(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】呼警告装置、呼警告方法、および、呼警告プログラム
(51)【国際特許分類】
H04M 3/42 20060101AFI20241008BHJP
G08B 25/04 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
H04M3/42 T
G08B25/04 K
(21)【出願番号】P 2023500167
(86)(22)【出願日】2021-02-17
(86)【国際出願番号】 JP2021005834
(87)【国際公開番号】W WO2022176041
(87)【国際公開日】2022-08-25
【審査請求日】2023-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯島 直之
(72)【発明者】
【氏名】清水 宏
【審査官】吉村 伊佐雄
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0295140(US,A1)
【文献】特開2017-046182(JP,A)
【文献】特開2012-100080(JP,A)
【文献】特開2011-135328(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q50/22
G08B23/00-31/00
G16H10/00
H04B7/24-7/26
H04M1/00
1/24-3/00
3/16-3/20
3/38-3/58
7/00-7/16
11/00-11/10
99/00
H04W4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発側端末から着側端末を送信先として発呼された呼信号を受信する呼信号受信部と、
番号変換を伴う転送サービスにより呼信号を転送した接続装置が設定した呼信号の番号変換履歴と、呼信号に設定されている前記発側端末の発側情報との組み合わせが特定の条件に合致する場合に、警告信号を要すると判断する呼信号処理部と、
前記呼信号処理部の判断に従い、呼信号を前記着側端末に送信する前に前記着側端末に前記警告信号を送信する警告処理部とを有
しており、
前記呼信号処理部は、前記特定の条件として、
前記着側端末にとって前記発側端末が外国である場合には、前記番号変換履歴から読み取った呼信号の事業者経由数が第1閾値以上の場合に、前記警告信号を要すると判断し、
前記着側端末にとって前記発側端末が国内である場合には、前記番号変換履歴から読み取った呼信号の転送回数、前記番号変換履歴から読み取った呼信号の事業者経由数、および、呼信号の発番号設定をもとにした評価式の結果が第2閾値以上の場合に、前記警告信号を要すると判断することを特徴とする
呼警告装置。
【請求項2】
発側端末から着側端末を送信先として発呼された呼信号を受信する呼信号受信部と、
番号変換を伴う転送サービスにより呼信号を転送した接続装置が設定した呼信号の番号変換履歴と、呼信号に設定されている前記発側端末の発側情報との組み合わせが特定の条件に合致する場合に、警告信号を要すると判断する呼信号処理部と、
前記呼信号処理部の判断に従い、呼信号を前記着側端末に送信する前に前記着側端末に前記警告信号を送信する警告処理部とを有
しており、
前記呼信号処理部は、前記特定の条件として、
前記着側端末にとって前記発側端末が外国か国内かを示す第1変数、呼信号の発番号種別を示す第2変数、および、呼信号の発番号設定を示す第3変数について、優先度の高い順に前記第1変数、前記第2変数、前記第3変数とする評価式の結果が第3閾値以上の場合に、前記警告信号を要すると判断することを特徴とする
呼警告装置。
【請求項3】
前記呼信号処理部は、前記特定の条件に合致する場合に加え、発呼された発番号が事前登録されたブラックリストに掲載された発番号である場合に、前記警告信号を要すると判断することを特徴とする
請求項1
または請求項2に記載の呼警告装置。
【請求項4】
前記呼信号処理部は、前記特定の条件に合致する場合に加え、呼信号の通話内容から音声認識で抽出したキーワードが、事前にデータベース登録された問題ワードに合致した場合に、前記警告信号を要すると判断することを特徴とする
請求項1
または請求項2に記載の呼警告装置。
【請求項5】
