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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】組成物および物品
(51)【国際特許分類】
   C08L 71/02 20060101AFI20241008BHJP
   C08G 65/336 20060101ALI20241008BHJP
   C09D 171/02 20060101ALI20241008BHJP
   C09K 3/18 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
C08L71/02
C08G65/336
C09D171/02
C09K3/18 104
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020572210
(86)(22)【出願日】2020-02-06
(86)【国際出願番号】 JP2020004645
(87)【国際公開番号】W WO2020166488
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2019023690
(32)【優先日】2019-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】松浦 啓吾
(72)【発明者】
【氏名】星野 泰輝
(72)【発明者】
【氏名】高尾 清貴
(72)【発明者】
【氏名】宇野 誠人
(72)【発明者】
【氏名】安樂 英一郎
(72)【発明者】
【氏名】青山 元志
(72)【発明者】
【氏名】香月 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】冨依 勇佑
(72)【発明者】
【氏名】遠田 豊和
(72)【発明者】
【氏名】山本 弘賢
【審査官】前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-141699(JP,A)
【文献】国際公開第2019/077947(WO,A1)
【文献】特開2012-072272(JP,A)
【文献】特表2013-531718(JP,A)
【文献】国際公開第2017/038830(WO,A1)
【文献】特開2016-017176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/16
C09D 1/00-201/10
C09K 3/00
C09K 3/18
C08G 65/00- 65/48
C07F 7/02- 7/21
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される化合物と、式(2)で表される化合物と、を含み、
式(1)のRf2中の最もY側に位置する-CF-で表される基のモル数と、式(2)のRf3中の最もY側に位置する-CF-で表される基のモル数と、式(2)のRf4中の最もY側に位置する-CF-で表される基のモル数と、の合計モル数に対する、式(1)のRf1中の-CFで表される基のモル数の比が、0.001~0.1であることを特徴とする、組成物。
f1-(OXm1-O-Rf2-Y-[Si(Rn1 3-n1g1 (1)
ただし、式(1)中、
f1は、直鎖状ペルフルオロアルキル基である。
は、1個以上のフッ素原子を有するフルオロアルキレン基である。
f2は、-CF-で表される基を有するフルオロアルキレン基である。
は、1価の炭化水素基である。
は、加水分解性基または水酸基である。
m1は、2以上の整数である。
n1は、0~2の整数である。
式(1)における-Y-[Si(Rn1 3-n1g1で表される基は、基(1-1A-4)または基(1-1A-5)である。
-[C(O)N(R)]s4-Qa4-(O)t4-C[-(O)u4-Qb4-Si(Rn1 3-n13-w1(-R11w1 (1-1A-4)
-Qa5-Si[-Qb5-Si(Rn1 3-n1 (1-1A-5)
ただし、
は、水素原子またはアルキル基である。
s4は、0または1である。
a4は、単結合、または、エーテル性酸素原子を有していてもよいアルキレン基である。
t4は、0または1(ただし、Qa4が単結合の場合は0である。)である。
u4は、0または1である。
b4は、アルキレン基であり、-O-、-C(O)N(R)-、シルフェニレン骨格基、2価のオルガノポリシロキサン残基またはジアルキルシリレン基を有していてもよい。
11は、アルキル基である。
w1は、0~2の整数である。
a5は、エーテル性酸素原子を有していてもよいアルキレン基である。
b5は、アルキレン基、または、炭素数2以上のアルキレン基の炭素原子-炭素原子間にエーテル性酸素原子もしくは2価のオルガノポリシロキサン残基を有する基である。
[L 3-n2(Rn2Si]g2-Y-Rf3-(OXm2-O-Rf4-Y-[Si(Rn3 3-n3g3 (2)
ただし、式(2)中、
およびLはそれぞれ独立に、加水分解性基または水酸基である。
およびRはそれぞれ独立に、1価の炭化水素基である。
は、フッ素原子を有しない(g2+1)価の連結基である。
f3およびRf4はそれぞれ独立に、-CF-で表される基を有するフルオロアルキレン基である。
は、1個以上のフッ素原子を有するフルオロアルキレン基である。
は、フッ素原子を有しない(g3+1)価の連結基である。
n2およびn3はそれぞれ独立に、0~2の整数である。
g2およびg3はそれぞれ独立に、1以上の整数である。
m2は、2以上の整数である。
【請求項2】
前記Rf1が炭素数1~6の直鎖状ペルフルオロアルキル基であり、前記(OXm1が炭素数1~6のオキシペルフルオロアルキレン基からなる単位を主とするポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖であり、前記Rf2が炭素数1~6のペルフルオロアルキレン基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記(OXm2が炭素数1~6のオキシペルフルオロアルキレン基からなる単位を主とするポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖であり、前記Rf3および前記Rf4が、それぞれ独立に、炭素数1~6のペルフルオロアルキレン基である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記m1およびm2が、それぞれ独立に、2~200の整数である、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
記g2およびg3が、それぞれ独立に、2~4の整数である、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
式(1)で表される化合物と、式(2)で表される化合物と、式(3)で表される化合物と、を含み、
式(1)のRf2中の最もY側に位置する-CF-で表される基のモル数と、式(2)のRf3中の最もY側に位置する-CF-で表される基のモル数と、式(2)のRf4中の最もY側に位置する-CF-で表される基のモル数と、の合計モル数に対する、式(1)のRf1中の-CFで表される基のモル数と、式(3)のRf5中の-CFで表される基のモル数と、式(3)のRf6中の-CFで表される基のモル数と、の合計モル数の比が、0.001~0.1であることを特徴とする、組成物。
f1-(OXm1-O-Rf2-Y-[Si(Rn1 3-n1g1 (1)
ただし、式(1)中、
f1は、直鎖状ペルフルオロアルキル基である。
は、1個以上のフッ素原子を有するフルオロアルキレン基である。
f2は、-CF-で表される基を有するフルオロアルキレン基である。
は、フッ素原子を有しない(g1+1)価の連結基である。
は、1価の炭化水素基である。
は、加水分解性基または水酸基である。
m1は、2以上の整数である。
n1は、0~2の整数である。
g1は、1以上の整数である。
[L 3-n2(Rn2Si]g2-Y-Rf3-(OXm2-O-Rf4-Y-[Si(Rn3 3-n3g3 (2)
ただし、式(2)中、
およびLはそれぞれ独立に、加水分解性基または水酸基である。
およびRはそれぞれ独立に、1価の炭化水素基である。
は、フッ素原子を有しない(g2+1)価の連結基である。
f3およびRf4はそれぞれ独立に、-CF-で表される基を有するフルオロアルキレン基である。
は、1個以上のフッ素原子を有するフルオロアルキレン基である。
は、フッ素原子を有しない(g3+1)価の連結基である。
n2およびn3はそれぞれ独立に、0~2の整数である。
g2およびg3はそれぞれ独立に、1以上の整数である。
m2は、2以上の整数である。
f5-(OXm3-O-Rf6 (3)
ただし、式(3)中、
f5およびRf6はそれぞれ独立に、直鎖状ペルフルオロアルキル基である。
は、1個以上のフッ素原子を有するフルオロアルキレン基である。
m3は、2以上の整数である。
【請求項7】
前記Rf1が炭素数1~6の直鎖状ペルフルオロアルキル基であり、前記(OXm1が炭素数1~6のオキシペルフルオロアルキレン基からなる単位を主とするポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖であり、前記Rf2が炭素数1~6のペルフルオロアルキレン基である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記(OXm2が、炭素数1~6のオキシペルフルオロアルキレン基からなる単位を主とするポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖であり、前記Rf3および前記Rf4が、それぞれ独立に、炭素数1~6のペルフルオロアルキレン基である、請求項6または7に記載の組成物。
【請求項9】
前記(OXm3が、炭素数1~6のオキシペルフルオロアルキレン基からなる単位を主とするポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖であり、前記Rf5および前記Rf6が、それぞれ独立に、炭素数1~6の直鎖状ペルフルオロアルキル基である、請求項6~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記g1、g2およびg3が、それぞれ独立に、2~4の整数である、請求項6~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記m1、m2およびm3が、それぞれ独立に、2~200の整数である、請求項6~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
さらに液状媒体を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記液状媒体が有機溶媒を含み、
前記有機溶媒の沸点が、35~250℃である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記液状媒体が、フッ素系有機溶媒を含む、請求項12または13に記載の組成物。
【請求項15】
基材と、前記基材上に、請求項1~14のいずれか1項に記載の組成物から形成されてなる表面層と、を有することを特徴とする物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物および物品に関する。
【背景技術】
【0002】
含フッ素化合物は、高い潤滑性、撥水撥油性等を示すため、表面処理剤に好適に用いられる。表面処理剤によって基材の表面に撥水撥油性を付与すると、基材の表面の汚れを拭き取りやすくなり、汚れの除去性が向上する。上記含フッ素化合物の中でも、フルオロアルキレン鎖の途中にエーテル結合(-O-)が存在するポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖を有する含フッ素エーテル化合物は、柔軟性に優れる化合物であり、特に油脂等の汚れの除去性に優れる。
上記含フッ素エーテル化合物としては、ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖を有し、一方の末端に加水分解性シリル基を有し、他方の末端に加水分解性シリル基またはフッ素原子を有していてもよいアルキル基を有する化合物が広く用いられている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2017/022437号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記含フッ素エーテル化合物を含む表面処理剤は、たとえば、スマートフォン等の指や掌で触れる面(たとえば、表示画面や表示画面とは反対側の面(裏面))を構成する部材の表面処理剤として用いられる。
近年、含フッ素エーテル化合物を用いて形成された表面層に対する要求性能が高くなっている。たとえば、表面層が指で触れる面を構成する部材に適用される場合には、繰り返し摩擦されても指紋等の油脂汚れの除去性が低下しにくい性能(耐摩擦性)に優れる表面層が求められる。
本発明者らは、基材の主表面に特許文献1に記載されているような含フッ素エーテル化合物を用いて形成された表面層を有する物品を評価したところ、耐摩擦性は良好であるものの、耐滑り性に劣ること(すなわち、滑りやすいこと)を見出した。たとえば、膜付き基材がスマートフォンであると、スマートフォンの操作時や机等に載置した際に、スマートフォンが滑落して破損するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて、耐摩擦性および耐滑り性に優れた表面層を形成できる組成物および物品の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、一方の末端のみに加水分解性シリル基を有する含フッ素エーテル化合物と、両末端に加水分解性シリル基を有する含フッ素エーテル化合物と、を含む組成物を用いる場合において、含フッ素エーテル化合物の所定の位置に存在する-CF-で表される基の合計モル数に対する、含フッ素エーテル化合物の末端に存在する-CFで表される基の合計モル数の比が所定の範囲内であれば、耐摩擦性および耐滑り性に優れた表面層を形成できることを見出し、本発明に至った。
【0007】
