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特許7568179軟包装用ラミネート用インキ組成物、印刷物、積層体又は包装体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】軟包装用ラミネート用インキ組成物、印刷物、積層体又は包装体
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/102 20140101AFI20241008BHJP
   B65D 65/42 20060101ALI20241008BHJP
   C09D 11/02 20140101ALI20241008BHJP
【FI】
C09D11/102
B65D65/42 C
C09D11/02
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2024546040
(86)(22)【出願日】2024-04-26
(86)【国際出願番号】 JP2024016603
【審査請求日】2024-08-01
(31)【優先権主張番号】P 2023108806
(32)【優先日】2023-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023146492
(32)【優先日】2023-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【弁理士】
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141601
【弁理士】
【氏名又は名称】貴志 浩充
(72)【発明者】
【氏名】青木 瑠璃
(72)【発明者】
【氏名】浅見 朋美
(72)【発明者】
【氏名】内田 秀磨
(72)【発明者】
【氏名】永川 健太郎
【審査官】橋本 栄和
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-189902(JP,A)
【文献】特開2020-189903(JP,A)
【文献】特開2020-189416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00- 11/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ジイソシアネート化合物(a1)及び数平均分子量(Mn)が700~900のポリオール(a2)を反応原料(I)とする、数平均分子量が1000~3000であるウレタン樹脂(A)を含有し、
前記ウレタン樹脂(A)は、以下の一般式(I):
【化1】
(上記一般式(I)中、R及びRはそれぞれ独立して、前記ポリオール(a2)由来の炭素原子数6~15の芳香族基を表し、Mは前記有機ジイソシアネート化合物(a1)由来の二価の有機基を表す。)
で表される部分構造を有する、軟包装用ラミネート用インキ組成物。
【請求項2】
前記一般式(I)中のMは、炭素原子数1~12のアルキレン基又は炭素原子数6~12のアリーレン基を表し、かつ前記アルキレン基中の1以上の-CH-基は、-O-又は-C(=O)-に置換されてもよい、請求項1に記載の軟包装用ラミネート用インキ組成物。
【請求項3】
ウレア結合を有するウレタン樹脂(B)をさらに含有する、請求項1又は2に記載の軟包装用ラミネート用インキ組成物。
【請求項4】
前記ウレタン樹脂(B)は、少なくともポリエステルポリオール(b2)と、ポリイソシアネート化合物(b1)と、を反応原料(II)とする化合物である、請求項3に記載の軟包装用ラミネート用インキ組成物。
【請求項5】
前記ウレタン樹脂(B)がバイオマス由来の成分を含有する、請求項4に記載の軟包装用ラミネート用インキ組成物。
【請求項6】
前記ウレタン樹脂(B)において、前記反応原料(II)中に含まれる前記ポリエステルポリオール(b2)中のバイオマス由来の成分割合が30質量%以上である、請求項5に記載の軟包装用ラミネート用インキ組成物。
【請求項7】
ガラス転移温度(Tg)が40℃以上の樹脂(C)をさらに含有する、請求項1又は5に記載の軟包装用ラミネート用インキ組成物。
【請求項8】
前記ウレタン樹脂(B)のウレタン結合濃度は、0.6mmol/g以上である請求項3に記載の軟包装用ラミネート用インキ組成物。
【請求項9】
請求項1又は5に記載の前記軟包装用ラミネート用インキ組成物の全樹脂固形分に対するウレタン樹脂(A)の割合は、1質量%~20質量%の範囲である、請求項1又は5に記載の軟包装用ラミネート用インキ組成物。
【請求項10】
請求項1又は5に記載の前記軟包装用ラミネート用インキ組成物の全樹脂固形分に対するウレタン樹脂(B)の割合は、10質量%~80質量%の範囲である、請求項1又は5に記載の軟包装用ラミネート用インキ組成物。
【請求項11】
請求項1又は5に記載の軟包装用ラミネート用インキ組成物を基材に印刷してなる印刷物。
【請求項12】
請求項11に記載の印刷物を含む積層体又は包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、軟包装用ラミネート用インキ組成物、印刷物、積層体又は包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
グラビアインキ又はフレキソインキは、被印刷体に対して美粧性、機能性を付与させる目的で広く用いられている。そして、当該被印刷体が包装材料の中でも特に食品包材として用いられる場合、ラミネート加工を施されることが一般的である。この場合、内容物の種類又は使用目的に応じて、プラスチックフィルム等の素材の表側から印刷する表刷り印刷、あるいは印刷絵柄の向き又は色の刷り順を逆にする裏刷り印刷などが選択され、様々な被印刷体あるいはラミネート加工が利用される。
従来、この様なラミネート加工に使用されるインキには、優れた分散性と高い皮膜物性とを両立しうるバインダー樹脂の組み合わせとして、ポリウレタン樹脂と塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(PVC)樹脂とが広く用いられてきた。当該ポリウレタン樹脂と塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(PVC)樹脂との組み合わせは、良好な印刷適性とラミネート用インキに求められる諸物性(基材への接着性、ラミネート強度、ボイルレトルト適性)とを達成するために必要不可欠なインキ原料である。
【0003】
しかし、持続可能な開発目標で代表されるように、人体又は環境への悪影響を及ぼしうる物質を低減する循環型社会の構築といった時代の潮流を受けて、食品包材を取り巻く法規制は世界的に厳しくなってきている。特に近年、パッケージに使用される成分及びその食品へのマイグレーションの規制等の厳格化が要求されている。また、脱プラスチックの動きも加速しており、パッケージのリサイクル性の需要が高まっている。そのため、グラビアインキ製品開発において、人体又は環境への安全性が担保された材料を用いてインキ及びパッケージ構成材料を設計する必要が生じている。
中でも、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(PVC)は、以下の(a)及び(b)の理由からパッケージのリサイクルを阻害する物質として懸念されている。
(a)塩化ビニル等の塩素系樹脂は、リサイクルの熱分解工程において塩化水素が脱離し塩酸が発生することにより機器又は配管の腐食原因となりうる。
(b)廃棄物を焼却した際に生じるエネルギーを再利用するサーマルリサイクルにおおいて、塩素系樹脂を焼却するとダイオキシン等の環境ホルモンが排出されうる。
そのため、例えば塩素を含まないPVCフリー化といった、環境対応型インキの開発が今後求められる。
また、グラビアインキ又はフレキソインキに要求されるインキ性能としては、フィルムに対する接着性、印刷物同士が接着しないための耐ブロッキング性、耐摩擦性又は耐熱性等が挙げられる(特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-272585号公報
【文献】特開2018-131624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1には、環境対応型インキとして、バイオマス由来成分を含有するバイオマス由来のポリウレタンウレア樹脂を用いる技術が開示されており、当該樹脂の特性として、印刷時の印刷適性を損なわず、裏刷り印刷に必要な印刷塗膜の耐ブロッキング性、フィルム密着性、耐溶剤性、耐版詰まり性を有し、さらにラミネート性が良好である記載している。
また、上記特許文献2には、セルロース誘導体とポリウレタン樹脂とを含有する表刷り用グラビア印刷インキ組成物により、芳香族炭化水素系溶剤を含有しない溶剤組成でありながら、優れた印刷適性を有し、かつ、広範なフィルムに対する、良好な接着性、耐熱性及び耐ブロッキング性を示す技術が開示されている。
しかしながら、特許文献1及び2に記載の技術では、耐ブロッキング性、フィルム密着性及びラミネート性が不十分であり更なる改良が求められている。
【0006】
そこで、本開示は、流動性、密着性、耐ブロッキング性、PEEL強度及びドライラミネート強度に優れたインキ層を形成できる軟包装用ラミネート用インキ組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、所定の有機ジイソシアネート化合物(a1)と、所定のポリオール(a2)とを反応原料とするウレタン樹脂(A)を用いることにより、密着性、耐ブロッキング性、PEEL強度及びドライラミネート強度に優れたインキ層を形成できることを見出し、以下の(1)~(12)のいずれかに記載の本発明を完成させるに至った。また、本開示は主に裏刷り用印刷インキ組成物に関するものであり、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(PVC)を使用しなくとも所定のインキ性能を発揮できるため、環境負荷低減にも有用である。
【0008】
[1]本開示は、有機ジイソシアネート化合物(a1)及び数平均分子量(Mn)が700~900のポリオール(a2)を反応原料(I)とする、数平均分子量が1000~3000であるウレタン樹脂(A)を含有する、軟包装用ラミネート用インキ組成物である。
【0009】
[2]前記ウレタン樹脂(A)は、以下の一般式(I):
【化1】
(上記一般式(I)中、R及びRはそれぞれ独立して、前記ポリオール(a2)由来の構造単位である炭素原子数6~15の芳香族基を表し、Mは前記有機ジイソシアネート化合物(a1)の構造単位である二価の有機基を表す。)
で表される部分構造を有する、[1]に記載の軟包装用ラミネート用インキ組成物。
【0010】
[3]前記一般式(I)中のMは、炭素原子数1~12のアルキレン基又は炭素原子数6~12のアリーレン基を表し、かつ前記アルキレン基中の1以上の-CH-基は、-O-又は-C(=O)-に置換されてもよい、[1]又は[2]に記載の軟包装用ラミネート用インキ組成物。
【0011】
[4]ウレタン樹脂(B)をさらに含有する、[1]~[3]のいずれかに記載の軟包装用ラミネート用インキ組成物。
【0012】
[5]ガラス転移温度(Tg)が40℃以上の樹脂(C)をさらに含有する、[1]~[4]のいずれかに記載の軟包装用ラミネート用インキ組成物。
【0013】
[6]前記ウレタン樹脂(B)は、少なくともポリエステルポリオール(b2)と、ポリイソシアネート化合物(b1)と、を反応原料(II)とする化合物である、[4]~[5]のいずれかに記載の軟包装用ラミネート用インキ組成物。
【0014】
[7]前記ウレタン樹脂(B)がバイオマス由来の成分を含有する、[4]~[6]のいずれかに記載のリキッドインキ組成物。
【0015】
[8]前記ウレタン樹脂(B)において、前記反応原料(II)中に含まれる前記ポリエステルポリオール(b2)中のバイオマス由来の成分割合が30質量%以上である、[4]~[7]のいずれかに記載のリキッドインキ組成物。
【0016】
[9]前記ウレタン樹脂(B)のウレタン結合濃度は、0.6mmol/g以上である、[4]~[8]のいずれかに記載の軟包装用ラミネート用インキ組成物。
【0017】
[10]前記ウレタン樹脂(B)がウレア結合を有する、[4]~[9]のいずれかに記載の軟包装用ラミネート用インキ組成物。
【0018】
[11][1]~[10]のいずれかに記載の前記軟包装用ラミネート用インキ組成物の全樹脂固形分に対するウレタン樹脂(A)の割合は、1~20質量%の範囲である、[1]~[8]のいずれかに軟包装用ラミネート用インキ組成物。
【0019】
[12][1]~[11]のいずれかに記載の前記軟包装用ラミネート用インキ組成物の全樹脂固形分に対するウレタン樹脂(B)の割合は、10~80質量%の範囲である、請求項1又は4に記載の軟包装用ラミネート用インキ組成物。
【0020】
[13][1]~[12]のいずれかに記載の軟包装用ラミネート用インキ組成物を基材に印刷してなる印刷物。
【0021】
[14][13]に記載の印刷物を含む積層体又は包装体。
【発明の効果】
【0022】
本開示によれば、流動性、密着性、耐ブロッキング性、PEEL強度及びドライラミネート強度に優れたインキ層を形成できる軟包装用ラミネート用インキ組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と言う。)について詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。また、なお、本実施形態において、A(数値)~B(数値)は、A以上B以下を意味する。
【0024】
[定義]
本明細書において、「インキ組成物」とは、グラビアインキ、フレキソインキ等の、印刷版を使用する印刷方法に適用されるリキッド状の印刷用インキを指し、好ましくはグラビアインキ又はフレキソインキである。
また、以下の説明で用いる「インキ」とは全て「印刷インキ」を示す。
本明細書における「部」とは全て「質量部」を示し、「インキ全量」とは、溶剤等の揮発性成分を全て含んだインキの全量を示し、「(インキ又は樹脂)固形分(全量)」とは、揮発性成分を含まない、不揮発性成分のみの全量を示す。
本明細書における「反応原料」とは、化合又は分解といった化学反応により目的の化合物を得るために用いられ、目的の化合物の化学構造を部分的に構成する化合物をいい、触媒及び溶媒は除外される。本明細書では特に、「反応原料」とは、目的のウレタン樹脂(A)又はウレタン樹脂(B)を化学反応により得るための前駆体をいう。
本明細書における「構成単位」とは、反応又は重合時に形成される化学構造の(繰り返し)単位をいい、換言すると、反応又は重合よりに形成される生成化合物において、当該反応又は重合に関与する化学結合の構造以外の部分構造をいい、いわゆる残基をいう。
【0025】
本明細書における「芳香族基」は、置換されていてもよく、あるいは無置換であってもよい。そして、「芳香族基」は、置換基の炭素原子数を含めないで、炭素原子数3~30の芳香環を有することが好ましく、炭素原子数4~26の芳香環を有することがより好ましい。そして、本明細書における「芳香族基」は、当該芳香族基中の芳香環の水素原子が、置換基、例えば、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基又はハロゲン原子に置換されてもよい。また、「芳香族基」は、複素芳香族を含み、「芳香族基」中の-CH-又は-CH=が互いに隣接しないよう、-O-、-S-又は-N=に置換されてもよい。当該芳香環の種類は、例えば、単環芳香環、縮環芳香環又は環集合芳香環等が挙げられる。前記単環芳香環としては、例えば、ベンゼン、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、トリアジン等が挙げられる。
前記縮環芳香環としては、例えば、ナフタレン、アントラセン、フェナレン、フェナントレン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、フタラジン、プテリジン、クマリン、インドール、ベンゾイミダゾール、ベンゾフラン、アクリジン等が挙げられる。前記環集合芳香環としては、例えば、ビフェニル、ビナフタレン、ビピリジン、ビチオフェン、フェニルピリジン、フェニルチオフェン、テルフェニル、ジフェニルチオフェン、クアテルフェニル等が挙げられる。また、当該芳香族基中の芳香環の水素原子が、例えば、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基又はハロゲン原子に置換されてもよい。なお、二価の芳香族基とは、「芳香族基」中の水素原子を2つ除いた基をいう。
本明細書における「アリール基」は、例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナレニル基、フェナントレニル基、アントリル基、アズレニル基、インデニル基、インダニル基、テトラリニル基等が挙げられる。また、当該「アリール基」は、当該アリール基中の芳香環の水素原子が、例えば、炭素原子数1~12のアルキル基、炭素原子数1~12のアルコキシ基、炭素原子数2~12のアルケニル基又はハロゲン原子に置換されてもよい。なお、「アリーレン基」は、前記「アリール基」から任意の水素原子を1つ除いた二価の基が挙げられる。
本明細書における「アラルキル基」としては、例えば、ベンジル基、ジフェニルメチル基、ビフェニル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。当該アラルキル基中の芳香環の水素原子が、例えば、炭素原子数1~12のアルキル基、炭素原子数2~12のアルケニル基、炭素原子数1~12のアルコキシ基又はハロゲン原子に置換されてもよい。なお、「アラルキレン基」は、前記「アラルキル基」から任意の水素原子を1つ除いた二価の基が挙げられる。
本明細書における「アリールオキシ基」は、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、アンスリルオキシ基、フェナントリルオキシ基又はピレニルオキシ基等が挙げられる。当該アリールオキシ基中の芳香環の水素原子が、例えば、炭素原子数1~12のアルキル基、炭素原子数1~12のアルコキシ基、炭素原子数2~12のアルケニル基又はハロゲン原子に置換されてもよい。
本明細書における「アリールチオ基」は、フェニルチオ基、ナフチルチオ基、アンスリルチオ基、フェナントリルチオ基又はピレニルチオ基等のアリールチオ基が挙げられる。当該アリールチオ基中の芳香環の水素原子が、例えば、炭素原子数1~12のアルキル基、炭素原子数1~12のアルコキシ基、炭素原子数2~12のアルケニル基又はハロゲン原子に置換されてもよい。
本明細書における「アルキル基」は、直鎖状、分岐状又は環状のいずれでもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、(n-)ヘプチル基、(n-)オクチル基、(n-)ノニル基、(n-)デシル基、(n-)ウンデシル基、(n-)ドデシル基又は後述のシクロアルキル基が挙げられる。「アルキレン基」は、上記アルキル基から任意の位置における1つの水素原子を除いた基であり、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、n-ブチレン基、イソブチレン基、sec-ブチレン基、tert-ブチレン基、n-ペンチレン基、イソペンチレン基、tert-ペンチレン基、ネオペンチレン基、1,2-ジメチルプロピレン基、n-ヘキシレン基、イソヘキシレン基、(n-)ヘプチレン基、(n-)オクチレン基、(n-)ノニレン基、(n-)デシレン基、(n-)ウンデシレン基、(n-)ドデシレン基又は後述のシクロアルキレン基等が挙げられる。
本明細書における「シクロアルキル基」は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基又はアダマンチル基等が挙げられる。「シクロアルキレン基」としては、前記シクロアルキル基から任意の位置における1つの水素原子を除いた基が挙げられ、例えば、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、ノルボルニルレン基又はアダマンチレン基が挙げられる。
当該シクロアルキル基又は当該シクロアルキレン基中の環式基の水素原子が、例えば、炭素原子数1~12のアルキル基、炭素原子数1~12のアルコキシ基、炭素原子数2~12のアルケニル基又はハロゲン原子に置換されてもよい。
本明細書における「アルキルチオ基」は、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、オクチルチオ基又は2-エチルヘキシルチオ基が挙げられる。
