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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/20 20060101AFI20241008BHJP
   H01L 31/046 20140101ALI20241008BHJP
【FI】
H01G9/20 311
H01G9/20 203C
H01G9/20 203B
H01L31/04 532Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021513558
(86)(22)【出願日】2020-03-25
(86)【国際出願番号】 JP2020013324
(87)【国際公開番号】W WO2020209068
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2019075060
(32)【優先日】2019-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100174001
【弁理士】
【氏名又は名称】結城 仁美
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 悠紀
【審査官】松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0076376(US,A1)
【文献】特開2018-163935(JP,A)
【文献】特表2012-515422(JP,A)
【文献】特開2013-219143(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/20
H01L 31/04-078
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも片面に導電層をそれぞれ含む、2枚の基板と、
前記2枚の基板の各導電層の間に介在する、複数のサブモジュールと、
を備える、太陽電池モジュールであって、
前記複数のサブモジュールは、それぞれ、導電材が前記2枚の基板の各導電層の内の一方と他方との間を電気的に接続することで、相互に接続されてなる複数のセルを含み、
前記導電材が、最大寸法が0.5μm以上30μm以下である球状の導電材であり、
前記2枚の基板が、前記複数のサブモジュール間の間隙内に、複数の絶縁用溝をそれぞれ有し、
前記2枚の基板の一方に形成された前記複数の絶縁用溝と、前記2枚の基板の他方に形成された前記複数の絶縁用溝とが、隣接するサブモジュール間における短絡を防止する少なくとも一つの絶縁空間を画定してな
前記絶縁空間が、前記球状の導電材が前記各導電層のうちの少なくとも一方と非接触な状態となるように収容可能である、
太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記2枚の基板の一方に備えられた前記絶縁用溝を絶縁用溝G1、前記2枚の基板の他方に備えられた前記絶縁用溝を絶縁用溝G2とし、
前記絶縁用溝G1の幅をW1(μm)、複数の前記絶縁用溝G1間の距離をD1(μm)、前記絶縁用溝G1の本数をN1(本)とし、
前記絶縁用溝G2の幅をW2(μm)、複数の前記絶縁用溝G2間の距離をD2(μm)、前記絶縁用溝G2の本数をN2(本)とし、
前記導電材の最大寸法をR(μm)とした場合に、以下の関係(1)~(5)を満たす、請求項1に記載の太陽電池モジュール。
W1>R 且つ W2>R・・・(1)
(W1+D1)>(W2+D2)・・・(2)
(W1-D2)≦2R・・・(3)
(W1+D1)/(W2+D2)≠Z又は(Z+0.5) (但し、Zは整数)・・・(4)
N1≧(A+1) 且つ N2≧(B+1) (但し、A及びBは、それぞれ独立して、以下の関係(α)を満たす最小の自然数)・・・(5)
A×(W1+D1)=B×(W2+D2)・・・(α)
【請求項3】
前記2枚の基板の一方に備えられた前記絶縁用溝を絶縁用溝G1、前記2枚の基板の他方に備えられた前記絶縁用溝を絶縁用溝G2とし、
前記絶縁用溝G1の幅をW1(μm)、複数の前記絶縁用溝G1間の距離をD1(μm)とし、
前記絶縁用溝G2の幅をW2(μm)、複数の前記絶縁用溝G2間の距離をD2(μm)とし、
前記導電材の最大寸法をR(μm)とした場合に、以下の関係(1)、(6)、(7)を満たす、請求項1に記載の太陽電池モジュール。
W1>R 且つ W2>R・・・(1)
(W1+D1)≧(W2+D2)・・・(6)
(W1-D2)>2R・・・(7)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光エネルギーを電力に変換する光電変換素子として、太陽電池が注目されている。太陽電池には、色素増感型太陽電池、有機薄膜太陽電池、及びペロブスカイト太陽電池等がある。これらの太陽電池は、通常、電子や正孔の移動に寄与する機能層が、それぞれ、樹脂フィルム等よりなる基材により支持された2つの電極により挟まれた構造を有するセルを含む。より具体的には、色素増感型太陽電池の場合には、機能層として電解質層が備えられる。また、有機薄膜太陽電池やペロブスカイト太陽電池の場合には、機能層としてドナー層及びアクセプター層が備えられる。
【0003】
そして、太陽電池は、起電力を発揮し得る最小単位であるセル、複数のセルが電気的に接続されてなるサブモジュール、及び、複数のサブモジュールが電気的に接続されてなるモジュール等の構成単位を含んでなる。
【0004】
このように、太陽電池においては、多数の電気的な接続が成立することが必要とされる。従来、このような太陽電池を効率的に製造する方途が種々検討されてきた。そこで、例えば特許文献1では、基板上のみで直列配線がなされた太陽電池モジュール及びその製造方法が提案されている。特許文献1に開示された太陽電池モジュール及びその製造方法によれば、相互に直列接続された隣接するサブモジュール間において、上下のフィルム基材同士を超音波振動により融着することにより融着部を形成して、かかる融着部をサブモジュール間における短絡を防ぐ絶縁ラインとして機能させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-82137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、特許文献1に開示されたような絶縁ラインには、一層の改良の余地があった。そこで、本発明は、新規なサブモジュール間絶縁構造を備える、太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の太陽電池モジュールは、少なくとも片面に導電層をそれぞれ含む、2枚の基板と、前記2枚の基板の各導電層の間に介在する、複数のサブモジュールと、を備える、太陽電池モジュールであって、前記複数のサブモジュールは、それぞれ、導電材が前記2枚の基板の各導電層の内の一方と他方との間を電気的に接続することで、相互に接続されてなる複数のセルを含み、前記2枚の基板が、前記複数のサブモジュール間の間隙内に、複数の絶縁用溝をそれぞれ有し、前記2枚の基板の一方に形成された前記複数の絶縁用溝と、前記2枚の基板の他方に形成された前記複数の絶縁用溝とが、隣接するサブモジュール間における短絡を防止する少なくとも一つの絶縁空間を画定してなることを特徴とする。このような、2枚の基板が、複数のサブモジュール間の間隙に、隣接するサブモジュール間における短絡を防止する少なくとも1つの絶縁空間を画定し得る、複数の絶縁用溝をそれぞれ備える構造は、新規な絶縁構造である。
【0008】
