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特許7567983熱可塑性ノルボルネン系樹脂、成形体及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】熱可塑性ノルボルネン系樹脂、成形体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/08 20060101AFI20241008BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20241008BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
C08G61/08
C08J5/18 CEZ
G02B5/30
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023081986
(22)【出願日】2023-05-18
(62)【分割の表示】P 2020549141の分割
【原出願日】2019-09-20
(65)【公開番号】P2023107789
(43)【公開日】2023-08-03
【審査請求日】2023-05-18
(31)【優先権主張番号】P 2018184503
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】摺出寺 浩成
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-100984(JP,A)
【文献】特開平10-139865(JP,A)
【文献】特開2006-241204(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G61/00-61/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノルボルネン系樹脂で形成された、成形体であって、
前記ノルボルネン系樹脂は、ノルボルネン系重合体の水素化物を含む熱可塑性ノルボルネン系樹脂であって、
前記熱可塑性ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度Tgが、下記式(1)を満たし、
前記水素化物の重量平均分子量Mwが、下記式(2)を満たし、
前記熱可塑性ノルボルネン系樹脂に含まれる前記水素化物の量100%に対する、分子量10000以下の前記水素化物の割合Lが、下記式(3)を満たし、
前記熱可塑性ノルボルネン系樹脂に、Tg+15℃、1分間で1.5倍に自由端一軸延伸を施した場合に発現する複屈折Δnが、下記式(4)を満たし、
(1)105℃≦Tg≦120℃
(2)36000≦Mw
(3)L≦10.5%
(4)0.0025≦Δn
前記熱可塑性ノルボルネン系樹脂の応力複屈折Cが2250×10-12Pa-1以上であり、
前記成形体は、光学フィルムであり、
前記光学フィルムの光弾性係数Cが、下記式(5)を満たす、成形体。
(5)C≦10Brewster
【請求項2】
前記光学フィルムの厚み方向のレターデーションRth、及び、前記光学フィルムの厚みdが、下記式(6)を満たす、請求項1に記載の成形体。
(6)Rth/d≧3.5×10-3
【請求項3】
請求項1又は2に記載の成形体の製造方法であって、
前記熱可塑性ノルボルネン系樹脂で形成された延伸前フィルムを用意する工程と、
前記延伸前フィルムを、前記熱可塑性ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度Tg+9℃以上で、延伸倍率1.8倍以上に延伸する工程と、を含む、成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノルボルネン系重合体の水素化物を含む熱可塑性ノルボルネン系樹脂及びその成形体、並びに、その成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱可塑性樹脂で形成された光学フィルムが知られている。例えば、特許文献1~5には、熱可塑性ノルボルネン系樹脂で形成された光学フィルムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-043740号公報
【文献】特開2006-235085号公報
【文献】特開2006-327112号公報
【文献】特開2008-114369号公報
【文献】特開2003-238705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、液晶表示装置等の画像表示装置に適用するための光学フィルムには、レターデーションの発現性に優れることが求められており、特に、厚み方向のレターデーションRthの発現性に優れるフィルムが求められている。そこで、このように厚み方向のレターデーションRthの発現性に優れるフィルムを実現する観点から、複屈折の発現性に優れる熱可塑性ノルボルネン系樹脂の開発が求められる。
【0005】
また、熱可塑性ノルボルネン系樹脂を用いた光学フィルムは、一般に、延伸フィルムとして製造される。ところが、熱可塑性ノルボルネン系樹脂で形成された延伸フィルムは、他のフィルムと接着した場合の接着強度が低い傾向がある。そのため、接着強度の高い光学フィルムを得ることが可能な熱可塑性ノルボルネン系樹脂の開発も求められる。
【0006】
本発明は、前記の課題に鑑みて創案されたもので、複屈折の発現性に優れ、且つ、延伸後に高い接着強度を得ることができる熱可塑性ノルボルネン系樹脂;並びに、前記の熱可塑性ノルボルネン系樹脂で形成された成形体及びその製造方法;を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記の課題を解決するべく鋭意検討した。その結果、本発明者は、所定の範囲の重量平均分子量Mwを有し、且つ、分子量10000以下の低分子成分が少ないノルボルネン系重合体の水素化物を含み、且つ、所定範囲のガラス転移温度Tgを有する熱可塑性ノルボルネン系樹脂が、複屈折の発現性に優れ、且つ、延伸後に高い接着強度を得ることができることを見い出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記のものを含む。
【0008】
〔1〕 ノルボルネン系重合体の水素化物を含む熱可塑性ノルボルネン系樹脂であって、
前記熱可塑性ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度Tgが、下記式(1)を満たし、
前記水素化物の重量平均分子量Mwが、下記式(2)を満たし、
前記熱可塑性ノルボルネン系樹脂に含まれる前記水素化物の量100%に対する、分子量10000以下の前記水素化物の割合Lが、下記式(3)を満たす、熱可塑性ノルボルネン系樹脂。
(1)105℃≦Tg≦120℃
(2)36000≦Mw
(3)L≦10.5%
〔2〕 前記熱可塑性ノルボルネン系樹脂に、Tg+15℃、1分間で1.5倍に自由端一軸延伸を施した場合に発現する複屈折Δnが、下記式(4)を満たす、〔1〕に記載の熱可塑性ノルボルネン系樹脂。
(4)0.0025≦Δn
〔3〕 〔1〕又は〔2〕に記載の熱可塑性ノルボルネン系樹脂で形成された、成形体。
〔4〕 光学フィルムである、〔3〕に記載の成形体。
〔5〕 前記光学フィルムの光弾性係数Cが、下記式(5)を満たす、〔4〕に記載の成形体。
(5)C≦10Brewster
〔6〕 前記光学フィルムの厚み方向のレターデーションRth、及び、前記光学フィルムの厚みdが、下記式(6)を満たす、〔4〕又は〔5〕に記載の成形体。
(6)Rth/d≧3.5×10-3
〔7〕 〔4〕~〔6〕のいずれか一項に記載の成形体の製造方法であって、
〔1〕又は〔2〕に記載の熱可塑性ノルボルネン系樹脂で形成された延伸前フィルムを用意する工程と、
前記延伸前フィルムを、前記熱可塑性ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度Tg+9℃以上で、延伸倍率1.8倍以上に延伸する工程と、を含む、成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複屈折の発現性に優れ、且つ、延伸後に高い接着強度を得ることができる熱可塑性ノルボルネン系樹脂;並びに、前記の熱可塑性ノルボルネン系樹脂で形成された成形体及びその製造方法;を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について、実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0011】
以下の説明において、フィルムの面内レターデーションReは、別に断らない限り、Re=(nx-ny)×dで表される値である。また、フィルムの厚み方向のレターデーションRthは、別に断らない限り、Rth=[{(nx+ny)/2}-nz]×dで表される値である。ここで、nxは、フィルムの厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表す。nyは、前記面内方向であってnxの方向に直交する方向の屈折率を表す。nzは厚み方向の屈折率を表す。dは、フィルムの厚みを表す。測定波長は、別に断らない限り、550nmである。
【0012】
以下の説明において、「長尺」のフィルムとは、フィルムの幅に対して、5倍以上の長さを有するフィルムをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムをいう。フィルムの幅に対する長さの割合の上限は、特に限定されないが、例えば100,000倍以下としうる。
【0013】