呼警告装置は、呼信号受信部と、呼信号処理部と、警告処理部とを有しており、
前記呼信号受信部は、発側端末から着側端末を送信先として発呼された呼信号を受信し、
前記呼信号処理部は、番号変換を伴う転送サービスにより呼信号を転送した接続装置が設定した呼信号の番号変換履歴と、呼信号に設定されている前記発側端末の発側情報との組み合わせが特定の条件に合致する場合に、警告信号を要すると判断し、
前記警告処理部は、前記呼信号処理部の判断に従い、呼信号を前記着側端末に送信する前に前記着側端末に前記警告信号を送信
し、
前記呼信号処理部は、前記特定の条件として、
前記着側端末にとって前記発側端末が外国である場合には、前記番号変換履歴から読み取った呼信号の事業者経由数が第1閾値以上の場合に、前記警告信号を要すると判断し、
前記着側端末にとって前記発側端末が国内である場合には、前記番号変換履歴から読み取った呼信号の転送回数、前記番号変換履歴から読み取った呼信号の事業者経由数、および、呼信号の発番号設定をもとにした評価式の結果が第2閾値以上の場合に、前記警告信号を要すると判断することを特徴とする
呼警告方法。
【請求項6】
呼警告装置は、呼信号受信部と、呼信号処理部と、警告処理部とを有しており、
前記呼信号受信部は、発側端末から着側端末を送信先として発呼された呼信号を受信し、
前記呼信号処理部は、番号変換を伴う転送サービスにより呼信号を転送した接続装置が設定した呼信号の番号変換履歴と、呼信号に設定されている前記発側端末の発側情報との組み合わせが特定の条件に合致する場合に、警告信号を要すると判断し、
前記警告処理部は、前記呼信号処理部の判断に従い、呼信号を前記着側端末に送信する前に前記着側端末に前記警告信号を送信
し、
前記呼信号処理部は、前記特定の条件として、
前記着側端末にとって前記発側端末が外国か国内かを示す第1変数、呼信号の発番号種別を示す第2変数、および、呼信号の発番号設定を示す第3変数について、優先度の高い順に前記第1変数、前記第2変数、前記第3変数とする評価式の結果が第3閾値以上の場合に、前記警告信号を要すると判断することを特徴とする
呼警告方法。
【請求項7】
コンピュータを、請求項1ないし
請求項4のいずれか1項に記載の呼警告装置として機能させるための呼警告プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼警告装置、呼警告方法、および、呼警告プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特殊詐欺の発生件数は大きく増加しており、その手口は半数以上をオレオレ詐欺(オレはあなたの息子です、というなりすまし詐欺)の通話が占めることから、電話を利用した詐欺への対策が求められている。また、IPネットワークの普及に伴い、特殊詐欺の通話信号がSIP(Session Initiation Protocol)信号としてネットワークに流れる場合もある。
【0003】
特許文献1には、SIPにより呼制御を行う通信システムにおいて、発端末と着端末間のend-endのメディア接続前に着ユーザ向けにガイダンスの提供を行う方法が記載されている。これにより、着信者は、ガイダンス等で求められた操作を行うことで、接続可否を判断することができる。
【0004】
特許文献2には、着信端末が発信端末からの発信に対応する前に、発信端末の評価情報(ブラックリストに記載されているかなど)を着信端末に提供し、着信端末が発信端末と通話する通話システムが記載されている。これにより着信端末は、評価の悪い発信端末からの発信を拒否し、評価の良い発信端末からの発信を受けるなど、通話するべき場面を適宜選択し、着信者の指示によって、通話を断ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-165285号公報
【文献】特開2016-163303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の技術において攻撃者をブラックリストとして登録する方式では、事前に特殊詐欺に用いられる発番号の登録などが必要である。そのため、攻撃者が頻繁に発番号を変更してしまうと、ブラックリストが陳腐化してしまい、充分に特殊詐欺の対策が行えないこともある。
また、攻撃者は自身が特殊詐欺の発信者であることの特定(追跡)を遅らせるために、複数の事業者を経由する方法や、外国の事業者を経由する方法を用いることもある。
