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特許7568392厚膜抵抗体用組成物、厚膜抵抗体用ペースト、及び厚膜抵抗体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】厚膜抵抗体用組成物、厚膜抵抗体用ペースト、及び厚膜抵抗体
(51)【国際特許分類】
   H01C 7/00 20060101AFI20241008BHJP
   C01B 33/24 20060101ALI20241008BHJP
   C01B 33/26 20060101ALI20241008BHJP
   C01G 55/00 20060101ALI20241008BHJP
   C03C 3/064 20060101ALI20241008BHJP
   C03C 4/00 20060101ALI20241008BHJP
   C03C 8/14 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
H01C7/00 324
C01B33/24
C01B33/26
C01G55/00
C03C3/064
C03C4/00
C03C8/14
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019178039
(22)【出願日】2019-09-27
(65)【公開番号】P2021057429
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-04-27
【審判番号】
【審判請求日】2023-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】川久保 勝弘
【合議体】
【審判長】岩間 直純
【審判官】畑中 博幸
【審判官】行武 哲太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-306677(JP,A)
【文献】特開2018-92730(JP,A)
【文献】特開2005-209744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルテニウム含有酸化物粉末と、鉛を含まないガラス粉末とを含む厚膜抵抗体用組成物であって、
前記ルテニウム含有酸化物粉末は酸化ニオブが固溶した酸化ルテニウム粉末であり、含有するニオブとルテニウムとのうち、ニオブの割合が1mol%以上20mol%以下であり、
前記ガラス粉末は、SiOとBとRO(RはCa、Sr、Baから選択される1つ以上のアルカリ土類元素を示す)を含み、SiOとBとROの合計を100質量部とした場合に、SiOを10質量部以上50質量部以下、Bを8質量部以上30質量部以下、ROを40質量部以上65質量部以下の割合で含有する厚膜抵抗体用組成物。
【請求項2】
前記ルテニウム含有酸化物粉末と前記ガラス粉末とのうち、前記ルテニウム含有酸化物粉末の割合が5質量%以上50質量%以下である請求項1に記載の厚膜抵抗体用組成物。
【請求項3】
前記ガラス粉末は、50%体積累計粒度が5μm以下である請求項1または請求項2に記載の厚膜抵抗体用組成物。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の厚膜抵抗体用組成物と、樹脂成分を含有する有機ビヒクルとを含む厚膜抵抗体用ペースト。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の厚膜抵抗体用組成物を含有する厚膜抵抗体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚膜抵抗体用組成物、厚膜抵抗体用ペースト、及び厚膜抵抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にチップ抵抗器、ハイブリットIC、または抵抗ネットワーク等の厚膜抵抗体は、セラミック基板に厚膜抵抗体用組成物や、厚膜抵抗体用組成物を含む厚膜抵抗体用ペーストを印刷して焼成することによって形成されている。厚膜抵抗体用組成物は、導電粒子として酸化ルテニウムを代表とするルテニウム含有酸化物粉末とガラス粉末を主な成分としたものが広く用いられている。
【0003】
ルテニウム含有酸化物粉末とガラス粉末が厚膜抵抗体に用いられる理由は、空気中での焼成ができ、抵抗温度係数(TCR)を0に近づけることが可能であることに加え、広い領域の抵抗値の抵抗体が形成可能であることなどが挙げられる。
【0004】
