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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】物理量センサ付き配線部品
(51)【国際特許分類】
   G01D 11/30 20060101AFI20241008BHJP
   G01K 1/14 20210101ALI20241008BHJP
   H02K 11/25 20160101ALN20241008BHJP
【FI】
G01D11/30 S
G01K1/14 L
H02K11/25
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021064588
(22)【出願日】2021-04-06
(65)【公開番号】P2022160067
(43)【公開日】2022-10-19
【審査請求日】2024-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福地 圭介
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-180790(JP,A)
【文献】特開2008-147180(JP,A)
【文献】特開2017-26521(JP,A)
【文献】国際公開第2019/187570(WO,A1)
【文献】特開2015-8099(JP,A)
【文献】特開2011-24357(JP,A)
【文献】特開2019-213378(JP,A)
【文献】特開2013-153080(JP,A)
【文献】特開2011-244600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 11/00-13/28
G01K 1/00-19/00
H01B 1/00-9/06
H02G 3/22-3/40、
7/00-7/22
H01R 13/56-13/72
H02K 11/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電線と、前記複数の電線の物理量を検出する物理量センサと、前記複数の電線の間に介在する介在部を有する電線保持部材と、前記物理量センサを保持するホルダとを備え、
前記電線保持部材は、前記複数の電線の並び方向に対して垂直な方向に沿って前記介在部から突出した突出部を有し、前記突出部によって前記ホルダを前記複数の電線の長手方向に位置決めしており、
前記ホルダは、前記複数の電線の少なくとも何れかに係合する電線係合部を有し、
前記物理量センサは、物理量の検出信号を伝送する信号線を有し、前記信号線が前記突出部に形成された切り欠き部に挿通されており、
前記切り欠き部の少なくとも一部を閉塞する栓体をさらに備えた、
物理量センサ付き配線部品。
【請求項2】
前記ホルダを前記複数の電線と共に覆う樹脂モールド部材をさらに備えた、
請求項1に記載の物理量センサ付き配線部品。
【請求項3】
前記電線保持部材は、前記複数の電線の長手方向に前記ホルダを挟む複数箇所に前記突出部を有しており、
前記樹脂モールド部材が複数の前記突出部の間に形成されている、
請求項2に記載の物理量センサ付き配線部品。
【請求項4】
前記栓体は、前記突出部及び前記ホルダにそれぞれ係合する複数の係合部を有している、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の物理量センサ付き配線部品。
【請求項5】
前記ホルダは、前記複数の電線のうち第1の電線及び第2の電線にそれぞれ係合する複数の前記電線係合部を有する、
請求項1乃至の何れか1項に記載の物理量センサ付き配線部品。
【請求項6】
複数の前記電線係合部は、前記第1の電線及び前記第2の電線を前記複数の電線の並び方向に挟んでいる、
請求項に記載の物理量センサ付き配線部品。
【請求項7】
前記第1の電線の長手方向直交断面における前記第2の電線と反対側の端部と、前記第2の電線の長手方向直交断面における前記第1の電線と反対側の端部との間隔が、前記ホルダにおける複数の前記電線係合部の先端部の間隔よりも広い、
