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特許7567945制御システム、制御装置、制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】制御システム、制御装置、制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 16/28 20090101AFI20241008BHJP
   H04W 16/18 20090101ALI20241008BHJP
【FI】
H04W16/28
H04W16/18 110
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022579166
(86)(22)【出願日】2021-02-02
(86)【国際出願番号】 JP2021003660
(87)【国際公開番号】W WO2022168141
(87)【国際公開日】2022-08-11
【審査請求日】2023-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004381
【氏名又は名称】弁理士法人ITOH
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124844
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 隆治
(72)【発明者】
【氏名】村山 大輔
(72)【発明者】
【氏名】中山 章太
【審査官】永田 義仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-241799(JP,A)
【文献】特開2017-098797(JP,A)
【文献】国際公開第2018/139397(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B7/24-7/26
H04W4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間における電波の送信点を変更可能な複数の基地局と、制御装置とを含む制御システムであって、
前記制御装置は、
前記空間における前記電波の遮蔽物の位置及び形状を示す遮蔽物マップを生成する生成部と、
前記送信点を決定する1以上のパラメータの値の組み合わせごとに、当該組み合わせにおける前記複数の基地局のそれぞれの前記送信点と前記遮蔽物マップとに基づき、前記遮蔽物によって1以上の前記基地局の電波が遮蔽されない範囲に関する指標値を算出する算出部と、
前記指標値が最大となる前記組み合わせに基づき、前記複数の基地局のそれぞれの前記送信点の変更を制御する制御部と、
を有し、
前記算出部は、前記空間における1以上の端末のそれぞれの位置情報を取得し、前記遮蔽物マップ及びそれぞれの前記端末の前記位置情報に基づき、前記遮蔽物によって1以上の前記基地局の電波が遮蔽されない範囲に含まれる前記端末の数を前記指標値として算出する、
ことを特徴とする制御システム。
【請求項2】
空間における電波の送信点を変更可能な複数の基地局と、制御装置とを含む制御システムであって、
前記制御装置は、
前記空間における前記電波の遮蔽物の位置及び形状を示す遮蔽物マップを生成する生成部と、
前記送信点を決定する1以上のパラメータの値の組み合わせごとに、当該組み合わせにおける前記複数の基地局のそれぞれの前記送信点と前記遮蔽物マップとに基づき、前記遮蔽物によって1以上の前記基地局の電波が遮蔽されない範囲に関する指標値を算出する算出部と、
前記指標値が最大となる前記組み合わせに基づき、前記複数の基地局のそれぞれの前記送信点の変更を制御する制御部と、
を有し、
前記算出部は、前記空間における1以上の端末のそれぞれの位置情報及び通信量を取得し、前記遮蔽物マップ並びにそれぞれの前記端末の前記位置情報及び前記通信量に基づき、前記遮蔽物によって1以上の前記基地局の電波が遮蔽されない範囲に含まれる前記端末の通信量の合計を前記指標値として算出する、
ことを特徴とする制御システム。
【請求項3】
空間における電波の送信点を変更可能な複数の基地局の前記送信点の変更を制御する制御装置であって、
前記空間における前記電波の遮蔽物の位置及び形状を示す遮蔽物マップを生成する生成部と、
前記送信点を決定する1以上のパラメータの値の組み合わせごとに、当該組み合わせにおける前記複数の基地局のそれぞれの前記送信点と前記遮蔽物マップとに基づき、前記遮蔽物によって1以上の前記基地局の電波が遮蔽されない範囲に関する指標値を算出する算出部と、
前記指標値が最大となる前記組み合わせに基づき、前記複数の基地局のそれぞれの前記送信点の変更を制御する制御部と、
を有し、
