(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】ネットワーク管理装置、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H04L 41/0654 20220101AFI20241008BHJP
【FI】
H04L41/0654
(21)【出願番号】P 2023526770
(86)(22)【出願日】2021-06-10
(86)【国際出願番号】 JP2021022172
(87)【国際公開番号】W WO2022259479
(87)【国際公開日】2022-12-15
【審査請求日】2023-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】松林 宏明
(72)【発明者】
【氏名】金井 俊介
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 健司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正崇
(72)【発明者】
【氏名】明石 和陽
(72)【発明者】
【氏名】小川 まな美
【審査官】中川 幸洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-065202(JP,A)
【文献】特開2018-078523(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 41/0654
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信設備が収容される複数の建物における通信に障害が発生したときで、前記障害が発生した建物のうち一部の建物の複数種類の組み合わせに係る各建物に収容される通信設備に対する復旧作業により当該建物において前記発生した障害が復旧したと仮定した条件が適用されたときの、前記複数の建物のうち所定の種別の通信サービスの提供に用いられる通信設備が収容される建物で引き続き発生する前記通信の障害の状況に、当該状況に応じた重み付けが定められたポリシーが適用されることにより、前記障害が発生した建物のうち、前記発生した障害を実際に復旧させる建物の組み合わせの候補の優先度を、複数種類の前記組み合わせの各々について算出する優先度算出部を備えるネットワーク管理装置。
【請求項2】
前記ポリシーは、
前記仮定した条件が適用されたときの前記障害が発生した建物のうち第1の種別の通信サービスの提供に用いられる通信設備が収容される建物で前記引き続き発生する前記通信の障害の状況に応じた重み付けが定められた第1のポリシー、および前記仮定した条件が適用されたときの前記障害が発生した建物のうち第2の種別の通信サービスの提供に用いられる通信設備が収容される建物で前記引き続き発生する前記通信の障害の状況に応じた重み付けが定められた第2のポリシー、を含み、
前記優先度算出部は、
前記仮定した条件が適用されたときの、前記障害が発生した建物のうち前記第1の種別の通信サービスの提供に用いられる通信設備が収容される建物で前記引き続き発生する前記通信の障害の状況に前記第1のポリシーが適用されることにより、前記障害が発生した建物のうち、前記発生した障害を実際に復旧させる建物の候補の優先度に係るスコアを、前記複数種類の前記組み合わせの各々について算出し、
前記算出の結果、複数種類の前記組み合わせについて算出されたスコアが同じであるときに、これらの組み合わせについて、前記仮定した条件が適用されたときの、前記障害が発生した建物のうち前記第2の種別の通信サービスの提供に用いられる通信設備が収容される建物で前記引き続き発生する前記通信の障害の状況に前記第2のポリシーが適用されることにより、前記障害が発生した建物のうち、前記発生した障害を実際に復旧させる建物の候補の優先度に係るスコアを、前記複数種類のうち前記同じスコアに係る種類の前記組み合わせの各々について算出することにより、前記障害が発生した建物のうち、前記発生した障害を実際に復旧させる建物の組み合わせの候補の優先度を、複数種類の前記組み合わせの各々について算出する、
請求項1に記載のネットワーク管理装置。
【請求項3】
前記所定の種別の通信サービスの提供に用いられる通信設備が収容される建物で引き続き発生する前記通信の障害の状況は、
前記仮定した条件が適用されたときの、前記引き続き発生する前記通信の障害に係る建物の数、および当該建物に収容されて前記所定の種別の通信サービスを利用するユーザの数、を含む、
請求項1に記載のネットワーク管理装置。
【請求項4】
前記優先度算出部により算出された優先度に対応する前記建物に対する前記障害の復旧の作業に係る条件に基づいて、前記発生した障害の実際の復旧の作業を計画する計画処理部をさらに備える、
請求項1に記載のネットワーク管理装置。
【請求項5】
前記計画処理部は、
前記優先度算出部により算出された優先度が高い建物を優先して、当該建物における前記障害に係る情報、および当該建物に対する前記障害の復旧作業のために配備される車両の候補に係る情報に基づいて、前記建物に対して実際に配備される車両および当該建物への前記車両の移動経路を計画する、
請求項4に記載のネットワーク管理装置。
【請求項6】
ネットワーク管理装置により行なわれる方法であって、
通信設備が収容される複数の建物における通信に障害が発生したときで、前記障害が発生した建物のうち一部の建物の複数種類の組み合わせに係る各建物に収容される通信設備に対する復旧作業により当該建物において前記発生した障害が復旧したと仮定した条件が適用されたときの、前記複数の建物のうち所定の種別の通信サービスの提供に用いられる通信設備が収容される建物で引き続き発生する前記通信の障害の状況に、当該状況に応じた重み付けが定められたポリシーが適用されることにより、前記障害が発生した建物のうち、前記発生した障害を実際に復旧させる建物の組み合わせの候補の優先度を、複数種類の前記組み合わせの各々について算出することを備えるネットワーク管理方法。
【請求項7】
前記ポリシーは、
前記仮定した条件が適用されたときの前記障害が発生した建物のうち第1の種別の通信サービスの提供に用いられる通信設備が収容される建物で前記引き続き発生する前記通信の障害の状況に応じた重み付けが定められた第1のポリシー、および前記仮定した条件が適用されたときの前記障害が発生した建物のうち第2の種別の通信サービスの提供に用いられる通信設備が収容される建物で前記引き続き発生する前記通信の障害の状況に応じた重み付けが定められた第2のポリシー、を含み、
前記優先度を算出することは、
前記仮定した条件が適用されたときの、前記障害が発生した建物のうち前記第1の種別の通信サービスの提供に用いられる通信設備が収容される建物で前記引き続き発生する前記通信の障害の状況に前記第1のポリシーが適用されることにより、前記障害が発生した建物のうち、前記発生した障害を実際に復旧させる建物の候補の優先度に係るスコアを、前記複数種類の前記組み合わせの各々について算出し、
前記算出の結果、複数種類の前記組み合わせについて算出されたスコアが同じであるときに、これらの組み合わせについて、前記仮定した条件が適用されたときの、前記障害が発生した建物のうち前記第2の種別の通信サービスの提供に用いられる通信設備が収容される建物で前記引き続き発生する前記通信の障害の状況に前記第2のポリシーが適用されることにより、前記障害が発生した建物のうち、前記発生した障害を実際に復旧させる建物の候補の優先度に係るスコアを、前記複数種類のうち前記同じスコアに係る種類の前記組み合わせの各々について算出することにより、前記障害が発生した建物のうち、前記発生した障害を実際に復旧させる建物の組み合わせの候補の優先度を、複数種類の前記組み合わせの各々について算出する、ことを含む
