(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】後処理装置及び画像形成システム
(51)【国際特許分類】
B65H 37/04 20060101AFI20241008BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B65H37/04 Z
G03G15/00 432
(21)【出願番号】P 2021095305
(22)【出願日】2021-06-07
【審査請求日】2024-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100186853
【氏名又は名称】宗像 孝志
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 一貴
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 圭
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-203760(JP,A)
【文献】特開2015-168141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 37/04
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の媒体を支持可能なトレイと、
画像形成装置によって画像が形成された複数の媒体を、前記トレイに向けて搬送方向に搬送する搬送部と、
綴じ位置で前記トレイに支持された複数の媒体に加水する加水処理部と、
前記綴じ位置で複数の媒体を加圧変形させて圧着綴じする圧着処理部と、
前記トレイに支持された媒体の表面に沿って、前記加水処理部及び前記圧着処理部を独立して移動させる移動機構とを備えることを特徴とする後処理装置。
【請求項2】
前記移動機構は、
前記加水処理部を移動させる加水モータと、
前記圧着処理部を移動させる圧着モータとを有することを特徴とする請求項1に記載の後処理装置。
【請求項3】
前記移動機構は、前記トレイに支持された媒体の前記搬送方向の下流側の端部に沿って、前記搬送方向に直交する主走査方向に、前記加水処理部及び前記圧着処理部を独立して移動させることを特徴とする請求項1または2に記載の後処理装置。
【請求項4】
前記移動機構は、前記トレイより前記搬送方向の下流側において前記主走査方向に延びて、前記加水処理部及び前記圧着処理部を前記主走査方向に移動可能に支持する案内軸を有することを特徴とする請求項3に記載の後処理装置。
【請求項5】
前記加水処理部、前記圧着処理部、及び前記移動機構を制御するコントローラを備え、
前記コントローラは、
前記搬送部によって前記トレイに媒体が搬送される前に、前記搬送方向に直交する主走査方向における前記綴じ位置より媒体の中央に近い待機位置に、前記圧着処理部を移動させ、
所定枚数の媒体が前記トレイに支持されたことに応じて、前記圧着処理部を前記綴じ位置に移動させ、
前記トレイ上で束ねられた前記所定枚数の媒体を、前記綴じ位置の前記圧着処理部に圧着綴じさせることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の後処理装置。
【請求項6】
前記コントローラは、
前記搬送部によって前記トレイに媒体が搬送される前に、前記加水処理部を前記綴じ位置に移動させ、
前記搬送部によって前記トレイに媒体が搬送される度に、前記綴じ位置の前記加水処理部に加水させ、
前記所定枚数の媒体が前記トレイに支持されたことに応じて、前記加水処理部を前記綴じ位置と異なる位置に移動させることを特徴とする請求項5に記載の後処理装置。
【請求項7】
媒体に画像を形成する画像形成装置と、
前記画像形成装置によって画像が形成された複数の媒体を圧着綴じする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の後処理装置とを備えることを特徴とする画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後処理装置及び画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、画像形成装置によって画像が形成された複数の用紙を束(以下、「用紙束」と表記する。)にして綴じる後処理装置が知られている。また、後処理装置には、省資源化やエコロジーの観点から、ステープル針を用いずに、凹凸状の綴じ歯で用紙束を加圧変形させる所謂「圧着綴じ」が可能な圧着処理部を備えるものがある。
【0003】