ここで、抵抗温度係数は、25℃の抵抗値に対して-55℃と125℃での抵抗値により求められる温度係数で、以下の式で求められる。なお、以下の式中、R-55が-55℃における抵抗値、R25が25℃における抵抗値、R125が125℃における抵抗値、をそれぞれ意味する。-55℃と25℃の抵抗値から求められる抵抗温度係数を低温側TCR(COLD-TCR)といい、25℃と125℃の抵抗値から求められる抵抗温度係数を高温側TCR(HOT-TCR)という。
【0005】
COLD-TCR(ppm/℃)=(R-55-R25)/R25/(-80)×10
HOT-TCR(ppm/℃)=(R125-R25)/R25/(100)×10
厚膜抵抗体では、COLD-TCRとHOT―TCRとの両者を0に近づけることが求められている。
【0006】
ルテニウム含有酸化物粉末とガラス粉末とを含む厚膜抵抗体用組成物では、その配合比によって抵抗値が変わる。ルテニウム含有酸化物粉末の配合比を多くすると抵抗値が下がり、ルテニウム含有酸化物粉末の配合比を少なくすると抵抗値が上がる。上記特性を利用して、厚膜抵抗体では、ルテニウム含有酸化物粉末とガラス粉末との配合比を調整して所望の抵抗値を出現させている。
【0007】
従来、厚膜抵抗体用組成物に最も使用されているルテニウム含有酸化物粉末としては、ルチル型の結晶構造を有する酸化ルテニウム(RuO)、パイロクロア型の結晶構造を有するルテニウム酸鉛(PbRu6.5)が挙げられる。これらはいずれも金属的な導電を示す酸化物である。ルテニウム酸鉛(PbRu6.5)は、酸化ルテニウム(RuO)よりも比抵抗が高いため、目的とする抵抗値に調整するための配合比を多くすることができる。一般に導電粒子の配合比が高い抵抗体は、静電気や過負荷電圧に対する抵抗値変動が小さい。このため抵抗値の高い領域では導電粒子としてルテニウム酸鉛(PbRu6.5)が使用されている。
【0008】
厚膜抵抗体用組成物に用いられるガラス粉末には、一般的に厚膜抵抗体用ペーストの焼成温度よりも軟化点の低いガラスが用いられており、酸化鉛(PbO)を含むガラスが用いられていた。その理由としては、酸化鉛(PbO)はガラスの軟化点を下げる効果があり含有率を変えることによって広範囲に渡り軟化点を変えられることや、比較的化学的な耐久性が高いガラスが作れること、絶縁性が高く耐圧に優れていることが挙げられる。
【0009】
このように従来の厚膜抵抗体用組成物には、導電粒子であるルテニウム含有酸化物粉末、およびガラス粉末の両方について、鉛成分を含有した材料が用いられていた。しかしながら、鉛成分は人体への影響および公害の点から望ましくなく、鉛を含有しない厚膜抵抗体用組成物の開発が強く求められている。
【0010】
そこで、従来から鉛を含有しない厚膜抵抗体用組成物について検討がなされ、いくつかの提案がなされていた。
【0011】
例えば、特許文献1には、少なくとも実質的に鉛を含まないガラス組成物及び実質的に鉛を含まない所定の平均粒径の導電材料を含有し、これらが有機ビヒクルと混合されてなる抵抗体ペーストが開示されている。そして、導電材料としてルテニウム酸カルシウム、ルテニウム酸ストロンチウム、ルテニウム酸バリウムが挙げられている。
【0012】
特許文献2では、ガラス組成物に、導電性を与えるための金属元素を含む第1の導電性材料をあらかじめ溶解させてガラス材料を得る工程と、前記ガラス材料と、前記金属元素を含む第2の導電性材料と、ビヒクルとを混練する工程とを備えており、前記ガラス組成物及び前記第1及び第2の導電性材料は鉛を含まないことを特徴とする抵抗体ペーストの製造方法が提案されている。そして、第1、第2の導電性材料としてRuO等が挙げられている。
【0013】
特許文献3では、(a)ルテニウム系導電性材料と(b)所定の組成の鉛およびカドミウムを含まないガラス組成物とのベース固形物を含有し、(a)および(b)の全てが有機媒体中に分散されていることを特徴とする厚膜ペースト組成物が提案されている。そして、ルテニウム系導電性材料としてルテニウム酸ビスマスが挙げられている。
【0014】
特許文献4では、鉛成分を含まないルテニウム系導電性成分と、ガラスの塩基度(Po値)が0.4~0.9である鉛成分を含まないガラスと、有機ビヒクルとを含む抵抗体組成物であって、これを高温で焼成して得られる厚膜抵抗体中にMSiAl結晶(M:Ba及び/又はSr)が存在することを特徴とする抵抗体組成物が提案されている。
【0015】
特許文献5には、酸化ルテニウムとSiO-B-KOガラスとを含む厚膜抵抗体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】特開2005-129806号公報
【文献】特開2003-7517号公報
