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特許7567900表示媒体及びその製造方法、並びに、表示物品
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】表示媒体及びその製造方法、並びに、表示物品
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20241008BHJP
   B42D 25/364 20140101ALI20241008BHJP
   B42D 25/391 20140101ALI20241008BHJP
   B32B 3/14 20060101ALI20241008BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
G02B5/30
B42D25/364
B42D25/391
B32B3/14
B32B9/00 Z
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022503372
(86)(22)【出願日】2021-02-26
(86)【国際出願番号】 JP2021007544
(87)【国際公開番号】W WO2021172567
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-10-13
(31)【優先権主張番号】P 2020033926
(32)【優先日】2020-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 顕
【審査官】酒井 康博
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-128270(JP,A)
【文献】特開2012-083655(JP,A)
【文献】特開2016-210005(JP,A)
【文献】国際公開第2019/189246(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/057322(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
B42D 25/364
B42D 25/391
B32B 3/14
B32B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材上に設けられた表示層と、を備え、
前記表示層が、亀裂によって区分された複数の小片層を含み、
前記複数の小片層が、厚み方向から見て、2以上の方向に並んで設けられており、
前記表示層に含まれる各小片層が、厚み方向から見て、同一の形状を有する、表示媒体。
【請求項2】
前記小片層の厚みが、10μm以下である、請求項1に記載の表示媒体。
【請求項3】
前記小片層が、液晶組成物の硬化物で形成されている、請求項1又は2に記載の表示媒体。
【請求項4】
前記小片層の測定波長550nmにおける面内レターデーションが、「{(2n+1)/4}×550nm-30nm」以上、「{(2n+1)/4}×550nm+30nm」以下である(ただし、nは、0以上の整数を表す。)、請求項1~3のいずれか一項に記載の表示媒体。
【請求項5】
前記小片層の測定波長550nmにおける面内レターデーションが、「{(2n+1)/2}×550nm-30nm」以上、「{(2n+1)/2}×550nm+30nm」以下である(ただし、nは、0以上の整数を表す。)、請求項1~3のいずれか一項に記載の表示媒体。
【請求項6】
前記小片層が、ポジティブAプレート、ポジティブCプレート、傾斜Oプレート、及び、傾斜ハイブリッド配向プレートからなる群より選ばれる1種類以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載の表示媒体。
【請求項7】
前記小片層が、一方の回転方向Dの円偏光を反射し、その逆の回転方向の円偏光を透過させることができる表示波長範囲を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の表示媒体。
【請求項8】
前記基材が、一方の回転方向Dの円偏光を反射し、その逆の回転方向の円偏光を透過させることができる基材反射範囲を有する選択反射層を備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の表示媒体。
【請求項9】
前記基材が、一方の回転方向Dの円偏光を反射し、その逆の回転方向の円偏光を透過させることができる基材反射範囲を有する選択反射層を備え、
前記表示波長範囲の波長幅よりも、前記基材反射範囲の波長幅の方が、広い、請求項7に記載の表示媒体。
【請求項10】
前記基材反射範囲の波長幅が、70nm以上である、請求項8又は9に記載の表示媒体。
【請求項11】
前記表示層を複数備える、請求項1~10のいずれか一項に記載の表示媒体。
【請求項12】
厚み方向から見た前記小片層の形状が、矩形である、請求項1~11のいずれか一項に記載の表示媒体。
【請求項13】
厚み方向から見た前記小片層の幅が、100μm以下である、請求項1~12のいずれか一項に記載の表示媒体。
【請求項14】
前記基材が、有色層を備える、請求項1~13のいずれか一項に記載の表示媒体。
【請求項15】
前記基材と前記表示層との間に、接着剤層を備える、請求項1~14のいずれか一項に記載の表示媒体。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の表示媒体の製造方法であって、
仮支持体、及び、前記仮支持体上に形成され前記小片層を含む転写材層、を備える原反部材を用意する工程と、
前記基材上に、厚み方向から見て前記表示層と同じ形状を有する接着剤層を形成する工程と、
前記転写材層及び前記接着剤層を貼り合わせる工程と、
前記仮支持体を剥離する工程と、
を含む、表示媒体の製造方法。
【請求項17】
下地物品と、前記下地物品に設けられた請求項1~15のいずれか一項に記載の表示媒体と、を備える、表示物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示媒体及びその製造方法、並びに、その表示媒体を備える表示物品に関する。
【背景技術】
【0002】
物品の表示態様の多様化の観点から、偏光を利用した表示態様が採用されることがある。このような偏光を利用した表示態様を実現するために、従来、液晶材料を用いることがあった。また、液晶材料は、真正性の識別用途に用いられることがあった。それらの技術の例としては、特許文献1~3に記載の技術が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-105327号公報
【文献】特開2014-174471号公報
【文献】特許第4630465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
偏光を利用した表示媒体は、一般に、偽造が困難であるが、更なる偽造の困難化が求められている。
本発明は、前記の課題に鑑みて創案されたもので、偽造の困難性を高めた表示媒体及びその製造方法;並びに、その表示媒体を備えた表示物品;を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、前記の課題を解決するべく鋭意検討した。その結果、本発明者は、表示層に高い規則性で配列した小片層を設けることにより、前記の課題を解決できることを見い出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下のものを含む。
【0006】
〔1〕 基材と、前記基材上に設けられた表示層と、を備え、
前記表示層が、亀裂によって区分された複数の小片層を含み、
前記複数の小片層が、厚み方向から見て、2以上の方向に並んで設けられている、表示媒体。
〔2〕 前記小片層の厚みが、10μm以下である、〔1〕に記載の表示媒体。
〔3〕 前記小片層が、液晶組成物の硬化物で形成されている、〔1〕又は〔2〕に記載の表示媒体。
〔4〕 前記小片層の測定波長550nmにおける面内レターデーションが、「{(2n+1)/4}×550nm-30nm」以上、「{(2n+1)/4}×550nm+30nm」以下である(ただし、nは、0以上の整数を表す。)、〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の表示媒体。
〔5〕 前記小片層の測定波長550nmにおける面内レターデーションが、「{(2n+1)/2}×550nm-30nm」以上、「{(2n+1)/2}×550nm+30nm」以下である(ただし、nは、0以上の整数を表す。)、〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の表示媒体。
〔6〕 前記小片層が、ポジティブAプレート、ポジティブCプレート、傾斜Oプレート、及び、傾斜ハイブリッド配向プレートからなる群より選ばれる1種類以上である、〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の表示媒体。
〔7〕 前記小片層が、一方の回転方向Dの円偏光を反射し、その逆の回転方向の円偏光を透過させることができる表示波長範囲を有する、〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の表示媒体。
〔8〕 前記基材が、一方の回転方向Dの円偏光を反射し、その逆の回転方向の円偏光を透過させることができる基材反射範囲を有する選択反射層を備える、〔1〕~〔7〕のいずれか一項に記載の表示媒体。
〔9〕 前記基材が、一方の回転方向Dの円偏光を反射し、その逆の回転方向の円偏光を透過させることができる基材反射範囲を有する選択反射層を備え、
前記表示波長範囲の波長幅よりも、前記基材反射範囲の波長幅の方が、広い、〔7〕に記載の表示媒体。
〔10〕 前記基材反射範囲の波長幅が、70nm以上である、〔8〕又は〔9〕に記載の表示媒体。
〔11〕 前記表示層を複数備える、〔1〕~〔10〕のいずれか一項に記載の表示媒体。
〔12〕 厚み方向から見た前記小片層の形状が、矩形である、〔1〕~〔11〕のいずれか一項に記載の表示媒体。
〔13〕 厚み方向から見た前記小片層の幅が、100μm以下である、〔1〕~〔12〕のいずれか一項に記載の表示媒体。
〔14〕 前記基材が、有色層を備える、〔1〕~〔13〕のいずれか一項に記載の表示媒体。
〔15〕 前記基材と前記表示層との間に、接着剤層を備える、〔1〕~〔14〕のいずれか一項に記載の表示媒体。
〔16〕 〔1〕~〔15〕のいずれか一項に記載の表示媒体の製造方法であって、
仮支持体、及び、前記仮支持体上に形成され前記小片層を含む転写材層、を備える原反部材を用意する工程と、
前記基材上に、厚み方向から見て前記表示層と同じ形状を有する接着剤層を形成する工程と、
前記転写材層及び前記接着剤層を貼り合わせる工程と、
前記仮支持体を剥離する工程と、
を含む、表示媒体の製造方法。
〔17〕 下地物品と、前記下地物品に設けられた〔1〕~〔15〕のいずれか一項に記載の表示媒体と、を備える、表示物品。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、偽造の困難性を高めた表示媒体及びその製造方法;並びに、その表示媒体を備えた表示物品;を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の第一実施形態に係る表示媒体を、厚み方向から見た模式的な平面図である。
図2図2は、本発明の第一実施形態に係る表示媒体を、図1に示すII-II平面で切った断面を模式的に示す断面図である。
図3図3は、本発明の第一実施形態に係る表示媒体の、図1に示すIII部分を拡大して模式的に示す拡大平面図である。
図4図4は、本発明の第一実施形態に係る表示媒体を、図3に示すIV-IV平面で切った断面を模式的に示す断面図である。
図5図5は、本発明の第一実施形態に係る表示媒体の製造方法において用意される原反部材を、厚み方向から見た模式的な平面図である。
図6図6は、本発明の第一実施形態に係る表示媒体の製造方法において用意される原反部材を、図5に示すVI-VI平面で切った断面を模式的に示す断面図である。
図7図7は、本発明の第一実施形態に係る表示媒体の製造方法において用意される原反部材の、図5に示すVII部分を拡大して模式的に示す拡大平面図である。
図8図8は、本発明の第一実施形態に係る表示媒体の製造方法において用意される原反部材を、図7に示すVIII-VIII平面で切った断面を模式的に示す断面図である。
図9図9は、本発明の第一実施形態に係る表示媒体の製造方法における原反部材の製造方法で用いうる加工具の一例を模式的に示す斜視図である。
図10図10は、図9に示す加工具を模式的に示す斜視図である。
図11図11は、図10の加工具をXI-XI線で切断して展開した状態を模式的に示す平面図である。
図12図12は、加工具の表面近傍の一部を、凸部が延びる方向に垂直な平面で切った断面を模式的に示す一部断面図である。
図13図13は、本発明の第一実施形態に係る表示媒体の製造方法における原反部材の製造方法で用いうる加工具の一例を模式的に示す斜視図である。
図14図14は、図13に示す加工具を模式的に示す斜視図である。
図15図15は、図14の加工具をXV-XV線で切断して展開した状態を模式的に示す平面図である。
図16図16は、本発明の第二実施形態に係る表示媒体を、厚み方向から見た模式的な平面図である。
図17図17は、本発明の第二実施形態に係る表示媒体を、図16に示すXVII-XVII平面で切った断面を模式的に示す断面図である。
図18図18は、本発明の第二実施形態に係る表示媒体の、図16に示すXVIII部分を拡大して模式的に示す拡大平面図である。
図19図19は、本発明の第三実施形態に係る表示媒体を、厚み方向から見た模式的な平面図である。
図20図20は、本発明の第三実施形態に係る表示媒体を、図19に示すXX-XX平面で切った断面を模式的に示す断面図である。
図21図21は、本発明の第三実施形態に係る表示媒体の、図19に示すXXI部分を拡大して模式的に示す拡大平面図である。
図22図22は、実施例101で製造した表示媒体を模式的に示す平面図である。
図23図23は、実施例101で製造した表示媒体を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態及び例示物を示して本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態及び例示物に限定されるものでは無く、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において、任意に変更して実施できる。
【0010】
以下の説明において、面内方向とは、別に断らない限り、厚み方向に垂直な方向を表す。
【0011】
以下の説明において、層の面内レターデーションReは、別に断らない限り、Re=(nx-ny)×dで表される値である。ここで、nxは、層の厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表す。nyは、前記面内方向であってnxの方向に直交する方向の屈折率を表す。nzは厚み方向の屈折率を表す。dは、層の厚みを表す。測定波長は、別に断らない限り、550nmである。
【0012】
以下の説明において、「円偏光」には、本発明の効果を著しく損なわない範囲であれば、楕円偏光も包含される。
【0013】
以下の説明において、要素の方向が「平行」、「垂直」及び「直交」とは、別に断らない限り、本発明の効果を損ねない範囲内、例えば±4°、好ましくは±3°、より好ましくは±1°の範囲内での誤差を含んでいてもよい。
【0014】
以下の説明において、「可視波長範囲」とは、別に断らない限り、400nm以上780nm以下の波長範囲をいう。
【0015】
以下の説明において、「長尺」とは、幅に対して、5倍以上の長さを有する形状をいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムの形状をいう。長さの上限は、特に制限は無く、例えば、幅に対して10万倍以下でありうる。
【0016】
[1.第一実施形態に係る表示媒体]