前記算出部は、前記空間における1以上の端末のそれぞれの位置情報を取得し、前記遮蔽物マップ及びそれぞれの前記端末の前記位置情報に基づき、前記遮蔽物によって1以上の前記基地局の電波が遮蔽されない範囲に含まれる前記端末の数を前記指標値として算出する、
ことを特徴とする制御装置。
【請求項4】
空間における電波の送信点を変更可能な複数の基地局の前記送信点の変更を制御する制御装置であって、
前記空間における前記電波の遮蔽物の位置及び形状を示す遮蔽物マップを生成する生成部と、
前記送信点を決定する1以上のパラメータの値の組み合わせごとに、当該組み合わせにおける前記複数の基地局のそれぞれの前記送信点と前記遮蔽物マップとに基づき、前記遮蔽物によって1以上の前記基地局の電波が遮蔽されない範囲に関する指標値を算出する算出部と、
前記指標値が最大となる前記組み合わせに基づき、前記複数の基地局のそれぞれの前記送信点の変更を制御する制御部と、
を有し、
前記算出部は、前記空間における1以上の端末のそれぞれの位置情報及び通信量を取得し、前記遮蔽物マップ並びにそれぞれの前記端末の前記位置情報及び前記通信量に基づき、前記遮蔽物によって1以上の前記基地局の電波が遮蔽されない範囲に含まれる前記端末の通信量の合計を前記指標値として算出する、
ことを特徴とする制御装置。
【請求項5】
空間における電波の送信点を変更可能な複数の基地局と、制御装置とを含む制御システムにもける前記制御装置が、
前記空間における前記電波の遮蔽物の位置及び形状を示す遮蔽物マップを生成する生成手順と、
前記送信点を決定する1以上のパラメータの値の組み合わせごとに、当該組み合わせにおける前記複数の基地局のそれぞれの前記送信点と前記遮蔽物マップとに基づき、前記遮蔽物によって1以上の前記基地局の電波が遮蔽されない範囲に関する指標値を算出する算出手順と、
前記指標値が最大となる前記組み合わせに基づき、前記複数の基地局のそれぞれの前記送信点の変更を制御する制御手順と、
を実行し、
前記算出手順は、前記空間における1以上の端末のそれぞれの位置情報を取得し、前記遮蔽物マップ及びそれぞれの前記端末の前記位置情報に基づき、前記遮蔽物によって1以上の前記基地局の電波が遮蔽されない範囲に含まれる前記端末の数を前記指標値として算出する、
ことを特徴とする制御方法。
【請求項6】
空間における電波の送信点を変更可能な複数の基地局と、制御装置とを含む制御システムにもける前記制御装置が、
前記空間における前記電波の遮蔽物の位置及び形状を示す遮蔽物マップを生成する生成手順と、
前記送信点を決定する1以上のパラメータの値の組み合わせごとに、当該組み合わせにおける前記複数の基地局のそれぞれの前記送信点と前記遮蔽物マップとに基づき、前記遮蔽物によって1以上の前記基地局の電波が遮蔽されない範囲に関する指標値を算出する算出手順と、
前記指標値が最大となる前記組み合わせに基づき、前記複数の基地局のそれぞれの前記送信点の変更を制御する制御手順と、
を実行し、
前記算出手順は、前記空間における1以上の端末のそれぞれの位置情報及び通信量を取得し、前記遮蔽物マップ並びにそれぞれの前記端末の前記位置情報及び前記通信量に基づき、前記遮蔽物によって1以上の前記基地局の電波が遮蔽されない範囲に含まれる前記端末の通信量の合計を前記指標値として算出する、
ことを特徴とする制御方法。
【請求項7】
請求項3又は4記載の制御装置としてコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御システム、制御装置、制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
第5世代移動通信システム(5G(Above-6GHz))では、従来の周波数帯に加え、ミリ波帯と呼ばれる高周波数帯が利用される。一般に、5Gやローカル5Gなどで利用可能な28GHz帯などのAbove-6と呼ばれる高周波数帯の電波は、距離減衰が大きいことから、例えば、非特許文献1では、超高利得なビームフォーミング送信技術を用いることで、長距離伝送を実現している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】岸山祥久ら、"ミリ波を用いた超高速・長距離伝送の5G屋外実験"、NTT DOCOMOテクニカル・ジャーナル Vol.26 No.1、Apr.2018
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、工場や倉庫内など、準静的または動的に大きな遮蔽物が移動するような空間において、複数の5Gの基地局を用いて通信エリアを形成する状況を想定する。
【0005】
