(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】トナーの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03G 9/08 20060101AFI20241008BHJP
G03G 9/087 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
G03G9/08 384
G03G9/087 331
(21)【出願番号】P 2021066336
(22)【出願日】2021-04-09
【審査請求日】2024-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 甲介
(72)【発明者】
【氏名】長友 庸泰
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 純一
(72)【発明者】
【氏名】溝口 由花
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-70829(JP,A)
【文献】特開2021-39284(JP,A)
【文献】特開2013-68795(JP,A)
【文献】特開2006-293304(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08
G03G 9/087
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ポリエステル樹脂AとプレポリマーBを有機溶媒に溶解又は分散させた溶解液を作製する工程と、
b)有機溶媒と水を混合して水相を作製する工程と、
c)前記溶解液に前記水相を添加して転相乳化させて水中油型分散液を作製する工程と、
d)前記水中油型分散液を凝集させる工程と、を含むトナーの製造方法であって、
前記プレポリマーBは、イソシアネート基を有しておらず、
前記ポリエステル樹脂Aと前記プレポリマーBの酸価[mgKOH/g]は、
A>B>5
を満たすことを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項2】
前記ポリエステル樹脂Aと前記プレポリマーBの酸価[mgKOH/g]は、
A>B>10
を満たすことを特徴とする請求項1に記載のトナーの製造方法。
【請求項3】
前記工程a及び前記工程bの有機溶媒は、酢酸エチル又はメチルエチルケトンであることを特徴とする請求項1又は2に記載のトナーの製造方法。
【請求項4】
前記ポリエステル樹脂Aと前記プレポリマーBのガラス転移温度Tg[℃]は、
A>0>B
を満たすことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【請求項5】
前記工程dは、結晶性ポリエステル樹脂を用いることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のトナーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、トナーには環境への負荷低減が求められている。その対応として、例えばトナー自体の低温定着性向上による消費電力の低減や、トナーの製造工程で使用するエネルギーや薬剤の低減などが検討されている。
【0003】
トナーの低温定着性を向上させる方法としては、樹脂のガラス転移温度や軟化点を下げる方法や、結晶性樹脂を添加する方法などが広く知られている。しかし、トナーの熱特性を下げると高温側の定着性が悪化することから、高温側でも定着性を維持するために高分子の樹脂を添加する方法や、製造時にプレポリマーを添加してトナー粒子形成後に重合させる方法などが用いられている。また、トナーの製造方法としては粉砕法が用いられていたが、製造で使用するエネルギーが多い上にトナー小径化の流れもあり、懸濁重合などのケミカルトナーも主流になってきている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トナー製造時に用いる薬剤を低減する方法として、界面活性剤を低減できる転相乳化法が挙げられる。また、先述したように高温側の定着性を維持する方法として、製造時にプレポリマーを添加して、トナー粒子形成後に重合させる方法が挙げられる。これらの方法を組み合わせてトナーを製造することで、界面活性剤の使用量を抑えつつも定着性の良好なトナーを製造することができると考えられる。例えば、特許文献1、2が提案されている。
しかしながら、このような方法で製造されたトナーは、定着性と保存性が両立できない問題があった。
【0005】
そこで本発明は、転相乳化法を用いたトナーの製造において定着性と保存性の両立ができるトナーの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のトナーの製造方法は、
a)ポリエステル樹脂AとプレポリマーBを有機溶媒に溶解又は分散させた溶解液を作製する工程と、
b)前記溶解液に水を添加して転相乳化させて水中油型分散液を作製する工程と、
c)前記水中油型分散液を凝集させる工程と、を含むトナーの製造方法であって、
前記プレポリマーBは、イソシアネート基を有しておらず、
前記ポリエステル樹脂Aと前記プレポリマーBの酸価[mgKOH/g]は、
A>B>5
を満たすことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、転相乳化法を用いたトナーの製造において定着性と保存性の両立ができるトナーの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係るトナーの製造方法について説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0009】
従来技術では、油相中にプレポリマーを添加し、転相乳化でトナーを作製する際に、定着性と保存性が両立できない問題があった。この理由について検討した結果、要因として、油相中にプレポリマーを添加し、転相乳化でトナーを作製する際に、出来上がった乳化液にプレポリマー起因の粗大粒子が発生することが考えられる。このような粗大粒子が最終的なトナーの粒度分布に影響を与え、着色度に影響を与えていると推測される。また、凝集工程で凝集剤として金属塩を投入する場合、プレポリマーが金属架橋しないため、保存性や高温定着性に影響を与え、定着性と保存性の両立ができないと推測される。いずれも、プレポリマーの酸価が低すぎることに起因していると推測される。
【0010】
そこで本発明者らは更に検討を進め、本発明に至った。
本発明のトナーの製造方法は、
a)ポリエステル樹脂AとプレポリマーBを有機溶媒に溶解又は分散させた溶解液を作製する工程と、
b)前記溶解液に水を添加して転相乳化させて水中油型分散液を作製する工程と、
c)前記水中油型分散液を凝集させる工程と、を含むトナーの製造方法であって、
前記プレポリマーBは、イソシアネート基を有しておらず、
前記ポリエステル樹脂Aと前記プレポリマーBの酸価[mgKOH/g]は、
A>B>5
を満たすことを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、定着性と保存性の両立ができるトナーの製造方法を提供することができる。また、着色剤を用いた場合に、着色度を向上させることができる。
【0012】
(工程a:溶解液作製工程)
工程a(溶解液作製工程)では、ポリエステル樹脂AとプレポリマーBを有機溶媒に溶解又は分散させた溶解液を作製する。溶解液作製工程では、上記の他にも着色剤などを用いてもよい。なお、溶解液を油相と称してもよく、溶解液作製工程を油相作製工程と称してもよい。以下では主に溶解液を油相と称して説明する。
【0013】
油相作製方法としては、有機溶媒を攪拌しながら有機溶媒中に樹脂、着色剤などを徐々に添加していき、溶解又は分散させればよい。分散に際しては公知のものが使用でき、例えばビーズミルやディスクミルなどの分散機を用いることができる。
【0014】
本発明において、油相作製工程で用いるポリエステル樹脂AとプレポリマーBの酸価[mgKOH/g]は、A>B>5を満たす。このようなプレポリマーBを用いることにより、転相乳化中のプレポリマーの粗大化を抑制でき、凝集工程において、例えば凝集剤の金属塩とプレポリマーBが架橋することで、定着性と保存性の両立性が向上する。また、このようなポリエステル樹脂AとプレポリマーBを用いることで、着色度の改善や、高温側の定着性を向上させることができる。
【0015】
一方、プレポリマーBの酸価が5mgKOH/g以下であると、プレポリマー起因の粗大粒子が発生し、定着性と保存性の両立が得られず、特に高温定着性と耐熱保存性について良好な結果が得られない。また、ポリエステル樹脂Aの酸価とプレポリマーBの酸価がA≦Bであると、環境安定性が損なわれることがある。また、ポリエステル樹脂Aの酸価がA≦5であると、乳化しないのでトナーにできない。
【0016】
ポリエステル樹脂AとプレポリマーBの酸価[mgKOH/g]は、
A>B>10
を満たすことが好ましい。この場合、定着性と保存性を向上させることができる。
【0017】
ポリエステル樹脂AとプレポリマーBの酸価は、JIS K0070に従って測定を行う。
【0018】
また、ポリエステル樹脂AとプレポリマーBのガラス転移温度Tg[℃]は、
A>0>B
を満たすことが好ましい。この場合、定着性と保存性を向上させることができる。なお、Tg等の測定方法については後述する。
【0019】
