(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】ベーパーチャンバおよびベーパーチャンバの製造方法
(51)【国際特許分類】
F28D 15/02 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
F28D15/02 101H
F28D15/02 102A
(21)【出願番号】P 2020112761
(22)【出願日】2020-06-30
【審査請求日】2023-02-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 早紀
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0122671(US,A1)
【文献】国際公開第2013/125427(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/00-15/06
H01L 23/34-23/473
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1金属板と第2金属板との間に形成される内部空間に作動流体を有するベーパーチャンバであって、
前記第1金属板は、板部と、前記板部の周縁から前記第2金属板に向かって延在する第1周縁壁部とを有し、
前記第2金属板は、板部と、前記板部の周縁から前記第1金属板に向かって延在する第2周縁壁部とを有し、
前記ベーパーチャンバは、接合部と少なくとも1つ以上の延在部とを備え、
前記接合部では、前記第1金属板の前記第1周縁壁部と前記第2金属板の前記第2周縁壁部とが接合されており、
前記延在部は、前記接合部と接合され、前記接合部から延在し
、
前記延在部の少なくとも1つは、前記接合部から前記ベーパーチャンバの前記内部空間に向かって延在していることを特徴とするベーパーチャンバ。
【請求項2】
前記延在部は、前記第1金属板の前記板部の内面および前記第2金属板の前記板部の内面の少なくとも一方の内面に接触している、請求項
1に記載のベーパーチャンバ。
【請求項3】
前記延在部は、表面に設けられ、前記接合部から離れる方向に向かって延在する少なくとも1つ以上の溝部を備える、請求項
1または2に記載のベーパーチャンバ。
【請求項4】
前記延在部の少なくとも1つは、前記接合部から前記ベーパーチャンバの外部に向かって延在している、請求項1~
3のいずれか1項に記載のベーパーチャンバ。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載のベーパーチャンバの製造方法であって、
前記接合部と前記延在部とをレーザーで形成するレーザー加工工程を有することを特徴とするベーパーチャンバの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ベーパーチャンバおよびベーパーチャンバの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ノートパソコン、デジタルカメラ、携帯電話などの電気・電子機器に搭載されている半導体素子などの電子部品は、高性能化などの要求から、小型化が進んでいる。
【0003】
例えば、特許文献1には、カバー板と底板とが接合されて構成され、内部に作動流体を収容する筐体と、凝縮した作動流体を蒸発部へ流通させるための第1の隙間を形成するように、カバー板および底板の配列方向と蒸発部および凝縮部の配列方向との両方向に略直交する方向に配列された複数の第1の板状体と、各第1の板状体の周囲に形成され、蒸発した作動流体を凝縮部へ流通させる気相流路部とを具備する熱輸送装置が記載されている。
【0004】
特許文献1では、カバー板の周縁部と底板の周縁部とが接合されている。熱輸送装置の側面の外側には、カバー板の周縁部、底板の周縁部、およびこれらの接合部(以下、これらの部材をあわせて周縁接合部ともいう)が設けられている。周縁接合部は、熱輸送装置の冷却機能を有していない。そのため、特許文献1の熱輸送装置は、小型化の要求に対して不十分である。また、ベーパーチャンバなどの熱輸送装置では、小型化が進むにつれて、機械的強度が低下することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の目的は、小型化を図りつつ、機械的強度に優れるベーパーチャンバおよびベーパーチャンバの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1] 第1金属板と第2金属板との間に形成される内部空間に作動流体を有するベーパーチャンバであって、前記第1金属板は、板部と、前記板部の周縁から前記第2金属板に向かって延在する第1周縁壁部とを有し、前記第2金属板は、板部と、前記板部の周縁から前記第1金属板に向かって延在する第2周縁壁部とを有し、前記ベーパーチャンバは、接合部と少なくとも1つ以上の延在部とを備え、前記接合部では、前記第1金属板の前記第1周縁壁部と前記第2金属板の前記第2周縁壁部とが接合されており、前記延在部は、前記接合部と接合され、前記接合部から延在していることを特徴とするベーパーチャンバ。
