(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】摩擦部材センサ
(51)【国際特許分類】
F16D 66/02 20060101AFI20241008BHJP
G01B 7/06 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
F16D66/02 D
G01B7/06 C
(21)【出願番号】P 2020083495
(22)【出願日】2020-05-11
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】309014573
【氏名又は名称】日清紡ブレーキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 征幸
(72)【発明者】
【氏名】矢田 智春
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 ひとみ
(72)【発明者】
【氏名】藤原 宗
(72)【発明者】
【氏名】山口 慶之
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-054402(JP,A)
【文献】特表2006-516701(JP,A)
【文献】特表2005-533973(JP,A)
【文献】特表2007-514907(JP,A)
【文献】欧州特許第01923592(EP,B1)
【文献】特開2000-161404(JP,A)
【文献】特開2018-071786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 49/00-71/04
G01B 7/00-7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の相手部材と、それぞれが前記相手部材と接触する摩擦材と前記摩擦材に前記相手部材とは反対側で重ねられた導電性の支持部材とを有し、前記相手部材と接触可能に配置された二つの摩擦部材と、を備えたブレーキ装置に対して設けられる摩擦部材センサであって、
前記相手部材と前記二つの摩擦部材に含まれた二つの前記支持部材との三つの要素のうち二つと電気的に接続された二つの接続部と、
前記二つの接続部と接続された前記二つの要素を一対の電極とし前記二つの要素の間に位置する前記摩擦材を誘電体とした場合の当該二つの要素間の静電容量または前記静電容量の変化を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果を出力する出力部と、
を備え
、
前記二つの要素は、前記相手部材と、前記二つの前記支持部材のうち一方と、である、摩擦部材センサ。
【請求項2】
前記ブレーキ装置は、ディスクブレーキ装置である、請求項1に記載の摩擦部材センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や鉄道、産業機械等のブレーキ装置に使用される摩擦部材センサおよび摩擦部材センサシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車や鉄道、産業機械等のブレーキ装置としてディスクブレーキ装置やドラムブレーキ装置が使用されている。
【0003】
ディスクブレーキ装置は、摩擦部材として支持部材であるバックプレートに摩擦材を張り付けたブレーキパッドと、相手部材としてディスクロータを具備するブレーキ装置であり、車輪と一体的に回転するディスクロータの両側に設けた一対のブレーキパッドをディスクロータ側にそれぞれ押圧し、ディスクロータとブレーキパッドとの摩擦係合により車輪を制動するものである。
【0004】
また、ドラムブレーキ装置は、摩擦部材として支持部材であるシューリムに摩擦材を張り付けたブレーキシューと、相手部材としてブレーキドラムを具備するブレーキ装置であり、車輪と一体的に回転するブレーキドラムの内側に設けた一対のブレーキシューをブレーキドラム側にそれぞれ押圧し、ブレーキドラムとブレーキシューとの摩擦係合により車輪を制動するものである。
【0005】