この場合、上記のような高周波数帯の電波は直進性が高く、遮蔽物によるロスが大きくなってしまうため、遮蔽物に応じて通信エリアの形成が求められる。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであって、遮蔽物に応じた通信エリアを形成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで上記課題を解決するため、空間における電波の送信点を変更可能な複数の基地局と、制御装置とを含む制御システムは、前記制御装置が、前記空間における前記電波の遮蔽物の位置及び形状を示す遮蔽物マップを生成する生成部と、前記送信点を決定する1以上のパラメータの値の組み合わせごとに、当該組み合わせにおける前記複数の基地局のそれぞれの前記送信点と前記遮蔽物マップとに基づき、前記遮蔽物によって1以上の前記基地局の電波が遮蔽されない範囲に関する指標値を算出する算出部と、前記指標値が最大となる前記組み合わせに基づき、前記複数の基地局のそれぞれの前記送信点の変更を制御する制御部と、を有し、前記算出部は、前記空間における1以上の端末のそれぞれの位置情報を取得し、前記遮蔽物マップ及びそれぞれの前記端末の前記位置情報に基づき、前記遮蔽物によって1以上の前記基地局の電波が遮蔽されない範囲に含まれる前記端末の数を前記指標値として算出する
【発明の効果】
【0008】
遮蔽物に応じた通信エリアを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施の形態における制御システムの構成例を示す図である。
図2】可動基地局20の詳細を説明するための図である。
図3】第1の実施の形態における制御装置10のハードウェア構成例を示す図である。
図4】第1の実施の形態における制御装置10の機能構成例を示す図である。
図5】第1の実施の形態における制御装置10が実行する処理手順の一例を説明するためのフローチャートである。
図6】見通し範囲を説明するための図である。
図7】第1の実施の形態における指標値の算出結果の一例を示す図である。
図8】指標値が最大となる位置方向パラメータの値の組み合わせの特定処理の処理手順の一例を説明するためのフローチャートである。
図9】第2の実施の形態における制御装置10が実行する処理手順の一例を説明するためのフローチャートである。
図10】第3の実施の形態における制御装置10が実行する処理手順の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。図1は、第1の実施の形態における制御システムの構成例を示す図である。図1に示すように、制御システムは、複数の可動基地局20(可動基地局20a及び20b)、遮蔽物検知装置30、及び制御装置10等を含む。なお、可動基地局20と制御装置10とは、有線または無線により、通信可能に接続される。同様に、遮蔽物検知装置30と制御装置10とは、有線または無線により、通信可能に接続される。
【0011】
可動基地局20は、工場や倉庫内などの空間P1において通信エリアを形成する可動型の基地局21である。可動型とは、電波の送信点を変更可能であることをいう。可動基地局20は、例えば、第5世代移動通信システム(5G)で利用される高周波数帯の電波を送受信することにより、端末40との間で、高速・大容量の無線通信を実現する。なお、端末40は、例えば、スマートフォン、タブレット端末、PC(Personal Computer)等の通信機器である。図1では、空間P1において、可動基地局20a及び可動基地局20bの2つの可動基地局20が配置される例が示されているが、3以上の可動基地局20が空間P1に配置されてもよい。
【0012】
遮蔽物検知装置30は、空間P1内の遮蔽物50を検知するための撮像装置又はLIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)装置を有する。遮蔽物検知装置30は、撮像装置により撮影された映像情報、又はLIDAR装置により測定されたLIDAR情報等のセンシング情報(以下、「遮蔽物検知情報」という。)を制御装置10へ送信する。遮蔽物50とは、可動基地局20からの電波を遮蔽しうる物体をいう。遮蔽物50は、固定されているとは限らず、準静的または動的に移動してもよい。なお、遮蔽物50の検知は各端末40によって行われてもよい。この場合、各端末40は、自端末の周辺の遮蔽物50を検知し、それぞれが検知した遮蔽物50に係る遮蔽物検知情報を制御装置10へ送信する。なお、図1では、遮蔽物50が一つである例が示されているが、複数の遮蔽物50が空間P1内に存在してもよい。
【0013】
