(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】ドライアイスブラスト装置
(51)【国際特許分類】
B24C 1/00 20060101AFI20241008BHJP
B24C 5/02 20060101ALI20241008BHJP
B24C 7/00 20060101ALI20241008BHJP
B24C 11/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B24C1/00 A
B24C5/02 A
B24C7/00 E
B24C11/00 E
(21)【出願番号】P 2021053367
(22)【出願日】2021-03-26
【審査請求日】2023-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐川 英之
(72)【発明者】
【氏名】楯 尚史
(72)【発明者】
【氏名】杉山 剛博
(72)【発明者】
【氏名】南畝 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】末永 和史
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲金▼偉龍
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-028096(JP,A)
【文献】特開2003-185560(JP,A)
【文献】特開平04-057671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24C 1/00
B24C 5/02
B24C 7/00
B24C 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライアイス粒が噴射されるノズルと、
ドライアイスペレットを粉砕して前記ドライアイス粒を生成する粉砕部と、
前記ドライアイスペレットを前記粉砕部に搬送する搬送部と、を有し、
前記搬送部は、前記ドライアイスペレットが載せられるトレイと、前記トレイを振動させる駆動源としての電磁石と、を含み、前記トレイ上の前記ドライアイスペレットを振動させながら前記粉砕部に搬送
し、
前記ドライアイスペレットと接する前記トレイの表面に、前記ドライアイスペレットよりも小さい凸部と凹部との少なくとも何れか一方が複数個形成されている、
ドライアイスブラスト装置。
【請求項2】
前記トレイが樹脂製、セラミクス製又は木製である、請求項1に記載のドライアイスブラスト装置。
【請求項3】
前記ノズルから噴射される前記ドライアイス粒の量の変化を検知する検知部をさらに有し、
前記搬送部は、前記検知部の検知結果に基づいて前記ドライアイスペレットの搬送量を制御する、
請求項1又は2に記載のドライアイスブラスト装置。
【請求項4】
前記搬送部は、前記検知部の検知結果に基づいて前記電磁石の通電状態を変更して前記トレイの振動状態を変更する制御部を備える、請求項
3に記載のドライアイスブラスト装置。
【請求項5】
ドライアイス粒が噴射されるノズルと、
ドライアイスペレットを粉砕して前記ドライアイス粒を生成する粉砕部と、
前記ドライアイスペレットが載せられるトレイと、前記トレイを振動させる駆動源としての電磁石と、を含み、前記トレイ上の前記ドライアイスペレットを振動させながら前記粉砕部に搬送する搬送部と、
前記ノズルから噴射される前記ドライアイス粒の量の変化を検知する検知部と、を有し、
前記搬送部は、前記検知部の検知結果に基づいて前記電磁石の通電状態を変更して前記トレイの振動状態を変更し、前記ドライアイスペレットの搬送量を制御する、
ドライアイスブラスト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒状や粉状のドライアイスを噴射するドライアイスブラスト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粒状や粉状のドライアイス(以下、“ドライアイス粒”と総称する場合がある。)をノズルの先端から噴射するドライアイスブラスト装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