【文献】特開平8-253342号公報
【文献】特開2007-103594号公報
【文献】特開2001-196201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、厚膜抵抗体では、抵抗値以外の特性も評価され、所定の特性を示すことが求められる。抵抗値以外の特性として代表的なものとしては、温度変化による抵抗値の変化を表す抵抗温度係数、静電気が印加された際の抵抗値変化を示す耐静電気特性等があり、いずれも抵抗値の変化が小さいことが要求される。これまでに提案されている、鉛を含有しない厚膜抵抗体用組成物を用いた厚膜抵抗体では、これらの要求特性をすべて満足させることが困難であった。
【0018】
上記従来技術の問題に鑑み、本発明の一側面では、抵抗温度係数、および耐静電気特性に優れた鉛成分を含有しない厚膜抵抗体用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するため本発明は、
ルテニウム含有酸化物粉末と、鉛を含まないガラス粉末とを含む厚膜抵抗体用組成物であって、
前記ルテニウム含有酸化物粉末は酸化ニオブが固溶した酸化ルテニウム粉末であり、含有するニオブとルテニウムとのうち、ニオブの割合が1mol%以上20mol%以下であり、
前記ガラス粉末は、SiOとBとRO(RはCa、Sr、Baから選択される1つ以上のアルカリ土類元素を示す)を含み、SiOとBとROの合計を100質量部とした場合に、SiOを10質量部以上50質量部以下、Bを8質量部以上30質量部以下、ROを40質量部以上65質量部以下の割合で含有する厚膜抵抗体用組成物を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一側面によれば、抵抗温度係数、および耐静電気特性に優れた鉛成分を含有しない厚膜抵抗体用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の厚膜抵抗体用組成物、厚膜抵抗体用ペースト、および厚膜抵抗体の一実施形態について説明する。
[厚膜抵抗体用組成物]
本実施形態に係る厚膜抵抗体用組成物は、ルテニウム含有酸化物粉末と、鉛を含まないガラス粉末とを含む厚膜抵抗体用組成物である。
【0022】
そして、ルテニウム含有酸化物粉末は酸化ニオブが固溶した酸化ルテニウム粉末であり、含有するニオブとルテニウムとのうち、ニオブの割合を1mol%以上20mol%以下とすることができる。
【0023】
また、ガラス粉末は、SiOとBとRO(RはCa、Sr、Baから選択される1つ以上のアルカリ土類元素を示す)を含み、SiOとBとROの合計を100質量部とした場合に、SiOを10質量部以上50質量部以下、Bを8質量部以上30質量部以下、ROを40質量部以上65質量部以下の割合で含有することができる。
【0024】
以下、本実施形態の厚膜抵抗体用組成物が含有する成分について説明する。
(ルテニウム含有酸化物粉末)
ルテニウム含有酸化物粉末である酸化ルテニウム粉末はルチル型の結晶構造を有しており、酸化ニオブを固溶させることができる。本実施形態の厚膜抵抗体用組成物に用いる酸化ニオブが固溶した酸化ルテニウム粉末は、その合成方法は特に限定されないが、液相を介した粉末合成法が適している。
【0025】
合成された酸化ルテニウム粉末に酸化ニオブが固溶したことを確認するには、X線回折で、単相のルチル構造であることを確認すればよい。
【0026】
なお、ルテニウム含有酸化物粉末は、上述のように、酸化ニオブが固溶した酸化ルテニウム粉末であり、鉛を含有しない。鉛を含有しないとは、鉛を意図して添加していないことを意味し、鉛の含有量が0であることを意味する。ただし、製造工程等で不純物成分、不可避成分として混入することを排除するものではない。
【0027】
ルテニウム含有酸化物粉末である酸化ニオブが固溶した酸化ルテニウム粉末において、含有するニオブとルテニウムとのうち、ニオブの割合を1mol%以上20mol%以下とすることが好ましい。ここでいう、ルテニウム含有酸化物粉末である酸化ニオブが固溶した酸化ルテニウム粉末において、ニオブとルテニウムとのうちとは、ルテニウム含有酸化物粉末が含有するニオブとルテニウムとの合計を100mol%とした場合の割合を意味する。すなわち、ルテニウム含有酸化物粉末は、含有するニオブとルテニウムのモル比が、Nb:Ru=0.01:0.99以上0.20:0.80以下であることが好ましい。
【0028】
なお、ルテニウム含有酸化物粉末が含有するニオブとルテニウムとのモル比は、出発原料の割合等により調整できる。
【0029】
