(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】通信制御システム、通信制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 24/08 20090101AFI20241008BHJP
H04W 24/02 20090101ALI20241008BHJP
【FI】
H04W24/08
H04W24/02
(21)【出願番号】P 2023514255
(86)(22)【出願日】2021-04-14
(86)【国際出願番号】 JP2021015506
(87)【国際公開番号】W WO2022219756
(87)【国際公開日】2022-10-20
【審査請求日】2023-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004381
【氏名又は名称】弁理士法人ITOH
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124844
【氏名又は名称】石原 隆治
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 元晴
(72)【発明者】
【氏名】中平 俊朗
(72)【発明者】
【氏名】守山 貴庸
【審査官】山岸 登
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-006844(JP,A)
【文献】国際公開第2020/202370(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/133108(WO,A1)
【文献】特開2015-053584(JP,A)
【文献】特開2019-140582(JP,A)
【文献】国際公開第2021/064849(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B1/60
3/46-3/493
7/24-7/26
17/00-17/40
H04W4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信機器に関する情報と、無線通信品質に影響を与える環境情報とを取得する取得部と、
前記無線通信機器に関する情報と前記環境情報とに基づいて、将来の無線通信品質を予測する予測部と、
前記将来の無線通信品質に基づいて、無線通信を利用するユーザの目的に応じた無線通信品質を実現するように対象機器を制御する制御部と、
ネットワークを介して接続される他のシステムからの要求を受信するインタフェース部と、
予め決められた複数のシナリオのうち、前記要求に
対応するシナリオに従って、前記取得部による情報の取得と、前記予測部による予測と、前記制御部による制御とのうちの少なくとも1つ以上を
、前記要求に対応するシナリオで定められた順に組み合わせて実行する協調部と、
を有する通信制御システム。
【請求項2】
前記協調部は、
前記取得部による情報の取得と、前記予測部による予測と、前記制御部による制御とのうちの少なくとも1つの実行結果、又は、前
記1つ以上を組み合わせて実行した結果を、前記要求の送信元の他のシステム又は前記対象機器に送信する、請求項1に記載の通信制御システム。
【請求項3】
前記対象機器には、基地局と、端末とのうち少なくともいずれか1つが含まれ、
前記制御部は、
前記基地局と、前記端末とのうちの少なくともいずれか1つの無線パラメータを制御する、請求項1
又は2に記載の通信制御システム。
【請求項4】
前記対象機器には、反射板が含まれ、
前記制御部は、
前記反射板の電波反射方向及び電波反射電力のうちの少なくともいずれか1つを制御する、請求項1乃至
3の何れか一項に記載の通信制御システム。
【請求項5】
前記対象機器には、可動基地局が含まれ、
前記制御部は、
前記可動基地局の位置を制御する、請求項1乃至
4の何れか一項に記載の通信制御システム。
【請求項6】
前記環境情報には、カメラで撮影した映像情報と、センサでセンシングしたセンサ情報と、地図情報DBから取得した地図情報のうちの少なくとも1つが含まれる、請求項1乃至
5の何れか一項に記載の通信制御システム。
【請求項7】
前記無線通信機器に関する情報には、前記無線通信機器の受信電力情報と、前記無線通信機器の周囲の物体を無線センシングにより検出した物体情報とが含まれる、請求項1乃至
6の何れか一項に記載の通信制御システム。
【請求項8】
無線通信機器に関する情報と、無線通信品質に影響を与える環境情報とを取得する取得手順と、
前記無線通信機器に関する情報と前記環境情報とに基づいて、将来の無線通信品質を予測する予測手順と、
前記将来の無線通信品質に基づいて、無線通信を利用するユーザの目的に応じた無線通信品質を実現するように対象機器を制御する制御手順と、
ネットワークを介して接続される他のシステムからの要求を受信するインタフェース手順と、
