(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】液体吐出装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
B41J2/01 303
(21)【出願番号】P 2020204925
(22)【出願日】2020-12-10
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100186853
【氏名又は名称】宗像 孝志
(72)【発明者】
【氏名】倉本 南
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-148053(JP,A)
【文献】特開2012-020423(JP,A)
【文献】特開2014-046461(JP,A)
【文献】特開2017-202612(JP,A)
【文献】特開2005-335246(JP,A)
【文献】特開2015-116800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に向けて液滴を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドを搭載した往復移動可能なキャリッジと、
前記キャリッジに設けられたセンサ部と、
を備え、
前記センサ部は、前記キャリッジの移動方向の側面に設けられ、前記側面と接触する面と対向する面の一部が円弧状であり、
前記記録媒体と前記センサ部との間の距離が
、前記液体吐出ヘッドの液体吐出方向において、前記記録媒体と前記キャリッジ
の下端面との間の距離よりも
短い、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記キャリッジは、前記センサ部の周辺部分に切り欠き部を有している、
請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記センサ部の下端は、前記ノズルよりも前記記録媒体の近くに位置するように、前記キャリッジに設けられている、
請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記センサ部は、前記キャリッジの移動方向の側面から下面に設けられ、前記キャリッジの下面において、前記液体吐出ヘッドに向けて先細りになるように傾斜している、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記キャリッジは、前記センサ部に空気を案内する案内手段を備える、
請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記キャリッジは、前記センサ部の近傍においてインクミストを回収する回収手段を備える、
請求項1乃至
5のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記回収手段は、前記キャリッジに設けた吸引孔を有する、
請求項
6に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記回収手段は、帯電させた帯電部材を有する、
請求項
6に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
請求項1乃至
8のいずれか一項に記載の液体吐出装置を備え、前記記録媒体上に画像を形成することを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録媒体に対して液体吐出ヘッドを往復移動させながら、液体を液滴として吐出する液体吐出装置が知られている。液体吐出装置において吐出された液滴を記録媒体の所定の位置に定着させて画像を形成する画像形成装置も知られている。
【0003】
液体吐出ヘッドは、液体インクを貯留する液室への圧力を変動させることで、液室と連通しているノズルから液体インクを液滴にして吐出する装置である。ノズルから液滴として吐出するとき、吐出された液滴とは別に微小液滴が生ずることがある。この微小液滴は、記録媒体に向かって移動せずにノズルと記録媒体の間の空間に浮遊する。
【0004】
液体吐出ヘッドは、往復移動するキャリッジに搭載されていて、移動しながら液滴を吐出するので、キャリッジの往復移動によって生ずる気流に乗って微小液滴がインクミストとなって拡散する。特にキャリッジによって乗じた気流の方向にインクミストは移動するので、このインクミストが、キャリッジに設けられた種々のセンサの方向に移動して付着すると、センサの検知動作に悪影響を与えることになる。
【0005】