制御装置10は、遮蔽物検知情報に基づいて、可動基地局20の電波の送信点の変更を制御することで、遮蔽物50に応じた通信エリアを形成するための処理を実行する1以上のコンピュータである。本実施の形態において、送信点の変更は、可動基地局20の位置及び方向の変更によって実現される。可動基地局20の方向とは、電波の送信方向をいう。具体的には、制御装置10は、遮蔽物検知情報に基づいて、空間P1内における通信エリアの指標値が最適化される各可動基地局20の位置及び方向を特定し、当該位置及び方向を示すパラメータ(以下、「位置方向パラメータ」という。)を各可動基地局20に送信することで、各可動基地局20の位置及び方向を制御する。なお、位置方向パラメータは、電波の送信点を決定する1以上のパラメータの一例である。
【0014】
図2は、可動基地局20の詳細を説明するための図である。図2に示されるように、可動基地局20は、電波を送信する基地局21に加え、当該基地局21を移動可能に支持する可動構造体22を有する。なお、特に、可動基地局20aの基地局21及び可動構造体22に言及する場合、それぞれの参照番号の末尾に「a」が付与される。同様に、可動基地局20bの基地局21及び可動構造体22に言及する場合、それぞれの参照番号の末尾に「b」が付与される。
【0015】
可動構造体22は、例えば、基地局21の位置を変更可能なレールを備え、制御装置10から送信される位置方向パラメータに基づいて、基地局21をレール上において矢印a1方向に移動(スライド)させる。その結果、基地局21の位置(電波の送信点)が変化する。
【0016】
また、可動構造体22は、例えば、制御装置10から送信される位置方向パラメータに基づいて、基地局21を、c軸周り(符号a2参照)、r軸周り(符号a3参照)、p軸周り(符号a4参照)に回動させる。その結果、基地局21の方向(電波の送信方向)が変化する。
【0017】
なお、c軸周りの回転角度をチルト角といい、r軸周りの回転角度をロール角といい、p軸周りの回転角度をパン角という。すなわち、チルト角、ロール角及びパン角が、基地局21の方向を表現するパラメータである。
【0018】
なお、図2では、基地局21が固定されたレール上を移動する例を説明したが、基地局21の位置及び方向の変更のための構成はこれに限らない。例えば、ドローンやAGV(Automatic Guided Vehicle)に基地局21が搭載されることで可動基地局20が構成されてもよい。この場合、制御装置10は、ドローン又はAGVを制御することで基地局21の位置及び方向を制御することができる。また、手動により位置及び方向が変更されてもよい。
【0019】
また、上記では、基地局21の位置及び方向を物理的に動かすことで、基地局21の電波の送信点及び送信方向が変更可能であるものとして説明した。しかしながら、可動基地局20を、例えば、分散アンテナシステムにより構築する場合にあっては、各ユニットの出力を制御することで、基地局21の電波の送信点及び送信方向を制御してもよい。この場合、可動基地局20は、制御装置10から送信されるEnable/Disable信号に基づいて、分散アンテナシステムの各ユニットの出力を制御することで、基地局21の電波の送信点及び送信方向を制御する。つまり、基地局21の電波の送信点及び送信方向を決定するパラメータには、位置方向パラメータの他に、例えば、Enable/Disable信号が含まれていてもよい。但し、以下では、基地局21の位置及び方向を物理的に動かすことで、基地局21の電波の送信点及び送信方向を制御するケースについて説明する。
【0020】
図3は、第1の実施の形態における制御装置10のハードウェア構成例を示す図である。図3の制御装置10は、それぞれバスBで相互に接続されているドライブ装置100、補助記憶装置102、メモリ装置103、CPU104、及びインタフェース装置105等を有する。
【0021】
制御装置10での処理を実現するプログラムは、CD-ROM等の記録媒体101によって提供される。プログラムを記憶した記録媒体101がドライブ装置100にセットされると、プログラムが記録媒体101からドライブ装置100を介して補助記憶装置102にインストールされる。但し、プログラムのインストールは必ずしも記録媒体101より行う必要はなく、ネットワークを介して他のコンピュータよりダウンロードするようにしてもよい。補助記憶装置102は、インストールされたプログラムを格納すると共に、必要なファイルやデータ等を格納する。
【0022】
メモリ装置103は、プログラムの起動指示があった場合に、補助記憶装置102からプログラムを読み出して格納する。CPU104は、メモリ装置103に格納されたプログラムに従って制御装置10に係る機能を実行する。インタフェース装置105は、ネットワークに接続するためのインタフェースとして用いられる。
【0023】
図4は、第1の実施の形態における制御装置10の機能構成例を示す図である。図4において、制御装置10は、遮蔽物マップ生成部11、パラメータ特定部12及び制御部13を有する。これら各部は、制御装置10にインストールされた1以上のプログラムが、CPU104に実行させる処理により実現される。当該プログラムは、記録媒体に記録されて流通してもよいし、ネットワークを通して流通してもよい。