本明細書における「アルケニル基」は、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、2-ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、ビニル基、アリル基又はイソプロペニル基等が挙げられる。「アルケニレン基」は前記アルケニル基から1つの水素原子を除いた基である。
本明細書における「アルコキシ基」は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基又はノニルオキシ基等が挙げられる。「アルキレンオキサイド基」としては、例えば、エチレンオキサイド基、プロピレンオキサイド基、ブチレンオキサイド基、ペンチレンオキサイド基等の二価の基が挙げられる。
本明細書における「ハロゲン原子」は、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子等が挙げられる。
「有機基」とは、炭素原子数1~20を有する基である。そのため、上述した、「芳香族基」、「アリール基」、「アリーレン基」、「アラルキル基」、「アラルキレン基」、「アリールオキシ基」、「アリールチオ基」、「アルキル基」、「シクロアルキル基」、「アルキルチオ基」、「アルケニル基」、「アルケニレン基」、「アルコキシ基」及び「アルキレンオキサイド基」は、「有機基」に包含される。また、価数に併せて任意の水素原子を取り除くことができる。例えば、三価のアルキル基であると、アルキル基から任意の水素原子を2つ取り除いた基である。
【0026】
[軟包装用ラミネート用インキ組成物(以下、単にインキ組成物とも称する。)]
本開示は、数平均分子量が1000~3000であるウレタン樹脂(A)を必須に含有する軟包装用ラミネート用インキ組成物である。そして、当該ウレタン樹脂(A)は、有機ジイソシアネート化合物(a1)及び数平均分子量(Mn)が700~900のポリオール(a2)を反応原料(I)とする化合物である。
これにより、密着性、耐ブロッキング性、PEEL強度及びドライラミネート強度に優れるインキ層を形成しうる。
本実施形態の軟包装用ラミネート用インキ組成物は、必要により、前記ウレタン樹脂(A)以外のウレタン樹脂(B)をさらに含んでもよい。これにより、密着性、耐ブロッキング性、PEEL強度及びドライラミネート強度により優れたインキ層が形成されうる。
【0027】
また、本実施形態の軟包装用ラミネート用インキ組成物は、必要により、ガラス転移温度(Tg)が40℃以上の樹脂(C)をさらに含んでもよい。当該ガラス転移温度(Tg)が40℃以上の樹脂(C)は、後述するように、ポリビニルブチラール系樹脂、セルロース系樹脂(例えば、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート)及び塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂からなる群から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
例えば、ガラス転移温度(Tg)が40℃以上の樹脂(C)として、ポリビニルブチラール系樹脂及び/又はセルロース系樹脂を選択することにより、環境負荷低減効果をさらに発揮しうる。
本実施形態の軟包装用ラミネート用インキ組成物は、必要により、他の樹脂、顔料、有機溶剤及び添加剤からなる群から選択される1種又は2種以上をさらに含有してもよい。
【0028】
以下、本開示の軟包装用ラミネート用インキ組成物の必須成分である、ウレタン樹脂(A)と、任意成分である、ウレタン樹脂(B)と、ガラス転移温度(Tg)が40℃以上の樹脂(C)と、他の樹脂と、顔料と、有機溶剤と、添加剤とについて詳説する。
【0029】
(ウレタン樹脂(A))
本実施形態の軟包装用ラミネート用インキ組成物は、必須成分として数平均分子量が1000~3000であるウレタン樹脂(A)を含有する。そして、当該ウレタン樹脂(A)は、有機ジイソシアネート化合物(a1)及び数平均分子量(Mn)が700~900のポリオール(a2)を反応原料(I)とする化合物である。
換言すると、本実施形態におけるウレタン樹脂(A)は、有機ジイソシアネート化合物(a1)由来の構成単位と、数平均分子量(Mn)が700~900のポリオール(a2)由来の構成単位とが直接又は間接的に化学結合された構造を有する。
当該ウレタン樹脂(A)は、バインダー樹脂としてインキの密着性を向上させる機能を有するとともに、顔料分散樹脂としても機能しうる。また、ウレタン樹脂(A)はウレア結合(-NH-C(=O)-NH-)を有していない方が好ましい。
なお、本明細書でいう「構成単位」とは、反応又は重合時に形成される化学構造の繰り返し単位をいう。
【0030】
本実施形態の軟包装用ラミネート用インキ組成物において、ウレタン樹脂(A)の含有量は、前記軟包装用ラミネート用インキ組成物の全樹脂固形分に対して、1~20質量%であることが好ましく、より好ましくは3~18質量%、さらに好ましくは4~16質量%である。ウレタン樹脂(A)の含有量を1質量%以上とすることにより、良好な密着性、PEEL強度を発揮する。一方、ウレタン樹脂(A)の含有量を20質量%以下とすることにより、良好な耐ブロッキング性を発揮する。
【0031】
以下、ウレタン樹脂(A)の反応原料(I)の構成成分(有機ジイソシアネート化合物(a1)及び数平均分子量(Mn)が700~900のポリオール(a2))について説明した後、ウレタン樹脂(A)の好ましい形態について説明する。
【0032】
<有機ジイソシアネート化合物(a1)>
本実施形態のウレタン樹脂(A)に使用される有機ジイソシアネート化合物(a1)としては、一般的なポリウレタン樹脂の製造に一般的に用いられる各種公知の芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。
当該有機ジイソシアネート化合物(a1)としては、以下の一般式(ii):
【化2】
(上記一般式(ii)中、L及びLはそれぞれ独立して、単結合又は炭素原子数1~5のアルキレン基を表し、Mは二価の有機基を表す。)
で表されることが好ましい。
上記一般式(ii)中、Lは単結合又は炭素原子数1~3のアルキレン基であることが好ましい。
上記一般式(ii)中、Lは単結合又は炭素原子数1~3のアルキレン基であることが好ましい。
上記一般式(ii)中、二価の有機基は、炭素原子数1~20を有することが好ましく、炭素原子数2~18を有することがより好ましく、炭素原子数3~17を有することがさらに好ましい。「有機基」とは、炭素原子数1以上有する基をいい、炭素原子数1~20を有する炭化水素基であることが好ましい。上記二価の有機基としては、炭素原子数1~20のアルキレン基、炭素原子数1~20のアルケニレン基、炭素原子数1~20のアルキレンオキシ基、又は炭素原子数6~18のアリーレン基であることが好ましい。また、当該アルキレン基、アルケニレン基、アルキレンオキシ基又はアリーレン基中の1個又は隣接しない2個以上の-CH-は、-O-、-COO-又は-OCO-で置換されてもよい。
上記一般式(ii)中、Mは、置換基の炭素原子数を含めないで、炭素原子数3~12のアルキレン基が好ましい。
【0033】
本実施形態の有機ジイソシアネート化合物(a1)の具体例としては、例えば、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジメリールジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、mーテトラメチルキシリレンジイソシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ビス-クロロメチル-ジフェニルメタン-ジイソシアネート、2,6-ジイソシアネート-ベンジルクロライドやダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等が好ましい。これらのジイソシアネート化合物は単独で用いても、又は2種以上を混合して用いることができる。上記の有機ジイソシアネート化合物(a1)の例示の中でも、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートが好ましく、イソホロンジイソシアネートが特に好ましい。
【0034】
本実施形態のウレタン樹脂(A)の反応原料(I)において、前記有機ジイソシアネート化合物(a1)が占める割合は、反応原料(I)の総量(100質量%)に対して1~40質量%であることが好ましく、より好ましくは5~30質量%、さらに好ましくは5~25質量%である。
本実施形態の有機ジイソシアネート化合物(a1)の構成単位(有機ジイソシアネート化合物(a1)由来の構成単位、いわゆる有機ジイソシアネート化合物(a1)残基)の含有量は、ウレタン樹脂(A)(樹脂固形分)全体に対して1~50質量%の範囲で含有することが好ましく、より好ましくは5~40質量%である。ウレタン樹脂(A)100質量部に対して有機ジイソシアネート化合物(a1)の構成単位の含有量が1質量部以上であると、強靭なインキ被膜、良好な耐ブロッキング性が得られる。また40質量部以下であると、柔軟なインキ被膜が得られる。
【0035】
<ポリオール(a2)>
本実施形態のポリオール(a2)は、以下の一般式(i)で表される部分構造を有することが好ましい。
【化3】
(上記一般式(i)中、Dは、水素原子、水酸基又は炭素原子数1~15のアルキル基を表し、但し前記アルキル基中の1以上の-CH-は、-O-、-COO-又は-OCO-に置換されてよく、
及びLはそれぞれ独立して、単結合又は炭素原子数1~5のアルキレン基を表し、但し、前記アルキレン基中の1以上の-CH-は、-O-、-COO-又は-OCO-に置換されてよく、
はそれぞれ独立して、単結合又は下記一般式(a)で表される基を表し、
【化4】
(上記一般式(a)中、Lはメジン基(-CH=)又は三価の有機基を表し、Rは水素原子、炭素原子数1~8のアルキル基又は一価の芳香族基を表し、一方の*は一般式(i)中のMと化学結合する結合手を表し、他方の*は一般式(i)中のOH(水酸基)と化学結合する結合手を表す。)
はそれぞれ独立して、メジン基(-CH=)、炭素原子数3~15の三価の脂環式基、又は三価の芳香族基を表し、
niは繰り返し単位数であって、2以上の整数を表す。なお、上記一般式(i)中の*は他の原子との結合手を表す。)
【0036】
本実施形態において、上記一般式(i)中、Dは、水素原子、水酸基又は炭素原子数1~3のアルキル基であることが好ましい。
上記一般式(i)中、Lは、炭素原子数1~3のアルキレン基であることが好ましく、メチレン基が特に好ましい。但し、前記アルキレン基中の1以上の-CH-は、-O-、-COO-又は-OCO-に置換されてよい。
上記一般式(i)中、Lは、単結合又は炭素原子数1~3のアルキレン基が好ましく、単結合がより好ましい。但し、前記アルキレン基中の1以上の-CH-は、-O-、-COO-又は-OCO-に置換されてよい。
上記一般式(i)中、Lは、単結合又は上記一般式(a)で表される基であることが好ましい。
また、Lが上記一般式(a)で表される基である場合、Lはメジン基であることが好ましい。そして、Rは、無置換若しくは1以上4以下の水素原子が置換基により置換された一価の芳香族基であることが好ましく、無置換又は1以上3以下の水素原子が置換基により置換された、フェニル基、ナフチル基、フェナレニル基、フェナントレニル基、アントリル基、アズレニル基、インデニル基、インダニル基又はテトラリニル基であることがより好ましい。当該置換基としては、炭素原子数1~12のアルキル基、炭素原子数1~12のアルコキシ基、炭素原子数2~12のアルケニル基又はハロゲン原子であることが好ましい。
上記一般式(i)中、Mはメジン基又は炭素原子数4~8の三価の脂環式基(例えば、炭素原子数1~3のアルキル基に置換されてもよい、シクロヘキサン-トリイル)であることが好ましい。
上記一般式(i)中、三価の有機基としては、上記の「二価の有機基」の例示から任意の水素原子を1つ除いた基が挙げられる。
上記一般式(i)中、niは、2以上1000以下の整数であることが好ましく、2以上100以下の整数であることが好ましく、2以上10以下の整数であることが好ましく、より好ましくは2以上8以下でありうる。
【0037】
本実施形態のポリオール(a2)は、芳香環を有することが好ましく、上記一般式(i)中に芳香環を有することがより好ましい。
ポリオール(a2)が芳香環を有することにより、顔料分散性やPEEL強度、ドライラミネート強度向上の効果を発揮しやすくなる。
また別の好適なポリオール(a2)としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレンエーテルグリコール等のアルキレンオキサイド骨格を有する、ポリオールが好ましい。
本実施形態の好ましいポリオール(a2)の態様は、当該ポリオール(a2)は上記一般式(i)で表される部分構造を有し、かつ上記一般式(i)中のLが上記一般式(a)で表される基であって、Rは一価の芳香族基を表する態様である。
すなわち、本実施形態のポリオール(a2)は、以下の一般式(i-1)で表される部分構造を有することが好ましい。
【化5】
(上記一般式(i-1)中、Dは、水素原子、水酸基又は炭素原子数1~15のアルキル基を表し、但し前記アルキル基中の1以上の-CH-は、-O-、-COO-又は-OCO-に置換されてよく、
及びLはそれぞれ独立して、単結合又は炭素原子数1~5のアルキレン基を表し、
はそれぞれ独立して、メジン基(-CH=)を表し、R1’はそれぞれ独立して、一価の芳香族基を表し、
はそれぞれ独立して、メジン基(-CH=)、炭素原子数3~15の三価の脂環式基、又は三価の芳香族基を表し、
niは繰り返し単位数であって、2以上の整数を表す。なお、上記一般式(i-1)中の*は他の原子との結合手を表す。)
【0038】
上記一般式(i-1)中、R1’は、無置換若しくは1以上3以下の水素原子が置換基により置換された、フェニル基、ナフチル基、フェナレニル基、フェナントレニル基、アントリル基、アズレニル基又はインデニル基であることが好ましい。
それ以外の一般式(i-1)の記号は、一般式(i)と同様である。
【0039】
本実施形態のポリオール(a2)の特に好ましい態様は、以下の一般式(i-1.1)で表される部分構造を有することが好ましい。
【化6】
(上記一般式(i-1.1)中、Dは、水素原子、水酸基又は炭素原子数1~15のアルキル基を表し、但し前記アルキル基中の1以上の-CH-は、-O-、-COO-又は-OCO-に置換されてよく、
はそれぞれ独立して、無置換又は置換基Rにより1以上5以下の水素原子が置換されてもよい、フェニル基、ナフチル基又はフェナレニル基を表し、前記置換基Rは、炭素原子数1~12のアルキル基、炭素原子数1~12のアルコキシ基、炭素原子数2~12のアルケニル基又はハロゲン原子を表し、
niは繰り返し単位数であって、2以上の整数を表す。なお、上記一般式(i-1.1)中の*は他の原子との結合手を表す。)
上記一般式(i-1.1)中、Dは、水素原子、水酸基又は炭素原子数1~8のアルキル基であることが好ましい。
上記一般式(i-1.1)中、Rはそれぞれ独立して、無置換又は置換基Rにより1以上3以下の水素原子が置換されてもよい、フェニル基又はナフチル基を表し、前記置換基Rは、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数1~6のアルコキシ基、炭素原子数2~6のアルケニル基又はハロゲン原子を表す。
【0040】
本実施形態のポリオール(a2)の数平均分子量(Mn)が700~900である。
ポリオール(a2)の数平均分子量(Mn)が700~900であると、フィルムへの接着性及び耐ブロッキング性のバランスの観点で好ましい。ポリオール(a2)の数平均分子量が小さすぎると、硬化したウレタン樹脂の皮膜が硬くなる傾向にありフィルムへの接着性が低下する。一方、数平均分子量が大きすぎると、硬化したウレタン樹脂の皮膜が脆弱になる傾向にありインキ皮膜の耐ブロッキング性が低下する。
尚、本明細書において、数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定した値を示す。
【0041】
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC-8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0042】
〔標準ポリスチレン〕
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-550」
【0043】
本実施形態のポリオール(a2)の水酸基価は、好ましくは80~450mgKOH/g、より好ましくは100~400mgKOH/g、さらに好ましくは105~385mgKOH/gでありうる。
ポリオール(a2)の水酸基価が上記範囲であると、ウレタン結合濃度を所定に値以上に制御しやすいため、ラミネート強度がより向上しうる。
【0044】
本実施形態のウレタン樹脂(A)の反応原料(I)において、前記ポリオール(a2)が占める割合は、反応原料(I)の総量(100質量%)に対して60質量%~99質量%であることが好ましく、より好ましくは65質量%~95質量%である。
すなわち、当該ウレタン樹脂(A)のポリオール構造において、ポリオール(a2)由来の構成単位を有することにより、ラミネート強度を向上させることができるため好ましい。また、前記ウレタン樹脂(A)が必要により併用するポリオール由来の構成単位をさらに有することにより、インキの分散性や流動性を向上させることができ、また密着性向上の効果も得られるため好ましい。
本実施形態のポリオール(a2)の構成単位(ポリオール(a2)由来の構成単位、いわゆるポリオール(a2)残基)の含有量は、ウレタン樹脂(A)(樹脂固形分)全体に対して60質量%~99質量%の範囲で含有することが好ましく、より好ましくは65~95質量%である。ウレタン樹脂(A)100質量部に対してポリオール(a2)の構成単位の含有量が60質量%以上であると、該ウレタン樹脂(A)のケトン、エステル、アルコール系溶剤への溶解性が担保され、高機能バリアーフィルム上での密着性が良好となる。またインキ皮膜の該溶剤への再溶解性が良好となり、印刷物の調子再現性が向上する。また99質量%以下であると、インキ皮膜が適正な柔軟性を有するため、耐ブロッキング性が良好と成り易い。
【0045】
(ウレタン樹脂(A)の好ましい態様)
本実施形態のウレタン樹脂(A)は、数平均分子量(Mn)が1000~3000であり、好ましくは1200~3000である。ウレタン樹脂(A)の数平均分子量(Mn)が1000~3000であると、インキの組成物の耐ブロッキング性、印刷被膜の強度や耐油性、あるいは印刷被膜の光沢の観点で好ましい。
本実施形態のウレタン樹脂(A)は、以下の一般式(I):
【化7】
(上記一般式(I)中、R及びRはそれぞれ独立して、炭素原子数6~15の芳香族基を表し、Mは二価の有機基を表し、好ましくは炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基(アルキレン基又はアルケニレン基)でありうる。なお、上記一般式(I)中の*は他の原子との結合手を表す。)
で表される部分構造を有することが好ましい。
ウレタン樹脂(A)が、上記一般式(I)で表される部分構造を有することにより、密着性、耐ブロッキング性、PEEL強度及びドライラミネート強度により優れたインキ層を形成できる。
上記一般式(I)中、R及びRはそれぞれ独立して、1以上3以下の水素原子が無置換又は置換基Rにより置換されてもよい、フェニル基又はナフチル基を表すことが好ましい。前記置換基Rは、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数1~6のアルコキシ基、炭素原子数2~6のアルケニル基又はハロゲン原子を表す。
上記一般式(I)中、Mは、置換基の炭素原子数を含めないで、炭素原子数3~12のアルキレン基が好ましい。
【0046】
(ウレタン樹脂(A)の特性)
本実施形態のウレタン樹脂(A)のウレタン結合濃度は、0.9mmol/g以上であることが好ましく、1.0mmol/g以上3.0mmol/g以下であることがより好ましく、1.1mmol/g以上2.6mmol/g以下の範囲であることがさらに好ましい。ウレタン結合濃度が1.1mmol/g以上であると、ラミネート強度が特に優れる。なお、ウレタン結合濃度は下記の数式(1)により算出できる。
[数式(1)]:
ウレタン結合濃度={(W×OH+W×OH+・・・+W×OH)×1000}/(56100×S)
