(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】光源装置、画像投射装置および光源光学系
(51)【国際特許分類】
G03B 21/14 20060101AFI20241008BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20241008BHJP
F21V 5/04 20060101ALI20241008BHJP
F21V 7/28 20180101ALI20241008BHJP
F21V 9/14 20060101ALI20241008BHJP
F21V 9/45 20180101ALI20241008BHJP
H04N 9/31 20060101ALI20241008BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20241008BHJP
【FI】
G03B21/14 A
F21S2/00 340
F21V5/04 350
F21V7/28 240
F21V9/14
F21V9/45
H04N9/31 500
F21Y115:30
(21)【出願番号】P 2020197461
(22)【出願日】2020-11-27
【審査請求日】2023-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 洋平
(72)【発明者】
【氏名】藤田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】平川 真
(72)【発明者】
【氏名】今井 重明
【審査官】川俣 郁子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-195057(JP,A)
【文献】特開2014-160233(JP,A)
【文献】特開2017-142482(JP,A)
【文献】特開2020-160434(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0333696(US,A1)
【文献】中国実用新案第210835555(CN,U)
【文献】特開2013-029796(JP,A)
【文献】特開2015-088410(JP,A)
【文献】特開2003-015220(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21K9/00-9/90
F21S2/00-45/70
F21V1/00-15/04
G02B6/26-6/27
6/30-6/34
6/42-6/43
9/00-17/08
21/02-21/04
25/00-25/04
G03B21/00-21/10
21/12-21/13
21/134-21/30
33/00-33/16
H04N5/66-5/74
9/12-9/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から出射された第1の色光の少なくとも一部を、前記第1の色光とは異なる第2の色光に変換して出射する複数の光源部と、
前記複数の光源部からそれぞれ出射された前記第2の色光を均一化して出射する光均一化素子と、
前記複数の光源部からそれぞれ出射された前記第2の色光を前記光均一化素子の入射側面に入射させ、前記光均一化素子の入射側面上に、前記複数の光源部における前記第2の色光の複数の発光領域に対する複数の共役像を、互いに隣接かつ一部が重ねた合成像として形成する合成部と、
を備え、
前記合成像の形成条件は、前記光均一化素子の入射側面に形成される前記複数の共役像のピーク強度の1/e
2以上となる光強度を有する部分の面積である前記合成像の面積をSC、前記光均一化素子の入射側面の面積をSIとしたときに、以下の条件式を満たす、
1.3>SC/SI>0.7
ことを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記合成像は、前記光均一化素子の入射側面の形状と一致する、
ことを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記合成像の形成条件は、前記光均一化素子の入射側面における前記複数の共役像の境界部の前記第2の色光の強度をI0、前記光均一化素子の入射側面における前記複数の共役像の光強度のピーク値の1/e
2以上となる部分の強度の平均値をIaveとしたときに、以下の条件式を満たす、
0.1<I0/Iave<1.2
ことを特徴とする請求項1または2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記合成像の形成条件は、前記第2の色光の前記光均一化素子への入射光の開口数をNAI、前記光均一化素子から出射される出射光の開口数をNAOとしたときに、以下の条件式を満たす、