【0024】
以下、制御装置10が実行する処理手順について説明する。図5は、第1の実施の形態における制御装置10が実行する処理手順の一例を説明するためのフローチャートである。
【0025】
ステップS110において、遮蔽物マップ生成部11は、遮蔽物検知装置30若しくは各端末40、又は遮蔽物検知装置30及び各端末40から遮蔽物検知情報を取得する。
【0026】
続いて、遮蔽物マップ生成部11は、取得した遮蔽物検知情報に基づいて、遮蔽物マップを生成する(S120)。遮蔽物マップとは、遮蔽物50の位置及び形状を示す、2次元又は3次元のマップデータをいう。遮蔽物マップ生成部11は、例えば、遮蔽物検知情報に基づいて、遮蔽物50の位置及び大きさ(形状)を算出することで、遮蔽物マップを生成する。
【0027】
パラメータ特定部12は、各基地局21の位置方向パラメータのとりうる値の組み合わせごとに、遮蔽物マップに基づいて、いずれかの基地局21(電波の送信点)との間で見通し関係にある範囲(以下、「見通し範囲」という。)の指標値(以下、単に「指標値」という。)を算出し、指標値が最大となる組み合わせを特定する(S130)。第1の実施の形態では、見通し範囲の大きさ(以下、「見通し範囲サイズ」という。)が指標値として算出される。見通し範囲は、2次元において特定されてもよいし、3次元において特定されてもよい。見通し範囲が2次元で特定される場合、見通し範囲サイズは、見通し範囲の面積となる。見通し範囲が3次元で特定される場合、見通し範囲サイズは、見通し範囲の体積となる。見通し範囲とは、空間P1において、1以上の基地局21(電波の送信点)からの電波が遮蔽物50によって遮蔽されない範囲をいう。なお、見通し範囲に該当しないエリアを「非見通し範囲」という。
【0028】
図6は、見通し範囲を説明するための図である。図6には、(1)及び(2)の2通りの2次元の見通し範囲が例示されている。(1)と(2)では、基地局21の位置が異なる。
【0029】
(1)及び(2)のそれぞれにおいて、エリアA1は、可動基地局20aのみについての見通し範囲である。したがって、エリアA1は、可動基地局20bについては非見通し範囲である。エリアA2は、可動基地局20bのみについての見通し範囲である。したがって、エリアA2は、可動基地局20aについては非見通し範囲である。エリアA3は、可動基地局20a及び可動基地局20bの双方についての見通し範囲である。エリアA4は、非見通し範囲である。
【0030】
上記より、エリアA1、エリアA2及びエリアA3によって構成されるエリアが、1以上の基地局21に対する見通し範囲となる。
【0031】
なお、図6の(1)と(2)とを比較して明らかなように、基地局21の位置によっても見通し範囲は変化しうる。具体的には、(2)では非見通し範囲は無い。同様に、基地局21の方向によっても見通し範囲は変化しうる。すなわち、位置方向パラメータの値の組み合わせに応じて見通し範囲は変化しうる。したがって、遮蔽物マップ生成部11は、位置方向パラメータの値の複数の組み合わせのそれぞれについて、指標値(見通し範囲サイズ)を算出する。
【0032】
図7は、第1の実施の形態における指標値の算出結果の一例を示す図である。図7には、基地局21aに関する位置方向パラメータの値と基地局21bに関する位置方向パラメータの値との組み合わせごとに見通し範囲サイズが算出されることが示されている。なお、図7の例において、位置方向パラメータの値の組み合わせとは、x座標、y座標、z座標、パン角、チルト角、ロール角のそれぞれの値の組み合わせをいう。x座標は、空間P1の水平面上(例えば、底面上)の2次元座標系の一方の座標軸における基地局21(電波の送信点)の位置に対応する値である。y座標は、当該2次元座標系の他方の座標軸における基地局21(電波の送信点)の位置に対応する値である。z座標は、当該水平面に対する垂直方向の座標軸(すなわち、高さ方向)における基地局21(電波の送信点)の位置に対応する値である。
【0033】
パラメータ特定部12は、図7に示されるような算出結果の中から、見通し範囲サイズが最大である位置方向パラメータの値の組み合わせを特定する。
【0034】
続いて、制御部13は、パラメータ特定部12が特定した位置方向パラメータの値の組み合わせ(以下、「特定パラメータ値」という。)を各可動基地局20に送信することで、各基地局21の位置及び方向(すなわち、電波の送信点)の変更を制御する(S140)。すなわち、制御部13は、特定パラメータ値のうち、可動基地局20aに関する位置方向パラメータの値を可動基地局20aへ送信し、可動基地局20bに関する位置方向パラメータの値を可動基地局20bへ送信する。
【0035】
