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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/17 20060101AFI20241008BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B41J2/17 103
B41J2/01 451
B41J2/01 301
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020197311
(22)【出願日】2020-11-27
(65)【公開番号】P2022085564
(43)【公開日】2022-06-08
【審査請求日】2023-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】青木 勇太
(72)【発明者】
【氏名】松本 和悦
(72)【発明者】
【氏名】小幡 雄三
(72)【発明者】
【氏名】見満 継頼
(72)【発明者】
【氏名】上野 智志
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-058441(JP,A)
【文献】特開2019-093689(JP,A)
【文献】特開2015-047720(JP,A)
【文献】特開2019-137040(JP,A)
【文献】特開2010-214876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する液体吐出手段を備えたキャリッジと、
前記キャリッジを走査する走査手段と、を備え、
前記液体が付着可能なものを移動させる、装置本体内で移動可能な部材に設けられたミスト回収手段、
を備えることを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項2】
前記移動可能な部材は、前記液体が付着可能なものとしての布地を保持するカセットを着脱可能に保持する受け部材である
ことを特徴とする請求項1に記載の液体を吐出する装置。
【請求項3】
前記受け部材は、前記キャリッジの走査方向と直交する方向に移動可能であり、
前記受け部材への前記カセット取り付け有無を検知する検知手段を有し、
前記検知手段が、前記カセットが前記受け部材から取り外されたことを検知したとき、ミスト回収動作を開始する、
ことを特徴とした請求項2に記載の液体を吐出する装置。
【請求項4】
前記液体吐出手段をメンテナンスする維持機構を有し、
前記維持機構が液体吐出手段のメンテナンス動作開始時に、ミスト回収動作を開始する、
ことを特徴とする請求項~3のいずれか1項に記載の液体を吐出する装置。
【請求項5】
前記受け部材が昇降機構を有し、
前記昇降機構により前記受け部材を下降させたあとにミスト回収動作を行う、
ことを特徴とする請求項~4のいずれか1項に記載の液体を吐出する装置。
【請求項6】
前記受け部材の一端部には下向きの斜面形状が設けられている、
ことを特徴とする請求項~5のいずれか1項に記載の液体を吐出する装置。
【請求項7】
前記斜面形状を傾斜方向に可変調整可能である、
ことを特徴とする請求項6に記載の液体を吐出する装置。
【請求項8】
前記斜面形状の斜面先端部に、機体底部に接触するように弾性部材が設けられている、
ことを特徴とする請求項6または7に記載の液体を吐出する装置。
【請求項9】
ミスト回収動作終了時に前記受け部材が駆動手段により前記液体を吐出する装置の前面側に移動する、
ことを特徴とする請求項~8のいずれか1項に記載の液体を吐出する装置。
【請求項10】
前記受け部材には前記カセットの有無を判別するカセット有無判別センサが設けられ、
前記カセット有無判別センサの近傍に開閉シャッターを開閉する開閉機構が設けられ、
ミスト回収動作時に前記開閉シャッターが閉じる、
ことを特徴とする請求項2~9のいずれか1項に記載の液体を吐出する装置。
【請求項11】
前記受け部材には、ミストを回収するためのミストファンと、当該ミストファンの流路入口に設けられた流路切替機構とを有し、
前記カセットの非装着時には前記受け部材上面を回収口とし、前記カセットの装着時には前記受け部材の側面を回収口とするように切り替え可能である、
ことを特徴とする請求項2~10のいずれか1項に記載の液体を吐出する装置。
【請求項12】
前記カセットの非装着時には前記受け部材の上面を回収口とし、前記カセットの装着時には前記カセットの側面を回収口とするように切り替え可能である、
ことを特徴とする請求項2~10のいずれか1項に記載の液体を吐出する装置。
【請求項13】
前記ミストファンの上流側にフィルタが設けられ、当該フィルタの上方から交換可能である、