0.8<NAI/NAO<1.2
ことを特徴とする請求項1ないし3の何れか一項に記載の光源装置。
【請求項5】
前記複数の光源部からそれぞれ出射される前記第2の色光のうち、少なくとも2つの前記第2の色光の出射方向が平行である、
ことを特徴とする請求項1ないし4の何れか一項に記載の光源装置。
【請求項6】
前記第2の色光をそれぞれ出射する複数の光源部が、前記光均一化素子の中心軸に対して対称に配置されている、
ことを特徴とする請求項1ないし5の何れか一項に記載の光源装置。
【請求項7】
前記複数の光源部からそれぞれ出射される前記第2の色光の共役像のうち、少なくとも2つの共役像が同一形状である、
ことを特徴とする請求項1ないし6の何れか一項に記載の光源装置。
【請求項8】
前記合成像の形成条件は、前記複数の光源部からそれぞれ出射される前記第2の色光の光束の中心線である主光線と、前記光均一化素子の入射側面への入射角θとが、以下の条件式を満たす、
0≦θ<10
ことを特徴とする請求項1ないし7の何れか一項に記載の光源装置。
【請求項9】
請求項1ないし8の何れか一項に記載の光源装置と、
前記光均一化素子からの光を変調して画像を形成する画像表示素子と、
前記画像を被投射面に拡大投射する投射光学系と、
を備えることを特徴とする画像投射装置。
【請求項10】
複数の光源から出射された第1の色光の少なくとも一部を、前記第1の色光とは異なる第2の色光に変換する複数の波長変換素子と、
前記複数の波長変換素子を介してそれぞれ出射された前記第2の色光を均一化して出射する光均一化素子と、
前記複数の
波長変換素子を介してそれぞれ出射された前記第2の色光を前記光均一化素子の入射側面に入射させ、前記光均一化素子の入射側面上に、
前記複数の波長変換素子における前記第2の色光の複数の発光領域に対する複数の共役像を、互いに隣接かつ一部が重ねた合成像として形成する合成部と、
を備え、
前記合成像の形成条件は、前記光均一化素子の入射側面に形成される前記複数の共役像のピーク強度の1/e
2以上となる光強度を有する部分の面積である前記合成像の面積をSC、前記光均一化素子の入射側面の面積をSIとしたときに、以下の条件式を満たす、
1.3>SC/SI>0.7
ことを特徴とする光源光学系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置、画像投射装置および光源光学系に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、様々な映像を拡大投影するプロジェクタ(画像投射装置)が広く普及している。プロジェクタは、光源から出射された光をデジタル・マイクロミラー・デバイス(DMD)又は液晶表示素子といった空間光変調素子に集光させ、映像信号により変調された空間光変調素子からの出射光をスクリーン上にカラー映像として表示させるものである。
【0003】
従来、プロジェクタには主に高輝度の超高圧水銀ランプ等が用いられてきたが、寿命が短いため、メンテナンスを頻繁に行う必要があった。そのため、近年、超高圧水銀ランプに代えてレーザやLED(Light Emitting Diode)を使用したプロジェクタが増加している。このようなプロジェクタは、超高圧水銀ランプを使用するプロジェクタに比べて寿命が長く、また、その単色性により色再現性も良い。
【0004】
プロジェクタでは、DMDなどの画像表示素子に、例えば色の三原色である赤色・緑色・青色の三色を照射することにより映像を形成している。この三色すべてをレーザ光源で生成することも可能ではあるが、緑色レーザや赤色レーザの発光効率が青色レーザに比べ低いため、好ましくない。そのため、青色レーザを励起光として蛍光体に照射し、蛍光体により波長変換された蛍光光から緑色光と赤色光を生成する方法が用いられている。このようなレーザ光源と蛍光体を用いた(組み合わせた)光源光学系が特許文献1,2に開示されている。
【0005】
特許文献1においては、ビームスプリッタを用いて励起光を分離し、蛍光体に2つのスポットを形成することで、温度上昇等に伴う蛍光体変換効率の低下を防ぐ構成が開示されている。
【0006】
特許文献2においては、2つの光源光学系を用いて、蛍光の発光部の共役位置である光均一化素子の手前で光路を合成し、光均一化素子の入射側面の形状と、蛍光の像のアスペクト比をあわせ、それぞれのスポットの共役像を隣接させる構成が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示の技術においては、発生した蛍光を後段のレンズで合成する構成を取っており、この方法では幾何学的な光の広がりを表すetendue(エタンデュ)が増大してしまうため、照明光学系や投射光学系でのケラレによる光利用効率の低下や、投射レンズを明るくすることによる装置のサイズが大きくなるなどの課題がある。
