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特許7568081通信システム、通信方法、及び基地局通信装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】通信システム、通信方法、及び基地局通信装置
(51)【国際特許分類】
   H04W 16/26 20090101AFI20241008BHJP
   H04W 84/06 20090101ALI20241008BHJP
   H04W 56/00 20090101ALI20241008BHJP
【FI】
H04W16/26
H04W84/06
H04W56/00 130
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023522088
(86)(22)【出願日】2021-05-19
(86)【国際出願番号】 JP2021019022
(87)【国際公開番号】W WO2022244152
(87)【国際公開日】2022-11-24
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西野 満
(72)【発明者】
【氏名】柴山 大樹
(72)【発明者】
【氏名】山下 史洋
【審査官】石田 信行
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-121909(JP,A)
【文献】特開2011-250014(JP,A)
【文献】特開2007-324960(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00 - 99/00
H04B 7/24 - 7/26
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4,6
CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中継局を経由して基地局と端末局との間で通信を行う通信システムであって、
第1信号を前記中継局に送信する第1基地局と、
前記第1信号と同一の情報を有する第2信号を前記中継局に送信する第2基地局と
を備え、
前記中継局は、前記第1信号及び前記第2信号、あるいは、前記第1信号と前記第2信号を合成した合成信号を前記端末局に送信し、
前記中継局は、更に、前記第1信号及び前記第2信号、あるいは、前記合成信号を前記第1基地局に送信し、
前記第1基地局は、前記第1信号の送信を第1遅延時間だけ遅延させる遅延処理を実行するように構成され、
受信時間差は、前記遅延処理が実行されない場合における、前記第1信号が前記中継局に到達するタイミングと前記第2信号が前記中継局に到達するタイミングとの間の差であり、
前記第1基地局は、前記受信時間差を示す受信時間差情報に基づいて、前記第1信号と前記第2信号が同位相で前記中継局によって受信されるように前記第1遅延時間を設定し、
前記第1基地局は、更に、前記第1信号と前記第2信号を合成した前記合成信号を復調し、前記合成信号の復調結果に基づいて前記第1遅延時間を動的に調整する
通信システム。
【請求項2】
請求項に記載の通信システムであって、
前記第1基地局は、
前記合成信号の前記復調結果が一定の品質を満たすか否かを判定し、
前記合成信号の前記復調結果が前記一定の品質を満たさない場合、前記合成信号の前記復調結果が前記一定の品質を満たすまで前記第1遅延時間を変化させる
通信システム。
【請求項3】
中継局を経由して基地局と端末局との間で通信を行う通信システムであって、
第1信号を前記中継局に送信する第1基地局と、
前記第1信号と同一の情報を有する第2信号を前記中継局に送信する第2基地局と
を備え、
前記中継局は、前記第1信号及び前記第2信号、あるいは、前記第1信号と前記第2信号を合成した合成信号を前記端末局に送信し、
前記第1基地局は、前記第1信号の送信を第1遅延時間だけ遅延させる遅延処理を実行するように構成され、
受信時間差は、前記遅延処理が実行されない場合における、前記第1信号が前記中継局に到達するタイミングと前記第2信号が前記中継局に到達するタイミングとの間の差であり、
第1通信遅延は、前記第1基地局と前記中継局との間の信号の往復時間であり、
第2通信遅延は、前記第2基地局から前記中継局を経由して前記第1基地局へ到達する通信ルートにおける信号伝送時間であり、
前記受信時間差は、前記第1通信遅延と前記第2通信遅延に基づいて算出され
前記第1基地局は、前記受信時間差を示す受信時間差情報に基づいて、前記第1信号と前記第2信号が同位相で前記中継局によって受信されるように前記第1遅延時間を設定する
通信システム。
【請求項4】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の通信システムであって、
前記第1信号の品質劣化が検知された場合、前記第2基地局あるいは前記中継局は、前記第2信号の信号強度を増加させ、
前記第2信号の品質劣化が検知された場合、前記第1基地局あるいは前記中継局は、前記第1信号の信号強度を増加させる
通信システム。
【請求項5】
中継局を経由して基地局と端末局との間で通信を行う通信方法であって、
第1基地局から前記中継局に第1信号を送信する処理と、
第2基地局から前記中継局に前記第1信号と同一の情報を有する第2信号を送信する処理と、
前記中継局から前記端末局に、前記第1信号及び前記第2信号、あるいは、前記第1信号と前記第2信号を合成した合成信号を送信する処理と、
前記中継局から前記第1基地局に、前記第1信号及び前記第2信号、あるいは、前記合成信号を送信する処理と、
