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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】レンズ鏡筒および撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20241008BHJP
   G03B 9/02 20210101ALI20241008BHJP
【FI】
G02B7/02 H
G03B9/02 B
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022553767
(86)(22)【出願日】2021-09-13
(86)【国際出願番号】 JP2021033505
(87)【国際公開番号】W WO2022070855
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2020163330
(32)【優先日】2020-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】110004370
【氏名又は名称】弁理士法人片山特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今榮 一郎
【審査官】越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/170585(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/003922(WO,A1)
【文献】特開2017-151234(JP,A)
【文献】特開2010-020174(JP,A)
【文献】特開平06-067259(JP,A)
【文献】特開2019-173291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02-7/08
G03B 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絞り羽根と、
前記複数の絞り羽根を駆動するための駆動部と、
前記駆動部を保持する第1開口部材と、
前記第1開口部材と光軸方向において対向する複数の対向部を含む第2開口部材と、
前記第1開口部材と前記複数の対向部との間であって周方向にそれぞれ配置される複数の緩衝部材と、
を備え、
前記第2開口部材が有する前記複数の対向部のうちの一部の対向部は、前記緩衝部材と嵌合する嵌合部を備え、
前記第2開口部材が有する前記複数の対向部のうちの他の対向部は、前記光軸方向に延びる壁部を有さず、
前記複数の緩衝部材は、前記第2開口部材に対する前記第1開口部材の位置決めをする、
レンズ鏡筒。
【請求項2】
前記一部の対向部のうちの少なくとも1つの対向部は、光軸を中心とする円の周方向において前記緩衝部材と接触する壁部を有する、
請求項1に記載のレンズ鏡筒。
【請求項3】
前記第1開口部材は、前記駆動部を保持する本体部と、前記本体部から光軸と交差する方向に突出し、前記複数の対向部と対向する複数の突部を有し、
前記本体部は、前記光軸を中心とする円の径方向において前記突部と対向する位置に、前記円の周方向に延伸するスリットを有する、
請求項1または請求項2に記載のレンズ鏡筒。
【請求項4】
複数の絞り羽根と、
前記複数の絞り羽根を駆動するための駆動部と、
前記駆動部を保持し複数の突部を有する第1開口部材と、
前記第1開口部材と光軸方向において対向する複数の対向部を含む第2開口部材と、
前記複数の突部と前記複数の対向部との間であって周方向にそれぞれ配置される複数の緩衝部材と、
を備え、
前記第1開口部材は、
前記複数の突部のうちの一部の突部において、前記緩衝部材と嵌合する嵌合部を有し、
前記複数の突部のうちの他の突部において、前記光軸方向に延びる壁部を有さず、
前記複数の緩衝部材は、前記第2開口部材に対する前記第1開口部材の位置決めをする、
レンズ鏡筒。
【請求項5】
前記嵌合部は、前記光軸方向に延び、前記緩衝部材の少なくとも一部と嵌合する第1壁部を有する、
請求項4に記載のレンズ鏡筒。
【請求項6】
前記第1開口部材は、前記駆動部を保持する本体部を有し、
前記複数の突部は、前記本体部から光軸と交差する方向に突出し、
前記本体部は、前記光軸を中心とする円の径方向において前記突部と対向する位置に、前記円の周方向に延伸するスリットを有する、
請求項4または請求項5に記載のレンズ鏡筒。
【請求項7】