このような摩擦部材には摩擦材の摩耗を検出する摩擦部材センサが装着されることがあり、摩擦部材センサとして、可聴式や電気式のものが知られている。可聴式は、摩擦材が摩耗により薄くなると摩擦部材に取り付けられた金具が相手部材と接触して音を発生する構成である。電気式は、摩擦材が摩耗により薄くなると摩擦部材に埋め込まれた電線がディスクロータと接触して断線することにより、摩擦材の摩耗を検出する構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の摩擦部材センサは、摩擦材の摩耗を検出するために、相手部材に傷が付いたり、摩擦材の摩耗を検出するための構成を切断させる必要がある。加えて、摩擦材の摩耗量をリニアに検出することができずに、予め設定された所定の摩耗量にならないと検出することができない。
【0008】
本発明は、摩擦部材の摩擦材の摩耗を検出するにあたり、相手部材に傷が付くことを抑制できるとともに、摩擦材の摩耗を検出するための構成を切断させる必要がなく、摩擦材の摩耗量をリニアに検出することができる摩擦部材センサおよび摩擦部材センサシステムを得ることを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の摩擦部材センサは、導電性の相手部材と、それぞれが前記相手部材と接触する摩擦材と前記摩擦材に前記相手部材とは反対側で重ねられた導電性の支持部材とを有し、前記相手部材と接触可能に配置された二つの摩擦部材と、を備えたブレーキ装置に対して設けられる摩擦部材センサであって、前記相手部材と前記二つの摩擦部材に含まれた二つの前記支持部材との三つの要素のうち二つと電気的に接続された二つの接続部と、前記二つの接続部と接続された前記二つの要素を一対の電極とし前記二つの要素の間に位置する前記摩擦材を誘電体とした場合の当該二つの要素間の静電容量または前記静電容量の変化を検出する検出部と、前記検出部の検出結果を出力する出力部と、を備える。前記二つの要素は、前記相手部材と、前記二つの前記支持部材のうち一方と、である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、摩擦部材の摩擦材の摩耗を検出するにあたり、相手部材に傷が付くことを抑制できるとともに、摩擦材の摩耗を検出するための構成を切断させる必要がなく、摩擦材の摩耗量をリニアに検出することができる摩擦部材センサおよび摩擦部材センサシステムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、第1実施形態の摩擦部材センサシステムの全体構成を、ディスクブレーキ装置を例として示す図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の摩擦部材センサシステムの一部の構成を、ディスクブレーキ装置を例として示す図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の相手部材と摩擦材との間の距離と静電容量との関係を説明するための図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の制御装置の機能構成を例示的に示す図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態の摩擦部材センサシステムが実行する処理の一例のフローチャートである。
【
図6】
図6は、第2実施形態の摩擦部材センサシステムの一部の構成を、ディスクブレーキ装置を例として示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に開示される複数の実施形態には、同様の構成要素が含まれる。よって、以下では、それら同様の構成要素には共通の符号が付与されるとともに、重複する説明が省略される。
【0013】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の摩擦部材センサシステムの全体構成を、ディスクブレーキ装置を例として示す図である。
【0014】
以後、ブレーキ装置を「ディスクブレーキ装置」とし、摩擦部材センサシステムを「ブレーキパッドセンサシステム」、摩擦部材センサを「ブレーキパッドセンサ」、摩擦部材を「ブレーキパッド」、支持部材を「バックプレート」、相手部材を「ディスクロータ」と読み替えて説明する。
【0015】
図1に示すように、ブレーキパッドセンサシステム1は、ディスクブレーキ装置2と、ブレーキパッドセンサ3と、制御装置4と、操作部5と、表示装置6と、サーバ100と、を備える。ディスクブレーキ装置2と、ブレーキパッドセンサ3と、制御装置4と、操作部5と、表示装置6とは、車両200に設けられている。サーバ100は、車両200の管理等を行う管理センターに設けられている。
