IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電信電話株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-無線装置及び無線通信方法 図1
  • 特許-無線装置及び無線通信方法 図2
  • 特許-無線装置及び無線通信方法 図3
  • 特許-無線装置及び無線通信方法 図4
  • 特許-無線装置及び無線通信方法 図5
  • 特許-無線装置及び無線通信方法 図6
  • 特許-無線装置及び無線通信方法 図7
  • 特許-無線装置及び無線通信方法 図8
  • 特許-無線装置及び無線通信方法 図9
  • 特許-無線装置及び無線通信方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】無線装置及び無線通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 74/0808 20240101AFI20241008BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20241008BHJP
【FI】
H04W74/0808
H04W84/12
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023500224
(86)(22)【出願日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 JP2021006142
(87)【国際公開番号】W WO2022176110
(87)【国際公開日】2022-08-25
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】大谷 花絵
(72)【発明者】
【氏名】岸田 朗
(72)【発明者】
【氏名】永田 健悟
(72)【発明者】
【氏名】淺井 裕介
(72)【発明者】
【氏名】井上 保彦
(72)【発明者】
【氏名】鷹取 泰司
【審査官】米倉 明日香
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0110073(US,A1)
【文献】篠原 笑子 他,高効率無線LANにおけるCCA閾値制御と送信電力制御の容量改善効果,電子情報通信学会技術研究報告 信学技報 RCS-2016-208,2016年12月14日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームの優先度を識別する第1の識別情報とBSS(Basic Service Set)を識別する第2の識別情報とを含むフレームを周波数チャネル上で受信する受信部と、
前記第1の識別情報及び第2の識別情報に基づいて閾値を決定し、前記フレームの受信電力と前記決定された閾値との比較に基づいて前記周波数チャネルの使用状況を判定するキャリアセンス制御部と、
を備える無線装置であって
当該無線装置は第1のBSSに属し、
前記キャリアセンス制御部は、
前記第2の識別情報が第1のBSSとは異なる第2のBSSを示す、且つ、前記第1の識別情報が第1の優先度を示す場合には、前記閾値を第1の値に設定し、
前記第2の識別情報が前記第2のBSSを示す、且つ、前記第1の識別情報が前記第1の優先度より低い第2の優先度を示す場合には、前記閾値を前記第1の値より大きい第2の値に設定し、
前記第2の識別情報が前記第1のBSSを示す場合には、前記閾値を前記第2の値より小さい第3の値に設定する、
無線装置。
【請求項2】
前記第1の値は前記第3の値以下である、
請求項1に記載の無線装置。
【請求項3】
無線装置が実行する無線通信方法であって、
フレームの優先度を識別する第1の識別情報とBSS(Basic Service Set)を識別する第2の識別情報とを含むフレームを周波数チャネル上で受信することと、
前記第1の識別情報及び前記第2の識別情報に基づいて閾値を決定することと、
前記フレームの受信電力と前記決定された閾値との比較に基づいて前記周波数チャネルの使用状況を判定することと、
を備え、
前記閾値を決定することは、
前記第2の識別情報が第1のBSSとは異なる第2のBSSを示す、且つ、前記第1の識別情報が第1の優先度を示す場合には、前記閾値を第1の値に設定することと、
前記第2の識別情報が前記第2のBSSを示す、且つ、前記第1の識別情報が前記第1の優先度より低い第2の優先度を示す場合には、前記閾値を前記第1の値より大きい第2の値に設定することと、
前記第2の識別情報が前記第1のBSSを示す場合には、前記閾値を前記第2の値より小さい第3の値に設定することと、
を備える、無線通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ノートパソコンやスマートフォンなどの持ち運び可能な無線端末の普及により、企業や公共スペースだけでなく、一般家庭でもIEEE802.11規格の無線LAN(Local Area Network)が広く使われるようになっている。このため、同じ周波数チャネルを使用する複数の基本サービスセット(BSS;Basic Service Set)が隣接して存在する状況が生じている。このような状況では、スループットの低下や伝送遅延の増加など、無線通信の信頼性が低下することが懸念される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】IEEE P802.11ax/D8.0, “26.10 Spatial reuse operation”, October 2020.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、高信頼性の無線通信を可能にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る無線装置は、フレームの優先度を識別する第1の識別情報を含むフレームを周波数チャネル上で受信する受信部と、前記第1の識別情報に基づいて閾値を決定し、前記フレームの受信電力と前記決定された閾値との比較に基づいて前記周波数チャネルの使用状況を判定するキャリアセンス制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、高信頼性の無線通信を可能にする技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る通信システムを示す図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係るフレームフォーマットを示す図である。