<ポリエステル樹脂A>
電子写真における静電潜像現像用トナーとして用いる場合には、ポリエステル骨格を有する樹脂を用いることにより良好な定着性が得られる。ポリエステル骨格を有する樹脂としては、ポリエステル樹脂や、ポリエステルと他の骨格を有する樹脂とのブロックポリマーがあるが、ポリエステル樹脂を用いることにより、得られる着色樹脂粒子の均一性を向上させることができる。油相作製工程に用いられるポリエステル樹脂をポリエステル樹脂Aと称する。
【0020】
ポリエステル樹脂Aとしては、ラクトン類の開環重合物、ヒドロキシカルボン酸の縮重合物、ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)との重縮合物などが挙げられ、設計の自由度の観点からポリオールとポリカルボン酸との重縮合物が好ましい。
【0021】
ポリエステル樹脂Aの重量平均分子量は、1000~30000が好ましく、3000~15000がより好ましく、5000~12000が更に好ましい。1000未満では耐熱保存性が悪化することがあり、30000を超えると静電潜像現像用トナーとして低温定着性が悪化することがある。
【0022】
ポリエステル樹脂Aのガラス転移温度Tgとしては、35~80℃が好ましく、40~70℃がより好ましく、45~65℃が更に好ましい。35℃未満では得られる着色樹脂粒子が真夏などの高温環境下に置かれたときに変形する、あるいは着色樹脂粒子同士がくっついてしまい本来の粒子としての振る舞いができなくなる可能性がある。また80℃を超えるような場合、着色樹脂粒子を静電潜像現像用トナーとして用いる場合、良好な定着性が得られない場合がある。
【0023】
<<ポリオール>>
ポリオール(1)としては、ジオール(1-1)と3価以上のポリオール(1-2)が挙げられ、(1-1)単独、または(1-1)と少量の(1-2)の混合物が好ましい。
ジオール(1-1)としては、アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオールなど);アルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど);脂環式ジオール(1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなど);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど);上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物;3,3’-ジフルオロ-4,4’-ジヒドロキシビフェニル、等の4,4’-ジヒドロキシビフェニル類;ビス(3-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)メタン、1-フェニル-1,1-ビス(3-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(3-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジフルオロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(別名:テトラフルオロビスフェノールA)、2,2-ビス(3-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン等のビス(ヒドロキシフェニル)アルカン類;ビス(3-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)エーテル等のビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル類;
上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物などが挙げられる。
【0024】
これらのうち好ましいものは、炭素数2~12のアルキレングリコール及びビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物であり、特に好ましいものはビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、およびこれと炭素数2~12のアルキレングリコールとの併用である。
【0025】
3価以上のポリオール(1-2)としては、3~8価又はそれ以上の多価脂肪族アルコール(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど);3価以上のフェノール類(トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど);上記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0026】
<<ポリカルボン酸>>
ポリカルボン酸(2)としては、ジカルボン酸(2-1)と3価以上のポリカルボン酸(2-2)が挙げられ、(2-1)単独、または(2-1)と少量の(2-2)の混合物が好ましい。
【0027】
ジカルボン酸(2-1)としては、アルキレンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸など);アルケニレンジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸など);芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸など)、3-フルオロイソフタル酸、2-フルオロイソフタル酸、2-フルオロテレフタル酸、2,4,5,6-テトラフルオロイソフタル酸、2,3,5,6-テトラフルオロテレフタル酸、5-トリフルオロメチルイソフタル酸、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ビフェニルジカルボン酸、3,3’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ビフェニルジカルボン酸、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-3,3’-ビフェニルジカルボン酸、ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数4~20のアルケニレンジカルボン酸及び炭素数8~20の芳香族ジカルボン酸である。
【0028】
3価以上のポリカルボン酸(2-2)としては、炭素数9~20の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸など)などが挙げられる。なお、ポリカルボン酸(2)としては、上述のものの酸無水物または低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を用いてポリオール(1)と反応させてもよい。
【0029】
ポリオールとポリカルボン酸の比率は、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]の当量比[OH]/[COOH]として、通常2/1~1/2、好ましくは1.5/1~1/1.5、さらに好ましくは1.3/1~1/1.3である。
【0030】
<プレポリマーB>
油相作製工程に用いられるプレポリマーB(反応性前駆体などとも称する)は、イソシアネート基を有していない。プレポリマーBがイソシアネート基を有している場合、金属架橋しないため、特に定着上限と保存性を満足できない。
【0031】
プレポリマーBがイソシアネート基を有していないというためには、材料の処方(種類や添加量等)により判断することができる。この他にも、例えば、レオメータ装置による粘弾性測定や、ソックスレー抽出法による酢酸エチルやMEK不溶分のゲル量の定量化を行い、判断してもよい。粘弾性測定の高温側のG’とソックスレー抽出によるゲル量は、金属架橋するカルボン酸末端のプレポリマー>金属架橋しないイソシアネート末端のプレポリマーとなる。
【0032】
プレポリマーBとしては、活性水素基と反応可能な基を持つポリエステルが挙げられる。前記活性水素基と反応可能な基としては、例えば、イソシアネート基、エポキシ基、カルボン酸、酸クロリド基などが挙げられる。これらの中でも、凝集剤の金属塩と架橋可能な点で、カルボン酸が好ましい。前記反応性前駆体は、3価以上のアルコール及び3価以上のカルボン酸の少なくともいずれかによって付与される分岐構造を有していてもよい。
【0033】
活性水素基と反応可能な基を含有するポリエステル樹脂としては、例えば、活性水素基を有するポリエステル樹脂とポリイソシアネートとの反応生成物などが挙げられる。前記活性水素基を有するポリエステル樹脂は、例えば、ジオールと、ジカルボン酸と、3価以上のアルコール及び3価以上のカルボン酸の少なくともいずれかと重縮合することにより得られる。前記3価以上のアルコール及び前記3価以上のカルボン酸は、前記イソシアネート基を含有するポリエステル樹脂に分岐構造を付与する。
【0034】
ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール等の脂肪族ジオール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のオキシアルキレン基を有するジオール;1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等の脂環式ジオール;脂環式ジオールに、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したもの;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のビスフェノール類;ビスフェノール類に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したもの等のビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物などが挙げられる。
【0035】
これらの中でも、プレポリマーBのガラス転移温度Tgを20℃以下に制御する観点から、例えば、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール等の炭素数3以上10以下の脂肪族ジオールを使用することが好ましく、これらが樹脂中のアルコール成分の50mol%以上であることがより好ましい。これらのジオールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
前記プレポリマーBは非晶性樹脂であることが望ましく、また、樹脂鎖に立体障害を持たせることで定着時の溶融粘度が低下し、低温定着性がより発現しやすくなる。このため、前記脂肪族ジオールの主鎖は下記一般式(1)で表される構造を有することが好ましい。
【0037】
【0038】
[式中、R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、nは3~9の奇数を表す。但し、n個の繰り返し単位において、R1及びR2はそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。]
【0039】
ここで、本発明における前記脂肪族ジオールの主鎖とは、前記脂肪族ジオールが有する二つのヒドロキシル基間を最短数で結ばれた炭素鎖のことである。前記主鎖の炭素数は奇数である場合、偶奇性により結晶性が低下するので好ましい。また、少なくとも1つ以上の炭素数1~3のアルキル基を側鎖に有する場合、立体性により主鎖分子間の相互作用エネルギーが低下するのでより好ましい。
【0040】
前記ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。また、これらの無水物や低級(炭素数1~3)アルキルエステル化物、ハロゲン化物を用いても良い。これらの中でも、プレポリマーBのTgを20℃以下に制御する観点から、炭素数4以上12以下の脂肪族ジカルボン酸が好ましく、樹脂中のカルボン酸成分の50質量%以上使用することがより好ましい。これらのジカルボン酸は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
前記3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の3価以上の脂肪族アルコール;トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等の3価以上のポリフェノール類;3価以上のポリフェノール類に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したもの等の3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキシド付加物などが挙げられる。
【0042】
前記3価以上のカルボン酸としては、例えば、3価以上の芳香族カルボン酸などが挙げられ、特にはトリメリット酸、ピロメリット酸等の炭素数9以上20以下の3価以上の芳香族カルボン酸が好ましい。また、これらの無水物や、低級(炭素数1~3)アルキルエステル化物、ハロゲン化物を用いてもよい。
【0043】
<有機溶媒>
有機溶媒としては、適宜選択することができ、例えば沸点が100℃未満の揮発性であることが、後の工程で有機溶媒を除去する場合、容易に除去できる点から好ましい。このような有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどを単独あるいは2種以上組合せて用いることができる。
【0044】
有機溶媒中に溶解あるいは分散させる樹脂がポリエステル骨格を有する樹脂である場合、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系の溶媒もしくはメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系の溶媒を用いることが好ましい。この場合、溶解性を高くすることができる。これらの中でも、溶媒除去性の高い酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトンが特に好ましい。
【0045】
<着色剤>
本発明に用いられる着色剤としては公知の染料及び顔料が使用でき、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン及びそれらの混合物が使用できる。
【0046】
着色剤については、着色剤と樹脂を混練してマスターバッチを作製し、マスターバッチをポリエステル樹脂AやプレポリマーBとともに有機溶媒に溶解又は分散させて油相を作製するようにしてもよい。
【0047】
マスターバッチの作製に用いられる樹脂としては、適宜選択することができるが、有機溶媒に可溶で、かつ水に不溶又はほとんど溶解しない樹脂であることが好ましい。用いられる樹脂としては、例えば、ポリスチレン、スチレンアクリル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、エポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、パラフィンワックス等が挙げられる。これらは単独でもよいし、複数であってもよい。良好な定着性を得られるという観点からポリエステル樹脂が好ましい。
【0048】
マスターバッチは上記の着色剤と上記の樹脂を混練することで作製できる。例えば、混練処理に用いられる混練機は、二軸押出混練機、三本ロール、ラボブラストミルなどの一般の混練機を使用できる。また、混練処理の際に内添剤を添加してもよい。混練の際には加熱することが好ましく、この際の加熱条件は、適宜設定できる。
【0049】
マスターバッチの作製における樹脂と着色剤の割合としては、適宜選択することが可能である。
【0050】
<帯電制御剤>
油相には、上記の他にも帯電制御剤などを添加してもよい。
帯電制御剤としては公知のものが全て使用でき、例えばニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、四級アンモニウム塩(フッ素変性四級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体または化合物、タングステンの単体または化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩及び、サリチル酸誘導体の金属塩等が挙げられる。
【0051】
具体的には、例えばニグロシン系染料のボントロン03、第四級アンモニウム塩のボントロンP-51、含金属アゾ染料のボントロンS-34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE-82、サリチル酸系金属錯体のE-84、フェノール系縮合物のE-89(以上、オリエント化学工業社製)、第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP-302、TP-415(以上、保土谷化学工業社製)、第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA-901、ホウ素錯体であるLR-147(日本カーリット社製)、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物等が挙げられる。
【0052】
帯電制御剤は、性能を発現し、定着性などへの阻害がない範囲の量で用いればよく、トナーに含まれる場合、トナー中0.5~5質量%であることが好ましく、0.8~3質量%であることがより好ましい。
【0053】
<中和工程>
油相作製工程では、有機溶媒にマスターバッチを溶解させて油相を得た後、該油相をアルカリ性水溶液で中和してもよい。アルカリ性水溶液としては、例えばアンモニア水溶液等が挙げられる。
【0054】
(工程b:水相作製工程)
工程b(水相作製工程)では、有機溶媒と水を混合して水相を作製する。有機溶媒と水を混合して水相を作製する工程を経ることで、水相と油相が溶解するときに、溶媒が水へ溶出することによって乳化時の条件が変動してしまうことを防ぎ、シャープなナノサイズの粒子を作製することができる。更にはトナーの粒度分布もシャープになり、画像の細線の再現性を向上できる。なお、水相の作製と溶解液の作製はどちらを先に行ってもよい。
【0055】
水相の作製に用いられる有機溶媒としては、適宜選択することができ、例えば工程aで挙げられた有機溶媒を用いることができる。中でも溶解液作製工程の有機溶媒と水相作製工程の有機溶媒が同じであることが好ましい。同じ有機溶媒を用いることによって、乳化時に溶媒が水へ溶出することによって生じる変動を最小限に抑えることができる。
【0056】
