(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】集積化電子部品の作製方法
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20241008BHJP
H01L 25/065 20230101ALI20241008BHJP
H01L 25/18 20230101ALI20241008BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
H01L25/08 Y
H01L23/12 501P
(21)【出願番号】P 2022563331
(86)(22)【出願日】2020-11-19
(86)【国際出願番号】 JP2020043194
(87)【国際公開番号】W WO2022107275
(87)【国際公開日】2022-05-27
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【氏名又は名称】小池 勇三
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121669
【氏名又は名称】本山 泰
(72)【発明者】
【氏名】美濃谷 直志
【審査官】井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/187559(WO,A1)
【文献】特開2017-216263(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/07
H01L 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体と、前記絶縁体の下面に形成された第1の電極パッドと、前記絶縁体の上面に形成された第2の電極パッドと、前記絶縁体中に形成され、前記第1の電極パッドと前記第2の電極パッドとを接続する層間接続導体とを備えた再配線層を作製する第1の工程と、
前記再配線層の前記第1の電極パッドが形成された面が上になるようにして、前記再配線層の上に第1のチップを搭載する第2の工程と、
モールド樹脂を形成して前記第1のチップを封止する第3の工程と、
前記再配線層の前記第2の電極パッドが形成された面が上になるようにして、前記再配線層の上に第2のチップを搭載する第4の工程とを含み、
前記再配線層の前記第1の電極パッドは、前記第1のチップの上面に形成された第4の電極パッドと接続され、
前記再配線層の前記第2の電極パッドは、前記第2のチップの下面に形成された第5の電極パッドと接続され、
前記層間接続導体を介して接続される前記第
1の電極パッドと前記第
2の電極パッドとが対向して配置されることを特徴とする集積化電子部品
の作製方法。
【請求項2】
請求項1記載の集積化電子部品
の作製方法において、
前記再配線層は、
前記絶縁体の上面、下面、内層のいずれかに形成され、前記第
1の電極パッドまたは前記第
2の電極パッドと接続された配線と、
前記絶縁体の下面に形成され
た第3の電極パッドとをさらに備え、
前記第2の工程は、前記再配線層の前記第1、第3の電極パッドが形成された面が上になるようにして、前記再配線層の上に前記第1のチップを搭載すると共に、前記第3電極パッドの上に外部接続導体を形成する工程を含み、
前記外部接続導体は、前記モールド樹脂を上面から下面まで貫通する高さで形成され、
前記配線の少なくとも一部は、前記第
3の電極パッドと接続されることを特徴とする集積化電子部品
の作製方法。
【請求項3】
請求項2記載の集積化電子部品
の作製方法において、
前記配線の一部は、前記絶縁体の下面に形成され、グランド用の前記第
1の電極パッドと接続された第1のグランド配線と、前記絶縁体の上面に形成され、グランド用の前記第
2の電極パッドと接続された第2のグランド配線であり、
信号用の前記配線の少なくとも一部は、グランド用の前記第
1の電極パッドとグランド用の前記第
2の電極パッドとの間、および前記第1のグランド配線と前記第2のグランド配線との間に配置されることを特徴とする集積化電子部品
の作製方法。
【請求項4】
請求項2記載の集積化電子部品
の作製方法において、
前記配線の一部は、前記絶縁体の下面に形成され、電源用の前記第
1の電極パッドと接続された第1の電源配線と、前記絶縁体の上面に形成され、電源用の前記第
2の電極パッドと接続された第2の電源配線であり、
信号用の前記配線の少なくとも一部は、電源用の前記第
1の電極パッドと電源用の前記第
2の電極パッドとの間、および前記第1の電源配線と前記第2の電源配線との間に配置されることを特徴とする集積化電子部品
の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の部品を集積化した集積化電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、複数の半導体チップや水晶振動子などの電子部品をチップ再配列、再配線等の工程により集積化する技術が知られている(例えば非特許文献1参照)。
【0003】
集積化される半導体チップ等の部品は、一般的には上面と下面のどちらかの一方の側に電気配線と電極パッドが配置される。複数の部品を同一平面上に配置する場合、再配線工程で複数の部品の電極パッド間を接続する配線が製作される。この配線は、チップサイズに比例して長くなる。配線が長くなると、寄生容量や寄生インダクタンスが大きくなり、消費電力の増加や周波数特性の劣化が起こる。したがって、集積化する複数の部品の電極パッド間の配線の長さを抑制する集積化法が望まれている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】杉崎吉昭,“小型・低コストパッケージとして実用化が始まるFO-WLP”,一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA),半導体技術ロードマップ専門委員会(STRJ),2016年,<http://semicon.jeita.or.jp/STRJ/STRJ/2015/2015_06_Jissou.