ことを特徴とする請求項11に記載の液体を吐出する装置。
【請求項14】
ミスト回収動作終了後、前記受け部材を画像形成時の高さに移動させる、
ことを特徴とする請求項2~13のいずれか1項に記載の液体を吐出する装置。
【請求項15】
非印刷領域を有したカセットが装着される受け部材を有し、
前記カセットの非装着時には前記受け部材の上面を回収口とし、前記カセットの装着時には前記カセットの上面の非印刷領域を回収口とするように切り替え可能である、
ことを特徴とする請求項2~14のいずれか1項に記載の液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式の液体吐出装置では、液体吐出時にメディアへ着弾せず、機内にミスト状のインクが充満してしまう。そこで、機内にミストを回収するミストファンが搭載されており、印刷時や印刷後にミストが機内に充満しないようにする技術がある。例えば、特許文献1には、効率的にミストを回収することができる液体を吐出する装置を提供する目的で、プラテン部周辺にミスト回収機構を有する構成が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1では、画像形成中に発生するインクミストを回収するが、ミストファンは機内の固定位置に設置されている為、機内全体のミストを回収する事が困難である問題があった。すなわち、画像形成中に発生したマシン機内全体のミストを回収できないという問題は解消できていない。
【0004】
本発明は、画像形成中に発生したマシン機内全体のミストを回収することが可能な液体を吐出する装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明にかかる液体を吐出する装置は、液体を吐出する液体吐出手段を備えたキャリッジと、前記キャリッジを走査する走査手段と、を備え、前記液体が付着可能なものを移動させる、装置本体内で移動可能な部材に設けられたミスト回収手段を備えることを特徴とする液体を吐出する装置として構成される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、画像形成中に発生したマシン機内全体のミストを回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】従来のシリアル式インクジェットガーメント(布地)プリンタ、いわゆるTシャツプリンタの構成概要の一例を示す図である。
図2】従来のシリアル式インクジェットガーメント(布地)プリンタ、いわゆるTシャツプリンタの構成概要の一例を示す図である。
図3】従来のシリアル式インクジェットガーメント(布地)プリンタ、いわゆるTシャツプリンタの構成概要の一例を示す図である。
図4】実施例1におけるミスト回収装置を有したプリンタの正面図である。
図5図5は、図4に示したミスト回収装置の平面図である。
図6図6は、Tシャツを保持するカセットとプラテンの設置位置を説明するための図である。
図7】実施例2におけるプラテン形状の一例(斜面形状)を示す図である。
図8図8は、図7に示したプラテンの後方である後面側を可変式とした構成例を示す図である。
図9図9は、図7に示したプラテンの斜面形状先端部に弾性部材を設けた場合の構成例を示す図である。
図10図6に示したカセットを有したプリンタの構成例を示す図である。
図11】カセットの有無によりミスト回収流路を切り替える構成例を示す図である。
図12】カセットの有無によりミスト回収流路を切り替える他の構成例を示す図である。
図13】ミスト回収装置のフィルタ位置の例を示す図である。
図14】印刷媒体が靴下である場合に用いられるプラテンの流路を説明するための図である。
図15】カセット装着時のミスト流路を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。本実施例における液体を吐出する装置では、副走査モジュールについて、以下の特徴を有する。要するに、マシン機内で駆動する副走査ステージ(プラテン)といったモジュールにミスト回収機構を搭載させる事で、画像形成によって発生した機内全体に滞留するインクミストを、プラテンを駆動させながら回収する事で広範囲にミスト回収することが特徴になっている。すなわち、以下の実施例では、マシン機内でプラテンといった駆動している部材にミスト回収機構を設けることで、機内全体に漂うインクミストを回収することができ、画像形成中に発生するミスト回収率を向上させて機内や印字物の汚染を防止することが可能となっている。上記記載の本発明の特徴について、以下の図面を用いて詳細に解説する。
【0009】
まず、実施例の基礎となる従来のシリアル式インクジェットガーメント(布地)プリンタ、いわゆるTシャツプリンタ(以下、単にプリンタという)の構成概要の一例を、図1、2、3に示す。