【0008】
また、特許文献2に開示の技術においては、入射位置での2つの像の入射側面での光強度の分布や、それぞれの光線の入射角度について特に言及されておらず、前述したエタンデュの増加による後段光学系のケラレや、投射光学系の大型化を避けることができないと考えられる。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、画像投射装置を小型化し光利用の高効率化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、光源から出射された第1の色光の少なくとも一部を、前記第1の色光とは異なる第2の色光に変換して出射する複数の光源部と、前記複数の光源部からそれぞれ出射された前記第2の色光を均一化して出射する光均一化素子と、前記複数の光源部からそれぞれ出射された前記第2の色光を前記光均一化素子の入射側面に入射させ、前記光均一化素子の入射側面上に、前記複数の光源部における前記第2の色光の複数の発光領域に対する複数の共役像を、互いに隣接かつ一部が重ねた合成像として形成する合成部と、を備え、前記合成像の形成条件は、前記光均一化素子の入射側面に形成される前記複数の共役像のピーク強度の1/e2以上となる光強度を有する部分の面積である前記合成像の面積をSC、前記光均一化素子の入射側面の面積をSIとしたときに、以下の条件式を満たす、
1.3>SC/SI>0.7
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、画像投射装置を小型化し光利用の高効率化を図ることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、第1の実施の形態にかかるプロジェクタ(画像投射装置)を示す概略構成図である。
【
図3】
図3は、光均一化素子の入射側面上の各共役像の合成像の様子を示す図である。
【
図4】
図4は、光均一化素子の入射側面上で合成像の光強度の断面プロファイルを示す図である。
【
図5】
図5は、各光源部からの光束と光均一化素子から出射する光束の様子を示す図である。
【
図6】
図6は、第2の実施の形態にかかるプロジェクタが備える光源装置の各光源部からの光束と光均一化素子から出射する光束の様子を示す図である。
【
図7】
図7は、光均一化素子の入射側面上の各共役像の合成像の様子を示す図である。
【
図8】
図8は、光均一化素子の入射側面上で合成像の光強度の断面プロファイルを示す図である。
【
図9】
図9は、第3の実施の形態にかかるプロジェクタが備える光源装置の光均一化素子の入射側面上の各共役像の合成像の様子を示す図である。
【
図10】
図10は、光均一化素子の入射側面上で合成像の光強度の断面プロファイルを示す図である。
【
図11】
図11は、第4の実施の形態にかかるプロジェクタが備える光源装置の光均一化素子の入射側面上の各共役像の合成像の様子を示す図である。
【
図12】
図12は、光均一化素子の入射側面上で合成像の光強度の断面プロファイルを示す図である。
【
図13】
図13は、光均一化素子の入射側面上の各共役像の合成像の様子の変形例を示す図である。
【
図14】
図14は、光均一化素子の入射側面上の各共役像の合成像の様子の変形例を示す図である。
【
図15】
図15は、光均一化素子の入射側面上の各共役像の合成像の様子の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、光源装置、画像投射装置および光源光学系の実施の形態を詳細に説明する。
【0014】
(第1の実施の形態)
図1は、第1実施形態にかかるプロジェクタ(画像投射装置)1を示す概略構成図である。
【0015】
プロジェクタ1は、筐体10と、光源装置20と、光均一化素子30と、照明光学系40と、画像形成素子(画像表示素子)50と、投射光学系60とを有している。
【0016】
筐体10は、光源装置20と光均一化素子30と照明光学系40と画像形成素子50と投射光学系60とを収納する。
【0017】
光源装置20は、例えば、RGBの各色に対応する波長を含んだ光を出射する。光源装置20は、光源部20A、光源部20Bおよび合成部である光路合成素子20Cを有する。光源部20Aおよび光源部20Bは同じ構造のものであって、所定の形状の光束を出射する。なお、光源部20Aおよび光源部20Bの内部構成については、後に詳細に説明する。光源部20Aと光源部20Bから出射された光束は、光路合成素子20Cによりそれぞれ偏向されて光均一化素子30の入射側面に入射する。なお、本実施の形態においては、光路合成素子20Cとしてプリズムを例として示しているが、これに限るものではない。