請求項に記載の物理量センサ付き配線部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理量センサ付き配線部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばモータの固定子巻線に励磁電流を供給する電線の温度を温度センサによって検出し、固定子巻線の過熱による損傷を抑制することが行われている。検出対象の電線は、当該電線に電流が流れることによるジュール熱(銅損)によって発熱する他、モータからの熱伝導によっても温度が上昇する。本出願人は、検出対象の電線に対して温度センサを容易に取り付け可能としたセンサアダプタ、及びこのセンサアダプタを用いたモータ用配線部品を提案している(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のセンサアダプタは、温度センサを収容するセンサ用空隙が形成されたセンサ把持部と、センサ用空隙と連通して測定対象の電線を収容する測定対象物用空隙が形成された測定対象物把持部とを備えている。測定対象物把持部には、測定対象の電線を抱え込むようにして把持する複数の把持用爪が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-180790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のセンサアダプタによれば、接着剤等を用いることなく、ワンタッチの動作で容易に温度センサを電線に取り付け可能となる。しかしながら、このセンサアダプタが例えば車両に搭載された場合、取り付け位置によっては、走行時の振動によってセンサアダプタが当初の位置から電線の長手方向にずれてしまうことが考えられる。このような位置ずれが発生すると、例えばセンサアダプタとモータとの位置関係が変わること等に起因して、モータや電線の発熱量が同じ場合であっても、温度センサによって検出される温度の検出値が変動してしまうおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、物理量検出対象の電線の長手方向における物理量センサの位置ずれを抑制することが可能な物理量センサ付き配線部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、複数の電線と、前記複数の電線の物理量を検出する物理量センサと、前記複数の電線の間に介在する介在部を有する電線保持部材と、前記物理量センサを保持するホルダとを備え、前記電線保持部材は、前記複数の電線の並び方向に対して垂直な方向に沿って前記介在部から突出した突出部を有し、前記突出部によって前記ホルダを前記複数の電線の長手方向に位置決めしており、前記ホルダは、前記複数の電線の少なくとも何れかに係合する電線係合部を有している、物理量センサ付き配線部品を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る物理量センサ付き配線部品によれば、物理量検出対象の電線の長手方向における物理量センサの位置ずれを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態に係る物理量センサ付き配線部品を示す全体図である。
図2】(a)及び(b)は、ホルダ及び樹脂モールド部材の周辺部を示す斜視図である。(c)は、(a)において樹脂モールド部材を仮想線で示した斜視図であり、(d)は、(b)において樹脂モールド部材を仮想線で示した斜視図である。
図3図2(a)に示す方向から見た分解斜視図である。
図4図2(b)に示す方向から見た分解斜視図である。
図5】温度センサの構成を示す構成図である。
図6】(a)及び(b)は、栓体を示す斜視図である。
図7】(a)及び(b)は、栓体の周辺部における物理量センサ付き配線部品の断面図である。
図8】(a)乃至(c)は、第1乃至第3組付工程を示す説明図である。
図9】(a)乃至(c)は、第2組付工程の前後の状態を詳細に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係る物理量センサ付き配線部品を示す全体図である。この物理量センサ付き配線部品1は、例えば車両の走行用の駆動源として用いられる三相交流モータと端子台との間に配置され、三相交流モータの固定子巻線と端子台の電極とを接続するために用いられる。本実施の形態では、物理量として、電線の温度を検出する場合について説明する。ただし、これに限らず、例えば電線を流れる電流によって発生する磁界の強度を物理量として検出するようにしてもよい。
【0011】
物理量センサ付き配線部品1は、6本の電線11~16と、第1乃至第3の端子17~19と、電線11~16を保持する電線保持部材6とを備えている。6本の電線11~16は、金属導体線がエナメル被覆されたエナメル電線であり、長手方向両端部ではエナメル被覆が除去されて金属導体線が露出している。本実施の形態では、電線11~16が断面円形状の単線であるが、電線11~16が平角電線であってもよい。
【0012】