前記第1基地局において前記第1信号の送信を第1遅延時間だけ遅延させる遅延処理と
を含み、
受信時間差は、前記遅延処理が実行されない場合における、前記第1信号が前記中継局に到達するタイミングと前記第2信号が前記中継局に到達するタイミングとの間の差であり、
前記遅延処理は、前記受信時間差を示す受信時間差情報に基づいて、前記第1信号と前記第2信号が同位相で前記中継局によって受信されるように前記第1遅延時間を設定する処理を含み、
前記遅延処理は、更に、前記第1信号と前記第2信号を合成した前記合成信号を復調し、前記合成信号の復調結果に基づいて前記第1遅延時間を動的に調整することを含む
通信方法。
【請求項6】
中継局を経由して基地局と端末局との間で通信を行う通信方法であって、
第1基地局から前記中継局に第1信号を送信する処理と、
第2基地局から前記中継局に前記第1信号と同一の情報を有する第2信号を送信する処理と、
前記中継局から前記端末局に、前記第1信号及び前記第2信号、あるいは、前記第1信号と前記第2信号を合成した合成信号を送信する処理と、
前記第1基地局において前記第1信号の送信を第1遅延時間だけ遅延させる遅延処理と
を含み、
受信時間差は、前記遅延処理が実行されない場合における、前記第1信号が前記中継局に到達するタイミングと前記第2信号が前記中継局に到達するタイミングとの間の差であり、
第1通信遅延は、前記第1基地局と前記中継局との間の信号の往復時間であり、
第2通信遅延は、前記第2基地局から前記中継局を経由して前記第1基地局へ到達する通信ルートにおける信号伝送時間であり、
前記受信時間差は、前記第1通信遅延と前記第2通信遅延に基づいて算出され、
前記遅延処理は、前記受信時間差を示す受信時間差情報に基づいて、前記第1信号と前記第2信号が同位相で前記中継局によって受信されるように前記第1遅延時間を設定する処理を含む
通信方法。
【請求項7】
中継局を経由して基地局と端末局との間で通信を行う通信システムにおける基地局通信装置であって、
前記通信システムは、
第1信号を前記中継局に送信する第1基地局と、
前記第1信号と同一の情報を有する第2信号を前記中継局に送信する第2基地局と、
前記第1信号及び前記第2信号、あるいは、前記第1信号と前記第2信号を合成した合成信号を前記端末局に送信する前記中継局と
を含み、
前記中継局は、更に、前記第1信号及び前記第2信号、あるいは、前記合成信号を前記第1基地局に送信し、
前記第1基地局の前記基地局通信装置は、前記第1信号の送信を第1遅延時間だけ遅延させる遅延処理を実行するように構成され、
受信時間差は、前記遅延処理が実行されない場合における、前記第1信号が前記中継局に到達するタイミングと前記第2信号が前記中継局に到達するタイミングとの間の差であり、
前記第1基地局の前記基地局通信装置は、前記受信時間差を示す受信時間差情報に基づいて、前記第1信号と前記第2信号が同位相で前記中継局によって受信されるように前記第1遅延時間を設定し、
前記第1基地局の前記基地局通信装置は、更に、前記第1信号と前記第2信号を合成した前記合成信号を復調し、前記合成信号の復調結果に基づいて前記第1遅延時間を動的に調整する
基地局通信装置。
【請求項8】
中継局を経由して基地局と端末局との間で通信を行う通信システムにおける基地局通信装置であって、
前記通信システムは、
第1信号を前記中継局に送信する第1基地局と、
前記第1信号と同一の情報を有する第2信号を前記中継局に送信する第2基地局と、
前記第1信号及び前記第2信号、あるいは、前記第1信号と前記第2信号を合成した合成信号を前記端末局に送信する前記中継局と
を含み、
前記第1基地局の前記基地局通信装置は、前記第1信号の送信を第1遅延時間だけ遅延させる遅延処理を実行するように構成され、
受信時間差は、前記遅延処理が実行されない場合における、前記第1信号が前記中継局に到達するタイミングと前記第2信号が前記中継局に到達するタイミングとの間の差であり、
第1通信遅延は、前記第1基地局と前記中継局との間の信号の往復時間であり、
第2通信遅延は、前記第2基地局から前記中継局を経由して前記第1基地局へ到達する通信ルートにおける信号伝送時間であり、
前記受信時間差は、前記第1通信遅延と前記第2通信遅延に基づいて算出され、
前記第1基地局の前記基地局通信装置は、前記受信時間差を示す受信時間差情報に基づいて、前記第1信号と前記第2信号が同位相で前記中継局によって受信されるように前記第1遅延時間を設定する
基地局通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、中継局を経由して基地局と端末局との間で通信を行う通信技術に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1は、災害対策サービスに適用されるインフラ衛星通信システムを開示している。通信衛星を経由して基地局と端末局との間で通信が行われる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】松下,他,“災害対策サービスに適用するインフラ衛星通信システム,” NTT技術ジャーナル,2005年9月(https://www.ntt.co.jp/journal/0509/files/jn200509014.pdf)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
中継局を経由して基地局と端末局との間で通信を行う通信システムについて考える。中継局は、例えば通信衛星である。地震等の災害発生時や、降雨による信号品質の低下時にも通信を継続させるために、基地局に関して冗長構成を採用することが考えられる。冗長構成の場合、複数の基地局が地理的に離れた場所に設置される。例えば、地理的に離れた2か所に基地局が設置される。