【0016】
ディスクブレーキ装置2は、ディスクロータ11と、ディスクロータ11を挟む二つのブレーキパッド12A,12Bと、を備える。ディスクブレーキ装置2は、浮動式であってもよいし、対向ピストン式であってもよい。
【0017】
ディスクロータ11は、車両200に設けられたハブおよび車輪と一体に回転する。ディスクロータ11は、導電性材料によって構成され、導電性を有する。ディスクロータ11の材料は、例えばFC150~FC250のねずみ鋳鉄である。なお、ディスクロータ11の材料は、上記に限定されない。
【0018】
ブレーキパッド12A,12Bは、ディスクロータ11に対して互いに反対側に位置している。すなわち、ブレーキパッド12A,12Bの間にディスクロータ11が位置している。ブレーキパッド12A,12Bは、互いに略平行である。ブレーキパッド12A,12Bは、それぞれが、摩擦材14A,14Bと、バックプレート13A,13Bと、を有する。
【0019】
摩擦材14A,14Bは、ディスクロータ11に面して設けられ、ディスクロータ11と接触する。摩擦材14A,14Bは、互いに略平行である。摩擦材14A,14Bは、誘電体として機能するように構成されている。すなわち、摩擦材14A,14Bは、ブレーキパッド12A,12Bおよびバックプレート13A,13Bよりも導電性が低い。摩擦材14A,14Bは、例えば、フェノール樹脂等の結合材、アラミドパルプ等の繊維基材、グラファイトや二硫化モリブデン等の潤滑材、酸化ジルコニウムやケイ酸ジルコニウム等の無機摩擦調整材、カシューダスト等の有機摩擦調整材、硫酸バリウム等の充填材を含む複合材料によって構成されている。なお、摩擦材14A,14Bの材料は、上記に限定されず、公知の種々の材料を用いることができる。
【0020】
バックプレート13A,13Bは、摩擦材14A,14Bにディスクロータ11とは反対側で重ねられている。バックプレート13A,13Bは、互いに略平行である。摩擦材14A,14Bとバックプレート13A,13Bとは、固定されている。バックプレート13A,13Bは、導電性材料によって構成され、導電性を有する。バックプレート13A,13Bの材料は、金属材料、例えば鋼材(一例としてSAPH440)等である。なお、バックプレート13A,13Bの材料は、上記に限定されない。
【0021】
ディスクブレーキ装置2は、油圧によってブレーキパッド12A,12Bをディスクロータ11に押し付けることにより制動力を発生する。このとき、摩擦材14A,14Bに対してディスクロータ11が摺動することにより、摩擦材14A,14Bが摩耗する。
【0022】
ブレーキパッドセンサ3は、配線6A,6Bを介してディスクブレーキ装置2と電気的に接続され、摩擦材14A,14Bの摩耗を検出する。ブレーキパッドセンサ3は、容量検出ICとも称される。
【0023】
図2は、第1実施形態の摩擦部材センサシステムの一部の構成を、ディスクブレーキ装置を例として示す図である。
【0024】
図2に示すように、ブレーキパッドセンサ3は、接続部25,26,28と、検出部20と、通信インタフェース24と、を備える。
【0025】
図1に示すように、接続部25,26は、ディスクロータ11と二つのブレーキパッド12A,12Bに含まれた二つのバックプレート13A,13Bとの三つの要素のうち二つと電気的に接続されている。具体的には、二つの要素は、ディスクロータ11と、二つのバックプレート13A,13Bのうち一方であるバックプレート13Aと、である。接続部26は、配線6Aと、配線6Aとディスクロータ11との間に介在した検出手段(例えばスリップリング)と、を介してディスクロータ11と電気的に接続されている。また、接続部25は、配線6Bを介してバックプレート13Aと電気的に接続されている。接続部25,26は、例えば、端子である。なお、接続部26は、ハブと、ハブと電気的に接続されたベアリングと、ベアリングと電気的に接続されたナックル、ナックルと電気的に接続された配線6Aと、を介してディスクロータ11と電気的に接続されていてもよい。
【0026】
図2に示すように、接続部26は、参照部27と電気的に接続されている。参照部27は、ディスクロータ11と、摩耗していないすなわち新品の二つのブレーキパッド12A,12Bとに対応する対応構成を有する。接続部26は、これらの対応構成のうち上記の二つの要素(ディスクロータ11およびバックプレート13A)に対応する対応要素に電気的に接続されている。
