(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】半導体用接着剤及びその製造方法、並びに、半導体装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20241008BHJP
C09J 7/35 20180101ALI20241008BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20241008BHJP
C09J 163/00 20060101ALI20241008BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
H01L21/60 311Q
C09J7/35
C09J201/00
C09J163/00
C09J11/06
(21)【出願番号】P 2021550588
(86)(22)【出願日】2020-09-16
(86)【国際出願番号】 JP2020035123
(87)【国際公開番号】W WO2021065518
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-07-19
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2019/038631
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100140578
【氏名又は名称】沖田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】秋吉 利泰
(72)【発明者】
【氏名】宮原 正信
(72)【発明者】
【氏名】川俣 龍太
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/235854(WO,A1)
【文献】特開2018-145346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
C09J 7/35
C09J 201/00
C09J 163/00
C09J 11/06
H01L 23/28-23/29
C09J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応基を有する硬化剤及び酸基を有するフラックス化合物を含む半導体用接着剤であって、
前記半導体用接着剤を10℃/分の昇温速度で加熱する示差走査熱量測定により得られるDSC曲線の60~155℃の発熱量が、20J/g以下である、半導体用接着剤。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂の重量平均分子量が、10000以上である、請求項1に記載の半導体用接着剤。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂の含有量が、前記半導体用接着剤の固形分全量を基準として、1~30質量%である、請求項1又は2に記載の半導体用接着剤。
【請求項4】
前記硬化剤が、アミン系硬化剤を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の半導体用接着剤。
【請求項5】
前記硬化剤が、イミダゾール系硬化剤を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の半導体用接着剤。
【請求項6】
前記硬化剤の含有量が、前記半導体用接着剤の固形分全量を基準として、2.3質量%以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の半導体用接着剤。
【請求項7】
前記フラックス化合物の融点が、25~230℃である、請求項1~6のいずれか一項に記載の半導体用接着剤。
【請求項8】
前記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂を含有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の半導体用接着剤。
【請求項9】
前記熱硬化性樹脂が、35℃で液状のエポキシ樹脂を実質的に含有しない、請求項1~8のいずれか一項に記載の半導体用接着剤。
【請求項10】
フィルム状である、請求項1~9のいずれか一項に記載の半導体用接着剤。
【請求項11】
加圧雰囲気下で熱を加えることにより当該半導体用接着剤を硬化させ、硬化した当該半導体用接着剤によって半導体チップの接続部を封止するために用いられる、請求項1~10のいずれか一項に記載の半導体用接着剤。
【請求項12】
当該半導体用接着剤の最低溶融粘度が400~2500Pa・sである、請求項1~11のいずれか一項に記載の半導体用接着剤。
【請求項13】
前記硬化剤全量中の前記反応基のモル数に対する、前記フラックス化合物全量中の前記酸基のモル数の比が0.01~4.8である、請求項1~12のいずれか一項に記載の半導体用接着剤。
【請求項14】
熱可塑性樹脂と、熱硬化性樹脂と、反応基を有する硬化剤と、酸基を有するフラックス化合物と、を混合する工程を備え、
前記工程では、前記硬化剤全量中の反応基のモル数に対する、前記フラックス化合物全量中の前記酸基のモル数の比が0.01~4.8となるように、前記硬化剤及び前記フラックス化合物を配合する、
請求項1~13のいずれか一項に記載の半導体用接着剤の製造方法。
【請求項15】
前記フラックス化合物が、モノカルボン酸、ジカルボン酸及びトリカルボン酸からなる群より選択される少なくとも一種を含み、
前記工程では、前記硬化剤全量中の前記反応基のモル数に対する、前記モノカルボン酸のモル数の比が0.01~4.8となり、前記硬化剤全量中の前記反応基のモル数に対する、前記ジカルボン酸のモル数の比が0.01~2.4となり、前記硬化剤全量中の前記反応基のモル数に対する、前記トリカルボン酸のモル数の比が0.01~1.6となるように、前記硬化剤及び前記フラックス化合物を配合する、請求項14に記載の半導体用接着剤の製造方法。
【請求項16】
前記熱可塑性樹脂の重量平均分子量が、10000以上である、請求項14又は15に記載の半導体用接着剤の製造方法。
【請求項17】
前記熱可塑性樹脂の配合量が、前記半導体用接着剤の固形分全量を基準として、1~30質量%である、請求項14~16のいずれか一項に記載の半導体用接着剤の製造方法。
【請求項18】
前記硬化剤が、アミン系硬化剤を含む、請求項14~17のいずれか一項に記載の半導体用接着剤の製造方法。
【請求項19】
前記硬化剤が、イミダゾール系硬化剤を含む、請求項14~18のいずれか一項に記載の半導体用接着剤の製造方法。
【請求項20】
前記硬化剤の配合量が、前記半導体用接着剤の固形分全量を基準として、2.3質量%以下である、請求項14~19のいずれか一項に記載の半導体用接着剤の製造方法。
【請求項21】
前記フラックス化合物の融点が、25~230℃である、請求項14~20のいずれか一項に記載の半導体用接着剤の製造方法。
【請求項22】
前記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂を含有する、請求項14~21のいずれか一項に記載の半導体用接着剤の製造方法。
【請求項23】
前記熱硬化性樹脂が、35℃で液状のエポキシ樹脂を実質的に含有しない、請求項14~22のいずれか一項に記載の半導体用接着剤の製造方法。
【請求項24】
前記熱可塑性樹脂と、前記熱硬化性樹脂と、前記硬化剤と、前記フラックス化合物と、を含む混合物をフィルム状に成形する工程を更に備える、請求項14~23のいずれか一項に記載の半導体用接着剤の製造方法。
【請求項25】
半導体チップ及び配線回路基板のそれぞれの接続部が互いに電気的に接続された半導体装置、又は、複数の半導体チップのそれぞれの接続部が互いに電気的に接続された半導体装置の製造方法であって、請求項1~13のいずれか一項に記載の半導体用接着剤を、熱を加えることにより硬化させ、硬化した前記半導体用接着剤により前記接続部の少なくとも一部を封止する封止工程を備える、半導体装置の製造方法。
【請求項26】
前記封止工程の前に、
ステージ上に複数の半導体チップを配置する工程と、
前記ステージを60~155℃に加熱しながら、前記ステージ上に配置された前記複数の半導体チップのそれぞれの上に、前記半導体用接着剤を介して他の半導体チップを順次配置し、前記半導体チップ、前記半導体用接着剤及び前記他の半導体チップを有しこれらがこの順に積層されてなる積層体を複数得る仮固定工程と、を更に備える、請求項25に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項27】
前記封止工程の前に、
ステージ上に配線回路基板又は半導体ウェハを配置する工程と、
前記ステージを60~155℃に加熱しながら、前記ステージ上に配置された前記配線回路基板又は半導体ウェハの上に、前記半導体用接着剤を介して複数の半導体チップを順次配置し、前記配線回路基板、前記半導体用接着剤及び複数の前記半導体チップを有しこれらがこの順に積層されてなる積層体、又は、前記半導体ウェハ、前記半導体用接着剤及び複数の前記半導体チップを有しこれらがこの順に積層されてなる積層体を得る仮固定工程と、を更に備える、請求項25に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項28】
接続部を有する半導体チップと、接続部を有する配線回路基板と、を備え、前記半導体チップの接続部と前記配線回路基板の接続部が互いに電気的に接続された半導体装置、又は、
接続部を有する複数の半導体チップを備え、それぞれの前記半導体チップの接続部が互いに電気的に接続された半導体装置であって、
前記接続部の少なくとも一部が、請求項1~13のいずれか一項に記載の半導体用接着剤の硬化物によって封止されている、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体用接着剤及びその製造方法、並びに、半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体チップと基板とを接続するには、金ワイヤ等の金属細線を用いるワイヤーボンディング方式が広く適用されてきた。
【0003】
近年、半導体装置に対する高機能化、高集積化、高速化等の要求に対応するため、半導体チップ又は基板にバンプと呼ばれる導電性突起を形成して、半導体チップと基板とを直接接続するフリップチップ接続方式(FC接続方式)が広まりつつある。
【0004】
例えば、半導体チップ及び基板間の接続に関して、BGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)等に盛んに用いられているCOB(Chip On Board)型の接続方式もFC接続方式に該当する。FC接続方式は、半導体チップ上に接続部(バンプ又は配線)を形成して、半導体チップ間を接続するCOC(Chip On Chip)型、及び、半導体ウェハ上に接続部(バンプ又は配線)を形成して、半導体チップと半導体ウェハとの間を接続するCOW(Chip On Wafer)型の接続方式にも広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
さらなる小型化、薄型化及び高機能化が強く要求される半導体パッケージでは、上述した接続方式を積層・多段化したチップスタック型パッケージ、POP(Package On Package)、TSV(Through-Silicon Via)等も広く普及し始めている。このような積層・多段化技術は、半導体チップ等を三次元的に配置することから、二次元的に配置する手法と比較して半導体パッケージを小さくできる。半導体の性能向上、ノイズ低減、実装面積の削減、省電力化等にも有効であることから、次世代の半導体配線技術として積層・多段化技術が注目されている。
【0006】
ところで、一般に接続部同士の接続には、接続信頼性(例えば絶縁信頼性)を充分に確保する観点から、金属接合が用いられている。上記接続部(例えば、バンプ及び配線)に用いられる主な金属としては、はんだ、スズ、金、銀、銅、ニッケル等があり、これらの複数種を含んだ導電材料も用いられている。接続部に用いられる金属は、表面が酸化して酸化膜が生成してしまうこと、及び、表面に酸化物等の不純物が付着してしまうことにより、接続部の接続面に不純物が生じる場合がある。このような不純物が残存すると、半導体チップと基板との間、又は2つの半導体チップの間における接続信頼性(例えば絶縁信頼性)が低下し、上述した接続方式を採用するメリットが損なわれてしまうことが懸念される。