すなわち、発明者らは、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
[1]式(1)で表される化合物と、式(2)で表される化合物と、を含み、式(1)のRf2中の最もY側に位置する-CF-で表される基のモル数と、式(2)のRf3中の最もY側に位置する-CF-で表される基のモル数と、式(2)のRf4中の最もY側に位置する-CF-で表される基のモル数と、の合計モル数に対する、式(1)のRf1中の-CFで表される基のモル数の比が、0.001~0.1であることを特徴とする、組成物。
f1-(OXm1-O-Rf2-Y-[Si(Rn1 3-n1g1 (1)
ただし、式(1)中、
f1は、直鎖状ペルフルオロアルキル基である。
は、1個以上のフッ素原子を有するフルオロアルキレン基である。
f2は、-CF-で表される基を有するフルオロアルキレン基である。
は、フッ素原子を有しない(g1+1)価の連結基である。
は、1価の炭化水素基である。
は、加水分解性基または水酸基である。
m1は、2以上の整数である。
n1は、0~2の整数である。
g1は、1以上の整数である。
[L 3-n2(Rn2Si]g2-Y-Rf3-(OXm2-O-Rf4-Y-[Si(Rn3 3-n3g3 (2)
ただし、式(2)中、
およびLはそれぞれ独立に、加水分解性基または水酸基である。
およびRはそれぞれ独立に、1価の炭化水素基である。
は、フッ素原子を有しない(g2+1)価の連結基である。
f3およびRf4はそれぞれ独立に、-CF-で表される基を有するフルオロアルキレン基である。
は、1個以上のフッ素原子を有するフルオロアルキレン基である。
は、フッ素原子を有しない(g3+1)価の連結基である。
n2およびn3はそれぞれ独立に、0~2の整数である。
g2およびg3はそれぞれ独立に、1以上の整数である。
m2は、2以上の整数である。
【0008】
[2]前記Rf1が炭素数1~6の直鎖状ペルフルオロアルキル基であり、前記(OXm1が炭素数1~6のオキシペルフルオロアルキレン基からなる単位を主とするポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖であり、前記Rf2が炭素数1~6のペルフルオロアルキレン基である、[1]の組成物。
[3]前記(OXm2が炭素数1~6のオキシペルフルオロアルキレン基からなる単位を主とするポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖であり、前記Rf3および前記Rf4が、それぞれ独立に、炭素数1~6のペルフルオロアルキレン基である、[1]または[2]の組成物。
[4]前記m1およびm2が、それぞれ独立に、2~200の整数である、[1]~[3]のいずれかの組成物。
[5]前記g1、g2およびg3が、それぞれ独立に、2~4の整数である、[1]~[4]のいずれかの組成物。
【0009】
[6]式(1)で表される化合物と、式(2)で表される化合物と、式(3)で表される化合物と、を含み、式(1)のRf2中の最もY側に位置する-CF-で表される基のモル数と、式(2)のRf3中の最もY側に位置する-CF-で表される基のモル数と、式(2)のRf4中の最もY側に位置する-CF-で表される基のモル数と、の合計モル数に対する、式(1)のRf1中の-CFで表される基のモル数と、式(3)のRf5中の-CFで表される基のモル数と、式(3)のRf6中の-CFで表される基のモル数と、の合計モル数の比が、0.001~0.1であることを特徴とする、組成物。
f1-(OXm1-O-Rf2-Y-[Si(Rn1 3-n1g1 (1)
ただし、式(1)中、
f1は、直鎖状ペルフルオロアルキル基である。
は、1個以上のフッ素原子を有するフルオロアルキレン基である。
f2は、-CF-で表される基を有するフルオロアルキレン基である。
は、フッ素原子を有しない(g1+1)価の連結基である。
は、1価の炭化水素基である。
は、加水分解性基または水酸基である。
m1は、2以上の整数である。
n1は、0~2の整数である。
g1は、1以上の整数である。
[L 3-n2(Rn2Si]g2-Y-Rf3-(OXm2-O-Rf4-Y-[Si(Rn3 3-n3g3 (2)
ただし、式(2)中、
およびLはそれぞれ独立に、加水分解性基または水酸基である。
およびRはそれぞれ独立に、1価の炭化水素基である。
は、フッ素原子を有しない(g2+1)価の連結基である。
f3およびRf4はそれぞれ独立に、-CF-で表される基を有するフルオロアルキレン基である。
は、1個以上のフッ素原子を有するフルオロアルキレン基である。
は、フッ素原子を有しない(g3+1)価の連結基である。
n2およびn3はそれぞれ独立に、0~2の整数である。
g2およびg3はそれぞれ独立に、1以上の整数である。
m2は、2以上の整数である。
f5-(OXm3-O-Rf6 (3)
ただし、式(3)中、
f5およびRf6はそれぞれ独立に、直鎖状ペルフルオロアルキル基である。
は、1個以上のフッ素原子を有するフルオロアルキレン基である。
m3は、2以上の整数である。
【0010】
[7]前記Rf1が炭素数1~6の直鎖状ペルフルオロアルキル基であり、前記(OXm1が炭素数1~6のオキシペルフルオロアルキレン基からなる単位を主とするポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖であり、前記Rf2が炭素数1~6のペルフルオロアルキレン基である、[6]の組成物。
[8]前記(OXm2が、炭素数1~6のオキシペルフルオロアルキレン基からなる単位を主とするポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖であり、前記Rf3および前記Rf4が、それぞれ独立に、炭素数1~6のペルフルオロアルキレン基である、[6]または[7]の組成物。
[9]前記(OXm3が、炭素数1~6のオキシペルフルオロアルキレン基からなる単位を主とするポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖であり、前記Rf5および前記Rf6が、それぞれ独立に、炭素数1~6の直鎖状ペルフルオロアルキル基である、[6]~[8]のいずれかの組成物。
[10]前記g1、g2およびg3が、それぞれ独立に、2~4の整数である、[6]~[9]のいずれかの組成物。
[11]前記m1、m2およびm3が、それぞれ独立に、2~200の整数である、[6]~[10]のいずれかの組成物。
【0011】
[12]さらに液状媒体を含む、[1]~[11]のいずれかの組成物。
[13]前記液状媒体が有機溶媒を含み、前記有機溶媒の沸点が、35~250℃である、[12]の組成物。
[14]前記液状媒体が、フッ素系有機溶媒を含む、[12]または[13]の組成物。
[15]基材と、前記基材上に、[1]~[14]のいずれかの組成物から形成されてなる表面層と、を有することを特徴とする物品。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、耐摩擦性および耐滑り性に優れた表面層を形成できる組成物および物品を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において、式(1)で表される化合物を「化合物(1)」と記す。他の式で表される化合物も同様に記す。式(1-1A)で表される基を「基(1-1A)」と記す。他の式で表される基も同様に記す。
本明細書において、「アルキレン基がA基を有していてもよい」という場合、アルキレン基は、アルキレン基中の炭素-炭素原子間にA基を有していてもよいし、アルキレン基-A基-のように末端にA基を有していてもよい。
【0014】
本発明における用語の意味は以下の通りである。
「2価のオルガノポリシロキサン残基」とは、下式で表される基である。下式におけるRは、アルキル基(好ましくは炭素数1~10)、または、フェニル基である。また、gは、1以上の整数であり、1~9の整数が好ましく、1~4の整数が特に好ましい。
【0015】
【化1】
【0016】
「シルフェニレン骨格基」とは、-Si(RPhSi(R-(ただし、Phはフェニレン基であり、Rは1価の有機基である。)で表される基である。Rとしては、アルキル基(好ましくは炭素数1~10)が好ましい。
「ジアルキルシリレン基」は、-Si(R-(ただし、Rはアルキル基(好ましくは炭素数1~10)である。)で表される基である。
化合物の「数平均分子量」は、H-NMRおよび19F-NMRによって、末端基を基準にしてオキシフルオロアルキレン基の数(平均値)を求めることによって算出される。
【0017】
[組成物]
本発明の組成物について、実施形態毎に説明する。
【0018】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態の組成物(以下、「組成物(1)」ともいう。)は、化合物(1)と化合物(2)とを含み、式(1)のRf2中の最もY側に位置する-CF-で表される基のモル数と、式(2)のRf3中の最もY側に位置する-CF-で表される基のモル数と、式(2)のRf4中の最もY側に位置する-CF-で表される基のモル数と、の合計モル数に対する、式(1)のRf1中の-CFで表される基のモル数の比(以下、「比(1)」ともいう。)が、0.001~0.1である。
【0019】
-CFで表される基のモル数は、化合物(1)の一方の末端に位置する基のモル数を意味する。また、-CF-で表される基のモル数の合計は、化合物(1)の一方の末端近傍に位置する基のモル数と、化合物(2)の両末端近傍に位置する基のモル数と、の合計を意味する。つまり、比(1)の値が小さければ、組成物中の化合物(2)の含有量が多くなることを意味し、比(1)の値が大きければ、組成物中の化合物(1)の含有量が多くなることを意味する。
なお、式(1)のRf2中の最もY側に位置する-CF-で表される基とは、Rf2がペルフルオロアルキレン基である場合、Yに隣接する-CF-である。また式(2)のRf3中の最もY側に位置する-CF-で表される基、および、式(2)のRf4中の最もY側に位置する-CF-で表される基についても同様である。
組成物(1)においては、上記比(1)の値が小さいので、化合物(2)の含有量が化合物(1)と比較して充分に多い状態にあるといえる。化合物(2)は、両末端に反応性シリル基を有する。そのため、組成物(1)と基材との反応点が増加して、表面層と基材との密着性が良好になる結果、耐摩擦性に優れた表面層が得られたと推測される。また、化合物(2)の両末端の反応性シリル基が基材と反応した場合、化合物(2)に由来する分子の両末端が基材と結合している状態となり、化合物(2)に由来する分子の運動性が低くなる結果、耐滑り性に優れた表面層が得られたと推測される。
ここで、反応性シリル基とは、加水分解性シリル基およびシラノール基(Si-OH)を意味する。加水分解性シリル基の具体例としては、後述の式(1)におけるLが加水分解性基である基、および、後述の式(2)におけるLおよびLが加水分解性基である基が挙げられる。
加水分解性シリル基は、加水分解反応によりSi-OHで表されるシラノール基となる。シラノール基は、さらにシラノール基間で脱水縮合反応してSi-O-Si結合を形成する。また、シラノール基は、基材の表面に存在するシラノール基と脱水縮合反応してSi-O-Si結合を形成できる。
【0020】
<式(1)で表される化合物>
化合物(1)は、式(1)で表される含フッ素エーテル化合物である。
f1-(OXm1-O-Rf2-Y-[Si(Rn1 3-n1g1 (1)
【0021】
f1は、直鎖状ペルフルオロアルキル基である。
直鎖状ペルフルオロアルキル基中の炭素数は、表面層の耐摩擦性がより優れる点から、1~20が好ましく、1~10がより好ましく、1~6がさらに好ましく、1~3が特に好ましい。
ペルフルオロアルキル基の具体例としては、CF-、CFCF-、CFCFCF-、CFCFCFCF-、CFCFCFCFCF-、CFCFCFCFCFCF-が挙げられ、表面層の撥水撥油性がより優れる点から、CF-、CFCF-、CFCFCF-が好ましい。
【0022】
は、1個以上のフッ素原子を有するフルオロアルキレン基である。
フルオロアルキレン基の炭素数は、表面層の耐候性および耐食性がより優れる点から、1~8が好ましく、1~6がより好ましく、2~4が特に好ましい。
フルオロアルキレン基は、直鎖状、分岐鎖状および環状のいずれであってもよい。
フルオロアルキレン基におけるフッ素原子の数としては、表面層の耐食性がより優れる点から、炭素原子の数の1~2倍が好ましく、1.7~2倍が特に好ましい。
フルオロアルキレン基は、フルオロアルキレン基中のすべての水素原子がフッ素原子に置換された基(ペルフルオロアルキレン基)であってもよい。
【0023】
(OX)の具体例としては、-OCHF-、-OCFCHF-、-OCHFCF-、-OCFCH-、-OCHCF-、-OCFCFCHF-、-OCHFCFCF-、-OCFCFCH-、-OCHCFCF-、-OCFCFCFCH-、-OCHCFCFCF-、-OCFCFCFCFCH-、-OCHCFCFCFCF-、-OCFCFCFCFCFCH-、-OCHCFCFCFCFCF-、-OCF-、-OCFCF-、-OCFCFCF-、-OCF(CF)CF-、-OCFCFCFCF-、-OCF(CF)CFCF-、-OCFCFCFCFCF-、-OCFCFCFCFCFCF-、-O-cycloC-が挙げられる。
ここで、-cycloC-は、ペルフルオロシクロブタンジイル基を意味し、その具体例としては、ペルフルオロシクロブタン-1,2-ジイル基が挙げられる。
【0024】
(OX)の繰り返し数m1は、2以上の整数であり、2~200の整数がより好ましく、5~150の整数がさらに好ましく、5~100の整数が特に好ましく、10~50の整数が最も好ましい。
(OXm1は、2種以上の(OX)を含んでいてもよい。2種以上の(OX)としては、たとえば、炭素数の異なる2種以上の(OX)、炭素数が同じであっても側鎖の有無や側鎖の種類が異なる2種以上の(OX)、炭素数が同じであってもフッ素原子の数が異なる2種以上の(OX)が挙げられる。
2種以上の(OX)の結合順序は限定されず、ランダム、交互、ブロックに配置されてもよい。