【0007】
図8は、複数の事業者を経由する方法が適用される場合の構成図である。
発側端末11zからの発呼が4台のSIPサーバ(SIPサーバ24z→SIPサーバ23z→SIPサーバ22z→SIPサーバ21z)を経由して、着側端末31zの着番号「0422-88-8888」に届く場合を例示する。
発側事業者24Dzは、発側端末11zを収容するSIPサーバ24zを管理する。
接続事業者23Dzは、転送用の着番号[03-1111-2222]が設定されているSIPサーバ23zを管理する。
接続事業者22Dzは、転送用の着番号[03-1111-3333]が設定されているSIPサーバ22zを管理する。
着側事業者21Dzは着側端末31zを収容するSIPサーバ21zを管理する。
このような転送サービスでは、呼信号の着番号が転送元の番号から転送先の番号に切り替わるため、特殊詐欺の特定が困難となる。
【0008】
図9は、外国の事業者を経由する方法が適用される場合の構成図である。
外国の発側端末11zからの発呼が3台のSIPサーバ(SIPサーバ23z→SIPサーバ22z→SIPサーバ21z)を経由して、自国の着側端末31zに届く場合を例示する。
接続事業者23Dzは、発側端末11zを収容するSIPサーバ23zを管理する。
接続事業者22Dzは、2つの国をまたがって呼を中継するSIPサーバ22zを管理する。
着側事業者21Dzは、着側端末31zを収容するSIPサーバ21zを管理する。
【0009】
図8や
図9で説明したような発信者の情報をロンダリング(隠ぺい)する手口に対しては、特許文献1,2などの従来の技術には用いられていない、特殊詐欺の通話傾向を示す別の手がかりを追う必要がある。つまり、ブラックリストなどの固定の発信者の情報に依存しない、特殊詐欺検出の柔軟性が必要である。
【0010】
そこで、本発明は、特殊詐欺の発信者の情報が隠ぺいされても、適切に警告を流すことを、主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明の呼警告装置は、以下の特徴を有する。
本発明は、発側端末から着側端末を送信先として発呼された呼信号を受信する呼信号受信部と、
番号変換を伴う転送サービスにより呼信号を転送した接続装置が設定した呼信号の番号変換履歴と、呼信号に設定されている前記発側端末の発側情報との組み合わせが特定の条件に合致する場合に、警告信号を要すると判断する呼信号処理部と、
前記呼信号処理部の判断に従い、呼信号を前記着側端末に送信する前に前記着側端末に前記警告信号を送信する警告処理部とを有しており、
前記呼信号処理部は、前記特定の条件として、
前記着側端末にとって前記発側端末が外国である場合には、前記番号変換履歴から読み取った呼信号の事業者経由数が第1閾値以上の場合に、前記警告信号を要すると判断し、
前記着側端末にとって前記発側端末が国内である場合には、前記番号変換履歴から読み取った呼信号の転送回数、前記番号変換履歴から読み取った呼信号の事業者経由数、および、呼信号の発番号設定をもとにした評価式の結果が第2閾値以上の場合に、前記警告信号を要すると判断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、特殊詐欺の発信者の情報が隠ぺいされても、適切に警告を流すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態に係わる番号変換履歴と発側情報との組み合わせにより警告要否を判定する呼警告システムの構成図である。
【
図2】本実施形態に係わるSIPサーバの構成図である。
【
図3】本実施形態に係わるハードウェア構成図である。
【
図4】本実施形態に係わるSIPサーバが実行する警告要否の判定処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図5】本実施形態に係わる発呼が外国の事業者を経由する場合の構成図である。
【
図6】本実施形態に係わる発呼が複数の事業者を経由する場合の構成図である。
【
図7】本実施形態に係わる過剰警告を抑止する場合の構成図である。
【
図8】複数の事業者を経由する方法が適用される場合の構成図である。
【
図9】外国の事業者を経由する方法が適用される場合の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1は、番号変換履歴と発側情報との組み合わせにより警告要否を判定する呼警告システムの構成図である。