前記第1開口部材と前記第2開口部材とは接触しない、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項8】
前記複数の緩衝部材はそれぞれ、前記レンズ鏡筒の組立前における外形寸法と、前記レンズ鏡筒の組立後における外形寸法とが略一致する、
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項9】
前記複数の緩衝部材は、前記第2開口部材よりも振動伝達率が低い部材である、
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項10】
前記第1開口部材が前記第2開口部材に位置決めされていない状態で、前記複数の緩衝部材のうちの一つである第1緩衝部材は、前記第1開口部材に対して周方向に位置決めされない、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項11】
前記第1開口部材が前記第2開口部材に位置決めされていない状態で、前記複数の緩衝部材のうちの一つである第2緩衝部材は、前記第1開口部材に対して径方向および周方向に位置決めされる、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項12】
前記第1開口部材が前記第2開口部材に位置決めされていない状態で、前記複数の緩衝部材のうちの一つである第3緩衝部材は、前記第1開口部材に対して周方向に位置決めされかつ径方向に位置決めされない、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項13】
前記複数の緩衝部材は、エンジニアリングプラスチック製又はスーパーエンジニアリングプラスチック製である、
請求項1から請求項12のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒と、
撮像素子と、
を備える撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
レンズ鏡筒および撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズ鏡筒には絞り装置が設けられている(例えば、特許文献1参照)。レンズ鏡筒の静音化が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平4-128727号公報
【発明の概要】
【0004】
第1の態様によれば、レンズ鏡筒は、複数の絞り羽根と、前記複数の絞り羽根を駆動するための駆動部と、前記駆動部を保持する第1開口部材と、前記第1開口部材と光軸方向において対向する複数の対向部を含む第2開口部材と、前記第1開口部材と前記複数の対向部との間であって周方向にそれぞれ配置される複数の緩衝部材と、を備え、前記第2開口部材が有する前記複数の対向部のうちの一部の対向部は、前記緩衝部材と嵌合する嵌合部を備え、前記第2開口部材が有する前記複数の対向部のうちの他の対向部は、前記光軸方向に延びる壁部を有さず、前記複数の緩衝部材は、前記第2開口部材に対する前記第1開口部材の位置決めをする。
【0005】
第2の態様によれば、撮像装置は、上記レンズ鏡筒と、撮像素子と、を備える。
【0006】
なお、後述の実施形態の構成を適宜改良しても良く、また、少なくとも一部を他の構成物に代替させても良い。更に、その配置について特に限定のない構成要件は、実施形態で開示した配置に限らず、その機能を達成できる位置に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、一実施形態に係るレンズ鏡筒と、カメラ本体と、を備えるカメラを示す図である。
図2図2は、一実施形態に係る絞り装置を固定筒に取り付けた状態を示す斜視図である。
図3図3は、図2の分解斜視図である。
図4図4は、図1において点線で囲んだ部分を拡大した断面図である。
図5図5(A)は、固定筒を被写体側から見た図であり、図5(B)は、固定筒の斜視図である。
図6図6(A)は、絞り装置をカメラ本体側から見た図であり、図6(B)は、絞り装置の斜視図である。