予め決められた複数のシナリオのうち、前記要求に
対応するシナリオに従って、前記取得手順による情報の取得と、前記予測手順による予測と、前記制御手順による制御とのうちの少なくとも1つ以上を
、前記要求に対応するシナリオで定められた順に組み合わせて実行する協調手順と、
をコンピュータが実行する通信制御方法。
【請求項9】
コンピュータを、請求項1乃至
7の何れか一項に記載の通信制御システムとして機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザの利用目的に応じて無線通信の品質を動的に制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタル化による社会変革の重要性が増している中で、スマートフォン等の通信量は増加し、IoT(Internet of Things)の発展により様々なモノが接続される等、無線通信の果たす役割は生活のあらゆる場面で格段に高まっている。一方で、多様化する無線通信の用途に合わせて様々な無線通信規格が登場してきており、また利用する無線の周波数帯も数100MHzから数10GHzといった高い周波数帯まで拡大しており、特性の異なる周波数帯の電波と様々な無線通信規格とを状況に応じて使い分けることが必要になってきている。このような複雑なヘテロジニアスな無線通信環境の中では、ユーザが意識することなく、ナチュラルな使用感でいつでも適切な無線通信規格が利用できることが理想的と言える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】無線ネットワークの最適化技術:SON、2011年7月、https://www.fujitsu.com/downloads/JP/archive/imgjp/jmag/vol62-4/paper15.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、無線通信の品質は状況に応じて刻々と変化し、ユーザや基地局等の周囲の環境からの影響等により品質が安定しない場合がある。このため、ユーザの目的に応じて最適な品質で無線通信を利用できるようにするためには、無線通信の品質を動的に制御する技術が必要となる。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、ユーザの利用目的に応じて無線通信の品質を動的に制御する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の技術によれば、無線通信機器に関する情報と、無線通信品質に影響を与える環境情報とを取得する取得部と、
前記無線通信機器に関する情報と前記環境情報とに基づいて、将来の無線通信品質を予測する予測部と、
前記将来の無線通信品質に基づいて、無線通信を利用するユーザの目的に応じた無線通信品質を実現するように対象機器を制御する制御部と、
ネットワークを介して接続される他のシステムからの要求を受信するインタフェース部と、
前記要求に応じて、前記取得部による情報の取得と、前記予測部による予測と、前記制御部による制御とのうちの少なくとも1つ以上を組み合わせて実行する協調部と、
を有する通信制御システムが提供される。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、ユーザの利用目的に応じて無線通信の品質を動的に制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る通信制御システムの全体構成例を示す図である。
【
図2】実施例1における動作例を説明するためのシーケンス図である。
【
図3】実施例2における動作例を説明するためのシーケンス図である。
【
図4】実施例3における動作例を説明するためのシーケンス図である。
【
図5】実施例4における動作例を説明するためのシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態(本実施形態)を説明する。以下で説明する実施形態は一例に過ぎず、本発明が適用される実施形態は、以下の実施形態に限られるわけではない。
【0010】
(通信制御システム10の全体構成例)
図1に、本実施形態に係る通信制御システム10の全体構成例を示す。
図1に示すように、通信制御システム10は、1以上の把握/可視化機能部110、1以上の予測/推定機能部120、1以上の設計/制御機能部130、協調機能部140、データストア群150を有する。なお、通信制御システム10を制御システムと呼んでもよい。
【0011】