上記のようなドライアイスブラスト装置は、例えば、ワークの表面処理(ワーク表面の洗浄や粗化など)に用いられる。具体的には、ドライアイスブラスト装置のノズル先端から噴射されるドライアイス粒をシリコンウエハの表面に吹き付けることにより、シリコンウエハの表面に付着している粒子状物質や汚染物質などが除去される。また、ドライアイスブラスト装置のノズル先端から噴射されるドライアイス粒を電線の絶縁被覆の表面に吹き付けることにより、絶縁被覆の表面に微細な凹凸が形成される。
【0004】
ドライアイスブラスト装置は、ドライアイスの塊を粉砕してドライアイス粒を生成する粉砕手段を備えている。以下の説明では、粉砕手段によって粉砕される前のドライアイスの塊を“ドライアイスペレット”と呼んでドライアイス粒と区別する場合がある。ドライアイスブラスト装置は、ドライアイスペレットが供給されるホッパーと、ホッパーに供給されたドライアイスペレットを粉砕手段に搬送する搬送手段と、をさらに備えている。
【0005】
従来のドライアイスブラスト装置の1つでは、スクリューフィーダによって搬送手段が構成されている。搬送手段を構成するスクリューフィーダは、螺旋状の羽根が形成されたスクリューを備えている。スクリューフィーダは、ホッパーから送り出されるドライアイスペレットを回転するスクリューによって粉砕手段に搬送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
スクリューフィーダの搬送量は、スクリューに形成されている羽根のピッチやスクリューの回転速度などによって決定される。よって、ホッパーからスクリューフィーダに送り込まれるドライアイスペレットの量が一定であり、かつ、スクリューの回転速度も一定であれば、常に一定量のドライアイスペレットが粉砕手段に供給され続けるはずである。
【0008】
しかし、実際に粉砕手段に供給されるドライアイスペレットの量(ペレット供給量)は常に一定とはならない。例えば、1分毎のペレット供給量(総量)は一定であったとしても、0.5秒毎や1秒毎のペレット供給量は必ずしも一定ではない。要するに、スクリューフィーダによって粉砕手段に供給されるドライアイスペレットの量にはばらつきがある。そして、ペレット供給量のばらつきが大きくなると、ドライアイス粒の噴射が不安定になる。具体的には、ドライアイス粒の噴射量が増減したり、一時的に噴射が途絶えたりする。
【0009】
さらに、ドライアイス粒の噴射が不安定であると、ワークの表面処理が不均一になる虞がある。特に、ノズルやワークを素早く移動させながら表面処理を行う場合、処理ムラや未処理領域が発生する虞が高まる。
【0010】
本発明の目的は、ドライアイス粒が安定的に噴射されるドライアイスブラスト装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のドライアイスブラスト装置は、ドライアイス粒が噴射されるノズルと、ドライアイスペレットを粉砕して前記ドライアイス粒を生成する粉砕部と、前記ドライアイスペレットを前記粉砕部に搬送する搬送部と、を有する。前記搬送部は、前記ドライアイスペレットが載せられるトレイと、前記トレイを振動させる駆動源としての電磁石と、を含み、前記トレイ上の前記ドライアイスペレットを振動させながら前記粉砕部に搬送する。
【0012】
本発明の一態様では、前記トレイは、樹脂製、セラミクス製又は木製である。
【0013】
本発明の他の一態様では、前記ドライアイスペレットと接する前記トレイの表面に、前記ドライアイスペレットよりも小さい凸部と凹部との少なくとも何れか一方が複数個形成される。
【0014】
本発明の他の一態様では、前記ノズルから噴射される前記ドライアイス粒の量の変化を検知する検知部が設けられる。そして、前記搬送部は、前記検知部の検知結果に基づいて前記ドライアイスペレットの搬送量を制御する。
【0015】
本発明の他の一態様では、前記搬送部は、前記検知部の検知結果に基づいて前記電磁石の通電状態を変更して前記トレイの振動状態を変更する制御部を備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ドライアイス粒が安定的に噴射されるドライアイスブラスト装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一実施形態のドライアイスブラスト装置の構成を示す図である。