圧着綴じには、用紙束を構成する用紙の枚数が多いほど用紙束に綴じ歯が食い込みにくくなって、適切に綴じることができないという課題がある。そこで、圧着綴じを行う後処理装置には、綴じ強度を上げる目的で、用紙上において綴じ歯が接触する位置(以下、「綴じ位置」と表記する。)に予め水分を加えて、綴じ歯が用紙束に食い込み易くするための加水処理部を備えるものがある(例えば、特許文献1を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の後処理装置は、加水処理部及び綴じ処理部を共通のモータで移動させている。そのため、モータが移動させる質量(換言すれば、モータの負荷)が大きくなって、駆動系の耐久性が低下すると共に、騒音が大きくなるという課題がある。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、加水処理部及び綴じ処理部を移動させる移動機構の耐久性を向上させると共に、移動時の騒音を低下させた後処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、複数の媒体を支持可能なトレイと、画像形成装置によって画像が形成された複数の媒体を、前記トレイに向けて搬送方向に搬送する搬送部と、綴じ位置で前記トレイに支持された複数の媒体に加水する加水処理部と、前記綴じ位置で複数の媒体を加圧変形させて圧着綴じする圧着処理部と、前記トレイに支持された媒体の表面に沿って、前記加水処理部及び前記圧着処理部を独立して移動させる移動機構とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、加水処理部及び綴じ処理部を移動させる移動機構の耐久性を向上させると共に、移動時の騒音を低下させた後処理装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図7】ステープル処理中における加水処理部及び圧着処理部の位置を示す図。
【
図8】加水を省略したステープル処理中における圧着処理部の位置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る画像形成システム1について、図面を参照しながら説明する。
図1は、画像形成システム1の全体構成を示す図である。画像形成システム1は、用紙P(媒体)に画像を形成し、画像が形成された用紙Pに対して後処理を施す機能を有する。
図1に示すように、画像形成システム1は、画像形成装置2と、後処理装置3とで構成される。
【0010】
画像形成装置2は、用紙Pに画像を形成し、画像を形成した用紙Pを後処理装置3に排出する。画像形成装置2は、用紙Pが収容されたトレイと、トレイに収容された用紙Pを搬送する搬送部と、搬送部によって搬送された用紙Pに画像を形成する画像形成部とを主に備える。画像形成部は、インクを用いて画像を形成するインクジェット方式でもよいし、トナーを用いて画像を形成する電子写真方式でもよい。画像形成装置2の構成は既に周知なので、詳細な説明は省略する。
【0011】
図2は、後処理装置3の内部構造を示す図である。後処理装置3は、画像形成装置2によって画像が形成された用紙Pに後処理を施す。本実施形態に係る後処理は、画像が形成された複数の用紙Pの束(以下、「用紙束」と表記する。)を、ステープル針を用いずに綴じるステープル処理である。より詳細には、本実施形態に係るステープル処理は、綴じ位置で用紙束を加圧変形させる所謂「圧着綴じ」である。また、ステープル処理は、用紙束の端を綴じる端綴じ処理と、用紙束の中央を綴じる中綴じ処理と含む。
【0012】
後処理装置3は、搬送ローラ対10~19(搬送部)と、切替爪20とを備える。搬送ローラ対10~19は、後処理装置3の内部において、画像形成装置2から供給された用紙Pを搬送する。より詳細には、搬送ローラ対10~13は、第1搬送路Ph1に沿って用紙Pを搬送する。また、搬送ローラ対14~15は、第2搬送路Ph2に沿って用紙Pを搬送する。さらに、搬送ローラ対16~19は、第3搬送路Ph3に沿って用紙Pを搬送する。
【0013】
第1搬送路Ph1は、画像形成装置2からの用紙Pの供給口から排出トレイ21に至る経路である。第2搬送路Ph2は、搬送方向における搬送ローラ対11、14の間において第1搬送路Ph1から分岐し、内部トレイ22を通じて排出トレイ26に至る経路である。第3搬送路Ph3は、搬送方向における搬送ローラ対11、14の間において第1搬送路Ph1から分岐し、排出トレイ30に至る経路である。
【0014】