把握/可視化機能部110は、無線機器40(例えば、ユーザ端末、基地局等)や環境情報取得機器/DB60(例えば、カメラ、センサ、LiDAR/TOF、地図情報DB等の外部データを格納するDB等)、制御機器50(例えば、反射板、可動基地局等)から各種情報を取得する。なお、DBはデータベース(DataBase)の略称である。また、把握/可視化機能部110は、取得した情報を表示部20(例えば、GUI(Graphical User Interface)等)に可視化する。把握/可視化機能部110が取得する情報としては、例えば、受信電力等の無線情報、無線センシングにより検出した物体情報、カメラで撮影した映像情報、センサでセンシングしたセンサ情報、反射板や可動基地局の設置状態情報等が挙げられる。なお、把握/可視化機能部110を取得部と呼んでもよい。また、把握/可視化機能部110が複数存在し、その各々を区別する場合は、「第1把握/可視化機能部111」、「第2把握/可視化機能部112」等と表記する。
【0012】
上述した無線機器40の集合はマルチ無線システムを構成する。当該マルチ無線システムにおいては、例えば、3G対応の基地局が3Gの無線サービスを提供し、4G対応の基地局が4Gの無線サービスを提供し、5G対応の基地局が5Gの無線サービスを提供し、6G対応の基地局が6Gの無線サービスを提供し、無線LAN基地局が無線LANサービスを提供している。また、1つの基地局が、3G、4G、5G、6G、及び無線LANのうちのいずれか複数の無線サービスを提供してもよい。
【0013】
当該マルチ無線システムにおけるユーザ端末は、移動に伴って、あるいは無線品質の状況に応じて、無線方式を切り替えながら通信を行う。例えば、ユーザ端末は、4G対応の基地局のエリアから5G対応の基地局のエリアに移動する場合、無線方式を4Gから5Gに切り替えて通信を継続する。
【0014】
本実施の形態における通信制御システム10は、上記のようなマルチ無線システムを構成する各無線機器40から情報を取得して、各無線機器40に対する最適な無線パラメータ設定を行うことが可能である。
【0015】
また、環境情報取得機器/DB60の一例である地図情報DBに格納されている地図情報は、構造物の形状や樹木の種類などを表現した高精細な3次元地図情報であってもよい。このような高精細3次元地図情報を用いることで、建物・樹木等による伝搬損失や遮蔽の影響を考慮した無線ネットワーク設計を行うことが可能である。
【0016】
予測/推定機能部120は、把握/可視化機能部110が取得した情報に基づいて、無線品質(無線通信の品質)等の無線パラメータの予測又は推定を行う。なお、予測/推定機能部120を予測部と呼んでもよい。また、予測/推定機能部120が複数存在し、その各々を区別する場合は、「第1予測/推定機能部121」、「第2予測/推定機能部122」等と表記する。
【0017】
設計/制御機能部130は、把握/可視化機能部110が取得した情報、予測/推定機能部120が予測又は推定した無線パラメータ等に基づいて、最適な無線パラメータの導出、反射板等の制御機器50に対する設計値の導出、制御機器50の制御等を行う。なお、設計/制御機能部130を制御部と呼んでもよい。また、設計/制御機能部130が複数存在し、その各々を区別する場合は、「第1設計/制御機能部131」、「第2設計/制御機能部132」等と表記する。
【0018】
協調機能部140は、他システム30(例えば、運用/制御系システム等、映像配信・自動運転・気象情報等の社会システム等)からの要求に応じて、把握/可視化機能部110、予測/推定機能部120、設計/制御機能部130の3つの機能部を状況に応じて適切に組み合わせて実行させる(つまり、協調機能部140は、複数の機能部の連携制御を実現するオーケストレータとして機能する。)。また、この際に、協調機能部140は、適宜、データ型の変換等といったIF変換も行う。他システム30は、API(Application Programming Interface)160を利用して上記3つの機能部を呼び出すことができる。協調機能部140を協調部と呼んでもよい。
【0019】
協調機能部140は、把握/可視化機能部110による情報の取得、予測/推定機能部120による将来の無線通信品質の予測、及び設計/制御機能部130による対象機器と、対象システムとのうちの少なくともいずれか1つに対する制御、からなるサイクルを回すように、把握/可視化機能部110、予測/推定機能部120、及び設計/制御機能部130を動作させることができる。このようなサイクルを例えば定期的に回すことで、ユーザに必要な通信品質を常に満たすようにネットワークを構成し続けることが可能である。なお、対象機器には、無線機器40、環境情報取得機器/DB60、制御機器50等が含まれ、対象システムには後述する自動運転車制御システム、制御用映像システム、自動運転車走行システム等が含まれる。なお、「対象機器」を広くとらえて、「対象機器」に、無線機器40、環境情報取得機器/DB60、制御機器50等、及び、自動運転車制御システム、制御用映像システム、自動運転車走行システム等が含まれることとしてもよい。
【0020】