以下の説明において、「偏光板」とは、別に断らない限り、剛直な部材だけでなく、例えば樹脂製のフィルムのように可撓性を有する部材も含む。
【0014】
[1.熱可塑性ノルボルネン系樹脂の概要]
本発明の一実施形態に係る熱可塑性ノルボルネン系樹脂は、ノルボルネン系重合体の水素化物を含む熱可塑性樹脂である。以下の説明において、熱可塑性ノルボルネン系樹脂に含まれるノルボルネン系重合体の水素化物を、適宜「ノルボルネン系水素化物」ということがある。熱可塑性ノルボルネン系樹脂は、下記の第一~第三の要件を満たす。
【0015】
第一に、熱可塑性ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度Tgが、下記式(1)を満たす。
(1)105℃≦Tg≦120℃
【0016】
第二に、熱可塑性ノルボルネン系樹脂に含まれるノルボルネン系水素化物の重量平均分子量Mwが、下記式(2)を満たす。
(2)36000≦Mw
【0017】
第三に、熱可塑性ノルボルネン系樹脂に含まれるノルボルネン系水素化物の量100%に対する、分子量10000以下のノルボルネン系水素化物の割合Lが、下記式(3)を満たす。以下、前記の割合Lを、「低分子割合L」ということがある。
(3)L≦10.5%
【0018】
前記の第一~第三の要件を満たす本実施形態に係る熱可塑性ノルボルネン系樹脂は、延伸による複屈折の発現性に優れる。また、この熱可塑性ノルボルネン系樹脂は、延伸後に、高い接着強度を得ることができる。したがって、本実施形態に係る熱可塑性ノルボルネン系樹脂を用いることにより、厚み方向のレターデーションが大きく、且つ、接着強度が高い光学フィルムを得ることができる。
【0019】
[2.ノルボルネン系重合体の水素化物]
本実施形態に係る熱可塑性ノルボルネン系樹脂が含むノルボルネン系水素化物は、ノルボルネン系単量体を重合させて得られるノルボルネン系重合体に水素添加を行って得られる構造を含む重合体である。よって、ノルボルネン系水素化物は、通常、ノルボルネン系単量体を重合させて得られる繰り返し構造を水素化して得られる構造を含む。このようなノルボルネン系水素化物には、例えば、ノルボルネン系単量体の開環重合体、並びに、ノルボルネン系単量体と任意の単量体との開環共重合体、からなる群より選ばれる1以上の開環重合体の水素化物;ノルボルネン系単量体の付加重合体、並びに、ノルボルネン系単量体と任意の単量体との付加共重合体、からなる群より選ばれる1以上の付加重合体の水素化物;が包含される。また、熱可塑性ノルボルネン系樹脂が含むノルボルネン系水素化物は、1種類でもよく、2種類以上でもよい。
【0020】
ノルボルネン系単量体は、ノルボルネン構造を分子内に含む単量体である。このノルボルネン系単量体としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(慣用名:ノルボルネン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-3,7-ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン(慣用名:テトラシクロドデセン)等の、芳香環構造を含まないノルボルネン系単量体;5-フェニル-2-ノルボルネン、5-(4-メチルフェニル)-2-ノルボルネン、5-(1-ナフチル)-2-ノルボルネン、9-(2-ノルボルネン-5-イル)-カルバゾール等の、芳香族置換基を有するノルボルネン系単量体;1,4-メタノ-1,4,4a,4b,5,8,8a,9a-オクタヒドロフルオレン、1,4-メタノ-1,4,4a,9a-テトラヒドロフルオレン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)、1,4-メタノ-1,4,4a,9a-テトラヒドロジベンゾフラン、1,4-メタノ-1,4,4a,9a-テトラヒドロカルバゾール、1,4-メタノ-1,4,4a,9,9a,10-ヘキサヒドロアントラセン、1,4-メタノ-1,4,4a,9,10,10a-ヘキサヒドロフェナンスレン等の、縮合多環構造中にノルボルネン環構造と芳香環構造とを含むノルボルネン系単量体;並びに、これらの化合物の誘導体(例えば、環に置換基を有するもの);などが挙げられる。
【0021】
置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロキル基等のアルキル基;アルキリデン基;アルケニル基;極性基;などが挙げられる。極性基としては、例えば、ヘテロ原子、又はヘテロ原子を有する原子団などが挙げられる。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ハロゲン原子などが挙げられる。極性基の具体例としては、フルオロ基、クロル基、ブロモ基、ヨード基等のハロゲン基;カルボキシル基;カルボニルオキシカルボニル基;エポキシ基;ヒドロキシ基;オキシ基;アルコキシ基;エステル基;シラノール基;シリル基;アミノ基;ニトリル基;スルホン基;シアノ基;アミド基;イミド基;などが挙げられる。置換基の数は、1でもよく、2以上でもよい。また、2以上の置換基の種類は、同じでもよく、異なっていてもよい。ただし、飽和吸水率が低く耐湿性に優れる熱可塑性ノルボルネン系樹脂を得る観点では、ノルボルネン系単量体は、極性基の量が少ないことが好ましく、極性基を有さないことがより好ましい。
【0022】
ノルボルネン系単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0023】
前記のノルボルネン系単量体の具体的な種類及び重合比は、所望のガラス転移温度Tgを有する熱可塑性ノルボルネン系樹脂が得られるように選択することが望ましい。通常、ノルボルネン系水素化物のガラス転移温度は、当該ノルボルネン系水素化物の原料となるノルボルネン系単量体の種類及び重合比に依存する。よって、ノルボルネン系単量体の種類及び重合比を適切に調整することにより、ノルボルネン系水素化物のガラス転移温度を調整できるので、そのノルボルネン系水素化物を含む熱可塑性ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度Tgを式(1)を満たすように調整できる。
【0024】
熱可塑性ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度Tgを式(1)の範囲に収めて高い複屈折発現性を得る観点では、ノルボルネン系単量体として、テトラシクロドデセン系単量体を用いることが好ましい。よって、ノルボルネン系水素化物は、テトラシクロドデセン系単量体を含む単量体の重合体の水素化物が好ましい。このようなノルボルネン系水素化物は、通常、テトラシクロドデセン系単量体を重合させて得られる繰り返し構造を水素化して得られる構造(以下、適宜「テトラシクロドデセン系水素化構造」ということがある。)を含む。
【0025】
テトラシクロドデセン系単量体は、テトラシクロドデセン及びテトラシクロドデセン誘導体からなる群より選ばれる単量体を表す。テトラシクロドデセン誘導体とは、テトラシクロドデセンの環に置換基が結合した構造を有する化合物である。置換基の数は、1でもよく、2以上でもよい。また、2以上の置換基の種類は、同じでもよく、異なっていてもよい。好ましいテトラシクロドデセン誘導体としては、例えば、8-エチリデン-テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕-ドデカ-3-エン(慣用名:エチリデンテトラシクロドデセン)8-エチル-テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕-ドデカ-3-エン、8-エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-メチル-8-メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセンが挙げられる。テトラシクロドデセン系単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
ノルボルネン系水素化物の原料としての単量体の全量100重量%に対して、それに含まれるテトラシクロドデセン系単量体の割合(重合比)は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上、さらに好ましくは20重量%以上で、特に好ましくは25重量%以上であり、好ましくは50重量%以下、より好ましくは45重量%以下、さらに好ましくは40重量%以下、特に好ましくは35重量%以下である。テトラシクロドデセン系単量体の重合比が前記の範囲にある場合、ノルボルネン系水素化物のガラス転移温度を大きくできるので、熱可塑性ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度Tgを式(1)の範囲に収め易い。
【0027】
通常、ある単量体に由来する繰り返し構造(単量体単位)のノルボルネン系水素化物における割合は、その単量体の全単量体における割合(重合比)に一致する。よって、通常、テトラシクロドデセン系水素化構造のノルボルネン系水素化物における割合は、単量体の全量に対するテトラシクロドデセン系単量体の重合比に一致する。したがって、ノルボルネン系水素化物100重量%に対するテトラシクロドデセン系水素化構造の割合は、好ましくは、前記のテトラシクロドデセン系単量体の重合比と同じ範囲に収まる。
【0028】
