(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】評価用密閉収納容器、および密閉収納容器のダストの評価方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/673 20060101AFI20241008BHJP
B65D 85/30 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
H01L21/68 T
B65D85/30 500
(21)【出願番号】P 2021103523
(22)【出願日】2021-06-22
【審査請求日】2023-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 聖二
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-198160(JP,A)
【文献】特開2020-115591(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/673
B65D 85/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハを収納する容器本体と、該容器本体の開口部を開閉する蓋とを備えており、前記容器本体内
のダストの評価を行うための評価用密閉収納容器であって、
前記容器本体において、前記蓋の対向壁面の中心位置に接続口が設けられており、
該接続口に
、前記ダストを評価するための
気中パーティクル測定器と繋がる管が接続されており、該管の先端は前記対向壁面から前記容器本体内に突出しておらず、
前記評価用密閉収納容器は、搬送室との間での前記ウェーハの搬入または搬出において、前記蓋と嵌合するロードポートのロードポートドアによる前記蓋の開放または閉塞時
の前記ダストの流入の評価に用いられるものであることを特徴とする評価用密閉収納容器。
【請求項2】
ウェーハを収納する容器本体と、該容器本体の開口部を開閉する蓋とを備えた密閉収納容器において、前記容器本体内
のダストを評価する方法であって、
前記密閉収納容器と搬送室との間で前記ウェーハを搬入または搬出するとき、
前記密閉収納容器として、前記容器本体において、前記蓋の対向壁面の中心位置に接続口を設け、該接続口に
、前記ダストを評価するための
気中パーティクル測定器と繋いだ管を先端が前記対向壁面から前記容器本体内に突出しないように接続したものを用い、
前記蓋にロードポートのロードポートドアを嵌合させて前記蓋を開放または閉塞したとき
の前記ダストの流入を評価することを特徴とする密閉収納容器
のダストの評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は評価用密閉収納容器、および密閉収納容器の圧力またはダストの評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン等の半導体ウェーハ(以下、単に、ウェーハとも言う)を製造する工程で使用される装置のEFEM(Equipment Front End Module)におけるロードポートや半導体ウェーハを収納する密閉収納容器(以下、単に、収納容器とも言う)であるFOUP(Front Opening Unified Pod)などの位置関係はSEMI(Semiconductor Equipment and Material International)規格によって規定されている(特許文献1参照)。
【0003】
ここで、ロードポートによってFOUPの蓋が開いた際に、FOUP内がロードポートなどの装置やFOUPのパッキンなどから発塵したダストを含む外気の流入によって汚染されることがある。FOUPに収納された半導体ウェーハの欠陥の原因となるため装置などの設備導入時などに、FOUPの蓋を開けた際にFOUP内にどの程度のダストが流入するかを評価する、ダストの流入(発塵)評価や、蓋の開閉時の収納容器の急激な圧力の変化を生じないように、蓋の開閉動作のスピードや押圧の条件調整のため容器内の圧力の変動を評価する、圧力変動評価が実施されている。
【0004】
これらの評価においては、発塵や圧力変動を測定する測定器を繋ぐチューブ(管)をFOUPの下面(底面)や側面、上面(天板)などの壁部に貫通する穴をあけて、チューブをFOUP内に導入して、これらの評価を行っていた。