上記式(1)において、各々以下の通りである。
:ポリオール(a2-1)の重量
OH:ポリオール(a2-1)の水酸基価
:ポリオール(a2-2)の重量
OH:ポリオール(a2-2)の水酸基価
Wi:ポリオール(a2-i)の重量
OHi:ポリオール(a2-i)の水酸基価
:ウレタン樹脂(A)固形分の重量
なお、上記数式(1)中、ポリオール(a2-1)、ポリオール(a2-2)、ポリオール(a2-3)・・・・ポリオール(a2-i)はいずれも上記数平均分子量(Mn)が700~900のポリオール(a2)に含まれる。すなわち、ウレタン樹脂(A)の反応原料(I)としてi種類のポリオール(a2)を使用した場合、i種のポリオール(a2)それぞれの配合量と各ポリオール(a2)に対してそれぞれの水酸基価とをかけた値の合計を、上記数式(1)の分子としている。そして、上記数式(1)の分母は、得られたウレタン樹脂(A)固形分の重量であるSに56100を掛けた値としている。
【0047】
本実施形態のウレタン樹脂(A)は、一般式(I)で表される部分構造を有する樹脂のみから構成されても、あるいは一般式(I)で表される部分構造を有する樹脂を含む混合物であってもよい。
本実施形態において、ウレタン樹脂(A)(樹脂固形分)全体(100質量%)に対して、一般式(I)で表される部分構造を有する樹脂の含有量の下限は、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、32質量%以上、34質量%以上、又は36質量%以上であることが好ましくい。一方、一般式(I)で表される部分構造を有する樹脂の含有量の上限は、100質量%以下、95質量%以下、90質量%以下、80質量%以下、78質量%以下、又は74質量%以下であることが好ましい。一般式(I)で表される部分構造を有するウレタン樹脂(A)の含有量の好ましい範囲は、ウレタン樹脂(A)(樹脂固形分)全体(100質量%)に対して、10質量%~100質量%、20質量%~95質量%、30質量%~90質量%及び32質量%~80質量%の順で好ましい。当該一般式(I)で表される部分構造を有する樹脂の含有量の範囲が、10質量%以上100質量%以下であると強靭なインキ被膜、良好な密着性、PEEL強度が得られる。なお、上記上限及び下限は適宜組み合わせすることができる。
本実施形態において、インキ組成物の全樹脂固形分(100質量%)に対して、一般式(I)で表される部分構造を有する樹脂の含有量の下限は、1質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、8質量%以上、12質量%以上、又は15質量%以上であることが好ましくい。一方、一般式(I)で表される部分構造を有する樹脂の含有量の上限は、100質量%以下、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、64質量%以下、又は61質量%以下であることが好ましい。
一般式(I)で表される部分構造を有するウレタン樹脂(A)の含有量の範囲は、インキ組成物の全樹脂固形分(100質量%)に対して、1質量%~100質量%、5質量%~80質量%及び12質量%~64質量%の順で好ましい。なお、上記上限及び下限は適宜組み合わせすることができる。
【0048】
(ウレタン樹脂(B))
本実施形態の軟包装用ラミネート用インキ組成物は、上記ウレタン樹脂(A)以外のウレタン樹脂(B)を含有してもよい。また、ウレタン樹脂(B)は、ウレア結合を必須に有する。これにより良好な耐ボイル、耐レトルト性、耐ブロッキング性を発揮する。なお、ウレタン樹脂(B)は、ウレタン樹脂(A)とは異なる化学構造を有し、前記ウレタン樹脂(A)は、ウレア結合を有さないことが好ましい。
本実施形態の軟包装用ラミネート用インキ組成物がウレタン樹脂(A)及び当該ウレタン樹脂(A)とは異なる化学構造を有するウレタン樹脂(B)の両方を含有することにより、バインダー樹脂としてインキの密着性をより向上させる機能を有するとともに、顔料分散樹脂としても機能をより発揮しうる。
本実施形態のウレタン樹脂(B)は、ポリイソシアネート化合物(b1)と、ポリオール成分(例えば、少なくともポリエステルポリオール(b2)を含む。)と、を反応原料(II)とする化合物であることが好ましい。
換言すると、本実施形態におけるウレタン樹脂(B)は、ポリイソシアネート化合物(b1)由来の構成単位と、ポリエステルポリオール(b2)由来の構成単位とが直接又は間接的に化学結合された構造を有する。また後述するが、当該ウレタン樹脂(B)は、ポリオール成分として、ポリエステルポリオール(b2)及びポリエーテルポリオール(b3)を反応原料(II)としてもよい。すなわち、本実施形態の好ましいウレタン樹脂(B)としては、ポリイソシアネート化合物(b1)と、ポリエステルポリオール(b2)と、ポリエーテルポリオール(b3)と、を反応原料(II)とする化合物であってもよい。
なお、本明細書では便宜上、ウレタン樹脂(B)の反応原料を反応原料(II)とし、ウレタン樹脂(A)の反応原料を反応原料(I)として両者を区別している。
【0049】
本実施形態の軟包装用ラミネート用インキ組成物において、ウレタン樹脂(B)の含有量は、軟包装用ラミネート用インキ組成物の全樹脂固形分全体(100質量%)に対して、10質量%~80質量%であることが好ましく、より好ましくは15質量%~78質量%、さらに好ましくは18質量%~75質量%であり、20質量%~75質量%であることがよりさらに好ましい。ウレタン樹脂(B)の含有量を10質量%以上とすることにより、良好な耐ボイル、耐レトルト性、耐ブロッキング性を発揮する。一方、ウレタン樹脂(B)の含有量を80質量%以下とすることにより、適度なインキ粘度、良好な印刷適性を発揮する。
なお、ウレタン樹脂(B)は、ウレタン結合を有し、かつウレタン樹脂(A)以外の樹脂をいう。
【0050】
<ポリイソシアネート化合物(b1)>
本実施形態のウレタン樹脂(B)の反応原料(II)には、ポリイソシアネート化合物(b1)を含有する。本実施形態のインキ組成物におけるウレタン樹脂(B)に使用されるポリイソシアネート化合物(b1)は、イソシアネート基を2以上有する化合物が好ましく、ジイソシアネート化合物がより好ましい。当該ポリイソシアネート化合物(b1)としては、上記公知のポリウレタン樹脂の製造に一般的に用いられる各種公知の芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。ポリイソシアネート化合物(b1)としては、上記有機ジイソシアネート化合物(a1)と同様のイソシアネート化合物を使用することができ、例えば、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジメリールジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、mーテトラメチルキシリレンジイソシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ビス-クロロメチル-ジフェニルメタン-ジイソシアネート、2,6-ジイソシアネート-ベンジルクロライドやダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等があげられる。これらのジイソシアネート化合物は単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0051】
本実施形態のウレタン樹脂(B)の反応原料(II)において、前記ポリイソシアネート化合物(b1)が占める割合は、反応原料(II)の総量(100質量%)に対して1質量%~40質量%であることが好ましく、5質量%~30質量%であることがより好ましい。
また、ウレタン樹脂(B)中のポリイソシアネート化合物(b1)の構成単位の含有量は、ウレタン樹脂(B)に対して、好ましくは1質量%~40質量%の範囲、より好ましくは5質量%~30質量%の範囲で含有することが好ましい。ポリイソシアネート化合物(b1)が1質量%以上であると、強靭なインキ被膜が得られる。また40質量%以下であると、柔軟なインキ被膜が得られる。
【0052】
<ポリエステルポリオール(b2)>
本実施形態のウレタン樹脂(B)の反応原料(II)には、少なくともポリエステルポリオール(b2)を含有する。すなわち、ウレタン樹脂(B)のポリオール成分としてポリエステルポリオール(b2)を必須とする。そのため、必要により、反応原料(II)にはポリエーテルポリオール(b3)及び/又は併用されるポリオールをさらに含有してもよい。
本実施形態のウレタン樹脂(B)の一態様として、ポリエステルポリオール(b2)及びポリエーテルポリオール(b3)を反応原料(II)の一部とする場合、前記ポリエステルポリオール(b2)及びポリエーテルポリオール(b3)の総質量においてポリエステルポリオール(b2)の質量割合が多いことが好ましい。
本実施形態のウレタン樹脂(B)の反応原料(II)において、前記ポリエステルポリオール(b2)及び前記ポリエーテルポリオール(b3)の合計が占める割合は、反応原料(II)の総量(100質量%)に対して40質量%~99質量%であることが好ましく、50質量%~95質量%であることがより好ましい。
本実施形態のウレタン樹脂(B)の反応原料(II)において、前記ポリエステルポリオール(b2)が占める割合は、反応原料(II)の総量(100質量%)に対して40質量%~95質量%であることが好ましく、50質量%~95質量%であることがより好ましい。
すなわち、当該ウレタン樹脂(B)のポリオール構造において、ポリエステルポリオール(b2)由来の構成単位を有することにより、ラミネート強度を向上させることができるため好ましい。また、さらにポリエーテルポリオール(b3)由来の構成単位を有することにより、インキの分散性や流動性を向上させることができ、また密着性向上の効果も得られるため好ましい。
【0053】
本実施形態において、ポリオール構造(水酸基を2個以上有する構造)におけるポリエステルポリオール(b2)及びポリエーテルポリオール(b3)の質量割合((b2):(b3))は、具体的には、45:55~100:0の範囲であることが好ましく、50:50~100:0の範囲であることがより好ましく、55:45~99:1の範囲であることが更に好ましい。
当該ポリエステルポリオール(b2)及びポリエーテルポリオール(b3)の質量割合が45:55~100:0の範囲内であれば、ブロッキングしにくい印刷物を得ることができ好ましい。当該質量割合が55:45~99:1の範囲内であれば、特にラミネート強度、密着性及びインキの分散性に優れたインキを得られるため好ましい。
また、本実施形態の軟包装用ラミネート用インキ組成物において、ポリビニルブチラール系樹脂を併用する場合は、当該ポリエステルポリオール(b2)及びポリエーテルポリオール(b3)の質量割合が55:45~99:1の範囲内であれば相溶性が良好のため、好適な保存安定性や流動性を得ることができる。
【0054】
本実施形態のポリエステルポリオール(b2)は、低分子ポリオールと、多価カルボン酸あるいはこれらの無水物と、を脱水縮合又は重合させて得られる化合物であることが好ましい。前記ポリエステルポリオール(b2)は、エステル基を導入して凝集エネルギーを高めることで、ラミネート強度をより一層高めることができる。
【0055】
上記低分子ポリオールとしては、公知のポリエステルポリオールの製造に一般的に用いられる各種公知の水酸基を2個以上有する化合物を用いることができる。例えば、ポリエステルポリオール(b2)として1種又は2種以上の化合物を併用してもよい。前記低分子ポリオールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等のグリコール;2-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2-イソプロピル-1,4-ブタンジオール、2,4-ジメチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-エチル-1,6-ヘキサンジオール、3,5-ヘプタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール等の分岐構造を有するグリコール;グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等を用いることができる。
【0056】
上記多価カルボン酸あるいはこれらの無水物としては、公知のポリエステルポリオールの製造に一般的に用いられる各種公知の多価カルボン酸を用いることができる。また、前記多価カルボン酸あるいはこれらの無水物は、1種又は2種以上の化合物を併用してもよく、具体的には、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸及びこれらの酸の無水物等の炭素原子数が6以下かつカルボキシル基を2つ以上有するポリカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸及びこれらの酸の無水物等の芳香族ジカルボン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸、トリメリット酸及びその無水物等のトリカルボン酸、ベンゼンテトラカルボン酸、ベンゼンペンタカルボン酸、ベンゼンヘキサカルボン酸及びこれらの酸の無水物等を用いることができる。
【0057】
また、ポリエステルポリオール(b2)は、環状エステル化合物、例えばポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオール類のような、公知のポリウレタン樹脂の製造に一般的に用いられる各種公知のポリエステルポリオールを用いてもよく、1種又は2種以上の化合物を併用してもよい。
【0058】
前記ポリエステルポリオール(b2)の数平均分子量としては、500~8,000の範囲であることが好ましく、800~7,000の範囲であることがより好ましく、900~6,000の範囲であることが更に好ましく、900超6,000以下の範囲であることがより更に好ましい。
【0059】
ポリエステルポリオール(b2)の構成単位の含有量は、ウレタン樹脂(B)に対して、好ましくは40質量%~85質量%の範囲、より好ましくは50質量%~80質量%の範囲で含有することが好ましい。ウレタン樹脂(B)100質量部に対してポリエステルポリオール(b2)が40質量部以上であると、該ウレタン樹脂(B)のケトン、エステル、アルコール系溶剤への溶解性が担保され、高機能バリアーフィルム上での密着性が良好となる。またインキ皮膜の該溶剤への再溶解性が良好となり、印刷物の調子再現性が向上する。また85質量部以下であると、インキ皮膜が適正な柔軟性を有するため、耐ブロッキング性が良好と成り易い。
【0060】
<ポリエーテルポリオール(b3)>
本実施形態のウレタン樹脂(B)の反応原料(II)として、ポリエーテルポリオール(b3)を含有してもよい。前記反応原料(II)の任意成分であるポリエーテルポリオール(b3)としては、公知のポリウレタン樹脂の製造に一般的に用いられる各種のポリエーテルポリオールを用いることができ、1種又は2種以上を併用してもよい。例えば、酸化メチレン、酸化エチレン、酸化プロピレン、テトラヒドロフラン等の重合体又は共重合体のポリエーテルポリオール類が挙げられる。具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等公知汎用のものでよい。ポリエーテルポリオールを含有することにより、特に高機能バリアーフィルム上での密着性が大幅に向上し、結果として耐ブロッキング性、ラミネート強度が優れるようになる。
【0061】
ポリエーテルポリオール(b3)は、数平均分子量が100~3500ものであることが好ましい。前記ポリエーテルポリオールの数平均分子量が100より小さいと、ポリウレタン樹脂の皮膜が硬くなる傾向にありポリエステルフィルムへの接着性が低下する。数平均分子量が3500より大きい場合、得られる樹脂の皮膜が脆弱になる傾向にありインキ皮膜の耐ブロッキング性が低下する。
【0062】
本実施形態のウレタン樹脂(B)の反応原料(II)において、前記ポリエステルポリオール(b2)が占める割合は、反応原料(II)の総量(100質量%)に対して40質量%~95質量%であることが好ましく、50質量%~95質量%であることがより好ましい。
反応原料(II)がポリエーテルポリオール(b3)を含有する場合、ポリエーテルポリオール(b3)の構成単位は、ウレタン樹脂(B)に対して1質量%~40質量%の範囲で含有することが好ましい。ウレタン樹脂(B)100質量部に対してポリエーテルポリオールが1質量部以上であると、該ウレタン樹脂(B)のケトン、エステル、アルコール系溶剤への溶解性が担保され、高機能バリアーフィルム上での密着性が良好となる。またインキ皮膜の該溶剤への再溶解性が良好となり、印刷物の調子再現性が向上する。また40質量部以下であると、インキ皮膜が適正な柔軟性を有するため、耐ブロッキング性が良好と成り易い。
【0063】
本実施形態のウレタン樹脂(A)の反応原料(I)及び/又はウレタン樹脂(B)の反応原料(II)は、必要により併用ポリオールをさらに含有してもよい。
本実施形態の軟包装用ラミネート用インキ組成物で使用するウレタン樹脂(A)及び/又は(B)に必要に応じて使用される併用ポリオールとしては、ポリウレタン樹脂の製造に一般的に用いられる各種公知のポリオールを用いることができ、1種又は2種以上を併用してもよい。例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2メチル-1,3プロパンジオール、2エチル-2ブチル-1,3プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3-メチル-1,5ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4-ブチンジオール、1,4-ブチレンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6-ヘキサントリオール、1,2,4-ブタントリオール、ソルビトール、ペンタエスリトール等の飽和又は不飽和の低分子ポリオール類(1);前記低分子ポリオール類等と、例えばジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、ホスゲン等との反応によって得られるポリカーボネートポリオール類(2);ポリブタジエングリコール類(3);ビスフェノールAに酸化エチレン又は酸化プロピレンを付加して得られるグリコール類(4);1分子中に1個以上のヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロプル、アクリルヒドロキシブチル等、或いはこれらの対応するメタクリル酸誘導体等と、例えばアクリル酸、メタクリル酸又はそのエステルとを共重合することによって得られるアクリルポリオール(4)等が挙げられる。
【0064】
なお、上述した併用ポリオールとしてポリエステルポリオール(b2)及び/又はポリエーテルポリオール(b3)を含む場合は、併用ポリオールに含まれるポリエステルポリオール(b2)及び/又はポリエーテルポリオール(b3)の含有量も、ウレタン樹脂(B)のポリオール構造におけるポリエステルポリオール(b2)及び/又はポリエーテルポリオール(b3)の質量にそれぞれ含まれる。
また、ウレタン樹脂(B)の反応原料(II)において、鎖伸長剤等のアミン化合物を含有しうる。当該アミン化合物としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミン等の他、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピルジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2-ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、シクロへキシルアミン、ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ-n-ブチルアミン等のジアルキルアミン類等分子内に水酸基を有するアミン類が挙げられる。ウレタン樹脂(B)の反応原料(II)に、上記アミン化合物を含むことにより、ウレタン樹脂(B)内にウレア結合を容易に導入しやすくなる。また、ウレタン樹脂(B)内のウレア結合は、分子構造的に当該ウレア結合部分の回転の自由度が低いため、組成物全体の高剛性を確保しやすくなる。そのため、本実施形態のウレタン樹脂(B)が、ウレタン結合及びウレア結合の双方を有することにより、高い剛性及び伸び性能が向上しやすい。