切替爪20は、第1搬送路Ph1及び第2搬送路Ph2の分岐位置に配置されている。切替爪20は、第1搬送路Ph1を通じて用紙Pを排出トレイ21に排出する第1位置と、第1搬送路Ph1を搬送される用紙Pを第2搬送路Ph2に導く第2位置とに切り替え可能に構成されている。また、第2搬送路Ph2に進入した用紙Pの後端が搬送ローラ対11を通過したタイミングで、搬送ローラ対14を逆回転させることによって、当該用紙Pが第3搬送路Ph3に導かれる。また、後処理装置3は、各搬送路Ph1、Ph2、Ph3上の用紙Pの位置を検知する複数のセンサ(
図2に▲で示す)を備える。
【0015】
後処理装置3は、排出トレイ21を備える。排出トレイ21は、第1搬送路Ph1を通じて排出された用紙Pを支持する。排出トレイ21には、画像形成装置2から供給される用紙Pのうち、ステープル処理が施されない用紙Pが排出される。
【0016】
また、後処理装置3は、内部トレイ22(トレイ)と、エンドフェンス23と、サイドフェンス24L、24Rと、綴じ処理部25と、排出トレイ26とを備える。内部トレイ22、エンドフェンス23、サイドフェンス24L、24R、及び綴じ処理部25は、第2搬送路Ph2を搬送される用紙Pに端綴じ処理を施す。排出トレイ26には、画像形成装置2から供給される用紙Pのうち、端綴じ処理が施された用紙束が排出される。以下、搬送ローラ対15からエンドフェンス23に向かう方向を、「用紙Pの搬送方向」と定義する。また、用紙Pの表面及び用紙Pの搬送方向に直交する方向を、「主走査方向(用紙Pの幅方向)」と定義する。
【0017】
内部トレイ22は、第2搬送路Ph2を順番に搬送される複数の用紙Pを一時的に支持する。エンドフェンス23は、内部トレイ22に支持された用紙束の搬送方向の位置を揃える。サイドフェンス24L、24Rは、内部トレイ22に支持された用紙束の主走査方向の位置を揃える。綴じ処理部25は、エンドフェンス23及びサイドフェンス24L、24Rによって揃えられた用紙束の端部を綴じる。そして、搬送ローラ対15は、端綴じ処理が施された用紙束を排出トレイ26に排出する。
【0018】
図3は、綴じ処理部25の構成を示す模式図である。
図3に示すように、綴じ処理部25は、加水処理部31と、圧着処理部32と、案内軸33と、移動機構34とを主に備える。加水処理部31及び圧着処理部32は、内部トレイ22より搬送方向の下流側において、主走査方向に隣接して配置されている。案内軸33は、内部トレイ22より搬送方向の下流側において、主走査方向に延設されている。
【0019】
加水処理部31は、不図示のタンクに貯留された液体(例えば、水)を、内部トレイ22に支持された用紙Pに塗布(以下、「加水」と表記する。)する。加水処理部31は、加水ベース35を介して、主走査方向に移動可能に案内軸33に支持されている。加水処理部31の構成は既に周知なので、詳細な説明は省略する。
【0020】
圧着処理部32は、凹凸状の綴じ歯で用紙束を加圧変形させることによって、用紙束を綴じる(以下、「圧着綴じ」と表記する。)。すなわち、圧着処理部32は、ステープル針を用いずに、用紙束を綴じることができる。圧着処理部32は、圧着ベース36を介して、主走査方向に移動可能に案内軸33に支持されている。
図4は、圧着処理部32の構成を示す模式図である。
図4に示すように、圧着処理部32は、第1部材32a及び第2部材32bを備える。
【0021】
第1部材32a及び第2部材32bは、内部トレイ22に支持された用紙束を挟んで、用紙束の厚み方向に対向して配置されている。第1部材32a及び第2部材32bの互いに対向する面には、凹部及び凸部が交互に形成された凹凸状の綴じ歯が形成されている。また、第1部材32a及び第2部材32bの綴じ歯は、互いに噛合うように、凹部及び凸部がずれて形成されている。
【0022】
用紙束を構成する複数の用紙Pが内部トレイ22に供給される過程では、
図4(A)に示すように、第1部材32a及び第2部材32bは互いに離間している。そして、用紙束を構成する全ての用紙Pが内部トレイ22に支持されると、
図4(B)に示すように、第1部材32a及び第2部材32bの綴じ歯が噛合って、用紙束を厚み方向から加圧変形させる。これにより、内部トレイ22に支持された用紙束が圧着綴じされる。また、圧着綴じされた用紙束は、搬送ローラ対15によって、排出トレイ26に排出される。
【0023】
移動機構34は、内部トレイ22に支持された用紙Pの搬送方向の下流側の端部に沿って、加水処理部31及び圧着処理部32を主走査方向に独立して移動させる。より詳細には、移動機構34は、加水処理部31及び圧着処理部32を、案内軸33に沿って主走査方向に独立して移動させる。
図3に示すように、移動機構34は、加水モータ37と、圧着モータ38と、駆動プーリ39、40と、従動プーリ41、42と、無端環状ベルト43、44と、位置センサ45、46とを主に備える。但し、移動機構34の具体的な構成は、