図1は、本発明の第一実施形態に係る表示媒体10を、厚み方向から見た模式的な平面図である。また、図2は、本発明の第一実施形態に係る表示媒体10を、図1に示すII-II平面で切った断面を模式的に示す断面図である。
図1及び図2に示すように、本発明の第一実施形態に係る表示媒体10は、基材100と、この基材100上に設けられた表示層200とを備える。
【0017】
[1.1.基材100]
基材100は、表示層200を支持しうる部材であり、通常、支持層110を備える。この支持層を形成する材料に特に制限は無く、有機材料、無機材料、及び、それらを組み合わせた複合材料を用いうる。支持層の材料の具体例としては、樹脂、紙、布、皮革、金属、合金、ガラス等が挙げられる。中でも、表示媒体10の製造が容易である点、及び、柔軟性に優れる点から、樹脂が好ましい。
【0018】
樹脂としては、通常、熱可塑性樹脂を用いる。この熱可塑性樹脂は、重合体と、必要に応じて任意の成分を含みうる。重合体としては、例えば、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエチレン、ポリフェニレンエーテル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、及び脂環式構造含有重合体などが挙げられる。また、重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。中でも、透明性、低吸湿性、寸法安定性及び加工性の観点から、脂環式構造含有重合体が好適である。脂環式構造含有重合体は、主鎖及び/又は側鎖に脂環式構造を有する重合体であり、例えば、特開2007-057971号公報に記載のものを用いうる。
【0019】
支持層110の面内レターデーションは、制限は無い。本実施形態では、面内レターデーションの小さい光学等方性の支持層110を用いた例を示して説明する。この光学等方性の支持層110の測定波長550nmにおける面内レターデーションは、好ましくは0~20nm、より好ましくは0~10nm、特に好ましくは0~5nmでありうる。
【0020】
基材100は、光を透過させる透明な部材であってもよく、光を透過させない非透明な部材であってもよい。本実施形態では、光を透過させうる透明な基材100を例に示して説明する。
【0021】
基材100の形状は、制限は無い。基材100の形状は、板状、シート状、フィルム状等でありうる。中でも、表示媒体10を薄くする観点から、フィルム状の基材100が好ましい。特に、長尺のフィルムを基材100として用いた場合、ロールトゥロール法を用いて表示媒体10を効率良く製造することが可能である。
【0022】
基材100の厚みは、特段の制限は無いが、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、特に好ましくは20μm以上であり、好ましくは1mm以下、より好ましくは500μm以下、特に好ましくは200μm以下である。
【0023】
[1.2.表示層200]
表示層200は、基材100上に、直接又は間接的に設けられている。表示層200が基材100上に「直接」設けられる、とは、基材100と表示層200との間に、他の層が無いことを言う。また、表示層200が基材100上に「間接的に」設けられる、とは、基材100と表示層200との間に、他の層があることをいう。
【0024】
表示層200は、基材100の表面100Uの全体に設けられていてもよいが、通常は、基材100の表面100Uの一部に設けられる。
例えば、厚み方向から見て特定の形状を有する表面100Uのエリアに、表示層200が設けられていてもよい。この場合、表示層200が、厚み方向から見て特定の形状を有することができる。よって、表示媒体10を観察した観察者が、当該形状を視認することが可能となる。
また、例えば、厚み方向から見て特定の形状を有する表面100Uのエリア以外のエリアに、表示層200が設けられていてもよい。この場合、表示層200が設けられていないエリアが、厚み方向から見て特定の形状を有することができる。よって、表示媒体10を観察した観察者が、当該形状を視認することが可能となる。
したがって、いずれの場合も、表示媒体10のデザイン性を高めることができる。
【0025】
前記の特定の形状としては、例えば、文字、数字、記号、絵等が挙げられる。ただし、特定の形状は、前記の例に限定されない。本実施形態では、図1に示すように、厚み方向から見て文字「T」の形状を有する表示層200が設けられた例を示して説明する。
【0026】
図3は、本発明の第一実施形態に係る表示媒体10の、図1に示すIII部分を拡大して模式的に示す拡大平面図である。また、図4は、本発明の第一実施形態に係る表示媒体10を、図3に示すIV-IV平面で切った断面を模式的に示す断面図である。
図3及び図4に示すように、表示層200は、亀裂210によって区分された複数の小片層220を含む。詳細には、各小片層220は基材100の表面100Uの異なる位置に設けられており、小片層220同士の間は、表示層200の厚み全体に形成された亀裂210によって分けられている。そして、それら複数の小片層220が集合した群によって、一つの表示層200が形成されている。
【0027】
一つの表示層200に含まれる小片層220は、厚み方向から見て、2以上の方向に並んで設けられている。以下の説明では、このように小片層220が並ぶ方向を、「配列方向」ということがある。これらの配列方向は、いずれも、厚み方向に垂直な方向であり、よって表示層の層平面に平行でありうる。よって、通常は、亀裂210を挟んで隣り合う小片層220を結ぶ線分を引いた場合、その線分は、前記の2以上の配列方向のいずれかと平行になる。配列方向の数は、通常2以上であり、好ましくは4以下、より好ましくは3以下である。例えば、厚み方向から見た小片層220の形状が正三角形である場合、一つの表示層200に含まれる小片層220の配列方向の数は、3でありうる。また、例えば、厚み方向から見た小片層220の形状が矩形である場合、一つの表示層200に含まれる小片層220の配列方向の数は、2でありうる。さらに、例えば、厚み方向から見た小片層220の形状が正六角形である場合、一つの表示層200に含まれる小片層220の配列方向の数は、3でありうる。
【0028】
従来、高い規則性で配置された小さい層の集合として表示層を形成することは困難であった。例えば、小さい層に対応する顔料を含む塗料を基材に塗布して表示層を形成した場合、得られる表示層に含まれる顔料は、ランダムに配置され、高い規則性を達成できなかった。本実施形態に係る表示媒体10の表示層200は、2以上の方向に並ぶという高い規則性で配置された小片層220によって形成されるので、従来の技術では製造の困難性が高い。そのため、表示媒体10の偽造の困難性を高めることが可能である。
【0029】
一つの表示層200に含まれる小片層220の配列方向間の角度は、通常5°以上、より好ましくは10°以上、更に好ましくは30°以上、特に好ましくは40°以上であり、通常90°以下である。本実施形態では、表示層200に含まれる小片層220が、図3に示すように、厚み方向に垂直な第一の配列方向X、並びに、厚み方向及び配列方向Xの両方に垂直な第二の配列方向Yに並んで設けられている例を示して説明する。
【0030】
一つの表示層200に含まれる各小片層220は、厚み方向から見て、同一の形状を有することが好ましい。同一の形状を有する一群の小片層220によって表示層200を形成することは、特に製造の困難性が高いので、表示媒体10の偽造の困難性を効果的に高めることができる。
【0031】
厚み方向から見た各小片層220の形状は、特に限定されない。好ましい例としては、三角形、四角形、六角形等の多角形が挙げられる。中でも、正三角形、四角形及び正六角形が好ましく、四角形がより好ましく、平行四辺形が更に好ましく、正方形及び長方形等の矩形が更に好ましく、正方形が特に好ましい。
【0032】
厚み方向から見た各小片層220の幅は、特定の範囲にあることが好ましい。具体的には、小片層220の幅は、好ましくは150μm以下、より好ましくは125μm以下、更に好ましくは100μm以下、特に好ましくは80μm以下である。下限は、特に制限は無く、通常0μmより大きく、好ましくは10μm以上である。小片層220の幅は、小片層220の輪郭に接するように複数引いた平行線同士の間の距離のうちで最も長い距離をいう。このように小さい小片層220は、裸眼では視認が難しいので、表示媒体10の偽造の困難性を効果的に高めることができる。
【0033】
小片層220が2以上の配列方向に並んで設けられるので、それらの小片層220を区分する亀裂210は、通常、2以上の方向に延びる刻み目211及び212を含む。厚み方向から見た場合、亀裂210は、ある方向に直線状に延びる複数の刻み目211と、それとは異なる方向に直線状に延びる複数の刻み目212と、を含むことが好ましい。さらに、これらの刻み目211及び212は、それぞれ、表示層200の全体にわたって連続的に、直線状に延びていることがより好ましい。このような刻み目211及び212を採用した場合、小片層220を特に円滑に製造できる。
【0034】
表示層200の全体にわたって連続的に刻み目211及び212が直線状に延びている場合、亀裂210は、全体として格子状に設けられうる。そして、その亀裂210で区分された小片層220は、前記の刻み目211及び212が延びる方向に並びうる。本実施形態では、図3に示すように、表示層200の全体にわたって第一の配列方向Xに連続的且つ直線状に伸びる第一群の刻み目211と、表示層200の全体にわたって第二の配列方向Yに連続的且つ直線状に伸びる第二群の刻み目212と、を含む格子状の亀裂210が、矩形の小片層220を区分している例を示して説明する。
【0035】
一つの表示層200に形成された亀裂210に含まれる刻み目211及び212のうち、同じ方向に延びる刻み目同士の間隔は、略同一であることが好ましい。よって、本実施形態に示す例では、配列方向Xに延びる刻み目211同士の間隔P211は、略同一であることが好ましい。また、配列方向Yに延びる刻み目212同士の間隔P212は、略同一であることが好ましい。ここで、刻み目同士のある間隔(第一の間隔)と他の間隔(第二の間隔)とが略同一である、とは、第二の間隔が第一の間隔の90%以上110%以下であることを表す。この場合、通常は、厚み方向から見た各小片層220の形状を同一にすることができるので、表示媒体10の偽造の困難性を効果的に高めることができる。
【0036】
一つの表示層200に形成された亀裂210に含まれる刻み目211及び212のうち、異なる方向に延びる刻み目の間隔は、略同一であることが好ましい。よって、本実施形態に示す例では、配列方向Xに延びる刻み目211同士の間隔P211と、配列方向Yに延びる刻み目212同士の間隔P212とが、略同一であることが好ましい。この場合、通常は、厚み方向から見た各小片層220の配置の規則性を高めることができるので、表示媒体10の偽造の困難性を効果的に高めることができる。
【0037】
本実施形態に示す例のように、格子状の亀裂210が矩形の小片層220を区分している場合、前記の刻み目211同士の間隔P211及び刻み目212同士の間隔P212は、小片層220の対応する辺の長さに一致しうる。また、間隔P211及びP212が小片層220の辺の長さに一致しない場合でも、それら間隔P211及びP212は、小片層220のサイズに相関しうる。よって、間隔P211及びP212は、小片層220のサイズに応じて設定することが好ましい。
【0038】
一般的には、間隔P211及びP212が小さいほど、小片層220のサイズは小さい。また、小片層220のサイズが小さいほど、裸眼での視認が難しくなるので、表示媒体10の偽造の困難性を高めることができる。したがって、表示媒体10の偽造の困難性を向上させる観点では、間隔P211及びP212は、特定の小さい範囲にあることが好ましい。具体的には、間隔P211及びP212は、それぞれ、好ましくは150μm以下、より好ましくは125μm以下、更に好ましくは115μm以下、特に好ましくは100μm以下である。下限は、特に制限は無く、通常0μmより大きく、好ましくは10μm以上である。
【0039】
小片層220の厚みは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上、更に好ましくは2μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、更に好ましくは6μm以下、特に好ましくは5μm以下である。一つの表示層200に含まれる小片層220の厚みは、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。小片層220が薄い場合、厚み方向から見た小片層220のサイズを小さくできるので、表示媒体10の偽造の困難性を効果的に高めることができる。
【0040】
小片層220は、面内レターデーションを有していてもよい。面内レターデーションを有する小片層220及びそれを含む表示層200は、位相差板として機能できるので、透過光の偏光状態を調整できる。よって、この小片層220及び表示層200による偏光状態の調整を活用して、表示媒体10に多様な表示態様を実現させることができる。
【0041】
例えば、小片層220は、1/4波長板として機能できる面内レターデーションを有していてもよい。1/4波長板として機能できる小片層220の具体的な面内レターデーションは、測定波長550nmにおいて、好ましくは「{(2n+1)/4}×550nm-30nm」以上、より好ましくは「{(2n+1)/4}×550nm-20nm」以上、特に好ましくは「{(2n+1)/4}×550nm-10nm」以上であり、好ましくは「{(2n+1)/4}×550nm+30nm」以下、より好ましくは「{(2n+1)/4}×550nm+20nm」以下、特に好ましくは「{(2n+1)/4}×550nm+10nm」以下である。ここで、nは、0以上の整数を表す。測定波長550nmにおいて前記範囲の面内レターデーションReを有する小片層220は、通常、可視波長範囲の広い範囲で1/4波長板として機能できる。よって、小片層220及びそれを含む表示層200によって、広範な色の透過光の偏光状態を適切に調整できる。したがって、表示層200の色の自由度を高めることができるので、意匠性の高い表示媒体10を実現できる。
【0042】
例えば、小片層220は、1/2波長板として機能できる面内レターデーションを有していてもよい。1/2波長板として機能できる小片層220の具体的な面内レターデーションは、測定波長550nmにおいて、好ましくは「{(2n+1)/2}×550nm-30nm」以上、より好ましくは「{(2n+1)/2}×550nm-20nm」以上、特に好ましくは「{(2n+1)/2}×550nm-10nm」以上であり、好ましくは「{(2n+1)/2}×550nm+30nm」以下、より好ましくは「{(2n+1)/2}×550nm+20nm」以下、特に好ましくは「{(2n+1)/2}×550nm+10nm」以下である。ここで、nは、0以上の整数を表す。測定波長550nmにおいて前記範囲の面内レターデーションReを有する小片層220は、通常、可視波長範囲の広い範囲で1/2波長板として機能できる。よって、小片層220及びそれを含む表示層200によって、広範な色の透過光の偏光状態を適切に調整できる。したがって、表示層200の色の自由度を高めることができるので、意匠性の高い表示媒体10を実現できる。
【0043】
一つの表示層200に含まれる小片層220の面内レターデーションは、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
【0044】
小片層220が有する波長分散性には、特段の制限は無い。よって、小片層220は、順波長分散性を有していてもよく、逆波長分散性を有していてもよい。順波長分散性とは、測定波長450nm及び550nmにおける面内レターデーションRe(450)及びRe(550)が、下記式(R1)を満たすことをいう。順波長分散性を有する小片層220は、通常、測定波長が長いほど、面内レターデーションが小さい。また、逆波長分散性とは、測定波長450nm及び550nmにおける面内レターデーションRe(450)及びRe(550)が、下記式(R2)を満たすことを言う。逆波長分散性を有する小片層220は、通常、測定波長が長いほど、面内レターデーションが大きい。