インクミストによるセンサへの悪影響を防止する目的で、キャリッジの移動方向において液体吐出ヘッドとセンサ部との間に「ひさし部」を設けて、センサ部へのインクミストの付着を防止する技術が開示されている(特許文献1を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されている「ひさし部」がセンサ部へのインクミストの付着を防ぐことができる場合は、液体吐出ヘッドがキャリッジの移動方向の先頭側(下流側)であって、センサ部が後端側(上流側)に位置する場合である。このとき、センサ部はインクミストに向かって移動することになるが、「ひさし部」の作用によってインクミストがセンサ部に付着することを防ぐ。一方、液体吐出ヘッドがキャリッジの移動方向の後端側(上流側)であって、センサ部が先頭側(下流側)に位置する場合は、センサ部はインクミストの発生位置から離れる方向に移動する。この場合、ひさし部が無くてもインクミストがセンサ部に付着する可能性は低くなる。
【0007】
しかしながら、上記の二つの場合とは別に、キャリッジの移動方向が切り替わる場合は、インクミストに向かうようにキャリッジが移動することになり、このときの移動方向における先頭側にセンサ部が位置することになる。そうすると、特許文献1の「ひさし部」がインクミストを集めるように作用するので、センサ部へのインクミストの付着がより多く生ずることになる。
【0008】
以上のように、従来技術では、キャリッジの往復移動によって流動するインクミストがキャリッジに設置されているセンサに付着することを、より確実に防止するには課題がある。
【0009】
本発明は、キャリッジの往復移動において、液体吐出時に発生したインクミストがキャリッジに搭載されているセンサ部に付着しないように流動する構造を備える液体吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、液体吐出装置に関し、記録媒体に向けて液滴を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドを搭載した往復移動可能なキャリッジと、前記キャリッジに設けられたセンサ部と、を備え、前記センサ部は、前記キャリッジの移動方向の側面に設けられ、前記側面と接触する面と対向する面の一部が円弧状であり、前記記録媒体と前記センサ部との間の距離が、前記液体吐出ヘッドの液体吐出方向において、前記記録媒体と前記キャリッジの下端面との間の距離よりも短い、こと特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、液体吐出時に発生したインクミストがキャリッジに搭載されているセンサ部に付着しないように流動する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る画像形成装置及び液体吐出装置の第一実施形態を概略的に示す平面図。
【
図2】第一実施形態に係る液体吐出装置の要部を概略的に示す正面図。
【
図3】第一実施形態に液体吐出装置の要部を概略的に示す側面図。
【
図4】第一実施形態に係る液体吐出装置の要部を概略的に示す下面図。
【
図5】比較例としてインクミストの挙動を説明するための正面図。
【
図6】比較例としてインクミストの挙動を説明するための平面図。
【
図7】第一実施形態に係る液体塗布装置におけるインクミストの挙動を説明する図。
【
図8】本発明の第二実施形態に係る液体吐出装置の要部を概略的に示す正面図。
【
図9】本発明の第三実施形態に係る液体吐出装置の要部を概略的に示す正面図。
【
図10】第三実施形態に係る液体吐出装置の要部を示す下面図。
【
図11】本発明の第四実施形態に係る液体吐出装置の要部を概略的に示す正面図。
【
図12】第四実施形態に係る液体吐出装置の要部を示す下面図。
【
図13】本発明の第五実施形態に係る液体吐出装置の要部を概略的に示す下面図。
【
図14】第五実施形態に係る液体吐出装置の要部を概略的に説明するための側面図。
【
図15】第五実施形態に係る液体吐出装置の要部を概略的に説明するための正面図。
【
図16】本発明の第六実施形態に係る液体吐出装置の要部を概略的に示す下面図。
【
図17】比較例としてインクミストの他の挙動を説明するための正面図。
【
図18】本発明の第七実施形態に係る液体吐出装置の要部を概略的に示す正面図。
【
図19】本発明の第八実施形態に係る液体吐出装置の要部を概略的に示す正面図。
【
図20】本発明の第九実施形態に係る液体吐出装置の要部を概略的に示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[画像形成装置の実施形態]
以下、本発明に係る液体吐出装置及び画像形成装置の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る画像形成装置の実施形態としてのプリンタ100を概略的に示す平面図である。プリンタ100は、液体吐出装置の実施形態としての液体吐出機構110を備えている。