つまり、あるサイクルにおいて、将来の無線通信品質の予測に基づいて設計/制御機能部130により設計や制御がなされた無線機器40や反射板50等により実現されている現在の無線状態や実環境情報等を、把握/可視化機能部110が取得する。次のサイクルにおいて、その現在の情報に基づき、予測/推定機能部120が、例えば、現在の反射板50等の設定状態では、将来の無線通信品質が悪くなることを予測すると、設計/制御機能部130は、将来の無線通信品質が良くなるように、反射板50による電波反射方向や電波反射電力等の制御を行う。このようなサイクルが繰り返し回ることで、ユーザに必要な通信品質を常に満たすようにネットワークを構成し続けることが可能である。
【0021】
API160としては、上記3つの機能部のうちの個別の機能部を呼び出すAPI、複数の機能部を連携動作させるシナリオを呼び出すAPIが予め定義されている。複数の機能部を連携動作させるシナリオが呼び出された場合、協調機能部140は、このシナリオに基づいて、内部APIを利用して複数の機能部を決められた順序で呼び出し、最終的な出力結果を当該シナリオの呼び出し元に返信する。
【0022】
上記API160は他システム30やそのアプリケーションを開発するベンダ等に公開されており、各ベンダは、API160を利用して様々なサービスを実現するシステムやアプリケーションを開発することが可能となる。
【0023】
データストア群150は、把握/可視化機能部110、予測/推定機能部120、設計/制御機能部130の3つの機能部の実行に必要な各種データを保持する。データストア群150をデータ格納部と呼んでもよい。
【0024】
本実施形態に係る通信制御システム10は上記の各機能部を有しており、把握/可視化機能部110、予測/推定機能部120、設計/制御機能部130が連携動作することで、ユーザ端末に必要な通信品質を常に満たすように無線通信ネットワークを構成し続ける。例えば、把握/可視化機能部110による各種情報の取得、予測/推定機能部120による無線パラメータの予測又は推定、設計/制御機能部130による制御機器50の制御、といったサイクルを回し続けることで、ユーザ端末に必要な通信品質を常に満たすような無線通信ネットワークを構成し続ける。これにより、ユーザは自身の目的に応じて最適な品質で無線通信を利用できるようになる。
【0025】
以下、本実施形態に係る技術の例として、実施例1~実施例4について説明する。なお、実施例1~実施例4は、適宜、組み合わせて実施することが可能である。
【0026】
(実施例1における動作例)
図2のシーケンス図を参照して、本実施例における通信制御システム10の動作例について説明する。本実施例は、無線エリア品質の最適制御を対象として、他システム30からの要求に応じて通信制御システム10が無線エリア品質を制御する場合について説明する。なお、以下では、無線機器40、制御機器50、環境情報取得機器/DB60は、最適制御の対象とする無線エリアに関する機器であるものとする。
【0027】
協調機能部140は、他システム30(例えば、無線エリア品質システム)からの最適制御要求を受信する(S101)。なお、この最適制御要求は、他システム30から定期的に送信される。また、この最適制御要求はAPI160を利用して行われ、これにより無線エリア品質の最適制御を行うシナリオが呼び出されることになり、以下、このシナリオに基づいて協調機能部140が各機能部を呼び出すことになる。
【0028】
協調機能部140は、把握/可視化機能部110を呼び出す(S102)。把握/可視化機能部110は、無線情報収集要求を無線機器40に送信する(S103)。そして、把握/可視化機能部110は、その応答として、無線機器40の受信電力等の無線情報、無線センシングにより検出した物体情報(つまり、無線機器40の周囲に存在する物体の情報)を取得する(S104)。
【0029】
次に、把握/可視化機能部110は、無線品質に影響を与える実環境情報収集要求を環境情報取得機器/DB60に送信する(S105)。そして、把握/可視化機能部110は、その応答として、実環境情報(例えば、カメラで撮影した映像情報、センサでセンシングしたセンサ情報、地図情報等)を取得する(S106)。
【0030】
次に、把握/可視化機能部110は、無線品質に影響を与える実環境情報収集要求を制御機器50に送信する(S107)。そして、把握/可視化機能部110は、その応答として、設置状態情報を取得する(S108)。なお、設置状態情報とは、例えば、可動基地局や位置情報、反射板の角度や向き、または電波反射方向や電波反射電力といった情報等のことである。
【0031】
次に、把握/可視化機能部110は、上記のS104、S106、S108で取得した情報(以下、「実環境情報の把握/可視化情報」という。)をデータストア群150に保存し、完了通知を協調機能部140に送信する(S109~S110)。
【0032】