ここで、本発明の太陽電池モジュールは、前記2枚の基板の一方に備えられた前記絶縁用溝を絶縁用溝G1、前記2枚の基板の他方に備えられた前記絶縁用溝を絶縁用溝G2とし、前記絶縁用溝G1の幅をW1(μm)、複数の前記絶縁用溝G1間の距離をD1(μm)、前記絶縁用溝G1の本数をN1(本)とし、前記絶縁用溝G2の幅をW2(μm)、複数の前記絶縁用溝G2間の距離をD2(μm)、前記絶縁用溝G2の本数をN2(本)とし、前記導電材の最大寸法をR(μm)とした場合に、以下の関係(1)~(5)を満たすことが好ましい。
W1>R 且つ W2>R・・・(1)
(W1+D1)>(W2+D2)・・・(2)
(W1-D2)≦2R・・・(3)
(W1+D1)/(W2+D2)≠Z又は(Z+0.5) (但し、Zは整数)・・・(4)
N1≧(A+1) 且つ N2≧(B+1) (但し、A及びBは、それぞれ独立して、以下の関係(α)を満たす最小の自然数)・・・(5)
A×(W1+D1)=B×(W2+D2)・・・(α)
太陽電池モジュールが上記条件を満たしていれば、かかる太陽電池モジュールは製造効率に優れる。ここで、導電材の「最大寸法」は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0009】
また、本発明の太陽電池モジュールは、前記2枚の基板の一方に備えられた前記絶縁用溝を絶縁用溝G1、前記2枚の基板の他方に備えられた前記絶縁用溝を絶縁用溝G2とし、前記絶縁用溝G1の幅をW1(μm)、複数の前記絶縁用溝G1間の距離をD1(μm)とし、前記絶縁用溝G2の幅をW2(μm)、複数の前記絶縁用溝G2間の距離をD2(μm)とし、前記導電材の最大寸法をR(μm)とした場合に、以下の関係(1)、(6)、(7)を満たすことが好ましい。
W1>R 且つ W2>R・・・(1)
(W1+D1)≧(W2+D2)・・・(6)
(W1-D2)>2R・・・(7)
太陽電池モジュールが上記条件を満たしていれば、かかる太陽電池モジュールは製造効率に優れる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、新規なサブモジュール間絶縁構造を備える、太陽電池モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一つの実施の形態にかかる太陽電池モジュールの一例の概略構造を示す平面図である。
図2図1に示した太陽電池モジュールに含まれるサブモジュールの概略構造を示すI-I断面図である。
図3】本発明の一つの実施の形態にかかる、絶縁空間の構造を示す断面図である。
図4図3に示した構造の、変形例である。
図5】本発明の他の実施の形態にかかる、絶縁空間の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。ここで、本発明の太陽電池モジュールは、特に限定されることなく、例えば、色素増感型太陽電池、有機薄膜太陽電池、及びペロブスカイト太陽電池等の太陽電池モジュールでありうる。そして、本発明の太陽電池モジュールは、複数の光電変換セル(以下、単に「セル」とも称する)を直列接続してなるサブモジュール、例えば、Z型の集積構造を有するサブモジュールを複数含み、これらが、相互に直列接続してなるモジュールでありうる。なお、サブモジュールの集積構造としては、Z型モジュール以外に、W型モジュール、モノリシック型モジュールなどの直列接続構造、あるいは並列接続構造などが例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0013】
(太陽電池モジュール)
そして、本発明の一例としての、Z型の集積構造を有する色素増感型太陽電池モジュールとしては、特に限定されることなく、例えば、図1に平面図を示す太陽電池モジュール100が挙げられる。さらに、図2に、図1に示す太陽電池モジュール100の構成要素であるサブモジュール101Aの、厚み方向の断面図(I-I断面図)を示す。
【0014】
ここで、図1に平面図を示す太陽電池モジュール100は、少なくとも片面に導電層をそれぞれ含む2枚の基板と、2枚の基板の各導電層の間に介在する、複数のサブモジュール101A,101Bと、を備える、太陽電池モジュールである。そして、複数のサブモジュール101A,101Bは、それぞれ、導電材が2枚の基板の各導電層の内の一方と他方との間を電気的に接続することで、相互に接続されてなる複数のセルを含み、2枚の基板が、複数のサブモジュール間の間隙内に、複数の絶縁用溝をそれぞれ有し、2枚の基板の一方に形成された複数の絶縁用溝と、2枚の基板の他方に形成された複数の絶縁用溝とが、隣接するサブモジュール間における短絡を防止する少なくとも一つの絶縁空間120A,120Bを画定してなることを特徴とする。
【0015】
より具体的には、太陽電池モジュール100は、2つのサブモジュール101A,101Bと、これら2つのサブモジュール101A,101B間における短絡を防止する2つの絶縁空間120A,120Bとを備え、更に、取り出し配線130と、を備えることが好ましい。なお、図1において手前側、即ち、太陽電池モジュール100の上側表面に相当する第1基材1は、内側表面に導電層(図1には示さない光電極用導電層21)を有している。そして、第1基材1及び導電層は透明であり、かかる第1基材1よりも内部に備えられた、多孔質半導体微粒子層22及び触媒層62が、目視により確認可能でありうる。サブモジュール101A,101Bに含まれうるその他の構成部については、図1では図示を省略する。そして、図1において、外部機器200から出て太陽電池モジュール100を通って、再度外部機器200に至る導通経路Pは、破線で示す。図1に示すように、太陽電池モジュール100において、第1方向Xに沿って配置された複数のセルがサブモジュール101A,101B内で相互に直列接続されており、さらに、第2方向Yに沿って配置された2つのサブモジュール101A,101Bが相互に直列接続されている。なお、図示例において、第1方向Xと第2方向Yとは直交している。
【0016】
<取り出し配線>
太陽電池モジュール100に含まれる取り出し配線130は、図1にて上側に図示したサブモジュール101A、及び、図1にて下側に図示したサブモジュール101Bと、外部機器200とを電気的に接続する。
【0017】
<絶縁空間>
絶縁空間120A,120B(以下、纏めて「絶縁空間120」と称することもある)は、隣接するサブモジュール101A,101B間における短絡を防止するために、太陽電池モジュール内部に設けられる空間である。絶縁空間120は、サブモジュール101A,101Bの各内部においてセル間の電気的な接続を形成する導電材が、製造誤差の影響等によりサブモジュール101A,101Bの所定の領域からはみ出した場合等にも、サブモジュール101A,101B間にて短絡が生じないようにすることができる。具体的には、絶縁空間120は、少なくとも1つの導電材を、非接触な状態で収容可能なサイズの空間であって、少なくとも一つの導電材により電気的な接続が形成される可能性が極めて低い空間である。なお、図1では、太陽電池モジュール100が、2つの絶縁空間120A,120Bを備える様子を示すが、勿論、本発明の太陽電池モジュールが備え得る絶縁空間の数は、2つに限定されない。また、絶縁空間120は、種々の態様で配置されうる。絶縁空間120の詳細については後述する。本明細書では、理解の促進のために、まずは図2を参照して、本発明の一例に係る太陽電池モジュール100の詳細構成について説明した後に、図3図5を参照して、絶縁空間120について詳述する。
【0018】
<サブモジュール>