さらに、熱可塑性ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度Tgを式(1)の範囲に収めて高い複屈折発現性を得る観点では、ノルボルネン系単量体として、ジシクロペンタジエン系単量体を用いることが好ましい。よって、ノルボルネン系水素化物は、ジシクロペンタジエン系単量体を含む単量体の重合体の水素化物が好ましい。このようなノルボルネン系水素化物は、通常、ジシクロペンタジエン系単量体を重合させて得られる繰り返し構造を水素化して得られる構造(以下、適宜「ジシクロペンタジエン系水素化構造」ということがある。)を含む。
【0029】
ジシクロペンタジエン系単量体は、ジシクロペンタジエン及びジシクロペンタジエン誘導体からなる群より選ばれる単量体を表す。ジシクロペンタジエン誘導体とは、ジシクロペンタジエンの環に置換基が結合した構造を有する化合物である。置換基の数は、1でもよく、2以上でもよい。また、2以上の置換基の種類は、同じでもよく、異なっていてもよい。ジシクロペンタジエン系単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
ノルボルネン系水素化物の原料としての単量体の全量100重量%に対して、それに含まれるジシクロペンタジエン系単量体の割合(重合比)は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは55重量%以上、さらに好ましくは60重量%以上、特に好ましくは65重量%以上であり、好ましくは90重量%以下、より好ましくは85重量%以下、さらに好ましくは80重量%以下、特に好ましくは75重量%以下である。ジシクロペンタジエン系単量体の重合比が前記の範囲にある場合、ノルボルネン系水素化物のガラス転移温度を大きくできるので、熱可塑性ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度Tgを式(1)の範囲に収め易い。
【0031】
通常、ジシクロペンタジエン系水素化構造のノルボルネン系水素化物における割合は、単量体の全量に対するジシクロペンタジエン系単量体の重合比に一致する。したがって、ノルボルネン系水素化物100重量%に対するジシクロペンタジエン系水素化構造の割合は、好ましくは、前記のジシクロペンタジエン系単量体の重合比と同じ範囲に収まる。
【0032】
特に、ノルボルネン系単量体としてテトラシクロドデセン系単量体及びジシクロペンタジエン系単量体を組み合わせて用いる場合、それらの量の比は、所定の範囲にあることが好ましい。具体的には、テトラシクロドデセン系単量体100重量部に対して、ジシクロペンタジエン系単量体の量は、好ましくは100重量部以上、より好ましくは125重量部以上、特に好ましくは150重量部以上であり、好ましくは500重量部以下、より好ましくは450重量部以下、特に好ましくは400重量部以下である。よって、ノルボルネン系水素化物において、テトラシクロドデセン系水素化構造100重量部に対して、ジシクロペンタジエン系水素化構造の量は、好ましくは100重量部以上、より好ましくは125重量部以上、特に好ましくは150重量部以上であり、好ましくは500重量部以下、より好ましくは450重量部以下、特に好ましくは400重量部以下である。前記の量比が前記範囲にある場合、ノルボルネン系水素化物のガラス転移温度を大きくできるので、熱可塑性ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度Tgを式(1)の範囲に収め易い。
【0033】
ノルボルネン系単量体と共重合させる任意の単量体を用いる場合、その任意の単量体の種類は、所望のガラス転移温度Tgを有する熱可塑性ノルボルネン系樹脂が得られる範囲で、制限は無い。ノルボルネン系単量体と開環共重合が可能な任意の単量体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等のモノ環状オレフィン類及びその誘導体;シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエン等の環状共役ジエン及びその誘導体;などが挙げられる。また、ノルボルネン系単量体と付加共重合が可能な任意の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン等の炭素数2~20のα-オレフィン及びこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン等のシクロオレフィン及びこれらの誘導体;1,4-ヘキサジエン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン等の非共役ジエン;などが挙げられる。任意の単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
ノルボルネン系水素化物は、ノルボルネン系重合体中の非芳香族性の不飽和結合が水素化されたものでもよく、ノルボルネン系重合体中の芳香族性の不飽和結合が水素化されたものでもよく、ノルボルネン系重合体中の非芳香族性の不飽和結合及び芳香族性の不飽和結合の両方が水素化されたものであってもよい。中でも、ノルボルネン系重合体中の非芳香族性の不飽和結合及び芳香族性の不飽和結合の両方が水素化されたノルボルネン系水素化物が好ましい。このように非芳香族性の不飽和結合及び芳香族性の不飽和結合の両方が水素化されたノルボルネン系水素化物を用いることにより、光弾性係数を小さくする事ができる。さらに、通常は、熱可塑性ノルボルネン系樹脂の機械的強度、耐湿性、耐熱性等の特性を効果的に改善することができる。
【0035】
ノルボルネン系水素化物のガラス転移温度は、好ましくは105℃以上、より好ましくは106℃以上、特に好ましくは107℃以上であり、好ましくは120℃以下、より好ましくは118℃以下、特に好ましくは117℃以下である。前記範囲のガラス転移温度を有するようにノルボルネン系単量体の種類及び重合比を調整されたノルボルネン系水素化物を含む熱可塑性ノルボルネン系樹脂は、延伸による複屈折の発現性を大きくできる。よって、この熱可塑性ノルボルネン系樹脂を用いることにより、厚み方向のレターデーションRthの大きい光学フィルムを得ることが可能である。また、通常は、このように高いガラス転移温度を有するノルボルネン系水素化物を用いることにより、高温環境におけるノルボルネン系水素化物の配向の緩和を抑制できる。よって、優れた耐熱性を達成できるので、高温環境における光学フィルムの厚み方向のレターデーションRthの変化を抑制できる。
【0036】
ノルボルネン系水素化物のガラス転移温度は、示差走査熱量分析計を用いて、JIS K 6911に基づき、昇温速度10℃/分の条件で測定できる。
【0037】
ノルボルネン系水素化物のガラス転移温度は、例えば、ノルボルネン系水素化物の原料としてのノルボルネン系単量体の種類及び重合比、更には低分子割合Lによって調整できる。
【0038】
ノルボルネン系水素化物は、前記式(2)を満たす重量平均分子量Mwを有する。詳細には、ノルボルネン系水素化物の重量平均分子量Mwは、通常36000以上、好ましくは37000以上、特に好ましくは38000以上である。前記のように大きい重量平均分子量Mwを有するノルボルネン系水素化物を含む場合に、熱可塑性ノルボルネン系樹脂は、延伸による複屈折の発現性を大きくできる。さらに、このようにノルボルネン系水素化物の重量平均分子量Mwが大きい場合、延伸後の熱可塑性ノルボルネン系樹脂の接着強度を高くできる。ノルボルネン系水素化物の重量平均分子量Mwの上限は、特段の制限はないが、好ましくは50000以下、より好ましくは47000以下、特に好ましくは45000以下である。ノルボルネン系水素化物の重量平均分子量Mwが前記の上限値以下である場合、熱可塑性ノルボルネン系樹脂の成形性を良好にできる。
【0039】
ノルボルネン系水素化物の重量平均分子量Mwは、溶離液としてシクロヘキサンを用いるゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより、ポリイソプレン換算で測定できる。ノルボルネン系水素化物がシクロヘキサンに溶解しない場合は、溶離液としてトルエンを用いうる。溶離液がトルエンのとき、重量平均分子量Mwは、ポリスチレン換算で測定できる。
【0040】
ノルボルネン系水素化物の前記範囲の重量平均分子量Mwは、例えば、ノルボルネン系重合体の重合条件を高分子量のノルボルネン系重合体が得られるように調整する方法、適切な分離方法でノルボルネン系水素化物から低分子量成分を取り除く方法、などによって実現できる。ノルボルネン系重合体の重合条件を高分子量のノルボルネン系重合体が得られるように調整する方法としては、例えば、連鎖移動材の量を減らす方法が挙げられる。また、適切な分離方法でノルボルネン系水素化物から低分子量成分を取り除く方法としては、例えば、ノルボルネン系水素化物を良溶媒に溶かし、その後、貧溶媒を添加し、沈殿した高分子量成分だけを取る方法が挙げられる。
【0041】
熱可塑性ノルボルネン系樹脂に含まれるノルボルネン系水素化物の量100%に対する、分子量10000以下のノルボルネン系水素化物の割合(低分子割合)Lは、下記式(3)を満たす。詳細には、前記の低分子割合Lは、通常10.5%以下、好ましくは10.3%以下、特に好ましくは10%以下である。前記のように低分子割合Lが小さいことは、ノルボルネン系水素化物に含まれる分子量10000以下の低分子量成分が少ないことを表す。このようにノルボルネン系水素化物の低分子量成分が少ない場合に、熱可塑性ノルボルネン系樹脂は、延伸による複屈折の発現性を大きくできる。さらに、ノルボルネン系水素化物の低分子量成分が少ない場合に、延伸後の熱可塑性ノルボルネン系樹脂の接着強度を高くできる。前記の低分子割合Lの下限は、特段の制限はなく、理想的には0%であるが、通常は1%以上である。
【0042】
前記の低分子割合Lは、前記のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによってノルボルネン系水素化物の分子量を測定し、その測定値から分子量10000以下の成分の量を積分して算出できる。