(OXm1で表されるポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖は、指紋汚れ除去性の優れた膜とするために、オキシペルフルオロアルキレン基である単位を主とするポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖であることが好ましい。(OXm1で表されるポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖において、単位の全数m1個に対するオキシペルフルオロアルキレン基である単位の数の割合は、50~100%であることが好ましく、80~100%であることがより好ましく、90~100%が特に好ましい。
ポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖としては、ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖、および、片末端または両末端に水素原子を有するオキシフルオロアルキレン単位をそれぞれ1個または2個有するポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖がより好ましい。ポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖としては、ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖が特に好ましい。
【0025】
(OXm1としては、(OCHma(2-ma)m11(OCmb(4-mb)m12(OCmc(6-mc)m13(OCmd(8-md)m14(OCme(10-me)m15(OCmf(12-mf)m16(O-cycloCmg(6-mg)m17が好ましい。ここで、-cycloCmg(6-mg)は、フルオロシクロブタン-ジイル基を表し、フルオロシクロブタン-1,2-ジイル基が好ましい。
maは0または1であり、mbは0~3の整数であり、mcは0~5の整数であり、mdは0~7の整数であり、meは0~9の整数であり、mfは0~11の整数であり、mgは0~5の整数である。
m11、m12、m13、m14、m15、m16およびm17は、それぞれ独立に、0以上の整数であり、100以下が好ましい。
m11+m12+m13+m14+m15+m16+m17は2以上の整数であり、2~200の整数がより好ましく、5~150の整数がより好ましく、5~100の整数がさらに好ましく、10~50の整数が特に好ましい。
なかでも、m12は2以上の整数が好ましく、2~200の整数が特に好ましい。
また、Cmc(6-mc)、Cmd(8-md)、Cme(10-me)およびCmf(12-mf)は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、表面層の耐摩擦性がより優れる点から直鎖状が好ましい。
【0026】
なお、上記式は単位の種類とその数を表すものであり、単位の配列を表すものではない。すなわち、m11~m16は単位の数を表すものであり、たとえば、(OCHma(2-ma)m11は、(OCHma(2-ma))単位がm11個連続したブロックを表すものではない。同様に、(OCHma(2-ma))~(O-cycloCmg(6-mg))の記載順は、その記載順にそれらが配列していることを表すものではない。
上記式において、m11~m17の2以上が0でない場合(すなわち、(OXm1が2種以上の単位から構成されている場合)、異なる単位の配列は、ランダム配列、交互配列、ブロック配列およびそれら配列の組合せのいずれであってもよい。
さらに、上記各単位も、また、その単位が2以上含まれている場合、それらの単位は異なっていてもよい。たとえば、m11が2以上の場合、複数の(OCHma(2-ma))は同一であっても異なっていてもよい。
【0027】
f2は、-CF-で表される基を有するフルオロアルキレン基である。
フルオロアルキレン基の炭素数は、1~6が好ましく、1~3が特に好ましい。
フルオロアルキレン基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよいが、本発明の効果がより優れる点から、直鎖状が好ましい。
フルオロアルキレン基としては、膜の耐食性がより優れる点から、CFを1個以上有し、かつフッ素原子の数が炭素原子の数の1.5~2倍であるフルオロアルキレン基が好ましく、炭素数1~6のペルフルオロアルキレン基がより好ましく、炭素数1~3のペルフルオロアルキレン基が特に好ましい。
f2の具体例としては、-CFCHF-、-CHFCF-、-CFCH-、-CHCF-、-CFCFCHF-、-CHFCFCF-、-CFCFCH-、-CHCFCF-、-CFCFCFCH-、-CHCFCFCF-、-CFCFCFCFCH-、-CHCFCFCFCF-、-CFCFCFCFCFCH-、-CHCFCFCFCFCF-、-CF-、-CFCF-、-CFCFCF-、-CF(CF)CF-、-CFCFCFCF-、-CF(CF)CFCF-、-CFCFCFCFCF-、-CFCFCFCFCFCF-が挙げられる。
【0028】
は、フッ素原子を有しない(g1+1)価の連結基である。
は、本発明の効果を損なわない基であればよく、たとえば、エーテル性酸素原子または2価のオルガノポリシロキサン残基を有していてもよいアルキレン基、炭素原子、窒素原子、ケイ素原子、2~8価のオルガノポリシロキサン残基、および、後述する式(1-1A)、式(1-1B)、式(1-1A-1)~(1-1A-6)からSi(Rn1 3-n1を除いた基が挙げられる。
【0029】
は、1価の炭化水素基であり、1価の飽和炭化水素基が好ましい。Rの炭素数は、1~6が好ましく、1~3がより好ましく、1~2が特に好ましい。
【0030】
は、加水分解性基または水酸基である。
加水分解性基は、加水分解反応により水酸基となる基である。すなわち、Si-Lで表される加水分解性を有するシリル基は、加水分解反応によりSi-OHで表されるシラノール基となる。シラノール基は、さらにシラノール基間で反応してSi-O-Si結合を形成する。また、シラノール基は、基材に含まれる酸化物に由来するシラノール基と脱水縮合反応して、Si-O-Si結合を形成できる。
【0031】
加水分解性基の具体例としては、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イソシアナート基(-NCO)が挙げられる。アルコキシ基としては、炭素数1~4のアルコキシ基が好ましい。アリールオキシ基としては、炭素数3~10のアリールオキシ基が好ましい。ただしアリールオキシ基のアリール基としては、ヘテロアリール基を含む。ハロゲン原子としては、塩素原子が好ましい。アシル基としては、炭素数1~6のアシル基が好ましい。アシルオキシ基としては、炭素数1~6のアシルオキシ基が好ましい。
としては、含フッ素エーテル化合物の製造がより容易である点から、炭素数1~4のアルコキシ基および塩素原子が好ましい。Lとしては、塗布時のアウトガスが少なく、含フッ素エーテル化合物の保存安定性がより優れる点から、炭素数1~4のアルコキシ基が好ましく、含フッ素エーテル化合物の長期の保存安定性が必要な場合にはエトキシ基が特に好ましく、塗布後の反応時間を短時間とする場合にはメトキシ基が特に好ましい。
【0032】
n1は、0~2の整数である。
n1は、0または1が好ましく、0が特に好ましい。Lが複数存在することによって、表面層の基材への密着性がより強固になる。
n1が1以下である場合、1分子中に存在する複数のLは同じであっても異なっていてもよい。原料の入手容易性や含フッ素エーテル化合物の製造容易性の点からは、互いに同じであることが好ましい。n1が2である場合、1分子中に存在する複数のRは同じであっても異なっていてもよい。原料の入手容易性や含フッ素エーテル化合物の製造容易性の点からは、互いに同じであることが好ましい。
【0033】
g1は、1以上の整数であり、表面層の耐摩擦性がより優れる点から、2~4の整数が好ましく、2または3がより好ましく、3が特に好ましい。
【0034】
式(1)における-Y-[Si(Rn1 3-n1g1で表される基としては、基(1-1A)および基(1-1B)が好ましい。
-Q-X11(-Q-Si(Rn1 3-n1(-R11 (1-1A)
-Q-[CHC(R12)(-Q-Si(Rn1 3-n1)]-R13 (1-1B)
なお、式(1-1A)および式(1-1B)中、R、L、および、n1の定義は、上述した通りである。
【0035】
は、単結合または2価の連結基である。
2価の連結基としては、たとえば、2価の炭化水素基、2価の複素環基、-O-、-S-、-SO-、-N(R)-、-C(O)-、-Si(R-および、これらを2種以上組み合わせた基が挙げられる。ここで、Rは、アルキル基(好ましくは炭素数1~10)、または、フェニル基である。Rは、水素原子またはアルキル基(好ましくは炭素数1~10)である。ただしRのアルキル基は、加水分解性シリル基を有していてもよい。
上記2価の炭化水素基としては、2価の飽和炭化水素基、2価の芳香族炭化水素基、アルケニレン基、アルキニレン基が挙げられる。2価の飽和炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状または環状であってもよく、たとえば、アルキレン基が挙げられる。2価の飽和炭化水素基の炭素数は1~20が好ましい。また、2価の芳香族炭化水素基は、炭素数5~20が好ましく、たとえば、フェニレン基が挙げられる。アルケニレン基としては、炭素数2~20のアルケニレン基が好ましく、アルキニレン基としては、炭素数2~20のアルキニレン基が好ましい。
なお、上記これらを2種以上組み合わせた基としては、たとえば、-OC(O)-、-C(O)N(R)-、-C(O)N(R)-を有するアルキレン基、-CHN(R)C(O)-、-CHN(R)C(O)-を有するアルキレン基、エーテル性酸素原子を有するアルキレン基、-OC(O)-を有するアルキレン基、アルキレン基-Si(R-フェニレン基-Si(Rが挙げられる。
【0036】
11は、単結合、アルキレン基、炭素原子、窒素原子、ケイ素原子または2~8価のオルガノポリシロキサン残基である。
なお、上記アルキレン基は、-O-、シルフェニレン骨格基、2価のオルガノポリシロキサン残基またはジアルキルシリレン基を有していてもよい。アルキレン基は、-O-、シルフェニレン骨格基、2価のオルガノポリシロキサン残基およびジアルキルシリレン基からなる群から選択される基を複数有していてもよい。
11で表されるアルキレン基の炭素数は、1~20が好ましく、1~10が特に好ましい。
2~8価のオルガノポリシロキサン残基としては、2価のオルガノポリシロキサン残基、および、後述する(w2+1)価のオルガノポリシロキサン残基が挙げられる。
【0037】
は、単結合または2価の連結基である。
2価の連結基の定義は、上述したQで説明した定義と同義である。
【0038】
11は、水酸基またはアルキル基である。
アルキル基の炭素数は、1~5が好ましく、1~3がより好ましく、1が特に好ましい。
【0039】
11が単結合またはアルキレン基の場合、hは1、iは0であり、
11が窒素原子の場合、hは1~2の整数であり、iは0~1の整数であり、h+i=2を満たし、
11が炭素原子またはケイ素原子の場合、hは1~3の整数であり、iは0~2の整数であり、h+i=3を満たし、
11が2~8価のオルガノポリシロキサン残基の場合、hは1~7の整数であり、iは0~6の整数であり、h+i=1~7を満たす。
(-Q-Si(Rn1 3-n1)が2個以上ある場合は、2個以上の(-Q-Si(Rn1 3-n1)は、同一であっても異なっていてもよい。R11が2個以上ある場合は、2個以上の(-R11)は、同一であっても異なっていてもよい。
【0040】
は、単結合、または、エーテル性酸素原子を有していてもよいアルキレン基であり、化合物を製造しやすい点から、単結合が好ましい。
エーテル性酸素原子を有していてもよいアルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
【0041】
12は、水素原子または炭素数1~10のアルキル基であり、化合物を製造しやすい点から、水素原子が好ましい。
アルキル基としては、メチル基が好ましい。
【0042】
は、単結合またはアルキレン基である。アルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、1~6が特に好ましい。化合物を製造しやすい点から、Qは、単結合または-CH-が好ましい。
【0043】
13は、水素原子またはハロゲン原子であり、化合物を製造しやすい点から、水素原子が好ましい。
【0044】
yは、1~10の整数であり、1~6の整数が好ましい。
2個以上の[CHC(R12)(-Q-Si(Rn1 3-n1)]は、同一であっても異なっていてもよい。
【0045】
基(1-1A)としては、基(1-1A-1)~(1-1A-6)が好ましい。
-(X12s1-Qb1-SiR n1 3-n1 (1-1A-1)
-(X13s2-Qa2-N[-Qb2-Si(Rn1 3-n (1-1A-2)
-Qa3-G(R)[-Qb3-Si(Rn1 3-n1 (1-1A-3)
-[C(O)N(R)]s4-Qa4-(O)t4-C[-(O)u4-Qb4-Si(Rn1 3-n13-w1(-R11w1 (1-1A-4)
-Qa5-Si[-Qb5-Si(Rn1 3-n1 (1-1A-5)
-[C(O)N(R)]-Qa6-Z[-Qb6-Si(Rn1 3-n1w2 (1-1A-6)
なお、式(1-1A-1)~(1-1A-6)中、R、L、および、n1の定義は、上述した通りである。
【0046】
12は、-O-、または、-C(O)N(R)-である(ただし、式中のNはQb1に結合する)。
の定義は、上述した通りである。
s1は、0または1である。
【0047】
b1は、アルキレン基である。なお、アルキレン基は、-O-、シルフェニレン骨格基、2価のオルガノポリシロキサン残基またはジアルキルシリレン基を有していてもよい。アルキレン基は、-O-、シルフェニレン骨格基、2価のオルガノポリシロキサン残基およびジアルキルシリレン基からなる群から選択される基を複数有していてもよい。
なお、アルキレン基が-O-、シルフェニレン骨格基、2価のオルガノポリシロキサン残基またはジアルキルシリレン基を有する場合、炭素原子-炭素原子間にこれらの基を有することが好ましい。
【0048】
b1で表されるアルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
【0049】