第1乃至第3の端子17~19には、6本の電線11~16のうち2本の電線のそれぞれの一端部が加締められている。6本の電線11~16の他端部は、三相交流モータの固定子巻線に例えば溶接によって接続される。
【0013】
電線保持部材6は、電線11~16のそれぞれの長手方向の一部を保持する本体部材60と、第1の電線11と第3の電線13との間に介在する介在部611を有する第1のスペーサ61と、第2の電線12と第3の電線13との間に介在する介在部621を有する第2のスペーサ62とを有している。第1のスペーサ61の介在部611、及び第2のスペーサ62の介在部621は、第1乃至第3の電線11~13の長手方向に沿って延びる帯状である。
【0014】
電線保持部材6は、予め射出成形された第1のスペーサ61及び第2のスペーサ62を、第1の電線11と第3の電線13との間、及び第2の電線12と第3の電線13との間に配置し、第1のスペーサ61及び第2のスペーサ62のそれぞれの一部と電線11~16のそれぞれの長手方向の一部とを覆うように本体部材60をモールド成形することによって形成される。
【0015】
図2(a)及び(b)は、物理量センサ付き配線部品1の要部を示す斜視図である。図2(c)は、図2(a)において樹脂モールド部材4を仮想線(二点鎖線)で示した斜視図であり、図2(d)は、図2(b)において樹脂モールド部材4を仮想線で示した斜視図である。図3は、図2(a)に示す方向から見た分解斜視図である。図4は、図2(b)に示す方向から見た分解斜視図である。
【0016】
物理量センサ付き配線部品1は、物理量センサとしての温度センサ2と、温度センサ2を保持するホルダ3と、ホルダ3の外側を覆う樹脂モールド部材4と、樹脂モールド部材4に一部が覆われた栓体5とを備えている。温度センサ2は、センサ本体20と、温度の検出信号を伝送する二本の信号線21,22とを有している。図1では、ホルダ3に保持されたセンサ本体20を破線で示している。
【0017】
ホルダ3、栓体5、及び電線保持部材6は、樹脂からなる。ホルダ3は、6本の電線11~16のうち、3本の電線11~13に対して温度センサ2を保持する。以下、これら3本の電線11~13を第1乃至第3の電線11~13という。第1乃至第3の電線11~13は、ホルダ3の周辺部において、所定の間隔で互いに平行に、かつ一列に並んで配置されている。この並び方向において、第3の電線13は、第1の電線11と第2の電線12との間に配置されている。
【0018】
第1のスペーサ61は、介在部611から第1の電線11側及び第3の電線13側に突出した複数の台座部612と、第1乃至第3の電線11~13の並び方向に対して垂直な方向に沿って介在部611から突出した複数の突出部613とを、介在部611と一体に有している。台座部612には、第1の電線11の一部を収容する凹部612a、及び第3の電線13の一部を収容する凹部612bが形成されている。本実施の形態では、二つの台座部612が第1乃至第3の電線11~13の長手方向に離間して設けられており、二つの突出部613が二つの台座部612のそれぞれに対応する位置に設けられている。
【0019】
同様に、第2のスペーサ62は、介在部621から第2の電線12側及び第3の電線13側に突出した複数の台座部622と、第1乃至第3の電線11~13の並び方向に対して垂直な方向に沿って介在部621から突出した複数の突出部623とを、介在部621と一体に有している。台座部622には、第2の電線12の一部を収容する凹部622a、及び第3の電線13の一部を収容する凹部622bが形成されている。本実施の形態では、二つの台座部622が第1乃至第3の電線11~13の長手方向に離間して設けられており、二つの突出部623が二つの台座部622のそれぞれに対応する位置に設けられている。
【0020】
第1のスペーサ61の二つの突出部613と、第2のスペーサ62の二つの突出部623とは、それぞれ第1乃至第3の電線11~13の並び方向に沿って並ぶ位置に設けられている。第1のスペーサ61及び第2のスペーサ62は、二つの突出部613,623により、ホルダ3を第1乃至第3の長手方向の所定位置に位置決めしている。換言すれば、電線保持部材6は、第1乃至第3の電線11~13の長手方向にホルダ3を挟む複数箇所に突出部613,623を有している。
【0021】
第1のスペーサ61の二つの突出部613のうち一方の突出部613には、第2のスペーサ62側の端部に第1の切り欠き610が形成されている。また、第2のスペーサ62の二つの突出部623のうち一方の突出部623には、第1のスペーサ61側の端部に第2の切り欠き620が形成されている。そして、第1の切り欠き610と第2の切り欠き620とによって、温度センサ2の信号線21,22を挿通させる切り欠き600(後述する図8図9参照)が形成される。栓体5は、この切り欠き600の少なくとも一部を閉塞する。