更に、工程a及び工程bの有機溶媒は、酢酸エチル又はメチルエチルケトンであることが好ましい。この場合、工程a及び工程bの有機溶媒が同じである場合の利点が得られるとともに、溶媒除去性が高く、またマスターバッチや溶解液を作製する際の材料の選択性が上がるため、更に好ましい。
【0057】
有機溶媒と水の混合比率は、適宜選択することができる。有機溶媒と水により、溶解している有機溶媒が飽和溶解量の80%以上である水溶液を作製することが好ましい。有機溶媒の量を飽和溶解量に対して80%以上とすることで、油相から水相へ溶出する有機溶媒の量を減らすことができる。
【0058】
水相は、上記の他にも例えば界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤としては、例えばドデシル硫酸ナトリウム塩等が挙げられる。
【0059】
(工程c:転相乳化工程)
工程c(転相乳化工程)では、溶解液に前記水相を添加して転相乳化させて水中油型分散液を作製する。溶解液に水相を添加して、油中水型分散液から水中油型分散液に転相させる工程を経ることで、界面活性剤の使用量を低減した造粒が可能となる。
【0060】
<脱溶媒工程>
本実施形態における工程c(転相乳化工程)では脱溶媒工程を行ってもよい。なお、脱溶媒工程を乳化転相工程に含めてもよいし、乳化転相工程に含めずに別としてもよい。
【0061】
水中油型分散液(微粒子分散液、着色微粒子分散体などとも称する)から有機溶媒を除去するためには、例えば系全体を攪拌しながら徐々に昇温し、液滴中の有機溶媒を蒸発除去する方法を採用することができる。この他にも、得られた着色微粒子分散体を攪拌しながら乾燥雰囲気中に噴霧して、液滴中の有機溶媒を完全に除去することも可能である。この他にも、着色微粒子分散体を攪拌しながら減圧し、有機溶媒を蒸発除去する方法も可能である。後の2つの方法は、最初の方法と併用することも可能である。
【0062】
着色微粒子分散体が噴霧される乾燥雰囲気としては、例えば空気、窒素、炭酸ガス、燃焼ガス等を加熱した気体、特に使用される最高沸点溶媒の沸点以上の温度に加熱された各種気流が一般に用いられる。このような方法では、スプレードライアー、ベルトドライアー、ロータリーキルンなどの短時間の処理で十分目的とする品質が得られる。
【0063】
(工程d:凝集工程)
工程d(凝集工程)では、前記水中油型分散液を凝集させる。前記水中油型分散液の微粒子を凝集させ、一度トナー粒子より小さい粒子を形成させる工程を経ることで、プレポリマーBのみの粒子が発生したとしても、それらの微粒子を凝集させることができる。
【0064】
凝集工程では、例えば水中油型分散液を攪拌しながら凝集させことで、任意の粒径に調整することができる。凝集工程では、凝集剤を添加する方法の他、pHを調整する方法等、既存の方法が使用できる。凝集剤を添加する場合、そのまま添加してもよいが、凝集剤の水溶液にした方が局所的な高濃度化を避けることができるため好ましい。また、凝集塩は着色粒子の粒径を見ながら、徐々に添加することが好ましい。
【0065】
凝集時の分散液の温度は、使用する樹脂のガラス転移温度Tg付近であることが好ましい。液温が低すぎると凝集があまり進まないため効率が悪くなることがあり、液温が高すぎると凝集速度が速くなり、粗大粒子が発生するなど粒径分布が悪化することがある。
【0066】
凝集工程では、狙いの粒径に達したら凝集を停止させる。凝集を停止させる方法としては、イオン価数の低い塩やキレート剤を添加する方法や、pHを調整する方法、分散液の温度を下げる方法、水系媒体を多量に添加して濃度を薄める方法などが使用できる。以上の方法により、着色凝集粒子の分散液を得ることができる。なお、凝集工程によって得られた分散液は、凝集粒子分散液、着色凝集粒子分散液などと称してもよい。また、これら分散液中の粒子を凝集粒子などと称してもよい。
【0067】
凝集工程においては、離型剤としてワックスを添加してもよいし、低温定着性のために結晶性樹脂を添加してもよい。その場合、ワックスを水系媒体に分散させた分散液や、同様に結晶性樹脂の分散液を用意し、着色微粒子分散液と混合した上で凝集させていくことが好ましい。この場合、均一にワックスや結晶性樹脂が分散した凝集粒子を得ることができる。
【0068】
<凝集剤>
凝集剤としては、公知ものが使用できる。例えば、ナトリウム、カリウム等の1価の金属の金属塩や、カルシウム、マグネシウム等の2価の金属の金属塩、鉄、アルミニウム等の3価の金属の金属塩などが使用できる。凝集剤の添加量としては、特に制限されるものではなく、適宜選択することができる。
【0069】
<離型剤>
離型剤としてワックスを用いることができる。ワックスとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、融点が50℃~120℃の低融点の離型剤が好ましい。低融点の離型剤は、前記樹脂と分散されることにより、離型剤として効果的に定着ローラとトナー界面との間で働き、これによりオイルレス(定着ローラにオイルの如き離型剤を塗布しない)でもホットオフセット性が良好となる。
【0070】
離型剤としては、例えば、ロウ類、ワックス類等が好適に挙げられる。ロウ類及びワックス類としては、例えば、カルナウバワックス、綿ロウ、木ロウ、ライスワックス等の植物系ワックス;ミツロウ、ラノリン等の動物系ワックス;オゾケライト、セルシン等の鉱物系ワックス;パラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラタム等の石油ワックス;などの天然ワックスが挙げられる。また、これら天然ワックスのほか、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス等の合成炭化水素ワックス;エステル、ケトン、エーテル等の合成ワックス;などが挙げられる。更に、12-ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、塩素化炭化水素等の脂肪酸アミド;低分子量の結晶性高分子樹脂である、ポリ-n-ステアリルメタクリレート、ポリ-n-ラウリルメタクリレート等のポリアクリレートのホモ重合体あるいは共重合体(例えば、n-ステアリルアクリレート-エチルメタクリレートの共重合体等);側鎖に長いアルキル基を有する結晶性高分子などを用いてもよい。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0071】
ワックスの融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50℃~120℃が好ましく、60℃~90℃がより好ましい。融点が50℃以上であれば、ワックスが耐熱保存性に悪影響を与えるのを防止でき、120℃以下であれば、低温での定着時にコールドオフセットを起こすという問題を有効に防止できる。
【0072】
ワックスの溶融粘度としては、該ワックスの融点より20℃高い温度での測定値として、5cps~1,000cpsが好ましく、10cps~100cpsがより好ましい。溶融粘度が、5cps以上であれば、離型性の低下を防止でき、1,000cps以下であれば、耐ホットオフセット性、低温定着性の効果が十分発揮できる。
【0073】
ワックスの前記トナーにおける含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0質量%~40質量%が好ましく、3質量%~30質量%がより好ましい。前記含有量が40質量%以下であれば、トナーの流動性悪化を防止することができる。
【0074】
<結晶性ポリエステル樹脂>
凝集工程では、結晶性ポリエステル樹脂を用いることが好ましい。結晶性ポリエステル樹脂は、例えば、凝集工程で凝集剤と同じタイミングでの投入・使用とすることができる。結晶性ポリエステル樹脂を用いることにより、定着性と保存性を向上させることができるとともに、着色剤を用いる場合には着色度を向上させることができる。結晶性ポリエステル樹脂は、多価アルコールと、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸エステルなどの多価カルボン酸又はその誘導体から得られる。
【0075】
なお、本発明において結晶性ポリエステル樹脂とは、上記のように、多価アルコールと、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸エステル等の多価カルボン酸又はその誘導体とを用いて得られるものを指し、ポリエステル樹脂を変性したもの、例えばプレポリマー、及びそのプレポリマーを架橋及び/又は伸長反応させて得られる樹脂は、前記結晶性ポリエステル樹脂には属さない。
【0076】
<<多価アルコール>>
前記多価アルコールとしては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジオール、及び3価以上のアルコールが挙げられる。
【0077】
前記ジオールとしては、例えば、飽和脂肪族ジオールなどが挙げられる。前記飽和脂肪族ジオールとしては、例えば直鎖飽和脂肪族ジオール、分岐飽和脂肪族ジオールが挙げられるが、これらの中でも、直鎖飽和脂肪族ジオールが好ましく、炭素数が2~12の直鎖飽和脂肪族ジオールがより好ましい。前記飽和脂肪族ジオールが分岐型であると、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融点が低下してしまうことがある。また、前記飽和脂肪族ジオールの炭素数が12を超えると、実用上の材料の入手が困難となる。
【0078】