図2から明らかなように、サブモジュール101Aは、隔壁8により区画された複数の(図示例では4つの)セルを直列接続してなる、色素増感型太陽電池のサブモジュールであり、所謂Z型の集積構造を有している。ここで、サブモジュール101Aは、第1基材1及び第1基材1上に互いに離隔させて設けられた複数の(図示例では4つの)第1電極である光電極2を備える第1基板3と、第2基材5及び第2基材5上に互いに離隔させて設けられた複数の(図示例では4つの)第2電極である対向電極6を備える第2基板7とが、第1基板3及び第2基板7の間に隔壁8を介在させた状態で、各セルを形成する光電極2と対向電極6とが機能層である電解質層4を介して互いに対向するように(即ち、セルを形成するように)、且つ、隣接するセル間で一方のセルの光電極2と他方のセルの対向電極6とが導電材9を介して電気的に接続されるように貼り合わされた構造を有している。そして、サブモジュール101Aの各セルは、光電極2と、光電極2に対向する対向電極6と、光電極2と対向電極6との間に設けられた電解質層4とを備えている。なお、図示しないが、サブモジュール101Bも、サブモジュール101Aと同様の構造を有し得る。
【0019】
そして、サブモジュール101Aは、対向電極6を構成する対向電極用導電層61と、第1電気的接続部12Aを備えている。なお、第1電気的接続部12Aは、図示しない導電材に接触しており、かかる導電材により、サブモジュール101Bとの間の電気的な接続が形成されうる。また、サブモジュール101Aは、光電極2を構成する光電極用導電層21と、取り出し配線130とを接続する第2電気的接続部12Bを備えている。なお、図示例では、これらの第1電気的接続部12A及び第2電気的接続部12Bが相異なる基板上に設けられる構成を示した。しかし、図示の例に限定されることなく、これらの第1電気的接続部12A及び第2電気的接続部12Bは、引き回しのための構造を追加で設けることにより、同じ基板上に設けられてもよい。引き回しのための構造は、例えば、隔壁8及び導電材9により任意に形成することができる。
【0020】
<第1基板>
ここで、図1及び図2に示すサブモジュール101Aの第1基板3は、第1基材1と、第1基材1上に互いに離隔させて設けられた複数の光電極2とを備えている。また、光電極2は、第1基材1上に設けられた光電極用導電層21と、光電極用導電層21上の一部に設けられた多孔質半導体微粒子層22とを備えている。なお、光電極用導電層21は、隙間をあけて設けられている。そして、互いに隣接する光電極2同士は、互いに電気的に絶縁されるように設けられている。この絶縁は、特に限定されることなく、例えば互いに隣接する光電極用導電層21間の隙間に存在する隔壁8によって達成することができる。
【0021】
そして、第1基材1としては、特に限定されることなく、公知の光透過性の基材から適宜選択して用いることができる。例えば、第1基材1としては、透明樹脂やガラス等の可視領域で透明性を有する既知の透明基材が挙げられる。中でも、第1基材1としては、フィルム状に成形された樹脂、即ち、樹脂フィルムを用いることが好ましい。第1基材1として樹脂フィルムを採用することで、サブモジュール101Aに軽量性や可撓性を付与できることから、かかるサブモジュール101Aを含む太陽電池モジュール100を、様々な用途に応用することができるようになる。
【0022】
樹脂フィルムを形成しうる透明樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAr)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、透明ポリイミド(PI)、シクロオレフィンポリマー(COP)などの合成樹脂が挙げられる。
【0023】
さらに、光電極用導電層21は、特に限定されることなく、Au、Ag、Cuなどにより構成される金属メッシュからなる導電層や、Agナノ粒子等の金属ナノ粒子や微小なAgワイヤ等を塗布して形成された導電層、インジウム-スズ酸化物(ITO)やインジウム-亜鉛酸化物(IZO)、フッ素ドープスズ(FTO)などの複合金属酸化物からなる導電層、カーボンナノチューブやグラフェンなどを含んでなるカーボン系導電層、PEDOT/PSS(poly(3,4-ethylenedioxythiophene) polystyrene sulfonate)などの導電性高分子よりなる導電層が形成されてなる。これらの材料は、他の材料との相性などにより適宜選択することができる。また、これらの導電層は複数種が基材上に積層されていても良く、或いは、これらの導電層の形成に用いられうる上述したような各種導電性材料が混合されて1つの導電層を形成していても良い。
なお、第1基材1上に光電極用導電層21を形成する方法としては、スパッタリングとエッチングとを組み合わせた方法や、スクリーン印刷など、既知の形成方法を用いることができる。
【0024】
任意で、光電極用導電層21上に下塗り層(図示しない)を設けることができる。ここで、後述する電解質層4が液体で構成される場合には、多孔質半導体微粒子層22を経て光電極用導電層21に電解液が到達し、光電極用導電層21から電解質層4へと電子が漏れ出す逆電子移動と呼ばれる内部短絡現象が発生しうる。そのため、光の照射と無関係な逆電流が発生して光電変換効率が低下する虞がある。そこで、光電極用導電層21上に下塗り層を設けて、このような内部短絡現象を防ぐことができる。更に、光電極用導電層21上に下塗り層を設けることで、多孔質半導体微粒子層22と光電極用導電層21と間の密着性を向上させることができる。
下塗り層は、内部短絡現象を防ぐことのできる(言い換えれば、界面反応が起こりにくい)物質であれば、特に限定はされない。例えば、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化タングステン等の材料を含んでなる層でありうる。また、下塗り層を形成する方法としては、上記材料を透明導電層に直接スパッタする方法、あるいは上記材料を溶媒に溶解した溶液、金属酸化物の前駆体である金属水酸化物を溶解した溶液、又は有機金属化合物を、水を含む混合溶媒に対して溶解して得た金属水酸化物を含む溶液を、光電極用導電層21上に塗布、乾燥し、必要に応じて焼結する方法がある。
【0025】
更に、増感色素を担持(吸着)させた多孔質半導体微粒子層22としては、特に限定されることなく、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズなどの酸化物半導体の粒子を含む多孔質半導体微粒子層に対して有機色素や金属錯体色素などの増感色素を吸着させてなる多孔質半導体微粒子層を用いることができる。有機色素としては、シアニン色素、メロシアニン色素、オキソノール色素、キサンテン色素、スクワリリウム色素、ポリメチン色素、クマリン色素、リボフラビン色素、ペリレン色素等が挙げられる。また、金属錯体色素としては、鉄、銅、ルテニウムなどの金属のビピリジン錯体やフタロシアニン錯体、ポルフィリン錯体等が挙げられる。例えば、N3、N719、N749、D102、D131、D150、N205、HRS-1、及びHRS-2などが代表的な増感色素として挙げられる。増感色素を溶解させる有機溶媒は、溶媒に存在している水分及び気体を除去するために、予め脱気及び蒸留精製しておくことが好ましい。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノールなどアルコール類、アセトニトリルなどニトリル類、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、アミド類、エステル類、炭酸エステル類、ケトン類、炭化水素、芳香族、ニトロメタンなどの溶媒が好ましい。またこれらの溶媒を2種類以上混合させて用いることもできる。
