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特許7567514光学フィルム及び複合光学フィルムの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】光学フィルム及び複合光学フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20241008BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20241008BHJP
   B29D 7/01 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
G02B5/30
B32B27/18 A
B29D7/01
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021013347
(22)【出願日】2021-01-29
(65)【公開番号】P2022116919
(43)【公開日】2022-08-10
【審査請求日】2023-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村田 直紀
【審査官】植野 孝郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/045138(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/065222(WO,A1)
【文献】特開平5-346507(JP,A)
【文献】特開2017-68227(JP,A)
【文献】国際公開第2020/121708(WO,A1)
【文献】特開2014-149508(JP,A)
【文献】特開2009-251011(JP,A)
【文献】国際公開第2016/140077(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
B32B 1/00-43/00
B29D 7/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性重合体を含む樹脂(a)の層を備え、波長380nmにおける光線透過率が5%以下であり、Nz係数が0より大きく1未満である光学フィルムの光学フィルムの製造方法であって、
フィルム(I)を得る工程(I)と、
前記フィルム(I)の一方又は両方の表面を溶媒に接触させ、前記フィルム(I)の厚み方向の屈折率を変化させてフィルム(II)を得る工程(II)と、
を含み、
前記フィルム(I)が、(pA層)/(pB層)/(pA層)の層構成を有し、前記pA層が前記結晶性重合体を含む樹脂(a)の層であり、前記pB層が結晶性重合体及び紫外線吸収剤を含む樹脂(aB)の層である、光学フィルムの製造方法
【請求項2】
前記樹脂(a)の固有複屈折値が、正である、請求項に記載の光学フィルムの製造方法
【請求項3】
前記結晶性重合体が、脂環式構造を含有する、請求項1又は2に記載の光学フィルムの製造方法
【請求項4】
前記工程(I)が、前記フィルム(I)を共押出製膜することを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記フィルム(II)を延伸しフィルム(III)とする工程(III)をさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項6】
複合光学フィルムの製造方法であって、
請求項1~のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法により、光学フィルムを製造する工程と、
前記光学フィルムと、偏光子層と、前記光学フィルムの遅相軸と、前記偏光子層の透過軸とが、42°~48°の角度をなすよう貼合する工程とを含む、複合光学フィルムの製造方法
【請求項7】
複合光学フィルムの製造方法であって、
請求項1~のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法により、光学フィルムを製造する工程と、
前記光学フィルムの表面上に、導電層を形成する工程とを含む、複合光学フィルムの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルム、当該光学フィルムを含む複合フィルム、及び光学フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特定の光学的特性を有する樹脂フィルムを、光学的な用途に用いることが行われている。例えば、Nz係数が0<Nz<1を満たすフィルムは三次元位相差フィルムと呼ばれる。三次元位相差フィルムは、液晶表示装置等の表示装置に設けられた場合、傾斜方向から見た表示面の色付きを低減するといった効果を発現することができることが知られている。
【0003】
三次元位相差フィルムは、y軸方向(即ち面内遅相軸方向に直交する面内方向)の位相差よりも、z軸方向(即ち厚み方向)において大きい位相差を有する。そのため、通常の固有複屈折が正の光学フィルム用樹脂を単に延伸するといった、通常の位相差フィルムの製造方法では製造することができない。そのため、製造に用いる材料及び製造工程を種々工夫した三次元位相差フィルムの製造方法が、これまで提案されている(例えば、特許文献1~2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2019/188205号
【文献】国際公開第2020/137409号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これまで提案されている、固有複屈折が正の樹脂と負の樹脂とを組み合わせた三次元位相差フィルムの製造方法は、複雑な延伸の工程を要する、延伸後の貼合の工程を要し位置決めの手間が大きい等の問題点があった。
【0006】
また、一般に表示装置は、外光中の紫外線により劣化することがあり、このような劣化を抑制する機能が求められている。
【0007】
従って、本発明の目的は、三次元位相差フィルムとして良好な効果を発現することができ、表示装置の劣化を抑制する効果を発現することができ、且つ容易に製造することができる光学フィルム、及びそのような光学フィルムを容易に製造することができる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記の課題を解決するべく検討した。その結果、本発明者は、光学フィルムを構成する材料として、特定の紫外線吸収能を付与した特定の材料を採用することにより、前記課題を解決しうることを見出した。当該知見に基づき、本発明者は本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記のものを含む。
【0009】
〔1〕 結晶性重合体を含む樹脂(a)の層を備え、波長380nmにおける光線透過率が5%以下であり、Nz係数が0より大きく1未満である光学フィルム。
〔2〕 紫外線吸収剤を含む、〔1〕に記載の光学フィルム。
〔3〕 前記樹脂(a)の固有複屈折値が、正である、〔1〕又は〔2〕に記載の光学フィルム。
〔4〕 複数の層を備え、それらのうち前記光学フィルムの表面に位置する層の一以上が、前記樹脂(a)からなる、〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の光学フィルム。
〔5〕 (A層)/(B層)/(A層)の層構成を有し、前記A層が結晶性重合体を含む樹脂(a)の層であり、
