(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】パターン露光装置及びパターン露光方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
G03F7/20 501
G03F7/20 521
(21)【出願番号】P 2022568242
(86)(22)【出願日】2021-12-03
(86)【国際出願番号】 JP2021044387
(87)【国際公開番号】W WO2022124210
(87)【国際公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-05-01
(31)【優先権主張番号】P 2020203822
(32)【優先日】2020-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 義昭
(72)【発明者】
【氏名】加藤 正紀
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-330536(JP,A)
【文献】特開2006-085072(JP,A)
【文献】特開2006-208976(JP,A)
【文献】特開2020-177254(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/30
G02B 26/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源装置から供給されるビームによるスポット光を主走査方向に走査して基板上にパターンを描画する描画ユニットを備えたパターン露光装置であって、
第1ビームを出射する第1光源装置と、
第2ビームを出射する第2光源装置と、
前記第1光源装置からの前記第1ビームと前記第2光源装置からの前記第2ビームの各々が、前記描画ユニットに入射するように合成するビーム合成部と、
前記基板上に投射される前記第1ビームによる第1スポット光の形状と前記第2ビームによる第2スポット光の形状とを互いに異ならせるように、前記ビーム合成部に入射する前記第1ビームと前記第2ビームの各々の断面形状を互いに異ならせるビーム形状変形部と、
前記基板上に描画するパターンの少なくともエッジ部を、前記第1スポット光と前記第2スポット光のいずれか一方、又は両方で描画するように制御する制御装置と、
を備える、パターン露光装置。
【請求項2】
請求項1に記載のパターン露光装置であって、
前記ビーム合成部は、前記描画ユニットの光軸に沿って前記描画ユニットに入射するように前記第1ビームと前記第2ビームとを合成する、パターン露光装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のパターン露光装置であって、
前記第1光源装置からの前記第1ビームと前記第2光源装置からの前記第2ビームとは、共に断面形状が円形であり、
前記ビーム形状変形部は、前記第1ビームの断面形状を円形からスロット状又は長楕円状に変形させる第1のビーム形状変形部と、前記第2ビームの断面形状を円形からスロット状又は長楕円状に変形させる第2のビーム形状変形部と、を含む、パターン露光装置。
【請求項4】
請求項3に記載のパターン露光装置であって、
前記スロット状又は長楕円状に変形した前記第1スポット光の長軸方向と、前記スロット状又は長楕円状に変形した前記第2スポット光の長軸方向とが、前記基板上で互いに異なる方向に向くように、前記第1のビーム形状変形部から出射する前記第1ビームの断面形状の長軸の方向と、前記第2のビーム形状変形部から出射する前記第2ビームの断面形状の長軸の方向とを、互いに異なる向きに設定した、パターン露光装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載のパターン露光装置であって、
前記第1のビーム形状変形部と前記第2のビーム形状変形部の各々は、断面形状が円形のビームを一方向に圧縮するビーム圧縮系を含む、パターン露光装置。
【請求項6】
請求項5に記載のパターン露光装置であって、
前記ビーム圧縮系は、平行光束として入射する断面形状が円形のビームを、断面形状が前記スロット状又は長楕円状に変形した平行光束にして射出するように、光軸方向に離して配置される2つのシリンドリカルレンズを含む、パターン露光装置。
【請求項7】
請求項3~6のいずれか1項に記載のパターン露光装置であって、
前記スロット状又は長楕円状に変形した前記第1スポット光の長軸方向は、前記主走査方向に対して+25度~+65度の範囲で傾けて設定され、
前記スロット状又は長楕円状に変形した前記第2スポット光の長軸方向は、前記主走査方向に対して-25度~-65度の範囲で傾けて設定される、パターン露光装置。
【請求項8】
請求項3~7のいずれか1項に記載のパターン露光装置であって、
前記制御装置は、前記基板上に描画するパターンの前記エッジ部が、前記主走査方向に対して傾いて延びる斜めエッジ部のときは、前記第1スポット光と前記第2スポット光のうち前記斜めエッジ部の傾きに応じたスポット光を前記基板上に投射するように、前記第1光源装置からの前記第1ビームの出射と、前記第2光源装置からの前記第2ビームの出射とを制御する、パターン露光装置。
【請求項9】
請求項8に記載のパターン露光装置であって、
断面形状が円形の第3ビームを出射する第3光源装置を更に備え、
前記ビーム合成部は、前記基板上に前記第3ビームによる円形の第3スポット光が投射されるように、前記スロット状又は長楕円状に変形された前記第1ビームと前記第2ビームと共に、前記第3ビームを前記描画ユニットの光軸に沿って入射させる、パターン露光装置。
【請求項10】
請求項9に記載のパターン露光装置であって、
前記制御装置は、
前記基板上に描画するパターンの前記斜めエッジ部については、前記第1スポット光と前記第2スポット光のいずれか一方が前記基板上に投射されるように、前記第1光源装置からの前記第1ビームの出射と、前記第2光源装置からの前記第2ビームの射出とを制御し、前記斜めエッジ部以外のパターン部分については、前記第3スポット光が前記基板上に投射されるように、前記第3光源装置からの前記第3ビームの出射を制御する、パターン露光装置。
【請求項11】
光源装置から供給されるビームによるスポット光を主走査方向に走査して基板上にパターンを描画する描画ユニットを備えたパターン露光装置であって、
前記光源装置から出射される断面形状が円形のビームを第1ビームと第2ビームとに分割する光分割部と、
前記第1ビームの光路に設けられ、前記第1ビームの断面形状を円形から変形させて、前記第1ビームの投射による前記基板上での第1スポット光の形状を第1形状にする第1ビーム形状変形部と、
前記第2ビームの光路に設けられ、前記第2ビームの断面形状を円形から変形させて、前記第2ビームの投射による前記基板上での第2スポット光の形状を前記第1形状と異なる第2形状にする第2ビーム形状変形部と、
前記第1ビーム形状変形部からの前記第1ビームと前記第2ビーム形状変形部からの前記第2ビームとを、前記描画ユニットに入射するように合成するビーム合成部と、
前記基板上に描画するパターンを、前記第1スポット光と前記第2スポット光のいずれか一方で描画するように制御する制御装置と、
を備える、パターン露光装置。
【請求項12】
請求項11に記載のパターン露光装置であって、
前記ビーム合成部は、前記描画ユニットの光軸に沿って前記描画ユニットに入射するように前記第1ビームと前記第2ビームとを合成する、パターン露光装置。
【請求項13】
請求項11または12に記載のパターン露光装置であって、
前記第1ビーム形状変形部は、前記第1スポット光の前記第1形状が、前記主走査方向に対して傾いた長軸を有するスロット状又は長楕円状に変形されるように、前記第1ビームの断面形状を変形させ、
前記第2ビーム形状変形部は、前記第2スポット光の前記第2形状が、前記主走査方向に対して前記第1形状と反対に傾いた長軸を有するスロット状又は長楕円状に変形されるように、前記第2ビームの断面形状を変形させる、パターン露光装置。
【請求項14】
請求項13に記載のパターン露光装置であって、
前記第1ビーム形状変形部と前記第2ビーム形状変形部の各々は、断面形状が円形のビームを一方向に圧縮して断面形状をスロット状又は長楕円状にするビーム圧縮系を含む、パターン露光装置。
【請求項15】
請求項14に記載のパターン露光装置であって、
前記ビーム圧縮系は、平行光束として入射する断面形状が円形のビームを、断面形状が前記スロット状又は長楕円状に変形した平行光束にして出射するように、光軸方向に離して配置される2つのシリンドリカルレンズを含む、パターン露光装置。
【請求項16】
請求項13~15のいずれか1項に記載のパターン露光装置であって、
前記スロット状又は長楕円状に変形した前記第1スポット光の長軸方向は、前記主走査方向に対して+25度~+65度の範囲で傾けて設定され、
前記スロット状又は長楕円状に変形した前記第2スポット光の長軸方向は、前記主走査方向に対して-25度~-65度の範囲で傾けて設定される、パターン露光装置。
【請求項17】
請求項13~16のいずれか1項に記載のパターン露光装置であって、
前記ビーム合成部は、直線偏光の方向に応じて透過性又は反射性を有する偏光ビームスプリッタで構成され、
前記第1ビーム形状変形部からの前記第1ビームと前記第2ビーム形状変形部からの前記第2ビームとの直線偏光の方向を相補的に切り換える電気光学素子を、更に含む、パターン露光装置。
【請求項18】
請求項17に記載のパターン露光装置であって、
前記制御装置は、前記基板上に描画するパターンのエッジ部が、前記主走査方向に対して傾いて延びる斜めエッジ部のときは、前記第1スポット光と前記第2スポット光のうち前記斜めエッジ部の傾きに応じたスポット光が前記基板上に投射されるように前記電気光学素子を制御する、パターン露光装置。
【請求項19】
請求項18に記載のパターン露光装置であって、
断面形状が円形の第3ビームを出射する第2の光源装置を更に備え、
前記ビーム合成部は、前記基板上に前記第3ビームによる円形の第3スポット光が投射されるように、前記スロット状又は長楕円状に変形された前記第1ビーム或いは前記第2ビームと共に、前記第3ビームを前記描画ユニットの光軸に沿って入射させる、パターン露光装置。
【請求項20】
請求項19に記載のパターン露光装置であって、
前記制御装置は、前記基板上に描画するパターンの前記斜めエッジ部については、前記第1スポット光と前記第2スポット光のいずれか一方が前記基板上に投射されるように、前記光源装置からの前記ビームの出射と前記電気光学素子の駆動を制御し、前記斜めエッジ部以外のパターン部分については、前記第3スポット光が前記基板上に投射されるように、前記第2の光源装置からの前記第3ビームの出射を制御する、パターン露光装置。
【請求項21】
光源装置から供給されるビームによるスポット光を、描画データ上で規定される画素毎の画素情報に応じて主走査方向に走査して基板上にパターンを描画する描画ユニットを用いたパターン露光方法であって、
前記主走査方向に走査される前記画素の列中に、前記主走査方向と交差して斜めに延びるパターンのエッジ部となるエッジ画素が含まれるときは、少なくとも前記エッジ画素に投射される前記スポット光の形状は、前記パターンが斜めに延びる方向に沿った方向に長軸が傾いたスロット状又は長楕円状に設定される、パターン露光方法。
【請求項22】
請求項21に記載のパターン露光方法であって、
前記エッジ画素以外の画素に投射される前記スポット光の形状は円形に設定される、パターン露光方法。
【請求項23】
請求項22に記載のパターン露光方法であって、
前記基板上に投射される前記円形のスポット光の実効的な寸法は、前記画素の前記基板上で規定される寸法に対して±50%の範囲内に設定される、パターン露光方法。
【請求項24】
請求項23に記載のパターン露光方法であって、
前記基板上に投射される前記スロット状又は長楕円状のスポット光の長軸方向の実効的な寸法は、前記画素の前記基板上で規定される対角寸法と同等に設定される、パターン露光方法。
【請求項25】
請求項22~24のいずれか1項に記載のパターン露光方法であって、
前記光源装置は、前記主走査方向に対して長軸方向が+25度~+65度の範囲で傾いた前記スロット状又は長楕円状の第1のスポット光となる第1ビームを出射する第1光源装置と、前記主走査方向に対して長軸方向が-25度~-65度の範囲で傾いた前記スロット状又は長楕円状の第2のスポット光となる第2ビームを出射する第2光源装置と、を備え、
前記エッジ部に対応したエッジ画素を描画する場合、前記第1光源装置からの前記第1ビームと前記第2光源装置からの前記第2ビームとのいずれか一方が、前記描画ユニットに供給されるように制御される、パターン露光方法。
【請求項26】
請求項22~24のいずれか1項に記載のパターン露光方法であって、
前記光源装置は、前記主走査方向に対して長軸方向が+25度~+65度の範囲で傾いた前記スロット状又は長楕円状の第1のスポット光と、前記主走査方向に対して長軸方向が-25度~-65度の範囲で傾いた前記スロット状又は長楕円状の第2のスポット光とを生成する為のビームを出射する第1光源装置と、前記円形の第3のスポット光を生成する為のビームを出射する第2光源装置とを備える、パターン露光方法。
【請求項27】
請求項26に記載のパターン露光方法であって、
前記第1光源装置からの前記ビームを、前記第1のスポット光を生成する為の第1ビームと前記第2のスポット光を生成する為の第2ビームとに分割し、分割された前記第1ビームと前記第2ビームの各々の断面形状を前記スロット状又は長楕円状に変形させた後、前記第1ビームと前記第2ビームのいずれか一方を、前記描画ユニット内の光軸に沿うように前記描画ユニットに供給する、パターン露光方法。
【請求項28】
請求項27に記載のパターン露光方法であって、
前記第1光源装置からの前記ビームの偏光方向を電気的な制御で切り換える電気光学素子と、前記電気光学素子を通った前記ビームを偏光状態によって透過する光路と反射する光路とに分割する偏光ビームスプリッタとを用いて、前記第1光源装置からの前記ビームを前記第1ビームと前記第2ビームとに分割する、パターン露光方法。
【請求項29】
請求項27に記載のパターン露光方法であって、
前記第1光源装置からの前記ビームが直列に通るように配置された第1の音響光学変調素子と第2の音響光学変調素子とが設けられ、
前記第1の音響光学変調素子のみがオン状態のときに発生する前記ビームの1次回折ビームを前記第1ビームとして用い、前記第2の音響光学変調素子のみがオン状態のときに発生する前記ビームの1次回折ビームを前記第2ビームとして用いる、パターン露光方法。
【請求項30】
光源装置から供給されるビームによるスポット光を主走査方向に走査して基板上にパターンを描画する描画ユニットを備えたパターン露光装置であって、
第1ビームを出射する第1光源装置と、
第2ビームを出射する第2光源装置と、
前記
第1ビームが入射し、前記
第1ビームの断面形状を変形させた
前記第1ビームを前記描画ユニットに導く
第1ビーム形状変形部
と、
前記第2ビームが入射し、前記第2ビームの断面形状を変形させた前記第2ビームを前記描画ユニットに導く第2ビーム形状変形部と、を有し、
前記
第1ビーム形状変形部は、前記
第1ビームの断面形状を円形から非円形に変形させ、
変形した前記第1ビームに対応する前記基板上に投射される第1スポット光と、変形した前記第2ビームに対応する前記基板上に投射される第2スポット光とは、形状が互いに異なる、パターン露光装置。
【請求項31】
請求項30に記載のパターン露光装置であって、
前記
第1ビーム形状変形部は、前記
第1ビームの断面形状を円形からスロット状又は長楕円状に変形させる、パターン露光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に電子デバイス等のパターンを描画データに応じて強度変調された描画ビームによって露光するパターン露光装置及びパターン露光方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、基板上に微細な電子デバイスを製造する過程では、基板上の感光層としてのレジスト層に電子デバイスのパターン(配線層、電極層、半導体層、絶縁層等の形状を規定するパターン)に対応した露光ビーム(光ビームや電子ビーム等)を照射する露光工程と、露光後の基板を現像して、レジスト層の残膜部と除去部とによってパターンを出現させる現像工程とを含むフォトリソグラフィ処理が実施されている。その露光工程で使われる露光装置として、露光すべきパターンに応じた描画データ(CADデータ)に基づいて露光ビームを動的に強度変調するマスクレス方式が知られている。マスクレス方式の1つとして、レーザビームプリンタのように、描画データに応答して強度変調されるスポット光を回転ポリゴンミラーで高速に走査するスポット走査方式の描画装置が知られている。スポット走査方式では、通常、感光基板の表面に投射される微細な円形状のスポット光の強度を、デジタルな描画データ(ビットマップ形式の2値情報)に応じてオン/オフさせるので、微細な斜め線(スポット光の走査方向に対して斜めに傾いたエッジ)を描画した場合、現像後に現れるレジスト層による斜め線パターンのエッジ部に階段状のギザギザが発生し易い。