【0026】
なお、光電極用導電層21上に多孔質半導体微粒子層22を形成する方法としては、スクリーン印刷やコーティングなどの既知の形成方法を用いることができる。また、多孔質半導体微粒子層に増感色素を吸着させる方法としては、増感色素を含む溶液中への多孔質半導体微粒子層の浸漬などの既知の方法を用いることができる。
【0027】
<第2基板>
また、サブモジュール101Aの第2基板7は、第2基材5と、第2基材5上に互いに離隔させて設けられた複数の対向電極6とを備えている。また、対向電極6は、第2基材5上に設けられた対向電極用導電層61と、対向電極用導電層61上の一部に設けられた触媒層62とを備えている。なお、対向電極用導電層61は、隙間をあけて設けられている。そして、触媒層62は、光電極2の多孔質半導体微粒子層22に対向している。
なお、互いに隣接する対向電極6同士は、互いに電気的に絶縁されるように設けられている。この絶縁は、特に限定されることなく、例えば互いに隣接する対向電極6間の隙間に隔壁8を介在させることにより、達成することができる。
【0028】
そして、第2基材5としては、第1基材1と同様の基材、或いは、チタン、SUS、及びアルミ等の箔や板のような透明性を有さない基材で、その他の太陽電池部材による腐食などがない基材を用いることができる。なかでも、第1基材1と同様の理由により、第2基材5を、樹脂フィルムを用いて形成することが好ましい。
【0029】
また、対向電極用導電層61としては、光電極用導電層21と同様の導電層を用いることができる。
【0030】
更に、触媒層62としては、特に限定されることなく、導電性高分子、炭素ナノ構造体、貴金属、及び炭素ナノ構造体と貴金属との混合物などの触媒として機能し得る成分を含む任意の触媒層を用いることができる。
ここで、導電性高分子としては、例えば、ポリ(チオフェン-2,5-ジイル)、ポリ(3-ブチルチオフェン-2,5-ジイル)、ポリ(3-ヘキシルチオフェン-2,5-ジイル)、ポリ(2,3-ジヒドロチエノ-[3,4-b]-1,4-ジオキシン)(PEDOT)等のポリチオフェン;ポリアセチレン及びその誘導体;ポリアニリン及びその誘導体;ポリピロール及びその誘導体;ポリ(p-キシレンテトラヒドロチオフェニウムクロライド)、ポリ[(2-メトキシ-5-(2’-エチルヘキシロキシ))-1,4-フェニレンビニレン]、ポリ[(2-メトキシ-5-(3’,7’-ジメチルオクチロキシ)-1,4-フェニレンビニレン)]、ポリ[2-2’,5’-ビス(2’’-エチルヘキシロキシ)フェニル]-1,4-フェニレンビニレン]等のポリフェニレンビニレン類;などを挙げることができる。
炭素ナノ構造体としては、例えば、天然黒鉛、活性炭、人造黒鉛、グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンナノバッドなどを挙げることができる。
貴金属としては、触媒作用のあるものであれば特に限定されず、金属白金、金属パラジウム、及び金属ルテニウムなどの公知の貴金属を適宜選択して用いることができる。
【0031】
触媒層の形成方法は、特に限定されず、公知の方法を適宜選択して用いることができる。例えば、導電性高分子、炭素ナノ構造体、貴金属、又は炭素ナノ構造体と貴金属の両方を適当な溶媒に溶解又は分散させて得られる混合液を、導電膜上に塗布又は噴霧し、該混合液の溶媒を乾燥させることにより行うことができる。炭素ナノ構造体や貴金属を用いる場合、混合液にさらにバインダーを含有させてもよく、バインダーとしては炭素ナノ構造体の分散性や基材との密着性の点から、水酸基、カルボキシル基、スルホニル基、リン酸基など官能基、及びこれら官能基のナトリウム塩などをもつ高分子を用いるのが好ましい。またスクリーン印刷、蒸着、スパッタなどの既存の形成方法により製膜することもできる。
【0032】
触媒層は、カーボンナノチューブの平均直径(Av)と直径の標準偏差(σ)が0.60>3σ/Av>0.20(以下、式(A)ということがある)を満たすカーボンナノチューブ(以下、「特定のカーボンナノチューブ」ということがある)を含有するものであってもよい。ここで、「特定のカーボンナノチューブ」とは、それを構成する所定のカーボンナノチューブの集合の総称であり、「直径」とは当該所定のカーボンナノチューブの外径を意味する。
【0033】
特定のカーボンナノチューブの平均直径(Av)及び直径の標準偏差(σ)は、それぞれ標本平均値及び標本標準偏差である。それらは、透過型電子顕微鏡での観察下、無作為に選択されたカーボンナノチューブ100本の直径を測定した際の平均値及び標準偏差として求められる。式(A)における3σは得られた標準偏差(σ)に3を乗じたものである。
【0034】
特定のカーボンナノチューブを用いることにより、優れた触媒活性を有する対向電極を得ることができる。得られる対向電極の特性を向上させる観点から、カーボンナノチューブが、0.60>3σ/Av>0.25が好ましく、0.60>3σ/Av>0.50がより好ましい。
【0035】
3σ/Avは、特定のカーボンナノチューブの直径分布を表し、この値が大きいほど直径分布が広いことを意味する。直径分布は正規分布をとるものが好ましい。その場合の直径分布は、透過型電子顕微鏡を用いて観察できる、無作為に選択された100本のカーボンナノチューブの直径を測定し、その結果を用いて、横軸に直径、縦軸に頻度を取り、得られたデータをプロットし、ガウシアンで近似することで得られる。異なる製法で得られたカーボンナノチューブなどを複数種類組み合わせることでも3σ/Avの値を大きくすることはできるが、その場合正規分布の直径分布を得ることは難しい。特定のカーボンナノチューブは、単独のカーボンナノチューブからなるものであっても、又は単独のカーボンナノチューブに、その直径分布に影響しない量の他のカーボンナノチューブを配合してなるものであってもよい。
【0036】
特定のカーボンナノチューブは、公知の方法、例えば、表面にカーボンナノチューブ製造用触媒層(以下、「CNT製造用触媒層」ということがある)を有する基材(以下、「CNT製造用基材」ということがある)上に、原料化合物及びキャリアガスを供給して、化学的気相成長法(CVD法)によりカーボンナノチューブを合成する際に、系内に微量の酸化剤を存在させることで、CNT製造用触媒層の触媒活性を飛躍的に向上させるという方法(スーパーグロース法)により、得ることができる(例えば、国際公開第2006/011655号)。以下、スーパーグロース法により製造されたカーボンナノチューブをSGCNTということがある。
【0037】
特定のカーボンナノチューブを構成材料とする触媒層を含む対向電極は、例えば、特定のカーボンナノチューブを含有する分散液を調製し、この分散液を基材上に塗布し、得られた塗膜を乾燥させて触媒層を形成することで、作製することができる。
【0038】
<隔壁>
また、サブモジュール101Aの隔壁8は、第1基板3と第2基板7との間に設けられており、電解質層4及び導電材9のそれぞれを囲繞している。換言すれば、電解質層4を設ける空間と、導電材9を設ける空間とは、第1基板3と、第2基板7と、隔壁8とによって区画形成されている。
【0039】
具体的には、図2では、隔壁8は、各セルの幅方向一方側(図2では右側)において、第1基板3の第1基材1と、第2基板7の対向電極6の対向電極用導電層61との間に設けられており、各セルの幅方向他方側(図2では左側)において、第1基板3の光電極2の光電極用導電層21と、第2基板7の第2基材5との間に設けられている。そして、隔壁8の間には、電解質層4と導電材9とが交互に設けられている。
【0040】