前記B層が結晶性重合体及び紫外線吸収剤を含む樹脂(aB)の層である、〔4〕に記載の光学フィルム。
〔6〕 前記結晶性重合体が、脂環式構造を含有する、〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載の光学フィルム。
〔7〕 〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載の光学フィルムと、偏光子層とを備える、複合光学フィルムであって、
前記光学フィルムの遅相軸と、前記偏光子層の透過軸とが、42°~48°の角度をなす、複合光学フィルム。
〔8〕 〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載の光学フィルムと、導電層とを備える、複合光学フィルム。
〔9〕 〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法であって、
樹脂(a)の層を備え、且つ紫外線吸収剤を含むフィルム(I)を得る工程(I)と、
前記フィルム(I)の一方又は両方の表面を溶媒に接触させ、フィルム(I)の厚み方向の屈折率を変化させてフィルム(II)を得る工程(II)と、
を含む、光学フィルムの製造方法。
〔10〕 前記フィルム(I)が、(pA層)/(pB層)/(pA層)の層構成を有し、前記pA層が結晶性重合体を含む樹脂(a)の層であり、前記pB層が結晶性重合体及び紫外線吸収剤を含む樹脂(aB)の層である、〔9〕に記載の光学フィルムの製造方法。
〔11〕 前記工程(I)が、前記フィルム(I)を共押出製膜することを含む、〔9〕又は〔10〕に記載の光学フィルムの製造方法。
〔12〕 前記フィルム(II)を延伸しフィルム(III)とする工程(III)をさらに含む、〔9〕~〔11〕のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、三次元位相差フィルムとして良好な効果を発現することができ、表示装置の劣化を抑制する効果を発現することができ、且つ容易に製造することができる光学フィルム及び複合光学フィルム、並びにそのような光学フィルムを容易に製造することができる製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0012】
以下の説明において、フィルム等の層状の構造物の面内レターデーションReは、別に断らない限り、Re=(nx-ny)×dで表される値である。層状の構造物の厚み方向のレターデーションRthは、別に断らない限り、Rth=[{(nx+ny)/2}-nz]×dで表される値である。層状の構造物のNz係数は、別に断らない限り、(nx-nz)/(nx-ny)で表される値である。
【0013】
nxは、層状の構造物の厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表す。nyは、層状の構造物の前記面内方向であってnxの方向に直交する方向の屈折率を表す。nzは、層状の構造物の厚み方向の屈折率を表す。dは、層状の構造物の厚みを表す。測定波長は、別に断らない限り、590nmである。
【0014】
以下の説明において、固有複屈折が正の材料とは、別に断らない限り、延伸方向の屈折率がそれに垂直な方向の屈折率よりも大きくなる材料を意味する。また、固有複屈折が負の材料とは、別に断らない限り、延伸方向の屈折率がそれに垂直な方向の屈折率よりも小さくなる材料を意味する。固有複屈折の値は誘電率分布から計算することができる。
【0015】
以下の説明において、層状の構造物の遅相軸は、別に断らない限り、面内の遅相軸である。
【0016】
以下の説明において、「長尺」のフィルムとは、幅に対して、5倍以上の長さを有するフィルムをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムをいう。長さの上限に特段の制限は無いが、通常、幅に対して10万倍以下である。
【0017】
〔光学フィルム〕
本発明の光学フィルムは、結晶性重合体を含む樹脂(a)の層を備える。本発明の光学フィルムは、紫外線吸収剤を含みうる。
【0018】
好ましい態様において、本発明の光学フィルムは、複数の層を備え、それらのうち光学フィルムの表面に位置する層の一以上が、樹脂(a)からなる。即ち、光学フィルムのオモテ面及びウラ面のうちの一方又は両方が、結晶性樹脂(a)の層からなる。このように結晶性樹脂(a)の層が表面に露出した構造を有することにより、後述する製造方法を採用し、光学フィルムに容易に所望の光学的特性を付与することができる。
【0019】
さらに好ましい態様において、本発明の光学フィルムは、(A層)/(B層)/(A層)の層構成を有する。即ち、この場合本発明の光学フィルムは、B層と、そのオモテ面及びウラ面の両方に設けられたA層とを有する。ここでA層は樹脂(a)の層であり、一方B層は、結晶性重合体及び紫外線吸収剤を含む樹脂(aB)の層である。このような層構成を有することにより、紫外線吸収剤のブリードアウトを抑制することができる。したがって、薄いフィルムに高濃度の紫外線吸収剤を配合しても、実用性の高い光学フィルムとしうる。また、フィルムの製造の工程において、紫外線吸収剤による製造ラインの汚染を抑制することができる。
【0020】
〔樹脂(a)〕
樹脂(a)は、結晶性重合体、即ち結晶性を有する重合体を含む樹脂としうる。結晶性を有する重合体とは、融点Tmを有する重合体を表す。すなわち、結晶性を有する重合体とは、示差走査熱量計(DSC)で融点を観測することができる重合体を表す。結晶性樹脂は、好ましくは熱可塑性樹脂である。
【0021】
結晶性重合体は、正の固有複屈折を有することが好ましい。正の固有複屈折を有する結晶性重合体を用いることにより、樹脂(a)を、固有複屈折値が正の樹脂としうる。この場合、本発明の要件、特にNz係数に関する要件を満たす光学フィルムを特に容易に製造できる。
【0022】
結晶性重合体は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン;等でもよく、特に限定されることはないが、脂環式構造を含有することが好ましい。脂環式構造を含有する結晶性重合体を用いることにより、得られる光学フィルムの機械特性、耐熱性、透明性、低吸湿性、寸法安定性及び軽量性を良好にできる。脂環式構造を含有する重合体とは、分子内に脂環式構造を有する重合体を表す。このような脂環式構造を含有する重合体は、例えば、環状オレフィンを単量体として用いた重合反応によって得られうる重合体又はその水素化物でありうる。
【0023】
脂環式構造としては、例えば、シクロアルカン構造及びシクロアルケン構造が挙げられる。これらの中でも、熱安定性などの特性に優れる光学フィルムが得られ易いことから、シクロアルカン構造が好ましい。1つの脂環式構造に含まれる炭素原子の数は、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下である。1つの脂環式構造に含まれる炭素原子の数が上記範囲内にあることで、機械的強度、耐熱性、及び成形性が高度にバランスされる。
【0024】
脂環式構造を含有する結晶性重合体において、全ての構造単位に対する脂環式構造を有する構造単位の割合は、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上である。脂環式構造を有する構造単位の割合を前記のように多くすることにより、耐熱性を高めることができる。全ての構造単位に対する脂環式構造を有する構造単位の割合は、100重量%以下としうる。また、脂環式構造を含有する結晶性重合体において、脂環式構造を有する構造単位以外の残部は、格別な限定はなく、使用目的に応じて適宜選択しうる。