【0003】
そのようなギザギザの低減の為に、レーザビームプリンタでは、例えば、特開平5-232414号公報に開示されているように、画像信号(描画データ)に応じて変調される半導体レーザからのビームを、電気光学結晶で作られた光マイクロシャッタアレイによる可変アパーチャ素子を通してから回転多面鏡に入射させ、回転多面鏡で反射されたビームを、結像レンズ(fθレンズ)等を介して感光体上にスポットとして結像するレーザ記録装置が知られている。その可変アパーチャ素子は、電気光学的な変調(偏光切り換え)によって開口量や開口位置を変えることで、ビームの大きさや中心位置を変えるように構成される。それにより、特開平5-232414号公報では、感光体面上での副走査方向のビーム径(スポット径)を可変にして、1ドット内で複数の階調が設定できるようにすると共に、副走査方向に関してビームの中心位置を可変とすることで、副走査方向のスポットによる記録ピッチを変化させて、斜線のギザギザを低減した画像出力を得ている。
【0004】
特開平5-232414号公報のように可変アパーチャ素子を用いる場合、必然的にビームの断面内での一部が遮断されることになり、感光体面上でのスポットの光量(強度)が低下する。その為、特開平5-232414号公報では、半導体レーザからの光出力の一部を受光素子でモニターし、その受光信号と発光レベル指令信号とが等しくなるように半導体レーザの駆動電流を制御する光・電気負帰還ループを設け、光量変動(低下)を補正している。しかしながら、感光体への画像出力に要する時間を極力短くする為に、半導体レーザからの光出力が元々大きく設定されている場合、可変アパーチャ素子によるビーム光量の損失分に見合った半導体レーザの光出力の増大には限界がある。また、特開平5-232414号公報では、ギザギザを低減する為に、感光体上に投射されるスポット(ドット)は円形のままで、異なる径のものを連ねており、隣合ったスポット(ドット)同士が必ずしもつながっていない。従って、特開平5-232414号公報のようにスポット(ドット)の径を異ならせる方式では、微細な電子パターン、特に線幅が細い配線パターンを形成する際に、パターンの一部が切れる断線の懸念が生じる。
【発明の概要】
【0005】
本発明の第1の態様は、光源装置から供給されるビームによるスポット光を主走査方向に走査して基板上にパターンを描画する描画ユニットを備えたパターン露光装置であって、第1ビームを出射する第1光源装置と、第2ビームを出射する第2光源装置と、前記第1光源装置からの前記第1ビームと前記第2光源装置からの前記第2ビームの各々が、前記描画ユニットに入射するように合成するビーム合成部と、前記基板上に投射される前記第1ビームによる第1スポット光の形状と前記第2ビームによる第2スポット光の形状とを互いに異ならせるように、前記ビーム合成部に入射する前記第1ビームと前記第2ビームの各々の断面形状を互いに異ならせるビーム形状変形部と、前記基板上に描画するパターンの少なくともエッジ部を、前記第1スポット光と前記第2スポット光のいずれか一方、又は両方で描画するように制御する制御装置と、を備える。
【0006】
本発明の第2の態様は、光源装置から供給されるビームによるスポット光を主走査方向に走査して基板上にパターンを描画する描画ユニットを備えたパターン露光装置であって、前記光源装置から出射される断面形状が円形のビームを第1ビームと第2ビームとに分割する光分割部と、前記第1ビームの光路に設けられ、前記第1ビームの断面形状を円形から変形させて、前記第1ビームの投射による前記基板上での第1スポット光の形状を第1形状にする第1ビーム形状変形部と、前記第2ビームの光路に設けられ、前記第2ビームの断面形状を円形から変形させて、前記第2ビームの投射による前記基板上での第2スポット光の形状を前記第1形状と異なる第2形状にする第2ビーム形状変形部と、前記第1ビーム形状変形部からの前記第1ビームと前記第2ビーム形状変形部からの前記第2ビームとを、前記描画ユニットに入射するように合成するビーム合成部と、前記基板上に描画するパターンを、前記第1スポット光と前記第2スポット光のいずれか一方で描画するように制御する制御装置と、を備える。
【0007】
本発明の第3の態様は、光源装置から供給されるビームによるスポット光を、描画データ上で規定される画素毎の画素情報に応じて主走査方向に走査して前記基板上にパターンを描画する描画ユニットを用いたパターン露光方法であって、前記主走査方向に走査される前記画素の列中に、前記主走査方向と交差して斜めに延びるパターンのエッジ部となるエッジ画素が含まれるときは、少なくとも前記エッジ画素に投射される前記スポット光の形状は、前記パターンが斜めに延びる方向に沿った方向に長軸が傾いたスロット状又は長楕円状に設定される。
【0008】
本発明の第4の態様は、光源装置から供給されるビームによるスポット光を主走査方向に走査して基板上にパターンを描画する描画ユニットを備えたパターン露光装置であって、前記光源装置からの前記ビームが入射し、前記ビームの断面形状を変形させたビームを前記描画ユニットに導くビーム形状変形部を有し、前記ビーム形状変形部は、前記ビームの断面形状を円形から非円形に変形させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施の形態によるパターン露光装置の概略的な全体構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示した4つの描画ユニットMU1~MU4のうち、代表して描画ユニットMU1の概略的な内部構成を示す斜視図である。
【
図3】
図3A、
図3Bは、
図2に示した描画ユニットMU1内のビームエキスパンダーBEXを通る3本の描画用のビームB1a、B1b、B1cの状態を誇張して表した図である。
【
図4】
図1に示した光源装置LS1A、LS1B、LS1Cとビーム合成部BD1Aとの概略的な構成を示す図である。
【
図5】
図5A~
図5Cは、
図4に示したビーム形状変形部10B(又は10C)内の光学部材の配置を模式的に表した図である。
【
図6】
図1に示したビームスイッチング部BD1B内の光学部材の配置と光路を概略的に示す斜視図である。
【
図7】
図7A、
図7Bは、
図6中の初段の音響光学変調素子AM3に入射する3本のビームLB1a、LB1b、LB1cの各々の回折ビームが、対応する描画ユニットMU3に向けて分岐される状態を誇張して表した図である。
【
図8】ビームスイッチング部BD1B、BD2Bの各々から描画ユニットMU1~MU4の各々に入射するビームBna、Bnb、Bncの状態を示す斜視図である。
【
図9】
図9Aは、シート基板P上に露光されるライン&スペース状のパターンPT1、PT2、PT3の一例を表し、
図9Bは、そのパターンの拡大した一部分の描画データ上の画素マップ(ビットマップ)の一例を表す。
【
図10】
図9A、
図9B中に示したパターンPT2中の1本の斜めラインパターンの一部を描画する際の動作を説明する図である。
【
図11】
図9Bに示した斜め線の一部を描画する為の描画データのうち、画素列(データ列)AL1、AL2の各々に対応したビットマップ情報を説明する図である。
【
図12】
図12Aは、変形例1のビームスイッチング部BD1B(BD2B)内の光路を示す図であり、
図12Bは、
図12Aの光路によって、シート基板P上に投射されるスポット光SPa、SPb、SPcの配置状態を示す図である。
【
図13】
図5A~
図5Cに示したビーム圧縮系OM2の変形例による構成を模式的に示す図である。
【
図14】
図4に示したビーム合成部BD1A(BD2A)の第2の実施の形態による構成を示す図である。
【
図15】
図14のビーム合成部BD1Aと、
図6のビームスイッチング部BD1Bと、描画ユニットMU3(又はMU1)とを用いたパターンの描画動作の一例を説明する図である。
【
図16】マトリックス状に配列される複数の矩形パターンの各々の周辺エッジ部に与える露光量を増大させる特殊露光の描画動作の一例を示す図である。
【
図17】2つの光源装置のみを用いた変形例4によるビーム合成部の概略的な構成を示す図である。
【
図18】
図18A~
図18Dは、
図17の構成を用いて、パターンのエッジ部の方向性に応じて切り換えられるスポット光SPb、SPcの各々の長軸方向の組合せを模式に表した図である。
【
図19】1つの光源装置LSeからのビームLBeによって、2つのスロット状(長楕円状)のスポット光SPb、SPcを作る光学構成の変形例を模式的に示す図である。
【
図20】光源装置とビーム形状変形部10B、10Cを含むビーム合成部BD1A(BD2A)との変形例による構成を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の態様に係るパターン露光装置及びパターン露光方法について、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下で詳細に説明する。なお、本発明の態様は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、多様な変更または改良を加えたものも含まれる。つまり、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれ、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0011】
〔第1の実施の形態〕
図1は、第1の実施の形態によるパターン露光装置の概略的な全体構成を示す斜視図である。本実施の形態のパターン露光装置は、
図1に示すように、フレキシブルな長尺のシート基板P(以下、単に基板Pとも言う)上に塗工された感光層(レジスト層)に、電子デバイス(表示デバイス、配線デバイス、センサーデバイス等)に対応した各種のパターンをスポット光の走査によりマスクレス方式で露光する。このようなパターン露光装置は、例えば、国際公開第2015/152218号、国際公開第2015/166910号、国際公開第2016/152758号、国際公開第2017/057415号等に開示されている。
【0012】
図1に示すように、本実施の形態のパターン露光装置EXは、重力方向をZ軸とする直交座標系XYZのXY面と平行な設置場所(工場等)の床面に設置される。露光装置EXは、シート基板Pを安定に支持して一定速度で長尺方向に搬送する為の回転ドラムDRと、シート基板Pの感光層にパターンを描画する4つの描画ユニットMU1~MU4と、奇数番の描画ユニットMU1、MU3の各々に描画用のビームB1、B3を供給する為の3つの光源装置LS1A、LS1B、LS1C(総称する場合は光源装置LS1とする)と、偶数番の描画ユニットMU2、MU4の各々に描画用のビームB2、B4(
図1では不図示)を供給する為の3つの光源装置LS2A、LS2B、LS2C(総称する場合は光源装置LS2とする)と、ビーム合成部BD1A、BD2Aと、ビームスイッチング部BD1B、BD2Bとを備えている。
【0013】
ビーム合成部BD1Aは、光源装置LS1A、LS1B、LS1Cの各々からのビームを所定の条件(詳細は後述する)で合成して、ビームスイッチング部BD1Bに送出すると共に、光源装置LS1B、LS1Cの各々からのビームについては、その断面形状を円形からスロット形状(長楕円形状)に変形する。同様に、ビーム合成部BD2Aは、光源装置LS2A、LS2B、LS2Cの各々からのビームを所定の条件(詳細は後述する)で合成して、ビームスイッチング部BD2Bに送出すると共に、光源装置LS2B、LS2Cの各々からのビームについては、その断面形状を円形からスロット形状(長楕円形状)に変形する。なお、光源装置LS1A、LS2Aの各々からのビームについては、その断面形状をほぼ円形のままにしてある。光源装置LS1、LS2の各々は、例えば、国際公開第2015/166910号、国際公開第2017/057415号に開示されているようなファイバーアンプレーザ光源であり、波長400nm以下の紫外波長帯に中心波長を有する紫外ビームを、描画データ(「0」、「1」の2値で表される画素ビットデータ)に応じて、数百MHz(例えば、400MHz)でバースト状にパルス発振する。
【0014】
ビームスイッチング部BD1Bは、合成された3本のビームを同時又は非同時に直列に通すように配置される初段の音響光学変調素子と2段目の音響光学変調素子とを備える。初段の音響光学変調素子で回折偏向されたビームは奇数番の描画ユニットMU3に送出され、2段目の音響光学変調素子で回折偏向されたビームは奇数番の描画ユニットMU1に送出される。同様に、ビームスイッチング部BD2Bは、合成された3本のビームを同時又は非同時に直列に通すように配置される初段の音響光学変調素子と2段目の音響光学変調素子とを備える。初段の音響光学変調素子で回折偏向されたビームは偶数番の描画ユニットMU4に送出され、2段目の音響光学変調素子で回折偏向されたビームは偶数番の描画ユニットMU2に送出される。
【0015】
回転ドラムDRは、XY面のY軸と平行な回転中心線AXoから一定半径の円筒状の外周面と、回転中心線AXoと同軸に回転ドラムDRのY方向の両端側に突出したシャフトSftとを有する。シート基板Pは、回転ドラムDRのほぼ半周分の外周面に沿って長尺方向に密着支持され、不図示の回転駆動モータからの回転トルクによる回転ドラムDRの等速回転によって長尺方向に一定の速度で搬送される。なお、シート基板Pの母材は、PET(ポリエチレン・テレフタレート)フィルム、PEN(ポリエチレン・ナフタレート)フィルム、ポリイミドフィルム等の樹脂材とするが、その他に、例えば厚さ100μm以下の極薄のシート状に形成して可撓性を持たせたガラス材、圧延等で薄くシート状に形成したステンレス等の金属材、或いはセルロースナノファイバーを含有する紙材等であっても良い。
【0016】
複数の描画ユニットMU1~MU4は、回転ドラムDRの上方空間にY方向に並ぶように配置されるが、奇数番の描画ユニットMU1、MU3の各々と、偶数番の描画ユニットMU2、MU4の各々とは、XZ面内で見たとき、YZ面と平行で回転中心線AXoを含む中心面に対して対称に配置される。奇数番の描画ユニットMU1、MU3の各々は、シート基板Pに投射されるビームB1、B3(ビームB3は
図1では不図示)の中心線の延長が回転中心線AXoに向かうと共に、XZ面内で見たときに中心面から反時計回りに一定角度(θu)だけ傾くように配置される。同様に、偶数番の描画ユニットMU2、MU4の各々は、シート基板Pに投射されるビームB2、B4(ビームB4は
図1では不図示)の中心線の延長が回転中心線AXoに向かうと共に、XZ面内で見たときに中心面から時計回りに一定角度(θu)だけ傾くように配置される。
【0017】
描画ユニットMU1~MU4の各々は、例えば、国際公開第2016/152758号、国際公開第2019/082850号に開示されているように、複数のミラー、複数のレンズ、回転ポリゴンミラーPM、及びテレセントリックなfθレンズ系FT等を有する。ビームスイッチング部BD1Bから射出されて、対応する奇数番の描画ユニットMU1、MU3の各々に入射するビームB1、B3の中心線の延長、及び、ビームスイッチング部BD2Bから射出されて、対応する偶数番の描画ユニットMU2、MU4の各々に入射するビームB2、B4の中心線の延長は、それぞれ回転ドラムDRの回転中心線AXoと交差するように設定される。そして、描画ユニットMU1~MU4の各々の回転ポリゴンミラーPMの回転によって、シート基板P上で走査されるビームB1~B4の各々のスポット光の軌跡としての描画ラインSL1~SL4(SL3、SL4は不図示)はY軸と平行に設定される。
【0018】
描画ラインSL1~SL4の各々によって描画されるパターンは、シート基板Pの長尺方向の移動に伴ってY方向に継ぎ合せて露光される。なお、描画ユニットMU1~MU4の内部では、入射するビームB1~B4の各々と平行に設定されるZt軸と、それぞれZt軸と直交するXt軸、Yt軸とで規定される直交座標系XtYtZtを設定する。従って、その直交座標系XtYtZtのYt軸は、直交座標系XYZのY軸と平行であると共に、直交座標系XtYtZtは、直交座標系XYZのXY面に対してY軸の回りに一定角度(θu)だけ傾いたものとなる。
【0019】
図2は、
図1に示した描画ユニットMU1~MU4のうち、代表して描画ユニットMU1の概略的な内部構成を示す斜視図である。