【0005】
図1は、第1の比較例を説明するための概念図である。通信システムは、複数の基地局1、中継局2、及び複数の端末局3を含んでいる。複数の基地局1は、第1基地局1-1と第2基地局1-2を含んでいる。第1基地局1-1は、第1信号処理装置4-1を介してネットワーク5に接続されている。第2基地局1-2は、第2信号処理装置4-2を介してネットワーク5に接続されている。各基地局1は、中継局2を経由して端末局3と通信を行い、多くの端末局3との通信を集約してネットワーク5へ中継する。
【0006】
第1基地局1-1が中継局2へ送信する送信信号を、以下、「第1信号SG1」と呼ぶ。同様に、第2基地局1-2が中継局2へ送信する送信信号を、以下、「第2信号SG2」と呼ぶ。
【0007】
図1に示される第1の比較例において、第1基地局1-1と第2基地局1-2は、同じ周波数チャネルを用いる。但し、第1基地局1-1と第2基地局1-2の両方が同時に通信を行うことはない。仮に第1基地局1-1と第2基地局1-2の両方が同時に通信を行うと、同じ周波数チャネルの第1信号SG1と第2信号SG2との干渉が発生するからである。第1基地局1-1と第2基地局1-2の一方が中継局2を経由して端末局3と通信を行っている間、他方は通信を行わず待機する。
【0008】
第1基地局1-1が中継局2を経由して端末局3と通信を行っている最中に、第1信号SG1の品質が劣化した場合について考える。例えば、降雨等により、第1信号SG1が減衰し、第1信号SG1の品質が劣化する。第1信号SG1の品質劣化が検知されると、端末局3と通信を行う基地局1が第1基地局1-1から第2基地局1-2に切り替えられる。つまり、第1信号SG1の品質劣化をトリガとして、第1基地局1-1は通信を停止し、その代わり第2基地局1-2が通信を開始する。例えば、第2基地局1-2が、第1信号SG1の品質劣化を検知し、第1基地局1-1に第1信号SG1の送信停止を指示し、ネットワーク5への接続を切り替え、その後、第2信号SG2の送信を開始する。災害、故障、等の発生により第1信号SG1の品質が劣化した場合も同様である。
【0009】
このように、図1に示される第1の比較例の場合、信号品質劣化をトリガとして、端末局3と通信を行う基地局1の切り替えが行われ、ネットワーク5への接続も変更される。このような切り替え処理の結果、通信が一時的に切断(中断)されてしまう。
【0010】
図2は、第2の比較例を説明するための概念図である。第2の比較例では、第1基地局1-1と第2基地局1-2は、それぞれ異なる周波数チャネルを用いる。第1信号SG1と第2信号SG2が互いに干渉することはないため、第1基地局1-1と第2基地局1-2の両方が常に通信状態に設定される。端末局3は、通信相手として、第1基地局1-1と第2基地局1-2のいずれか一方を選択する。
【0011】
端末局3が通信相手として第1基地局1-1を選択している状態において、第1信号SG1の品質が劣化した場合について考える。第1信号SG1の品質劣化が検知されると、端末局3は、通信相手として第2基地局1-2を選択する。すなわち、端末局3は、通信相手を第1基地局1-1から第2基地局1-2に切り替える。これにより、第1信号SG1の品質が劣化した場合においても、通信断なく通信を継続することが可能となる。
【0012】
しかしながら、図2に示される第2の比較例の場合、通信に必要な周波数帯域が2倍となり、運用コストが増加する。特に中継局2が通信衛星の場合、高額な衛星通信利用料が2倍必要となる。また、端末局3の送受信装置において、第1基地局1-1用と第2基地局1-2用の2系統の通信回路が必要となる。このことは、端末局3の装置コストの増大を招く。
【0013】
本開示の1つの目的は、中継局を経由して基地局と端末局との間で通信を行う通信技術に関して、コスト増大を招くことなく、信号品質劣化時に通信を適切に継続することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の観点は、中継局を経由して基地局と端末局との間で通信を行う通信システムに関連する。
通信システムは、
第1信号を中継局に送信する第1基地局と、
第1信号と同一の情報を有する第2信号を中継局に送信する第2基地局と
を備える。
中継局は、第1信号及び第2信号、あるいは、第1信号と第2信号を合成した合成信号を端末局に送信する。
第1基地局は、第1信号の送信を第1遅延時間だけ遅延させる遅延処理を実行するように構成される。
受信時間差は、遅延処理が実行されない場合における、第1信号が中継局に到達するタイミングと第2信号が中継局に到達するタイミングとの間の差である。
第1基地局は、受信時間差を示す受信時間差情報に基づいて、第1信号と第2信号が同位相で中継局によって受信されるように第1遅延時間を設定する。
【0015】
第2の観点は、中継局を経由して基地局と端末局との間で通信を行う通信方法に関連する。
通信方法は、
第1基地局から中継局に第1信号を送信する処理と、
第2基地局から中継局に第1信号と同一の情報を有する第2信号を送信する処理と、
中継局から端末局に、第1信号及び第2信号、あるいは、第1信号と第2信号を合成した合成信号を送信する処理と、
第1基地局において第1信号の送信を第1遅延時間だけ遅延させる遅延処理と
を含む。
受信時間差は、遅延処理が実行されない場合における、第1信号が中継局に到達するタイミングと第2信号が中継局に到達するタイミングとの間の差である。