【0014】
プリンタ100はシート状の記録媒体としてのシートPに画像を形成するために、シートPに向けてインク(液体)を吐出する液体吐出機構110と、液体吐出機構110にシートPを供給する供給装置120と、シート収容部と、を備えている。なお、シート収容部は、画像が形成されたシートPを収容する部分であって、図示を省略している。
【0015】
ここで、以下の説明で用いる方向について説明する。
図1に示すように、液体吐出機構110が往復移動する方向は主走査方向Aであって、これを本明細書では共通してX方向として定義する。なお、主走査方向Aにおいて、+X方向を往路とし、-X方向を復路とする。すなわち、キャリッジ112は、主走査方向Aにおいて、往移動方向A1は+X方向に相当し、復移動方向A2は、-X方向に相当する。そして、これを繰り返すように動作する。すなわち、以下の説明において、液体吐出機構110の往復移動の方向を明示するとき、「往移動方向A1」と「復移動方向A2」を用いることがあるが、「+X方向」と「-X方向」の移動を意味するものである。
【0016】
そして、X方向と直交する方向であって、シートPの搬送方向としての副走査方向Bを、共通してY方向と定義する。なお、副走査方向Bは+Y方向である。シートPは、-Y方向には移動しないものとする。なお、X方向及びY方向と直交する方向であって、キャリッジ112における上下方向をZ方向とする。
【0017】
液体吐出機構110は、主走査方向Aに沿って配設されたガイドロッド111を備えている。そしてガイドロッド111には、キャリッジ112が往復動自在に保持されている。すなわち、キャリッジ112はガイドロッド111に沿って主走査方向Aにおいて往復移動する。
【0018】
キャリッジ112には、ガイドロッド111に沿って架設されたタイミングベルト113が連結されている。タイミングベルト113は、搬送モータ114の駆動により回動する無端状の部材である。搬送モータ114が正転又は逆転すると、タイミングベルト113の回動方向が切り換わり、キャリッジ112の移動方向が往移動方向A1又は復移動方向A2へと切り換わる。すなわち、搬送モータ114の回転方向を制御することでキャリッジ112の移動方向が切り換わる。
【0019】
キャリッジ112には、液体吐出ヘッドとしてのインク吐出ヘッド116が搭載されている。インク吐出ヘッド116は複数搭載されていて、それぞれが異なる色や異なると特性の液体を吐出する。インク吐出ヘッド116は、シートPに向けてインクを吐出する吐出口としてのノズル115を有する。インク吐出ヘッド116に対向する位置には、シートPを支持するプラテン190が配設されていて、シートPはプラテン190とインク吐出ヘッド116の間を副走査方向Bに搬送される。
【0020】
供給装置120は、プラテン190上にシートPを供給する搬送ローラを備えている。搬送ローラは、搬送モータ121によって駆動するように構成されていて、シートPをインク吐出ヘッド116の位置に向けて供給するシート供給部からシートPを供給して副走査方向Bに間欠的に搬送するように動作する。なお、
図1において搬送ローラの図示は省略している。
【0021】
そして、シートPは副走査方向Bへと間欠搬送されつつ、インク吐出ヘッド116が主走査方向Aに往復移動しながら液体インクを液滴として吐出することで、シートPの所定の位置にインク滴を付着させて定着させ、インク滴による画像が形成される。画像が形成されたシートPは、収容部へと収容される。
【0022】
キャリッジ112には、主走査方向Aにおける一方の側面に相当する端部にセンサ部としてのセンサ117を備えている。本実施形態においてセンサ117は、往移動方向A1における後端側にセンサ117が配設されているものとする。センサ117は、例えば、キャリッジ112の往復移動範囲を規定するために、シートPの主走査方向Aの端部であって、副走査方向Bに沿った方向の縁を検知するためのシート端検知センサとして動作する。なお、センサ117を、シートPに形成されたテストパターンを読み取るテストパターン検知センサとして動作させてもよいし、シートPに形成された画像の色を測定するための二次元センサであってもよい。
【0023】
センサ117を「テストパターン検知センサ」として動作させるときの例を説明する。キャリッジ112を移動させることでセンサ117を主走査方向Aに移動させながら、シートPに形成されているテストパターンを読取り、ノズル115とテストパターンまでの距離、すなわち、ノズル115とシートPまでの距離を読み取る。そして、読み取った距離に基づいて、テストパターンが記録された位置におけるインクの吐出タイミングを調整する。これにより、テストパターン検知センサとしてのセンサ117が読み取ったテストパターンの情報を基に、副走査方向Bの所定の位置におけるノズル115からのインクの吐出タイミングを自動的に調整することができる。