【0022】
ホルダ3は、温度センサ2のセンサ本体20を収容する収容凹部300が形成されたセンサ保持部30と、センサ保持部30における第1乃至第3の電線11~13の並び方向の両端部からこの並び方向に沿って延出された板状の第1及び第2の延在部31,32と、第1の電線11及び第2の電線12にそれぞれ係合する第1の電線係合部33及び第2の電線係合部34とを一体に有している。
【0023】
収容凹部300は、第3の電線13と向かい合う部位に形成され、第1乃至第3の電線11~13の長手方向の一方側に開口部300aを有している。センサ保持部30には、収容凹部300からセンサ本体20を抜け止めするための一対の抜け止め突起301,302が設けられている。温度センサ2の二本の信号線21,22は、一対の抜け止め突起301,302の間から収容凹部300の外部に導出されている。
【0024】
本実施の形態では、ホルダ3が二つの第1の電線係合部33及び二つの第2の電線係合部34を有している。第1の電線係合部33は、第1乃至第3の電線11~13の長手方向における第1の延在部31の両端部から突出して設けられている。第2の電線係合部34は、第1乃至第3の電線11~13の長手方向における第2の延在部32の両端部から突出して設けられている。第1の電線係合部33及び第2の電線係合部34は、第1乃至第3の電線11~13の並び方向に沿って、第1の電線11及び第2の電線12を挟んでいる。
【0025】
図5は、温度センサ2の構成を示す構成図である。温度センサ2は、物理量(本実施の形態では温度)を電気信号に変換する検出部としてのサーミスタ23と、サーミスタ23を収容するケース部材24と、ケース部材24に収容された保持部材25と、ケース部材24から引き出された一対の信号線21,22とを有している。ケース部材24は、射出成形された樹脂からなる有底筒状の成形体である。ケース部材24の内部には、例えばエポキシ樹脂からなる不図示の充填材が充填される。
【0026】
サーミスタ23は、温度によって電気抵抗が変化する検出素子としての金属酸化物焼結体230と、金属酸化物焼結体230に接続された一対のリード線231,232と、金属酸化物焼結体230を封止する封止材234とを有している。封止材234は、例えばガラス封止材であり、楕円球状に形成されている。保持部材25は、封止材234の近傍で一対のリード線231,232を保持している。
【0027】
信号線21,22のそれぞれは、例えば撚線からなる芯線211,221が絶縁体212,222に覆われた絶縁電線である。一対のリード線231,232は、信号線21,22の芯線211,221に、それぞれ例えば溶接によって接続されている。信号線21,22は、温度の検出信号を例えばモータ制御装置に伝送する。モータ制御装置は、温度センサ2によって検出される温度が所定値以上となったとき、モータに供給する電流を抑制して過熱による損傷を防止する。
【0028】
図6(a)及び(b)は、栓体5を示す斜視図である。図7(a)及び(b)は、栓体5の周辺部における物理量センサ付き配線部品1の断面図である。
【0029】
栓体5は、切り欠き600に収容される直方体状の本体部50と、収容凹部300に収容される突起部51とを一体に有している。本体部50は、第1のスペーサ61の二つの突出部613のうち第1の切り欠き610が形成された一方の突出部613に係合する第1の係合部501と、第2のスペーサ62の二つの突出部623のうち第2の切り欠き620が形成された一方の突出部623に係合する第2の係合部502とを有している。
【0030】
第1のスペーサ61の一方の突出部613には、栓体5の第1の係合部501が係合する係合溝613aが形成されている。第2のスペーサ62の一方の突出部623には、栓体5の第2の係合部502が係合する係合溝623aが形成されている。係合溝613a,623aは、第1乃至第3の電線11~13の長手方向に延在し、栓体5の本体部50を切り欠き600に収容する際に栓体5を案内するガイド溝として機能する。
【0031】
また、栓体5の本体部50は、温度センサ2の信号線21,22に対向する対向面50aにおける第1乃至第3の電線11~13の並び方向の両端部に、第1及び第2の突条部503,504を有している。第1及び第2の突条部503,504は、第1乃至第3の電線11~13の長手方向に延在し、本体部50を切り欠き600に収容した際に信号線21,22との間に形成される隙間を狭小化している。
【0032】