遅延処理は、受信時間差を示す受信時間差情報に基づいて、第1信号と第2信号が同位相で中継局によって受信されるように第1遅延時間を設定する処理を含む。
【0016】
第3の観点は、中継局を経由して基地局と端末局との間で通信を行う通信システムにおける基地局通信装置に関連する。
通信システムは、
第1信号を中継局に送信する第1基地局と、
第1信号と同一の情報を有する第2信号を中継局に送信する第2基地局と、
第1信号及び第2信号、あるいは、第1信号と第2信号を合成した合成信号を端末局に送信する中継局と
を含む。
第1基地局の基地局通信装置は、第1信号の送信を第1遅延時間だけ遅延させる遅延処理を実行するように構成さる。
受信時間差は、遅延処理が実行されない場合における、第1信号が中継局に到達するタイミングと第2信号が中継局に到達するタイミングとの間の差である。
第1基地局の基地局通信装置は、受信時間差を示す受信時間差情報に基づいて、第1信号と第2信号が同位相で中継局によって受信されるように第1遅延時間を設定する。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、中継局を経由して基地局と端末局との間で通信を行う通信システムにおいて、コスト増大を招くことなく、信号品質劣化時に通信を適切に継続することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1の比較例を説明するための概念図である。
図2】第2の比較例を説明するための概念図である。
図3】本開示の実施の形態に係る通信システムの構成例を示す概念図である。
図4】本開示の実施の形態に係る通信システムにおける処理の概要を説明するための概念図である。
図5】本開示の実施の形態に係る通信システムにおける受信時間差の一例を説明するための概念図である。
図6】本開示の実施の形態に係る通信システムの他の構成例を示す概念図である。
図7】本開示の実施の形態に係る通信システムにおける遅延調整処理を説明するための概念図である。
図8】本開示の実施の形態に係る遅延処理及び遅延調整処理に関連する処理を要約的に示すフローチャートである。
図9】本開示の実施の形態に係る基地局通信装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図10】本開示の実施の形態に係る基地局通信装置の機能構成の他の例を示すブロック図である。
図11】本開示の実施の形態に係る基地局通信装置の構成例を示すブロック図である。
図12】本開示の実施の形態に係る信号強度調整処理を説明するための概念図である。
図13】本開示の実施の形態に係る信号強度調整処理を説明するための概念図である。
図14】本開示の実施の形態に係る信号強度調整処理に関連する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
添付図面を参照して、本開示の実施の形態を説明する。
【0020】
1.概要
図3は、本実施の形態に係る通信システムの構成例を示す概念図である。通信システムは、複数の基地局10、中継局20、及び複数の端末局30を含んでいる。基地局10と端末局30は、中継局20を経由して互いに通信を行う。中継局20は、例えば通信衛星である。端末局30は、パソコン、IP電話端末、スマートフォン、等を含んでいてもよい。
【0021】
地震等の災害発生時や、降雨による信号品質の低下時にも通信を継続させるために、基地局10に関して冗長構成が採用される。複数の基地局10は、第1基地局10-1と第2基地局10-2を含んでいる。第1基地局10-1と第2基地局10-2は、地理的に離れた場所に設置されている。
【0022】
第1基地局10-1側の第1信号処理装置40-1は、ネットワーク50に接続されている。また、第1基地局10-1側の第1信号処理装置40-1と第2基地局10-2側の第2信号処理装置40-2は、互いに通信可能に接続されている。第1基地局10-1は、第1信号処理装置40-1を介してネットワーク50に接続されている。第2基地局10-2は、第2信号処理装置40-2及び第1信号処理装置40-1を介して、ネットワーク50に接続されている。各基地局10は、中継局20を経由して端末局30と通信を行い、多くの端末局30との通信を集約してネットワーク50へ中継する。
【0023】
図4は、本実施の形態に係る通信システムにおける処理の概要を説明するための概念図である。第1信号SG1は、第1基地局10-1が中継局20へ送信する送信信号である。第2信号SG2は、第2基地局10-2が中継局20へ送信する送信信号である。第1信号SG1と第2信号SG2は、同一の情報を有する。第1基地局10-1は、第1信号処理装置40-1から第1信号SG1を受け取り、第1信号SG1を中継局20を経由して端末局30に送信する。第2基地局10-2は、第1信号処理装置40-1から第2信号処理装置40-2を介して第1信号SG1を第2信号SG2として受け取る(SG2=SG1)。そして、第2基地局10-2は、第1信号SG1と同一の情報を有する第2信号SG2を、中継局20を経由して端末局30に送信する。
【0024】
第1基地局1-1と第2基地局1-2は、同じ周波数チャネルを用いる。また、第1基地局1-1と第2基地局1-2の両方が常に通信状態に設定される。よって、中継局20等において第1信号SG1と第2信号SG2との干渉を回避する必要がある。そのためには、中継局20が、同一の情報を有する第1信号SG1と第2信号SG2を同位相で受信することができればよい。言い換えれば、同一の情報を有する第1信号SG1と第2信号SG2が同位相で中継局20に到達すればよい。その場合、中継局20あるいは端末局30において、干渉を発生させることなく、第1信号SG1と第2信号SG2を合成することが可能となる。
