(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】光ファイバ歪み測定方法及び光ファイバ歪み測定装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/16 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
G01B11/16 Z
(21)【出願番号】P 2023518604
(86)(22)【出願日】2021-05-07
(86)【国際出願番号】 JP2021017573
(87)【国際公開番号】W WO2022234676
(87)【国際公開日】2022-11-10
【審査請求日】2023-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】中村 篤志
(72)【発明者】
【氏名】古敷谷 優介
(72)【発明者】
【氏名】本田 奈月
【審査官】井上 昌宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/240037(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第111289020(CN,A)
【文献】国際公開第2020/58376(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B11/00~11/30
G01D5/26
G01D18/00~21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバテープ心線の各心線の歪み量を測定する歪み量測定工程と、
前記光ファイバテープ心線の外側心線及び内側心線の歪み量の差分に基づいて、前記光ファイバテープ心線の単位長さのねじれ角度を算出するねじれ角度算出工程と、
前記光ファイバテープ心線の単位長さのねじれ角度に基づいて、前記光ファイバテープ心線の各心線のねじれに起因する歪み量を算出するねじれ歪み量算出工程と、
前記歪み量測定工程が測定した前記光ファイバテープ心線の各心線の歪み量から、前記光ファイバテープ心線の各心線のねじれに起因する歪み量を減算し、前記光ファイバテープ心線の各心線の引っ張りに起因する歪み量を算出する引っ張り歪み量算出工程と、
を順に備えることを特徴とする光ファイバ歪み測定方法。
【請求項2】
前記ねじれ角度算出工程は、前記光ファイバテープ心線の各心線の引っ張りの効果を無視して、前記光ファイバテープ心線の単位長さのねじれ角度を算出する
ことを特徴とする、請求項1に記載の光ファイバ歪み測定方法。
【請求項3】
前記引っ張り歪み量算出工程は、前記光ファイバテープ心線の各心線のねじれの効果を無視して、前記光ファイバテープ心線の各心線の引っ張りに起因する歪み量を算出する
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の光ファイバ歪み測定方法。
【請求項4】
前記光ファイバテープ心線の各心線のねじれ及び引っ張りにそれぞれ起因する歪み量に基づいて、前記光ファイバテープ心線が設置された構造物のねじれ及び引っ張りにそれぞれ起因する歪み量を算出する構造物歪み量算出工程をさらに後に備える
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の光ファイバ歪み測定方法。
【請求項5】
光ファイバテープ心線の各心線の歪み量を測定する歪み量測定部と、
前記光ファイバテープ心線の外側心線及び内側心線の歪み量の差分に基づいて、前記光ファイバテープ心線の単位長さのねじれ角度を算出するねじれ角度算出部と、
前記光ファイバテープ心線の単位長さのねじれ角度に基づいて、前記光ファイバテープ心線の各心線のねじれに起因する歪み量を算出するねじれ歪み量算出部と、