【0025】
脂環式構造を含有する結晶性重合体としては、例えば、下記の重合体(α)~重合体(δ)が挙げられる。これらの中でも、耐熱性に優れる光学フィルムが得られ易いことから、重合体(β)が好ましい。
重合体(α):環状オレフィン単量体の開環重合体であって、結晶性を有するもの。
重合体(β):重合体(α)の水素化物であって、結晶性を有するもの。
重合体(γ):環状オレフィン単量体の付加重合体であって、結晶性を有するもの。
重合体(δ):重合体(γ)の水素化物であって、結晶性を有するもの。
【0026】
具体的には、脂環式構造を含有する結晶性重合体としては、ジシクロペンタジエンの開環重合体であって結晶性を有するもの、及び、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物であって結晶性を有するものがより好ましい。中でも、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物であって結晶性を有するものが特に好ましい。ここで、ジシクロペンタジエンの開環重合体とは、全構造単位に対するジシクロペンタジエン由来の構造単位の割合が、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは100重量%の重合体をいう。
【0027】
ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物は、ラセモ・ダイアッドの割合が高いことが好ましい。具体的には、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物における繰り返し単位のラセモ・ダイアッドの割合は、好ましくは51%以上、より好ましくは70%以上、特に好ましくは85%以上である。ラセモ・ダイアッドの割合が高いことは、シンジオタクチック立体規則性が高いことを表す。よって、ラセモ・ダイアッドの割合が高いほど、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物の融点が高い傾向がある。
ラセモ・ダイアッドの割合は、後述する実施例に記載の13C-NMRスペクトル分析に基づいて決定できる。
【0028】
上記重合体(α)~重合体(δ)としては、国際公開第2018/062067号に開示されている製造方法により得られる重合体を用いうる。
【0029】
結晶性重合体の融点Tmは、好ましくは200℃以上、より好ましくは230℃以上であり、好ましくは290℃以下である。このような融点Tmを有する結晶性重合体を用いることによって、成形性と耐熱性とのバランスに更に優れた光学フィルムを得ることができる。
【0030】
通常、結晶性重合体は、ガラス転移温度Tgを有する。結晶性重合体の具体的なガラス転移温度Tgは、特に限定されないが、通常は85℃以上、通常170℃以下である。
【0031】
重合体のガラス転移温度Tg及び融点Tmは、以下の方法によって測定できる。まず、重合体を、加熱によって融解させ、融解した重合体をドライアイスで急冷する。続いて、この重合体を試験体として用いて、示差走査熱量計(DSC)を用いて、10℃/分の昇温速度(昇温モード)で、重合体のガラス転移温度Tg及び融点Tmを測定しうる。
【0032】
結晶性重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000以上、より好ましくは2,000以上であり、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下である。このような重量平均分子量を有する結晶性重合体は、成形加工性と耐熱性とのバランスに優れる。
【0033】
結晶性重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.5以上であり、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.5以下である。ここで、Mnは数平均分子量を表す。このような分子量分布を有する結晶性重合体は、成形加工性に優れる。
【0034】
重合体の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、テトラヒドロフランを展開溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算値として測定しうる。
【0035】
光学フィルムに含まれる結晶性重合体の結晶化度は、特段の制限はないが、通常は、ある程度以上高い。具体的な結晶化度の範囲は、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上、特に好ましくは30%以上である。
結晶性重合体の結晶化度は、X線回折法によって測定しうる。
【0036】
結晶性重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0037】
結晶性樹脂(a)における結晶性重合体の割合は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。結晶性重合体の割合が前記下限値以上である場合、得られる光学フィルムの複屈折の発現性及び耐熱性を高めることができる。結晶性重合体の割合の上限は、100重量%以下でありうる。
【0038】
結晶性樹脂(a)は、結晶性重合体に加えて、任意の成分を含みうる。任意の成分としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等の酸化防止剤;ヒンダードアミン系光安定剤等の光安定剤;石油系ワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリアルキレンワックス等のワックス;ソルビトール系化合物、有機リン酸の金属塩、有機カルボン酸の金属塩、カオリン及びタルク等の核剤;ジアミノスチルベン誘導体、クマリン誘導体、アゾール系誘導体(例えば、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、及びベンゾチアソール誘導体)、カルバゾール誘導体、ピリジン誘導体、ナフタル酸誘導体、及びイミダゾロン誘導体等の蛍光増白剤;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤;タルク、シリカ、炭酸カルシウム、ガラス繊維等の無機充填材;着色剤;難燃剤;難燃助剤;帯電防止剤;可塑剤;近赤外線吸収剤;滑剤;フィラー;及び、軟質重合体等の、結晶性重合体以外の任意の重合体;などが挙げられる。任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0039】
〔樹脂(a)に含まれる有機溶媒〕
本発明の光学フィルムを構成する樹脂(a)は、有機溶媒を含みうる。この有機溶媒は、通常、本発明の製造方法の工程(II)においてフィルム中に取り込まれたものである。
【0040】
工程(II)においてフィルム中に取り込まれた有機溶媒の全部または一部は、重合体の内部に入り込みうる。したがって、有機溶媒の沸点以上で乾燥を行ったとしても、容易には溶媒を完全に除去することは難しい。よって、本発明の光学フィルムは、有機溶媒を含むことが通常である。
【0041】
有機溶媒としては、結晶性重合体を溶解しないものとしうる。好ましい有機溶媒としては、例えば、トルエン、リモネン、デカリン等の炭化水素溶媒;二硫化炭素;が挙げられる。有機溶媒の種類は、1種類でもよく、2種類以上でもよい。
【0042】