【0010】
プリンタ100にはモーター、ソレノイド等の各部位の稼働(出力)やセンサなどの入力信号を処理し制御するためのコントローラボード101が搭載されており、コントローラボード101に搭載されたソフトウェアに基づき制御される。図示しないPC(PersonalComputer)から送信された印刷データの印刷制御やUSB(Universal Serial Bus)メモリーやコントローラボード101に記録された印刷データ読み出して印刷制御処理もコントローラボード101で行う。
【0011】
インクを吐出するヘッドが搭載されたキャリッジ102は主走査モーター113によりタイミングベルト103Aを駆動することで主および副のガイドロッド111A、111Bに沿ってマシンの左右方向に移動する。この際に位置を検出するために、周期的にスリットが形成もしくは印刷されたエンコーダーシート104を、キャリッジ102上のセンサ(不図示)で読み取りながら吐出位置でタイミングを合わせて、コントローラボード101からの制御によりインク滴を吐出することで画像を形成する。キャリッジ102上にヘッド1021が4個搭載されており、それぞれのヘッド1021が2列の副走査方向に並んだノズル列を有している。キャリッジ102内のヘッド1021の直上には、吐出に使用するインクを一時的に貯留しておくためのヘッドタンク(不図示)が備えられている。ヘッドタンクは、インク供給チューブ(不図示)およびインク供給ポンプ(不図示)を介してインクカートリッジ105と接続されており、必要に応じてインク供給ポンプを稼働することでインクカートリッジ105からインクの補給を受けている。
【0012】
印刷媒体となるTシャツはプラテン106上にセットされる。プラテン106は、プラテン昇降機構1061(Z軸)の上に搭載されており,上下方向に位置を調整可能となっている。また、プラテン昇降機構1061(Z軸)は、副走査のプラテン106上に搭載されている。副走査のプラテン106は、副走査のガイドレール108に沿って副走査タイミングベルト103A、副走査の駆動機構(不図示)、およびコントローラボード101により制御され、副走査方向に移動可能となっている。また、維持機構であるメンテナンスユニット112は、装置全体あるいは装置を構成する各種機器を、画像形成後にメンテナンスする動作を行う。印刷媒体であるTシャツへの印刷時は、次のような手順で動作する。
【0013】
まず、Tシャツがプラテン106にセットされると、その後、操作部109がユーザーから操作を受け付けて、コントローラボード101等の制御により、プラテン106をマシン後方である後面側へ完全に引き込む動作を行う。この引き込みの際に、プラテン106上のTシャツがヘッド1021に衝突するか否かを、高さ検知センサ110で検出する。高さ検知センサ110がヘッド1021に衝突することを検出した場合は、それ以上の引き込みはできないため、コントローラボード101等の制御により、プラテン106の引き込みをその場で停止する、もしくはプラテン106をマシン前面のTシャツセット位置まで戻す。
【0014】
プラテン106のマシン後方である後面側への引き込みが問題なく完了した場合は、印刷データ待機状態となる。ここでPC(不図示)から印刷データをプリンタに送信される、もしくはあらかじめコントローラボード101に蓄積されていた印刷データがある場合は、そのデータを操作部109で選択することによって印刷動作が開始される。印刷動作が開始されると、まずプラテン106が印刷開始位置まで移動される。その後、前述のキャリッジ102が右もしくは左方向に1移動(1スキャン)することでインクを吐出して作像が行われ、コントローラボード101等の制御により、その完了にタイミングを合わせマシン前面側である手前側に適切な量のプラテン106の移動(改行処理)を行う。これにより、Tシャツを次の印刷位置へと移動する。さらに、プラテン106の移動完了を待って、コントローラボード101等の制御により、キャリッジ102が、再び1スキャンの印刷を行う。このキャリッジ102の1スキャンとその後のプラテン106の移動を繰り返すことで、所望の領域の作像(印刷)を行う。印刷が完了すると、プラテン106はマシン前面側である手前側まで排出されて印刷完了となる。次に各実施例のおける構成概略を図示する。
【0015】
<実施例1>