前記歪み量測定部が測定した前記光ファイバテープ心線の各心線の歪み量から、前記光ファイバテープ心線の各心線のねじれに起因する歪み量を減算し、前記光ファイバテープ心線の各心線の引っ張りに起因する歪み量を算出する引っ張り歪み量算出部と、
を備えることを特徴とする光ファイバ歪み測定装置。
【請求項6】
前記ねじれ角度算出部は、前記光ファイバテープ心線の各心線の引っ張りの効果を無視して、前記光ファイバテープ心線の単位長さのねじれ角度を算出する
ことを特徴とする、請求項5に記載の光ファイバ歪み測定装置。
【請求項7】
前記引っ張り歪み量算出部は、前記光ファイバテープ心線の各心線のねじれの効果を無視して、前記光ファイバテープ心線の各心線の引っ張りに起因する歪み量を算出する
ことを特徴とする、請求項5又は6に記載の光ファイバ歪み測定装置。
【請求項8】
前記光ファイバテープ心線の各心線のねじれ及び引っ張りにそれぞれ起因する歪み量に基づいて、前記光ファイバテープ心線が設置された構造物のねじれ及び引っ張りにそれぞれ起因する歪み量を算出する構造物歪み量算出部をさらに備える
ことを特徴とする、請求項5から7のいずれかに記載の光ファイバ歪み測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光ファイバテープ心線の各心線の歪み量を測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
構造物の物理的劣化を評価するために構造物の歪み量を測定するセンサとして、光ファイバ方式を用いて構造物の歪み量を測定するセンサは、電気方式を用いて構造物の歪み量を測定するセンサと比べて、様々な利点を有しており最近は注目を浴びている。非特許文献1では、光ファイバ方式を用いて構造物の歪み量を測定するセンサとして、複数の光ファイバをテープ状に束ねた光ファイバテープ心線の各心線の歪み量を測定している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】A.Nakamura et al.,“Torsion Sensing Based on Strain Measurement of 4-Fiber Ribbons:Feasibility Investigation” ,ICETC,A2-2,2020.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1では、光ファイバテープ心線の各心線の歪み量に基づいて、光ファイバテープ心線の単位長さのねじれ角度(捩率)を算出することはできていたが、光ファイバテープ心線の引っ張り(圧縮)の歪み量を算出することはできなかった。
【0005】
そこで、前記課題を解決するために、本開示は、光ファイバテープ心線の各心線の歪み量に基づいて、光ファイバテープ心線の単位長さのねじれ角度(捩率)を算出するとともに、光ファイバテープ心線の引っ張り(圧縮)の歪み量を算出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、光ファイバテープ心線がねじれ及び引っ張り(圧縮)の歪みを有していても、光ファイバテープ心線のねじれの歪み量を分離したうえで、光ファイバテープ心線の引っ張り(圧縮)の歪み量を抽出することとした。
【0007】
具体的には、本開示は、光ファイバテープ心線の各心線の歪み量を測定する歪み量測定工程と、前記光ファイバテープ心線の外側心線及び内側心線の歪み量の差分に基づいて、前記光ファイバテープ心線の単位長さのねじれ角度を算出するねじれ角度算出工程と、前記光ファイバテープ心線の単位長さのねじれ角度に基づいて、前記光ファイバテープ心線の各心線のねじれに起因する歪み量を算出するねじれ歪み量算出工程と、前記歪み量測定工程が測定した前記光ファイバテープ心線の各心線の歪み量から、前記光ファイバテープ心線の各心線のねじれに起因する歪み量を減算し、前記光ファイバテープ心線の各心線の引っ張りに起因する歪み量を算出する引っ張り歪み量算出工程と、を順に備えることを特徴とする光ファイバ歪み測定方法である。
【0008】