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、複数の部品の電極パッド間の配線を短くすることができる集積化電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の集積化電子部品の作製方法は、絶縁体と、前記絶縁体の下面に形成された第1の電極パッドと、前記絶縁体の上面に形成された第2の電極パッドと、前記絶縁体中に形成され、前記第1の電極パッドと前記第2の電極パッドとを接続する層間接続導体とを備えた再配線層を作製する第1の工程と、前記再配線層の前記第1の電極パッドが形成された面が上になるようにして、前記再配線層の上に第1のチップを搭載する第2の工程と、モールド樹脂を形成して前記第1のチップを封止する第3の工程と、前記再配線層の前記第2の電極パッドが形成された面が上になるようにして、前記再配線層の上に第2のチップを搭載する第4の工程とを含み、前記再配線層の前記第1の電極パッドは、前記第1のチップの上面に形成された第4の電極パッドと接続され、前記再配線層の前記第2の電極パッドは、前記第2のチップの下面に形成された第5の電極パッドと接続され、前記層間接続導体を介して接続される前記第1の電極パッドと前記第2の電極パッドとが対向して配置されることを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明の集積化電子部品の作製方法の1構成例において、前記再配線層は、前記絶縁体の上面、下面、内層のいずれかに形成され、前記第1の電極パッドまたは前記第2の電極パッドと接続された配線と、前記絶縁体の下面に形成された第3の電極パッドとをさらに備え、前記第2の工程は、前記再配線層の前記第1、第3の電極パッドが形成された面が上になるようにして、前記再配線層の上に前記第1のチップを搭載すると共に、前記第3電極パッドの上に外部接続導体を形成する工程を含み、前記外部接続導体は、前記モールド樹脂を上面から下面まで貫通する高さで形成され、前記配線の少なくとも一部は、前記第3の電極パッドと接続されることを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明の集積化電子部品の作製方法の1構成例において、前記配線の一部は、前記絶縁体の下面に形成され、グランド用の前記第1の電極パッドと接続された第1のグランド配線と、前記絶縁体の上面に形成され、グランド用の前記第2の電極パッドと接続された第2のグランド配線であり、信号用の前記配線の少なくとも一部は、グランド用の前記第1の電極パッドとグランド用の前記第2の電極パッドとの間、および前記第1のグランド配線と前記第2のグランド配線との間に配置されることを特徴とするものである。
また、本発明の集積化電子部品の作製方法の1構成例において、前記配線の一部は、前記絶縁体の下面に形成され、電源用の前記第1の電極パッドと接続された第1の電源配線と、前記絶縁体の上面に形成され、電源用の前記第2の電極パッドと接続された第2の電源配線であり、信号用の前記配線の少なくとも一部は、電源用の前記第1の電極パッドと電源用の前記第2の電極パッドとの間、および前記第1の電源配線と前記第2の電源配線との間に配置されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第1のチップと第2のチップとを対向させて集積化することにより、第1のチップと第2のチップとを接続する導体を短くすることができ、寄生容量や寄生インダクタンスを小さくすることができるので、消費電力の増加や周波数特性の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施例に係る集積化電子部品の側面図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施例に係る集積化電子部品の再配線層の平面図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施例に係る集積化電子部品の再配線層の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施例に係る集積化電子部品の側面図である。
図1では、再配線層とモールドの内部を透視した状態で記載している。
【0012】
本実施例の集積化電子部品は、下部チップ1と、下部チップ1を封止するモールド樹脂2と、モールド樹脂2上に搭載された再配線層3と、再配線層3上に搭載された上部チップ4とから構成される。
【0013】
下部チップ1と上部チップ4とは、それぞれ半導体を集積化したIC(Integrated Circuit)チップである。本実施例の集積化電子部品は、図示しない外部のICからの信号で動作する。
【0014】
再配線層3は、例えばガラスや樹脂などの材料からなる絶縁体30を基材とする。この絶縁体30中に、外部のICと下部チップ1とを接続する配線31と、下部チップ1と上部チップ4とを接続する層間接続導体32(ビア)とが形成されている。
【0015】
再配線層3の上面には、上部チップ4が配置される上部チップ接続領域がある。上部チップ接続領域には、層間接続導体32と接続された上部電極パッド33(第2の電極パッド)が形成されている。上部電極パッド33と上部チップ4の下面の電極パッド40とがバンプ34などを介して接続されている。
【0016】
再配線層3の下面には、第1のチップが配置される下部チップ接続領域がある。下部チップ接続領域には、層間接続導体32または配線31と接続された下部電極パッド35(第1の電極パッド)が形成されている。下部電極パッド35と第1のチップの上面の電極パッド10とがバンプ36などを介して接続されている。
【0017】
さらに、再配線層3の下面には、集積化電子部品と外部との接続のための領域がある。この領域には、下部電極パッド37(第3の電極パッド)が形成されている。配線31の少なくとも一部は、下部電極パッド37と接続される。
