(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】光変調器とそれを用いた光送信装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/035 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
G02F1/035
(21)【出願番号】P 2020219102
(22)【出願日】2020-12-28
【審査請求日】2023-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】片岡 利夫
(72)【発明者】
【氏名】高野 真悟
【審査官】百瀬 正之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/239683(WO,A1)
【文献】特開平10-239647(JP,A)
【文献】特開2001-174766(JP,A)
【文献】特開2016-071199(JP,A)
【文献】国際公開第2020/202607(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0102847(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00-1/125
G02F 1/21-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光導波路と該光導波路を伝搬する光波を変調するための変調電極とを有する変調基板と、
該変調電極に印加される変調信号を中継する配線を設けた配線基板とを備えた光変調器において、
該配線基板は、該変調電極により変調が行われる作用部
の全体を覆うように、該変調基板に重ねて配置され、
該配線基板には、該作用部に対向する位置の少なくとも一部に、電波吸収部材が配置されていることを特徴とする光変調器。
【請求項2】
請求項1に記載の光変調器において、該電波吸収部材は、該配線基板の接地配線又は該変調電極の接地電極のいずれかに接続されていることを特徴とする光変調器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光変調器において、該作用部では、複数のマッハツェンダー型光導波路が並列に配置され、各マッハツェンダー型光導波路に対応して変調電極が配置されていることを特徴とする光変調器。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の光変調器において、該変調電極は信号電極とそれを挟むように配置される接地電極を備え、該信号電極と該電波吸収部材までの距離は、該信号電極と該接地電極との間隔よりも大きいことを特徴とする光変調器。
【請求項5】
請求項3に記載の光変調器において、該変調電極は信号電極と接地電極で構成され、特定のマッハツェンダー型光導波路と隣接する他のマッハツェンダー型光導波路との間に、該接地電極と該電波吸収部材とを対向して配置することを特徴とする光変調器。
【請求項6】
請求項5に記載の光変調器において、該接地電極と該電波吸収部材とを平面視した場合に、該接地電極の内側に該電波吸収部材が配置され、両者の側辺の距離Sは、該接地電極に隣接する該信号電極の幅Wと該信号電極と該接地電極との間隔Gを用いて、以下の式を満足することを特徴とする光変調器。
S≧2G+W ・・・・ 式
【請求項7】
請求項5又は6に記載の光変調器において、該電波吸収部材は、該信号電極に沿って、該作用部の外にまで延びていることを特徴とする光変調器。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の光変調器において、該配線基板には、該変調電極と電気的に接続される終端器が配置されていることを特徴とする光変調器。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の光変調器において、該変調基板に隣接して該変調電極に印加する変調信号を発生するドライバ回路素子が配置され、該ドライバ回路素子の出力端子は、該配線基板の配線に接続されていることを特徴とする光変調器。
【請求項10】
請求項