図2の描画ユニットMU1の構成は、例えば国際公開第2016/152758号に開示された構成とほぼ同じなので、簡単に説明する。ビームスイッチング部BD1BからのビームB1には、パターンの描画時に、3つの光源装置LS1A、LS1B、LS1Cの各々から射出されるビームから作られる3本のビームB1a、B1b、B1cのうちの少なくとも1本が含まれる。3本のビームB1a、B1b、B1c(総称する際はビームB1とする)は、いずれも直径が1mm以下の平行光束であって、互いに所定の交差角を保って描画ユニットMU1内のミラーM10に入射する。ミラーM10で90度に反射されたビームB1は、光軸AXu1に沿って配置されるレンズLGa、LGbによるビームエキスパンダー(拡大系)BEXを通った後、ミラーM11で90度に反射されて偏光ビームスプリッタPBSに入射する。
【0020】
ビームB1は、Zt軸方向と直交した方向の直線偏光とされるので、偏光ビームスプリッタPBSで効率的に反射されて、ミラーM12で90度に反射されて-Zt方向に進み、ミラーM13で90度に反射されて+Xt方向に進む。ミラーM13で反射されたビームB1は、1/4波長(λ/4)板QPと、第1シリンドリカルレンズCYaを通った後、ミラーM14で反射されて、回転ポリゴンミラーPMの1つの反射面Rp1に達する。回転ポリゴンミラーPMの反射面Rp1で反射されたビームB1は、回転ポリゴンミラーPMの回転によってXtYt面内で偏向され、Xt軸と平行な光軸AXf1を有するテレセントリックなfθレンズ系FTに入射する。
【0021】
fθレンズ系FTの直後には、光軸AXf1を90度に折り曲げるミラーM15が配置され、fθレンズ系FTから射出したビームB1は、ミラーM15でZt軸と平行になるように90度に反射される。ミラーM15とシート基板Pとの間には、第2シリンドリカルレンズCYbが配置され、fθレンズ系FTから射出されるビームB1(3つのビームB1a、B1b、B1cの少なくとも1つを含む)は、シート基板P上でスポット光SPa、SPb、SPcの少なくとも1つとなって集光される。そのスポット光SPa、SPb、SPcは、回転ポリゴンミラーPMの回転によってYt軸(Y軸)と平行な描画ライン(走査線)SL1に沿って一次元に走査される。なお、
図2中の線LE1は、ミラーM10から第2シリンドリカルレンズCYbまでの光学部材を含む描画ユニットMU1の全体を微少回転させて描画ラインSL1を傾ける際の回転中心線を表す。線LE1の延長線は、描画ラインSL1のYt方向の中点を通ると共に、ミラーM10に入射するビームB1(B1a、B1b、B1cの全体)を射出するビームスイッチング部BD1B内のレンズ系の光軸と同軸に設定されている。
【0022】
図2に示した描画ユニットMU1において、偏光ビームスプリッタPBSを挟んでミラーM12の反対側に配置されるレンズ系LGcと光電センサDTは、スポット光SPの投射によりシート基板Pから発生する反射光を受光する。光電センサDTからの光電信号の波形を解析することで、シート基板P上に既に形成されているパターンの位置情報を得ることもできる。また、
図2において、ビームエキスパンダーBEXの内部の面OPaは、レンズLGaの後側焦点であると共に、レンズLGbの前側焦点に設定されており、ビームB1(B1a、B1b、B1cの少なくとも1つ)は面OPaの位置で断面寸法が数十μmのビームウェストに集光される。面OPaは、最終的にシート基板Pの表面と光学的に共役な関係(結像関係)になっている。レンズLGbを通ったビームB1a、B1b、B1cの各々の断面寸法(直径等)は数mm以上に拡大された平行光束となる。なお、第1シリンドリカルレンズCYa、第2シリンドリカルレンズCYbは、fθレンズ系FTと協働して、回転ポリゴンミラーPMの反射面毎の倒れの違いによるスポット光SP(描画ラインSL1)のXt方向の位置変動を補正する。
【0023】
図3A、
図3Bは、
図2の描画ユニットMU1内のビームエキスパンダーBEXを通るビームB1(B1a、B1b、B1c)の状態を誇張して示した図である。
図3Aでは、ビームエキスパンダーBEXの構成が、他の描画ユニットMU2、MU3、MU4でも同じなので、ビームエキスパンダーBEXに入射するビームをBn(n=1~4)と一般化して表し、ビームBnに含まれる3本のビームもBna、Bnb、Bnc(n=1~4)と一般化して表し、更に光軸もAXun(n=1~4)と一般化して表す。本実施の形態では、光源装置LS1A、LS2Aの各々からビーム合成部BD1A、BD2Aとビームスイッチング部BD1B、BD2Bとを介して、ビームエキスパンダーBEXのレンズLGaに入射するビームBna(n=1~4)は、光軸AXun(n=1~4)と同軸になるように設定されている。
【0024】
一方、光源装置LS1B、LS2Bの各々からビーム合成部BD1A、BD2Aとビームスイッチング部BD1B、BD2Bとを介して生成されるビームBnb(n=1~4)は、XtYt面と平行な光軸AXun(n=1~4)を含む面内で光軸AXun(n=1~4)に対して一定の角度で傾いてビームエキスパンダーBEXのレンズLGaに入射する。同様に、光源装置LS1C、LS2Cの各々からビーム合成部BD1A、BD2Aとビームスイッチング部BD1B、BD2Bとを介して生成されるビームBnc(n=1~4)は、XtYt面と平行な光軸AXun(n=1~4)を含む面内で光軸AXun(n=1~4)に対して一定の角度で傾いてビームエキスパンダーBEXのレンズLGaに入射する。ビームエキスパンダーBEXに入射する2つのビームBnb、Bnc(n=1~4)は、光軸AXun(n=1~4)或いはビームBna(n=1~4)を挟んで対称的な傾きを持ってレンズLGaに入射する。
【0025】
レンズLGaに入射するビームBna(n=1~4)は平行光束なので、ビームエキスパンダーBEX内での瞳面に相当する面OPaには、
図3Bに示すように、ビームBnaのビームウェストによる円形のスポットSPa’が光軸AXun(n=1~4)上に形成される。同様に、レンズLGaに入射するビームBnb、Bnc(n=1~4)も平行光束なので、ビームエキスパンダーBEX内の面OPaには、
図3Bに示すように、ビームBnbのビームウェストによるスポットSPb’とビームBncのビームウェストによるスポットSPc’とが、光軸AXun(スポットSPa’)を挟んだYt方向の対称的な位置に形成される。先に説明したように、ビームBnb、Bncの断面形状は、それぞれビーム合成部BD1A、BD2Aによってスロット状(長楕円状)に成形されている為、スポットSPb’、SPc’の各々もスロット状(長楕円状)になっている。
【0026】
但し、スロット状(長楕円状)のスポットSPb’の断面分布の長軸方向は、面OPa内でYt軸に対して+45度に設定され、スロット状(長楕円状)のスポットSPc’の断面分布の長軸方向は、面OPa内でYt軸に対して-45度に設定されている。また、面OPa内で、スポットSPb’の断面分布の中心点は円形のスポットSPa’の断面分布の中心点(光軸AXun)から間隔Δyb’だけ離れ、スポットSPc’の断面分布の中心点はスポットSPa’の断面分布の中心点(光軸AXun)から間隔Δyc’だけ離れるように設定されているものとする。
【0027】
面OPaで収斂したビームBna、Bnb、Bncは、それぞれ発散しながらビームエキスパンダーBEXのレンズLGbに入射する。その際、レンズLGaからレンズLGbの間の光路において、ビームBna、Bnb、Bncの各々の主光線(中心光線)は光軸AXunとほぼ平行になるように設定されている。レンズLGbを通ったビームBnaは、断面分布が拡大された円形の平行光束となって光軸AXunと同軸に進む。また、レンズLGbを通ったビームBnb、Bncの各々は、断面分布が拡大されたスロット状(長楕円状)の平行光束となって光軸AXunに対して傾いて進む。先の
図2で説明したように、面OPaは最終的にシート基板Pの表面と光学的に共役な関係になっている。その為、面OPaに形成されるスポットSPa’、SPb’、SPc’の投影像が、レンズLGb、第1シリンドリカルレンズCYa、fθレンズ系FT、第2シリンドリカルレンズCYbによる結像系を介して、それぞれ
図2中のスポット光SPa、SPb、SPcとしてシート基板P上に縮小して結像される。
【0028】
本実施の形態では、
図3Bに示したように、スポットSPa’とスポットSPb’のYt方向の間隔Δyb’、すなわち、シート基板Pの表面に投射されるスポット光SPaとスポット光SPbのYt方向(主走査方向)の中心間隔は、
図3Aに示したビームBnbの主光線(中心光線)の光軸AXunからの傾き角の正弦値に比例したものとなる。同様に、面OPa上のスポットSPa’とスポットSPc’のYt方向の間隔Δyc’、すなわち、シート基板Pの表面に投射されるスポット光SPaとスポット光SPcのYt方向(主走査方向)の中心間隔は、
図3Aに示したビームBncの主光線(中心光線)の光軸AXunからの傾き角度の正弦値に比例したものとなる。なお、シート基板P上に投射されるスポット光SPa、SPb、SPcの各々は、
図3AのスポットSPa’、SPb’、SPc’の断面形状及び配置関係と相似になっている。また、スポット光SPa、SPb、SPcは、描画するパターンの形状に応じて、少なくとも1つが選択されてシート基板P上に投射される。
【0029】
以上の構成では、描画ユニットMU1(他のユニットMU2~MU4も同様)内にシート基板Pの表面(スポット光SPa、SPb、SPcの結像面)と共役な面OPaを形成したが、ビームエキスパンダーBEXのレンズLGaを描画ユニットMU1の外側に配置し、描画ユニットMU1内のミラーM10が面OPaとレンズLGbとの間に位置するようにしても良い。また、ビームエキスパンダーBEXは拡大系に限定されず、等倍のリレー系であっても良い。
【0030】
次に、
図4、
図5A~
図5Cを参照して、
図1に示した光源装置LS1(LS1A、LS1B、LS1C)からの3本のビームLB1a、LB1b、LB1cの各々の断面分布を所定の形状にして、所定の交差角で合成するビーム合成部BD1Aの構成を説明する。
図4は、XY面内で見た光源装置LS1A、LS1B、LS1Cとビーム合成部BD1Aとの概略的な配置関係を示し、
図5A~
図5Cは、
図4中に示したビーム形状変形部10B(又は10C)内の光学部材の配置を模式的に表した図である。なお、
図1に示した光源装置LS2A、LS2B、LS2Cとビーム合成部BD2Aの配置関係や構成は、
図4と同様である。
【0031】
光源装置LS1A、LS1B、LS1Cは、同一規格のファイバーアンプレーザ光源であり、共通のクロック信号CLKの各クロックパルスに応答して、発光時間が数十ピコ秒程度の高輝度の紫外パルスビームを発振させることができる。クロック信号CLKの周波数は実用性と安定性の観点から、一例として400MHz程度に設定される。光源装置LS1A、LS1B、LS1Cの各々には、描画データ(ビットマップ形式)の画素ビットのデータ(「0」か「1」)を描画ラインに沿ってシリアルに読み出されるビットストリーム状の描画信号SDa、SDb、SDcがそれぞれ供給される。その描画動作の詳細については後述する。
【0032】
光源装置LS1AからのビームLB1a(直径が0.5~1mm程度の円形断面の平行光束で、描画ユニットMU1、MU3に供給されるビームBnaに対応)は、ビーム形状変形部10Aに入射する。ビームLB1aは、先の
図3A、
図3Bで説明したように、断面分布がほぼ円形のままで良いので、ビーム形状変形部10Aは省略しても良いが、他のビームLB1b、LB1cが入射するビーム形状変形部10B、10C内のレンズ系による光学的な光路長と合わせる為に設けられている。ビーム形状変形部10Bは、光源装置LS1BからのビームLB1b(直径が0.5~1mm程度の円形断面の平行光束で、描画ユニットMU1、MU3に供給されるビームBnbに対応)を入射して、断面分布がスロット状(長楕円状)の平行光束に変換する。同様に、ビーム形状変形部10Cは、光源装置LS1CからのビームLB1c(直径が0.5~1mm程度の円形断面の平行光束で、描画ユニットMU1、MU3に供給されるビームBncに対応)を入射して、断面分布がスロット状(長楕円状)の平行光束に変換する。
【0033】
ビーム形状変形部10Bから+X方向に進むビームLB1bは、XY面内においてミラーM2Bで直角に反射されて+Y方向に進み、さらにミラーM3Bで直角に反射されて+X方向に進む。ビーム形状変形部10Cから+X方向に進むビームLB1cは、XY面内においてミラーM2Cで直角に反射されて-Y方向に進み、さらにミラーM3Cで直角に反射されて+X方向に進む。ビーム形状変形部10AからのビームLB1aは、ミラーM3BとミラーM3CとのY方向の隙間を通って、他のビームLB1b、LB1cとY方向の間隔を一定にした平行状態で+X方向に進む。XY面内でY方向に狭い間隔で並んだ3本のビームLB1a、LB1b、LB1c(いずれも平行光束)は、それぞれ石英による平行平板12A、楔状のプリズム12B、12Cに入射する。
【0034】
平行平板12Aは、ビームLB1aに対して垂直に配置されるので、そのまま透過するが、楔状のプリズム12B、12Cは、ビームの入射面と出射面とが非平行でXY面内において所定の角度(頂角)を成している為、プリズム12Bを透過したビームLB1bは、XY面内でビームLB1aに近づくように屈折され、プリズム12Cを透過したビームLB1cは、XY面内でビームLB1aに近づくように屈折される。平行平板12A、プリズム12B、12Cを通った3本のビームLB1a、LB1b、LB1cは、ミラーM4で-Y方向に反射された後、面OPmで互いに交差してから再び離れながらレンズGK1に入射する。レンズGK1の前側焦点は面OPmの位置になるように設定されている。
【0035】
従って、レンズGK1を通ったビームLB1a、LB1b、LB1cは、それぞれレンズGK1の後側焦点の位置でビームウェストとなるように収斂すると共に、ビームLB1aの主光線(中心光線)はレンズGK1の光軸AXsと同軸になり、ビームLB1bの主光線(中心光線)とビームLB1cの主光線(中心光線)は、それぞれ光軸AXsから一定の間隔で互いに平行になる。なお、面OPm内では、3本のビームLB1a、LB1b、LB1c(それぞれ平行光束)が光軸AXsの位置で重なっている為、面OPmでは、ビームLB1aによる断面が円形の強度分布と、ビームLB1b、LB1cの各々による断面がスロット状(長楕円状)で長軸方向がほぼ90度を成す強度分布とが重なったものとなる。また、本実施の形態では、プリズム12B、12Cの頂角によって、
図3A、
図3Bに示した描画ユニットMU1(MU2~MU4)のビームエキスパンダーBEXのレンズLGaに入射する2本のビームBnb、Bncの光軸AXunに対する傾き角が設定される。
【0036】
図4において、クロック信号CLKは、制御装置100内に設けられたクロック発生部100Aから出力され、描画信号SDa、SDb、SDcの各々は、制御装置100内に設けられた描画データ記憶部100Bから出力される。制御装置100内には、
図1に示したビームスイッチング部BD1B(BD2Bも同様)に設けられる音響光学変調素子に駆動信号を印加するスイッチング制御部100Cと、
図2に示した描画ユニットMU1、MU3(MU2、MU4も同様)内の各ポリゴンミラーPMの回転モータを制御したり、ポリゴンミラーPMの反射面毎に発生する原点信号(タイミング信号)を受信する描画ユニット制御部100Dと、
図1に示した回転ドラムDRの回転モータを制御したり、その回転角度位置を計測するエンコーダからの計測情報を受信する回転ドラム制御部100Eと、が設けられる。
【0037】
図4に示した描画データ記憶部100Bは、スポット光SPa、SPb、SPcによる描画ラインSL1、SL3(SL2、SL4も同様)に沿った1回の走査分の描画データ列(シリアルビット列)の読み出し動作を、描画ユニット制御部100Dが受信する原点信号(タイミング信号)に応答して開始すると共に、読み出すべき1回の走査分の描画データ列のアドレス切り替え動作を、回転ドラム制御部100Eが受信するエンコーダの計測情報に基づいて実行する。また、スイッチング制御部100Cも、描画ユニット制御部100Dが受信する描画ユニットMU1、MU3(MU2、MU4)の各々からの原点信号(タイミング信号)に応答して、ビームスイッチング部BD1B(BD2B)内の音響光学変調素子の変調のオン/オフを制御する。
【0038】
図5A~
図5Cは、ビーム形状変形部10B、10Cの各々の詳細な光学構成を示し、どちらも基本的な構成として、ビーム拡大系OM1、ビーム圧縮系OM2、ビーム縮小系OM3とを備える。光軸AXbに沿って配置されるビーム形状変形部10B側のビーム拡大系OM1とビーム縮小系OM3と、光軸AXcに沿って配置されるビーム形状変形部10C側のビーム拡大系OM1とビーム縮小系OM3とは、全て同じ光学部材により同様に構成されている。また、
図5Aと
図5Bとは、光軸AXb(AXc)の回りにビーム形状変形部10B、10Cを90度回転させた方向から見た図である。
【0039】