【0027】
検出部20は、ブレーキパッド摩耗検出処理を実行する。具体的には、検出部20は、接続部25,26と接続された二つの要素、すなわちディスクロータ11およびバックプレート13Aを一対の電極(平行平板電極)とし二つの要素(ディスクロータ11およびバックプレート13A)の間に位置する摩擦材14Aを誘電体とした場合の当該二つの要素(ディスクロータ11およびバックプレート13A)間の静電容量または静電容量の変化を検出する。検出部20は、ブレーキパッド12A,12Bの摩耗の検出として、摩擦材14Aの静電容量または静電容量の変化を検出する。一例として、本実施形態では、検出部20は、摩擦材14Aの静電容量の変化を検出する。
【0028】
誘電体としての摩擦材14Aが摩耗してバックプレート13Aの厚さが薄くなるほど、二つの電極としてのディスクロータ11およびバックプレート13A間の間隔が小さくなる。よって、摩擦材14Aが摩耗してバックプレート13Aの厚さが薄くなるほど、ディスクロータ11およびバックプレート13A間(摩擦材14A)の静電容量が大きくなる。ここで、
図3は、第1実施形態の相手部材と摩擦材との間の距離と静電容量との関係を説明するための図である。
図3の縦軸は、ブレーキパッドセンサ3が静電容量を検出した場合の静電容量値を示す。
図3の横軸は、時間経過を示す。
図3から分かるように、ブレーキパッド12がディスクロータ11に触る方向(近づく方向)に移動すると、静電容量が増大し、ブレーキパッド12がディスクロータ11から離れる方向に移動すると、静電容量値が小さくなる。
【0029】
上記の静電容量の変化の検出が行なわれる場合には、接続部25,26と接続された二つの要素間と、参照部27とのそれぞれに電流が流される。電流は、直流または交流である。一例として、電流は、パルス波形の電流である。このとき、接続部25,26と接続されたディスクロータ11とバックプレート13Aとの間に掛かる電圧(以後、第1電圧とも称する)は、三角波となる。同様に、ディスクロータ11とバックプレート13Aとに対応する参照部27の部分に掛かる電圧(以後、参照電圧とも称する)も三角波となる。第1電圧の立ち上がり(変化の度合い)は、誘電体としての摩擦材14Aの静電容量の大小に応じて変化する。一方、参照電圧の立ち上がりは、参照部27の誘電体としての構成の静電容量が一定であるので、変化しない。そして、摩擦材14Aが摩耗していない場合には、摩擦材14Aの静電容量と参照部27の静電容量とが同じであるため、第1電圧と参照電圧とは、同一である。一方、摩擦材14Aが摩耗して、摩擦材14Aの静電容量が変化した場合には、第1電圧の立ち上がりが遅くなり、第1電圧と参照電圧とに差が生じる。すなわち、第1電圧と参照電圧との間に差分がある場合には、摩擦材14Aの静電容量が変化したこと示す。検出部20は、このような方法により、摩擦材14Aの静電容量の変化を検出する。また、検出部20は、摩擦材14Aの静電容量の変化量も検出する。静電容量の変化量は、例えば、摩擦材14Aが摩耗していない場合の静電容量(基準静電容量)と、参照電圧と第1電圧との差分量とに基づいて算出することができる。静電容量の変化量が0以外の場合が、静電容量に変化が有ったことを示し、静電容量の変化量が0の場合が、静電容量に変化が無いことを示す。
【0030】
具体的には、検出部20は、ランプ波発生部21と、時間変換部22と、遅延校正部23と、を有する。ランプ波発生部21は、第1電圧および参照電圧からランプ波を発生する。時間変換部22は、ランプ波発生部21から出力されたランプ波を用いて、遅延校正部23とによって、第1電圧と参照電圧とを時間変化に変換するとともに、それらの差分をとり、当該差分の量をデジタル化したデジタル情報として出力する。すなわち、検出部20は、A/Dコンバータとして機能する。
【0031】
通信インタフェース24は、検出部20の検出結果を出力する。例えば、通信インタフェース24は、検出部20の検出結果を、表示装置6およびサーバ100に送信する。検出部20の検出結果は、静電容量または静電容量の変化を示す情報であり、一例として、静電容量の変化を示す情報である。静電容量の変化を示す情報は、静電容量の変化量を含む。通信インタフェース24は、出力部の一例である。
【0032】