【
図2】
図1に示されている粉砕部の構成を示す図である。
【
図3】
図1に示されているトレイの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明のドライアイスブラスト装置の実施形態の一例について説明する。尚、同一又は実質的に同一の構成や要素には同一の符号を用い、原則として再度の説明は行わない。
【0019】
<全体構成>
図1に示されているドライアイスブラスト装置1Aは、装置本体10と、圧縮空気供給部20と、噴射部30と、を有する。装置本体10は、ドライアイス粒100bを噴射部30に供給し、圧縮空気供給部20は、圧縮空気を噴射部30に供給する。噴射部30は、装置本体10から供給されるドライアイス粒100bと圧縮空気供給部20から供給される圧縮空気とを一緒に噴射する。別の見方をすると、装置本体10から供給されるドライアイス粒100bは、圧縮空気供給部20から供給される圧縮空気に合流される。圧縮空気に合流されたドライアイス粒100bは、圧縮空気の圧力により、ワークWに向かって噴射される。つまり、本実施形態に係るドライアイスブラスト装置1Aは、サイフォン式である。
【0020】
<装置本体>
装置本体10は、ホッパー11,搬送部12,粉砕部13,中継パイプ14及びドライアイス供給チューブ15を有する。
【0021】
ホッパー11には、ドライアイスの塊であるドライアイスペレット100aが供給(投入)される。例えば、直径が3mm前後のドライアイスペレット100aがホッパー11に投入される。
【0022】
ホッパー11は、上面の大きさに比べて下面の大きさが小さい箱形形状を有し、全体としてすり鉢状の外観を呈している。また、ホッパー11の上面には上方開口部11aが設けられており、ホッパー11の下面には下方開口部11bが設けられている。ドライアイスペレット100aは、上方開口部11aからホッパー11の内部に投入される。ホッパー11内に投入されたドライアイスペレット100aは、下方開口部11bからホッパー11の外部に排出される。そこで、以下の説明では、上方開口部11aを“投入口11a”と呼び、下方開口部11bを“排出口11b”と呼ぶ場合がある。
【0023】
<搬送部>
搬送部12は、ホッパー11の排出口11bから排出されるドライアイスペレット100aを粉砕部13に搬送する。より特定的には、搬送部12は、電磁振動方式の搬送手段であり、ドライアイスペレット100aを振動させながら粉砕部13に定量搬送する。搬送部12の詳細については後に改めて説明する。
【0024】
<粉砕部>
粉砕部13は、搬送部12により搬送されたドライアイスペレット100aを粉砕し、所定の大きさのドライアイスの粒であるドライアイス粒100bを生成する。
【0025】
図2に示されるように、粉砕部13は、一対の粉砕ローラ13a,13bを備えている。粉砕ローラ13a,13bは、金属製のローラであって、回転軸に固定されている。また、粉砕ローラ13a,13bは、隙間を介して対向しており、かつ、互いに逆方向に回転駆動される。ドライアイスペレット100aは、粉砕ローラ13a,13bの間に落下し、回転する粉砕ローラ13a,13bによってすりつぶされる。よって、粉砕ローラ13aと粉砕ローラ13bとの間の隙間を変更することにより、粉砕部13において生成されるドライアイス粒100bの大きさ(粒径)を調節することができる。
【0026】
再び
図1を参照する。粉砕部13において生成されるドライアイス粒100bの粒径は、ワークWの種類やワークWに施す処理の内容などに応じて決定されたり、調節されたりする。例えば、ワークWの硬度が高い場合には、ドライアイス粒100bの粒径が大きくされる。また、ワークWの硬度が低い場合やワークWの表面を傷付けたくない場合には、ドライアイス粒100bが小さくされる。
【0027】
尚、粉砕部13において生成されたドライアイス粒100bの粒径は、噴射部30から噴射されるまでの間に縮小する可能性がある。例えば、粉砕部13から噴射部30に搬送される過程でドライアイス粒100bの一部が昇華し、ドライアイス粒100bが小さくなる可能性がある。そこで、粉砕部13において生成するドライアイス粒100bの粒径は、その後の縮小を見越して決定されることもある。