図3の例に限定されない。
【0024】
加水モータ37は、加水処理部31を移動させるための駆動力を発生させる。駆動プーリ39及び従動プーリ41は、主走査方向に離間した位置において、綴じ処理部25のフレームに回転可能に支持されている。無端環状ベルト43は、駆動プーリ39及び従動プーリ41に掛け渡されている。そして、駆動プーリ39は、加水モータ37の出力軸に接続されている。また、加水ベース35は、無端環状ベルト43に固定されている。これにより、加水モータ37の駆動力によって駆動プーリ39及び従動プーリ41の間を無端環状ベルト43が回転し、その結果として加水処理部31が主走査方向に移動する。
【0025】
位置センサ45は、加水処理部31が予め定められたホーム位置(以下、「HP1」と表記する。)に到達したことを検知し、検知結果を示す検知信号をコントローラ100(
図5参照)に出力する。位置センサ45は、ホーム位置HP1に固定された検知部45aと、無端環状ベルト43に固定された被検知部45bとで構成される。そして、位置センサ45は、検知部45aと被検知部45bとが対面したことに応じて、コントローラ100に検知信号を出力する。なお、位置センサ45は、機械式センサ、磁気式センサ、光学式センサなどの周知の構成を採用することができる。
【0026】
圧着モータ38は、圧着処理部32を移動させるための駆動力を発生させる。駆動プーリ40及び従動プーリ42は、主走査方向に離間した位置において、綴じ処理部25のフレームに回転可能に支持されている。無端環状ベルト44は、駆動プーリ40及び従動プーリ42に掛け渡されている。そして、駆動プーリ40は、圧着モータ38の出力軸に接続されている。また、圧着ベース36は、無端環状ベルト44に固定されている。これにより、圧着モータ38の駆動力によって駆動プーリ40及び従動プーリ42の間を無端環状ベルト44が回転し、その結果として圧着処理部32が主走査方向に移動する。
【0027】
位置センサ46は、圧着処理部32が予め定められたホーム位置(以下、「HP2」と表記する。)に到達したことを検知し、検知結果を示す検知信号をコントローラ100に出力する。位置センサ46は、ホーム位置HP2に固定された検知部46aと、無端環状ベルト44に固定された被検知部46bとで構成される。そして、位置センサ46は、検知部46aと被検知部46bとが対面したことに応じて、コントローラ100に検知信号を出力する。なお、位置センサ46は、機械式センサ、磁気式センサ、光学式センサなどの周知の構成を採用することができる。
【0028】
なお、
図7(A)に示すように、加水処理部31のホーム位置HP1と、圧着処理部32のホーム位置HP2とは、主走査方向における内部トレイ22の外側の位置である。また、加水処理部31のホーム位置HP1と、圧着処理部32のホーム位置HP2とは、主走査方向の異なる位置である。本実施形態に係る加水処理部31のホーム位置HP1は、主走査方向において、圧着処理部32のホーム位置HP2より内部トレイ22から離れた位置に配置されている。
【0029】
図2に戻って、後処理装置3は、エンドフェンス27と、綴じ処理部28と、用紙折りブレード29と、排出トレイ30とをさらに備える。エンドフェンス27、綴じ処理部28、及び用紙折りブレード29は、第3搬送路Ph3を搬送される用紙Pに中綴じ処理を施す。排出トレイ30には、画像形成装置2から供給される用紙Pのうち、中綴じ処理が施された用紙束が排出される。
【0030】
エンドフェンス27は、第3搬送路Ph3を順番に搬送される複数の用紙Pの搬送方向の位置を揃える。また、エンドフェンス27は、用紙束の中央を、綴じ処理部28に対面させる綴じ位置と、用紙折りブレード29に対面させる折り位置とに移動可能に構成されている。綴じ処理部28は、綴じ位置のエンドフェンス27によって揃えられた用紙束の中央を綴じる。用紙折りブレード29は、折り位置のエンドフェンス27に支持された用紙束を半分に折って、搬送ローラ対18に挟持させる。搬送ローラ対18、19は、中綴じ処理が施された用紙束を排出トレイ30に排出する。
【0031】
図5は、後処理装置3のハードウェア構成図である。
図5に示すように、後処理装置3は、CPU(Central Processing Unit)101、RAM(Random Access Memory)102、ROM(Read Only Memory)103、HDD(Hard Disk Drive)104、及びI/F105が共通バス109を介して接続されている構成を備える。
【0032】