Re(450)>Re(550) (R1)
Re(450)<Re(550) (R2)
【0045】
小片層220は、当該小片層220の波長分散性に応じて、可視波長範囲の透過光を異なる偏光状態に調整しうる。例えば、ある波長において1/4波長板として機能できる小片層220が逆波長分散性を有する場合、その小片層220は、可視波長範囲の全体において透過光に1/4波長の面内レターデーションを与えうる。他方、ある波長において1/4波長板として機能できる小片層220が順波長分散性を有する場合、その小片層220は、可視波長範囲の一部において透過光に1/4波長から外れた面内レターデーションを与えうる。よって、小片層220の波長分散性が異なると、当該小片層220を透過した偏光の偏光状態が異なりうる。そこで、この偏光状態の違いを利用して、小片層220及びそれを含む表示層200の色を調整してもよい。このように波長分散性の違いによる色の調整を行えば、表示層200の色の自由度を高めることができるので、意匠性の高い表示媒体10を実現できる。
【0046】
一つの表示層200に含まれる小片層220の波長分散性は、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
【0047】
小片層220が面内レターデーションを有する場合、当該小片層220は、最大の屈折率を示す方向を有しうる。以下、この方向を「光軸方向」ということがある。この光軸方向は、層平面に平行であってもよく、層平面に垂直であってもよく、層平面に平行でも垂直でもない傾斜方向にあってもよい。小片層220及びそれを含む表示層200は、光軸方向と透過光の進行方向とに応じて、透過光の偏光状態を様々に調整しうる。よって、小片層220の光軸方向を適切に選択することにより、観察方向に応じた表示層200の色を広い自由度で変化させることができるので、意匠性の高い表示媒体10を実現できる。
【0048】
小片層220が液晶組成物又はその硬化物によって形成されている場合、その小片層220の光軸方向は、その小片層220に含まれる液晶性化合物の分子の実質最大傾斜角によって表すことができる。ある層に含まれる液晶性化合物の分子の「実質最大傾斜角」とは、その層の一方の面での分子の傾斜角が0°であり、且つ分子の傾斜角が厚み方向において一定比率で変化していると仮定した場合の、液晶性化合物の分子の傾斜角の最大値をいう。また、液晶性化合物の分子の「傾斜角」とは、その液晶性化合物の分子が、当該液晶性化合物を含む層の層平面に対してなす角度を表す。この傾斜角は、液晶性化合物の分子の屈折率楕円体において最大の屈折率の方向が層平面となす角度のうち、最大の角度に相当する。具体的には、液晶性化合物を含む層の厚み方向において、液晶性化合物の分子の傾斜角が、層の一側に近いほど小さく前記一側から遠いほど大きい場合を考える。実質最大傾斜角は、このような厚み方向における傾斜角の変化の比率(即ち、一側に近いほど減少し、一側から遠いほど増加するという変化の比率)が一定であると仮定して計算される、傾斜角の最大値を表す。具体例を挙げると、仮支持体上に形成された液晶組成物の層を硬化させて得られる液晶硬化層においては、実質最大傾斜角は、通常、液晶硬化層の仮支持体側の面での分子の傾斜角が0°であり、且つ、分子の傾斜角が厚み方向において一定比率で変化していると仮定した場合の、液晶性化合物の分子の傾斜角の最大値を表す。通常、実質最大傾斜角が大きい層ほど、その層に含まれる液晶性化合物の分子の全体として見た傾斜角が大きい傾向がある。よって、この実質最大傾斜角により、小片層220の光軸方向が層平面に対して平行か、垂直か、又は平行でも垂直でもないかを把握しうる。例えば、実質最大傾斜角が0°~4°であれば、光軸方向が層平面に対して平行でありうる。また、例えば、実質最大傾斜角が86°~90°であれば、光軸方向が層平面に対して垂直でありうる。さらに、例えば、実質最大傾斜角が4°より大きく86°より小さければ、光軸方向が層平面に対して傾斜方向にありうる。
【0049】
一つの表示層200に含まれる小片層220の光軸方向は、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。よって、小片層220が液晶組成物又はその硬化物によって形成されている場合、実質最大傾斜角は、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
【0050】
小片層220が面内レターデーションを有する場合、当該小片層220の位相差板としてのタイプは、当該小片層220の光軸方向と層平面との関係に応じて、幾つかのタイプに分類しうる。小片層220の位相差板としてのタイプに特段の制限は無い。好適なタイプを挙げると、小片層220は、ポジティブAプレート、ポジティブCプレート、傾斜Oプレート、及び、傾斜ハイブリッド配向プレートからなる群より選ばれる1種類以上であることが好ましい。ポジティブAプレートとは、光軸方向が層平面に平行である層を言う。また、ポジティブCプレートとは、光軸方向が層平面に垂直である層を言う。さらに、傾斜Oプレートとは、光軸方向が層平面に対して平行でも垂直でもない層を言う。また、傾斜ハイブリッド配向プレートとは、光軸方向が層平面に対してなす角度が、層の一側と他側とで異なる層をいう。前記の好適なタイプの小片層220及びそれを含む表示層200は、そのタイプと透過光の進行方向とに応じて、透過光の偏光状態を様々に調整しうる。よって、小片層220のタイプを適切に選択することにより、観察方向に応じた表示層200の色を広い自由度で変化させることができるので、意匠性の高い表示媒体10を実現できる。
【0051】
一つの表示層200に含まれる小片層220のタイプは、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
【0052】
小片層220は、円偏光分離機能を有していてもよい。「円偏光分離機能」とは、右回り及び左回りのうちの一方の回転方向の円偏光を反射し、その逆の回転方向の円偏光を透過させる機能を意味する。よって、小片層220及びそれを含む表示層200は、当該円偏光分離機能を発揮できる波長範囲において、一方の回転方向Dの円偏光を反射し、その回転方向Dとは逆の回転方向の円偏光を透過させることができるものであってもよい。以下の説明では、このように小片層220が円偏光分離機能を発揮できる波長範囲を、適宜「表示波長範囲」ということがある。表示波長範囲における小片層220の非偏光に対する反射率は、通常35%~50%、好ましくは40%~50%である。円偏光分離機能を有する小片層220及びそれを含む表示層200は、表示波長範囲の回転方向Dの円偏光を選択的に反射し、それ以外の光を透過させることができる。よって、このように特定の波長の特定の円偏光を選択的に透過及び反射できる機能を活用して、表示媒体10に多様な表示態様を実現させることができる。
【0053】
一つの表示層200に含まれる小片層220が反射できる円偏光の回転方向Dは、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
【0054】
人の眼で視認できる表示態様を実現する観点から、表示波長範囲は、可視波長範囲にあることが好ましい。一つの表示層200に含まれる小片層220の表示波長範囲は、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
【0055】
小片層220の材料は、特に制限は無い。小片層220の材料としては、例えば、無機材料及び有機材料が挙げられる。無機材料としては、例えば、アルミニウム、銀等の金属;酸化チタン、酸化シリコン、酸化ニオブ、酸化タンタル、フッ化マグネシウム等の金属化合物;などが挙げられる。また、有機材料としては、例えば、アクリルポリマー、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、セルロース系重合体(例、トリアセチルセルロース)、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリオレフィン、脂環式構造含有重合体、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。小片層220の材料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、一つの小片層220が2種類以上の材料を含む場合、当該小片層220は、2種類以上の材料を均一に含む1層構造を有していてもよく、1種類以上の材料含む層を2以上備えた複層構造を有していてもよい。
【0056】
中でも、小片層220は、液晶性化合物を含む液晶組成物の硬化物で形成されていることが好ましい。液晶組成物の硬化物によれば、面内レターデーションを有する小片層220、及び、円偏光分離機能を有する小片層220を、効率良く製造できる。ここで、便宜上「液晶組成物」と称する材料は、2種類以上の物質の混合物のみならず、単一の物質からなる材料をも包含する。また、以下の説明において、液晶組成物の硬化物で形成されている層を「液晶硬化層」と呼ぶことがある。
【0057】
例えば、液晶組成物に含まれる液晶性化合物を配向させた状態で、その液晶組成物を硬化させた硬化物によれば、面内レターデーションを有する小片層220を形成できる。具体例を挙げると、液晶組成物に含まれる液晶性化合物を配向させて、液晶組成物の相をネマチック相及びスメクチック相等の液晶相にする。このような液晶相の液晶組成物を硬化させると、液晶性化合物の配向方向は固定されうる。よって、前記の硬化によって得られた硬化物を含む液晶硬化層は、前記のように配向した液晶性化合物を含みうるので、液晶性化合物の種類、液晶性化合物の配向状態、厚み等の要素に応じた面内レターデーションを有することができる。したがって、前記の液晶硬化層として、面内レターデーションを有する小片層220が得られうる。前記の液晶性化合物の硬化物に含まれる「液晶性化合物」には、未反応の液晶性化合物だけでなく、重合反応及び架橋反応等の反応をした液晶性化合物も含まれる。
【0058】
この際、液晶硬化層の厚み方向における液晶性化合物の配向方向を調整することにより、小片層220の位相差板としてのタイプを調整できる。例えば、液晶性化合物の配向方向が、層平面に対して平行である場合、ポジティブAプレートとしての小片層220が得られうる。また、例えば、液晶性化合物の配向方向が、層平面に対して垂直である場合、ポジティブCプレートとしての小片層220が得られうる。さらに、例えば、液晶性化合物の配向方向が、層平面に対して平行でも垂直でもない場合、傾斜Oプレートとしての小片層220が得られうる。また、例えば、液晶性化合物の配向方向が層平面に対してなす角度が、層の一側に近いほど小さく、前記一側から遠いほど大きい態様で、液晶性化合物が配向している場合、傾斜ハイブリッド配向プレートとしての小片層220が得られうる。
【0059】
また、例えば、液晶組成物に含まれる液晶性化合物をコレステリック規則性を有するように配向させた状態で、その液晶組成物を硬化させた硬化物によれば、円偏光分離機能を有する小片層220を形成できる。コレステリック規則性とは、ある平面上では分子軸が一定の方向に並んでいるが、それに重なる次の平面では分子軸の方向が少し角度をなしてずれ、さらに次の平面ではさらに角度がずれるというように、重なって配列している平面を順次透過して進むに従って当該平面中の分子軸の角度がずれて(ねじれて)いく構造である。即ち、ある層の内部の分子がコレステリック規則性を有する場合、分子は、層の内部のある第一の平面上では分子軸が一定の方向になるよう並ぶ。層の内部の、当該第一の平面に重なる次の第二の平面では、分子軸の方向が、第一の平面における分子軸の方向と、少し角度をなしてずれる。当該第二の平面にさらに重なる次の第三の平面では、分子軸の方向が、第二の平面における分子軸の方向から、さらに角度をなしてずれる。このように、重なって配列している平面において、当該平面中の分子軸の角度が順次ずれて(ねじれて)いく。このように分子軸の方向がねじれてゆく構造は、通常はらせん構造であり、光学的にカイラルな構造である。通常、このようにコレステリック規則性を有する液晶性化合物を含む液晶硬化層は、円偏光を、そのキラリティを維持したまま反射する。
【0060】
具体例を挙げると、液晶組成物に含まれる液晶性化合物を配向させて、液晶組成物の相をコレステリック相にする。このコレステリック相の液晶組成物を硬化させると、液晶性化合物の配向方向は固定されうる。よって、前記の硬化によって得られた硬化物を含む液晶硬化層は、前記のようにコレステリック規則性を有するように配向した液晶性化合物を含みうるので、液晶性化合物の種類、液晶性化合物の配向状態、厚み等の要素に応じた円偏光分離機能を有することができる。したがって、前記の液晶硬化層として、表示波長範囲を有する小片層220が得られうる。
【0061】
一つの表示層200に含まれる小片層220の材料は、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
【0062】
[1.3.任意の層]
表示媒体10は、基材100及び表示層200に組み合わせて、更に任意の層を備えていてもよい。例えば、表示媒体10は、基材100と表示層200との間に、接着剤層(図示せず。)を備えていてもよい。接着剤層を用いることにより、表示媒体10の効率的な製造が可能である。
【0063】
接着剤層は、基材100と表示層200とを接着する層であり、接着剤によって形成できる。接着剤は、狭義の接着剤(エネルギー線照射後、あるいは加熱処理後、23℃における剪断貯蔵弾性率が1MPa~500MPaである接着剤)のみならず、23℃における剪断貯蔵弾性率が1MPa未満である粘着剤(感圧接着剤等)をも包含する。接着剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
接着剤層は、光を透過させる透明な層であってもよく、光を透過させない非透明な層であってもよい。また、接着剤層が透明である場合、当該接着剤層は、面内レターデーションを有していてもよいが、面内レターデーションの小さい光学等方性の層であることが好ましい。例えば、測定波長550nmにおける接着剤層の面内レターデーションは、好ましくは0~20nm、より好ましくは0~10nm、特に好ましくは0~5nmである。
【0065】
任意の層の更に別の例としては、例えば、表示媒体10の滑り性を良くするマット層;耐衝撃性ポリメタクリレート樹脂層などのハードコート層;反射防止層;防汚層;等が挙げられる。
【0066】
[1.4.表示媒体の製造方法]
本発明の第一実施形態に係る表示媒体10の製造方法に、特段の制限は無く、上述した表示媒体10が得られる製造方法を任意の採用しうる。表示媒体10を効率良く製造する観点では、表示媒体10は、
仮支持体、及び、仮支持体上に形成され小片層220を含む転写材層、を備える原反部材を用意する工程(A)と、
基材100上に、厚み方向から見て表示層200と同じ形状を有する接着剤層を形成する工程(B)と、
転写材層及び接着剤層を貼り合わせる工程(C)と、
仮支持体を剥離する工程(D)と、
を含む製造方法によって製造することが好ましい。
【0067】
以下、この好ましい製造方法について、図面を示して説明する。図5は、本発明の第一実施形態に係る表示媒体10の製造方法において用意される原反部材300を、厚み方向から見た模式的な平面図である。図6は、本発明の第一実施形態に係る表示媒体10の製造方法において用意される原反部材300を、図5に示すVI-VI平面で切った断面を模式的に示す断面図である。図7は、本発明の第一実施形態に係る表示媒体10の製造方法において用意される原反部材300の、図5に示すVII部分を拡大して模式的に示す拡大平面図である。
【0068】
図5及び図6に示すように、工程(A)では、仮支持体310、及び、仮支持体310上に形成された転写材層320、を備える原反部材300を用意する。
【0069】
仮支持体310としては、例えば、適切な材料で形成された板、シート、フィルム等を用いうる。また、表示媒体10の製造を効率的に行う観点から、仮支持体310は長尺の形状を有することが好ましい。
【0070】
仮支持体310の材料としては、例えば、樹脂を用いうる。樹脂としては、基材100の材料として挙げたのと同じ樹脂が挙げられる。中でも、脂環式構造含有重合体を含む樹脂が好ましい。