しかしながら、収納容器内において、チューブを下面(底面)から導入した場合には、下面からチューブが突き出ているため、収納容器内の下側領域には半導体ウェーハは載置できない。チューブを上面(天板)から導入した場合には、上面からチューブが突き出ているため、収納容器内の上側領域には半導体ウェーハは載置できない。チューブを側面から導入した場合には、側面からチューブが突き出ているため、収納容器内の中央領域には半導体ウェーハは載置できない。
【0005】
以上のことより、従来、FOUPなどの収納容器にウェーハを上側から下側まで全て載置した、通常の使用状態で、これらの発塵や圧力変動を測定することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、FOUPなどの密閉収納容器にウェーハを特には上側から下側まで全て充填したような通常の使用状態でも、これらのFOUPの蓋の開閉時に流入する空気による発塵や圧力変動を評価することが可能な評価用密閉収納容器および密閉収納容器の圧力またはダストの評価方法を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、ウェーハを収納する容器本体と、該容器本体の開口部を開閉する蓋とを備えており、前記容器本体内の圧力またはダストの評価を行うための評価用密閉収納容器であって、
前記容器本体において、前記蓋の対向壁面の中心位置に接続口が設けられており、
該接続口に、前記圧力または前記ダストを評価するための外部評価測定器と繋がる管が接続されており、該管の先端は前記対向壁面から前記容器本体内に突出しておらず、
前記評価用密閉収納容器は、搬送室との間での前記ウェーハの搬入または搬出において、前記蓋と嵌合するロードポートのロードポートドアによる前記蓋の開放または閉塞時の前記圧力の変動または前記ダストの流入の評価に用いられるものであることを特徴とする評価用密閉収納容器を提供する。
【0009】
このような本発明の評価用の収納容器であれば、突出したチューブの存在により一部の領域にウェーハを充填できない従来品とは異なり、特には通常の使用状態、すなわち、上側から下側まで全てウェーハを充填した状態(以下、フル充填とも言う)とすることができ、その状態で、ウェーハの搬送室への搬出入における蓋の開閉時での圧力の変動またはダストの流入(発塵)の評価を行うことができる。すなわち、従来よりも一層、実際の使用状況に則した状態で評価を行うことができ、より正確な評価が可能である。
またダストが上側や下側から流入する外気のどちらに含まれていても、より確実に検出して評価できる。さらに上記接続口は、蓋のパッキンの上下左右の気密状態が破壊し得る位置からほぼ等しい位置にあるため、圧力変動の経時変化に関し、そのような気密状態の破壊位置の依存性も殆どない。
【0010】
このとき、前記外部評価測定器が差圧計であるものとすることができる。
または、前記外部評価測定器が気中パーティクル測定器であるものとすることができる。
【0011】
このようなものであれば、簡便に、差圧計により収納容器内の圧力の変動を測定して評価できるし、また、気中パーティクル測定器により収納容器内での発塵の評価を行うことができる。
【0012】
また本発明は、ウェーハを収納する容器本体と、該容器本体の開口部を開閉する蓋とを備えた密閉収納容器において、前記容器本体内の圧力またはダストを評価する方法であって、
前記密閉収納容器と搬送室との間で前記ウェーハを搬入または搬出するとき、
前記密閉収納容器として、前記容器本体において、前記蓋の対向壁面の中心位置に接続口を設け、該接続口に、前記圧力または前記ダストを評価するための外部評価測定器と繋いだ管を先端が前記対向壁面から前記容器本体内に突出しないように接続したものを用い、
前記蓋にロードポートのロードポートドアを嵌合させて前記蓋を開放または閉塞したときの前記圧力の変動または前記ダストの流入を評価することを特徴とする密閉収納容器の圧力またはダストの評価方法を提供する。
【0013】
このような本発明の評価方法であれば、ウェーハのフル充填という実際の使用状況に則した状態で、収納容器内での圧力変動または発塵の評価を行うことができ、より正確な評価が可能である。
また、ダストのより確実な評価を行えるし、圧力変動の経時変化について気密状態の破壊位置による依存性も殆どない。
【0014】