【0024】
またセンサ117を測色のための二次元センサとするときは、記録媒体としてのシートPに形成された色検知用のパッチ画像を用いた測色処理に適用可能である。その場合、パッチ画像と基準チャートを同時に撮像可能な位置にセンサ117を移動させながら、パッチ画像と基準チャートを撮像する。そして、取得したパッチ画像の画像データに基づいて、パッチ画像の測色値(標準色空間における表色値)を算出し、その測色値を用いて画像形成処理に反映させる。
【0025】
[液体吐出装置の第一実施形態]
以下、本実施形態では、センサ117をシート端検知センサとして動作させる例を用いて説明する。
図2は、本実施形態に係る液体吐出機構110が備えるキャリッジ112のX-Z平面視図である。
図2はキャリッジ112の正面図である。
図3は、キャリッジ112のY-Z平面視図であって側面図である。
図4は、キャリッジ112のX-Y平面図視図であって底面図である。以下、
図2から
図4を参照しながら説明する。
【0026】
シート端検知センサとしてのセンサ117は、シートPの先端およびサイズ幅(主走査方向Aにわたる寸法)を検出するために用いられる。センサ117の検知結果に基づいて、シートPに対する液体の吐出位置及び吐出タイミングが制御される。また、シート供給部にシートPのサイズ検出用センサがない場合、シートPのサイズ設定はプリンタ100のドライバ上で設定することになる。この場合、ドライバにおけるシートPの副走査方向Bの寸法(幅寸法)の誤設定があっても、シートPの端部よりも外側に液体を吐出することを防止できる。さらに、最大の主走査幅を制限することも可能である。
【0027】
センサ117は、インク吐出ヘッド116のインク吐出方向(-Z方向)において所定の位置に取り付けられている。
図2に示すように、センサ117は、シートPとセンサ117との間隙としての第一距離101は、シートPとキャリッジ112の底面側との間隙としての第二距離102よりも短くなるように、キャリッジ112の側面に取り付けられる。すなわち、センサ117の下端面の位置は、キャリッジ112の下端面の位置よりもシートPに近い位置になるように、キャリッジ112の側面にセンサ117が取り付けられる。なお、第一距離101及び第二距離102はいずれも、液体吐出方向における距離に相当する。
【0028】
またセンサ117は、
図2に示すように、シートPに対向する側の面を検出面1171とする。そして、検出面1171が、キャリッジ112のインク吐出ヘッド116が設けられた面(底面)と、同じ高さで移動できる位置になるように、センサ117がキャリッジ112に取り付けられている。
【0029】
また、キャリッジ112の一方の側面の下端部分であって、センサ117が配設されている側の下端部分には、凹状の切り欠きが形成されている。この切り欠きは、センサ117に対し所定の方向の気流を発生されるための構成であって、センサ117の周辺部分に形成されている。当該切り欠きを、本実施形態では、気流生成部140とする。気流生成部140は、キャリッジ112を主走査方向Aにおいて往復移動させているとき、往移動方向A1への移動時の上流側、言い換えると復移動方向A2への移動時の下流側に相当するキャリッジ112の下端部分に形成されている。そして、気流生成部140の切り欠き量は、往移動方向A1のときの上流側(側面側)に向けて徐々に大きくなる形状で形成されている。
【0030】
また、この気流生成部140は、
図3に示すように、センサ117が配設されているY方向における位置を境界として、副走査方向Bの下流に相当する下流側Mと、上流に相当する上流側Nの双方に設けられている。
図3に示すように、下流側気流生成部1402は、キャリッジ112の端面において、高さがセンサ117の位置から副走査方向Bの下流端部に向けて徐々に大きくなるように形成されている。上流側気流生成部1401は、キャリッジ112の端面において、高さがセンサ117の位置から副走査方向Bの上流側に向けて徐々に大きくなり、途中から一定になるように形成されている。これにより、センサ117の近傍において、キャリッジ112の最下面はセンサ117の検出面1171より高くなるようになっている。
【0031】
さらに、この気流生成部140は、
図4に示すように、キャリッジ112の下面において、センサ117の位置を境界とし、上流側気流生成部1401の幅が副走査方向Bの上流側に向けて徐々に大きくなっていて、途中から一定になるように形成されている。
【0032】
以上のようにキャリッジ112の一方の側面の下端部分(センサ117が配設される側面の下端部分)には、センサ117に対する気流を発生させる気流生成部140が形成されている。この気流生成部140を備えることで、キャリッジ112が主走査方向Aに往復移動するとき、特に復移動方向A2に移動するときにセンサ117の周囲に生ずる気流は、