【0071】
仮支持体310には、延伸処理を施されていてもよく、延伸処理が施されていなくてもよい。また、仮支持体310の表面には、ラビング処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0072】
仮支持体310は、1層のみを備える単層構造を有していてもよく、2層以上を備える複層構造を備えていてもよい。例えば、仮支持体310は、上述した樹脂で形成された樹脂フィルム層と、この樹脂フィルム層上に形成された配向膜とを備えていてもよい。このような配向膜を備える仮支持体310を用いた場合、当該配向膜上に形成される液晶組成物の層に含まれる液晶性化合物を良好に配向させることができる。配向膜は、例えば、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド等の重合体を含む樹脂により形成しうる。
【0073】
仮支持体310の厚みは、好ましくは12μm以上、より好ましくは25μm以上、更に好ましくは50μm以上であり、好ましくは250μm以下、より好ましくは200μm以下、更に好ましくは188μm以下である。
【0074】
図7に示すように、転写材層320は、表示媒体10が備える小片層220と同じ小片層330を含む層である。詳細には、転写材層320は、亀裂340で区分された複数の小片層330を含み、この小片層330は、表示媒体10に含まれる小片層220と同じものである。したがって、各小片層330は仮支持体310の表面310Uの異なる位置に設けられており、小片層330同士の間は転写材層320の厚み全体に形成された亀裂340によって分けられている。そして、それら複数の小片層330が集合した群によって、転写材層320が形成されている。
【0075】
転写材層320が含む小片層330は、表示媒体10が備える小片層220と同じものであるので、通常は、表示媒体10が備える小片層220と同じ材料で形成されている。さらに、転写材層320が含む小片層330は、通常、表示媒体10が備える小片層220と同じ配列方向、厚み方向から見た形状、サイズ、および特性(面内レターデーション、波長分散性、位相差板としてのタイプ、円偏光分離機能等)を有する。
【0076】
また、転写材層320が含む小片層330が、表示媒体10が備える小片層220と同じものであるので、小片層330を区分する亀裂340は、通常、小片層220を区分する亀裂210と同じ、厚み方向から見た形状、サイズ及び間隔を有する。さらに、小片層330を区分する亀裂340は、通常、2以上の方向に延びる刻み目341及び342を含み、これらの刻み目341及び342が延びる方向、厚み方向から見た形状、サイズ及び間隔は、小片層220を区分する亀裂210に含まれる刻み目211及び212と同じである。
【0077】
ただし、転写材層320は、厚み方向から見て、表示層200と同じ形状を有していなくてもよい。転写材層320は、通常は、表示層200よりも大きく形成される。詳細には、転写材層320は、通常、表示層200をカバーできる程度に大きく形成される。本実施形態では、図5及び図6に示すように、表示層200より大きい仮支持体310の表面310Uの大部分に転写材層320が形成されている例を示して説明する。
【0078】
転写材層320は、通常、原反部材300の最も外側に配置されている。最も外側に配置されている、とは、転写材層320が、原反部材300の厚み方向における最も外側に配置されていることをいう。そのため、転写材層320の表面320Uは、原反部材300の一側で露出しうる。原反部材300は、仮支持体310と転写材層320との間に、任意の層を備えていてもよい。
【0079】
前記の原反部材300は、例えば、仮支持体310上に小片層330の材料で層を形成することと、その形成された層に亀裂340を形成することとを含む製造方法によって、製造できる。以下の説明では、小片層330の材料で形成された亀裂340を形成される前の層を、「材料層」ということがある。この材料層は、通常、小片層220及び330と同じ材料によって、小片層220及び330と同じ厚みに形成された層であり、小片層220及び330と同じ光学特性(例えば、面内レターデーション、円偏光分離機能等)を有しうる。
【0080】
材料層の形成方法に制限は無い。例えば、液晶組成物の硬化物によって材料層を形成する場合は、仮支持体310上に液晶組成物の層を形成し、必要に応じて液晶組成物に含まれる液晶性化合物を配向させた後で、液晶組成物を硬化させて、液晶硬化層としての材料層を得ることができる。例えば、面内レターデーションを有する材料層を形成したい場合は、国際公開第2014/069515号、国際公開第2015/064581号、国際公開第2019/163611号、国際公開第2019/146468号などに記載の方法を採用しうる。また、例えば、円偏光分離機能を有する材料層を形成したい場合は、特開2014-174471号公報に記載の方法を採用しうる。仮支持体310上に材料層を形成することにより、仮支持体310及び材料層を備える複層部材が得られる。
【0081】
図8は、本発明の第一実施形態に係る表示媒体10の製造方法において用意される原反部材300を、図7に示すVIII-VIII平面で切った断面を模式的に示す断面図である。複層部材(図示せず)の材料層に亀裂340を形成することにより、図8に示すように、小片層330を含む転写材層320を備える原反部材300が得られる。亀裂340は、通常、材料層の厚み方向の全体にわたって形成されて、小片層330を厚み方向の全体で区分する。
【0082】
更には、亀裂340は、小片層330の厚みT330より深く形成することが好ましい。特に、亀裂340は、原反部材300の全面において、小片層330の厚みT330より深く形成することが好ましい。この場合、亀裂340の先端340Cは、仮支持体310の小片層330側の表面310Uより深い位置に達する。そして、亀裂340の深さT340は、小片層330の厚みT330より大きくなる。このように亀裂340が深い場合、その亀裂340によって区分される小片層330の形状一致性を良好にできる。
【0083】
ただし、亀裂340の深さT340は、仮支持体310を完全には切断しないように設定することが好ましい。よって、亀裂340の深さT340は、小片層330の厚みT330より大きく、且つ、原反部材300の厚みT300より小さいことが好ましい。
【0084】
亀裂340は、例えば、複層部材の材料層の側に、凹凸形状を有する加工具を押圧することにより、形成されうる。好ましくは、複層部材を支持具によって支持した状態で、支持具と加工具との間で複層部材を押圧することにより、亀裂340を形成する。
【0085】
加工具として、複層部材の厚み方向から見た亀裂340の形状に対応する凸部を表面に有する部材を用いうる。例えば、複層部材の厚み方向から見た亀裂の形状が、格子状である場合は、格子状の凸部を表面に有する部材を用いうる。
【0086】
加工具は、1個だけ用いてもよく、2個以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、亀裂340の一部分に対応する凸部を表面に有する加工具と、亀裂340の別の部分に対応する凸部を表面に有する加工具とを組み合わせて用いてもよい。本実施形態に示す例のように、異なる方向に延びる刻み目341及び342を含む亀裂を形成する場合には、一の方向の延びる刻み目341に対応する凸部を表面に有する第一の加工具と、別の方向に延びる刻み目342に対応する凸部を表面に有する第二の加工具と、を複層部材に押圧することにより、亀裂340を形成してもよい。
【0087】
同一の加工具を、複層部材に対して異なる配置で複数回押圧して、亀裂340を形成してもよい。
【0088】
また、円筒形の加工具を用いて、複層部材に連続的に亀裂を形成してもよい。
【0089】
加工具の材料は、複層部材を押圧しても破損が生じない強度を有し、凹凸構造を形成可能なものを採用しうる。かかる材料の例としては、炭素鋼及びステンレス鋼が挙げられる。また、加工具は、耐食性、強度及び熱伝導率を高める観点から、表面に1層又は2層以上の多層の皮膜を有していてもよい。このような皮膜としては、例えば、ニッケル、ニッケルリン、シリコン、銅等のメッキ皮膜;セラミック溶射により形成された皮膜;が挙げられる。さらに、加工具には、例えば、ヒーター、熱媒、誘電加熱、誘導加熱等を用いた加熱装置;静電気対策用の除電装置;アース;等が設けられていてもよい。このような加工具は、例えば、円筒形の金属ロールに、ダイヤモンドバイトなどの切削工具による切削、又は、レーザ加工装置による加工により、凹凸形状を形成することにより、製造できる。
【0090】
加工具を、複層部材の材料層の側に押圧する際の圧力は、好ましくは0.5MPa以上、より好ましくは1MPa以上、更に好ましくは5MPa以上であり、好ましくは100MPa以下、より好ましくは75MPa以下である。圧力が下限値以上である場合、充分な深さの亀裂340を形成することができる。圧力が上限値以下である場合、原反部材300の破損を抑制することができる。亀裂340を形成するために、同一又は異なる加工具を複数回、複層部材に押圧する場合には、複数回の押圧は、同一の圧力で行ってもよく、異なる圧力で行ってもよい。好ましくは、複数回の押圧は、同一の圧力で行う。
【0091】
支持具は、通常、複層部材が含む材料層の側とは反対側の面を支持できる支持面を有する。支持具の支持面の硬度は、好ましくはD40以上、より好ましくはD60以上、更に好ましくはD70以上であり、好ましくはD99以下、より好ましくはD97以下、更に好ましくはD95以下である。ここで、硬度は、JIS K-6253に従い、デュロメータ(タイプD)により測定した値を表す。支持具の支持面の硬度が前記範囲である場合、適切な深さの亀裂を容易に形成できる。支持具の表面の材料としては、例えば、ゴム、樹脂が挙げられる。
【0092】
以下、加工具を用いた亀裂340の形成方法の例を、図面を示して説明する。
図9は、本発明の第一実施形態に係る表示媒体10の製造方法における原反部材300の製造方法で用いうる加工具400の一例を模式的に示す斜視図である。図10は、図9に示す加工具400を模式的に示す斜視図である。図11は、図10の加工具400をXI-XI線で切断して展開した状態を模式的に示す平面図である。図12は、加工具400の表面近傍の一部を、凸部410が延びる方向に垂直な平面で切った断面を模式的に示す一部断面図である。
【0093】
図9に示すように、加工具400は、複層部材350を押圧できるように、複層部材350の材料層360側の面360Uと接するように配置されている。加工具400は、図10に示すように円筒状を有しており、回転可能に設けられている。加工具400の外側面(複層部材350と接触する面)には、凹凸形状が設けられている。凹凸形状は、図11に示すように、ある基準方向L1に対して角度θxをなす方向に延びる凸部410と凹部420とを含む。前記の基準方向L1として、ここでは、複層部材350の搬送方向に対して垂直な、加工具400の軸方向を採用した例を示す。加工具400の凸部410と凹部420とは、凸部410が延びる方向に垂直な方向に交互に繰り返し形成されている。角度θxは、特に限定はないが、ここでは角度θxが45°である例を示す。加工具400のこの凹凸形状は、図11に示すように、紙面上から見ると直線が並んだ形状である。図12に示すように、隣り合う2つの凸部410間の距離P410は、適切に設定することが好ましい。図10及び図11において、符号430及び440は、加工具400の端部を表す。
【0094】
凸部410は、図12に示すように、断面が鋭角状の頂点410Tを有する山形状を有しうる。凸部410の頂角θ410は、小さい方が好ましい。頂角θ410は、例えば10°以上、20°以上、又は30°以上でもよく、例えば90°以下、80°以下、70°以下、又は60°以下でもよい。凸部410の頂点形状は、材料層360に亀裂340を形成することが可能であれば、丸みを帯びた形状であってもよく、面取り形状であってもよい。
【0095】
図9に示すように、加工具400に対向して、円筒状を有する支持具450が回転可能に設けられている。支持具450は、複層部材350の仮支持体310側の面を押圧できるように設けられている。よって、支持具450と加工具400との間で、複層部材350は、押圧される。
【0096】
図13は、本発明の第一実施形態に係る表示媒体10の製造方法における原反部材300の製造方法で用いうる加工具500の一例を模式的に示す斜視図である。図14は、図13に示す加工具500を模式的に示す斜視図である。図15は、図14の加工具500をXV-XV線で切断して展開した状態を模式的に示す平面図である。
【0097】
図13図15に示すように、加工具500は、複層部材350を押圧できるように、複層部材350の材料層360側の面360Uと接するように配置されている。加工具500は、凸部510及び凹部520が延びる方向が異なること以外は、加工具400と同じに設けられている。加工具500は、凸部510と凹部520とを含むが、それら凸部510及び凹部520が基準方向L2に対してなす角度θyは、加工具400の角度θxと異なる。前記の基準方向L2として、ここでは、複層部材350の搬送方向に対して垂直な、加工具500の軸方向を採用した例を示す。角度θyは、特に限定はないが、ここでは角度θyが135°である例を示す。加工具500のこの凹凸形状は、図15に示すように、紙面上から見ると、加工具400の凸部410及び凹部420が延びる方向とは交差する方向に直線が並んだ形状である。図14及び図15において、符号530及び540は、加工具500の端部を表す。
【0098】
図13に示すように、加工具500に対向して、円筒状を有する支持具550が回転可能に設けられている。支持具550は、複層部材350の仮支持体310側の面を押圧できるように設けられている。よって、支持具550と加工具500との間で、複層部材350は、押圧される。
【0099】
前記の加工具400及び500並びに支持具450及び550を用いて複層部材350の材料層360に亀裂340を形成する場合、一方の加工具400及び支持具450を用いて一方の刻み目341を形成する工程と、他方の加工具500及び支持具550を用いて他方の刻み目342を形成する工程と、を行う。
【0100】
加工具400及び支持具450を用いる工程では、図9に示すように、加工具400と支持具450との間に複層部材350を通し、加工具400の凸部410を材料層360に接触させる。そして、この状態で複層部材350を加工具400と支持具450との間で押圧することにより、加工具400の凸部410を材料層360の内部に入り込ませて、凸部410の形状を反映した刻み目341を形成することができる。押圧の程度を、加工具400の凸部410が仮支持体310の内部に入り込むように調整した場合には、刻み目341は、小片層330の厚みT330より深く形成されて、仮支持体310の小片層330側の表面310Uより深い位置に達する(図8参照)。
【0101】
また、加工具500及び支持具550を用いる工程では、図13に示すように、加工具500と支持具550との間に複層部材350を通し、加工具500の凸部510を材料層360に接触させる。そして、この状態で複層部材350を加工具500と支持具550との間で押圧することにより、加工具500の凸部510を材料層360の内部に入り込ませて、凸部510の形状を反映した刻み目342を形成することができる。押圧の程度を、加工具500の凸部510が仮支持体310の内部に入り込むように調整した場合には、刻み目342は、小片層330の厚みT330より深く形成されて、仮支持体310の小片層330側の表面310Uより深い位置に達する(図8参照)。
【0102】
よって、前記のように刻み目341を形成する工程と刻み目342を形成する工程とを含む方法により、刻み目341及び刻み目342を含む亀裂340を材料層360に形成して、原反部材300を得ることができる。加工具400による刻み目341の形成及び加工具500による刻み目342の形成の順序は、特に限定されない。例えば、複層部材350を加工具400により押圧し、その後で加工具500により押圧してもよい。また、複層部材350を加工具500により押圧し、その後で加工具400により押圧してもよい。