前記飽和脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,14-エイコサンデカンジオールなどが挙げられる。これらの中でも、前記結晶性ポリエステル樹脂の結晶性が高く、シャープメルト性に優れる点で、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオールが好ましい。
【0079】
前記3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0080】
<<多価カルボン酸>>
前記多価カルボン酸としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2価のカルボン酸、及び3価以上のカルボン酸が挙げられる。
【0081】
前記2価のカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、マロン酸、メサコニン酸等の芳香族ジカルボン酸;などが挙げられる。更に、これらの無水物やこれらの低級(炭素数1~3)アルキルエステルも挙げられる。
【0082】
前記3価以上のカルボン酸としては、例えば、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,5-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸等、及びこれらの無水物やこれらの低級(炭素数1~3)アルキルエステルなどが挙げられる。
これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0083】
前記結晶性ポリエステル樹脂は、炭素数4~12の直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸と、炭素数2~12の直鎖飽和脂肪族ジオールとから構成されることが好ましい。これにより、結晶性が高く、シャープメルト性に優れるため、優れた低温定着性を発揮できる。
【0084】
また、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性及び軟化点を制御する方法として、ポリエステル合成時にアルコール成分にグリセリン等の3価以上の多価アルコールや、酸成分に無水トリメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸を追加して縮重合を行った非線状ポリエステルなどを設計、使用するなどの方法が挙げられる。
【0085】
本実施形態における結晶性ポリエステル樹脂の分子構造は、溶液や固体によるNMR測定の他、X線回折、GC/MS、LC/MS、IR測定などにより確認することができる。簡便には赤外線吸収スペクトルにおいて、965±10cm-1もしくは990±10cm-1にオレフィンのδCH(面外変角振動)に基づく吸収を有するものを例として挙げることができる。
【0086】
分子量については、上記の分子量分布がシャープで低分子量のものが低温定着性に優れ、分子量が低い成分が多いと耐熱保存性が悪化するという観点から、鋭意検討した結果、例えば以下のようにすることが好ましい。o-ジクロロベンゼンの可溶分のGPCによる分子量分布で、横軸をlog(M)、縦軸を重量%で表した分子量分布図のピーク位置が3.5~4.0の範囲にあり、ピークの半値幅が1.5以下であり、重量平均分子量(Mw)で3,000~30,000、数平均分子量(Mn)で1,000~10,000、Mw/Mnが1~10であることが好ましい。更には、重量平均分子量(Mw)で5,000~15,000、数平均分子量(Mn)で2,000~10,000、Mw/Mnが1~5であることが好ましい。
【0087】
結晶性ポリエステル樹脂の酸価は、紙と樹脂との親和性の観点から、目的とする低温定着性を達成するためにはその酸価が5mgKOH/g以上であることが好ましい。また、転相乳化法による微粒子の作製のためには、7mgKOH/g以上であることがより好ましい。一方、ホットオフセット性を向上させるには45mgKOH/g以下のものであることが好ましい。また、結晶性高分子の水酸基価については、所定の低温定着性を達成し、かつ良好な帯電特性を達成するためには0~50mgKOH/gが好ましく、5~50mgKOH/gがより好ましい。
【0088】
(工程e:融着工程)
本実施形態では、工程e(融着工程)を行ってもよい。融着工程では、前記凝集工程により得られた凝集粒子を熱処理によって融着させ、凹凸を減らすことができる。融着は、着色凝集粒子の分散液を攪拌しながら加熱すればよい。液の温度は、使用している樹脂のガラス転移温度Tgを超えた温度付近が好ましい。
【0089】
(工程f:洗浄乃至乾燥工程)
本実施形態では、工程f(洗浄乃至乾燥工程)を行ってもよい。上記の方法で得られたトナー粒子分散液には、トナー粒子の他に、凝集塩などの副材料が含まれ得るため、分散液からトナー粒子のみを取り出すために洗浄を行うことが好ましい。
【0090】
トナー粒子の洗浄方法としては、例えば遠心分離法、減圧濾過法、フィルタープレス法などの方法があるが、本発明においては特に限定されるものではない。いずれの方法によってもトナー粒子のケーキ体が得られるが、一度の操作で十分に洗浄できない場合は、得られたケーキを再度水系溶媒に分散させてスラリーにして上記のいずれかの方法でトナー粒子を取り出す工程を繰り返してもよい。また、減圧濾過法やフィルタープレス法によって洗浄を行うのであれば、水系溶媒をケーキに貫通させて着色樹脂粒子が抱き込んだ副材料を洗い流す方法を採ってもよい。この洗浄に用いる水系溶媒は、水あるいは水にメタノール、エタノールなどのアルコールを混合した混合溶媒を用いることができる。コストや排水処理などによる環境負荷を考えると、水を用いるのが好ましい。
【0091】
洗浄されたトナー粒子は水系媒体を多く抱き込んでいるため、乾燥を行い、水系媒体を除去することでトナー粒子のみを得ることができる。
乾燥方法としては、スプレードライアー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動槽乾燥機、回転式乾燥機、攪拌式乾燥機などの乾燥機を使用することができる。
【0092】
乾燥されたトナー粒子は最終的に水分が1%未満になるまで乾燥を行うのが好ましい。また、乾燥後の着色樹脂粒子は軟凝集をしている場合があり、使用に際して不都合が生じる場合には、ジェットミル、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、コーヒーミル、オースターブレンダー、フードプロセッサーなどの装置を利用して解砕を行い、軟凝集をほぐしてもよい。
【0093】
(工程g:アニーリング工程)
本実施形態では、工程g(アニーリング工程)を行ってもよい。結晶性樹脂を添加した場合、乾燥後にアニーリング処理を行うことで、非結晶性樹脂と結晶性樹脂とが相分離し、定着性が向上する。具体的には、樹脂のガラス転移温度Tg付近の温度で10時間以上保管すればよい。
【0094】
(工程h:外添工程)
本実施形態では、工程h(外添工程)を行ってもよい。本実施形態で得られたトナー粒子には、流動性、帯電性、クリーニング性などを持たせるために、無期微粒子や高分子系微粒子、クリーニング助剤などを添加、混合してもよい。具体的な混合手段としては、高速で回転する羽根によって混合物に衝撃力を加える方法、高速気流中に混合物を投入し、加速させ、粒子同士または複合化した粒子を適当な衝突板に衝突させる方法などがある。
【0095】
装置としては、オングミル(ホソカワミクロン社製)、I式ミル(日本ニューマチック社製)を改造して、粉砕エアー圧カを下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所社製)、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、自動乳鉢などが挙げられる。
【0096】
<外添剤>
無機微粒子の一次粒子径は、5nm~2μmであることが好ましく、特に5nm~500nmであることが好ましい。また、BET法による比表面積は、20~500m2/gであることが好ましい。この無機微粒子の使用割合は、トナーの0.01~5質量%であることが好ましい。
【0097】
無機微粒子の具体例としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などが挙げられる。
【0098】
高分子系微粒子としては、例えばソープフリー乳化重合や懸濁重合、分散重合によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステル共重合体やシリコン、ベンゾグアナミン、ナイロンなどの重縮合系、熱硬化性樹脂による重合体粒子などが挙げられる。
【0099】
このような外添剤は表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止することができる。例えばシランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコンオイル、変性シリコンオイルなどが好ましい表面処理剤として挙げられる。
【0100】
上記の他にも外添剤としてクリーニング性向上剤を用いてもよい。感光体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するためのクリーニング性向上剤としては、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸など脂肪酸金属塩、例えばポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子などのソープフリー乳化重合などによって製造された、ポリマー微粒子などを挙げることかできる。ポリマー微粒子は比較的粒度分布が狭く、体積平均粒径が0.01μmから1μmのものが好ましい。