【0065】
本実施形態のウレタン樹脂(B)において、上記の反応原料(II)として、バイオマス由来の原料を含有することが好ましい。本実施形態のウレタン樹脂(B)は、ポリイソシアネート化合物(b1)と、少なくともポリエステルポリオール(b2)及び必要に応じてポリエーテルポリオール(b3)とを反応原料(II)とする化合物であるが、当該反応原料(II)において、バイオマスはどの材料であってもよい。好ましくはポリエステルポリオール(b2)及び/又はポリエーテルポリオール(b3)を構成する少なくとも一つ以上の成分又はその原料がバイオマスであることが好ましい。より詳細には、「ポリエステルポリオール(b2)を構成する少なくとも一つ以上の原料がバイオマスである」とは、ポリエステルポリオール(b2)を構成する全炭素原子の少なくとも一部が、バイオマス由来の炭素原子を含むことをいう。そして、当該ポリエステルポリオール(b2)は、上記の通り、低分子ポリオールと、多価カルボン酸あるいはこれらの無水物と、を脱水縮合又は重合させて得られる化合物である場合、低分子ポリオール及び/又は多価カルボン酸あるいはこれらの無水物がバイオマスであることをいう(換言すると、低分子ポリオール及び/又は多価カルボン酸あるいはこれらの無水物中の全炭素原子中に、バイオマス由来の炭素原子を含む。)。同様に、ポリエーテルポリオール(b3)を構成する少なくとも一つ以上の成分又はその原料がバイオマスであるとは、ポリエーテルポリオール(b3)を構成する全炭素原子の少なくとも一部が、バイオマス由来の炭素原子を含むことをいう。
なお、バイオマスとは、エネルギー又は物質に再生が可能な、動植物から生成された有機性資源(例えば、農林水産物又はその一部、稲わら、もみがら、食品廃棄物、家畜排泄物又は木くず等)をいい、石油・石炭等の化石燃料は除く。
例えば、ポリエステルポリオール(b2)がバイオマスから構成される場合、当該ポリエステルポリオール(b2)の原料である多価カルボン酸あるいはこれらの無水物が、バイオマス由来の炭素原子を含むことが好ましい。
当該バイオマス由来の炭素原子を含む多価カルボン酸としては、例えば、アジピン酸(例えば、微生物を用いて得られたアジピン酸 例えば、国際公開第2012/137771号参照)、アゼライン酸(例えば、オリーブ油から単離されたオレイン酸をオゾン分解して得られたアゼライン酸)、セバシン酸(例えば、ひまし油から得られるリシノール酸を高温でアルカリ処理する方法により得られたセバシン酸 例えば特表2001?5118
09号公報参照)、ドデカンジカルボン酸、無水マレイン酸(例えば、国際公開第2016/198744号の方法により得られた無水マレイン酸)、フマル酸(例えば、トウモロコシの穂軸等から得られるフマル酸 例えば、国際公開第2011/059013号参照)、コハク酸(前記フマル酸を水素化することにより得られるコハク酸)、1,4-ブタンジオール(前記フマル酸を水素化することにより得られる1,4-ブタンジオール酸)、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、フタル酸(例えば、国際公開2014/043468号又は特表2019-507757号公報に記載の方法により得られる。)、これらの酸の無水物等をバイオマス由来原料とすることができ、これらの多塩基酸は単独で用いても2種以上を併用してもよい。また、低分子ポリオールとして公知のバイオマス由来の各種アルコールを使用してもよい。
また、ポリエーテルポリオール(b3)自体又はその原料をバイオマスとしてもよく、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等を用いることができる。
より環境に配慮したインキを得るためには、ウレタン樹脂(B)におけるバイオマスの割合が高いことが望ましい。例えば、ウレタン樹脂(B)において、反応原料(II)のポリエステルポリオール(b3)としてバイオマスを用いる場合、当該ポリエステルポリオール(b3)中のバイオマス由来の固形成分の割合が、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることが更に好ましい。
例えば、ポリエステルポリオール(b3)が、バイオマスの低分子ポリオール及び/又はバイオマスの多価カルボン酸あるいはこれらの無水物を用いて脱水縮合又は重合させて得られる化合物である場合、前記ポリエステルポリオール(b3)中のバイオマスの低分子ポリオール残基とバイオマスの多価カルボン酸あるいはこれらの無水物残基との合計含有量(固形成分)の割合が、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることが更に好ましい。
当該ポリエステルポリオール(b3)中のバイオマス由来の固形成分の割合は、仕込み量から計算することができる。
【0066】
本実施形態のウレタン樹脂(B)(固形分)のバイオマス炭素含有率(%)の下限は、30%以上、33%以上、35%以上、37%以上、40%以上、45%以上、48%以上、50%以上の順で好ましい。一方、前記バイオマス炭素含有率(%)の上限は、100%以下、90%以下、80%以下、73%以下、68%以下の順で好ましい。当該上限及び下限は任意に組み合わせできる。例えば、好ましいウレタン樹脂(B)(固形分)のバイオマス炭素含有率(%)の範囲は、30%以上であることが好ましく、30%以上90%以下であることがより好ましく、32%以上80%以下であることがさらに好ましく、42%以上73%以下であることがさらに好ましい。ウレタン樹脂(B)のバイオマス炭素含有率(%)が10%以上であると、環境負荷低減の効果を発揮することができる。
本実施形態の軟包装用ラミネート用インキ組成物(固形分)のバイオマス炭素含有率(%)の下限は、30%以上、33%以上、35%以上、37%以上、40%以上、45%以上、48%以上、50%以上の順で好ましい。一方、前記バイオマス炭素含有率(%)の上限は、100%以下、90%以下、80%以下、73%以下、68%以下の順で好ましい。当該上限及び下限は任意に組み合わせできる。例えば、好ましい軟包装用ラミネート用インキ組成物(固形分)のバイオマス炭素含有率(%)の範囲は、30%以上であることが好ましく、30%以上90%以下であることがより好ましく、32%以上80%以下であることがさらに好ましく、42%以上73%以下であることがさらに好ましい。ウレタン樹脂(B)のバイオマス炭素含有率(%)が30%以上であると、環境負荷低減の効果を発揮することができる。
本明細書における「バイオマス炭素含有率(%)」は、放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)に対して補正割合である0.93をかけた補正値であって、かつ前記補正値が100%以上の場合は、100%とみなしている。
本明細書における放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)とは、バイオマス由来成分の炭素濃度(質量比率)を示すものであり、いわゆるバイオマスの配合比率に関係する。
より詳細には、ASTM-D6866(特にASTM D6866 B法)に準拠した放射性炭素(14C)測定方法によって得られた放射性炭素(14C)の含有比の値である。放射性炭素(14C)は、5730年の半減期で窒素(14N)に放射壊変する性質を有することが知られている。そして、地球上において宇宙から降り注ぐ宇宙線の作用により絶えず極微量生成される放射性炭素(14C)は、二酸化炭素14COに酸化され大気中に拡散した後に食物連鎖の過程で動植物の中に取り込まれ、当該食物連鎖を介して環境中を循環しながら半減期に従って消滅する。そのため、放射性炭素(14C)測定方法は、化石燃料は放射性炭素(14C)を実質的に含まず、かつバイオマス(又は生物)由来炭素は成長した時期の大気中の放射性炭素(14C)を吸収していることを利用しており、バイオマス(又は生物)に含まれる炭素中の放射性炭素(14C)比率から放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)を推定する方法である。したがって、放射性炭素( C)の含有比(pMC%)の値が大きいほど、化石燃料の使用量が少なく、環境負荷低減の効果を発揮しうる。そのため、放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)の値が、再生可能な、生物由来の有機性資源であるバイオマスの配合比率を示す指標(=バイオマス炭素含有率(%))に関係する。
本実施形態のウレタン樹脂(B)(固形分)又は軟包装用ラミネート用インキ組成物(固形分)中の全炭素原子中に含まれる放射性炭素(14C)の割合を測定することにより、バイオマス由来の炭素の割合を算出することができる。本開示においては、後述の実施例の欄で記載する方法を用いて、以下の数式(2)又は(3)により、ウレタン樹脂(B)(固形分)又は軟包装用ラミネート用インキ組成物(固形分)の放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)を算出している。そして、下記の数式(4)に示すように、ウレタン樹脂(B)(固形分)又は軟包装用ラミネート用インキ組成物(固形分)の放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)に0.93をかけて、1950年以降から現代に至る大気圏核実験の影響を加味した値をバイオマス炭素含有率(%)とした。
[数式(2)]:
放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)=[{ウレタン樹脂(B)(固形分)中の放射性炭素(14C)÷ウレタン樹脂(B)(固形分)の炭素(12C)}/{標準物質の放射性炭素(14C)/標準物質の炭素(12C)}×100]
[数式(3)]:
放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)=[{軟包装用ラミネート用インキ組成物(固形分)中の放射性炭素(14C)÷軟包装用ラミネート用インキ組成物(固形分)の炭素(12C)}/{標準物質の放射性炭素(14C)/標準物質の炭素(12C)}×100]
(上記数式(2)及び(3)中、標準物質は、米国標準技術研究所が年代測定法の標準物質として供給するシュウ酸(SRM4990C)を後述の実施例の欄に記載の測定用のグラファイトと同じ前処理方法でグラファイトに変換したものを使用した。)
[数式(4)]:
バイオマス炭素含有率(%)=上記数式(2)又は(3)から算出した放射性炭素( C)の含有比(pMC%)×0.93
なお、1950年以降の大気圏核実験の影響を受けて、人工的に大気中に注入された放射性炭素(14C)により、通常の約1.5倍量の放射性炭素(14C)が観測されている。しかし、時間の経過とともに徐々に減少しており、現在の値は107.5(pMC%)付近である。そのため、本開示においても、ASTM D6866の規格と同様に放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)に0.93(=100/107.5)をかけた値をバイオマス炭素含有率(%)と規定している。ただし、上記数式(4)を用いた手法を採用しても100%以上の値が算出される場合が生じる。そこで、本開示ではASTMの規格と同様に、バイオマス炭素含有率(%)の値が100%以上の値である場合、100%とみなしている。
本実施形態において、放射性炭素(14C)の濃度測定は、タンデム加速器及び質量分析計を組合せた加速器質量分析(AMS:Accelerator Mass Spectrometry)によって、分析する試料に含まれる炭素原子の同位体(具体的には C,13C,14Cが挙げられる。)を原子の重量差を利用して加速器により物理的に分離し、同位体の原子一つ一つの存在量を計測する方法を用いて測定している。
また、前記分析する試料については、ウレタン樹脂(B)(固形分)又は軟包装用ラミネート用インキ組成物(固形分)であり、前処理が必要となる。具体的には、後述の実施例の欄に記載した通り、これら試料に含まれる炭素を酸化処理し、すべて二酸化炭素へと変換する。更に、得られた二酸化炭素を水や窒素と分離し、二酸化炭素を還元処理し、固形炭素であるグラファイトへと変換する。この得られたグラファイトを測定用試料とし、当該試料にCsなどの陽イオンを照射して炭素の負イオンを生成させ、3MVタンデム加速器を用いて炭素イオンを加速し、負イオンから陽イオンへ荷電変換させ、質量分析電磁石により123+133+143+の進行する軌道を分離し、143+は静電分析器により測定を行う方法を本実施形態の加速器質量分析は採用している。
なお、前処理した試料から得られたグラファイトに含まれる炭素同位体12C、13C及び14Cは、同じ速度で加速され質量分析電磁石の磁場により、飛翔ラインが曲げられる。その際、12C、13Cは内側に、最も重い14Cが曲折部の一番外側を飛翔する。また、12C、13Cの量は存在数が多いため電流としてファラディカップ検出器により、14Cは電離箱形のイオン検出器により、それぞれ1個ずつ、計数される。
【0067】
本実施形態のポリエステルポリオール(b2)の水酸基価は、好ましくは15mgKOH/g~285mgKOH/g、より好ましくは18mgKOH/g~285mgKOH/g、さらに好ましくは20mgKOH/g~165mgKOH/g、よりさらに好ましくは20mgKOH/g~115mgKOH/gでありうる。
ポリエステルポリオール(b2)の水酸基価が上記範囲であると、ウレタン結合濃度を所定に価以上に制御しやすいため、ラミネート強度がより向上しうる。
本実施形態のポリエーテルポリオール(b3)の水酸基価は、好ましくは15mgKOH/g~285mgKOH/g、より好ましくは18mgKOH/g~285mgKOH/g、さらに好ましくは20mgKOH/g~165mgKOH/g、よりさらに好ましくは20mgKOH/g~115mgKOH/gでありうる。
ポリエーテルポリオール(b3)の水酸基価が上記範囲であると、ウレタン結合濃度を所定に価以上に制御しやすいため、ラミネート強度がより向上しうる。
【0068】
本実施形態のウレタン樹脂(B)のウレタン結合濃度は、0.6mmol/g以上であることが好ましく、0.7mmol/g以上2.5mmol/g以下であることがより好ましく、0.8mmol/g以上2.0mmol/g以下の範囲であることがさらに好ましい。ウレタン結合濃度が0.6mmol/g以上であると、ラミネート強度が特に優れる傾向を示す。なお、ウレタン結合濃度は下記の数式(5)により算出できる。
[数式(5)]:
ウレタン結合濃度={(Wb1×OHb1+Wb2×OHb2+Wb3×OHb3+W ×OHb4+Wb5×OHb5+Wb6×OHb6+・・・・・+Wbj×OHbj+Wbk×OHbk)×1000}/(56100×S
上記数式(5)において、各々以下の通りである。
b1:ポリエステルポリオール(b2-1)の重量
OHb1:ポリエステルポリオール(b2-1)の水酸基価
b2:ポリエーテルポリオール(b3-1)の重量
OHb2:ポリエーテルポリオール(b3-1)の水酸基価
b3:ポリエステルポリオール(b2-2)の重量
OHb3:ポリエステルポリオール(b2-2)の水酸基価
b4:ポリエーテルポリオール(b3-2)の重量
OHb4:ポリエーテルポリオール(b3-2)の水酸基価
b5:ポリエステルポリオール(b2-3)の重量
OHb5:ポリエステルポリオール(b2-3)の水酸基価
b6:ポリエーテルポリオール(b3-3)の重量
OHb6:ポリエーテルポリオール(b3-3)の水酸基価
bj:ポリエステルポリオール(b3-j)の重量
OHbj:ポリエステルポリオール(b3-j)の水酸基価
bk:ポリエーテルポリオール(b3-k)の重量
OHbk:ポリエーテルポリオール(b3-k)の水酸基価
:ウレタン樹脂(B)固形分の重量
なお、上記数式(5)中、ポリエステルポリオール(b2-1)、ポリエステルポリオール(b2-2)、ポリエステルポリオール(b2-3)、・・・・・、ポリエステルポリオール(b3-j)はいずれも、ポリエステルポリオール(b2)に含まれる。並びに、ポリエーテルポリオール(b3-1)、ポリエーテルポリオール(b3-2)、ポリエーテルポリオール(b3-3)、・・・・・、ポリエーテルポリオール(b3-k)はいずれもポリエーテルポリオール(b3)に含まれる。
すなわち、ウレタン樹脂(B)の反応原料として、j種類のポリエステルポリオール(b2)及びk種類のポリエーテルポリオール(b3)を使用した場合、j種のポリエステルポリオール(b2)それぞれの配合量と各ポリエステルポリオール(b2)の水酸基価とそれぞれをかけた値の合計と、k種のポリエーテルポリオール(b3)それぞれの配合量と各ポリエーテルポリオール(b3)の水酸基価とそれぞれをかけた値の合計との和を、上記数式(5)の分子としている。そして、上記数式(5)の分母は、得られたウレタン樹脂(B)固形分の重量であるSに56100を掛けた値としている。
【0069】
本実施形態にかかる軟包装用ラミネート用インキ組成物の好ましい態様としては、上記一般式(I)で表される部分構造を有するウレタン樹脂(A)と、ウレタン結合濃度0.6mmol/g以上であり、かつウレア結合及びウレタン結合を有するウレタン樹脂(B)とを含むウレタン樹脂成分を含有することが特に好ましい。
これにより、流動性、密着性、耐ブロッキング性、PEEL強度及びドライラミネート強度により優れたインキ層を形成できる軟包装用ラミネート用インキ組成物を提供しえる。特に、フィルム表面の極性基とウレタン樹脂成分のウレタン結合との相互作用により、基板との密着性がより向上する傾向を示す。
また、ウレタン樹脂(B)のウレタン結合濃度が0.6mmol/g以上にするための条件としては、(i)ウレタン樹脂(B)の反応原料(II)に使用するポリオール成分全体の分子量を下げる、(ii)反応原料(II)に配合するポリオール成分全体の水酸基価と配合比等を調整する等が挙げられる。
【0070】
(ウレタン樹脂(A)及び(B)の製造方法)
本実施形態の軟包装用ラミネート用インキ組成物におけるポリウレタン樹脂(A)及び(B)の製造方法は、例えば、ポリオール化合物と、ジイソシアネート化合物とをイソシアネート基が過剰となる割合で反応させ、末端イソシアネート基のプレポリマーを得た後、当該得られるプレポリマーを、適当な溶剤中で、鎖伸長剤及び/又は末端封鎖剤と反応させる二段法、あるいは、ポリオール化合物、ジイソシアネート化合物、鎖伸長剤及び/又は末端封鎖剤を上記のうち適切な溶剤中で一度に反応させる一段法により製造される。
前記ポリオール化合物としては、数平均分子量(Mn)が700~900のポリオール(a2)、ポリエステルポリオール(b2)及びポリエーテルポリオール(b3)(具体的には、ポリプロピレングリコール)からなる群から選択される1種又は2種以上と、必要により添加される併用ポリオールとが挙げられる。
前記ジイソシアネート化合物としては、有機ジイソシアネート化合物(a1)及びポリイソシアネート化合物(b1)からなる群から選択される1種又は2種以上の化合物が挙げられる。
なお、前記溶剤としては、ノントルエン系グラビアインキ用の溶剤として通常用いられる、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール等のアルコール系溶剤;メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の炭化水素系溶剤;あるいはこれらの混合溶剤が挙げられる。
上記方法のなかでも、均一なウレタン樹脂(B)を得るには、二段法によることが好ましい。また、ウレタン樹脂(B)を二段法で製造する場合、鎖伸長剤及び(又は)末端封鎖剤のアミノ基の合計(当量比)が1/0.9~1.3の割合になるように反応させることが好ましい。イソシアネート基とアミノ基との当量比が1/1.3より小さいときは、鎖伸長剤及び(又は)末端封鎖剤が未反応のまま残存し、ポリウレタン樹脂が黄変したり、印刷後臭気が発生したりする場合がある。
さらに近年、作業環境の観点から、トルエン、キシレンといった芳香族系溶剤やケトン系溶剤を用いないことがより好ましい。
本実施形態の軟包装用ラミネート用インキ組成物におけるポリウレタン樹脂に使用される鎖伸長剤としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミン等の他、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピルジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2-ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等分子内に水酸基を有するアミン類も用いることが出来る。これらの鎖伸長剤は単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