【0103】
工程(B)では、基材100上に、厚み方向から見て表示層200と同じ形状を有する接着剤層を形成する。このように形成された接着剤層は、表示層200の潜像として機能できる。接着剤層の形成方法に制限は無い。例えば、液体状の接着剤を用いる場合、接着剤を基材上に塗布して、接着剤層を形成してもよい。塗布方法としては、例えば、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法等の印刷法が好ましい。また、例えば、フィルム状又はシート状の接着剤を用いる場合、当該接着剤を適切な形状に加工し、その加工された接着剤を基材に貼り付けてもよい。加工方法としては、例えば、切り取り、打ち抜き等が挙げられる。中でも、製造コストを抑制する観点から、印刷法が好ましい。
【0104】
前記工程(A)及び工程(B)の後で、原反部材300の転写材層320と基材100上に形成された接着剤層とを貼り合わせる工程(C)を行う。貼り合わせは、通常、原反部材300の転写材層320側の面と基材100の接着剤層側の面とを対向させた状態で、それら原反部材300及び基材100をニップロール等の押圧具によって押圧して行う。これにより、接着剤層があるエリアでは、基材100と転写材層320とが接着剤層を介して接着される。
【0105】
前記の工程(C)の後で、仮支持体310を剥離する工程(D)を行う。仮支持体310を剥離すると、基材100上の接着剤層が形成されたエリアでは、転写材層320が仮支持体310と別れ、基材100上に残る。よって、基材100に残った転写材層320の部分により、表示層200が形成される。この表示層200は、転写材層320に含まれていた多数の小片層330の一部としての一群の小片層220を含む。よって、この一群の小片層220によって表示層200が形成される。他方、基材100上の接着剤層が無いエリアでは、転写材層320が仮支持体310と別れることができない。よって、転写材層320は、仮支持体310と一緒に剥離されるので、基材100上の接着剤層が無いエリアには、小片層330が残らない。したがって、厚み方向から見た接着剤層の形状を有する表示層200を基材100上に形成して、表示媒体10を得ることができる。
【0106】
上述した表示媒体10の製造方法において、工程(A)、工程(B)、工程(C)及び工程(D)の順番は、表示媒体10が得られる限り、制限は無い。
【0107】
上述した表示媒体10の製造方法は、長尺の基材100及び長尺の原反部材300を用いて行うことが好ましい。この場合、ロールトゥロール法を用いて、表示媒体10を高い生産性で製造することが可能である。
【0108】
上述した表示媒体10の製造方法は、工程(A)、工程(B)、工程(C)及び工程(D)に組み合わせて、更に任意の工程を含んでいてもよい。
例えば、硬化型の接着剤を用いた場合、上述した表示媒体10の製造方法は、接着剤を硬化させる工程を含んでいてもよい。接着剤の硬化は、通常、工程(C)の後、工程(D)より前に行う。
さらに、長尺の基材100及び長尺の原反部材300を用いた場合、通常は、長尺の表示媒体10が得られる。そこで、上述した表示媒体10の製造方法は、長尺の表示媒体10を、適切な形状にトリミングする工程を含んでいてもよい。
【0109】
[1.5.表示媒体の主な効果]
上述した表示媒体10は、表示層200による多様な表示態様を実現できる。
例えば、表示層200は、様々な色及び形状に形成できるので、当該表示層200を観察する観察者に多様な像を視認させることができる。したがって、表示媒体10は、表示態様の自由度を高めることに貢献できる。
【0110】
特に、面内レターデーションを有する小片層220を含む表示層200は、通常は透明であるので、裸眼で観察した場合、視認が困難でありうる。しかし、クロスニコル又はパラニコルに設置した2枚の直線偏光板の間に表示媒体10を設置して透過観察した場合、その表示層200は、表示媒体10の設置角度に応じて視認しうる。よって、前記の表示層200は、観察方法に応じた多様な表示態様の実現に貢献できる。「クロスニコル」とは、2枚の直線偏光板の吸収軸が、厚み方向から見て直交する配置を表す。また「パラニコル」とは、2枚の直線偏光板の吸収軸が、厚み方向から見て平行な配置を表す。
【0111】
また、特に、円偏光分離機能を有する小片層220を含む表示層200は、非偏光下で裸眼で観察した場合、視認しうる。また、小片層220が反射可能な円偏光を透過させうる円偏光板を通して観察した場合、その表示層200は、視認しうる。しかし、小片層220が反射可能な円偏光を透過させない円偏光板を通して観察した場合、その表示層200は、視認が困難でありうる。また、小片層220が反射できない円偏光のみを照射して観察した場合、その表示層200は、視認が困難でありうる。よって、前記の表示層200は、観察方法に応じた多様な表示態様の実現に貢献できる。特に、円偏光分離機能を有する小片層220を含む表示層200は、当該小片層220の表示波長範囲に応じた色の円偏光を反射できるので、当該表示波長範囲に応じた色によって表示層200を表示できる。したがって、表示態様の自由度を高めることに効果的に貢献できる。
【0112】
さらに、上述した表示媒体10は、ルーペ又は顕微鏡による拡大観察を行わなくても、表示層200を視認することができる。しかし、その表示層200に含まれる小片層220は、小さいので、拡大観察をしないで視認することが難しく、形状、サイズ及び配置を認識する困難性が高い。特に、幅が上述した特定の範囲にある小片層220は、高倍率の顕微鏡を用いない限り視認が困難であり、当該小片層220が表示層200に含まれることを観察者が知ること自体、困難性が高い。よって、上述した表示媒体10によれば、表示層200による多様な表示態様の実現に貢献しながら、偽造の困難性を高めることが可能である。
【0113】
また、表示媒体10が備える小片層220は、一つの表示層200において、2以上の方向に並んで設けられている。このように2以上の方向に並んで設けられた小片層220は、その配置の規則性が高い。小片層220を高い規則性で配置することにより、表示媒体10は、製造の困難性が高められている。したがって、上述した表示媒体10によれば、偽造の困難性を高めることが可能である。
【0114】
上述した表示媒体10は、ロールトゥロール法を用いた効率的な製造が可能である。よって、安価に製造することが可能であるので、商業上のメリットを享受できる。
【0115】
[2.第二実施形態]
第一実施形態では、透明な基材100を備える表示媒体10を例に示して説明したが、表示媒体は、非透明な基材を備えていてもよい。例えば、表示媒体は、有色層を備える基材を備えていてもよい。以下、有色層を備える表示媒体の実施形態を説明する。
【0116】
図16は、本発明の第二実施形態に係る表示媒体20を、厚み方向から見た模式的な平面図である。また、図17は、本発明の第二実施形態に係る表示媒体20を、図16に示すXVII-XVII平面で切った断面を模式的に示す断面図である。さらに、図18は、本発明の第二実施形態に係る表示媒体20の、図16に示すXVIII部分を拡大して模式的に示す拡大平面図である。第二実施形態において、第一実施形態で説明したのと同じ要素には、第一実施形態で用いたのと同じ符号を付して説明する。
【0117】
図16図18に示すように、本発明の第二実施形態に係る表示媒体20は、透明な基材100の代わりに非透明な基材600を備えること以外は、第一実施形態に係る表示媒体10と同じに設けられている。よって、表示媒体20は、基材600と、この基材600上に形成された表示層200とを備え、表示層200は、高い規則性で形成された複数の小片層220を含む。
【0118】
基材600は、支持層110に組み合わせて有色層610を備える。有色層610が可視波長範囲の一部又は全部で光を透過させないので、基材600が非透明となっている。本実施形態では、基材600が、支持層110及び有色層610を表示層200側からこの順に備える例を示して説明する。ただし、基材600は、有色層610及び支持層110を表示層200側からこの順に備えていてもよい。また、基材600は、支持層110を省略して、有色層610自体が表示層200を支持できるように設けてもよい。
【0119】
有色層610は、可視波長範囲の一部又は全部の光を遮りうる材料で形成できる。有色層610の材料としては、例えば、顔料及び染料等の着色剤を含む樹脂;紙;皮革;布;木材;金属;金属化合物;などが挙げられる。これらの材料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0120】
本発明の第二実施形態に係る表示媒体20によれば、第一実施形態で説明した表示媒体10と同じ利点を得ることができる。さらに、有色層610によれば、当該有色層610を備える基材600自体によって多様なデザインを表現できる。したがって、表示態様の自由度を高めることに効果的に貢献できる。また、有色層610によれば、基材600を透過する光の一部又は全部を遮ることができるので、表示層200の視認性を高めることができる。そして、このように表示層200の視認性が向上しても、小片層220を拡大観察をしないで視認することが難しいので、表示媒体20によれば、偽造の困難性を高めることは可能である。
【0121】
[3.第三実施形態]
表示媒体が備える基材は、円偏光分離機能を有していてもよい。このように円偏光分離機能を有する基材は、通常、円偏光分離機能を有する選択反射層を備える。以下、選択反射層を備える表示媒体の実施形態を説明する。
【0122】
図19は、本発明の第三実施形態に係る表示媒体30を、厚み方向から見た模式的な平面図である。また、図20は、本発明の第三実施形態に係る表示媒体30を、図19に示すXX-XX平面で切った断面を模式的に示す断面図である。さらに、図21は、本発明の第三実施形態に係る表示媒体30の、図19に示すXXI部分を拡大して模式的に示す拡大平面図である。第三実施形態において、第一実施形態で説明したのと同じ要素には、第一実施形態で用いたのと同じ符号を付して説明する。
【0123】
図19図21に示すように、本発明の第三実施形態に係る表示媒体30は、基材100の代わりに円偏光分離機能を有する基材700を備えること以外は、第一実施形態に係る表示媒体10と同じに設けられている。よって、表示媒体30は、基材700と、この基材700上に形成された表示層200とを備え、表示層200は、高い規則性で形成された複数の小片層220を含む。
【0124】
基材700は、支持層110に組み合わせて選択反射層710を備える。選択反射層710が円偏光分離機能を有するので、基材700が円偏光分離機能を獲得できる。本実施形態では、基材700が、選択反射層710及び支持層110を表示層200側からこの順に備える例を示して説明する。ただし、基材700は、支持層110及び選択反射層710を表示層200側からこの順に備えていてもよい。また、基材700は、支持層110を省略して、選択反射層710自体が表示層200を支持できるように設けてもよい。
【0125】
選択反射層710は、円偏光分離機能するので、当該円偏光分離機能を発揮できる波長範囲において、一方の回転方向Dの円偏光を反射し、その回転方向Dとは逆の回転方向の円偏光を透過させることができる。以下の説明では、このように選択反射層710が円偏光分離機能を発揮できる波長範囲を、適宜「基材反射範囲」ということがある。基材反射範囲における選択反射層710の非偏光に対する反射率は、通常35%~50%、好ましくは40%~50%である。
【0126】
表示層200に含まれる小片層220が円偏光分離機能を有する場合、選択反射層710が反射できる円偏光の回転方向Dは、小片層220が反射できる円偏光の回転方向Dと、同じでもよく、逆であってもよい。
【0127】
選択反射層710の基材反射範囲の波長幅は、広いことが好ましい。具体的な基材反射範囲の波長幅は、好ましくは70nm以上、より好ましくは100nm以上、更に好ましくは200nm以上、特に好ましくは400nm以上である。基材反射範囲の波長幅が広いことにより、選択反射層710によって反射できる円偏光の色の範囲を広くできる。このような選択反射層710は、彩度の低い色で視認されることができるので、彩度の高い色の表示層200を形成した場合に、その表示層200の視認性を向上させることができる。基材反射範囲の波長幅の上限は、特段の制限はないが、例えば、600nm以下でありうる。
【0128】
表示層200に含まれる小片層220が円偏光分離機能を有する場合、選択反射層710の基材反射範囲は、表示層200に含まれる小片層220の表示波長範囲と、重複していてもよく、重複していなくてもよい。重複している場合、基材反射範囲の一部と表示波長範囲の一部とが重複していてもよく、基材反射範囲の一部と表示波長範囲の全部とが重複していてもよく、基材反射範囲の全部と表示波長範囲の一部とが重複していてもよく、基材反射範囲の全部と表示波長範囲の全部とが重複していてもよい。中でも、基材反射範囲の一部と表示波長範囲の全部とが重複していることにより、基材反射範囲に表示波長範囲が含まれることが好ましい。この場合、非偏光下における表示層200の視認性を低くしながら、円偏光下における表示層200の視認性を高めることができる。例えば、選択反射層710が反射できる円偏光の回転方向Dと、表示層200に含まれる小片層220が反射できる円偏光の回転方向Dとが、逆である場合を仮定する。この場合、表示媒体30の表示層200側に非偏光が照射されると、選択反射層710及び表示層200の両方が円偏光の反射を生じる。このとき、基材反射範囲に表示波長範囲が含まれていると、表示層200があるエリアも無いエリアも、選択反射層710の色で視認されうる。よって、表示媒体30の表示層200側を観察した観察者には、表示層200の視認性は低い。しかし、表示媒体30に回転方向Dの円偏光が照射されると、選択反射層710が円偏光を反射しないが、表示層200が円偏光を反射する。よって、表示媒体30の表示層200側を観察した観察者は、表示層200が反射した円偏光を明瞭に視認できるので、表示層200の視認性を高めることができる。
【0129】
表示層200に含まれる小片層220が円偏光分離機能を有する場合、その小片層220の表示波長範囲の波長幅よりも、選択反射層710の基材反射範囲の波長幅の方が、広いことが好ましい。この場合、基材反射範囲に表示波長範囲が含まれうるので、非偏光下における表示層200の視認性を低くしながら、円偏光下における表示層200の視認性を高めることができる。
【0130】
選択反射層710の基材反射範囲は、可視波長範囲の全体を含むことが好ましい。よって、基材反射範囲の下限は400nm以下であることが好ましく、基材反射範囲の上限は780nm以上であることが好ましい。
【0131】
本発明の第三実施形態に係る表示媒体30によれば、第一実施形態で説明した表示媒体10と同じ利点を得ることができる。さらに、選択反射層710によれば、当該選択反射層710を備える基材700自体によって多様なデザインを表現できる。したがって、表示態様の自由度を高めることに効果的に貢献できる。また、選択反射層710によれば、基材700に光が照射された場合に、特定の回転方向Dを有する基材反射範囲の円偏光を選択的に反射することができる。よって、表示層200が面内レターデーションを有する小片層220を含む場合に、当該表示層200によって前記円偏光の偏光状態を調整して、多様な表示態様を実現することができる。
【0132】
例えば、表示層200に含まれる小片層220が1/4波長板として機能できる面内レターデーションを有する場合に、非偏光で表示媒体30が照らされた場合を仮定する。この場合、裸眼で表示媒体30を観察した観察者は、表示層200を視認することは難しい。しかし、直線偏光板を通して表示媒体30の表示層200側を観察した観察者は、直線偏光板の吸収軸と表示層200に含まれる小片層220の遅相軸とがなす角度が適切である場合には、表示層200を視認できる。
【0133】
また、例えば、表示層200に含まれる小片層220が1/4波長板として機能できる面内レターデーションを有する場合に、円偏光で表示媒体30の表示層200側が照らされた場合を仮定する。