図7図7(A)は、絞り装置と緩衝部材との関係を表す平面図であり、図7(B)は、絞り装置と緩衝部材との関係を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、一実施形態に係るレンズ鏡筒について説明する。なお、以下に示す図面には、説明と理解を容易にするために、適宜にXYZの直交座標系を設けた。この座標系では、撮影者が光軸OAを水平として横長の画像を撮影する場合のカメラ位置(以下、正位置という)において被写体からカメラ本体10側に向かう方向を+X方向とする。また、正位置において右側に向かう方向を+Y方向とする。また、正位置において上側に向かう方向を+Z方向とする。なお、実施形態に示す各部の形状や、長さ、厚みなどの縮尺は必ずしも実物と一致するものではなく、また説明に必要のない部分については適宜に省略又は簡略化して描いている。
【0009】
図1は、本実施形態に係るレンズ鏡筒20を備えるカメラ1の概略図である。カメラ1は、カメラ本体10と、カメラ本体10に着脱可能なレンズ鏡筒20と、を備える。なお、レンズ鏡筒20とカメラ本体10とは一体であってもよい。
【0010】
レンズ鏡筒20は、入射した被写体光を屈折させて出射側に被写体像を形成する光学部材としてのレンズ21と、このレンズ21の開口サイズを調節する絞り装置30とを備える。絞り装置30は、ビス41によって、緩衝部材40を介して固定筒22に取り付けられている。図1ではレンズ21は1枚のレンズとして描いているが、複数のレンズから成っていてもよい。また、図1では1つのレンズ群のみ描いているが、複数のレンズ群を設けてもよい。複数のレンズ群は、絞り装置30よりカメラ本体10側に配置されてもよいし、絞り装置30より被写体側及びカメラ本体10側の両方に配置されてもよい。
【0011】
カメラ本体10は、レンズ21により形成された被写体像を撮像して電気信号に変換する撮像素子12を備える。
【0012】
次に、本実施形態における絞り装置30の構成について説明する。図2は一実施形態に係る絞り装置30を固定筒22に取り付けた状態を示す斜視図であり、図3図2の分解斜視図である。
【0013】
図2に示すように、本実施形態では、絞り装置30は、固定筒22内に配置されており、絞り装置30と固定筒22とは、径方向において接触していない。すなわち、固定筒22の内壁と、絞り装置30(より詳しくは、後述する開口部材31)の外周面との間にはその全周にわたってクリアランス(隙間)が設けられている。また、光軸OA方向においても絞り装置30と固定筒22とは隙間を有し、接触していない。
【0014】
図3に示すように、絞り装置30は、虹彩絞り装置であり、開口部材31、回転部材32、複数の絞り羽根33(図3においては1枚のみ図示)、カム板34、およびステッピングモータ35を備える。
【0015】
開口部材31は、円環状部材であり、本体部313と、本体部313から光軸OAと交差する方向に突出する第1突部312a,第2突部312b,および第3突部312cと、を備える。本体部313は、中央に嵌合開口部311を有している。また、本体部313の+X側にはステッピングモータ35が取り付けられている。第1突部312a,第2突部312b,および第3突部312cの詳細については後述する。
【0016】
回転部材32は、円環状部材であり、開口部材31の嵌合開口部311に嵌合される環状突部321を中央に有する。回転部材32の外縁には、セグメントギア322が形成されており、ステッピングモータ35の回転軸に取り付けられたピニオンギア(不図示)と噛み合っている。
【0017】
複数の絞り羽根33の+X側には支持部331が設けられ、-X側にはカムフォロア332が設けられている。支持部331は、回転部材32の-X側に設けられた孔(不図示)に挿入され、カムフォロア332は、カム板34に設けられたカム341に挿入される。
【0018】
F値を変更する指示がされると、ステッピングモータ35が回転駆動され、ステッピングモータ35の回転軸に取り付けられたピニオンギアと噛合するセグメントギア322を有する回転部材32が回転する。絞り羽根33の支持部331が、回転部材32の-X側に形成された孔に挿入されているため、回転部材32が光軸回りに回転すると、絞り羽根33も光軸回りに回転する。絞り羽根33のカムフォロア332は、カム板34のカム341に挿入されているので、絞り羽根33のカムフォロア332は、支持部331を支点としてカム341に沿って回転する。また、焦点距離が変更されると、カム板34が図示しないメカ機構によって回転し、絞り羽根33のカムフォロア332は支持部331を支点としてカム341に沿って回転する。これにより、複数の絞り羽根33によって、虹彩絞りの開口37(図1参照)の大きさが調整できる。
【0019】
このように構成された絞り装置30を、開口部材31の第1突部312a,第2突部312b,および第3突部312cを用いて、固定筒22に取り付ける。