本発明の光学フィルム100重量%に対する、その中に含まれる有機溶媒の比率(溶媒含有率)は、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、特に好ましくは0.1重量%以下である。溶媒含有率の下限は特に限定されないが、0.001重量%以上、又は0.01重量%以上としうる。フィルム中の溶媒の含有量は、熱質量分析によって測定しうる。
【0043】
〔樹脂(aB)〕
樹脂(aB)は、結晶性重合体及び紫外線吸収剤を含む。樹脂(aB)は、上に述べた樹脂(a)と、紫外線吸収剤との混合物としうる。
【0044】
紫外線吸収剤の例としては、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、アクリロニトリル系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ナフタルイミド系紫外線吸収剤、及びフタロシアニン系紫外線吸収剤等の有機紫外線吸収剤が挙げられる。中でも、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及びトリアジン系紫外線吸収剤が好ましく、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤がより好ましい。
【0045】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の例としては、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]、2-(3,5-ジ-tert-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-p-クレゾール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-ベンゾトリアゾール-2-イル-4,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2-[5-クロロ(2H)-ベンゾトリアゾール-2-イル]-4-メチル-6-(tert-ブチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチル-6-(3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミジルメチル)フェノール、メチル3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート/ポリエチレングリコール300の反応生成物、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(直鎖および側鎖ドデシル)-4-メチルフェノール等が挙げられる。このようなトリアゾール系紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、ADEKA社製「アデカスタブLA-31」などが挙げられる。
【0046】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2-(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシフェニル)-4,6-ジフェニル-s-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-プロポキシ-5-メチルフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-s-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシフェニル)-4,6-ジビフェニル-s-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-s-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-エトキシフェニル)-s-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-プロポキシフェニル)-s-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-s-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-オクトキシフェニル)-6-(2,4-ジメチルフェニル)-s-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシ-3-メチルフェニル)-s-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-オクトキシフェニル)-s-トリアジン、2-(4-イソオクチルオキシカルボニルエトキシフェニル)-4,6-ジフェニル-s-トリアジン、2-(4,6-ジフェニル-s-トリアジン-2-イル)-5-(2-(2-エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ)フェノール等が挙げられる。このようなトリアジン系紫外線吸収剤の市販品としては、例えばADEKA社製「アデカスタブLA-F70」などが挙げられる。
【0047】
紫外線吸収剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0048】
樹脂(a)と紫外線吸収剤とを混合物して樹脂(aB)を得る場合、これらの混合の比率は、所望の光学的特性が得られるよう適宜調整しうる。具体的には、これらの合計100重量%に占める紫外線吸収剤の割合は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは3重量%以上、更に好ましくは5重量%以上、特に好ましくは7重量%以上であり、好ましくは20重量%以下、より好ましくは18重量%以下、特に好ましくは15重量%以下である。紫外線吸収剤として2種類以上のものを用いる場合には、それらの合計量を当該範囲としうる。
【0049】
本発明の光学フィルム全体に占める紫外線吸収剤の割合は、所望の光学的特性が得られるよう適宜調整しうる。具体的には、光学フィルム100重量%に占める紫外線吸収剤の割合は、好ましくは0.28重量%以上、より好ましくは0.84重量%以上、更に好ましくは1.4重量%以上、特に好ましくは1.97重量%以上であり、好ましくは5.6重量%以下、より好ましくは5.04重量%以下、特に好ましくは4.2重量%以下である。紫外線吸収剤として2種類以上のものを用いる場合には、それらの合計量を当該範囲としうる。
【0050】
〔光学フィルムの光学的特性〕
本発明の光学フィルムは、波長380nmにおける光線透過率が5%以下であり、好ましくは4%以下である。波長380nmにおける光線透過率の下限は特に限定されないが、理想的には0%である。かかる低い380nm光線透過率を有することにより、光学フィルムを表示装置の表示面を構成する部材として用いた場合、表示装置が外光の紫外線により劣化することを抑制することができる。
【0051】
一方、本発明の光学フィルムは、光学部材として用いる観点から、可視光領域における光線透過率が高いことが好ましい。具体的には、波長590nmにおける光線透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上であり、理想的には100%であるが、100%未満の値としうる。
【0052】