【0028】
<中継パイプ及びドライアイス供給チューブ>
図1に示されている中継パイプ14及びドライアイス供給チューブ15は、粉砕部13で生成されたドライアイス粒100bを噴射部30に供給するための流路(ドライアイス流路)を形成する。具体的には、中継パイプ14は、ドライアイス流路の一部を形成し、ドライアイス供給チューブ15は、ドライアイス流路の他の一部を形成する。
【0029】
中継パイプ14は、ドライアイス粒100bの粒径よりも大きな内径を有する樹脂製または金属製のパイプである。中継パイプ14の一端(基端)は、粉砕部13に接続され、中継パイプ14の他端(先端)は、ドライアイス供給チューブ15の一端(基端)に接続されている。
【0030】
ドライアイス供給チューブ15は、ゴム等の弾性材料によって形成されており、ドライアイス粒100bの粒径よりも大きな内径を有する。ドライアイス供給チューブ15は、ドライアイス粒100bによって冷却されても弾性や可撓性を損なわない弾性材料によって形成されている。また、ドライアイス供給チューブ15は、内圧が所定圧力を下回った場合にも変形しない硬さ(耐圧性能)を備えている。尚、ドライアイス供給チューブ15を形成する弾性材料の一例としては、ガラス転移点がドライアイスの昇華点(摂氏マイナス78.5度)以下の弾性材料が挙げられる。
【0031】
ドライアイス供給チューブ15の先端側は、ホッパー11,搬送部12,粉砕部13等が収容されている筐体10aを貫通して筐体10aの外に引き出され、噴射部30に接続されている。図示は省略されているが、筐体10aの側面には連通孔が設けられており、この連通孔を通じてドライアイス供給チューブ15が筐体10aの外に引き出されている。尚、ドライアイス供給チューブ15と連通孔との間に、隙間を塞ぐシール部材などを設けてもよい。
【0032】
<圧縮空気供給部>
圧縮空気供給部20は、コンプレッサ21と、コンプレッサ21と噴射部30とを繋ぐ空気供給チューブ22と、を備えている。コンプレッサ21によって生成された圧縮空気は、空気供給チューブ22を介して噴射部30に送られる。つまり、空気供給チューブ22は、コンプレッサ21で生成された圧縮空気を噴射部30に供給するための流路(空気流路)を形成する。そこで、空気供給チューブ22は、圧縮空気の圧力によって変形しない硬さ(耐圧性能)を備えている。
【0033】
尚、本実施形態のコンプレッサ21は、アネスト岩田社製のオイルフリースクロールコンプレッサ(Think Air SLP-75EFD)である。もっとも、コンプレッサ21は特定のコンプレッサに限定されるものではない。例えば、コンプレッサ21は、スクロール式を含む回転式(ロータリータイプ)ではなく、ピストン式やダイヤフラム式などの往復式(レシプロタイプ)であってもよい。
【0034】
<噴射部>
噴射部30は、合流部31およびノズル32を備える。噴射部30には、装置本体10及び圧縮空気供給部20が接続されている。より特定的には、ドライアイス供給チューブ15及び空気供給チューブ22が合流部31に接続されている。合流部31は、ドライアイス供給チューブ15を介して供給されるドライアイス粒100bと、空気供給チューブ22を介して供給される圧縮空気と、を合流させる。別の見方をすると、
図2に示されているドライアイス粒100bは、
図1に示されている合流部31において圧縮空気に合流される。
【0035】
ノズル32の一端は合流部31に接続されており、ノズル32の他端にはノズル開口32aが設けられている。合流部31において圧縮空気に合流されたドライアイス粒100bは、圧縮空気と一緒にノズル32の先端(ノズル開口32a)から噴射される。よって、ノズル開口32aをワークWの表面に向けると、ノズル開口32aから噴射されるドライアイス粒100bがワークWの表面に吹き付けられ、ワークWの表面が処理される。具体的には、ワークWの表面が洗浄されたり、ワークWの表面に微細な凹凸が形成されたりする。尚、ノズル32は、ノズル開口32aをワークWの表面に向けやすくするために、略L字形に曲げられている。
【0036】
<搬送部>
搬送部12は、ベース40,トレイ41,駆動部42、制御部43および支持部44を少なくとも含んでいる。搬送部12は、トレイ41を振動させることにより、当該トレイ41に載せられているドライアイスペレット100aを振動させながら搬送する。