なお、図5の処理手順は、所定周期で、又は遮蔽物検知情報が変化するたび(すなわち、遮蔽物50の位置又は形状が変化するたび)に実行されるようにしてもよい。そうすることで、遮蔽物50の移動に応じて適切な通信エリアを形成することができる。
【0036】
続いて、ステップS130の詳細について説明する。図8は、指標値が最大となる位置方向パラメータの値の組み合わせの特定処理の処理手順の一例を説明するためのフローチャートである。
【0037】
ステップS301において、パラメータ特定部12は、変数k1を0で初期化する。続いて、パラメータ特定部12は、変数k2を0で初期化する(S302)。なお、変数k1は、可動基地局20aに関する位置方向パラメータの値の組み合わせのうち、処理対象の組み合わせを識別するための変数である。変数k2は、可動基地局20bに関する位置方向パラメータの値の組み合わせのうち、処理対象の組み合わせを識別するための変数である。
【0038】
続いて、パラメータ特定部12は、変数k1に1を加算する(S303)。なお、ステップS303のタイミングにおいて、可動基地局20aに関する位置方向パラメータの値について、新たな(未処理の)組み合わせが生成されてもよい。位置方向パラメータが図7に示すような項目によって構成される場合、この場合、少なくとも1つの項目の値が変更される。変更幅は、任意に定められればよい。
【0039】
続いて、パラメータ特定部12は、変数k1の値がkmaxを超えたか否かを判定する(S304)。kmaxは、位置方向パラメータが取りうる値の組み合わせの数である。但し、位置方向パラメータが取りうる値の組み合わせとは、理論上の全ての組み合わせである必要はない。例えば、位置方向パラメータの項目ごとに取りうる値が定められ、各項目が取りうる値の組み合わせの全部又は一部が、位置方向パラメータが取りうる値の組み合わせとされてもよい。
【0040】
変数k1の値がkmax以下である場合(S304でYes)、パラメータ特定部12は、変数k2に1を加算する(S304)。なお、ステップS303のタイミングにおいて、基地局21bに関する位置方向パラメータの値について、新たな(未処理の)組み合わせが生成されてもよい。
【0041】
続いて、パラメータ特定部12は、変数k2の値がkmaxを超えたか否かを判定する(S304)。なお、ここでは、可動基地局20aに関する位置方向パラメータが取りうる値の組み合わせの数と、可動基地局20bに関する位置方向パラメータが取りうる値の組み合わせの数とがともにkmaxである例に基づくが、両者が異なる場合、ステップS304では、kmaxとは異なる値とk2とが比較されればよい。
【0042】
続いて、パラメータ特定部12は、可動基地局20aの位置方向パラメータの値のうちのk1番目の組み合わせ(以下、「パラメータ値k1」という。)と、可動基地局20bの位置方向パラメータの値のうちのk2番目の組み合わせ(以下、「パラメータ値k2」という。)とにおける見通し範囲を特定し、当該見通し範囲の指標値(見通し範囲サイズ)を算出する(S307)。パラメータ特定部12は、算出結果をパラメータ値k1及びパラメータ値k2の組に対応付けてメモリ装置103又は補助記憶装置102等へ記憶する(S307)。
【0043】
続いて、パラメータ特定部12は、k2の値がkmaxを超えるまで、ステップS305以降を繰り返す。そたがって、現在のパラメータ値k1と、各パラメータ値k2との組ごとに、見通し範囲サイズが算出される。
【0044】
k2の値がkmaxを超えると(S306でNo)、パラメータ特定部12は、ステップS302以降を繰り返す。したがって、各パラメータ値k1と各パラメータ値k2との組ごとに、見通し範囲サイズが算出される。
【0045】
k1の値がkmaxを超えると(S304でNo)、パラメータ特定部12は、ステップS307において算出された見通し範囲サイズの中での最大値に対応するパラメータ値k1及びパラメータ値k2の組を特定する(S308)。
【0046】
なお、上記では、可動基地局20のみが配置される例を示したが、可動機能を持たない1以上の基地局(以下、「固定基地局」という。)と、複数の可動基地局20とが配置されてもよい。この場合、固定基地局の位置方向パラメータを固定として、同様の処理を行うことで、指標値が最適化された通信エリアを形成するための、各可動基地局20の位置及び方向を特定することができる。
【0047】
上述したように、第1の実施の形態によれば、各基地局21の位置及び方向について、遮蔽物50の位置及び形状等に応じて変化する、見通し範囲(通信エリア)の大きさが最大となる値を特定することができる。したがって、遮蔽物に応じた通信エリアを形成することができる。
【0048】
また、第1の実施の形態によれば、見通し範囲の大きさが最大化されるため、未検出の端末40が多数存在する可能性がある場合に、全体の品質を極力向上させることが可能となる。
