(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】顕微鏡
(51)【国際特許分類】
G02B 21/00 20060101AFI20241008BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
G02B21/00
G01N21/64 E
G01N21/64 F
(21)【出願番号】P 2023511040
(86)(22)【出願日】2022-03-22
(86)【国際出願番号】 JP2022013324
(87)【国際公開番号】W WO2022210133
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-05-22
(31)【優先権主張番号】P 2021058891
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土田 翔大
(72)【発明者】
【氏名】森下 康徳
(72)【発明者】
【氏名】忍足 優太
【審査官】岡田 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-177495(JP,A)
【文献】国際公開第2017/199407(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 19/00-21/00
G02B 21/06-21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕微鏡であって、
標本に励起光を照射する照明光学系と、
前記標本から発せられた蛍光を検出する検出器と、
蛍光を前記検出器に導く観察光学系とを有し、
前記観察光学系は、
光が入射する位置に応じて反射および透過する波長特性が可変する第1の光学フィルタと、
前記第1の光学フィルタで反射された光の光路に配され、第1の方向に沿った位置に対して透過の境界波長が変化し、前記反射した光の入射する位置における第1の境界波長より長波長の光を透過する第2の光学フィルタと、
前記第1の光学フィルタで反射された光の光路に配され、前記第1の方向に沿った位置に対して透過の境界波長が変化し、前記反射した光の入射する位置における第2の境界波長より短波長の光を透過する第3の光学フィルタと
を含み、
前記第1の境界波長は、前記第2の境界波長より短波長であ
って、
前記第2の光学フィルタおよび前記第3の光学フィルタのいずれか一方に対し他方が前記第1の方向に交差する面内で傾斜して配される顕微鏡。
【請求項2】
顕微鏡であって、
標本に励起光を照射する照明光学系と、
前記標本から発せられた蛍光を検出する検出器と、
蛍光を前記検出器に導く観察光学系とを有し、
前記観察光学系は、
光が入射する位置に応じて反射および透過する波長特性が可変する第1の光学フィルタと、
前記第1の光学フィルタで反射された光の光路に配され、第1の方向に沿った位置に対して透過の境界波長が変化し、前記反射した光の入射する位置における第1の境界波長より長波長の光を透過する第2の光学フィルタと、
前記第1の光学フィルタで反射された光の光路に配され、前記第1の方向に沿った位置に対して透過の境界波長が変化し、前記反射した光の入射する位置における第2の境界波長より短波長の光を透過する第3の光学フィルタと
を含み、
前記第1の境界波長は、前記第2の境界波長より短波長であって、
前記観察光学系は、前記第1の光学フィルタで反射された光を、前記第2の光学フィルタと前記第3の光学フィルタとの間に集光する凹面鏡を更に含む顕微鏡。
【請求項3】
顕微鏡であって、
標本に励起光を照射する照明光学系と、
前記標本から発せられた蛍光を検出する検出器と、
蛍光を前記検出器に導く観察光学系とを有し、
前記観察光学系は、
光が入射する位置に応じて反射および透過する波長特性が可変する第1の光学フィルタと、
前記第1の光学フィルタで反射された光の光路に配され、第1の方向に沿った位置に対して透過の境界波長が変化し、前記反射した光の入射する位置における第1の境界波長より長波長の光を透過する第2の光学フィルタと、
前記第1の光学フィルタで反射された光の光路に配され、前記第1の方向に沿った位置に対して透過の境界波長が変化し、前記反射した光の入射する位置における第2の境界波長より短波長の光を透過する第3の光学フィルタと
を含み、
前記第1の境界波長は、前記第2の境界波長より短波長であって、
前記観察光学系は、前記第1の光学フィルタで反射された光を平行光束にして前記第2の光学フィルタおよび前記第3の光学フィルタに入射させる凹面鏡を更に含む顕微鏡。
【請求項4】
前記第1の光学フィルタは、前記第1の方向に沿った位置に応じて前記波長特性が異なる請求項
1から3のいずれか1項に記載の顕微鏡。
【請求項5】
前記第1の光学フィルタは、前記入射する光に対し、前記第1の方向に交差する面内で、45度未満で傾斜して配される請求項
4に記載の顕微鏡。
【請求項6】
前記第2の光学フィルタおよび前記第3の光学フィルタは前記第1の方向に沿って移動可能である請求項1から
5のいずれか1項に記載の顕微鏡。
【請求項7】
前記第1の光学フィルタは、前記第1の方向に沿って移動可能である請求項1から
6のいずれか1項に記載の顕微鏡。
【請求項8】
前記第1の方向は重力方向である請求項1から
7のいずれか1項に記載の顕微鏡。
【請求項9】
前記観察光学系は、
前記第1の光学フィルタを透過した光が入射し、少なくとも一部の光を反射する反射素子と、
前記反射素子で反射された光の光路に配され、前記第1の方向に沿った位置に対して境界波長が変化し、前記反射した光の入射する位置における第3の境界波長より長波長の光を透過する第4の光学フィルタと、
前記反射素子で反射された光の光路に配され、前記第1の方向に沿った位置に対して境界波長が変化し、前記反射した光の入射する位置における第4の境界波長より長波長の光を透過する第5の光学フィルタと
をさらに含み、
前記第3の境界波長は、前記第4の境界波長より短波長である請求項1から
8のいずれか1項に記載の顕微鏡。
【請求項10】
前記反射素子は、光が入射する位置に応じて反射および透過する波長特性が可変する第6の光学フィルタ、又は、全反射鏡である請求項
9に記載の顕微鏡。
【請求項11】
前記第1の光学フィルタ、前記第2の光学フィルタ、及び前記第3の光学フィルタは第1ユニット内に格納され、
前記第6の光学フィルタ又は前記反射素子、前記第4の光学フィルタ、及び前記第5の光学フィルタは第2ユニット内に格納され、
前記第1ユニット及び前記第2ユニットは挿脱可能に構成されている
請求項
10に記載の顕微鏡。
【請求項12】
前記第1の光学フィルタで反射された光の一部であって、前記第2の光学フィルタ及び第3の光学フィルタを経た光を受光する第1検出器と、
前記第1の光学フィルタを透過した光の一部を受光する第2検出器と
をさらに備え、
前記第1検出器の受光面及び前記第2検出器の受光面は、同じ方向を向いている請求項1から
11のいずれか一項に記載の顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
波長特性が調整可能である帯域通過フィルタを備える蛍光顕微鏡がある(例えば、特許文献1参照)。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開2000-056228号公報
【一般的開示】
【0003】
本発明の第1の態様においては、顕微鏡であって、標本に励起光を照射する照明光学系を有してよい。標本から発せられた蛍光を検出する検出器を有してよい。蛍光を検出器に導く観察光学系を有してよい。観察光学系は、光が入射する位置に応じて反射および透過する波長特性が可変する第1の光学フィルタを有してよく、第1の光学フィルタで反射された光の光路に配され、第1の方向に沿った位置に対して透過の境界波長が変化し、反射した光の入射する位置における第1の境界波長より長波長の光を透過する第2の光学フィルタを有してよく、第1の光学フィルタで反射された光の光路に配され、第1の方向に沿った位置に対して透過の境界波長が変化し、反射した光の入射する位置における第2の境界波長より短波長の光を透過する第3の光学フィルタを有してよい。第1の境界波長は、第2の境界波長より短波長であってよい。