b1としては、s1が0の場合は、-CHOCHCHCH-、-CHOCHCHOCHCHCH-、-CHCH-、-CHCHCH-、-CHOCHCHCHSi(CHOSi(CHCHCH-が好ましい。(X12s1が-O-の場合は、-CHCHCH-、-CHCHOCHCHCH-が好ましい。(X12s1が-C(O)N(R)-の場合は、炭素数2~6のアルキレン基が好ましい(ただし、式中のNはQb1に結合する)。Qb1がこれらの基であると化合物が製造しやすい。
【0050】
基(3-1A-1)の具体例としては、以下の基が挙げられる。下記式中、*は、Rf2との結合位置を表す。
【0051】
【化2】
【0052】
13は、-O-、-NH-、または、-C(O)N(R)-である。
の定義は、上述した通りである。
【0053】
a2は、単結合、アルキレン基、-C(O)-、または、炭素数2以上のアルキレン基の炭素原子-炭素原子間にエーテル性酸素原子、-C(O)-、-C(O)O-、-OC(O)-もしくは-NH-を有する基である。
a2で表されるアルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、1~6が特に好ましい。
a2で表される炭素数2以上のアルキレン基の炭素原子-炭素原子間にエーテル性酸素原子、-C(O)-、-C(O)O-、-OC(O)-または-NH-を有する基の炭素数は、2~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
【0054】
a2としては、化合物を製造しやすい点から、-CH-、-CHCH-、-CHCHCH-、-CHOCHCH-、-CHNHCHCH-、-CHCHOC(O)CHCH-、-C(O)-が好ましい(ただし、右側がNに結合する。)。
【0055】
s2は、0または1(ただし、Qa2が単結合の場合は0である。)である。化合物を製造しやすい点から、0が好ましい。
【0056】
b2は、アルキレン基、または、炭素数2以上のアルキレン基の炭素原子-炭素原子間に、2価のオルガノポリシロキサン残基、エーテル性酸素原子もしくは-NH-を有する基である。
b2で表されるアルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
b2で表される炭素数2以上のアルキレン基の炭素原子-炭素原子間に、2価のオルガノポリシロキサン残基、エーテル性酸素原子または-NH-を有する基の炭素数は、2~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
【0057】
b2としては、化合物を製造しやすい点から、-CHCHCH-、-CHCHOCHCHCH-が好ましい(ただし、右側がSiに結合する。)。
【0058】
2個の[-Qb2-Si(Rn1 3-n]は、同一であっても異なっていてもよい。
【0059】
基(3-1A-2)の具体例としては、以下の基が挙げられる。下記式中、*は、Rf2との結合位置を表す。
【0060】
【化3】
【0061】
a3は、単結合、または、エーテル性酸素原子を有していてもよいアルキレン基であり、化合物を製造しやすい点から、単結合が好ましい。
エーテル性酸素原子を有していてもよいアルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
【0062】
Gは、炭素原子またはケイ素原子である。
は、水酸基またはアルキル基である。Rで表されるアルキル基の炭素数は、1~4が好ましい。
G(R)としては、化合物を製造しやすい点から、C(OH)またはSi(Rga)(ただし、Rgaはアルキル基である。アルキル基の炭素数は1~10が好ましく、メチル基が特に好ましい。)が好ましい。
【0063】
b3は、アルキレン基、または、炭素数2以上のアルキレン基の炭素原子-炭素原子間にエーテル性酸素原子もしくは2価のオルガノポリシロキサン残基を有する基である。 Qb3で表されるアルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
b3で表される炭素数2以上のアルキレン基の炭素原子-炭素原子間にエーテル性酸素原子または2価のオルガノポリシロキサン残基を有する基の炭素数は、2~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
b3としては、化合物を製造しやすい点から、-CHCH-、-CHCHCH-、-CHCHCHCHCHCHCHCH-が好ましい。
【0064】
2個の[-Qb3-Si(Rn1 3-n1]は、同一であっても異なっていてもよい。
【0065】
基(3-1A-3)の具体例としては、以下の基が挙げられる。下記式中、*は、Rf2との結合位置を表す。
【0066】
【化4】
【0067】
式(1-1A-4)中のRおよびR11の定義は、上述した通りである。
s4は、0または1である。
a4は、単結合、または、エーテル性酸素原子を有していてもよいアルキレン基である。
エーテル性酸素原子を有していてもよいアルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
t4は、0または1(ただし、Qa4が単結合の場合は0である。)である。
-Qa4-(O)t4-としては、化合物を製造しやすい点から、s4が0の場合は、単結合、-CHO-、-CHOCH-、-CHOCHCHO-、-CHOCHCHOCH-、-CHOCHCHCHCHOCH-が好ましく(ただし、左側が(RO)に結合する。)、s4が1の場合は、単結合、-CH-、-CHCH-が好ましい。
【0068】
b4は、アルキレン基であり、上記アルキレン基は-O-、-C(O)N(R)-(Rの定義は、上述した通りである。)、シルフェニレン骨格基、2価のオルガノポリシロキサン残基またはジアルキルシリレン基を有していてもよい。
なお、アルキレン基が-O-またはシルフェニレン骨格基を有する場合、炭素原子-炭素原子間に-O-またはシルフェニレン骨格基を有することが好ましい。また、アルキレン基が-C(O)N(R)-、ジアルキルシリレン基または2価のオルガノポリシロキサン残基を有する場合、炭素原子-炭素原子間または(O)u4と結合する側の末端にこれらの基を有することが好ましい。
b4で表されるアルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
【0069】
u4は、0または1である。
-(O)u4-Qb4-としては、化合物を製造しやすい点から、-CHCH-、-CHCHCH-、-CHOCHCHCH-、-CHOCHCHCHCHCH-、-OCHCHCH-、-OSi(CHCHCHCH-、-OSi(CHOSi(CHCHCHCH-、-CHCHCHSi(CHPhSi(CHCHCH-が好ましい(ただし、右側がSiに結合する。)。
【0070】
w1は、0~2の整数であり、0または1が好ましく、0が特に好ましい。
[-(O)u4-Qb4-Si(Rn1 3-n1]が2個以上ある場合は、2個以上の[-(O)u4-Qb4-Si(Rn1 3-n1]は、同一であっても異なっていてもよい。
11が2個以上ある場合は、2個以上の(-R11)は、同一であっても異なっていてもよい。
【0071】
基(1-1A-4)の具体例としては、以下の基が挙げられる。下記式中、*は、Rf2との結合位置を表す。
【0072】
【化5】
【0073】
【化6】
【0074】
a5は、エーテル性酸素原子を有していてもよいアルキレン基である。
エーテル性酸素原子を有していてもよいアルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
a5としては、化合物を製造しやすい点から、-CHOCHCHCH-、-CHOCHCHOCHCHCH-、-CHCH-、-CHCHCH-が好ましい(ただし、右側がSiに結合する。)。
【0075】
b5は、アルキレン基、または、炭素数2以上のアルキレン基の炭素原子-炭素原子間にエーテル性酸素原子もしくは2価のオルガノポリシロキサン残基を有する基である。 Qb5で表されるアルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
b5で表される炭素数2以上のアルキレン基の炭素原子-炭素原子間にエーテル性酸素原子または2価のオルガノポリシロキサン残基を有する基の炭素数は、2~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
b5としては、化合物を製造しやすい点から、-CHCHCH-、-CHCHOCHCHCH-が好ましい(ただし、右側がSi(Rn1 3-n1に結合する。)。
【0076】
3個の[-Qb5-Si(Rn1 3-n1]は、同一であっても異なっていてもよい。
【0077】
基(1-1A-5)の具体例としては、以下の基が挙げられる。下記式中、*は、Rf2との結合位置を表す。
【0078】
【化7】
【0079】
式(1-1A-6)中のRの定義は、上述の通りである。
vは、0または1である。
【0080】
a6は、エーテル性酸素原子を有していてもよいアルキレン基である。
エーテル性酸素原子を有していてもよいアルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
a6としては、化合物を製造しやすい点から、-CHOCHCHCH-、-CHOCHCHOCHCHCH-、-CHCH-、-CHCHCH-が好ましい(ただし、右側がZに結合する。)。
【0081】
は、(w2+1)価のオルガノポリシロキサン残基である。
w2は、2~7の整数である。
(w2+1)価のオルガノポリシロキサン残基としては、下記の基が挙げられる。ただし、下式におけるRは、上述の通りである。
【0082】
【化8】
【0083】
b6は、アルキレン基、または、炭素数2以上のアルキレン基の炭素原子-炭素原子間にエーテル性酸素原子もしくは2価のオルガノポリシロキサン残基を有する基である。
b6で表されるアルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
b6で表される炭素数2以上のアルキレン基の炭素原子-炭素原子間にエーテル性酸素原子または2価のオルガノポリシロキサン残基を有する基の炭素数は、2~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
b6としては、化合物を製造しやすい点から、-CHCH-、-CHCHCH-が好ましい。
【0084】
w2個の[-Qb6-Si(Rn1 3-n1]は、同一であっても異なっていてもよい。
【0085】
<式(2)で表される化合物>
化合物(2)は、式(2)で表される含フッ素エーテル化合物である。
[L 3-n2(Rn2Si]g2-Y-Rf3-(OXm2-O-Rf4-Y-[Si(Rn3 3-n3g3 (2)
【0086】
およびLはそれぞれ独立に、加水分解性基または水酸基である。LおよびLの定義および好適態様は、式(1)のLと同様である。
およびRはそれぞれ独立に、1価の炭化水素基である。RおよびRの定義および好適態様は、式(1)のRと同様である。
は、フッ素原子を有しない(g2+1)価の連結基である。g2は、1以上の整数である。Yおよびg2の定義および好適態様はそれぞれ、式(1)のYおよびg1と同様である。
f3およびRf4はそれぞれ独立に、-CF-で表される基を有するフルオロアルキレン基である。Rf3およびRf4の定義および好適態様は、式(1)のRf2と同様である。
は、1個以上のフッ素原子を有するフルオロアルキレン基である。m2は、2以上の整数である。X、m2、(OX)および(OXm2の定義および好適態様はそれぞれ、式(1)のX、m1、(OX)および(OXm1と同様である。
は、フッ素原子を有しない(g3+1)価の連結基である。g3は、1以上の整数である。Yおよびg3の定義および好適態様はそれぞれ、式(1)のYおよびg1と同様である。なお、YとYはそれぞれ独立に式(1)のYと同様の基であり、両者は同一でなくてもよく、g2とg3もまたそれぞれ独立に式(1)のg1と同様の整数であり、両者は同一でなくてもよい。
n2およびn3はそれぞれ独立に、0~2の整数である。n2およびn3の定義および好適態様は、式(1)のn1と同様である。
【0087】
化合物(2)の好適な態様の一つとしては、[L 3-n2(Rn2Si]g2-Y-Rf3-と、-Rf4-Y-[Si(Rn3 3-n3g3と、が同一の基である態様が挙げられる。これにより、耐摩擦性および耐滑り性により優れた表面層を形成できる。
また、組成物(1)の好適な態様の一つとしては、化合物(1)の式(1)における-Rf2-Y-[Si(Rn1 3-n1g1と、化合物(2)の式(2)における[L 3-n2(Rn2Si]g2-Y-Rf3-および-Rf4-Y-[Si(Rn3 3-n3g3と、が同一の基である組み合わせの化合物(1)および化合物(2)を用いる態様が挙げられる。これにより、耐摩擦性および耐滑り性により優れた表面層を形成できる。
【0088】
化合物(1)および化合物(2)の具体例としては、たとえば、下記の文献に記載のものが挙げられる。
特開平11-029585号公報および特開2000-327772号公報に記載のパーフルオロポリエーテル変性アミノシラン、
特許第2874715号公報に記載のケイ素含有有機含フッ素ポリマー、
特開2000-144097号公報に記載の有機ケイ素化合物、
特表2002-506887号公報に記載のフッ素化シロキサン、
特表2008-534696号公報に記載の有機シリコーン化合物、
特許第4138936号公報に記載のフッ素化変性水素含有重合体、
米国特許出願公開第2010/0129672号明細書、国際公開第2014/126064号、特開2014-070163号公報に記載の化合物、
国際公開第2011/060047号および国際公開第2011/059430号に記載のオルガノシリコン化合物、
国際公開第2012/064649号に記載の含フッ素オルガノシラン化合物、
特開2012-72272号公報に記載のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー、 国際公開第2013/042732号、国際公開第2013/121984号、国際公開第2013/121985号、国際公開第2013/121986号、国際公開第2014/163004号、特開2014-080473号公報、国際公開第2015/087902号、国際公開第2017/038830号、国際公開第2017/038832号、国際公開第2017/187775号、国際公開第2018/216630号、国際公開第2019/039186号、国際公開第2019/039226号、国際公開第2019/039341号、国際公開第2019/044479号、国際公開第2019/049753号、国際公開第2019/163282号および特開2019-044158号公報に記載の含フッ素エーテル化合物、