【0018】
なお、本実施の形態においては、光源装置20は、2つの光源部20A,20Bを用いた例を示しているが、これに限るものではなく、2つ以上例えば4つの光源部を用い、合成する構成としてもよい。
【0019】
光均一化素子30は、光源装置20から出射された光をミキシングすることで均一化する。より詳細には、光均一化素子30は、入射側面から入射した光束を、反射を繰り返しながら内部を伝搬して出射面から出射する。光均一化素子30は、入射側面から入射した光束を、内部で複数回反射することで、均一な面光源を出射面上に形成する。光均一化素子30としては、例えば、内部を中空にして内面に4枚のミラーを組み合わせたライトトンネル、ガラス等の透明な材料で角柱を形成したロッドインテグレータ、フライアイレンズ等が用いられる。
【0020】
照明光学系40は、光均一化素子30が均一化した光で画像形成素子50を略均一に照明する。照明光学系40は、例えば、1枚以上のレンズや1面以上の反射面等を有している。
【0021】
画像形成素子50は、例えば、デジタル・マイクロミラー・デバイス(DMD)、透過型液晶パネル、反射型液晶パネル等のライトバルブを有している。画像形成素子50は、照明光学系40により照明される光(光源装置20の光源光学系からの光)を変調することにより画像を形成する。
【0022】
投射光学系60は、画像形成素子50が形成した画像をスクリーン(被投射面)70に拡大投射する。投射光学系60は、例えば、1枚以上のレンズを有している。
【0023】
図2は、光源部20Aの構成を示す模式図である。なお、光源部20Bも同様の構成である。
【0024】
光源部20A(20B)は、光の伝搬方向に順に配置された、レーザ光源(励起光源)21と、それぞれの光源に対応して設けられたコリメータレンズ22と、第1レンズ群23と、ダイクロイックミラー24と、第2レンズ群25と、蛍光体ホイールである波長変換素子26と、第3レンズ群27と、を有している。例えば、光源装置20のうち、レーザ光源21を除いた構成要素によって「光源光学系」が構成される。光源部20A(20B)は、上述の各部を、レーザ光源21から出射する励起光の伝搬順に配置する。
【0025】
レーザ光源21は、複数の光源(発光点)を有している。
図2では、上下方向に並ぶ6個の光源を描いているが、実際には、6個の光源が紙面直交方向(奥行方向)に4列に並んでおり、6×4=24個の光源が二次元的に配列されている。レーザ光源21の各光源は、波長変換素子26が備える蛍光体を励起させる励起光として、例えば発光強度の中心波長が455nmの青色帯域の光(青色レーザ光)を出射する。
【0026】
レーザ光源21の各光源から出射される青色レーザ光(第1の色光)は、偏光状態が一定の直線偏光であり、ダイクロイックミラー24に対してS偏光となるように配置されている。レーザ光源21の各光源から出射される青色レーザ光は、コヒーレント光である。また、レーザ光源21の各光源から出射される励起光は、波長変換素子26が備える蛍光体を励起させることができる波長の光であればよく、青色帯域の光に限定されるものではない。
【0027】
なお、レーザ光源21は、複数の光源を用いることを例として示しているが、単一のレーザ光源でもよい。また、レーザ光源21としては、基板上にアレイ状に配置した光源ユニットを使用してもよいが、これに限定されるものではない。
【0028】
コリメータレンズ22は、レーザ光源21の24個の光源に対応して24個設けられている。各コリメータレンズ22は、レーザ光源21の各光源が出射した励起光を略平行光となるように調整する。コリメータレンズ22の数は、レーザ光源21の光源の数に対応していればよく、レーザ光源21の光源の数の増減に応じて増減することができる。
【0029】
レーザ光源21より出射された励起光は、レーザ光源21の各光源に対応したコリメータレンズ22により略平行光となる。略平行光となった励起光は、第1レンズ群23を通過し、ダイクロイックミラー24へと導かれる。
【0030】
ダイクロイックミラー24は、平行平板形状のガラス板である。ダイクロイックミラー24は、第1レンズ群23から導かれた励起光の波長帯域のS偏光(第1の偏光成分)を反射し、第1レンズ群23から導かれた励起光の波長帯域のP偏光(第2の偏光成分)および波長変換素子26からの蛍光光(第2の色光)を透過するようなコートを、入射面側に施している。
【0031】
ダイクロイックミラー24は、その中心を第2レンズ群25の光軸に対してシフトさせ、励起光を波長変換素子26の法線に対して傾いて入射する。
【0032】