図4の矢印Rのようになる。
【0033】
矢印Rの気流は、以下のようにして生ずる。キャリッジ112が往移動方向A1に移動すると、移動方向先頭側のキャリッジ112の側面が前方の空気を押し退ける。このときに押し退けられた空気はキャリッジ112の周囲を回り込んで往移動方向A1とは逆方向に流動する。すなわち移動方向下流側への気流が発生する。その気流は、気流生成部140は、キャリッジ112の底面部分とシートPによって形成される空隙を流動して、この空隙よりも広い空間としての気流生成部140に至るので、狭い空隙から広い空間(気流生成部140)に向かう流れになる。そして、気流生成部140は、センサ170から、キャリッジ112の側面の、副走査方向Bの上流と下流に拡張するように形成されていることから、流れてきた空気はセンサ170を避ける方向により多くが流れることになる。この結果、矢印Rのように気流が発生する。
【0034】
矢印Rで示す気流は、センサ117を避ける方向に生じているので、往移動方向A1にキャリッジ112が移動するときは、センサ117を避けるような空気の流れが、上流から下流に向かって生ずることになる。
【0035】
[比較例]
ここで、第一実施形態に対する比較例を
図5及び
図6に示しながら、第一実施形態による効果について、より明確に説明する。
図5及び
図6に示すように、比較例としての液体吐出機構110xが備えるキャリッジ112xは、第一実施形態に係る液体吐出機構110が備える気流生成部140に相当する構造を有していない。
【0036】
液体吐出機構110xが備えるインク吐出ヘッド116xからインク1151が吐出されるとき、インク吐出ヘッド116xの内部に形成されている液室の圧力変動によって、液室にあるインク1151の一部が押し出された液柱から分離した液滴が吐出される。この分裂の際に、インク1151の微小液滴としてのインクミスト150が生ずる。インクミスト150は、シートPに到達せずに浮遊する。したがって、インクミスト150は、キャリッジ112xの主走査方向Aへの移動によって、特に復移動方向A2への移動によって生ずる気流によって、
図6に示す矢印Sの方向へと流動する。インクミスト150が矢印Sの方向の気流によって流動すると、センサ117xに向かってインクミスト150が流れることになる。そうすると、センサ117xにインクミスト150が付着して、誤動作などの悪影響を生じさせることになる。
【0037】
すなわち、
図5及び
図6のように、キャリッジ112xの側面の下端部分に第一実施形態に係る気流生成部140と同様の作用を生じさせる構造が備わっていない場合は、インクミスト150がキャリッジ112xの移動によって生ずる気流(矢印S)に乗る。その結果、インク吐出ヘッド116xの下からセンサ117xの検出面1171xの下方を通過するよう、インクミスト150が流れるので、検出面1171xにインクミスト150が付着して誤動作の原因になる。
【0038】
これに対して、第一実施形態として説明したように、キャリッジ112の側面の下端部分には気流生成部140が設けられていて、センサ117の近傍において、キャリッジ112の最下面はセンサ117の検出面1171より高くなっている。その結果、
図7に示すように、インクミスト150は、矢印Tで示す方向に、センサ117を避けて流動する。すなわち、インクミスト150はセンサ117の両側を流れるようになる。したがって、センサ117の検出面1171付近でインクミスト150が舞うことを防止することができ、センサ117の検出面1171へのインクミスト150の付着を防止することができる。
【0039】
[液体吐出装置の第二実施形態]
次に、本発明に係る液体吐出装置の第二実施形態について説明する。第一実施形態では、キャリッジ112の側面の下端部分の一部を切り欠いてR状の気流生成部140aを形成していた。第二実施形態に係る液体吐出機構110aは、
図8に示すように、キャリッジ112aの側面の下端部分に円弧状面141aからなる気流生成部140aを備えている。気流生成部140aによって、センサ117aの近傍におけるキャリッジ112aの下端部分の最下面の位置が、センサ117aの検出面1171より高い位置になる。その結果、
図8の矢印Uで示すような気流が発生して、インクミスト150はセンサ117aの両側を流動して上方へ抜けていくようになる。したがって、インクミスト150が検出面1171aを避けるように流動するので、インクミスト150が浮遊して付着することを防止することができる。その結果、センサ117aの誤動作を防止できる。
【0040】
[液体吐出装置の第三実施形態]
次に、本発明に係る液体吐出装置の第三実施形態について説明する。