請求項6に記載のネットワーク管理方法。
【請求項8】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のネットワーク管理装置の前記各部としてプロセッサを機能させるネットワーク管理処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ネットワーク管理装置、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
通信設備が収容されることで外部への通信を提供するビル(building)(以下、通信ビルと称されることがある。)において、地震または台風等の災害発生等に伴って発電所からの電源供給が断たれた場合などにより、このビルにおける通信が切断された場合、ビル内に設置された、燃料によって稼働する非常用発電機(emergency power generator)等を稼働させることによって電源を復旧させることで、通信の提供が再開される。
【0003】
上記の非常用発電機の稼働が長時間に及ぶことにより、ビル内で備蓄される燃料が枯渇すると非常用発電機の稼働が停止するので、再び電源供給が断たれて通信が切断される。そこで、通信事業者は、上記の通信ビルに車両等で燃料を配送および供給する。
【0004】
通信事業者は、燃料が枯渇する前の通信ビルに対して燃料を配送したり、燃料が枯渇した通信ビルに対して燃料配送車両により迅速に燃料を配送したりすることで、早期に通信の提供を再開させる必要がある。
【0005】
限られた燃料リソース(resource)の条件下で、通信断の影響をできる限り小さくするために、通信事業者は、電源供給が断たれた通信ビルのうち、上記の燃料が枯渇している多数の通信ビルの中から、燃料の配送先である救済ビルを短時間で選択する必要がある。
【0006】
救済ビルは、例えば被災したビル、このビルから波及する、通信ネットワークサービス(network service)への影響、所在地、燃料状況、交通状況等の様々な状況に応じて選択される必要があり、人手による検討には多大な時間および高度なスキル(skill(経験))を要する。
【0007】
災害への対応は緊急を要し、その発生頻度が低く、有スキル者の育成が困難であることから、災害発生時の状況を鑑みて救済ビルを選択し、このビルへの燃料配送計画を自動かつ短時間で決定する技術が求められる。
【0008】
例えば特許文献1では、ネットワーク構成情報と障害影響情報とが求められる技術が開示され、この障害影響情報に基づいて、各ビルのうち優先して救済するビルが重み及びフラグ(flag)により評価されて上記の配送計画が決定され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記の技術では、災害の種別、例えば豪雨または地震等および被災の状況によって重み及びフラグが変更されるためには、人手での検討が行なわれるための多大な時間と高度なスキルを要する。
【0011】
この発明は、上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、ネットワーク構成にて通信の障害が発生したときに、この障害の復旧の対象を適切に特定することができるようにしたネットワーク管理装置、方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様に係るネットワーク管理装置は、通信設備が収容される複数の建物における通信に障害が発生したときで、前記障害が発生した建物のうち一部の建物の複数種類の組み合わせに係る各建物に収容される通信設備に対する復旧作業により当該建物において前記発生した障害が復旧したと仮定した条件が適用されたときの、前記複数の建物のうち所定の種別の通信サービスの提供に用いられる通信設備が収容される建物で引き続き発生する前記通信の障害の状況に、当該状況に応じた重み付けが定められたポリシーが適用されることにより、前記障害が発生した建物のうち、前記発生した障害を実際に復旧させる建物の組み合わせの候補の優先度を、複数種類の前記組み合わせの各々について算出する優先度算出部を備える。
【0013】
本発明の一態様に係るネットワーク管理方法は、通信設備が収容される複数の建物における通信に障害が発生したときで、前記障害が発生した建物のうち一部の建物の複数種類の組み合わせに係る各建物に収容される通信設備に対する復旧作業により当該建物において前記発生した障害が復旧したと仮定した条件が適用されたときの、前記複数の建物のうち所定の種別の通信サービスの提供に用いられる通信設備が収容される建物で引き続き発生する前記通信の障害の状況に、当該状況に応じた重み付けが定められたポリシーが適用されることにより、前記障害が発生した建物のうち、前記発生した障害を実際に復旧させる建物の組み合わせの候補の優先度を、複数種類の前記組み合わせの各々について算出することを備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ネットワーク構成にて通信の障害が発生したときに、この障害の復旧の対象を適切に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るネットワーク管理装置の適用例を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係るネットワーク管理装置による処理手順の一例を示すフローチャート(flow chart)である。
【
図3】
図3は、優先度(priority)算出部の機能の一例を説明する図である。
【
図4】
図4は、各種のポリシー(policy)に係る通信サービスの種別の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、通信の障害が発生したビルの一例を示す図である。
【
図6】
図6は、復旧作業の対象であるビルの組み合わせへの復旧作業が実施された条件で引き続き通信の障害が発生するビルの数と障害の影響を受けるユーザ(user)の数の一例を表形式で示す図である。
【
図7】
図7は、復旧作業の対象であるビルの組み合わせへの復旧作業が実施された条件で、第1のポリシーの適用により算出される優先度スコア(score)の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、復旧作業の対象であるビルの第1の組み合わせへの復旧作業が実施された条件で、第1のポリシーの適用により求められる重み付けの一例を示す図である。
【
図9】
図9は、復旧作業の対象であるビルの第2の組み合わせへの復旧作業が実施された条件で、第1のポリシーの適用により求められる重み付けの一例を示す図である。
【
図10】
図10は、復旧作業の対象であるビルの組み合わせへの復旧作業が実施された条件で、第2のポリシーの適用により算出される優先度スコアの一例を示す図である。
【
図11】
図11は、復旧作業の対象であるビルの第1の組み合わせへの復旧作業が実施された条件で、第2のポリシーの適用により求められる重み付けの一例を示す図である。
【
図12】