続いて、協調機能部140は、予測/推定機能部120を呼び出す(S111)。予測/推定機能部120は、実環境情報の把握/可視化情報の要求をデータストア群150に送信する(S112)。そして、予測/推定機能部120は、その応答として、実環境情報の把握/可視化情報を取得する(S113)。なお、実環境情報の把握/可視化情報は上記のS109で保存されたものだけなく、無線品質の予測又は推定に必要な過去の実環境情報の把握/可視化情報も取得されてもよい。
【0033】
そして、予測/推定機能部120は、上記のS113で取得した実環境情報の把握/可視化情報に基づいて将来の無線品質等を表す無線パラメータを予測又は推定し、その結果(以下、「予測/推定結果」という。)をデータストア群150に保存した上で、完了通知を協調機能部140に送信する(S114~S115)。
【0034】
なお、無線パラメータの予測又は推定は予め決められた任意の手法により実現される。例えば、予め決められた機械学習手法によって学習された機械学習モデルにより、無線パラメータを予測又は推定すればよい。また、実環境情報(高精細3次元地図情報等)を用いたレイトレーシング法により、無線機器40に到来する電波の伝搬状況を予測し、電波の伝搬状況に基づいて無線パラメータを予測又は推定することも可能である。
【0035】
続いて、協調機能部140は、設計/制御機能部130を呼び出す(S116)。設計/制御機能部130は、予測/推定結果の要求をデータストア群150に送信する(S117)。そして、設計/制御機能部130は、その応答として、上記のS114で保存された予測/推定結果を取得する(S118)。その後、設計/制御機能部130は、取得した予測/推定結果に基づいて、最適な無線パラメータ、最適な反射板設計値を算出した上で、それらを、協調機能部140を介して他システム30に返信する(S119~S120)。最適な無線パラメータとは、例えば、予測/推定結果に含まれる無線パラメータが表す無線品質が所定の基準(つまり、ユーザ端末に必要な無線品質の基準)よりも低い場合に、この基準を満たす無線品質となるように無線機器40を制御するためのパラメータのことである。最適な反射板設計値も同様に、例えば、予測/推定結果に含まれる無線パラメータが表す無線品質が所定の基準よりも低い場合に、この基準を満たす無線品質となるように反射板の電波反射方向や電波反射電力等を制御するための設計値のことである。なお、これらの他に、例えば、当該基準を満たす無線品質となるように可動基地局の位置を制御するための最適な設計値も算出されてもよい。
【0036】
次に、他システム30は、協調機能部140から返信された最適な無線パラメータ、最適な反射板設計値をそれぞれ無線機器40、制御機器50(反射板)に設定する(S121~S122)。なお、この際、可動基地局の位置を制御するための最適な設計値も協調機能部140から返信された場合、他システム30は、この設計値も制御機器50(可動基地局)に設定する。
【0037】
以上のように、本実施例における通信制御システム10は、定期的な最適制御要求に応じて、無線機器40、制御機器50、環境情報取得機器/DB60から取得した各種情報に基づいて将来の無線品質を予測又は推定した上で、その将来の無線品質が所定の基準を満たすように最適な無線パラメータや設計値を算出する。これにより、ユーザ端末に必要な無線通信を常に満たすように無線通信ネットワークを構成し続けることが可能となる。
【0038】
(実施例2における動作例)
次に、
図3のシーケンス図を参照して、本実施例における通信制御システム10の動作例について説明する。本実施例は、無線エリア品質の最適制御を対象として、無線エリア管理端末からの要求に応じて通信制御システム10が継続的に無線エリア品質を制御する場合について説明する。なお、以下では、実施例1と同様に、無線機器40、制御機器50、環境情報取得機器/DB60は、最適制御の対象とする無線エリアに関する機器であるものとする。
【0039】
協調機能部140は、無線エリア管理担当者(より正確には、無線エリア管理担当者が利用するPC等)からの最適制御要求を受信する(S201)。最適制御要求を受信すると、通信制御システム10は、S202~S221を定期的に繰り返し実行する。
【0040】
S202~S218は、実施例1のS102~S118と同様であるため、その説明を省略する。S218に続いて、設計/制御機能部130は、取得した予測/推定結果に基づいて、最適な無線パラメータ、最適な反射板設計値を算出した上で、最適な無線パラメータを無線機器40に設定すると共に、最適な反射板設計値を制御機器50(反射板)に設定する(S219~S220)。なお、この際、可動基地局の位置を制御するための最適な設計値も算出された場合、設計/制御機能部130は、この設計値も制御機器50(可動基地局)に設定する。
【0041】
そして、設計/制御機能部130は、完了通知を協調機能部140に送信する(S221)。協調機能部140は、制御実施結果を把握/可視化機能部110に送信する(S222)。制御実施結果には、例えば、正常に制御が完了したことを示す情報が含まれている。把握/可視化機能部110は、無線エリア管理担当者に対して制御実施結果の表示を行う(S223)。