【0025】
本実施の形態によれば、中継局20が第1信号SG1と第2信号SG2を同位相で受信することができるように、第1基地局10-1と第2基地局10-2のいずれか一方が、信号送信を遅延させる「遅延処理」を行う。以下では、第1基地局10-1が遅延処理を行う場合について説明する。第2基地局10-2が遅延処理を行う場合も同様である。
【0026】
遅延処理において、第1基地局10-1は、第1信号SG1の送信を「第1遅延時間D1」だけ遅延させる。第1基地局10-1は、第1信号SG1と第2信号SG2が同位相で中継局20によって受信されるように、その第1遅延時間D1を設定する。第1遅延時間D1の設定及び調整に関する具体的方法は、後に詳しく説明される。
【0027】
中継局20は、第1信号SG1と第2信号SG2を同位相で受信する。中継局20は、受信した第1信号SG1及び第2信号SG2を端末局30に送信(転送)する。端末局30は、同一情報を有する同位相の第1信号SG1と第2信号SG2を合成受信する。あるいは、中継局20は、受信した第1信号SG1と第2信号SG2を合成して合成信号SGCを生成する。そして、中継局20は、第1信号SG1と第2信号SG2を合成した合成信号SGCを端末局30に送信する。端末局30は、合成信号SGCを受信する。
【0028】
第1基地局10-1から送信される第1信号SG1の品質が劣化する可能性がある。例えば、降雨等により、第1信号SG1が減衰し、第1信号SG1の品質が劣化する可能性がある。他の例として、災害、故障、等の発生により第1信号SG1の品質が劣化する可能性がある。本実施の形態によれば、第1信号SG1の品質が劣化したとしても、第1信号SG1と同じ情報を有する第2信号SG2によって通信を適切に継続することが可能である。図1で示された第1の比較例のような基地局切り替えは行われないため、通信断は発生しない。
【0029】
第2基地局10-2から送信される第2信号SG2の品質が劣化する場合も同様である。第2信号SG2の品質が劣化したとしても、第2信号SG2と同じ情報を有する第1信号SG1によって通信を適切に継続することが可能である。図1で示された第1の比較例のような基地局切り替えは行われないため、通信断は発生しない。
【0030】
更に、本実施の形態によれば、図2で示された第2の比較例の場合とは異なり、第1基地局1-1と第2基地局1-2とで別々の周波数チャネルを用いる必要がない。従って、運用コストの増加は発生しない。また、端末局30の送受信装置において、第1基地局10-1用と第2基地局10-2用の2系統の通信回路は不要である。従って、端末局30の装置コストの増大も発生しない。
【0031】
以上に説明されたように、本実施の形態によれば、中継局20を経由して基地局10と端末局30との間で通信を行う通信システムにおいて、コスト増大を招くことなく、信号品質劣化時に通信を適切に継続することが可能となる。
【0032】
2.遅延処理及び遅延調整処理
以下、本実施の形態に係る遅延処理及び遅延調整処理について詳しく説明する。
【0033】
2-1.受信時間差情報
仮に、第1基地局1-1において遅延処理が実行されないとする。その場合、同一の情報を有する第1信号SG1と第2信号SG2は、異なるタイミングで中継局20に到達する。遅延処理が実行されない場合における、第1信号SG1が中継局20に到達するタイミングと第2信号SG2が中継局20に到達するタイミングとの間の差を、以下、「受信時間差ΔD」と呼ぶ。
【0034】
図5は、受信時間差ΔDの一例を説明するための概念図である。第1通信遅延αは、第1基地局10-1と中継局20との間の信号の往復時間である。第2通信遅延βは、第2基地局10-2から中継局20を経由して第1基地局10-1へ到達する通信ルートにおける信号伝送時間である。第3通信遅延γは、第1基地局10-1(第1信号処理装置40-1)と第2基地局10-2(第2信号処理装置40-2)との間の信号伝送時間であり、中継局20を経由しない信号伝送時間である。この場合、受信時間差ΔDは、「β+γ-α」で表される。
【0035】
通信遅延α、β、γは、あらかじめ計測又は推定される。受信時間差ΔDは、それら通信遅延α、β、γに基づいてあらかじめ算出される。そして、受信時間差ΔDを示す情報が、あらかじめ第1基地局10-1に提供される。
【0036】
あるいは、通信開始時に、第1基地局10-1自身が第1通信遅延α及び第2通信遅延βを計測してもよい。例えば、第1基地局10-1は、第1遅延計測信号を中継局20に送信する。中継局20は、第1遅延計測信号を受信し、その第1遅延計測信号を第1基地局10-1に送り返す。第1基地局10-1は、第1遅延計測信号の送信タイミングと受信タイミングに基づいて、第1通信遅延αを計測する。続いて、第1基地局10-1は信号送信処理を停止し、代わりに、第2基地局10-2が第2遅延計測信号を中継局20を経由して第1基地局10-1に送信する。第1基地局10-1は、第2基地局10-2から送信された第2遅延計測信号を受信する。第2遅延計測信号は、第2基地局10-2から送信されたタイミングに関する情報を含んでいる。第1基地局10-1は、第2遅延計測信号の送信タイミングと受信タイミングに基づいて、第2通信遅延βを計測する。第3通信遅延γの情報は、あらかじめ与えられる。第1基地局10-1は、通信遅延α、β、γに基づいて、受信時間差ΔDを算出する。
【0037】