ルテニウム含有酸化物粉末が含有するニオブとルテニウムとのうち、ニオブの割合を1mol%以上とすることで、該ルテニウム含有酸化物粉末を含有する厚膜抵抗体用組成物を用いて製造した厚膜抵抗体の静電気や、過負荷電圧の印加による抵抗値変化を抑制できる。また、ルテニウム含有酸化物粉末が含有するニオブとルテニウムとのうち、ニオブの割合を20mol%以下とすることで、該ルテニウム含有酸化物粉末を含有する厚膜抵抗体用組成物を用いて製造した厚膜抵抗体の抵抗温度係数が過度にマイナスになることを防止できる。
【0030】
抵抗温度係数は主に金属酸化物である添加剤を厚膜抵抗体用組成物に加えることでも調整が可能である。抵抗温度係数を減少させる、すなわちマイナス方向に調整することは比較的容易であり、添加剤としてはマンガン酸化物、ニオブ酸化物、チタン酸化物等が挙げられる。しかし、抵抗温度係数を増加させる、すなわちプラス方向に調整することは困難である。しかしながら、上述のように、本実施形態の厚膜抵抗体用組成物においては、所定のルテニウム含有酸化物粉末を用いることで、該厚膜抵抗体用組成物を用いて製造した厚膜抵抗体の抵抗温度係数が過度にマイナスになることを防止できるため、例えば必要に応じて添加剤を用いることで、抵抗温度係数を0に近づけることができる。
【0031】
本実施形態の厚膜抵抗体用組成物に用いるルテニウム含有酸化物粉末である、酸化ニオブが固溶した酸化ルテニウム粉末の比表面積径は特に限定されないが、例えば5nm以上100nm以下であることが望ましい。酸化ニオブが固溶した酸化ルテニウム粉末の比表面積径を5nm以上とすることで、酸化ニオブが固溶した酸化ルテニウム粉末が過度に凝集することを抑制し、厚膜抵抗体用ペーストを容易に製造できる。また、酸化ニオブが固溶した酸化ルテニウム粉末の比表面積径を100nm以下とすることで、得られる厚膜抵抗体について、静電気や過負荷電圧の印加による抵抗値変化を特に抑制できる。比表面積径の算出方法については、実施例で後述する。
(鉛を含まないガラス粉末)
本実施形態の厚膜抵抗体用組成物は、鉛を含まない所定の組成のガラス粉末を含むことができる。既述のルテニウム含有酸化物粉末に加えて、係るガラス粉末を含有することで、該厚膜抵抗体用組成物を用いて調製した厚膜抵抗体の温度係数を特に0に近づけることができる。なお、鉛を含まないガラス粉末とは、鉛を意図して添加していないことを意味し、鉛の含有量が0であることを意味する。ただし、製造工程等で不純物成分、不可避成分として混入することを排除するものではない。
【0032】
鉛を含有しないガラス粉末は、骨格となるSiO以外の金属酸化物を配合することによって焼成時の流動性を調整することができる。SiO以外の金属酸化物としては、BやROなどが用いられる。ここで、ROのRはCa、Sr、Baから選択された1種類以上のアルカリ土類元素を示す。このため、本実施形態の厚膜抵抗体用組成物に用いるガラス粉末としては、例えばSiとBとRとを含むガラス粉末を好適に用いることができる。Rについては、上述のようにCa、Sr、Baから選択された1種類以上のアルカリ土類元素を示す。
【0033】
本実施形態の厚膜抵抗体用組成物が含有するガラス粉末は、ガラス組成におけるSiO、B、ROの合計を100質量部とした場合に、SiOを10質量部以上50質量部以下の割合で含有することが好ましい。これは、SiOの含有割合を10質量部以上とすることで容易にガラスとすることができ、50質量部以下とすることで流動性を高めることができるからである。
【0034】
本実施形態の厚膜抵抗体用組成物のガラス粉末は、ガラス組成におけるSiO、B、ROの合計を100質量部とした場合に、Bを、8質量部以上30質量部以下の割合で含有することが好ましい。これは、Bの含有割合を8質量部以上とすることで、流動性を十分に高めることができ、30質量部以下とすることで耐候性を高めることができるからである。
【0035】
さらに、本実施形態の厚膜抵抗体用組成物のガラス粉末は、ガラス組成におけるSiO、B、ROの合計を100質量部とした場合に、ROを、40質量部以上65質量部以下の割合で含有することが好ましい。これは、ROの含有割合を40質量部以上とすることで、該厚膜抵抗体用組成物を用いて得られる厚膜抵抗体の抵抗温度係数がマイナスになることを特に抑制できるからである。またROの含有割合を65質量部以下とすることで、ガラス成分の結晶化を抑制し、ガラスを形成し易くすることができる。なお、ガラス粉末が複数種のROを含む場合には、その合計が上記範囲を充足することが好ましい。
【0036】