【0020】
図4は、図1において点線で囲んだ部分を拡大した断面図である。図4に示すように、固定筒22は、第1突部312a,第2突部312b、および第3突部312cのそれぞれと光軸OA方向において対向する位置に、第1対向部223a、第2対向部223b、および第3対向部223cを有する。なお、以後の説明において、特に区別する必要がない場合には、第1対向部223a、第2対向部223b、および第3対向部223cを対向部223と記載する。
【0021】
絞り装置30は、開口部材31の第1突部312a,第2突部312b,および第3突部312cと固定筒22の複数の対向部223との間にそれぞれ円環状の緩衝部材40を挟んで、ビス41等により固定筒22に取り付けられる。
【0022】
レンズ鏡筒20の静音化を実現するためには、絞り羽根33の駆動に伴い発生する振動が固定筒22にできるだけ伝わらないことが望ましい。そこで、例えば、緩衝部材40をゴム製とすることが考えられる。しかしながら、緩衝部材40がゴム製の場合、ゴム製の緩衝部材40は容易に変形するため、光軸OA方向(X方向)においても光軸と直交する平面方向(Y、Z方向)においても、固定筒22に対する絞り装置30の位置が定まらない。つまり、緩衝部材40を絞り装置30の位置決めに用いることができない。そのため、固定筒22に対する絞り装置30の位置を所定の位置に位置決めするための構成が必要となる。例えば、X方向の位置決めとしては、開口部材31及び固定筒22に当接座面を設け、互いの当接座面同士が胴付くようにして位置決めする。また、Y及びZ方向の位置決めとしては、絞り装置30の開口部材31に位置決め用のボス(突起)を設け、固定筒22にボスが挿入される孔を設け、ボスと孔とが嵌合することで位置決めをする。しかし、この場合、絞り装置30と固定筒22とが接触するので、絞り羽根33の駆動に伴い発生する振動が、絞り装置30から固定筒22に直接伝達され、レンズ鏡筒20の静音化が不十分となるおそれがある。
【0023】
そこで、本実施形態では、緩衝部材40を、エンジニアリングプラスチック製又はスーパーエンジニアリングプラスチック製としている。
【0024】
ここで、エンジニアリングプラスチックとは、100℃以上の耐熱性、49.0MPa以上の引張強度、2.4GPa以上の曲げ弾性率を有するプラスチックのことである。エンジニアリングプラスチックの例としては、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)、ポリアミド(PA)、およびポリブチレンテレフタレート(PBT)が挙げられる。
【0025】
また、スーパーエンジニアリングプラスチックとは、エンジニアリングプラスチックの条件を満たし、かつ、耐熱性が150℃以上のプラスチックのことである。スーパーエンジニアリングプラスチックの例としては、ポリフタルアミド(PPA)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリサルホン(PSU)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が挙げられる。
【0026】
エンジニアリングプラスチック製又はスーパーエンジニアリングプラスチック製の緩衝部材40は、変形しにくい。すなわち、レンズ鏡筒20の組立前の緩衝部材40の外形寸法(光軸OA方向の厚み、及び光軸と直交する方向の大きさ)と、レンズ鏡筒20の組立後(絞り装置30を固定筒22に固定した後)の緩衝部材40の外形寸法とが略一致する。また、絞り装置30を固定筒22に固定した後に、衝撃や振動によって緩衝部材40は変形しにくい。このため、絞り装置30と固定筒22との間に本実施形態に係る緩衝部材40を挟むことで、光軸OA方向における固定筒22に対する絞り装置30の位置を予め定めた位置(設計位置)に位置決めすることができる。すなわち、緩衝部材40は、固定筒22に対する絞り装置30の光軸OA方向における位置決め部材として機能する。さらに、緩衝部材40は光軸OA方向において固定筒22と絞り装置30とを接触させないスペーサとしても機能している。
【0027】
次に、レンズ鏡筒20の光軸OAと垂直な平面における絞り装置30の位置決めについて説明する。
【0028】
図5(A)は、固定筒22を被写体側から見た図であり、図5(B)は、固定筒22の斜視図である。図6(A)は、絞り装置30をカメラ本体10側から見た図であり、図6(B)は、絞り装置30の斜視図である。また、図7(A)は、絞り装置30と緩衝部材40との関係を表す平面図であり、図7(B)は、絞り装置30と緩衝部材40との関係を表す斜視図である。