【0007】
これらの不純物の発生を抑制する方法として、OSP(Organic Solderbility Preservatives)処理等で知られる接続部を酸化防止膜でコーティングする方法があるが、この酸化防止膜は接続プロセス時のはんだ濡れ性の低下、接続性の低下等の原因となる場合がある。
【0008】
そこで上述の酸化膜及び不純物を除去する方法として、半導体用接着剤にフラックス剤を含有させる方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2008-294382号公報
【文献】国際公開第2013/125086号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
近年、生産性を向上させる観点から、半導体用接着剤を介して複数の半導体チップを被搭載部材(半導体チップ、半導体ウェハ、配線回路基板等)の上に搭載し仮固定した後、一括して硬化と封止を行うプロセスが提案されている。このプロセスでは、半導体用接着剤が流動可能な程度にステージに熱(60~155℃程度)を加えることで、被搭載部材に半導体チップを仮固定した後、接続部の融点以上の温度(例えば260℃程度)でのリフローにより、半導体用接着剤を一括して硬化する。このプロセスによれば、複数個の半導体パッケージを効率良く作製することができる。
【0011】
上記プロセスでは、半導体用接着剤中にボイドが残存する場合があり、このボイドの発生を防止するため、一括硬化を加圧条件下で行う方法が提案されている。しかしながら、半導体チップの数が多くなると、上記方法であってもボイドが残存する場合があり、更なる改良の余地があることが明らかになった。
【0012】
そこで、本発明の一側面は、半導体用接着剤を介して複数の半導体チップを被搭載部材上に仮固定し、一括して硬化と封止を行うプロセスにおいて、半導体用接着剤中に残存し得るボイドを低減する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記プロセスにおいて半導体チップの数が多い場合、仮固定の際に半導体用接着剤が部分的に硬化するため、結果として半導体用接着剤中にボイドが残存しやすくなると推察した。すなわち、上記プロセスでは半導体チップが順次搭載されるため、初期に搭載された半導体チップ及び半導体用接着剤に対しては、最後の半導体チップの搭載が完了するまでステージによる熱履歴が与えられ続けることとなる。そのため、半導体チップの数が多くなると、初期に搭載された半導体チップを仮固定する半導体用接着剤の硬化が部分的に進行してしまい、一括硬化時の加圧によってボイドが除去されずに残存すると推察される。本発明者らは、上記推察に基づき更なる検討を行い、本発明を完成させた。
【0014】
本発明のいくつかの側面は、以下を提供する。
【0015】
[1] 熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応基を有する硬化剤及び酸基を有するフラックス化合物を含む半導体用接着剤であって、前記半導体用接着剤を10℃/分の昇温速度で加熱する示差走査熱量測定により得られるDSC曲線の60~155℃の発熱量が、20J/g以下である、半導体用接着剤。
【0016】
[2] 前記熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)が、10000以上である、[1]に記載の半導体用接着剤。
【0017】
[3] 前記熱可塑性樹脂の含有量が、前記半導体用接着剤の固形分全量を基準として、1~30質量%である、[1]又は[2]に記載の半導体用接着剤。
【0018】
[4] 前記熱可塑性樹脂の含有量が、前記半導体用接着剤の固形分全量を基準として、5質量%以上である、[1]~[3]のいずれかに記載の半導体用接着剤。
【0019】
[5] 前記硬化剤が、アミン系硬化剤を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の半導体用接着剤。
【0020】
[6] 前記硬化剤が、イミダゾール系硬化剤を含む、[1]~[5]のいずれかに記載の半導体用接着剤。
【0021】
[7] 前記硬化剤の含有量が、前記半導体用接着剤の固形分全量を基準として、2.3質量%以下である、[1]~[6]のいずれかに記載の半導体用接着剤。
【0022】
[8] 前記フラックス化合物の融点が、25~230℃である、[1]~[7]のいずれかに記載の半導体用接着剤。
【0023】
[9] 前記フラックス化合物の融点が、100~170℃である、[1]~[8]のいずれかに記載の半導体用接着剤。
【0024】
[10] 前記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂を含有する、[1]~[9]のいずれかに記載の半導体用接着剤。
【0025】
[11] 前記熱硬化性樹脂が、35℃で液状のエポキシ樹脂を実質的に含有しない、[1]~[10]のいずれかに記載の半導体用接着剤。
【0026】
[12] フィルム状である、[1]~[11]のいずれかに記載の半導体用接着剤。
【0027】
[13] 加圧雰囲気下で熱を加えることにより硬化させる、[1]~[12]のいずれかに記載の半導体用接着剤。この半導体用接着剤は、加圧雰囲気下で熱を加えることにより当該半導体用接着剤を硬化させ、硬化した当該半導体用接着剤によって半導体チップの接続部を封止するために用いられてもよい。
【0028】
[14] 当該半導体用接着剤の最低溶融粘度が400~2500Pa・sである、[1]~[13]のいずれかに記載の半導体用接着剤。
【0029】
[15] 前記硬化剤全量中の前記反応基のモル数に対する、前記フラックス化合物全量中の前記酸基のモル数の比が0.01~4.8である、[1]~[14]のいずれかに記載の半導体用接着剤。
【0030】
[16] 熱可塑性樹脂と、熱硬化性樹脂と、反応基を有する硬化剤と、酸基を有するフラックス化合物と、を混合する工程を備え、前記工程では、前記硬化剤全量中の反応基のモル数に対する、前記フラックス化合物全量中の前記酸基のモル数の比が0.01~4.8となるように、前記硬化剤及び前記フラックス化合物を配合する、半導体用接着剤の製造方法。
【0031】
[17] 前記フラックス化合物が、モノカルボン酸、ジカルボン酸及びトリカルボン酸からなる群より選択される少なくとも一種を含み、
前記工程では、前記硬化剤全量中の反応基のモル数に対する、前記モノカルボン酸のモル数の比が0.01~4.8となり、前記硬化剤全量中の反応基のモル数に対する、前記ジカルボン酸のモル数の比が0.01~2.4となり、前記硬化剤全量中の反応基のモル数に対する、前記トリカルボン酸のモル数の比が0.01~1.6となるように、前記硬化剤及び前記フラックス化合物を配合する、[16]に記載の半導体用接着剤の製造方法。
【0032】
[18] 前記熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)が、10000以上である、[16]又は[17]に記載の半導体用接着剤の製造方法。
【0033】
[19] 前記熱可塑性樹脂の配合量が、前記半導体用接着剤の固形分全量を基準として、1~30質量%である、[16]~[18]のいずれかに記載の半導体用接着剤の製造方法。
【0034】
[20] 前記熱可塑性樹脂の配合量が、前記半導体用接着剤の固形分全量を基準として、5質量%以上である、[16]~[19]のいずれかに記載の半導体用接着剤の製造方法。
【0035】
[21] 前記硬化剤が、アミン系硬化剤を含む、[16]~[20]のいずれかに記載の半導体用接着剤の製造方法。
【0036】
[22] 前記硬化剤が、イミダゾール系硬化剤を含む、[16]~[21]のいずれかに記載の半導体用接着剤の製造方法。
【0037】
[23] 前記硬化剤の配合量が、前記半導体用接着剤の固形分全量を基準として、2.3質量%以下である、[16]~[22]のいずれかに記載の半導体用接着剤の製造方法。
【0038】
[24] 前記フラックス化合物の融点が、25~230℃である、[16]~[23]のいずれかに記載の半導体用接着剤の製造方法。
【0039】
[25] 前記フラックス化合物の融点が、100~170℃である、[16]~[24]のいずれかに記載の半導体用接着剤の製造方法。
【0040】
[26] 前記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂を含有する、[16]~[25]のいずれかに記載の半導体用接着剤の製造方法。
【0041】
[27] 前記熱硬化性樹脂が、35℃で液状のエポキシ樹脂を実質的に含有しない、[16]~[26]のいずれかに記載の半導体用接着剤の製造方法。
【0042】
[28] 前記熱可塑性樹脂と、前記熱硬化性樹脂と、前記硬化剤と、前記フラックス化合物と、を含む混合物をフィルム状に成形する工程を更に備える、[16]~[27]のいずれかに記載の半導体用接着剤の製造方法。
【0043】
[29] 半導体チップ及び配線回路基板のそれぞれの接続部が互いに電気的に接続された半導体装置、又は、複数の半導体チップのそれぞれの接続部が互いに電気的に接続された半導体装置の製造方法であって、[1]~[15]のいずれかに記載の半導体用接着剤を熱を加えることにより硬化させ、硬化した前記半導体用接着剤により前記接続部の少なくとも一部を封止する封止工程を備える、半導体装置の製造方法。半導体用接着剤を加圧雰囲気下に熱を加えることにより硬化させてもよい。
【0044】
[30] 前記封止工程の前に、ステージ上に複数の半導体チップを配置する工程と、前記ステージを60~155℃に加熱しながら、前記ステージ上に配置された前記複数の半導体チップのそれぞれの上に、前記半導体用接着剤を介して他の半導体チップを順次配置し、前記半導体チップ、前記半導体用接着剤及び前記他の半導体チップを有しこれらがこの順に積層されてなる積層体を複数得る仮固定工程と、を更に備える、[29]に記載の半導体装置の製造方法。
【0045】
[31] 前記封止工程の前に、ステージ上に配線回路基板又は半導体ウェハを配置する工程と、前記ステージを60~155℃に加熱しながら、前記ステージ上に配置された前記配線回路基板又は半導体ウェハの上に、前記半導体用接着剤を介して複数の半導体チップを順次配置し、前記配線回路基板、前記半導体用接着剤及び複数の前記半導体チップを有しこれらがこの順に積層されてなる積層体、又は、前記半導体ウェハ、前記半導体用接着剤及び複数の前記半導体チップを有しこれらがこの順に積層されてなる積層体を得る仮固定工程と、を更に備える、[29]に記載の半導体装置の製造方法。
【0046】
[32] 接続部を有する半導体チップと、接続部を有する配線回路基板と、を備え、前記半導体チップの接続部と前記配線回路基板の接続部が互いに電気的に接続された半導体装置、又は、接続部を有する複数の半導体チップを備え、それぞれの前記半導体チップの接続部が互いに電気的に接続された半導体装置であって、前記接続部の少なくとも一部が、加圧雰囲気下で熱を加えて硬化された[1]~[15]のいずれかに記載の半導体用接着剤の硬化物によって封止されている、半導体装置。言い換えると、この半導体装置は、半導体チップ及び配線回路基板のそれぞれの接続部が互いに電気的に接続された半導体装置、又は、複数の半導体チップのそれぞれの接続部が互いに電気的に接続された半導体装置である。
【発明の効果】
【0047】
本発明の一側面によれば、半導体用接着剤を介して複数の半導体チップを被搭載部材上に仮固定し、一括して硬化と封止を行うプロセスにおいて、半導体用接着剤中に残存し得るボイドを低減することができる。本発明の別の一側面によれば、このようなボイドを低減することができる半導体用接着剤及びその製造方法、並びに、このようなボイドが低減された半導体装置及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】DSC曲線から発熱ピークのオンセット温度を求める方法を示す模式図である。