表示媒体30を照らす円偏光の回転方向が、選択反射層710が反射できる円偏光の回転方向Dと同じである場合、表示層200が設けられていないエリアでは、選択反射層710はその円偏光を強い強度で反射できる。しかし、表示層200が設けられたエリアでは、表示層200によって円偏光が直線偏光に変換され、選択反射層710はその直線偏光を弱い強度でしか反射できない。よって、表示層200は、周囲よりも反射が弱い部分として視認できる。
他方、表示媒体30を照らす円偏光の回転方向が、選択反射層710が反射できる円偏光の回転方向Dと逆である場合、表示層200が設けられていないエリアでは、選択反射層710はその円偏光を反射できない。しかし、表示層200が設けられたエリアでは、表示層200によって円偏光が直線偏光に変換され、選択反射層710はその直線偏光を反射できる。よって、表示層200は、周囲よりも反射が強い部分として視認できる。
【0134】
さらに、例えば、表示層200に含まれる小片層220が1/2波長板として機能できる面内レターデーションを有する場合に、非偏光で表示媒体30が照らされた場合を仮定する。この場合、裸眼で表示媒体30を観察した観察者は、表示層200を視認することは難しい。しかし、適切な円偏光板を通して表示媒体30の表示層200側を観察した観察者は、表示層200を視認できる。
【0135】
また、例えば、表示層200に含まれる小片層220が1/2波長板として機能できる面内レターデーションを有する場合に、円偏光で表示媒体30の表示層200側が照らされた場合を仮定する。
表示媒体30を照らす円偏光の回転方向が、選択反射層710が反射できる円偏光の回転方向Dと同じである場合、表示層200が設けられていないエリアでは、選択反射層710はその円偏光を反射できる。しかし、表示層200が設けられたエリアでは、表示層200を通ることによって円偏光の回転方向が逆になり、選択反射層710はその円偏光を反射できない。よって、表示層200は、周囲よりも反射が弱いか無い部分として視認できる。
他方、表示媒体30を照らす円偏光の回転方向が、選択反射層710が反射できる円偏光の回転方向Dと逆である場合、表示層200が設けられていないエリアでは、選択反射層710はその円偏光を反射できない。しかし、表示層200が設けられたエリアでは、表示層200を通ることによって円偏光の回転方向が逆になり、選択反射層710はその円偏光を反射できる。よって、表示層200は、周囲よりも反射が強い部分として視認できる。
【0136】
前記のように、本実施形態に係る表示媒体30は、多様な表示態様の実現に貢献できる。そして、このように表示態様の多様化がなされた場合でも、小片層220を拡大観察をしないで視認することが難しいので、表示媒体30によれば、偽造の困難性を高めることは可能である。
【0137】
前記の第三実施形態では、基材700が有色層(第二実施形態を参照)を備えていなかったが、基材700は選択反射層710に組み合わせて有色層を備えていてもよい。
【0138】
[4.その他の実施形態]
上述した実施形態では、一つの基材上に一つの表示層のみが設けられた例を示して説明したが、一つの基材上に複数の表示層が設けられていてもよい。また、複数の表示層は、同じでもよく、異なっていてもよい。よって、例えば、(i)厚み方向から見た表示層の形状、(ii)厚み方向から見た表示層のサイズ、(iii)厚み方向から見た小片層の配列方向、(iv)厚み方向から見た小片層の形状、(v)厚み方向から見た小片層のサイズ、(vi)小片層の厚み、(vii)小片層の面内レターデーション、(viii)小片層の波長分散性、(ix)小片層の位相差板としてのタイプ、(x)小片層の遅相軸方向、(xi)小片層の表示波長範囲、(xii)小片層が反射できる円偏光の回転方向D、(xiii)小片層の材料、などの要素は、複数の表示層の間で、同じでもよく、異なっていてもよい。
【0139】
よって、例えば、表示媒体は、ある一の方向に遅相軸を有する第一群の小片層を含む第一の表示層と、その遅相軸とは非平行な方向に遅相軸を有する第二群の小片層を含む第二の表示層と、を備えていてもよい。
また、例えば、表示媒体は、ある回転方向の円偏光を反射できる第一の表示波長範囲を有する第一群の小片層を含む第一の表示層と、その逆の回転方向の円偏光を反射できる第二の表示波長範囲を有する第二群の小片層を含む第二の表示層と、を備えていてもよい。
【0140】
さらに、本発明の効果を著しく損なわない限り、表示媒体は、上述した以外の要素を含んでいてもよい。例えば、表示媒体は、金属反射層を備えていてもよい。このような金属反射層は、例えば、基材と表示層との間に設けられていてもよい。また、金属反射層は、表示層が設けられているエリアだけでなく、表示層が設けられていないエリアにも設けられていてもよい。
【0141】
また、例えば、表示媒体は、上述した各層を保護するカバー層を備えていてもよい。これらのカバー層は、上述した層の外側に設けられることが好ましい。具体例を挙げると、表示媒体は、カバー層、基材、表示層及びカバー層を、厚み方向でこの順に備えうる。このようなカバー層は、透明の材料によって形成でき、例えば樹脂によって形成できる。
【0142】
さらに、例えば、表示媒体は、本発明の効果を著しく損なわない限り、上述した各層の間、及び、表示媒体の最外層として、面内レターデーションが小さい任意の層を備えていてもよい。このように面内レターデーションが小さい任意の層を、以下「低Re層」ということがある。この低Re層の具体的な面内レターデーションは、通常0nm以上5nm以下である。低Re層は、光透過性が高いことが好ましく、当該低Re層の全光線透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上である。このような低Re層の材料としては、例えば、硬質ポリ塩化ビニル、軟質ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ガラス、ポリカーボネート(PC)、及びポリエチレンテレフタレート(PET)等が挙げられる。具体的な材料は、表示媒体の用途、求められる質感、耐久性、機械的強度に応じて、適切に選択しうる。
【0143】
[5.表示物品]
本発明の一実施形態に係る表示物品は、下地物品と、この下地物品に設けられた前記の表示媒体と、を備える。支持物品に表示媒体を設けることにより、表示媒体による表示態様を支持物品に付与できるので、デザイン性に優れた表示物品を得ることができる。
【0144】
支持物品は、表示媒体が設けられる対象であり、その範囲に制限は無い。支持物品の例としては、衣類等の布製品;カバン、靴等の皮革製品;ネジ等の金属製品;値札等の紙製品;カード、プラスチック紙幣類のプラスチック製品;タイヤ等のゴム製品;が挙げられるが、これらの例に限定されない。
【実施例
【0145】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り重量基準である。また、以下の操作は、別に断らない限り、常温常圧大気中にて行った。
以下の説明において、市販の接着剤としては、別に断らない限り、日東電工社製の透明延着テープ「LUCIACS CS9621T」(厚み25μm、可視光透過率90%以上、面内レターデーション3nm以下)を用いた。
【0146】
[面内レターデーション及び遅相軸方向の測定方法]
面内レターデーション及び遅相軸方向は、測定波長550nmにおいて、位相差計(Axometrics社製「Axoscan」)を用いて測定した。
【0147】
[実質最大傾斜角の測定方法]
液晶硬化層のレターデーションを、測定波長590nmで、位相差計(Axometrics社製「AxoScan」)を用いて測定した。この測定は、液晶硬化層に対する入射角を-50°~50°の範囲で変えて、複数回行った。この際、いずれの測定でも、測定方向は、液晶硬化層の進相軸に垂直に設定した。
【0148】
測定されたレターデーションから、前記の位相差計に付属の解析ソフトウェア(AxoMetrics社製の解析ソフトウェア「Multi-Layer Analysis」;解析条件は、解析波長590nm、層分割数20層)により、液晶硬化層に含まれる液晶性化合物の分子の実質最大傾斜角を解析した。
【0149】
[コレステリック液晶層の反射率の測定方法]
複層部材から仮支持体を剥離して、液晶硬化層を得た。この液晶硬化層に、非偏光(波長400nm~800nm)を入射したときの反射率を、紫外可視分光光度計(日本分光社製「UV-Vis 550」)を用いて測定した。
【0150】
[製造例1:複層部材(Q1)の製造]
国際公開第2017/057005号の実施例1に従い、熱可塑性ノルボルネン樹脂で形成された長尺のフィルムとしての仮支持体と、この仮支持体上に形成されたポジティブAプレートとしての液晶硬化層とを備える複層部材(Q1)を製造した。液晶硬化層の面内レターデーションRe=138nm、液晶硬化層の厚み=2.3μm、仮支持体の長手方向に対して液晶硬化層の遅層軸がなす角度は45°であった。液晶硬化層は、測定波長が増加するに伴い面内レターデーションが徐々に増加する逆波長分散特性を有していた。
【0151】
[製造例2:複層部材(Q2)の製造]
国際公開第2019/188519号の実施例1に従い、熱可塑性ノルボルネン樹脂で形成された長尺のフィルムとしての仮支持体と、この仮支持体上に形成された傾斜ハイブリッド配向プレートとしての液晶硬化層とを備える複層部材(Q2)を製造した。液晶硬化層の面内レターデーションRe=138nm、液晶硬化層の厚み=4.0μm、仮支持体の長手方向に対して液晶硬化層の遅層軸がなす角度は45°であった。また、液晶硬化層の実質最大傾斜角=63°であったことから、液晶硬化層の光軸方向が層平面に対して平行でも垂直でもないことが確認された。さらに、液晶硬化層は、測定波長が増加するに伴い面内レターデーションが徐々に増加する逆波長分散特性を有していた。
【0152】
[製造例3:複層部材(Q3)の製造]
液晶性化合物の種類をBASF社製「LC242」に変更し、1/4波長板として機能できる面内レターデーションが得られるように厚みを変更したこと以外は、製造例1と同じ方法により、熱可塑性ノルボルネン樹脂で形成された長尺のフィルムとしての仮支持体と、この仮支持体上に形成された液晶硬化層とを備える複層部材(Q3)を製造した。液晶硬化層の面内レターデーションRe=143nm、液晶硬化層の厚み=1.2μm、仮支持体の長手方向に対して液晶硬化層の遅層軸がなす角度は45°であった。液晶硬化層は、測定波長が増加するに伴い面内レターデーションが徐々に減少する順波長分散特性を有していた。
【0153】
[製造例4:複層部材(H1)の製造]
1/2波長板として機能できる面内レターデーションが得られるように厚みを変更したこと以外は、製造例3と同じ方法により、熱可塑性ノルボルネン樹脂で形成された長尺のフィルムとしての仮支持体と、この仮支持体上に形成された液晶硬化層とを備える複層部材(H1)を製造した。液晶硬化層の面内レターデーションRe=280nm、液晶硬化層の厚み=2.4μm、仮支持体の長手方向に対して液晶硬化層の遅層軸がなす角度は45°であった。液晶硬化層は、測定波長が増加するに伴い面内レターデーションが徐々に減少する順波長分散特性を有していた。
【0154】
[製造例5:複層部材(H2)の製造]
液晶性化合物の種類を下記式(X1)に示すものに変更し、1/2波長板として機能できる面内レターデーションが得られるように厚みを変更したこと以外は、製造例4と同じ方法により、熱可塑性ノルボルネン樹脂で形成された長尺のフィルムとしての仮支持体と、この仮支持体上に形成された液晶硬化層とを備える複層部材(H2)を製造した。液晶硬化層の面内レターデーションRe=275nm、液晶硬化層の厚み=1.2μm、仮支持体の長手方向に対して液晶硬化層の遅層軸がなす角度は45°であった。液晶硬化層は、測定波長が増加するに伴い液晶硬化層が徐々に減少する順波長分散特性を有していた。
【0155】
【化1】
【0156】
[製造例6:複層部材(CLC_W)の製造]
前記式(X1)で表される光重合性の液晶性化合物100部と、下記式(X2)で表される光重合性の非液晶性化合物25部と、カイラル剤(BASF社製「LC756」)8部と、光重合開始剤(チバ・ジャパン社製「イルガキュア907」)5部と、界面活性剤(AGCセイミケミカル社製「S-420」)0.15部と、溶媒としてのシクロペンタノン320部とを混合して、液晶組成物を調製した。
【0157】
【化2】
【0158】
仮支持体として、長尺のポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製「A4100」;厚み100μm)を用意した。この仮支持体をフィルム搬送装置の繰り出し部に取り付け、当該仮支持体を長尺方向に搬送しながら、以下の操作を行った。
【0159】
該仮支持体の表面に、搬送方向と平行な長尺方向へラビング処理を施した。次に、ラビング処理を施した該仮支持体の面に、ダイコーターを用いて液晶組成物を塗工して、液晶組成物の層を形成した。この液晶組成物の層に、120℃で4分間加熱する配向処理を施して、液晶組成物がコレステリック液晶相を呈するように配向させた。その後、液晶組成物の層に、広帯域化処理を施した。この広帯域化処理では、5mJ/cm~30mJ/cmの弱い紫外線の照射と100℃~120℃の加温処理とを交互に複数回繰り返すことで、円偏光分離機能を発揮できる波長範囲が所望の波長幅を有するように制御した。その後、800mJ/cmの紫外線を液晶組成物の層に照射して、液晶組成物の層を硬化させた。これにより、仮支持体と円偏光分離機能を有する液晶硬化層とを備える複層部材(CLC_W)を得た。この複層部材(CLC_W)の液晶硬化層の反射率を、上述した測定方法で測定した。測定の結果、液晶硬化層は、450nmから700nmまでの波長範囲に、非偏光に対する反射率が40%以上となる波長範囲を有していた。液晶硬化層の厚みは、5.2μmであった。
【0160】
[製造例7:複層部材(CLC_R)の製造]
カイラル剤(BASF社製「LC756」)の量を7部に変更したこと、及び、広帯域化処理を実施しなかったこと以外は、製造例6と同じ方法により、仮支持体と円偏光分離機能を有する液晶硬化層とを備える複層部材(CLC_R)を製造した。この複層部材(CLC_R)の液晶硬化層の反射率を、上述した測定方法で測定した。測定の結果、液晶硬化層は、650nm付近に中心波長を有し、半値幅が20nm程度の波長範囲に、非偏光に対する反射率が40%以上となる波長範囲を有していた。この液晶硬化層を自然光の下で目視で観察したところ、赤色で視認された。液晶硬化層の厚みは、3.5μmであった。
【0161】
[製造例8:複層部材(CLC_G)の製造]
広帯域化処理を実施しなかったこと以外は、製造例6と同じ方法により、仮支持体と円偏光分離機能を有する液晶硬化層とを備える複層部材(CLC_G)を製造した。この複層部材(CLC_G)の液晶硬化層の反射率を、上述した測定方法で測定した。測定の結果、液晶硬化層は、550nm付近に中心波長を有し、半値幅が20nm程度の波長範囲に、非偏光に対する反射率が40%以上となる波長範囲を有していた。この液晶硬化層を自然光の下で目視で観察したところ、緑色で視認された。液晶硬化層の厚みは、3.5μmであった。
【0162】
[製造例9:複層部材(CLC_rG)の製造]
カイラル剤(BASF社製「LC756」)8部の代わりに下記式(X3)で表される化合物(X3)16部を用いたこと、及び、広帯域化処理を実施しなかったこと以外は、製造例6と同じ方法により、仮支持体と円偏光分離機能を有する液晶硬化層とを備える複層部材(CLC_rG)を製造した。この複層部材(CLC_rG)の液晶硬化層の反射率を、上述した測定方法で測定した。測定の結果、液晶硬化層は、550nm付近に中心波長を有し、半値幅が20nm程度の波長範囲に、非偏光に対する反射率が40%以上となる波長範囲を有していた。この液晶硬化層を自然光の下で目視で観察したところ、緑色で視認された。液晶硬化層の厚みは、3.5μmであった。
【0163】
【化3】
(化合物名)
D-マンニトール,1,4:3,6-ジヒドロ-,2,5-ビス[4-[[[6-[[[4-[(1-オキソ-2-プロペン-1-イル)オキシ]ブトキシ]カルボニル]オキシ]-2-ナフタレニル]カルボニル]オキシ]ベンゾエート]
【0164】
[製造例10:複層部材(CLC_B)の製造]