【0029】
図5(A)及び図5(B)に示すように、固定筒22において、光軸OA方向において第1突部312a,第2突部312b、および第3突部312cとそれぞれ対向する第1対向部223a、第2対向部223b、および第3対向部223cには、緩衝部材40が嵌合する嵌合部224が形成されている。嵌合部224は、光軸OA方向に延び、緩衝部材40の外周の少なくとも一部と嵌合する壁部225を有する。また、嵌合部224は、緩衝部材40と光軸OA方向に当接する座面226を有する。壁部225により、光軸OAと垂直な平面において、固定筒22に対する緩衝部材40の位置が固定される。また、座面226により、光軸OA方向において、固定筒22に対する緩衝部材40の位置が固定される。
【0030】
一方、絞り装置30においては、図6(A)及び図6(B)に示すように、開口部材31の第1突部312aに、緩衝部材40と嵌合する嵌合部315が形成されている。嵌合部315は、図7(A)及び図7(B)に示すように、光軸OA方向に延び、緩衝部材40の外周の少なくとも一部と嵌合する壁部316aを有する。また、嵌合部315は、緩衝部材40と光軸OA方向に当接する座面317aを有する。壁部316aにより光軸OAと垂直な平面における開口部材31に対する緩衝部材40の位置が固定され、座面317aにより光軸OA方向における開口部材31に対する緩衝部材40の位置が固定される。
【0031】
これらにより、緩衝部材40を第1突部312aの嵌合部315および固定筒22の第1対向部223aの嵌合部224に配置すると、第1突部312aを支点として開口部材31が回転する方向以外の方向において、光軸OAと垂直な平面における絞り装置30の固定筒22に対する位置を予め定めた位置(設計位置)に位置決めすることができる。
【0032】
図7(A)及び図7(B)に示すように、第2突部312bには、光軸OA方向に延び、光軸OAを中心とする円の周方向において緩衝部材40の外周と接触する壁部316bが形成されている。また、図6(A)及び図6(B)に示すように緩衝部材40と光軸OA方向に当接する座面317bが形成されている。壁部316bにより光軸OAを中心とする円の周方向における開口部材31に対する緩衝部材40の位置が固定され、座面317bにより光軸OA方向における開口部材31に対する緩衝部材40の位置が固定される。
緩衝部材40を第2突部312bおよび固定筒22の第2対向部223bの嵌合部224に配置すると、壁部316bにより、開口部材31は、固定筒22に対して、光軸OAを中心とする円の周方向の移動が規制される。すなわち、第1突部312aを支点として開口部材31が回転する方向において、壁部316bと緩衝部材40とにより開口部材31の移動が規制される。このように、緩衝部材40、壁部316a及び壁部316bにより、光軸OAと垂直な平面における絞り装置30の位置決めができる。
【0033】
一方、第3突部312cには、緩衝部材40の外周と接触する壁部316aや壁部316bが形成されていない。すなわち、第3突部312cは、光軸OA方向に延びる壁部を有さない。絞り装置30の過剰拘束を避けるためである。なお、図6(A)及び図6(B)に示すように、第3突部312cには、緩衝部材40と光軸OA方向に当接する座面317cは形成される。緩衝部材40を第3突部312cおよび固定筒22の第3対向部223cの嵌合部224に配置すると、座面317cにより光軸OA方向における固定筒22に対する開口部材31の位置が固定される。
【0034】
第1突部312a、第2突部312b、および第3突部312cをこのように構成することで、位置決め用のボス(突起)やボスが挿入される孔を設けなくても、緩衝部材40を用いて光軸OAと垂直な平面における絞り装置30の固定筒22に対する位置決めを行うことができる。
【0035】
このように、本実施形態では、外形寸法が変化しにくい緩衝部材40を用いて、光軸OA方向および光軸OAと垂直な平面における絞り装置30の位置を所定の位置に位置決めすることができるため、絞り装置30および固定筒22に位置決め用の構成(当接座面やボス)を別途設ける必要がない。位置決め用の構成(当接座面やボス)を設けていないため、絞り装置30と固定筒22とは接触していない。
【0036】