【
図2】DSC曲線から60~155℃の発熱量を求める方法を示す模式図である。
【
図3】DSC曲線から60~155℃の発熱量を求める方法を示す模式図である。
【
図4】半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。
【
図5】半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。
【
図6】半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。
【
図7】半導体装置の製造方法の一実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、場合により図面を参照しつつ本発明の一実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0050】
本明細書に記載される数値範囲の上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。実施例に記載される数値も、数値範囲の上限値又は下限値として用いることができる。本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はそれに対応するメタクリルを意味する。
【0051】
<半導体用接着剤及びその製造方法>
本実施形態の半導体用接着剤は、熱可塑性樹脂(以下、場合により「(a)成分」という。)、熱硬化性樹脂(以下、場合により「(b)成分」という。)、反応基を有する硬化剤(以下、場合により「(c)成分」という。)及び酸基を有するフラックス化合物(以下、場合により「(d)成分」という。)を含有する。本実施形態の半導体用接着剤は、必要に応じて、フィラー(以下、場合により「(e)成分」という。)を含有していてもよい。
【0052】
本実施形態の半導体用接着剤の示差走査熱量測定(DSC:Differential scanning calorimetry)により得られるDSC曲線の60~155℃の発熱量は、20J/g以下である。ここで、示差走査熱量測定は、サンプルとなる半導体用接着剤の重量を10mgとし、測定温度範囲を30~300℃とし、昇温速度を10℃/minとして、空気又は窒素雰囲気で半導体用接着剤を加熱することにより行う。発熱量は、ピーク面積の積分により算出される。
【0053】
従来の半導体用接着剤は、DSC曲線の60~155℃の温度領域に発熱ピークを有している。この温度領域における発熱は、半導体用接着剤中の熱硬化性樹脂とフラックス化合物の反応に由来する発熱であると推察され、この反応が進行すると、半導体用接着剤が部分的に硬化し、流動性が低下すると推察される。一方、通常、半導体用接着剤による半導体チップの仮固定は、半導体用接着剤を例えば60~155℃に加熱して適度に流動させることにより行われる。したがって、半導体用接着剤を介して複数の半導体チップを被搭載部材(半導体チップ、半導体ウェハ、配線回路基板等)の上に搭載し仮固定した後、加圧条件下で一括して硬化と封止を行うプロセスにおいて従来の半導体用接着剤を用いると、半導体チップを仮固定する際に、半導体用接着剤中の熱硬化性樹脂とフラックス化合物とが反応することで、半導体用接着剤の硬化が部分的に進行し、加圧条件下での一括硬化時に充分に流動しなくなると推察される。本実施形態の半導体用接着剤は、DSC曲線の60~155℃の発熱量が20J/g以下であることから、上記半導体チップの仮固定を行う温度領域(例えば60~155℃)において硬化が進行し難い。そのため、上記プロセスにおいて本実施形態の半導体用接着剤を用いることで、半導体用接着剤の充分な流動性を維持しながら複数の半導体チップを仮固定することができ、一括硬化時のボイドの発生を低減することが可能となる。さらに、ボイドの発生が低減される結果、リフロー工程において接続部の融点以上の温度(例えば260℃)で加熱したとしても、不具合(半導体用接着剤の剥離、接続部での電気的な接続不良等)が起こり難くなることが期待される。すなわち、本実施形態の半導体用接着剤によれば、半導体装置の製造におけるリフロー信頼性(耐リフロー性)を向上させることができる傾向がある。
【0054】
上記DSC曲線の60~155℃の発熱量は、本発明の効果が得られやすい観点から、15J/g以下、又は10J/g以下であってもよい。上記DSC曲線の60~155℃の発熱量は、本発明の効果が得られやすい観点から、60~280℃の発熱量の20%以下、15%以下又は10%以下であってよい。上記DSC曲線の60~280℃の発熱量は、本発明の効果が得られやすい観点から、50J/g以上又は100J/g以上であってよく、200J/g以下又は180J/g以下であってよく、50~200J/g、100~200J/g又は100~180J/gであってよい。上記DSC曲線は、本発明の効果が得られやすい観点から、オンセット温度が155℃以下にある発熱ピークを有しなくてもよい。
【0055】
図1は、DSC曲線から発熱ピークのオンセット温度を求める方法を示す模式図である。
図1に示されるDSC曲線は、60~280℃の温度領域に、ベースラインL0と、ベースラインL0の途中に観測される、接着剤の硬化反応による発熱ピークPとを含む。発熱ピークPの下部におけるベースラインL0の延長線L1と、発熱ピークPにおいてDSC曲線が最大勾配を示す点におけるDSC曲線の接線L2との交点の温度Tが、オンセット温度である。
【0056】
図2及び
図3は、DSC曲線から60~155℃の発熱量を求める方法を示す模式図である。
図2のように、DSC曲線が、発熱ピークとして、155℃以下の部分を含む発熱ピークPだけを含む場合、発熱ピークPのうち、155℃以下の部分の発熱量Q1が、60~155℃の発熱量である。発熱量Q1は、発熱ピークPとベースラインL0の延長線L1とで囲まれる155℃以下の領域の面積から求められる。
図3のように、DSC曲線が、155℃以下の領域に発熱ピークP以外のピークを更に含む場合、そのピークの発熱量Q2と、発熱ピークPの155℃以下における発熱量Q1との合計が、60~155℃の発熱量である。60~155℃以下の領域においてより多くの発熱ピークが観測される場合、それらの発熱ピークの発熱量も全て足し合わせた発熱量が、60~155℃の発熱量である。
【0057】
上記DSC曲線を示す本実施形態の半導体用接着剤は、例えば、硬化剤全量中の反応基(フラックス化合物の酸基と反応する基)のモル数に対する、フラックス化合物全量中の酸基のモル数の比が0.01~4.8となるように、硬化剤及びフラックス化合物を配合することで得ることができる。すなわち、本実施形態の半導体用接着剤の製造方法は、熱可塑性樹脂と、熱硬化性樹脂と、反応基を有する硬化剤と、酸基を有するフラックス化合物と、を混合する工程を備え、当該工程では、硬化剤全量中の反応基のモル数に対する、フラックス化合物全量中の酸基のモル数の比が0.01~4.8となるように、硬化剤及びフラックス化合物を配合する。この方法によって得られる半導体用接着剤においては、通常、硬化剤全量中の反応基のモル数に対する、フラックス化合物全量中の酸基のモル数の比が0.01~4.8である。ただし、硬化剤の反応基及びフラックス化合物の酸基のうち一部が塩を形成していてもよい。塩を形成している反応基及び酸基の数を含むモル数の比が上記範囲内であってもよい。
【0058】
硬化剤とフラックス化合物のモル比を上記範囲とすることで、上記DSC曲線を示す半導体用接着剤が得られる理由を本発明者らは次のように推察している。すなわち、上述のとおり、60~155℃の温度領域では、半導体用接着剤中の熱硬化性樹脂とフラックス化合物とが反応する。しかしながら、硬化剤とフラックス化合物のモル比が上記範囲であると、フラックス化合物が、熱硬化性樹脂と反応する前に硬化剤と塩を形成し安定化することができると推察される。そのため、熱硬化性樹脂とフラックス化合物との反応が抑制され、結果として、上記DSC曲線を示す半導体用接着剤が得られると推察している。
【0059】
以下、本実施形態の半導体用接着剤を構成する各成分について説明する。
【0060】
(a)熱可塑性樹脂
(a)成分としては、特に限定されるものではないが、例えば、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカルボジイミド樹脂、シアネートエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ウレタン樹脂及びアクリルゴムが挙げられる。これらの中でも耐熱性及びフィルム形成性に優れる観点から、熱可塑性樹脂がフェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、アクリルゴム、シアネートエステル樹脂及びポリカルボジイミド樹脂から選ばれてもよく、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂及びアクリル樹脂から選ばれてもよい。これらの(a)成分は単独で使用することができ、2種以上の混合物又は共重合体として使用することもできる。
【0061】
(a)成分の重量平均分子量(Mw)は、10000以上、40000以上、又は60000以上であってもよい。このような(a)成分によれば、フィルム形成性及び接着剤の耐熱性を一層向上させることができる。重量平均分子量が10000以上であると、フィルム状の半導体用接着剤に柔軟性を付与しやすいため、一層優れた加工性が得られやすい。(a)成分の重量平均分子量は、1000000以下、又は500000以下であってもよい。このような(a)成分によれば、フィルムの粘度が低下するため、バンプへの埋め込み性が良好になり、より一層ボイド無く実装することができる。これらの観点から、(a)成分の重量平均分子量は、10000~1000000、40000~500000、又は60000~500000であってもよい。
【0062】
本明細書において、上記重量平均分子量とは、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー、Gel Permeation Chromatography)を用いて測定された、ポリスチレン換算の重量平均分子量を示す。GPC法の測定条件の一例を以下に示す。
装置:HCL-8320GPC、UV-8320(製品名、東ソー株式会社製)、又はHPLC-8020(製品名、東ソー株式会社製)
カラム:TSKgel superMultiporeHZ-M×2、又は2pieces of GMHXL + 1piece of G-2000XL
検出器:RI又はUV検出器
カラム温度:25~40℃
溶離液:高分子成分が溶解する溶媒を選択する。溶媒としては、例えば、THF(テトラヒドロフラン)、DMF(N,N-ジメチルホルムアミド)、DMA(N,N-ジメチルアセトアミド)、NMP(N-メチルピロリドン)、トルエン等が挙げられる。なお、極性を有する溶剤を選択する場合は、リン酸の濃度を0.05~0.1mol/L(通常は0.06mol/L)、LiBrの濃度を0.5~1.0mol/L(通常は0.63mol/L)と調整してもよい。
流速:0.30~1.5mL/分
標準物質:ポリスチレン
【0063】
(a)成分の含有量Caに対する(b)成分の含有量Cbの比Cb/Ca(質量比)は、0.01以上、0.1以上、又は1以上であってもよく、5以下、4.5以下、又は4以下であってもよい。比Cb/Caを0.01以上とすることで、より良好な硬化性及び接着力が得られる。比Cb/Caを5以下とすることでより良好なフィルム形成性が得られる。これらの観点から、比Cb/Caは0.01~5、0.1~4.5、又は1~4であってもよい。
【0064】
(a)成分のガラス転移温度は、接続信頼性の向上等の観点から、-50℃以上、-40℃以上、又は-30℃以上であってもよい。(a)成分のガラス転移温度は、ラミネート性等の観点から、220℃以下、200℃以下、又は180℃以下であってもよい。(a)成分のガラス転移温度は、-50~220℃、-40~200℃、又は-30~180℃であってもよい。このような(a)成分を含む半導体用接着剤によれば、ウェハレベルでの実装プロセスに際し、ウェハ反り量を一層低減することができると共に、半導体用接着剤の耐熱性及びフィルム形成性を一層向上させることができる。(a)成分のガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)により測定することができる。