図3図3は、図1に示した基地局のハードウェア構成を示すブロック図である。
図4図4は、図1に示した端末のハードウェア構成を示すブロック図である。
図5図5は、図1に示した基地局及び端末の機能構成を示すブロック図である。
図6図6は、図5に示した送信部を示すブロック図である。
図7図7は、図5に示した受信部を示すブロック図である。
図8図8は、図5に示したMACフレーム処理部におけるCCA閾値を決定する方法を説明する図である。
図9図9は、図1に示した通信システムの動作を示すタイムチャートである。
図10図10は、図5に示した基地局の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0009】
[構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る通信システム50を概略的に示している。図1に示すように、通信システム50は、基地局10、12、端末20、22、及びネットワーク40を備える。
【0010】
基地局10、12は、無線LAN(Local Area Network)のアクセスポイント(AP;Access Point)として動作する。基地局10は端末20と無線通信し、基地局12は端末22と無線通信する。基地局10、12と端末20、22との間の通信は例えばIEEE802.11規格に基づいている。基地局10、12はネットワーク40に例えば有線で接続される。ネットワーク40は、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN;Wide Area Network)、又はこれら両方を含んでよい。なお、基地局10、12は別々のネットワークに接続されていてもよい。
【0011】
端末20、22は無線端末である。無線端末の例は、スマートフォン、タブレットPC(Personal Computer)、デスクトップPC、ラップトップPCを含む。端末20、22は、基地局10、12を介してネットワーク40上の図示しないコンピュータ(例えばサーバ)とデータを交換する。
【0012】
通信システム50では、2つの基本サービスセット(BSS;Basic Service Set)30、32が互いに隣接して存在し、BSS30は基地局10及び端末20により構成され、BSS32は基地局12及び端末22により構成される。BSS30、32は同じ周波数チャネルを使用する。以降では、周波数チャネルを単にチャネルと称する。
【0013】
以降では、無線局を、基地局及び無線端末を総称する用語として使用する。例えば、無線局は、文脈に応じて、基地局10、12及び端末20、22の各々又はこれらのうちのいずれかを指してよい。
【0014】
無線局は、フレーム送信前にキャリアセンスを行い、フレーム送信に使用するチャネルの使用状況を判定する。キャリアセンスはCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Detection)アルゴリズムに基づいていてよい。CSMA/CAでは、CCA(Clear Channel Assessment)閾値と称される閾値がチャネルの使用状況を判定するために使用される。無線局は、キャリアセンスによりフレームを検出した場合、検出したフレームのプリアンブルに含まれる情報に基づいてCCA閾値を決定し、検出したフレームの受信電力値と決定したCCA閾値との比較に基づいてチャネルがビジー(busy)であるかアイドル(idle)であるかを判定する。無線局は、チャネルがアイドルであることを確認した後にフレームを送信する。
【0015】
IEEE802.11ax規格では、BSS colorが定義される。BSS colorは、BSSに関する識別子であり、フレームのプリアンブルに含まれる。無線局は、検出したフレームのプリアンブルに含まれるBSS colorに基づいて、検出したフレームの宛先が自BSS内の無線局か他のBSS内の無線局かを特定することが可能である。無線局は、検出したフレームの宛先が他のBSS内の無線局である場合にはCCA閾値を上げる。具体的には、無線局は、検出したフレームの宛先が自BSS内の無線局である場合には、-82dBmのCCA閾値を使用し、検出したフレームの宛先が他のBSS内の無線局である場合には、-72dBmのCCA閾値を使用する。IEEE802.11ax規格は、フレームの宛先が自BSS内の無線局か他のBSS内の無線局かに基づいてCCA閾値を決定することにより、さらし端末問題に対処している。
【0016】
図1において、基地局12が-82dBmから-72dBmまでの範囲内の電力値で基地局10からの信号を検出し、且つ、端末20が基地局12からの信号を検出できるように、基地局10、12及び端末20、22が位置しているとする。IEEE802.11ax規格によると、基地局10が端末20に向けてフレームを送信している場合には、基地局12はキャリアセンスにより検出された基地局10からの信号に対して-72dBmのCCA閾値を使用する。このため、基地局12はチャネルをアイドルと判定して端末22に向けてフレーム送信を行う可能性がある。基地局12が端末22に向けてフレーム送信を行う場合、基地局10から端末20へのフレームは基地局12から端末22へのフレームの干渉を受けることになる。この干渉により、端末20は基地局10からのフレームの受信に失敗する可能性がある。