【0037】
トレイ41は金属製である。具体的には、トレイ41は、所定形状に折り曲げられた1枚の板金によって形成されている。
図3に示されるように、トレイ41は、矩形の底部41aと、底部41aのそれぞれの長辺から立ち上がる側面部41b,41cと、底部41aの一方の短辺から立ち上がる背面部41dと、有する。さらに、トレイ41の表面には、ドライアイスペレット100aよりも小さい凸部41eが複数個形成されている。より特定的には、複数の凸部41eが底部41aの内面に所定間隔で形成されている。
【0038】
再び
図1を参照する。トレイ41は、ベース40の上方に当該ベース40と重なるように配置されている。また、トレイ41は、支持部44によって支持されている。支持部44は、板バネ等の弾性体であり、一端がベース40に連結され、他端がトレイ41に連結されている。つまり、トレイ41は、ベース40に対して揺動可能に保持されている。
【0039】
図1に示されるように、ベース40及びトレイ41は、ホッパー11の下に配置されている。よって、ホッパー11に投入されたドライアイスペレット100aは、ホッパー11の排出口11bからトレイ41内(底部41a上)に落下する。尚、トレイは“トラフ”と呼ばれることもある。
【0040】
駆動部42は、駆動源(振動源)としての電磁石42aを備えている。制御部43から電磁石42aに電力が供給され、電磁石42aが励磁されると、トレイ41が駆動部42に近接する方向(図中左側/後方)に移動する(引き付けられる)。その後、制御部43から電磁石42aへの電力の供給が途絶え、電磁石42aが消磁されると、支持部44の復元力によってトレイ41が駆動部42から離間する方向(図中右側/前方)に移動する(引き戻される)。
【0041】
つまり、制御部43から電磁石42aに電力が断続的に供給されると、トレイ41が主に前後に振動する。言い換えれば、電磁石42aに脈動電流が流されると、トレイ41が主に前後に振動する。この結果、トレイ41上のドライアイスペレット100aが振動しながら前方に向かって(粉砕部13に向かって)移動する。このとき、振動しながら移動するトレイ41上の複数のドライアイスペレット100aは、次第に整列する。また、幾つかのドライアイスペレット100aが互いに接着していた場合、それらドライアイスペレット100aが分離される。
【0042】
また、ドライアイスペレット100aと接するトレイ41の表面(底部41aの内面)に形成されている複数個の凸部41e(
図3)により、ドライアイスペレット100aの滑りが防止または抑制される。尚、それぞれの凸部41eがドライアイスペレット100aよりも小さいので、隣接する凸部41eの間にドライアイスペレット100aが挟まったり、詰まったりすることはない。
【0043】
図1に示されている制御部43は、電磁石42aの通電状態を変更することにより、トレイ41の振動状態を変更することができる。具体的には、電磁石42aに供給される電流の周波数や大きさを変更することにより、トレイ41の振動の周波数や振幅を変更することができる。そして、トレイ41の振動の周波数や振幅が変更されると、トレイ41によるドライアイスペレット100aの搬送能力が変化する。例えば、トレイ41の振幅が大きくなると、ドライアイスペレット100aの搬送量が増加する。
【0044】
本実施形態のドライアイスブラスト装置1Aには、噴射部30のノズル32から噴射されるドライアイス粒100bの量(噴射量)の変化を検知する検知部が設けられている。具体的には、ドライアイスブラスト装置1Aは、ノズル開口32aの近傍に配置されたレーザ50およびパワーメータ51を備えている。レーザ50は、所定波長のレーザ光を出力する。パワーメータ51は、レーザ50から出力されたレーザ光を受光し、受光量(エネルギー)に応じた電圧(検知信号)を出力する。
【0045】