本発明の発明者の検討によれば、抵抗温度係数がマイナスになりにくいルテニウム含有酸化物粉末、あるいは抵抗温度係数がマイナスになりにくいガラス粉末の単独では、抵抗温度係数が0に近い厚膜抵抗体を作ることが困難な場合がある。しかし、両者を組み合わせることによって、より確実に抵抗温度係数が0に近い厚膜抵抗体を作製できる。
【0037】
本実施形態の厚膜抵抗体用組成物が含有するガラス粉末は、既述の様に、例えばSiOとBとROとを含むことが好ましい。ただし、係る成分に限定されるものではなく、例えば、ガラスの耐候性や焼成時の流動性を調整する目的で他の成分をさらに含有することもできる。その他の成分の例としては、Al、ZrO、TiO、SnO、ZnO、LiO、NaO、KO等が挙げられる。Alはガラスの分相を抑制しやすく、ZrO、TiOはガラスの耐候性を向上させる、SnO、ZnO、LiO、NaO、KO等はガラスの流動性を高める働きがある。
【0038】
ガラスの焼成時の流動性に影響する尺度として軟化点がある。一般に、厚膜抵抗体を製造する際の、厚膜抵抗体用組成物等を焼成する温度は800℃以上900℃以下である。
【0039】
このように、厚膜抵抗体を製造する際の厚膜抵抗体用組成物等の焼成温度が800℃以上900℃以下の場合、本実施形態に係る厚膜抵抗体用組成物に用いるガラス粉末のガラスの軟化点は、600℃以上800℃以下が好ましく、600℃以上750℃以下がより好ましい。
【0040】
ここで、軟化点は、ガラスを示差熱分析法(TG-DTA)にて大気中で、10℃/minで昇温、加熱し、得られた示差熱曲線の最も低温側の示差熱曲線の減少が発現する温度よりも高温側の次の示差熱曲線が減少するピークの温度である。
【0041】
ガラスは、一般的に、所定の成分またはそれらの前駆体を目的とする配合にあわせて混合し、得られた混合物を溶融し急冷することによって製造できる。溶融温度は特に限定されないが例えば1400℃前後とすることができる。また、急冷の方法についても特に限定されないが、溶融物を冷水中に入れるか冷ベルト上に流すことにより行うことができる。ガラスの粉砕にはボールミル、遊星ミル、ビーズミルなど用いることができるが、粒度をシャープにするには湿式粉砕が望ましい。
【0042】
本実施形態の厚膜抵抗体用組成物が含有するガラス粉末の粒径も限定されない。本実施形態の厚膜抵抗体用組成物が含有するガラス粉末は、レーザー回折を利用した粒度分布計により測定した50%体積累計粒度が5μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましく、さらに好ましくは1.5μm以下である。
【0043】
ただし、ガラス粉末の粒度を過度に小さくすると、生産性が低くなり、不純物等の混入も増える恐れがあることから、ガラス粉末の50%体積累計粒度は0.1μm以上が好ましい。
(厚膜抵抗体用組成物の組成について)
本実施形態の厚膜抵抗体用組成物では、該厚膜抵抗体用組成物を用いた厚膜抵抗体について、従来は困難であった面積抵抗値が80kΩより高い抵抗域においても、抵抗温度係数を0に近くすることが可能であり、特に高い効果を発揮できる。
【0044】
本実施形態の厚膜抵抗体用組成物が含有するルテニウム含有酸化物粉末と、ガラス粉末との混合割合は特に限定されず、厚膜抵抗体用組成物を用いて製造する厚膜抵抗体に要求される抵抗値等により選択できる。例えば、ルテニウム含有酸化物粉末とガラス粉末とのうち、ルテニウム含有酸化物粉末の割合が、5質量%以上50質量%以下であることが好ましい。すなわち、ルテニウム含有酸化物粉末の質量:ガラス粉末の質量=5:95以上50:50以下の範囲であることが好ましい。
【0045】
これは、本実施形態の厚膜抵抗体用組成物が含有するルテニウム含有酸化物粉末とガラス粉末との合計を100質量%とした場合に、ルテニウム含有酸化物粉末の割合を5質量%未満にすると、得られる厚膜抵抗体の抵抗値が高くなり過ぎて不安定となるおそれがあるからである。
【0046】
また、本実施形態の厚膜抵抗体用組成物が含有するルテニウム含有酸化物粉末とガラス粉末との合計を100質量%とした場合に、ルテニウム含有酸化物粉末の割合を50質量%以下とすることで、得られる厚膜抵抗体の強度を十分に高くすることができ、脆くなることを特に確実に防ぐことができるからである。
【0047】
本実施形態の厚膜抵抗体用組成物中のルテニウム含有酸化物粉末と、ガラス粉末との混合割合は、ルテニウム含有酸化物粉末の質量:ガラス粉末の質量=5:95以上40:60以下の範囲であることがより好ましい。すなわち、ルテニウム含有酸化物粉末とガラス粉末とのうち、ルテニウム含有酸化物粉末の割合を、5質量%以上40質量%以下とすることがより好ましい。
【0048】