【0017】
例えば、ネットワークゲームや工業用ロボットの制御アプリケーションのようなリアルタイムアプリケーション(RTA;Real Time Application)は通信の低遅延性を要求する。上述した干渉は無線局間の通信の遅延性を悪化させる。以降では、低遅延性を要求するデータのような優先度の高いデータを含むフレームを高優先フレームと称し、優先度の低いデータを含むフレームを低優先フレームと称することもある。
【0018】
本発明の一実施形態では、無線局は、検出したフレームが他のBSSに関する高優先フレームである場合には、検出したフレームが他のBSSに関する低優先フレームである場合よりも低いCCA閾値を使用する。それにより、検出したフレームが他のBSSに関する高優先フレームである場合には、チャネルがアイドルであると判定されにくくなり、高優先フレームが干渉を受ける事象が低減する。よって、さらし端末問題を回避又は軽減しながら、高優先フレームに必要な低遅延性を確保することが可能となる。すなわち、複数のBSSが重なり合う状況下でも、高信頼性の無線通信が可能となる。
【0019】
通信システム50において、基地局と端末との間の無線通信は、IEEE802.11規格に準じている。IEEE802.11規格は、OSI(Open Systems Interconnection)参照モデルの第1層と第2層のMAC副層を規定する。OSI参照モデルでは、通信機能が7階層(第1層:物理層、第2層:データリンク層、第3層:ネットワーク層、第4層:トランスポート層、第5層:セッション層、第6層:プレゼンテーション層、第7層:アプリケーション層)に分割される。
【0020】
データリンク層は、例えば、LLC(Logical Link Control)層と、MAC(Media Access Control)層と、を含んでいる。LLC層は、例えば、上位層から入力されたデータにDSAP(Destination Service Access Point)ヘッダ及びSSAP(Source Service Access Point)ヘッダなどを付与して、LLCパケットを生成する。MAC層は、例えば、LLCパケットにMACヘッダを付与して、MACフレームを生成する。MACフレームはMPDU(MAC Protocol Data Unit)とも称される。物理層は、例えば、MACフレームにプリアンブルなどを付与して、無線フレームを生成する。無線フレームは、PPDU(Physical layer (PHY) Protocol Data Unit)とも称される。
【0021】
図2は、実施形態に係る無線フレーム60の構造例を概略的に示している。図2に示すように、無線フレーム60は、PHYプリアンブル61、PHYヘッダ62、及びMPDU63を含む。PHYプリアンブル61及びPHYヘッダ62をプリアンブルと総称する。
【0022】
PHYプリアンブル61は、同期に使用される情報を格納するフィールドを含む。PHYヘッダ62は、制御情報を格納するフィールドを含む。具体的には、PHYヘッダ62は、データ復調に必要な情報を格納するフィールド、BSSを識別する識別情報を格納するフィールド611、及びフレームの優先度を識別する識別情報を格納するフィールド612などを含む。BSSを識別する識別情報は、IEEE802.11axにおいて定義されるBSS colorであってよいが、これに限定されない。
【0023】
IEEE802.11axにおいて定義されるHE(High Efficiency)フレームフォーマットでは、プリアンブルは、L-STF、L-LTF、L-SIG、HE-SIG-A、HE-STF、HE-LTFなどを含む。HE-SIG-AはBSS colorを格納するフィールドを含む。L-STF、L-LTF、HE-STF、HE-LTFが同期情報に相当し、L-SIG、HE-SIG-Aが制御情報に相当する。
【0024】
以降では、BSSを識別する識別情報をBSS colorとし、フレームの優先度を識別する識別情報をQoS(Quality of Service) colorと称する。フレーム優先度は2以上の段階で表される。フレーム優先度が2段階で表される場合、フィールド612は1ビット長を有してよい。例えば、フレーム優先度が高い場合、“0”がフィールド612に格納され、フレーム優先度が低い場合、“1”がフィールド612に格納される。フレーム優先度が4段階で表される場合、フィールド612は2ビット長を有してよい。例えば、“00”が最も高いフレーム優先度に関連付けられ、“01”が2番目に高いフレーム優先度に関連付けられ、“10”が3番目に高いフレーム優先度に関連付けられ、“11”が最も低いフレーム優先度に関連付けられる。
【0025】
なお、フィールド612をフィールド611に含めてもよい。この場合はフィールド611に含める情報により、BSSを識別する識別情報とフレームの優先度を識別する識別情報とが示される。また、フィールド611又はフィールド612はPHYヘッダ62でなくPHYプリアンブル61に含まれていてもよい。
【0026】
次に、基地局10及び端末20の構成について説明する。基地局12は基地局10と同じ構成を有することができ、端末22は端末20と同じ構成を有することができる。このため、基地局12及び端末22の構成についての説明を省略する。
【0027】
図3は、基地局10のハードウェア構成の一例を概略的に示している。図3に示す例では、基地局10は、CPU(Central Processing Unit)151、ROM(Read Only Memory)152、RAM(Random Access Memory)153、無線通信モジュール154、及び有線通信モジュール155を備える。