特開2014-218639号公報、国際公開第2017/022437号、国際公開第2018/079743号および国際公開第2018/143433号に記載のパーフルオロ(ポリ)エーテル含有シラン化合物、
国際公開第2018/169002号に記載のパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物、
国際公開第2019/151442号に記載のフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物、
国際公開第2019/151445号に記載の(ポリ)エーテル基含有シラン化合物、
国際公開第2019/098230号に記載のパーフルオロポリエーテル基含有化合物、
特開2015-199906号公報、特開2016-204656号公報、特開2016-210854号公報および特開2016-222859号公報に記載のフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シラン、
国際公開第2019/039083号および国際公開第2019/049754号に記載の含フッ素化合物。
【0089】
化合物(1)および化合物(2)の市販品としては、信越化学工業社製のKY-100シリーズ(KY-178、KY-185、KY-195等)、AGC社製のAfluid(登録商標)S550、ダイキン工業社製のオプツール(登録商標)DSX、オプツール(登録商標)AES、オプツール(登録商標)UF503、オプツール(登録商標)UD509等が挙げられる。
【0090】
<比1>
比1は、式(1)のRf2中の最もY側に位置する-CF-で表される基のモル数(以下、「M1CF2」ともいう。)と、式(2)のRf3中の最もY側に位置する-CF-で表される基のモル数(以下、「M2CF2」ともいう。)と、式(2)のRf4中の最もY側に位置する-CF-で表される基のモル数(以下、「M3CF2」ともいう。)と、の合計モル数に対する、式(1)のRf1中の-CFで表される基のモル数の比[M1CF3/(M1CF2+M2CF2+M3CF2)]を意味し、その値は0.001~0.1である。一般的に、M2CF2とM3CF2とは同じ値になる。
比1の下限値は、優れた耐摩擦性および耐滑り性を維持しつつ、撥水撥油性により優れた表面層が得られる点から、0.003が好ましく、0.005が特に好ましい。
比1の上限値は、優れた撥水撥油性を維持しつつ、耐摩擦性および耐滑り性により優れた表面層が得られる点から、0.08が好ましく、0.07が特に好ましい。
【0091】
組成物(1)は、化合物(1)および化合物(2)をそれぞれ、2種以上含んでいてもよい。
組成物(1)が2種以上の化合物(1)を含む場合には、M1CF2は、2種以上の化合物(1)におけるM1CF2の合計モル数を意味し、M1CF3は、2種以上の化合物(1)におけるM1CF3の合計モル数を意味する。
組成物(1)が2種以上の化合物(2)を含む場合には、M2CF2は、2種以上の化合物(2)におけるM2CF2の合計モル数を意味し、M3CF2は、2種以上の化合物(2)におけるM3CF2の合計モル数を意味する。
【0092】
M1CF3およびM1CF2+M2CF2+M3CF2は、化合物(1)および化合物(2)を含む組成物(1)を用いた19F-NMRによって求める。このようにして測定した値に基づいて、比1[M1CF3/(M1CF2+M2CF2+M3CF2)]を算出する。
具体例としては、下記の19F-NMRのピークの積分値から比を算出する。
以下において、[ ]で示す基の代表的なピーク位置を示す。ただし、Dはアルキレン基またはCF側にカルボニル基(エステル基、アミド基であってもよい。)を持つアルキレン基である。Rは、ペルフルオロアルキレン基である。
[CF]-O-CF- : -50~-60ppm
[CF]-(CF-O-CF- : -70~-90ppm
-O-[CF]-D- : -70~-90ppm
-O-(CF-[CF]-D- : -110~-135ppm
【0093】
化合物(1)および化合物(2)の含有量の合計は、組成物(1)の全質量に対して、80~100質量%が好ましく、90~100質量%が好ましい。
【0094】
<他の成分>
組成物(1)は、液状媒体を含んでいてもよい。液状媒体の具体例としては、水、有機溶媒が挙げられる。
液状媒体は、有機溶媒を含むのが好ましく、塗工性に優れるという点から、沸点が35~250℃の有機溶媒を含むのがより好ましい。ここで、沸点は、標準沸点を意味する。 有機溶媒の具体例としては、フッ素系有機溶媒および非フッ素系有機溶媒が挙げられ、溶解性に優れるという点で、フッ素系有機溶媒が好ましい。有機溶媒は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0095】
フッ素系有機溶媒の具体例としては、フッ素化アルカン、フッ素化芳香族化合物、フルオロアルキルエーテル、フッ素化アルキルアミン、フルオロアルコールが挙げられる。
フッ素化アルカンは、炭素数4~8の化合物が好ましく、たとえば、C13H(AC-2000:製品名、AGC社製)、C13(AC-6000:製品名、AGC社製)、CCHFCHFCF(バートレル:製品名、デュポン社製)が挙げられる。
フッ素化芳香族化合物の具体例としては、ヘキサフルオロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、ペルフルオロトルエン、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,4-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンが挙げられる。
フルオロアルキルエーテルは、炭素数4~12の化合物が好ましく、たとえば、CFCHOCFCFH(AE-3000:製品名、AGC社製)、COCH(ノベック-7100:製品名、3M社製)、COC(ノベック-7200:製品名、3M社製)、CCF(OCH)C(ノベック-7300:製品名、3M社製)が挙げられる。
フッ素化アルキルアミンの具体例としては、ペルフルオロトリプロピルアミン、ペルフルオロトリブチルアミンが挙げられる。
フルオロアルコールの具体例としては、2,2,3,3-テトラフルオロプロパノール、2,2,2-トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノールが挙げられる。
【0096】
非フッ素系有機溶媒としては、水素原子および炭素原子のみからなる化合物、および、水素原子、炭素原子および酸素原子のみからなる化合物が好ましく、具体的には、炭化水素系有機溶媒、ケトン系有機溶媒、エーテル系有機溶媒、エステル系有機溶媒、アルコール系有機溶媒が挙げられる。
炭化水素系有機溶媒の具体例としては、ヘキサン、へプタン、シクロヘキサンが挙げられる。
ケトン系有機溶媒の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンが挙げられる。
エーテル系有機溶媒の具体例としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラエチレングリコールジメチルエーテルが挙げられる。
エステル系有機溶媒の具体例としては、酢酸エチル、酢酸ブチルが挙げられる。
アルコール系有機溶媒の具体例としては、イソプロピルアルコール、エタノール、n-ブタノールが挙げられる。
【0097】
組成物(1)が液状媒体を含む場合、液状媒体の含有量は、組成物(1)の全質量に対して、70~99.99質量%が好ましく、80~99.9質量%が特に好ましい。
【0098】
組成物(1)は、本発明の効果を損なわない範囲において、上記以外の成分を含んでいてもよい。
他の成分としては、化合物(1)および化合物(2)の製造工程で生成した副生物、未反応の原料等の製造上の不可避の化合物が挙げられる。
また、加水分解性シリル基の加水分解と縮合反応を促進する酸触媒や塩基性触媒等の添加剤が挙げられる。酸触媒の具体例としては、塩酸、硝酸、酢酸、硫酸、燐酸、スルホン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸が挙げられる。塩基性触媒の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアが挙げられる。
他の成分の含有量は、化合物(1)および化合物(2)の合計量に対して、0~10質量%が好ましく、0~5質量%がより好ましく、0~1質量%が特に好ましい。
【0099】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態の組成物(以下、「組成物(2)」ともいう。)は、上記化合物(1)と、上記化合物(2)と、化合物(3)とを含み、式(1)のRf2中の最もY側に位置する-CF-で表される基のモル数と、式(2)のRf3中の最もY側に位置する-CF-で表される基のモル数と、式(2)のRf4中の最もY側に位置する-CF-で表される基のモル数と、の合計モル数に対する、式(1)のRf1中の-CFで表される基のモル数と、式(3)のRf5中の-CFで表される基のモル数と、式(3)のRf6中の-CFで表される基のモル数と、の合計モル数の比(以下、「比2」ともいう。)が、0.001~0.1である。
【0100】
-CFで表される基のモル数は、化合物(1)の一方の末端に位置する基のモル数と、化合物(3)の両末端に位置する基のモル数と、の合計を意味する。また、-CF-で表される基のモル数の合計は、化合物(1)の一方の末端近傍に位置する基のモル数と、化合物(2)の両末端近傍に位置する基のモル数と、の合計を意味する。つまり、比2の値が小さければ、組成物中の化合物(2)の含有量が多くなることを意味し、比2の値が大きければ、組成物中の化合物(1)または化合物(3)の含有量が多くなることを意味する。
したがって、組成物(1)と同様の理由によって、上記比2を満たす組成物(2)を用いることで、耐摩擦性および耐滑り性に優れた表面層を形成できたと考えられる。
【0101】
組成物(2)は、化合物(3)を必須に含み、化合物(3)を含めた比を求めている点が、組成物(1)とは異なる。
以下においては、主として、第2実施形態で説明した組成物(1)と異なる点について説明する。
【0102】
<式(1)で表される化合物および式(2)で表される化合物>
組成物(2)に含まれる化合物(1)および化合物(2)はそれぞれ、組成物(1)に含まれる化合物(1)および化合物(2)と同様である。
【0103】
<式(3)で表される化合物>
化合物(3)は、式(3)で表される含フッ素エーテル化合物である。
f5-(OXm3-O-Rf6 (3)
【0104】
f5およびRf6はそれぞれ独立に、直鎖状ペルフルオロアルキル基である。Rf5およびRf6の定義および好適態様は、式(1)のRf1と同様である。特に、表面層の撥水撥油性がより優れる点から、Rf5およびRf6はそれぞれ独立に、CF-、CFCF-、CFCFCF-が好ましい。
は、1個以上のフッ素原子を有するフルオロアルキレン基である。m3は、2以上の整数である。X、m3、(OX)および(OXm3の定義および好適態様はそれぞれ、式(1)のX、m1、(OX)および(OXm1と同様である。
【0105】
化合物(3)の市販品としては、ソルベイ社製のFomblinM03が挙げられる。
【0106】
<比2>
比2は、M1CF2、M2CF2およびM3CF2の合計モル数に対する、M1CF3、式(3)のRf5中の-CFで表される基のモル数(以下、「M2CF3」ともいう。)および式(3)のRf6中の-CFで表される基のモル数(以下、「M3CF3」ともいう。)の合計モル数の比[(M1CF3+M2CF3+M3CF3)/(M1CF2+M2CF2+M3CF2)]を意味し、その値は0.001~0.1である。
比2の下限値は、優れた耐摩擦性および耐滑り性を維持しつつ、撥水撥油性により優れた表面層が得られる点から、0.003が好ましく、0.005が特に好ましい。
比2の上限値は、優れた撥水撥油性を維持しつつ、耐摩擦性および耐滑り性により優れた表面層が得られる点から、0.08が好ましく、0.07が特に好ましい。
【0107】
組成物(2)は、化合物(1)~化合物(3)をそれぞれ、2種以上含んでいてもよい。
組成物(2)が2種以上の化合物(1)を含む場合におけるM1CFおよびM1CF3の定義は、組成物(1)が2種以上の化合物(1)を含む場合の定義と同じである。
組成物(2)が2種以上の化合物(2)を含む場合におけるM2CF2およびM3CF2の定義は、組成物(1)が2種以上の化合物(2)を含む場合の定義と同じである。
組成物(3)が2種以上の化合物(3)を含む場合には、M2CF3は、2種以上の化合物(3)におけるM2CF3の合計モル数を意味し、M3CF3は、2種以上の化合物(3)におけるM3CF3の合計モル数を意味する。
【0108】
M1CF3+M2CF3+M3CF3およびM1CF2+M2CF2+M3CF2は、化合物(1)~化合物(3)を含む組成物(2)を用いた19F-NMRによって求める。このようにして測定した値に基づいて、比2[(M1CF3+M2CF3+M3CF3)/(M1CF2+M2CF2+M3CF2)]を算出する。
【0109】
化合物(1)~化合物(3)の含有量の合計は、組成物(2)の全質量に対して、50~100質量%が好ましく、80~100質量%が好ましい。
【0110】
<他の成分>
組成物(2)は、液状媒体を含んでいてもよい。組成物(2)における液状媒体の具体例および好適態様は、組成物(1)における液状媒体と同様である。
組成物(2)が液状媒体を含む場合、液状媒体の含有量は、組成物(2)の全質量に対して、70~99.99質量%が好ましく、80~99.9質量%が特に好ましい。
【0111】
組成物(2)は、本発明の効果を損なわない範囲において、上記以外の成分を含んでいてもよい。組成物(2)における他の成分の具体例および好適態様は、組成物(1)における他の成分と同様である。
他の成分の含有量は、化合物(1)~化合物(3)の合計量に対して、0~10質量%が好ましく、0~5質量%がより好ましく、0~1質量%が特に好ましい。
【0112】