光源装置LS1B(LS1C)からのビームLB1b(LB1c)が入射するビーム拡大系OM1は、球面系の負レンズ10G1と球面系の正レンズ10G2とで構成され、ビームLB1b(LB1c)の断面分布の直径を数倍以上の分布BVaに拡大した平行光束に変換する。ビーム圧縮系OM2は、光軸AXb(AXc)に沿って配置される2つのシリンドリカルレンズ10G3、10G4で構成される。シリンドリカルレンズ10G3は、母線Dsの方向に関しては屈折力(パワー)を持たず、母線Dsと光軸AXb(AXc)の各々と直交した方向に関して正の屈折力(パワー)を有する凸状のレンズである。また、シリンドリカルレンズ10G4は、母線Dsの方向に関しては屈折力(パワー)を持たず、母線Dsと光軸AXb(AXc)の各々と直交した方向に関して負の屈折力(パワー)を有する凹状のレンズである。
【0040】
ビーム拡大系OM1からの拡大されたビームLB1b(LB1c)は、平行光束として、シリンドリカルレンズ10G3、10G4を通るが、
図5Aのように、光軸AXb(AXc)を含む母線Dsと平行な面内では、シリンドリカルレンズ10G3、10G4が単なる平行平板として機能するので、その平行状態のまま次のビーム縮小系OM3に入射する。一方、拡大されたビームLB1b(LB1c)は、
図5Bのように、光軸AXb(AXc)を含み母線Dsと直交した面内では、シリンドリカルレンズ10G3、10G4の屈折力によって、ビームの幅が縮小された平行状態となって次のビーム縮小系OM3に入射する。従って、シリンドリカルレンズ10G4から射出するビームLB1b(LB1c)の断面内の分布は、スロット状(長楕円状)の分布BVbのように成形される。
【0041】
ビーム縮小系OM3は、光軸AXb(AXc)に沿って配置された球面状の正レンズ10G5と球面状の負レンズ10G6とで構成され、ビーム圧縮系OM2から平行光束として射出されるビームLB1b(LB1c)の断面分布を等方的に縮小した平行光束に変換する。負レンズ10G6から射出するビームLB1b(LB1c)の断面分布は、母線Dsの方向を長軸とするスロット状(長楕円状)となり、一例として、長軸方向の幅は、ビーム形状変形部10Aから射出されるビームLB1aの円形の断面分布の直径とほぼ同じに設定される。また、負レンズ10G6から射出するビームLB1b(LB1c)の断面分布の短軸方向の幅は、長軸方向の幅の1/4~1/6程度に設定される。
【0042】
以上の
図5A~
図5Cの構成において、ビーム形状変形部10B側のビーム圧縮系OM2におけるシリンドリカルレンズ10G3、10G4の母線Dsの方向と、ビーム形状変形部10C側のビーム圧縮系OM2におけるシリンドリカルレンズ10G3、10G4の母線Dsの方向とは、光軸AXb、AXcと直交する面内で見たとき、約90度を成すように設定される。その状態は、
図5Cに示すように、例えば
図4中のミラーM2B、M2C側から見たとき、ビーム形状変形部10B側のシリンドリカルレンズ10G3、10G4の母線Dsは、Y軸から反時計回りに45度回転し、ビーム形状変形部10C側のシリンドリカルレンズ10G3、10G4の母線Dsは、Y軸から時計回りに45度回転するように設定される。その結果、ビーム形状変形部10Bから射出されるビームLB1bのスロット状(長楕円状)の断面分布の長軸方向と、ビーム形状変形部10Cから射出されるビームLB1cのスロット状(長楕円状)の断面分布の長軸方向とは、約90度の角度を成す。
【0043】
また、
図4に示したビーム形状変形部10Aは、他のビーム形状変形部10B、10Cと光路長を合わせる為、
図5A、
図5Bに示したビーム圧縮系OM2(2つのシリンドリカルレンズ10G3、10G4)の代わりに単なる平行平板(石英製)を挿入した構成になっている。従って、ビーム形状変形部10Aは、ビーム拡大系OM1、平行平板、ビーム縮小系OM3で構成される。但し、光路長を合せる必要が無い場合、ビーム形状変形部10A自体を省略することもできる。なお、2つのシリンドリカルレンズ10G3、10G4のいずれか一方、又は両方の入射面或いは出射面は、非球面レンズのように、完全な円筒面でなく、高次関数等で近似される近似円筒面としても良い。
【0044】
本実施の形態では、
図5Cに示すように、2つのシリンドリカルレンズ10G3、10G4の母線Dsの方向は、Y軸から約45度に設定されるが、2つのシリンドリカルレンズ10G3、10G4を一体的に鏡筒に保持し、その鏡筒を光軸AXb(AXc)の回りに回転可能に構成することで、スロット状(長楕円状)になるスポット光SPb、SPcの長軸方向をシート基板P上で任意の方向に設定(回転)することができる。なお、
図1に示したビーム合成部BD2Aの構成は、
図4に示したビーム合成部BD1AをZ軸と平行な軸線の回りに180度回転させた配置となっており、ビーム合成部BD2A内のビーム形状変形部10A、10B、10Cも、
図5A~
図5Cに示した光学部材と同様に構成される。
【0045】
図5A~
図5Cの構成では、ビーム圧縮系OM2の前にビーム拡大系OM1、後にビーム縮小系OM3を設けたが、それらを省略してビーム圧縮系OM2のみでビーム形状変形部10B、10Cを構成しても良い。しかしながら、最終的にシート基板P上に投射されるスロット状(又は長楕円状)のスポット光SPb、SPcの寸法(特に長軸方向の長さ)を調整する必要がある場合には、ビーム拡大系OM1とビーム縮小系OM3とを設けることによって、スポット光SPb、SPcの大きさを所望の寸法に設定することができる。
【0046】
次に
図6を参照して、
図1に示したビームスイッチング部BD1B、BD2Bの詳細な構成を説明する。ビームスイッチング部BD1B、BD2Bの基本的な構成は同じであり、
図1において、ビームスイッチング部BD2Bは、Z軸と平行な軸線の回りにビームスイッチング部BD1Bの全体を180度回転させた配置になっている。そこで、代表してビームスイッチング部BD1Bの構成を
図6に基づいて説明する。
図6は、
図4で示したビーム合成部BD1A中のレンズGK1から奇数番の描画ユニットMU1、MU3に至るまでのビームスイッチング部BD1Bの概略的な光路を表わした斜視図であり、直交座標系XYZは
図1中の座標系XYZと同じに設定される。
【0047】
レンズGK1からのビームLB1(LB1a、LB1b、LB1c)は、光軸AXsと平行に-Y方向に進み、ビームスプリッタM40によって-Z方向に垂直に反射され、ミラーM41、ミラーM42によって-X方向に進むように偏向されて、レンズGK2に入射する。ビームスプリッタM40は、ビームLB1(LB1a、LB1b、LB1c)の光量の数%以下の光量成分を透過させた計測ビームMLBとし、残りの光量成分を-Z方向に反射させる。計測ビームMLBは不図示のビームモニター系に入射され、ビームモニター系は3つのビームLB1a、LB1b、LB1cの各々の光量(光強度、又は光エネルギー)やビーム間の位置関係の変動等を計測する。
【0048】
図6において、ビームスプリッタM40とミラーM41との間の面OPsは、レンズGK1の後側焦点の位置であり、面OPsでは、ビームLB1a、LB1b、LB1cの各々のビームウェスト(スポット)が先の
図3BのようにY方向に並ぶ。面OPsから発散光束となって進むビームLB1aの主光線(中心光線)は光軸AXsと同軸であり、面OPsから発散光束となって進むビームLB1b、LB1cの各々の主光線(中心光線)は、いずれも光軸AXsと平行である。前側焦点の位置が面OPsとなるように配置されたレンズGK2を通ったビームLB1a、LB1b、LB1cは、それぞれ平行光束に変換されると共に、
図6中のXY面内で互いに所定の角度で交差するように傾けられる。
【0049】
レンズGK2を-X方向に通ったビームLB1a、LB1b、LB1cは、初段の音響光学変調素子AM3に入射する。その際、3つのビームLB1a、LB1b、LB1cが、音響光学変調素子AM3の結晶内のXY面と平行な面内で交差するように、レンズGK2の後側焦点の位置に音響光学変調素子AM3が配置されている。従って、レンズGK1とレンズGK2とによるリレー光学系によって、
図4に示した面OPmと初段の音響光学変調素子AM3とは共役関係になっている。音響光学変調素子AM3は、入射するビームに対してブラッグ回折の条件となるように設置され、その回折方向は-Z方向となっている。そして、音響光学変調素子AM3がオン状態(高周波の駆動信号が印加中の状態)の間、音響光学変調素子AM3からは、入射したビームLB1a、LB1b、LB1cの各々の0次ビーム(平行光束)と1次回折ビーム(平行光束)とが発生する。それらの0次ビームと1次回折ビームとは、ミラーM43、M44によって折り返し反射され、+X方向に進んでレンズGK3に入射する。
【0050】
レンズGK3の前側焦点の位置は音響光学変調素子AM3の結晶内に設定されているので、レンズGK3から+X方向に進むビームLB1a、LB1b、LB1cの各々の0次ビームの主光線(中心光線)と各々の1次回折ビームの主光線(中心光線)とは、光軸AXsと平行になると共に、互いにYZ面(光軸AXsと垂直な面)内では分離した状態になる。ビームLB1a、LB1b、LB1cの各々の1次回折ビームは、レンズGK3の後側焦点の位置に設けられた落射ミラーIM3の45度の反射面で選択的に-Z方向に反射され、ビームLB1a、LB1b、LB1cの各々の0次ビームは落射ミラーIM3の+Z方向の上方空間を通過する。なお、音響光学変調素子AM3をブラッグ回折の条件で用いる場合、発生する1次回折ビームの光量は入射ビームの80~90%となり、残りが0次ビームの光量となる。
【0051】
ここで、
図7A、
図7Bを参照して、音響光学変調素子AM3から落射ミラーIM3に至る光路内での各ビームの状態を詳細に説明する。
図7Aは、その光路をXY面内で見たものであり、
図7Bは、その光路をXZ面内で見たものである。
図7Aに示すように、XY面内で見たとき、平行光束となっているビームLB1a、LB1b、LB1cの各々は音響光学変調素子AM3の結晶内の位置Pe(レンズGK2の後側焦点であって、且つレンズGK3の前側焦点の位置)で交差する。
図7Bに示すように、音響光学変調素子AM3に入射するビームLB1a、LB1b、LB1cの各々は、XZ面内で見たときに光軸AXsに沿っているが、オン状態の音響光学変調素子AM3からは、ビームLB1aの0次ビームB3aoと1次回折ビームB3a、ビームLB1bの0次ビームB3boと1次回折ビームB3b、及びビームLB1cの0次ビームB3coと1次回折ビームB3cが発生し、1次回折ビームB3a、1次回折ビームB3b、1次回折ビームB3cはそれぞれの0次ビームに対して所定の回折角で-Z方向に偏向される。
【0052】
XY面内で見ると、0次ビームB3aoと1次回折ビームB3a、0次ビームB3boと1次回折ビームB3b、並びに0次ビームB3coと1次回折ビームB3cは、それぞれ上下に重なった状態となる。レンズGK3を通った0次ビームB3ao、B3bo、B3coの各々は、収斂光束になってXY面内で光軸AXsと平行に進み、落射ミラーIM3の反射面が位置する面Pso(レンズGK3の後側焦点の位置)でビームウェスト(スポット)になった後、落射ミラーIM3の+Z方向の上方空間を発散光束となって進む。レンズGK3を通った1次回折ビームB3a、B3b、B3cの各々も収斂光束となり、光軸AXsから-Z方向に一定距離だけ離れた光路を光軸AXsと平行に進み、面Psoでビームウェストになると共に、落射ミラーIM3の反射面で-Z方向に反射される。
【0053】
落射ミラーIM3の反射面で反射された1次回折ビームB3a、B3b、B3c(中心光線は互いに平行)は、発散光束となって、描画ユニットMU3に向かう。
図7A、
図7Bにおいて、落射ミラーIM3から描画ユニットMU3に向かう光路の光軸AXu3は、先の
図2、
図3A、
図3Bで説明したビームエキスパンダーBEX(レンズLGa、LGb)の光軸AXunに対応している。
【0054】
再び
図6の説明に戻り、音響光学変調素子AM3がオフ状態(高周波の駆動信号が非印加の状態)の場合、音響光学変調素子AM3に入射する3つのビームLB1a、LB1b、LB1cの各々は、回折されずにそのまま透過してレンズGK3に入射し、
図7A、
図7Bで示した0次ビームB3ao、B3bo、B3coと同じ光路に沿って落射ミラーIM3の上方空間を通過してミラーM45に達する。ミラーM45は、3つのビームLB1a、LB1b、LB1c(各々の中心光線は互いにXY面内で平行)を-Y方向に反射させてミラーM46に向ける。ミラーM46は、ビームLB1a、LB1b、LB1cを更に-X方向に反射させてレンズGK4に向ける。レンズGK4の前側焦点の位置は、落射ミラーIM3の反射面又はその極近傍に形成されるビームウェストの位置(
図7A、
図7B中の面Psoと同様の位置)に設定される。
【0055】
レンズGK4を通ったビームLB1aは平行光束に変換されて光軸AXsと同軸に進み、レンズGK4を通ったビームLB1b、LB1cの各々は平行光束に変換されると共に、ビームLB1a(光軸AXs)と交差するようにXY面内で傾いて進む。レンズGK4の後側焦点の位置には音響光学変調素子AM1が配置され、レンズGK4から射出した3つのビームLB1a、LB1b、LB1c(平行光束)は、先の
図7Aで示した状態と同様に音響光学変調素子AM1の結晶内で交差する。音響光学変調素子AM1がオン状態のとき、音響光学変調素子AM1からは、ビームLB1aの0次ビームB1aoと1次回折ビームB1a、ビームLB1bの0次ビームB1boと1次回折ビームB1b、並びにビームLB1cの0次ビームB1coと1次回折ビームB1cが、
図7A、
図7Bと同様の状態で射出する。
【0056】
音響光学変調素子AM1から射出する0次ビームB1ao、B1bo、B1co(いずれも平行光束)と、所定の回折角で-Z方向に偏向された1次回折ビームB1a、B1b、B1c(いずれも平行光束)とは、ミラーM47、M48によってXY面内で折り返されて+X方向に進み、レンズGK5に入射する。レンズGK5の前側焦点の位置は音響光学変調素子AM1の結晶内に設定され、レンズGK5の後側焦点の位置には、先の落射ミラーIM3と同様の落射ミラーIM1が配置される。先の
図7A、
図7Bで説明した状態と同様に、音響光学変調素子AM1がオン状態のとき、1次回折ビームB1a、B1b、B1cの各々は、落射ミラーIM1の45度の反射面又はその極近傍の位置でビームウェストに収斂されると共に、描画ユニットMU1側の光軸AXu1に沿って-Z方向に反射される。なお、以上の構成において、音響光学変調素子AM1と音響光学変調素子AM3は、2つのレンズGK3、GK4による等倍のリレー光学系(結像系)によって、互いに共役の関係に設定されている。
【0057】
図6、
図7A、
図7Bで示した奇数番側の落射ミラーIM1、IM3(偶数番側の落射ミラーIM2、IM4)の各々で反射されたビームBna、Bnb、Bnc(n=1~4)の各々は、その中心光線が光軸AXun(n=1~4)と平行であるが、発散光束である。その為、ビームBna、Bnb、Bncの各々を互いに交差する平行光束に変換する為、ビームスイッチング部BD1B、BD2Bの光路の終段には、
図8のようなレンズGK6が設けられる。
図8は、ビームスイッチング部BD1B、BD2Bの各々から描画ユニットMU1~MU4の各々のビームエキスパンダーBEXのレンズLGaに入射するビームBna、Bnb、Bncの状態を示す斜視図である。
【0058】
図8において、光軸AXunと同軸にレンズGK6に入射するビームBna(発散光束)は、レンズGK6から平行光束(直径1mm程度)となって、
図2で示したミラーM10で-Xt方向に直角に反射され、光軸AXunと同軸にビームエキスパンダーBEXのレンズLGaに入射する。レンズGK6とレンズLGaの間の光路中に設定される面Pe’は、レンズGK6の後側焦点の位置であると共に、レンズLGaの前側焦点の位置になっている。
【0059】
また、レンズGK6の前側焦点は、
図7A、
図7Bに示した面Psoの位置に設定されている。その為、レンズGK6に入射するビームBnb、Bnc(発散光束)の各々は、レンズGK6から平行光束(直径1mm程度)に変換されると共に、面Pe’内の光軸AXunの位置で交差し、ミラーM10で反射されてビームエキスパンダーBEXのレンズLGaを通って、描画ユニットMUn(n=1~4)内に導光される。ビームエキスパンダーBEXのレンズLGaを通ったビームBna、Bnb、Bncの各々は、先の
図3A、
図3Bで説明したように、光軸AXunと平行に進むと共に、それぞれ面OPaでスポットSPa’、SPb’、SPc’となるように収斂する。
【0060】
以上の
図1~
図8のように構成されたパターン露光装置EXによってシート基板P上にパターンを描画する動作の一例として、
図9A、
図9Bのようなパターンを描画する場合を説明する。
図9Aは、シート基板P上に露光される8本のラインによるライン&スペース(L&S)パターンPT1、PT2、PT3を表し、
図9Bは、そのパターンの拡大した一部分の領域Accの描画データ上の画素マップ(ビットマップ)情報を表す。このような画素マップ情報は、先の
図4に示した制御装置100内の描画データ記憶部100B内に予め記憶されている。
【0061】