なお、本実施の形態では、平板状のダイクロイックミラー24を用いているが、プリズムタイプを用いることも可能である。また、本実施の形態では、ダイクロイックミラー24が、励起光の波長帯域のS偏光を反射してP偏光を透過しているが、これとは逆に、励起光の波長帯域のP偏光を反射してS偏光を透過するようにしてもよい。
【0033】
ダイクロイックミラー24により反射された励起光は、第2レンズ群25により波長変換素子26へ導かれる。波長変換素子26の反射領域で反射された励起光は、再び第2レンズ群25を通過し、第2レンズ群25の光軸に対してダイクロイックミラー24の反対側を通過し、第3レンズ群27を透過し、光路合成素子20Cで偏向され、光均一化素子30に入射する。
【0034】
また、波長変換素子26の蛍光体領域に励起光が入射することにより出射される蛍光は、光路合成素子20Cを介して光均一化素子30に導かれる。より詳細には、蛍光は、第2レンズ群25により略平行光とされ、第3レンズ群27によりライトトンネル近傍に集光するように屈折され、光路合成素子20Cで偏向され、光均一化素子30に入射する。
【0035】
ところで、近年、レーザープロジェクタにおいては、高輝度化、高効率化の要望が強くなってきている。蛍光体の変換効率は、蛍光体に入射される励起光のエネルギー密度によって変動し、入射されるエネルギー密度が高いと温度上昇や、蛍光体層内の励起可能な電子が少なくなることにより、効率が低下する。そのため、なるべくエネルギー密度を均一化し、スポットサイズを大きくすることで効率向上を図ることが行われている。
【0036】
一方で、蛍光体上での励起光のエネルギー密度を低下させるため、蛍光体上の励起光スポットサイズを大きくすると、後段の光学系等での光線ケラレが大きくなるため、プロジェクタ全体での光利用効率は低下する。なお、投射レンズのFnoを明るくすることで、光利用効率を向上させることも可能だが、その場合、投射レンズが非常に大きくなってしまい、プロジェクタ全体のサイズが大きくなってしまい、商品性が劣ってしまう。
【0037】
すなわち、プロジェクタの光利用効率の向上には、エネルギー密度の均一化と最適なスポットサイズを得ることが重要である。
【0038】
また、高輝度化に伴い、蛍光体に入射する励起光のエネルギーが増加し、蛍光体の温度が上昇することによる変換効率の低下が起こる。
【0039】
そこで、本実施の形態においては、蛍光体上の励起光のスポットを分けることで蛍光の温度上昇を抑え、発生した蛍光を合成した合成像が光均一化素子30の入射側面の面積と同等になるように、蛍光体上のスポットサイズと導光光学系の倍率を決めるようにしている。
【0040】
具体的には、波長変換素子26からの蛍光光(第2の色光)の発光領域の複数の共役像が光均一化素子30の入射側面において隣接し、少なくとも一部が重なった合成像を生成し、光均一化素子30の入射側面上の合成像の面積をSC、光均一化素子30の入射側面の面積をSIとしたときに、以下の条件式(1)を満たすことが望ましい。
1.3>SC/SI>0.7 ・・・(1)
【0041】
条件式(1)は、光均一化素子30の入射側面における、波長変換素子26からの蛍光光(第2の色光)の発光領域の共役像の合成像の面積の適切な範囲を示している。ここで、合成像の面積とは、光均一化素子30の入射側面に形成される第2の色光の発光領域の各共役像の光均一化素子30の入射側面における光強度のピークの値の1/e2以上となる強度を有する部分の面積のことを示す。また、光均一化素子30の入射側面とは、光均一化素子30の導光方向の軸に対して垂直な面での断面のうち、もっとも入射側の面を示す。例えば、光均一化素子30がライトトンネルの場合においては、ライトトンネルの入り口とする。光均一化素子30がガラスロッドとプリズムが一体となった光学部品の場合においては、ガラスロッドの最も入射側の断面を入射側面とする。
【0042】
上記条件式(1)の上限を上回ると、合成像が光均一化素子30に十分に入射されないため、光学系全体の光利用効率を低下させるだけでなく、光均一化素子30に入射しなかった光が迷光となって投射光学系60等へ入射することにより、コントラスト低下を起こしてしまう。
【0043】
条件式(1)の下限を下回ると、光均一化素子30での光線ケラレをなくすことができるが、光均一化素子30への光線の入射角度が大きくなることにより、幾何学的な光の広がりを表すetendue(エタンデュ)が大きくなる。エタンデュが大きくなると、後段の投射光学系60でのケラレによる光利用効率の低下が発生したり、Fnoの明るい投射光学系60を用いることによる装置の大型化を招いたりする。
【0044】
ここでエタンデュEtとは、以下の条件式で与えられる。Sは光源の面積を示す。
Et=π×S×(NA)2
【0045】
なお、更に好ましくは、以下の条件式(2)を満たすことが望ましい。