【0101】
(トナー物性測定方法)
<分散液の粒径測定>
本発明における樹脂分散液の粒径は、例えば、ナノトラック粒度分布測定装置UPA-EX150(日機装株式会社、動的光散乱法/レーザードップラー法)を用いて測定することができる。具体的な測定方法としては、樹脂微粒子が分散された分散液を測定濃度範囲に調整して測定する。その際、あらかじめ分散液の分散溶媒のみでバッククラウンド測定をしておく。この測定法により、本発明で用いられる樹脂微粒子の体積平均粒径範囲である、数十nm~数μmまでを測定することが可能である。
本発明における粒径とは、体積平均粒径(体積平均径)をいう。
【0102】
<<融点、及びガラス転移温度(Tg)の測定方法>>
本発明におけるガラス転移温度Tgは、例えば、DSCシステム(示差走査熱量計)(「Q-200」、TAインスツルメント社製)を用いて測定することができる。
具体的には、対象試料の融点、ガラス転移温度は、下記手順により測定できる。
まず、対象試料約5.0mgをアルミニウム製の試料容器に入れ、試料容器をホルダーユニットに載せ、電気炉中にセットする。次いで、窒素雰囲気下、-80℃から昇温速度10℃/minで150℃まで加熱する(昇温1回目)。その後、150℃から降温速度10℃/minで-80℃まで冷却させ、更に昇温速度10℃/minで150℃まで加熱(昇温2回目)する。この昇温1回目、及び昇温2回目のそれぞれにおいて、示差走査熱量計(「Q-200」、TAインスツルメント社製)を用いてDSC曲線を計測する。得られるDSC曲線から、Q-200システム中の解析プログラムを用いて、1回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、対象試料の昇温1回目におけるガラス転移温度を求めることができる。同様に、2回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、対象試料の昇温2回目におけるガラス転移温度を求めることができる。
本発明におけるTgは2回目の昇温時におけるガラス転移温度をいう。
【0103】
<分子量>
使用するポリエステル樹脂やビニル系共重合樹脂などの分子量は、特に断りがない場合は、GPC(gel permeation chromatography)によって以下の条件で測定する。
・装置:HLC-8220GPC(東ソー社製)
・カラム:TSKgel SuperHZM-Mx3
・温度:40℃
・溶媒:THF(テトラヒドロフラン)
・流速:0.35mL/分
・試料:濃度0.05~0.6%の試料を0.01mL注入
以上の条件で測定したトナー樹脂の分子量分布から単分散ポリスチレン標準試料により作製した分子量校正曲線を使用して重量平均分子量Mwを算出する。
単分散ポリスチレン標準試料としては、5.8×102、1.085×104、5.95×104、3.2×105、2.56×106、2.93×103、2.85×104、1.48×105、8.417×105、7.5×106のものを10点使用した。
【0104】
<酸価>
上述のように、酸価はJIS K0070に従って測定を行う。
【実施例】
【0105】
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0106】
(ポリエステル樹脂Aの作製)
冷却管、撹拌機及び窒素導入管を装備した反応槽中に、ジオール成分としてビスフェノールAのエチレンオキサイド2mol付加物/ビスフェノールAのプロピレンオキサイド3mol付加物(モル比40/60)、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸/アジピン酸(モル比85/15)、全モノマー量に対して3.5mol%のトリメチロールプロパンを、水酸基とカルボン酸のモル比(OH/COOH)が1.2となるように投入した。更に、縮合触媒としてオルトチタン酸テトラブチルを全モノマー量に対して1,000ppmを入れ、窒素気流下にて2時間かけて230℃まで昇温し、生成する水を留去しながら5時間反応させた。その後、5mmHg~15mmHgの減圧下にて4時間反応させ、180℃まで冷却させた後、全モノマー量に対して1.0mol%の無水トリメリット酸と、全モノマー量に対して200ppmのオルトチタン酸テトラブチルを入れ、常圧にて180℃で1時間反応させた。その後、更に5mmHg~20mmHgの減圧下にて3時間反応させ、[ポリエステル樹脂A]を得た。[ポリエステル樹脂A]は、DSCによる昇温2回目のDSC曲線から求められるガラス転移温度Tgが58℃であり、重量平均分子量が10,500であり、酸価が20mgKOH/gであった。
【0107】
(プレポリマーB-1の作製)
冷却管、撹拌機及び窒索導入管の付いた反応容器中に、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、イソフタル酸、アジピン酸、無水トリメリット酸を、水酸基とカルボキシル基のモル比であるOH/COOHが1.1であり、ジオール成分の構成が3-メチル-1,5-ペンタンジオール110mol%であり、ジカルボン酸成分の構成がイソフタル酸40mol%及びアジピン酸60mol%であり、全モノマー中における無水トリメリット酸の量が1mol%となるように、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して1,000ppm)とともに投入した。その後、4時間程度で200℃まで昇温し、次いで、2時間かけて230℃に昇温し、流出水がなくなるまで反応を行った。その後更に、10mmHg~15mmHgの減圧下で5時間反応させ、[中間体ポリエステルB-1]を得た。
次いで、冷却管、撹拌機及び窒素導入管を装備した反応槽中に、[中間体ポリエステルB-1]と、ヘキサメチレンジイソシアネート誘導体(HDIイソシアネート)をHDIイソシアネートのイソシアネート基と[中間体ポリエステルB-1]の水酸基のモル比(NCO/OH)が、2.0となる量を入れ、50%酢酸エチル溶液となるように酢酸エチルを加えて溶解した。その後、窒素気流下にて80℃まで昇温して5時間反応させ、水酸基末端のプレポリマーである[プレポリマーB-1(OH)]の酢酸エチル溶液を得た。その後、[プレポリマーB-1(OH)]の酢酸エチル溶液中の残酢酸エチル量が100ppm以下になるまで減圧した。
次いで、冷却管、撹拌機及び窒素導入管を装備した反応槽中に、[プレポリマーB-1(OH)]と、モノメチルエステルコハク酸を[プレポリマーB-1(OH)]の水酸基とモノメチルエステルコハク酸のメチル基のモル比(CH3/OH)が、2.0となる量を入れ、150℃で6時間反応させ、カルボン酸末端のプレポリマーである[プレポリマーB-1]を得た。[プレポリマーB-1]のガラス転移温度Tgは-37℃であり、酸価は7mgKOH/gである。
【0108】
(プレポリマーB-2の作製)
冷却管、撹拌機及び窒索導入管の付いた反応容器中に、1,6-ヘキサンジオール、イソフタル酸、アジピン酸、無水トリメリット酸を、水酸基とカルボキシル基のモル比であるOH/COOHが1.1であり、ジオール成分の構成が1,6-ヘキサンジオール110mol%であり、ジカルボン酸成分の構成がイソフタル酸40mol%及びアジピン酸60mol%であり、全モノマー中における無水トリメリット酸の量が1mol%となるように、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して1,000ppm)とともに投入した。その後、4時間程度で200℃まで昇温し、次いで、2時間かけて230℃に昇温し、流出水がなくなるまで反応を行った。その後更に、10mmHg~15mmHgの減圧下で5時間反応させ、[中間体ポリエステルB-2]を得た。
次いで、冷却管、撹拌機及び窒素導入管を装備した反応槽中に、[中間体ポリエステルB-2]と、ヘキサメチレンジイソシアネート誘導体(HDIイソシアネート)をHDIイソシアネートのイソシアネート基と[中間体ポリエステルB-2]の水酸基のモル比(NCO/OH)が、2.0となる量を入れ、50%酢酸エチル溶液となるように酢酸エチルを加えて溶解した。その後、窒素気流下にて80℃まで昇温して5時間反応させ、水酸基末端のプレポリマーである[プレポリマーB-2(OH)]の酢酸エチル溶液を得た。その後、[プレポリマーB-2(OH)]の酢酸エチル溶液中の残酢酸エチル量が100ppm以下になるまで減圧した。
次いで、冷却管、撹拌機及び窒素導入管を装備した反応槽中に、[プレポリマーB-2(OH)]と、モノメチルエステルコハク酸を[プレポリマーB-2(OH)]の水酸基とモノメチルエステルコハク酸のメチル基のモル比(CH3/OH)が、2.0となる量を入れ、150℃で6時間反応させ、カルボン酸末端のプレポリマーである[プレポリマーB-2]を得た。[プレポリマーB-2]のガラス転移温度Tgは-5℃であり、酸価は7mgKOH/gである。
【0109】
(プレポリマーB-3の作製)