図9Aにおいて、パターンPT1は、Xt方向(副走査方向)に線状に延びた線幅20μmの8本のライン(黒線)をYt方向(主走査方向)にスペース幅20μmで並べたL&Sパターンであり、パターンPT3は、Yt方向に線状に延びた線幅10μmの8本のライン(黒線)をXt方向にスペース幅10μmで並べたL&Sパターンである。そして、パターンPT2は、パターンPT1とパターンPT3の各々の8本のラインを、Xt方向やYt方向に対して約45度傾いた8本のラインで接続するL&Sパターンである。パターンPT2の8本のライン(黒線)の各々の線幅は約10μmで、スペース幅は約21.3μmに設定される。このようなパターンPT1、PT2、PT3の構成は、電子デバイス上の配線層として、度々、設けられる。
【0062】
図9Aに示した領域Acc内では、パターンPT2の斜めラインPT2aとパターンPT3のYt方向に延びた直線ラインPT3aとが約135度で接続され、パターンPT2の斜めラインPT2bとパターンPT3のYt方向に延びた直線ラインPT3bとが約135度で接続されている。その場合、
図9Bに示すように、領域Accに対応した画素マップ(ビットマップ)上では、1つの画素Picのサイズがシート基板P上で、例えば2×2μmの正方形で規定される為、直線ラインPT3a、PT3bの各々の線幅方向(Xt方向)はハッチングで示した5画素(5Pic)に設定される。そして、直線ラインPT3a、PT3bの間のXt方向のスペース幅も5画素(5Pic)に設定される。一方、45度の斜めラインPT2a、PT2bは、線幅が約10μmに設定されるので、Yt方向(又はXt方向)の寸法は約14.1μmとなり、Yt方向とXt方向の各々にハッチングで示した7画素(7Pic)が設定される。
【0063】
図9Bにおいて、画素Picは、描画データ上で1ビットの「0」又は「1」で規定され、例えば、画素Picが「1」のときは、スポット光SPa、SPb、SPcのいずれかがクロック信号CLKのクロックパルスに応答して、シート基板P上にパルス露光される。その際、
図9Bの領域Accにおける描画データは、スポット光の主走査方向が-Yt方向(
図9B中の左から右)に設定されている場合、描画データの1描画ライン分のデータ列、例えば
図9B中のデータ列AL1、AL2中の画素ビット情報は、クロック信号CLKに応答して、左から右に順次読み出される。その読み出されたビット情報が、
図4に示したビットストリーム状の描画信号SDa、SDb、SDcとして、光源装置LS1A、LS1B、LS1Cに印加される。なお、データ列AL1、AL2の各々は、
図1、
図2に示した描画ラインSLn(n=1~4)のYt方向の最大長をLmy(μm)とし、画素PicのYt方向の画素寸法をYpi(μm)としたとき、Lmy/Ypi分の画素数のビット列を有する。
【0064】
本実施の形態では、例えば、奇数番の描画ユニットMU1、MU3、MU5のいずれかが、
図9Aのような斜めラインを含むパターンを露光する際、光源装置LS1AからのビームLB1aによる円形のスポット光SPaと、光源装置LS1BからのビームLB1bによるスロット状のスポット光SPbと、光源装置LS1CからのビームLB1cによるスロット状のスポット光SPcとを、選択的に高速に切り換えながらパターン描画を行う。そこで、本実施の形態では、
図9Bに示したような描画データを基本描画データ(基本のデータ列ALx)とし、Xt方向に並ぶ画素の番地をxとしたとき、円形のスポット光SPaによって描画すべきパターン部分に対応した第1のデータ列ALxaと、-45度に傾いたスロット状のスポット光SPbによって描画すべきパターン部分に対応した第2のデータ列ALxbと、そして+45度に傾いたスロット状のスポット光SPcによって描画すべきパターン部分に対応した第3のデータ列ALxcとの3つのデータ列が生成されて記憶されるものとする。
【0065】
図10は、一例として、
図9Bに示したパターンPT2中の1本の斜めラインパターンの一部分を描画する場合の動作を説明する図である。
図10において、シート基板P上での画素PicのXt方向の寸法XpiとYt方向の寸法YpiはXpi=Ypiに設定される。円形のスポット光SPaの実効的な寸法(直径)は、画素Picの寸法Xpi、Ypiと同等、又はそれよりも少し大きい値に設定される。その実効的な直径とは、スポット光SPaの強度分布をガウス分布、或いは近似ガウス分布としたとき、ピーク強度の1/e
2又は1/2のレベルとなる直径を意味する。また、45度に傾いたスロット状(長楕円状)のスポット光SPb、SPcの各々の長軸方向の実効的な寸法も、正方形の画素Picの寸法Xpi、Ypi、或いは画素Picの対角寸法(Xpi、Ypiの約1.4倍)と同等、又はそれよりも少し大きい値に設定される。
【0066】
さらに、スポット光SPbの中心は、スポット光SPaの中心に対して-Yt方向に間隔ΔYbだけ離れ、スポット光SPcの中心は、スポット光SPaの中心に対して+Yt方向に間隔ΔYcだけ離れるように設定されている。
図10では、説明を分かり易くするため、間隔ΔYbと間隔ΔYcは等しく、2画素分の間隔である2・Ypiに設定されているものとするが、間隔ΔYb、ΔYcは、予め判っていれば2画素分以上であっても良い。なお、円形のスポット光SPaの実効的な寸法(直径)は、シート基板P上で設定される画素Picの寸法に対して、±50%の範囲内(好ましくは±30%の範囲内)であれば良い。
【0067】
図10のように、-45度で傾いた斜めラインパターンに対しては、-45度に傾いたスロット状のスポット光SPbが選択されて、クロック信号CLK(400MHz)の各クロックパルスに応答してスポット光SPbがパルス照射される。スポット光SPb(他のスポット光SPa、SPcも同様)のパルス照射は、主走査方向(Yt方向)に関して1つの画素Picに2パルス分となるように設定される。具体的には、クロック信号CLKの周期Tck(2.5nS)の間に、スポット光SPb(SPa、SPc)を画素PicのYt方向の寸法Ypiの1/2だけ移動させるように、ポリゴンミラーPMの回転速度の設定によって、スポット光SPb(SPa、SPc)の走査速度が0.5・Ypi/Tck(μm/nS)に設定される。
【0068】
同様に、Xt方向(副走査方向)に関しても、
図10に示すように、1つの画素Picに対して2回の描画ラインSL1a、SL1bが設定されるように、シート基板PのXt方向の移動速度、即ち回転ドラムDR(
図1参照)の回転速度が設定される。描画ラインSL1a、SL1bは、描画ユニットMU1(他の描画ユニットMU2~MU4も同様)に入射するビームB1b(他のビームB1a、B1cも同様)が、ポリゴンミラーPMの回転方向の隣り合った反射面の各々で反射された結果で生じたものである。従って、ポリゴンミラーPMの反射面が8面の場合、ポリゴンミラーPMが45°回転する間に、シート基板Pが画素PicのXt方向の寸法Xpiの1/2だけ移動するような速度関係に設定される。
【0069】
図10では、データ列AL1に沿って、-45度に傾いたスロット状のスポット光SPbが斜めラインパターン部(黒点が付された画素Pic)に照射されるように、画素ビット情報による描画信号SDb中のビット値「1」とクロック信号CLKのクロックパルスとに応じて、光源装置LS1Bのパルス発光が制御される。その間、
図10に示すように、他の光源装置LS1A、LS1Cの各々に印加される描画信号SDa、SDcの画素ビット情報はビット値「0」になっている為、スポット光SPa、SPcによるパルス照射は行われない。
【0070】
図10のように、描画信号SDa、SDb、SDcの各々に含まれる同一の画素に対する画素ビット情報を選択的にビット値「0」、「1」のいずれかに設定することで、3つのスポット光SPa、SPb、SPcのいずれか1つを選択して、
図9Aに示した斜めラインを含むパターンPT2や、Xt方向又はYt方向に直線的なラインを含むパターンPT1、PT3の各々に対して、露光されたパターンのエッジ部のギザギザを低減することができる。
【0071】
図11は、
図9Bに示した斜め線の一部を描画する為の描画データのうち、
図9B中の領域Acc内における画素データ列AL1、AL2の各々に対応した画素ビット情報(描画信号SDa、SDb、SDc)の状態を説明する図である。データ列AL1又はAL2は、主走査方向に一列に並ぶ画素列中に、斜めラインPT2a、PT2bの部分と直線ラインPT3bの部分との両方を含む。データ列AL1、AL2とも、
図9Bの領域Accは、主走査方向に関して37画素で規定される。スポット光SPaでパターン描画する為の描画信号SDaが設計上のデータ列AL1から生成されるものとすると、読み出しの最初となる
図9B中の最左端の1画素目~4画素目にはビット値「0」(非描画)が記憶され、5画素目~11画素目(ハッチングした7画素分)には斜めラインPT2aに対応したビット値「1」(描画)が記憶され、12画素目~27画素目にビット値「0」(非描画)が記憶され、28画素目~37画素目に斜めラインPT2bの左側のエッジ画素と直線ラインPT3bとに対応したビット値「1」(描画)が記憶されている。
【0072】
同様に、設計上のデータ列AL1に対して副走査方向に一段ずれた設計上のデータ列AL2には、6画素目~12画素目(ハッチングした画素Pic)に斜めラインPT2aに対応したビット値「1」(描画)が記憶され、13画素目~28画素目にビット値「0」(非描画)が記憶され、29画素目~37画素目に斜めラインPT2bの左側のエッジ画素と直線ラインPT3bとに対応したビット値「1」(描画)が記憶されている。
【0073】
先の
図10で説明したように、-45度に傾いた斜めラインPT2aはスポット光SPbで露光するので、設計上のデータ列AL1(描画信号SDa)に対応した描画信号SDb上のデータ列には、3画素目~9画素目(7画素分)にビット値「1」が設定される。
図10で説明したように、スポット光SPbは、主走査方向に関してスポット光SPaよりも2画素分(ΔYb)だけ先行してパターン描画する位置に設定されている為、描画信号SDbを生成するデータ列は、描画信号SDaを生成する設計上のデータ列AL1に対して、全体的に2画素分(2ビット分)先行するようにビット値が設定される。
【0074】
さらに、設計上のデータ列AL1には、28画素目に斜めラインPT2bの左側のエッジ画素の為のビット値「1」が記憶され、引き続く29画素以降に直線ラインPT3bに対応したビット値「1」が記憶されている。設計上のデータ列AL1中の28画素目をスポット光SPbの2パルス分で露光する為に、設計上のデータ列AL1で生成される描画信号SDa上では、28画素目がビット値「0」(非描画)に設定され、引き続く29画素目以降がビット値「1」に設定される。併せて、描画信号SDbを生成するデータ列では、設計上のデータ列AL1の28画素目よりも2画素先行した26画素目にビット値「1」が設定される。
【0075】
また、
図9Bに示した領域Accでは、+45度に傾いた斜めラインのパターンが存在しないので、
図11中の描画信号SDcを生成するデータ列中の全画素はビット値「0」(非描画)に設定される。なお、スポット光SPcで+45度に傾いた斜めライン(又は斜めエッジ部)を描画する場合、描画信号SDcを生成するデータ列中の所定の画素にビット値「1」が設定される。その場合、スポット光SPcは主走査方向に関してスポット光SPaよりも2画素分(ΔYc)だけ遅延してパターン描画する位置に設定されている為、描画信号SDcを生成するデータ列は、描画信号SDaを生成する設計上のデータ列AL1に対して、全体的に2画素分(2ビット分)後行(遅延)するようにビット値が設定される。
【0076】
データ列AL2に関しても、同様に、設計上のデータ列AL2(描画信号SDa)に対応して2画素分先行する描画信号SDb上のデータ列には、4画素目~10画素目(7画素分)にビット値「1」が設定される。さらに、設計上のデータ列AL1上では、29画素目に斜めラインPT2bの左側のエッジ画素が位置するので、描画信号SDb上のデータ列上では、2画素先行した27画素目にビット値「1」が設定され、それ以降の28画素目以降はビット値「0」に設定される。一方、設計上のデータ列AL1で生成される描画信号SDa上では、29画素目がビット値「0」(非描画)に設定され、引き続く30画素目以降がビット値「1」に設定される。
【0077】
以上のように、描画信号SDa、SDb、SDcの各々は、スポット光SPa、SPb、SPcの1回の走査中にクロック信号CLKの2クロックパルス毎に読み出されるデータ列(AL1、AL2等)を、スポット光SPa、SPb、SPcの主走査方向に関する相対的な間隔ΔYb、ΔYcに対応した分だけビットシフトさせて生成される。スポット光SPbとスポット光SPcとは、主走査方向に間隔(ΔYb+ΔYc)だけずれているので、描画信号SDbを生成するデータ列と描画信号SDcを生成するデータ列とは、間隔(ΔYb+ΔYc)に相当するビット数(ここでは4画素分)だけシフトしたものとなっている。
【0078】
以上、本実施の形態では、描画すべきパターンに斜めラインパターン又は斜めエッジ部が含まれる場合でも、円形のスポット光SPaによる描画と、傾斜したスロット状(長楕円状)のスポット光SPb又はSPcによる描画とを、描画データ上の画素単位で正確に切り換えることができる。特に、スポット光SPaの実効的な直径φsとスポット光SPb、SPcの寸法(長軸方向の長さ)とを、大きく変えることなく概ね揃えることで、斜めラインパターンや斜めエッジ部に生じるギザギザを低減できると共に、線幅も正確に維持することができる。また、
図4、
図5A~
図5Cに示したビーム合成部BD1A(BD1B)の構成では、3つの光源装置LS1A、LS1B、LS1C(LS2A、LS2B、LS2C)の各々からのビームLB1a、LB1b、LB1cの偏光状態(直線偏光の方向)を揃えて、初段の音響光学変調素子AM3(AM4)に入射させることができる。
【0079】
また、本実施の形態では、スロット状(長楕円状)のスポット光SPb、SPcの各々の長軸方向を、主走査方向(又は副走査方向)に対して45度傾けたものとしたが、これは、多くの電子デバイス用のパターン設計、特に配線設計で45度傾いた配線やパターンエッジが多用されるからである。しかしながら、描画すべきパターン中に、45度から外れた角度β(主走査方向、又は副走査方向に対する傾き角)の配線(ラインパターン)やパターンエッジ部が含まれる場合でも、角度βが、|β-45°|≦20°の範囲、即ち、25°≦β≦65°の範囲であれば、45度に傾いたスロット状(長楕円状)のスポット光SPb、SPcによる選択な露光によって、斜めエッジ部のギザギザを低減させる効果が得られる。
【0080】
さらに本実施の形態では、先の
図5A~
図5Cで説明したように、スポット光SPb、SPcの各々の長軸方向を、ビーム圧縮系OM2の光軸AXb(AXc)回りの回転で、任意の方向(実用上は0°~90°の範囲で事足りる)に設定可能である。そこで、シート基板P上に露光する電子デバイス用のパターン中に現れる斜めラインや斜めエッジ部の各々の主走査方向(Yt方向)に対する角度を集計し、最も頻度が高い角度(高頻度角度)を求め、その高頻度角度に対応するように、スポット光SPb、SPcの各々の長軸方向を設定することもできる。なお、ビーム圧縮系OM2は回転させずに、ビーム圧縮系OM2の後に、台形状プリズム又は3つの反射面によるイメージローテータを設けて、光軸AXb(AXc)の回りに回転させても良い。
【0081】
〔変形例1〕
変形例1は、ビームスイッチング部BD1B(BD2B)内の音響光学変調素子AM1、AM3(AM2、AM4)の各々を、先の
図6に示した状態から光軸AXs回りに90°回転させたものである。
図12Aは、
図6中の初段の音響光学変調素子AM3、レンズGK3、落射ミラーIM3に、ミラーM30、M32を追加した光路を、直交座標系XYZのXY面内で見た図であり、
図12Bは
図12Aの光路によって、シート基板P上に投射されるスポット光SPa、SPb、SPcの配置状態を示す図である。
【0082】
本変形例では、
図12Bに示すように、3つのスポット光SPa、SPb、SPcが副走査方向(Xt方向)に所定の間隔で並ぶように配置する。ここでは、一例として、円形のスポット光SPaによる描画ラインSLna(n=1~4)に対して、-45度に傾斜したスロット状のスポット光SPbによる描画ラインSLnb(n=1~4)は、-Xt方向に5ライン分に相当する間隔ΔXbだけシフトした位置に設定され、+45度に傾斜したスロット状のスポット光SPcによる描画ラインSLnc(n=1~4)は、+Xt方向に5ライン分に相当する間隔ΔXcだけシフトした位置に設定される。また、先の
図10で説明したように、ポリゴンミラーPMの隣り合った反射面の各々で走査されたスポット光による描画ラインのXt方向の間隔は、画素PicのXt方向の寸法Xpiの1/2に設定されている。
【0083】
3つのスポット光SPa、SPb、SPcをXt方向に並べる為に、
図12Aに示すように、