CPU101は演算手段であり、後処理装置3全体の動作を制御する。RAM102は、情報の高速な読み書きが可能な揮発性の記憶媒体であり、CPU101が情報を処理する際の作業領域として用いられる。ROM103は、読み出し専用の不揮発性の記憶媒体であり、ファームウェア等のプログラムが格納されている。HDD104は、情報の読み書きが可能であって記憶容量が大きい不揮発性の記憶媒体であり、OS(Operating System)や各種の制御プログラム、アプリケーションプログラムなどが格納される。
【0033】
後処理装置3は、ROM103に格納された制御プログラム、HDD104などの記憶媒体からRAM102にロードされた情報処理プログラム(アプリケーションプログラム)などをCPU101が備える演算機能によって処理する。その処理によって、後処理装置3の種々の機能モジュールを含むソフトウェア制御部が構成される。このようにして構成されたソフトウェア制御部と、後処理装置3に搭載されるハードウェア資源との組み合わせによって、後処理装置3の機能を実現する機能ブロックが構成される。すなわち、CPU101、RAM102、ROM103、及びHDD104は、後処理装置3の動作を制御するコントローラ100を構成する。
【0034】
I/F105は、搬送ローラ対10、11、14、15、切替爪20、サイドフェンス24L、24R、加水処理部31、圧着処理部32、加水モータ37、圧着モータ38、位置センサ45、46、及び操作パネル110を、共通バス109に接続するインタフェースである。コントローラ100は、I/F105を通じて、搬送ローラ対10、11、14、15、切替爪20、サイドフェンス24、加水処理部31、圧着処理部32、加水モータ37、及び圧着モータ38を動作させる。なお、
図5には端綴じ処理を実行する構成部品のみを図示しているが、中綴じ処理を実行する構成部品も同様にコントローラ100によって制御される。
【0035】
操作パネル110は、ユーザからの操作を受け付ける操作部と、ユーザに情報を報知するディスプレイ(報知部)とを備える。操作部は、例えば、ハードキー、ディスプレイに重畳されたタッチパネル等を含む。そして、操作パネル110は、操作部を通じてユーザから情報を取得し、ディスプレイを通じてユーザに情報を提供する。なお、報知部の具体例はディスプレイに限定されず、LEDランプやスピーカ等でもよい。
【0036】
図6は、ステープル処理のフローチャートである。
図7は、ステープル処理中における加水処理部31及び圧着処理部32の位置を示す図である。コントローラ100は、例えば、画像形成装置2からステープル処理の実行指示(以下、「ステープル指示」と表記する。)を取得したタイミングで、
図6に示すステープル処理を開始する。ステープル指示は、例えば、用紙束を構成する用紙Pの数(以下、「所定枚数」と表記する。)と、ステープル処理を施すべき用紙束の数(以下、「必要部数」と表記する。)とを含む。なお、ステープル処理の開始時点において、加水処理部31はホーム位置HP1に位置し、圧着処理部32はホーム位置HP2に位置しているものとする(
図7(A))。
【0037】
まず、コントローラ100は、
図7(B)に示すように、圧着モータ38を駆動して圧着処理部32をホーム位置HP2から待機位置P1に移動させ、加水モータ37を駆動して加水処理部31をホーム位置HP1から綴じ位置P2に移動させる(S601)。なお、コントローラ100は、搬送ローラ対10、11、14、15によって最初の用紙Pが内部トレイ22に搬送される前に、ステップS601の処理を実行する。
【0038】
待機位置P1及び綴じ位置P2は、内部トレイ22に支持された用紙Pに対面し得る位置である。また、待機位置P1及び綴じ位置P2は、ホーム位置HP1、HP2と異なる位置である。より詳細には、待機位置P1は、綴じ位置P2より用紙Pの搬送方向の中央に近い位置である。綴じ位置P2は、後述するステップS603で加水処理部31が加水を行う位置で、且つ後述するステップS606で圧着処理部32が圧着綴じを行う位置である。待機位置P1及び綴じ位置P2は、ステープル指示に含まれていてもよいし、操作パネル110を通じてユーザによって指定されてもよい。コントローラ100は、例えば、各モータ37、38の出力軸に取り付けられたエンコーダセンサによって、加水処理部31及び圧着処理部32の位置を把握すればよい。
【0039】
次に、コントローラ100は、搬送ローラ対10、11、14、15を回転させることによって、画像形成装置2によって画像が形成された用紙Pを内部トレイ22に収容する(S602)。また、コントローラ100は、サイドフェンス24L、24Rを移動させることによって、内部トレイ22に支持された用紙束の主走査方向の位置を揃える(所謂、ジョギング)。
【0040】