カイラル剤(BASF社製「LC756」)の量を10部に変更したこと、及び、広帯域化処理を実施しなかったこと以外は、製造例6と同じ方法により、仮支持体と円偏光分離機能を有する液晶硬化層とを備える複層部材(CLC_B)を製造した。この複層部材(CLC_B)の液晶硬化層の反射率を、上述した測定方法で測定した。測定の結果、液晶硬化層は、450nm付近に中心波長を有し、半値幅が20nm程度の波長範囲に、非偏光に対する反射率が40%以上となる波長範囲を有していた。この液晶硬化層を自然光の下で目視で観察したところ、青色で視認された。液晶硬化層の厚みは、3.5μmであった。
【0165】
[製造例11:位相差フィルム(R1)の製造]
熱可塑性ノルボルネン樹脂で形成された樹脂フィルム(日本ゼオン社製「ZEONORフィルム」;押出成形によって製造されたフィルム。未延伸品)を用意した。この樹脂フィルムを、延伸温度130℃で一方向に延伸して、1/2波長板として機能できる面内レターデーションを有する位相差フィルム(R1)を得た。この位相差フィルム(R1)の厚みは38μm、面内レターデーションは280nmであった。
【0166】
[製造例12:位相差フィルム(R2)の製造]
1/4波長板として機能できる面内レターデーションが得られるように延伸倍率を変更したこと以外は、製造例11と同じ方法により、位相差フィルム(R2)を製造した。この位相差フィルム(R2)の厚みは47μm、面内レターデーションは143nmであった。
【0167】
[製造例13:円偏光選択反射フィルム(D)の製造]
3M社製の直線偏光選択反射フィルム「DBEF」上に、製造例12で製造した位相差フィルム(R2)を、市販の接着剤を介して貼り合わせて、円偏光選択反射フィルム(D)を製造した。前記の貼り合わせは、円偏光選択反射フィルム(D)が右回りの円偏光を選択的に反射できるように、位相差フィルム(R2)の遅相軸の向きを調整して行った。
【0168】
[実施例101]
(表示媒体の概要説明)
図22は、実施例101で製造した表示媒体800を模式的に示す平面図である。また、図23は、実施例101で製造した表示媒体800を模式的に示す断面図である。
図22及び図23に示すように、実施例101で製造した表示媒体800は、基材810上に、接着剤層820を介して、表示層830を備えていた。表示層830は、厚み方向から見て、太さが略7mmのブロック体の文字「T」の形状を有していた。以下、この表示媒体800の製造方法を説明する。
【0169】
(原反部材の製造)
製造例1で製造した複層部材(Q1)の液晶硬化層に、下記の3mm角クロスカット法により、刻み目を形成した。
<3mm角クロスカット法>
3mm角クロスカット法では、加工装置(TQC社製「Cross Cut Adhesion TestKIT CC3000」)を用いて、JIS-K5600-5-6に準拠した方法で、液晶硬化層に直線状に複数の刻み目を形成した。この刻み目は、互いに垂直な2方向に、3mm間隔で形成した。また、刻み目の深さは、液晶硬化層の厚みより深く、且つ、仮支持体を完全には切断しないように調整した。刻み目の深さの調整は、前記の加工装置の刃の切り込み深さを調整することにより、行った。
【0170】
前記の3mm角クロスカット法による刻み目の形成により、液晶硬化層に亀裂が形成されて、当該亀裂により区分された多数の小片層が得られた。よって、仮支持体と、この仮支持体上に形成された多数の小片層を含む転写材層とを備える原反部材を得た。小片層は、互いに垂直な2方向に並んでおり、いずれも、厚み方向から見て3mm角の正方形であった。
【0171】
(基材の表面での潜像の形成)
基材として、熱可塑性ノルボルネン樹脂で形成された長尺のフィルム(厚み100μm)を用意した。この基材の表面の文字「T」の形状のエリアに、接着剤層を形成した。具体的には、粘着力を有する市販の接着剤を、文字「T」の形状に切り取り、この切り取られた接着剤層を基材に貼り付けた。これにより、基材の表面に、接着剤層によって文字「T」の潜像が形成された。
【0172】
(表示層の形成)
潜像を形成された基材と、原反部材とを、長手方向に搬送しながら、ロールトゥロール法で貼り合わせた。具体的には、基材の接着剤層側の面と、原反部材の転写材層側の面とを、ニップロールによって貼り合わせた。その後、原反部材の仮支持体を剥離した。基材上の接着剤層が無いエリアでは、転写材層に含まれる小片層は、基材上に残らず、仮支持体と一緒に剥離された。基材上の接着剤層が形成されたエリアでは、転写材層に含まれる小片層は、基材上に残り、仮支持体だけが剥離された。よって、基材上には、接着剤層が形成されていた文字「T」の形状のエリアに、選択的に、接着剤層を介して複数の小片層が設けられた。そして、これら小片層の集合として、厚み方向から見て文字「T」の形状を有する表示層が形成された。これにより、図22及び図23に示すように、基材810と、この基材810上に接着剤層820を介して設けられた表示層830とを備える表示媒体800を得た。
【0173】
[実施例102]
工程(原反部材の製造)において、液晶硬化層への刻み目の形成方法を、3mm角クロスカット法から下記の50μm角ロールプレス法に変更した。
<50μm角ロールプレス法>
50μm角ロールプレス法では、国際公開第2019/189246号の実施例1に記載の方法で、液晶硬化層に直線状に複数の刻み目を形成した。この刻み目は、互いに垂直な2方向に、50μm間隔で形成した。また、刻み目の深さは、液晶硬化層の厚みより深く、且つ、仮支持体を完全には切断しないように調整した。刻み目の深さの調整は、プレス圧を調整することにより行った。前記の50μm角ロールプレス法によって得られた原反部材が備える複数の小片層は、互いに垂直な2方向に並んでおり、いずれも、厚み方向から見て50μm角の正方形であった。
【0174】
以上の事項以外は、実施例101と同じ方法により、基材と、この基材上に接着剤層を介して設けられた表示層とを備える表示媒体を得た。
【0175】
[実施例103]
工程(原反部材の製造)において、液晶硬化層への刻み目の形成方法を、3mm角クロスカット法から下記の20μm角ロールプレス法に変更した。
<20μm角ロールプレス法>
20μm角ロールプレス法では、刻み目の間隔を50μmから20μmに変更したこと以外は、50μm角ロールプレス法と同じ方法により、液晶硬化層に複数の刻み目を形成した。前記の20μm角ロールプレス法によって得られた原反部材が備える複数の小片層は、互いに垂直な2方向に並んでおり、いずれも、厚み方向から見て20μm角の正方形であった。
【0176】
以上の事項以外は、実施例101と同じ方法により、基材と、この基材上に接着剤層を介して設けられた表示層とを備える表示媒体を得た。
【0177】
[実施例104]
製造例1で製造した複層部材(Q1)の代わりに、製造例2で製造した複層部材(Q2)を用いた。また、工程(原反部材の製造)において、液晶硬化層への刻み目の形成方法を、3mm角クロスカット法から20μm角ロールプレス法に変更した。以上の事項以外は、実施例101と同じ方法により、基材と、この基材上に接着剤層を介して設けられた表示層とを備える表示媒体を得た。
【0178】
[実施例105~112]
製造例1で製造した複層部材(Q1)の代わりに、表1に示す複層部材を用いた。また、工程(原反部材の製造)において、液晶硬化層への刻み目の形成方法を、3mm角クロスカット法から50μm角ロールプレス法に変更した。以上の事項以外は、実施例101と同じ方法により、基材と、この基材上に接着剤層を介して設けられた表示層とを備える表示媒体を得た。
【0179】
[比較例1]
製造例12で製造した位相差フィルム(R2)の片面に接着剤層を形成した。その後、位相差フィルム(R2)を切り抜いて、太さが略7mmのブロック体の文字「T」の形状を有するフィルム片を得た。このフィルム片の粘着剤層側の面と、実施例101で用いたのと同じ基材とを、バッチ処理で貼り合わせた。これにより、基材と、この基材上に接着剤層を介して設けられた位相差フィルム(R2)のフィルム片からなる表示層を備える表示媒体を得た。
【0180】
[比較例2]
製造例12で製造した位相差フィルム(R2)の代わりに、製造例11で製造した位相差フィルム(R1)を用いたこと以外は、比較例1と同じ方法により、基材と、この基材上に接着剤層を介して設けられた位相差フィルム(R1)のフィルム片からなる表示層とを備える表示媒体を得た。
【0181】
[比較例3]
製造例12で製造した位相差フィルム(R2)の代わりに、製造例13で製造した円偏光選択反射フィルム(D)を用いたこと以外は、比較例1と同じ方法により、基材と、この基材上に接着剤層を介して設けられた円偏光選択反射フィルム(D)のフィルム片からなる表示層とを備える表示媒体を得た。
【0182】
[実施例101~112及び比較例1~3構成のまとめ]
上述した実施例101~112及び比較例1~3の構成を、下記の表1にまとめた。下記表1において、略称の意味は、下記の通りである。
Re:表示層及び小片層の面内レターデーション。
分散:表示層及び小片層の波長分散性。
反射色:円偏光分離機能を有する表示層及び小片層が反射する円偏光の色。
反射偏光:円偏光分離機能を有する表示層及び小片層が反射する円偏光の回転方向。
形状:小片層の形状。
サイズ:小片層の幅。
R:赤色。
G:緑色。
B:青色。
【0183】
【表1】
【0184】
[実施例101~112及び比較例1~3で得た表示媒体の観察]
実施例101~112及び比較例1~3で得た表示媒体を、後述する観察方法1~4で観察した。
【0185】
(観察方法1:表示層の透過クロスニコル観察)
非偏光光源としての蛍光灯を備えるバックライト上に、市販の直線偏光板2枚を重ねて置いた。2枚の直線偏光板は、互いの吸収軸が厚み方向から見て直交するクロスニコル配置となるように置いた。これら2枚の直線偏光板の間に、実施例101~105並びに比較例1で得た表示媒体を置いた。表示媒体は、表示層の遅相軸方向及び当該表示層に含まれる小片層の遅相軸方向が、直線偏光板の吸収軸に対して45°の角度をなすように設定した。その後、バックライトを点灯させて、表示媒体を透過した光を観察し、表示層の像が可視か不可視かを判定した。
【0186】
(観察方法2:表示層の透過パラニコル観察)
非偏光光源として蛍光灯を備えるバックライト上に、市販の直線偏光板2枚を重ねて置いた。2枚の直線偏光板は、互いの吸収軸が厚み方向から見て平行なパラニコル配置となるように置いた。これら2枚の直線偏光板の間に、実施例106~107並びに比較例2で得た表示媒体を置いた。表示媒体は、表示層の遅相軸方向及び当該表示層に含まれる小片層の遅相軸方向が、直線偏光板の吸収軸に対して45°の角度をなすように設定した。その後、バックライトを点灯させて表示媒体を透過した光を観察し、表示層の像が可視か不可視かを判定した。
【0187】
(観察方法3:表示層の円偏光板観察)
非偏光光源としての蛍光灯で実施例108~112及び比較例3で得た表示媒体を照らし、表示媒体で反射する光を観察した。前記の観察としては、(i)裸眼での観察、(ii)右円偏光板を通した観察、(iii)左円偏光板を通した観察、を行った。前記の右円偏光板及び左円偏光板としては、3Dテレビの鑑賞で用いられるメガネ形状の右円偏光板(正の円偏光板)及び左円偏光板(逆の円偏光板)を用いた。これらの観察において、表示層の像が可視か不可視かを判定した。
【0188】
(観察方法4:小片層の観察)
表示媒体の表示層を、(i)裸眼及び(ii)顕微鏡で観察して、当該表示層に含まれる小片層が可視か不可視かを判定した。
【0189】
[実施例101~112及び比較例1~3の結果]
実施例101~112及び比較例1~3の結果を、下記の表2に示す。
【0190】
【表2】
【0191】
[実施例101~112及び比較例1~3の検討]
表1及び表2より、実施例101~105及び比較例1で得られた表示媒体の表示層は、クロスニコル観察において可視となりえ、また、実施例106~107及び比較例2で得られた表示媒体の表示層は、パラニコル観察において可視となりえる。また、実施例108~112及び比較例3で得られた表示媒体の表示層は、右円偏光板及び左円偏光板のうち、一方を通した観察では可視となり、他方を通した観察では不可視となる。よって、これらの表示媒体を用いれば、実に多様な表示特性を有することが明らかである。
【0192】
なかでも、実施例で得られた表示媒体は、いずれもロールトゥロール法による安価な転写法を用いた製造が可能である。他方、比較例で得られた表示媒体は、ロールトゥロール法による製造ができず、バッチ処理による貼合を行うことが求められるので、コスト的に不利である。
【0193】
また、実施例で得られた表示媒体は、いずれも、表示層が均一な形状で規則性を持って配列された小片層を含むので、製造の困難性が向上しており、よって偽造の困難性も向上している。特に、実施例102~112で得られた表示媒体の表示層は、裸眼では視認できないので、当該小片層があること自体を気付くことが難しい。よって、このようにサイズが小さい小片層を含む表示媒体は、偽造の困難性を特に向上させることが可能である。このように偽造の困難性を向上させられるとの効果は、小片層を含まない比較例1~3の表示媒体では得られないことから、有用である。
【0194】
[実施例201]
(基材の製造)
製造例6で製造した複層部材(CLC_W)の仮支持体側の面に、黒色の紙を貼り合わせて有色層を形成して、有色層、仮支持体としての支持層、及び、円偏光分離機能を有する液晶硬化層をこの順で備える長尺の基材を得た。
【0195】
(基材の表面での潜像の形成)
前記の基材の液晶硬化層側の表面の文字「T」の形状のエリアに、接着剤層を形成した。これにより、基材の表面に、接着剤層によって文字「T」の潜像が形成された。
【0196】
(表示層の形成)
潜像を形成された基材と、実施例102で製造した原反部材とを、長手方向に搬送しながら、ロールトゥロール法で貼り合わせた。具体的には、基材の接着剤層側の面と、原反部材の転写材層側の面とを、ニップロールによって貼り合わせた。その後、原反部材の仮支持体を剥離した。基材上には、接着剤層が形成されていた文字「T」の形状のエリアに、選択的に、接着剤層を介して複数の小片層が設けられた。そして、これら小片層の集合として、厚み方向から見て文字「T」の形状を有する第一表示層が形成された。これにより、基材と、この基材上に接着剤層を介して設けられた第一表示層とを備える表示媒体を得た。
【0197】
[実施例202]
(第二表示層を形成するための原反部材の製造)
仮支持体として用いる長尺のフィルムの延伸方向を変更したこと以外は、製造例1と同じ方法により、仮支持体と、この仮支持体上に形成された液晶硬化層とを備える複層部材(Q1-1)を製造した。液晶硬化層の面内レターデーションRe=138nm、液晶硬化層の厚み=2.3μm、仮支持体の長手方向に対して液晶硬化層の遅層軸がなす角度は135°であった。液晶硬化層は、測定波長が増加するに伴い面内レターデーションが徐々に増加する逆波長分散特性を有していた。
【0198】
この複層部材(Q1-1)の液晶硬化層に、50μm角ロールプレス法により、刻み目を形成して、仮支持体と、この仮支持体上に形成された多数の小片層を含む転写材層とを備える原反部材を得た。
【0199】
(基材の表面での第二表示層用の潜像の形成)
実施例201と同じ方法で表示媒体を製造した。この表示媒体が備える基材の第一表示層側の表面の、文字「T」の形状のエリアに、接着剤層を形成した。この際、接着剤層は、第一表示層とは重ならないように形成した。これにより、基材の表面に、接着剤層によって、第二表示層用の潜像が形成された。
【0200】
(第二表示層の形成)
第二表示層用の潜像を形成された表示媒体と、原反部材とを、長手方向に搬送しながら、ロールトゥロール法で貼り合わせた。具体的には、表示媒体の接着剤層側の面と、原反部材の転写材層側の面とを、ニップロールによって貼り合わせた。その後、原反部材の仮支持体を剥離した。基材上には、接着剤層が形成されていた文字「T」の形状のエリアに、選択的に、接着剤層を介して複数の小片層が設けられた。そして、これら小片層の集合として、厚み方向から見て文字「T」の形状を有する第二表示層が形成された。これにより、有色層、仮支持体、及び、円偏光分離機能を有する液晶硬化層をこの順で備える長尺の基材と、この基材上に接着剤層を介して設けられた第一表示層及び第二表示層とを備える表示媒体を得た。
【0201】
[実施例203]
(第三表示層を形成するための原反部材の製造)