9に記載の光変調器と、該ドライバ回路素子に入力する変調信号を生成する信号発生器とを備えることを特徴とする光送信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変調器とそれを用いた光送信装置に関し、特に、光導波路と該光導波路を伝搬する光波を変調するための変調電極とを有する変調基板と、該変調電極に印加される変調信号を中継する配線を設けた配線基板とを備えた光変調器に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信分野や光計測分野において、光導波路と該光導波路を伝搬する光波を変調する変調電極とを有する変調基板を利用した光変調器が多用されている。近年の光変調器は広帯域化や小型化が求められており、一つの光変調器に複数の異なる高周波信号を同時に印加することが行われている。
【0003】
変調信号が60GHz以上のマイクロ波となると、信号の直進性が高く、変調基板の変調電極にワイヤボンディングで電気接続した場合には、伝送損失が大きくなる。このため、特許文献1では、変調基板に重なるように配線基板を配置する構造を提案している。
【0004】
配線基板内の配線の曲りやビアなどで配線方向が変化する場合や、配線基板の配線から変調基板の変調電極に接続する場合などでは、変調信号の一部が外部に放出され、変調電極に混入するという不具合を生じる。このような変調信号のクロストークは、配線基板と変調基板が近接して配置される場合は、特に顕著になる。また、複数の異なる変調信号を同時に扱う場合や、変調電極が形成する電界が光導波路に作用する作用部が複数近接する場合にも、クロストークの解消は重要な課題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、上述したような問題を解決し、変調基板に重なるように配線基板を配置した場合でも、変調信号のクロストークを抑制可能な光変調器を提供することである。また、これらの光変調器を用いた光伝送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の光変調器及び光送信装置は、以下のような技術的特徴を有する。
(1) 光導波路と該光導波路を伝搬する光波を変調するための変調電極とを有する変調基板と、該変調電極に印加される変調信号を中継する配線を設けた配線基板とを備えた光変調器において、該配線基板は、該変調電極により変調が行われる作用部の全体を覆うように、該変調基板に重ねて配置され、該配線基板には、該作用部に対向する位置の少なくとも一部に、電波吸収部材が配置されていることを特徴とする。
【0008】
(2) 上記(1)に記載の光変調器において、該電波吸収部材は、該配線基板の接地配線又は該変調電極の接地電極のいずれかに接続されていることを特徴とする。
【0009】
(3) 上記(1)又は(2)に記載の光変調器において、該作用部では、複数のマッハツェンダー型光導波路が並列に配置され、各マッハツェンダー型光導波路に対応して変調電極が配置されていることを特徴とする。
【0010】
(4) 上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の光変調器において、該変調電極は信号電極とそれを挟むように配置される接地電極を備え、該信号電極と該電波吸収部材までの距離は、該信号電極と該接地電極との間隔よりも大きいことを特徴とする。
【0011】
(5) 上記(3)に記載の光変調器において、該変調電極は信号電極と接地電極で構成され、特定のマッハツェンダー型光導波路と隣接する他のマッハツェンダー型光導波路との間に、該接地電極と該電波吸収部材とを対向して配置することを特徴とする。
【0012】
(6) 上記(5)に記載の光変調器において、該接地電極と該電波吸収部材とを平面視した場合に、該接地電極の内側に該電波吸収部材が配置され、両者の側辺の距離Sは、該接地電極に隣接する該信号電極の幅Wと該信号電極と該接地電極との間隔Gを用いて、以下の式を満足することを特徴とする。
S≧2G+W ・・・・ 式
【0013】
(7) 上記(5)又は(6)に記載の光変調器において、該電波吸収部材は、該信号電極に沿って、該作用部の外にまで延びていることを特徴とする。
【0014】
(8) 上記(1)乃至(7)のいずれかに記載の光変調器において、該配線基板には、該変調電極と電気的に接続される終端器が配置されていることを特徴とする。
【0015】
(9) 上記(1)乃至(8)のいずれかに記載の光変調器において、該変調基板に隣接して該変調電極に印加する変調信号を発生するドライバ回路素子が配置され、該ドライバ回路素子の出力端子は、該配線基板の配線に接続されていることを特徴とする。
【0016】