【0004】
第1の光学フィルタは、第1の方向に沿った位置に応じて波長特性が異なってよい。第1の光学フィルタは、入射する光に対し、第1の方向に交差する面内で、45度未満で傾斜して配されてよい。第2の光学フィルタおよび第3の光学フィルタは第1の方向に沿って移動可能であってよい。第1の光学フィルタは、第1の方向に沿って移動可能であってよい。第1の方向は重力方向であってよい。第2の光学フィルタおよび第3の光学フィルタのいずれか一方に対し他方が第1の方向に交差する面内で傾斜して配されてよい。観察光学系は、第1の光学フィルタで反射された光を、第2の光学フィルタと第3の光学フィルタとの間に集光する凹面鏡を更に含んでよい。観察光学系は、第1の光学フィルタで反射された光を平行光束にして第2の光学フィルタおよび第3の光学フィルタに入射させる凹面鏡を更に含んでよい。
【0005】
観察光学系は、第1の光学フィルタを透過した光が入射し、少なくとも一部の光を反射する反射素子を有してよく、反射素子で反射された光の光路に配され、第1の方向に沿った位置に対して境界波長が変化し、反射した光の入射する位置における第3の境界波長より長波長の光を透過する第4の光学フィルタを有してよく、反射素子で反射された光の光路に配され、第1の方向に沿った位置に対して境界波長が変化し、反射した光の入射する位置における第4の境界波長より長波長の光を透過する第5の光学フィルタを有してよい。第3の境界波長は、第4の境界波長より短波長であってよい。
【0006】
反射素子は、光が入射する位置に応じて反射および透過する波長特性が可変する第6の光学フィルタ、又は、全反射鏡であってよい。第1の光学フィルタ、第2の光学フィルタ、及び第3の光学フィルタは第1ユニット内に格納されていてよく、第6の光学フィルタ又は反射素子、第4の光学フィルタ、及び第5の光学フィルタは第2ユニット内に格納されていてよい。第1ユニットおよび第2ユニットは挿脱可能に構成されていてよい。第1の光学フィルタで反射された光の一部であって、第2の光学フィルタ及び第3の光学フィルタを経た光を受光する第1検出器を有してよく、第1の光学フィルタを透過した光の一部を受光する第2検出器を有してよい。第1検出器の受光面及び第2検出器の受光面は、同じ方向を向いていてよい。
【0007】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】標本210を観察する顕微鏡101の構造を示す模式図である。
【
図2】観察系後段140及び検出部160の一例を模式的に示す。
【
図3】一例としてLVF254の機能を示す模式図である。
【
図4】波長選択ユニット151を透過して検出器161で検出可能な波長範囲を説明する概略図である。
【
図5】4つの波長選択ユニット151、152、153、154の検出可能範囲を模式的に示す。
【
図6】波長選択ユニット151において検出可能範囲を変更することを模式的に示す。
【
図8】顕微鏡101の観察手順を示すフローチャートの一例である。
【
図9】イメージングチャンネルを作成・編集するステップS12の詳細を示すフローチャートである。
【
図11】イメージングチャンネルに対してLVF等を設定するステップS14の設定画面310の一例を示す。
【
図12】イメージングチャンネルと実チャンネルとの組み合わせを設定するステップS16の詳細を示すフローチャートである。
【
図14】レーザ強度を設定するステップS18および検出器の感度設定するステップS18の設定画面330の一例である。
【
図15】画像を取得するための内部制御であるステップS24の詳細を示すフローチャートである。
【
図16】顕微鏡101を用いて蛍光スペクトル分布を取得するための流れ図である。
【
図18】
図17に示した設定画面450で設定された観察条件での取得波長範囲および検出波長範囲を説明する模式図である。
【
図19】顕微鏡101で検出された標本210のある位置での蛍光スペクトルプロファイルを例示する図である。
【
図20】
図17から
図19の実施形態において取得された画像を表示する表示画像460を示す例である。
【
図21】イメージングチャンネル毎に
図17に示した設定画面450で設定された観察条件での取得波長範囲および検出波長範囲を説明する模式図である。
【
図22】顕微鏡101を用いて複数の蛍光スペクトル分布を取得する例を実行するタイミングチャートである。
【
図24】さらに別例の観察系後段144を模式的に示す。
【
図25】観察系後段140の変形例を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0010】
図1は、標本210を観察する顕微鏡101の構造を示す模式図である。顕微鏡101は、共焦点顕微鏡であり、光源110、照明光学系220、観察光学系240、検出部160、情報処理装置170および制御装置180を備える。照明光学系220と観察光学系240とは一部の光学素子を共有する。なお、顕微鏡101は、これらすべての構成を有する必要はなく、例えば、光源110を有していなくてもよいし、情報処理装置170を有していなくてもよいし、制御装置180を有していなくてもよい。
【0011】
光源110は、標本210を蛍光で観察する場合の励起光として使用される波長のレーザ光を射出する。光源110から射出された励起光は、照明光学系220に入射する。
【0012】
照明光学系220は、標本210に励起光を照射する。照明光学系220は、ダイクロイックミラー121、ガルバノスキャナ130、リレーレンズ122、レンズ192、対物レンズ191を有する。ダイクロイックミラー121は、光源110から射出された励起光の波長を反射し、それ以外の波長の光を透過する特性を有する。光源110から入射した励起光は、ダイクロイックミラー121に反射されて伝播方向を変え、ガルバノスキャナ130に入射される。
【0013】
ガルバノスキャナ130は、入射した光を反射する一対のガルバノミラー131、132を有する。ガルバノミラー131は
図1のx軸回りに回転可能であり、ガルバノミラー132はy軸回りに回転可能である。ガルバノスキャナ130に入射した励起光は、一対のガルバノミラー131、132により反射された後、リレーレンズ122、レンズ192を介して、対物レンズ191に入射する。
【0014】
リレーレンズ122からの励起光は、レンズ192により平行光束にされた後、対物レンズ191により標本210上に集光される。
【0015】
ガルバノスキャナ130のガルバノミラー131、132の向きを制御部133で制御することにより、標本210上において励起光の集光位置を変えることができる。よって、ガルバノスキャナ130により標本210上において励起光を二次元的(
図1のx、y方向)に走査する。
【0016】
標本210には例えば蛍光物質が含まれており、その場合には標本210上の集光位置から蛍光が放射される。ただし、標本210から放射される放射光は、励起光の反射光等、蛍光以外の成分も含む。
【0017】
標本210から放射された放射光は、対物レンズ191、レンズ192を通過してリレーレンズ122に入射する。レンズ192の焦点位置と、標本210における励起光の集光位置とは、光学的に共役である。リレーレンズ122に入射した放射光は、ガルバノスキャナ130を通過してダイクロイックミラー121に入射する。
【0018】
放射光のうち、励起光と同じ波長の成分は、ダイクロイックミラー121に反射されて、光源110側に導かれる。放射光のうち、励起光と異なる波長を有する成分は、ダイクロイックミラー121を透過する。
【0019】