図6に示した初段の音響光学変調素子AM3(後段の音響光学変調素子AM1も同様)を光軸AXsの回りに90度回転させて、音響光学変調素子AM3(AM1)の回折方向をXY面内の-Y方向に設定する。さらに、音響光学変調素子AM3(AM1)の結晶内の位置Pe(
図7A、
図7B参照)で交差する3本のビームLB1a、LB1b、LB1c(平行光束)の各々も、XZ面と平行な面に沿って音響光学変調素子AM3(AM1)に入射させる。その為に、例えば、
図4に示した平行平板12A、楔状プリズム12B、12Cから初段の音響光学変調素子AM3までの光路中に、3本のビームLB1a、LB1b、LB1cの光路を光軸(ビームLB1a)の回りに90度回転させるイメージローテータが設けられる。
【0084】
それによって、オン状態のときの音響光学変調素子AM3からは、入射したビームLB1a、LB1b、LB1cの各々の0次ビームB3ao、B3bo、B3co(それぞれ平行光束)と、-Y方向に所定の回折角で偏向した1次回折ビームとしてのビームB3a、B3b、B3c(それぞれ平行光束)とが射出する。
図7A、
図7Bと同様に、0次ビームB3ao、B3bo、B3coの各々とビームB3a、B3b、B3cの各々とは、レンズGK3によって、落射ミラーIM3の反射面が位置する面Psoでビームウェストとなるように集光される。
図12Aに示すように、本変形例では、落射ミラーIM3の反射面がXZ面及びYZ面に対して45度を成すように設置され、ビームB3a、B3b、B3cの各々は、-Y方向に反射される。
【0085】
レンズGK3を通ったビームB3a、B3b、B3cの各々の中心光線は、互いに光軸AXsと平行になっており、落射ミラーIM3で反射されたビームB3a、B3b、B3c(それぞれ発散光束)は、
図12AではZ方向に重なった状態でミラーM30に投射され、ミラーM30によって光路を-X方向に90度だけ折り曲げられる。ミラーM30で反射したビームB3a、B3b、B3cは、XY面及びYZ面に対して45度傾いた反射面を有するミラーM32で、-Z方向に反射される。ミラーM32で反射された直後のビームB3a、B3b、B3cの各々の中心光線は、XY面内で見ると、X方向に所定の間隔で並ぶ。
【0086】
ミラーM32で反射されたビームB3aは、
図7A、
図7Bに示した光軸AXu3(又は
図8に示した光軸AXun)と同軸となって、
図8と同様にレンズGK6に入射する。ミラーM32で反射されたビームB3b、B3cの各々は、その中心光線が
図7A、
図7Bに示した光軸AXu3(又は
図8に示した光軸AXun)を挟んでX方向に対称的に離れた状態で、
図8に示したレンズGK6に入射する。従って、
図8に示したレンズLGaを通って面OPaで集光されるビームB3a、B3b、B3cの各々は、光軸AXun上にビームB3aのスポットSPa’が位置し、光軸AXunから+Z方向に所定距離だけ離れてビームB3bのスポットSPb’が位置し、光軸AXunから-Z方向に所定距離だけ離れてビームB3cのスポットSPc’が位置する。
【0087】
以上の
図12Aのような構成により、シート基板P上に投射されるスポット光SPa、SPb、SPcの各々を、
図12Bのように副走査方向(Xt方向)に並べることができる。本変形例では、
図12Bのように、スロット状(長楕円状)のスポット光SPb、SPcの各々の投射位置が、円形のスポット光SPaの投射位置に対して、Xt方向に複数(ここでは5つ)の描画ラインを跨いで間隔ΔXb、ΔXcだけずれている。その為、当然ではあるが、スポット光SPb、SPcの各々で描画する斜めラインパターン又は斜めエッジ部に対応する描画信号中のデータ列(
図11に示した描画信号SDb、SDcの各々を生成する為のデータ列)は、スポット光SPaで描画するパターンに対応するデータ列(
図11に示した描画信号SDaを生成する為のデータ列)に対して、間隔ΔXb、ΔXcに相当する分だけ、副走査方向(Xt方向)にシフトして記憶される。
【0088】
〔変形例2〕
先の
図5A~
図5Cに示したビーム圧縮系OM2では、2つのシリンドリカルレンズ10G3、10G4を用いて、入射するビームLB1b、LB1cの各々の断面形状(円形)を一次元に圧縮したが、他の光学素子を用いても良い。
図13は、ビーム圧縮系OM2の本変形例による構成を模式的に示す図である。本変形例では、
図5A~
図5C中のビーム拡大系OM1で拡大された円形断面のビームLB1b(LB1c)を入射する一次元のマイクロプリズムアレー、又は一次元のフレネルレンズ等の光学素子10G3’と、負のパワーを持つシリンドリカルレンズ10G4’とによってビーム圧縮系OM2を構成する。光学素子10G3’を一次元のマイクロプリズムアレーとする場合は、
図13の紙面内で見ると、断面が微細な楔状で紙面と垂直な方向に一次元に延びたプリズム部の複数を、光軸AXb(AXc)を挟んで対称的に配置した構成とし、光軸AXb(AXc)から離れる方向に行くに従って、プリズム部の楔の頂角が大きく形成される。
【0089】
それによって、入射するビームLB1b(LB1c)の断面内で、光学素子10G3’の光軸AXb(AXc)から離れるに従ってプリズム部での屈折角が大きくなり、ビームLB1b(LB1c)が光軸AXb(AXc)に向かって圧縮(収斂)される。シリンドリカルレンズ10G4’は、圧縮(収斂)されるビームLB1b(LB1c)をほぼ平行光束になるように発散させる。また、
図13の紙面と垂直で光軸AXb(AXc)を含む面内で見ると、光学素子10G3’とシリンドリカルレンズ10G4’とは、いずれもパワー(屈折力)を持たない為、入射したビームLB1b(LB1c)はそのまま平行光束の状態で進む。
【0090】
その結果、シリンドリカルレンズ10G4’から射出するビームLB1b(LB1c)の断面内での強度分布の形状はスロット状(長楕円状)になる。なお、光学素子10G3’として一次元のフレネルレンズを用いる場合も、ほぼ同様の作用によって、シリンドリカルレンズ10G4’から射出するビームLB1b(LB1c)の断面形状をスロット状(長楕円状)にすることができる。本変形例でも、光学素子10G3’とシリンドリカルレンズ10G4’とによるビーム圧縮系OM2の全体を光軸AXb(AXc)の回りに回転させることで、シート基板P上に投射されるスロット状(長楕円状)のスポット光SPb、SPcの各々の長軸方向を主走査方向(Yt方向)に対して傾けることができる。なお、シリンドリカルレンズ10G4’は、負のパワー(屈折力)を持つ一次元のフレネルレンズにしても良い。また、シリンドリカルレンズ10G4’の入射面(或いは出射面)は、完全な円筒面ではなく、非球面レンズのように、高次関数で近似される近似円筒面であっても良い。
【0091】
〔第2の実施の形態〕
先の第1の実施の形態や変形例では、円形のスポット光SPaを生成する為の光源装置LS1A(LS2A)からのビームLB1a(LB2a)、スロット状のスポット光SPbを生成する為の光源装置LS1B(LS2B)からのビームLB1b(LB2b)、及び、スロット状のスポット光SPcを生成する為の光源装置LS1C(LS2C)からのビームLB1c(LB2c)の各々が、ビームスイッチング部BD1B、BD2B内の音響光学変調素子AM1~AM4の結晶内で交差するように、
図4のようなビーム合成部BD1A、BD2Aで光路を設定した。本実施の形態では、音響光学変調素子AM1~AM4に入射する3つのビームLB1a(LB2a)、LB1b(LB2b)、LB1c(LB2c)を、ビームスイッチング部BD1B(BD2B)内の光軸AXs(
図6参照)と同軸に合成する。
【0092】
図14は、
図4に示したビーム形状変形部10A、10B、10Cの各々からのビームLB1a、LB1b、LB1cを同軸に合成する第2の実施の形態による構成を示す図である。本実施の形態では、ビームLB1a、LB1b、LB1cの各々の偏光状態を電気光学素子で高速に切り換える構成によって、同軸合成を行う。
図14において、ビーム形状変形部10Aに入射する光源装置LS1AからのP偏光のビームLB1aは、ビーム縮小系OM3のレンズ10G5、10G6を介して、偏光ビームスプリッタBS1の第1面に入射する。ビーム形状変形部10Bに入射する光源装置LS1BからのP偏光のビームLB1bは、ビーム縮小系OM3のレンズ10G5、10G6と1/2波長板HWPとを介して、S偏光に変換されて偏光ビームスプリッタBS1の第1面と直交した第2面に入射する。
【0093】
偏光ビームスプリッタBS1の第1面に入射したP偏光のビームLB1aは、偏光ビームスプリッタBS1の偏光分離面を透過して、第1の電気光学素子EOaに入射する。電気光学素子EOaは内部の結晶に電界を印加する駆動信号SSaのOn/Offによって、入射するビームの直線偏光の方向を切り換えるものである。その為、駆動信号SSaがOffのとき、電気光学素子EOaは偏光ビームスプリッタBS1を透過したP偏光のビームLB1aをそのまま透過させて、第2の偏光ビームスプリッタBS2に入射する。第2の偏光ビームスプリッタBS2も、P偏光は透過させてS偏光は反射させるように配置されているので、P偏光のビームLB1aは偏光ビームスプリッタBS2を透過して、第2の電気光学素子EObに入射する。
【0094】
第2の電気光学素子EObは第1の電気光学素子EOaと同じものであり、駆動信号SSbのOn/Offによって入射するビームの偏光状態を切り換える。駆動信号SSbがOffのとき、電気光学素子EObは偏光ビームスプリッタBS2からのP偏光のビームLB1aをそのまま透過させて、第3の偏光ビームスプリッタBS3に入射させる。第3の偏光ビームスプリッタBS3も、P偏光は透過させてS偏光は反射させるように配置されているので、P偏光のビームLB1aは偏光ビームスプリッタBS3を透過すると共に、後のビームスイッチング部BD1B(BD2B)内の光軸AXsと同軸となって進む。
【0095】
一方、ビーム形状変形部10BからS偏光となって偏光ビームスプリッタBS1に入射するビームLB1bは、偏光ビームスプリッタBS1の偏光分離面で反射されて、電気光学素子EOaに入射する。駆動信号SSaがOffのとき、S偏光のビームLB1bは電気光学素子EOaをそのまま透過して、偏光ビームスプリッタBS2のビームLB1aと同じ入射面に入射する。偏光ビームスプリッタBS2に入射したS偏光のビームLB1bは、ほぼ全部が反射されてビームトラップTRaに入射して吸収される。
【0096】
さらに、ビーム形状変形部10Cに入射する光源装置LS1CからのP偏光のビームLB1cは、ビーム縮小系OM3のレンズ10G5、10G6と1/2波長板HWPとを介して、S偏光に変換されてミラーM40Aで直角に反射されて、偏光ビームスプリッタBS2の第2面(ビームトラップTRaと反対側の面)に入射する。偏光ビームスプリッタBS2はS偏光を反射するので、S偏光のビームLB1cは、他のビームLB1a、LB1bと同軸の光路となるように反射されて、電気光学素子EObに入射する。駆動信号SSbがOffのとき、電気光学素子EObは偏光ビームスプリッタBS2からのS偏光のビームLB1cをそのまま透過させて、第3の偏光ビームスプリッタBS3に入射させる。第3の偏光ビームスプリッタBS3も、S偏光は反射させるように配置されているので、S偏光のビームLB1cは偏光ビームスプリッタBS3で反射されて、ビームトラップTRbで吸収される。
【0097】
以上のように、直列に配置された2つの電気光学素子EOa、EObの各々に印加される駆動信号SSa、SSbが共にOff状態のとき、光源装置LS1AからのP偏光のビームLB1aのみが、偏光ビームスプリッタBS3から光軸AXsと同軸に射出される。次に、第1の電気光学素子EOaに印加される駆動信号SSaがOn状態で、第2の電気光学素子EObに印加される駆動信号SSbがOff状態となる場合を説明する。その場合、偏光ビームスプリッタBS1を介して第1の電気光学素子EOaに入射するP偏光のビームLB1aはS偏光に切り換えられる。その為、S偏光となったビームLB1aは第2の偏光ビームスプリッタBS2で反射されて、ビームトラップTRaで吸収される。
【0098】
一方、偏光ビームスプリッタBS1で反射されて第1の電気光学素子EOaに入射するS偏光のビームLB1bはP偏光に切り換えられる。その為、P偏光となったビームLB1bは、第2の偏光ビームスプリッタBS2、第2の電気光学素子EOb、及び第3の偏光ビームスプリッタBS3をそのまま透過して、光軸AXsと同軸に射出される。また、そのとき、ビーム形状変形部10CからのS偏光となったビームLB1cは、ミラーM40Aを介して第2の偏光ビームスプリッタBS2で反射されて、Off状態の第2の電気光学素子EObをそのまま透過し、第3の偏光ビームスプリッタBS3で反射されてビームトラップTRbで吸収される。以上のように、電気光学素子EOaがOn状態で電気光学素子EObがOff状態のときは、P偏光のビームLB1bのみが第3の偏光ビームスプリッタBS3から光軸AXsと同軸になって射出する。
【0099】
次に、第1の電気光学素子EOaと第2の電気光学素子EObとが共にOn状態になるように駆動信号SSa、SSbが印加された場合を説明する。この場合、電気光学素子EOaがOn状態なので、ビーム形状変形部10AからのP偏光のビームLB1aは、偏光ビームスプリッタBS1を透過した後、電気光学素子EOaを通ってS偏光に変換されるので、偏光ビームスプリッタBS1で反射されてビームトラップTRaに吸収される。また、ビーム形状変形部10BからのS偏光のビームLB1bは、偏光ビームスプリッタBS1で反射された後、電気光学素子EOaを通ってP偏光に変換されるので、次の偏光ビームスプリッタBS2を透過する。しかしながら、偏光ビームスプリッタBS2を透過したP偏光のビームLB1bは、On状態の第2の電気光学素子EObを通ってS偏光に変換されるので、偏光ビームスプリッタBS3で反射されてビームトラップTRbに吸収される。
【0100】
一方、ビーム形状変形部10CからのS偏光のビームLB1cは、ミラーM40Aと偏光ビームスプリッタBS2で反射された後、On状態の電気光学素子EObを通ってP偏光に変換されるので、次の偏光ビームスプリッタBS3を透過して、光軸AXsと同軸になって射出する。このように、本実施の形態では、偏光ビームスプリッタBS1、BS2、BS3、電気光学素子EOa、EObが、3つのビームLB1a、LB1b、LB1cを光軸AXsに沿って進むように合成するビーム合成部として機能する。
【0101】
本実施の形態では、3つの光源装置LS1A、LS1B、LS1Cの各々からのビームLB1a、LB1b、LB1cを、同じ直線偏光状態で同軸に合成させる為に、2つの電気光学素子EOa、EObを用いる。その為、
図4に示した制御装置100内の描画データ記憶部100Bには、電気光学素子EOa、EObの各々に印加される駆動信号SSa、SSb(高圧の直流電位)のオン/オフを設定する情報(ビットマップ情報)が、描画すべきパターンの画素マップ情報と関連付けて記憶されている。
【0102】
以上の
図14のように、偏光ビームスプリッタBS1、BS2、BS3と電気光学素子EOa、EObとを組み合わせることで、光源装置LS1A、LS1B、LS1Cの各々からのビームLB1a、LB1b、LB1cのいずれか1つを光軸AXsと同軸にしてビームスイッチング部BD1Bの初段の音響光学変調素子AM3に入射させることができる。その上、同軸合成の為に、偏光分離特性を持たない振幅分割型のビームスプリッタを用いないので、ビームLB1a、LB1b、LB1cの各々の光量減衰が抑えられると共に、偏光方向を同じP偏光にすることができる。その為、音響光学変調素子AM3(AM1)を通るビームLB1a、LB1b、LB1cの各々に対する回折効率が同じになり、シート基板P上に投射されるスポット光SPa、SPb、SPcの各光量(強度)のバラつきが抑えられる。
【0103】
図15は、
図14のビーム合成部BD1Aと、
図6のビームスイッチング部BD1Bと、描画ユニットMU3(又はMU1)とを用いたパターンの描画動作の一例を説明する図である。本実施の形態では、ビームスイッチング部BD1B(音響光学変調素子AM3、AM1)に入射する3つのLB1a、LB1b、LB1cの各々が、光軸AXsと同軸に設定されるので、3つのスポット光SPa、SPb、SPcの各々も、描画ラインSL3(SL1)上で主走査方向の同一位置に投射される。
【0104】
図15では、一例として、矩形状のパターン部PT4とYt方向に延びたラインパターン部PT5と斜めラインパターン部PT6とがYt方向につながったパターンを、描画ユニットMU3によって描画する場合を示す。パターン部PT4は、描画ユニットMU3による描画ラインSL3に対して傾斜した斜めエッジ部E4aとXt方向に直線的に伸びたエッジ部E4bとを有する。斜めラインパターン部PT6は、斜めエッジ部E4aと反対向きに傾いた斜めエッジ部E6a、E6bとを有する。
【0105】
図15のようなパターンについて、描画ラインSL3に沿ってパターン描画が行われる場合、斜めエッジ部E4aを横切る描画ラインSL3上の領域Ar1では、先の