具体的には、本開示は、光ファイバテープ心線の各心線の歪み量を測定する歪み量測定部と、前記光ファイバテープ心線の外側心線及び内側心線の歪み量の差分に基づいて、前記光ファイバテープ心線の単位長さのねじれ角度を算出するねじれ角度算出部と、前記光ファイバテープ心線の単位長さのねじれ角度に基づいて、前記光ファイバテープ心線の各心線のねじれに起因する歪み量を算出するねじれ歪み量算出部と、前記歪み量測定部が測定した前記光ファイバテープ心線の各心線の歪み量から、前記光ファイバテープ心線の各心線のねじれに起因する歪み量を減算し、前記光ファイバテープ心線の各心線の引っ張りに起因する歪み量を算出する引っ張り歪み量算出部と、を備えることを特徴とする光ファイバ歪み測定装置である。
【0009】
これらの構成によれば、光ファイバテープ心線の各心線の歪み量に基づいて、光ファイバテープ心線の単位長さのねじれ角度(捩率)及びねじれの歪み量を算出するとともに、光ファイバテープ心線の引っ張り(圧縮)の歪み量を算出することができる。
【0010】
また、本開示は、前記ねじれ角度算出工程は、前記光ファイバテープ心線の各心線の引っ張りの効果を無視して、前記光ファイバテープ心線の単位長さのねじれ角度を算出することを特徴とする光ファイバ歪み測定方法である。
【0011】
また、本開示は、前記ねじれ角度算出部は、前記光ファイバテープ心線の各心線の引っ張りの効果を無視して、前記光ファイバテープ心線の単位長さのねじれ角度を算出することを特徴とする光ファイバ歪み測定装置である。
【0012】
これらの構成によれば、光ファイバテープ心線の引っ張り(圧縮)の歪み量は未知数であるが、光ファイバテープ心線の引っ張り(圧縮)の歪み量を考慮することなく、光ファイバテープ心線の単位長さのねじれ角度(捩率)を容易に算出することができる。
【0013】
また、本開示は、前記引っ張り歪み量算出工程は、前記光ファイバテープ心線の各心線のねじれの効果を無視して、前記光ファイバテープ心線の各心線の引っ張りに起因する歪み量を算出することを特徴とする光ファイバ歪み測定方法である。
【0014】
また、本開示は、前記引っ張り歪み量算出部は、前記光ファイバテープ心線の各心線のねじれの効果を無視して、前記光ファイバテープ心線の各心線の引っ張りに起因する歪み量を算出することを特徴とする光ファイバ歪み測定装置である。
【0015】
これらの構成によれば、光ファイバテープ心線の単位長さのねじれ角度(捩率)は既知数であるが、光ファイバテープ心線の単位長さのねじれ角度(捩率)を考慮することなく、光ファイバテープ心線の引っ張り(圧縮)の歪み量を容易に算出することができる。
【0016】
また、本開示は、前記光ファイバテープ心線の各心線のねじれ及び引っ張りにそれぞれ起因する歪み量に基づいて、前記光ファイバテープ心線が設置された構造物のねじれ及び引っ張りにそれぞれ起因する歪み量を算出する構造物歪み量算出工程をさらに後に備えることを特徴とする光ファイバ歪み測定方法である。
【0017】
また、本開示は、前記光ファイバテープ心線の各心線のねじれ及び引っ張りにそれぞれ起因する歪み量に基づいて、前記光ファイバテープ心線が設置された構造物のねじれ及び引っ張りにそれぞれ起因する歪み量を算出する構造物歪み量算出部をさらに備えることを特徴とする光ファイバ歪み測定装置である。
【0018】
これらの構成によれば、光ファイバ通信で使用される光ファイバテープ心線のみならず、構造物歪みセンサで使用される光ファイバテープ心線についても、ねじれの歪み量を算出するとともに、引っ張り(圧縮)の歪み量を算出することができる。
【発明の効果】
【0019】
このように、本開示は、光ファイバテープ心線の各心線の歪み量に基づいて、光ファイバテープ心線の単位長さのねじれ角度(捩率)を算出するとともに、光ファイバテープ心線の引っ張り(圧縮)の歪み量を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本開示の光ファイバ歪み測定システムの構成を示す図である。