なお、ダイクロイックミラー121は、励起光の波長成分を完全に取り除くことができるわけではない。このため、ダイクロイックミラー121を透過した放射光には、依然として励起光波長の成分も含まれている。
【0020】
観察光学系240は、上記ダイクロイックミラー121、ガルバノスキャナ130、リレーレンズ122、レンズ192および対物レンズ191を照明光学系220と共有する。観察光学系240はさらに、反射ミラー123、集光レンズ124、ピンホール125、コリメートレンズ126、観察系後段140及び検出部160を有する。
【0021】
ダイクロイックミラー121を通過して反射ミラー123に反射された放射光は、集光レンズ124を通じて、ピンホール125に入射する。ここで、ピンホール125は、対物レンズ191の焦点位置と共役な位置に配されている。このため、ピンホール125は、対物レンズ191の焦点である集光位置から放射された光に限って通過させ、その他の点からの光をノイズとして遮光する。
【0022】
観察光学系240は、標本210から発せられた蛍光を検出部160に導く。検出部160は、標本210から発せられた蛍光を検出する。検出部160は、検出した蛍光の強度に応じた電気信号を、情報処理装置170に出力する。観察光学系240の観察系後段140および検出部160の詳細は後述する。
【0023】
情報処理装置170は、制御部171、表示部172、入力部173、174を有する。制御部171は、検出部160に対するインターフェイスを有すると共に、検出部160から取得した信号から画像を生成する画像処理を実行し、更に、生成された画像を格納して保存する。
【0024】
表示部172は、LCDパネル、CRT装置等により形成され、生成された画像をユーザに表示する他に、顕微鏡101に各種設定を入力する場合のユーザインターフェースの表示等も担う。入力部173、174は、キーボード等の文字入力装置、マウス等のポインティングデバイスを含み、ユーザが顕微鏡101に設定、動作の指示等を入力する場合に使用される。
【0025】
更に、情報処理装置170は、制御装置180と通信して、制御装置180に対するユーザインターフェースとしても使用される。制御装置180は、ガルバノスキャナ130、観察系後段140および検出部160等の動作に関する設定値を保持して、これらの動作を制御する。また、制御装置180は、情報処理装置170の負荷を軽減する目的で、情報処理装置170における画像処理等の全部または一部を実行してもよい。つまり、制御装置180は、情報処理装置170の制御部171で行う動作の全部または一部を実行してもよい。 また、情報処理装置170の制御部171は、制御装置180で行う動作の全部または一部を実行してもよい。
【0026】
図2は、観察系後段140及び検出部160の一例を模式的に示す。観察系後段140は4つの波長選択ユニット151、152、153、154を有する。さらに、検出部160は4つの波長選択ユニット151、152、153、154のそれぞれに対応して4つの検出器161、162、163、164を有する。
【0027】
波長選択ユニット151は、LVF(Linear Variable Filter)250、凹面鏡252、一対のLVF254、256、集光レンズ258を有する。このうち、LVF250、254、256は、予め定められた方向(図中のz方向)に沿って膜厚が変化する誘電体層を透明基板上に有し、光が透過する位置に応じて透過および反射の波長特性が変化する。
【0028】
図3は、一例としてLVF254の機能を示す模式図である。LVF254は、予め定められた方向(図中のz方向)に沿って膜厚が変化する誘電体層を透明基板上に有し、光が入射する位置に応じて反射および透過する波長特性が変化する。より詳しくは、光が入射するz方向の位置によって、透過する波長と反射する波長との境界である境界波長が変化する。よって、LVF254を駆動部402によりz方向に移動させて、固定された光路からの入射光に対する波長特性を変化させる。LVF254と駆動部402とにより、透過および反射の波長特性が動的に可変な光学フィルタ400を形成している。
【0029】
図3の右側に示すグラフは、LVF254の波長特性を示す。
図3に示されるグラフにおいて、縦軸は波長、横軸は透過率を示す。
図2に示される波長特性を有するLVF254は、境界波長よりも長い波長の光を透過し、境界波長よりも波長が短い光を反射するロングパスフィルタである。
【0030】
図2に戻り、コリメートレンズ126からの光が入射するLVF250は、入射した光の波長により反射および透過の特性が異なる反射素子、すなわち、ダイクロイックミラーとして機能する。LVF250は、境界波長よりも短い波長の光を反射し、境界波長よりも波長が長い光を透過するロングパスフィルタである。LVF250により入射された光路が波長に応じて2分割される。
【0031】
LVF250は
図3に示した光学フィルタ400と同様に、駆動部によりz方向に移動可能である。これにより入射光に対する境界波長を動的に変化させることができる。
【0032】
LVF250は、コリメートレンズ126から入射する光に対しxy面内で45度未満、好ましくは22.5度以下で傾斜して配される。すなわち、LVF250への光の入射角(すなわち、LVF250の入射面の法線と主光線方向との成す角)が45度未満、好ましくは22.5度以下となるように受光面がz軸周りに回転している。このように入射角を小さくすることにより、LVF250に入射するスポット形状の楕円率が1に近い値に維持されスポット形状の面積が小さくなる。より詳細にはLVF250の入射面に入射するスポット形状は入射面を傾ける方向に伸びた楕円形状となる。この楕円形状の短軸は光束直径Dのままである一方、長軸はD/cosθ(θは入射角)となる。したがって、θが45度よりも22.5度の方がスポット形状の面積は小さくなり、楕円率も1に近い。よって、LVF250での入射スポットにおけるスペクトル分解能の低下を抑制することができる。
【0033】
さらに、LVF250の入射面はz軸周りに回転した位置にある。また、LVF250で境界波長が変化する方向はz方向である。これにより、楕円の長軸はz軸に直交する方向、すなわち、境界波長が変化しない方向に広がる。したがって、LVF250での入射スポットにおけるスペクトル分解能の低下をより抑制することができる。
【0034】
さらに、LVF250を駆動する方向もz方向である。よって、z方向が鉛直方向すなわち重力方向である場合には、LVF250を駆動する機械系のガタが自重によって下方に寄せられるから、駆動による位置再現性が高く、位置決め精度を高くすることができる。
【0035】
凹面鏡252は波長選択ユニット151の光路において、LVF250と一対のLVF254、256との間に配されている。すなわち、LVF250で反射された短波長側の光は凹面鏡252に入射する。凹面鏡252は、反射した光を一対のLVF254、256の間に集光させる。これにより、一対のLVF254、256の両方に入射する光束のスポット径を小さくして、それぞれのLVF254、256でのスペクトル分解の低下を抑制することができる。さらに、コリメートレンズ126の焦点距離を凹面鏡252の焦点距離よりも小さくすると、一対のLVF254、256のそれぞれに入射するときのスポット径を小さくすることができるので、スペクトル分解能の低下をさらに抑制することができる。
【0036】
LVF254は、z方向に沿った位置に対して境界波長が変化するように配されたロングパスフィルタである。LVF256は、z方向に沿った位置に対して境界波長が変化するように配されたショートパスフィルタである。LVF254の境界波長は、LVFの256の境界波長より短波長である。このような一対のLVF254、256が向かい合って配されているので、特定の波長範囲を透過するバンドパスフィルタとして機能する。
【0037】