レーザ50とパワーメータ51とは、ノズル開口32aを挟んで対向しており、ノズル開口32aから吐出されたドライアイス粒100bは、レーザ50とパワーメータ51との間を通過する。したがって、ノズル32から噴射されるドライアイス粒100bの量が多いほど、パワーメータ51の受光量が減少する。一方、ノズル32から噴射されるドライアイス粒100bの量が少ないほど、パワーメータ51の受光量が増大する。つまり、パワーメータ51の出力の変化に基づいてドライアイス粒100bの噴射量の変化を検知することができる。尚、本実施形態のレーザ50は、ヘリウムネオンレーザ(HeNeレーザ)であるが、レーザ50はガスレーザに限られない。
【0046】
搬送部12は、検知部(レーザ50及びパワーメータ51)による噴射量の検知結果に基づいて、ドライアイスペレット100aの搬送量を制御する。具体的には、制御部43は、パワーメータ51の出力の変化に基づいて電磁石42aの通電状態を変更してトレイ41の振動状態を変更する。より具体的には、制御部43は、パワーメータ51の出力が低下すると、ドライアイスペレット100aの搬送量が減少するように、トレイ41の振動状態を変更する。また、制御部43は、パワーメータ51の出力が上昇すると、ドライアイスペレット100aの搬送量が増加するように、トレイ41の振動状態を変更する。尚、トレイ41の振動の周波数や振幅が変更されると、トレイ41によるドライアイスペレット100aの搬送能力が変化することは既述のとおりである。
【0047】
次に、本発明の効果を確認するために、本実施形態に係るドライアイスブラスト装置1Aを用いて本件発明者が行った試験について説明する。
【0048】
<試験1-1>
本試験では、1分間に搬送部12から粉砕部13に供給されるドライアイスペレット100aの量[g/min]、トレイ41の振動の周波数[Hz]及び振幅[mm]を次のように設定し、パワーメータ51の受光量[V]に基づいてドライアイス粒100bの噴射量の変化を測定した。尚、ドライアイスペレット100aの供給量[g/min]は、トレイ41の出口の下に配置した重量計によって予め計測するとともに、試験中は重量計を撤去した。
【0049】
供給量:50[g/min]
周波数:80[Hz]
振 幅:0.7[mm](最大振幅の70%)
図4に、試験1-1における測定結果を示す。
図4に示されているグラフの縦軸はパワーメータ51の受光量[V]であり、横軸は時間[sec]である。また、グラフ中の基準線Xは、ドライアイス粒100bの噴射量が零(ゼロ)のときのパワーメータ51の受光量(0.681[V])を示している。つまり、パワーメータ51の受光量[V]が基準線Xを下回っているときには、ドライアイス粒100bが噴射されている。一方、パワーメータ51の受光量[V]が基準線Xを上回っているときには、ドライアイス粒100bが噴射されていない。
【0050】
図4に示されているグラフより、実質的に全期間(20秒)に亘ってドライアイス粒100bが噴射され続けたことがわかる。また、パワーメータ51の受光量[V]を基準としたとき、ドライアイス粒100bの噴射量の変化が0.63[V]~0.69[V]の範囲内に収まっていることがわかる。つまり、全期間(20秒)に亘って安定的にドライアイス粒100bが噴射され続けたことがわかる。
【0051】
<試験1-2>
本試験では、ドライアイスペレット100aの供給量[g/min],トレイ41の振動の周波数[Hz]及び振幅[mm]を次のように変更した以外、上記試験1-1と同一の条件および方法でドライアイス粒100bの噴射量の変化を測定した。
【0052】
供給量:80[g/min]
周波数:70[Hz]
振 幅:0.55[mm](最大振幅の55%)
図5に、試験1-2における測定結果を示す。
図5に示されているグラフの縦軸はパワーメータ51の受光量[V]であり、横軸は時間[sec]である。また、グラフ中の基準線Xは、ドライアイス粒100bの噴射量が零(ゼロ)のときのパワーメータ51の受光量(0.705[V])を示している。
【0053】
図5に示されているグラフより、全期間(20秒)に亘ってドライアイス粒100bが噴射され続け、噴射が途絶えることは無かったことがわかる。また、パワーメータ51の受光量[V]を基準としたとき、ドライアイス粒100bの噴射量の変化が0.65[V]~0.71[V]の範囲内に収まっていることがわかる。つまり、全期間(20秒)に亘って安定的にドライアイス粒100bが噴射され続けたことがわかる。
【0054】
<試験2-1>