図10と同様に、-45度で傾斜したスロット状(長楕円状)のスポット光SPbにより、描画信号SDbの画素ビット情報とクロック信号CLK(SDb∩CLK)に従ってパターン描画(光源装置LS1Bのパルス発光)が行われる。パターン部PT4のエッジ部E4bを含む描画ラインSL3上の領域Ar2では、円形のスポット光SPaにより、描画信号SDaの画素ビット情報とクロック信号CLK(SDa∩CLK)に従ってパターン描画(光源装置LS1Aのパルス発光)が行われる。さらに、パターン部PT6の斜めエッジ部E6a、E6bを含む描画ラインSL3上の領域Ar3では、+45度で傾斜したスロット状(長楕円状)のスポット光SPcにより、描画信号SDcの画素ビット情報とクロック信号CLK(SDc∩CLK)に従ってパターン描画(光源装置LS1Cのパルス発光)が行われる。
【0106】
このようなパターン描画の場合、
図14中の電気光学素子EOa、EObの各々に印加される駆動信号SSa、SSbについては、領域Ar1でスポット光SPbが投射される直前の時刻Ts1から、スポット光SPbの投射に切り替わる時刻Ts2までの間、駆動信号SSaのみがOn状態となり、領域Ar3でスポット光SPcが投射される直前の時刻Ts3から、領域Ar3での斜めパターン部PT6の描画が終わった時刻Ts4までの間、駆動信号SSa、SSbの両方が共にOn状態となる。
【0107】
なお、電気光学素子EOa、EObのスイッチングの応答周波数の上限は、光源装置LS1B、LS1Cのパルス発光の周波数400MHz(周期2.5nS)よりも低い場合が多い。その為、駆動信号SSa、SSbをOn状態にできる最小時間幅以上の時間幅(Ts2-Ts1、又はTs4-Ts3)を設定し、その時間幅内に領域Ar1、Ar3(斜めエッジ部E4a、E6a、E6b)が入るように設定される。
【0108】
以上のように、線幅が細い斜めラインパターン部PT6や斜めエッジ部E4aを含むパターンを描画する際、円形のスポット光SPaと傾いたスロット状(長楕円状)のスポット光SPb、SPcとが主走査方向の同じ位置で、択一的に投射されるように設定される。その為、
図11で説明したように、描画ラインSLnに沿って並ぶ多数の画素Picの画素ビット情報のスポット光SPa、SPb、SPc用の各データ列を、間隔ΔYb、ΔYcに相当する画素数分だけシフトさせる必要が無い。従って、各データ列を生成する手間が軽減される。
【0109】
〔変形例3〕
先の第1の実施の形態のように、複数のスポット光SPa、SPb、SPcを、ポリゴンミラーPMの回転により、シート基板P上で同時に走査できる構成とした場合、シート基板Pの表面に形成される感光層(フォトレジスト層)の感度の違いや厚みの違いに容易に対応することができる。例えば、単一のスポット光SPa(円形)のみでパターン描画を行う露光装置では、露光処理時間を短くする為に、光源装置LS1Aから射出されるビームLB1aがなるべく高輝度になるように調整される。その為、使用可能なフォトレジストには、ビームLB1aの光強度に対応して、推奨される感度範囲と推奨される厚み範囲とがある。仮に、使用するフォトレジスト層の感度が相当に低かったり、推奨される厚みよりも著しく厚くなったりすると、ビームLB1a(スポット光SPa)の光強度を高めることが難しい為、ポリゴンミラーPMの回転速度(スポット光SPaの走査速度)と、シート基板Pの副走査方向への移動速度とを大きく低下させることになる。
【0110】
すなわち、シート基板P上に形成されたレジスト層の感度と厚みとで定まる必要露光量(必要ドーズ量)に見合うように、スポット光SPaの光強度と走査露光の状態(速度等)とで定まる供給可能露光量(供給ドーズ量)が調整される。第1の実施の形態では、描画ユニットMU1~MU4の各々から、3つのスポット光SPa、SPb、SPcのいずれか1つ、いずれか2つ、或いは全てを選択的に投射可能であるので、供給ドーズ量の調整範囲を大幅に拡大することができる。さらに、スポット光SPa、SPb、SPcの各々は、描画データ中の画素Pic単位で、高速にシート基板P上にパルス投射が可能なので、例えば、パターンのエッジ部に対応した画素やその隣の画素に対して、通常よりも大きなドーズ量を与える特殊露光方法も可能となる。
【0111】
図16は、第1の実施の形態、又は変形例1による露光装置を用いて、マトリックス状に配列される複数の矩形パターンの各々の周辺エッジ部に与える露光量を増大させる特殊露光の描画動作の一例を示す図である。特殊露光方法は、例えば国際公開第2019/049940号に開示されているように、シート基板P上に形成されるレジスト層がネガ型であると共に、その厚みが一般的な厚み(0.8μm~2μm)の数倍~10倍程度の場合に利用することができる。
【0112】
図16において、描画データ上の1つの画素Picがシート基板P上で2μm角に設定される場合、矩形パターンPT7は、Yt方向に9画素(18μm)、Xt方向に11画素(22μm)の大きさで規定され、Xt方向とYt方向の各々に3画素(6μm)分の間隔を空けてマトリックス状に配列される。各矩形パターンPT7は、Xt方向とYt方向の各々に直線的に配列された画素による周辺エッジ部PT7aと、その内側の7画素×9画素で構成される矩形パターン部PT7bとで構成される。第1の実施の形態による露光装置によって、例えば、描画ユニットMU3による描画ラインSL3a、SL3bに沿って、スポット光SPa、SPb、SPcが走査されたとする。
【0113】
本変形例では、内側の矩形パターン部PT7bを構成する画素(オン画素)の各々に対しては、Xt方向とYt方向の各々に円形のスポット光SPaの2パルスで露光が行われ、周辺エッジ部PT7aを構成する画素(オン画素)の各々に対しては、Xt方向とYt方向の各々に、円形のスポット光SPaの2パルスと共に、スロット状(長楕円状)のスポット光SPb、SPcの2パルスが追加露光される。従って、描画ラインSL3a上では、描画信号SDaとクロック信号CLKとに基づいて、矩形パターンPT7のXt方向の全幅(9画素)に対応した18パルス分の円形のスポット光SPaが照射される。
【0114】
併せて、描画ラインSL3a上では、矩形パターンPT7の+Yt方向側の周辺エッジ部PT7aを構成する1画素目と-Yt方向側の周辺エッジ部PT7aを構成する9画素目とを追加露光する為に、描画信号SDb、SDcとクロック信号CLKとに基づいて、その1画素目と9画素目の各々にスポット光SPb、SPcの2パルス分が照射される。なお、第1の実施の形態では、3つのスポット光SPa、SPb、SPcが、先の
図10で説明したように間隔ΔYb、ΔYcでYt方向にずれているので、本変形例でも、
図11で説明したように、描画信号SDa、SDb、SDcの各々に対応した画素ビット情報のデータ列は、その間隔ΔYb、ΔYcに応じた画素数だけ情報の位置(ビットの位置)がずれている。
【0115】
また、描画ラインSL3b上では、矩形パターンPT7のXt方向側の周辺エッジ部PT7aを構成するようにYt方向に並んだ9個の画素の列に対して追加露光が行われる。その為、描画ラインSL3b上では、矩形パターンPT7の+Yt方向側の周辺エッジ部PT7aを構成する1画素目から、-Yt方向側の周辺エッジ部PT7aを構成する9画素目までの全てが追加露光されるように、描画信号SDa、SDb、SDcとクロック信号CLKとに基づいて、その1画素目~9画素目までの9画素分の各々にスポット光SPa、SPb、SPcの2パルス分が照射される。
【0116】
本変形例では、追加露光される画素(オン画素)に対して、円形のスポット光SPa、-45度で傾斜したスロット状のスポット光SPb、+45度で傾斜したスロット状のスポット光SPcが続けて照射される為、各スポット光の光強度が同じ場合、追加露光された画素には最大で約3倍の露光量が与えられる。しかしながら、追加露光で必要な露光量が1.5倍や2倍程度で良い場合もある。その場合、追加露光で使われるスロット状のスポット光SPb、SPcの各々の光強度がスポット光SPaの光強度の25%、50%程度に減衰されるように、光源装置LS1B、LS1Cから射出されるビームLB1b、LB1cの光路中に、ビーム強度を可変調整できる減光部材を設けても良い。そのような減光部材としては、光源装置LS1B(LS1C)からのビームLB1b(LB1c)を、回転可能な1/2波長板、偏光ビームスプリッタの順に通す構成が好ましい。その場合、1/2波長板をビームの中心光線の回りに回転調整することで、偏光ビームスプリッタで反射(又は透過)されるビームの強度を、例えば10%~90%の範囲で連続的に調整することができる。
【0117】
本変形例では、追加露光の際に、周辺エッジ部PT7aを構成する画素に、-45度で傾斜したスロット状のスポット光SPbと、+45度で傾斜したスロット状のスポット光SPcとが重なって照射されるので、2つのスポット光SPb、SPcの重なりによる光強度分布は、角が丸まった四角状に近くなる。従って、シート基板P上の露光すべきデバイス形成領域内の全体で、
図16のように、Xt方向とYt方向とに延びた周辺エッジ部PT7aだけを含み、斜めエッジ部や斜めラインパターンを含まない場合は、周辺エッジ部PT7aの画素(オン画素)に対しては、2つのスポット光SPb、SPcの重なりのみで露光しても良い。
【0118】
〔変形例4〕
以上の第1の実施の形態、第2の実施の形態、及び各変形例では、ビームスイッチング部BD1B(BD2B)内の直列に配置された音響光学変調素子AM1、AM3(AM2、AM4)によって、3つの光源装置LS1A、LS1B、LS1C(LS2A、LS2B、LS2C)の各々から生成される3つのビームBna、Bnb、Bnc(n=1~4)を複数の描画ユニットMUnのいずれかにスイッチングして供給した。しかしながら、2つの光源装置の各々からの描画用のビームを、ビームスイッチング部BD1B(BD2B)を介さずに、直接1つの描画ユニットに供給する構成としても良い。
【0119】
図17は、2つの光源装置のみを用いた変形例4によるビーム合成部の概略的な構成を示す図である。
図17において、先の
図1、
図4で示した部材と同じ部材には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。本変形例では、2つの光源装置LS1B、LS1Cの各々からのビームLB1b、LB1cは、それぞれミラーM50、M52で反射されて
図4(並びに
図5A~
図5C)に示したビーム形状変形部10B、10Cに入射する。なお、
図17において、光源装置LS1BからのビームLB1bは、直交座標系XYZのXY面と平行に+X方向に射出され、光源装置LS1CからのビームLB1cは、ビームLB1bとほぼ同軸な配置関係で、XY面と平行に-X方向に射出される。
【0120】
ビーム形状変形部10B内に設けられるビーム圧縮系OM2(
図5A~
図5C参照)の全体は、入射するビームLB1bの中心光線(
図5A~
図5C中の光軸AXb)の回りに回転可能に設けられる。ビーム圧縮系OM2は、モータやエアピストン等のアクチュエータを含む駆動機構20Bによって、45°ずつ回転するように設定される。従って、ビーム形状変形部10Bから+Y方向に射出するビームLB1bは、YZ面内での断面分布がスロット状(長楕円状)になった平行光束に変換される。同様に、ビーム形状変形部10C内に設けられるビーム圧縮系OM2(
図5A~
図5C参照)の全体は、入射するビームLB1cの中心光線(
図5A~
図5C中の光軸AXc)の回りに回転可能に設けられ、モータやエアピストン等のアクチュエータを含む駆動機構20Cによって、45°ずつ回転するように設定される。従って、ビーム形状変形部10Cから+Y方向に射出するビームLB1cは、YZ面内での断面分布がスロット状(長楕円状)になった平行光束に変換される。
【0121】
ビーム形状変形部10BからのビームLB1bは、ミラーM51によって+X方向に反射された後、V型ミラーM54の一方の反射面に投射される。同様に、ビーム形状変形部10CからのビームLB1cは、ミラーM53によって-X方向に反射された後、V型ミラーM54の他方の反射面に投射される。V型ミラーM54の一方の反射面と他方の反射面とは、
図17中のZ軸と平行な稜線を成すように、所定の角度で交差するように設定されている。V型ミラーM54の稜線(Z軸と平行)は、
図17中のXY面内で見たとき、例えば描画ユニットMU1の光軸AXu1(
図2参照)と直交するように設定される。
【0122】
ミラーM51、M53、V型ミラーM54によって、V型ミラーM54の一方の反射面で反射されたビームLB1bと、V型ミラーM54の他方の反射面で反射されたビームLB1cとは、XY面内で光軸AXu1と平行に、且つ光軸AXu1を挟んで対称的に接近した状態で+Y方向に進み、プリズムブロック22に入射する。プリズムブロック22は、光軸AXu1と直交するようにZ軸と平行に延びた稜線を有し、入射するビームLB1b、LB1cの各々を、光軸AXu1に向けて所定の角度(例えば1°以下)だけ屈折(偏向)させる。プリズムブロック22を通った2つのビームLB1b、LB1cは、光軸AXu1と垂直な面Pe’(
図8中の面Pe’に対応)で互いに光軸AXu1と交差した後、広がりながら描画ユニットMU1に入射するように進む。
【0123】
以上の構成により、シート基板P上には、描画ユニットMU1から投射されるビームLB1b、LB1cの各々による2つのスポット光SPb、SPcだけが集光される。本変形例では、2つのスポット光SPb、SPcの各々が、いずれもスロット状(長楕円状)の強度分布を有し、その分布の長軸方向を、駆動機構20B、20Cによってシート基板P上で45°の角度ずつ変えることができる。なお、駆動機構20B、20Cによるビーム形状変形部10B、10C内のビーム圧縮系OM2の回転角度の変化量は、例えば、±90°の範囲内で、15°ずつの12段階にしても良いし、無段階で任意角度に設定できるようにしても良い。
【0124】
本変形例では、2つのスロット状(長楕円状)のスポット光SPb、SPcのみでパターンの描画を行う際に、描画ユニットMU1が描画すべきパターン中に、どのようなパターン部分(主走査方向又は副走査方向に延びた直線エッジ部、或いは斜めエッジ部等)がシート基板P上の副走査方向のどの位置に含まれるかを事前に把握し、それに応じて、スポット光SPb、SPcの各々の長軸方向を、駆動機構20B、20Cによって事前(対応するエッジ部の描画直前)に回転させる。先の
図9Aで説明したように、電子デバイス内の配線パターンでは、45度の斜めラインパターン(
図9A中のPT2)が多用されるが、その他に、主走査方向又は副走査方向に対して30度程度、或いは60度程度で傾いたラインパターンやパターンエッジ部も使われる。そのような場合も考慮して、スロット状(長楕円状)の強度分布を有するスポット光SPb、SPcの各々の長軸方向が、主走査方向又は副走査方向に対して+25度~65度の範囲、又は-25度~65度の範囲で傾けられるようにしておくのが望ましい。
【0125】
図18A~
図18Dは、パターンのエッジ部の方向性に応じて切り換えられるスポット光SPb、SPcの各々の長軸方向の組合せを模式的に表した図である。
図18Aは、先の
図10で説明した状態と同様に、-45度で傾いたスポット光SPbと+45度で傾いたスポット光SPcとの各中心が、間隔(ΔYb+ΔYc)で1つの描画ラインSLn上にYt(Y)方向に位置した場合を表わす。描画ユニットMU1によって描画されるパターンとして、先の
図16で説明したように、Xt方向とYt方向に延びた直線エッジ部のみで構成される場合は、描画データ上の全ての画素Picのうち、スポット光を投射すべきオン画素に対しては、±45度で傾いたスポット光SPb、SPcの各々が重ねて投射されるように、光源装置LS1B、LS1Cの各々からのビームLB1b、LB1cのパルス発光が制御される。なお、
図18Aのように、スポット光SPbを-45度で傾け、スポット光SPcを+45度で傾けた状態を初期状態とする。
【0126】
図18Bは、駆動機構20Cによって、スポット光SPcのみを初期状態の傾きから反時計回りに90度回転させた状態を示し、
図18Cは、駆動機構20Bによって、スポット光SPbのみを初期状態の傾きから時計回りに90度回転させた状態を示す。
図18B又は
図18Cのように、2つのスポット光SPb、SPcを同じ向きに傾けて、斜めエッジ部や斜めラインパターンのオン画素(Pic)に対して、スポット光SPb、SPcの各々を重ねて投射することで、エッジ部の画素の露光量を増大させることができる。
【0127】
また、
図18Dは、駆動機構20B、20Cによって、スポット光SPbを初期状態の傾きから時計回りに45度回転させ、スポット光SPcを初期状態の傾きから反時計回りに45度回転させた状態を示す。
図18Dの場合、2つのスポット光SPb、SPcは、共に長軸方向が描画ラインSLnと直交した向きに設定される。
図18Dの設定は、特に描画ラインSLnと平行、或いは直交した方向に延びる直線状のラインパターンの描画に適している。
【0128】