本発明の光学フィルムのNz係数は0より大きく、好ましくは0.2以上であり、一方1より小さく、好ましくは0.8以下である。このようなNz係数を有するフィルムは、三次元位相差フィルムと呼ばれる。三次元位相差フィルムは、液晶表示装置等の表示装置に設けられた場合、傾斜方向から見た表示面の色付きを低減するといった効果を発現することができる。本発明の光学フィルムは、結晶性樹脂(a)の層を備えることにより、後述する本発明の製造方法により容易に製造することが可能である。
【0053】
本発明の光学フィルムの面内レターデーションReの値は、光学フィルムの用途に適合した値に調整しうる。ある例においては、波長590nmにおける面内レターデーションRe(590)の好ましい範囲は137.5nm又はそれに近い値、具体的には好ましくは127.5~147.5nm、より好ましくは130.5~144.5nmの範囲としうる。Re(590)の値を当該範囲内とすることにより、光学フィルムをλ/4波長板として用いうる。別のある例においては、Re(590)の好ましい範囲は275nm又はそれに近い値、具体的には好ましくは265~285nm、より好ましくは268~282nmの範囲としうる。Re(590)の値を当該範囲内とすることにより、光学フィルムをλ/2波長板として用いうる。
【0054】
一般に表示装置等の装置に用いる光学フィルムは、光学的特性を発現するためにある程度以上の厚みを必要とする一方、装置の薄型化の要請から、薄いことが求められる。本発明の光学フィルムの厚みは、特に限定されないが、本発明の要件を満たすことにより、厚みが薄くても所望の光学的特性を満たすフィルムとすることが可能である。具体的には、本発明の光学フィルムの厚みは、好ましくは150μm以下、さらに好ましくは120μm以下、さらにより好ましくは100μm以下としうる。このような薄い厚みを有する光学フィルムは、本発明の製造方法により容易に製造しうる。光学フィルムの厚みの下限は、特に限定されないが例えば20μm以上としうる。
【0055】
本発明の光学フィルムが上に述べたA層及びB層を備える場合、これらのそれぞれの厚みは、所望の光学的特性が得られるよう適宜調整しうる。A層の厚みは、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上であり、一方好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下である。B層の厚みは、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上であり、一方好ましくは120μm以下、より好ましくは100μm以下である。光学フィルムがA層を複数備える場合は、それらの合計の厚みを、上記好ましい範囲に調整しうる。同様に、光学フィルムがB層を複数備える場合は、それらの合計の厚みを、上記好ましい範囲に調整しうる。
【0056】
〔光学フィルムの製造方法〕
本発明の光学フィルムは、下記工程(I)~(II)を含む製造方法により製造しうる。以下において、かかる製造方法を、本発明の光学フィルムの製造方法として説明する。本発明の光学フィルムの製造方法は、工程(I)~(II)に加えて、さらに下記工程(III)をも含みうる。
【0057】
工程(I):樹脂(a)の層を備え、且つ紫外線吸収剤を含むフィルム(I)を得る工程。
工程(II):フィルム(I)の一方又は両方の表面を溶媒に接触させ、フィルム(I)の厚み方向の屈折率を変化させてフィルム(II)を得る工程。
工程(III):フィルム(II)を延伸しフィルム(III)とする工程。
【0058】
〔工程(I)〕
工程(I)は、既知の各種の製膜方法により行いうる。特に、押出製膜により行うことが、製造効率の観点から好ましい。光学フィルムとして(A層)/(B層)/(A層)の層構成を有するものを製造する場合、工程(I)では、フィルム(I)として、これらに対応する材料の層を含む複層のフィルムを調製する。具体的には、フィルム(I)として、(pA層)/(pB層)/(pA層)の層構成を有し、pA層が結晶性重合体を含む樹脂(a)の層であり、pB層が結晶性重合体及び紫外線吸収剤を含む樹脂(aB)の層であるフィルムを調製する。フィルム(I)としてかかる層構成のフィルムを調製することにより、(A層)/(B層)/(A層)の層構成を有する光学フィルムを容易に製造することができる。また、A層とB層との密着性が良好な光学フィルムを容易に製造することができる。
【0059】
〔工程(II)〕
工程(II)では、フィルム(I)の一方又は両方の表面を溶媒に接触させる。溶媒としては、結晶性樹脂(a)を溶解させずに当該樹脂中に浸入できる溶媒を適宜選択しうる。溶媒としては、通常は有機溶媒が用いられる。有機溶媒の例としては、トルエン、リモネン、デカリン等の炭化水素溶媒;及び二硫化炭素が挙げられる。溶媒の種類は、1種類でもよく、2種類以上でもよい。
【0060】
工程(II)における接触は、任意の操作により達成しうる。接触の操作の例としては、フィルム(I)の表面に溶媒をスプレーするスプレー法;フィルム(I)の表面に溶媒を塗布する塗布法;及びフィルム(I)を溶媒中に浸漬する浸漬法が挙げられる。連続的な接触を容易に行える観点からは、浸漬法が好ましい。
【0061】
工程(II)の接触時における溶媒の温度は、溶媒が液体状態を維持できる範囲で任意であり、よって、溶媒の融点以上沸点以下の範囲に設定しうる。
【0062】
フィルム(I)と溶媒とを浸漬により接触させる場合、接触時間は、好ましくは0.5秒以上、より好ましくは1.0秒以上、特に好ましくは5.0秒以上であり、好ましくは120秒以下、より好ましくは80秒以下、特に好ましくは60秒以下である。接触時間が前記下限値以上である場合、溶媒との接触によるフィルム(I)のNz係数の調整を効果的に行うことができる。他方、接触時間を長くしてもNz係数の調整量は大きく変わらない傾向がある。よって、接触時間が前記上限値以下である場合、フィルムの品質を損なわずに生産性を高めることができる。
【0063】
工程(II)での溶媒との接触の結果、フィルム(I)の屈折率が変化し、フィルム(II)となる。このような、溶媒との接触によりもたらされる変化は、光学フィルム用樹脂を単に延伸するといった、通常の位相差フィルムの製造方法では得ることが困難なものである。したがって、かかる変化の結果、本発明の光学フィルムの容易な製造が可能となる。
【0064】
工程(II)の結果得られるフィルム(II)は、Nz係数が0より大きく1未満となった場合は、そのまま製品たる本発明の光学フィルムとしうる。しかしながら多くの場合、フィルム(II)は、Nz係数が0未満となり得る。その場合、工程(III)を行うことにより、本発明の光学フィルムを容易に製造することができる。
【0065】
〔工程(III)〕
工程(III)では、工程(II)で得られたフィルム(II)を延伸する。フィルム(II)の延伸により、フィルム(II)のNz係数を変化させ、容易に0より大きい所望の値に調整しうる。フィルム(II)は、工程(II)を経ているため、工程(III)の結果、光学フィルム用樹脂を単に延伸するといった通常の位相差フィルムの製造方法では得ることが困難な光学特性を備えるフィルム(III)を容易に得ることができる。
【0066】
工程(III)における延伸は、単純な一軸延伸としうる。かかる単純な一軸延伸によってもNz係数の調整を容易に行いうる。工程(III)における延伸方向に制限はなく、例えば、長手方向、幅方向、斜め方向などが挙げられる。ここで、斜め方向とは、厚み方向に対して垂直な方向であって、幅方向とがなす角が0°でも無く90°でも無い方向(即ち幅方向とがなす角が0°超90°未満である方向)を表す。