図12は、復旧作業の対象であるビルの第2の組み合わせへの復旧作業が実施された条件で、第2のポリシーの適用により求められる重み付けの一例を示す図である。
【
図13】
図13は、復旧作業の対象であるビルの組み合わせへの復旧作業が実施された条件で、第1のポリシーおよび第2のポリシーが順次適用されることにより算出される優先度スコアの一例を示す図である。
【
図14】
図14は、復旧作業の対象であるビルの組み合わせへの復旧作業が実施された条件で、第2のポリシーおよび第1のポリシーが順次適用されることにより算出される優先度スコアの一例を示す図である。
【
図15】
図15は、本発明の一実施形態に係るネットワーク管理装置のハードウエア(hardware)構成の一例を示すブロック図(block diagram)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、この発明に係わる一実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るネットワーク管理装置の適用例を示す図である。
図1に示されるように、本発明の一実施形態に係るネットワーク管理装置10は、ユーザ入力部11、障害影響計算部12、優先度算出部13、配備計画処理部14、および配備計画出力部15を備える。
【0017】
図2は、本発明の一実施形態に係るネットワーク管理装置による処理手順の一例を示すフローチャートである。
ユーザ入力部11は、通信機器が収容されてネットワーク構成、例えばネットワーク冗長構成をなす複数のビルのいずれかで発生する通信障害を示す障害情報と、発生した通信障害の復旧に係る電源供給状況、および通信障害の復旧のために配備される復旧作業車両に係る車両配備情報とを入力する(S11)。
上記の電源供給状況は、例えば、各ビルに収容される、後述する非常用発電機へ補充される必要がある燃料の分量、および各ビルにおける通信障害が発生してからの経過時間などである。また、上記の車両配備情報は、例えば、復旧作業車両の現在位置、ビルへ移動可能な復旧作業車両の台数、各々の復旧作業車両により運搬および供給可能な燃料の分量などである。
【0018】
障害影響計算部12は、S11で入力された障害情報に基づいて、ネットワーク構成における一部のビルに収容される通信設備への電源の供給が停止したことなどに伴って発生した通信障害により同じネットワーク構成における他のビルへ及ぶ影響である、通信障害の影響を計算する(S12)。
【0019】
優先度算出部13は、S11で入力した障害情報で示される障害、およびS12での計算結果が適用された条件において、通信障害が発生したビルの組み合わせから、救済の対象、すなわち通信障害の復旧の対象であるビルの組み合わせの全てのパターン(pattern)を生成する(S13)。このパターンは、救済先ビルのパターンまたは救済先パターンと称されることもある。
【0020】
優先度算出部13は、上記生成したパターン毎に、上記パターンに応じたビルへの救済がなされた、例えば当該ビルへ収容される通信設備への電源の復旧がなされたと仮定された条件における、通信障害が発生したビルのうち所定の種別の通信サービスの提供に用いられる通信設備が収容される建物で引き続き発生する通信障害およびその影響、すなわち引き続き発生する通信障害の状況に対し、当該種別の通信サービスに応じた第nポリシー、ここでは第1ポリシーおよび第2ポリシーの各々のうち適用順位が高い第1ポリシーを適用する(n=1)。この適用により、優先度算出部13は、いずれかのビルで引き続き発生する通信障害に応じた重み付けに従った優先度スコア(以下、単に優先度と称されることがある。)を算出する(S14)。適用対象のポリシーは、ユーザによるユーザ入力部11への操作により任意に設定され得る。
【0021】
優先度算出部13は、S14で複数のパターンについて優先度スコアが算出されたとき、算出結果である優先度スコアの小さな順、すなわち仮定された復旧がなされた後に引き続き発生する通信障害およびその影響が少ない順に上記パターンをソート(sort)する(S15)。
【0022】
S15でのソートの結果、複数のパターンのうち、同じ優先度スコアが算出された複数のパターンがある場合で、適用前で次の適用順位のポリシー、例えば第2ポリシーがある場合は(S16のYes)、優先度算出部13は、これらのパターンについて、当該パターンに応じたビルへの救済がなされたと仮定された条件における、通信障害が発生したビルのうち上記次の適用順位のポリシーに係る種別の通信サービスの提供に用いられる通信設備が収容される建物で引き続き発生する通信障害の状況に対し、上記次の適用順位のポリシーを適用する(n=n+1)。そして、S14での優先度スコアの算出以降の処理がなされる。この場合、同じパターンについてそれぞれ適用されたポリシーに応じて算出された優先度スコアは合算される。
【0023】
一方、S16でNoである場合、全てのパターンについてS14での優先度スコアの算出が終了していなければ(S17のNo)、優先度算出部13は、該当のパターンについて、当該パターンに応じたビルへの救済がなされたと仮定された条件における、通信障害が発生したビルのうち第1のポリシーに対応する種別の通信サービスの提供に用いられる通信設備が収容される建物で引き続き発生する通信障害の状況に対し、当該第1ポリシーを適用する(n=1)。そして、このパターンについてS14での優先度スコアの算出以降の処理がなされる。
また、全てのパターンについてS14での算出が終了したとき(S17のYes)は、優先度算出部13は、各パターンについて、適用されたポリシーに応じてS14で算出された優先度スコアを抽出し、この抽出した優先度スコアが少ない順、すなわち上記仮定された復旧が実際になされたときの効果が高い順に、発生した障害を実際に復旧させる対象である建物の候補の優先度が高く設定されるように、各パターンをソートした情報を生成する(S18)。
【0024】
配備計画処理部14は、ソートされたパターンにおける、高い優先度スコアが設定されたパターンを優先させて、この優先度スコアに応じたパターンの各ビルに対する復旧作業車両の適切な配備ルート(route)を、S11で入力した電源供給状況および車両配備情報に基づいて探索する(S19)。
【0025】
S19での処理結果を受けて、配備計画出力部15は、救済対象のビルの名称、および該当するビルへの復旧作業車両の配備ルート、すなわち移動経路を示す情報を出力する(S20)。
それぞれの処理の詳細については以下で述べる。 ユーザ入力部11は、通信が提供される、通信ネットワークの冗長構成をなす各ビルに係る、ネットワーク冗長構成における各ビルの接続関係、各ビルでの非常用電源の種別、各ビルの所在地、ビルでの通信障害が発生したときの影響を示す情報、およびビルでの通信障害が発生してからの経過時間、などをオペレータ(operator)などによる入力操作などにより入力する。
【0026】
ビルでの通信の提供とは、例えば、ビル内での通信機器間での通信およびビル内の通信機器と外部の通信機器との間での通信を意味する。
上記通信障害としては、例えば、ビル内での通信機器への電源の供給が遮断されたことに伴う通信の切断、またはサーバ(server)などの通信設備の故障、通信用ケーブル(cable)の損傷などによる通信の切断が挙げられる。本実施形態の以降の説明では、ビル内での通信機器への電源の供給が遮断されたことに伴う通信の切断を例に挙げて説明する。
【0027】