以上のように、駆動機構20B、20Cによるビーム圧縮系OM2の回転によるスポット光SPb、SPcの長軸方向の変更(切換)動作は、当然に描画ラインSLnに沿ったスポット光SPb、SPcの1回の走査中にはできない。その為、パターン描画が全く行われない領域(スポット光SPb、SPcがパルス照射されないオフ画素が連続する領域)に亘ってシート基板Pが移動する時間に対して、スポット光SPb、SPcの長軸方向の切換動作に要する時間が短くなるタイミングで、必要であれば切換動作が行われる。
【0129】
〔変形例5〕
図19は、1つの光源装置LSeからのビームLBeによって、2つのスロット状(長楕円状)のスポット光SPb、SPcを作る光学構成を模式的に示す図である。説明の便宜上、光源装置LSeからのビームLBeは、直交座標系XYZのX軸と平行に射出されるものとする。光源装置LSeは、先に説明した光源装置LS1B、LS1Cと同様のファイバーアンプレーザ光源(波長355nmの紫外パルス光を周波数400MHzで発振)である。光源装置LSeからのP偏光のビームLBe(直径が0.5~1mm程度の円形の断面分布を有する平行光束)は、先の
図14で説明した電気光学素子EOa、EObと同様の電気光学素子EOcに入射する。電気光学素子EOcは、駆動信号SSc(高圧の直流電位)が印加されている間(オン状態のとき)は、入射したビームLBeをP偏光からS偏光に変換して射出し、駆動信号SScが非印加のとき(オフ状態のとき)はP偏光のビームLBeをそのまま射出する。
【0130】
電気光学素子EOcからのビームLBeは、Y軸と平行に+Y方向に進むようにミラーM55で直角に折り曲げられた後、ビーム拡大系OM1(
図5A~
図5C参照)に入射する。ビーム拡大系OM1は、入射したビームLBeの直径を10倍程度に拡大した平行光束にして偏光ビームスプリッタBS4に向けて射出する。光分割部としての偏光ビームスプリッタBS4は、ビームLBeがP偏光のときはビームLBeをそのまま透過させ、ビームLBeがS偏光のときはビームLBeを直角に反射させる。ここで、偏光ビームスプリッタBS4を透過したP偏光のビームLBeをビームLB1cとし、偏光ビームスプリッタBS4で反射したS偏光のビームLBeをビームLB1bとすると、分割されたビームLB1c、LB1bは、それぞれ別の光路を進む。
【0131】
偏光ビームスプリッタBS4からのビームLB1b(S偏光)は、1/2波長板HWPを透過して、偏光方向が90度回転したP偏光に変換された後、ビーム形状変形部として機能するビーム圧縮系OM2bに入射する。同様に、偏光ビームスプリッタBS4からのビームLB1c(P偏光)は、1/2波長板HWPを透過して、偏光方向が90度回転したS偏光に変換された後、ビーム形状変形部として機能するビーム圧縮系OM2cに入射する。ビーム圧縮系OM2b、OM2cの各々は、先の
図5A~
図5C又は
図13で示した光学部材によって同様に構成され、それぞれのビームLB1b、LB1cの中心光線(光軸)の回りに、相対的に90度の角度を成すように設置される。
【0132】
ビーム圧縮系OM2bを通ったビームLB1bは、ミラーM57でY軸と平行になるように直角に反射されて+Y方向に進み、偏光ビームスプリッタBS5に入射する。また、ビーム圧縮系OM2cを通って-X方向に進むビームLB1cは、偏光ビームスプリッタBS5に入射する。ビーム合成部として機能する偏光ビームスプリッタBS5は、P偏光となったビームLB1bを透過させ、S偏光となったビームLB1cを反射させると共に、ビームLB1b、LB1cを同軸に合成するように配置されている。偏光ビームスプリッタBS5から+Y方向に射出されるビームLB1b、LB1cは、
図5A~
図5Cに示した構成と同様のビーム縮小系OM3によって、ビーム径を1/10程度に縮小した平行光束に変換される。
【0133】
ビーム縮小系OM3を通ったビームLB1b、LB1cは、振幅分割型のビームスプリッタBS6を透過して、それぞれビームB1b、B1cとなって、描画ユニットMU1の光軸AXu1と同軸になるように描画ユニットMU1に入射する。また、光源装置LSeと同じ諸特性で作られた光源装置LS1Aからの-X方向に進むビームLB1a(直径が0.5~1mm程度の円形の断面分布を有する平行光束)は、ビームスプリッタBS6で反射されて、ビームB1aとなって、描画ユニットMU1の光軸AXu1と同軸になるように描画ユニットMU1に入射する。ビームスプリッタBS6は、3本のビームB1a、B1b、B1cを同軸に合成するように配置されるが、入射するビームB1a、B1b、B1cの各々の光量の約半分は、ビームスプリッタBS6の-X方向側に配置されたビームトラップTRcで吸収される。
【0134】
本変形例では、電気光学素子EOcがオフ状態であって、且つ、光源装置LSeに供給される描画信号SDcの画素ビット値が「1」のときに、光源装置LSeからビームLBeがパルス発光される。電気光学素子EOcがオフ状態なので、ビームLBe(P偏光)は、偏光ビームスプリッタBS4を透過し、1/2波長板HWPを通ってS偏光に変換され、ビーム圧縮系OM2cを通って偏光ビームスプリッタBS5で反射されて、ビーム縮小系OM3、ビームスプリッタBS6を介して、スポット光SPcを生成するビームB1cとなって描画ユニットMU1に供給される。電気光学素子EOcがオン状態であって、且つ、光源装置LSeに供給される描画信号SDbの画素ビット値が「1」のときに、光源装置LSeからビームLBeがパルス発光される。電気光学素子EOcがオン状態なので、P偏光のビームLBeはS偏光に変換されて、偏光ビームスプリッタBS4で反射されて、1/2波長板HWPを通ってP偏光に変換され、ビーム圧縮系OM2bを通って偏光ビームスプリッタBS5を透過して、ビーム縮小系OM3、ビームスプリッタBS6を介して、スポット光SPbを生成するビームB1bとなって描画ユニットMU1に供給される。
【0135】
本変形例でも、スポット光SPbとスポット光SPcとの切り換えの為に、電気光学素子EOcが使われる。その為、
図4に示した制御装置100内の描画データ記憶部100Bには、電気光学素子EOcに印加される駆動信号SScのオン/オフを設定する情報(ビットマップ情報)が、描画すべきパターンの画素マップ情報と関連付けて記憶されている。電気光学素子EOcのオン/オフによって、結果的に、ビーム形状変形部としてのビーム圧縮系OM2bから射出するビームLB1bの直線偏光の方向と、ビーム形状変形部としてのビーム圧縮系OM2cから射出するビームLB1cの直線偏光の方向とが相補的に切り換えられることになる。
【0136】
本変形例では、光源装置LS1AからのビームB1aによる円形状のスポット光SPaは、描画信号SDaの画素ビット値「1」及びクロック信号CLKに応答して、常時、シート基板P上にパルス光として投射可能である。一方、光源装置LSeからのビームLBeから生成されるビームB1bによるスポット光SPbと、ビームB1cによるスポット光SPcは、電気光学素子EOcのオフ状態とオン状態との切り替えによって、いずれか一方のみが、描画信号SDb、SDcの画素ビット値「1」及びクロック信号CLKに応答して、シート基板P上にパルス光として投射される。
【0137】
その為、本変形例では、斜めエッジ部や斜めラインパターンを構成するエッジ画素に対して、スロット状(長楕円状)のスポット光SPb又はSPcだけではなく、円形状のスポット光SPaも重ねて露光することができる。この場合、エッジ画素の露光量を増大させつつ、エッジ部のギザギザを低減させる効果も得られる。
【0138】
〔変形例6〕
図20は、光源装置とビーム形状変形部10B、10Cを含むビーム合成部BD1A(BD2A)との変形例による構成を模式的に示した図である。本変形例では、
図19に示した光源装置LSeからのビームLBeと、
図4に示した光源装置LS1AからのビームLB1aとによって、円形のスポット光SPaと2つのスロット状(長楕円状)のスポット光SPb、SPcとが生成されるように構成すると共に、
図6に示したビームスイッチング部BD1B(BD2B)も用いて、複数の描画ユニットMU1~MU4の各々によるパターン露光が可能な構成とする。
【0139】
図20において、光源装置LSeから周波数400MHzでパルス発光される紫外波長域のビームLBe(直径が0.5~1mm程度の円形断面の平行光束)は、音響光学変調素子AM5にブラッグ回折の条件で入射する。音響光学変調素子AM5は駆動信号SSeによって、オン状態(回折光発生状態)とオフ状態とに切り換えられる。音響光学変調素子AM5がオフ状態のとき、入射したビームLBeはそのまま透過してレンズGK7に光軸と同軸に入射する。音響光学変調素子AM5は、レンズGK7の前側焦点の位置に配置され、レンズGK7の後側焦点の位置には落射ミラーIM5が配置される。よって、
図20の音響光学変調素子AM5、レンズGK7、落射ミラーIM5の各配置は、先の
図7A、
図7Bで説明した音響光学変調素子AM3、レンズGK3、落射ミラーIM3の各配置と同じになっている。
【0140】
オフ状態の音響光学変調素子AM5を透過してレンズGK7を通ったビームLBeは、落射ミラーIM5の上方空間でビームウェストとなるように収斂した後、発散しながらレンズGK9に光軸と同軸に入射する。レンズGK9の前側焦点は、レンズGK7の後側焦点の位置と一致するように配置され、レンズGK9の後側焦点の位置には、駆動信号SSfによってオン状態(回折光発生状態)とオフ状態とに切り換えられると共に、ブラッグ回折条件で配置される音響光学変調素子AM6が設けられる。レンズGK9を透過したビームLBeは、初段の音響光学変調素子AM5に入射するときのビーム径と同じの平行光束となる。
【0141】
音響光学変調素子AM6がオン状態の場合、
図20に示すように、ビームLBeの1次回折ビームとしてのビームLB1c(平行光束)が発生する。ビームLB1cは、レンズGK10を通って、落射ミラーIM6の位置でビームウェストとなるように収斂されると共に、落射ミラーIM6で直角に反射されて、レンズGK11に光軸と同軸状態で入射する。ここでも、レンズGK10の前側焦点の位置には音響光学変調素子AM6が配置され、レンズGK10の後側焦点の位置には落射ミラーIM6が配置される。さらに、レンズGK11の前側焦点の位置はレンズGK10の後側焦点の位置(落射ミラーIM6の位置)と同じになるように設定されている。従って、レンズGK11を通ったビームLB1cは、再び平行光束になり、ミラーM59で反射されて、先の
図4(
図5A~
図5C)又は
図13で示したようなビーム形状変形部10Cに入射する。
【0142】
一方、初段の音響光学変調素子AM5がオン状態の場合は、音響光学変調素子AM5に入射するビームLBeの1次回折ビームとしてのビームLB1bが発生する。そのビームLB1b(平行光束)は、レンズGK7によって収斂され、落射ミラーIM5で反射されて、レンズGK8に光軸と同軸状態で入射する。レンズGK8の前側焦点は、レンズGK7の後側焦点の位置(落射ミラーIM5の位置)に設定されているので、レンズGK8を通ったビームLB1bは、再び平行光束になり、ミラーM58で反射されて、先の
図4(
図5A~
図5C)又は
図13で示したようなビーム形状変形部10Bに入射する。
【0143】
図20に示すビーム形状変形部10B、10Cは、先の
図13で説明したように、駆動機構20B、20Cの各々によるビーム圧縮系OM2の回転によって、ビームLB1b、LB1cの圧縮方向を光軸回りに回転させるようにしても良い。ビーム形状変形部10B、10Cの各々から射出するビームLB1b、LB1cは、それぞれ、
図4と同様にミラーM3B、M3Cで反射された後、楔状のプリズム12B、12Cを通って、ビームスイッチング部BD1B(BD2B)の光軸AXsと所定の角度を成すように進む。また、
図4と同様に、光源装置LS1AからのビームLB1aが、ミラーM3BとミラーM3Cとの間から、ビームスイッチング部BD1B(BD2B)の光軸AXsと同軸となるように通される。そのビームLB1aは、
図4と同様に、平行平板12Aを通ってビームスイッチング部BD1B(BD2B)に供給される。
【0144】
以上の構成により、本変形例では、描画ユニットMU1、MU3(MU2、MU4)の各々から、ビームLB1a(LB2a)による円形のスポット光SPa、ビームLB1b(LB2b)による-45度で傾いたスロット状(長楕円状)のスポット光SPb、及びビームLB1c(LB2c)による+45度で傾いたスロット状(長楕円状)のスポット光SPbのうちのいずれか1つを選択的にシート基板P上に投射したり、或いはスロット状(長楕円状)のスポット光SPb、SPcのいずれか1つと円形のスポット光SPaとの2つを同時にシート基板P上に投射したりすることができる。
【0145】
光源装置LS1Aと光源装置LSeとの各々のパルス発振の周波数Fpを400MHzとした場合、
図20に示した音響光学変調素子AM5、AM6の最高スイッチング周波数Fssが50MHz~100MHz程度であることを考慮して、音響光学変調素子AM5、AM6の各々をオン状態又はオフ状態に切り換える駆動信号SSc、SSdの印加タイミングは、スロット状(長楕円状)のスポット光SPb、SPcで描画すべきエッジ画素や斜めラインパターンの位置に対して、例えば、
図15で説明した駆動信号SSa、SSbと同様に数画素分早めに実行される。例えば、1画素に対してスポット光SPa、SPb、SPcの各々が主走査方向にnパルス分照射される場合、駆動信号SSc、SSdの印加タイミングは、Fp/n・Fssで求まる値以上の画素数分だけ先行するように制御される。よって、Fp=400MHz、Fss=50MHz、n=2の場合、主走査方向に4画素以上先行する画素位置で駆動信号(高周波信号)SSe、SSfのいずれか一方を印加すれば良い。
【0146】
本変形例では、スポット光SPbとスポット光SPcとの切り換えの為に、2つの音響光学変調素子AM5、AM6が使われる。その為、
図4に示した制御装置100内には、音響光学変調素子AM5、AM6の各々に駆動信号SSe、SSfを印加する為のドライブ回路(高周波信号印加アンプ等)が設けられ、描画データ記憶部100Bには、それらの駆動信号SSe、SSfのオン/オフを設定する情報(ビットマップ情報)が、描画すべきパターンの画素マップ情報と関連付けて記憶されている。また、本変形例における音響光学変調素子AM5、AM6、レンズGK7~GK11、落射ミラーIM5、IM6によるビームスイッチング機構は、1つの光源装置LSeからのビームLBeを、互いに異なる光路を通って進む2つのビームLB1b、LB1cに分割する光分割部として機能する。さらに、本変形例におけるミラーM3B、M3C、楔状のプリズム12B、12Cは、ビーム形状変形部10B、10Cによって、断面形状を円形から変形させた2つのビームLB1b、LB1cを合成するビーム合成部として機能する。
【0147】
本変形例によれば、
図20のように、1つの光源装置LSeからのビームLBeによって生成される2つのビームLB1b(スポット光SPb用)、LB1c(スポット光SPc用)の各々の偏光方向と、1つの光源装置LS1Aから生成されるビームLB1a(スポット光SPa用)の偏光方向とを揃えることができるので、複数の描画ユニットMU1~MU4の各々に、音響光学変調素子AM1~AM4を用いて各光源装置からのビームを時分割に順次供給することが可能となる。また、本変形例でも、先の
図17と同様に、駆動機構20B、20Cによって、円形状から非等方的な形状(スロット状、長楕円状)に変形させたスポット光SPb、SPcの方向性(長軸方向)を変えることができるので、描画すべきパターンの斜めエッジの角度に適したスポット形状への設定が容易にできる。
【0148】
また、本変形例では、主走査方向(Yt方向)や副走査方向(Xt方向)に直線的に伸びたパターンエッジの画素、或いはYt方向とXt方向に対して斜めに傾いたパターンエッジの画素に対して、スロット状(長楕円状)に変形したスポット光SPb、SPcのいずれか一方と円形状のスポット光SPaとの両方、変形したスポット光SPb、SPcのいずれか一方のみ、又は円形状のスポット光SPaのみを適宜選択して投射することができる。
【0149】
以上の第1の実施の形態、第2の実施の形態、及び各変形例で説明したスポット光SPb、SPcは、円形のスポット光SPaに対してスロット状又は長楕円状に変形するものとしたが、その他の形状に変形させても良い。例えば、スポット光SPb(又はSPc)を矩形、正方形、菱形の四角状にすることもできる。但し、その場合、
図2に示したfθレンズ系FTと第2シリンドリカルレンズCYbとを介してシート基板P上に投射されるビームB1bの開口数(NA)と、ビームB1b(光源装置からのビーム)の波長λとの関係から最小スポットサイズが決まってくるので、スポット光SPbを四角状にする場合は、回折や収差の影響も踏まえて、その最小スポットサイズよりも十分に大きな寸法(例えば、最小スポットサイズの3倍以上)にすることが望ましい。スポット光SPb、SPcを共に同一の四角状にする場合でも、その四角形の対角線の方向が互いに異なっている場合は、互いに異なる形状に変形されたスポット光として扱われる。