図4は、実施例1におけるミスト回収装置を有したプリンタの正面図である。図5は、図4に示したミスト回収装置の平面図である。図6は、Tシャツを保持するカセットとプラテンの設置位置を説明するための図である。本実施例では、液体を吐出する液体吐出手段(例えば、ヘッド1021)を備えたキャリッジ102と、キャリッジを走査する走査手段(例えば、主走査モーター113、タイミングベルト103A)と、を備え、装置本体内で移動可能な部材に設けられたミスト回収手段(例えば、ミスト回収装置400)と、を備える。当該移動可能な部材は、例えばプラテン106であり、プラテン106の天面に布地を載せ固定することができる。加えて布地を保持したカセットを当該移動可能な部材である受け部材(例えば、ステージであるプラテン106)に対して着脱可能とすることも可能である。本実施例では布地を保持したカセットを、当該移動可能な部材である受け部材(例えば、ステージであるプラテン106)に着脱する実施形態で説明を行う。また、上記キャリッジの走査方向と直交する方向に移動可能である。
【0016】
図4、5では、本実施例のプラテンユニットについて示している。例えば、カセット600の受台であるプラテン106にミスト回収装置400を設置する。プラテン106はガイドレール108に沿って、キャリッジ駆動方向D1に垂直な方向D2にマシン機内を移動可能である為、移動しながらミストMを回収することで、マシン機内全体のミストを回収できる。また、図6に示すように、プラテン106にカセット有無判別センサ601を設け、カセット600を取り外すと当該センサが反応してミスト回収を開始する。このように、カセット600の受け部材であるプラテン106へのカセット600の取り付け有無を検知する検知手段(例えば、カセット有無判別センサ601)を有し、上記検知手段が、上記カセットが上記受け部材から取り外されたことを検知したとき、ミスト回収動作を開始するので、例えば、画像形成後にカセットを取り外している状態、画像形成を実施しないときに自動でミスト回収を行うことで、ダウンタイムを軽減させることができる。図6では、カセット有無の判別によりミスト回収する場合を説明したが、この他に、液体吐出手段(例えば、ヘッド1021)をメンテナンスする維持機構(例えば、メンテナンスユニット112)を有し、上記維持機構が上記液体吐出手段のメンテナンス動作開始時に、ミスト回収動作を開始してもよい。メンテナンスユニット112により画像形成後に自動メンテナンスが開始される場合、そのメンテナンスと同時にミスト回収を行えば、ダウンタイムのさらなる軽減を見込むことができる。
【0017】
ミスト回収手段400は例えばファンである。ファンにより気流を作り、排気部からミストを排出する。排気によるファンなどの機体や、大気の汚染を防ぐためにフィルターを設けることが好ましい。
【0018】
<実施例2>
図7は、実施例2におけるプラテン形状の一例(斜面形状)を示す図である。図8は、図7に示したプラテンの後方である後面側を可変式とした構成例を示す図である。図9は、図7に示したプラテンの斜面形状先端部に弾性部材を設けた場合の構成例を示す図である。
【0019】
図7に示すように、プラテン106を、マシン後方である後面側に斜面形状Sを設けたプラテン701とする。このように、プラテン106の後方である後面側(一端部)には下向きの斜面形状が設けられていることにより、プラテン奥への移動方向D3に移動するときに、マシン底部に滞留するミストを、斜面形状Sで上部へ持ち上げて回収することができる。
【0020】
さらに図8に示すように、プラテン106を、マシン後方である後面側に可変部Vを有した斜面形状Sを設けたプラテン702とする。そして、斜面形状Sをプラテン702の昇降機構(例えば、プラテン昇降機構1061)の昇降に応じて傾斜方向に可変調整可能とする。このように、斜面形状Sに可変部Vを追加することで、プラテン702の高さが変わっても、それに追従して斜面の長さを可変にすることができる。すなわち、プラテン702が昇降機構(例えば、プラテン昇降機構1061)を有し、上記昇降機構によりプラテン702を所定位置(例えば、最下降位置)まで下降させたあとに可変部Vを有した斜面形状Sによりミスト回収動作を行うことができる。カセットの高さを変えても常に斜面先端部はマシン底部に近い位置に自動調整することで、底部に滞留するミストをもれなく回収することができる。斜面を可変とする構成については、例えば、蛇腹状の伸縮自在な部材を用いればよい。プラテン702がどの高さにあっても、常に斜面先端はプラテン702の上昇に追従せずに機内底部に極近い位置にとどまることができるので、もれなくミスト回収が可能である。
【0021】