本試験では、本実施形態に係るドライアイスブラスト装置1Aを用いて電線の絶縁被覆の表面に粗化処理を施し、その結果を確認した。具体的には、1分間に搬送部12から粉砕部13に供給されるドライアイスペレット100aの量[g/min]や、ノズル32から噴射されるドライアイス粒100bの圧力(噴射圧)[MPa]などを次のように設定して粗化処理を行った。次いで、粗化処理が施された絶縁被覆表面上の複数の測定エリアの算術平均粗さ(Ra)をレーザ顕微鏡によって測定した。
【0055】
供給量:50[g/min]
噴射圧:0.4[MPa]
レーザ顕微鏡:キーエンス社製レーザ顕微鏡(VK-8510)
各測定エリアの大きさ:200×100[mm]
測定アリアの数:6つ(電線の長手方向に約10mm間隔で並ぶ)
ここで、絶縁被覆の表面にめっきを施す場合、絶縁被覆表面とめっきとを十分に密着させるためには、絶縁被覆表面の算術平均粗さ(Ra)の平均値が3.0[μm]以上であり、かつ、下限値が2.0[μm]以上であることが好ましい。
【0056】
試験2-1では、6つの測定エリアの算術平均粗さ(Ra)の平均値は3.0[μm]以上であり、かつ、下限値は2.0[μm]以上であった。
【0057】
<試験2-2>
本試験では、1分間に搬送部12から粉砕部13に供給されるドライアイスペレット100aの量を80[g/min]に変更した以外、上記試験2-1と同一の条件および方法で絶縁被覆の表面に粗化処理を施し、粗化処理が施された絶縁被覆表面の算術平均粗さ(Ra)を測定した。その結果、6つの測定エリアの算術平均粗さ(Ra)の平均値は3.0[μm]以上であり、かつ、下限値も3.0[μm]以上であった。
【0058】
上記試験により、電磁振動方式の搬送部12を有する本実施形態のドライアイスブラスト装置1Aでは、ドライアイス粒が安定的に噴射されることが確認された。別の見方をすると、本実施形態のドライアイスブラスト装置1Aを用いれば、ワーク表面を均一に処理可能であることが確認された。
【0059】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、搬送部12の構成は、適宜変更することができる。例えば、トレイ41の形状,大きさ,振動周波数,振幅などは、必要に応じて適宜変更することができる。また、上記実施形態におけるトレイ41は金属製であったが、トレイ41の素材は特定の素材に限定されない。もっとも、ドライアイスペレット100aが直に接するトレイ41の熱伝導率は、なるべく低い方が好ましい。かかる観点からは、トレイ41を樹脂製、セラミクス製又は木製とすることが好ましい。
【0060】
上記実施形態では、トレイ41の表面の一部(底部41aの内面)に凸部41eが形成されていた。しかし、底部41aの内面以外の場所に凸部41eを形成してもよい。また、凸部41eを凹部に置換してもよい。さらに、凸部および凹部の双方を形成してもよい。但し、ドライアイスペレット100aの詰まりを防止する観点からは、凹部がドライアイスペレット100aよりも小さいことが好ましい。
【0061】
検知部の構成も必要に応じて適宜変更することができる。例えば、上記実施形態におけるレーザ50は発光ダイオードに置換可能であり、パワーメータ51はフォトダイオードに置換可能である。また、ノズル32から噴射されるドライアイス粒100bを撮影した画像に基づいてドライアイス粒100bの噴射量の変化を検知することもできる。
【0062】
本発明は、サイフォン式のドライアイスブラスト装置だけでなく、直噴式のドライアイスブラスト装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0063】
1A…ドライアイスブラスト装置,10…装置本体,10a…筐体,11…ホッパー,11a…上方開口部(投入口),11b…下方開口部(排出口),12…搬送部,13…粉砕部,13a(13b)…粉砕ローラ,14…中継パイプ,15…ドライアイス供給チューブ,20…圧縮空気供給部,21…コンプレッサ,22…空気供給チューブ,30…噴射部,31…合流部,32…ノズル,32a…ノズル開口,40…ベース,41…トレイ,41a…底部,41b(41c)…側面部,41d…背面部,41e…凸部,42…駆動部,42a…電磁石,43…制御部,44…支持部,50…レーザ,51…パワーメータ,100a…ドライアイスペレット,100b…ドライアイス粒,W…ワーク