【
図2】本開示の光ファイバ歪み測定方法の各工程を示す図である。
【
図3】本開示の光ファイバ歪み測定方法の各工程の具体例を示す図である。
【
図4】本開示の光ファイバ歪み測定方法の各工程の具体例を示す図である。
【
図5】本開示の光ファイバ歪み測定方法の歪み量の算出原理を示す図である。
【
図6】本開示の光ファイバ歪み測定方法の歪み量の算出原理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
添付の図面を参照して本開示の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本開示の実施の例であり、本開示は以下の実施形態に制限されるものではない。
【0022】
本開示の光ファイバ歪み測定システムの構成を
図1に示す。光ファイバ歪み測定システムSは、光ファイバ歪み測定装置D、光ファイバテープ心線F及び構造物Iを備える。本実施形態では、光ファイバテープ心線Fは、構造物Iと一体化されており、構造物歪みセンサとして使用されている。変形例として、光ファイバテープ心線Fは、構造物Iと一体化されずに、光ファイバ通信媒体として使用されていてもよい。
【0023】
本開示の光ファイバ歪み測定方法の各工程を
図2に示す。光ファイバ歪み測定装置Dは、歪み量測定部1、ねじれ角度算出部2、ねじれ歪み量算出部3、引っ張り歪み量算出部4及び構造物歪み量算出部5を備える。光ファイバ歪み測定装置Dは、
図2の光ファイバ歪み測定方法の各工程のプログラムをコンピュータにインストールして実現可能である。
【0024】
本開示の光ファイバ歪み測定方法の各工程の具体例を
図3及び
図4に示す。本開示の光ファイバ歪み測定方法の歪み量の算出原理を
図5及び
図6に示す。
【0025】
歪み量測定部1は、光ファイバテープ心線Fの各心線の歪み量の現在値を測定する(歪み量測定工程S1)。ここで、歪み量測定部1は、B-OTDR(Brillouin-Optical Time Domain Reflectometer)を用いて、ブリルアン周波数シフトに基づいて、光ファイバテープ心線Fの各心線の歪み量を測定してもよい。或いは、歪み量測定部1は、OFDR(Optical Frequency Domain Reflectometer)を用いて、レーリー散乱強度分布シフトに基づいて、光ファイバテープ心線Fの各心線の歪み量を測定してもよい。
【0026】
図3の第1グラフでは、光ファイバテープ心線Fの歪み量の現在値の長手方向分布を示す。ねじれ及び引っ張り(圧縮)の歪みが生じている区間では、光ファイバテープ心線Fの外側心線(
図5及び
図6の2本の外側心線)において、光ファイバテープ心線Fの内側心線(
図5及び
図6の2本の内側心線)と比べて、歪み量の現在値が大きい。
【0027】
歪み量測定部1は、光ファイバテープ心線Fの各心線の歪み量の現在値から、光ファイバテープ心線Fの各心線の歪み量の参照値を減算し、光ファイバテープ心線Fの各心線の歪み量の変化分εn’(n=1、2は、外側及び内側に対応。)を算出する(歪み量測定工程S2)。ここで、歪み量測定部1は、光ファイバテープ心線Fの各心線の歪み量の参照値として、光ファイバテープ心線Fにねじれ及び引っ張り(圧縮)の歪みが初期状態では生じていないときの歪み量=0を使用してもよい。或いは、歪み量測定部1は、光ファイバテープ心線Fの各心線の歪み量の参照値として、光ファイバテープ心線Fにねじれ及び引っ張り(圧縮)の歪みが初期状態でも生じているときの歪み量≠0を使用してもよい。
【0028】
図3の第2グラフでは、光ファイバテープ心線Fの歪み量の参照値の長手方向分布を示す。ねじれ及び引っ張り(圧縮)の歪みが生じている区間でも、光ファイバテープ心線Fの外側心線(
図5及び
図6の2本の外側心線)においても、光ファイバテープ心線Fの内側心線(
図5及び
図6の2本の内側心線)においても、歪み量の参照値が0である。
図3の第3グラフでは、光ファイバテープ心線Fの歪み量の変化分ε