【0065】
(a)成分の含有量は、半導体用接着剤の固形分全量を基準として、30質量%以下、25質量%以下、又は20質量%以下であってもよい。(a)成分の含有量が30質量%以下であると、半導体用接着剤は温度サイクル試験の際に良好な信頼性を得ることができ、吸湿後でも260℃前後のリフロー温度で良好な接着力を得ることができる。(a)成分の含有量は、半導体用接着剤の固形分全量を基準として、1質量%以上、3質量%以上、又は5質量%以上であってもよい。(a)成分の含有量が1質量%以上であると、半導体用接着剤はウェハレベルでの実装プロセスに際し、ウェハ反り量を一層低減することができると共に、半導体用接着剤の耐熱性及びフィルム形成性を一層向上させることができる。(a)成分の含有量が5質量%以上であると、ウェハ形状に外形加工する際のバリ及び欠けの発生を抑制することができる。(a)成分の含有量は、上記観点、及び、フィルム状の半導体用接着剤に柔軟性を付与しやすく、一層優れた加工性が得られやすい観点から、半導体用接着剤の固形分全量を基準として、1~30質量%、3~30質量%、又は5~30質量%であってもよい。「半導体用接着剤の固形分全量」とは、半導体用接着剤の全量から半導体用接着剤に含まれる溶媒の量を除いた量である。本明細書では、「半導体用接着剤の固形分全量」を、「(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分及び(e)成分の合計量」と言い換えてもよい。
【0066】
(b)熱硬化性樹脂
(b)成分としては、分子内に2個以上の反応基を有するものであれば特に制限なく用いることができる。半導体用接着剤が熱硬化性樹脂を含有することで、加熱により接着剤が硬化することができ、硬化した接着剤が高い耐熱性とチップへの接着力を発現し、優れた耐リフロー性が得られる。
【0067】
(b)成分としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、イミド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、シリコン樹脂、(メタ)アクリル化合物、ビニル化合物が挙げられる。耐熱性(耐リフロー性)及び保存安定性に優れる観点から、熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂、フェノール樹脂及びイミド樹脂から選ばれれてもよく、エポキシ樹脂及びイミド樹脂から選ばれてもよく、エポキシ樹脂であってもよい。これらの(b)成分は単独で使用することができ、2種以上の混合物又は共重合体として使用することもできる。従来の半導体用接着剤の中でも、特に、熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂、メラミン樹脂又はユリア樹脂である場合に、60~155℃の温度領域で後述するフラックス化合物との反応が進行しやすく、一括硬化の前に部分的な硬化が進行する傾向があるが、本実施形態では、熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂、メラミン樹脂及びユリア樹脂からなる群より選択される少なくとも一種の樹脂を含む場合であっても、このような反応及び部分的な硬化が起こり難い。
【0068】
エポキシ樹脂及びイミド樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂及び各種多官能エポキシ樹脂、ナジイミド樹脂、アリルナジイミド樹脂、マレイミド樹脂、アミドイミド樹脂、イミドアクリレート樹脂、各種多官能イミド樹脂及び各種ポリイミド樹脂が挙げられる。これらは単独で又は2種以上の混合物として使用することができる。
【0069】
(b)成分は、高温での接続時に分解して揮発成分が発生することを抑制する観点から、接続時の温度が250℃の場合は、250℃における熱重量減少量率が5%以下のものであってもよく、接続時の温度が300℃の場合は、300℃における熱重量減少量率が5%以下のものであってもよい。
【0070】
(b)成分は、35℃で液状のエポキシ樹脂を実質的に含有しなくてもよい。例えば、(b)成分100質量部に対して35℃で液状のエポキシ樹脂の含有量が0.1質量部以下であってもよい。この場合、熱圧着時に液状のエポキシ樹脂が分解、揮発することなく実装することができ、チップ周辺部のアウトガス汚染が抑制されるため、一層優れたスループットで半導体パッケージが得られやすい。
【0071】
(b)成分の含有量は、半導体用接着剤の固形分全量を基準として、例えば5質量%以上であり、15質量%以上、又は30質量%以上であってもよい。(b)成分の含有量は、半導体用接着剤の固形分全量を基準として、例えば80質量%以下であり、70質量%以下、又は60質量%以下であってもよい。(b)成分の含有量は、半導体用接着剤の固形分全量を基準として、例えば、5~80質量%であり、15~70質量%、又は30~60質量%であってもよい。
【0072】
(c)硬化剤
(c)成分は、熱硬化性樹脂の反応基と反応する、又は、熱硬化性樹脂の硬化反応を促進する化合物であり、後述するフラックス剤と塩を形成することができる反応基を有する化合物であってよい。(c)成分としては、例えば、反応基としてアミノ基を有する化合物であるアミン系硬化剤、及び反応基としてイミダゾール基を有する化合物であるイミダゾール系硬化剤が挙げられる。(c)成分がアミン系硬化剤又はイミダゾール系硬化剤を含むと、接続部に酸化膜が生じることを抑制するフラックス活性を示し、接続信頼性・絶縁信頼性を向上させることができる。(c)成分がアミン系硬化剤又はイミダゾール系硬化剤を含むと、保存安定性が一層向上し、吸湿による分解又は劣化が起こりにくくなる傾向がある。(c)成分がアミン系硬化剤又はイミダゾール系硬化剤を含むと、硬化速度の調整が容易となり、また、速硬化性により生産性向上を目的とした短時間接続の実現が容易となる。
【0073】
以下、各硬化剤について説明する。
【0074】
(i)アミン系硬化剤
アミン系硬化剤としては、例えばジシアンジアミドを使用することができる。
【0075】
アミン系硬化剤の含有量は、上記(b)成分100質量部に対して、0.1質量部以上、10質量部以下又は5質量部以下であってもよい。アミン系硬化剤の含有量が0.1質量部以上であると硬化性が向上する傾向がある。アミン系硬化剤の含有量が10質量部以下であると金属接合が形成される前に半導体用接着剤が硬化することがなく、接続不良が発生しにくい傾向がある。これらの観点から、アミン系硬化剤の含有量は、(b)成分100質量部に対して、0.1~10質量部、又は0.1~5質量部であってもよい。
【0076】
(ii)イミダゾール系硬化剤
イミダゾール系硬化剤としては、例えば、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノ-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾールトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加体、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加体、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、及び、エポキシ樹脂とイミダゾール類の付加体が挙げられる。優れた硬化性、保存安定性及び接続信頼性の観点から、イミダゾール系硬化剤が、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノ-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾールトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加体、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加体、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール及び2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾールから選ばれてもよいい。これらは単独で又は2種以上を併用して用いることができる。これらを含むマイクロカプセルを潜在性硬化剤として用いてもよい。
【0077】
イミダゾール系硬化剤の含有量は、(b)成分100質量部に対して、0.1質量部以上、10質量部以下、5質量部以下であり、又は2.3質量部以下であってもよい。イミダゾール系硬化剤の含有量が0.1質量部以上であると硬化性が向上する傾向がある。イミダゾール系硬化剤の含有量が10質量部以下であると金属接合が形成される前に半導体用接着剤が硬化することがなく、接続不良が発生しにくく、また、加圧雰囲気下の硬化プロセスにおいてはボイドの発生を抑制しやすい。これらの観点から、イミダゾール系硬化剤の含有量は、(b)成分100質量部に対して、0.1~10質量部、0.1~5質量部、又は0.1~2.3質量部であってもよい。
【0078】
(c)成分は、それぞれ1種を単独で又は2種以上の混合物として使用することができる。例えば、イミダゾール系硬化剤は単独で用いてもよく、アミン系硬化剤と共に用いてもよい。(c)成分としては、(b)成分の硬化剤として機能する上記以外の硬化剤も使用可能である。
【0079】
(c)成分の含有量は、(b)成分100質量部に対して、0.5質量部以上、20質量部以下、6質量部以下、又は4質量部以下であってもよい。(c)成分の含有量が0.5質量部以上の場合、充分に硬化が進行する傾向がある。(c)成分の含有量が20質量部以下の場合、硬化が急激に進行して反応点が多くなることを抑制し、分子鎖が短くなったり、未反応基が残存したりして信頼性が低下することを防ぐことができる傾向があり、加えて、加圧雰囲気下での硬化時にボイドが残存することを抑制しやすくなる。これらの観点から、(c)成分の含有量は、(b)成分100質量部に対して、0.2~20質量部、0.5~6質量部、又は0.5~4質量部であってもよい。
【0080】
(c)成分の含有量は、半導体用接着剤の固形分全量を基準として、0.5質量%以上、2.3質量%以下、2.0質量%以下、又は1.5質量%以下であってもよい。(c)成分の含有量が0.5質量%以上の場合、充分に硬化が進行する傾向がある。(c)成分の含有量が2.3質量%以下の場合、硬化が急激に進行して反応点が多くなることを抑制し、分子鎖が短くなったり、未反応基が残存したりして信頼性が低下することを防ぐことができる傾向があり、加えて、加圧雰囲気下での硬化時にボイドが残存することを抑制しやすくなる。これらの観点から、(c)成分の含有量は、半導体用接着剤の固形分全量を基準として、0.5~2.3質量%、又は0.5~2.0質量%であってもよい。
【0081】
半導体用接着剤が(c)成分としてアミン系硬化剤を含む場合、酸化膜を除去するフラックス活性を示し、接続信頼性をより向上することができる。
【0082】
(d)フラックス化合物
(d)成分はフラックス活性(酸化物及び不純物を除去する活性)を有する化合物であり、例えば有機酸である。半導体用接着剤が(d)成分を含むことで、接続部の金属の酸化膜、及び、OSP処理によるコーティングを除去できるため、優れた接続信頼性が得られやすい。(d)成分としては、フラックス化合物(例えば有機酸)の1種を単独で用いてもよく、フラックス化合物(例えば有機酸)の2種以上を併用してもよい。
【0083】
(d)成分は1以上の酸基を有する。酸基は、例えばカルボキシル基である。(d)成分がカルボキシル基を有する化合物(例えばカルボン酸)である場合、一層優れた接続信頼性が得られやすい。(d)成分がカルボキシル基を有する化合物(例えばカルボン酸)である場合、本発明の効果が得られやすくなる観点から、(b)成分はエポキシ樹脂、ウレタン樹脂及びユリア樹脂からなる群より選択される少なくとも一種の熱硬化性樹脂であってもよく、(c)成分は、アミン系硬化剤及びイミダゾール系硬化剤からなる群より選択される少なくとも一種の硬化剤であってもよい。