このとき、前記外部評価測定器を差圧計とすることができる。または、前記外部評価測定器を気中パーティクル測定器とすることができる。
【0015】
このようにすれば、簡便に、差圧計を用いた圧力変動の評価や気中パーティクル測定器を用いた発塵の評価を行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の評価用密閉収納容器および密閉収納容器の圧力またはダストの評価方法であれば、収納容器にウェーハをフル充填した状態で評価を行うことも可能であり、それによって収納容器内での圧力変動または発塵の評価を、より一層実際の使用状況に則した正確なものとすることができる。ダストや圧力に関して、より確実な評価が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の評価用密閉収納容器を配置したウェーハ移載装置の一例を示す説明図である。
【
図2】本発明の評価用密閉収納容器の一例を示す側面図である。
【
図3】本発明の評価用密閉収納容器の一例を示す上面図である。
【
図4】容器本体に流入する外気の流れを側面から見た場合の一例を示す説明図である。
【
図5】容器本体に流入する外気の流れを上面から見た場合の一例を示す説明図である。
【
図6】比較例1の評価用FOUPを示す側面図である。
【
図7】比較例2の評価用FOUPを示す側面図である。
【
図8】比較例3の評価用FOUPを示す側面図である。
【
図9】比較例4の評価用FOUPを示す側面図である。
【
図10】比較例5の評価用FOUPを示す側面図である。
【
図11】比較例1における容器本体に流入する外気の流れを示す説明図である。
【
図12】比較例2における容器本体に流入する外気の流れを示す説明図である。
【
図13】比較例3における容器本体に流入する外気の流れを示す説明図である。
【
図14】比較例4における容器本体に流入する外気の流れを示す説明図である。
【
図15】比較例5における容器本体に流入する外気の流れを示す説明図である。
【
図16】一般的な密閉収納容器を配置したウェーハ移載装置の一例を示す説明図である。
【
図17】一般的な密閉収納容器の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明についてより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
まず本発明者が本発明を見出すに至った経緯について説明する。
本発明者は密閉収納容器(ここではFOUPを例に挙げて説明する)の蓋を開けた際にFOUP内に侵入する外気の流れについて調査した。
その結果、FOUP内に全てウェーハが載置された状態でロードポートのロードポートドアによりFOUPの蓋を開けると、容器本体と蓋の隙間から外気が流れ込む。しかし、ウェーハが下側から上側まで、水平且つ均等に載置されていることから、FOUP上面(天板)の壁と、最も上側に位置するウェーハとの間の空間を通って、蓋側から最奥部の側壁に向かって外気が導入される。これと同時にFOUP下面(底面)の壁と、最も下側に位置するウェーハとの間の空間を通って、蓋側から最奥部の側壁に向かって外気が導入される。
それぞれ最奥部の側壁に達した外気の流れは側壁に沿って流れ、上側の外気は下側へ、下側の外気は上側へと流れ、側壁の中央部の付近でぶつかり、次に均等且つ水平に載置されたウェーハの間を通って蓋側の方へ流れることが確認された。
【0019】
FOUPの蓋開閉機構や搬送室内のウェーハ搬送ロボットなど各所から発塵する可能性があり、FOUPの蓋を開けた際に、容器本体内に流れ込む外気にダストが含まれることが多く、上側の外気の流れのみ、または下側の外気の流れのみ、さらに上側と下側の両方の流れの両方にダストが含まれている可能性がある。測定する位置が上側や下側にあり、下側または上側の流れのみにダストが含まれている場合に確実には評価できない可能性がある。
また蓋開閉時の圧力変動を測定する場合には、測定する位置が上側や下側にあった場合に、圧力変動の時間的経過が正しく測定できない場合があった。
【0020】
これらを鑑みて発塵や圧力変動を測定する場所は、FOUPの蓋側から最奥の側壁(すなわち、蓋の対向壁面)の中央付近が適切であることがわかった。また、発塵や圧力変動を測定する管はその側壁に開けた穴と繋ぐのみとし、管の先端位置が側壁と同一平面内であり突出していないことが適切であることがわかった。