冷却管、撹拌機及び窒索導入管の付いた反応容器中に、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、イソフタル酸、アジピン酸、無水トリメリット酸を、水酸基とカルボキシル基のモル比であるOH/COOHが1.1であり、ジオール成分の構成が3-メチル-1,5-ペンタンジオール110mol%であり、ジカルボン酸成分の構成がイソフタル酸50mol%及びアジピン酸50mol%であり、全モノマー中における無水トリメリット酸の量が1mol%となるように、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して1,000ppm)とともに投入した。その後、4時間程度で200℃まで昇温し、次いで、2時間かけて230℃に昇温し、流出水がなくなるまで反応を行った。その後更に、10mmHg~15mmHgの減圧下で5時間反応させ、[中間体ポリエステルB-3]を得た。
次いで、冷却管、撹拌機及び窒素導入管を装備した反応槽中に、[中間体ポリエステルB-3]と、ヘキサメチレンジイソシアネート誘導体(HDIイソシアネート)をHDIイソシアネートのイソシアネート基と[中間体ポリエステルB-3]の水酸基のモル比(NCO/OH)が、2.0となる量を入れ、50%酢酸エチル溶液となるように酢酸エチルを加えて溶解した。その後、窒素気流下にて80℃まで昇温して5時間反応させ、水酸基末端のプレポリマー([プレポリマーB-3(OH)])の酢酸エチル溶液を得た。その後、[プレポリマーB-3(OH)]の酢酸エチル溶液中の残酢酸エチル量が100ppm以下になるまで減圧した。
次いで、冷却管、撹拌機及び窒素導入管を装備した反応槽中に、[プレポリマーB-3(OH)]と、モノメチルエステルコハク酸を[プレポリマーB-3(OH)]の水酸基とモノメチルエステルコハク酸のメチル基のモル比(CH3/OH)が、2.0となる量を入れ、150℃で6時間反応させ、カルボン酸末端のプレポリマー[プレポリマーB-3]を得た。[プレポリマーB-3]のガラス転移温度Tgは-37℃、酸価は12mgKOH/gである。
【0110】
(プレポリマーB-4の作製)
冷却管、撹拌機及び窒素導入管を装備した反応槽中に、ジオール成分として3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸/アジピン酸(モル比55/45)、全モノマー量に対して1.0mol%のトリメチロールプロパン、全モノマー量に対して0.5mol%の無水トリメリット酸を、水酸基とカルボン酸のモル比(OH/COOH)が1.5となるように投入した。更に、縮合触媒としてオルトチタン酸テトラブチルを全モノマー量に対して1,000ppmを入れ、窒素気流下にて2時間かけて200℃まで昇温し、更に2時間かけて230℃まで昇温し、生成する水を留去しながら3時間反応させた。その後、5mmHg~15mmHgの減圧下にて5時間反応させ、重量平均分子量が18,000の[中間体ポリエステルB-4]を得た。
次いで、冷却管、撹拌機及び窒素導入管を装備した反応槽中に、[中間体ポリエステルB-4]と、イソホロンジイソシアネート(IPDI)を、IPDIのイソシアネート基と[中間体ポリエステルB-4]の水酸基のモル比(NCO/OH)が、2.0となる量を入れ、50%酢酸エチル溶液となるように酢酸エチルを加えて溶解した。その後、窒素気流下にて80℃まで昇温して5時間反応させ、ポリエステル樹脂(A)の反応性前駆体である[プレポリマーB-4]の酢酸エチル溶液を得た。
次に、以下のようにして[プレポリマーB-4]のアミン伸長物を得た。
まず[プレポリマーB-4]に酢酸エチルを加えて20%酢酸エチル溶液となるように調整した。次いで、撹拌しながらイソホロンジアミン(IPDA)の20%酢酸エチル溶液を、[プレポリマーB-4]のイソシアネート基とIPDAのアミノ基のモル比(NH2/NCO)が1.1となる量を滴下し、十分に撹拌した。これにより、アミン伸長物の酢酸エチル溶液を得た。次いで、得られたアミン伸長物の酢酸エチル溶液をテフロンシャーレ上にキャストし、80℃の環境下で10時間乾燥した。更に、120℃、10kPa以下の環境下で減圧乾燥し、十分に溶媒を除去した。これにより、[プレポリマーB-4]のアミン伸長物を得た。
[プレポリマーB-4]のアミン伸長物は、DSCによる昇温1回目のDSC曲線から求められるガラス転移温度Tgが-37℃であり、酸価が1mgKOH/gである。
【0111】
(プレポリマーB-5の作製)
冷却管、撹拌機及び窒索導入管の付いた反応容器中に、1,6-ヘキサンジオール、イソフタル酸、アジピン酸、無水トリメリット酸を、水酸基とカルボキシル基のモル比であるOH/COOHが1.1であり、ジオール成分の構成が1,6-ヘキサンジオール110mol%であり、ジカルボン酸成分の構成がイソフタル酸60mol%及びアジピン酸40mol%であり、全モノマー中における無水トリメリット酸の量が1mol%となるように、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して1,000ppm)とともに投入した。その後、4時間程度で200℃まで昇温し、次いで、2時間かけて230℃に昇温し、流出水がなくなるまで反応を行った。その後更に、10mmHg~15mmHgの減圧下で5時間反応させ、[中間体ポリエステルB-5]を得た。
次いで、冷却管、撹拌機及び窒素導入管を装備した反応槽中に、[中間体ポリエステルB-5]と、ヘキサメチレンジイソシアネート誘導体(HDIイソシアネート)をHDIイソシアネートのイソシアネート基と[中間体ポリエステルB-5]の水酸基のモル比(NCO/OH)が、2.0となる量を入れ、50%酢酸エチル溶液となるように酢酸エチルを加えて溶解した。その後、窒素気流下にて80℃まで昇温して5時間反応させ、水酸基末端のプレポリマーである[プレポリマーB-5(OH)]の酢酸エチル溶液を得た。その後、[プレポリマーB-5(OH)]の酢酸エチル溶液中の残酢酸エチル量が100ppm以下になるまで減圧した。
次いで、冷却管、撹拌機及び窒素導入管を装備した反応槽中に、[プレポリマーB-5(OH)]と、モノメチルエステルコハク酸を[プレポリマーB-5(OH)]の水酸基とモノメチルエステルコハク酸のメチル基のモル比(CH3/OH)が、2.0となる量を入れ、150℃で6時間反応させ、カルボン酸末端のプレポリマーである[プレポリマーB-5]を得た。[プレポリマーB-5]のガラス転移温度Tgは5℃であり、酸価は7mgKOH/gである。
【0112】
(プレポリマーB-6の作製)
冷却管、撹拌機及び窒索導入管の付いた反応容器中に、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、イソフタル酸、アジピン酸、無水トリメリット酸を、水酸基とカルボキシル基のモル比であるOH/COOHが1.1であり、ジオール成分の構成が3-メチル-1,5-ペンタンジオール110mol%であり、ジカルボン酸成分の構成がイソフタル酸40mol%及びアジピン酸60mol%であり、全モノマー中における無水トリメリット酸の量が1mol%となるように、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して1,000ppm)とともに投入した。その後、4時間程度で200℃まで昇温し、次いで、2時間かけて230℃に昇温し、流出水がなくなるまで反応を行った。その後更に、10mmHg~15mmHgの減圧下で5時間反応させ、[中間体ポリエステルB-6]を得た。
次いで、冷却管、撹拌機及び窒素導入管を装備した反応槽中に、[中間体ポリエステルB-6]と、ヘキサメチレンジイソシアネート誘導体(HDIイソシアネート)をHDIイソシアネートのイソシアネート基と[中間体ポリエステルB-6]の水酸基のモル比(NCO/OH)が、2.0となる量を入れ、50%酢酸エチル溶液となるように酢酸エチルを加えて溶解した。その後、窒素気流下にて80℃まで昇温して5時間反応させ、水酸基末端のプレポリマーである[プレポリマーB-6(OH)]の酢酸エチル溶液を得た。その後、[プレポリマーB-6(OH)]の酢酸エチル溶液中の残酢酸エチル量が100ppm以下になるまで減圧した。
次いで、冷却管、撹拌機及び窒素導入管を装備した反応槽中に、[プレポリマーB-6(OH)]と、モノメチルエステルコハク酸を[プレポリマーB-6(OH)]の水酸基とモノメチルエステルコハク酸のメチル基のモル比(CH3/OH)が、2.0となる量を入れ、150℃で6時間反応させ、カルボン酸末端のプレポリマーである[プレポリマーB-6]を得た。[プレポリマーB-6]のガラス転移温度Tgは-37℃、酸価は17mgKOH/gである。
【0113】
(結晶性ポリエステル樹脂1の作製)
窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱伝対を装備した5Lの四つ口フラスコに、1,6-ヘキサンジオールとセバシン酸とを、OH基とCOOH基との比率(OH/COOH)が1.1となるように仕込んだ。仕込んだ原料の質量に対して500ppmのチタンテトライソプロポキシドとともに水を流出させながら反応させ、最終的に235℃に昇温して1時間反応させた。その後、10mmHg以下の減圧下で6時間反応させた。その後、185℃に設定し、無水トリメリット酸をCOOH基とのモル比が0.053となるように添加し、攪拌しながら2時間反応させ、[結晶性ポリエステル樹脂1]を得た。