(10) 上記(9)に記載の光変調器と、該ドライバ回路素子に入力する変調信号を生成する信号発生器とを備えることを特徴とする光送信装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、光導波路と該光導波路を伝搬する光波を変調するための変調電極とを有する変調基板と、該変調電極に印加される変調信号を中継する配線を設けた配線基板とを備えた光変調器において、該配線基板は、該変調電極により変調が行われる作用部の全体を覆うように、該変調基板に重ねて配置され、該配線基板には、該作用部に対向する位置に、電波吸収部材が配置されているため、変調基板に重なるように配線基板を配置した場合でも、変調信号のクロストークを効果的に抑制可能な光変調器を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る光変調器の一例を示す図である。
【
図2】
図1の光変調器の一部を拡大する側面図である。
【
図3】本発明に係る光変調器の他の実施例に使用される配線基板を説明する図である。
【
図4】
図3の光変調器に使用される変調基板を説明する図である。
【
図6】
図5の光変調器に示す点線A1~A3における断面図である。
【
図7】電波吸収部材の配置パターンの一例を示す図である。
【
図9】
図8の一部の拡大図であり、電波吸収部材の配置位置を説明する図である。
【
図10】本発明に係る光変調器に係るさらに別の実施例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について好適例を用いて詳細に説明する。
本発明は、
図1乃至10に示すように、光導波路と該光導波路を伝搬する光波を変調するための変調電極10とを有する変調基板1と、該変調電極10に印加される変調信号を中継する配線22を設けた配線基板2とを備えた光変調器において、該配線基板は、該変調電極により変調が行われる作用部を覆うように、該変調基板に重ねて配置され、該配線基板には、該作用部に対向する位置の少なくとも一部に、電波吸収部材SHが配置されていることを特徴とする。
【0020】
図1は、光変調器の一例を示す平面図である。従来は、光変調器の一方の端面に入力光を導入し、他方の端面から出力光を導出する形態が主流であるが、近年では、
図1に示すように、光変調器の一辺(図の右側)に、入力光L1を導入する入力用コリメータ6と出力光L2を導出する出力用コリメータ60を共に配置し、光信号に係る接続の利便性を図っている。変調基板1には光導波路が形成され、入力光L1が入射され、出力光L2に係る光波が出力されている。
【0021】
一方、光波の入出力部とは反対側に、変調信号Sinを入力する入力端子4が設けられている。入力端子4は、フレキシブル配線やコネクタ端子などで構成される。また、変調信号Sinは、筐体外に配置されたデジタル信号プロセッサー(DSP)などで発生される。入力端子4から入力された変調信号Sinは、回路基板40を経て、ドライバ回路素子3に入力される。ドライバ回路素子3は、信号増幅器が多段に接続されたものであり、増幅された変調信号を出力する。ドライバ回路素子3が出力する変調信号は配線基板2を介して、変調基板1の変調電極に印加される。
【0022】
ドライバ回路素子3は、変調基板1と同様に筐体5内に収容されても良いが、筐体5の外部に配置することも可能である。また、符号50は、筐体5を気密封止するための蓋部材を示している。
【0023】
変調基板としては、ニオブ酸リチウム(LN)やタンタル酸リチウム(LT)、PLZT(ジルコン酸チタン酸鉛ランタン)などの電気光学効果を有する強誘電体基板や、補強基板上にこれらの材料による気相成長膜を形成したものが利用可能である。
また、InPなどの半導体材料や有機材料など種々の材料を利用した基板も利用可能である。
【0024】
光導波路の形成方法としては、光導波路以外の基板表面をエッチングしたり、光導波路の両側に溝を形成するなど、基板に光導波路に対応する部分を凸状としたリブ型光導波路を利用することが可能である。また、Tiなどを熱拡散法やプロトン交換法などで基板表面に高屈折率部分を形成することで光導波路を形成することも可能である。リブ型光導波路部分に高屈折率材料を拡散するなど、複合的な光導波路を形成することも可能である。
【0025】
光導波路を形成した変調基板の厚さは、変調信号のマイクロ波と光波との速度整合を図るため、10μm以下、より好ましくは5μm以下の薄板で構成しても良い。また、リブ型光導波路の高さは、2μm以下、より好ましくは1μm以下に設定される。また、補強基板の上に気相成長膜を形成し、当該膜を光導波路の形状に加工することも可能である。