栓体5の突起部51は、ホルダ3のセンサ保持部30に係合する係合部511を有している。センサ保持部30には、係合部511が係合する係合凹部303が形成されている。栓体5は、係合部511が係合凹部303に係合することにより、切り欠き600からの離脱が抑止されている。
【0033】
樹脂モールド部材4は、第1及び第2のスペーサ61,62の一方の突出部613,623と他方の突出部613,623との間に形成され、ホルダ3を第1乃至第3の電線11~13と共に覆っている。樹脂モールド部材4は、ホルダ3が第1乃至第3の電線11~13から外れてしまうことを防ぐと共に、ホルダ3の収容凹部300内に水分等の異物が浸入することを抑止している。
【0034】
樹脂モールド部材4は、第1乃至第3の電線11~13の間に第1及び第2のスペーサ61,62を配置し、センサ本体20を収容凹部300に収容したホルダ3の第1の電線係合部33及び第2の電線係合部34を第1の電線11及び第2の電線12にそれぞれ係合させ、さらに切り欠き600に栓体5の本体部50を収容した組立体を金型内に配置し、この金型に溶融した液状の樹脂を注入することにより成形される。このモールド成形の際、切り欠き600から収容凹部300への溶融樹脂の流入が栓体5によって阻止される。
【0035】
次に、図8及び図9を参照し、樹脂モールド部材4を成形する前の組立体の組み立て手順について説明する。
【0036】
図8(a)は、温度センサ2をホルダ3に組み付ける第1組付工程を示している。この工程では、センサ本体20がホルダ3の収容凹部300に収容され、信号線21,22が抜け止め突起301,302の間の開口部300aから導出される。
【0037】
図8(b)は、第1及び第2のスペーサ61,62に、温度センサ2を保持したホルダ3を組み付ける第2組付工程を示している。この工程では、第1及び第2のスペーサ61,62のそれぞれの二つの突出部613,623の間にホルダ3が配置される。温度センサ2のセンサ本体20は、第3の電線13に向かい合う。
【0038】
図8(c)は、第1のスペーサ61と第2のスペーサ62との間の切り欠き600に栓体5の本体部50を配置する第3組付工程を示している。栓体5は、第1及び第2のスペーサ61,62の突出部613,623に形成された係合溝613a,623aに第1及び第2の係合部501,502がそれぞれ係合し、かつホルダ3の係合凹部303に係合部511が係合することにより、第1及び第2のスペーサ61,62ならびにホルダ3に固定される。
【0039】
図9は、第2組付工程の前後の状態をより詳細に示す断面図である。図9(a)は、第1及び第2のスペーサ61,62に組み付けられる前の温度センサ2及びホルダ3の断面を示し、図9(b)は、温度センサ2及びホルダ3が組み付けられる前の第1乃至第3の電線11~13ならびに第1及び第2のスペーサ61,62の断面を示している。図9(c)は、第2組付工程後における温度センサ2、ホルダ3、第1乃至第3の電線11~13、ならびに第1及び第2のスペーサ61,62の断面を示している。
【0040】
図9(b)及び(c)では、第1乃至第3の電線11~13をその長手方向直交断面で示している。第1乃至第3の電線11~13は、銅等の導電性の高い金属からなる導体線111,121,131がエナメルからなる絶縁層112,122,132に被覆された断面円形状の単線(丸線)である。また、図9(a)及び(c)では、温度センサ2のケース部材24の内部に充填された充填材200を図示している。
【0041】
図9(a)及び(b)に示すように、第1の電線11の長手方向直交断面における第2及び第3の電線12,13と反対側の端部Eと、第2の電線12の長手方向直交断面における第1及び第3の電線11,13と反対側の端部Eとの間隔Dは、ホルダ3における第1の電線係合部33の先端部Tと第2の電線係合部34の先端部Tとの間隔Dよりも広い。また、間隔Dと間隔Dとの差は、第1の電線係合部33及び第2の電線係合部34の弾性変形により、第1及び第2の電線係合部33,34の先端部T,Tが第1及び第2の電線11,12の端部E,Eを乗り越えられる寸法である。
【0042】
これにより、第1乃至第3の電線11~13の並び方向に対して垂直な方向に沿って、ホルダ3を第1乃至第3の電線11~13ならびに第1及び第2のスペーサ61,62に対して相対移動させることにより、容易に第2組付工程を行うことができる。
【0043】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明した物理量センサ付き配線部品1によれば、第1及び第2のスペーサ61,62の突出部613,623により、ホルダ3が第1乃至第3の電線11~13の長手方向に位置決めされるので、ホルダ3が正確な位置に組み付けられると共に、振動等によってホルダ3が位置ずれしてしまうことを防ぐことができる。これにより、正確な温度検出が可能となる。