【0049】
次に、第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態では第1の実施の形態と異なる点について説明する。第2の実施の形態において特に言及されない点については、第1の実施の形態と同様でもよい。
【0050】
第2の実施の形態では、通信エリアの指標値が第1の実施の形態と異なる。具体的には、第2の実施の形態では、見通し関係となる端末40(以下、「見通し端末」という。)の数が指標値とされる。見通し端末とは、見通し範囲に含まれる端末40をいう。指標値が変化することで、第2の実施の形態の制御装置10が実行する処理手順は以下のように変化する。
【0051】
図9は、第2の実施の形態における制御装置10が実行する処理手順の一例を説明するためのフローチャートである。図9中、図5と同一ステップには同一ステップ番号を付し、その説明は省略する。図9では、ステップS130がステップS130aに変更され、ステップS120とステップS130aとの間にステップS121が追加される。
【0052】
ステップS121において、パラメータ特定部12は、各端末40の位置情報を取得する。或る端末40の位置情報(以下、「端末位置情報」という。)は、当該端末40の位置を示す情報をいう。端末位置情報は、空間P1における位置を把握可能な情報であればよいが、広域的な位置情報であってもよい。例えば、端末位置情報は、端末40のGPS(Global Positioning System)機能により測定される位置情報であってもよいし、端末40が有するセンサ等を用いて測定される位置情報であってもよい。この場合、各端末40は、上りのデータチャネル(または制御チャネル)を用いて、端末位置情報を制御装置10へ送信する。又は、基地局21又は制御装置10がカメラ映像を解析することで各端末40の端末位置情報を推定してもよい。
【0053】
ステップS130aにおいて、パラメータ特定部12は、各基地局21の位置方向パラメータのとりうる値の組み合わせごとに、遮蔽物マップ及び各端末位置情報に基づいて、指標値(見通し端末の数)を算出し、指標値が最大となる組み合わせを特定する。
【0054】
より詳しくは、図8のステップS307において、パラメータ特定部12は、パラメータ値k1及びパラメータ値k2における見通し範囲を特定し、当該見通し範囲と各端末位置情報とに基づいて、当該見通し範囲に含まれる端末40(見通し端末)を特定する。パラメータ特定部12は、見通し端末の数をカウントし、カウント結果をパラメータ値k1及びパラメータ値k2の組に対応付けてメモリ装置103又は補助記憶装置102等へ記憶する。したがって、第2の実施の形態では、図T2の「指標値」の列が「見通し端末の数」に変更された情報が、ステップS307において算出される。
【0055】
図8のステップS308において、パラメータ特定部12は、ステップS307において算出された見通し端末の数の中での最大値に対応するパラメータ値k1及びパラメータ値k2の組を特定する。
【0056】
上述したように、第2の実施の形態によれば、各基地局21の位置及び方向について、遮蔽物50の位置及び形状等に応じて変化する、見通し端末の数が最大となる値を特定することができる。したがって、遮蔽物50に応じた通信エリアを形成することができる。
【0057】
また、第2の実施の形態によれば、アクティブな端末40の通信品質の向上を期待することができる。
【0058】
なお、第2の実施の形態は、ローカル5G等の閉域利用など、端末40の存在や位置を管理又は検出可能である状況において好適である。
【0059】
次に、第3の実施の形態について説明する。第3の実施の形態では第1又は第2の実施の形態と異なる点について説明する。第3の実施の形態において特に言及されない点については、第1又は第2の実施の形態と同様でもよい。
【0060】
第3の実施の形態では、通信エリアの指標値が上記各実施の形態と異なる。具体的には、第3の実施の形態では、見通し端末の通信量の合計が指標値とされる。なお、端末40の通信量は、トラヒック量であってもよいし、スループットであってもよい。指標値が変化することで、第3の実施の形態の制御装置10が実行する処理手順は以下のように変化する。
【0061】
図10は、第3の実施の形態における制御装置10が実行する処理手順の一例を説明するためのフローチャートである。図10中、図9と同一ステップには同一ステップ番号を付し、その説明は省略する。図10では、ステップS130がステップS130bに変更され、ステップS121とステップS130bの間にステップS122が追加される。
【0062】