また、反応停止を目的とした末端封鎖剤として、一価の活性水素化合物を用いることもできる。かかる化合物としてはたとえば、ジ-n-ブチルアミン等のジアルキルアミン類やエタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類があげられる。更に、特にポリウレタン樹脂中にカルボキシル基を導入したいときには、グリシン、L-アラニン等のアミノ酸を反応停止剤として用いることができる。これらの末端封鎖剤は単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0071】
(ガラス転移温度(Tg)が40℃以上の樹脂(C))
本実施形態の軟包装用ラミネート用インキ組成物は、ガラス転移温度(Tg)が40℃以上の樹脂(C)を必要により含有してもよい。
これにより良好な耐ブロッキング性、再溶解性、インキ被膜物性を発揮しうる。
当該ガラス転移温度(Tg)が40℃以上の樹脂(C)としては、ガラス転移温度(Tg)が40℃以上であれば特に制限されないが、ポリビニルブチラール系樹脂、セルロース系樹脂及び塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂からなる群から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。例えば、環境負荷低減を重視する場合、ガラス転移温度(Tg)が40℃以上の樹脂(C)としては、ポリビニルブチラール系樹脂又はセルロース系樹脂であることが好ましい。一方、分散性を重視する場合、ポリビニルブチラール系樹脂、又は塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂であることが好ましい。
本実施形態において、インキ組成物の全樹脂固形分(100質量%)に対して、ガラス転移温度(Tg)が40℃以上の樹脂(C)の含有量の下限は、0.1質量%以上、0.3質量%以上、0.5質量%以上、1.7質量%以上、2.2質量%以上、又は2.8質量%以上であることが好ましくい。一方、ガラス転移温度(Tg)が40℃以上の樹脂(C)の含有量の上限は、30質量%以下、28質量%以下、27質量%以下、26質量%以下、25質量%以下、又は22質量%以下であることが好ましい。前記樹脂(C)の含有量の範囲は、0.1質量%~30質量%、1.7質量%~27質量%及び2.8質量%~27質量%の順で好ましい。当該樹脂(C)の含有量の範囲が、0.1質量%~30質量%であると、耐ブロッキング性などの被膜物性向上や顔料分散性を確保する観点で好ましい。なお、上記上限及び下限は適宜組み合わせすることができる。
以下、ガラス転移温度(Tg)が40℃以上の樹脂(C)の好ましい態様である、ポリビニルブチラール系樹脂、セルロース系樹脂及び塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂について詳説する。
【0072】
<ポリビニルブチラール系樹脂>
本実施形態の軟包装用ラミネート用インキ組成物は、ガラス転移温度(Tg)が40℃以上の樹脂(C)としてポリビニルブチラール系樹脂を含有することが好ましい。当該ポリビニルブチラール系樹脂は、バインダー樹脂としての結着能及び分散能を有し、かつ構成元素が炭素原子、水素原子、酸素原子のみであるため、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂より環境に優しいという効果を有する。また、軟包装用ラミネート用インキ組成物が顔料を含有する場合、ポリビニルブチラール系樹脂により練肉して顔料を分散させると、ブチラール基・ポリビニルアルコール残基・酢酸ビニル残基のいずれか適する基が顔料に吸着し、かさ高いブチラール基で立体障害が生じるため、ポリウレタン樹脂(A)で顔料を分散するより分散安定性に優れる。
本実施形態のポリビニルブチラール系樹脂としては、特に限定なく公知の樹脂を使用することができる。一般的には、ポリビニルブチラール系樹脂として、ポリビニルアルコールにブチルアルデヒド等のアルデヒド化合物を公知の反応によりアセタール化することにより得られた反応物を使用することができる。本実施形態のポリビニルブチラール系樹脂は、以下の一般式(iii-1):
【化8】
(上記一般式(iii-1)中、n1及びn2はそれぞれ独立して、1以上の整数であり、Rは、水素原子又は炭素原子数1~12の炭化水素基を表す。)
で表される部分構造を有することが好ましい。
上記一般式(iii-1)中、Rは水素原子又は炭素原子数1~10の炭化水素基を表すことが好ましく、水素原子又は炭素原子数1~7の炭化水素基がより好ましく、水素原子又は炭素原子数1~4の炭化水素基が更に好ましい。
なお、前記炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基が挙げられ、直鎖状、分岐状又は環状のいずれでもよい。中でも、アルキル基が好ましい。中でも、Rは、プロピル基又はイソプロピル基がより好ましい。
なお、上記した通り、本実施形態のポリビニルブチラール系樹脂は、ポリビニルアルコールとアルデヒド化合物とを反応原料とする樹脂である。その際、前記アルデヒド化合物をR-C(=O)Hと表した場合、前記一般式(iii-1)中のRは、ポリビニルブチラール系樹脂を合成する際に使用するアルデヒド化合物由来の炭化水素基である。
【0073】
本実施形態の好適なポリビニルブチラール系樹脂は、上記一般式(iii-1)で表される部分構造、下記一般式(iii-2)で表される部分構造及び下記一般式(iii-2)で表される部分構造を有する樹脂であることが好ましい。
【化9】
(上記一般式(iii-2)中、n3はそれぞれ独立して、1以上の整数であり、Rは、水素原子又は炭素原子数1~8のアルキル基を表す。)
【化10】
(上記一般式(iii-3)中、n4はそれぞれ独立して、1以上の整数である。)
【0074】
上記一般式(iii-2)中、Rは水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表すことが好ましく、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基がより好ましい。
なお、前記Rとしては、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基又はtert-ブチル基がより好ましい。
また、本実施形態のポリビニルブチラール系樹脂を、上記一般式(iii-1)で表される部分構造、下記一般式(iii-2)で表される部分構造及び下記一般式(iii-3)で表される部分構造を有する樹脂で表す場合、前記ポリビニルブチラール系樹脂の総量に対する上記一般式(iii-2)で表される部分構造の含有量は、好ましくは12質量%以下、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。これにより、ポリビニルブチラール系樹脂の上記一般式(iii-2)で表される部分構造の含有量を上記範囲にすることにより、流動性と分散性のバランスに優れたインキ層を得ることができる。
【0075】
本実施形態のポリビニルブチラール系樹脂の重量平均分子量は、5000~150000であることが好ましく、6000~100000であることがより好ましく、7000~50000であることが更に好ましい。ポリビニルブチラール系樹脂の重量平均分子量を上記範囲にすることにより、硬化性に優れ、塗膜の強度と適度な柔軟性を両立させることができる。また、重量平均分子量が5,000~150,000であるポリビニルブチラール系樹脂は、入手し易く、また、かかるポリビニルブチラール系樹脂を使用することで、流動性と分散性のバランスに優れたインキ層を得ることができる。
【0076】
本実施形態のポリビニルブチラール系樹脂のガラス転移温度(以下、Tgと称する場合がある)は、50℃~120℃の範囲であることが好ましく、中でも、55℃~115℃の範囲が好ましく、60℃~110℃の範囲がより好ましい。本発明においてガラス転移温度は、示差走査熱量計による測定により得られるものである。
【0077】
本実施形態のポリビニルブチラール系樹脂の水酸基価は10質量%~40質量/%の範囲にあることが好ましく、15質量%~30質量%であることがより好ましい。ポリビニルブチラール系樹脂の水酸基量を上記範囲にすることにより、流動性と分散性のバランスに優れたインキ層を得ることができる。
なお、前記水酸基量とは、上記一般式(iii-3)で表される部分構造の量がポリビニルブチラール系樹脂の総量に対する含有量をいう。
【0078】
前記ポリビニルブチラール系樹脂のアセチル基量は、8質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。ポリビニルブチラール系樹脂のアセチル基量を上記範囲にすることにより、流動性と分散性とのバランスに優れたインキ層を得ることができる。
なお、前記アセチル基量とは、上記一般式(iii-2)で表される部分構造において、Rがメチル基の場合の部分構造をアセチル基といい、かつそのアセチル基の量がポリビニルブチラール系樹脂の総量に対する含有量をいう。
【0079】
ポリビニルブチラール系樹脂の含有量(固形分)は、インキ組成物の全樹脂固形分(100質量%)に対して0.1質量%~5質量%含有することが好ましく、より好ましくは0.1質量%~4.0質量%であり、最も好ましくは0.2質量%~3.0質量%である。ポリビニルブチラール系樹脂の総計を0.1質量%以上添加することによりインキ皮膜の密着性、転移性を保持する傾向にあり、総計を5質量%以下とすることでインキのラミネート強度を保持することができる。また、インキ組成物中の固形分質量比の下限が、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、最も好ましくは0.3質量%以上である。また、インキ組成物中の固形分質量比の上限が、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、よりさらに好ましくは20質量%以下、さらにより好ましくは15質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。
【0080】
<セルロース系樹脂>
上記セルロース系樹脂としては、例えば、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート及びその他のセルロースエステル樹脂等のセルロースエステル樹脂;ニトロセルロース(硝化綿ともいう);ヒドロキシアルキルセルロース;並びにカルボキシアルキルセルロース等が挙げられる。前記セルロースエステル樹脂はアルキル基を有することが好ましく、当該アルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、更にアルキル基が置換基を有していてもよい。
上記セルロース系樹脂としては、上記のうちセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、及びニトロセルロースが好ましく、セルロースアセテートプロピオネート及びセルロースアセテートブチレートが特に好ましい。分子量としては重量平均分子量で5,000~200,000のものが好ましく、10,000~50,000が更に好ましい。また、ガラス転移温度が120℃~180℃であるものがより好ましい。本発明のポリウレタン樹脂の併用では、耐ブロッキング性、耐擦傷性その他のインキ被膜物性が向上することが期待できる。
ニトロセルロース(硝化綿)は、天然セルロースと硝酸とを反応させて、天然セルロース中の無水グルコピラノース基の6員環中の3個の水酸基を、硝酸基に置換した硝酸エステルとして得られるものが好ましい。
【0081】
セルロース系樹脂の含有量(固形分)は、インキ組成物の全樹脂固形分(100質量%)に対して0.1質量%~5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1質量%~4.0質量%であり、最も好ましくは0.2質量%~3.0質量%である。セルロース系樹脂の含有量の範囲を0.2質量%~3.0質量%にすることにより、耐ブロッキング性の効果を発揮しうる。
【0082】
<塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂>
上記塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂は、塩化ビニル単量体と酢酸ビニル単量体との共重合体である。したがって、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂は、塩化ビニル単量体単位及び酢酸ビニル単量体単位を含む。また、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂は必要に応じて、塩化ビニル単量体単位及び酢酸ビニル単量体単位以外の単量体(その他の単量体)単位を含んでもよい。前記その他の単量体としては、塩化ビニル及び酢酸ビニルと共重合可能であれば特に限定されない。
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂としては、水酸基価が50mgKOH/g~200mgKOH/gであることが好ましい。また、前記塩化ビニル単量体単位の含有量は、前記塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂の総量に対して、好ましくは70質量%~98質量%、より好ましくは80質量%~95質量%である。塩化ビニル単量体単位の含有量が前記範囲内であると、より良好な耐ブロッキング性を発揮しうる。
前記酢酸ビニル単量体単位の含有量は、前記塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂の総量に対して、好ましくは2質量%~30質量%、より好ましくは5質量%~20質量%ある。酢酸ビニル単量体単位の含有量が前記範囲内であると、柔軟で密着性に優れる。
【0083】
本実施形態の軟包装用ラミネート用インキ組成物中のポリウレタン樹脂成分全体と塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂との固形分での質量比(ポリウレタン樹脂成分:塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂)は、60:40~100:0であることが好ましく、70:30~100:0であることがより好ましい。塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂を含有することにより、ラミネート適性と顔料分散性を向上できる。一方、環境負荷低減の観点からは、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂を含有しないか、又は含有量がより少ないことが好ましい。
また、本実施形態では、軟包装用ラミネート用インキ組成物中の塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂の含有量をより少なくすることにより、当該インキを用いた軟包装材のリサイクル性を向上させることができる。塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂のような塩化ビニル系の樹脂を含有する場合、リサイクル設備を腐食させる弊害が生じるが、塩化ビニル系のモノマーの含有量をより少なくすることにより、リサイクル設備の腐食を防止できるためである。
【0084】
(軟包装用ラミネート用インキ組成物の好ましい態様)
本実施形態の軟包装用ラミネート用インキ組成物に含まれる全ウレタン樹脂成分の含有量は、軟包装用ラミネート用インキ組成物の全樹脂固形分全体に対して、30質量%~100質量%であることが好ましく、40質量%~99質量%であることがより好ましく、50質量%~95質量%であることがさらに好ましい。
本実施形態の軟包装用ラミネート用インキ組成物に含まれる全ウレタン樹脂成分のウレタン結合濃度は、4.0mmol/g以上であることが好ましく、5.0mmol/g以上20mmol/g以下であることがより好ましく、6.0mmol/g以上18mmol/g以下の範囲であることがさらに好ましい。全ウレタン樹脂成分のウレタン結合濃度が4.0mmol/g以上であると、インキ層中のウレタン樹脂成分のウレタン結合とフィルム表面の極性基とが相互作用することにより、基板との密着性が向上するため、ラミネート強度が優れる傾向を示す。なお、全ウレタン樹脂成分のウレタン結合濃度は、上記の数式(1)及び(5)と同様に、全ウレタン樹脂成分の固形分の質量及び全ウレタン樹脂成分の反応原料に使用した全ポリオール化合物の水酸基価から算出する。
なお、全ウレタン樹脂成分とは、軟包装用ラミネート用インキ組成物中に含まれる樹脂(結着樹脂(固形分))であって、ウレタン結合を有する樹脂をいう。したがって、全ウレタン樹脂成分には、ウレタン樹脂(A)が必須に含有され、ウレタン樹脂(B)又はウレタン樹脂(A)及び(B)以外のポリウレタン樹脂が含まれうる。
軟包装用ラミネート用インキ組成物全体におけるウレタン樹脂成分の量及びウレタン結合濃度を上記範囲に調整することにより、ドライラミネート強度が特に優れる。
本実施形態の軟包装用ラミネート用インキ組成物において、ウレタン樹脂(A)、ウレタン樹脂(B)、ガラス転移温度(Tg)が40℃以上の樹脂(C)及び後述の他の樹脂の合計含有量は、軟包装用ラミネート用インキ組成物の全樹脂固形分全体(100質量%)に対して、70質量%~100質量%、80質量%~100質量%、90質量%~100質量%、93質量%~100質量%、95質量%~100質量%、96質量%~100質量%又は97.1質量%~100質量%であることが好ましい。
【0085】
(他の樹脂)
本実施形態の軟包装用ラミネート用インキ組成物は、ウレタン樹脂(A)と、必要により添加されるウレタン樹脂(B)以外に、インキ技術分野において併用可能な他の樹脂を含有することができる。当該他の樹脂は、バインダー樹脂であってもよいし、分散樹脂であってもよいが、バインダー樹脂として添加することが好ましい。併用可能な他の樹脂としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ロジン系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、石油樹脂、ウレタン樹脂(A)及び(B)以外のポリウレタン樹脂等を挙げることができる。中でも、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂から選ばれる少なくとも1つ以上の樹脂を含有することが好ましく、耐ブロッキング性や再溶解性を向上することができる。
また、本開示のインキ組成物は、塩素系樹脂を含有しないものであることが、環境負荷低減の観点から好ましい。
これらの樹脂は、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。併用樹脂の含有量は、インキ組成物の総質量に対して0.1質量%~25質量%が好ましく、更に好ましくは2質量%~15質量%である。
【0086】
<ロジン変性マレイン酸樹脂>
上記ロジン変性マレイン酸樹脂とは、これらロジンとマレイン酸とのディールス-アルダー反応による付加物に、グリセリン、ペンタエリトリット又はエチレングリコール等の多価アルコールを反応させたアルキッド樹脂のことであり、ロジンとマレイン酸との付加物に対し反応させる多価アルコールの配合割合、及びエステル化の程度で酸価が決定される。また、多価アルコール以外に多塩基酸も併用して、長鎖のアルキッド樹脂をロジン骨格に結合した構造としてもよい。
【0087】
ロジンとマレイン酸との付加物に対し反応させる多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。また、これらの多価アルコールと共にアルキッド樹脂の原料として使用する多塩基酸としては、無水フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、マレイン酸、イタコン酸、コハク酸、セバシン酸等が挙げられる。
【0088】
また、例えば、上記アルキッド樹脂の原料としてマレイン酸等の炭素-炭素不飽和二重結合を有する化合物を用い、これにスチレン系モノマーを反応させてロジン変性スチレンマレイン酸樹脂としても良く、これもロジン変性マレイン酸樹脂に含まれる。