n’ の長手方向分布を示す。ねじれ及び引っ張り(圧縮)の歪みが生じている区間では、光ファイバテープ心線Fの外側心線(
図5及び
図6の2本の外側心線)において、光ファイバテープ心線Fの内側心線(
図5及び
図6の2本の内側心線)と比べて、歪み量の変化分ε
n’が大きい。
【0029】
図5を用いて、光ファイバテープ心線Fの各心線の歪み量の変化分ε
n’について、定式化する。光ファイバテープ心線Fの心線数を4とし(3以上でもよい。)、光ファイバテープ心線Fの中心軸Cから外側心線の中心軸までの距離をr
1とし、光ファイバテープ心線Fの中心軸Cから内側心線の中心軸までの距離をr
2とする。光ファイバテープ心線Fの初期状態の長さをL
0とし、光ファイバテープ心線Fの引っ張り(圧縮)後の長さをL
0+ΔLとし、光ファイバテープ心線Fの単位長さのねじれ角度(捩率)をγとする。
【0030】
光ファイバテープ心線Fの外側心線及び内側心線の歪み状態の長さL
n’は、数式1で表わされる。光ファイバテープ心線Fの外側心線及び内側心線の歪み量の変化分ε
n’は、数式2で表わされる。ここで、n=1、2は、外側及び内側に対応する。
【数1】
【数2】
【0031】
ねじれ角度算出部2は、光ファイバテープ心線Fの外側心線及び内側心線の歪み量の変化分の差分Δε’=ε
1’-ε
2’に基づいて、光ファイバテープ心線Fの単位長さのねじれ角度(捩率)の変化分γを算出する(ねじれ角度算出工程S3)。
図3の第4グラフでは、光ファイバテープ心線Fの歪み量の変化分の差分Δε’の長手方向分布を示す。ねじれ及び引っ張り(圧縮)の歪みが生じている区間では、歪み量の変化分の差分Δε’が0でない有限値をとる。
図4の第1グラフでは、光ファイバテープ心線Fの単位長さのねじれ角度(捩率)の変化分γの長手方向分布を示す。ねじれ及び引っ張り(圧縮)の歪みが生じている区間では、単位長さのねじれ角度(捩率)の変化分γが0でない有限値をとる。
【0032】
図5を用いて、光ファイバテープ心線Fの外側心線及び内側心線の歪み量の変化分の差分Δε’と、光ファイバテープ心線Fの単位長さのねじれ角度(捩率)の変化分γと、について、定式化する。光ファイバテープ心線Fの外側心線及び内側心線の歪み量の変化分の差分Δε’は、数式3で表わされる。ここで、ΔL/L
0は、10
-3のオーダーであり、1と比べて十分に小さく、1と比べて無視可能である。すると、光ファイバテープ心線Fの中心軸Cから外側心線及び内側心線の中心軸までの距離r
1、r
2を用いて、光ファイバテープ心線Fの単位長さのねじれ角度(捩率)の変化分γを算出することができる。
【数3】
【0033】
ねじれ歪み量算出部3は、光ファイバテープ心線Fの単位長さのねじれ角度(捩率)の変化分γに基づいて、光ファイバテープ心線Fの各心線のねじれに起因する歪み量の変化分ε
n(n=1、2は、外側及び内側に対応。)を算出する(ねじれ歪み量算出工程S4)。
図4の第2グラフでは、光ファイバテープ心線Fのねじれに起因する歪み量の変化分ε
n の長手方向分布を示す。ねじれ及び引っ張り(圧縮)の歪みが生じている区間では、光ファイバテープ心線Fの外側心線(
図5及び
図6の2本の外側心線)において、光ファイバテープ心線Fの内側心線(
図5及び
図6の2本の内側心線)と比べて、ねじれに起因する歪み量の変化分ε
nが大きい(
図4の第3グラフの歪み量の変化分ε
n’より小さい。)。
【0034】
図6を用いて、光ファイバテープ心線Fの各心線のねじれに起因する歪み量の変化分ε
nについて、定式化する。光ファイバテープ心線Fの心線数を4とし(3以上でもよい。)、光ファイバテープ心線Fの中心軸Cから外側心線の中心軸までの距離をr
1とし、光ファイバテープ心線Fの中心軸Cから内側心線の中心軸までの距離をr
2とする。光ファイバテープ心線Fの初期状態の長さをL
0とし、光ファイバテープ心線Fの引っ張り(圧縮)はなく、光ファイバテープ心線Fの単位長さのねじれ角度(捩率)をγとする。