1.2>SC/SI>0.8 ・・・(2)
【0046】
なお、更に好ましくは、以下の条件式(3)を満たすことが望ましい。
1.1>SC/SI>0.9 ・・・(3)
【0047】
更に好ましくは、合成像は光均一化素子30の入射側面の形状と略一致することを特徴とすることが望ましい。光路合成素子20Cにより合成された合成像が光均一化素子30の入射側面の形状と略一致させるように、第2の色光の発光領域の形状と、倍率を適切にすることで、光均一化素子30でのケラレの低減だけでなく、蛍光の発光領域を最大限大きくすることによる、蛍光体の変換効率の低下を防ぐことができる。
【0048】
ここで、例えば光均一化素子30の形状が矩形の場合、合成像が矩形となればよく、各第2の色光の発光領域の形状は矩形に限定されず、三角形や、矩形はもちろん、多角形や、それぞれ異なる形状の組み合わせとなってもよい。
【0049】
更に好ましくは、光均一化素子30の入射側面における複数の共役像の境界部の第2の色光の強度をI0、光均一化素子30の入射側面における各共役像の光強度のピーク値の1/e2以上となる部分の強度の平均値をIaveとしたときに、以下の条件式(4)を満たすことが望ましい。条件式(4)は、第2の色光の各共役像の適切な重なり具合を示した式である。
0.1<I0/Iave<1.2 ・・・(4)
【0050】
条件式(4)の下限値を下回ると、光均一化素子30の入射側面での合成像の面積が大きくなってしまうため、エタンデュが大きくなってしまい、光利用効率の低下や投射光学系の大型化が割けられなくなる、もしくは光均一化素子30での取込効率の低下が起こってしまう。
【0051】
また、条件式(4)の上限値を上回ると、光均一化素子30への入射角度の増加によるエタンデュの増加を招いてしまう。
【0052】
更に好ましくは、複数の第2の色光の光均一化素子30への入射光の開口数をNAI、光均一化素子30から出射される出射光の開口数をNAOとすると、以下の条件式(5)を満たすことが望ましい。
0.8<NAI/NAO<1.2 ・・・(5)
【0053】
条件式(3)を満たすように光路を合成することにより、エタンデュが小さいまま合成することが可能になり、変換効率を低下させず、光利用効率の向上、画像投射装置の小型化が可能になる。
【0054】
更に好ましくは、複数の光源部20A,20Bからそれぞれ出射される第2の色光のうち、少なくとも2つの第2の色光の出射方向が平行であることが望ましい。上記構成とすることにより、配置がシンプルになり、画像投射装置の小型化が可能になる。
【0055】
更に好ましくは、第2の色光をそれぞれ出射する複数の光源部20A,20Bが、光均一化素子30の中心軸に対して対称に配置されていることが望ましい。対向する共役像の光路が同一になることにより均一性を高めることができる。
【0056】
更に好ましくは、複数の光源部20A,20Bからそれぞれ出射される第2の色光の共役像のうち、少なくとも2つの共役像が略同一形状であることが望ましい。光学素子を共通化することにより、低コスト化を図ることが可能となる。
【0057】
更に好ましくは、複数の光源部20A,20Bからそれぞれ出射される第2の色光の主光線と、光均一化素子30の入射側面への入射角θとが、以下の条件式(6)を満たすことが望ましい。
0≦θ<10 ・・・(6)
【0058】
条件式(6)は、光均一化素子30の入射側面へ入射する各第2の色光の適切な入射角について示した式である。ここで、主光線とは、第2の色光の光束の中心線のことを示す。入射角が条件式(6)を満たすことにより、エタンデュの増加を防ぐことができ、光学系全体の大型化や光利用効率の低下を防ぐことが可能となる。
【0059】
ここで、
図3は光均一化素子30の入射側面上の各共役像の合成像の様子を示す図である。
図3においては、光均一化素子30の入射側面を実線、レーザ光源21の各光源により形成される共役像をそれぞれ点線で示す。
【0060】
図3に示すように、光均一化素子30の入射側面において、レーザ光源21の各光源の共役像が隣接しかつ重なるように合成し、合成像の面積SCは光均一化素子30の面積SIよりも少し大きい。本実施の形態においては、
SC/SI=1.05
である。
【0061】
なお、本実施の形態においては、それぞれの共役像を同じ形状としているが、それぞれの共役像を異なる形状としても良い。
【0062】
図4は、光均一化素子30の入射側面上で合成像の光強度の断面プロファイルを示す図である。
図4は、
図3で示す断面(一点鎖線)における、光均一化素子30の入射側面での光強度の断面プロファイルを示すものである。
【0063】
図4に示すように、光均一化素子30の入射側面での光強度は、それぞれの共役像の境界部で光強度が落ち込むようなプロファイルになる。共役像のピーク強度の1/e