操作部5は、例えば、車両200の車内に配置され、車両200の運転開始のための操作(押圧操作や回転操作等)を受ける。具体的には、操作部5は、車両200の駆動源が内燃機関である場合には、イグニッションボタンやイグニッションキーである。この場合、操作部5が上記操作を受けることにより、内燃機関が始動する。操作部5は、車両200の駆動源が電気モータである場合には、スタートボタンやスタートキーである。この場合、操作部5が上記操作を受けることにより、電気モータへの通電が可能となる。操作部5は、運転開始の操作を受けた場合には、当該操作を受けた旨を示す信号を制御装置4に出力する。
【0033】
表示装置6は、例えば、車両200の車内(例えばインストルメントパネル)に配置され、各種情報を表示する。表示装置6は、液晶ディスプレイやLED(Light Emitting Diode)等であってよい。
【0034】
制御装置4は、一般的なコンピュータとして構成されている。制御装置4は、ブレーキパッドセンサ3、操作部5、および表示装置6と配線によって接続されている。また、制御装置4は、通信ネットワーク300を介してサーバ100と通信可能に接続されている。
【0035】
図4は、第1実施形態の制御装置の機能構成を例示的に示す図である。
図4に示すように、制御装置4は、制御部30を備える、制御部30は、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、を有する。
【0036】
また、制御部30は、機能部として、センサ制御部31と、判定部32と、出力部33と、を有する。これらの機能部は、CPUがROM等の記憶部に記憶されたプログラムを実行することにより実現される。
【0037】
センサ制御部31は、ブレーキパッドセンサ3を制御する。例えば、センサ制御部31は、操作部5に対して車両200の運転開始を示す操作が有った場合に、センサ制御部31にブレーキパッド摩耗検出開始信号を送信する。ブレーキパッド摩耗検出開始信号は、ブレーキパッドセンサ3に、静電容量または静電容量の変化の検出の開始を指示するものである。これにより、ブレーキパッドセンサ3は、ディスクブレーキ装置2が設けられた車両200の運転開始を示す操作が有った場合に、静電容量または静電容量の変化を検出する。センサ制御部31は、ブレーキパッドセンサ3から検出結果を受信する。
【0038】
判定部32は、ブレーキパッドセンサ3の検出結果、すなわち静電容量または静電容量の変化を示す情報(一例として静電容量の変化を示す情報)に基づいて、摩擦材14A,14Bの摩耗に関する摩耗情報を生成する。摩耗情報は、例えば、摩擦材14A,14Bの残量(残りの厚さ)を含む。摩擦材14A,14Bの残量は、静電容量の変化量と、当該変化量に対応する摩耗量(摩耗厚さ)と、摩擦材14A,14Bの初期厚さと、に基づいて算出することができる。なお、摩擦材14Aと摩擦材14Bは、同一の摩耗状態であることを前提で上記の計算が行なわれる。
【0039】
また、判定部32は、摩擦材14A,14Bの残量が、第1閾値以下、かつ、第1閾値よりも小さい第2閾値以上か、または、摩擦材14A,14Bの残量が、第2閾値未満の場合か、を判定し、判定結果を摩耗情報に入れる。すなわち、判定部32は、摩擦材14A,14Bの残量がある閾値以下かを判定する。
【0040】
出力部33は、判定部32によって生成された摩耗情報を表示装置6およびサーバ100に送信する。
【0041】
サーバ100は、一般的なコンピュータとして構成されている。サーバ100は、車両200の情報である車両情報を収集し、当該車両情報を管理(記憶)する。車両情報は、摩擦材14A,14Bの摩耗情報を含む。
【0042】
次に、ブレーキパッドセンサシステム1が実行する処理の一例を
図5を参照して説明する。
図5は、第1実施形態の摩擦部材センサシステムが実行する処理の一例のフローチャートである。
【0043】
図5に示すように、操作部5は、車両200の運転開始のための操作(押圧操作や回転操作等)を受けると、運転開始信号を制御装置4に送信する(S1)。運転開始信号は、運転開始のための操作を受けたことを示す信号である。
【0044】
制御装置4では、運転開始信号を受信すると(S11)、センサ制御部31が、ブレーキパッド摩耗検出信号をブレーキパッドセンサ3に送信する(S12)。
【0045】