【0042】
以上のように、本実施例における通信制御システム10は、最適制御要求を一旦受信すると、無線機器40、制御機器50、環境情報取得機器/DB60から取得した各種情報に基づいて将来の無線品質を予測又は推定した上で、その将来の無線品質が所定の基準を満たすように最適な無線パラメータや設計値を算出することを継続的に繰り返す。これにより、実施例1と同様に、ユーザ端末に必要な無線通信を常に満たすように無線通信ネットワークを構成し続けることが可能となる。
【0043】
(実施例3における動作例)
次に、
図4のシーケンス図を参照して、本実施例における通信制御システム10の動作例について説明する。本実施例は、自動運転車の最適制御に必要な無線品質を予測又は推定し、その予測又は推定結果により自動運転に関する制御を実現する場合について説明する。
【0044】
予測/推定機能部120は、他システム30(例えば、自動運転車制御システム)から自動運転車の各種情報(例えば、車載無線機情報、センサ情報、位置情報、走行情報等)と無線通信品質の予測/推定要求とを受信する(S301)。ここで、自動運転車制御システムとは、自動運転車全体を制御するシステムのことである。また、自動運転車の各種情報は、当該自動運転車に搭載された無線機器40や環境情報取得機器/DB60から得られる情報であり、例えば、車載無線機情報は自動運転車に搭載されている無線機器の受信電力等といった情報であり、センサ情報は自動運転車の周囲の環境をセンシングした情報、位置情報は自動運転車の走行位置を示す情報及び走行位置付近の3次元地図情報、走行情報は自動運転車のスピード等といった情報のことである。なお、これらの各種情報と無線通信品質の予測/推定要求は、他システム30から定期的に送信される。また、この各種情報の送信と無線通信品質の予測/推定要求はAPI160を利用して、個別の機能部(予測/推定機能部120)を呼び出すことで行われる。
【0045】
予測/推定機能部120は、上記の自動運転車の各種情報に基づいて将来の無線品質を予測又は推定し、その結果(予測/推定結果)を他システム30に返信する(S302)。これにより、他システム30は、制御用映像システムに対して予測/推定結果に基づく映像のコーディングレート制御を行ったり、自動運転車走行システムに対して予測/推定結果に基づく走行制御を行ったりすることができる(S303~S304)。ここで、制御用映像システムとは自動運転車の制御用の映像をコーディングするシステムであり、自動運転車走行システムとは自動運転車の走行を制御するシステムである。なお、予測/推定結果に基づく映像のコーディングレート制御としては、例えば、無線品質が所定の基準よりも低い場合(つまり、無線品質が悪い場合)にはコーディングレートを下げ、そうでない場合にはコーディングレートを変えない(又は、コーディングレートを上げる)、といった制御が考えらえる。また、予測/推定結果に基づく走行制御としては、例えば、無線品質が所定の基準よりも低い場合には走行スピードを減少させたり走行ルートを変更したりし、そうでない場合には走行スピード及び走行ルートを変えない、といった制御が考えられる。
【0046】
以上のように、本実施例における通信制御システム10は、他システム30(自動運転車制御システム)からの定期的な情報提供及び予測/推定要求に応じて、将来の無線品質の予測/推定結果を当該他システム30に返信する。これにより、この予測/推定結果に基づいて、自動運転車制御用の映像のコーディングレート変更や走行状態の変更等を制御することが可能となり、その結果、無線通信の品質に合わせた自動運転をし続けることが可能となる。
【0047】
(実施例4における動作例)
次に、
図5のシーケンス図を参照して、本実施例における通信制御システム10の動作例について説明する。本実施例は、自動運転車の最適制御に必要な無線品質を予測又は推定する際に、自動運転車の各種情報を把握/可視化機能部110が取得する場合について説明する。すなわち、実施例3では自動運転車の各種情報が他システム30から提供されたが、実施例4では、これらの各種情報を把握/可視化機能部110が取得する場合の例である。
【0048】
協調機能部140は、他システム30(例えば、自動運転車制御システム)からの無線品質の予測/推定要求を受信する(S401)。なお、この無線品質の予測/推定要求は、他システム30から定期的に送信される。また、この無線品質の予測/推定要求はAPI160を利用して行われ、これにより自動運転車の最適制御に必要な無線品質を予測又は推定するシナリオが呼び出されることになり、以下、このシナリオに基づいて協調機能部140が各機能部を呼び出すことになる。
【0049】
