】
まず、粉砕室内に粗粉原料の無い状態で約26g/minの供給レートで原料を供給した。分級ロータ回転速度を8000rpmと設定した際に粉砕槽内の原料粉末の停留量は約85gで安定し、供給レートと同じ約26g/minの粉砕能率が得られた。得られた粉末の平均粒径(メジアン径)は4.0μmであった(条件1)。条件1で粉砕を行う工程は、第一の停留粉末重量で粉砕を行う工程に相当する。
【0061】
下記の表1に示すよう、条件1を基準として停留粉末重量および粉末濃度を増加させ、かつ、分級ロータの回転速度を低下させた(条件2、3、4)。その結果、表1に示す平均粒径の微粉砕粉末が表1に示す粉砕能率で得られた。この平均粒径は、He-Neレーザ式粒度分布測定装置によって測定された。なお、条件2、3、4で粉砕を行う工程は、第二の停留粉末重量で粉砕を行う工程に相当する。
【0062】
【0063】
図7は、条件1~4で粉砕を行ったときに得られる微粉砕粉の粒度分布を示すグラフである。グラフの横軸は粉末粒子の粒径であり、縦軸は頻度である。この粒度分布は、He-Neレーザ式粒度分布測定装置によって測定された結果に基づいている。
図7のグラフにおいて、条件1、2、3、4の粉砕で得られた微粉砕粉の粒度分布は、それぞれ、破線、一点鎖線、実線、点線で示されている。
【0064】
本実施例では、粉砕開始後における粉砕能率を26g/minに設定していた(条件1)。その後、粉砕室内における停留粉末濃度を高めるため、粉砕室への粗粉砕粉の供給レートを増加させることにより、停留粉末重量を増加させた。より具体的には、停留粉末重量の測定値を第一の停留粉末重量から第二の停留粉末重量に増加させた。この停留粉末重量の増加により、粉末同士の衝突確率および衝突板との衝突確率を高めた。また、分級ロータ回転速度を低く設定することにより、回収する微粉砕粉の平均粒径を増加させることなく、粉砕能率を著しく向上させることができた。粒度分布は、
図7に示されるように、ほとんど変化しなかった。
【0065】
従来の認識では、分級ロータ回転速度を下げると、回収される粉末の粒径は大きくなるはずであるが、粉砕室内の粉末濃度が高まることにより、粉砕室内の粉末粒子の移動速度CRが低下したと考えられる。粉末粒子の移動速度CRが低下した結果、分級ロータの回転速度が一定のままであれば分級径が低下して粒径の小さな粉末粒子しか回収されなくなるところ、ロータ回転速度を下げることにより、分級径を維持することができる。
【0066】
(実施例2)
実施例1よりも大型のジェットミル粉砕装置を用いて粉砕をおこなった。
【0067】
具体的には、実施例1と同様に希土類磁石合金の粗粉砕粉を準備した。この合金の密度を測定した結果、7.55Mg/m3であった。
【0068】
本実施例で使用したジェットミル粉砕装置の基本的な構成は、
図1から
図3を参照しながら説明した通りである。本実施例で使用したジェットミル粉砕装置では、粉砕室10の直径が約400mm、内筒30の直径が約100mm、内筒30の長さが約600mm、粉砕ノズル50の先端から衝突板40までの距離が約200mmであった。
【0069】
本実施例では、純度99.9%以上の窒素ガスを用い、ガス中の酸素含有量を0.4mass%以下となる条件のもとで、平均粒度が4~5μmになるようにジェットミル粉砕を行った。サイクロン捕集装置への供給は、ジェッミル粉砕ガス(窒素)を用いた。ジェットミル粉砕ガスの圧力は、0.6MPa、流量は8m3/minであった。
【0070】
下記の表2に示すよう、条件5を基準として停留粉末重量および粉末濃度を増加させ、かつ、分級ロータの回転速度を低下させた本開示の条件6~9は、条件5と比較して粉砕能率が向上している。特に停留粉末重量を1.05倍以上に増加させつつ、分級ロータの回転速度を97%以下に低下させた条件8および9は、条件5と比較して能率比が1.30以上となり、大きく粉砕能率が向上している。
【0071】
【符号の説明】
【0072】
10・・・粉砕室、20・・・原料供給口、30・・・内筒、100・・・ジェットミル粉砕装置、110・・・供給装置、120・・・分級ロータ、130・・・制御装置、200・・・サイクロン捕集装置、1000・・・ジェットミル粉砕システム