また、上記の、各ビルでの非常用電源の種別としては、燃料により稼働する非常用発電機、および充放電が可能な蓄電池により動作する非常用電源装置が挙げられる。非常用発電機は、例えばディーゼルエンジン(diesel engine)である。
なお、上記のビルは、通信が提供される設備であれば他の形態であってもよい。
【0028】
上記の各ビルの接続関係には、例えばネットワークトポロジ(network topology)における上位階層(以下、単に上位と称されることがある。)および下位階層(以下、単に下位と称されることがある。)を示す情報が含まれ得る。
【0029】
また、ユーザ入力部11は、通信障害が発生したビルに対する通信の復旧作業のための車両(以下、復旧作業車両と称されることがある。)に係る、車両の数、車両の種別、各車両位置情報、各車両による非常用発電機用の燃料などの供給可能量、各車両の走行エリア(area)の交通状況、などを上記入力操作などにより入力する。交通状況とは、例えば上記走行エリアでの交通量を示す情報、および工事または災害などによる道路の通行可否を示す情報、などが挙げられる。
【0030】
上記の車両の種別は、燃料配送車および電源車が挙げられる。
燃料配送車は、ビル内の非常用電源が上記の非常用発電機であるときの当該発電機用の燃料が積載され、この燃料を当該非常用発電機に充填する設備を有する車両である。
また、上記の電源車は、ビル内の非常用電源が上記の非常用電源装置であるときの、上記の蓄電池への充電機能を有する車両、または、上記蓄電池が交換可能であるときの交換用の蓄電池、すなわち充電済みの新しい蓄電池が積載される車両である。
【0031】
障害影響計算部12は、ユーザ入力部11により入力した情報に基づいて、ネットワーク冗長構成における各ビルのうちネットワークトポロジにおける上位の複数のビルで通信障害が発生したことによる影響を受けて通信が切断される、ネットワークトポロジにおける下位の複数のビルを、障害の影響先として特定する。
上記影響を受けて通信が切断される設備を特定する技術は、例えば上記特許文献1にも開示される既知の技術である。
【0032】
図3は、優先度算出部の機能の一例を説明する図である。
優先度算出部13は、ユーザ入力部11により入力された障害情報などの各種情報、および上記生成された通信障害の復旧の対象であるビルの組み合わせの各パターンに基づいて、例えばAI(人工知能)によりポリシーを適用することで、救済がなされたと仮定された条件下で引き続き発生する通信障害に応じた重み付けを行なうことで、ビルの組み合わせ毎の優先度スコアを求める。
【0033】
図4は、各種のポリシーに係る通信サービスの種別の一例を示す図である。
図4に示された例では、第1の適用順位のポリシー、第2の適用順位のポリシー、および第3の適用順位のポリシーについての、優先度スコアの算出の対象である通信サービスの種別が示される。
【0034】
図4に示された例では、第1の適用順位のポリシーが適用されたときは、適用元の救済先ビルのパターンに係るビルへの復旧作業がなされたと仮定された条件で、種別が「サービスIII」である通信サービスの提供における引き続き発生する通信障害に応じて、適用元の救済先パターンに係る優先度スコアが算出されることが示される。
【0035】
図4に示された例では、第2の適用順位のポリシーが適用されたときは、適用元の救済先パターンに係るビルへの復旧作業がなされたと仮定された条件で、種別が「サービスII」である通信サービスの提供における引き続き発生する通信障害に応じて、適用元の救済先パターンに係る優先度スコアが算出されることが示される。
【0036】
図4に示された例では、第3の適用順位のポリシーが適用されたときは、適用元の救済先パターンに係るビルへの復旧作業がなされたと仮定された条件で、種別が「自治体収容」である通信サービスの提供における引き続き発生する通信障害に応じて、適用元の救済先パターンに係る優先度スコアが算出されることが示される。
【0037】
なお、例えば、1つ目の救済先パターンに係る、上記引き続き発生する通信障害の状況に対し第1の適用順位のポリシーが適用されて算出された優先度スコアと、2つ目の救済先パターンに係る、上記引き続き発生する通信障害の状況に対し同じ第1の適用順位のポリシーが適用されて算出された優先度スコアが同じである場合は、これらの2つの救済先パターンについてのみ、手強順位が1つ後の第2の適用順位のポリシーが適用されて、優先度スコアが改めて算出される。これらの優先度スコアが異なる場合には、これらのパターンに係る優先度スコアの算出が終了する。
【0038】
これらのポリシーに係る通信サービスは、例えば災害の状況になどに応じて任意に入れ替えられてもよい。これにより、各通信サービスに対するポリシーの適用順位が入れ替えられることが可能となるので、例えば災害状況の変化に応じた、実施が可能または実施が優先されるべき通信サービスに応じて、復旧作業の実施先が柔軟に設定され得る。
【0039】
図5は、通信の障害が発生したビルの一例を示す図である。
図5に示された例では、通信障害が発生したビルは「ビルA」、「ビルB」、「ビルC」、「ビルD」、「ビルE」、および「ビルF」である。本実施形態では、これらのビルのうち一部または全部の組み合わせのパターンが、通信の障害の復旧作業の対象として設置される。
【0040】
図6は、復旧作業の対象であるビルの組み合わせへの復旧作業が実施された条件で引き続き通信の障害が発生するビルの数と障害の影響を受けるユーザの数の一例を表形式で示す図である。
図6に示された例では、救済先ビルのパターン「#1」、ここでは「ビルC」と「ビルF」の組み合わせが復旧作業の対象のパターンであり、これらのビルに対する復旧作業が実施されたと仮定された条件で、種別が「サービスI」である通信サービス(以降、単に「サービスI」と称されることがある。)の提供に用いられる中継装置のうち引き続き通信の障害の影響を受ける中継装置が収容されるビルの数が1つであり、上記「サービスI」のユーザのうち上記の障害による両系断の影響を受けるユーザの数が150人であることが示される。
【0041】
図6に示された例では、上記仮定された条件で、種別が「サービスII」である通信サービス(以降、単に「サービスII」と称されることがある。)の提供に用いられる中継装置のうち引き続き通信の障害の影響を受ける中継装置が収容されるビルの数が1つであり、上記「サービスII」のユーザのうち上記の障害による両系断の影響を受けるユーザの数が450人であることが示される。
【0042】
図6に示された例では、上記仮定された条件で、種別が「サービスIII」である通信サービス(以降、単に「サービスIII」と称されることがある。)の提供に用いられる中継装置のうち引き続き通信の障害の影響を受ける中継装置が収容されるビルの数が1つであり、上記「サービスIII」のユーザのうち上記の障害による両系断の影響を受けるユーザの数が200人であることが示される。
【0043】
図6に示された例では、上記仮定された条件で、種別が「サービスIV」である通信サービス(以降、単に「サービスIV」と称されることがある。)の提供に用いられる中継装置のうち引き続き通信の障害の影響を受ける中継装置が収容されるビルの数が0であり、上記「サービスIV」のユーザのうち上記の障害による両系断の影響を受けるユーザの数が600人であることが示される。
【0044】
一般的な技術では、通信障害の状況に応じ、「サービスIIを救わないと多くのお客様にご迷惑がかかる。」、「サービスIIIの提供は維持しつつ、サービスIIへの影響を最小限にするためには、どのようにパラメータを付ければ良いか。」、「サービスIIIは自治体の重要システムに適用されている。」などの種々の事象が考慮されながら、復旧作業を優先させるビルの組み合わせが選定されており、多くの稼働負荷とスキルを要していた。