図8と同様に、発側端末11からの発呼が4台のSIPサーバ20(SIPサーバ24→SIPサーバ23→SIPサーバ22→SIPサーバ21)を経由して、着側端末31の着番号「0422-88-8888」に届く場合を例示する。
発側事業者24Dは、発側端末11を収容するSIPサーバ24を管理する。
接続事業者23Dは、転送用の着番号[050-1111-2222]が設定されているSIPサーバ23を管理する。
接続事業者22Dは、転送用の着番号[03-1111-3333]が設定されているSIPサーバ22を管理する。
着側事業者21Dは着側端末31を収容するSIPサーバ21を管理する。
【0016】
本明細書の用語として、「転送」と「中継」とを使い分ける。例えば、第1のSIPサーバ20→第2のSIPサーバ20→第3のSIPサーバ20の順にSIP信号(呼信号)が経由するとする。ここで、第2のSIPサーバ20がSIP信号の着番号(あて先)を変更するときは「転送」とし、着番号を変更しないときは「中継」とする。例えば
図1では、次のようになる。
・SIPサーバ24は、受信した呼信号44aをSIP信号43aとして中継する。
・SIPサーバ23(接続装置)は、受信したSIP信号43aをSIP信号42aとして転送する。
・SIPサーバ22(接続装置)は、受信したSIP信号42aをSIP信号41aとして転送する。
・SIPサーバ21(呼警告装置)は、受信したSIP信号41aを呼信号40aとして中継(発呼)する。
なお、呼信号40a、44aおよびSIP信号41a~43aの詳細は、
図2の説明で明らかにする。
【0017】
そして、各SIPサーバ20は、SIP信号を転送する場合には、受信したSIP信号の番号変換履歴(History-Info)に転送元の番号および転送先の番号を設定してから、転送先にSIP信号を送信する。なお、各SIPサーバ20は、History-Infoの内容通知を許可する装置(つまり信頼できる装置)として、他装置のSIPサーバ20をSIP信号のPrivacyヘッダに登録しておくとよい(図示省略)。
【0018】
ここで、オレオレ詐欺では、転送サービスを悪用している傾向があるので、SIPサーバ21に届いたSIP信号41aの番号変換履歴の内容が不自然であるときに、SIPサーバ21は、呼信号40aの通話開始前に警告するためのガイダンス(警告信号)を着側端末31に送出するようにした。
なお、番号変換履歴は、事業者間で流通される情報なので、事業者の外部から攻撃者が証拠隠滅のために削除することができない情報である。番号変換履歴の内容を元に、警告を送出するか否かの判定処理の詳細は、
図4のフローチャートで後記する。また、通話開始前にガイダンスを送出する具体的なSIPの手順については、特許文献1に記載されている。
【0019】
図2は、SIPサーバ20の構成図である。
SIPサーバ20は、呼受信部51と、SIP受信部(呼信号受信部)52と、呼処理部(警告処理部)53と、SIP処理部(呼信号処理部)54と、呼送信部55と、SIP送信部56とを有する。以下、
図1の各信号(呼信号40a、44aおよびSIP信号41a~43a)の内容に沿って、SIPサーバ20の処理を説明する。
【0020】
まず、発側事業者24DのSIPサーバ24について説明する。
SIPサーバ24の呼受信部51は、発側端末11からの呼信号44aを受信する。この呼信号44aには、発側端末11の発番号「090-1111-1111」と、SIPサーバ23が提供する転送サービスの着番号「050-1111-2222」が含まれる。
【0021】
なお、発番号「090-1111-1111」の後の「@24D」とは、発番号「090-1111-1111」の番号帯から特定した発側事業者24DのIDである。以下では、発側事業者24Dの符号「24D」を@マークの後に記載することで、電話番号から特定した事業者のIDを示す。
ここで、発番号種別(0AJ/0A0)は行政機関により番号帯ごとに事業者が割り当てられている。例えば、「0AJ」は、固定電話の市外局番(例えばA=4,J=2)を示す。「0A0」は、携帯番号(A=8,9)・PHS番号(A=7)・IP電話(A=5)を示す。
【0022】