【0067】
工程(II)を伴わない製造方法により本発明の光学フィルムと同等の光学特性を有するフィルムを製造しようとする場合、通常は複数回の複雑な延伸工程、及びフィルムを構成する材料に固有複屈折値が負の材料を配合する等の手段が必要になる。これらの実施は、製造効率の観点からの不利益が大きい。これに対して、本発明の製造方法では、比較的容易な工程により本発明の光学フィルムを得ることができるので、製造効率の観点から有利である。
【0068】
延伸倍率は、好ましくは1.1倍以上、より好ましくは1.2倍以上であり、好ましくは20.0倍以下、より好ましくは10.0倍以下、更に好ましくは5.0倍以下、更により好ましくは2.0倍以下、特に好ましくは1.9倍以下である。具体的な延伸倍率は、製品たる光学フィルムの光学特性、厚み、強度などの要素に応じて適切に設定することが望ましい。延伸倍率が前記下限値以上である場合、延伸によって複屈折を大きく変化させることができる。また、延伸倍率が前記上限値以下である場合、遅相軸の方向を容易に制御したり、フィルムの破断を効果的に抑制したりできる。
【0069】
延伸温度は、好ましくは「Tg+5℃」以上、より好ましくは「Tg+10℃」以上であり、好ましくは「Tg+100℃」以下、より好ましくは「Tg+90℃」以下である。ここで、「Tg」は結晶性重合体のガラス転移温度を表す。延伸温度が前記下限値以上である場合、フィルムを十分に軟化させて延伸を均一に行うことができる。また、延伸温度が前記上限値以下である場合、結晶性重合体の結晶化の進行によるフィルムの硬化を抑制できるので、延伸を円滑に行うことができ、また、延伸によって大きな複屈折を発現させることができる。さらに、通常は、得られる光学フィルムのヘイズを小さくして透明性を高めることができる。
【0070】
工程(III)により複屈折が変化しうるので、Nz係数の調整を行うことができる。よって、工程(III)による延伸によって所望の光学特性を有するフィルムとしてのフィルム(III)が得られる。得られたフィルム(III)は、そのまま本発明の光学フィルムとして利用することができる。または、フィルム(III)にさらに任意の処理を行い、本発明の光学フィルムとすることもできる。任意の工程の例としては、延伸された寸法を維持した状態での熱処理又は延伸された寸法を縮めての緩和処理等の処理による複屈折の調整が挙げられる。
【0071】
〔その他の工程〕
本発明の光学フィルムの製造方法は、上述した工程に組み合わせて、更に任意の工程を含みうる。例えば、工程(II)の後で、フィルム(II)に付着した溶媒を除去する工程を含みうる。溶媒の除去方法としては、例えば、乾燥、ふき取り等が挙げられる。
【0072】
工程(I)においてフィルム(I)を長尺のフィルムとして調製し、工程(II)及び工程(III)を長尺の状態のまま製造ラインにおいて行った場合は、光学フィルムとして長尺のフィルムを得うる。長尺の光学フィルムは、必要に応じてロール状に巻き取り、フィルムロールとしうる。また、必要に応じて、所望の形状に裁断しうる。
【0073】
〔光学フィルムの用途:複合光学フィルム〕
本発明の光学フィルムは、必要に応じて矩形などの所望の形状に加工した上で、表示装置等の光学装置の構成要素として使用しうる。本発明の光学フィルムを表示装置の構成要素として用いた場合、表示装置に表示される画像の視野角、コントラスト、画質等の表示品質を改善することができる。また、本発明の光学フィルムは、他の層とさらに貼合する等して組み合わせ、複合光学フィルムを構成しうる。
【0074】
ある例において、複合光学フィルムは、前記本発明の光学フィルムと、偏光子層とを備える。偏光子層は、一般的な、ポリビニルアルコールを主成分とするもの等の直線偏光子の層としうる。この場合、光学フィルムの遅相軸と、偏光子層の透過軸とを、45°又はそれに近い角度をなすことが好ましい。具体的には、42°~48°の角度をなすことが好ましい。かかる角度関係を有することにより、光学フィルムと偏光子層とが、表示装置表示面における外光の反射を抑制する反射防止フィルムとしての機能を発現することができる。このような複合光学フィルムは、本発明の光学フィルムと偏光子層とを、必要に応じ適切な粘着層を介して、貼合することにより製造しうる。
【0075】
別のある例において、複合光学フィルムは、前記本発明の光学フィルムと、導電層とを備える。導電層としては、ITO等の金属の箔膜、ナノワイヤ等の層を採用しうる。このような導電層を備えた複合光学フィルムは、例えばタッチパネルの構成要素として有用に用いうる。このような複合光学フィルムは、本発明の光学フィルムの表面上に、導電層を、スパッタリング等の既知の形成方法にて形成することにより製造しうる。
【実施例
【0076】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り、重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温及び常圧の条件において行った。
【0077】
〔評価方法〕
(重合体の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの測定方法)
重合体の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnは、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)システム(東ソー社製「HLC-8320」)を用いて、ポリスチレン換算値として測定した。測定の際、カラムとしてはHタイプカラム(東ソー社製)を用い、溶媒としてはテトラヒドロフランを用いた。また、測定時の温度は、40℃であった。
【0078】
(重合体の水素化率の測定方法)
重合体の水素化率は、オルトジクロロベンゼン-dを溶媒として、145℃で、H-NMR測定により測定した。
【0079】
(ガラス転移温度Tg及び融点Tmの測定方法)
重合体のガラス転移温度Tg及び融点Tmの測定は、以下のようにして行った。まず、重合体を、加熱によって融解させ、融解した重合体をドライアイスで急冷した。続いて、この重合体を試験体として用いて、示差走査熱量計(DSC)を用いて、10℃/分の昇温速度(昇温モード)で、重合体のガラス転移温度Tg及び融点Tmを測定した。
【0080】
(重合体のラセモ・ダイアッドの割合の測定方法)
重合体のラセモ・ダイアッドの割合の測定は以下のようにして行った。オルトジクロロベンゼン-dを溶媒として、200℃で、inverse-gated decoupling法を適用して、重合体の13C-NMR測定を行った。この13C-NMR測定の結果において、オルトジクロロベンゼン-dの127.5ppmのピークを基準シフトとして、メソ・ダイアッド由来の43.35ppmのシグナルと、ラセモ・ダイアッド由来の43.43ppmのシグナルとを同定した。これらのシグナルの強度比に基づいて、重合体のラセモ・ダイアッドの割合を求めた。
【0081】
(厚みの測定)
フィルムの厚みは、接触式厚さ計(MITUTOYO社製 Code No. 543-390)を用いて測定した。複数の層からなるフィルム中の各層の厚みは、フィルムの断面を顕微鏡観察し厚みの比率を求め、当該比率及びフィルム全体の厚みから計算した。
【0082】
(屈折率)
フィルムの屈折率は、位相差計(AXOMETRICS社製「AxoScan OPMF-1」)を用いて測定した。測定波長は590nmとした。
【0083】
(結晶化度の測定)