図6は、本実施の形態に係る通信システムの他の構成例を示している。図6に示される例では、1台の信号処理装置40が第1基地局10-1と第2基地局10-2の中間地点に設置されている。第1基地局10-1と第2基地局10-2は共に、その信号処理装置40を介してネットワーク50に接続されている。第1基地局10-1と第2基地局10-2は、信号処理装置40から、同じ情報を有する第1信号SG1と第2信号SG2のそれぞれを受け取る。図6に示される例では、第3通信遅延γは、第1基地局10-1と信号処理装置40との間の信号伝送時間と第2基地局10-2と信号処理装置40との間の信号伝送時間との間の差として定義される。この場合でも、受信時間差ΔDは、「β+γ-α」で表される。図6で示される構成の場合、第3通信遅延γを最小化することが可能となる。
【0038】
2-2.遅延時間の初期化
上述の通り、遅延処理において、第1基地局10-1は、第1信号SG1の送信を「第1遅延時間D1」だけ遅延させる。第1基地局10-1は、上述の受信時間差ΔDの情報を取得し、その受信時間差ΔDを第1遅延時間D1の初期値として設定する。そして、第1基地局10-1は、第1遅延時間D1の初期値を用いて遅延処理を開始する。
【0039】
2-3.遅延調整処理
各装置の通信回路には個体差が存在し得る。また、信号伝送時間の揺らぎにより、遅延変動が継続的に発生し得る。そのような個体差や遅延変動に対処するため、第1基地局10-1は、第1遅延時間D1を初期化した後に第1遅延時間D1を動的に調整してもよい。第1遅延時間D1を動的に調整する処理を、以下、「遅延調整処理」と呼ぶ。
【0040】
図7は、本実施の形態に係る遅延調整処理を説明するための概念図である。中継局20は、第1基地局10-1から送信される第1信号SG1を受信し、第2基地局10-2から送信される第2信号SG2を受信する。中継局20は、受信した第1信号SG1及び第2信号SG2を第1基地局10-1に送信する。第1基地局10-1は、第1信号SG1と第2信号SG2を合成受信する。あるいは、中継局20は、受信した第1信号SG1と第2信号SG2を合成して合成信号SGCを生成する。そして、中継局20は、第1信号SG1と第2信号SG2を合成した合成信号SGCを第1基地局10-1に送信する。第1基地局10-1は、合成信号SGCを受信する。
【0041】
第1基地局10-1は、第1信号SG1と第2信号SG2を合成した合成信号SGCを復調する。そして、第1基地局10-1は、合成信号SGCの復調結果に基づいて、第1遅延時間D1を動的に調整する。
【0042】
例えば、第1基地局10-1は、合成信号SGCの復調結果が一定の品質を満たすか否かを判定する。より詳細には、第1基地局10-1は、合成信号SGCの復調結果を反映した通信パラメータを取得する。例えば、通信パラメータは、ビットエラーレート(BER: Bit Error Rate)である。第1基地局10-1は、その通信パラメータが一定の品質を満たすか否かを判定する。通信パラメータが一定の品質を満たさない場合、第1基地局10-1は、通信パラメータが一定の品質を満たすまで第1遅延時間D1を変化させる。このような第1遅延時間D1の調整には、例えば、フィードバック回路が用いられる。
【0043】
2-4.処理フロー
図8は、本実施の形態に係る遅延処理及び遅延調整処理に関連する処理を要約的に示すフローチャートである。
【0044】
ステップS100において、第1基地局10-1は、受信時間差ΔDを示す情報を取得する。受信時間差ΔDを示す情報は、あらかじめ第1基地局10-1に提供されてもよい。あるいは、第1基地局10-1が、第1通信遅延αと第2通信遅延βを計測し、第1通信遅延αと第2通信遅延βに基づいて受信時間差ΔDを算出してもよい。
【0045】
ステップS110において、第1基地局10-1は、受信時間差ΔDを第1遅延時間D1の初期値として設定する。
【0046】
ステップS120において、第1基地局10-1は、遅延処理及び送信処理を行う。遅延処理において、第1基地局10-1は、第1信号SG1の送信を第1遅延時間D1だけ遅延させる。そして、第1基地局10-1は、第1信号SG1を中継局20に送信する。第2基地局10-2は、第1信号SG1と同じ情報を有する第2信号SG2を中継局20に送信する。
【0047】
ステップS130において、中継局20は、受信した第1信号SG1及び第2信号SG2を第1基地局10-1に送信する。第1基地局10-1は、第1信号SG1と第2信号SG2を合成受信する。あるいは、中継局20は、第1信号SG1と第2信号SG2を合成した合成信号SGCを第1基地局10-1に送信する。第1基地局10-1は、合成信号SGCを受信する。
【0048】
ステップS140において、第1基地局10-1は、合成信号SGCの復調結果が一定の品質を満たすか否かを判定する。合成信号SGCの復調結果が一定の品質を満たす場合(ステップS140;Yes)、処理は、ステップS120に戻る。一方、合成信号SGCの復調結果が一定の品質を満たさない場合(ステップS140;No)、処理は、ステップS150に進む。
【0049】
ステップS150において、第1基地局10-1は、第1遅延時間D1を変化させる。その後、処理は、ステップS120に戻る。つまり、第1基地局10-1は、合成信号SGCの復調結果が一定の品質を満たすまで、第1遅延時間D1を変化させる。
【0050】
以上に説明された遅延調整処理により、第1遅延時間D1を状況に応じて動的に調整し、第1信号SG1と第2信号SG2の干渉を更に抑制することが可能となる。その結果、通信品質が向上する。
【0051】
3.構成例
本実施の形態に係る基地局10は、基地局10の通信を制御する基地局通信装置100を備える。以下、第1基地局10-1の基地局通信装置100の構成例について説明する。
【0052】