よって、発番号種別と事業者ドメインとの組み合わせから、SIPサーバ20は、受信した各信号が所定の事業者を経由していることを特定できる。また、呼処理部53は、受信した呼信号44aの着番号から、他事業者(接続事業者23D)あてであることを認識する。SIP処理部54は、呼信号44aの着番号をINVITEとして含めたSIP信号43aを作成する。SIP送信部56は、作成されたSIP信号43aをSIPサーバ23に送信する。
【0023】
次に、接続事業者23DのSIPサーバ23について説明する。
SIPサーバ23のSIP受信部52は、SIPサーバ24からのSIP信号43aを受信する。SIP処理部54は、受信したSIP信号43aの着番号「050-1111-2222」に従い、その転送先となるSIPサーバ22の新たな着番号「03-1111-3333」を転送サービスの設定データから取得する。
SIP処理部54は、以下の処理により、SIP信号43aからSIP信号42aを作成する。
・着番号(INVITE)を、転送元の「050-1111-2222」から転送先の「03-1111-3333」に置き換える。
・新たにHistory-Infoヘッダを作成し、転送元の「050-1111-2222」と、転送先の「03-1111-3333」とをHistory-Infoヘッダに追加する。
SIP送信部56は、作成されたSIP信号42aをSIPサーバ22に転送する。
【0024】
そして、接続事業者22DのSIPサーバ22について説明する。
SIPサーバ22のSIP受信部52は、SIPサーバ23からのSIP信号42aを受信する。SIP処理部54は、受信したSIP信号42aの着番号「03-1111-3333」に従い、その転送先となる着側端末31の新たな着番号「0422-88-8888」を転送サービスの設定データから取得する。
SIP処理部54は、SIP信号42aからSIP信号41aを作成するときに、着番号(INVITE)を、転送元の「03-1111-3333」から転送先の「0422-88-8888」に置き換えるとともに、その転送先の「0422-88-8888」をHistory-Infoヘッダに追加する。
【0025】
さらに、SIP処理部54は、発側端末11の設定情報として、「発番号:090-1111-1111@24D」と、「発番号設定:通知/非通知」とをSIP信号41aに追加する。「発番号設定:通知/非通知」とは、発番号を通知するか否かの設定である。この発側端末11の設定情報は、SIP信号41aだけでなく、SIP信号42aおよびSIP信号43aにも含まれている(図示省略)。
SIP送信部56は、作成されたSIP信号41aを、転送先の着側端末31へと向かうSIPサーバ21に送信する。
【0026】
そして、SIPサーバ21について説明する。
SIPサーバ21のSIP受信部52は、SIPサーバ22からのSIP信号41aを受信する。SIP処理部54は、受信したSIP信号41aの着番号が自身の収容する着側端末31であることを認識する。
ここで、SIP処理部54は、
図4の判定処理を実行することにより、SIP信号41a内のHistory-Infoなどのヘッダの内容が不自然であり、警告が必要であると認識する。
呼処理部53は、受信したSIP信号41aのINVITEに記載された着番号「0422-88-8888」を抽出した呼信号40aを作成する。そして、呼送信部55は、呼信号40aの通話開始前に警告するためのガイダンスを着側端末31に送出する。
【0027】
図3は、ハードウェア構成図である。
SIPサーバ20は、CPU901と、RAM902と、ROM903と、HDD904と、通信I/F905と、入出力I/F906と、メディアI/F907とを有するコンピュータ900として構成される。
通信I/F905は、外部の通信装置915と接続される。入出力I/F906は、入出力装置916と接続される。メディアI/F907は、記録媒体917からデータを読み書きする。さらに、CPU901は、RAM902に読み込んだプログラム(アプリケーションや、その略のアプリとも呼ばれる)を実行することにより、各処理部を制御する。そして、このプログラムは、通信回線を介して配布したり、CD-ROM等の記録媒体917に記録して配布したりすることも可能である。
【0028】
図4は、SIPサーバ20が実行する警告要否の判定処理の詳細を示すフローチャートである。このフローチャートでは、番号変換履歴が特定の条件に合致する場合に、SIPサーバ21は警告が必要と判定する。