図9に示す本実施形態に係る液体吐出機構110bは、キャリッジ112bに配設されているセンサ117bの検出面1171bの位置が、インク吐出ヘッド116bが備えるノズル面の配列により形成されるインク吐出面の位置よりも低くなっている。
図9に示すように、検出面1171bの位置を示す矢印Cと、インク吐出面の位置を示す矢印Dを比較すると、矢印Cの方がシートPに近い。
【0041】
本実施形態に係るセンサ117bは、
図9に示すように、インク吐出ヘッド116のインク吐出方向において、シートPとセンサ117bとの距離を第一距離101とする。また、シートPをキャリッジ112bの底面(インク吐出面よりも上方に位置する)との距離を第二距離102とする。この場合、第一距離101は第二距離102よりも短い。すなわち、センサ117bは、キャリッジ112bに対して、検出面1171bがキャリッジ112bの底面よりもシートPに近い位置になるように、そして、インク吐出面よりもシートPに近い位置になるように配設されている。
【0042】
上記の構成によって、キャリッジ112bが復移動方向A2に向けて移動するときに生ずる気流は、
図9の矢印Vで示すように、センサ117bの検出面1171bより上方であり、かつ、
図10に示すように、センサ117bの両側を流れるようになる。したがって、センサ117bの検出面1171bへのインクミスト150の付着を防止することができる。
【0043】
[液体吐出装置の第四実施形態]
次に本発明に係る液体吐出装置の第四実施形態について説明する。本実施形態に係る液体吐出機構110cは、キャリッジ112cに取り付けられたセンサ117cの形状に特徴を有している。
図11に示すように、液体吐出機構110cは、キャリッジ112cに配設されているセンサ117cの検出面1171cの位置が、インク吐出ヘッド116cが備えるノズル面の配列により形成されるインク吐出面の位置よりも低くなっている。言い換えると、
図11に示すように、センサ117cは、キャリッジ112cの移動方向の側面からキャリッジ112cの下面にかけて設けられている。
【0044】
また、
図12に示すように、液体吐出機構110cは、キャリッジ112cが復移動方向A2へ移動するときに後端面となる側端面にセンサ117cが配設されている。センサ117cは、センサ本体1172cと、このセンサ本体1172cに一体的に設けられた凸状部1173cを備える。凸状部1173cは、キャリッジ112cの下面に位置する。センサ117cの下面を構成するセンサ本体1172cの下面(検出面1171c)と凸状部1173cの下面とは、面一に形成されている。
【0045】
凸状部1173cは、キャリッジ112cの下面において、キャリッジ112cの復移動方向A2に対して傾斜した傾斜面を形成している。すなわち、キャリッジ112cが復移動方向A2へ移動するときのセンサ117cの空気抵抗が小さくなるように工夫された形状を有している。言い換えると、キャリッジ112cの側端部に配設されたセンサ117cが備える面であって、キャリッジ112cの主走査方向Aに対向する面のうち、キャリッジ112c側の面に相当する凸状部1173cがキャリッジ112cの復移動方向A2に対して傾斜している。
【0046】
さらに言い変えると、キャリッジ112cの側端部に配設されたセンサ117cの一側面としての凸状部1173cは、キャリッジ112cの側端からインク吐出ヘッド116c側に突出する形状を有している。そして凸状部1173cは、インク吐出ヘッド116c側(突出方向)に向かって先細りになるように傾斜する傾斜面を構成している。この突出している部分に相当する傾斜面は、
図12に示すように、副走査方向Bにおいて、センサ117cの設置位置よりも副走査方向Bの上流側に案内する第一傾斜面1174cと、同じく下流側に案内する第二傾斜面1175cと、を有している。
【0047】
復移動方向A2にキャリッジ112cが移動をしているときに、インク吐出ヘッド116c側からセンサ117c側に向かう空気は、第一傾斜面1174cと第二傾斜面1175cの作用によって、センサ117cを避ける方向に流れる。すなわち、インク吐出ヘッド116cのノズルから液体が吐出した空間からセンサ117cへと流れる空気は、検出面1171cを避ける方向に流れようになる。すなわち、第四実施形態に係るキャリッジ112cでは、
図12の矢印Eのように気流が生ずるので、インク吐出ヘッド116側でインクミスト150が発生しても、センサ117cの検出面1171cより上方に、そして、センサ117の両側へとスムーズに流れるようになり、検出面1171cへのインクミスト150の付着を効果的に防止することができる。
【0048】
なお、液体吐出機構110cにおいては、凸状部1173cは、傾斜面形状としたが、曲面形状としてもよい。
【0049】
[液体吐出装置の第五実施形態]
次に本発明に係る液体吐出装置の第五実施形態について説明する。