協調機能部140は、把握/可視化機能部110を呼び出す(S402)。把握/可視化機能部110は、無線情報収集要求を無線機器40(例えば、自動運転制御用の無線機器等)に送信する(S403)。そして、把握/可視化機能部110は、その応答として、無線機器40の受信電力等の無線情報を取得する(S404)。
【0050】
次に、把握/可視化機能部110は、無線品質に影響を与える実環境情報収集要求を環境情報取得機器/DB60(例えば、車載センサ、地図情報DB等)に送信する(S405)。なお、地図情報DBは、車両に備えられているDBであってもよいし、外部(クラウド等)に備えられているDBであってもよい。そして、把握/可視化機能部110は、その応答として、自動運転車の周囲の環境に関する情報である車外環境情報、自動運転車の位置情報を取得する(S406)。
【0051】
次に、把握/可視化機能部110は、無線品質に影響を与える実環境情報収集要求を制御機器50(例えば、自動運転車走行システム等)に送信する(S407)。そして、把握/可視化機能部110は、その応答として、走行情報を取得する(S408)。
【0052】
次に、把握/可視化機能部110は、上記のS404、S406、S408で取得した情報(以下、「実環境情報の把握/可視化情報」という。)をデータストア群150に保存し、完了通知を協調機能部140に送信する(S409~S410)。
【0053】
続いて、協調機能部140は、予測/推定機能部120を呼び出す(S411)。予測/推定機能部120は、実環境情報の把握/可視化情報の要求をデータストア群150に送信する(S412)。そして、予測/推定機能部120は、その応答として、実環境情報の把握/可視化情報を取得する(S413)。なお、実環境情報の把握/可視化情報は上記のS409で保存されたものだけなく、無線品質の予測又は推定に必要な過去の実環境情報の把握/可視化情報も取得されてもよい。
【0054】
そして、予測/推定機能部120は、上記のS413で取得した実環境情報の把握/可視化情報に基づいて将来の無線品質等を表す無線パラメータを予測又は推定し、その結果(以下、「予測/推定結果」という。)をデータストア群150に保存すると共に、協調機能部140を介して他システム30に返信する(S414~S416)。なお、無線パラメータの予測又は推定は予め決められた任意の手法により実現される。例えば、予め決められた機械学習手法によって学習された機械学習モデルにより、無線パラメータを予測又は推定すればよい。
【0055】
これにより、他システム30は、自動運転車走行システムに対して予測/推定結果に基づく走行制御を行うことができる(S417)。
【0056】
以上のように、本実施例における通信制御システム10は、他システム30(自動運転車制御システム)からの定期的な予測/推定要求に応じて、自動運転制御用の無線機器、車載センサ、自動運転車走行システムから取得した各種情報に基づいて将来の無線品質を予測又は推定し、その予測/推定結果を当該他システム30に返信する。これにより、実施例3と同様に、当該予測/推定結果に基づいて、自動運転車の走行状態の変更等を制御することが可能となり、その結果、無線通信の品質に合わせた自動運転をし続けることが可能となる。
【0057】
(ハードウェア構成例)
本実施形態に係る通信制御システム10は、例えば、コンピュータに、本実施形態で説明する処理内容を記述したプログラムを実行させることにより実現することができる。
【0058】
上記プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体(可搬メモリ等)に記録して、保存したり、配布したりすることが可能である。また、上記プログラムをインターネットや電子メール等、ネットワークを通して提供することも可能である。
【0059】
図6は、上記コンピュータのハードウェア構成例を示す図である。
図6のコンピュータは、それぞれバスBで相互に接続されているドライブ装置1000、補助記憶装置1002、メモリ装置1003、CPU1004、インタフェース装置1005、表示装置1006、入力装置1007、出力装置1008等を有する。
【0060】
当該コンピュータでの処理を実現するプログラムは、例えば、CD-ROM又はメモリカード等の記録媒体1001によって提供される。プログラムを記憶した記録媒体1001がドライブ装置1000にセットされると、プログラムが記録媒体1001からドライブ装置1000を介して補助記憶装置1002にインストールされる。但し、プログラムのインストールは必ずしも記録媒体1001より行う必要はなく、ネットワークを介して他のコンピュータよりダウンロードするようにしてもよい。補助記憶装置1002は、インストールされたプログラムを格納すると共に、必要なファイルやデータ等を格納する。
【0061】