SIPサーバ21は、受信したSIP信号から番号変換履歴を取得して警告の評価式に用いるパラメータi,j,kを計算する(S101)。これらのパラメータi,j,kはそれぞれ数値が大きいほど、特殊詐欺の発信者として疑わしくなり、その結果、呼信号40aの通話開始前に警告するためのガイダンスも着側端末31に送出されやすくなる。
【0029】
・パラメータiは、転送回数である。例えば、
図1のSIP信号41aのHistory-Infoヘッダには、050-1111-2222@23D、03-1111-3333@22D、0422-88-8888@21Dという3つの電話番号が記載されており、着側端末31の0422-88-8888@21Dを除外すると、i=2となる。
・パラメータjは、事業者経由数である。例えば、
図1のSIP信号41aのHistory-Infoヘッダには、「@21D,@22D,@23D」という3つの事業者IDが記載されており、着側事業者21Dを除外すると、j=2となる。前記したように、発番号種別と事業者ドメインとの組み合わせから、SIPサーバ20は、受信した各信号が経由した事業者数を特定できる。なお、一般的には、ある事業者の範囲内で(例えば同じ役所内で)1回以上の転送が行われるので、i≧j>0となる。
・パラメータkは、発番号設定である。例えば、
図1のSIP信号41aの発番号設定=通知ならk=1とし、発番号設定=非通知ならk=2とする。
【0030】
SIPサーバ21は、
図1のSIP信号41aが外国からの発信か否かを判定する(S102)。例えば、SIP信号41aに国際呼識別子が含まれている場合は外国からの発信なので(S102,Yes)S103に進み、S102でNoならS104に進む。
SIPサーバ21は、外国発の場合の判定式「j≧Th1」(Th1は外国発の基準値となる第1閾値)を満たすか否かを判定する(S103)。SIPサーバ21は、S103でYesなら着側端末31に着呼する前に警告が必要と判定し(S112)、S103でNoなら警告は不要と判定する(S111)。
【0031】
SIPサーバ21は、国内発の場合の警告スコアp=i×j×kを計算する(S104)。警告スコアは、数値が大きいほど、特殊詐欺の発信者として疑わしくなる。
SIPサーバ21は、国内発の場合の判定式「p≧Th2」(Th2は国内発の基準値となる第2閾値)を満たすか否かを判定する(S105)。SIPサーバ21は、S105でYesなら着側端末31に着呼する前に警告が必要と判定し(S112)、S105でNoなら警告は不要と判定する(S111)。
【0032】
以上説明した
図4では、外国発の場合と国内発の場合とで別々の判定式を用いた。一方、SIPサーバ21は、以下のパラメータm,nを計算してもよい。
・パラメータm(第1変数)は、発信元対置を示す。外国発の場合(m=2)は国内発の場合(m=1)よりも重みづけを高く設定する。
・パラメータn(第2変数)は、発番号種別(0AJ/0A0,事業者ドメイン)に応じた評価値を示す。例えば、信頼できる地域の0AJ/0A0や、信頼できる事業者ドメインには、重みづけを低く事前に設定する。
・パラメータk(第3変数)は、前記したとおり、発番号設定である。
そして、SIPサーバ21は、警告スコアp2=(α×m)+(β×n)+(γ×k)を計算し(S104の代わり)、判定式「p2≧Th3」(第3閾値)を満たすか否かを判定する(S105の代わり)。ここで、重みα>β>γとすることで、発側端末11の発側情報のうちの発信元対置が最優先で、発番号種別が次の優先で、発番号設定がそれらよりも優先されないこととする。
【0033】
また、SIPサーバ21は、
図4で示した判定処理と、以下に例示する他の判定処理1,2の少なくとも1つとを組み合わせて、最終的に警告の要否を判定してもよい。
(判定処理1)特許文献2に記載されるような、発呼された発番号と事前登録されたブラックリストとを照合することで、ブラックリストに掲載された発番号の呼を警告する方法。
(判定処理2)通話内容から音声認識で抽出したキーワードと、事前にデータベース登録された問題ワードとを照合することで、問題ワードを発言した呼を別ルートで(加入者や親族に対してメール等で)警告する方法。なお、迷惑メールフィルタと同様に、電話で発言された問題ワードと特殊詐欺の判定結果との組み合わせを正解データとして、特殊詐欺の解析AI(Artificial Intelligence)にデータベースの内容を学習させてもよい。