そして、隔壁8は、第1基板3と第2基板7とを接着し、電解質層4を封止することができるものであれば特に限定されるものではない。隔壁8は、基板間の接着性、電解質に対する耐性(耐薬品性)、高温高湿耐久性(耐湿熱性)に優れていることが好ましい。そのような隔壁8を形成しうる隔壁材料としては、非導電性の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、活性放射線(光、電子線)硬化性樹脂が挙げられ、より具体的には、(メタ)アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、オレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂、及びポリアミド系樹脂等が挙げられる。なお、本明細書において(メタ)アクリルとは、「アクリル」又は「メタアクリル」を意味する。中でも、取扱い性の観点から、光硬化性アクリル樹脂が好ましい。
なお、製造容易性の観点から、上述したような各種樹脂がシート状に成形されてなるフィルムを用いて、隔壁8を構成することももちろん可能である。
【0041】
<機能層>
また、サブモジュール101Aの機能層である電解質層4は、光電極2の多孔質半導体微粒子層22と、対向電極6の触媒層62と、隔壁8とで囲まれる空間に設けられている。そして、電解質層4は、特に限定されることなく、色素増感型太陽電池において使用し得る任意の電解液、ゲル状電解質又は固体電解質を用いて形成することができる。
【0042】
<導電材>
サブモジュール101Aの導電材9は、互いに隣接するセルを電気的に直列接続している。具体的には、導電材9は、図2では右側に位置するセルの光電極2の光電極用導電層21と、図2では左側に位置するセルの対向電極6の対向電極用導電層61とを電気的に接続している。
【0043】
そして、サブモジュール101Aの導電材9は、光電極2の光電極用導電層21と、対向電極6の対向電極用導電層61と、2つの隔壁8で囲まれた空間内に配置されている。なお、図2に示すサブモジュール101Aでは、導電材9により、光電極用導電層21及び対向電極用導電層61が電気的に接続されているが、他の例にかかるサブモジュールにおいて、導電材9と、例えば銀等の金属又は金属酸化物などの導電性を有する材料からなる配線とにより、光電極-対向電極間の電気的な接続が形成されていても良い。この場合、配線は、光電極側及び対向電極側の何れに形成されていても良い。
【0044】
導電材9としては、特に限定されることなく、例えば、Ag、Au、Cu、Al、In、Sn、Bi、Pb等の金属粒子及びこれらの酸化物、導電性炭素粒子、並びに、樹脂粒子等の有機化合物粒子や無機化合物粒子の表面を、Ag、Au、Cu等の金属やこれらの金属の酸化物等の導電性物質で被覆した粒子、例えばAu/Ni合金で被覆した粒子などを用いることができる。なお、本明細書において、「粒子」とはアスペクト比が2.0以下の物体を意味する。そして、導電材9としての粒子のアスペクト比は、1.5以下であることがより好ましく、1.2以下であることが更に好ましく、1.1以下であることが特に好ましく、アスペクト比が1.0であることが更に特に好ましい。なお、導電材9としての粒子の「アスペクト比」は、100個の粒子について顕微鏡観察して得た長軸長及び短軸長の値の数平均値を算出し、(数平均長軸長/数平均短軸長)の値として算出される値であり得る。アスペクト比が上記上限値以下、更には1.0であれば、太陽電池モジュールの製造効率を一層高めることができる。
【0045】
また、導電材9の代表形状は、扁球状及び真球状のような、球状であることが好ましい。中でも、真球状、或いは、限りなく真球に近い扁球状であることが好ましい。太陽電池モジュールの製造効率を一層高めることができるからである。
【0046】
導電材9の最大寸法は、上記のようにして算出される導電材9の数平均長軸長に相当する。そして、導電材9の最大寸法Rは、0.5μm以上30μm以下が好ましい。導電材9の最大寸法Rが上記下限値以上であれば、サブモジュール内にて光電極と対向電極とが短絡し易くなることを効果的に抑制することができる。また、導電材9の最大寸法Rが上記上限値以下であれば、太陽電池モジュールの光電変換効率を高めることができる。
【0047】
また、導電材9は、特に限定されることなく、樹脂と導電性粒子とを含有する導電性樹脂組成物を用いて、サブモジュール101A内の上記所定の空間内に配置されることが好ましい。かかる導電性樹脂組成物に含まれうる樹脂としては、特に限定されることなく、(メタ)アクリル系樹脂;ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、環状エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂;シリコーン樹脂;などが挙げられる。当該樹脂には、ラジカル開始剤、カチオン硬化剤、アニオン硬化剤などの任意の硬化剤を用いることができ、重合形式も、付加重合、開環重合など、特に限定されない。また、隔壁材料としての樹脂と、導電材9の適用時に併用されうる樹脂とは、同一でも異なっていても良い。更に、導電材9の適用時に用いられうる導電性樹脂組成物中における導電性粒子の含有割合は、0.1体積%以上90体積%以下であることが好ましい。
【0048】
なお、上述したような組成物を用いて導電材9をサブモジュール101A内の所定位置に配置する方途としては、特に限定されることなく、例えば、導電材9を配置したい位置(例えば、隔壁8にて囲繞された空間)に、導電材9と樹脂とを含む未硬化の組成物を充填し、充填した未硬化の組成物を硬化させることを含む方途が挙げられる。
【0049】
<電気的接続部>
第1電気的接続部12Aは、サブモジュール101Aの対向電極用導電層61と、サブモジュール101B(図2には図示しない)の光電極用導電層21とを、図示しない引き回しのための構造を介して直列接続する。引き回しのための構造は、例えば、隔壁8及び導電材9により任意に形成することができる。第2電気的接続部12Bは、取り出し配線130と光電極用導電層21とを接続する。第1電気的接続部12A及び第2電気的接続部12Bは、特に限定されることなく、導電性樹脂組成物やはんだ等の一般的な電気的接続材料により形成することができる。そして、導電性樹脂組成物としては、金属、金属酸化物、導電性炭素材料などの導電性を有する材料と、任意の樹脂とを含む既知の組成物を用いることができる。また、はんだとしては、錫、銀、銅、ビスマス、鉛、フラックス成分などを含有したものを使用することができる。
【0050】
<絶縁用溝の配置>
ここで、図1に一例に係る配置態様を例示した、絶縁空間120について、図3を参照して、詳細な構造の一例を説明する。図3は、図1に示したII-II切断線に従う断面図であり、絶縁空間の構造の一例を説明するための図である。サブモジュール101A側の各構成部には、図2にて各構成部に付した参照番号に「A」を加えて示し、サブモジュール101B側の各構成部には、図2にて各構成部に付した参照番号に「B」を加えて示す。図3に示す光電極用導電層21A、導電材9A、及び対向電極用導電層61Aにより、サブモジュール101A内におけるセル間の直列接続が担保され、光電極用導電層21B、導電材9B、及び対向電極用導電層61Bにより、サブモジュール101B内におけるセル間の直列接続が担保される。そして、第1基材1上の、サブモジュール101A及び101B間の間隙に相当する領域には、光電極用導電層21の欠損した複数の領域、即ち、第1絶縁用溝G1が複数設けられている。また、第2基材5上の、サブモジュール101A及び101B間の間隙に相当する領域には、対向電極用導電層61の欠損した複数の領域、即ち、第2絶縁用溝G2が複数設けられている。換言すると、光電極用導電層21は、第1絶縁用溝G1にて非連続な状態となっている。また、対向電極用導電層61は、第2絶縁用溝G2にて非連続な状態となっている。