フィルム(III)の結晶化度は、JIS K0131に準じて、X線回折により確認した。具体的には、広角X線回折装置(リガク社製「RINT 2000」)を用いて、結晶化部分からの回析X線強度を求め、全体の回析X線強度との比から、下記式(i)によって結晶化度を求めた。
Xc=K・Ic/It 式(i)
上記式(i)において、Xcは被検試料の結晶化度、Icは結晶化部分からの回析X線強度、Itは全体の回析X線強度、Kは補正項を、それぞれ表す。
【0084】
(380nm及び590nmの光線透過率)
波長380nm~780nmにおける積層体の光線透過率を、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光社製「V-7200」)を用いて測定した。測定の際のデータ取り込み間隔は、1nmとした。得られたスペクトルから、波長380nm及び590nmにおける光線透過率を読み取った。
【0085】
(円偏光板の劣化抑制:面内レターデーション比の最大変化率)
実施例及び比較例で得られたフィルム(III)を、円偏光子(コレステリック液晶組成物の硬化物からなる層)に、ポリビニルアルコール系感圧性接着剤を用いて貼り合わせて円偏光板を得て、円偏光板の面内レターデーション比(Re(450)/Re(550))を測定した。ここで、Re(450)は、測定波長450nmにおける面内レターデーション(nm)であり、Re(550)は、測定波長550nmにおける面内レターデーション(nm)である。面内レターデーションの測定は、Axometrics社製「AxoScan」を用いて行った。
【0086】
フィルム(III)の側から光が入射するように、分光老化試験機(スガ試験機株式会社製「SPX」)に円偏光板を設置した。円偏光板について、40℃、100Wの光を24時間照射する、分光老化試験を実施した。分光老化試験では、照射する光を、2nm間隔に分光し、また、照射する光の波長範囲を、250nm~420nmとした。これら分光された各波長の光が、それぞれ円偏光板の異なる場所に照射されるようにした。
【0087】
分光老化試験後の円偏光板について、照射された各波長の光に対応する、面内レターデーション比(Re(450)/Re(550))を測定した。測定は、分光老化試験前と同様に、Axometrics社製「AxoScan」を用いて行った。
分光老化試験前における円偏光板の面内レターデーション比を100%とし、分光老化試験後における円偏光板の面内レターデーション比をX%として、分光老化試験前後の円偏光板のRe(450)/Re(550)の変化率を測定した。変化率の絶対値は、|X-100|(%)で与えられる。照射された各波長の光に対応する変化率の絶対値を求め、照射された波長250nm~420nmの範囲において得られた変化率の絶対値のうち最大の値を、円偏光板についての最大変化率とした。最大変化率が小さいほど、円偏光板の劣化が抑制されている。
最大変化率から、下記の基準により、円偏光板の劣化抑制を評価した。
A:最大変化率が10%未満である。
B:最大変化率が、10%以上である。
【0088】
〔製造例1:結晶性樹脂(a)〕
金属製の耐圧反応器を、充分に乾燥した後、窒素置換した。この金属製耐圧反応器に、シクロヘキサン154.5部、ジシクロペンタジエン(エンド体含有率99%以上)の濃度70%シクロヘキサン溶液42.8部(ジシクロペンタジエンの量として30部)、及び1-ヘキセン1.9部を入れ、53℃に加温した。
【0089】
テトラクロロタングステンフェニルイミド(テトラヒドロフラン)錯体0.014部を0.70部のトルエンに溶解し、溶液を調製した。この溶液に、濃度19%のジエチルアルミニウムエトキシド/n-ヘキサン溶液0.061部を加えて10分間攪拌して、触媒溶液を調製した。この触媒溶液を耐圧反応器内の混合物に加えて、開環重合反応を開始した。その後、53℃を保ちながら4時間反応させて、ジシクロペンタジエンの開環重合体の溶液を得た。得られたジシクロペンタジエンの開環重合体の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、それぞれ、8,750および28,100であり、これらから求められる分子量分布(Mw/Mn)は3.21であった。
【0090】
得られたジシクロペンタジエンの開環重合体の溶液200部に、停止剤として1,2-エタンジオール0.037部を加えて、60℃に加温し、1時間攪拌して重合反応を停止させた。ここに、ハイドロタルサイト様化合物(協和化学工業社製「キョーワード(登録商標)2000」)を1部加えて、60℃に加温し、1時間攪拌した。その後、濾過助剤(昭和化学工業社製「ラヂオライト(登録商標)#1500」)を0.4部加え、PPプリーツカートリッジフィルター(ADVANTEC東洋社製「TCP-HX」)を用いて吸着剤と溶液を濾別した。
【0091】
濾過後のジシクロペンタジエンの開環重合体の溶液200部(重合体量30部)に、シクロヘキサン100部を加え、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.0043部を添加して、水素圧6MPa、180℃で4時間水素化反応を行なった。これにより、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物を含む反応液が得られた。この反応液は、水素化物が析出してスラリー溶液となっていた。
【0092】
前記の反応液に含まれる水素化物と溶液とを、遠心分離器を用いて分離し、60℃で24時間減圧乾燥して、結晶性を有するジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物28.5部を得た。この水素化物の水素化率は99%以上、ガラス転移温度Tgは93℃、融点(Tm)は262℃、ラセモ・ダイアッドの割合は89%であった。
【0093】
得られたジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物100部に、酸化防止剤(テトラキス〔メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン;BASFジャパン社製「イルガノックス(登録商標)1010」)1.1部を混合後、内径3mmΦのダイ穴を4つ備えた二軸押出し機(製品名「TEM-37B」、東芝機械社製)に投入した。ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物及び酸化防止剤の混合物を、熱溶融押出し成形によりストランド状に成形した後、ストランドカッターにて細断して、結晶性樹脂(a)のペレットを得た。前記の二軸押出し機の運転条件は、以下の通りであった。
・バレル設定温度=270~280℃
・ダイ設定温度=250℃
・スクリュー回転数=145rpm
【0094】
〔製造例2:非晶性の樹脂(H2)の製造〕
(第1段階の反応:ブロックA1の伸長)
十分に乾燥し窒素置換した、攪拌装置を備えたステンレス鋼製反応器に、脱水シクロヘキサン320部、スチレン55部、及びジブチルエーテル0.38部を仕込み、60℃で攪拌しながらn-ブチルリチウム溶液(15重量%含有ヘキサン溶液)0.41部を添加して重合反応を開始させ、第1段階の重合反応を行った。反応開始後1時間の時点で、反応混合物から、試料をサンプリングし、ガスクロマトグラフィー(GC)により分析した結果、重合転化率は99.5%であった。
【0095】
(第2段階の反応:ブロックBの伸長)
第1段階の反応で得られた反応混合物に、スチレン20部及びイソプレン20部からなる混合モノマー40部を添加し、引き続き第2段階の重合反応を開始した。第2段階の重合反応開始後1時間の時点で、反応混合物から、試料をサンプリングし、GCにより分析した結果、重合転化率は99.5%であった。