図13に示すように、本実施形態に係る液体吐出機構110dは、第四実施形態に係るセンサ117cの形状の他に、インクミスト150を捕獲して回収するための回収手段としての吸引孔142を複数有する。吸引孔142は、センサ117dを挟んで、副走査方向Bの下流側Mと上流側Nに形成されている。
【0050】
また、これら複数の吸引孔142は、
図14に示すように、キャリッジ112cの高さ方向に向かって、キャリッジ112cの内部に形成されている。そして、高さ寸法の中央付近で合流し、合流通路1421がキャリッジ112cの上面側に開口するように形成されている。合流通路1421には、吸引ファン1422及びミスト回収フィルタ1423が設けられている。
【0051】
吸引ファン1422は、キャリッジ112dの下方から上方に向かう気流を生じさせるように動作をする。この気流によって、インクミスト150がキャリッジ112dの底面部分から吸い上げられて、キャリッジ112dのミスト回収フィルタ1423に吸着する。この構成によって、吸引されたインクミスト150が液体吐出機構110dの周囲や、プリンタ100の装置内に浮遊しないようにできる。
【0052】
また、センサ117dの位置に対して、副走査方向Bの上流側Nと下流側Mに分割して吸引孔142を設けることで、インクミスト150がセンサ117dを避けて流れる気流を作ることができる。
【0053】
以上のとおり、液体吐出機構110dが備えるキャリッジ112dによれば、インクミスト150がセンサ117dに付着することを、効率よく防止することができる。
【0054】
なお、全てのインクミスト150が、
図15の矢印Fで示すように、吸引孔142によって回収されずに、矢印Hのように一部が機内に浮遊する場合も考えられる。そのような場合でも、上述の第四実施形態同様に、センサ117dは、検出面1171dがインク吐出ヘッド116dの吐出面よりも低い位置になるようにキャリッジ112dに取り付けられているため、インクミスト150の付着を防止することができる。
【0055】
なお、吸引孔142に相当する構成を、第三実施形態に係るキャリッジ112bに設けてもよい。また、第一実施形態に係るキャリッジ112に対して、第二実施形態において説明したキャリッジ112aの特徴も組み合わせて、キャリッジ112dに適用してもよい。この場合、センサ117dへのインクミスト150の付着をより効果的に防止することができる。
【0056】
[液体吐出装置の第六実施形態]
次に、本発明に係る液体吐出装置の第六実施形態について説明する。本実施形態に係る液体吐出機構110eは、第四実施形態に係るセンサ117cの形状の他に、回収手段としての帯電部材143が、センサ117eの設置位置の近傍に配置されている。
【0057】
図16に示すように帯電部材143は、キャリッジ112eの下面において、センサ117eとインク吐出ヘッド116eとの間であって、かつ、センサ117eの両側、すなわち、副走査方向Bにおいてセンサ117eよりも上流側と下流側に、それぞれ設けられている。これにより、センサ117e近傍で浮遊するインクミスト150を付着回収することにより、センサ117eへのインクミスト150の付着を防止することができる。
【0058】
なお、
図17に示すように、主走査方向Aにおいて復移動方向A2から往移動方向A1へのキャリッジ移動方向の切り替え時には、キャリッジ112eが、プラテン190上のシートPの印字領域32から切り替え位置33に到達する。すなわち非印字領域34で一旦停止してから反対方向(往移動方向A1)へと移動する。このとき、復移動方向A2における上流側にインクミスト150が、矢印Gで示すように流れて浮遊する。そして、この状態で浮遊しているインクミスト150に向かって(往移動方向A1へ)キャリッジ112eが移動するため、センサ117eの検出面1171eにインクミスト150が付着する可能性がある。このような場合でも、上述した第5実施形態の吸引孔142を設けることにより、また第六実施形態の帯電部材143を設けることにより、インクミスト150の付着を効果的に防止することができる。
【0059】
[液体吐出装置の第七実施形態]
次に、本発明に係る液体吐出装置の第七実施形態について説明する。本実施形態に係る液体吐出機構110fは、
図18に示すように、キャリッジ112fが往移動方向A1に移動するときに前方となる側面に配設されたセンサ117fの形状に特徴を有している。より詳細には、センサ117fは、キャリッジ112fの移動方向の側面と接する面(第一面)と、キャリッジ112fの移動方向の側面に対向する面(第二面)により、キャリッジ112fの移動方向の側面から突出した外観を形成している。そして、第一面と第二面により形成される角部分の形状が円弧状になっている。すなわち、センサ117fは、キャリッジ112fの移動方向の側面に接する面と、側面に対向する面と、により形成される部分の一部が曲面1175fである。