メモリ装置1003は、プログラムの起動指示があった場合に、補助記憶装置1002からプログラムを読み出して格納する。CPU1004は、メモリ装置1003に格納されたプログラムに従って、本実施形態で説明した各部に係る機能を実現する。インタフェース装置1005は、ネットワークに接続するためのインタフェースとして用いられる。表示装置1006はプログラムによるGUI等を表示する。入力装置1007はキーボード及びマウス、ボタン、又はタッチパネル等で構成され、様々な操作指示を入力させるために用いられる。出力装置1008は演算結果を出力する。なお、通信制御システム10において、表示装置1006、入力装置1007のいずれか又は両方を備えないこととしてもよい。
【0062】
(実施形態の効果)
本実施形態に係る技術によれば、ユーザの利用目的に応じて無線通信の品質を動的に制御することが可能となる。
【0063】
(実施形態のまとめ)
本明細書には、少なくとも下記各項の通信制御システム、通信制御方法、及びプログラムが開示されている。
(第1項)
無線通信機器に関する情報と、無線通信品質に影響を与える環境情報とを取得する取得部と、
前記無線通信機器に関する情報と前記環境情報とに基づいて、将来の無線通信品質を予測する予測部と、
前記将来の無線通信品質に基づいて、無線通信を利用するユーザの目的に応じた無線通信品質を実現するように対象機器を制御する制御部と、
ネットワークを介して接続される他のシステムからの要求を受信するインタフェース部と、
前記要求に応じて、前記取得部による情報の取得と、前記予測部による予測と、前記制御部による制御とのうちの少なくとも1つ以上を組み合わせて実行する協調部と、
を有する通信制御システム。
(第2項)
前記協調部は、
前記取得部による情報の取得と、前記予測部による予測と、前記制御部による制御とのうちの少なくとも1つの実行結果、又は、前記記1つ以上を組み合わせて実行した結果を、前記要求の送信元の他のシステム又は前記対象機器に送信する、第1項に記載の通信制御システム。
(第3項)
前記協調部は、
前記要求に対応するシナリオに従って、前記取得部による情報の取得と、前記予測部による予測と、前記制御部による制御とのうちの少なくとも1つ以上を順に実行する、第1項又は第2項に記載の通信制御システム。
(第4項)
前記対象機器には、基地局と、端末とのうち少なくともいずれか1つが含まれ、
前記制御部は、
前記基地局と、前記端末とのうちの少なくともいずれか1つの無線パラメータを制御する、第1項乃至第3項の何れか一項に記載の通信制御システム。
(第5項)
前記対象機器には、反射板が含まれ、
前記制御部は、
前記反射板の電波反射方向及び電波反射電力のうちの少なくともいずれか1つを制御する、第1項乃至第4項の何れか一項に記載の通信制御システム。
(第6項)
前記対象機器には、可動基地局が含まれ、
前記制御部は、
前記可動基地局の位置を制御する、第1項乃至第5項の何れか一項に記載の通信制御システム。
(第7項)
前記環境情報には、カメラで撮影した映像情報と、センサでセンシングしたセンサ情報と、地図情報DBから取得した地図情報のうちの少なくとも1つが含まれる、第1項乃至第6項の何れか一項に記載の通信制御システム。
(第8項)
前記無線通信機器に関する情報には、前記無線通信機器の受信電力情報と、前記無線通信機器の周囲の物体を無線センシングにより検出した物体情報とが含まれる、第1項乃至第7項の何れか一項に記載の通信制御システム。
(第9項)
無線通信機器に関する情報と、無線通信品質に影響を与える環境情報とを取得する取得手順と、
前記無線通信機器に関する情報と前記環境情報とに基づいて、将来の無線通信品質を予測する予測手順と、
前記将来の無線通信品質に基づいて、無線通信を利用するユーザの目的に応じた無線通信品質を実現するように対象機器を制御する制御手順と、
ネットワークを介して接続される他のシステムからの要求を受信するインタフェース手順と、
前記要求に応じて、前記取得手順による情報の取得と、前記予測手順による予測と、前記制御手順による制御とのうちの少なくとも1つ以上を組み合わせて実行する協調手順と、
をコンピュータが実行する通信制御方法。
(第10項)
コンピュータを、第1項乃至第8項の何れか一項に記載の通信制御システムとして機能させるプログラム。
【0064】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0065】
10 通信制御システム
20 表示部
30 他システム
40 無線機器
50 制御機器
60 環境情報取得機器/DB
110 把握/可視化機能部
111 第1把握/可視化機能部
112 第2把握/可視化機能部
120 予測/推定機能部
121 第1予測/推定機能部
122 第2予測/推定機能部
130 設計/制御機能部
131 第1設計/制御機能部
132 第2設計/制御機能部
140 協調機能部
150 データストア群
160 API
1000 ドライブ装置
1001 記録媒体
1002 補助記憶装置
1003 メモリ装置
1004 CPU
1005 インタフェース装置
1006 表示装置
1007 入力装置
1008 出力装置