【0043】
ノルボルネン系水素化物の前記範囲の低分子割合Lは、例えば、ノルボルネン系重合体の重合条件を高分子量のノルボルネン系重合体が得られるように調整する方法、適切な分離方法でノルボルネン系水素化物から低分子量成分を取り除く方法、などによって実現できる。ノルボルネン系重合体の重合条件を高分子量のノルボルネン系重合体が得られるように調整する方法としては、例えば、連鎖移動材の量を減らす方法が挙げられる。また、適切な分離方法でノルボルネン系水素化物から低分子量成分を取り除く方法としては、例えば、例えば、ノルボルネン系水素化物を良溶媒に溶かし、その後、貧溶媒を添加し、沈殿した高分子量成分だけを取る方法が挙げられる。
【0044】
ノルボルネン系水素化物の分子量分布Mw/Mnは、好ましくは2.4以下、より好ましくは2.3以下、特に好ましくは2.2以下である。ノルボルネン系水素化物の分子量分布Mw/Mnが前記範囲にある場合、延伸後の熱可塑性ノルボルネン系樹脂の接着強度を効果的に高くできる。分子量分布とは、重量平均分子量と数平均分子量との比であり、「重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn」で表される。ノルボルネン系水素化物の分子量分布の下限は、通常1.0以上である。
【0045】
ノルボルネン系水素化物の分子量分布Mw/Mnは、ノルボルネン系水素化物の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnから計算により算出できる。また、ノルボルネン系水素化物の数平均分子量Mnは、溶離液としてシクロヘキサンを用いるゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより、ポリイソプレン換算で測定できる。ノルボルネン系水素化物がシクロヘキサンに溶解しない場合は、溶離液としてトルエンを用いうる。溶離液がトルエンのとき、数平均分子量Mnは、ポリスチレン換算で測定できる。
【0046】
ノルボルネン系水素化物は、延伸による複屈折の発現性に優れる。よって、ノルボルネン系水素化物は、通常、大きい評価複屈折を有する。評価複屈折は、ある材料に、当該材料のガラス転移温度より15℃高い延伸温度、1分間で、1.5倍に自由端一軸延伸を施した場合に発現する複屈折を表す。
【0047】
詳細には、ノルボルネン系水素化物の評価複屈折は、好ましくは0.0025以上、より好ましくは0.00255以上、特に好ましくは0.0026以上である。このように大きい評価複屈折を有するノルボルネン系水素化物を含む熱可塑性ノルボルネン系樹脂は、延伸によって大きな複屈折を発現できる。よって、厚み方向のレターデーションRthが大きい光学フィルムを容易に製造できる。ノルボルネン系水素化物の評価複屈折の上限は、特段の制限は無いが、好ましくは0.006以下、より好ましくは0.005以下、特に好ましくは0.004以下である。ノルボルネン系水素化物の評価複屈折が前記の上限値以下である場合、ノルボルネン系水素化物のレターデーションの調整を容易に行うことができる。
【0048】
ノルボルネン系水素化物の評価複屈折は、下記の方法によって測定できる。
ノルボルネン系水素化物を成形して、シートを得る。このシートに、自由端一軸延伸を施す。自由端一軸延伸とは、一方向への延伸であって、その延伸方向以外にシートに拘束力を加えない延伸を表す。前記の自由端一軸延伸の延伸温度は、ノルボルネン系水素化物のガラス転移温度より15℃高い温度である。また、延伸時間は1分間であり、自由端一軸延伸の延伸倍率は、1.5倍である。延伸後、シート中央部の面内レターデーションを測定波長550nmで測定し、この面内レターデーションをシート中央部の厚みで割算することで、評価複屈折が得られる。
【0049】
ノルボルネン系水素化物の評価複屈折は、例えば、ノルボルネン系水素化物の原料としてのノルボルネン系単量体の種類及び重合比、並びに、ノルボルネン系水素化物の重量平均分子量Mw及び低分子割合Lによって調整できる。
【0050】
ノルボルネン系水素化物の応力複屈折は、好ましくは2150×10-12Pa-1以上、より好ましくは2200×10-12Pa-1以上、特に好ましくは2250×10-12Pa-1以上であり、好ましくは4000×10-12Pa-1以下、より好ましくは3600×10-12Pa-1以下、特に好ましくは3200×10-12Pa-1以下である。ノルボルネン系水素化物の応力複屈折が前記範囲の下限値以上である場合、熱可塑性ノルボルネン系樹脂の延伸による複屈折の発現性を大きくできる。よって、その熱可塑性ノルボルネン系樹脂を用いて、厚み方向のレターデーションRthが大きい光学フィルムを容易に製造できる。また、ノルボルネン系水素化物の応力複屈折が前記範囲の上限値以下である場合、熱可塑性ノルボルネン系樹脂を用いて製造される光学フィルムのレターデーションRe及びRthを制御しやすくなり、レターデーションの面内のバラツキを抑えることができる。
【0051】
ノルボルネン系水素化物の応力複屈折は、下記の方法で測定できる。
ノルボルネン系水素化物をシート状に成形して、シートを得る。このシートの両端をクリップで固定した後に、片方のクリップに所定の重さ(例えば55g)の重りを固定する。次いで、所定温度(例えば、ノルボルネン系水素化物のガラス転移温度より15℃高い温度)に設定したオーブン内に、重りを固定していない方のクリップを起点にして、所定時間(例えば1時間)シートを吊るして延伸処理を行う。延伸処理を行ったシートを、ゆっくりと冷やして室温まで戻す。このシートについて、シート中心部の面内レターデーションを測定波長650nmで測定し、この面内レターデーションをシート中心部の厚みで割算することで、δn値を算出する。そして、このδn値を、シートに加えた応力(上記の場合は、所定の重りを固定した際に加わった応力)で割算して、応力複屈折を求めることができる。
【0052】
ノルボルネン系水素化物の応力複屈折は、例えば、ノルボルネン系水素化物の原料としてのノルボルネン系単量体の種類及び重合比、並びに、ノルボルネン系水素化物の重量平均分子量Mw及び低分子割合Lによって調整できる。
【0053】
ノルボルネン系重合体は、例えば、ノルボルネン系単量体、及び、必要に応じて用いられる任意の単量体を、適切な触媒の存在下で重合することを含む製造方法により、製造できる。そして、得られたノルボルネン系重合体に対し、ニッケル、パラジウム、ルテニウム等の遷移金属を含む水素化触媒の存在下で水素を接触させて、炭素-炭素不飽和結合を水素化することを含む製造方法により、上述したノルボルネン系水素化物を製造できる。
【0054】
熱可塑性ノルボルネン系樹脂に含まれるノルボルネン系水素化物の割合は、特段の制限はない。ノルボルネン系水素化物の優れた特性を活用する観点では、熱可塑性ノルボルネン系樹脂に含まれるノルボルネン系水素化物の割合は、好ましくは80重量%~100重量%、より好ましくは90重量%~100重量%、特に好ましくは95重量%~100重量%である。
【0055】
[3.熱可塑性ノルボルネン系樹脂が含みうる任意の成分]
熱可塑性ノルボルネン系樹脂は、ノルボルネン系水素化物に組み合わせて、当該ノルボルネン系水素化物以外の任意の成分を含んでいてもよい。任意の成分としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、帯電防止剤、分散剤、塩素捕捉剤、難燃剤、結晶化核剤、強化剤、ブロッキング防止剤、防曇剤、離型剤、顔料、有機又は無機の充填剤、中和剤、滑剤、分解剤、金属不活性化剤、汚染防止剤、抗菌剤などが挙げられる。任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0056】
[4.熱可塑性ノルボルネン系樹脂の特性]
熱可塑性ノルボルネン系樹脂は、前記式(1)を満たすガラス転移温度Tgを有する。詳細には、熱可塑性ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度Tgは、通常105℃以上、好ましくは106℃以上、特に好ましくは107℃以上であり、通常120℃以下、好ましくは118℃以下、特に好ましくは117℃以下である。前記範囲のガラス転移温度Tgを有する熱可塑性ノルボルネン系樹脂は、延伸による複屈折の発現性を大きくできる。よって、この熱可塑性ノルボルネン系樹脂を用いることにより、厚み方向のレターデーションRthの大きい光学フィルムを得ることが可能である。また、通常は、このように高いガラス転移温度Tgを有する熱可塑性ノルボルネン系樹脂を用いることにより、高温環境におけるノルボルネン系水素化物の配向の緩和を抑制できる。よって、優れた耐熱性を達成できるので、高温環境における光学フィルムの厚み方向のレターデーションRthの変化を抑制できる。
【0057】
熱可塑性ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度Tgは、示差走査熱量分析計を用いて、JIS K 6911に基づき、昇温速度10℃/分の条件で測定できる。
【0058】
熱可塑性ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度Tgは、例えば、ノルボルネン系水素化物の原料としてのノルボルネン系単量体の種類及び重合比、低分子割合L、並びに、ノルボルネン系水素化物の含有率によって調整できる。
【0059】
熱可塑性ノルボルネン系樹脂は、延伸による複屈折の発現性が大きい。よって、熱可塑性ノルボルネン系樹脂を延伸した場合には、大きな複屈折が発現する。例えば、熱可塑性ノルボルネン系樹脂は、好ましくは、下記式(4)を満たす評価複屈折Δnを有する。