【0035】
光ファイバテープ心線Fの外側心線及び内側心線の歪み状態の長さL
nは、数式4で表わされる。光ファイバテープ心線Fの外側心線及び内側心線のねじれに起因する歪み量の変化分ε
nは、数式5で表わされる。ここで、n=1、2は、外側及び内側に対応する。
【数4】
【数5】
【0036】
引っ張り歪み量算出部4は、歪み量測定部1が測定した光ファイバテープ心線Fの各心線の歪み量の変化分ε
n’から、光ファイバテープ心線Fの各心線のねじれに起因する歪み量の変化分ε
nを減算し、光ファイバテープ心線Fの各心線の引っ張り(圧縮)に起因する歪み量の変化分Δε
n=ε
n’-ε
n(n=1、2は、外側及び内側に対応。)を算出する(引っ張り歪み量算出工程S5)。
図4の第4グラフでは、光ファイバテープ心線Fの引っ張り(圧縮)に起因する歪み量の変化分Δε
nの長手方向分布を示す。ねじれ及び引っ張り(圧縮)の歪みが生じている区間では、光ファイバテープ心線Fの外側心線(
図5及び
図6の2本の外側心線)において、光ファイバテープ心線Fの内側心線(
図5及び
図6の2本の内側心線)と比べて、引っ張り(圧縮)に起因する歪み量の変化分Δε
nが同程度である(
図4の第3グラフの歪み量の変化分ε
n’より小さい。)。
【0037】
図5を用いて、光ファイバテープ心線Fの各心線の引っ張り(圧縮)に起因する歪み量の変化分Δε
nについて、定式化する。光ファイバテープ心線Fの各心線の引っ張り(圧縮)に起因する歪み量の変化分Δε
nは、数式6で表わされる。ここで、r
n
2γ
2は、10
-4のオーダーであり、1と比べて十分に小さく、1と比べて無視可能である(既知数であるため、無視しなくてもよい。)。すると、光ファイバテープ心線Fの各心線の引っ張り(圧縮)に起因する歪み量の変化分として、Δε
n=ΔL/L
0を算出することができる。
【数6】
【0038】
構造物歪み量算出部5は、光ファイバテープ心線Fの各心線のねじれ及び引っ張り(圧縮)にそれぞれ起因する歪み量の変化分εn、Δεnに基づいて、光ファイバテープ心線Fが設置された構造物Iのねじれ及び引っ張り(圧縮)にそれぞれ起因する歪み量の変化分(εn、Δεnとほぼ等しい。)を算出する(構造物歪み量算出工程S6)。
【0039】
以上、光ファイバテープ心線Fの各心線の歪み量εn’に基づいて、光ファイバテープ心線Fの単位長さのねじれ角度(捩率)γ及びねじれの歪み量εnを算出するとともに、光ファイバテープ心線Fの引っ張り(圧縮)の歪み量Δεnを算出することができる。
【0040】
光ファイバテープ心線Fの引っ張り(圧縮)の歪み量ΔL/L0は未知数であるが、光ファイバテープ心線Fの引っ張り(圧縮)の歪み量ΔL/L0を考慮することなく、光ファイバテープ心線Fの単位長さのねじれ角度(捩率)γを容易に算出することができる。
【0041】
光ファイバテープ心線Fの単位長さのねじれ角度(捩率)γは既知数であるが、光ファイバテープ心線Fの単位長さのねじれ角度(捩率)γを考慮することなく、光ファイバテープ心線Fの引っ張り(圧縮)の歪み量ΔL/L0を容易に算出することができる。
【0042】
光ファイバ通信で使用される光ファイバテープ心線Fのみならず、構造物歪みセンサで使用される光ファイバテープ心線Fについても、ねじれの歪み量εnを算出するとともに、引っ張り(圧縮)の歪み量Δεnを算出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本開示の発明は、光ファイバ通信で使用される光ファイバテープ心線のみならず、構造物歪みセンサで使用される光ファイバテープ心線についても、ねじれの歪み量を算出するとともに、引っ張り(圧縮)の歪み量を算出することができる。
【符号の説明】
【0044】
S:光ファイバ歪み測定システム
D:光ファイバ歪み測定装置
F:光ファイバテープ心線
I:構造物
C:中心軸
1:歪み量測定部
2:ねじれ角度算出部
3:ねじれ歪み量算出部
4:引っ張り歪み量算出部
5:構造物歪み量算出部