[2] 前記延在部の少なくとも1つは、前記接合部から前記ベーパーチャンバの前記内部空間に向かって延在している、上記[1]に記載のベーパーチャンバ。
[3] 前記延在部は、前記第1金属板の前記板部の内面および前記第2金属板の前記板部の内面の少なくとも一方の内面に接触している、上記[2]に記載のベーパーチャンバ。
[4] 前記延在部は、表面に設けられ、前記接合部から離れる方向に向かって延在する少なくとも1つ以上の溝部を備える、上記[2]または[3]に記載のベーパーチャンバ。
[5] 前記延在部の少なくとも1つは、前記接合部から前記ベーパーチャンバの外部に向かって延在している、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載のベーパーチャンバ。
[6] 上記[1]~[5]のいずれか1つに記載のベーパーチャンバの製造方法であって、前記接合部と前記延在部とをレーザーで形成するレーザー加工工程を有することを特徴とするベーパーチャンバの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、小型化を図りつつ、機械的強度に優れるベーパーチャンバおよびベーパーチャンバの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態のベーパーチャンバの一例を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態のベーパーチャンバを構成する延在部の他の例を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、実施形態のベーパーチャンバを構成する延在部の他の例を示す拡大断面図である。
【
図5】
図5は、実施形態のベーパーチャンバを構成する延在部の他の例を示す拡大断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態のベーパーチャンバを構成する延在部の他の例を示す拡大断面図である。
【
図7】
図7は、実施形態のベーパーチャンバを構成する延在部の他の例を示す拡大断面図である。
【
図8】
図8は、
図7の延在部をベーパーチャンバの内部空間からみた正面図である。
【
図9】
図9は、実施形態のベーパーチャンバを構成する延在部の他の例を示す斜視図である。
【
図11】
図11は、実施形態のベーパーチャンバを構成する延在部の他の例を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態に基づき詳細に説明する。
【0011】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、第1金属板と第2金属板とを接合する接合部の構成に着目することによって、小型化を図りつつ、機械的強度を向上させた。
【0012】
実施形態のベーパーチャンバは、第1金属板と第2金属板との間に形成される内部空間に作動流体を有するベーパーチャンバであって、第1金属板は、板部と、板部の周縁から第2金属板に向かって延在する第1周縁壁部とを有し、第2金属板は、板部と、板部の周縁から第1金属板に向かって延在する第2周縁壁部とを有し、ベーパーチャンバは、接合部と少なくとも1つ以上の延在部とを備え、接合部では、第1金属板の第1周縁壁部と第2金属板の第2周縁壁部とが接合されており、延在部は、接合部と接合され、接合部から延在している。ここで、第1周縁壁部は第1金属板10の周縁壁部12と、また第2周縁壁部は第2金属板20の周縁壁部22に対応している。以下では、第1金属板10の周縁壁部12を第1周縁壁部12ともいい、第2金属板20の周縁壁部22を第2周縁壁部22ともいう。
【0013】
図1は、実施形態のベーパーチャンバの一例を示す斜視図である。
図2は、
図1のA面の拡大断面図である。なお、
図1では、便宜上、ベーパーチャンバの内部構造がわかるように部分的に透過した状態を示している。
【0014】