【0028】
CPU151は、様々なプログラムを実行することが可能な回路であり、基地局10の全体の動作を制御する。ROM152は、不揮発性の半導体メモリであり、基地局10を制御するためのプログラム及び制御データなどを保持している。RAM153は、例えば揮発性の半導体メモリであり、CPU151の作業領域として使用される。無線通信モジュール154は、無線信号によるデータの送受信に使用される回路である。無線通信モジュール154は、例えば、デジタル回路、アナログ回路、A/Dコンバータ、及びD/Aコンバータを含む。デジタル回路はCPUなどの汎用プロセッサを含む。代替として又は追加として、デジタル回路はASIC(Application Specific Integrated Circuit)又はFPGA(Field Programmable Gate Array)などの専用プロセッサを含んでもよい。アナログ回路は、例えば、周波数アップコンバータ、周波数ダウンコンバータ、変調回路、及び復調回路などを含む。無線通信モジュール154はアンテナに接続される。無線通信モジュール154はアンテナを含んでいてもよい。有線通信モジュール155は、有線信号によるデータの送受信に使用される回路であり、ネットワーク40に接続される。
【0029】
図4は、端末20のハードウェア構成の一例を概略的に示している。図4に示す例では、端末20は、CPU251、ROM252、RAM253、無線通信モジュール254、ディスプレイ255、及びストレージ256を備える。CPU251は、様々なプログラムを実行することが可能な回路であり、端末20の全体の動作を制御する。ROM252は、不揮発性の半導体メモリであり、端末20を制御するためのプログラム及び制御データなどを保持している。RAM253は、例えば揮発性の半導体メモリであり、CPU251の作業領域として使用される。無線通信モジュール254は、無線信号によるデータの送受信に使用される回路であり、アンテナに接続される。無線通信モジュール254はアンテナを含んでいてもよい。ディスプレイ255は、例えばアプリケーションソフトに対応するGUI(Graphical User Interface)などの情報を表示する。ストレージ256は、不揮発性の記憶装置であり、例えば端末20のシステムソフトウェアなどを保持する。
【0030】
端末20は入力インタフェースをさらに備えていてもよい。例えば、端末20はタッチスクリーンを備えてよい。
【0031】
図5は、基地局10及び端末20の機能構成例を概略的に示している。無線局(基地局10及び端末20の各々)は、上位層から入力されたデータに対してLLC層の処理、MAC層の処理、及びPHY層の処理を施すことでそのデータを含む無線信号を生成し、無線信号を送信する。また、無線局は、無線信号を受信し、受信した無線信号に対してPHY層の処理、MAC層の処理、及びLLC層の処理を施すことで受信した無線信号からデータを抽出し、抽出したデータを上位層に出力する。上位層は例えばアプリケーション層である。
【0032】
図5に示す例では、基地局10は、無線部101及び上位層102を備える。無線部101は、LLC処理部110、MAC処理部120、及びPHY処理部130を備える。無線部101は、例えば、無線通信モジュール154、又はCPU151と無線通信モジュール154の組み合わせによって実現される。
【0033】
LLC処理部110は、上位層102とのインタフェースの役割を持ち、LLC層の処理を行う。例えば、端末20宛てのデータがネットワーク40から基地局10に入力された場合、LLC処理部110は、上位層102からデータを受け取り、データにDSAPヘッダ及びSSAPヘッダなどを付与して、LLCパケットを生成する。LLC処理部110は、上位層102からデータとともにそのデータのトラヒック種別(TID;Traffic Identifier)を受け取る。TIDはデータの優先度を示す情報である。例えば、低遅延性を要求するデータには、高い優先度が割り当てられる。LLC処理部110は、LLCパケット及びTIDをMAC処理部120に送出する。また、LLC処理部110は、MAC処理部120からLLCパケットを受け取る場合、LLCパケットからデータを抽出し、抽出したデータを上位層102に送出する。
【0034】
MAC処理部120は、MAC層の処理を行う。図5に示す例では、MAC処理部120は、データ処理部121及びMACフレーム処理部122を備える。MACフレーム処理部122はキャリアセンス制御部とも称される。
【0035】
データ処理部121は、LLC処理部110からLLCパケット及びTIDを受け取る場合、LLCパケットに送信先アドレス、送信元アドレス、BSSを示すBSS情報、TIDなどを含むMACヘッダと誤り検出符号とを付与して、MACフレームを生成する。データ処理部121は、MACフレームをMACフレーム処理部122に送出する。また、データ処理部121は、MACフレーム処理部122を介してPHY処理部130からMACフレームを受け取る場合、MACフレームを復調してMACヘッダ及びLLCパケットを得る。データ処理部121は、MACヘッダに含まれる送信先アドレスが自局(具体的には基地局10)を示すか否かを判定する。送信先アドレスが自局を示す場合、データ処理部121は、LLCパケットをLLC処理部110に送出する。送信先アドレスが自局を示さない場合、データ処理部121は、LLCパケットを破棄する。
【0036】