【0096】
(第3段階の反応:ブロックA2の伸長)
第2段階の反応で得られた反応混合物に、スチレン5部を添加し、引き続き第3段階の重合反応を開始した。第3段階の重合反応開始後1時間の時点で、反応混合物から、試料をサンプリングし、重合体の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnを測定した。またこの時点でサンプリングした試料をGCにより分析した結果、重合転化率はほぼ100%であった。その後直ちに、反応混合物にイソプロピルアルコール0.2部を添加して反応を停止させた。これにより、A1-B-A2のトリブロック分子構造を有する重合体を含む混合物を得た。
【0097】
第1段階の反応及び第2段階での反応では、重合反応を十分に進行させたことから、重合転化率は略100%であり、したがってブロックBにおけるSt/Ipの重量比は20/20であると考えられる。これらの値から、得られた重合体は、St-(St/Ip)-St=55-(20/20)-5のトリブロック分子構造を有する重合体であることが分かった。重合体の重量平均分子量(Mw)は105,500、分子量分布(Mw/Mn)は1.04であった。
【0098】
次に、上記の重合体を含む混合物を、攪拌装置を備えた耐圧反応器に移送し、水素化触媒として珪藻土担持型ニッケル触媒(日揮触媒化成社製「E22U」、ニッケル担持量60%)8.0部及び脱水シクロヘキサン100部を添加して、混合した。反応器内部を水素ガスで置換し、さらに溶液を攪拌しながら水素を供給し、温度190℃、圧力4.5MPaにて6時間、水素化反応を行った。水素化反応により得られた反応溶液に含まれる重合体の水素化物の重量平均分子量(Mw)は111,800、分子量分布(Mw/Mn)は1.05であった。
【0099】
水素化反応の終了後、反応溶液をろ過して水素化触媒を除去した後、フェノール系酸化防止剤であるペンタエリスリチル・テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](松原産業社製「Songnox1010」)0.1部を溶解したキシレン溶液2.0部を添加して、溶解させた。
【0100】
次いで、上記溶液を、円筒型濃縮乾燥器(日立製作所社製「コントロ」)を用いて、温度260℃、圧力0.001MPa以下で乾燥させて、溶液から、溶媒であるシクロヘキサン、キシレン及びその他の揮発成分を除去した。乾燥後に得られた溶融ポリマーを、ダイからストランド状に押出し、冷却後、ペレタイザーにより成形して、非晶性の水素化重合体(X)を含む非晶性の樹脂(H2)のペレット95部を作製した。
得られた非晶性の重合体(X)のガラス転移温度Tgは130℃、重量平均分子量(Mw)は110,300、分子量分布(Mw/Mn)は1.10、水素化率はほぼ100%であった。
【0101】
〔製造例3:樹脂(aB)〕
製造例1で得られた結晶性樹脂(a)91.0部と、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(ADEKA社製「LA-31」)9.0部とを、二軸押出機により混合して、混合物を得た。次いで、その混合物を、押出機に接続されたホッパーへ投入し、単軸押出機へ供給して溶融押出し、ペレットの形状に成形して、樹脂(aB)のペレットを用意した。
【0102】
〔実施例1〕
(1-1.工程(I))
2種3層の共押出製膜を行えるマルチマニホールドダイ、マルチマニホールドダイに連結された2つの押出機、及びそれぞれの押出機に備え付けられたホッパーを含む製膜装置を用意した。
【0103】
製造例1で得た結晶性樹脂(a)のペレットを、一方のホッパーへ投入し、押出機からマルチマニホールドダイに供給した。
【0104】
他方、製造例3で得た樹脂(aB)のペレットを、別のホッパーへ投入し、押出機からマルチマニホールドダイに供給した。
【0105】
次いで、マルチマニホールドダイから樹脂(a)及び(aB)をフィルム状に吐出させ、冷却ロールにキャストした。この共押出法によって、樹脂(a)からなるpA層及び樹脂(aB)からなるpB層を備え、(pA層)/(pB層)/(pA層)の層構成を有する、長尺のフィルム(I)を得た。フィルム(I)の主屈折率nx(I)、ny(I)及びnz(I)を測定した。また、得られたフィルム(I)におけるpA層及びpB層の厚みを測定した。
【0106】
(1-2.工程(II))
(1-1)で得られたフィルム(I)を、5m/minの速度で搬送し、トルエンで満たした浸漬槽内を通過させ、それにより、フィルム(I)をトルエンに5秒間接触させた。その後、フィルムを110℃のオーブン中を通過させ60秒間乾燥した。かかる工程により、フィルム(I)の厚み方向の屈折率を変化させて、長尺のフィルム(II)を得た。フィルム(II)の主屈折率nx(II)、ny(II)及びnz(II)を測定した。
【0107】
(1-3.工程(III))
長尺のフィルムの幅方向の両端を把持しうる多数のクリップを備える一対のクリップチェーン、及び前記クリップチェーンを案内しうる一対のガイドレールを備えたテンター装置を用意した。
【0108】
(1-2)で得られたフィルム(II)を、テンター装置に供給し、延伸した。ガイドレールによりクリップチェーンの軌道を設定し、それにより長手方向の延伸倍率が1.0倍(即ち、長手方向の長さの変化なし)、幅方向の延伸倍率が1.8倍となる延伸を行った。延伸温度は130℃とした。かかる延伸により、光学フィルム製品としての、延伸されたフィルム(III)を得た。
【0109】
得られた光学フィルム(フィルム(III))の結晶化度、380nm光線透過率、590nm光線透過率及び偏光板劣化抑制能力を評価した。また、フィルム(III)の主屈折率nx(III)、ny(III)及びnz(III)を測定し、フィルム(III)のNZ係数Nz(III)を求めた。
【0110】
〔実施例2〕
(1-3.工程(III))における幅方向の延伸倍率を2倍に変更した他は、実施例1と同じ操作により、光学フィルムを得て評価した。
【0111】
〔実施例3〕
(1-3.工程(III))における幅方向の延伸倍率を1.7倍に変更した他は、実施例1と同じ操作により、光学フィルムを得て評価した。
【0112】
〔比較例1〕
(1-1.工程(I))において、製造例1で得た結晶性樹脂(a)に代えて、製造例2で得た樹脂(H2)のペレットを用いた(したがって、樹脂(H2)及び樹脂(aB)を共押出した)他は、実施例1と同じ操作により、光学フィルムを得て評価した。
【0113】
〔比較例2〕
(C2-1.単層フィルム)
製造例1で得た結晶性(a)を単層で押出製膜し、厚み39μmの単層フィルム(I’)を得た。
【0114】
(C2-2.光学フィルム)
(1-1.工程(I))で得られたフィルム(I)に代えて、上記単層フィルム(I’)を用いた他は、実施例1の(1-2.工程(II))以降と同じ操作により、光学フィルムを得て評価した。
【0115】
〔比較例3〕
下記の変更点の他は、実施例1の(1-2.工程(II))以降と同じ操作により、光学フィルムを得て評価した。
・(1-1.工程(I))で得られたフィルム(I)に代えて、上記単層フィルム(I’)を用いた。
・(1-3.工程(III))における幅方向の延伸倍率を1.7倍に変更した。
【0116】
実施例及び比較例の概要及び結果を、表1に示す。
【0117】
【表1】
【0118】
実施例及び比較例の結果から明らかな通り、本発明の製造方法により、三次元位相差フィルムとして良好な効果を発現することができ、表示装置の劣化を抑制する効果を発現することができる本発明の光学フィルムを、容易に製造することができる。