また、図9に示すように、図8に示したプラテン702の斜面形状Sの先端部の下面側にゴムのような弾性部材Eを設ければ、当該先端部を機内底部に接触させることができる。このように、上記斜面形状Sの斜面先端部に、機体底部に接触するように弾性部材が設けられているので、機体底部と斜面形状を接触させ、ミスト回収における機内底部に滞留するミストの回収率をさらに向上させる。さらに、このような弾性部材Eを設けると、プラテン702がマシン奥側である後面側から手前側である前面側に移動する場合には、弾性部材E1のように、当該材料の下方側が移動方向とは逆向き(上記奥側)にしなる一方、プラテン702がマシンの上記手前側から上記奥側に移動する場合には、弾性部材E2のように、当該材料の下方側が移動方向とは逆向き(上記手前側)にしなる。このように、プラテンの移動方向によって弾性部材のしなる向きが変わるので、プラテン702の移動に伴う機内底部への負担や弾性部材自体への負担を軽減させることができる。
【0022】
なお、本実施例ではプラテンの後方である後面側を斜面形状とする実施形態で説明したが、移動可能な部材(例えばプラテン106)の移動における進行方向が斜面形状になっていれば効果は得られるため、前後左右いずれか一端が斜面形状になっていればよい。
【0023】
<実施例3>
さらに、他の例として、コントローラボード101等の制御により、ミスト回収開始前にプラテン106を自動昇降機能で下方へ下げてからミスト回収をする。これにより、マシン機内全体のミスト回収率をさらに向上できる。これは、マシン機内下部に溜まったミストも効率よく回収できるためである。プラテン上面を一番下まで下げることが好ましい。
【0024】
ミスト回収終了後に、コントローラボード101等の制御により、画像形成終了時と同じ位置までプラテンの高さを戻すように設定する。このように、ミスト回収動作終了後、プラテン106をミスト回収直前の画像形成時の高さに移動させて戻すことで、例えば、2枚以上の同種メディアに画像形成する際に、ユーザーは、毎回プラテン調整する手間が省くことができ、印刷物の生産性向上を見込むことができる。さらに、駆動手段であるモーターやコントローラボード101等の制御により、ミスト回収後はプラテンを機体手前である前面側に自動で移動するように設定すると、次の印刷の為のカセットのセットが容易にできる。すなわち、ミスト回収動作終了時にプラテン106(あるいはプラテン702)が駆動手段によりプリンタ100の上記前面側に移動することで、カセットの取付けやすくすることができる。
【0025】
<実施例4>
図10は、図6に示したカセットを有したプリンタの構成例を示す図である。図10では、カセット有無判別センサ601の汚れ防止用シャッターが設けられている。図6に示した構成では、カセット有無判別センサ601が露出した状態となっているため、ミストで充満している機内をプラテンが移動すると、当該センサが汚れやすい構造となっている。そこで、図10に示すように、開閉シャッター6012を設け、ミスト回収時には、コントローラボード101等の制御により、回転支持部材6011を軸としてD4方向に自動でシャッター6012が閉じ、カセット有無判別センサ601が露出した状態を防ぐことで、ミスト回収時に当該センサが汚れないようにする。このように、プラテン106にはカセット600の有無を判別するカセット有無判別センサ601が設けられ、カセット有無判別センサ601の近傍に開閉シャッター6012を開閉する開閉機構(例えば、回転支持部材6011)が設けられ、ミスト回収動作時に上記シャッターが閉じるので、センサの汚れによるミスト回収の誤動作を未然に防ぐことができる。図10では、カセット有無判別センサ601は、プラテン106の窪み部1001に設けられ、開閉シャッター6012が、当該窪み部1001の開口部を開閉する。
【0026】
<実施例5>
図11は、カセットの有無によりミスト回収流路を切り替える構成例を示す図である。図12は、カセットの有無によりミスト回収流路を切り替える他の構成例を示す図である。図13は、ミスト回収装置のフィルタ位置の例を示す図である。
【0027】
画像形成中にインクミストが発生した場合、実施例1~4では、画像形成後にミスト回収を開始する前提で説明したが、ミストは発生直後に回収することができれば、印刷媒体や機内のさらなる汚れ防止となる。そこで、図11に示すように、流路方向に開閉可能な流路切替部材1101を用いる。流路切替部材1101は、プラテン106の上部における貫通孔Xの端部Cを中心として、開閉方向D7に開閉することにより、ミストの流路を切り替えることができる。図11では、流路切替部材1101を開状態とすることで、ミストをプラテン106の上面側からフィルタ1102を介して貫通孔Xを通って下方向D5に流して回収することができる。また、流路切替部材1101を閉状態とすることで、ミストをプラテン106の支柱部の側面に設けた給気口からフィルタ1102を介して貫通孔Xを通って下方向D6に流して回収することができる。図11では、流路切替部材1101の貫通孔X側の先端部が当接することで、プラテン106の上面側から貫通孔Xへのミストの流入を防ぐ。また、図11では、流路切替部材1101の貫通孔X側の先端部が下方に開くことで、プラテン106の支柱部側面に設けられた開口部である穴を塞ぎ、当該穴から貫通孔Xへのミストの流入を防ぐ。このように、カセット600の非装着時にはプラテン106の上面を回収口とし、カセット600の装着時にはカセット600の側面を回収口とするように切り替え可能であるので、液体吐出時でもミスト回収が可能となる。より具体的には、カセット600を装着するとプラテン106の支柱部側面に設けられた開口部である穴がミスト流路の流入口となり、プラテン106にカセット600を装着している画像形成中においても、ミストを回収することができる。