LVF254、256はLVF250と同様に、それぞれ駆動部によりz方向に移動可能であり、入射位置が固定された入射光に対する境界波長を動的に変化させることができる。なお、一対のLVF254、256は互いにz方向に沿った位置の境界波長の傾向が同様となるよう配されることが好ましい。すなわち、LVF254、256は+z方向に進んだ位置ほど両方の境界波長が短波長側に(または両方の境界波長が長波長側に)シフトするように配されることが好ましい。
【0038】
一対のLVF254、256を透過した光は集光レンズ258で集光されて、検出器161に入射する。検出器161は、例えば光電子増倍管(Photomultiplier Tube)等の高感度な光電気変換素子であり、検出した蛍光に応じた電気信号を制御装置180を介して情報処理装置170に出力する。
【0039】
図4は、波長選択ユニット151を透過して検出器161で検出可能な波長範囲を説明する概略図である。ここで、波長選択ユニット151に関して、LVF250の透過率よりも反射率に着目すべきであるので縦軸は反射率を示した。
【0040】
図4に示されるように、LVF250で短波長側を反射し、LVF254で短波長側をカット(遮光)し、LVF256で長波長側をカット(遮光)する。さらに、LVF254の境界波長は、LVF250の境界波長およびLVF256の境界波長より短波長である。これにより、予め定められた波長範囲を透過させて検出器161の検出可能範囲とすることができる。さらに、LVF250をダイクロイックミラーとして機能させることにより、LVF250を透過した光を波長選択ユニット152等の後段に受け渡して他の波長帯域も検出することができる。
【0041】
波長選択ユニット151よりも後段には、波長選択ユニット152および153が配される。波長選択ユニット152は、LVF260、凹面鏡262、一対のLVF264、266、集光レンズ268を有する。波長選択ユニット153は、LVF270、凹面鏡272、一対のLVF274、276、集光レンズ278を有する。これら波長選択ユニット152および153の構成は、後述する点を除き波長選択ユニット151と同様の構成を有するので説明を省略する。
【0042】
波長選択ユニット153の後段にはさらに波長選択ユニット154が配される。波長選択ユニット154は、凹面鏡282、一対のLVF284、286、集光レンズ288を有する。波長選択ユニット154も、LVF250を有しない点および後述する点を除いて波長選択ユニット151と同様の構成を有するので説明を省略する。なお、凹面鏡282は特定の波長を透過させるものではないという観点から、全反射鏡であるともいえる。
【0043】
検出部160には、波長選択ユニット152、153、154からの光をそれぞれ受光する検出器162、163、164が配される。これら検出器162、163、164は検出器161と同様の構成であるので説明を省略する。なお、
図2の形態において、検出器161、162、163,164にはいずれもy方向から光が入射する。言い換えると、検出器161、162、163,164の検出面はいずれもzx平面に平行であって、同じ方向を向いている。
【0044】
図5は、4つの波長選択ユニット151、152、153、154の検出可能範囲を模式的に示す。なお、図を簡略化するためにダイクロイックミラーとして機能しているLVF250、260、270の透過率および反射率の図示を省略した。
【0045】
図5に示す例において、4つの波長選択ユニット151、152、153、154の検出可能範囲は短波長側から順に設定されている。すなわち、波長選択ユニット151の一対のLVF254,256により検出可能範囲1が設定され、それよりも長波長側に波長選択ユニット152の一対のLVF264,266により検出可能範囲2が設定される。同様に、検出範囲2よりも長波長側に、波長選択ユニット153の一対のLVF274,276により検出可能範囲3が設定され、それよりも長波長側に波長選択ユニット154の一対のLVF284,286により検出可能範囲4が設定される。
【0046】
図5に示す例によれば、観察系後段140および検出部160により、標本210からの蛍光を4つの異なる波長範囲で検出することができる。これは4つの異なる検出のチャンネルを有しているということもできる。以降の説明においてこれらのチャンネルの各々が実体的な光学系を有するという観点からこれらを実チャンネルと呼ぶことがある。
【0047】
図6は、波長選択ユニット151において検出可能範囲を変更することを模式的に示す。なお、図を簡略化するためにダイクロイックミラーとして機能しているLVF250の透過率および反射率の図示を省略した。
【0048】
波長選択ユニット151に含まれるLVF250、254、256はいずれも、境界特性が変化するところのz方向に沿って移動可能である。したがって、例えばLVF250、254、256をそれぞれ対応するz位置に配することにより、
図6の検出可能範囲Aを設定することができるとともに、LVF250、254、256をそれぞれ対応する他のz位置に配することにより、
図6の検出可能範囲Bを設定することができる。すなわち、一つの波長選択ユニット151の光学系において、時分割で複数の異なる波長範囲を検出することができる。
【0049】
この場合に、LVF254とLVF256との両方をz軸に沿って同じ方向に同じ量で移動させると、検出可能範囲が帯域幅をほぼ保ったまま短波長側または長波長側にシフトする。一方、LVF254とLVF256との少なくとも一方をz軸に沿って相対的に逆方向に移動させると、検出可能範囲の帯域幅が広くまたは狭くなる。
【0050】
なお他の波長選択ユニット152、153、154においても同様の方法により時分割で複数の異なる波長範囲を検出することができる。以降の説明において、異なる波長範囲を時分割で検出する場合の各検出時をパスと呼ぶことがある。
【0051】
図7は、光源110を模式的に示す。光源110は、互いに異なる波長の光を出射する4つのレーザ光源111、112、113、114を有する。例えばレーザ光源111から射出されるレーザ光の波長が405nmであり、レーザ光源112から射出されるレーザ光の波長が488nmであり、レーザ光源113から射出されるレーザ光の波長が561nmであり、レーザ光源114から射出されるレーザ光の波長が640nmである。
【0052】
ミラー115はレーザ光源114から出射したレーザ光を反射する。ダイクロイックミラー116は、ミラー115で反射されたレーザ光を透過するとともに、レーザ光源113から出射したレーザ光を反射する。ダイクロイックミラー117は、ダイクロイックミラー116を透過および反射したレーザ光を透過するとともに、レーザ光源112から出射したレーザ光を反射する。ダイクロイックミラー118は、ダイクロイックミラー117を透過および反射したレーザ光を反射するとともに、レーザ光源111から出射したレーザ光を透過する。
【0053】
光源110から出射したレーザ光は
図1に示したダイクロイックミラー121に入射する。ダイクロイックミラー121は、ユーザにより希望する、標本面に同時入射する励起光の数や蛍光取得波長範囲の設定変更に応じて切り替える事があり、数種類が用意され、ホイールの上に配置されている。
【0054】
図8は、顕微鏡101の観察手順を示すフローチャートの一例である。まず、ユーザにより、標本210に対して蛍光観察を実行する領域を顕微鏡101が指定される(ステップS10)。
【0055】
次に、ユーザにより希望する取得波長範囲が指定され、イメージングチャンネルとして作成及び編集される(S12)。イメージングチャンネルについては後述する。
【0056】
上記イメージングチャンネルに基づいて対応する一対のLVFが設定され(S14)、イメージングチャンネルと実チャンネルとの組み合わせが設定される(S16)。その後、各イメージングチャンネルについてレーザ強度が設定され(S18)、検出器の感度が設定される(S20)。
【0057】
設定が終わったら画面取得ボタンが押し下げられるまで待機する(S22:No)。画面取得ボタンが押し下げられたら(S22:Yes)、内部制御により画像を取得して(S24)、動作が終了する。