MACフレーム処理部122は、データ処理部121からMACフレームを受け取り、MACフレームを一時的に格納する。そして、MACフレーム処理部122は、ランダム時間にわたってキャリアセンスを行い、チャネルがアイドルであることを確認した後にMACフレームをPHY処理部130に送出する。MACフレーム処理部122は、PHY処理部130において観測される受信電力がCCA閾値より高ければ、チャネルがビジーであると判定し、そうでなければチャネルがアイドルであると判定する。受信電力としての受信信号強度(RSSI;Received Signal Strength Indicator)は、PHY処理部130により測定されてMACフレーム処理部122に与えられる。MACフレーム処理部122は、キャリアセンスにより検出された無線フレームのプリアンブルに含まれるBSS colorの値とQoS colorの値の組み合わせに応じてCCA閾値を決定する。CCA閾値を決定する方法については後述する。
【0037】
PHY処理部130はPHY層の処理を行う。図5に示す例では、PHY処理部130は、送信部131及び受信部136を備える。
【0038】
送信部131は、MAC処理部120からMACフレームを受け取る場合、MACフレームにプリアンブルなどを付与して、無線フレームを生成する。プリアンブルはBSS color及びQoS colorを含む。送信部131は、無線フレームを無線信号に変換し、アンテナを介して無線信号を送信する。
【0039】
受信部136は、アンテナを介して無線信号を受信し、受信した無線信号を無線フレームに変換する。受信部136は、まず無線フレームのプリアンブルに含まれるBSS color及びQoS colorを得てこれらをMAC処理部120に送出し、次に、無線フレームからMACフレームを抽出してMAC処理部120に送出する。
【0040】
図6は、送信部131の構成例を概略的に示している。図6に示すように、送信部131は、PHYヘッダ処理部132及び無線信号処理部133を備える。
【0041】
上述したように、MAC処理部120は、チャネルがアイドルであることを確認した後に、MACフレームを送信部131に送出する。すなわち、MAC処理部120は、送信権を獲得した後にMACフレームを送信部131に送出する。
【0042】
PHYヘッダ処理部132は、MAC処理部120からMACフレームを受け取る。PHYヘッダ処理部132は、MACフレームにBSS color及びQoS colorなどの情報を含むPHYヘッダとPHYプリアンブルとを付与して、無線フレームを生成する。PHYヘッダ処理部132は、MACヘッダに含まれるBSS情報に基づいてBSS colorの値を決定し、MACヘッダに含まれるTID情報に基づいてQoS colorの値を決定する。なお、QoS colorは、TID情報以外の情報、例えば、AID(Association Identifier)情報に基づいて決定されてもよい。AID情報に基づいてQoS colorの値を決定すると、端末ごとに優先度を設定することができる。例えば、基地局10により特定のAIDを割り当てられた端末が送信するフレームは全て高優先に設定されることになる。
【0043】
フレーム優先度はデータの優先度が高いほど高く設定される。TIDは2つ以上の段階で表される。例えば、TIDが2つの値#1、#2で表現され、#1、#2の順でデータの優先度が高いとする。この場合において、送信部131は、TIDが#1である場合に、QoS colorをフレーム優先度が高いことを示す値(例えば“0”)に設定し、TIDが#2である場合に、QoS colorをフレーム優先度が低いことを示す値(例えば“1”)に設定してよい。また、TIDが3つの値#1、#2、#3で表現され、#1、#2、#3の順でデータの優先度が高いとする。この場合において、送信部131は、TIDが#1である場合に、QoS colorをフレーム優先度が高いことを示す値(例えば“0”)に設定し、TIDが#2又は#3である場合に、QoS colorをフレーム優先度が低いことを示す値(例えば“1”)に設定してよい。これらは、QoS colorを決定する方法の例示に過ぎない。
【0044】
無線信号処理部133は、PHYヘッダ処理部132から無線フレームを受け取り、無線フレームに対して所定の変調動作を行って無線フレームを無線信号に変換し、アンテナを介して無線信号を送信する。所定の変調動作は、例えば、畳み込み符号化、インタリーブ、サブキャリア変調、逆高速フーリエ変換(IFFT;Inverse Fast Fourier Transform)、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調、及び周波数変換を含む。
【0045】
図7は、受信部136の構成例を概略的に示している。図7に示すように、受信部136は、無線信号処理部137及びPHYヘッダ処理部138を備える。
【0046】
無線信号処理部137は、アンテナで受信された無線信号に対して所定の復調動作を行い、それにより得られた無線フレームをPHYヘッダ処理部138に送出する。所定の復調動作は、例えば、周波数変換、OFDM復調、高速フーリエ変換(FFT;Fast Fourier Transform)、サブキャリア復調、デインタリーブ、及びビタビ復号を含む。
【0047】
さらに、無線信号処理部137は、受信された無線信号についてRSSIを測定する。無線信号処理部137は、PHYヘッダ処理部138を介してRSSIをMAC処理部120に通知する。
【0048】
PHYヘッダ処理部138は、無線信号処理部137から無線フレームを受け取り、無線フレームのプリアンブル(具体的にはPHYヘッダ)に含まれる情報、例えば、BSS color及びQoS colorを識別する。PHYヘッダ処理部138は、プリアンブルに含まれるBSS color及びQoS colorに基づいて、以下の動作を行う。
【0049】
フレーム受信時において、PHYヘッダ処理部138は、BSS colorが自BSS(具体的には基地局10が属するBSS)を示す場合、無線信号処理部137の復調動作を継続させ、無線フレームのプリアンブルから取り出されたBSS color及びQoS colorをMAC処理部120に送出し、その後に無線フレームから取り出されたMACフレームをMAC処理部120に送出する。PHYヘッダ処理部138は、BSS colorが自BSSを示さない場合、無線信号処理部137の復調動作を停止させる。PHYヘッダ処理部138は、復調動作を停止させた場合であっても、BSS color及びQoS colorをMAC処理部120に送出する。