【0045】
次に、「サービスIII」が優先的に提供されるときの、救済対象のビルの優先度の算出の例について説明する。
図7は、復旧作業の対象であるビルの組み合わせへの復旧作業が実施された条件で、第1のポリシーの適用により算出される優先度スコアの一例を示す図である。
救済対象のビルに係る優先度スコアは、救済先ビルの候補の組み合わせ毎に、この組み合わせに係る救済先ビルへの復旧作業が行なわれたと仮定された条件における、引き続き発生する通信障害の状況に応じた重み付けが行なわれることで算出される。
【0046】
図7に示された例では、「サービスIII」の提供に用いられる中継装置が収容されるビル(以下、「サービスIII中継ビル」と称されることがある。)の内、救済先ビルへの復旧作業が行なわれたと仮定された条件において救済されなかったビル、すなわち上記条件において引き続き通信障害が発生するビルの数に応じたペナルティ(penalty)としての重み付け、および上記救済されなかったビルに収容されるユーザの数、すなわち上記引き続き発生する通信障害の影響を受ける両系断ユーザ数(以下、「サービスIII影響ユーザ数」と称されることがある。)に応じた重み付けのルールが、「サービスIII優先ポリシー」として事前に設定されて、ネットワーク管理装置10の記憶装置に記憶される。
図7に示された例では、救済先ビルの候補の組み合わせが、
図6に示されたビルCとビルFであるときの識別番号が「♯1」であるとし、この組み合わせに係るビルへの復旧作業が行なわれたと仮定された条件で、
図6に示された各ビルのうち引き続き「サービスIII」に係る通信障害が発生する「サービスIII中継ビル」が存在する状況にあるときに、この状況に「サービスIII優先ポリシー」が適用されることで(
図7の符号a参照)、1ビルあたりで加算されるスコア「30,000」が算出される。ここでは、引き続き通信障害が発生する「サービスIII中継ビル」の数は「1」であるので、引き続き通信障害が発生するビルの数に係る加算スコア「30,000」が算出される(
図7の符号b参照)。
【0047】
また、上記識別番号「♯1」の組み合わせに係るビルへの復旧作業が行なわれたと仮定された条件で、引き続き「サービスIII」に係る通信障害が発生する状況に「サービスIII優先ポリシー」が適用されることで(
図7の符号a参照)、
図6に示された各ビルに収容されるユーザのうち、引き続き発生する通信障害の影響を受ける両系断ユーザ数、ここでは上記通信障害が発生する「サービスIII中継ビル」に収容されるユーザ数(「サービスIII影響ユーザ数」)である「200」が影響ユーザ数に係る加算スコアとしてさらに算出される(
図7の符号b参照)。
【0048】
そして、救済先ビルの候補の組み合わせを実際の復旧作業の対象とするときの優先度である救済優先度のスコアは、上記ペナルティとして算出されたスコアと、上記サービスIII影響ユーザ数として算出されたスコアの合算値である。この優先度スコアが小さいほど、実際の復旧作業の対象とするときの優先度は高い。
図7に示された例では、復旧作業の組み合わせの候補がビルCとビルFであるときのペナルティに係るスコア「30,000」と、「サービスIII影響ユーザ数」に係るスコア「200」との合算値である「30,200」が、復旧作業の組み合わせの候補がビルCとビルFであるときの、この組み合わせを実際の復旧作業の対象とするときの優先度スコアとして算出される(
図7の符号c参照)。
【0049】
そして、復旧作業のビルの組み合わせの他の候補の各々、ここでは識別番号「#2」~「#4」に係る、復旧作業のビルの組み合わせの候補についても、この組み合わせに係るビルへの復旧作業が実施された条件下での引き続き障害が発生するビルの数と「サービスIII影響ユーザ数」に上記「サービスIII優先ポリシー」が適用されて、優先度スコアが算出される。
【0050】
図7に示された例では、復旧作業のビルの組み合わせの候補の識別番号「♯2」については「60,300」が優先度スコアとして算出され、復旧作業のビルの組み合わせの候補の識別番号「♯3」については「30,200」が優先度スコアとして算出され、復旧作業のビルの組み合わせの候補の識別番号「♯4」については「100」が優先度スコアとして算出される(
図7の符号c参照)。
【0051】
そして、各々の組み合わせが、当該組み合わせについて算出された優先度スコアの順にソートされ、優先度スコアが最も小さい組み合わせ、すなわち実際の復旧作業の優先度が最も高い組み合わせの識別番号は「#4」であることが特定される。
また、優先度スコアが2番目の小さい組み合わせの識別番号は「#1」、「#3」であり、優先度スコアが最も大きい組み合わせ、すなわち実際の復旧作業の優先度が最も高い組み合わせの識別番号は「#4」である。
【0052】
上記により、
図6に示されたビルAからビルFに通信の障害が発生したときで、「サービスIII」を優先して実際に復旧作業が施される建物としての優先度が最も高い建物の組み合わせは、上記識別番号「#4」に係る建物の組み合わせである。
【0053】
図8は、復旧作業の対象であるビルの第1の組み合わせへの復旧作業が実施された条件で、第1のポリシーの適用により求められる重み付けの一例を示す図である。
図8に示された例では、
図6に示されたビルA乃至ビルFに通信の障害が発生し、これらのビルのうちビルBとビルCは、「サービスIII」に用いられる中継装置が収容される「サービスIII中継ビル」である。
【0054】
そして、復旧作業のビルの組み合わせの識別番号「#1」に係るビルCとビルFに復旧作業車両、ここでは2台の電源車の各々が配備されることにより、これらのビルに係る通信の障害が復旧したと仮定された条件で、「サービスIII中継ビル」のうちビルBでは引き続き通信が発生するので、ペナルティとして、上記識別番号「#1」に係る重み付けである「30,000」が設定されることが示される。
【0055】
図9は、復旧作業の対象であるビルの第2の組み合わせへの復旧作業が実施された条件で、第1のポリシーの適用により求められる重み付けの一例を示す図である。
図9に示された例では、
図6に示されたビルA乃至ビルFに通信の障害が発生し、これらのビルのうちビルBとビルCは、上記「サービスIII中継ビル」である。
【0056】
そして、復旧作業のビルの組み合わせの識別番号「#2」に係るビルDとビルFに復旧作業車両、ここでは2台の電源車の各々が配備されることにより、これらのビルに係る通信の障害が復旧したと仮定された条件で、「サービスIII中継ビル」のうちビルBおよびビルCでは引き続き通信の障害が発生するので、ペナルティとして、上記識別番号「#1」に係る重み付けである「60,000」が設定されることが示される。
【0057】
次に「サービスII」が優先的に提供されるときの、救済対象のビルの優先度の算出の例について説明する。
図10は、復旧作業の対象であるビルの組み合わせへの復旧作業が実施された条件で、第2のポリシーの適用により算出される優先度スコアの一例を示す図である。