【0051】
絶縁空間120A,120Bは、導電材9Cを非接触で収容し得るサイズの空間である。よって、絶縁空間120A,120Bによれば、導電材9Cが、光電極用導電層21及び対向電極用導電層61の内の少なくとも一方と非接触な状態が創出されうる。従って、導電材9Cは電気的接続を形成しないので、隣接するサブモジュール101A,101B間が、図1を参照して説明したような、サブモジュール間を接続する導通経路P以外の箇所において導通して、サブモジュール101A,101B間にて短絡を防止することができる。なお、絶縁空間120A内、及び絶縁空間120B内にそれぞれ収容された導電材9Cは、その材料及び性状等は導電材9A及び導電材9Bと同一である。また、絶縁空間120Aと、絶縁空間120Bとの間に延在する領域に配置された導電材9Dが、光電極用導電層21及び対向電極用導電層61の双方に接することがあり得る。しかし、この場合であっても、第1絶縁用溝G1及び第2絶縁用溝G2、さらには、絶縁空間120A,120Bにより、隣接するサブモジュール101A及び101B間における絶縁が確保されうる。
【0052】
図3に示すような、一例に係る構造を有する絶縁空間120A及び120Bは、下記のような条件を満たすように配置された、複数の第1絶縁用溝G1と、複数の第2絶縁用溝G2とにより画定されることが好ましい。即ち、第1絶縁用溝G1の幅をW1(μm)、第1絶縁用溝G1間の距離をD1(μm)、第1絶縁用溝G1の本数をN1(本)とし、第2絶縁用溝G2の幅をW2(μm)、第2絶縁用溝G2間の距離をD2(μm)、第2絶縁用溝G2の本数をN2(本)とし、導電材9A,9B,9Cの最大寸法をR(μm)とした場合に、下記(1)~(5)の条件を全て満たすように、複数の第1絶縁用溝G1と、複数の第2絶縁用溝G2とを配置することが好ましい。
W1>R 且つ W2>R・・・(1)
(W1+D1)>(W2+D2)・・・(2)
(W1-D2)≦2R・・・(3)
(W1+D1)/(W2+D2)≠Z又は(Z+0.5) (但し、Zは整数)・・・(4)
N1≧(A+1) 且つ N2≧(B+1) (但し、A及びBは、それぞれ独立して、以下の関係(α)を満たす最小の自然数)・・・(5)
A×(W1+D1)=B×(W2+D2)・・・(α)
【0053】
尚、図3を参照して説明した本例では、図3において上側の基板を第1基材1、下側の基材を第2基材5として図示し、第1絶縁用溝G1を第1基材1側とし、第2絶縁用溝G2を第2基材5側として図示した。しかし、図示例に限定されることなく、第1絶縁用溝G1が第2基材5側に、第2絶縁用溝G2が第1基材1側に、それぞれ配置されることも、勿論可能である。
【0054】
図4に、図3と同じ配置で設けられた、複数の第1絶縁用溝G1を備える第1基材1と、複数の第2絶縁用溝G2を備える第2基材5とが、図3に示した態様とは、相対位置が異なるように配置された例を示す。図4に示したような配置のずれは、太陽電池モジュールを製造する際の製造誤差に起因して生じうる。図4に示すように、第1基材1と第2基材5との間の相対位置関係が図3とは異なる態様となった場合にも、絶縁空間120Cが創出される。従って、図4に示す態様においても、隣接するサブモジュール101A及び101B間における絶縁が確保されうる。このように、図3~4に示したような構造を含む太陽電池モジュールは、製造時に製造誤差が生じて、上下の基板の貼り合わせにずれが生じた場合にも、高い確度で絶縁空間を創出することができる。従って、図3~4に示したような構造を含む太陽電池モジュールは、製造時における歩留まりが高く、製造効率に優れる。
【0055】
図5に、他の例に従う絶縁空間の構造を示す。図5において、図3~4に示した構造に含まれる各種構成部と同じ機能を奏する各種構成部については、図3~4と同じ参照符号を付して示し、説明を省略する。図5に示す構造は、絶縁空間120D,120Eを含む。ここで、図5に示す構造は、上記(1)~(5)の関係を全て満たすものではない。具体的には、図5に示す構造においては、(W1+D1)の値と、(W2+D2)の値とが等しく、且つ、W1がD2よりも極めて大きい。このため、上記(2)~(4)の関係を満たさない。
【0056】
図5に示す構造は、下記(1)、(6)、(7)の関係を少なくとも満たすものである。
W1>R 且つ W2>R・・・(1)
(W1+D1)≧(W2+D2)・・・(6)
(W1-D2)>2R・・・(7)
【0057】
このような、上記(1)、(6)、(7)の関係を満たす態様で配置された第1絶縁用溝G1、及び第2絶縁用溝G2によっても、絶縁空間が良好に確保されうる。さらに、図5に示すような態様の、複数の第1絶縁用溝G1を備える第1基材1と、複数の第2絶縁用溝G2を備える第2基材5とを相互にずらして配置した場合であっても、少なくとも1つの絶縁空間が確保されうる。したがって、このような構造を有する太陽電池モジュールは、製造時における歩留まりが高く、製造効率に優れる。
【0058】
ここで、第1絶縁用溝G1の幅W1、及び第2絶縁用溝G2の幅W2は、導電材9A,9B,9Cの最大寸法Rの10倍以下であることが好ましく、8倍以下であることがより好ましく、5倍以下であることが更に好ましい。幅W1及び幅W2が上記上限値以下であれば、絶縁用溝が太陽電池モジュールの外部から視認しにくくなるため、太陽電池モジュールの外観及び透明性を一層高めることができる。また、幅W1及び幅W2が、導電材9A,9B,9Cの最大寸法R超であって、且つ、最大寸法Rの1.3倍以上であることがより好ましい。幅W1及び幅W2が、上記下限値以上であれば、かかる絶縁用溝により、絶縁性能に優れる絶縁空間を画定し得る。なお、両基板に設けられた絶縁用溝の本数が相異なる場合には、光電極側の基板に設けられた絶縁用溝の本数が、対向電極側の基板に設けられた絶縁用溝の本数よりも少ないことが好ましい。太陽電池モジュールを設置した状態では、観察者が光電極側から太陽電池モジュールを目視することが多く、光電極側に形成された絶縁用溝の本数がより少なければ、観察者が絶縁用溝を明瞭に視認する可能性が低くなり、太陽電池モジュールの外観を良好なものとすることができる。
【0059】
なお、第1絶縁用溝G1の深さは、特に限定されることなく、溝の最深部の深さが、光電極用導電層21の厚み以上であればよい。換言すると、第1絶縁用溝G1は、光電極用導電層21が、サブモジュールの配列方向(図1に示した第2方向Y)にて、非連続となる領域を含んでいれば良い。第2絶縁用溝G2についても同様に、溝の最深部の深さが、対向電極用導電層61の厚み以上であればよい。換言すると、第2絶縁用溝G2は、対向電極用導電層61が、サブモジュールの配列方向(図1に示した第2方向Y)にて、非連続となる領域を含んでいれば良い。さらには、第1絶縁用溝G1内全体において光電極用導電層21が、第2絶縁用溝G2内全体において対向電極用導電層61が、それぞれ非連続であることがより好ましい。
【0060】