【0089】
(顔料)
本実施形態の軟包装用ラミネート用インキ組成物で使用する顔料としては、着色顔料、白色顔料いずれの顔料でもよい。
顔料は特に限定されず、一般のインキ、塗料、及び記録剤等に使用されている無機顔料、有機顔料を挙げることができる。保存安定性を改善するという本発明の優れた効果を特に発揮するために、顔料は有機顔料であることが好ましい。
有機顔料としては、溶性アゾ系、不溶性アゾ系、アゾ系、フタロシアニン系、ハロゲン化フタロシアニン系、アントラキノン系、アンサンスロン系、ジアンスラキノニル系、アンスラピリミジン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、フラバンスロン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリン系、インダンスロン系、カーボンブラック系等の顔料が挙げられる。
また、例えば、カーミン6B、レーキレッドC、パーマネントレッド2B、ジスアゾイエロー、ピラゾロンオレンジ、カーミンFB、クロモフタルイエロー、クロモフタルレッド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ジオキサジンバイオレット、キナクリドンマゼンタ、キナクリドンレッド、インダンスロンブルー、ピリミジンイエロー、チオインジゴボルドー、チオインジゴマゼンタ、ペリレンレッド、ペリノンオレンジ、イソインドリノンイエロー、アニリンブラック、ジケトピロロピロールレッド、昼光蛍光顔料等が挙げられる。また未酸性処理顔料、酸性処理顔料のいずれも使用することができる。また、前記有機顔料としては、黒色顔料、藍色顔料、緑色顔料、赤色顔料、紫色顔料、黄色顔料、橙色顔料及び茶色顔料が挙げられる。以下に各有機顔料の好ましい具体的な例を挙げる。
【0090】
黒色顔料としては、例えばC.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック6、C.I.ピグメントブラック7、C.I.ピグメントブラック9、C.I.ピグメントブラック20等が挙げられる。
【0091】
藍色顔料としては、例えばC.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:5、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー17:1、C.I.ピグメントブルー22、C.I.ピグメントブルー24:1、C.I.ピグメントブルー25、C.I.ピグメントブルー26、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー61、C.I.ピグメントブルー62、C.I.ピグメントブルー63、C.I.ピグメントブルー64、C.I.ピグメントブルー75、C.I.ピグメントブルー79、C.I.ピグメントブルー80等が挙げられる。
【0092】
緑色顔料としては、例えばC.I.ピグメントグリーン1、C.I.ピグメントグリーン4、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン8、C.I.ピグメントグリーン10、C.I.ピグメントグリーン36等が挙げられる。
【0093】
赤色顔料としては、例えばC.I.ピグメントレッド1、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド4、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド8、C.I.ピグメントレッド9、C.I.ピグメントレッド10、C.I.ピグメントレッド11、C.I.ピグメントレッド12、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド17、C.I.ピグメントレッド18、C.I.ピグメントレッド19、C.I.ピグメントレッド20、C.I.ピグメントレッド21、C.I.ピグメントレッド22、C.I.ピグメントレッド23、C.I.ピグメントレッド31、C.I.ピグメントレッド32、C.I.ピグメントレッド38、C.I.ピグメントレッド41、C.I.ピグメントレッド43、C.I.ピグメントレッド46、C.I.ピグメントレッド48、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド48:4、C.I.ピグメントレッド48:5、C.I.ピグメントレッド48:6、C.I.ピグメントレッド49、C.I.ピグメントレッド49:1、C.I.ピグメントレッド49:2、C.I.ピグメントレッド49:3、C.I.ピグメントレッド52、C.I.ピグメントレッド52:1、C.I.ピグメントレッド52:2、C.I.ピグメントレッド53、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド53:2、C.I.ピグメントレッド53:3、C.I.ピグメントレッド54、C.I.ピグメントレッド57、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド58、C.I.ピグメントレッド58:1、C.I.ピグメントレッド58:2、C.I.ピグメントレッド58:3、C.I.ピグメントレッド58:4、C.I.ピグメントレッド60:1、C.I.ピグメントレッド63、C.I.ピグメントレッド63:1、C.I.ピグメントレッド63:2、C.I.ピグメントレッド63:3、C.I.ピグメントレッド64:1、C.I.ピグメントレッド68、C.I.ピグメントレッド68、C.I.ピグメントレッド81:1、C.I.ピグメントレッド83、C.I.ピグメントレッド88、C.I.ピグメントレッド89、C.I.ピグメントレッド95、C.I.ピグメントレッド112、C.I.ピグメントレッド114、C.I.ピグメントレッド119、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド136、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド147、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド150、C.I.ピグメントレッド164、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド168、C.I.ピグメントレッド169、C.I.ピグメントレッド170、C.I.ピグメントレッド171、C.I.ピグメントレッド172、C.I.ピグメントレッド175、C.I.ピグメントレッド176、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド179、C.I.ピグメントレッド180、C.I.ピグメントレッド181、C.I.ピグメントレッド182、C.I.ピグメントレッド183、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド187、C.I.ピグメントレッド188、C.I.ピグメントレッド190、C.I.ピグメントレッド192、C.I.ピグメントレッド193、C.I.ピグメントレッド194、C.I.ピグメントレッド200、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド206、C.I.ピグメントレッド207、C.I.ピグメントレッド208、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド210、C.I.ピグメントレッド211、C.I.ピグメントレッド213、C.I.ピグメントレッド214、C.I.ピグメントレッド216、C.I.ピグメントレッド215、C.I.ピグメントレッド216、C.I.ピグメントレッド220、C.I.ピグメントレッド221、C.I.ピグメントレッド223、C.I.ピグメントレッド224、C.I.ピグメントレッド226、C.I.ピグメントレッド237、C.I.ピグメントレッド238、C.I.ピグメントレッド239、C.I.ピグメントレッド240、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド245、C.I.ピグメントレッド247、C.I.ピグメントレッド248、C.I.ピグメントレッド251、C.I.ピグメントレッド253、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド255、C.I.ピグメントレッド256、C.I.ピグメントレッド257、C.I.ピグメントレッド258、C.I.ピグメントレッド260、C.I.ピグメントレッド262、C.I.ピグメントレッド263、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントレッド266、C.I.ピグメントレッド268、C.I.ピグメントレッド269、C.I.ピグメントレッド270、C.I.ピグメントレッド271、C.I.ピグメントレッド272、C.I.ピグメントレッド279、等が挙げられる。
【0094】
紫色顔料としては、例えばC.I.ピグメントバイオレット1、C.I.ピグメントバイオレット2、C.I.ピグメントバイオレット3、C.I.ピグメントバイオレット3:1、C.I.ピグメントバイオレット3:3、C.I.ピグメントバイオレット5:1、C.I.ピグメントバイオレット13、C.I.ピグメントバイオレット19(γ型、β型)、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット25、C.I.ピグメントバイオレット27、C.I.ピグメントバイオレット29、C.I.ピグメントバイオレット31、C.I.ピグメントバイオレット32、C.I.ピグメントバイオレット36、C.I.ピグメントバイオレット37、C.I.ピグメントバイオレット38、C.I.ピグメントバイオレット42、C.I.ピグメントバイオレット50、等が挙げられる。
【0095】
黄色顔料としては、例えばC.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー24、C.I.ピグメントイエロー42、C.I.ピグメントイエロー55、C.I.ピグメントイエロー62、C.I.ピグメントイエロー65、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー86、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー117、C.I.ピグメントイエロー120、ピグメントイエロー125、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー129、C.I.ピグメントイエロー137、C.I.ピグメント、イエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー147、C.I.ピグメントイエロー148、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー153、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー166、C.I.ピグメントイエロー168、C.I.ピグメントイエロー174、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185及びC.I.ピグメントイエロー213等が挙げられる。
【0096】
橙色顔料としては、例えばC.I.ピグメントオレンジ5、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ16、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントオレンジ36、C.I.ピグメントオレンジ37、C.I.ピグメントオオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ51、C.I.ピグメントレンジ55、C.I.ピグメントオレンジ59、C.I.ピグメントオレンジ61、C.I.ピグメントオレンジ64、C.I.ピグメントオレンジ71、又はC.I.ピグメントオレンジ74等が挙げられる。
【0097】
茶色顔料としては、例えばC.I.ピグメントブラウン23、C.I.
ピグメントブラウン25、又はC.I.ピグメントブラウン26等が挙げられる。
【0098】
中でも、好ましい顔料として、黒色顔料としてC.I.ピグメントブラック7、藍色顔料としてC.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6、緑色顔料としてC.I.ピグメントグリーン7、赤色顔料としてC.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド166、紫色顔料としてC.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット37、黄色顔料としてC.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー139、橙色顔料としてC.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントオレンジ64、等が挙げられ、これらの群から選ばれる少なくとも一種又は二種以上を使用することが好ましい。
【0099】
前記無機顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、シリカ、リトボン、アンチモンホワイト、石膏等の白色無機顔料が挙げられる。無機顔料の中では酸化チタンの使用が特に好ましい。酸化チタンは白色を呈し、着色力、隠ぺい力、耐薬品性、耐候性の点から好ましく、印刷性能の観点から該酸化チタンはシリカ及び/又はアルミナ処理を施されているものが好ましい。
【0100】
白色以外の無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、アルミニウム粒子、マイカ(雲母)、ブロンズ粉、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、群青、紺青、ベンガラ、黄色酸化鉄、鉄黒、ジルコンが挙げられ、アルミニウムは粉末又はペースト状であるが、取扱い性及び安全性の面からペースト状で使用するのが好ましく、リーフィング又はノンリーフィングを使用するかは輝度感及び濃度の点から適宜選択される。
【0101】
前記顔料は、インキ組成物の濃度・着色力を確保するのに充分な量、すなわち軟包装用ラミネート用インキ組成物の総量(100質量%)に対して、顔料の含有量は1質量%~60質量%であることが好ましく、より好ましくは5質量%~60質量%である。軟包装用ラミネート用インキ組成物中の固形分質量比は、前記インキ組成物の全樹脂固形分の総量に対して、10質量%~90質量%の割合で含まれることが好ましい。また、顔料は単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
【0102】
(添加剤)
本実施形態の軟包装用ラミネート用インキ組成物は、更に必要に応じて、体質顔料、顔料分散剤、レベリング剤、消泡剤、ワックス、分散剤、可塑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、芳香剤及び難燃剤からなる群から選択される1種又は2種以上を含有することが好ましい。
本実施形態の軟包装用ラミネート用インキ組成物において、前記インキ組成物の総量に対して、添加剤(固形分)の含有量は、0.1質量%~20.0質量%であることが好ましい。
【0103】
本実施形態の軟包装用ラミネート用インキ組成物は、必要に応じて、分散剤を更に含有してもよい。
前記顔料を有機溶剤に安定に分散させるには、樹脂単独でも分散可能であるが、さらに顔料を安定に分散するため分散剤を併用することもできる。当該分散剤としては、アニオン性、ノニオン性、カチオン性、両イオン性等の界面活性剤を使用することができる。例えばポリエチレンイミンにポリエステル付加させた櫛型構造高分子化合物、あるいはα-オレフィンマレイン酸重合物のアルキルアミン誘導体等が挙げられる。具体的にはソルスパーズシリーズ(ZENECA)、アジスパーシリーズ(味の素)、ホモゲノールシリーズ(花王)等を挙げることができる。またBYKシリーズ(ビックケミー)、EFKAシリーズ(EFKA)等も適宜使用できる。分散剤は、インキの保存安定性の観点からインキ組成物の総質量に対して0.05質量%以上、ラミネート適性の観点から5質量%以下でインキ中に含まれることが好ましく、さらに好ましくは、0.1質量%~2質量%の範囲である。
【0104】
(有機溶剤)
本実施形態の軟包装用ラミネート用インキ組成物で使用する有機溶剤としては、各種有機溶剤を使用することができ、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族有機溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系有機溶剤、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系有機溶剤、n-プロパノール、イノプロパノール、n-ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系有機溶剤があげられ、これらを単独又は2種以上の混合物で用いることができる。近年、作業環境の観点から、トルエン、キシレンといった芳香族系有機溶剤やケトン系有機溶剤を用いないことが好ましい。
【0105】
上記有機溶剤としては、上記エステル系有機溶剤及びアルコール系有機溶剤を含有することが好ましく、その質量比が、エステル系有機溶剤:アルコール系有機溶剤=1:1~9:1となるように設定することが好ましい。有機溶剤中の当該質量比が当該範囲であると、印刷適性及び耐ブロッキング性に優れたインキとすることができる。当該質量比は、2:1~9:1であることがより好ましく、2:1~8:1であることがさらに好ましい。
【0106】
本実施形態の軟包装用ラミネート用インキ組成物には、揮発性成分として前記有機溶剤と共に、水を含有させてもよい。水の含有量はインキ組成物の総量の10質量%未満であることが好ましい。水の添加により、インキの乾燥性を制御することができ、特にグラビア印刷では、その特徴であるインキ転移量の少ないグラデーション部をきれいに再現することができる。更に、軟包装用ラミネート用インキ組成物の総量の1質量%~5質量%の範囲であることが、印刷適性が良好となることから、特に好ましい。
また、このような水の添加により、使用する有機溶剤成分を低減させることも可能である。水は有機溶剤に予め添加して含水の混合溶媒としてもよいし、別途特定量の水を添加してもよい。
本実施形態の軟包装用ラミネート用インキ組成物は、イソシアネート硬化剤等の硬化剤を使用しない1液タイプ、硬化剤を使用する2液タイプのいずれにおいても、インキの分散性、流動性に優れるリキッド状のインキ組成物を得られる。
【0107】
(軟包装用ラミネート用インキ組成物の製造方法)
本実施形態の軟包装用ラミネート用インキ組成物は、樹脂、顔料等を有機溶剤中に溶解及び/又は分散することにより製造することができる。具体的には、顔料をポリビニルブチラール系樹脂により有機溶剤に分散させた顔料分散体を製造し、得られた顔料分散体に、他の化合物や樹脂等を配合することによりインキを製造することができる。顔料の分散はポリウレタン樹脂を用いてもよいし、その他の樹脂を用いてもよいし、分散剤を用いてもよいが、ポリビニルブチラール系樹脂等を用いて分散することが好ましい。
【0108】
顔料分散体における顔料の粒度分布は、分散機の粉砕メディアのサイズ、粉砕メディアの充填率、分散処理時間、顔料分散体の吐出速度、顔料分散体の粘度等を適宜調節することにより、調整することができる。分散機としては、一般に使用される、例えば、ローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミル等を用いることができる。
インキ中に気泡や予期せずに粗大粒子等が含まれる場合は、印刷物品質を低下させるため、濾過等により取り除くことが好ましい。濾過器は従来公知のものを使用することができる。
【0109】
前記方法で製造されたインキ組成物の粘度は、顔料の沈降を防ぎ、適度に分散させる観点から10mPa・s以上、インキ製造時や印刷時の作業性効率の観点から1000mPa・s以下の範囲であることが好ましい。尚、上記粘度はトキメック社製B型粘度計で25℃において測定された粘度である。