【0050】
キャリアセンス時において、PHYヘッダ処理部138は、無線フレームのプリアンブルから取り出されたBSS color及びQoS colorの値をMAC処理部120に通知する。
【0051】
再び図5を参照すると、端末20は無線部201及び上位層202を備える。無線部201は、LLC処理部210、MAC処理部220、及びPHY処理部230を備える。無線部201は、例えば、無線通信モジュール254、又はCPU251と無線通信モジュール254の組み合わせによって実現される。
【0052】
LLC処理部210、MAC処理部220、及びPHY処理部230はそれぞれ、LLC処理部110、MAC処理部120、及びPHY処理部130と同様の動作を行う。このため、LLC処理部210、MAC処理部220、及びPHY処理部230についての詳細な説明は省略する。
【0053】
LLC処理部210は、上位層202とのインタフェースの役割を持ち、LLC層の処理を行う。例えば、データが上位層202から無線部201に入力された場合、LLC処理部210は、データにDSAPヘッダ及びSSAPヘッダなどを付与して、LLCパケットを生成する。LLC処理部210は、LLCパケットをMAC処理部220に送出する。また、LLC処理部210は、MAC処理部220からLLCパケットを受け取る場合、LLCパケットからデータを抽出し、抽出したデータを上位層202に送出する。
【0054】
MAC処理部220は、MAC層の処理を行う。図5に示す例では、MAC処理部220は、データ処理部221及びMACフレーム処理部222を備える。MACフレーム処理部222はキャリアセンス制御部とも称される。データ処理部221及びMACフレーム処理部222はそれぞれ、データ処理部121及びMACフレーム処理部122と同様の動作を行う。
【0055】
データ処理部221は、LLC処理部210からLLCパケットを受け取る場合、LLCパケットに送信先アドレス、送信元アドレス、TIDなどを含むMACヘッダと誤り検出符号とを付与して、MACフレームを生成する。データ処理部221は、MACフレームをMACフレーム処理部222に送出する。また、データ処理部221は、PHY処理部230からMACフレームを受け取る場合、MACフレームを復調してMACヘッダ及びLLCパケットを得る。MACヘッダに含まれる送信先アドレスが自局(具体的には端末20)を示す場合、データ処理部221は、LLCパケットをLLC処理部210に送出する。
【0056】
MACフレーム処理部222は、データ処理部221からMACフレームを受け取り、MACフレームを一時的に格納する。そして、MACフレーム処理部222は、ランダム時間にわたってキャリアセンスを行い、チャネルがアイドルであることを確認した後にMACフレームをPHY処理部230に送出する。
【0057】
PHY処理部230はPHY層の処理を行う。図5に示す例では、PHY処理部230は、送信部231及び受信部236を備える。
【0058】
送信部231は、MAC処理部220からMACフレームを受け取る場合、MACフレームにBSS color及びQoS colorを含むプリアンブルなどを付与して、無線フレームを生成する。送信部231は、MACヘッダに含まれるBSS情報に基づいてBSS colorの値を決定し、MACヘッダに含まれるTID情報に基づいてQoS colorの値を決定する。送信部231は、無線フレームを無線信号に変換し、アンテナを介して無線信号を送信する。
【0059】
受信部236は、アンテナを介して無線信号を受信し、受信した無線信号に対して復調動作を行って無線フレームを得る。フレーム受信時において、受信部236は、無線フレームのプリアンブルに含まれるBSS colorが自BSS(具体的には端末20が属するBSS)を示す場合、無線フレームのプリアンブルから取り出されたBSS color及びQoS colorとともに、無線フレームから取り出されたMACフレームをMAC処理部220に送出する。受信部236は、BSS colorが自BSSを示さない場合、復調動作を終了する。受信部236は、復調動作を途中で終了した場合であっても、BSS color及びQoS colorをMAC処理部220に送出する。キャリアセンス時において、受信部236は、無線フレームのプリアンブルから取り出されたBSS color及びQoS colorの値をMAC処理部220に通知する。
【0060】
さらに、受信部236は、受信された無線信号についてRSSIを測定する。受信部236は、RSSIをMAC処理部220に通知する。
【0061】
次に、図8を参照してCCA閾値を決定する方法を説明する。ここでは、基地局10に関して説明を行うが、端末20に対しても同じ方法を適用可能である。図8において、CCA-ED(Energy Detection)に併記される-62dBmは、キャリアセンスにより検出された信号がIEEE802.11規格に基づくフレームであることが認識されなかった場合に使用されるCCA閾値である。
【0062】
基地局10のMACフレーム処理部122は、無線フレームのプリアンブルに含まれるBSS colorの値及びQoS colorの値に基づいてCCA閾値を決定する。
【0063】
BSS colorが基地局10が属するBSSを示す場合には、MACフレーム処理部122はCCA閾値をThに設定する。Thは例えば-82dBmである。Thは-82dBmより低くてもよい。なお、図8に記載のCCA-SD(Signal Detection)に併記される-82dBmは、キャリアセンスにより検出された信号がIEEE802.11規格に基づくフレームであることが認識された場合に使用されるデフォルトのCCA閾値である。