本実施形態の厚膜抵抗体用組成物には、厚膜抵抗体の抵抗値や抵抗温度係数や耐静電気特性、トリミング性の改善、調整を目的として一般に使用される添加剤を加えても良い。代表的な添加剤としてはNb、Ta、TiO、CuO、MnO、ZrO、Al、SiO、ZrSiO等が挙げられる。これらの添加剤を加えることでより優れた特性を有する抵抗体を作成できる。添加する量は目的によって調整されるが、ルテニウム含有酸化物粉末とガラス粉末との合計100質量部に対して、添加剤の添加量を20質量部以下とすることが好ましい。
【0049】
なお、これらの成分は添加しないこともできる。すなわち本実施形態の厚膜抵抗体用組成物は、ルテニウム含有酸化物粉末と、ガラス粉末とから構成することもできる。
【0050】
また、本実施形態の厚膜抵抗体用組成物は鉛を含有しない。このため、添加剤についても鉛を含有しない添加剤を用いることができる。既述の様に鉛を含有しないとは、鉛を意図して添加していないことを意味し、鉛の含有量が0であることを意味する。ただし、製造工程等で不純物成分、不可避成分として混入することを排除するものではない。
[厚膜抵抗体用ペースト]
本実施形態の厚膜抵抗体用ペーストの一構成例について説明する。
【0051】
本実施形態の厚膜抵抗体用ペーストは、既述の厚膜抵抗体用組成物と、有機ビヒクルとを含むことができる。本実施形態の厚膜抵抗体用ペーストは、既述の厚膜抵抗体用組成物を有機ビヒクル中に分散した構成を有することが好ましい。
【0052】
上述のように、本実施形態の厚膜抵抗体用ペーストは、有機ビヒクルと呼ばれる樹脂成分を溶剤に溶解した溶液中に、既述の厚膜抵抗体用組成物を分散することで調製できる。
【0053】
有機ビヒクルの樹脂や溶剤の種類、配合については特に限定されるものではない。有機ビヒクルの樹脂成分としては、例えばエチルセルロース、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル、ロジン、マレイン酸エステル等から選択された1種類以上を用いることができる。
【0054】
また、溶剤としては、例えばターピネオール、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート等から選択された1種類以上を用いることができる。なお、厚膜抵抗体用ペーストの乾燥を遅らせる目的で、沸点が高い溶剤を加えることもできる。また、必要に応じて、分散剤や可塑剤など加えることもできる。
【0055】
樹脂成分や、溶剤の配合比は、得られる厚膜抵抗体用ペーストに要求される粘度や、印刷、塗布方法等に応じて調整することができる。厚膜抵抗体用組成物に対する有機ビヒクルの割合は、特に限定されないが、厚膜抵抗体用組成物を100質量部とした場合に、有機ビヒクルの割合を例えば20質量部以上200質量部以下とすることができる。
【0056】
ルテニウム含有酸化物粉末、ガラス粉末、添加剤等の分散方法、すなわち本実施形態の厚膜抵抗体用ペーストの製造方法は特に制限されない。例えば、スリーロールミル(3本ロールミル)、遊星ミル、ビーズミル等から選択される1種類以上を用いて、既述の厚膜抵抗体用組成物等を有機ビヒクル中に分散させることもできる。また、例えば既述の厚膜抵抗体用組成物をボールミルや擂潰(らいかい)機で混合してから、有機ビヒクル中に分散させることもできる。
【0057】
厚膜抵抗体用ペーストでは、無機原料粉末の凝集を解し、樹脂成分を溶解した溶剤、すなわち有機ビヒクル中に分散することが望ましい。一般に、粉末の粒径が小さくなると凝集が強くなり、二次粒子を形成し易くなる。このため、本実施形態の厚膜抵抗体用ペーストでは、二次粒子を解し、一次粒子に分散させることを容易にするために、脂肪酸等を分散剤として添加し、含有することもできる。
[厚膜抵抗体]
本実施形態の厚膜抵抗体の一構成例について説明する。
【0058】
本実施形態の厚膜抵抗体は、既述の厚膜抵抗体用組成物、厚膜抵抗体用ペーストを用いて製造することができる。このため、本実施形態の厚膜抵抗体は、既述の厚膜抵抗体用組成物を含むことができ、既述のルテニウム含有酸化物粉末と、ガラス成分とを含むことができる。
【0059】
なお、既述のように、厚膜抵抗体用組成物では、ルテニウム含有酸化物粉末とガラス粉末とのうち、ルテニウム含有酸化物粉末の割合を、5質量%以上50質量%以下とすることが好ましい。そして、本実施形態の厚膜抵抗体は、該厚膜抵抗体用組成物を用いて製造でき、得られる厚膜抵抗体内のガラス成分は、厚膜抵抗体用組成物のガラス粉末に由来する。このため、本実施形態の厚膜抵抗体は厚膜抵抗体用組成物と同様に、ルテニウム含有酸化物粉末と、ガラス成分とのうち、酸化ルテニウム粉末の割合が、5質量%以上50質量%以下であることが好ましく、5質量%以上40質量%以下であることがより好ましい。