【0084】
カルボキシル基を有する化合物としては、例えば、下記式(1)で表される基を有する化合物が挙げられる。
【化1】
式(1)中、R
1は、水素原子又は電子供与性基を示す。
【0085】
電子供与性基としては、例えば、アルキル基、水酸基、アミノ基、アルコキシ基及びアルキルアミノ基が挙げられる。
【0086】
アルキル基は、炭素数1~10のアルキル基、又は炭素数1~5のアルキル基であってもよい。アルキル基の炭素数が上記範囲であると、電子供与性及び立体障害のバランスに優れる。
【0087】
アルキル基は、直鎖状又は分岐状であってもよく、直鎖状であってもよい。アルキル基が直鎖状であるとき、電子供与性及び立体障害のバランスの観点から、アルキル基の炭素数は、フラックス化合物の主鎖の炭素数以下であってもよい。
【0088】
アルコキシ基は、炭素数1~10のアルコキシ基、又は炭素数1~5のアルコキシ基であってもよい。アルコキシ基の炭素数が上記範囲であると、電子供与性及び立体障害のバランスに優れる。
【0089】
アルコキシ基のアルキル基部分は、直鎖状又は分岐状であってもよく、直鎖状であってもよい。アルコキシ基が直鎖状であるとき、電子供与性及び立体障害のバランスの観点から、アルコキシ基の炭素数は、フラックス化合物の主鎖の炭素数以下であってもよい。
【0090】
アルキルアミノ基の例としては、モノアルキルアミノ基及びジアルキルアミノ基が挙げられる。モノアルキルアミノ基は、炭素数1~10のモノアルキルアミノ基、又は炭素数1~5のモノアルキルアミノ基であってもよい。モノアルキルアミノ基のアルキル基部分は、直鎖状又は分岐状であってもよく、直鎖状であってもよい。ジアルキルアミノ基は、炭素数2~20のジアルキルアミノ基、又は炭素数2~10のジアルキルアミノ基であってもよい。ジアルキルアミノ基のアルキル基部分は、直鎖状又は分岐状であってもよく、直鎖状であってもよい。
【0091】
(d)成分は、酸基を1~3つ有する化合物であってもよく、酸基としてカルボキシル基を1~3つ有する化合物であってもよい。(d)成分は、モノカルボン酸、ジカルボン酸及びトリカルボン酸からなる群より選択される少なくとも一種を含んでもよい。カルボキシル基を1~3つ有する(d)成分を用いる場合、カルボキシル基を4つ以上有する化合物を用いる場合と比較して、保管時・接続作業時等における半導体用接着剤の粘度上昇を一層抑制することができ、半導体装置の接続信頼性を一層向上させることができる。
【0092】
(d)成分は、モノカルボン酸を含んでもよい。例えば、熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂、ウレタン樹脂又はユリア樹脂である場合には、熱による重合(硬化)をする際に、一部の(b)成分と一部の(d)成分が反応しエステルを生成するが、カルボキシル基を1つ有する化合物を用いた場合には、このエステルに由来するエステル結合が重合主鎖中に存在し難くなる。そのため、吸湿によりエステル加水分解が起こったとしても、分子鎖が大幅に減少することがない。したがって、吸湿後の密着力(例えばシリコンへの密着力)、及び、硬化物のバルク強度を高い水準で維持することができ、半導体装置の耐リフロー性及び接続信頼性を一層向上させることができる。
【0093】
(d)成分の融点は、25℃以上、90℃以上、又は100℃以上であってもよく、230℃以下、180℃以下、170℃以下、又は160℃以下であってもよい。(d)成分の融点が230℃以下の場合は、熱硬化性樹脂と硬化剤との硬化反応が生じる前にフラックス活性が充分に発現しやすい。そのため、このような(d)成分を含有する半導体用接着剤によれば、チップ搭載時に(d)成分が溶融し、はんだ表面の酸化膜が除去されることで、接続信頼性に一層優れる半導体装置を実現できる。また、(d)成分の融点が25℃以上の場合は、室温下での反応が開始しにくくなり、一層保存安定性に優れる。これらの観点から、(d)成分の融点は、25~230℃、90~180℃以下、100~170℃、又は100~160℃であってもよい。
【0094】
(d)成分の融点は、一般的な融点測定装置を用いて測定できる。融点を測定する試料は、微粉末に粉砕され且つ微量を用いることで試料内の温度の偏差を少なくすることが求められる。試料の容器としては一方の端を閉じた毛細管が用いられることが多いが、測定装置によっては2枚の顕微鏡用カバーグラスに挟み込んで容器とするものもある。急激に温度を上昇させると試料と温度計との間に温度勾配が発生して測定誤差を生じるため、融点を計測する時点での加温は毎分1℃以下の上昇率で測定することが望ましい。
【0095】
前述のように微粉末として調製されるので、表面での乱反射により融解前の試料は不透明である。試料の外見が透明化し始めた温度を融点の下限点とし、融解しきった温度を上限点とすることが通常である。測定装置は種々の形態のものが存在するが、最も古典的な装置は二重管式温度計に試料を詰めた毛細管を取り付けて温浴で加温する装置が使用される。二重管式温度計に毛細管を貼り付ける目的で温浴の液体として粘性の高い液体が用いられ、濃硫酸ないしはシリコンオイルが用いられることが多く、温度計先端の溜めの近傍に試料が来るように取り付ける。融点測定装置としては金属のヒートブロックを使って加温し、光の透過率を測定しながら加温を調整しつつ自動的に融点を決定するものを使用することもできる。
【0096】
本明細書中、融点が230℃以下とは、融点の上限点が230℃以下であることを意味し、融点が25℃以上とは、融点の下限点が25℃以上であることを意味する。
【0097】
具体的な(d)成分としては、例えば、マロン酸、メチルマロン酸、ジメチルマロン酸、エチルマロン酸、アリルマロン酸、2,2’-チオジ酢酸、3,3’-チオジプロピオン酸、2,2’-(エチレンジチオ)ジ酢酸、3,3’-ジチオジプロピオン酸、2-エチル-2-ヒドロキシ酪酸、ジチオジグリコール酸、ジグリコール酸、アセチレンジカルボン酸、マレイン酸、リンゴ酸、2-イソプロピルリンゴ酸、酒石酸、イタコン酸、1,3-アセトンジカルボン酸、トリカルバリン酸、ムコン酸、β-ヒドロムコン酸、コハク酸、メチルコハク酸、ジメチルコハク酸、グルタル酸、α-ケトグルタル酸、2-メチルグルタル酸、3-メチルグルタル酸、2,2-ジメチルグルタル酸、3,3-ジメチルグルタル酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、クエン酸、アジピン酸、3-tert-ブチルアジピン酸、ピメリン酸、フェニルシュウ酸、フェニル酢酸、ニトロフェニル酢酸、フェノキシ酢酸、ニトロフェノキシ酢酸、フェニルチオ酢酸、ヒドロキシフェニル酢酸、ジヒドロキシフェニル酢酸、マンデル酸、ヒドロキシマンデル酸、ジヒドロキシマンデル酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、スベリン酸、4,4’-ジチオジ酪酸、けい皮酸、ニトロけい皮酸、ヒドロキシけい皮酸、ジヒドロキシけい皮酸、クマリン酸、フェニルピルビン酸、ヒドロキシフェニルピルビン酸、カフェ酸、ホモフタル酸、トリル酢酸、フェノキシプロピオン酸、ヒドロキシフェニルプロピオン酸、ベンジルオキシ酢酸、フェニル乳酸、トロパ酸、3-(フェニルスルホニル)プロピオン酸、3,3-テトラメチレングルタル酸、5-オキソアゼライン酸、アゼライン酸、フェニルコハク酸、1,2-フェニレンジ酢酸、1,3-フェニレンジ酢酸、1,4-フェニレンジ酢酸、ベンジルマロン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ウンデカン二酸、ジフェニル酢酸、ベンジル酸、ジシクロヘキシル酢酸、テトラデカン二酸、2,2-ジフェニルプロピオン酸、3,3-ジフェニルプロピオン酸、4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)吉草酸(ジフェノール酸)、ピマール酸、パラストリン酸、イソピマル酸、アビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、ネオアビエチン酸、アガト酸、安息香酸、2-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、2,3-ジヒドロキシ安息香酸、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、2,5-ジヒドロキシ安息香酸、2,6-ジヒドロキシ安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、2,3,4-トリヒドロキシ安息香酸、2,4,6-トリヒドロキシ安息香酸、3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸、1,2,3-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸、2-[ビス(4-ヒドロキシフェニル)メチル]安息香酸、1-ナフトエ酸、2-ナフトエ酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、2-ヒドロキシ-1-ナフトエ酸、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、1,4-ジヒドロキシ-2-ナフトエ酸、3,5-ジヒドロキシ-2-ナフトエ酸、3,7-ジヒドロキシ-2-ナフトエ酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2-フェノキシ安息香酸、ビフェニル-4-カルボン酸、ビフェニル-2-カルボン酸、2-ベンゾイル安息香酸などが挙げられる。優れたフラックス活性が得られやすい観点及び本発明の効果が得られやすい観点から、(d)成分がベンジル酸、ジフェニル酢酸又はこれらの組み合わせを含んでいてもよい。
【0098】
(d)成分の含有量は、半導体用接着剤の固形分全量を基準として、0.1質量%以上、10質量%以下、5質量%以下、又は2質量%以下であってもよい。(d)成分の含有量は、半導体装置作製時の接続信頼性と耐リフロー性の観点から、半導体用接着剤の固形分全量を基準として、0.1~10質量%、0.1~5質量%、又は0.1~2質量%であってもよい。フラックス活性を有する化合物が(a)~(c)成分に該当する場合、当該化合物は(d)成分にも該当するものとして(d)成分の含有量を算出する。後述の酸基のモル数等についても同様である。
【0099】
本実施形態では、(c)成分全量中の反応基のモル数に対する、(d)成分全量中の酸基のモル数の比が、0.01以上、又は4.8以下であってもよい。上記モル比は、0.1以上、0.5以上、4.0以下、又は3.0以下であってもよい。(c)成分中の反応基及び(d)成分の酸基のうち一部が塩を形成していてもよく、その場合、塩を形成している反応基及び酸基の数を含むモル数の比が上記範囲内であってもよい。
【0100】
(d)成分がモノカルボン酸、ジカルボン酸及びトリカルボン酸からなる群より選択される少なくとも一種を含む場合、(c)成分全量中の反応基のモル数に対する、(d)成分全量中の酸基のモル数の比が、0.01~4.8であり、且つ、(c)成分全量中の反応基のモル数に対する、モノカルボン酸のモル数の比が0.01~4.8であり、(c)成分全量中の反応基のモル数に対する、ジカルボン酸のモル数の比が0.01~2.4であり、(c)成分全量中の反応基のモル数に対する、トリカルボン酸のモル数の比が0.01~1.6であってもよい。(c)成分全量中の反応基のモル数に対する、モノカルボン酸のモル数の比が0.5~3.0であり、(c)成分全量中の反応基のモル数に対する、ジカルボン酸のモル数の比が0.25~1.5であり、(c)成分全量中の反応基のモル数に対する、トリカルボン酸のモル数の比が0.5/3~1.0であってもよい。
【0101】
(e)フィラー
本実施形態の半導体用接着剤は、必要に応じて、フィラー((e)成分)を含有していてもよい。(e)成分によって、半導体用接着剤の粘度、半導体用接着剤の硬化物の物性等を制御することができる。具体的には、(e)成分によれば、例えば、接続時のボイド発生の抑制、半導体用接着剤の硬化物の吸湿率の低減、等を図ることができる。
【0102】