上述したように、固定筒22の内壁と、絞り装置30(開口部材31)の外周面との間にはその全周にわたって隙間が設けられている。また、緩衝部材40や第1突部312a,第2突部312b,第3突部312c、嵌合部224等の構成により位置決め用の構成を設けていないため、光軸OA方向及び光軸OAと垂直な平面方向において固定筒22と絞り装置30とは接触していない。したがって、絞り装置30(開口部材31)と固定筒22とは、接触しない。これにより、絞り羽根33の駆動に伴い発生する振動が、絞り装置30から固定筒22に直接伝達されることがないため、レンズ鏡筒20の静音化が実現できる。
【0037】
また、本実施形態において、緩衝部材40の材料には、前述したエンジニアリングプラスチックおよびスーパーエンジニアリングプラスチックの中から、固定筒22の材料よりも振動伝達率が低いものを使用する。これにより、絞り羽根33の駆動に伴い発生する振動を緩衝部材40が吸収し、振動が固定筒22に伝達されるのを抑制することができるため、レンズ鏡筒20のさらなる静音化が実現できる。
【0038】
さらに、本実施形態では、図6(A)~図7(B)に示すように、開口部材31の本体部313は、径方向において第1突部312a、第2突部312b、および第3突部312cと対向する位置に、周方向に延伸するスリット314を有する。これにより、例えば、第1突部312a、第2突部312b、および第3突部312cとスリット314との間に存在する部分が板バネのように機能して、振動を吸収するため、固定筒22への振動伝達をさらに抑制することができ、レンズ鏡筒20のさらなる静音化が実現できる。
【0039】
以上、詳細に説明したように、本実施形態によれば、レンズ鏡筒20は、複数の絞り羽根33と、複数の絞り羽根33を駆動するためのステッピングモータ35と、ステッピングモータ35を保持する開口部材31と、開口部材31と光軸OA方向において対向する複数の対向部223を含む固定筒22と、開口部材31と複数の対向部223との間にそれぞれ配置される複数の緩衝部材40と、を備え、複数の緩衝部材40は、固定筒22に対する開口部材31の位置決めをする。緩衝部材40により、開口部材31と固定筒22とを直接接触させることなく、開口部材31を固定筒22に対して位置決めすることができるので、絞り羽根33の駆動に伴い発生する振動が固定筒22に伝達されるのを抑制し、レンズ鏡筒20を静音化することができる。なお、絞り羽根を駆動するためのモータはステッピングモータに限らず、DCモータや超音波モータ等でもよい。
【0040】
また、本実施形態において、開口部材31と固定筒22とは接触しない。これにより、絞り羽根33の駆動に伴い発生する振動が固定筒22に直接伝達されないため、レンズ鏡筒20を静音化することができる。
【0041】
また、本実施形態において、複数の緩衝部材40はそれぞれ、レンズ鏡筒20の組立前における外形寸法と、レンズ鏡筒20の組立後における外形寸法とが略一致する。緩衝部材40の外形寸法は、レンズ鏡筒20の組立前後で略一致するため、緩衝部材40を絞り装置30の位置決めに使用することができる。
【0042】
また、本実施形態において、複数の緩衝部材40は、固定筒22の部材よりも振動伝達率が低い部材である。これにより、絞り羽根33の駆動に伴い発生する振動を緩衝部材40が吸収し、振動が固定筒22に伝達されるのを抑制することができるため、レンズ鏡筒20のさらなる静音化が実現できる。
【0043】
また、本実施形態において、開口部材31は、複数の対向部223のうちの第1対向部223aと光軸OA方向において対向する位置において、緩衝部材40と嵌合する嵌合部315を有する。これにより、レンズ鏡筒20の組立時に、嵌合部315に嵌合した緩衝部材40を中心として開口部材31が回転する方向以外の方向において、光軸OAと垂直な平面における絞り装置30の位置決めを行うことができる。
【0044】
また、本実施形態において、嵌合部315は、光軸方向に延び、緩衝部材40の少なくとも一部と嵌合する壁部316aを備える。これにより、光軸OAを中心とする円の周方向および径方向において、開口部材31が固定筒22に対して移動することを抑制することができる。
【0045】
また、本実施形態において、開口部材31は、複数の対向部223のうちの第2対向部223bと光軸OA方向において対向する位置において、緩衝部材40の少なくとも一部と接触する壁部316bを有する。これにより、嵌合部315に嵌合された緩衝部材40を中心に開口部材31が回転する方向において、壁部316bと緩衝部材40とにより開口部材31の移動が規制されるので、光軸OAと垂直な平面における絞り装置30の位置決めができる。
【0046】