[物品]
本発明の物品は、基材と、基材上に上記組成物(1)または上記組成物(2)から形成されてなる表面層と、を有する。
【0113】
表面層には、化合物(1)および化合物(2)の加水分解反応および縮合反応によって得られる化合物が含まれる。
表面層の厚みは、1~100nmが好ましく、1~50nmが特に好ましい。表面層の厚みが下限値以上であれば、表面層による効果が充分に得られる。表面層の厚みが上記上限値以下であれば、利用効率が高い。
表面層の厚みは、薄膜解析用X線回折計を用いて、X線反射率法(XRR)によって反射X線の干渉パターンを得て、この干渉パターンの振動周期から算出できる。
【0114】
基材は、他の物品(たとえば、スタイラス)や人の手指を接触させて使用することがある基材、操作時に人の手指で持つことがある基材、および/または、他の物品(たとえば、載置台)の上に置くことがある基材であって、撥水撥油性の付与が求められている基材であれば特に限定されない。基材の材料の具体例としては、金属、樹脂、ガラス、サファイア、セラミック、石、および、これらの複合材料が挙げられる。ガラスは化学強化されていてもよい。
基材としては、タッチパネル用基材およびディスプレイ基材が好ましく、タッチパネル用基材が特に好ましい。タッチパネル用基材は、透光性を有するのが好ましい。「透光性を有する」とは、JIS R3106:1998(ISO 9050:1990)に準じた垂直入射型可視光透過率が25%以上であるのを意味する。タッチパネル用基材の材料としては、ガラスまたは透明樹脂が好ましい。
また、基材としては、携帯電話(たとえば、スマートフォン)、携帯情報端末、ゲーム機、リモコン等の機器における外装部分(表示部を除く)に使用する、ガラスおよび樹脂フィルムも好ましい。
【0115】
表面層は、基材の表面上に直接形成されてもよいし、基材の表面に形成された他の膜を介して基材上に形成されてもよい。上記他の膜の具体例としては、国際公開第2011/016458号の段落0089~0095に記載の化合物やSiO等で基材を下地処理して、基材の表面に形成される下地膜が挙げられる。
【0116】
上記物品は、たとえば、下記の方法で製造できる。
・組成物(1)または組成物(2)を用いたドライコーティング法によって基材の表面を処理して、上記物品を得る方法。
・ウェットコーティング法によって液状媒体を含む組成物(1)または液状媒体を含む組成物(2)を基材の表面に塗布し、乾燥させて、上記物品を得る方法。
なお、ウェットコーティング法においては、化合物(1)および化合物(2)を酸触媒や塩基性触媒等を用いて予め加水分解しておき、加水分解した化合物と液状媒体とを含む組成物を使用することもできる。
【0117】
ドライコーティング法の具体例としては、真空蒸着法、CVD法、スパッタリング法が挙げられる。これらの中でも、化合物(1)~(3)の分解を抑える点、および、装置の簡便さの点から、真空蒸着法が好適である。真空蒸着時には、鉄や鋼等の金属多孔体に組成物(1)または組成物(2)を含浸させたペレット状物質を使用してもよい。
ウェットコーティング法の具体例としては、スピンコート法、ワイプコート法、スプレーコート法、スキージーコート法、ディップコート法、ダイコート法、インクジェット法、フローコート法、ロールコート法、キャスト法、ラングミュア・ブロジェット法、グラビアコート法が挙げられる。
【実施例
【0118】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。ただし本発明はこれらの実施例に限定されない。なお、各成分の配合量は、質量基準を示す。例1~例3のうち、例2~4、10~12、23、24、26、27、29、32は実施例であり、例1、5、6、9、13、17、21、22、25、28、30、31および33は比較例である。また、例7、8、14~16、18~20、34~36は参考例である。
【0119】
〔評価方法〕
(比)
組成物を19F-NMRによって分析して、組成物に含まれる含フッ素エーテル化合物についての上述した比1または比2を求めた。
【0120】
(水接触角の測定方法)
表面層の表面に置いた約2μLの蒸留水の接触角(水接触角)を、接触角測定装置(DM-500:製品名、協和界面科学社製)を用いて測定した。表面層の表面における異なる5箇所で測定し、その平均値を算出して、初期接触角とした。接触角の算出には2θ法を用いた。判定基準を以下に示す。
(良) :初期接触角が100度以上である。
×(不良):初期接触角が100度未満である。
【0121】
(耐摩擦性の試験方法)
表面層について、JIS L0849:2013(ISO 105-X12:2001)に準拠して往復式トラバース試験機(ケイエヌテー社製)を用い、セルロース製不織布(ベンコットM-3:製品名、旭化成社製)を荷重:1kg、速度:320cm/分で1万回往復させた後、水接触角を測定した。判定基準を以下に示す。なお、摩擦後の水接触角の低下が小さいほど摩擦による性能の低下が小さく、耐摩擦性に優れる。
◎(優) :1万回往復後の水接触角の低下が10度以下である。
○(良) :1万回往復後の水接触角の低下が10度超15度以下である。
×(不良):1万回往復後の水接触角の低下が15度超である。
【0122】
(耐滑り性の試験方法)
表面が水平に保持された全自動接触角計(DMo-701:製品名、協和界面化学社製)を準備した。ポリエチレンシート(硬質ポリエチレンシート(高密度ポリエチレン):製品名、株式会社ハギテック社製)の表面(水平面)上に、表面層の表面が接するように物品(表面層付き基材)を載置した後、全自動接触角計を用いて徐々に傾けて、物品が滑落し始めたときの表面層の表面と、水平面と、のなす角度(滑落角)を測定した。判定基準を以下に示す。なお、物品とポリエチレンシートのとの接触面積は6cm×6cm、物品には荷重を0.98N与えた条件で測定を行った。
◎(良) :滑落角が5度以上である。
○(可) :滑落角が2度以上5度未満である。
×(不良):滑落角が2度未満である。
【0123】
[合成例1]
化合物(1-A)および化合物(2-A)を含む混合物CB-1a、CB-1b、CB-1c、CB-1dを以下の手順にて合成した。
【0124】
(合成例1-1)
国際公開第2013-121984号の実施例の例1-1に記載の方法にしたがって化合物(X1-1)を得た。
CF=CFO-CFCFCFCHOH (X1-1)
【0125】
(合成例1-2)
100mLのステンレス製反応器に、合成例1-1で得た化合物(X1-1)の10gを入れ、175℃で200時間攪拌した。得られた有機相を濃縮し、化合物(X1-2)の6gを得た。
【0126】
【化9】
【0127】
化合物(X1-2)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:テトラメチルシラン(TMS)) δ(ppm):4.1(4H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl) δ(ppm):-80(2F)、-85(2F)、-123(4F)、-126(4F)、-128(2F)、-131(2F)、-137(1F)、-139(1F)
【0128】
(合成例1-3)
200mLのナスフラスコに、合成例1-2で得た化合物(X1-2)の5g、炭酸カリウムの1.2gを入れ、120℃で攪拌し、化合物(X1-1)を25g加えて120℃で2時間攪拌した。25℃に戻し、AC-2000(製品名、AGC社製、C13H)および塩酸をそれぞれ30g入れ、分液し、有機相を濃縮した。得られた反応粗液をカラムクロマトグラフィにて精製し、化合物(X1-3)の21g(収率70%)を得た。
【0129】
【化10】
【0130】
化合物(X1-3)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:テトラメチルシラン(TMS)) δ(ppm):6.0(10H)、4.6(20H)、4.1(4H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl) δ(ppm):-80(2F)、-85(22F)、-91(20F)、-120(20F)、-123(4F)、-126(24F)、-128(2F)、-131(2F)、-137(1F)、-139(1F)、-144(10F)
単位数m+nの平均値:10。
【0131】
(合成例1-4)
還流冷却器を接続した50mLのナスフラスコに、合成例1-3で得た化合物(X1-3)の20g、フッ化ナトリウムの粉末7.1g、AC-2000の20g、CFCFCFOCF(CF)COFの20gを加えた。窒素雰囲気下、50℃で24時間攪拌した。室温に冷却した後、加圧ろ過機でフッ化ナトリウム粉末を除去した後、過剰のCFCFCFOCF(CF)COFとAC-2000を減圧留去し、化合物(X1-4)の24g(収率100%)を得た。
【0132】
【化11】
【0133】
化合物(X1-4)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:テトラメチルシラン(TMS)) δ(ppm):6.0(10H)、5.0(4H)、4.6(20H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl) δ(ppm):-79(4F)、-80(2F)、-81(6F)、-82(6F)、-85(22F)、-91(20F)、-119(4F)、-120(20F)、-126(24F)、-128(2F)、-129(4F)、-131(2F)、-131(2F)、-137(1F)、-139(1F)、-144(10F)。
単位数m+nの平均値:10。
【0134】
(合成例1-5)
500mLのニッケル製反応器に、ClCFCFClCFOCFCFCl(以下、「CFE-419」と記す。)の250mLを入れ、窒素ガスをバブリングした。酸素ガス濃度が充分に下がった後、窒素ガスで希釈された20体積%のフッ素ガスを1時間バブリングした。合成例1-4で得た化合物(X1-4)のCFE-419溶液(濃度:10%、化合物(X1-4):20g)を3時間かけて投入した。フッ素ガスの導入速度(mol/時間)と化合物(X1-4)中の水素原子の導入速度(mol/時間)との比は2:1になるように制御した。化合物(X1-4)の投入が終わった後、ベンゼンのCFE-419溶液(濃度:0.1%、ベンゼン:0.1g)を断続的に投入した。ベンゼンの投入が終わった後、フッ素ガスを1時間バブリングし、最後に窒素ガスで反応器内を充分に置換した。溶媒を留去し、化合物(X1-5)を主成分とする混合物の21g(収率90%)を得た。
【0135】
【化12】
【0136】
化合物(X1-5)のNMRスペクトル;
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl) δ(ppm):-79(4F)、-80(2F)、-81(6F)、-82(6F)、-83(46F)、-87(40F)、-124(48F)、-128(2F)、-129(4F)、-131(2F)、-131(2F)、-137(1F)、-139(1F)。
単位数m+nの平均値:10。
【0137】
(合成例1-6)
50mLのナスフラスコに、合成例1-5で得た化合物(X1-5)を主成分とする混合物の20g、フッ化ナトリウムの1.8g、AC-2000の20mLを入れ、氷浴中で撹拌した。メタノールの1.4gを入れ、25℃で1時間撹拌した。ろ過した後、ろ液をカラムクロマトグラフィにて精製した。化合物(X1-6)を主成分とする混合物の14g(収率80%)を得た。
【0138】
【化13】
【0139】
化合物(X1-6)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:テトラメチルシラン(TMS)) δ(ppm):4.2(6H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl) δ(ppm):-80(2F)、-83(42F)、-87(40F)、-119(4F)、-124(44F)、-128(2F)、-131(2F)、-137(1F)、-139(1F)。
単位数m+nの平均値:10。
【0140】
(合成例1-7)
50mLのナスフラスコに、合成例1-6で得た化合物(X1-6)を主成分とする混合物の12g、HNCHC(CHCH=CHの1.5g、AC-2000の12mLを入れ、0℃で24時間撹拌した。反応粗液をカラムクロマトグラフィにて精製し、目的物が含まれる留分3種にわけた。そのうち化合物(X1-7)は合わせて9g(収率70%)得た。3種のそれぞれの留分を(C1-7a)、(C1-7b)、(C1-7c)とし、(C1-7c)の留分の一部をさらにカラムクロマトグラフィにて精製し(C1-7d)を得た。
留分(C1-7a)~(C1-7d)には、化合物(X1-7)および化合物(X1-8)が含まれていた。そして、各留分を用いて19F-NMRによって、上記比1に相当する比(CF/CF)を求めた。なお、比におけるCFは、化合物(X1-8)の一方の末端にある-CF基(式中の点線枠内の-CF基)のモル数を意味し、19F-NMRでは-85~-87ppmに観測される。また、比におけるCFは、化合物(X1-8)の一方の末端近傍にある-CF-基(式中の点線枠内の-CF-基)と、化合物(X1-7)の両末端の近傍にある-CF-基(式中の点線枠内の-CF-基)と、の合計モル数を意味し、19F-NMRでは-120ppmに観測される。
留分(C1-7a)におけるCF/CF=0.12
留分(C1-7b)におけるCF/CF=0.08
留分(C1-7c)におけるCF/CF=0.06
留分(C1-7d)におけるCF/CF=0.002
【0141】
【化14】
【0142】
化合物(X1-7)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:テトラメチルシラン(TMS)) δ(ppm):6.1(6H)、5.2(12H)、3.4(4H)、2.1(12H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl) δ(ppm):-80(2F)、-83(42F)、-87(40F)、-120(4F)、-124(44F)、-128(2F)、-131(2F)、-137(1F)、-139(1F)。
単位数m+nの平均値:10。
【0143】
【化15】
【0144】
(合成例1-8)