(4)0.0025≦Δn
【0060】
詳細には、熱可塑性ノルボルネン系樹脂の評価複屈折Δnは、好ましくは0.0025以上、より好ましくは0.00255以上、特に好ましくは0.0026以上である。このように大きい評価複屈折Δnを有する熱可塑性ノルボルネン系樹脂は、延伸によって大きな複屈折を発現できる。よって、厚み方向のレターデーションRthが大きい光学フィルムを容易に製造できる。熱可塑性ノルボルネン系樹脂の評価複屈折Δnの上限は、特段の制限は無いが、好ましくは0.006以下、より好ましくは0.005以下、特に好ましくは0.004以下である。熱可塑性ノルボルネン系樹脂の評価複屈折Δnが前記の上限値以下である場合、熱可塑性ノルボルネン系樹脂のレターデーションの調整を容易に行うことができる。
【0061】
熱可塑性ノルボルネン系樹脂の評価複屈折Δnは、下記の方法によって測定できる。
熱可塑性ノルボルネン系樹脂を成形して、シートを得る。このシートに、自由端一軸延伸を施す。前記の自由端一軸延伸の延伸温度は、熱可塑性ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度Tgより15℃高い温度(即ち、Tg+15℃)である。また、延伸時間は1分間であり、自由端一軸延伸の延伸倍率は、1.5倍である。延伸後、シート中央部の面内レターデーションRe(a)を測定波長550nmで測定し、この面内レターデーションRe(a)をシート中央部の厚みT(a)で割算することで、評価複屈折Δnが得られる。
【0062】
熱可塑性ノルボルネン系樹脂の評価複屈折Δnは、例えば、ノルボルネン系水素化物の原料としてのノルボルネン系単量体の種類及び重合比、ノルボルネン系水素化物の重量平均分子量Mw及び低分子割合L、並びに、ノルボルネン系水素化物の含有率によって調整できる。
【0063】
熱可塑性ノルボルネン系樹脂は、延伸後の接着強度に優れる。よって、熱可塑性ノルボルネン系樹脂を延伸し、その延伸した熱可塑性ノルボルネン系樹脂を任意の部材に接着した場合に、デラミネーションを抑制できる。ノルボルネン系重合体又はその水素化物を含む従来の樹脂は、一般に延伸後にデラミネーションを生じ易かったことに鑑みれば、本実施形態に係る熱可塑性ノルボルネン系樹脂が延伸後のデラミネーションを抑制できることは、優れた利点の一つである。
【0064】
高いガラス転移温度Tgを有するので、熱可塑性ノルボルネン系樹脂は、通常、耐熱性に優れる。よって、熱可塑性ノルボルネン系樹脂は、高温環境において、分子の配向緩和を生じ難い。よって、熱可塑性ノルボルネン系樹脂を用いれば、高温環境における厚み方向のレターデーションRthの変化の抑制が可能な光学フィルムを実現できる。
【0065】
熱可塑性ノルボルネン系樹脂の応力複屈折Cは、好ましくは2150×10-12Pa-1以上、より好ましくは2200×10-12Pa-1以上、特に好ましくは2250×10-12Pa-1以上であり、好ましくは4000×10-12Pa-1以下、より好ましくは3600×10-12Pa-1以下、特に好ましくは3200×10-12Pa-1以下である。熱可塑性ノルボルネン系樹脂の応力複屈折Cが前記範囲の下限値以上である場合、熱可塑性ノルボルネン系樹脂の延伸による複屈折の発現性を大きくできる。よって、その熱可塑性ノルボルネン系樹脂を用いて、厚み方向のレターデーションRthが大きい光学フィルムを容易に製造できる。また、熱可塑性ノルボルネン系樹脂の応力複屈折Cが前記範囲の上限値以下である場合、熱可塑性ノルボルネン系樹脂を用いて製造される光学フィルムのレターデーションRe及びRthを制御しやすくなり、レターデーションの面内のバラツキを抑えることができる。
【0066】
熱可塑性ノルボルネン系樹脂の応力複屈折Cは、下記の方法で測定できる。
熱可塑性ノルボルネン系樹脂をシート状に成形して、シートを得る。このシートの両端をクリップで固定した後に、片方のクリップに所定の重さ(例えば55g)の重りを固定する。次いで、所定温度(例えば、熱可塑性ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度Tgより15℃高い温度)に設定したオーブン内に、重りを固定していない方のクリップを起点にして、所定時間(例えば1時間)シートを吊るして延伸処理を行う。延伸処理を行ったシートを、ゆっくりと冷やして室温まで戻す。このシートについて、シート中心部の面内レターデーションRe(b)を測定波長650nmで測定し、この面内レターデーションRe(b)をシート中心部の厚みT(b)[mm]で割算することで、δn値を算出する。そして、このδn値を、シートに加えた応力(上記の場合は、所定の重りを固定した際に加わった応力)で割算して、応力複屈折Cを求めることができる。
【0067】
応力複屈折Cは、例えば、ノルボルネン系水素化物の原料としてのノルボルネン系単量体の種類及び重合比、ノルボルネン系水素化物の重量平均分子量Mw及び低分子割合L、並びに、ノルボルネン系水素化物の含有率によって調整できる。
【0068】
[5.成形体]
本発明の一実施形態に係る成形体は、上述した熱可塑性ノルボルネン系樹脂によって形成されている。成形体の形状は任意であり、フィルム状、シリンジ状、袋状、カップ状、チューブ状等でありうる。中でも、延伸時の複屈折の発現性に優れ、且つ、延伸後に高い接着強度を得ることができるという熱可塑性ノルボルネン系樹脂の利点を活用する観点では、成形体は、延伸加工を含む製造方法で製造される成形体であることが好ましく、延伸フィルムであることがより好ましく、光学フィルムであることが特に好ましい。
【0069】
[6.光学フィルム]
本発明の一実施形態に係る光学フィルムは、上述した熱可塑性ノルボルネン系樹脂で形成されたフィルムである。熱可塑性ノルボルネン系樹脂の優れた複屈折の発現性を活用して、この光学フィルムは、レターデーションを有する位相差フィルムであることが好ましい。更には、光学フィルムは、大きな厚み方向のレターデーションRthを有することが特に好ましい。
【0070】
光学フィルムの具体的な厚み方向のレターデーションRthは、好ましくは150nm以上、より好ましくは200nm以上、特に好ましくは250nm以上であり、好ましくは450nm以下、より好ましくは400nm以下、特に好ましくは350nm以下である。光学フィルムの厚み方向のレターデーションRthが前記範囲の下限値以上である場合、当該光学フィルムを備える画像表示装置の斜め方向のコントラストを高めることができる。また、光学フィルムの厚み方向のレターデーションRthが前記範囲の上限値以下である場合、当該光学フィルムの厚み方向のレターデーションRth及び配向角の面内におけるバラツキを抑制できる。
【0071】
さらに、光学フィルムは、熱可塑性ノルボルネン系樹脂の複屈折の発現性が大きいことを活用して、当該光学フィルムの厚みd当たりの厚み方向のレターデーションRthが大きいことが好ましい。具体的には、光学フィルムの厚みd、及び、光学フィルムの厚み方向のレターデーションRthが、下記式(6)を満たすことが好ましい。
(6)Rth/d≧3.5×10-3
【0072】
詳細には、比Rth/dは、好ましくは3.5×10-3以上、好ましくは3.7×10-3以上、特に好ましくは3.8×10-3以上である。比Rth/dが前記下限値以上である場合、薄く、且つ、厚み方向のレターデーションRthが大きい光学フィルムが実現される。比Rth/dの上限に特段の制限はないが、延伸倍率を小さくして、光学フィルムの配向角精度を高める観点では、好ましくは8.0×10-3以下、より好ましくは6.0×10-3以下である。
【0073】
また、光学フィルムは、偏光板等のフィルムに対して接着剤を用いて貼り合わせを行う場合に、その接着強度を高くできる。よって、光学フィルムを剥がれ難くできるので、光学フィルムのデラミネーションを抑制できる。
【0074】
光学フィルムは、小さい光弾性係数Cを有することが好ましい。具体的には、光学フィルムの光弾性係数Cは、下記式(5)を満たすことが好ましい。ここで、1Brewster=1×10-13cm/dynである。
(5)C≦10Brewster
【0075】
詳細には、光学フィルムの具体的な光弾性係数Cは、好ましくは10Brewster以下、より好ましくは9Brewster以下、特に好ましくは8Brewster以下である。光学フィルムの光弾性係数Cが小さい場合、その光学フィルムは、反りを生じてもレターデーション等の光学特性に変化を生じ難い。よって、光学フィルムを液晶表示装置に設けた場合に、光学フィルムの反りに起因する光漏れの発生を抑制することができる。光漏れとは、液晶表示装置を黒表示状態にした場合に、遮蔽すべき光が画面から漏れだし、画面が明るくなる現象をいう。光弾性係数の下限は、特段の制限は無いが、好ましくは0Brewster以上、より好ましくは0.5Brewster以上、特に好ましくは1Brewster以上である。
【0076】
光学フィルムの光弾性係数Cは、エリプソメーターによって測定できる。
【0077】
小さい光弾性係数Cを有する光学フィルムは、例えば、光学フィルムがノルボルネン系水素化物を含むことによって実現できる。
【0078】
光学フィルムの面内レターデーションReは、当該光学フィルムの用途に応じて任意である。具体的な範囲を示すと、光学フィルムの面内レターデーションReは、好ましくは40nm以上、より好ましくは45nm以上、特に好ましくは50nm以上であり、好ましくは80nm以下、より好ましくは75nm以下、特に好ましくは70nm以下である。光学フィルムの面内レターデーションReが前記範囲の下限値以上である場合、液晶セルの光学補償をし易い。また、光学フィルムの面内レターデーションReが前記範囲の上限値以下である場合、レターデーションの面内でのバラツキを抑制できる。