本発明者はこれらを見出し、本発明を完成させた。
【0021】
以下、図面を参照して本発明における実施の形態を詳細に説明する。
本発明の評価用密閉収納容器を説明するにあたって、まず、一般的な密閉収納容器とウェーハ移載装置の関係性について説明する。
図16に一般的な密閉収納容器を配置したウェーハ移載装置10の一例を示す。なお、一般的な密閉収納容器101と、処理装置20を併せて図示している。ここでは密閉収納容器101の一例として、FOUPのタイプを挙げて説明するが、タイプは特に限定されない。
ウェーハ移載装置10の搬送(移載)対象のウェーハは特に限定されず、例えば半導体シリコンウェーハ、化合物半導体ウェーハなど各種半導体ウェーハが挙げられ、特には研磨されたシリコンウェーハやエピタキシャル成長にて成膜した、シリコンウェーハとすることができる。
その他、ガラス基板などのウェーハ状のものも移載搬送可能な装置である。
【0022】
ここで、一般的なFOUP101について
図17を参照して説明する。
FOUP101はウェーハを収納する密閉収納容器である。FOUP101は、容器本体102と蓋103とを備える。容器本体102は複数のウェーハを収納可能に形成されており、前面に開口部(ウェーハ搬出口)を有する。この開口部からウェーハの出し入れが行われる。
図17において、容器本体102の前面は右側の面である。蓋103は容器本体102の前面の開口部を開閉するためのものである。蓋103が閉まると容器本体102の内側は密閉される。
FOUP101内にウェーハWを収納して搬送する場合、通常、ウェーハWはフル充填されている。
【0023】
次に、
図16を参照してウェーハ移載装置10について説明する。
まずウェーハ移載装置10はEFEM11を有している。このEFEM11はFOUP101に収納されたウェーハWを、FOUP101から処理装置20まで、ミニエンバイロメント方式で搬送する。EFEM11は、搬送ロボット12と、搬送室13、ロードポート14とを備える。
搬送ロボット12はFOUP101に収納されたウェーハWを取り出して搬送するものである。
搬送室13は搬送ロボット12を格納する。搬送ロボット12によりFOUP101より取り出されたウェーハWは搬送室13を介して処理装置20に搬送される。
【0024】
ロードポート14はFOUP101とEFEM11との間でウェーハWを受け渡すためのインターフェースである。ロードポート14は、ロードポート架台(架台)15と、ロードポートドア(ドア)16とを備える。架台15は、FOUP101を載置する箇所である。ドア16は、ウェーハ出入り口(基板搬入口)となる開口部を開閉するためのものであり、ラッチキー機構が組み込まれている。FOUP101のドア16が閉まると搬送室13の内側は密閉される。
【0025】
FOUP101から処理装置20までウェーハWを搬送する場合、まず、FOUP101は架台15の所定の位置に、FOUP101の蓋103とロードポート14のドア16とが対向するように配置される。この際、FOUP101の蓋103とロードポート14のドア16が嵌合し、ラッチキーを回転させた後に蓋103を開く。そして、FOUP101に収納されたウェーハWを搬送ロボット12によって処理装置20まで搬送する。これにより、ウェーハWのミニエンバイロメント方式の搬送が行われる。
【0026】
上述の通り、FOUP101は蓋103によって密閉されているため、例えば蓋103が開くと内側が負圧となる。FOUP101の内側が負圧になると、外気が流れ込み、空気中のダストが容器本体102内に侵入する。
このようにウェーハWの搬出または搬入に伴う蓋103の開放または閉塞時には、容器本体102内の圧力変動やダストの流入が生じ得る。そのため、それらについての評価が実施されている。
【0027】
以下、その評価の際に用いることができる本発明の評価用密閉収納容器の各構成について説明する。
図1に本発明の評価用密閉収納容器を配置したウェーハ移載装置の一例を示す。ウェーハ移載装置10自体は
図16のものと同様である。
図16とは、一般的なFOUP101ではなく、本発明の評価用密閉収納容器1が配置されている点で異なっている。
また、
図2、
図3に本発明の評価用密閉収納容器1の側面図および上面図を示す。
ここでは密閉収納容器1の一例として、FOUPのタイプを挙げて説明するが、タイプは特に限定されない。