【0028】
また、他の例としては、図12に示すように、プラテン106の側面に開口部となる穴が設けられていなくても、開口部となる穴が側面に設けられたカセット600が装着されることにより、当該カセット600の側面からミストを回収できる。図12では、プラテン106に置かれたカセット600の側面から流入したミストをプラテン106のフィルタ1102を介して貫通孔Xを通って下方向D8に流して回収することができる。なお、機内のミストを回収するミストファンミストファン1201を設けることで、より効率よくミストを回収してもよい。このように、本実施例では、プラテン106には、ミストを回収するためのミストファン1201と、当該ミストファン1201の流路入口に設けられた流路切替機構(例えば、流路切替部材1101)とを有し、カセット600の非装着時にはプラテン106の上面を回収口とし、カセット600の装着時にはプラテン106の側面を回収口とするように切り替え可能とし、液体吐出時でもミスト回収を可能としている。また、カセット自体にミストを回収するための流路が設けられているので、図11に示したような流路切替部材を追加することもなく、カセットを装着している画像形成中にミストを回収することができる。
【0029】
また、図13に示すように、ミスト回収装置400中のフィルタ1102をミストファン1201の上流部(すなわち、ミスト回収流路における上流側)に設置してもよい。このように、ミストファン1201の上流側にフィルタ1102が設けられ、当該フィルタ1102の上方(カセット600が装着される側)から交換可能であるので、カセット600を取り外して、プラテン106の上方からフィルタ1102を容易に交換できる。
【0030】
<実施例6>
図14は、印刷媒体が靴下である場合に用いられるプラテンの流路を説明するための図である。図15は、カセット装着時のミスト流路を説明するための図である。以下では、 非印刷領域(例えば、印刷媒体設置部1401の間のデッドスペース)を有したカセット600が装着されるプラテン106を有し、上記カセットの非装着時にはプラテン106の上面を回収口とし、上記カセットの装着時には上記カセットの上面の非印刷領域を回収口とするように切り替え可能とすることで、液体吐出時でもミスト回収を可能としている。
【0031】
図14に示すように、実施例5の場合と同様に、カセット装着中でもミスト回収可能な構成となっている。靴下への印刷用のプラテン300では、複数の印刷媒体設置部1401に靴下を設置して印刷する。印刷媒体設置部1401の間は、デッドスペースとなっている為、当該スペースにミスト回収用の流路のための開口部となる穴1402を設ける。
【0032】
カセット600は、ベース部材201と、靴下Tの印刷が施される部分を平坦な状態で保持するプラテン300とを有している。プラテン300は、印刷対象を平坦な状態で保持する保持面を構成する断熱部材と、プラテン構造体で構成されている。そして、ベース部材201には、外周カバー部材202の一端部がヒンジ203で回転可能に取り付けられ、外周カバー部材202はベース部材201に対して開閉可能に設けられている。
【0033】
プラテン300はベース部材201に対して支持部311で支持して、プラテン300とベース部材201との間には靴下Tの余剰部分を収容できる収容空間を形成している。
【0034】
プラテン300はベース部材201上に支持部311で支持されている。支持部311は、カセット600のプリンタ100に対する出し入れ方向の中心に対して、手前側である前面側及び奥側である後面側にそれぞれ配置されている。また、支持部311は、カセット600のプリンタ100に対する出し入れ方向と直交する方向でそれぞれ2つ配置されている。それぞれの支持部311は、ベース部材201側の中空支持部231と、中空支持部231に移動可能に嵌め合わされたプラテン106側の中空支持部331と、中空支持部231と中空支持部331との間に配置した圧縮スプリング332とを備えている。また、図14では、ミスト回収用の流路のための開口部となる穴1402をカセット600内で貫通させてミストの流路を確保するために、衝立板1403が、ミストの流路方向、すなわちカセットの上面側と下面側を繋ぐように、ミストの流路に沿って設けられている。