ブレーキパッドセンサ3は、ブレーキパッド摩耗検出信号を受信すると(S21)、ブレーキパッド摩耗検出処理を実行する(S22)。次に、ブレーキパッドセンサ3は、ブレーキパッド摩耗検出処理によって得た検出結果(静電容量の変化量)を制御装置4に送信する(S23)。
【0046】
制御装置4では、ブレーキパッドセンサ3から検出結果を受信すると(S13)、判定部32が摩耗情報を生成して、当該摩耗情報をサーバ100に送信する(S14)。また、制御装置4は、摩擦材14A,14Bの残量が、第1閾値以下、かつ、第1閾値よりも小さい第2閾値以上の場合、および、摩擦材14A,14Bの残量が、第2閾値未満の場合には、警告が必要と判定し(S15:Yes)、摩耗情報を表示装置6にも送信する(S16)。一方、制御装置4は、摩擦材14A,14Bの残量が、第1閾値を超える場合には、警告は不要であると判定し(S15:No)、摩耗情報を表示装置6には送信しない。なお、制御装置4では、摩擦材14A,14Bの残量に関わらず摩耗情報を表示装置6に送信してもよい。
【0047】
サーバ100は、摩耗情報を受信すると(S41)、所定処理を行なう(S42)。所定処理は、例えば、記憶部への摩耗情報の記憶や、分析等である。
【0048】
また、表示装置6は、摩耗情報を受信すると(S31)、摩耗情報を表示する(S32)。例えば、表示装置6は、摩耗量を表示する。また、例えば、表示装置6は、摩擦材14A,14Bの残量に応じた色を表示する。例えば、表示装置6は、摩擦材14A,14Bの残量が、第1閾値以下、かつ、第1閾値よりも小さい第2閾値以上の場合には、黄色を表示し、摩擦材14A,14Bの残量が、第2閾値未満の場合には、赤色を表示する。
【0049】
以上のように、本実施形態では、ブレーキパッドセンサ3は、導電性のディスクロータ11と、それぞれがディスクロータ11と接触する摩擦材14A,14Bと摩擦材14A,14Bにディスクロータ11とは反対側で重ねられた導電性のバックプレート13A,13Bとを有し、ディスクロータ11と接触可能に配置された二つのブレーキパッド12A,12Bと、を備えたディスクブレーキ装置2、に対して設けられる。ブレーキパッドセンサ3は、ディスクロータ11と二つのブレーキパッド12A,12Bに含まれた二つのバックプレート13A,13Bとの三つの要素のうち二つと電気的に接続された二つの接続部25,26と、二つの接続部25,26と接続された二つの要素を一対の電極とし二つの要素の間に位置する摩擦材14A,14Bを誘電体とした場合の当該摩擦材14A,14Bの静電容量または静電容量の変化を検出する検出部20と、検出部20の検出結果を出力する通信インタフェース24(出力部)と、を備える。
【0050】
このような構成によれば、ブレーキパッド12A,12Bの摩耗を検出するにあたり、ディスクロータ11に傷が付くことを抑制できるとともに、ブレーキパッド12A,12Bの摩耗を検出するための構成を切断させる必要がない。また、このような構成によれば、ブレーキパッド12A,12Bの摩耗を検出するためにブレーキパッド12A,12B内に断線用の電線を埋め込む必要がないので、ブレーキパッド12A,12Bの構成の複雑化を抑制でき、ブレーキパッド12A,12Bのコストが高くなるのを抑制することができる。また、このような構成によれば、ブレーキパッド12A,12Bの摩耗状態をリニアに検出することができる。
【0051】
また、本実施形態では、二つの要素は、ディスクロータ11と、二つのバックプレート13A,13Bのうち一方(一例としてバックプレート13A)と、である。
【0052】
このような構成によれば、例えば、ブレーキパッド12A,12Bを交換する場合に、二つの電極の一方であるディスクロータ11と接続部26との電気的接続を変更する必要がない。なお、二つの要素のうちの一つは、バックプレート13Aではなくバックプレート13Bであってもよい。
【0053】
また、本実施形態では、ブレーキパッドセンサシステム1は、ブレーキパッドセンサ3と、通信インタフェース24から出力された検出結果に基づく摩擦材14A,14Bの摩耗に関する摩耗情報を報知する制御装置4(報知装置)と、を備える。
【0054】
このような構成によれば、制御装置4によって摩擦材14A,14Bの摩耗情報を報知することができる。
【0055】
また、本実施形態では、摩耗情報は、摩擦材14A,14Bの残量を含み、制御装置4は、摩擦材14A,14Bの残量に応じた色を表示装置6に表示する。
【0056】
このような構成によれば、摩擦材14A,14Bの残量が分かりやすい。