【0018】
モールド樹脂2中には、下部電極パッド37と接続された銅製のピラー20が形成されている。モールド樹脂2の下面には、ピラー20と接続されたボールバンプ21が形成されている。ピラー20とボールバンプ21とは、外部接続導体を構成している。
集積化電子部品は、ボールバンプ21を介して外部の電源およびグランドと接続され、またボールバンプ21を介して信号の送受を行う。
【0019】
上部チップ4の電極パッド40と接続される再配線層3の上部電極パッド33と、下部チップ1の電極パッド10と接続される再配線層3の下部電極パッド35とは、対向して配置され、層間接続導体32を介して接続される。このため、上部電極パッド33と下部電極パッド35とは、最短距離で接続される。
【0020】
下部チップ1の電極パッド10と接続される再配線層3の配線31は、層間接続導体32を避けて配置される。なお、再配線層3の内層に配置される配線31は、層間接続導体38を介して再配線層3の下部電極パッド35と接続される。また、再配線層3の内層に配置される配線31は、層間接続導体39を介して再配線層3の下部電極パッド37と接続される。
【0021】
図2は再配線層3の平面図である。上部チップ4と下部チップ1との間では、信号の送受と、グランドの接続と、下部チップ1から上部チップ4への電源の供給とが行われる。ボールバンプ21を介して外部の電源と接続された配線31は、電源用の下部電極パッド35または電源用の層間接続導体32,38と接続される。同様に、ボールバンプ21を介して外部のグランドと接続された配線31は、グランド用の下部電極パッド35またはグランド用の層間接続導体32,38と接続される。
【0022】
一方、ボールバンプ21を介して外部と下部チップ1との間で信号の送受を行うための配線31は、層間接続導体32を避けるようにして配置される。
図2の例では、33aが上部チップ4と下部チップ1との間の信号送受用の上部電極パッド、33bがグランド用の上部電極パッドである。外部と下部チップ1との間で信号の送受を行うための配線31は、
図2に示すように上部電極パッド33a,33bとその下の層間接続導体32とを避けるようにして配置される。
【0023】
図3は再配線層3の断面図である。
図2と同様に、33aは信号送受用の上部電極パッド、33bはグランド用の上部電極パッド、35aは信号送受用の下部電極パッド、35bはグランド用の下部電極パッドである。
【0024】
下部チップ1の異なる電極パッド10と接続される高周波信号用の配線31が多い場合、
図3に示すようにグランド用の上部電極パッド33bと下部電極パッド35bとの間に、高周波信号用の配線31を配置する。
【0025】
図3の例では、上部電極パッド33bと再配線層3の上面のグランド配線50とを接続し、下部電極パッド35bと再配線層3の下面のグランド配線51とを接続している。そして、上部電極パッド33bと下部電極パッド35bとの間、およびグランド配線50とグランド配線51との間に、配線31を3本配置している。上部電極パッド33bと下部電極パッド35bとは、層間接続導体32を介して接続されている。
【0026】
こうして、本実施例では、配線31と上部電極パッド33bと下部電極パッド35bとグランド配線50,51とによりストリップ伝送線を形成することができ、上部チップ4と下部チップ1とを接続する導体を長くすることなく、再配線層3の内層に多くの配線31を設けることができる。
【0027】
なお、
図3では図示していないが、再配線層3の上面には電源用の上部電極パッド33と接続される電源配線があり、再配線層3の下面には電源用の下部電極パッド35と接続される電源配線がある。そこで、電源用の上部電極パッド33と電源用の下部電極パッド35との間、および再配線層3の上面の電源配線と下面の電源配線との間に、配線31を配置するようにしてもよい。
【0028】
本実施例の集積化電子部品は以下のようにして作製される。まず、絶縁体30の両面および内層に、配線31、上部電極パッド33、下部電極パッド35,37、層間接続導体32,38,39などが形成された再配線層3を作製する。
【0029】
次に、再配線層3の下部電極パッド35,37が形成された面が上になるようにして、下部電極パッド37の上にピラー20を形成し、再配線層3の上に下部チップ1を搭載する。上記のとおり、再配線層3の下部電極パッド35と下部チップ1の電極パッド10とは、バンプ36を介して接続される。続いて、モールド樹脂2を形成して下部チップ1を封止する。ピラー20が露出するようにモールド樹脂2を研削して、露出したピラー20の部分にボールバンプ21を形成する。
【0030】
次に、再配線層3の上部電極パッド33が形成された面が上になるようにして、再配線層3の上に上部チップ4を搭載する。上記のとおり、再配線層3の上部電極パッド33と上部チップ4の電極パッド40とは、バンプ34を介して接続される。
以上で、集積化電子部品の作製が完了する。
【0031】
なお、本実施例では、配線31の少なくとも一部を再配線層3の下部電極パッド35と接続しているが、配線31の少なくとも一部を再配線層3の上部電極パッド33と接続するようにしてもよい。
【0032】
また、本実施例では、下部チップ1と上部チップ4をそれぞれ単数としているが、下部チップ1と上部チップ4のうち少なくとも一方を複数個集積化してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、複数の部品を集積化する技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0034】
1…下部チップ、2…モールド樹脂、3…再配線層、4…上部チップ、10,33,35,37,40…電極パッド、20…ピラー、21…ボールバンプ、30…絶縁体、31…配線、32,38,39…層間接続導体、10,33,35,37,40…電極パッド、34,36…バンプ、50,51…グランド配線。