【0026】
薄板で構成した変調基板は、機械的強度を高めるため、直接接合又は樹脂等の接着層を介して、補強基板に接着固定される。直接接合する補強基板としては、光導波路や光導波路を形成した基板よりも屈折率が低く、光導波路などと熱膨張率が近い材料、例えば石英等が好適に利用される。また、接着層を介して補強基板に接合する際には、LN基板など薄板と同じ材料を補強基板として利用することも可能である。
【0027】
光導波路に沿って変調電極やバイアス電極が形成される。電極の形成方法としては、AuやTiなどの下地金属の上にメッキ法によりAuを積層することで構成することができる。
【0028】
図2は、
図1(b)の点線枠部分の拡大図であり、変調信号を伝搬する配線22(25)が、配線基板2に形成されている。配線基板2には、アルミナや窒化アルミのセラミックを利用した絶縁基板が用いられ、
図2の配線基板2の上面又は下面に電気配線が形成されている。また、配線基板2には、変調信号のための終端器Tも形成されている。
【0029】
配線基板2には、ビア23、24が設けられ、基板の反対面に配線が接続されている。配線基板(配線基板の裏面に形成された接続用配線部分(パッド部))と変調基板1の変調電極10との接続は、フリップチップボンドで行われている。具体的には、配線基板のパッド部をAu電極パッドで形成し、変調電極のAu電極と、熱/振動印加による圧着で接続する方法や、導電性接着剤Bによるバンプ接続などがある。
【0030】
図2に示すように、変調信号は、配線22からビア23、バンプBを経て、変調電極10に導入される。その後、バンプ、ビア24を経て、配線25に至り、終端抵抗などで構成される終端器Tに至る。終端器Tは熱源となるため、基板1から可能な限り遠ざけることが好ましい。
【0031】
本発明の光変調器の特徴は、
図2に示すように、配線基板2の変調基板1(変調電極10の作用部)に対向する位置に、電波吸収部材SHを配置することである。電波吸収部材としては、鉄、カーボン、ニッケル、コバール等を用いたフェライト焼結材で構成することが好ましい。
【0032】
電波吸収部材は、配線基板2に形成される配線の接地配線や、変調電極1の接地電極(変調電極の一部)のいずれかに接続され、接地電位に設定されることが好ましい。
【0033】
図3~9は、光導波路を2つのネスト型光導波路を用いた例を示したものである。
図3、配線基板2を示し、他の変調基板に形成される光導波路を点線WGで示している。符号3は、ドライバ回路素子であり、上面に形成された出力端子30からワイヤボンディングWBを介して変調信号が、配線基板2の配線のパッド部21に伝送される。変調信号は、パッド部21から配線22、ビア23を経て、配線基板2の裏面へと導かれる。
【0034】
図5に示すように、ビア23を経た変調信号は、配線基板2の裏面に形成された配線230に繋がり、バンプ接続B1を経て、変調基板1の変調電極10に伝送される。
図4は、変調基板1を平面視した図である。変調基板1には、光導波路WGや変調電極10、バイアス電極11が形成されている。図面を簡略化するため、変調電極を挟むように形成される接地電極などは、記載を省略している。
【0035】
変調電極10を通過した変調信号は、バンプ接続B2を経て配線基板2の配線240に伝搬し、さらに、ビア24、配線25を経て終端器Tに到達する。終端器Tは、終端抵抗などを組み合わせた回路構成をしており、変調信号が熱エネルギーに変換され、熱源となる。
図1(b)のように、配線基板2は、変調基板1と共に、金属筐体5内に気密封止されるため、変調基板1、特に変調電極10の作用部から遠ざけて終端器Tを配置することが好ましい。
【0036】
光変調のバイアス電圧を制御するため、バイアス電極11が変調基板1に形成されているが、当該バイアス電極11への電圧供給も、
図3及び5の配線基板2の配線27、ビア28、配線280、バンプ接続B3を経て行うことも可能である。
【0037】
図3及び
図4に示すように、変調電極10が光導波路に電界を作用させる作用部では、複数のマッハツェンダー型光導波路が並列に配置されている。そして、各マッハツェンダー型光導波路に対応して変調電極が配置されている。各変調電極10には異なる変調信号が印加されており、互いにクロストークも発生する。本発明では、
図5に示すように、変調電極10の作用部に対応して、配線基板2に電波吸収部材SHを配置している。この電波吸収部材SHにより、配線基板2側から漏出する変調信号の一部が、変調電極10に混入することが抑制される。なお、電波吸収部材SHは配線基板2の表面に形成しているが、必要に応じて、配線基板2に凹部を形成し、該凹部に埋め込むように形成しても良い。