【0060】
本実施形態の厚膜抵抗体の製造方法は特に限定されないが、例えば既述の厚膜抵抗体用組成物を、セラミック基板上で焼成して形成することができる。また、既述の厚膜抵抗体用ペーストを、セラミック基板に塗布した後、焼成して形成することもできる。
【実施例
【0061】
以下に具体的な実施例、比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
1.ルテニウム含有酸化物粉末の評価
以下の実施例、比較例で使用したルテニウム含有酸化物粉末の形状・物性を評価するために、ICPによる組成分析、X線回折法による結晶構造の同定、格子定数、およびBET法による比表面積径の算出を行った。評価結果を表1に示す。
(1)組成分析
組成分析は、ICP発光分光分析器(VARIAN社製、725ES)を用いて行い、ルテニウム含有酸化物粉末が含有するニオブと、ルテニウムとのモル比を算出した。表1において、「化学分析によるNb:Ru比」の欄に結果を示す。
(2)格子定数
ルテニウム含有酸化物粉末のX線回折の結果から、リードベルト解析により、a軸とc軸の格子定数を算出した。
(3)比表面積径
比表面積径は比表面積と密度より算出できる。比表面積は測定が簡単にできるBET1点法を用いた。比表面積径をD1(nm)、密度をρ(g/cm)、比表面積をS(m/g)とし、粉末を真球とみなすと、以下の式(A)に示す関係式が成り立つ。このD1によって算出される粒径を比表面積径とする。
【0062】
D1(nm)=6×10/(ρ・S) ・・・(A)
ルテニウム含有酸化物粉末の密度は、ルテニウム、ニオブ、酸素の原子量、および酸化ニオブの固溶割合から算出されるルチル型の単位結晶格子当たりの質量を、a軸とc軸の格子定数から算出されるルチル型の単位結晶格子当たりの体積で除して算出した。
2.ガラス粉末の評価
以下の実施例、比較例で使用したガラス粉末の組成、および以下の評価結果を表2に示す。
(1)軟化点、ガラス転移点
ガラス粉末の軟化点は、ガラス粉末を示差熱分析法(TG-DTA)にて大気中で毎分10℃昇温、加熱し、得られた示差熱曲線の最も低温側の示差熱曲線の減少が発現する温度よりも高温側の次の示差熱曲線が減少するピークの温度とした。
【0063】
ガラス転移点は、ガラス粉末を再溶融して得られるロッド状の試料を熱機械分析法(TMA)にて大気中で毎分10℃昇温、加熱し、得られた熱膨張曲線の屈曲点を示す温度とした。
(2)50%体積累計粒度
ガラス粉末はすべて50%体積累計粒度が1.3μm以上1.5μm以下となるようにボールミルにて粉砕した。50%体積累計粒度は、レーザー回折を利用した粒度分布計により測定した。
3.厚膜抵抗体の評価
以下の実施例、比較例で作製した厚膜抵抗体について、膜厚、面積抵抗値、25℃から-55℃までの抵抗温度係数(COLD-TCR)、25℃から125℃までの抵抗温度係数(HOT-TCR)、耐静電気特性を評価した。評価結果を表3に示す。
【0064】
なお、表3中では抵抗温度係数のCOLD-TCRをC-TCR、HOT-TCRをH-TCRと記載している。
(1)膜厚
膜厚は、以下の実施例、比較例において同様にして作製した5個の厚膜抵抗体について、触針の厚さ粗さ計(東京精密社製 型番:サーフコム480B)により膜厚を測定し、測定した値を平均することで算出した。
(2)面積抵抗値
面積抵抗値は、以下の実施例、比較例において同様にして作製した25個の厚膜抵抗体の抵抗値をデジタルマルチメーター(KEITHLEY社製、2001番)で測定した値を平均することで算出した。
(3)抵抗温度係数
抵抗温度係数は、以下の実施例、比較例において同様にして作製した5個の厚膜抵抗体を-55℃、25℃、125℃にそれぞれ15分保持してから抵抗値を測定し、各厚膜抵抗体の各温度での抵抗値をR-55、R25、R125とした。そして、各厚膜抵抗体について以下の式(B)、式(C)によってCOLD-TCRと、HOT-TCRとを計算し、5個の厚膜抵抗体の平均を以下の各実施例、比較例の厚膜抵抗体の抵抗温度係数(COLD-TCR、HOT-TCR)とした。抵抗温度係数は0に近いことが望ましく、-100ppm/℃≦抵抗温度係数≦100ppm/℃であることが優れた抵抗体の目安とされている。
COLD―TCR(ppm/℃)=(R-55-R25)/R25/(-80)×10 ・・・(B)
HOT―TCR(ppm/℃)=(R125-R25)/R25/(100)×10 ・・・(C)
(4)耐静電気特性