2以上となる部分の強度の平均値をIave、境界部の光強度をI0とすると、
I0/Iave=0.45
である。
【0064】
図5は、各光源部20A,20Bからの光束と光均一化素子30から出射する光束の様子を示す図である。
図5においては、一つの光源部20Aからの光束を実線、他方の光源部20Bからの光束を点線で示している。また、各光源部20A,20Bからの各光束の中心線を主光線と定義する。
【0065】
本実施の形態においては、
図5に示すように、各光源部20A,20Bから光均一化素子30への入射の開口数NAをNAI、光均一化素子30から出射される光束の開口数NAをNAOとすると、
NAI/NAO=1.0
となるように設定している。
【0066】
また、本実施の形態においては、光均一化素子30の入射側面に対して垂直方向の軸と主光線との角度を入射角θとしたときに、入射角θ=0度、すなわち光均一化素子30の入射側面に対して垂直方向に主光線を入射させる構成としている。
【0067】
これにより、入射側の開口数NAと出射側の開口数NAを同じにすることが可能になるため、幾何学的な光の広がりを表すetendue(エタンデュ)を維持したままにすることが可能となる。
【0068】
このように本実施形態によれば、画像投射装置を小型化し光利用の高効率化を図ることができる。
【0069】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態について説明する。
【0070】
第2の実施の形態は、第1の実施の形態とは、断面プロファイルと光均一化素子への入射角度、合成像の面積が異なる。以下、第2の実施の形態の説明では、第1の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0071】
図6は、第2の実施の形態にかかるプロジェクタ1が備える光源装置20の各光源部20A,20Bからの光束と光均一化素子30から出射する光束の様子を示す図である。
図6に示すように、本実施の形態の光源装置20は、第1の実施の形態の
図5とは異なり、各光源部20A,20Bからの各光束の中心線である主光線の入射角θを、光均一化素子30の入射面に対して3度とする。
【0072】
ここで、
図7は光均一化素子30の入射側面上の各共役像の合成像の様子を示す図である。光源装置20の各光源部20A,20Bからの入射光を光均一化素子30の少し斜めに入射させることにより、
図7に示すように、光均一化素子30の入射側面上の各共役像の境界部の重なりを増やし、光均一化素子30に入射する光線の量を増やしている。このとき、合成像の面積SCと光均一化素子30の面積SIとの関係は、
SC/SI=0.9
である。
【0073】
図8は、光均一化素子30の入射側面上で合成像の光強度の断面プロファイルを示す図である。
図8は、
図7で示す断面(一点鎖線)における、光均一化素子30の入射側面上での光強度の断面プロファイルを示すものである。
【0074】
図8に示すように、光均一化素子30の入射側面での光強度は、第1の実施の形態の
図4とは異なり、それぞれの共役像の境界部において、共役像のピーク強度の1/e
2以上となる部分の強度の平均Iaveよりも上に凸となるプロファイル形状となっている。このとき、
I0/Iave=1.15
である。
【0075】
また、本実施の形態においては、
図6に示すように、各光源部20A,20Bから光均一化素子30への入射の開口数NAをNAI、光均一化素子30から出射される光束の開口数NAをNAOとすると、
NAI/NAO=1.1
となる。
【0076】
このように本実施形態によれば、エタンデュが小さいまま合成することが可能になり、変換効率を低下させず、光利用効率の向上、画像投射装置の小型化が可能になる。
【0077】
(第3の実施の形態)
次に、第3の実施の形態について説明する。
【0078】
第3実施の形態は、第1の実施の形態とは、断面プロファイル、合成像の面積が異なる。以下、第3の実施の形態の説明では、第1の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0079】
図9は、第3の実施の形態にかかるプロジェクタ1が備える光源装置20の光均一化素子30の入射側面上の各共役像の合成像の様子を示す図である。
図9においては、光均一化素子30の入射側面を実線、レーザ光源21の各光源により形成される共役像をそれぞれ点線で示す。
【0080】
図9に示すように、光均一化素子30の入射側面において、レーザ光源21の各光源の共役像が隣接しかつ重なるように合成し、合成像の面積SCは光均一化素子30の面積SIよりも少し大きい。本実施の形態における合成像の面積SCと均一化素子入射面の面積SIの関係は、