【0058】
図9は、イメージングチャンネルを作成・編集するステップS12の詳細を示すフローチャートであり、
図10は、その場合の設定画面300の一例を示す。
【0059】
まず設定画面300が表示部172に表示され、ユーザからの入力を受け付ける。入力欄301は蛍光色素を選択する欄であり、入力欄302、303はそれぞれ取得波長範囲の短波長側および長波長側の波長を入力する欄である。
【0060】
入力欄301のタブが選択されると、発光スペクトル情報を発光色素から選択するものと解され(S100:Yes)、当該入力欄301に選択可能な蛍光色素の一覧が表示される。選択可能な蛍光色素は対応する取得波長範囲と共に予め制御部171のメモリに格納されている。一覧の中から発光色素がユーザによる選択を受け付ける(S102)。
【0061】
一方、入力欄301のタブが選択されない場合は、発光スペクトル情報を発光色素から選択しないものと解され(S100:No)、入力欄302、303へユーザから数値が入力されることにより、取得波長範囲、すなわち発光の長波長側および短波長側の波長の設定を受け付ける(S104)。ステップS102またはS104の次に、入力欄304でイメージングチャンネル名の設定を受け付ける(S106)。
【0062】
上記の通りイメージングチャンネルが作成および編集される。当該イメージングチャンネルは、この時点では顕微鏡101の実際の光学系、より詳細には実チャンネルとは紐づいていない、いわば仮のチャンネルであるともいえる。
図10の例では、蛍光色素は特定されておらず、取得波長範囲「400nmから450nm」が、名前「IM_Ch1」で特定されるイメージングチャンネルとして設定されている。
【0063】
図11は、イメージングチャンネルに対して一対のLVFを設定するステップS14の設定画面310の一例を示す。
図11の例では、2つのイメージングチャンネル「IM_Ch1」と「IM_Ch2」について、それぞれ対応する発光スペクトル341、345、励起光340、343、検出可能範囲342、346が横軸の波長に対して模式的に表されている。さらにイメージングチャンネル「IM_Ch2」において、検出可能範囲346の中に励起光343が入っていることに対応して励起光343の周囲に検出禁止範囲347が表示されている。
【0064】
発光スペクトル341、345のプロファイルおよび励起光340、343の波長は、対応する蛍光色素と共に予め制御部171のメモリに格納されている。なお、イメージングチャンネルにおいて取得波長範囲の波長が数値として設定された場合には、当該範囲を最大値、その他の範囲を最小値(典型的にはゼロ)とする矩形で発光スペクトルを設定画面310に表してもよい。
【0065】
検出可能範囲342、346は、発光スペクトル341、345に対応してデフォルトで表示される。例えば、発光スペクトル341、345の半値幅となるように検出可能範囲342、346が初期設定される。さらに、検出可能範囲342、346の左右の破線は、ユーザによってマウスポインターでドラッグアンドドロップ等でデフォルトの表示位置から移動可能である。
【0066】
ここで左の破線はロングパスフィルタのLVFの境界波長に対応し、右の破線はショートバスフィルタのLVFの境界波長に対応する。したがって、ユーザによる設定後にOKボタン305が押下されることにより、イメージングチャンネル「IM_Ch1」について、その時点での検出可能範囲342の左の破線の位置の波長がロングパスフィルタのLVFの境界波長に設定され、右の破線の位置の波長がショートバスフィルタのLVFの境界波長に設定される。
【0067】
さらに、ダイクロイックミラーとして機能するLVFの境界波長は、検出可能範囲の長波長側を決めている上記ショートパスフィルタのLVFの境界波長に対して予め定められた条件で自動的に設定される。例えば、ダイクロイックミラーとして機能するLVFの境界波長は、ショートパスフィルタのLVFの境界波長(図中の検出可能範囲342の右側の破線)に対して10nmだけ長波長側の波長に設定される。
【0068】
イメージングチャンネル「IM_Ch2」に対しても同様に設定される。なお、キャンセルボタン306の押下により、イメージングチャンネルを設定する
図10の設定画面300に戻る。
【0069】
図12は、イメージングチャンネルと実チャンネルとの組み合わせを設定するステップS16の詳細を示すフローチャートであり、
図13は、その場合の設定画面320の一例を示す。
図13は、4つのイメージングチャンネルが作成された例を示しており、それに対応して表示欄352に4つのイメージングチャンネル名「IM_Ch1」等が表示されている。
【0070】
表示欄350には、顕微鏡101で使用が可能なレーザが表示されている。
図7の例において4つのレーザ光源111、112、113、114が使用可能であることに対応して、
図13の表示欄350には、それぞれの波長「405nm」、「488nm」、「561nm」、「640nm」とともに4つのレーザ光源が模式的に表されている。
【0071】
表示欄356には、顕微鏡101で使用が可能な検出器が表示されている。
図2の例において4つの検出器161、162、163、164が使用可能であることに対応して、
図13の表示欄356には、4つの検出器が模式的に表されている。この場合に、検出器の種類、例えば光電子増倍管であればその旨を示す「PMT」などを表示してもよい。
【0072】
レーザ光源とイメージングチャンネルとの紐づけを受け付ける(S120)。この場合に、表示欄350のレーザ光源のいずれかがドラッグされると当該レーザ光源からドラッグ位置まで線が表示されて、表示欄352のいずれかのイメージングチャンネル上でドロップされることにより、当該レーザ光源とイメージングチャンネルとの間に設定画面320で線が引かれてそれらが紐づけられたことが示される。
【0073】
この場合に、レーザ光源とイメージングチャンネルとは、イメージングチャンネル設定時の取得波長範囲の最小波長値よりも、短波長にあるレーザ光源であれば紐づけが可能であり、1対1に紐づけられてもよいし、1対N、N対1(Nは2以上の整数)で紐づけられてもよい。
図13の例ではレーザ光源とイメージングチャンネルとは1対1に紐づけられている。なお、イメージングチャンネルが先に選択され、それと紐づけるレーザ光源が後から選択されてもよい。
【0074】
イメージングチャンネルと検出器との紐づけを受け付ける(S122)。この場合に、イメージングチャンネルと検出器との紐づけの方法は、レーザ光源とイメージングチャンネルとの紐づけと同様の方法であってよい。
【0075】
この場合に、イメージングチャンネルと検出器とは1対1に紐づけられてもよいし、1対N、N対1で紐づけられてもよい。
図13の例ではイメージングチャンネルと検出器とは2対1に紐づけられている。
【0076】
ここで、イメージングチャンネルと検出器とが1対1以外で紐づけられた場合、LVFを駆動させたり、フィルタホイールによるフィルタキューブを切替させたり、光学素子を配置する制御時間を必要とする為、標本210からの蛍光を時間的に同時に検出できないことがある。また、紐づけ対象の検出器の上流光路(検出器に到達するまでの光路)に、ダイクロイックミラー(LVFまたはフィルタキューブ内臓品ダイクロイックミラー)が配置されている状況で、そのダイクロイックミラーがロングパス特性である場合には、紐づけ対象の検出器によって検出可能な範囲はダイクロイックミラーの境界波長よりも長波長となる。
【0077】
説明例として、
図2の場合、紐づけ対象の検出器164の場合、上流光路(検出器に到達するまでの光路)に、ダイクロイックミラー(LVFまたはフィルタキューブ内臓品ダイクロイックミラー)は、270、260、250なる。
【0078】