例えば、SIPサーバ21は、
図4の判定処理と、以下の判定処理とのいずれかを満たす場合に、警告を要すると判定する。
【0034】
以下、
図5~
図7を参照して、
図4の判定処理が使用される具体的な事例を説明する。
図5は、発呼が外国の事業者を経由する場合の構成図である。システム構成は
図1と
図5とで大まかに共通するが、以下の相違点がある。
・発側端末11が外国側に位置するため、
図5の発番号は外国の番号(+663-2222-2222)に置き換わる。
・
図5の接続事業者23Dは、2つの国をまたがって呼を中継するSIPサーバ23を管理する。このSIPサーバ23は転送をせずに中継するだけなので、SIPサーバ23には転送用番号が割り当てられない。
・SIPサーバ22の転送用番号[03-1111-3333]が[03-1111-5555]に置き換わる。
【0035】
SIPサーバ23は、2つの国をまたがって呼を中継する場合には、受信したSIP信号43aに国際呼識別子を設定してからSIPサーバ22に中継する。国際呼識別子は、例えば、SIP信号43aの発番号情報を示すP-Asserted-Identityヘッダ(以下PAIDヘッダ)内に、「verstat=No-TN-Validation」として設定される。
この国際呼識別子は、接続事業者23Dと接続事業者22Dとの間の事業者間で流通される情報なので、事業者外の情報(発番号)が頻繁に変更されても、影響されずに済む。
【0036】
なお、「verstat=No-TN-Validation」とは、呼の発番号が未検証であることを示す識別子である。この識別子は、一般社団法人情報通信技術委員会(The Telecommunication Technology Committee)の標準化文書JJ-90.30(IMS事業者網間の相互接続共通インタフェース)において、外国の通信事業者が付与した発番号に付与するように規定されている。
つまり、接続事業者23DのSIPサーバ23は、2つの国をまたがって呼を中継するときには、「verstat=No-TN-Validation」を付与するように義務付けられている。
【0037】
SIPサーバ21が受信したSIP信号41aのHistory-Infoヘッダ内には、発番号は外国の番号(+663-2222-2222)なので国際呼識別子が含まれている。よって、SIPサーバ21は、外国発の場合の判定式「j≧Th1」(Th1=1)を満たすので(S103,Yes)。警告が必要と判定する(S112)。
【0038】
図6は、発呼が複数の事業者を経由する場合の構成図である。システム構成は
図1と
図6とで大まかに共通する。一方、
図6では、非通知を示す「184」などが着番号に先立って入力されることにより、発側端末11から非通知の発番号設定で発呼される旨の相違点がある。
よって、SIPサーバ21が受信したSIP信号41aのHistory-Infoヘッダ内には、「発番号設定:非通知」が含まれている。これにより、SIPサーバ21は、受信したSIP信号から以下のようにパラメータi,j,kを計算する(S101)。
・パラメータi(転送回数)は、
図1と同じi=2となる。
・パラメータj(事業者経由数)も、
図1と同じj=2となる。
・パラメータk(発番号設定)は、
図1とは異なり非通知のk=2とする。
【0039】
そして、SIPサーバ21は、国内発の場合の警告スコアp=i×j×k=8を計算する(S104)。SIPサーバ21は、国内発の場合の判定式「p≧Th2」(Th2=5)を満たすので(S105,Yes)、警告が必要と判定する(S112)。
【0040】
図7は、過剰警告を抑止する場合の構成図である。システム構成は
図6と
図7とで大まかに共通するが、以下の相違点がある。
・
図7の発側端末11から通知の発番号設定で発呼される。よって、SIPサーバ21が受信したSIP信号41aのHistory-Infoヘッダ内には、「発番号設定:通知」が含まれている。
・
図7では接続事業者の数が1つ減る。つまり、
図6では接続事業者23Dに収容されていたSIPサーバ23が、
図7では接続事業者22Dに収容されるSIPサーバ222となる。同様に、
図6では接続事業者22Dに収容されていたSIPサーバ22が、
図7では接続事業者22Dに収容されるSIPサーバ221となる。
【0041】