【0079】
光学フィルムは、高い全光線透過率を有することが好ましい。光学フィルムの具体的な全光線透過率は、好ましくは85%~100%、より好ましくは87%~100%、特に好ましくは90%~100%である。全光線透過率は、市販の分光光度計を用いて、波長400nm以上700nm以下の範囲で測定しうる。
【0080】
光学フィルムは、当該光学フィルムを画像表示装置に設けた場合に当該画像表示装置の画像鮮明性を高める観点から、ヘイズが小さいことが好ましい。光学フィルムのヘイズは、好ましくは1%以下、より好ましくは0.8%以下、特に好ましくは0.5%以下である。ヘイズは、JIS K7361-1997に準拠して、濁度計を用いて測定しうる。
【0081】
高いガラス転移温度Tgを有する熱可塑性ノルボルネン系樹脂で形成されているので、光学フィルムは、通常、耐熱性に優れる。よって、光学フィルムに含まれるノルボルネン系水素化物の分子は、高温環境においても、配向緩和を生じ難い。よって、光学フィルムは、通常、高温環境における厚み方向のレターデーションRthの変化を抑制できる。耐熱性に優れる光学フィルムは、高温環境で使用されうる画像表示装置に対して、適用できる。
【0082】
光学フィルムの耐熱性は、高温環境での耐久試験による厚み方向のレターデーションRthの変化率によって評価できる。例えば、光学フィルムの厚み方向のレターデーションRth0を測定した後で、その光学フィルムに、85℃の環境で500時間保管する耐久試験を行う。耐久試験の後、光学フィルムの厚み方向のレターデーションRth1を測定する。そして、耐久試験による光学フィルムの厚み方向のレターデーションの変化量Rth1-Rth0を、耐久試験前の光学フィルムの厚み方向のレターデーションRth0で割算して、その変化率を計算できる。本実施形態に係る光学フィルムによれば、前記の厚み方向のレターデーションRthの変化率を、好ましくは-3.0%~3.0%、より好ましくは-2.9%~2.9%、特に好ましくは-2.8%~2.8%にできる。
【0083】
光学フィルムは、薄いことが好ましい。上述した熱可塑性ノルボルネン系樹脂を用いることにより、光学フィルムが薄くても、大きい厚み方向のレターデーションRthを得ることができる。また、光学フィルムが薄い場合、光学フィルムの反りを抑制できるので、反りによるレターデーション等の光学特性の変化を小さくできる。よって、光学フィルムを液晶表示装置に設けた場合に、光学フィルムの反りに起因する光漏れの発生を抑制することができる。光学フィルムの具体的な厚みdは、好ましくは120μm以下、より好ましくは100μm以下、特に好ましくは80μm以下である。厚みdの下限は、特段の制限は無いが、デラミネーションを抑制する観点では、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上、特に好ましくは40μm以上である。
【0084】
上述した光学フィルムは、例えば、熱可塑性ノルボルネン系樹脂で形成された樹脂フィルムを用意する工程と、この樹脂フィルムを延伸する工程と、を含む製造方法によって、製造できる。延伸される前の樹脂フィルムを、延伸後に得られる光学フィルムと区別するため、以下、適宜「延伸前フィルム」ということがある。
【0085】
延伸前フィルムを用意する工程は、通常、熱可塑性ノルボルネン系樹脂を成形して延伸前フィルムを得ることを含む。この際、熱可塑性ノルボルネン系樹脂の成形方法に制限は無い。成形方法としては、例えば、押出成形法、溶液キャスト法、インフレーション成型法などが挙げられる。中でも、押出成形法及び溶液キャスト法が好ましく、押出成形法が特に好ましい。
【0086】
延伸前フィルムを用意した後で、その延伸前フィルムを延伸する工程を行う。この延伸により、フィルム中のノルボルネン系水素化物の分子を配向させられるので、上述した光学特性を有する光学フィルムが得られる。延伸前フィルムを延伸する工程での延伸条件は、所望の光学フィルムが得られる範囲で、任意に設定できる。
【0087】
延伸前フィルムの延伸の態様は、例えば、1方向に延伸を行う一軸延伸であってもよく、非平行な2方向に延伸を行う二軸延伸であってもよい。また、二軸延伸は、2方向への延伸を同時に行う同時二軸延伸であってもよく、一方の方向への延伸を行った後で他方の方向への延伸を行う逐次二軸延伸であってもよい。これらのうち、厚み方向のレターデーションRthが大きい光学フィルムを容易に製造する観点から、二軸延伸が好ましく、逐次二軸延伸がより好ましい。
【0088】
延伸前フィルムの延伸方向は、任意に設定しうる。例えば、延伸前フィルムが長尺のフィルムである場合、延伸方向は、縦方向でもよく、横方向でもよく、斜め方向でもよい。縦方向とは、長尺のフィルムの長さ方向を表し、横方向とは、長尺のフィルムの幅方向を表し、斜め方向とは、長尺のフィルムの長さ方向に平行でも垂直でもない方向を表す。
【0089】
延伸前フィルムの延伸倍率は、好ましくは1.8以上、より好ましくは1.9以上、特に好ましくは2.0以上であり、好ましくは2.6以下、より好ましくは2.5以下、特に好ましくは2.4以下である。延伸倍率が前記範囲の下限値以上である場合、厚み方向のレターデーションRthが大きい光学フィルムを容易に得ることができる。また、延伸倍率が前記範囲の上限値以下である場合、光学フィルムの配向角精度を容易に高めることができる。二軸延伸を行う場合、一方の方向への延伸の延伸倍率と他方の方向への延伸の延伸倍率との積で表される全体の延伸倍率が、前記範囲に収まることが好ましい。
【0090】
延伸前フィルムの延伸温度は、好ましくはTg+9℃以上、より好ましくはTg+9.5℃以上、特に好ましくはTg+10℃以上であり、好ましくはTg+25℃以下、より好ましくはTg+23℃以下、特に好ましくはTg+20℃以下である。延伸温度が前記範囲である場合、光学フィルムの厚みを均一にし易い。
【0091】
前記の製造方法では、上述したように、延伸前フィルムを延伸することによって光学フィルムを得ることができるが、前記の製造方法は、更に任意の工程を含んでいてもよい。
例えば、前記の製造方法は、光学フィルムをトリミングする工程、光学フィルムに表面処理を施す工程、などを含んでいてもよい。
【0092】
[7.光学積層体]
上述した光学フィルムを用いて、光学積層体を得ることができる。この光学積層体は、上述した光学フィルムと、偏光板とを備える。光学フィルムが、厚み方向のレターデーションRthが大きくても厚みを薄くできるので、光学積層体を薄くしたり、光学積層体の反りを抑制したりできる。また、光学フィルムが高い接着強度を有するので、光学フィルムと偏光板との剥離を抑制できる。さらに、光学フィルムが高い耐熱性を有するので、光学積層体も、高い耐熱性を有することができる。このような光学積層体は、液晶表示装置等の画像表示装置に好適に適用できる。
【0093】
偏光板としては、例えば、偏光子層を備えるフィルムを用いうる。偏光子層としては、例えば、適切なビニルアルコール系重合体のフィルムに、適切な処理を適切な順序及び方式で施したものを用いうる。かかるビニルアルコール系重合体の例としては、ポリビニルアルコール及び部分ホルマール化ポリビニルアルコールが挙げられる。フィルムの処理の例としては、ヨウ素及び二色性染料等の二色性物質による染色処理、延伸処理、及び架橋処理が挙げられる。偏光子層は、吸収軸と平行な振動方向を有する直線偏光を吸収しうるものであり、特に、偏光度に優れるものが好ましい。偏光子層の厚さは、5μm~80μmが一般的であるが、これに限定されない。
【0094】
偏光板は、偏光子層を保護するために、偏光子層の一側又は両側に、保護フィルム層を備えていてもよい。保護フィルム層としては、任意の透明フィルム層を用いうる。中でも、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性等に優れる樹脂のフィルム層が好ましい。そのような樹脂としては、トリアセチルセルロース等のアセテート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、熱可塑性ノルボルネン系樹脂、(メタ)アクリル樹脂等が挙げられる。中でも、複屈折が小さい点でアセテート樹脂、熱可塑性ノルボルネン系樹脂、(メタ)アクリル樹脂が好ましく、透明性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、熱可塑性ノルボルネン系樹脂が特に好ましい。
【0095】
前記の偏光板は、例えば、偏光子層と保護フィルム層とを貼り合わせて製造できる。貼り合わせの際には、必要に応じて、接着剤を用いてもよい。
【0096】
光学積層体は、光学フィルム及び偏光板に組み合わせて、更に任意の部材を含んでいてもよい。例えば、光学積層体は、光学フィルムと偏光板とを貼り合わせるための接着層を備えていてもよい。
【0097】
光学積層体の厚みは、特段の制限は無いが、好ましくは30μm以上、より好ましくは50μm以上であり、好ましくは150μm以下、より好ましくは130μm以下である。
【0098】
[8.液晶表示装置]
上述した光学積層体は、液晶表示装置に設けることができる。上述したように、光学積層体が備える光学フィルムは薄くできるので、光学積層体は反りを生じ難い。よって、反った部分での光学フィルムの光学特性の変化による光漏れの発生を抑制することができる。前記の反りは、一般に液晶表示装置の画面のコーナーにおいて生じ易いが、前記の光学積層体を備える液晶表示装置では、このようなコーナーでの光漏れを抑制することが可能である。また、光学フィルムが高い耐熱性を有するので、液晶表示装置は、高温環境における表示特性の変化を抑制することができる。
【0099】