【0060】
曲面1175fは、キャリッジ112fが往移動方向A1に移動するとき、キャリッジ112fの側面から突出するように配置されているセンサ117fの側面の空気抵抗が小さくなるように、往移動方向A1に対して丸みを帯びた円弧状になっている。すなわち、センサ117fは、キャリッジ112fの往移動方向A1側の側面に設置されていて、インク吐出ヘッド116fに対向する面の反対面が円弧状である、また、センサ117fの検出面1171fは、キャリッジ112fの底面よりもシートPに近い位置になるように配置されている。
【0061】
これにより、キャリッジ112fが往移動方向A1に移動するとき、センサ117fは移動方向に向かって先頭に位置するが、曲面1175fの下端部分はキャリッジ112fの底面部分よりも低いので、インクミスト150は曲面1175fに沿って上方に流れる。このとき、
図18の矢印Jに示すように気流が発生するので、浮遊しているインクミスト150がセンサ117fの検出面1171fに回り込まないようにできる。
【0062】
なお、センサ117fの上部形状は、曲面でなくてもよく、キャリッジ112f側に高くなる傾斜面でもよい。
【0063】
[液体吐出装置の第八実施形態]
次に、本発明に係る液体吐出装置の第八実施形態について説明する。
図19に示すように、本実施形態に係る液体吐出機構110gは、すでに説明した第一実施形態に係る液体吐出機構110に対し、案内手段としての通気孔144gを設けたものである。
【0064】
通気孔144gは、下端がキャリッジ112gの下面であり、センサ117gとインク吐出ヘッド116gとの間に開口し、上端がキャリッジ112gの上面に開口するようになっている。この通気孔144gの途中には、空気を清浄するためのエアフィルタ145gが設けられている。
【0065】
このように構成することにより、キャリッジ112gの主走査方向の切り替え時に、空気が矢印Kで示すように通気孔144gを通り、エアフィルタ145gを通過した後、センサ117gの検出面1171gの下方を矢印Lで示すように流れる。これにより、センサ117gの検出面1171gに綺麗な空気を送が送られ、インクミスト150の付着を防止することができる。
【0066】
[液体吐出装置の第九実施形態]
次に、本発明に係る液体吐出装置の第九実施形態について説明する。
図20に示すように、本実施形態に係る液体吐出機構110hは、すでに説明をした第四実施形態に係る液体吐出機構110cに対し、案内手段としての通気孔144hが設けられている。なお、通気孔144hは、第八実施形態において説明をした通気孔144gと同様の構成になっている。
【0067】
このように構成することにより、キャリッジ112hの走査方向切り替え時に、インクミスト150は、矢印Wで示すように、センサ117hに向かって流れるが、
図19にて示したように、上方からの空気が矢印Kのように通気孔144gを通る。そして、エアフィルタ145gを通過した後、センサ117hの検出面1171hの下方を矢印Lで示すように流れる。これにより、センサ117hの検出面1171hに綺麗な空気が案内される。すなわち、通気孔144gによって案内されて送られてくる空気によって、検出面1171hへのインクミスト150の付着を防止することができる。
【0068】
以上説明をした第一実施形態に係る液体吐出機構110から第九実施形態に係る液体吐出機構110hに至るまで、主走査方向Aの移動時に生ずるインクミスト150の流動方向を、所定の気流によって促すことができ、動作に悪影響を与えるような箇所へのインクミスト150の付着を効率的に防止できる。
【0069】
なお、第一実施形態に係る液体吐出機構110から第九実施形態に係る液体吐出機構110hを適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0070】
100 :プリンタ
101 :第一距離
102 :第二距離
110 :液体吐出機構
111 :ガイドロッド
112 :キャリッジ
113 :タイミングベルト
114 :搬送モータ
115 :ノズル
116 :インク吐出ヘッド
117 :センサ
120 :供給装置
121 :搬送モータ
140 :気流生成部
141a :円弧状面
142 :吸引孔
143 :帯電部材
144g :通気孔
144h :通気孔
145g :エアフィルタ
150 :インクミスト
170 :センサ
190 :プラテン
1151 :インク
1171 :検出面
1172c :センサ本体
1173 :凸状部
1401 :上流側気流生成部
1402 :下流側気流生成部
1421 :合流通路
1422 :吸引ファン
1423 :ミスト回収フィルタ
Y :副走査方向
【先行技術文献】
【特許文献】
【0071】