50mLのナスフラスコに、合成例1-7で得た留分(C1-7a)の1g、トリメトキシシランの0.21g、アニリンの0.001g、AC-6000(製品名、AGC社製、C13)の1.0g、白金/1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体の0.0033gを入れ、25℃で一晩攪拌した。溶媒等を減圧留去し、化合物(2-A)を含む混合物(CB-1a)の1.2g(収率100%)を得た。
また、留分(C1-7a)の代わりに、留分(C1-7b)、(C1-7c)または(C1-7d)を用いた以外は、混合物(CB-1a)の製造と同様にして、混合物(CB-1b)、(CB-1c)および(CB-1d)を得た。
なお、各混合物には、化合物(1-A)および化合物(2-A)が含まれていた。
各混合物を用いて、19F-NMRによって合成例1-7と同様の手法で比1を求めた。式中の点線枠内の基は、19F-NMRの測定対象とした基である。
混合物(CB-1a)における比1=0.12
混合物(CB-1b)における比1=0.08
混合物(CB-1c)における比1=0.06
混合物(CB-1d)における比1=0.002
【0145】
【化16】
【0146】
【化17】
【0147】
化合物(2-A)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:テトラメチルシラン(TMS)) δ(ppm):3.6(54H)、3.4(4H)、1.3(24H)、0.9(12H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl) δ(ppm):-80(2F)、-83(42F)、-87(40F)、-120(4F)、-124(44F)、-128(2F)、-131(2F)、-137(1F)、-139(1F)。
単位数m+nの平均値:10。
【0148】
[合成例2]
合成例1-7で使用したHNCHC(CHCH=CHをHNCHCH(CHCH=CHに変更した以外は、合成例1-1~1-8と同様にして、混合物(CB-2a)~(CB-2d)を得た。
なお、各混合物には、化合物(1-B)および化合物(2-B)が含まれていた。各混合物を用いて、19F-NMRによって合成例1-7と同様の手法で比1を求めた。式中の点線枠内の基は、19F-NMRの測定対象とした基である。
混合物(CB-2a)における比1=0.17
混合物(CB-2b)における比1=0.11
混合物(CB-2c)における比1=0.04
混合物(CB-2d)における比1=0.001
【0149】
【化18】
【0150】
【化19】
(単位数m+nの平均値:10)
【0151】
[合成例3]
化合物(1-C)および化合物(2-C)を含む混合物(CC-1a)、(CC-1b)、(CC-1c)、(CC-1d)を以下の手順にて合成した。
【0152】
(合成例3-1)
200mLのナスフラスコに、HO-CHCFCFCH-OHの16.2g、炭酸カリウムの13.8gを入れ、120℃で攪拌し、化合物(X1-1)の278gを加えて120℃で2時間攪拌した。25℃に戻し、AC-2000および塩酸をそれぞれ50g入れ、分液し、有機相を濃縮した。得られた反応粗液をカラムクロマトグラフィにて精製し、化合物(X3-1)の117.7g(収率40%)を得た。
【0153】
【化20】
【0154】
化合物(X3-1)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:テトラメチルシラン(TMS)) δ(ppm):6.0(12H)、4.6(20H)、4.2(4H)、4.1(4H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl) δ(ppm):-85(24F)、-90(24F)、-120(20F)、-122(4F)、-123(4F)、-126(24F)、-144(12F)
単位数m+nの平均値:10。
【0155】
(合成例3-2)
還流冷却器を接続した50mLのナスフラスコに、合成例3-1で得た化合物(X3-1)の20g、フッ化ナトリウムの粉末2.4g、AC-2000の20g、CFCFCFOCF(CF)COFの18.8gを加えた。窒素雰囲気下、50℃で24時間攪拌した。室温に冷却した後、加圧ろ過機でフッ化ナトリウム粉末を除去した後、過剰のCFCFCFOCF(CF)COFとAC-2000を減圧留去し、化合物(X3-2)の24g(収率100%)を得た。
【0156】
【化21】
【0157】
化合物(X3-2)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:テトラメチルシラン(TMS)) δ(ppm):6.0(12H)、5.0(4H)、4.6(20H)、4.2(4H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl) δ(ppm):-79(4F)、-81(6F)、-82(6F)、-85(24F)、-90(24F)、-119(4F)、-120(20F)、-122(4F)、-126(24F)、-129(4F)、-131(2F)、-144(12F)。
単位数m+nの平均値:10。
【0158】
(合成例3-3)
500mLのニッケル製反応器に、CFE-419の250mLを入れ、窒素ガスをバブリングした。酸素ガス濃度が充分に下がった後、窒素ガスで希釈された20体積%のフッ素ガスを1時間バブリングした。合成例3-2で得た化合物(X3-2)のCFE-419溶液(濃度:10質量%、化合物(X3-2):24g)を6時間かけて投入した。フッ素ガスの導入速度(mol/時間)と化合物(X3-2)中の水素原子の導入速度(mol/時間)との比は2:1になるように制御した。化合物(X3-2)の投入が終わった後、ベンゼンのCFE-419溶液(濃度:0.1質量%、ベンゼン:0.1g)を断続的に投入した。ベンゼンの投入が終わった後、フッ素ガスを1時間バブリングし、最後に窒素ガスで反応器内を充分に置換した。溶媒を留去し、化合物(X3-3)を主成分とする混合物の25.3g(収率90%)を得た。
【0159】
【化22】
【0160】
化合物(X3-3)のNMRスペクトル;
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl) δ(ppm):-79(4F)、-81(6F)、-82(6F)、-83(52F)、-87(52F)、-124(48F)、-129(4F)、-131(2F)。
単位数m+nの平均値:10。
【0161】
(合成例3-4)
50mLのナスフラスコに、合成例3-3で得た化合物(X3-3を主成分とする混合物)の25.3g、フッ化ナトリウムの2.2g、AC-2000の25mLを入れ、氷浴中で撹拌した。メタノールの1.7gを入れ、25℃で1時間撹拌した。ろ過した後、ろ液をカラムクロマトグラフィにて精製した。化合物(X3-4)を主成分とする混合物の15g(収率80%)を得た。
【0162】
【化23】
【0163】
化合物(X3-4)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:テトラメチルシラン(TMS)) δ(ppm):4.2(6H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl) δ(ppm):-83(48F)、-87(48F)、-119(4F)、-124(48F)。
単位数m+nの平均値:10。
【0164】
(合成例3-5)
50mLのナスフラスコに、合成例3-4で得た化合物(X3-4)を主成分とする混合物の15g、HNCHC(CHCH=CHの3.2g、AC-2000の15mLを入れ、0℃で24時間撹拌した。反応粗液をカラムクロマトグラフィにて精製し、目的物が含まれる留分3種にわけた。そのうち化合物(X3-5)は合わせて11.2g(収率70%)を得た。3種のそれぞれの留分を(C3-5a)、(C3-5b)、(C3-5c)とし、(C3-5c)の留分の一部をさらにカラムクロマトグラフィにて精製し(C3-5d)を得た。
留分(C3-5a)~(C3-5d)には、化合物(X3-5)および化合物(X3-6)が含まれていた。そして、各留分を用いて19F-NMRによって、上記比1に相当する比(CF/CF)を求めた。なお、比におけるCFは、化合物(X3-6)の一方の末端にある-CF基(式中の点線枠内の-CF基)のモル数を意味し、19F-NMRでは-85~-87ppmに観測される。また、比におけるCFは、化合物(X3-6)の一方の末端近傍にある-CF-基(式中の点線枠内の-CF-基)と、化合物(X3-5)の両末端の近傍にある-CF-基(式中の点線枠内の-CF-基)と、の合計モル数を意味し、19F-NMRでは-120ppmに観測される。
留分(C3-5a)におけるCF/CF=0.11
留分(C3-5b)におけるCF/CF=0.06
留分(C3-5c)におけるCF/CF=0.05
留分(C3-5d)におけるCF/CF=0.003
【0165】
【化24】

【0166】
化合物(X3-5)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:テトラメチルシラン(TMS)) δ(ppm):6.1(6H)、5.2(12H)、3.4(4H)、2.1(12H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl) δ(ppm):-83(48F)、-87(48F)、-120(4F)、-124(48F)。
単位数m+nの平均値:10。
【0167】
【化25】
【0168】
(合成例3-6)
50mLのナスフラスコに、合成例3-5で得た留分(C3-5a)の1g、トリメトキシシランの0.21g、アニリンの0.001g、AC-6000の1.0g、白金/1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体の0.0033gを入れ、25℃で一晩攪拌した。溶媒等を減圧留去し、混合物(CC-1a)の1.2g(収率100%)を得た。
また、留分(C3-5a)の代わりに、留分(C3-5b)、(C3-5c)または(C3-5d)を用いた以外は、混合物(CC-1a)の製造と同様にして、混合物(CC-1b)、(CC-1c)および(CC-1d)を得た。
なお、各混合物には、化合物(1-C)および化合物(2-C)が含まれていた。
各混合物を用いて、19F-NMRによって合成例3-5と同様の手法で比1を求めた。式中の点線枠内の基は、19F-NMRの測定対象とした基である。
混合物(CC-1a)における比1=0.11
混合物(CC-1b)における比1=0.06
混合物(CC-1c)における比1=0.05
混合物(CC-1d)における比1=0.003
【0169】
【化26】
【0170】
【化27】
【0171】
化合物(2-C)のNMRスペクトル;
H-NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:テトラメチルシラン(TMS)) δ(ppm):3.6(54H)、3.4(4H)、1.3(24H)、0.9(12H)。
19F-NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl) δ(ppm):-83(48F)、-87(48F)、-120(4F)、-124(48F)。
単位数m+nの平均値:10。
【0172】
[合成例4]
合成例3-5で使用したHNCHC(CHCH=CHをHNCHCH(CHCH=CHに変更した以外は、合成例3-1~-6と同様にして、混合物(CC-2a)~(CC-2d)を得た。
なお、各混合物には、化合物(1-D)および化合物(2-D)が含まれていた。各混合物を用いて、19F-NMRによって合成例3-5と同様の手法で比1を求めた。式中の点線枠内の基は、19F-NMRの測定対象とした基である。
混合物(CC-2a)における比1=0.13
混合物(CC-2b)における比1=0.09
混合物(CC-2c)における比1=0.06
混合物(CC-2d)における比1=0.005
【0173】
【化28】
【0174】
【化29】
【0175】
[合成例5]
国際公開第2017/038830号の実施例11に記載の方法にしたがって化合物(1-E)を得た。19F-NMRによって、化合物(1-E)の一方の末端にある-CF基は-55~-56ppm、化合物(1-E)の他方の末端部分である-C(O)NH-CH-C[CHCHCH-Si(OCHと結合する-CF-基は-118~-122ppmに観測された。
CF-(OCFCF-OCFCFCFCFOCFCF-O-CFCFCFC(O)NH-CH-C[CHCHCH-Si(OCH (1-E)
【0176】
[合成例6]
特開2015-199906の実施例に記載の方法にしたがって、化合物(2-E)および化合物(1-F)を得た。19F-NMRによって、式中の点線枠内で示した-CF基は-57~-60ppm、式中の点線枠内で示した-CF-基は-78~-85ppmに観測された。
【0177】
【化30】
(p1:q1≒1:1、p1+q1≒40)
【0178】
【化31】
(p1:q1≒1:1、p1+q1≒40)
【0179】
[合成例7]
特許第6296200号の実施例に記載の方法にしたがって化合物(1-G)を得た。19F-NMRによって、化合物(1-G)の一方の末端にある-CF基は-57~-60ppm、化合物(1-G)の他方の末端部分である-CHCHCHSi[CHCHCHSi(OCHと結合する-CF-基は-78~-85ppmに観測された。
CF(OCFCF(OCFOCFCHCHCHSi[CHCHCHSi(OCH (1-G)
(m:n≒1:1、m+n≒40)
【0180】
[合成例8]
出発原料をCF(OCFCF(OCFOCFCHCH=CHからCH=CHCHCF(OCFCF(OCFOCFCHCH=CH変更した以外は、合成例7と同様の方法で化合物(2-F)を得た。19F-NMRによって、化合物(2-F)の両末端部分である[(CHO)SiCHCHCHSiCHCHCH-と結合する-CF-基は、-78~-85ppmに観測された。
[(CHO)SiCHCHCHSiCHCHCHCF(OCFCF(OCFOCFCHCHCHSi[CHCHCHSi(OCH (2-F)
(m:n≒1:1、m+n≒40)
【0181】
[合成例9]
化合物(2-G)を以下の手順にて合成した。
【0182】
(合成例9-1)