通常、液晶表示装置は、液晶セルを備え、この液晶セルの少なくとも片側に光学積層体を備える。中でも、光学積層体は、液晶セル、光学フィルム及び視認側偏光子がこの順に並ぶように設けられることが好ましい。このような構成において、光学フィルムは、視野角補償フィルムとして機能できる。
【0100】
液晶セルは、例えば、インプレーンスイッチング(IPS)モード、バーチカルアラインメント(VA)モード、マルチドメインバーチカルアラインメント(MVA)モード、コンティニュアスピンホイールアラインメント(CPA)モード、ハイブリッドアラインメントネマチック(HAN)モード、ツイステッドネマチック(TN)モード、スーパーツイステッドネマチック(STN)モード、オプチカルコンペンセイテッドベンド(OCB)モードなど、任意のモードの液晶セルを用いうる。
【実施例
【0101】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り重量基準である。以下の操作は、別に断らない限り、常温常圧大気中にて行った。
【0102】
[I.重合体の物性値の測定方法及び算出方法]
(重合体の重量平均分子量Mwの測定方法)
重合体の重量平均分子量Mwは、シクロヘキサンを溶離液とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定し、標準ポリイソプレン換算値として求めた。
標準ポリイソプレンとしては、東ソー社製標準ポリイソプレン(Mw=602、1390、3920、8050、13800、22700、58800、71300、109000、280000)を用いた。
測定は、東ソー社製カラム(TSKgelG5000HXL、TSKgelG4000HXL及びTSKgelG2000HXL)を3本直列に繋いで用い、流速1.0mL/分、サンプル注入量100μL、カラム温度40℃の条件で行った。
【0103】
(重合体の低分子割合Lの測定方法)
重合体の低分子割合Lは、前記(重合体の重量平均分子量Mwの測定方法)におけるGPCによって測定した分子量の測定値から、分子量10000以下の成分の量を積分して算出した。
【0104】
(ガラス転移温度Tgの測定方法)
ガラス転移温度Tgは、示差走査熱量分析計(ナノテクノロジー社製「DSC6220SII」)を用いて、JIS K 6911に基づき、昇温速度10℃/分の条件で測定した。
【0105】
(評価複屈折Δnの測定方法)
樹脂を、縦50mm×横100mm×厚み100μmのシート状に成形して、サンプルシートを得た。このサンプルシートに、恒温槽付引張試験機(インストロン ジャパン カンパニー リミテッド社製「5564型」)を用いて、自由端一軸延伸を施した。この延伸の条件は、下記の通りである。
延伸温度:Tg+15℃
チャック間距離:65mm
延伸倍率:1.5倍(延伸距離32.5mm)
延伸時間:1分
延伸速度:32.5mm/分
【0106】
延伸処理を行った後、延伸されたサンプルシートを室温に戻し、測定試料を得た。
【0107】
この測定試料について、位相差計(AXOMETRICS社製「AXOSCAN」)を用いて、測定波長550nmで、測定試料の中心部の面内レターデーションRe(a)[nm]を測定した。また、測定試料の前記中心部の厚みT(a)[mm]を測定した。これらの測定値Re(a)及びT(a)を用いて、下記式(X1)により、樹脂の評価複屈折Δnを計算した。
Δn=Re(a)×(1/T(a))×10-6 (X1)
【0108】
(応力複屈折Cの測定方法)
樹脂を、縦35mm×横10mm×厚み1mmのシート状に成形して、サンプルシートを得た。このサンプルシートの両端をクリップで固定した後に、片方のクリップに55gの重りを固定した。次いで、樹脂のガラス転移温度Tg+15℃に温度を設定したオーブン内に、重りを固定していない方のクリップを起点にして、1時間サンプルシートを吊るして延伸処理を行った。その後、サンプルシートをゆっくりと冷やして室温まで戻し、測定試料を得た。
【0109】
この測定試料について、複屈折計(フォトニックラティス製「WPA-100」)を用いて、測定波長650nmで、測定試料の中心部の面内レターデーションRe(b)[nm]を測定した。また、測定試料の前記中心部の厚みT(b)[mm]を測定した。これらの測定値Re(b)及びT(b)を用いて、下記式(X2)により、δn値を算出した。
δn=Re(b)×(1/T(b))×10-6 (X2)
当該δn値及びサンプルに加えた応力Fを用い、下記式(X3)により、応力複屈折Cを計算した。
=δn/F (X3)
【0110】
[II.光学フィルムの特性の評価方法]
(光学フィルムのレターデーションRth,Reの測定方法)
光学フィルムの、厚み方向のレターデーションRth及び面内レターデーションReは、位相差計(AXOMETRICS社製「AXOSCAN」)を用いて、測定波長550nmで測定した。
【0111】
(フィルムの厚みの測定方法)
フィルムの厚みは、スナップゲージ(ミツトヨ社製「ID-C112BS」)により測定した。
【0112】
(光学フィルムの光弾性係数の測定方法)
光学フィルムの光弾性係数は、エリプソメーターによって測定した。
【0113】
(85℃、500時間経過後の光学フィルムの厚み方向のレターデーションRthの変化率の測定方法)
後述の耐久試験の前に、光学フィルムの厚み方向のレターデーションRth0を測定した。その後、光学フィルムに、85℃の環境で500時間保管する耐久試験を行った。耐久試験の後、光学フィルムの厚み方向のレターデーションRth1を測定した。これらの測定値Rth0及びRth1から、下記の式(X4)により、耐久試験による光学フィルムの厚み方向のレターデーションの変化率(Rth変化率)を計算した。Rth変化率がゼロに近いほど、光学フィルムの耐熱性が優れることを表す。
Rth変化率(%)={(Rth1-Rth0)/Rth0}×100 (X4)
【0114】
(光学フィルムの接着強度の測定方法)
被着体として、ノルボルネン系重合体を含む樹脂で形成された未延伸フィルム(日本ゼオン社製「ゼオノアフィルム」、厚み100μm、樹脂のガラス転移温度160℃、延伸処理は施されていないもの)を用意した。測定対象フィルムとしての光学フィルムの片面、及び、前記の未延伸フィルムの片面に、コロナ処理を施した。光学フィルムのコロナ処理を施した面、及び、未延伸フィルムのコロナ処理を施した面の両方に、接着剤(トーヨーケム社製のUV接着剤CRBシリーズ)を付着させた。接着剤を付着させた面同士を貼り合わせた。その後、無電極UV照射装置(ヘレウス社製)を用い、接着剤に紫外線照射を行って、接着剤を硬化させた。前記の紫外線照射は、ランプとしてDバルブを使用し、ピーク照度100mW/cm、積算光量3000mJ/cmの条件で行った。これにより、未延伸フィルム/接着剤の層/光学フィルムの層構成を有するサンプルフィルムを得た。
【0115】
得られたサンプルフィルムについて、下記の手順で、90度剥離試験を実施した。
サンプルフィルムを15mmの幅に裁断して、フィルム片を得た。このフィルム片の光学フィルム側の面を、スライドガラスの表面に、粘着剤を用いて貼り合わせた。この際、粘着剤としては、両面粘着テープ(日東電工社製、品番「CS9621」)を用いた。高性能型デジタルフォースゲージ(イマダ社製「ZP-5N」)の先端に、フィルム片に含まれる未延伸フィルムを挟み、スライドガラスの表面の法線方向に300mm/分の速度でその未延伸フィルムを牽引して、牽引の力の大きさを接着強度として測定した。
【0116】
[実施例1]
(1-1)ノルボルネン系開環重合体の製造:
内部を窒素置換したガラス製反応容器に、後述する単量体の合計100重量部に対して200部の脱水したシクロヘキサン、1-ヘキセン0.7mol%、ジイソプロピルエーテル0.15mol%、及びトリイソブチルアルミニウム0.44mol%を、室温で反応器に入れ、混合した。その後、45℃に保ちながら、反応器に、単量体としてのジシクロペンタジエン(DCPD)70重量%及びテトラシクロドデセン(TCD)30重量%と、六塩化タングステン(0.65重量%トルエン溶液)0.02mol%とを、並行して2時間かけて連続的に添加し、重合した。次いで、重合溶液に、イソプロピルアルコール0.2mol%を加えて重合触媒を不活性化し、重合反応を停止させた。前記の説明において、単位「mol%」で示される量は、いずれも、単量体の合計量を100mol%とした値である。得られたノルボルネン系開環重合体の重量平均分子量Mwは3.1×10であった。また、単量体の重合体への転化率は、100%であった。
【0117】
(1-2)水素化によるノルボルネン系水素化物の製造:
次いで、前記の工程(1-1)で得られたノルボルネン系開環重合体を含有する反応溶液183gに対して、シクロヘキサン67gを加え、さらに水素化触媒としてケイソウ土担持ニッケル触媒(日揮化学社製「T8400RL」、ニッケル担持率57%)1.8重量%を加えた。水素化触媒の量は、反応溶液に含まれるノルボルネン系開環重合体100重量%に対する値を表す。その後、反応溶液を水素により4.5MPaに加圧して撹拌しながら温度190℃まで加温し、8時間、水素化反応を行った。これにより、ノルボルネン系開環重合体の水素化物としてのノルボルネン系水素化物を含む反応溶液を得た。
【0118】
反応溶液を、ラジオライト#500を濾過床として、圧力0.25MPaで加圧濾過(石川島播磨重工社製「フンダバックフィルター」)して、水素化触媒を除去し、無色透明な溶液を得た。得られた溶液を、大量のイソプロパノール中に注ぎ、ノルボルネン系水素化物を沈殿させた。沈殿したノルボルネン系水素化物を濾取した後に、ノルボルネン系水素化物100部当り、酸化防止剤〔ペンタエリスリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、製品名「イルガノックス(登録商標)1010」)〕0.1部を溶解したキシレン溶液2.0部を添加した。次いで、真空乾燥機(200℃、1Torr)で6時間乾燥させて、熱可塑性ノルボルネン系樹脂を得た。ノルボルネン系水素化物の重量平均分子量は4.4×10、分子量10000以下の低分子割合Lは10%であった。