図10に示された例では、「サービスII」の提供に用いられる中継装置が収容されるビル(以下、「サービスII中継ビル」と称されることがある。)の内、救済先ビルへの復旧作業が行なわれたと仮定された条件において救済されなかったビル、すなわち上記条件において引き続き通信障害が発生するビルの数に応じたペナルティとしての重み付け、および上記救済されなかったビルに収容されるユーザの数、すなわち上記引き続き発生する通信障害の影響を受ける両系断ユーザ数(以下、「サービスII影響ユーザ数」と称されることがある。)に応じた重み付けのルール(rule)が、「サービスII優先ポリシー」として事前に設定されて、ネットワーク管理装置10の記憶装置に記憶される。
図10に示された例では、救済先ビルの候補の組み合わせが、
図6に示されたビルCとビルFであるときの識別番号が「♯1」であるとし、この組み合わせに係るビルへの復旧作業が行なわれたと仮定された条件で、
図6に示された各ビルのうち引き続き「サービスII」に係る通信障害が発生する「サービスII中継ビル」が存在する状況に、「サービスII優先ポリシー」が適用されることで(
図10の符号a参照)、1ビルあたりの加算スコア「5,000」が算出される。ここでは、引き続き通信障害が発生する「サービスII中継ビル」の数は「1」であるので、引き続き通信障害が発生するビルの数に係る加算スコア「5,000」が算出される(
図10の符号b参照)。
【0058】
また、上記識別番号「♯1」の組み合わせに係るビルへの復旧作業が行なわれたと仮定された条件で、引き続き「サービスII」に係る通信障害が発生する「サービスII中継ビル」が存在する状況に「サービスII優先ポリシー」が適用されることで(
図10の符号a参照)、
図6に示された各ビルに収容されるユーザのうち、引き続き発生する通信障害の影響を受ける両系断ユーザ数、ここでは上記通信障害が発生する「サービスII中継ビル」に収容されるユーザ数(「サービスII影響ユーザ数」)である「450」が影響ユーザ数に係る加算スコアとしてさらに算出される(
図10の符号b参照)。
【0059】
そして、救済優先度のスコアは、上記ペナルティとして算出されたスコアと、上記「サービスII影響ユーザ数」として算出されたスコアとの合算値である。
図10に示された例では、復旧作業の組み合わせの候補がビルCとビルFであるときのペナルティとしてのスコア「5,000」と、「サービスII影響ユーザ数」に係るスコア「450」との合算値である「5,450」が、復旧作業の組み合わせの候補であるビルCとビルFであるときの、この組み合わせを実際の復旧作業の対象とするときの優先度スコアとして算出される(
図10の符号c参照)。
【0060】
そして、復旧作業のビルの組み合わせの他の候補の各々、ここでは識別番号「#2」~「#4」に係る、復旧作業のビルの組み合わせの候補についても、この組み合わせに係るビルへの復旧作業が実施された条件下での引き続き障害が発生するビルの数と「サービスII影響ユーザ数」に上記「サービスII優先ポリシー」が適用されて、優先度スコアが算出される。
【0061】
図10に示された例では、復旧作業のビルの組み合わせの候補の識別番号「♯2」については「5,030」が優先度スコアとして算出され、復旧作業のビルの組み合わせの候補の識別番号「♯3」および「♯4」については「10,100」が優先度スコアとして算出される(
図10の符号c参照)。
【0062】
そして、各々の組み合わせが、当該組み合わせについて算出された優先度スコアの順にソートされ、優先度スコアが最も小さい組み合わせ、すなわち実際の復旧作業の優先度が最も高い組み合わせの識別番号は「#2」であることが特定される。
また、優先度スコアが2番目に小さい組み合わせの識別番号は「#1」であり、優先度スコアが最も大きい組み合わせ、すなわち実際の復旧作業の優先度が最も高い組み合わせの識別番号は「#3」および「#4」である。
【0063】
上記により、
図6に示されたビルAからビルFに通信の障害が発生したときで、「サービスII」を優先して実際に復旧作業が施される建物としての優先度が最も高い建物の組み合わせは、上記識別番号「#2」に係る建物の組み合わせである。
【0064】
図11は、復旧作業の対象であるビルの第1の組み合わせへの復旧作業が実施された条件で、第2のポリシーの適用により求められる重み付けの一例を示す図である。
図11に示された例では、
図6に示されたビルA乃至ビルFに通信の障害が発生し、これらのビルのうちビルBとビルFは「サービスII」の中継装置が収容される「サービスII中継ビル」である。
【0065】
そして、復旧作業のビルの組み合わせの識別番号「#1」に係るビルCとビルFに復旧作業車両、ここでは2台の電源車の各々が配備されることにより、これらのビルに係る通信の障害が復旧したと仮定された条件で、「サービスII中継ビル」のうちビルBでは引き続き通信が発生するので、ペナルティとして、上記識別番号「#1」に係る重み付けである「5,000」が設定されることが示される。
【0066】
図12は、復旧作業の対象であるビルの第2の組み合わせへの復旧作業が実施された条件で、第2のポリシーの適用により求められる重み付けの一例を示す図である。
図12に示された例では、
図6に示されたビルA乃至ビルFに通信の障害が発生し、これらのビルのうちビルBとビルFは、上記「サービスII中継ビル」である。
【0067】
そして、復旧作業のビルの組み合わせの識別番号「#3」に係るビルCとビルEに復旧作業車両、ここでは2台の電源車の各々が配備されることにより、これらのビルに係る通信の障害が復旧したと仮定された条件で、「サービスII中継ビル」のうちビルBおよびビルFの双方に引き続き通信の障害が発生するので、ペナルティとして、上記識別番号「#3」に係る重み付けである「10,000」が設定されることが示される。
【0068】
次に、第1の種別の通信サービスに係る上記重み付けのポリシーと、第2の種別の通信サービスに係る上記重み付けのポリシーとが、適用順に沿って適用されるときの優先度スコアの算出について説明する。
図13は、復旧作業の対象であるビルの組み合わせへの復旧作業が実施された条件で、第1のポリシーおよび第2のポリシーが順次適用されることにより算出されるスコアの一例を示す図である。
図13に示された例では、「サービスIII」に係る通信障害が発生する「サービスIII中継ビル」が存在する状況に対し
図7で説明した「サービスIII優先ポリシー」が第1の適用順位として適用される(
図13の符号a参照)。そして、組み合わせのパターンのうち、上記「サービスIII優先ポリシー」の適用により算出された優先度スコアが同じであるパターンがあるときに、これのパターンについてのみ、引き続き「サービスII」に係る通信障害が発生する「サービスII中継ビル」が存在する状況に対し「サービスII優先ポリシー」が第2の適用順位として適用される(
図13の符号a参照)。そして、この適用により算出された優先度スコアが、該当のパターンに係る優先度スコアの加算値として算出される(
図13の符号b参照)。これにより、各パターンがソートされたときの復旧作業の優先度の明確性が向上する。
【0069】
具体的には、
図7に示された、救済先のビルの組み合わせ「#1」および「#4」の各々について、「サービスIII」に係る通信障害が発生する「サービスIII中継ビル」が存在する状況に対し「サービスIII優先ポリシー」が第1の適用順位として適用されることで、上記
図7に示された例と同様の優先度スコアが算出される(
図13の符号c~f参照)。
【0070】
各々の組み合わせが、当該組み合わせについて算出された優先度スコアの順にソートされた結果、
図7に示されるように、救済先のビルの組み合わせ「#1」および「#3」の各々について算出されたペナルティおよび両系断ユーザに係るスコアが合算されてなる優先度スコアは同じ「30,200」である(