【0038】
図5の点線A1~A3における各断面図の一部を、
図6(a)~(c)に示す。ここで、
図6(b)及び(c)に描かれる符号WG1とWG2は、光導波路WGの一つのマッハツェンダー型光導波路の分岐導波路を示している。
【0039】
特に、
図6(c)に示すように、変調電極は信号電極10とそれを挟むように配置される接地電極GNDを備え、該信号電極10と電波吸収部材SHまでの距離Hは、該信号電極10と該接地電極GNDとの間隔Gよりも大きくなるように設定される。これは、電波吸収部材の存在が、信号電極と接地電極との間に形成される電界を阻害しないようにするためである。
【0040】
図6では、信号電極の上方に電波吸収部材SHを配置する実施例を示したが、この場合には、信号電極と接地電極とで形成する電界の一部が電波吸収部材に吸収され、分岐導波路WG1及びWG2に印加される電界が弱くなる可能性がある。この不具合を解消するため、
図7~9では、信号電極10の間に配置される接地電極と対向して電波吸収部材を配置する実施例を説明する。
【0041】
図7は、
図4の変調基板1の上に、配線基板2配置する電波吸収部材SHの配置パターンを重ね合わせた図である。隣接するマッハツェンダー型光導波路の間、あるいは信号電極間に、電波吸収部材SHを配置している。
【0042】
図8は、
図7の点線A3における断面図である。隣接するマッハツェンダー型光導波路の間(信号電極間)には、接地電極GNDが配置され、その接地電極に対向するように、配線基板2に電波吸収部材SHが配置されている。この電波吸収部材SHと接地電極GNDとが、隣接するマッハツェンダー型光導波路の作用部に印加される変調信号のクロストークを効果的に抑制する。しかも、信号電極の上側には電波吸収部材SHが配置されていないため、信号電極の形成する電界を吸収することも抑制される。
【0043】
図9は、
図8の一部をさらに拡大した図である。参考までに、接地電極GNDと配線基板2に設けられた接地配線とを電気的に接続するバンプBも示している。バンプBの高さHは、50μm程度である。
【0044】
図9の接地電極GNDと電波吸収部材SHとを図面の上方から平面視した場合に、該接地電極GNDの内側に該電波吸収部材SHが配置されている。また、両者の側辺の距離Sは、信号電極10(SIG1又はSIG2)が形成する電界に影響をできるだけ与えないように設定される。具体的には、接地電極に隣接する信号電極の幅Wと該信号電極と該接地電極との間隔Gを用いて、以下の式を満足するように設定される。
S≧2G+W ・・・・ 式
【0045】
さらに、
図7に示すように、電波吸収部材SHの変調信号が伝搬する方向(信号電極10に沿った方向)の長さを、信号電極10の作用部の外にまで延ばすことにより、配線基板2の裏面に形成された配線230と変調基板1の変調電極10との接続部であるバンプ接続B1から放射されるクロストーク信号を、効果的に遮断することが可能となる。なお、
図7における作用部の領域(図面の横方向の幅)は、ほぼ信号電極10の長さと一致している。
図7では、信号電極10の長さより電波遮蔽部材SHの長さの方が長くなっている。
【0046】
図10は、
図5の変形例であり、配線基板2の裏面に、配線22等が設けられている。そして、変調基板1に隣接して配置され、変調電極10に印加する変調信号を発生するドライバ回路素子3が配置され、該ドライバ回路素子の上面に形成された出力端子に、該配線基板2の配線22が接続されている。これにより、
図5のワイヤボンディングWBも省略され、配線を簡略化することができる。
図10では、終端器Tは配線基板2の下面に設けられているが、当然、
図5と同様に、配線基板2の上面に配置することも可能であることは言うまでもない。
【0047】
上述した光変調器と、該光変調器内のドライバ回路素子に入力する変調信号を生成する信号発生器とを備えることで、同様の効果を有する光送信装置を提供することも可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上のように、本発明によれば、変調基板に重なるように配線基板を配置した場合でも、変調信号のクロストークを抑制可能な光変調器を提供することが可能となる。また、これらの光変調器を用いた光伝送装置を提供することもできる。
【符号の説明】
【0049】
1 変調基板
2 配線基板
3 ドライバ回路素子
SH 電波吸収部材