(e)成分としては、絶縁性無機フィラー、ウィスカー、樹脂フィラー等を用いることができる。また、(e)成分としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0103】
絶縁性無機フィラーとしては、例えば、ガラス、シリカ、アルミナ、酸化チタン、カーボンブラック、マイカ及び窒化ホウ素が挙げられる。絶縁性無機フィラーは、シリカ、アルミナ、酸化チタン及び窒化ホウ素から選ばれてもよく、シリカ、アルミナ及び窒化ホウ素から選ばれててもよい。
【0104】
ウィスカーとしては、例えば、ホウ酸アルミニウム、チタン酸アルミニウム、酸化亜鉛、珪酸カルシウム、硫酸マグネシウム及び窒化ホウ素が挙げられる。
【0105】
樹脂フィラーとしては、例えば、ポリウレタン、ポリイミド等の樹脂からなるフィラーが挙げられる。
【0106】
樹脂フィラーは、有機成分(エポキシ樹脂及び硬化剤等)と比較して熱膨張率が小さいため接続信頼性の向上効果に優れる。樹脂フィラーによれば、半導体用接着剤の粘度調整を容易に行うことができる。樹脂フィラーは、無機フィラーと比較して応力を緩和する機能に優れている。
【0107】
無機フィラーは、樹脂フィラーと比較して熱膨張率が小さいため、無機フィラーによれば、接着剤組成物の低熱膨張率化が実現できる。無機フィラーには汎用品で粒径制御されたものが多いため、粘度調整にも好ましい。
【0108】
樹脂フィラー及び無機フィラーはそれぞれに有利な効果があるため、用途に応じていずれか一方を用いてもよく、双方の機能を発現するため双方を混合して用いてもよい。
【0109】
(e)成分の形状、粒径及び含有量は特に制限されない。(e)成分は、表面処理によって物性を適宜調整されたものであってもよい。
【0110】
(e)成分の含有量は、半導体用接着剤の固形分全量基準で、10質量%以上、又は15質量%以上であってもよく、80質量%以下、又は60質量%以下であってもよい。(e)成分の含有量は、半導体用接着剤の固形分全量基準で、10~80質量%、又は15~60質量%であってもよい。
【0111】
(e)成分は、絶縁物で構成されていることが好ましい。(e)成分が導電性物質(例えば、はんだ、金、銀、銅)で構成されていると、絶縁信頼性(特にHAST耐性)が低下する可能性がある。
【0112】
(その他の成分)
本実施形態の半導体用接着剤は、酸化防止剤、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、レベリング剤、イオントラップ剤等の添加剤を含んでもよい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの配合量については、各添加剤の効果が発現するように適宜調整すればよい。
【0113】
本実施形態の半導体用接着剤は、フィルム状であってよい。この場合、Pre-applied方式で半導体チップと配線基板の空隙又は複数の半導体チップ間の空隙を封止する場合の作業性を向上させることができる。フィルム状に成形された本実施形態の半導体用接着剤(フィルム状接着剤)の作製方法の一例を以下に示す。
【0114】
まず、(a)成分、(b)成分、(c)成分及び(d)成分、並びに必要に応じて添加される(e)成分等を、有機溶媒中に加え、攪拌混合、混錬等により、溶解又は分散させて、樹脂ワニスを調製する。その後、離型処理を施した基材フィルム上に、樹脂ワニスをナイフコーター、ロールコーター、アプリケーター等を用いて塗布し、塗膜を加熱により有機溶媒を除去することにより、基材フィルム上にフィルム状接着剤を形成することができる。
【0115】
フィルム状接着剤の厚みは特に制限されないが、例えば、接続前のバンプの高さの0.5~1.5倍、0.6~1.3倍、又は0.7~1.2倍であってもよい。
【0116】
フィルム状接着剤の厚さがバンプの高さの0.5倍以上であると、接着剤の未充填によるボイドの発生を充分に抑制することができ、接続信頼性を一層向上させることができる。厚さが1.5倍以下であると、接続時にチップ接続領域から押し出される接着剤の量を充分に抑制することができるため、不要な部分への接着剤の付着を充分に防止することができる。フィルム状接着剤の厚さが1.5倍より大きいと、多くの接着剤をバンプが排除しなければならなくなり、導通不良が生じやすくなる。狭ピッチ化・多ピン化によるバンプの弱化(バンプ径の微小化)に対して、多くの樹脂を排除することは、バンプへのダメージを大きくする可能性がある。
【0117】
一般にバンプの高さが5~100μmであることから、フィルム状接着剤の厚さは2.5~150μm、又は3.5~120μmであってもよい。
【0118】
樹脂ワニスの調製に用いる有機溶媒は、各成分を均一に溶解又は分散し得る特性を有するものであってもよい。有機溶媒の例としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トルエン、ベンゼン、キシレン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブ、ジオキサン、シクロヘキサノン、及び酢酸エチルが挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。樹脂ワニス調製の際の攪拌混合及び混錬は、例えば、攪拌機、らいかい機、3本ロール、ボールミル、ビーズミル又はホモディスパーを用いて行うことができる。
【0119】
基材フィルムとしては、有機溶媒を揮発させる際の加熱条件に耐え得る耐熱性を有するものであれば特に制限はなく、その例としては、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム等のポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム及びポリエーテルイミドフィルムが挙げられる。基材フィルムは、これらのフィルムからなる単層のものに限られず、2種以上の材料からなる多層フィルムであってもよい。
【0120】
基材フィルムへ塗布した樹脂ワニスから有機溶媒を揮発させる際の乾燥条件は、有機溶媒が充分に揮発する条件であればよく、具体的には、50~200℃、0.1~90分間の加熱であってもよい。有機溶媒は、フィルム状接着剤全量に対して1.5質量%以下まで除去されてもよい。
【0121】
本実施形態の半導体用接着剤は、ウェハ上で直接形成してもよい。具体的には、例えば、上記樹脂ワニスをウェハ上に直接スピンコートして膜を形成した後、有機溶媒を除去することにより、ウェハ上に直接半導体用接着剤からなる層を形成してもよい。
【0122】
本実施形態の半導体用接着剤の最低溶融粘度は、加圧雰囲気下での硬化時にボイドがより一層除去されやすくなり、より一層優れた耐リフロー性が得られる観点から、400~2500Pa・sであってもよい。最低溶融粘度は、実施例に記載の方法で測定することができる。半導体用接着剤が最低溶融粘度を示す温度(溶融温度)は、100~200℃、又は120~170℃であってもよい。
【0123】
本実施形態の半導体用接着剤は、60~155℃の温度領域での半導体チップの仮固定が容易となる観点から、80℃での溶融粘度が2000~10000Pa・sであってもよく、130℃での溶融粘度が500~5000Pa・sであってもよく、80℃での溶融粘度が2000~10000Pa・sであり、且つ、130℃での溶融粘度が500~5000Pa・sであってもよい。上記溶融粘度は、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0124】
以上説明した本実施形態の半導体用接着剤は、加圧雰囲気下で熱を加えることにより硬化させるプロセスに好適に用いることができ、特に、半導体用接着剤を介して複数の半導体チップを被搭載部材(半導体チップ、半導体ウェハ、配線回路基板等)の上に搭載し仮固定した後、加圧条件下で一括して硬化と封止を行うプロセスに用いることができる。このプロセスに本実施形態の半導体用接着剤を用いる場合、加圧により接着剤内部のボイドが除去されやすく、一層優れた耐リフロー性が得られやすい。
【0125】
<半導体装置>
本実施形態の半導体装置は、半導体チップ及び配線回路基板のそれぞれの接続部が互いに電気的に接続された半導体装置、又は、複数の半導体チップのそれぞれの接続部が互いに電気的に接続された半導体装置である。この半導体装置では、接続部の少なくとも一部が、上記半導体用接着剤の硬化物によって封止されている。以下、
図4、
図5及び
図6を参照して本実施形態の半導体装置について説明する。
図4、
図5及び
図6は、それぞれ、後述する実施形態に係る方法によって製造され得る半導体装置の一実施形態を示す断面図である。
【0126】
図4は、半導体チップ及び基板が接続されたCOB型の接続態様を示す模式断面図である。
図4に示す半導体装置100は、半導体チップ1及び基板2(配線回路基板)と、これらの間に介在する接着剤層40とを備える。半導体装置100の場合、半導体チップ1は、半導体チップ本体10と、半導体チップ本体10の基板2側の面上に配置された配線又はバンプ15と、配線又はバンプ15上に配置された接続部としてのはんだ30とを有する。基板2は、基板本体20と、基板本体20の半導体チップ1側の面上に配置された接続部としての配線又はバンプ16とを有する。半導体チップ1のはんだ30と、基板2の配線又はバンプ16とは、金属接合によって電気的に接続されている。半導体チップ1及び基板2は、配線又はバンプ16及びはんだ30によりフリップチップ接続されている。配線又はバンプ15,16及びばんだ30は、接着剤層40によって封止されることで、外部環境から遮断されている。接着剤層40は、上述の半導体用接着剤の硬化物であることができる。
【0127】
図5は、半導体チップ同士が接続されたCOC型の接続態様を示す。
図5に示す半導体装置300の構成は、2つの半導体チップ1が配線又はバンプ15及びはんだ30を介してフリップチップ接続されている点を除き、半導体装置100と同様である。
【0128】
図5及び
図6において、配線又はバンプ15等の接続部は、パッドと呼ばれる金属膜(例えば、金めっき)であってもよく、ポスト電極(例えば、銅ピラー)であってもよい。
【0129】
半導体チップ本体10は、特に制限はなく、シリコン、ゲルマニウム等の同一種類の元素から構成される元素半導体、ガリウムヒ素、インジウムリン等の化合物半導体などの各種半導体によって形成されたチップであることができる。
【0130】
基板2としては、配線回路基板であれば特に制限はなく、ガラスエポキシ、ポリイミド、ポリエステル、セラミック、エポキシ、ビスマレイミドトリアジン等を主な成分とする絶縁基板の表面に形成された金属層の不要な箇所をエッチング除去して配線(配線パターン)が形成された回路基板、上記絶縁基板の表面に金属めっき等によって配線(配線パターン)が形成された回路基板、上記絶縁基板の表面に導電性物質を印刷して配線(配線パターン)が形成された回路基板などを用いることができる。
【0131】
配線又はバンプ15及び16、はんだ30等の接続部の主成分として、金、銀、銅、はんだ、スズ、ニッケル等が用いられる。はんだ30の主成分は、例えば、スズ-銀、スズ-鉛、スズ-ビスマス、スズ-銅、スズ-銀-銅であってもよい。接続部が単一の成分のみで構成されていてもよく、複数の成分から構成されていてもよい。接続部は、これらの金属が積層された構造を有していてもよい。金属材料のうち、銅、はんだが、比較的安価である。接続信頼性の向上及び反り抑制の観点から、接続部がはんだを含んでいてもよい。
【0132】
パッドの主成分として、金、銀、銅、はんだ、スズ、ニッケル等が用いられる。はんだの主成分は、例えば、スズ-銀、スズ-鉛、スズ-ビスマス、スズ-銅、又はスズ-銀-銅であってもよい。パッドが単一の成分のみで構成されていてもよく、複数の成分から構成されていてもよい。パッドは、これらの金属が積層された構造を有していてもよい。接続信頼性の観点から、パッドが金又ははんだを含んでいてもよい。
【0133】
配線又はバンプ15,16(配線パターン)の表面には、金、銀、銅、はんだ、スズ、ニッケル等を主成分とする金属層が形成されていてもよい。はんだの主成分は、例えば、スズ-銀、スズ-鉛、スズ-ビスマス、又はスズ-銅であってもよい。この金属層は単一の成分のみで構成されていてもよく、複数の成分から構成されていてもよい。金属層が複数の金属層が積層された構造を有していてもよい。金属層が、比較的安価な銅又ははんだを含んでいてもよい。接続信頼性の向上及び反り抑制の観点から、金属層が、はんだを含んでいてもよい。