図9は、基地局通信装置100の機能構成の一例を示すブロック図である。基地局通信装置100は、復調部110、遅延制御部120、及び送信部130を含んでいる。
【0053】
復調部110には、第1基地局10-1が中継局20から受信した受信信号が入力される。復調部110は、受信信号を復調し、復調により得られた受信データを信号処理装置40に出力する。また、復調部110は、受信信号の復調結果を示す復調結果情報を遅延制御部120に出力する。復調結果情報は、受信信号の復調結果を反映した通信パラメータを含む。例えば、通信パラメータは、ビットエラーレートである。
【0054】
遅延制御部120は、受信時間差情報200と遅延設定情報300を保持している。受信時間差情報200は、上述の受信時間差ΔDを示す。図9に示される例では、受信時間差情報200は、あらかじめ基地局通信装置100に提供される。遅延設定情報300は、遅延処理において用いられる第1遅延時間D1を示す。
【0055】
遅延制御部120は、受信時間差情報200で示される受信時間差ΔDを第1遅延時間D1の初期値として設定する。遅延制御部120は、遅延設定情報300に第1遅延時間D1の初期値を登録する。そして、遅延制御部120は、遅延設定情報300で示される第1遅延時間D1を送信部130に通知する。
【0056】
また、遅延制御部120は、遅延調整処理を行う。具体的には、遅延制御部120は、復調部110から復調結果情報を受け取り、復調結果が一定の品質を満たすか否かを判定する。例えば、遅延制御部120は、ビットエラーレートが一定の品質を満たすか否かを判定する。復調結果が一定の品質を満たさない場合、遅延制御部120は、第1遅延時間D1を変化させ、遅延設定情報300を更新する。そして、遅延制御部120は、遅延設定情報300で示される第1遅延時間D1を送信部130に通知する。遅延制御部120は、復調結果が一定の品質を満たすまで、第1遅延時間D1を変化させる。このような第1遅延時間D1の調整には、例えば、フィードバック回路が用いられる。
【0057】
送信部130は、信号処理装置40から送信データを受け取る。送信部130は、送信データの変調を行い、第1信号SG1を生成し、第1信号SG1を送信する。このとき、送信部130は、遅延制御部120から通知される第1遅延時間D1に基づいて遅延処理を行う。具体的には、送信部130は、遅延回路135を有している。送信部130は、その遅延回路135を用いて、第1信号SG1の送信を第1遅延時間D1だけ遅延させる。
【0058】
図10は、基地局通信装置100の機能構成の他の例を示すブロック図である。上記図9で示された例と重複する説明は適宜省略する。図10に示される例では、基地局通信装置100が、受信時間差情報200を生成する。
【0059】
より詳細には、復調部110は、遅延測定部115を含んでいる。遅延測定部115は、第1通信遅延α及び第2通信遅延βを測定する。具体的には、遅延測定部115は、第1遅延計測信号を受け取ると、第1遅延計測信号の送信タイミングと受信タイミングに基づいて第1通信遅延αを算出する。また、遅延測定部115は、第2遅延計測信号を受け取ると、第2遅延計測信号の送信タイミングと受信タイミングに基づいて第2通信遅延βを算出する。復調部110は、第1通信遅延αと第2通信遅延βを遅延制御部120に通知する。
【0060】
遅延制御部120は、復調部110から第1通信遅延αと第2通信遅延βの情報を受け取る。第3通信遅延γの情報は、あらかじめ与えられる。遅延制御部120は、通信遅延α、β、γに基づいて、受信時間差ΔDを算出し、受信時間差情報200を生成する。その他は図9で示された例の場合と同様である。
【0061】
図11は、本実施の形態に係る基地局通信装置100の構成例を示すブロック図である。基地局通信装置100は、I/Oインタフェース140、1又は複数のプロセッサ150(以下、単に「プロセッサ150」と呼ぶ)、及び1又は複数の記憶装置160(以下、単に「記憶装置160」と呼ぶ)を含んでいる。
【0062】
プロセッサ150は、各種情報処理を行う。例えば、プロセッサ150は、CPU(Central Processing Unit)を含んでいる。
【0063】
記憶装置160は、プロセッサ150による処理に必要な各種情報を格納する。例えば、記憶装置160は、上述の受信時間差情報200及び遅延設定情報300を格納する。記憶装置160としては、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、等が例示される。
【0064】
制御プログラム170は、プロセッサ150によって実行されるコンピュータプログラムである。プロセッサ150が制御プログラム170を実行することによって、基地局通信装置100(プロセッサ150)の機能が実現される。図9及び図10で示された機能ブロックは、制御プログラム170を実行するプロセッサ150と記憶装置160との協働により実現されてもよい。制御プログラム170は、記憶装置160に格納される。制御プログラム170は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。制御プログラム170は、ネットワーク経由で基地局通信装置100に提供されてもよい。
【0065】
基地局通信装置100は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。
【0066】
4.信号強度調整処理