イメージングチャンネルの取得波長範囲が、紐づけ対象の検出器の上流光路に配置されたダイクロイックミラー(複数存在することもある)の境界波長より、長波長になるまで、ダイクロイックミラーの特性を変更する制御(LVFを駆動、フィルターキューブ切替)をしない限り、イメージングチャンネルと紐づけ対象の検出器とは紐づけられない。複数の検出器のうち、蛍光を受光しない検出器が存在する場合は、その検出器の上流光路中の最も近いダイクロイックミラーによって入射した蛍光が分光(一部透過、残り反射)されず、全て透過するように、LVFによるダイクロイックミラーの場合は、境界波長を最も短波長側に移動させる、または、フィルタキューブに内蔵されたダイクロイックミラーの場合は、フィルタキューブが無いポジションまでホイールを回転させる、の設定が自動的にされる。紐づけられない場合には、エラーがユーザに通知される。
【0079】
そこで、それらを時分割で検出するためにパスが設定される。
図13の例では、1つの検出器「D_162」に2つのイメージングチャンネル「IM_Ch1」、「IM_Ch2」が紐づけられている。よって、2つのパスを設定し、時間的に先の「パス1」でイメージングチャンネル「IM_Ch1」における蛍光を検出器「D_162」で検出し、時間的に後の「パス2」でイメージングチャンネル「IM_Ch2」における蛍光を検出器「D_162」で検出する。
【0080】
以上により、イメージングチャンネルと顕微鏡101の実チャンネルとの組み合わせが設定される。
【0081】
図14は、レーザ強度を設定するステップS18および検出器の感度設定するステップS20の設定画面330の一例である。表示欄331、332、333には、それまでに設定したイメージングチャンネルおよび検出波長範囲が表示されている。
【0082】
設定画面330はさらに、イメージングチャンネルに対応した検出器感度(例えば印加電圧)を設定するためのスライダ334および励起光の強度を設定するためのスライダ335を有する。入力部174等で当該スライダ334、335をドラッグして左右に移動させることで、イメージングチャンネルごとの感度および励起光強度が設定される。さらに、設定画面330の画面取得ボタン337が押し下げられると、
図8のステップS22に基づいて、画像を取得するための内部制御が行われる(S24)。
【0083】
図15は、画像を取得するための内部制御であるステップS24の詳細を示すフローチャートである。まず最初のパスに対応するイメージングチャンネルに対応して、実チャンネルとの組み合わせに基づき、LVF250、260、264、266等のz方向位置などの光学系が設定される。
【0084】
制御装置180は、光源110のうちの指定されたレーザ光源111等で励起光の出力を開始し(S140)、指定された観察領域に励起光が照射されるようにガルバノミラー131、132を駆動する(S142、S144)。ここでレーザ光源111等は、検出しようとする蛍光のイメージングチャンネルに基づいて指定される。これにより、検出部160は、当該イメージングチャンネルに対応した検出可能範囲に含まれる蛍光を検出する(S144)。
【0085】
こうして、ステップS144およびステップS146の一連の動作により、集光位置から発生した蛍光の強度が検出されると、制御装置180は、検出された強度を保存した上で、当初指定された観察領域における1走査線上で指定された画素数の検出が完了したかどうかを判断する(S148)。
【0086】
検出した画素数が指定された画素数に達していない場合(S148:NO)、制御装置180は、X座標における検出数をインクリメントして(S150)、制御をステップS144に戻す。これにより、顕微鏡101は、再びガルバノミラー131を駆動して、励起光の集光位置を、同一ライン上の他の画素の位置に移動させ(S144)、再び蛍光の光強度を検出する(S146)。
【0087】
これらステップS144およびステップS146の動作を繰り返し、蛍光の光強度を検出した画素数が指定の画素数に達した場合(S148:YES)、制御装置180は、当初指定された観察領域における走査ライン数の検出が完了したか否かを判断する。(S152)。検出した走査ライン数が指定された走査ライン数に達していない場合(S152:NO)、制御装置180は、Y座標における検出数をインクリメントして(S154)、制御をステップS142に戻す。そこで、制御装置180は、ガルバノミラー130の制御部133を駆動し、励起光の集光位置を他の走査線上に移動させ、再び蛍光の光強度を検出させる。
【0088】
蛍光の光強度を検出した走査ライン数が指定された観察領域の走査線ラインに達した場合(S152:YES)、制御装置180は、検出した蛍光の光強度の値に基づいて、観察領域における観察画像を構築する(S156)。構築された観察画像は、表示部172の設定画面330の表示欄336に表示してもよいし、情報処理装置170に設けられた記憶部(図示せず)に格納してもよい。
【0089】
ステップS156の次に、制御装置180は、指定されたパス数の検出が完了したか否かを判断する。(S158)。検出したパス数が指定されたパス数に達していない場合(S158:NO)、制御装置180は、パス数をインクリメントして(S160)、次のパスに対応するイメージングチャンネルに対応して、実チャンネルとの組み合わせに基づき、LVF250を駆動する等して光学系を設定し(S162)、制御をステップS140に戻す。そこで、制御装置180は、当該イメージングチャンネルで指定されたレーザ光源111等で励起光を出力し、再び蛍光の光強度を検出させる。
【0090】
検出されたパス数が指定されたパス数に達した場合(S162:YES)、制御装置180は、レーザ光源の出力を停止する(S174)。これにより顕微鏡101における観察の動作が終了する。
【0091】
以上、本実施形態の顕微鏡101によれば、4段の波長選択ユニットすなわち4つの実チャンネルを用いて、マルチバンド検出すなわち多色同時検出が可能である。さらに、少なくとも1つの実チャンネルにおいて、例えば、一対のLVF254,256をバンドパスフィルタとして使用しているので、LVF254,256のz方向位置を変更することにより、透過する波長帯域を簡便にできる。それにより、1つの実チャンネルでマルチパス検出すなわち時分割で多色検出が可能である。
【0092】
一対のLVF254,256を備えた実チャンネルでは、一度(一回)に検出する検出波長範囲の幅をより狭くして同様に連続的に蛍光画像を取得することで、標本210の蛍光スペクトル分布を得ることが出来る。
【0093】
図16は、顕微鏡101を用いて蛍光スペクトル分布を取得するための流れ図であり、
図17は
図16に対応した設定画面450を示す。
図16および
図17において、
図1から
図15と同一の構成および動作については同じ参照番号を付して説明を省略する。
【0094】
この観察パターンは、波長選択ユニット151を用いて、一対のLVF254,256を駆動して、複数回蛍光を取得する場合である。ここでは一度に(一回で)検出する波長範囲を20nmとし、それを14回繰り返すことで430nmから710nmまでの蛍光スペクトルプロファイルを取得する。
【0095】
図17の設定画面450は、
図16のステップS12でイメージングチャンネルの作成・編集を行う場合に、表示部172に表示される。入力フィールド411は、光源110により射出される光(励起光)の波長の値を設定できるが、図示の例では、405nmが指定されている。入力フィールド411への入力は、情報処理装置170の入力部173、174を使用できる。
【0096】
入力フィールド412、414は、標本210から放射される蛍光スペクトルの取得波長範囲を数値で設定する場合に入力する領域である。入力フィールド412、414への入力には、情報処理装置170の入力部173、174を使用できる。入力フィールド412は取得波長範囲の短波長端を入力する領域であり、入力フィールド414は長波長端を入力する領域である。図示の例では、波長430nmから710nmの取得波長範囲が設定されている。
【0097】