評価用密閉収納容器(評価用FOUPとも呼ぶ)1は、容器本体2と蓋3とを備える。容器本体2は複数のウェーハWを収納可能に形成されており、前面に開口部(ウェーハ搬出口)を有する。この開口部からウェーハWの出し入れが可能である。なお、蓋3は、一般的なFOUP101と同様にロードポート14のドア16と嵌合し、ラッチキー機構によって蓋3の開閉が可能である。
また、評価用FOUP1は、容器本体2の蓋3(開口部)と対向する壁面4に接続口5が設けられており、その位置は対向壁面4の中心位置である。なお、この接続口5は対向壁面4を貫通するように形成されている。
そして、この接続口5には管状の接続手段(管6)の一端が接続されており、他端は外部評価測定器7と繋がっている。接続口5の側の管6の先端は対向壁面4から容器本体2の内部に向かって突出しないようにして接続されている。つまり、対向壁面4と管6の先端との間に段差は生じていない。
【0028】
従来の評価用FOUPでは、測定に用いる管は容器本体内に突出しているため、その突出している領域にはウェーハを収納することができなかった。つまり、特にはウェーハのフル充填という実際の使用状況に則した状態で、収納容器内での圧力変動または収納容器内へのダストの流入(発塵)の評価を行うことができなかった。しかしながら、本発明では管6は容器本体2の内部へ突出していないのでウェーハをフル充填した上で評価を行うことができる。そのため、より正確な評価が可能である。
【0029】
なお、管6と繋がる外部評価測定器7としては、例えば、気中パーティクル測定器や差圧計が挙げられ、これらであれば簡便に評価できる。しかし特に限定されるものではなく、管6を通じて評価用FOUP内の空気を吸入したり、圧力を検知するなどして、ダストの流入や圧力変動の測定を行うことができるものであれば良い。
このように圧力やダストを評価するための装置は、評価用FOUP1と外部評価測定器7とからなっている。
【0030】
次に、本発明の評価用FOUP1の有効性についてさらに示すため、評価用FOUP1にウェーハWを収納して、ロードポート14にて蓋3を開けた時に流入する空気の流れを説明する。
【0031】
FOUP1に、例えばウェーハWがフル充填されている場合(あるいはそれに近い状態の場合)、ウェーハWは水平且つ均等な間隔で載置されていることから、流入する外気は、このウェーハWに沿った水平な流れとなって流入する。これは大きく分けて2つの流れが存在する。側面から見た場合の
図4、上面から見た場合の
図5に、それらの流れを示す。
第1の流れは、評価用FOUP1の上面(天板)の壁と、最も上側に位置するウェーハとの間の空間を通って外気が流入する。これと同時に第2の流れは、評価用FOUP1の下面(底面)の壁と、最も下側に位置するウェーハとの間の空間を通って外気が流入する。
そして第1の流れは、評価用FOUP1の上面の壁と、最も上側に位置するウェーハとの間の空間を通って奥まで流れ、その後、最奥部の側壁に沿って下側へと流れる。第2の流れは、評価用FOUP1の下面の壁と、最も下側に位置するウェーハとの間の空間を通って奥まで流れ、その後、最奥部の側壁に沿って上側側へと流れる。
さらに、最奥部の側壁に沿って下側へと流れる第1の流れと、最奥部の側壁に沿って上側へと流れる第2の流れとが評価用FOUP1の最奥部の中央付近でぶつかり、中央部付近に載置されたウェーハとウェーハの間を通って蓋側へと合流して流れる。
【0032】
これより、流入する外気に含まれる発塵を評価する位置は、第1の外気の流れと、第2の外気の流れがぶつかる評価用FOUP1の最奥部の側壁(すなわち、蓋3に対向する壁)の中央部付近が最適であり、上述したように、本発明の評価用FOUP1では実際にその位置に外部評価測定器7と繋がる管6が接続されている接続口5が測定用に設けられている。
【0033】
この位置にて気中パーティクルカウンターの吸入口として外部評価測定器7を繋げている本発明では、第1の流れにのみ含まれたダスト、第2の流れにのみ含まれたダスト、また第1及び第2の両方の流れに含まれたダストについていずれでも確実に検出できる。
これに対して、例えば上側領域に管が接続されている従来品のような場合では、下側領域のみに流入してきたダスト(第2の流れにのみ含まれたダスト)を検出できない可能性がある。下側領域に管が接続されている場合は、その逆に第1の流れにのみ含まれたダストを検出できない可能性がある。このように正確な評価ができない恐れがある。