【0134】
図4又は
図5に示すような半導体装置(又は半導体パッケージ)を積層して、金、銀、銅、はんだ、スズ、ニッケル等で電気的に接続してもよい。はんだの主成分は、例えば、スズ-銀、スズ-鉛、スズ-ビスマス、スズ-銅、又はスズ-銀-銅であってもよい。接続するための金属は、比較的安価な銅又ははんだであってもよい。例えば、TSV技術で見られるような、接着剤層を半導体チップ間に介して、フリップチップ接続又は積層し、半導体チップを貫通する孔を形成し、パターン面の電極とつなげてもよい。
【0135】
図6は、半導体装置の他の実施形態を示す断面図である。
図6に示す半導体装置500は、半導体チップ積層型のTSVの態様である。
図6に示す半導体装置500では、基板としてのインターポーザー本体50上に形成された配線又はバンプ15が半導体チップ1のはんだ30と接続されることにより、半導体チップ1とインターポーザー5とがフリップチップ接続されている。半導体チップ1とインターポーザー5との間には接着剤層40が介在している。上記半導体チップ1におけるインターポーザー5と反対側の表面上に、配線又はバンプ15、はんだ30及び接着剤層40を介して半導体チップ1が繰り返し積層されている。半導体チップ1の表裏におけるパターン面の配線又はバンプ15は、半導体チップ本体10の内部を貫通する孔内に充填された貫通電極34により互いに接続されている。貫通電極34の材質は、銅、アルミニウム等であってもよい。
【0136】
このようなTSV技術により、通常は使用されない半導体チップの裏面からも信号を取得することができる。更には、半導体チップ1内に貫通電極34を垂直に通すため、対向する半導体チップ1間、並びに、半導体チップ1及びインターポーザー5間の距離を短くし、柔軟な接続が可能である。接着剤層は、このようなTSV技術において、対向する半導体チップ1間、並びに、半導体チップ1及びインターポーザー5間の封止材料として適用することができる。
【0137】
<半導体装置の製造方法>
半導体装置の製造方法の一実施形態は、接続部を有する第一の部材と接続部を有する第二の部材とを、第一の部材の接続部と第二の部材の接続部とが対向配置されるように、半導体用接着剤を介して積層する積層工程と、当該半導体用接着剤を熱を加えることにより硬化させ、硬化した半導体用接着剤により接続部の少なくとも一部を封止する封止工程と、を備える。ここで、第一の部材は、例えば、配線回路基板、半導体チップ又は半導体ウェハであり、第二の部材は半導体チップである。封止工程は、積層工程において得られた積層体(以下「仮固定体」ということがある。)を対向配置された接続部の融点以上の温度に加熱することにより、対向配置された接続部同士を電気的に接続されるように接合することと、半導体用接着剤を、熱を加えることとにより硬化させることとを含む。
【0138】
第一の部材が半導体チップである場合、積層工程は、例えば、ステージ上に複数の半導体チップを配置する工程と、ステージを加熱しながら、ステージ上に配置された複数の半導体チップのそれぞれの上に、半導体用接着剤を介して他の半導体チップを順次配置し、半導体チップ、半導体用接着剤及び他の半導体チップを有しこれらがこの順に積層されてなる積層体である仮固定体を複数得る仮固定工程と、を含む。
【0139】
第一の部材が複数の半導体チップが搭載される配線回路基板又は半導体ウェハである場合、積層工程は、例えば、ステージ上に配線回路基板又は半導体ウェハを配置する工程と、ステージを加熱しながら、ステージ上に配置された配線回路基板又は半導体ウェハの上に、半導体用接着剤を介して複数の半導体チップを順次配置し、配線回路基板、半導体用接着剤及び複数の前記半導体チップを有する仮固定体、又は、半導体ウェハ、半導体用接着剤及び複数の前記半導体チップを有する仮固定体を得る仮固定工程と、を含む。
【0140】
仮固定工程では、例えば、まず、第一の部材上又は第二の部材上に半導体用接着剤を配置する。フィルム状の半導体用接着剤を第一の部材又は第二の部材に貼付してもよい。次いで、ダイシングテープ上で個片化された半導体チップをピックアップして、圧着機の圧着ツール(圧着ヘッド)に吸着させ、配線回路基板、他の半導体チップ又は半導体ウェハに仮固定する。
【0141】
半導体用接着剤を配置する方法は特に限定されず、例えば、半導体用接着剤がフィルム状である場合には、加熱プレス、ロールラミネート、真空ラミネート等の方法であってよい。配置される半導体用接着剤の面積及び厚みは、第一の部材及び第二の部材のサイズ、接続部(バンプ)の高さ等によって適宜設定される。半導体用接着剤を半導体チップ上に配置してもよい。半導体用接着剤が配置された半導体ウェハをダイシングすることにより個片化してもよい。
【0142】
仮固定工程では、接続部同士を電気的に接続するために位置あわせが必要である。そのため、一般的にはフリップチップボンダー等の圧着機が使用される。
【0143】
仮固定のために圧着ツールが半導体チップをピックアップする際に、半導体チップ上の半導体接着剤等に熱が転写しないように、圧着ツールが低温であってもよい。圧着(仮圧着)時には、半導体用接着剤の流動性を高めて、巻き込まれたボイドを効率的に排除できるように、半導体チップがある程度高温に加熱されてもよい。半導体用接着剤の硬化反応の開始温度よりも低温で半導体チップが加熱されてもよい。冷却時間を短縮するため、半導体チップをピックアップする際の圧着ツールの温度と、仮固定の際の圧着ツールの温度との差が、小さくてもよい。この温度差は、100℃以下、60℃以下、又は実質的に0℃であってもよい。温度差が100℃以上であると、圧着ツールの冷却に時間がかかるため生産性が低下する傾向がある。半導体用接着剤の硬化反応の開始温度とはDSC(株式会社パーキンエルマー製、DSC-Pyirs1)を用いて、サンプル量10mg、昇温速度10℃/分、空気又は窒素雰囲気の条件で測定したときの、硬化反応の発熱ピークのオンセット温度をいう。
【0144】
仮固定のために加えられる荷重は、接続部(バンプ)の数、接続部(バンプ)の高さばらつきの吸収、接続部(バンプ)の変形量等の制御を考慮して適宜設定される。仮固定工程では、圧着(仮圧着)後に、対向する接続部同士が接触していてもよい。圧着後に接続部同士が接触していると、封止工程における圧着(本圧着)において接続部の金属結合が形成しやすく、また、半導体用接着剤の噛み込みが少ない傾向がある。荷重は、ボイドを排除し、接続部の接触のために、大きくてもよく、例えば、接続部(例えばバンプ)1個当たり、0.009N~0.2Nであってもよい。
【0145】
仮固定工程の圧着時間は、生産性向上の観点から、例えば、5秒以下、3秒以下、又は2秒以下であってもよい。
【0146】
ステージの加熱温度は、第一の部材の接続部の融点及び第二の部材の接続部の融点よりも低い温度であり、通常60~150℃である。このような温度で加熱することで、半導体用接着剤中に巻き込まれたボイドを効率的に排除できる。
【0147】
積層工程が上記仮固定工程を含む場合、仮固定工程に続く封止工程では、複数の積層体又は複数の半導体チップを備える積層体における半導体用接着剤を一括して硬化させ、複数の接続部を一括して封止してよい。封止工程によって、対向する接続部が金属結合によって接合すると共に、通常、半導体用接着剤によって接続部間の空隙が充てんされる。
【0148】
封止工程において、対向する接続部(例えば、バンプ-バンプ、バンプ-パッド、バンプ-配線)のうち、少なくとも一方の金属の融点以上の温度で仮固定体を加熱することにより、接続部同士を接合してもよい。例えば、接続部の金属がはんだである場合、加熱温度が220℃以上、330℃以下であってもよい。加熱温度が低温であると接続部の金属が溶融せず、充分な金属結合が形成されない可能性がある。加熱温度が過度に高温であると、ボイド抑制の効果が相対的に小さくなったり、はんだが飛散し易くなったりする傾向がある。接続部の接合のために、圧着機を用いて、仮固定体を加圧しながら加熱してもよい。接続部の接合のための加熱によって、半導体用接着剤を硬化させてもよい。接続部の接合のための加熱の間に半導体用接着剤の硬化反応を部分的に進行させ、その後、加圧雰囲気下で熱を加えることによって半導体用接着剤を更に硬化してもよい。加圧雰囲気下での加熱のための装置の例としては、加圧リフロ炉、及び加圧オーブンが挙げられる。
【0149】
接続部の接合のための加圧を圧着機を用いて行うと、接続部の側面にはみ出た半導体用接着剤(フィレット)には圧着機の熱が伝わり難いため、接続部の接合のための圧着の後、半導体用接着剤の硬化を充分に進行させるための加熱処理が更に必要となることが多い。そのため、封止工程での加圧は、圧着機ではなく、加圧リフロ炉、加圧オーブン等内での気圧により行ってもよい。加圧雰囲気下で熱を加えることにより、接続部を接合するとともに、半導体用接着剤を硬化してもよい。気圧による加圧であれば、全体に熱を加えることができ、圧着後の加熱処理を短縮、又は無くすことができ、生産性が向上する。気圧による加圧であれば、複数の積層体(仮固定体)又は仮固定された複数の半導体チップを備える積層体(仮固定体)の本圧着を、一括して行い易い。圧着機を用いた直接的な加圧よりも、気圧による加圧の方が、フィレット抑制の観点からも有利である。フィレット抑制は、半導体装置の小型化及び高密度化の傾向に対して、重要である。
【0150】
封止工程における圧着が行われる加圧雰囲気は、特に制限はないが、空気、窒素、蟻酸等を含む雰囲気であってもよい。
【0151】
封止工程における圧着の圧力は、接続される部材のサイズ及び数等に応じて適宜設定される。圧力は、例えば、大気圧を超えて1MPa以下であってもよい。ボイド抑制、接続性向上の観点から圧力が大きくてもよい。フィレット抑制の観点からは圧力は小さくてもよい。そのため、圧力は0.05~0.5MPaであってもよい。
【0152】
本圧着のための圧着時間は、接続部の構成金属により異なるが、生産性が向上する観点から短時間であるほど好ましい。接続部がはんだバンプである場合、接続時間は20秒以下、10秒以下、又は5秒以下であってもよい。銅-銅又は銅-金の金属接続の場合は、接続時間は60秒以下であってもよい。
【0153】
TSV構造の半導体装置のように、立体的に複数の半導体チップが積層される場合、複数の半導体チップを一つずつ積み重ねて仮固定された状態とし、その後、積層された複数の半導体チップを一括して加熱及び加圧することで半導体装置を得てもよい。
【0154】
図7は、半導体装置を製造する方法の一実施形態を示す模式断面図である。
図7に示される方法の場合、接続部としての複数のはんだ30を有する半導体チップ1と接続部としての複数のはんだ32を有する半導体ウエハ3との間に半導体用接着剤からなる接着剤層40Aを介在させながら、半導体チップ1、半導体ウエハ3、及び接着剤層40Aを加熱することにより、半導体チップ1の接続部(はんだ30)及び半導体ウエハ3の接続部(はんだ32)が互いに電気的に接続され、互いに電気的に接続された接続部(はんだ30,32)が、硬化した半導体用接着剤からなる接着剤層40によって封止された接合体95が形成される。より詳細には、接合体95を形成する工程は、
図7の(a)に示されるようにステージ60上に半導体ウエハ3を配置することと、
図7の(b)に示されるように半導体ウエハ3、接着剤層40A及び半導体チップ1から構成される積層体である仮固定体90を形成することと、
図7の(c)に示されるように仮固定体90を接続部であるはんだ30,32のうち少なくとも一方が溶融する温度に加熱しながら加圧することによって、
図7の(d)に示される、接続部であるはんだ30,32が電気的に接続された接合体95を形成することと、
図7の(e)に示されるように接合体95を加圧オーブン85内の加圧雰囲気下で加熱することにより、接続部(はんだ30,32)を封止する硬化した接着剤層40を形成することとを含む。
【0155】
半導体チップ1は、半導体チップ本体10と、半導体チップ本体10上に設けられた配線又はバンプ15と、配線又はバンプ15上に設けられた接続部としてのはんだ30とを有する。半導体ウエハ3は、ウエハ本体11と、ウエハ本体11上に設けられた配線又はバンプ15と、配線又はバンプ15上に設けられた接続部としてのはんだ32と、ウエハ本体11上に設けられ、配線又はバンプ15を覆うパッシベーション膜17とを有する。