【0044】
また、上記の実施の形態では、物理量センサ付き配線部品1が樹脂モールド部材4を有する場合について説明したが、樹脂モールド部材4は必ずしも設けなくてもよい。すなわち、ホルダ3を第1乃至第3の電線11~13と共に樹脂モールド部材4によって覆わなくてもよい。この場合でも、第1及び第2のスペーサ61,62の突出部613,623により、ホルダ3が第1乃至第3の電線11~13の長手方向の所定位置に正確に位置決めされる。ただし、樹脂モールド部材4によってホルダ3を第1乃至第3の電線11~13と共に覆えば、より強固にホルダ3が固定され、耐振動性を高めることができる。
【0045】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0046】
[1]複数の電線(11~13)と、前記複数の電線(11~13)の物理量を検出する物理量センサ(2)と、前記複数の電線(11~13)の間に介在する介在部(611,621)を有する電線保持部材(6)と、前記物理量センサ(2)を保持するホルダ(3)とを備え、前記電線保持部材(6)は、前記複数の電線(11~13)の並び方向に対して垂直な方向に沿って前記介在部(611,621)から突出した突出部(613,623)を有し、前記突出部(613,623)によって前記ホルダ(3)を前記複数の電線(11~13)の長手方向に位置決めしており、前記ホルダ(3)は、前記複数の電線(11~13)の少なくとも何れかに係合する電線係合部(33,34)を有している、物理量センサ付き配線部品(1)。
【0047】
[2]前記ホルダ(3)を前記複数の電線(11~13)と共に覆う樹脂モールド部材(4)をさらに備えた、上記[1]に記載の物理量センサ付き配線部品(1)。
【0048】
[3]前記電線保持部材(6)は、前記複数の電線(11~13)の長手方向に前記ホルダ(3)を挟む複数箇所に前記突出部(613,623)を有しており、前記樹脂モールド部材(4)が複数の前記突出部(613,623)の間に形成されている、上記[2]に記載の物理量センサ付き配線部品(1)。
【0049】
[4]前記物理量センサ(2)は、物理量の検出信号を伝送する信号線(21,22)を有し、前記信号線(21,22)が前記突出部(613,623)に形成された切り欠き部(600)に挿通されており、前記切り欠き部(600)の少なくとも一部を閉塞する栓体(5)をさらに備えた、上記[1]乃至[3]の何れかに記載の物理量センサ付き配線部品(1)。
【0050】
[5]前記栓体(5)は、前記突出部(613,623)及び前記ホルダ(3)にそれぞれ係合する複数の係合部(501,502,511)を有している、上記[4]に記載の物理量センサ付き配線部品(1)。
【0051】
[6]前記ホルダ(3)は、前記複数の電線(11~13)のうち第1の電線(11)及び第2の電線(12)にそれぞれ係合する複数の前記電線係合部(33,34)を有する、上記[1]乃至[5]の何れかに記載の物理量センサ付き配線部品(1)。
【0052】
[7]前記複数の電線係合部(33,34)は、前記第1の電線(11)及び前記第2の電線(12)を前記複数の電線(11~13)の並び方向に挟んでいる、上記[6]に記載の物理量センサ付き配線部品(1)。
【0053】
[8]前記第1の電線(11)の長手方向直交断面における前記第2の電線(12)と反対側の端部(E)と、前記第2の電線(12)の長手方向直交断面における前記第1の電線(11)と反対側の端部(E)との間隔(D)が、前記ホルダ(3)における複数の前記電線係合部(33,34)の先端部(T,T)の間隔(D)よりも広い、上記[7]に記載の物理量センサ付き配線部品(1)。
【0054】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0055】
1…センサ付き配線部品 11…第1の電線
12…第2の電線 13…第3の電線
2…温度センサ 20…センサ本体
21,22…信号線 3…ホルダ
30…センサ保持部 300…収容凹部
33…第1の電線係合部 34…第2の電線係合部
4…樹脂モールド部材 5…栓体
501…第1の係合部 502…第2の係合部
511…係合部 6…電線保持部材
61…第1のスペーサ 62…第2のスペーサ
611,621…介在部 613,623…突出部
600…切り欠き
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9