【0119】
熱可塑性ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度Tg、評価複屈折Δn、及び、応力複屈折Cを、上述した方法で測定した。熱可塑性ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度Tgは115.5℃、評価複屈折Δnは0.0030、応力複屈折Cは2360×10-12Pa-1であった。
【0120】
(1-3)延伸前フィルムの製造:
前記の工程で得られた熱可塑性ノルボルネン系樹脂を二軸押出機に投入し、熱溶融押出成形によりストランド状の成形体に成形した。この成形体をストランドカッターを用いて細断して、熱可塑性ノルボルネン系樹脂のペレットを得た。
【0121】
このペレットを80℃で5時間乾燥した。その後、常法によって該ペレットを押出機に供給し、250℃で溶融させた。そして、溶融した熱可塑性ノルボルネン系樹脂を、ダイから冷却ドラム上に吐出させて、厚さ150μmの長尺の延伸前フィルムを得た。
【0122】
(1-4)光学フィルムの製造:
ロール間でのフロート方式を用いた縦延伸機を用意した。この縦延伸機を用いて、前記の延伸前フィルムを、縦方向に1.35倍に延伸して、中間フィルムを得た。縦延伸機を用いた前記の延伸の延伸温度は、125.5℃であり、これは、熱可塑性ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度Tgよりも10℃高い温度(Tg+10℃)であった。
【0123】
その後、前記の中間フィルムを、テンター法を用いた横延伸機に供給し、引取り張力とテンターチェーン張力とを調整しながら、横方向に1.65倍に延伸して、二軸延伸フィルムとしての光学フィルムを得た。横延伸機を用いた前記の延伸の延伸温度は、131.5℃であり、これは、熱可塑性ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度Tgよりも16℃高い温度(Tg+16℃)であった。得られた光学フィルムは、面内レターデーションReが60nm、厚み方向のレターデーションRthが360nm、厚さdが78μmであった。
得られた光学フィルムについて、上述した方法によって、評価を行った。
【0124】
[実施例2]
前記の工程(1-1)において用いる単量体の組み合わせを、テトラシクロドデセン(TCD)29重量%、ジシクロペンタジエン(DCPD)68重量%、及びエチリデンテトラシクロドデセン(ETD)3重量%に変更した。
前記の工程(1-4)において、縦方向への延伸温度を、123.7℃に変更した。この延伸温度は、熱可塑性ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度Tgよりも10℃高い温度(Tg+10℃)であった。また、前記の工程(1-4)において、横方向への延伸温度を、129.7℃に変更した。この延伸温度は、熱可塑性ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度Tgよりも16℃高い温度(Tg+16℃)であった。
以上の事項以外は、実施例1と同じ操作により、熱可塑性ノルボルネン系樹脂及び光学フィルムの製造及び評価を行った。
【0125】
[実施例3]
前記の工程(1-1)において用いる単量体の組み合わせを、テトラシクロドデセン(TCD)29重量%、ジシクロペンタジエン(DCPD)70重量%、及びノルボルネン(NB)1重量%に変更した。
前記の工程(1-4)において、縦方向への延伸温度を、120.5℃に変更した。この延伸温度は、熱可塑性ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度Tgよりも10℃高い温度(Tg+10℃)であった。また、前記の工程(1-4)において、横方向への延伸温度を、126.5℃に変更した。この延伸温度は、熱可塑性ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度Tgよりも16℃高い温度(Tg+16℃)であった。
以上の事項以外は、実施例1と同じ操作により、熱可塑性ノルボルネン系樹脂及び光学フィルムの製造及び評価を行った。
【0126】
[実施例4]
前記の工程(1-1)において用いる単量体の組み合わせを、テトラシクロドデセン(TCD)28重量%、ジシクロペンタジエン(DCPD)70重量%、及びノルボルネン(NB)2重量%に変更した。
前記の工程(1-4)において、縦方向への延伸温度を、117.6℃に変更した。この延伸温度は、熱可塑性ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度Tgよりも10℃高い温度(Tg+10℃)であった。また、前記の工程(1-4)において、横方向への延伸温度を、123.6℃に変更した。この延伸温度は、熱可塑性ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度Tgよりも16℃高い温度(Tg+16℃)であった。
以上の事項以外は、実施例1と同じ操作により、熱可塑性ノルボルネン系樹脂及び光学フィルムの製造及び評価を行った。
【0127】
[比較例1]
前記の工程(1-1)において用いる単量体の組み合わせを、メタノテトラヒドロフルオレン(MTF)10重量%、テトラシクロドデセン(TCD)40重量%、及びジシクロペンタジエン(DCPD)50重量%に変更した。更に、前記の工程(1-1)における重合温度を、55℃へ変更した。
前記の工程(1-4)において、縦方向への延伸温度を、137.5℃に変更した。この延伸温度は、熱可塑性ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度Tgよりも10℃高い温度(Tg+10℃)であった。また、前記の工程(1-4)において、横方向への延伸温度を、143.5℃に変更した。この延伸温度は、熱可塑性ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度Tgよりも16℃高い温度(Tg+16℃)であった。
以上の事項以外は、実施例1と同じ操作により、熱可塑性ノルボルネン系樹脂及び光学フィルムの製造及び評価を行った。
【0128】
[比較例2]
前記の工程(1-1)において用いる単量体の組み合わせを、テトラシクロドデセン(TCD)5重量%、ジシクロペンタジエン(DCPD)80重量%、及びエチリデンテトラシクロドデセン(ETD)15重量%に変更した。さらに、前記の工程(1-1)における重合温度を、55℃へ変更した。
前記の工程(1-4)において、縦方向への延伸温度を、114.2℃に変更した。この延伸温度は、熱可塑性ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度Tgよりも10℃高い温度(Tg+10℃)であった。また、前記の工程(1-4)において、横方向への延伸温度を、120.2℃に変更した。この延伸温度は、熱可塑性ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度Tgよりも16℃高い温度(Tg+16℃)であった。
以上の事項以外は、実施例1と同じ操作により、熱可塑性ノルボルネン系樹脂及び光学フィルムの製造及び評価を行った。
【0129】
[比較例3]
前記の工程(1-1)において用いる単量体の組み合わせを、テトラシクロドデセン(TCD)29重量%、ジシクロペンタジエン(DCPD)68重量%、及びエチリデンテトラシクロドデセン(ETD)3重量%に変更した。
前記の工程(1-4)において、縦方向への延伸温度を、123℃に変更した。この延伸温度は、熱可塑性ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度Tgよりも10℃高い温度(Tg+10℃)であった。また、前記の工程(1-4)において、横方向への延伸温度を、129.0℃に変更した。この延伸温度は、熱可塑性ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度Tgよりも16℃高い温度(Tg+16℃)であった。
以上の事項以外は、実施例1と同じ操作により、熱可塑性ノルボルネン系樹脂及び光学フィルムの製造及び評価を行った。
【0130】
[比較例4]
前記の工程(1-1)において用いる単量体の組み合わせを、テトラシクロドデセン(TCD)29重量%、ジシクロペンタジエン(DCPD)68重量%、及びエチリデンテトラシクロドデセン(ETD)3重量%に変更した。さらに、1-ヘキセンの量を、0.68mol%に変更した。
前記の工程(1-4)において、縦方向への延伸温度を、123℃に変更した。この延伸温度は、熱可塑性ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度Tgよりも10℃高い温度(Tg+10℃)であった。また、前記の工程(1-4)において、横方向への延伸温度を、129.0℃に変更した。この延伸温度は、熱可塑性ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度Tgよりも16℃高い温度(Tg+16℃)であった。
以上の事項以外は、実施例1と同じ操作により、熱可塑性ノルボルネン系樹脂及び光学フィルムの製造及び評価を行った。
【0131】
[結果]
前記の実施例及び比較例の結果を、下記の表1及び表2に示す。
【0132】
【表1】
【0133】
【表2】