入力フィールド451は、上記の入力フィールド412、414で設定された取得波長範囲において一度に(一回で)蛍光スペクトルを検出する検出波長範囲を設定する。なお、ここでの検出波長範囲は、蛍光スペクトルプロファイルの波長分解能に相当する。図示の例では、20nm間隔で蛍光強度を検出することが設定されている。よって、この例では、波長430nmから710nmの帯域について、14帯域の検出が指定されることになる。なお、検出波長範囲を設定することに代えて、上記の入力フィールド412、414で設定された取得波長範囲において検出する帯域の数が入力できるようになっていてもよい。この場合には入力された帯域の数に基づいて波長分解能が自動的に設定される。
【0098】
入力フィールド413は、入力フィールド451、412、414において設定された取得波長範囲と波長分解能とがグラフィックで表示されると共に、入力フィールド413に表示されたバーを直接に操作して、取得する波長範囲を入力することもできる。入力フィールド412、414の数値と入力フィールド413に表示されたバーとは連動している。
【0099】
図18は、
図17に示した設定画面450で設定された観察条件での取得波長範囲および検出波長範囲を説明する模式図である。この場合の蛍光スペクトル取得においては、入力フィールド411で指定された波長405nmの励起光が標本210に照射される。また、入力フィールド412、414で指定された波長430nmから710nmまでの取得波長範囲において、入力フィールド451で指定した波長分解能(検出波長範囲)で、20nmおきに14回、蛍光画像を取得する。
【0100】
この場合に、各検出波長範囲において、短波長側がLVF254によりカット(遮光)され、長波長側がLVF256によりカット(遮光)される。言い換えると、制御装置180は、各検出波長範囲の下限から低い波長帯域をLVF254でカット(遮光)し、同範囲の上限よりも高い帯域をLVF256でカット(遮光)させる。また、ひとつの検出波長範囲において蛍光画像を取得すると、LVF254、256の駆動部402をそれぞれ動作させて、検出波長範囲を、すでに蛍光強度を検出した検出波長範囲に隣接した帯域にずらす(
図16のS222、S162)。
【0101】
図19は、顕微鏡101で検出された標本210のある位置での蛍光スペクトルプロファイルを例示する図である。顕微鏡101は、上記のような動作を繰り返すことにより、複数の検出波長範囲について、検出波長範囲毎に蛍光強度を検出する。よって、検出された画像の蛍光強度を横軸波長λ、縦軸強度のグラフにプロットすることにより、
図19に示すように、標本210の各検出位置でのスペクトルプロファイルを生成できる。なお、スペクトルプロファイルは、例えば、領域420に表示される。なお、検出波長範囲毎に検出された蛍光強度(発光強度)を足し合わせた二次元画像を設定画面450の領域419にさらに表示してもよい。
【0102】
図20は、
図17から
図19の実施形態において取得された画像を表示する表示画像460を示す例である。観察画像448は、所定の検出波長範囲で構築された観察画像である。表示画像460は、異なる検出波長範囲で構築された複数の観察画像448をタイル状に表示する複数の画像表示フィールド443を有する。これにより、ユーザは、それぞれの検出波長範囲の観察画像448を一度に観察することができる。
【0103】
さらに、顕微鏡101を用いて、複数の蛍光スペクトル分布を取得する例を説明する。この観察パターンは、波長選択ユニット151、152を用いて、一対のLVF254,256、及び一対のLVF264,266をそれぞれ駆動して、それぞれ複数回蛍光を取得する場合である。波長選択ユニット151は、一度に(一回で)検出する波長範囲を20nmとし、蛍光取得を9回繰り返すことで430nmから610nmまでの蛍光スペクトルプロファイルを取得し、波長選択ユニット152は、一度に(一回で)検出する波長範囲を10nmとし、蛍光取得を6回繰り返すことで650nmから710nmまでの蛍光スペクトルプロファイルを取得する。
【0104】
図16のステップS12でイメージングチャンネルの作成・編集を行う場合に、イメージングチャンネル毎に
図17の設定画面450が表示部172に表示される。イメージングチャンネル「IM_Ch1」の入力フィールド411には、405nmが設定され、入力フィールド412、414には、波長430nmから610nmの取得波長範囲が設定される。入力フィールド451には、20nm間隔で蛍光強度を検出することが設定されている。よって、イメージングチャンネル「IM_Ch1」では、波長430nmから610nmの帯域について、9帯域の検出が指定されることになる。また、イメージングチャンネル「IM_Ch2」の入力フィールド411には、640nmが指定され、入力フィールド412、414には、波長650nmから710nmの取得波長範囲が設定される。入力フィールド451には、10nm間隔で蛍光強度を検出することが設定される。よって、イメージングチャンネル「IM_Ch2」では、波長650nmから710nmの帯域について、6帯域の検出が指定されることになる。
【0105】
図16のステップS16でイメージングチャンネルと実チャンネルとの組み合わせ設定を行う場合、
図13の設定画面320が表示部172に表示される。この設定画面320において、表示欄350のレーザ光源と表示欄352のイメージチャンネルと表示欄356の検出器とを紐づける。イメージングチャンネル「IM_Ch1」は、レーザ光源「405nm」と検出器「D_161」とに紐づけ、イメージングチャンネル「IM_Ch2」は、レーザ光源「640nm」と検出器「D_162」と紐づける。
【0106】
図21は、イメージングチャンネル毎に
図17に示した設定画面450で設定された観察条件での取得波長範囲および検出波長範囲を説明する模式図である。この場合の蛍光スペクトル取得においては、イメージングチャンネル「IM_Ch1」の入力フィールド411で指定された波長405nmの励起光が標本210に照射される。また、入力フィールド412、414で指定された波長430nmから610nmまでの取得波長範囲において、入力フィールド451で指定した波長分解能(検出波長範囲)で、20nmおきに9回、蛍光画像を取得する。イメージングチャンネル「IM_Ch2」の入力フィールド411で指定された波長640nmの励起光が標本210に照射される。また、入力フィールド412、414で指定された波長650nmから710nmまでの取得波長範囲において、入力フィールド451で指定した波長分解能(検出波長範囲)で、10nmおきに6回、蛍光画像を取得する。
【0107】
図22は、顕微鏡101を用いて複数の蛍光スペクトル分布を取得する例を実行するタイミングチャートである。レーザ光源111は、期間T1において、波長405nmの励起光を標本210に照射し、検出器「D_161」は、期間T2において、標本210から発生する蛍光を検出する。一対のLVF254,256は、期間T3において、駆動部402をそれぞれ駆動させて、検出波長範囲をすでに蛍光強度を検出した検出波長範囲に隣接した帯域にずらす。
【0108】
レーザ光源114は、期間T4において、波長640nmの励起光を標本210に照射し、検出器「D_162」は、期間T5において、標本210から発生する蛍光を検出する。一対のLVF264,266は、期間T6において、駆動部402をそれぞれ駆動させて、検出波長範囲をすでに蛍光強度を検出した検出波長範囲に隣接した帯域にずらす。
【0109】
期間T4、期間T5の開始時は、期間T1、期間T2の終了時であり、期間T1、期間T2の開始時は、期間T4、期間T5の終了時である。また、期間T3の開始時は、期間T1、期間T2の終了時であり、期間T6の開始時は、期間T4、期間T5の終了時である。 さらに、期間T3の開始時は、期間T4、期間T5の開始時であり、期間T6の開始時は、期間T1、期間T2の開始時である。
【0110】