【0064】
BSS colorが基地局10が属するBSSを示さない場合には、MACフレーム処理部122は、QoS colorの値に基づいてCCA閾値を決定する。
【0065】
フレーム優先度が2段階で表され、QoS color“0”がフレーム優先度が高いことを示し、QoS color“1”がフレーム優先度が低いことを示すものとする。
【0066】
QoS colorの値が“1”である、すなわち、QoS colorが低いフレーム優先度を示す場合には、MACフレーム処理部122はCCA閾値をThに設定する。ここで、ThはThより大きい(Th<Th)。典型的には、Thは-62dBmより小さい。Thは例えば-72dBmである。なお、Thは-62dBm以上であってもよい。
【0067】
QoS colorの値が“0”である、すなわち、QoS colorが高いフレーム優先度を示す場合には、MACフレーム処理部122はCCA閾値をThに設定する。ここで、ThはThより小さい(Th<Th)。典型的には、ThはThより大きい。Thは例えば-77dBmである。なお、ThはTh以下であってもよい。
【0068】
フレーム優先度が4段階で表される場合におけるCCA閾値の設定方法を簡単に説明する。
【0069】
QoS colorが最も低いフレーム優先度を示す場合には、MACフレーム処理部122はCCA閾値をThに設定する。ここで、ThはThより高い(Th<Th)。QoS colorが3番目に高いフレーム優先度を示す場合には、MACフレーム処理部122はCCA閾値をThに設定する。ここで、ThはThより低い(Th<Th)。QoS colorが2番目に高いフレーム優先度を示す場合には、MACフレーム処理部122はCCA閾値をThに設定する。ここで、ThはThより低い(Th<Th)。QoS colorが最も高いフレーム優先度を示す場合には、MACフレーム処理部122はCCA閾値をThに設定する。ここで、ThはThより低い(Th<Th)。一例として、Thは-72.0dBmであり、Thは-74.5dBmであり、Thは-77.0dBmであり、Thは-79.5dBmである。
【0070】
[動作]
次に、通信システム50の動作について説明する。
【0071】
図9は、通信システム50の動作の一例を概略的に示している。図1に関連して説明したように、BSS30は基地局10及び端末20を含み、BSS32は基地局12及び端末22を含む。図9に示す例では、基地局10が端末20に向けて高優先フレームを送信しているときに、基地局12において端末22へのフレームの送信要求が発生する状況を想定する。さらに、基地局12が基地局10から受信するフレームの受信電力がThからThまでの間にあるとする。
【0072】
図9のステップS91において、基地局10が端末20への高優先フレームの送信を開始する。
【0073】
ステップS92において、基地局12において端末22へのフレームの送信要求が発生し、基地局12はCSMA/CAに基づきキャリアセンスを行う。基地局12は、キャリアセンスにより基地局10から端末20へのフレームを検出し、検出したフレームのプリアンブルに含まれるBSS color及びQoS colorを識別し、検出したフレームの宛先がBSS32内の無線局でないこと、及び検出したフレームが高優先フレームであることを認識する。これにより、基地局12はCCA閾値をThに設定する。ステップS93において、基地局12は、検出したフレームの受信電力がCCA閾値より高いことを認識し、チャネルをビジーと判定して待機する。
【0074】
ステップS94において、基地局10が端末20への高優先フレームの送信を終了する。基地局12は、チャネルがビジー状態からアイドル状態に移行したことを認識し、認識後に、IFSとバックオフ時間と呼ばれるランダム時間とを含む期間にわたってキャリアセンスを行う。基地局12は、チャネルがアイドルであると判定した場合に端末22へのフレームの送信を開始する。
【0075】
図10は、基地局10により実行される判定処理の手順の一例を概略的に示している。基地局10のMACフレーム処理部122は、フレーム送信前にCSMA/CAに基づくキャリアセンスを実行する。例えば、MACフレーム処理部122は、データ処理部121からMACフレームを受け取ったことに応答してキャリアセンスを開始する。
【0076】
キャリアセンスによりPHY処理部130においてフレームが検出されなかった場合(ステップS101;No)、処理はステップS108に進む。ステップS108において、MACフレーム処理部122は、チャネルがアイドルであると判定し、フレーム送信動作に移行する。
【0077】
キャリアセンスによりPHY処理部130においてフレームが検出された場合(ステップS101;Yes)、処理はステップS102に進む。ステップS102において、MACフレーム処理部122は、検出されたフレームである受信フレームの宛先が自BSSに属する無線局であるか否かを判定する。例えば、受信部136は、受信フレームのプリアンブルを復調することにより受信フレームのプリアンブルからBSS colorを抽出し、MACフレーム処理部122は、受信部136により抽出されたBSS colorが自BSSのBSS colorと一致するか否かを判定する。
【0078】
受信フレームの宛先が自BSSに属する無線局である場合(ステップS102;Yes)、処理はステップS103に進む。ステップS103において、MACフレーム処理部122は、CCA閾値としてデフォルト値Thを使用することを決定する。
【0079】
受信フレームの宛先が自BSSに属する無線局でない場合(ステップS102;No)、処理はステップS104に進む。ステップS104において、MACフレーム処理部122は、受信フレームの優先度が高いか否かを判定する。例えば、受信部136は、受信フレームのプリアンブルを復調することにより受信フレームのプリアンブルからQoS colorを抽出し、MACフレーム処理部122は、受信部136により抽出されたQoS colorが“0”又は“1”のいずれであるかを判定する。