【0057】
また、本実施形態では、ブレーキパッドセンサ3は、ディスクブレーキ装置2が設けられた車両200の運転開始を示す操作が有った場合に、静電容量または静電容量の変化を検出する。
【0058】
このような構成によれば、車両200の運転開始に伴い、摩擦材14A,14Bの静電容量または静電容量の変化を検出することができる。
【0059】
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態の摩擦部材センサシステムの一部の構成を、ディスクブレーキ装置を例として示す図である。
【0060】
図6に示すように、本実施形態は、ブレーキパッドセンサ3が、ディスクロータ11と二つのブレーキパッド12A,12Bに含まれた二つのバックプレート13A,13Bとの三つの要素のうち、ブレーキパッドセンサ3と電気的に接続された二つの要素が、二つのバックプレート13A,13Bである点が第1実施形態と異なる。本実実施形態では、ブレーキパッドセンサ3の接続部26が、配線6Bを介してバックプレート13Aと電気的に接続され、配線6Aを介してバックプレート13Bと電気的に接続されている。なお、本実施形態でも、ブレーキパッドセンサ3は、第1実施形態と同様の検出処理を行なう。
【0061】
ここで、本実施形態では、ディスクロータ11の抵抗値をrdとし、バックプレート13A,13Bの抵抗値をそれぞれrbとし、摩擦材14A,14Bの抵抗値をそれぞれRとし、バックプレート13A,13Bをディスクロータ11とのそれぞれの間の静電容量値をCとする。この場合、静電容量Cのインピーダンスと比較して抵抗値rd,rbが十分に小さいため、rd=0、rb=0と近似する。この場合、ブレーキパッドセンサ3で測定される静電容量値である測定容量値をCmとすると、
Cm=C/2
となる。
【0062】
以上のように、本実施形態では、二つの要素は、二つのバックプレート13A,13Bである。
【0063】
このような構成によれば、接続部25,26と電極であるバックプレート13A,13Bとの電気的接続を比較的容易に行うことができる。
【0064】
なお、本実施形態では、ブレーキパッドセンサ3が静電容量の変化を検出する例が示されたが、これに限定されない。例えば、ブレーキパッドセンサ3は静電容量を検出してもよい。静電容量の検出方法は、公知の方法を適用することができる。
【0065】
また、本実施形態では、電圧の変化に基づいてブレーキパッドセンサ3の静電容量の変化を検出する例が示されたが、これに限定されない。例えば、電圧の変化に替えてインピーダンスの変化に基づいてブレーキパッドセンサ3の静電容量の変化を検出してもよい。この場合、ブレーキパッドセンサ3は、インピーダンス検出器とも称される。
【0066】
また、上記実施形態では、ブレーキパッドセンサ3は、ディスクブレーキ装置2が設けられた車両200の運転開始を示す操作が有った場合に、静電容量または静電容量の変化を検出する例が示されたが、これに限定されない。ブレーキパッドセンサ3は、常時静電容量または静電容量の変化を検出してもよいし、予め設定されたタイミングで静電容量または静電容量の変化を検出してもよいし、運転開始操作とは別の操作がなれた場合に静電容量または静電容量の変化を検出してもよい。また、ブレーキパッドセンサ3は、例えば点検者が携帯する検査端末からの無線による指示を受信した場合に、静電容量または静電容量の変化を検出し、検出結果を検査端末に送信してもよい。検査端末は、例えば、スマートフォン等の情報処理端末であってよい。
【0067】
以上、本発明の実施形態が例示されたが、上記実施形態はディスクブレーキ装置に適用した一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態、例えばドラムブレーキ装置においても実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0068】
1…ブレーキパッドセンサシステム(摩擦部材センサシステム)、2…ディスクブレーキ装置(ブレーキ装置)、3…ブレーキパッドセンサ(摩擦部材センサ)、4…制御装置(報知装置)、6…表示装置、11…ディスクロータ(相手部材)、12A,12B…ブレーキパッド(摩擦部材)、13A,13B…バックプレート(支持部材)、14A,14B…摩擦材、20…検出部、24…通信インタフェース(出力部)、25,26…接続部。