【0034】
さらに、前述したように評価用FOUP1内の全体にウェーハWを載置することが可能であることから、実際の使用時と同様な状態で、評価用FOUP1の蓋3の開閉時の影響を評価できるが、それと併せて、これらのフル充填のウェーハWについて、蓋3の開閉時の前後のパーティクル個数を測定しておくことで、評価用FOUP1内のどの位置で流入する外気に含まれるダストの影響が大きいか、ウェーハWの載置された位置やウェーハWの面内のマップ位置を確認することで、どの流れによるダストの影響か詳細に解析することが可能となった。
【0035】
また、圧力変動を測定するために、差圧計を繋げた場合、評価用FOUP1の蓋3を開けた時に、容器本体2と蓋3のパッキン部のいずれかの位置で気密状態が破壊され外気が流入し、圧力変動が発生する。蓋3の上側、下側、左側、右側のいずれの位置で気密状態が破壊して気圧の変動が発生しても、それらの位置から対向壁面4の接続口(測定口)まではほぼ等しい位置にある。そのことから、気圧変動の経時変化における、気密状態が破壊する位置の依存性が殆ど発生しない。このような依存性がなく、安定した評価を行うことができる。
【0036】
次に、本発明の密閉収納容器の圧力またはダストの評価方法について説明する。特には、
図1-3に示すような本発明の評価用FOUP1を用いた場合について説明する。
ウェーハWを収納した評価用FOUP1を、EFEM11のロードポート14の架台15に載置する。評価用FOUP1の蓋3とロードポート14のドア16を嵌合させ、ラッチキー機構によりラッチキーを回してロックを解除した状態で、ドア16により評価用FOUP1の蓋3を開く。この時、評価用FOUP1の容器本体2の内側の密閉空間は負圧となる。これより評価用FOUP1の容器本体2の外部から内側の密閉空間へと外気が流入する。
このとき、評価用FOUP1に繋げられている差圧計や気中パーティクル測定器などの外部評価測定器7によって、管6および接続口5を介して容器本体2内の圧力や流入したダストを検出し、それらの変動を評価する。
【0037】
なお、上記はウェーハWを評価用FOUP1から搬出する際の蓋3の開放時の影響評価を説明したものであるが、これに限定されず、逆にウェーハWを評価用FOUP1に搬入する場合や、蓋3を閉塞する場合についても同様にして評価を行うことができる。そして、得られた評価を基にして、ウェーハWの搬出入時における蓋3の開閉動作のスピードなどの各種の条件を適切に調整した上で、実際に搬出入を行うことができる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
後述する実施例、比較例1~5の各種の評価用FOUPに、各々、ウェーハを出来るだけ収納し、
図1に示すようなウェーハ移載装置のロードポートを用いて評価用FOUPの蓋を開放し、ダストの流入の評価を外部評価測定器(気中パーティクル測定器)を用いて行った。
(実施例)
図2と同様の本発明の評価用FOUPを用意した。これは、容器本体の開口部と対向する側面(蓋の対向壁面)に外部評価測定器と管によって繋がれた接続口を備え、該接続口は開口部と対向する側面の中心に位置している。さらに管の先端は開口部と対向する側面と同じ平面内に留まり、容器本体の内側には突出していない。ウェーハは上側から下側まで載置されている。
【0039】
(比較例1)
図6の評価用FOUPを用意した。これは、容器本体の開口部と隣接する上面に外部評価測定器と管によって繋がれた接続口を備え、該接続口は開口部と隣接する上面の中心に位置している。さらに管の先端はFOUPの上面と同じ平面内に留まり、容器本体の内側には突出していない。それ以外は実施例1と同じ評価用FOUPである。
【0040】
(比較例2)
図7の評価用FOUPを用意した。これは、容器本体の開口部と隣接する上面に外部評価測定器と管によって繋がれた接続口を備え、該接続口は開口部と隣接する上面の中心に位置している。さらに管の先端はFOUPの上面から容器本体の内側中心まで突出している。上半分の空間にウェーハが載置されていない。それ以外は実施例1と同じ評価用FOUPである。
【0041】
(比較例3)
図8の評価用FOUPを用意した。これは、容器本体の開口部と隣接する下面に外部評価測定器と管によって繋がれた接続口を備え、該接続口は開口部と隣接する下面の中心に位置している。さらに管の先端はFOUPの下面と同じ平面内に留まり、容器本体の内側には突出していない。それ以外は実施例1と同じ評価用FOUPである。