図13の符号cおよびe参照)。
そこで、これらの組み合わせ「#1」および「#3」の各々について、「サービスII」に係る通信障害が発生する「サービスII中継ビル」が存在する状況に対し「サービスII優先ポリシー」が第2の適用順位として適用されて、優先度スコアが算出される。
【0071】
この算出の結果、
図13に示されるように、救済先のビルの候補の組み合わせ「#1」について算出されたペナルティおよび両系断ユーザに係るスコアが合算されてなる、優先度スコアの加算値は「5,450」である(
図13の符号c参照)。また、救済先のビルの候補の組み合わせ「#3」について算出されたペナルティおよび両系断ユーザに係るスコアが合算されてなる、優先度スコアの加算値は「10,100」である(
図13の符号e参照)。
【0072】
上記の加算値の算出の結果、救済先のビルの候補の組み合わせ「#1」について算出された優先度スコアは、「サービスIII優先ポリシー」が第1の適用順位として適用されたときに算出されたスコア「30,200」に、「サービスII優先ポリシー」が第2の適用順位として適用されたときに算出されたスコア「5,450」が加算されてなる「35,650」に更新される(
図13の符号c参照)。
【0073】
上記の加算値の算出の結果、救済先のビルの候補の組み合わせ「#3」について算出された優先度スコアは、「サービスIII優先ポリシー」が第1の適用順位として適用されたときに算出されたスコア「30,200」に、「サービスII優先ポリシー」が第2の適用順位として適用されたときに算出されたスコア「10,150」が加算されてなる「40,300」に更新される(
図13の符号e参照)。
【0074】
そして、各々の組み合わせが、当該組み合わせについて算出された優先度スコアの順に改めてソートされ、優先度スコアが最も小さい組み合わせ、すなわち実際の復旧作業の優先度が最も高い組み合わせの識別番号は「#4」であることが特定される(
図13の符号f参照)。
また、優先度スコアが2番目に小さい組み合わせの識別番号は「#1」であり、優先度スコアが3番目に小さい組み合わせの識別番号は「#3」であり、優先度スコアが最も大きい組み合わせ、すなわち実際の復旧作業の優先度が最も高い組み合わせの識別番号は「#2」であることが特定される(
図13の符号c~e参照)。
【0075】
上記により、「サービスIII優先ポリシー」のみの適用で優先度スコアが同じであったパターンについて「サービスII優先ポリシー」の適用で算出されたスコアが加算されることで、優先度スコアに差異を生じさせることができるので、実際の復旧作業の優先度の差異が明確になり、実際の復旧作業の優先度を明確にすることができる。
【0076】
図14は、復旧作業の対象であるビルの組み合わせへの復旧作業が実施された条件で、第2のポリシーおよび第1のポリシーが順次適用されることにより算出される優先度スコアの一例を示す図である。
図14に示された例では、
図13に示された例と比較して複数種類のポリシーの適用順位が逆である。すなわち、
図7で説明した「サービスII優先ポリシー」が第1の適用順位として適用される(
図14の符号a参照)。そして、組み合わせのパターンのうち、上記「サービスII優先ポリシー」の適用により算出された優先度スコアが同じであるパターンがあるときに、これのパターンについてのみ、「サービスIII」に係る通信障害が発生する「サービスIII中継ビル」が存在する状況に対し「サービスIII優先ポリシー」が第2の適用順位として適用される(
図14の符号a参照)。そして、この適用により算出された優先度スコアが、該当のパターンに係る優先度スコアの加算値として算出される(
図14の符号b参照)。これにより、各パターンがソートされたときの復旧作業の優先度の明確性が向上する。
【0077】
具体的には、
図7に示された、救済先のビルの組み合わせ「#1」および「#4」の各々について、「サービスII優先ポリシー」が第1の適用順位として適用されることで優先度スコアが算出される(
図14の符号c~f参照)。
【0078】
各々の組み合わせが、当該組み合わせについて算出された優先度スコアの順にソートされた結果、
図7に示されるように、救済先のビルの組み合わせ「#3」および「#4」の各々について算出されたペナルティおよび両系断ユーザに係るスコアが合算されてなる優先度スコアは同じ「10,100」である(
図14の符号eおよびf参照)。
そこで、これらの組み合わせ「#3」および「#4」の各々について、「サービスIII」に係る通信障害が発生する「サービスIII中継ビル」が存在する状況に対し「サービスIII優先ポリシー」が第2の適用順位として適用されて、優先度スコアが算出される。
【0079】
この算出の結果、
図14に示されるように、救済先のビルの候補の組み合わせ「#3」について算出されたペナルティおよび両系断ユーザに係るスコアが合算されてなる、優先度スコアの加算値は「30,200」である(
図14の符号e参照)。また、救済先のビルの候補の組み合わせ「#4」について算出されたペナルティおよび両系断ユーザに係るスコアが合算されてなる、優先度スコアの加算値は「100」である(
図14の符号f参照)。
【0080】
上記の加算値の算出の結果、救済先のビルの候補の組み合わせ「#3」について算出された優先度スコアは、「サービスII優先ポリシー」が第1の適用順位として適用されたときに算出されたスコア「10,100」に、「サービスIII優先ポリシー」が第2の適用順位として適用されたときに算出されたスコア「30,200」が加算されてなる「40,300」に更新される(
図14の符号e参照)。
【0081】
上記の加算値の算出の結果、救済先のビルの候補の組み合わせ「#4」について算出された優先度スコアは、「サービスII優先ポリシー」が第1の適用順位として適用されたときに算出されたスコア「10,100」に、「サービスIII優先ポリシー」が第2の適用順位として適用されたときに算出されたスコア「100」が加算されてなる「10,200」に更新される(
図14の符号f参照)。
【0082】
そして、各々の組み合わせが、当該組み合わせについて算出された優先度スコアの順に改めてソートされ、優先度スコアが最も小さい組み合わせ、すなわち実際の復旧作業の優先度が最も高い組み合わせの識別番号は「#2」であることが特定される(
図14の符号d参照)。
また、優先度スコアが2番目に小さい組み合わせの識別番号は「#1」であり、優先度スコアが3番目に小さい組み合わせの識別番号は「#4」であり、優先度スコアが最も大きい組み合わせ、すなわち実際の復旧作業の優先度が最も高い組み合わせの識別番号は「#3」であることが特定される(
図14の符号c、e、およびf参照)。
【0083】
上記により、「サービスII優先ポリシー」のみの適用で優先度スコアが同じであったパターンについて「サービスIII優先ポリシー」の適用で算出されたスコアが加算されることで、優先度スコアに差異を生じさせることができるので、実際の復旧作業の優先度の差異が明確になり、実際の復旧作業の優先度を明確にすることができる。
【0084】
上記のように、本発明の一実施形態に係るネットワーク管理装置では、通信設備が収容される複数の建物における通信に障害が発生したときで、障害が発生した複数の建物のうち一部の建物の組み合わせに収容される通信設備に対する復旧作業により当該建物において発生した障害が復旧したと仮定された条件が適用されたときの、所定の種別の通信サービスの提供に用いられる通信設備が収容される建物で引き続き発生する前記通信の障害の状況に、当該状況に応じた重み付けが定められたポリシーが適用されることにより、前記障害が発生した前記上位階層の建物のうち、前記発生した障害を実際に復旧させる建物の候補の優先度に係るスコアを、複数種類の組み合わせの各々について算出する。