インキ組成物の粘度は、使用される原材料の種類や量、例えばウレタン樹脂(A)、ウレタン樹脂(B)、ウレタン樹脂(A)及び(B)以外のバインダー樹脂(例えば、ポリビニルブチラール系樹脂)、顔料、有機溶剤等を適宜選択することにより調整することができる。また、インキ中の顔料の粒度及び粒度分布を調節することによりインキの粘度を調整することもできる。
【0110】
本実施形態の軟包装用ラミネート用インキ組成物の色相としては、使用する顔料の種類に応じて、プロセス基本色として黄、紅、藍、墨、白の5色があり、プロセスガマット外色として赤(橙)、草(緑)、紫の3色がある。更に透明黄、牡丹、朱、茶、金、銀、パール、色濃度調整用のほぼ透明なメジウム(必要に応じて体質顔料を含む)等がベース色として準備される。ボイルレトルト用インキには顔料のマイグレーション性、耐熱性を考慮して適宜選定される。
【0111】
(印刷物)
本実施形態の軟包装用ラミネート用インキ組成物を印刷し、印刷物とすることができる。
印刷方法としては、グラビア印刷、フレキソ印刷等の既知の版を使用する印刷方式で印刷できるが、特にグラビア印刷方式で印刷することが好ましい。グラビア印刷に用いられるシリンダーは、彫刻タイプ、腐食タイプ等公知のものが用いられる。
本実施形態の軟包装用ラミネート用インキ組成物により所望の図柄を形成する層を、印刷層と呼称する。当該印刷層は、単層であってもよいし、複数の印刷層があってもよい。印刷層が複数ある場合は、各印刷層に使用するインキ組成物は同一のものであっても良いし、同一の組成で顔料のみが違うものであっても良いし、異なる組成であっても良い。
当該印刷層が複数ある場合としては、例えば、着色されたカラーのインキ組成物より形成された第一の印刷層と、白色インキにより形成された第二の白印刷層、及び第三の白印刷層とをこの順に有する印刷物とすることができる。第一の印刷層は顔料による絵柄を形成させることができ、白色リキッドインキにより形成された第二の白印刷層、及び第三の印刷層は、絵柄の背景として使用することができる。第二又は第三の印刷層をオーバープリントニスとする場合は、顔料等の着色剤を含まなくてもよい。
【0112】
ベースインキは、グラビア印刷、又はフレキソ印刷に適した粘度及び濃度にまで希釈溶剤で希釈され、単独で又は混合されて各印刷ユニットに供給され、印刷に供される。
【0113】
(ラミネート積層体)
本開示は、基材と、当該基材面上の少なくとも一部に軟包装用ラミネート用インキ組成物を印刷した印刷層とを有するラミネート積層体でありうる。なお、前記基材面上の印刷層は、基材の表面と印刷層とが直接又は間接的に当接していればよい。
本実施形態の好ましいラミネート積層体の構成としては、例えば、以下の(1)~(5)が挙げられる。
(1)基材/接着層/印刷層/基材
(2)基材/接着層/基材/印刷層/接着層/基材
(3)基材/接着層/第一の印刷層/第二の印刷層/基材
(4)基材/接着層/バリア層/印刷層/接着層/基材
(5)基材/印刷層/接着層/基材
しかし、本実施形態のラミネート積層体は、上記(1)~(5)に限定されず、さらに追加の基材を含んでいてもよい。基材を複数含む場合は、基材は同じものであってもよいし、違うものであってもよい。また、基材はシール可能なシーラントフィルムや、ヒートシール剤等によるシーラント層を含む多層フィルム等の基材であってもよく、シール可能な層をシーラント層と呼称する。
また、複数の接着層は同じ組成であってもよいし、あるいは異なる組成であってもよい。さらに、接着層の接着強度を向上するため、アンカーコート層を間に挟んでもよい。
また、上記構成(1)~(5)においては、基材と基材との間の層は接着層を介して積層された積層体とする構成を例示した。しかし、本開示の別の態様としては、接着層を設けずに溶融した樹脂を押出すことによる押出しラミネート構成としてもよい。押出しラミネーションの場合、押出し樹脂はポリエチレン又はポリプロピレンを用いることが好ましい。その場合、印刷層の上にイミン系、ブタジエン系、イソシアネート系のアンカーコート層を設けて該アンカーコート層の上に樹脂を溶融押出ししてもよい。
また、本開示の積層体は、印刷層または接着剤層と接触する層として脱離可能なプライマー層を有する構成としてもよい。脱離可能なプライマー層を有することにより、印刷層の剥離又は複数のフィルムの剥離を容易とすることができ、フィルムのリサイクル性を向上させることができ、また、再生プラスチックの品質を向上させることができる。
プライマー層は、例えばアルカリ溶液での処理により基材から脱離可能な皮膜とすることが好ましい。アルカリ溶液での処理により基材から脱離可能な層は公知のものを用いることができ、例えば、アルカリ溶液中で加水分解等により溶解したり、もしくは膨潤したりして、基材から脱離するものである。アルカリ溶液での処理により基材から脱離可能な皮膜が形成できれば、ブライマー層を形成するプライマー層形成用組成物の種類としては、特に制限はないが、例えば、ウレタン樹脂やポリビニルアルコールを含有する組成物が好ましく、あるいは酸性基を有する樹脂を含有する組成物も好ましい。
ここで、酸性基を有する樹脂としては、例えば、酸価を有するポリウレタン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂やロジン変性フマル酸樹脂等の酸価を有する樹脂や;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、ケイ皮酸あるいはこれらの酸無水物等のカルボキシル基を有する重合性モノマー、スルホン化スチレン等のスルホン酸基を有する重合性モノマー、ビニルベンゼンスルホンアミド等のスルホンアミド基を有する重合性モノマー等の、酸性基を有する重合性モノマーを共重合させた、(メタ)アクリル樹脂、スチレン-(メタ)アクリル樹脂、スチレン-(無水)マレイン酸樹脂、テルペン-(無水)マレイン酸樹脂等のラジカル共重合体である樹脂や;酸変性されたポリオレフィン樹脂等が挙げられ、これを単数あるいは複数混合して使用することができる。
【0114】
プライマー層形成用組成物には、上述した樹脂の他、有機溶剤や水性溶剤等の溶剤や添加剤等が含有されてもよい。添加剤としては、例えば、上述のインキ層形成用組成物に添加可能な助剤や酸性添加物と同様のものを挙げることができる。
【0115】
本実施形態の軟包装用ラミネート用インキ組成物を印刷する基材としては、汎用フィルムから各種高機能フィルムまで、多種多様化する各種フィルムに対し有用である。利用可能なプラスチックフィルムとしては、特に限定は無く、例えば、Ny6、ナイロン66、ナイロン46等のポリアミド樹脂、ポリエチレンフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリ乳酸等のポリヒドロキシカルボン酸、ポリ(エチレンサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネート)等の脂肪族ポリエステル系樹脂に代表される生分解性樹脂、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアリレート樹脂又はそれらの混合物等の熱可塑性樹脂よりなるフィルム、表面に無機や有機のバリアコート材が塗布された種々高機能フィルム、及びこれらの積層体が挙げられるが、中でも、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレンからなるフィルムが好適に使用できる。
これらのフィルムは、未延伸フィルムでも延伸フィルムでも良く、その製法も限定されるものではない。各層の樹脂を共押出して作製された多層フィルムであってもよいし、当該多層フィルムの最外層にシーラント層を有する多層シーラントフィルムであってもよい。また、基材フィルムの厚みも特に限定されるものではないが、通常は1~500μmの範囲であればよい。
【0116】
上記基材は、バイオマスポリオレフィンにより形成されていてもよい。当該バイオマスポリオレフィンとは、原料であるモノマーとして植物由来のオレフィンを用いたポリオレフィン樹脂を指す。当該原料モノマーは、石油由来のモノマーを含んでいてもよく、植物由来のモノマーを100%含むものでなくてもよい。当該バイオマスポリオレフィンとしては、市販品を使用することもできる。市販品としては、ブラスケム社製、SGM9450F、SLL118、SLL118/21、SLL218、SLL318、SLH118、SLH218、SLH0820等が例示できる。
【0117】
また、本実施形態のラミネート積層体に用いる基材は、上記した樹脂フィルム上に、無機物及び/又は無機酸化物からなる蒸着層を設けた基材を用いてもよい。当該蒸着層を設けた基材を用いることにより、本実施形態のラミネート積層体に、バリア性を付与することができる。
蒸着層は、公知の無機物又は無機酸化物を用いて、公知の方法により形成することができ、その組成及び形成方法は特に限定されない。また、当該ラミネート積層体は蒸着膜を2層以上有していてもよく、それらは同一の組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。
【0118】
上記蒸着層としては例えば、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、スズ(Sn)、ナトリウム(Na)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)等の無機物又は無機酸化物の蒸着膜を使用することができる。また、ケイ素酸化物、アルミニウム酸化物等の無機酸化物の蒸着膜は、透明性を有する。
【0119】
上記無機酸化物は、例えば、SiOx、AlOx等のようにMOx(ただし、式中、Mは、無機元素を表す。)と表記される。xの値は、ケイ素(Si)は、0~2、アルミニウム(Al)は、0~1.5、マグネシウム(Mg)は、0~1、カルシウム(Ca)は、0~1、カリウム(K)は、0~0.5、スズ(Sn)は、0~2、ナトリウム(Na)は、0~0.5、ホウ素(B)は、0~1、5、チタン(Ti)は、0~2、鉛(Pb)は、0~1、ジルコニウム(Zr)は0~2、イットリウム(Y)は、0~1.5の範囲の値をとることができる。
上記において、x=0の場合、完全な無機単体(純物質)であり、透明ではなく、また、xの値が範囲の上限である場合、完全に酸化していることを示す。
蒸着層としては、ケイ素(Si)やアルミニウム(Al)が好適に使用され、ケイ素(Si)は、xの値が1.0~2.0、アルミニウム(Al)は、xの値が0.5~1.5の範囲の値のものを使用することができる。
【0120】
上記蒸着層は、上記基材等の表面に真空蒸着法、スパッタリング法、及びイオンプレ-ティング法等の物理気相成長法(PhysicalVaporDeposition法、PVD法)、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、及び光化学気相成長法等の化学気相成長法(ChemicalVaporDeposition法、CVD法)等の方法により形成することができる。
【0121】
上記蒸着層の蒸着層の厚みは蒸着層単独でも一定のガスバリア機能が発現できれば特に制限はない。厚みの好ましい範囲は蒸着する金属や金属酸化物の種類により異なるが、0.05~70nmが好ましく、0.1~70nmがより好ましく、3~70nmがより好ましく、5~60nmであることがさらに好ましい。
【0122】
上記金属蒸着フィルムとしては、CPPフィルムにアルミニウム等の金属蒸着を施したVM-CPPフィルム、OPPフィルムにアルミニウム等の金属蒸着を施したVM-OPPフィルムを用いることができる。また、上記透明蒸着フィルムとしては、OPPフィルム、PETフィルム、ナイロンフィルム等にシリカやアルミナ蒸着を施したフィルムが挙げられる。シリカやアルミナの無機蒸着層の保護等を目的として、蒸着層上にコーティングが施されたフィルムを用いてもよい。
【0123】
上記基材として、紙を用いることもできる。例えば、化粧品や飲料、医薬品、おもちゃ、機器等の包材・パッケージ等の印刷に用いられる上質紙、クラフト紙、純白ロール紙、グラシンペーパー、パーチメント紙、マニラボール、白ボール、コート紙、アート紙、模造紙、薄紙、厚紙、ポリエチレンコート紙等の紙、各種合成紙、耐酸紙等を用いることができる。
また、基材の印刷面には、コロナ放電処理がされていれば更に基材密着性を向上させることができ好ましい。
【0124】
<積層方法>
本実施形態のラミネート積層体と作製する場合の積層方法としては、特に限定されず、例えば、ドライラミネーション、ウェットラミネーション、ノンソルベントラミネーション、押出ラミネーション等の方法が挙げられる。この時、基材と基材の間に位置する層は、接着層と呼称する。
【0125】
上記ドライラミネーションで用いる接着剤としては、例えば、溶剤型の2液硬化型接着剤等が挙げられる。「溶剤型」の接着剤とは、接着剤を基材に塗工した後に、オーブン等で加熱して塗膜中の有機溶剤を揮発させた後に他の基材と貼り合せる方法、いわゆるドライラミネート法に用いられる形態をいい、ポリイソシアネート組成物、ポリオール組成物と、それらを溶解(希釈)することが可能な有機溶剤を含む。
【0126】
上記2液硬化型接着剤において、持続的に発展すべき循環型社会の構築(サステナビリティ)を考慮し、上記ポリイソシアネート組成物あるいはポリオール組成物の原料として、植物由来原料(バイオマス)を使用することが好ましい。
バイオマスを適宜使用することで、環境負荷を低減することができる。当該バイオマスとしては、ひまし油、脱水ひまし油、ひまし油の水素添加物であるヒマシ硬化油、ひまし油のアルキレンオキサイド5~50モル付加体等のひまし油系ポリオールや、コハク酸、無水コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、イタコン酸等の脂肪族多塩基酸や当該酸のアルキルエステル化物、ダイマー酸等が挙げられる。
【0127】
バイオマスを使用した上記接着剤としては市販品を利用することもできる。市販品としては、一般社団法人日本有機資源協会に記載の接着剤等が使用でき、例えば、ディックドライBM(DIC株式会社製)、タケネートBM(三井化学株式会社)等が挙げられる。
【0128】
上記接着層の乾燥後の重量は、0.1g/m~10g/mであることが好ましく、1g/m~6g/mであることがより好ましく、2g/m~5g/mであることがさらに好ましい。また、当該接着層の厚みは、0.1μm~10μmが好ましく、1μm~7μmがより好ましく、2μm~5μmであることがより好ましい。
【0129】
また、上記接着層として各種の粘着剤を使用することもできるが、感圧性粘着剤を用いることが好ましい。
当該感圧性粘着剤としては、例えば、ポリイソブチレンゴム、ブチルゴム、これらの混合物をベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサンのような有機溶剤に溶解したゴム系粘着剤、或いは、これらゴム系粘着剤にアビエチレン酸ロジンエステル、テルペン・フェノール共重合体、テルペン・インデン共重合体等の粘着付与剤を配合したもの、或いは、2-エチルヘキシルアクリレート・アクリル酸n-ブチル共重合体、2-エチルヘキシルアクリレート・アクリル酸エチル・メタクリル酸メチル共重合体等のガラス転移点が20℃以下のアクリル系共重合体を有機溶剤で溶解したアクリル系粘着剤等を挙げることができる。
【0130】
上記接着剤や後述するアンカーコート剤としてガスバリア性を有する材料を使用すると、特にバリア性に優れるラミネートフィルムを得ることができる。
ガスバリア性に優れる接着剤として特に好ましくは、3g/m(固形分)で塗布した接着剤の硬化塗膜の酸素バリア性が300cc/m/day/atm以下、又は水蒸気バリア性が120g/m/day以下の、少なくとも一方の条件を満足するものをいう。市販品としてはDIC株式会社製のPASLIM VM001やPASLIM J350X等の「PASLIM」シリーズや、三菱ガス化学社製の「マクシーブ」が挙げられる。
【0131】
また、上記接着層は、熱可塑性樹脂により形成することもでき、その形成方法は、従来公知の方法、例えば溶融押出しラミネート法やサンドラミネート法により形成することができる。本発明のリキッドインキ組成物は特に押出ラミネートの層間密着強度を向上するため、押出ラミネート法やサンドラミネート法にて積層することが好ましい。
当該接着層に使用できる当該熱可塑性樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン系樹脂、プロピレンの単独重合体、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体、プロピレン-α-オレフィンブロック共重合体等のポリプロピレン系樹脂、ノルボルネン系単量体の開環重合体(COP)、ノルボルネン系単量体とエチレン等のオレフィンを共重合したノルボルネン系共重合体(COC)等のノルボルネン系重合体及びその水素添加物、ビニル脂環式炭化水素重合体、環状共役ジエン重合体等の環状ポリオレフィン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-αオレフィン共重合体等のポリエチレン系エラストマー、ポリプロピレン系エラストマー、ブテン系エラストマー等の熱可塑性エラストマー;エチレン-メチルメタアクリレート共重合体(EMMA)、エチレン-エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン-メチルアクリレート(EMA)共重合体、エチレン-エチルアクリレート-無水マレイン酸共重合体(E-EA-MAH)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)等のエチレン系共重合体;更にはエチレン-アクリル酸共重合体のアイオノマー、エチレン-メタクリル酸共重合体のアイオノマー等が挙げられる。また、層間の密着性を向上させるために、上記したポリオレフィン系樹脂を、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂等も使用することができる。
また、ポリオレフィン樹脂に、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物、エステル単量体をグラフト重合、又は、共重合した樹脂等も用いることができる。
これらの樹脂は、単独又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
なお、当該ポリエチレン系樹脂としては、上記バイオマス由来のエチレンをモノマー単位として用いたものを使用することも好ましい。
【0132】
押出ラミネート法により接着層を積層する場合には、積層される側の層の表面に、アンカーコート剤を塗布して乾燥させることにより形成されるアンカーコート層を設けてもよい。
アンカーコート剤としては、耐熱温度が135℃以上である任意の樹脂、例えばポリブタジエン系樹脂、ウレタン樹脂、ポリイソシアネート・ポリエーテルポリオール、ポリエチレンイミン、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アルキルチタネート等からなるアンカーコート剤や、上記接着剤を有機溶剤で希釈したアンカーコート剤が挙げられる。なかでも、ポリエチレンイミン系アンカーコート剤、上記接着剤を有機溶剤で希釈したアンカーコート剤を、好ましく使用することができる。また、これに添加剤としてシランカップリング剤を併用してもよく、硝化綿を、耐熱性を高めるために併用してもよい。
【0133】
(包装材)
本実施形態の包装材は、上記軟包装用ラミネート用インキ組成物から形成された印刷層を含むラミネート積層体を構成要素とすることが好ましく、前記インキ組成物を含むラミネート積層体からなるものであることがより好ましい。例えば、当該ラミネート積層体2枚を、各々のシーラント層が互いに接するように配置してシールした包装材であってもよく、一続き(1枚)の当該ラミネート積層体を当該シーラント層が互いに接するように折畳んで配置してシールした包装材であってもよく、或いは、当該ラミネート積層体と、熱可塑性樹脂フィルムとを、当該ラミネート積層体のシーラント層が当該熱可塑性樹脂フィルムに接するように配置してシールした包装材であってもよい。シール方法は特に限定されず、ヒートシールであってもよいし、超音波シールであってもよく、公知の方法を採用できる。
当該包装材は、包装体として好適に利用できる。当該包装体としては、例えば、洋菓子、スナック、パン、和菓子、調味料等の食品用包装体や薬剤、包帯、注射器等の医療用包装体や雑巾、マスク、ブラシ等の衛生品用包装体等が挙げられる。