1000mLのナスフラスコに6%臭化カリウム水溶液の13.3gとアセトニトリルの250.2g、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシルの0.27g、FomblinD4000(Solvay製)の250.2g加え、亜塩素酸ナトリウムの220.0gと炭酸水素ナトリウムの23.6gを加え常温で4時間攪拌した。その後、AC-2000の580gと10%硫酸を300gそれぞれ加え、分液し、有機層を濃縮した。化合物(X9-1)の237.56g(収率94%)を得た。
【0183】
【化32】
【0184】
化合物(X9-1)のNMRスペクトル;
19F-NMR(ppm):-53(42F)、-78(2F)、-79(2F)、-89(92F)。
mの平均値:21、nの平均値:23。
【0185】
(合成例9-2)
還流冷却器を接続した500mLのナスフラスコに化合物(X9-1)の130.7gとメタノールの38.4gを加え、溶媒としてAC-2000の130.5gを加えたのち、還流条件下で48時間攪拌した。濃縮後、化合物(X9-2)の130.66g(収率100%)を得た。
【0186】
【化33】
【0187】
化合物(X9-2)のNMRスペクトル;
H-NMR(ppm):3.9(6H)。
19F-NMR(ppm):-53(42F)、-77(2F)、-79(2F)、-89(92F)。
mの平均値:21、nの平均値:23。
【0188】
(合成例9-3)
100mLのナスフラスコ内に、化合物(X9-2)の40.6g、HNCHC(CHCH=CH3.72g、溶媒としてAC-2000の45.7gを入れ、室温で1時間撹拌した。得られた粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物(X9-3)を23.4g得た。
【0189】
【化34】
【0190】
化合物(X9-3)のNMRスペクトル;
H-NMR(ppm):6.0(6H)、5.2(12H)、3.4(4H)、2.2(12H)。
19F-NMR(ppm):-53(42F)、-78(2F)、-79(2F)、-89(92F)。
mの平均値:21、nの平均値:23。
【0191】
(合成例9-4)
10mLのナスフラスコに、合成例9-3で得られた化合物(X9-3)の1.0g、白金/1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液(白金含有量:3質量%)の0.03g、トリメトキシシランの0.25g、アニリンの0.002gおよびAC-6000の3.2gを入れ、40℃で3時間撹拌した。溶媒等を減圧留去することにより、化合物(2-G)の1.0gを得た。式中の点線枠内の-CF-基は、19F-NMRの測定対象とした基であり、-78~-80ppm付近に観測された。
【0192】
【化35】
【0193】
化合物(2-G)のNMRスペクトル;
H-NMR(ppm):3.5(54H)、3.2(4H)、1.3(24H)、0.6(12H)。
19F-NMR(ppm):-53(42F)、-78(2F)、-79(2F)、-89(92F)。
mの平均値:21、nの平均値:23。
【0194】
[合成例10]
合成例9-3で使用したアミンをHNCHC(CHCH=CHからHNCHCH(CHCH=CHに変更した以外は、合成例9-1~9-4と同様にして、化合物(2-H)を1.0g得た。式中の点線枠内の-CF-基は、19F-NMRの測定対象とした基であり、-80ppm付近に観測された。
【0195】
【化36】
【0196】
化合物(2-H)のNMRスペクトル;
H-NMR(ppm):3.4(36H)、3.2(4H)、1.6(2H)、1.4(16H)、0.6(8H)。
19F-NMR(ppm):-53(42F)、-78(2F)、-79(2F)、-89(92F)。
mの平均値:21、nの平均値:23。
【0197】
[合成例11]
FomblinM03(製品名、ソルベイ社製)を購入し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物(3-A)を得た。化合物(3-A)の数平均分子量は約4000であった。式中の点線枠内の-CF基は、19F-NMRの測定対象とした基であり、-57~-60ppmに観測された。
【0198】
【化37】
(m+n≒40、m:n≒1)
【0199】
[合成例12]
(合成例12-1)
合成例3と同様の方法で得た化合物(X3-4)を100mLの耐圧反応器に15g、AK-225を50g、2.0Mアンモニア-メタノール溶液を7.5g入れ、室温で6時間攪拌した。その後、溶媒を留去し、目的の化合物(X12-1)を15.0g(収率100%)得た。
【化38】
【0200】
化合物(X12-1)のNMRスペクトル;
19F-NMR:-83(48F)、-87(48F)、-120(4F)、-124(48F)
単位数m+nの平均値:10。
【0201】
(合成例12-2)
300mLのナスフラスコに化合物(X12-1)を15g、AK-225を75g、ジエチルエーテルを30g加え、氷浴下で攪拌した。その後、水素化リチウムアルミニウムを0.70gゆっくり加え、室温で20時間攪拌した。その後硫酸ナトリウム飽和水溶液を0.3mL加え析出した固体をセライト濾過で取り除いた。得られた濾液を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、目的の化合物(X12-2)を9.8g(収率65%)で得た。
【化39】
【0202】
化合物(X12-2)のNMRスペクトル;
H-NMR:3.2(4H)
19F-NMR:-83(48F)、-87(48F)、-122(4F)、-124(48F)
単位数m+nの平均値:10。
【0203】
(合成例12-3)
50mLのナスフラスコにHO(C=O)C(CHCH=CHの1.5g、ジクロロメタンの60mL、オキサリルクロリドの1.5mLを加え氷冷下で攪拌し、その後DMFの0.01gを添加した。その後室温で3時間攪拌後、濃縮し、Cl(C=O)C(CHCH=CHの1.4gを得た。
別途50mLccのナスフラスコに化合物(X12-2)の9.0g、トリエチルアミンの2.1mLを加え、上記Cl(C=O)C(CHCH=CHと1,3-ビストリフルオロメチルベンゼン6mlを添加した。1時間攪拌し、溶媒を留去した。得られた粗体を目的物が含まれる留分3種にわけた。そのうち化合物(X12-3)は合わせて6.6g(収率70%)を得た。3種のそれぞれの留分を(C12-3a)、(C12-3b)、(C12-3c)とし、(C12-3c)の留分の一部をさらにカラムクロマトグラフィにて精製し(C12-3d)を得た。
留分(C12-3a)~(C12-3d)には、化合物(X12-3)および化合物(X12-4)が含まれていた。そして、各留分を用いて19F-NMRによって、上記比1に相当する比(CF/CF)を求めた。なお、比におけるCFは、化合物(X12-4)の一方の末端にある-CF基(式中の下線の-CF基)のモル数を意味し、19F-NMRでは-85~-87ppmに観測される。また、比におけるCFは、化合物(X12)の一方の末端近傍にある-CF-基(式中の下線の-CF-基)と、化合物(X12)の両末端の近傍にある-CF-基(式中の下線の-CF-基)と、の合計モル数を意味し、19F-NMRでは-120ppmに観測される。
留分(C12-3a)におけるCF/CF=0.18
留分(C12-3b)におけるCF/CF=0.09
留分(C12-3c)におけるCF/CF=0.04
留分(C12-3d)におけるCF/CF=0.004
【化40】
CF CFO-(CFCFCFCFOCFCFO)o-CFCFO-CFCF CF CHNH(C=O)C(CHCH=CH (X12-4)
【0204】
化合物(X12-3)のNMRスペクトル;
H-NMR:6.1(2H)、5.8(6H)、5.2(12H)、4.1(4H)、2.4(12H)
19F-NMR:-83(48F)、-87(48F)、-120(4F)、-124(48F)
単位数m+nの平均値:10。
【0205】
(合成例12-4)
窒素置換した50mLのナスフラスコに合成例12-3で得た留分(C12-3a)の1.0g、白金/1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液(白金含有量:3質量%)の0.003g、アニリンの0.001g、AC-6000の1.0gを加えた後、トリメトキシシランの0.21gを加え40℃で一晩攪拌した。その後、溶媒を留去し、混合物(CK-1a)の1.2g(収率100%)で得た。
また、留分(C12-3a)の代わりに、留分(C12-3b)、(C12-3c)または(C12-3d)を用いた以外は、混合物(CK-1a)の製造と同様にして、混合物(CK-1b)、(CK-1c)および(CK-1d)を得た。
なお、各混合物には、化合物(1-K)および化合物(2-K)が含まれていた。
各混合物を用いて、19F-NMRによって合成例12と同様の手法で比1を求めた。式中の下線の基は、19F-NMRの測定対象とした基である。
混合物(CK-1a)における比1=0.18
混合物(CK-1b)における比1=0.09
混合物(CK-1c)における比1=0.04
混合物(CK-1d)における比1=0.004
【化41】
CF CFO-(CFCFCFCFOCFCFO)o-CFCFO-CFCF CF CHNH(C=O)C(CHCHCHSi(OCH (2-K)
【0206】
化合物(1-K)のNMRスペクトル;
H-NMR:6.0(2H)、4.1(4H)、3.6(54H)、1.7(12H)、1.4(12H)、0.7(12H)
19F-NMR:-83(48F)、-87(48F)、-120(4F)、-124(48F)
単位数m+nの平均値は10であった。
【0207】
[例1~16]
各合成例で得た混合物と、有機溶媒としてノベック-7200(製品名、3M社製、COC、沸点76℃)と、を表1の混合割合で混合して、例1~16の組成物を得た。
【0208】
[例17~24]
各合成例で得た化合物と、有機溶媒としてノベック-7200と、を表2の混合割合で混合して、例17~24の組成物を得た。
【0209】
[例25-32]
各合成例で得た化合物と、有機溶媒としてノベック-7200と、を表3の混合割合で混合して、例25~30の組成物を得た。
また、各合成例で得た混合物と、各合成例で得た化合物と、有機溶媒としてノベック-7200と、を表3の混合割合で混合して、例31および32の組成物を得た。
[例33~36]
合成例12で得た混合物と、有機溶媒としてノベック-7200(製品名、3M社製、COC、沸点76℃)と、を表4の混合割合で混合して、例33~36の組成物を得た。
【0210】
[評価サンプルの作製]
得られた各組成物を用いて、以下のドライコーティング法またはウェットコーティング法にて基材の表面処理を行い、基材(化学強化ガラス)の表面に表面層が形成されてなる評価サンプル(物品)を得た。
【0211】
(ドライコーティング法)
基材に対するドライコーティングは、真空蒸着装置(ULVAC社製、VTR-350M)を用いて行った。具体的には、まず、各例により得られた組成物の0.5gを真空蒸着装置内のモリブデン性ボートに充填し、真空蒸着装置内を1×10-3Pa以下に排気した。組成物を配置したボートを昇温速度10℃/分以下の速度で加熱し、水晶発振式膜厚計による蒸着速度が1nm/秒を超えた時点でシャッターを開けて基材の表面への成膜を開始した。膜厚が約50nmとなった時点でシャッターを閉じて基材表面への成膜を終了した。組成物中の化合物が堆積した基材を、200℃で30分間加熱処理した後、アサヒクリンAK-225(製品名、AGC社製)にて洗浄して、基材の表面に表面層を有する評価サンプル(物品)を得た。
【0212】
(ウェットコーティング法)
各組成物に基材をディッピングし、30分間放置後、基材を引き上げた(ディップコート法)。塗膜を200℃で30分間乾燥させ、AK-225にて洗浄することによって、基材の表面に表面層を有する評価サンプル(物品)を得た。
【0213】
各組成物の評価結果を表1~4に示す。
【表1】
【0214】
【表2】
【0215】
【表3】
【0216】
【表4】
【0217】
表1~4に示す通り、比1または比2を満たす組成物を用いれば、耐摩擦性および耐滑り性に優れた表面層を形成できることがわかった(例2~4、7、8、10~12、14~16、18~20、23、24、26、27、29、32、34~36)。
これに対して、比1および比2をいずれも満たさない組成物を用いた場合、得られる表面層の耐摩擦性または耐滑り性が劣ることがわかった(例1、5、6、9、13、17、21、22、25、28、30、31、33)。
【産業上の利用可能性】
【0218】
本発明の組成物は、撥水撥油性の付与が求められている各種の用途に用いることができる。たとえば、タッチパネル等の表示入力装置、透明なガラス製または透明なプラスチック製部材、メガネ用等のレンズ、キッチン用防汚部材、電子機器、熱交換器、電池等の撥水防湿部材や防汚部材、トイレタリー用防汚部材、導通しながら撥液が必要な部材、熱交換機の撥水・防水・滑水用部材、振動ふるいやシリンダ内部等の表面低摩擦用部材等に用いることができる。より具体的な使用例としては、ディスプレイの前面保護板、反射防止板、偏光板、アンチグレア板、またはそれらの表面に反射防止膜処理を施したもの、携帯電話(たとえば、スマートフォン)、携帯情報端末、ゲーム機、リモコン等の機器のタッチパネルシートやタッチパネルディスプレイ等の人の指または手のひらで画面上の操作を行う表示入力装置を有する各種機器(たとえば、表示部等に使用するガラスまたはフィルム、ならびに、表示部以外の外装部分に使用するガラスまたはフィルム)が挙げられる。上記以外にも、トイレ、風呂、洗面所、キッチン等の水周りの装飾建材、配線板用防水部材、熱交換機の撥水・防水・滑水用部材、太陽電池の撥水部材、プリント配線板の防水・撥水用部材、電子機器筐体や電子部品用の防水・撥水用部材、送電線の絶縁性向上用部材、各種フィルタの防水・撥水用部材、電波吸収材や吸音材の防水用部材、風呂、厨房機器、トイレタリー用の防汚部材、振動ふるいやシリンダ内部等の表面低摩擦用部材、機械部品、真空機器部品、ベアリング部品、自動車等の輸送機器用部品、工具等の表面保護用部材が挙げられる。
なお、2019年02月13日に出願された日本特許出願2019-023690号の明細書、特許請求の範囲および要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。