SIPサーバ21は、受信したSIP信号41aから以下のようにパラメータi,j,kを計算する(S101)。
・パラメータi(転送回数)は、
図6と同じi=2となる。
・パラメータj(事業者経由数)は、
図6から1つ減ってj=1となる。
・パラメータk(発番号設定)は、
図6とは異なり通知のk=1とする。
【0042】
そして、SIPサーバ21は、国内発の場合の警告スコアp=i×j×k=2を計算する(S104)。SIPサーバ21は、国内発の場合の判定式「p≧Th2」(Th2=5)を満たさないので(S105,No)、警告が不要と判定する(S111)。
このように、転送回数iだけで警告の要否を判定する比較例に比べて、「転送回数i、事業者経由数j、および、発番号設定k」を総合的に参照する本実施形態では、転送回数iだけは多くても正常な呼を救済し、過剰警告を抑止できる。
【0043】
[効果]
本発明のSIPサーバ21は、発側端末11から着側端末31を送信先として発呼された呼信号を受信するSIP受信部52と、
番号変換を伴う転送サービスにより呼信号を転送した接続事業者22Dが設定した呼信号の番号変換履歴と、呼信号に設定されている発側端末11の発側情報との組み合わせが特定の条件に合致する場合に、警告信号を要すると判断するSIP処理部54と、
SIP処理部54の判断に従い、呼信号を着側端末31に送信する前に着側端末31に警告信号を送信する呼処理部53とを有することを特徴とする。
【0044】
これにより、呼信号の転送に伴い特殊詐欺の発信者の特定情報(発番号など)が隠ぺいされても、その転送状況から怪しい呼信号に対して適切に警告を流すことができる。
【0045】
本発明は、SIP処理部54が、特定の条件として、
着側端末31にとって発側端末11が外国である場合には、番号変換履歴から読み取った呼信号の事業者経由数が第1閾値以上の場合に、警告信号を要すると判断し、
着側端末31にとって発側端末11が国内である場合には、番号変換履歴から読み取った呼信号の転送回数、番号変換履歴から読み取った呼信号の事業者経由数、および、呼信号の発番号設定をもとにした評価式の結果が第2閾値以上の場合に、警告信号を要すると判断することを特徴とする。
【0046】
これにより、発側端末11が外国である場合には、呼信号の転送回数を参照しないで警告信号の要否を判定する。よって、発側端末11が外国である特殊詐欺の可能性の高い呼信号を、高頻度で警告できる。
さらに、発側端末11が国内である呼信号に対しては、転送回数だけでなく、他の指標も併せて総合的に評価するので、転送回数は多くても正常な呼を救済し、過剰警告を抑止できる。
【0047】
本発明は、SIP処理部54が、特定の条件として、
着側端末31にとって発側端末11が外国か国内かを示す第1変数、呼信号の発番号種別を示す第2変数、および、呼信号の発番号設定を示す第3変数について、優先度の高い順に第1変数、第2変数、第3変数とする評価式の結果が第3閾値以上の場合に、警告信号を要すると判断することを特徴とする。
【0048】
これにより、発側端末11の発側情報を重視して、警告信号の要否を判定できる。
【0049】
本発明は、SIP処理部54が、特定の条件に合致する場合に加え、発呼された発番号が事前登録されたブラックリストに掲載された発番号である場合に、警告信号を要すると判断することを特徴とする。
【0050】
これにより、発番号が怪しい呼信号に対しても、適切に警告を流すことができる。
【0051】
本発明は、SIP処理部54が、特定の条件に合致する場合に加え、呼信号の通話内容から音声認識で抽出したキーワードが、事前にデータベース登録された問題ワードに合致した場合に、警告信号を要すると判断することを特徴とする。
【0052】
これにより、通話内容が怪しい呼信号に対しても、適切に警告を流すことができる。
【符号の説明】
【0053】
11 発側端末
20 SIPサーバ
21 SIPサーバ(呼警告装置)
22 SIPサーバ(接続装置)
23 SIPサーバ(接続装置)
24 SIPサーバ
21D 着側事業者
22D 接続事業者
23D 接続事業者
24D 発側事業者
31 着側端末
40 呼信号
41 SIP信号
42 SIP信号
43 SIP信号
44 呼信号
51 呼受信部
52 SIP受信部(呼信号受信部)
53 呼処理部(警告処理部)
54 SIP処理部(呼信号処理部)
55 呼送信部
56 SIP送信部