仮支持体として用いる長尺のフィルムの延伸方向を変更したこと以外は、製造例1と同じ方法により、仮支持体と、この仮支持体上に形成された液晶硬化層とを備える複層部材(Q1-2)を製造した。液晶硬化層の面内レターデーションRe=138nm、液晶硬化層の厚み=2.3μm、仮支持体の長手方向に対して液晶硬化層の遅層軸がなす角度は180°であった。液晶硬化層は、測定波長が増加するに伴い面内レターデーションが徐々に増加する逆波長分散特性を有していた。
【0202】
この複層部材(Q1-2)の液晶硬化層に、50μm角ロールプレス法により、刻み目を形成して、仮支持体と、この仮支持体上に形成された多数の小片層を含む転写材層とを備える原反部材を得た。
【0203】
(基材の表面での第三表示層用の潜像の形成)
実施例202と同じ方法で表示媒体を製造した。この表示媒体が備える基材の第一表示層側の表面の、文字「T」の形状のエリアに、接着剤層を形成した。この際、接着剤層は、第一表示層及び第二表示層とは重ならないように形成した。これにより、基材の表面に、接着剤層によって、第三表示層用の潜像が形成された。
【0204】
(第三表示層の形成)
第三表示層用の潜像を形成された表示媒体と、原反部材とを、長手方向に搬送しながら、ロールトゥロール法で貼り合わせた。具体的には、表示媒体の接着剤層側の面と、原反部材の転写材層側の面とを、ニップロールによって貼り合わせた。その後、原反部材の仮支持体を剥離した。基材上には、接着剤層が形成されていた文字「T」の形状のエリアに、選択的に、接着剤層を介して複数の小片層が設けられた。そして、これら小片層の集合として、厚み方向から見て文字「T」の形状を有する第三表示層が形成された。これにより、有色層、仮支持体、及び、円偏光分離機能を有する液晶硬化層をこの順で備える長尺の基材と、この基材上に接着剤層を介して設けられた第一表示層、第二表示層及び第三表示層とを備える表示媒体を得た。
【0205】
[実施例204]
実施例102で製造した原反部材の代わりに、実施例106で製造した原反部材を用いたこと以外は、実施例201と同じ方法により、有色層、仮支持体、及び、円偏光分離機能を有する液晶硬化層をこの順で備える長尺の基材と、この基材上に接着剤層を介して設けられた第一表示層とを備える表示媒体を得た。
【0206】
[実施例205]
(第二表示層を形成するための原反部材の製造)
仮支持体として用いる長尺のフィルムの延伸方向を変更したこと以外は、製造例4と同じ方法により、仮支持体と、この仮支持体上に形成された液晶硬化層とを備える複層部材(H1-1)を製造した。液晶硬化層の面内レターデーションRe=280nm、液晶硬化層の厚み=2.4μm、仮支持体の長手方向に対して液晶硬化層の遅層軸がなす角度は135°であった。液晶硬化層は、測定波長が増加するに伴い面内レターデーションが徐々に減少する順波長分散特性を有していた。
【0207】
この複層部材(H1-1)の液晶硬化層に、50μm角ロールプレス法により、刻み目を形成して、仮支持体と、この仮支持体上に形成された多数の小片層を含む転写材層とを備える原反部材を得た。
【0208】
(基材の表面での第二表示層用の潜像の形成)
実施例204と同じ方法で表示媒体を製造した。この表示媒体が備える基材の第一表示層側の表面の、文字「T」の形状のエリアに、接着剤層を形成した。この際、接着剤層は、第一表示層とは重ならないように形成した。これにより、基材の表面に、接着剤層によって、第二表示層用の潜像が形成された。
【0209】
(第二表示層の形成)
第二表示層用の潜像を形成された表示媒体と、原反部材とを、長手方向に搬送しながら、ロールトゥロール法で貼り合わせた。具体的には、表示媒体の接着剤層側の面と、原反部材の転写材層側の面とを、ニップロールによって貼り合わせた。その後、原反部材の仮支持体を剥離した。基材上には、接着剤層が形成されていた文字「T」の形状のエリアに、選択的に、接着剤層を介して複数の小片層が設けられた。そして、これら小片層の集合として、厚み方向から見て文字「T」の形状を有する第二表示層が形成された。これにより、有色層、仮支持体、及び、円偏光分離機能を有する液晶硬化層をこの順で備える長尺の基材と、この基材上に接着剤層を介して設けられた第一表示層及び第二表示層とを備える表示媒体を得た。
【0210】
[実施例206]
第二表示層用の原反部材として実施例102で製造した原反部材を用いたこと以外は、実施例205と同じ方法により、有色層、仮支持体、及び、円偏光分離機能を有する液晶硬化層をこの順で備える長尺の基材と、この基材上に接着剤層を介して設けられた第一表示層及び第二表示層とを備える表示媒体を得た。
【0211】
[実施例207]
(基材の製造)
熱可塑性ノルボルネン樹脂で形成された光学等方性の長尺フィルム(厚み100μm)の片面に、黒色の紙を貼り合わせて有色層を形成して、有色層及びフィルム層を備える長尺の基材を得た。
【0212】
(基材の表面での潜像の形成)
前記の基材のフィルム層側の表面の文字「T」の形状のエリアに、接着剤層を形成した。これにより、基材の表面に、接着剤層によって文字「T」の潜像が形成された。
【0213】
(表示層の形成)
潜像を形成された基材と、実施例109で製造した原反部材とを、長手方向に搬送しながら、ロールトゥロール法で貼り合わせた。具体的には、基材の接着剤層側の面と、原反部材の転写材層側の面とを、ニップロールによって貼り合わせた。その後、原反部材の仮支持体を剥離した。基材上には、接着剤層が形成されていた文字「T」の形状のエリアに、選択的に、接着剤層を介して複数の小片層が設けられた。そして、これら小片層の集合として、厚み方向から見て文字「T」の形状を有する第一表示層が形成された。これにより、基材と、この基材上に接着剤層を介して設けられた第一表示層とを備える表示媒体を得た。
【0214】
[実施例208]
(基材の表面での第二表示層用の潜像の形成)
実施例207と同じ方法で表示媒体を製造した。この表示媒体が備える基材の第一表示層側の表面の、文字「T」の形状のエリアに、接着剤層を形成した。この際、接着剤層は、第一表示層とは重ならないように形成した。これにより、基材の表面に、接着剤層によって、第二表示層用の潜像が形成された。
【0215】
(第二表示層の形成)
第二表示層用の潜像を形成された表示媒体と、実施例110で製造した原反部材とを、長手方向に搬送しながら、ロールトゥロール法で貼り合わせた。具体的には、表示媒体の接着剤層側の面と、原反部材の転写材層側の面とを、ニップロールによって貼り合わせた。その後、原反部材の仮支持体を剥離した。基材上には、接着剤層が形成されていた文字「T」の形状のエリアに、選択的に、接着剤層を介して複数の小片層が設けられた。そして、これら小片層の集合として、厚み方向から見て文字「T」の形状を有する第二表示層が形成された。これにより、有色層及びフィルム層を備える長尺の基材と、この基材上に接着剤層を介して設けられた第一表示層及び第二表示層とを備える表示媒体を得た。
【0216】
[実施例209]
実施例109で製造した原反部材の代わりに、実施例112で製造した原反部材を用いたこと以外は、実施例207と同じ方法により、有色層及びフィルム層を備える長尺の基材と、この基材上に接着剤層を介して設けられた第一表示層とを備える表示媒体を得た。
【0217】
[実施例210]
(基材の表面での第二表示層用の潜像の形成)
実施例209と同じ方法で表示媒体を製造した。この表示媒体が備える基材の第一表示層側の表面の、文字「T」の形状のエリアに、接着剤層を形成した。この際、接着剤層は、第一表示層とは重ならないように形成した。これにより、基材の表面に、接着剤層によって、第二表示層用の潜像が形成された。
【0218】
(第二表示層の形成)
第二表示層用の潜像を形成された表示媒体と、実施例110で製造した原反部材とを、長手方向に搬送しながら、ロールトゥロール法で貼り合わせた。具体的には、表示媒体の接着剤層側の面と、原反部材の転写材層側の面とを、ニップロールによって貼り合わせた。その後、原反部材の仮支持体を剥離した。基材上には、接着剤層が形成されていた文字「T」の形状のエリアに、選択的に、接着剤層を介して複数の小片層が設けられた。そして、これら小片層の集合として、厚み方向から見て文字「T」の形状を有する第二表示層が形成された。これにより、有色層及びフィルム層を備える長尺の基材と、この基材上に接着剤層を介して設けられた第一表示層及び第二表示層とを備える表示媒体を得た。
【0219】
[実施例211]
実施例102で製造した原反部材の代わりに、実施例105で製造した原反部材を用いたこと以外は、実施例201と同じ方法により、有色層、仮支持体、及び、円偏光分離機能を有する液晶硬化層をこの順で備える長尺の基材と、この基材上に接着剤層を介して設けられた第一表示層とを備える表示媒体を得た。
【0220】
[実施例212]
実施例102で製造した原反部材の代わりに、実施例104で製造した原反部材を用いたこと以外は、実施例201と同じ方法により、有色層、仮支持体、及び、円偏光分離機能を有する液晶硬化層をこの順で備える長尺の基材と、この基材上に接着剤層を介して設けられた第一表示層とを備える表示媒体を得た。
【0221】
[比較例4]
製造例12で製造した位相差フィルム(R2)の片面に接着剤層を形成した。その後、位相差フィルム(R2)を切り抜いて、太さが略7mmのブロック体の文字「T」の形状を有するフィルム片を得た。このフィルム片の粘着剤層側の面と、実施例201で製造した基材とを、バッチ処理で貼り合わせた。これにより、有色層、仮支持体、及び、円偏光分離機能を有する液晶硬化層をこの順で備える基材と、この基材上に接着剤層を介して設けられた位相差フィルム(R2)のフィルム片からなる第一表示層とを備える表示媒体を得た。
【0222】
[比較例5]
製造例12で製造した位相差フィルム(R2)の代わりに、製造例11で製造した位相差フィルム(R1)を用いたこと以外は、比較例4と同じ方法により、有色層、仮支持体、及び、円偏光分離機能を有する液晶硬化層をこの順で備える基材と、この基材上に接着剤層を介して設けられた位相差フィルム(R1)のフィルム片からなる第一表示層とを備える表示媒体を得た。
【0223】
[比較例6]
製造例13で製造した円偏光選択反射フィルム(D)の片面に接着剤層を形成した。その後、円偏光選択反射フィルム(D)を切り抜いて、太さが略7mmのブロック体の文字「T」の形状を有するフィルム片を得た。このフィルム片の粘着剤層側の面と、実施例207で製造した基材とを、バッチ処理で貼り合わせた。これにより、有色層及びフィルム層を備える基材と、この基材上に接着剤層を介して設けられた円偏光選択反射フィルム(D)のフィルム片からなる第一表示層とを備える表示媒体を得た。
【0224】
[実施例201~212及び比較例4~6の構成のまとめ]
上述した実施例201~212及び比較例4~6の構成を、下記の表3にまとめた。下記表3において、略称の意味は、下記の通りである。
CLC:円偏光分離機能を有する液晶硬化層。
Re:表示層及び小片層の面内レターデーション。
分散:表示層及び小片層の波長分散性。
θ:表示層及び小片層の遅相軸が基材の長手方向に対してなす角度。
色:円偏光分離機能を有する表示層及び小片層が反射する円偏光の色。
反射偏光:円偏光分離機能を有する表示層及び小片層が反射する円偏光の回転方向。
【0225】
【表3】
【0226】
[実施例201~212及び比較例4~6で得た表示媒体の観察]
実施例201~212及び比較例4~6で得た表示媒体を、後述した観察方法5~8で観察した。
【0227】
(観察方法5:表示層の裸眼観察)
実施例201~212及び比較例4~6で得た表示媒体を、非偏光光源としての蛍光灯で照らし、表示媒体で反射する光を裸眼で観察した。前記の観察の際、表示層の像が可視か不可視かを判定した。
【0228】
(観察方法6:表示層の偏光サングラス観察)
実施例201~206、211及び212並びに比較例4~5で得た表示媒体を、厚み方向の回転軸を中心にして回転させながら、非偏光光源としての蛍光灯で照らし、表示媒体で反射する光を直線偏光板を通して観察した。直線偏光板としては、市販の偏光サングラスを用いた。前記の観察の際、表示層の像が可視か不可視かを判定した。1以上の回転角において見える場合は「可視」と判定し、全ての回転角で見えなかった場合は「不可視」と判定した。
【0229】
(観察方法7:表示層の偏光照射下での観察)
実施例201~203、211及び212並びに比較例4で得た表示媒体を直線偏光で照らし、表示媒体で反射する光を裸眼で観察した。前記の観察の際、表示層の色を判定した。
【0230】
(観察方法8:表示層の円偏光板観察)
非偏光光源としての蛍光灯で実施例204~210並びに比較例5~6で得た表示媒体を照らし、表示媒体で反射する光を観察した。前記の観察としては、(i)右円偏光板を通した観察、(ii)左円偏光板を通した観察、を行った。前記の右円偏光板及び左円偏光板としては、3Dテレビの鑑賞で用いられるメガネ形状の右円偏光板(正の円偏光板)及び左円偏光板(逆の円偏光板)を用いた。これらの観察において、表示層の像が可視か不可視かを判定した。
【0231】
(観察方法9:小片層の観察)
表示媒体の表示層を、(i)裸眼及び(ii)顕微鏡で観察して、当該表示層に含まれる小片層が可視か不可視かを判定した。
【0232】
[実施例201~212及び比較例4~6の結果]
実施例201~212及び比較例4~6の結果を、下記の表4に示す。表4の「裸眼」、「偏光サングラス」、「右円偏光板」及び「左円偏光板」の欄において、記号「I」、「II」及び「III」は、それぞれ、第一表示層、第二表示層及び第三表示層が可視であったことを表す。また、下記の表4では、表示層からの反射光が見えることで表示層の像が視認できた場合だけでなく、表示層が無いエリアの基材からの強い反射光が見える一方で表示層からの反射光が見えないか弱くしか見えないことで表示層の像が視認できた場合も、表示層の像が視認できたと判定している。
【0233】
【表4】
【0234】
[実施例201~212及び比較例4~6の検討]
表3及び表4より、実施例201~203、実施例206、及び実施例211~212、並びに比較例4は、偏光サングラス観察において可視となりえることが分かる。また、これらサンプルは、液晶ディスプライ及びスマートフォンの画面から出る偏光を照射することで、裸眼によっても可視となる場合があることも併せて判明した。
【0235】
実施例201と実施例211との比較において、表示層が含む小片層の波長分散が、逆波長分散性であるか順波長分散性であるかによって、視認される色味にバリエーションが出ることが判明した。
【0236】
実施例201と実施例212との比較において、表示層が含む小片層の光軸方向が層平面に対してなす角(傾斜角)の大きさに応じて、視認される像には観察方向毎に異なるバリエーションを付与できることが判明した。
【0237】
実施例204~205、実施例207~210、並びに比較例5~6は、円偏光板を通した観察によって、可視となったり、可視と不可視とが切り替わることが分かった。
【0238】
これら一連の実施例から、観察方法の違いによって多様な表示態様を実現できることが明らかである。加えて、実施例サンプルの表示層は、比較例サンプルの表示層には無い小片層を含んでいる。この小片層により、偽造の困難性を向上させることが可能であることが理解できる。
【符号の説明】
【0239】
10 表示媒体
20 表示媒体
30 表示媒体
100 基材
110 支持層
100U 基材の表面
200 表示層
210 亀裂
211 刻み目
212 刻み目
220 小片層
300 原反部材
310 仮支持体
310U 仮支持体の表面
320 転写材層
320U 転写材層の表面
330 小片層
340 亀裂
340C 亀裂の先端
341 刻み目
342 刻み目
350 複層部材
360 材料層
360U 複層部材の材料層側の面
400 加工具
410 加工具の凸部
410T 凸部の頂点
420 加工具の凹部
430 加工具の端部
440 加工具の端部
450 支持具
500 加工具
510 加工具の凸部
520 加工具の凹部
530 加工具の端部
540 加工具の端部
550 支持具
600 基材
610 有色層
700 基材
710 選択反射層
800 表示媒体
810 基材
820 接着剤層
830 表示層
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