【0042】
(比較例4)
図9の評価用FOUPを用意した。これは、容器本体の開口部と隣接する下面に外部評価測定器と管によって繋がれた接続口を備え、該接続口は開口部と隣接する下面の中心に位置している。さらに管の先端はFOUPの下面から容器本体の内側中心まで突出している。下半分の空間にウェーハが載置されていない。それ以外は実施例1と同じ評価用FOUPである。
【0043】
(比較例5)
図10の評価用FOUPを用意した。これは、容器本体の開口部と対向する側面に外部評価測定器と管によって繋がれた接続口を備え、該接続口は開口部と対向する側面の中心に位置している。さらに管の先端は開口部と対向する側面から容器本体の内側中心まで突出している。中央の空間にウェーハが載置されていない。それ以外は実施例1と同じ評価用FOUPである。
【0044】
実施例の場合には、管が開口部に対向する側面から内側密閉空間に突出していないことから、FOUPの内部全体にウェーハを載置できる。実際の使用に即した状態での評価を行うことができる。そして、接続口が、開口部に対向する側面の中心位置に設けられていることから、蓋を開いた際に流入する外気において、
図4に示すように、上側及び下側の流れである、第1及び第2の流れが合流する位置で採取して検出することができ、第1及び第2の流れの両方のダストの影響を評価することができ、比較例1-5と比較してより正確に評価を行うことができた。
【0045】
比較例1の場合には、FOUPの容器本体から管が上面から内側密閉空間に突出していないことから、FOUPの内部全体にウェーハを載置できる。しかし、接続口が、FOUPの容器本体の上面に設けられていることから、蓋を開いた際に流入する外気において、
図11に示すように、上側の流れである第1の流れのダストの影響しか評価することができない。
【0046】
比較例2の場合には、FOUPの容器本体から管が内側密閉空間の上側から中心まで突出していることから、FOUPの内部上半分の空間にウェーハを載置できない。これより、蓋を開いた際に流入する外気において、FOUPの容器本体の上半分の空間にウェーハが存在しないことから、
図12に示すように、上側の流れである第1の流れが遅くなりダストの影響を十分に評価することができない。
【0047】
比較例3の場合には、FOUPの容器本体から管が下面から内側密閉空間に突出していないことから、FOUPの内部全体にウェーハを載置できる。しかし、接続口が、FOUPの容器本体の下面に設けられていることから、蓋を開いた際に流入する外気において、
図13に示すように、下側の流れである第2の流れのダストの影響しか評価することができない。
【0048】
比較例4の場合には、FOUPの容器本体から管が内側密閉空間の下側から中心まで突出していることから、FOUPの内部下半分の空間にウェーハを載置できない。これより、蓋を開いた際に流入する外気において、FOUPの容器本体の下半分の空間にウェーハが存在しないことから、
図14に示すように、下側の流れである第2の流れが遅くなりダストの影響を十分に評価することができない。
【0049】
比較例5の場合には、FOUPの容器本体から管が開口部に対向する側面の中心から内側密閉空間の中心まで突出していることから、FOUPの内部の中央空間にウェーハを載置できない。これより、蓋が開いた際に流入する外気において、FOUPの容器本体の中央の空間にウェーハが存在しないことから、
図15に示すように、上側及び下側の流れである、第1及び第2の流れがぶつかった後に流れの速度が遅くなり、且つ流れが乱れることから、ダストの影響を十分に評価することができない。
【0050】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0051】
1…本発明の評価用密閉収納容器(評価用FOUP)、 2…容器本体、
3…蓋、 4…蓋の対向壁面、 5…接続口、 6…管、 7…外部評価測定器、
10…ウェーハ移載装置、 11…EFEM、 12…搬送ロボット、
13…搬送室、 14…ロードポート、 15…ロードポート架台、
16…ロードポートドア、 20…処理装置
101…一般的な密閉収納容器(一般的なFOUP)、 102…容器本体、
103…蓋、 W…ウェーハ。