また、本実施形態において、壁部316bは、光軸OA方向に延び、光軸OAを中心とする円の周方向において緩衝部材40と接触する。これにより、第1突部312aを支点として開口部材31が回転する方向において、壁部316bと緩衝部材40とにより開口部材31の移動が規制できる。
【0047】
また、本実施形態において、開口部材31は、複数の対向部のうちの第3対向部223cと光軸OA方向において対向する位置において、光軸OA方向に延びる壁部を有さない。これにより、絞り装置30の過剰拘束を抑制することができる。
【0048】
また、本実施形態において、複数の対向部223は、緩衝部材40と嵌合する。これにより、光軸OAと垂直な平面および光軸OA方向において、固定筒22に対する緩衝部材40の位置を固定できる。
【0049】
また、本実施形態において、開口部材31は、本体部313と、本体部313から光軸OAと交差する方向に突出し、複数の対向部223と対向する第1突部312a、第2突部312b、および第3突部312cを有し、本体部313は、径方向において第1突部312a、第2突部312b、および第3突部312cと対向する位置に、周方向に延伸するスリット314を有する。これにより、本体部313の振動が、第1突部312a、第2突部312b、および第3突部312cに伝達されるのを抑制することができるため、固定筒22への振動伝達をさらに抑制することができ、レンズ鏡筒20をさらに静音化できる。
【0050】
また、本実施形態において、複数の緩衝部材40は、エンジニアリングプラスチック製又はスーパーエンジニアリングプラスチック製である。これにより、緩衝部材40によって絞り装置30の位置決めが行えるとともに、絞り装置30で発生した振動の固定筒22への伝達を抑制することができる。
【0051】
なお、複数の緩衝部材40は、レンズ鏡筒20の組立前における外形寸法と、レンズ鏡筒20の組立後における外形寸法とが略一致し、固定筒22よりも振動伝達率が低ければ、金属製であってもよい。
【0052】
なお、上記実施形態において、緩衝部材40は円環状の円柱部材であったが、これに限られるものではない。緩衝部材40は、例えば、直方体であってもよい。この場合、開口部材31の嵌合部315の壁部316aおよび固定筒22の嵌合部224の壁部225は、緩衝部材40が有する面のうち、光軸OA方向において開口部材31および固定筒22と接触する面以外の面の少なくとも一部と接触すればよい。
【0053】
なお、上記実施形態において、開口部材31の第1突部312a~第3突部312cの構造と、固定筒22の第1対向部223a~第3対向部223cの構造とを逆にしてもよい。具体的には、固定筒22の第1対向部223aに緩衝部材40と嵌合する嵌合部を設け、第2対向部223bに、緩衝部材40の外周と光軸OAを中心とする円の周方向で接触する壁部を設け、第3対向部223cには、緩衝部材40と接触する壁部を設けないようにしてもよい。この場合、開口部材31の第1突部312a、第2突部312b、および第3突部312cに、緩衝部材40と嵌合する嵌合部を形成すればよい。
【0054】
また、上記実施形態において、緩衝部材40を3つ設ける例を説明したが、開口部材31の第3突部312cを省略して緩衝部材40を2つ設けるようにしてもよい。また、第1突部312a、第2突部312b、第3突部312cの何れかを複数設けて、4つ以上の緩衝部材40を設けてもよい。
【0055】
また、上記実施形態において、絞り装置30が固定筒22に取りつけられる例を説明したが、固定筒22は光軸OA方向に移動しない筒であってもよいし、光軸OA方向に移動する筒であってもよい。また、固定筒22は、レンズを保持するレンズ保持枠であってもよい。
【0056】
上述した実施形態は好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能であり、任意の構成要件を組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 カメラ
12 撮像素子
20 レンズ鏡筒
22 固定筒
31 開口部材
33 絞り羽根
40 緩衝部材
223 対向部
224 嵌合部
225 壁部
226 座面
223a 第1対向部
223b 第2対向部
223c 第3対向部
312a 第1突部
312b 第2突部
312c 第3突部
313 本体部
315 嵌合部
314 スリット
316a,316b 壁部
317a,317b 座面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7