上記図3~5を参照して、幾つかの絶縁空間の構造について、説明してきたが、言及してきた各種構造のように、上下の基材上にそれぞれ設けられた複数の絶縁用溝の組み合わせにより、絶縁空間を創出することで、太陽電池モジュールの透明感を損なわないようにしつつ、サブモジュール間における絶縁性を担保することが可能となる。ここで、太陽電池モジュールの一例に係る用途においては、良好な外観が求められることがある。しかし、基材上に光電極用導電層又は対向電極用導電層が存在する部分と、存在しない部分とでは光の屈折率が異なるため、光電極用導電層又は対向電極用導電層を大面積で除去してしまえば、換言すると、絶縁用溝の幅を余りに大きくしてしまえば、太陽電池モジュールの良好な外観及び透明感等が損なわれることとなる。そこで、本発明のように、複数の絶縁用溝を上下の基材上にそれぞれ配置することで、太陽電池モジュールの良好な外観及び透明感等を損なわないようにしつつ、サブモジュール間における絶縁性を担保することが可能となる。
【0061】
(太陽電池モジュールの製造方法)
上述した構成を有するサブモジュールは、特に限定されることなく、例えば、以下のような製造方法に従って製造することができる。かかる製造方法は、少なくとも片面に導電層をそれぞれ含む2枚の基材と、2枚の基材上の各導電層の間に介在する、第1方向に沿って配置された複数のセルが相互に直列接続してなる、第2方向に沿って配置された複数のサブモジュールと、を備える、太陽電池モジュールの製造方法である。
【0062】
具体的には、一例に係る製造方法は、
・少なくとも片面に導電層をそれぞれ含む2枚の基材を準備し、準備した2枚の基材の導電層側表面に、それぞれ、第1方向に沿う、複数の絶縁用溝を形成して、絶縁用溝付き第1基材及び絶縁用溝付き第2基材を得る絶縁用溝形成工程(1)と、
・絶縁用溝付き第1基材の導電層側表面上に複数の第1電極を形成して第1基板とし、また、絶縁用溝付き第2基材の導電層側表面上に、複数の第2電極を形成して第2基板とする電極形成工程(2)と、
・第1基板、及び、第2基板の導電層側表面の内の少なくとも一方に、第1方向にて、隣接するセル間を直列接続するための導電材を配置する導電材配置工程(3)と、
・上記工程(3)までを経て得られた、絶縁用溝付きの第1基材を含む第1基板(以下、単に「絶縁用溝付第1基板」とも称する。)、及び、絶縁用溝付きの第2基材を含む第2基板(以下、単に「絶縁用溝付き第2基板」とも称する。)を、第1電極及び第2電極が対向する向きで貼り合わせて、貼合体を得る貼合工程(4)と、
を含むことが好ましい。
【0063】
そして、上記のような製造方法では、貼合工程(4)において、第1基板の複数の絶縁用溝、及び、第2基板の複数の絶縁用溝が、隣接するサブモジュール間の間隙にて、対向配置されることで、隣接するサブモジュール間における短絡を防止する少なくとも1つの絶縁空間が画定されうる。上記の製造方法では、貼合工程(4)を実施するよりも前の段階で、絶縁用溝形成工程(1)を実施する。このため、例えば、太陽電池モジュールとして色素増感型太陽電池モジュールを製造する場合には、色素を光電極に担持させる前の段階で、絶縁用溝形成工程(1)を実施することが可能となる。これにより、発電に寄与する重要な構成要素である色素が、絶縁用溝形成工程(1)にて生じうる熱により劣化する蓋然性を排除することが出来る。
以下、上記の一例にかかる製造方法に含まれる各工程(1)~(4)について、図1~2を参照して上記で説明した太陽電池モジュール100と同様の構造を有する色素増感型太陽電池モジュールを製造する場合を例にとって詳述する。
【0064】
(1)絶縁用溝形成工程
絶縁用溝形成工程では、まず、少なくとも片面に導電層をそれぞれ含む2枚の基材を準備する。かかる基材、及び導電層としては、特に限定されることなく、<第1基板>及び<第2基板>の項目にてそれぞれ説明した、第1基材、第2基材、光電極用導電層、及び対向電極用導電層を好適に採用することができる。そして、第1基材の光電極用導電層側表面、及び第2基材の対向電極用導電層側表面に、それぞれ、長手方向が第1方向に沿う、複数の絶縁用溝を形成して、絶縁用溝付き第1基材及び絶縁用溝付き第2基材を得る。絶縁用溝を形成するための方途としては、特に限定されることなく、例えば、レーザー処理、刃物による切り込み加工等の方途を挙げることができる。絶縁用溝の配置態様については、<絶縁用溝の配置>の項目において詳述したような、配置態様を好適に採用することが出来る。
【0065】
(2)電極形成工程
電極形成工程は、<第1基板>及び<第2基板>の項目にて説明したような方途に従って好適に実施することができる。
【0066】
(3)導電材配置工程
導電材配置工程は、<導電材>の項目にて説明したような方途に従って、好適に実施することができる。具体的には、導電材の配置に伴い、隣接するセル間の短絡を防止するための隔壁により、導電材を配置した領域を囲繞することができる。
【0067】
(4)貼合工程
貼合工程では、絶縁用溝付第1基板、及び、絶縁用溝付き第2基板を、第1電極及び第2電極が対向する向きで貼り合わせて、貼合体を得る。貼合体においては、第1方向に配列された複数のセルが、相互に電気的に直列接続されている。
【0068】
以上説明したような一例に係る製造方法により、本発明の太陽電池モジュールを良好に製造することが可能である。そして、かかる製造方法は、上記工程(1)を含むので、高い製造効率で、絶縁信頼性に優れる太陽電池モジュールを製造することができる。
【実施例
【0069】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」は、特に断らない限り、質量基準である。
実施例及び参考例では、全て、6つのセルが第1方向にて相互に直列接続されてなるサブモジュールが2つ、第2方向に整列配置されてなり、これらの2つのサブモジュールが相互に直列接続されてなる、色素増感型太陽電池モジュールを製造した。なお、第1方向と第2方向とは直交するようにした。
実施例及び参考例において用いた、導電材の寸法及び形状は、以下のように測定した。また、実施例及び参考例において、太陽電池モジュールの製造効率(製造歩留まり)は下記のようにして算出した。また、実施例及び参考例において、得られた太陽電池モジュールの外観評価は下記のようにして実施した。
【0070】
<導電材の寸法及び形状>
実施例、参考例で用いた導電材について、100個の導電材について、走査型電子顕微鏡を用いて、100個の導電材を観察した。導電材の形状は球状であった。そして、100個の導電材について、それぞれ、長軸長及び短軸長を測定し、数平均値を得た。数平均長軸長の値を数平均短軸長の値で除して、導電材のアスペクト比を算出した。さらに、数平均長軸長の値を導電材の「最大寸法」とした。
尚、全実施例及び比較例において用いた導電材は、数平均長軸長の値と、数平均短軸長の値とが実質的に同一であり、アスペクト比は1.0であった。
【0071】
<太陽電池モジュールの製造効率(製造歩留まり)>
各例において製造した太陽電池モジュールから、貼合工程にて位置ずれが生じたものを20個ずつ抽出し、製造歩留まり試験の母集団とした。そして、母集団に含まれる20個の太陽電池モジュールについて、1sunの照度条件下で、取り出し電極での電圧値をソースメーターにより測定して、理論値に比べて、1セル分以上の電圧低下があるかどうかを判定した。電圧低下が無い、或いは、電圧低下があっても1セル分未満である場合に、かかる太陽電池モジュールにて絶縁性が確保されていたと判定し、20個中における絶縁性が確保されていた太陽電池モジュールの個数の占める割合(%)を算出した。
【0072】
<太陽電池モジュールの外観評価>
実施例、参考例で製造した太陽電池モジュールそれぞれ20個について、目視観察した。目視観察した絶縁溝の状態について、下記の基準に従って外観評価を行った。
A:絶縁溝が視認し難い。
B:絶縁溝がやや視認し難い。
【0073】
(実施例1)
<色素溶液の調製>
ルテニウム錯体色素(N719、ソラロニクス社製)72mgを200mLのメスフラスコに入れた。脱水エタノール190mLを混合し、撹拌した。メスフラスコに栓をしたのち超音波洗浄器による振動により、60分間撹拌した。溶液を常温に保った後、脱水エタノールを加え、全量を200mLとすることで、色素溶液を調製した。