次いで、四つ口フラスコに[結晶性ポリエステル樹脂1]55重量部、メチルエチルケトン(35重量部)、及び2-プロピルアルコール10重量部を加えた。その後、[結晶性ポリエステル樹脂1]の融点温度で加熱しながら撹拌し、上記結晶性ポリエステル樹脂を溶解させた。その後、28質量%アンモニア水溶液を、中和率200%になるように添加した。中和率は、結晶性ポリエステル樹脂の酸価から計算した。さらに、イオン交換水130重量部を徐々に加えて、転相乳化を行った後、脱溶媒を行った。その後、イオン交換水を加えて固形分濃度(結晶性ポリエステル樹脂の濃度)を25質量%に調整し、トナー用結着樹脂分散物である[結晶性ポリエステル樹脂分散液1]を得た。[結晶性ポリエステル樹脂分散液1]の粒径を測定したところ、粒径は250nmであった。また、固形分濃度は27%であった。
【0114】
(ワックスエマルジョン1の作製)
イオン交換水100重量部に、ワックスとしてHNP-9(日本精蝋製)28重量部、界面活性剤としてサニゾールB50を添加した。これを90℃に加熱しながらホモジナイザーで分散処理し、[ワックスエマルジョン1]を得た。固形分濃度は30%であった。
【0115】
(マスターバッチ1の作製)
水1,200部、カーボンブラック(Printex35デクサ製)〔DBP吸油量=42mL/100mg、pH=9.5〕500部、及びポリエステル樹脂A 500部を加え、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)で混合し、混合物を2本ロールを用いて150℃で30分間混練した。その後、圧延冷却し、パルペライザーで粉砕し、[マスターバッチ1]を得た。
【0116】
(実施例1)
<油相作製工程、水相作製工程及び転相乳化工程>
四つ口フラスコに、[ポリエステル樹脂A]100重量部、[プレポリマーB-1]30重量部、[マスターバッチ1]30重量部に、酢酸エチル160重量部を加えて撹拌し、溶解乃至分散させた。その後、攪拌しながら28質量%アンモニア水溶液5重量部を添加して中和率500%になるようにして溶解液(油相)を作製した。イオン交換水370重量部に、酢酸エチルを飽和溶解量に対して100%となるように加え、さらに界面活性剤(ドデシル硫酸ナトリウム塩)を、イオン交換水と酢酸エチルの合計量に対して2%となるように加え、水相を作製した。
次いで、油相に水相を徐々に加えて転相乳化を行った。その後、脱溶媒を行い、[スラリー1]を得た。[スラリー1]の粒径を測定したところ、0.60μmであった。また固形分濃度を測定したところ、25.0%であった。
【0117】
<凝集工程及び融着工程>
[スラリー1]を200重量部、[結晶性ポリエステル樹脂分散液1]11.0重量部、[ワックスエマルジョン1]10.5重量部、イオン交換水50重量部を容器に入れて5分間攪拌した。
次に、10%塩化マグネシウム溶液30重量部を滴下して更に5分攪拌した後、60℃に昇温した。その後、粒径が5.0μmになったところで塩化ナトリウムを6重量部添加して凝集工程を終了し、[凝集スラリー1]を得た。そのまま[凝集スラリー1]を攪拌しながら70℃に加熱して、所望の円形度である0.960になったところで冷却し、[トナー分散液1]を得た。
【0118】
<アニーリング工程及び洗浄乃至乾燥工程>
[トナー分散液1]を、45℃で10時間保管した後に減圧濾過し、以下のように洗浄と乾燥を行った。
(1):濾過ケーキにイオン交換水100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過した。
(2):(1)の濾過ケーキにイオン交換水900部を加え、超音波振動を付与してTKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで30分間)した後、減圧濾過した。リスラリー液の電気伝導度が10μC/cm以下となるようにこの操作を繰り返した後濾過して、[濾過ケーキ1]を得た。
[濾過ケーキ1]を循風乾燥機にて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmメッシュで篩い、[着色樹脂粒子1]を得た。
【0119】
<外添>
[着色樹脂粒子1]100重量部に対して無機微粒子であるキャボジル社製TS530を2.5重量部添加し、ヘンシェルミキサーで40m/sで10分間混合処理し、実施例1のトナーを得た。
【0120】
(実施例2)
実施例1において、[プレポリマーB-1]を[プレポリマーB-3]に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例2のトナーを得た。
【0121】
(実施例3)
<油相作製、転相乳化>
四つ口フラスコに、[ポリエステル樹脂A]100重量部、[プレポリマーB-3]30重量部、[マスターバッチ1]30重量部に、MEK160重量部を加えて撹拌し、溶解・分散させた。その後、攪拌しながら28質量%アンモニア水溶液5重量部を添加して中和率500%になるようにして油相を作製した。イオン交換水400重量部に、MEK(メチルエチルケトン)を飽和溶解量に対して100%となるように加え、水相を作製した。
次いで、油相に水相を徐々に加えて転相乳化を行った。その後、脱溶媒を行い、[スラリー3]を得た。[スラリー3]の粒径を測定したところ、0.30μmであった。また固形分濃度を測定したところ、25.0%であった。
【0122】
<凝集工程及び融着工程>
[スラリー3]220重量部、[結晶性ポリエステル樹脂分散液1]12.0重量部、[ワックスエマルジョン1]11.5重量部、イオン交換水50重量部を容器に入れて5分間攪拌した。
次に、10%塩化マグネシウム溶液0.75重量部を滴下して更に5分攪拌した後、60℃に昇温した。その後、粒径が5.0μmになったところで、水酸化ナトリウムでpHを8.5に調製し、イオン交換水を100重量部添加して凝集工程を終了し、[凝集スラリー3]を得た。そのまま[凝集スラリー3]を攪拌しながら70℃に加熱して、所望の円形度である0.960になったところで冷却し、[トナー分散液3]を得た。
以降の工程は実施例1と同様にして、実施例3のトナーを得た。
【0123】
(実施例4)
実施例1において、[プレポリマーB-1]を[プレポリマーB-5]に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例4のトナーを得た。
【0124】
(実施例5)
実施例1において、[プレポリマーB-1]を[プレポリマーB-2]に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例5のトナーを得た。
【0125】
(実施例6)
実施例1の油相作製工程において、[プレポリマーB-1]を[プレポリマーB-6]に変更し、更に凝集工程において、凝集剤とともに[結晶性ポリエステル樹脂1]を追加した以外は、実施例1と同様にして、実施例6のトナーを得た。
【0126】
(実施例7)
実施例1の水相作製工程において、酢酸エチルをMEKに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例7のトナーを得た。
【0127】
(比較例1)
実施例1において、プレポリマーを添加しないこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1のトナーを得た。
【0128】
(比較例2)
実施例1において、[プレポリマーB-1]を[プレポリマーB-4]のアミン伸長物に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例2のトナーを得た。
【0129】
(比較例3)
実施例3において、[プレポリマーB-3]を[プレポリマーB-4]のアミン伸長物に変更した以外は、実施例3と同様にして、比較例3のトナーを得た。
【0130】
(評価)
<低温定着性>
カラー複合機(imagio MP C4500、リコー社製)の定着ユニットを用いて、普通紙に0.6mg/cm2の黒ベタ未定着画像を形成し、定着温度を変えて定着した。コールドオフセットの発生する温度を測定し、4段階で評価した。
【0131】
[評価基準]
◎:120℃未満
○:120℃以上125℃未満
△:125℃以上130℃未満
×:130℃以上
【0132】
<高温定着性>
カラー複合機(imagio MP C4500、リコー社製)の定着ユニットを用いて、普通紙に0.6mg/cm2の黒ベタ未定着画像を形成し、定着温度を変えて定着した。ホットオフセットの発生する温度を測定し、4段階で評価した。
【0133】
[評価基準]
◎:190℃以上
○:180℃以上190℃未満
△:170℃以上180℃未満
×:170℃未満
【0134】
<耐熱保存性>
耐熱保存性の評価は、100mlのガラス瓶にトナー10gを入れ、50℃24時間の環境下に放置し、下記の評価基準に基づいて評価した。
【0135】
[評価基準]
◎:10回振ってすべて粉に戻る
〇:10回振って半分粉に戻る
△:10回振って若干粉に戻る
×:10回振っても粉に戻らない
【0136】
<着色度>
カラー複合機(imagio Mp C4500、リコー社製)の定着ユニットを用いて、普通紙に0.4mg/cm2のベタ定着画像を形成し、定着温度130℃で定着した。画像の着色度についてX-Rite exactを用いて平均5点で測定し、4段階で評価した。
【0137】
[評価基準]
◎:着色度が2.00以上
○:着色度が1.50以上2.00未満
△:着色度が1.25以上1.50未満
×:着色度が1.25未満
【0138】
実施例及び比較例のトナーの評価結果を表1に示す。なお、MEKはメチルエチルケトンを表す。
【0139】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0140】
【文献】特許第4239267号公報
【文献】特開2018-159057号公報