耐静電気特性は、200pFのコンデンサに2kVの電圧で電荷を充電し、厚膜抵抗体に放電した。放電は正負1回ずつ行い、静電気放電前後の抵抗値変化率を評価した。静電気放電前後の抵抗値変化率は、絶対値が小さいほど望ましい。
[実施例1~4、比較例1~3]
(酸化ニオブが固溶した酸化ルテニウム粉末の合成)
塩化ルテニウムのエタノール溶液にナトリウムエトキシドを加えて得られたルテニウムエトキシドとニオブエトキシドを混合し、アンモニア水を加え酸化ルテニウムと酸化ニオブの前駆体沈殿を得た。この沈殿物を洗浄、乾燥したのち、表1に示すように、700℃~800℃で焙焼して酸化ニオブが固溶した酸化ルテニウム粉末を得た。
【0065】
酸化ルテニウムa~酸化ルテニウムcについては、ルテニウムの出発原料とニオブの出発原料とを、ルテニウムとニオブとの割合がモル比で、Nb:Ru=1:99、10:90、20:80となるように混合して用いた。
【0066】
また、酸化ニオブを固溶させなかった酸化ルテニウムdは、塩化ルテニウムのエタノール溶液にナトリウムエトキシドを加えて得られたルテニウムエトキシドに、アンモニア水を加え酸化ルテニウムとの前駆体沈殿を得た。この沈殿物を洗浄、乾燥したのち、700℃で焙焼して酸化ルテニウム粉末を得た。
【0067】
実施例1~実施例4、比較例3で用いた酸化ニオブが固溶した酸化ルテニウム粉末と比較例1、比較例2で用いた酸化ルテニウムの格子定数と比表面積と密度とから、既述の式(A)を用いて算出した比表面積径を表1に示した。
【0068】
また、実施例1~実施例4、比較例3で用いた酸化ニオブが固溶した酸化ルテニウム粉末である酸化ルテニウムa~酸化ルテニウムcは、X線回折のパターンより単相のルチル構造であることが確認された。
(厚膜抵抗体用組成物)
表3に示したように、実施例1~4、比較例1~3では、既述の酸化ルテニウムa~酸化ルテニウムdのいずれかと、表2に示したガラス粉末A~ガラス粉末Cのいずれかとを、表3に示した配合比となるように計量、混合して厚膜抵抗体用組成物を調製した。
【0069】
なお、実施例1~実施例4、比較例1~比較例3で使用したガラス粉末の組成を表2に示す。ガラス粉末はいずれも、50%体積累計粒度が1.3μm以上1.5μm以下となっていることを確認した。
【0070】
比較例2では添加物としてNb粉末をさらに添加した。
【0071】
ルテニウム含有酸化物粉末とガラス粉末との混合比率は、得られる厚膜抵抗体の面積抵抗値がおよそ100kΩとなるように調整した。
(厚膜抵抗体用ペーストの作製)
実施例1~実施例4、比較例1~比較例3の厚膜抵抗体用組成物100質量部を、有機ビヒクル43質量部中に3本ロールミルを用いて分散させて厚膜抵抗体用ペーストを作成した。なお、有機ビヒクルは、ターピネオール85質量%とエチルセルロース15質量%を混合し80℃で溶解して調製した。
(厚膜抵抗体の作製、評価)
予めアルミナ基板に焼成して形成された、1wt%のPd、99wt%のAgとを含む電極上に、各実施例、比較例で作製した厚膜抵抗体用ペーストを印刷した。次いで、150℃で5分間乾燥させた後、ピーク温度850℃で9分間、昇温時間と降温時間を含めたトータル30分間焼成し、厚膜抵抗体を形成した。厚膜抵抗体のサイズは抵抗体幅が1.0mm、抵抗体長さ(電極間)が1.0mmとなるようにした。
【0072】
形成された厚膜抵抗体は、膜厚、面積抵抗値、25℃から-55℃までの抵抗温度係数(COLD-TCR)、25℃から125℃までの抵抗温度係数(HOT-TCR)、耐静電気特性を測定した。評価結果を表3に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
表3に示した結果によると、実施例1~実施例4の厚膜抵抗体用組成物を用いた厚膜抵抗体は、抵抗温度係数が±100ppm/℃以内、静電気放電後の抵抗値変化率である耐静電気特性も±5%以内であり、優れた抵抗体といえる。
【0076】
一方、比較例1の厚膜抵抗体用組成物を用いた厚膜抵抗体は、酸化ニオブが固溶していない酸化ルテニウム粉末を用いた例であり、耐静電気特性が±5%の範囲を大きく超え、静電気を放電すると抵抗値の変化率が大きいことを確認できた。
【0077】
比較例2の厚膜抵抗体用組成物は、酸化ニオブが固溶していない酸化ルテニウム粉末を用い、酸化ニオブを個別に添加した例である。静電気放電後の抵抗値変化率の大きさは比較例1よりは小さいが、抵抗温度係数が大きくマイナスになっていることを確認できた。
【0078】
比較例3は、酸化ニオブが固溶している酸化ルテニウム粉末を用い、本発明から外れている組成のガラスを用いた例である。静電気放電後の抵抗値変化率の大きさは小さいが、抵抗温度係数が大きくマイナスになっていることを確認できた。