<光電極基板の作製>
光電極用基材である透明基板(ポリエチレンナフタレートフィルム、厚み200μm)上に光電極用導電層である透明導電層(酸化インジウムスズ(ITO))をコートして得た透明導電性基板(シート抵抗13ohm/sq)上に、スクリーン印刷法により、導電性銀ペースト(K3105、ペルノックス(株)製)を所定位置に印刷塗布し、150度の熱風循環型オーブン中で15分間加熱乾燥して電気的接続部を作製した。得られた電気的接続部を有する透明導電性基板を、電気的接続部形成面を上にして塗布コーターにセットし、1.6%に希釈したオルガチックPC-600溶液(マツモトファインケミカル製)をワイヤーバーにより掃引速度(10mm/秒)で塗布した。得られた塗膜を、10分間室温乾燥した後、さらに10分間150℃で加熱乾燥して、透明導電性基板上に下塗り層を作製した。
透明導電性基板の下塗り層形成面に対して、光電極セル幅に応じた間隔でレーザー処理を行い、隣接するセルの間の間隙において光電極用導電層が存在しない領域を創出して絶縁線を形成した。さらに、レーザー処理により、サブモジュール間隙において、表1に示す条件を満たす配置態様で配置されるように、絶縁溝G1を形成した(絶縁用溝形成工程)。
そして、ポリエステルフィルムに粘着層を塗工した保護フィルムを2段重ねして得たマスクフィルム(下段:PC-542PA 藤森工業製、上段:NBO-0424 藤森工業製)に、多孔質半導体微粒子層を形成するための開口部(長さ:60mm、幅5mm)を打ち抜き加工した。加工済みマスクフィルムを、気泡が入らないように、下塗り層を形成した透明導電性基板の集電線形成面に貼合した。なお、マスクフィルムの一層目は色素の不要箇所への付着防止を目的としたものであり、二層目は多孔質半導体微粒子の不要箇所への付着防止を目的としたものである。
高圧水銀ランプ(定格ランプ電力 400W)光源をマスク貼合面から10cmの距離に置き、電磁波を1分間照射した後直ちに、酸化チタンペースト(PECC-C01-06、ペクセル・テクノロジーズ(株)製)をベーカー式アプリケータにより塗布した。ペーストを常温で10分間乾燥させた後、マスクフィルムの上側の保護フィルム(NBO-0424 藤森工業製)を剥離除去し、150度の熱風循環式オーブン中でさらに5分間加熱乾燥し、多孔質半導体微粒子層(長さ:60mm、幅5mm)を形成した。
その後、多孔質半導体微粒子層(長さ:60mm、幅5mm)を形成した透明導電性基板を、調製した色素溶液(40℃)に浸し、軽く撹拌しながら、色素を吸着させた。90分後、色素吸着済み酸化チタン膜を色素吸着容器から取り出し、エタノールにて洗浄して乾燥させ、残りのマスクフィルムを剥離除去して、光電極を作製した。
<対向電極基板の作製>
対向電極用基材である透明基板(ポリエチレンナフタレートフィルム、厚み200μm)上に対向電極用導電層である透明導電層(酸化インジウムスズ(ITO))をコートして得た透明導電性基板(シート抵抗13ohm/sq.)の導電面に、白金膜パターン幅に応じた間隔でレーザー処理を行い、絶縁線を形成した。さらに、レーザー処理により、サブモジュール間隙において、表1に示す条件を満たす配置態様で配置されるように、絶縁溝G2を形成した(絶縁用溝形成工程)。次いで、開口部(長さ:60mm、幅5mm)を打ち抜き加工した金属製マスクを重ね合わせ、スパッタ法により白金膜パターン(触媒層)を6つ形成し、触媒層形成部分が72%程度の光透過率を有する対向電極基板を得た。このとき、上記光電極基板と対向電極基板とを、お互いの導電面を向かい合わせて重ね合せた時、多孔質半導体微粒子層と触媒層とが一致する構造とした。
<色素増感太陽電池モジュールの作製>
導電性樹脂組成物の樹脂材料であるアクリル系樹脂としてのTB3035Bに対して、積水樹脂製ミクロパールAU(代表形状:真球状、最大寸法:20μm、アスペクト比:1.0)を、13.5質量%になるように添加して、自転公転ミキサーにより均一に混合し、導電性樹脂組成物を作製した。
対向電極基板の触媒層形成面を表面として、アルミ製吸着板上に真空ポンプを使って固定した。次いで触媒層間の所定位置に線状に導電性樹脂組成物を、その線を挟み触媒層の外周部分に隔壁材料である液状の紫外線硬化型封止剤TB3035B((株)スリーボンド製、吸収波長:200nm~420nm)を、ディスペンサー装置により塗布した。
その後、触媒層部分に電解液を所定量塗布し、自動貼り合せ装置を用いて長方形の触媒層と同型の多孔質半導体微粒子層が向かい合う構造となるように、減圧環境中で重ね合せ、光電極基板側からメタルハライドランプにより光照射を行い、続いて対向電極基板側から光照射を行った(貼合工程)。
得られた太陽電池モジュールについて、上記に従って、製造効率を計算し、外観評価を行った。結果を表1に示す。
【0074】
(実施例2~参考例5)
絶縁用溝形成工程において形成する絶縁用溝G1、G2が表1に示す条件を満たすようにした以外は、実施例1と同様にして、太陽電池モジュールを製造した。そして、実施例1と同様にして製造効率を計算し、外観評価を行った。結果を表1に示す。
【0075】
表1中、条件(1)~(7)は下記の通りである。
(1):W1>R 且つ W2>R
(2):(W1+D1)>(W2+D2)
(3):(W1-D2)≦2R
(4):(W1+D1)/(W2+D2)≠Z又は(Z+0.5) (但し、Zは整数)
(5):N1≧(A+1) 且つ N2≧(B+1) (但し、A及びBは、それぞれ独立して、以下の関係(α)を満たす最小の自然数)
A×(W1+D1)=B×(W2+D2)・・・(α)
(6):(W1+D1)≧(W2+D2)
(7):(W1-D2)>2R
そして、上記条件(1)~(7)の内、下記の2通りの条件セットを満たすことが好ましい。下記の2通りの条件セットのうちの少なくとも一つを満たす場合に、製造工程における貼り合わせずれが生じた場合であっても、高い確率で絶縁性を担保することができる。このため、Set1又はSet2を満たす太陽電池モジュールは、絶縁性の良好な製品の製造歩留まりが高く、製造効率に優れる。
条件セット1(Set1):(1)~(5)
条件セット2(Set2):(1)、(6)、(7)
【0076】
【表1】
【0077】
表1の実施例1~4及び参考例1~5から明らかなように、本発明によれば、新規なサブモジュール間絶縁構造を備える太陽電池モジュールを提供することができたことが分かる。さらに、表1から明らかなように、実施例1~4では、製造工程における貼り合わせずれが生じた場合であっても、絶縁性が確保可能な太陽電池モジュールを効率的に製造することができたことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明によれば、新規なサブモジュール間絶縁構造を備える、太陽電池モジュールを提供することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 第1基材
2 光電極
3 第1基板
4 電解質層
5 第2基材
6 対向電極
7 第2基板
8 隔壁
9,9A~D 導電材
12A 第1電気的接続部
12B 第2電気的接続部
21,21A~B 光電極用導電層
22 多孔質半導体微粒子層
61,61A~B 対向電極用導電層
62 触媒層
100 太陽電池モジュール
101A~B サブモジュール
120A~E 絶縁空間
200 外部機器
D1,D2 距離
G1,G2 絶縁用溝
P 導通経路
R 最大寸法
W1,W2 幅
X 第1方向
Y 第2方向
図1
図2
図3
図4
図5