ステップS122において、パラメータ特定部12は、各端末40の通信量を取得する。或る端末40の通信量は、各端末40からアップロードされてもよいし、各基地局21から取得されてもよい。また、各端末40の通信量は、端末位置情報とともに取得されてもよい。なお、ステップS122の時点では、各端末40の位置は端末位置情報に基づいて特定可能なため、通信量の取得対象の端末40は、見通し端末に限定されてもよい。
【0063】
ステップS130bにおいて、パラメータ特定部12は、各基地局21の位置方向パラメータのとりうる値の組み合わせごとに、遮蔽物マップ、各端末位置情報及び各端末40の通信量に基づいて、通信エリアの指標値(見通し端末の通信量の合計)を算出し、指標値が最大となる組み合わせを特定する。
【0064】
より詳しくは、図8のステップS307において、パラメータ特定部12は、パラメータ値k1及びパラメータ値k2における見通し端末を特定し、見通し端末の通信量の合計を算出する。パラメータ特定部12は、算出結果をパラメータ値k1及びパラメータ値k2の組に対応付けてメモリ装置103又は補助記憶装置102等へ記憶する。したがって、第3の実施の形態では、図T2の「指標値」の列が「見通し端末の通信量の合計」に変更された情報が、ステップS307において算出される。
【0065】
図8のステップS308において、パラメータ特定部12は、ステップS307において算出された見通し端末のスループットの合計の中での最大値に対応するパラメータ値k1及びパラメータ値k2の組を特定する。
【0066】
上述したように、第3の実施の形態によれば、各基地局21の位置及び方向について、遮蔽物50の位置及び形状等に応じて変化する、見通し端末の通信量の合計が最大となる値を特定することができる。したがって、遮蔽物50に応じた通信エリアを形成することができる。
【0067】
また、第3の実施の形態によれば、オフロード効果の最大化を期待することできる。
【0068】
なお、第3の実施の形態は、ローカル5G等の閉域利用など端末40の存在や位置を管理又は検出可能である状況や、Sub-6等のバックアップRATが共存する際において好適である。
【0069】
次に、第1~第3の実施の形態における見通し範囲の特定方法の具体例について説明する。
【0070】
[第1の具体例]
基地局21のアンテナの中心位置の点から空間P1の壁、又は遮蔽物50に衝突するまでの線分が通る領域を見通し範囲とする。
【0071】
この場合、端末40の位置に依らず、空間P1の形状、並びに遮蔽物50位の位置及び形状のみで簡易に見通し範囲を特定可能である。
【0072】
[第2の具体例]
基地局21のアンテナの中心位置の点から、予め定めたグリッド上の各点に対して、フレネルゾーンを算出し、フレネルゾーンのうち予め定めたx%が遮蔽されないポイントを見通し位置とし、これらのグリッド周囲のエリアを見通し範囲とする。
【0073】
この場合、端末40の位置に依らず、空間P1の形状、並びに遮蔽物50位の位置及び形状のみで見通し範囲を特定可能である。
【0074】
次に、第2又は第3の実施の形態にける見通し端末の特定方法の具体例について説明する。
【0075】
基地局21のアンテナ中心位置の点から、各端末40に対して、フレネルゾーンを算出し、フレネルゾーンのうち予め定めたx%が遮蔽されない端末40を見通し端末とする。
【0076】
この場合、端末40の位置がある程度静的である場合に、空間P1の形状、並びに遮蔽物50位の位置及び形状のみで、見通し端末を特定可能である。
【0077】
なお、フレネルゾーンは、以下の計算式を用いて算出可能である。
【0078】
【数1】
各パラメータの意味は以下の通りである。
d:送信と受信側の最短距離(m)
r1:回転楕円体の中央部の半径(フレネル半径)(m)
d1:送信側と回転楕円体中央までの距離(m):
d2:受信側と回転楕円体中央までの距離(m)
d3:フレネル半径部分で反射する反射波と直接波の経路差(m)
λ:波長(m)
なお、上記各実施の形態において、遮蔽物マップ生成部11は、生成部の一例である。パラメータ特定部12は、算出部の一例である。
【0079】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は斯かる特定の実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0080】
10 制御装置
11 遮蔽物マップ生成部
12 パラメータ特定部
13 制御部
20 可動基地局
21 基地局
22 可動構造体
30 遮蔽物検知装置
40 端末
50 遮蔽物
100 ドライブ装置
101 記録媒体
102 補助記憶装置
103 メモリ装置
104 CPU
105 インタフェース装置
B バス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10