本開示の印刷物、積層体及び包装材はリサイクル可能である。特に、印刷層を構成するインキ組成物を塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂又はポリ塩化ビニリデン樹脂等の塩素ビニル系の樹脂を含有しない構成とすることにより、リサイクル設備の腐食を防止できることからリサイクル性に適している。
本開示の印刷物、積層体及び包装材のリサイクル方法は特に限定されず、公知の方法及び設備にて行うことができる。
【実施例
【0134】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。以下、「部」及び「%」は、特に言及が無い限り、いずれも質量基準によるものとする。
なお、本発明におけるGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による重量平均分子量(ポリスチレン換算)の測定は東ソー(株)社製HLC8220システムを用い以下の条件で行った。
分離カラム:東ソー(株)製TSKgelGMHHR-Nを4本使用。カラム温度:40℃。移動層:和光純薬工業(株)製テトラヒドロフラン。流速:1.0ml/分。
試料濃度:1.0重量%。試料注入量:100マイクロリットル。検出器:示差屈折計。粘度はトキメック社製B型粘度計で25℃において測定した。
【0135】
1.実施例及び比較例で用いた測定方法又は評価方法
後述の実施例及び比較例で得られたインキ組成物について、下記の試験方法にて評価を行った。
(ベース流動性)
実施例及び比較例に記載のインキ組成物(リキッドインキ)の粘度をB型粘度計にて6rpmと60rpmの回転数で測定した。6rpmで測定した粘度を60rpmで測定した粘度で割り、TI値を求めた。TI値が3.0未満であれば実用上使用可能である。
○:TI値が1.5未満
△:TI値が1.5以上~3.0未満
×:TI値が3.0以上
【0136】
((セロハンテープ)密着性)
実施例及び比較例に記載のインキ組成物の粘度を酢酸エチルでザーンカップ#3(離合社製)で16秒(25℃)に調整し、版深35μmグラビア版を備えたグラビア校正機により、東洋紡(株)製のOPPフィルムP2161(20μm)を用いて作製した印刷物を1日放置後、印刷面にセロハンテープ(ニチバン製12mm幅)を貼り付け、これを急速に剥がしたときの印刷皮膜の外観の状態を次の3段階で目視判定した。
○:印刷皮膜が全く剥がれなかった。
△:印刷皮膜の50~80%がフィルムに残った。
×:印刷皮膜の50%以下がフィルムに残った。
【0137】
(耐ブロッキング性)
実施例及び比較例に記載のインキ組成物の粘度を酢酸エチルでザーンカップ#3(離合社製)で16秒(25℃)に調整し、版深35μmグラビア版を備えたグラビア校正機により、東洋紡(株)製のOPPフィルムP2161(20μm)を用いて作製した印刷物の印刷面と非印刷面が接触するようにフィルムを重ね合わせ、10kgf/cmの加重をかけ、40℃の環境下に12時間経時させ、取り出し後、非印刷面へのインキの転移の状態を、3段階で目視評価した。
○:非印刷面へのインキの転移量が0%~20%で良好である。
△:50%未満の転移が見られる。
×:80%未満の転移が見られる。
【0138】
(押出ラミネート(PEEL)強度)
実施例及び比較例に記載のインキ組成物の粘度を酢酸エチルでザーンカップ#3(離合社製)で16秒(25℃)に調整し、版深35μmグラビア版を備えたグラビア校正機により、東洋紡(株)製のOPPフィルムP2161(20μm)を用いて印刷物を作製した。この印刷物に、ポリエチレンイミン系のアンカーコート剤を0.1g/m塗布した後、押出しラミネート機によって溶融ポリエチレンを厚み40μmで積層し、ラミネート加工物を得た後に、ラミネートフィルムを15mm幅に切り出し、引っ張り速度50mm/分で90度剥離試験(PEEL強度の測定)を行った。
◎:PEEL強度が1.5N/15mm~2.0N/15mmである。
○:PEEL強度が1.0N/15mm~1.5N/15mmである。
△:PEEL強度が0.5N/15mm~1.0N/15mmである。
×:PEEL強度が0.5N/15mm未満である。
【0139】
(ドライラミネート強度の測定(PETフィルム))
実施例及び比較例に記載のインキ組成物の粘度を酢酸エチルでザーンカップ#3(離合社製)で16秒(25℃)に調整し、版深35μmグラビア版を備えたグラビア校正機により、コロナ処理ポリエステルフィルム(以下、PETフィルム:東洋紡製(株)製 商品名 エステルE5102 厚さ12μm)に印刷して40~50℃で乾燥し、印刷物を得た。
得られたPET印刷物について、エーテル系のドライラミネート接着剤(ディックドライLX-401A/SP-60(DIC製))を用いてドライラミネート機(DICエンジニアリング製)によって無延伸ポリプロピレンフィルム(以下、CPP:東洋紡績社製
パイレンフィルム-CT P1128 30μm)を積層し、40℃で3日間エージング施し、ラミネート物を得た後、15mm幅に切り出し引っ張り速度300mm/分で90度剥離試験を行った。
【0140】
2.実施例及び比較例のインキ組成物の調製
(2-1)ウレタン樹脂成分の合成
(2-1.1)ウレタン樹脂(A-1)の合成
撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えた四ツ口フラスコに、水素添加されたケトン-アルデヒド樹脂(TEGО(登録商標) Varipuls SK 数平均分子量800、水酸基価325mgKOH/g、EVОNIK社製)351.5部、イソホロンジイソシアネート48.5部及び酢酸エチル400部を仕込み、窒素気流下に90℃で6時間反応させ、固形分50%、数平均分子量1700のウレタン樹脂(A-1)を得た。
【0141】
(2-1.2)ウレタン樹脂(A-2)の合成
撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えた四ツ口フラスコに、水素添加されたケトン-アルデヒド樹脂(TEGО(登録商標) Varipuls SK 数平均分子量800、水酸基価325mgKOH/g、EVОNIK社製)351.5部、イソホロンジイソシアネート82.7部及び酢酸エチル434部を仕込み、窒素気流下に90℃で6時間反応させ、固形分50%、数平均分子量2300のウレタン樹脂(A-2)を得た。
【0142】
(2-1.3)ウレタン樹脂(A-3)の合成
撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えた四ツ口フラスコに、水素添加されたケトン-アルデヒド樹脂(TEGО(登録商標) Varipuls SK 数平均分子量800、水酸基価325mgKOH/g、EVОNIK社製)351.5部、イソホロンジイソシアネート109.4部及び酢酸エチル460部を仕込み、窒素気流下に90℃で6時間反応させ、固形分50%、数平均分子量3000のウレタン樹脂(A-3)を得た。
【0143】
(2-1.4)ウレタン樹脂(A-4)の合成
撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えた四ツ口フラスコに、ポリプロピレングリコール(EXCENOL720 数平均分子量700、水酸基価160mgKOH/g、AGC株式会社製)189.7部、イソホロンジイソシアネート14.7部及び酢酸エチル204部を仕込み、窒素気流下に90℃で6時間反応させ、固形分50%、数平均分子量1000のウレタン樹脂(A-4)を得た。
【0144】
(2-1.5)ウレタン樹脂(A-5)の合成
撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えた四ツ口フラスコに、ネオペンチルグリコールアジペートジオール(数平均分子量700、水酸基価160mgKOH/g)189.7部、イソホロンジイソシアネート27.9部及び酢酸エチル217部を仕込み、窒素気流下に90℃で6時間反応させ、固形分50%、数平均分子量1500のウレタン樹脂(A-5)を得た。
【0145】
(2-1.6)ウレタン樹脂(A-6)の合成
撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えた四ツ口フラスコに、ネオペンチルグリコールアジペートジオール(数平均分子量700、水酸基価160mgKOH/g)189.7部、イソホロンジイソシアネート42.9部及び酢酸エチル233部を仕込み、窒素気流下に90℃で6時間反応させ、固形分50%、数平均分子量3000のウレタン樹脂(A-6)を得た。
【0146】
(2-1.7)ウレタン樹脂(A-7)の合成
撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えた四ツ口フラスコに、ネオペンチルグリコールアジペートジオール(数平均分子量800、水酸基価140mgKOH/g)111.2部、イソホロンジイソシアネート8.6部及び酢酸エチル120部を仕込み、窒素気流下に90℃で6時間反応させ、固形分50%、数平均分子量1200のウレタン樹脂(A-7)を得た。
【0147】
(2-1.8)ウレタン樹脂(A-8)の合成
撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えた四ツ口フラスコに、ネオペンチルグリコールアジペートジオール(数平均分子量800、水酸基価140mgKOH/g)52.9部、イソホロンジイソシアネート9.7部及び酢酸エチル63部を仕込み、窒素気流下に90℃で6時間反応させ、固形分50%、数平均分子量2800のウレタン樹脂(A-8)を得た。
【0148】
(2-1.9)ウレタン樹脂(A-9)の合成
撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えた四ツ口フラスコに、ネオペンチルグリコールアジペートジオール(数平均分子量900、水酸基価125mgKOH/g)185.3部、イソホロンジイソシアネート19.0部及び酢酸エチル204部を仕込み、窒素気流下に90℃で6時間反応させ、固形分50%、数平均分子量1700のウレタン樹脂(A-9)を得た。
【0149】
(2-1.10)ウレタン樹脂(A-10)の合成
撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えた四ツ口フラスコに、ネオペンチルグリコールアジペートジオール(数平均分子量900、水酸基価125mgKOH/g)132.0部、イソホロンジイソシアネート18.6部及び酢酸エチル151部を仕込み、窒素気流下に90℃で6時間反応させ、固形分50%、数平均分子量2400のウレタン樹脂(A-10)を得た。
【0150】
(2-1.11)ウレタン樹脂(A-11)の合成
撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えた四ツ口フラスコに、ネオペンチルグリコールアジペートジオール(数平均分子量900、水酸基価125mgKOH/g)113.4部、イソホロンジイソシアネート18.2部及び酢酸エチル132部を仕込み、窒素気流下に90℃で6時間反応させ、固形分50%、数平均分子量3000のウレタン樹脂(A-11)を得た。
【0151】
(2-1.12)ウレタン樹脂(B-1)の合成
攪拌機、温度計、環流冷却器及び窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコに、ネオペンチルグリコールアジペートジオール80部(水酸基価:56.6mgKOH/g)とポリエチレングリコール20部(水酸基価:278mgKOH/g)及びイソホロンジイソシアネート29.68部を仕込み、窒素気流下に90℃で10時間反応させ、イソシアネート基含有率2.84重量%のウレタンプレポリマーを製造した後、これに酢酸エチル69.8部を加えてウレタンプレポリマーの均一溶液とした。次いで、イソホロンジアミン7.97部、ジ-n-ブチルアミン0.11部、酢酸エチル139.1部及びイソプロピルアルコール112.5部からなる混合物に、前記ウレタンプレポリマー溶液を添加し、45℃で5時間攪拌反応させて、ポリウレタン樹脂溶液(B-1)を得た。得られたポリウレタン樹脂溶液(B-1)は、樹脂固形分濃度30.4重量%、樹脂固形分のMwは54,000であり、ウレタン結合濃度は1.31mmol/gであった。
【0152】
(2-1.13)ウレタン樹脂(B-2)の合成
攪拌機、温度計、環流冷却器及び窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコに、ネオペンチルグリコールアジペートジオール90部(水酸基価:21.2mgKOH/g)とポリエチレングリコール10部(水酸基価:111mgKOH/g)及びイソホロンジイソシアネート13.79部を仕込み、窒素気流下に90℃で10時間反応させ、イソシアネート基含有率2.60重量%のウレタンプレポリマーを製造した後、これに酢酸エチル61.3部を加えてウレタンプレポリマーの均一溶液とした。次いで、イソホロンジアミン6.06部、ジ-n-ブチルアミン0.45部、酢酸エチル121.2部及びイソプロピルアルコール98.3部からなる混合物に、前記ウレタンプレポリマー溶液を添加し、45℃で5時間攪拌反応させて、ポリウレタン樹脂溶液(B-2)を得た。得られたポリウレタン樹脂溶液(B-2)は、樹脂固形分濃度30.6重量%、樹脂固形分のMwは70,000であり、ウレタン結合濃度は0.45mmol/gであった。
【0153】
(2-1.14)ウレタン樹脂(B-3)の合成
攪拌機、温度計、環流冷却器および窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコに、プロピレングリコール(バイオマス炭素含有率(%):0%)、セバシン酸(バイオマス炭素含有率(%):100%)からなるポリエステルポリオール20部(水酸基価:280.5mgKOH/g、バイオマス炭素含有率(%):約73%))と、ネオペンチルグリコール(バイオマス炭素含有率(%):0%)、セバシン酸(バイオマス炭素含有率(%):100%)からなるポリエステルポリオール80部(水酸基価:56.1mgKOH/g、バイオマス炭素含有率(%):約61%)およびイソホロンジイソシアネート31.9部を仕込み、窒素気流下に90℃で10時間反応させ、イソシアネート基含有率3.42質量%のウレタンプレポリマーを製造した後、これに酢酸エチル71.0部を加えてウレタンプレポリマーの均一溶液とした。次いで、イソホロンジアミン9.79部、モノエタノールアミン0.24部、酢酸エチル144.8部およびイソプロピルアルコール116.2部からなる混合物に、前記ウレタンプレポリマー溶液を添加し、45℃で5時間撹拌反応させて、ポリウレタン樹脂溶液(B-3)を得た。得られたポリウレタン樹脂溶液(B-3)は、樹脂固形分濃度30.0質量%、樹脂固形分のMwは69,000であり、ウレタン樹脂(B-3)のバイオマス炭素含有率(%)50%、ウレタン結合濃度は1.3mmol/gであった。
そして、仕込み比から計算すると、プロピレングリコール、セバシン酸からなるポリエステルポリオール及びネオペンチルグリコール、セバシン酸からなるポリエステルポリオールは、いずれも当該ポリエステルポリオール中のバイオマス由来の成分割合が30質量%以上であった。
なお、上記ポリエステルポリオール及びウレタン樹脂(B-3)のバイオマス炭素含有率(%)は、以下の方法により算出した。
<放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)の算出>
得られた測定用グラファイトをサンプルフォルダーに充填して、加速器質量分析(AMS)を行い、上記数式(2)~(4)により、各試料の放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)を算出した。
<バイオマス炭素含有率(%)の算出>
上記の式(3)に示すように、上記の方法で得られた各試料の放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)に0.93をかけて、1950年以降から現代に至る大気圏核実験の影響を加味した値をバイオマス炭素含有率(%)とした。
なお、ウレタン樹脂(B-3)(固形分)全体のバイオマス炭素含有率(%)は、使用目的等により各成分比が変わってくるため、前記組成物中の既知のバイオマス炭素含有率(%)の原料成分の重量比から概算している。
【0154】
(2-1.15)比較用ウレタン樹脂(A-12)の合成例
撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えた四ツ口フラスコに、ポリプロピレングリコール(EXCENOL420 数平均分子量400、水酸基価280mgKOH/g、AGC株式会社製)213.4部、イソホロンジイソシアネート52.8部及び酢酸エチル266部を仕込み、窒素気流下に90℃で6時間反応させ、固形分50%、数平均分子量900の比較用ウレタン樹脂(A-12)得た。
【0155】
(2-2)軟包装用ラミネート用インキ組成物の調製
<実施例1>
上記で得られた、ウレタン樹脂(固形分)(A-1)2.0質量部と、ウレタン樹脂(固形分)(B-1)30.0質量部と、ポリビニルブチラール系樹脂含有溶液(ガラス転移温度(Tg)が40℃以上のポリビニルブチラール樹脂(固形分)15質量%含有)9質量部と、セルロース系化合物含有溶液(ガラス転移温度(Tg)が40℃以上のセルロース系化合物(固形分)20質量%含有)3質量部と、フタロシアニン系青色顔料(DIC(株)製FASTGEN Blue LA5380)10質量部と、酢酸エチル46質量部とを混合した混合物を練肉し、軟包装用ラミネート用インキ組成物として青色印刷インキ組成物(1)を作製した。
<実施例2~20>
下記表1に示す組成及び組成比により、実施例1と同様に軟包装用ラミネート用インキ組成物として青色印刷インキ組成物(2)~(20)を作製した。
上記実施例1~20で得られた青色印刷インキ組成物(1)~(20)について、上記に記載した、流動性、接着性、耐ブロッキング性、PETフィルム上での押出しラミネート強度及びドライラミネート強度の測定を行い評価した。その結果を表1-1及び表1-2に示す。
【0156】
<比較例1~4>
上記で得られた比較用ポリウレタン樹脂(A-12)と、ウレタン樹脂(B-1)又は(B-2)と、ポリビニルブチラール系樹脂含有溶液(ガラス転移温度(Tg)が40℃以上のポリビニルブチラール樹脂(固形分)15質量%含有)と、セルロース系化合物含有溶液(ガラス転移温度(Tg)が40℃以上のセルロース系化合物(固形分)20質量%含有)と、フタロシアニン系青色顔料(DIC(株)製FASTGEN Blue LA5380)と、酢酸エチルとを表1に示す組成比で混合した混合物を練肉し、比較用青色印刷インキ組成物(1)~(4)を作製した。
上記比較例1~4で得られた比較用青色印刷インキ組成物(1)~(4)について、上記に記載した、流動性、接着性、耐ブロッキング性、PETフィルム上での押出しラミネート強度及びドライラミネート強度の測定を行い評価した。その結果を表1-2に示す。
【0157】
【表1-1】
【0158】
【表1-2】
【0159】
上記表1-1及び表1-2の実験結果から、実施例の青色印刷インキ組成物は比較用青色印刷インキ組成物より、流動性、密着性、耐ブロッキング性、PEEL強度及びドライラミネート強度に優れたインキ層を形成できることが確認された。また、例えば、実施例1と実施例5とを対比すると、ウレタン結合濃度が比較的高いウレタン樹脂(B-1)を用いた場合、押し出しラミネート強度(PEEL強度)及び密着性がより優れたインキ層を形成できることが確認された。実施例1のインキ層では、ウレタン樹脂(A-1)とウレタン樹脂(B-1)との良好な組み合わせにより、フィルム表面の極性基と当該インキ層中のウレタン樹脂成分のウレタン結合との相互作用により、基板との密着性が向上したと考えられる。
【0160】
本出願は、2023年6月30日に出願された日本国特許出願2023-108806号及び2023年9月8日に出願された日本国特許出願2023-146492号に対する優先権の利益を主張し、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【要約】
本開示は、流動性、密着性、耐ブロッキング性、PEEL強度及びドライラミネート強度に優れたインキ層を形成できる軟包装用ラミネート用インキ組成物を提供することである。
本開示は、有機ジイソシアネート化合物(a1)及び数平均分子量(Mn)が700~900のポリオール(a2)を反応原料とする、数平均分子量が1000~3000であるウレタン樹脂(A)を含有する、軟包装用ラミネート用インキ組成物である。