つまり、LVFを駆動して静定するまでの時間を考慮して、波長選択ユニット151を用いて、波長405nmの励起光を標本210に照射して、検出器「D_161」で蛍光を検出している期間に、波長選択ユニット152のLVF264,266の駆動部402それぞれ駆動させて、波長選択ユニット152を用いて、波長640nmの励起光を標本210に照射して、検出器「D_162」で蛍光を検出している期間に、波長選択ユニット151のLVF254,256の駆動部402それぞれ駆動させている。これにより、効率的に蛍光検出を行うことができる。
【0111】
図23は、別例の観察系後段142を模式的に示す。観察系後段142において
図2の観察系後段140と同一の構成には同一の参照番号を付して説明を省略する。
【0112】
観察系後段142の波長選択ユニット155、156、157、158は、観察系後段140の波長選択ユニット151、152、153、154の構成に加えて、集光レンズ259、269、279、289を有する。代表して波長選択ユニット155について説明し、他の波長選択ユニット152、153、154については同様の構成であるので説明を省略する。
【0113】
集光レンズ259は入射光を集光するが、ここで、集光レンズ259の焦点位置を凹面鏡252の焦点位置に一致させるように配置する。これにより、凹面鏡252は入射光を反射して並行光束にする。したがって、一対のLVF254、256のそれぞれには並行光束が入射するから、光束内のいずれの光線についてもLVF254、256に対する実質的な膜厚が同じになり、スペクトル分解能の低下を抑制することができる。さらに、集光レンズ259の焦点距離を凹面鏡252の焦点距離よりも小さくすると、一対のLVF254、256のそれぞれに入射するときのスポット径を小さくすることができるので、スペクトル分解能の低下をさらに抑制することができる。
【0114】
図24は、さらに別例の観察系後段144を模式的に示す。観察系後段144において
図2の観察系後段140と同一の構成には同一の参照番号を付して説明を省略する。
【0115】
観察系後段144は、波長選択ユニット151よりも前段に波長選択ユニット145を有する。波長選択ユニット145は、ダイクロイックミラー230と、バンドパスフィルタ232、234と、集光レンズ236とを有する。
【0116】
ダイクロイックミラー230およびバンドパスフィルタ232、234は例えばフィルタキューブに取り付けられており、一つのユニットとして予め定められた波長帯域を反射し、他の予め定められた波長領域を透過する。さらに、当該フィルタキューブは、反射および透過の波長帯域が異なる他のフィルタキューブとともにフィルタホイールに搭載され、それらのいずれかを光路に挿入可能であってもよい。
【0117】
ダイクロイックミラー230で反射されてバンドパスフィルタ234で透過した光が、集光レンズ236で集光されて、検出器161で検出される。一方、ダイクロイックミラー230およびバンドパスフィルタ232を透過した光は、後段の波長選択ユニット151等に入射して、必要に応じて検出される。
【0118】
光がダイクロイックミラー230を透過するときに、ダイクロイックミラー230の板厚に対応した分だけ主光線がy方向にシフトする。しかしながら、後段の波長選択ユニット151等においてダイクロイックミラーとして機能するLVF250等はy方向について波長特性、すなわち境界波長が変化しない向きに配されている。したがって、当該y方向へのシフトに対して波長選択ユニット151等の反射・透過特性はほとんど影響を受けない。
【0119】
観察系後段144は、さらに波長選択ユニット152よりも後段に波長選択ユニット146を有する。波長選択ユニット146は、ダイクロイックミラー290と、バンドパスフィルタ292、294と、集光レンズ296とを有する。波長選択ユニット146は、選択される波長が異なってよいことを除けば、波長選択ユニット145と同様の構成なので、説明を省略する。
【0120】
図25は、観察系後段140の変形例を模式的に示す。
図25の観察系後段140において、LVF256が主光線に対してxy面内で少し、例えば1度程度傾斜して配される。これにより、LVF256を透過しないで反射した光が一対のLVF254、256の間を多重反射するうちにLVF256の異なるz位置に入射して所望しない帯域の光を検出器161に到達させてしまうという不具合を避けることができる。
【0121】
LVF256を傾けるのに代えて、またはこれに加えて、LVF254をxy面内で傾けてもよい。また、他の波長選択ユニット152等において同様の配置をしてもよい。
【0122】
以上、いずれの実施形態においても、多段の波長選択ユニット151等を用いてマルチバンド検出すなわち多色同時検出が可能である。さらに、少なくとも1つの波長選択ユニット151において、一対のLVF254,256等をバンドパスフィルタとして使用しているので、LVF254,256のz方向位置を変更することにより、透過する波長帯域を簡便に変更できる。それにより、1つの波長選択ユニット151でマルチパス検出すなわち時分割で多色検出が可能である。
【0123】
なお、いずれの実施形態においても、波長選択ユニット151等は4段である。しかしながら、段数はこれに限られず2段以上であればよく、それによりマルチバンド検出すなわち多色同時検出が可能である。
【0124】
また、上記いずれの実施形態においても一対のLVF254、256等のうちのLVF254等がロングパスフィルタであり、LVF256等がシートパスフィルタである。これに代えて、LVF254等がショートパスフィルタであり、LVF256等がロングパスフィルタであってもよい。
【0125】
また、上記いずれの実施形態においても、後段の波長選択ユニット152になるほど長波長側の波長を選択している。これに代えて、後段の波長選択ユニット152になるほど短波長側の波長を選択するようにしてもよい。また、波長選択ユニットのそれぞれは、自身を構成するLVF等の部材を筐体内に格納したり、ベース部材に取り付けるようにして、いわばユニット化してもよい。その場合に、波長選択ユニット単位で顕微鏡101に対して挿脱可能であってもよい。
【0126】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、請求の範囲の記載から明らかである。
【0127】
請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0128】
101 顕微鏡、110 光源、111、112、113、114 レーザ光源、115、123 ミラー、116、117、118、121、230、290 ダイクロイックミラー、122 リレーレンズ、124 集光レンズ、126 コリメートレンズ、125 ピンホール、130 ガルバノスキャナ、131、132 ガルバノミラー、140、142、144 観察系後段、146、151、152、153、154、155、156、157,158 波長選択ユニット、160 検出部、161、162、163、164 検出器、170 情報処理装置、171 制御部、172 表示部、173、174 入力部、180 制御装置、191 対物レンズ、192 レンズ、210 標本、220 照明光学系、230、 ダイクロイックミラー、232、234、292、294 バンドパスフィルタ、236、258、259、268、269、278、279、288、289、296 集光レンズ、240 観察光学系、250、254、256、260、264、266、270、274、276、284、286 LVF、252、262、272、282 凹面鏡、300、310、330 設定画面、301、302、303、304 入力欄、305 OKボタン、306 キャンセルボタン、334、335 スライダ、331、332、333、336、350、352 表示欄、337 画面取得ボタン、340、343 励起光、341、345 発光スペクトル、342、346 検出可能範囲、347 検出禁止範囲、400 光学フィルタ、402 駆動部