【0156】
仮固定体90は、加熱されたステージ60上で、接着剤付き半導体チップ1’を、半導体ウエハ3に対して圧着ツール70によって熱圧着することによって形成される。ステージ60の加熱温度は、はんだ30の融点及びはんだ32の融点よりも低い温度であり、例えば60~150℃、又は70~100℃であってもよい。圧着ツール70の温度は、例えば、80~350℃、又は、100~170℃であってもよい。仮固定体90を形成するための熱圧着の時間は、例えば、5秒以下、3秒以下、又は2秒以下であってもよい。
【0157】
接合体95は、加熱されたステージ60上の仮固定体90を、圧着ツール80を用いて、はんだ30の融点又ははんだ32の融点のうち少なくとも一方の温度以上に加熱しながら加圧することによって形成される。圧着ツール80の温度は、例えば180℃以上、220℃以上、又は250℃以上であってもよく、350℃以下、320℃以下、又は300℃以下であってもよい。接合体95を形成するための熱圧着の間のステージ60の加熱温度は、60~150℃、又は70~100℃であってもよい。接合体95を形成するための圧着ツール80による熱圧着の時間は、例えば、5秒以下、3秒以下、又は2秒以下であってもよい。
【0158】
加圧オーブン85内での加熱及び加圧により、接着剤層40Aの硬化を十分に進行させる。ただし、接合体95を形成するための加熱及び加圧の過程で接着剤層40Aの硬化が部分的に進行していてもよい。加圧オーブン85による加熱温度は、はんだ30,32の融点未満であって、接着剤層40Aの硬化が進行する温度であってもよく、例えば170~200℃であってもよい。
【0159】
1枚の半導体ウエハ3上に複数の半導体チップ1を接着剤層40を介して順次搭載することによって、複数の半導体チップ1を有する接合体95を形成し、その後、接合体95を加圧オーブン85内で加熱及び加圧してもよい。その場合、初期に半導体ウエハ3上に配置された半導体チップ1と半導体ウエハ3との間の接着剤層40Aは、全ての半導体チップ1の搭載が完了するまでステージ60による熱履歴が与えられ続ける。長時間の熱履歴を受けた後でも、上述の実施形態に係る半導体用接着剤を含む接着剤層40Aは高い信頼性で接合体95を与えることができる。
【実施例】
【0160】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0161】
各実施例及び比較例で使用した化合物は以下の通りである。
(a)成分:熱可塑性樹脂
・ポリウレタン(ディーアイシーコベストロポリマー株式会社製、商品名「T―8175N」、Tg:-23℃、Mw:120000)
・フェノキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、商品名「ZX1356-2」、Tg:約71℃、Mw:約63000)
・フェノキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、商品名「FX293」、Tg:約160℃、Mw:約40000)
【0162】
(b)成分:熱硬化性樹脂
・トリフェノールメタン骨格を含有する多官能固形エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製、商品名「EP1032H60」)
・ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製、商品名「YL983U」)
【0163】
(c)成分:硬化剤
・2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物(四国化成工業株式会社製、商品名「2MAOK-PW」、Mw:384)
・2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール((四国化成工業株式会社製、商品名「2PHZ-PW」、Mw:204)
【0164】
(d)成分:フラックス化合物
・ジフェノール酸(東京化成工業株式会社製、融点:177℃、分子量:286)
・ベンジル酸(富士フイルム和光純薬工業株式会社製、融点:152℃、分子量:228)
・ジフェニル酢酸(富士フイルム和光純薬工業株式会社製、融点:149℃、分子量:212)
・グルタル酸(富士フイルム和光純薬工業株式会社製、融点:98℃、分子量:132)
【0165】
(e)フィラー
・シリカフィラー(株式会社アドマテックス製、商品名「SE2030」、平均粒径0.5μm)
・エポキシシラン表面処理シリカフィラー(株式会社アドマテックス製、商品名「SE2030-SEJ」、平均粒径0.5μm)
・メタクリル表面処理シリカフィラー(株式会社アドマテックス製、商品名「YA050C-SM1」、平均粒径約0.05μm)
・メタクリル表面処理シリカフィラー(株式会社アドマテックス製、商品名「180nm SM-EH1」、平均粒径約0.18μm)
【0166】
(a)成分の重量平均分子量(Mw)は、GPC法によって求めたものである。GPC法の詳細は以下のとおりである。
装置名:HPLC-8020(製品名、東ソー株式会社製)
カラム:2pieces of GMHXL + 1piece of G-2000XL
検出器:RI検出器
カラム温度:35℃
流速:1mL/分
標準物質:ポリスチレン
【0167】
<フィルム状半導体用接着剤の作製>
表1に示す配合量(単位:質量部)の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、硬化剤、フラックス化合物及びフィラーを、NV値([乾燥後の接着剤質量]/[乾燥前の塗工ワニス質量]×100)が50%になるように有機溶媒(シクロヘキサノン)に添加した。これらの混合物と同じ容器内に、固形分(熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、硬化剤、フラックス化合物及びフィラー)の配合量と同質量のΦ1.0mmのビーズ及びΦ2.0mmのジルコニアビーズを加え、混合物をボールミル(フリッチュ・ジャパン株式会社、遊星型微粉砕機P-7)で30分撹拌した。撹拌後、ジルコニアビーズをろ過によって除去し、塗工ワニスを作製した。
【0168】
得られた塗工ワニスを、基材フィルム(東洋紡フイルムソリューション株式会社製、商品名「ピューレックスA55」)上に、小型精密塗工装置(廉井精機)で塗工した。塗膜をクリーンオーブン(ESPEC製)により100℃で10分乾燥することで、膜厚20μmのフィルム状接着剤を得た。
【0169】
<DSC測定>
得られたフィルム状接着剤を、アルミパン(株式会社エポリードサービス製)に10mg秤量し、アルミ蓋を被せ、クリンパを用いて評価サンプルをサンプルパン内に密閉した。示差走査熱量計(Thermo plus DSC8235E、株式会社リガク製)を使用し、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/min、測定温度範囲30~300℃でDSCを測定した。発熱量の解析手段としては、部分面積の解析方法を用いた。各DSC曲線の60℃~280℃の温度範囲で解析指示することにより、解析温度範囲のベースライン指定、及び、ピーク面積の積分を行うことで総発熱量(単位:J/g)を算出した。続いて、155℃を分割温度として指示することにより、60~155℃、及び、155~280℃のそれぞれの部分面積を積分し、各発熱量(単位:J/g)を算出した。一方、オンセット温度の解析手段としては、全面積(JIS法)の解析手法を用い、60℃~280℃の温度範囲で解析指示することにより、各DSC曲線におけるピークのベースラインと最大傾斜点の交点を算出し、オンセット温度(単位:℃)を求めた。
【0170】
【表1】
*表中、モル比rは、硬化剤全量中の反応基のモル数に対する、フラックス化合物全量中の酸基のモル数の比を示す
【0171】
以下に、実施例及び比較例で得られたフィルム状接着剤の評価方法を示す。評価結果は表2に示す。
【0172】
<フィルム形成性評価>
実施例及び比較例で得られた20μmのフィルム状接着剤を、打ち抜きポンチ(φ20mm)を用いて上からハンマーで叩いて打ち抜き、打ち抜かれたサンプルが割れていない場合を「A」、割れ及び/又は欠けが生じた場合を「B」と判定した。
【0173】
<高温放置安定性評価>
上記で得られたDSC曲線の解析を行い、60~280℃の発熱量(単位:J/g)を算出した。これを初期発熱量とした。
【0174】
実施例及び比較例で得られたフィルム状接着剤(初期サンプル)を100℃に設定したオーブンに入れ、1時間加熱処理した。加熱処理後のサンプルを取り出し、100℃熱処理後の評価サンプルAを得た。
【0175】
実施例及び比較例で得られたフィルム状接着剤(初期サンプル)を80℃に設定したオーブンに入れ、12時間加熱処理した。加熱処理後のサンプルを取り出し、80℃熱処理後の評価サンプルBを得た。
【0176】
評価サンプルAと評価サンプルBを用い、加熱前と同じ手順で60~280℃の発熱量(単位:J/g)を算出した。これを処理後発熱量とした。
【0177】
得られた2つの発熱量(初期サンプルの発熱量と評価サンプルAの発熱量、又は、初期サンプルの発熱量と評価サンプルBの発熱量)を用いて反応率を下記の式で算出した。
反応率(%)=(初期発熱量-熱処理後発熱量)/初期発熱量×100
反応率が10%未満の場合を「A」、10%以上で20%未満の場合を「B」、20%以上の場合を「C」と判定した。
【0178】
<粘度測定>
実施例及び比較例の初期サンプル及び評価サンプルAを用いて、80℃での溶融粘度(80℃粘度)、130℃での溶融粘度(130℃粘度)、最低溶融粘度及び最低溶融粘度を示す温度(溶融温度)を回転式レオメーター(TAInstruments社製、商品名:ARES-G2)を用いて測定した。
[測定条件]
昇温速度:10℃/分
周波数:10Hz
温度範囲:30~170℃
【0179】
<ボイド評価>
(半導体装置の作製)
上記で作製した評価サンプルAを7.5mm四方サイズに切り抜き、これを複数のはんだバンプ付き半導体チップ(チップサイズ:7.3mm×7.3mm、厚さ0.1mm、バンプ(接続部)高さ:約45μm(銅ピラーとはんだの合計)、バンプ数:1048ピン、ピッチ80μm、製品名:WALTS-TEG CC80、株式会社ウォルツ製)上に80℃で貼付した。フィルム状接着剤が貼付された半導体チップを、別の半導体チップ(チップサイズ:10mm×10mm、厚さ0.1mm、バンプ数:1048ピン、ピッチ80μm、製品名:WALTS-TEG IP80、株式会社ウォルツ製)に、フリップチップボンダー(FCB3、パナソニック株式会社製)で加熱及び加圧することにより順次圧着し、半導体チップ同士を仮固定した。圧着の条件は、130℃、75N、2秒とした。
【0180】
仮固定後の積層体(仮固定体)を100℃のオーブン内で3時間熱処理した後、一度取出し、加圧オーブン内で200℃、1時間、0.6MPaで加熱及び加圧することによりボイド評価用サンプルを得た。
【0181】
(解析・評価)
上記サンプルの外観画像を、超音波映像診断装置(Insight-300、インサイト株式会社製)によって撮影した。得られた画像から、スキャナ(GT-9300UF、セイコーエプソン株式会社製)でチップ間の接着剤層の画像を取り込んだ。取り込んだ画像において、画像処理ソフト(Adobe Photoshop(商品名))を用いて、色調補正、二階調化によりボイド部分を識別し、ヒストグラムによりボイド部分の占める割合を算出した。ボイド部分を含む接着層全体の面積を100面積%とした。ボイドの面積割合が10%未満の場合を「A」とし、ボイドの面積割合が10%以上で30%未満の場合を「B」、30%以上の場合を「C」とした。表2に評価結果を示す。
【0182】
【符号の説明】
【0183】
1…半導体チップ、2…基板、3…半導体ウエハ、10…半導体チップ本体、11…ウエハ本体、15,16…配線又はバンプ、20…基板本体、30,32…はんだ、34…貫通電極、40…接着剤層、50…インターポーザー本体、90…積層体(仮固定体)、95…接合体、100,300,500…半導体装置。