次に、コントローラ100は、直前のステップS602で内部トレイ22に支持された用紙Pに対して、綴じ位置P2の加水処理部31に加水させる(S603)。次に、コントローラ100は、内部トレイ22に収容された用紙の数が、ステープル指示で示された所定枚数に達したか否かを判定する(S604)。そして、コントローラ100は、内部トレイ22に収容された用紙の数が所定枚数に達していないと判定した場合に(S604:No)、ステップS602の処理を再び実行する。すなわち、コントローラ100は、搬送ローラ対10、11、14、15によって内部トレイ22に用紙Pが搬送される度に、ステップS603の処理を実行する。
【0041】
そして、コントローラ100は、内部トレイ22に収容された用紙Pの数が所定枚数に達したと判定した場合に(S604:Yes)、
図7(C)に示すように、加水モータ37を駆動して加水処理部31を綴じ位置P2からホーム位置HP1に移動させ、圧着モータ38を駆動して圧着処理部32を待機位置P1から綴じ位置P2に移動させる(S605)。なお、ステップS605における加水処理部31の移動先は、綴じ位置P2と異なる位置であれば、ホーム位置HP1に限定されない。
【0042】
次に、コントローラ100は、内部トレイ22に収容された用紙束に圧着綴じを施して、排出トレイ26に排出する(S606)。より詳細には、コントローラ100は、綴じ位置P2の圧着処理部32を駆動することによって、内部トレイ22に収容された用紙束を圧着綴じする。次に、コントローラ100は、搬送ローラ対15を回転させることによって、圧着綴じされた用紙束を排出トレイ26に排出する。
【0043】
次に、コントローラ100は、排出された用紙束の数が、ステープル指示で示された必要部数に達したか否かを判定する(S607)。コントローラ100は、必要部数に達していないと判定した場合に(S607:No)、ステップS602以降の処理を再び実行する。すなわち、コントローラ100は、排出トレイ26に排出した用紙束の数が必要部数に達するまで(S607:No)、ステップS602~S606の処理を繰り返し実行する。
【0044】
そして、コントローラ100は、必要部数に達したと判定した場合に(S607:Yes)、圧着モータ38を駆動して圧着処理部32を綴じ位置P2からホーム位置HP2に移動させて(S608)、ステープル処理を終了する。これにより、加水処理部31及び圧着処理部32が
図7(A)の位置に戻る。
【0045】
上記の実施形態によれば、例えば以下の作用効果を奏する。
【0046】
上記の実施形態によれば、加水処理部31及び圧着処理部32を個別のモータ37、38で移動させるので、各モータ37、38が移動させる質量(すなわち、各モータ37、38の負荷)を小さくすることができる。その結果、移動機構34の耐久性が向上すると共に、加水処理部31及び圧着処理部32の移動時の騒音を低下させることができる。
【0047】
また、上記の実施形態によれば、移動機構34が2つのモータ37、38を備えるので、ステップS601、S605で加水処理部31及び圧着処理部32を同時に移動させることができる。その結果、ステープル処理の処理速度が向上する。但し、移動機構34の構成は前述の例に限定されない。他の例として、移動機構34は、単一のモータと、モータの駆動力を加水処理部31及び圧着処理部32に選択的に伝達する切替機構とを備えてもよい。切替機構は、ギヤ、クラッチ、無端環状ベルト等を組み合わせた周知の構成で実現することができる。
【0048】
また、上記の実施形態によれば、加水処理部31及び圧着処理部32が共通の案内軸33に支持されて主走査方向に移動するので、構造をシンプルにすることができる。但し、加水処理部31及び圧着処理部32を支持する構成は、前述の例に限定されない。また、加水処理部31及び圧着処理部32の移動方向は、主走査方向のみに限定されず、内部トレイ22に支持された用紙Pの表面に沿う方向であれば、主走査方向及び搬送方向(副走査方向)であってもよい。
【0049】
また、上記の実施形態によれば、所定枚数の用紙Pが内部トレイ22に収容される間、圧着処理部32を待機位置P1で待機させる。これにより、用紙Pの主走査方向の両端部がカールしている場合でも、第1部材32a及び第2部材32bの間に用紙Pを適切に進入させることができる。
【0050】
また、上記の実施形態によれば、所定枚数の用紙Pそれぞれに加水することによって、用紙束を構成する用紙Pの枚数が多い場合でも、適切に圧着綴じを行うことができる。但し、加水処理部31は、所定枚数の用紙Pのうちの一部にのみ加水を行ってもよい。
【0051】
また、上記の実施形態において、加水処理部31による加水を省略してもよい。