【0035】
さらに、図15に示すように、図14に示した構成において、実施例5と同様のフィルタ1102およびミストファン1201をプラテン106に設けてもよい。これらの構成により、カセットを装着している画像形成中でもミスト回収が可能である。また、実施例5と同様に、ミスト発生直後に回収が可能で、印刷媒体や機内の汚れを防止できる。
【0036】
本願において、吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0037】
液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
【0038】
「液体吐出ユニット」は、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体が含まれる。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構、液体循環装置の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
【0039】
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
【0040】
例えば、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
【0041】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
【0042】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。
【0043】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
【0044】
また、液体吐出ユニットとして、ヘッドタンク若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。このチューブを介して、液体貯留源の液体が液体吐出ヘッドに供給される。
【0045】
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。
【0046】
「液体を吐出する装置」には、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて液体を吐出させる装置が含まれる。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を 気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0047】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0048】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0049】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0050】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0051】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0052】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0053】
また、「液体を吐出する装置」としては、他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0054】
なお、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【符号の説明】
【0055】
100 プリンタ
102 キャリッジ
112 メンテナンスユニット
106、701、702 プラテン
111A、111B ガイドロッド
400 ミスト回収装置
600 カセット
601 カセット有無判別センサ
6011 回転支持部材
6012 シャッター
1101 流路切替部材
1102 フィルタ
1201 ミストファン
1401 印刷媒体設置部
1402 穴
1403 衝立板
【先行技術文献】
【特許文献】
【0056】
【文献】特開2019-137140号公報
図1
図2
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図5
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