【0080】
受信フレームの優先度が高くない場合(ステップS104;No)、ステップS106において、MACフレーム処理部122は、CCA閾値として指定値Thを使用することを決定する。ここで、ThはThより大きい(Th<Th)。受信フレームの優先度が高い場合(ステップS104;Yes)、ステップS105において、基地局10は、CCA閾値として優先度に応じた値Thを使用することを決定する。ここで、ThはThより小さい(Th<Th)。
【0081】
ステップS103、S105、又はS106においてCCA閾値が設定されると、処理はステップS107に進む。ステップS107において、MACフレーム処理部122は、受信フレームの電力値をCCA閾値と比較する。受信フレームの電力値がCCA閾値より小さい場合(ステップS107;Yes)、処理はステップS108に進む。ステップS108において、MACフレーム処理部122は、チャネルがアイドルであると判定し、フレーム送信動作に移行する。
【0082】
受信フレームの電力値がCCA閾値以上である場合(ステップS107;No)、処理はステップS109に進む。ステップS109において、MACフレーム処理部122は、チャネルがビジーであると判定し、フレーム送信動作に移行しない。
【0083】
[効果]
上述した実施形態では、無線局は、フレーム送信前にCSMA/CAに基づきキャリアセンスを行う。無線局は、キャリアセンスにより検出されたフレームである受信フレームのプリアンブルからBSS color及びQoS colorを得て、BSS color及びQoS colorに基づいてCCA閾値を決定する。無線局は、BSS colorに基づいて、受信フレームが自BSSに関するフレームであるか否かを判定する。受信フレームが自BSSに関するフレームである場合、無線局は、CCA閾値をデフォルト値Thに設定する。受信フレームが他のBSSに関するフレームである場合、無線局は、QoS colorに基づいて、受信フレームの優先度が高いか否かを判定する。受信フレームの優先度が低い場合、無線局は閾値をThより大きいThに設定する。受信フレームの優先度が高い場合、無線局は閾値をThより小さいThに設定する。無線局は、受信フレームの受信電力とCCA閾値との比較に基づいてチャネルの使用状況を判定する。
【0084】
受信フレームが他のBSSに関する低優先フレームである場合には、CCA閾値は、受信フレームが自BSSに関するフレームである場合よりも大きい値に設定される。これにより、さらし端末問題を回避又は軽減することができる。さらに、受信フレームが他のBSSに関する高優先フレームである場合には、CCA閾値は、受信フレームが他のBSSに関する低優先フレームである場合よりも小さい値に設定される。受信フレームが他のBSSに関する高優先フレームである場合には、チャネルがアイドルであると判定されにくくなり、高優先フレームが干渉を受ける事象が低減する。これは、他のBSSにおいて高優先フレームに必要な低遅延性を確保することを可能にする。このようにして、他のBSSに関する高優先フレームが保護される。したがって、複数のBSSが重なり合う状況においても、高信頼性の無線通信が提供される。
【0085】
QoS colorがフレームのプリアンブルに含まれるので、受信フレームが高優先フレームであるか否かを早期に検出することができる。チャネル使用状況の判定において、受信フレームに対する復調動作を途中で終了することができ、ハードウェア資源を節約することができる。
【0086】
ThはTh以下の値であってよい。この場合、他のBSSに関する高優先フレームがより強く保護される。
【0087】
[変形例]
上述した実施形態では、QoS colorは無線フレームのプリアンブルに含まれる。代替として、QoS colorは、例えばMACヘッダなどの無線フレーム中の他の部分に含まれていてもよい。
【0088】
無線局の無線部(例えば基地局10の無線部101又は端末20の無線部201)はチップなどの個別部品により実施されてよい。例えば、無線局の製造時に無線局の基板にチップが組み込まれてよい。ここで言及される無線装置は、無線局を指してもよく、無線局の無線部を実現する個別部品を指してもよい。
【0089】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。さらに、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要素から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要素が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0090】
10,12…基地局
20,22…端末
30,32…BSS
40…ネットワーク
50…通信システム
60…無線フレーム
61…PHYプリアンブル
62…PHYヘッダ
63…MPDU
101,201…無線部
102,202…上位層
110,210…LLC処理部
120,220…MAC処理部
121,221…データ処理部
122,222…MACフレーム処理部
130,230…PHY処理部
131,231…送信部
132…PHYヘッダ処理部
133…無線信号処理部
136,236…受信部
137…無線信号処理部
138…PHYヘッダ処理部
151,251…CPU
152,252…ROM
153,253…RAM
154,254…無線通信モジュール
155…有線通信モジュール
255…ディスプレイ
256…ストレージ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10