図8は、加水を省略したステープル処理中における圧着処理部32の位置を示す図である。加水を省略するときは、加水処理部31をホーム位置HP1に退避させておき、圧着処理部32のみを移動させる。この場合、加水モータ37を駆動させずに圧着モータ38のみを駆動させれば、所定の後処理を行うことができる。すなわち、同時に駆動させる駆動源の数を調整することにより省エネルギーを図ることもできる。
【0052】
加水処理部31による加水を省略する場合、コントローラ100は、ステップS601、S605における加水処理部31の移動を省略する。より詳細には、コントローラ100は、ステップS601において、圧着処理部32をホーム位置HP2から待機位置P1に移動させる(
図8(B))。また、コントローラ100は、ステップS605において、圧着処理部32を待機位置P1から綴じ位置P2に移動させる(
図8(C))。さらに、コントローラ100は、ステップS608において、圧着処理部32を綴じ位置P2からホーム位置HP2に移動させる(
図8(A))。一方、加水処理部31は、ステープル処理の開始から終了までの間、継続してホーム位置HP1に配置される。
【0053】
なお、用紙Pに加水するか否かは、操作パネル110を通じてユーザによって指定されてもよいし、コントローラ100によって判断されてもよい。一例として、コントローラ100は、用紙束を構成する用紙Pの数(=所定枚数)が閾値以上の場合に加水すると判定し、所定枚数が閾値未満の場合に加水を省略すると判定してもよい。他の例として、コントローラ100は、用紙Pの剛性が閾値以上の場合に加水すると判定し、用紙Pの剛性が閾値未満の場合に加水を省略すると判定してもよい。
【0054】
また、主走査方向における加水処理部31及び圧着処理部32の位置関係は、
図3の例に限定されず、逆転していてもよい。また、
図7及び
図8において、ホーム位置HP1、HP2は、用紙Pより右方の位置に限定されず、用紙Pより左方の位置であってもよい。
【0055】
また、上記の実施形態では、用紙Pを支持した内部トレイ22を固定し、加水処理部31及び圧着処理部32を移動可能に構成した例を説明したが、用紙Pに対する加水処理部31及び圧着処理部32の位置を変更する方法はこれに限定されない。他の例として、加水処理部31及び圧着処理部32を固定し、用紙Pを支持した内部トレイ22を移動させてもよい。さらに他の例として、加水処理部31及び圧着処理部32と、用紙Pを支持した内部トレイ22との両方を移動させてもよい。
【0056】
また、上記の実施形態では、端綴じ処理を実行する綴じ処理部25を移動機構34で移動させる例を説明したが、移動機構34は、中綴じ処理を実行する綴じ処理部28にも適用することができる。
【0057】
また、上記に説明した制御方法は、例えば、プログラム等で実現してもよい。すなわち、制御方法は、プログラムに基づいて、演算装置、記憶装置、入力装置、出力装置、及び、制御装置を協働して動作させて、コンピュータが実行する方法である。また、プログラムは、記憶装置、又は、記憶媒体等に書き込まれて配布、又は、電気通信回線等を通じて配布されてもよい。
【0058】
なお、本発明は、上記に例示する各実施形態に限定されるものではなく、その技術的要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項のすべてが本発明の対象となる。上記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者であれば、開示した内容から様々な変形例を実現することが可能である。そのような変形例も、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
1 :画像形成システム
2 :画像形成装置
3 :後処理装置
10-19 :搬送ローラ対
20 :切替爪
21,26,30 :排出トレイ
22 :内部トレイ
23,27 :エンドフェンス
24L,24R :サイドフェンス
25,28 :綴じ処理部
29 :用紙折りブレード
31 :加水処理部
32 :圧着処理部
32a :第1部材
32b :第2部材
33 :案内軸
34 :移動機構
35 :加水ベース
36 :圧着ベース
37 :加水モータ
38 :圧着モータ
39,40 :駆動プーリ
41,42 :従動プーリ
43,44 :無端環状ベルト
45,46 :位置センサ
45a,46a :検知部
45b,46b :被検知部
100 :コントローラ
101 :CPU
102 :RAM
103 :ROM
104 :HDD
105 :I/F
109 :共通バス
110 :操作パネル
【先行技術文献】
【特許文献】
【0060】