これにより、ネットワーク構成にて通信の障害が発生したときに、この障害の復旧の対象を適切に特定することができる。
【0085】
例えば、一般的な手法では、スキルを有する者による経験則から、ネットワークで発生した障害状況に合わせて、救済先のビルの優先度が人為的に付与される。しかし、この手法が用いられたときは、優先度の付与に係る判断の経緯が分かり難く、どのような考えに基づいて上記復旧の対象が特定されたのかが分かり難い。
【0086】
これに対し、本実施形態では、建物への復旧が仮定されたときの、引き続き発生する障害の状況に基づく重み付けが定められたポリシーを用いて、復旧の対象の建物の優先度が算出される。
したがって、オペレータが高度なスキルを有していなくとも、提供が優先される通信サービスが設定されることにより、復旧の対象の建物の優先度を適切に特定することができる。
【0087】
図15は、本発明の一実施形態に係るネットワーク管理装置のハードウエア構成の一例を示すブロック図である。
図15に示された例では、上記の実施形態に係るネットワーク管理装置10は、例えばサーバコンピュータ(server computer)またはパーソナルコンピュータ(personal computer)により構成され、CPU等のハードウエアプロセッサ(hardware processor)111Aを有する。そして、このハードウエアプロセッサ111Aに対し、プログラムメモリ(program memory)111B、データメモリ(data memory)112、入出力インタフェース(interface)113及び通信インタフェース114が、バス(bus)120を介して接続される。
【0088】
通信インタフェース114は、例えば1つ以上の無線の通信インタフェースユニット(interface unit)を含んでおり、通信ネットワークNWとの間で情報の送受信を可能にする。無線インタフェースとしては、例えば無線LAN(Local Area Network)などの小電力無線データ通信規格が採用されたインタフェースが使用される。
【0089】
入出力インタフェース113には、ネットワーク管理装置10に付設される、利用者などにより用いられる入力デバイス(device)30および出力デバイス40が接続される。
入出力インタフェース113は、キーボード(keyboard)、タッチパネル(touch panel)、タッチパッド(touchpad)、マウス(mouse)等の入力デバイス30を通じて利用者などにより入力された操作データを取り込むとともに、出力データを液晶または有機EL(Electro Luminescence)等が用いられた表示デバイスを含む出力デバイス40へ出力して表示させる処理を行なうことができる。なお、入力デバイス30および出力デバイス40には、ネットワーク管理装置10に内蔵されたデバイスが使用されてもよく、また、ネットワークNWを介してネットワーク管理装置10と通信可能である他の情報端末の入力デバイスおよび出力デバイスが使用されてもよい。
【0090】
プログラムメモリ111Bは、非一時的な有形の記憶媒体として、例えば、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)等の随時書込みおよび読出しが可能な不揮発性メモリ(non-volatile memory)と、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリとが組み合わせて使用されたもので、一実施形態に係る各種制御処理等を実行する為に必要なプログラムが格納され得る。
【0091】
データメモリ112は、有形の記憶媒体として、例えば、上記の不揮発性メモリと、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリ(volatile memory)とが組み合わせて使用されたもので、各種処理が行なわれる過程で取得および作成された各種データまたは情報が記憶される為に用いられ得る。
【0092】
本発明の一実施形態に係るネットワーク管理装置10は、ソフトウエア(software)による処理機能部として、
図1に示されるユーザ入力部11、障害影響計算部12、優先度算出部13、配備計画処理部14、および配備計画出力部15を有するデータ処理装置として構成され得る。
【0093】
ネットワーク管理装置10の各部によるワークメモリなどとして用いられる各情報記憶部は、
図15に示されたデータメモリ112が用いられることで構成され得る。ただし、これらの構成される記憶領域はネットワーク管理装置10内に必須の構成ではなく、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリなどの外付け記憶媒体、又はクラウド(cloud)に配置されたデータベースサーバ(database server)等の記憶装置に設けられた領域であってもよい。
【0094】
上記のユーザ入力部11、障害影響計算部12、優先度算出部13、配備計画処理部14、および配備計画出力部15の各部における処理機能部は、いずれも、プログラムメモリ111Bに格納されたプログラムを上記ハードウエアプロセッサ111Aにより読み出させて実行させることにより実現され得る。なお、これらの処理機能部の一部または全部は、特定用途向け集積回路(ASIC(Application Specific Integrated Circuit))またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)などの集積回路を含む、他の多様な形式によって実現されてもよい。
【0095】
また、各実施形態に記載された手法は、計算機(コンピュータ)に実行させることができるプログラム(ソフトウエア手段)として、例えば磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク(Floppy disk)、ハードディスク(hard disk)等)、光ディスク(optical disc)(CD-ROM、DVD、MO等)、半導体メモリ(ROM、RAM、フラッシュメモリ(Flash memory)等)等の記録媒体に格納し、また通信媒体により伝送して頒布され得る。なお、媒体側に格納されるプログラムには、計算機に実行させるソフトウエア手段(実行プログラムのみならずテーブル(table)、データ構造も含む)を計算機内に構成させる設定プログラムをも含む。本装置を実現する計算機は、記録媒体に記録されたプログラムを読み込み、また場合により設定プログラムによりソフトウエア手段を構築し、このソフトウエア手段によって動作が制御されることにより上述した処理を実行する。なお、本明細書でいう記録媒体は、頒布用に限らず、計算機内部あるいはネットワークを介して接続される機器に設けられた磁気ディスク、半導体メモリ等の記憶媒体を含むものである。
【0096】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0097】
10…ネットワーク管理装置
11…ユーザ入力部
12…障害影響計算部
13…優先度算出部
14…配備計画処理部
15…配備計画出力部