上述の通り、本実施の形態によれば、第1基地局10-1から第1信号SG1が送信され、第2基地局10-2から第2信号SG2が送信され、第1信号SG1と第2信号SG2が同位相で合成される。よって、基地局10当たりの信号送信電力が従来の半分に設定されても、従来と同等の信号対雑音比で同等の通信品質を確保することができる。この観点から、電力消費を抑えるために、第1基地局10-1と第2基地局10-2における信号送信電力を積極的に低下させてもよい。例えば、第1基地局10-1と第2基地局10-2における信号送信電力は、従来の半分に設定される。
【0067】
但し、第1信号SG1あるいは第2信号SG2の品質が劣化した場合には、合成信号SGCの信号対雑音比も低下してしまう。そこで、第1信号SG1あるいは第2信号SG2の品質劣化が検知された場合には、以下に説明される「信号強度調整処理」が行われてもよい。
【0068】
図12は、送信信号のフレーム構成を示している。送信信号のフレームは、識別ヘッダと信号データを含んでいる。第1信号SG1のフレームの識別ヘッダの値は、第1基地局10-1を表す「H1」である。第2信号SG2のフレームの識別ヘッダの値は、第2基地局10-2を表す「H2」である。
【0069】
図13は、第1信号SG1と第2信号SG2を合成した合成信号SGCのフレームを示している。第1信号SG1も第2信号SG2も劣化していない通常時、合成信号SGCのフレームの識別ヘッダの値は「H1+H2」である。第2信号SG2が劣化した場合、合成信号SGCのフレームの識別ヘッダの値は「H1」となる。一方、第1信号SG1が劣化した場合、合成信号SGCのフレームの識別ヘッダの値は「H2」となる。よって、合成信号SGCのフレームの識別ヘッダの値に基づいて、第1信号SG1あるいは第2信号SG2の品質劣化を検知することができる。
【0070】
図14は、本実施の形態に係る信号強度調整処理に関連する処理を示すフローチャートである。
【0071】
ステップS200において、中継局20あるいは第1基地局10-1は、第1信号SG1及び第2信号SG2を合成受信する。
【0072】
ステップS210において、中継局20あるいは第1基地局10-1は、第1信号SG1あるいは第2信号SG2の品質劣化が発生しているか否かを判定する。より詳細には、中継局20あるいは第1基地局10-1は、合成信号SGCのフレームの識別ヘッダの値を確認する。
【0073】
識別ヘッダの値が「H1+H2」である場合、中継局20あるいは第1基地局10-1は、第1信号SG1も第2信号SG2も劣化していないと判断する。この場合、処理は、ステップS220に進む。ステップS220において、第1信号SG1と第2信号SG2の信号強度はデフォルト値に設定される。例えば、第1基地局10-1(送信部130)は、第1信号SG1の信号送信電力を従来の半分に設定し、第2基地局10-2は、第2信号SG2の信号送信電力を従来の半分に設定する。
【0074】
識別ヘッダの値が「H1」である場合、中継局20あるいは第1基地局10-1は、第2信号SG2が劣化したと判断する。つまり、第2信号SG2の品質劣化が検知される。この場合、処理は、ステップS230に進む。ステップS230において、第1基地局10-1あるいは中継局20は、第1信号SG1の信号強度を増加させる。例えば、第1基地局10-1(送信部130)あるいは中継局20は、第1信号SG1の信号強度をデフォルト値の倍に設定する。第1信号SG1の信号強度を増加させることにより、第2信号SG2の品質劣化を補償することができる。
【0075】
一方、識別ヘッダの値が「H2」である場合、中継局20あるいは第1基地局10-1は、第1信号SG1が劣化したと判断する。つまり、第1信号SG1の品質劣化が検知される。この場合、処理は、ステップS240に進む。ステップS240において、第2基地局10-2あるいは中継局20は、第2信号SG2の信号強度を増加させる。例えば、第2基地局10-2あるいは中継局20は、第2信号SG2の信号強度をデフォルト値の倍に設定する。第2信号SG2の信号強度を増加させることにより、第1信号SG1の品質劣化を補償することができる。
【0076】
以上に説明された信号強度調整処理により、第1信号SG1あるいは第2信号SG2が劣化した場合においても、通信品質を確保することが可能となる。また、第1信号SG1も第2信号SG2も劣化していない通常時には、第1基地局10-1と第2基地局10-2における信号送信電力を積極的に低下させ、全体としての電力消費を抑えることが可能となる。
【0077】
5.その他
本実施の形態によれば、第1信号SG1と第2信号SG2が同位相で合成される。合成されるのは、変調後の無線周波数帯(RF帯)の信号であってもよいし、中間周波数帯(IF帯)の信号であってもよいし、変調前のベースバンド信号であってもよい。
【0078】
本実施の形態において、送信と受信の複信方式は任意である。複信方式は、周波数分割複信(Frequency Division Duplex: FDD)であってもよいし、時分割複信(Time Division Duplex: TDD)であってもよい。
【符号の説明】
【0079】
10…基地局, 10-1…第1基地局, 10-2…第2基地局, 20…中継局, 30…端末局, 40…信号処理装置, 40-1…第1信号処理装置, 40-2…第2信号処理装置, 50…ネットワーク, 100…基地局通信装置, 110…復調部, 115…遅延測定部, 120…遅延制御部, 130…送信部, 135…遅延回路, 140…I/Oインタフェース, 150…プロセッサ, 160…記憶装置, 170…制御プログラム, 200…受信時間差情報, 300…遅延設定情報, SG1…第1信号, SG2…第2信号, SGC…合成信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14