SC/SI=1.1
である。
【0081】
図10は、光均一化素子30の入射側面上で合成像の光強度の断面プロファイルを示す図である。
図10は、
図9で示す断面(一点鎖線)における、光均一化素子30の入射側面上での光強度の断面プロファイルを示すものである。
【0082】
図10に示すように、光均一化素子30の入射側面での光強度は、第1の実施の形態の
図4とは異なり、それぞれの共役像の境界部における光強度と、光強度の平均値との比は、
I0/Iave=0.15
である。
【0083】
このように本実施形態によれば、エタンデュが小さいまま合成することが可能になり、変換効率を低下させず、光利用効率の向上、画像投射装置の小型化が可能になる。
【0084】
(第4の実施の形態)
次に、第4の実施の形態について説明する。
【0085】
第4実施の形態は、第1の実施の形態とは、光源部を4つ用いて合成を行う点で異なる。以下、第4の実施の形態の説明では、第1の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0086】
図11は、第4の実施の形態にかかるプロジェクタ1が備える光源装置20の光均一化素子30の入射側面上の各共役像の合成像の様子を示す図である。
図11においては、光源装置20の4つの光源部を用いて合成を行う。合成方法に関しては、プリズムを使う等がある。
図11においては、光均一化素子30の入射側面を実線、レーザ光源21の各光源により形成される共役像をそれぞれ点線で示す。
【0087】
図11に示すように、光均一化素子30の入射側面において、レーザ光源21の各光源の共役像が隣接しかつ重なるように合成し、合成像の面積SCは光均一化素子30の面積SIよりも少し大きい。本実施の形態における合成像の面積SCと均一化素子入射面の面積SIの関係は、
SC/SI=1.08
である。
【0088】
なお、
図11に示すように、対向する共役像の形状が同じになるようにすることで効率を上げることが可能になる。
【0089】
図12は、光均一化素子30の入射側面上で合成像の光強度の断面プロファイルを示す図である。
図12は、
図11で示す断面(一点鎖線)における、光均一化素子30の入射側面上での光強度の断面プロファイルを示すものである。
【0090】
図12に示すように、光均一化素子30の入射側面での光強度は、第1の実施の形態の
図4とは異なり、共役像のピーク強度の1/e
2以上となる部分の強度の平均値をIaveとし、それぞれの共役像の境界部の光強度をI0とすると、
I0/Iave=0.2~0.4
である。
【0091】
また、本実施の形態においては、4つの光源から入射側面に入射される光束の主光線をそれぞれ光均一化素子30の入射側面に垂直に入射させるように構成することで、各光源部から光均一化素子30への入射の開口数NAをNAI、光均一化素子30から出射される光束の開口数NAをNAOとすると、
NAI/NAO=1.0
となる。
【0092】
このように本実施形態によれば、エタンデュが小さいまま合成することが可能になり、変換効率を低下させず、光利用効率の向上、画像投射装置の小型化が可能になる。
【0093】
なお、本実施の形態では、
図11に示すような共役像の配置としたが、これに限るものではない。例えば、
図13に示すような共役像の配置、
図14に示すような共役像の配置、
図15に示すような共役像の配置のように、光均一化素子30入射面と同様の形状になるように、各光源部の共役像の形を工夫することも可能である。
図13および
図14示す例は、四つの矩形形状の組み合わせにより、合成像を矩形状に形成したものである。また、
図15に示す例は、四つの三角形形状の組み合わせにより、合成像を矩形状に形成したものである。
【0094】
なお、上述した各実施の形態では、本発明の好適な実施具体例を示したが、本発明はその内容に限定されることはない。
【0095】
特に、上述した各実施の形態で例示した各部の具体的形状および数値は、本発明を実施するに際して行う具体化のほんの一例にすぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならないものである。
【0096】
このように、本発明は、上述した各実施の形態で説明した内容に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0097】
1 画像投射装置
20 光源装置
20A,20B 光源部
20C 合成部
21 光源
26 波長変換素子
30 光均一化素子
50 画像表示素子
60 投射光学系
【先行技術文献】
【特許文献】
【0098】
【文献】特許第6094866号公報
【文献】特開2017-142482号公報