図1~2に示すように、実施形態のベーパーチャンバ1は、第1金属板10および第2金属板20を有する。第1金属板10および第2金属板20が対向するように、第1金属板10および第2金属板20が接合されている。すなわち、第1金属板10および第2金属板20は内部が閉じられている。また、ベーパーチャンバ1は、第1金属板10および第2金属板20の間に形成される内部空間Sに作動流体を有する。内部空間Sは、第1金属板10および第2金属板20によって密閉されている。ベーパーチャンバ1の内部に設けられる内部空間Sには、作動流体が封入されている。
【0015】
内部空間Sに封入されている作動流体は、ベーパーチャンバ1の冷却性能の観点から、純水、エタノール、メタノール、アセトン、フッ素系溶媒などが挙げられる。
【0016】
図2に示すように、ベーパーチャンバ1を構成する第1金属板10は、板部11および第1周縁壁部12を有する。第1金属板10の第1周縁壁部12は、板部11の周縁11cから第2金属板20に向かって延在している。例えば、第1周縁壁部12は、板部11の周縁全体に亘って設けられる。
【0017】
ベーパーチャンバ1を構成する第2金属板20は、板部21および第2周縁壁部22を有する。第2金属板20の板部21は、第1金属板10の板部11と対向する。すなわち、第2金属板20の板部21の内面21aと第1金属板10の板部11の内面11aとは互いに対向する。第2金属板20の第2周縁壁部22は、板部21の周縁21cから第1金属板10に向かって延在している。例えば、第2周縁壁部22は、板部21の周縁全体に亘って設けられる。
【0018】
ベーパーチャンバ1は、接合部30と少なくとも1つ以上の延在部40とを備える。
【0019】
接合部30では、第1金属板10の第1周縁壁部12と第2金属板20の第2周縁壁部22とが接合されている。第2金属板20の周縁21cに向かって延びる第1周縁壁部12と第1金属板10の周縁11cに向かって延びる第2周縁壁部22とが接合部30で接合されていることによって、ベーパーチャンバ1の内部に設けられる内部空間Sが密閉される。
【0020】
第1周縁壁部12と第2周縁壁部22を含む部分、すなわちベーパーチャンバ1の側壁には、接合部30が設けられる。第1周縁壁部12が板部11の周縁全体に亘って設けられ、第2周縁壁部22が板部21の周縁全体に亘って設けられる場合、接合部30はベーパーチャンバ1の側壁の全面に設けられる。
【0021】
延在部40は、接合部30と接合されて、接合部30から延在している。具体的には、延在部40の基端41が接合部30と接合している。延在部40は、
図1に示すように、接合部30の全体から延在してもよいし、
図3に示すように、接合部30の一部から延在してもよい。このように、ベーパーチャンバ1は、全体にわたって、
図1に示すように1つの延在部40を備えてもよいし、
図3に示すように複数の延在部40を備えてもよい。
【0022】
第1金属板の周縁部と第2金属板の周縁部とが接合される従来のベーパーチャンバにおける周縁接合部に比べて、基端41から先端42までの延在部40の長さは非常に短い。ベーパーチャンバ1の小型化の観点から、延在部40の長さは10mm以下であることが好ましい。
【0023】
このように、ベーパーチャンバ1では、接合部30は、板部11の周縁11cから第2金属板20に向かって延在する第1周縁壁部12と板部21の周縁21cから第1金属板10に向かって延在する第2周縁壁部22とを接合している。すなわち、接合部30は、第1金属板の周縁部と第2金属板の周縁部とが接合されている従来のベーパーチャンバと異なり、第1金属板10の周縁11cと第2金属板20の周縁21cとを接合しない。そのため、従来のベーパーチャンバの周縁接合部に相当する長さだけ、実施形態のベーパーチャンバ1は小型化できる。また、従来のベーパーチャンバの周縁接合部に相当する長さだけベーパーチャンバ1の内部空間Sを増加すると、ベーパーチャンバ1の大きさを従来よりも大型化せずに、ベーパーチャンバ1の熱輸送特性を向上できる。
【0024】
さらに、接合部30に連結する延在部40は、互いに突き合わされている第1金属板10の第1周縁壁部12と第2金属板20の第2周縁壁部22とをベーパーチャンバ1の厚み方向内側から支持している。ベーパーチャンバの小型化および薄型化に伴い、第1金属板10および第2金属板20が薄型化されても、薄型化された第1周縁壁部12と第2周縁壁部22とは延在部40によって確実に支持されているため、第1周縁壁部12と第2周縁壁部22との接合強度は十分に大きい。また、上記のように、延在部40は、第1金属板の周縁部と第2金属板の周縁部とが接合されている従来のベーパーチャンバにおける周縁接合部とは異なり、非常に小さい。そのため、ベーパーチャンバ1は、小型化を図りつつ、優れた機械的強度を有する。
【0025】
図4は、ベーパーチャンバ1を構成する延在部40の他の例を示す拡大断面図である。
図4に示すように、複数の延在部40が接合部30の同じ位置から延在してもよい。ベーパーチャンバ1が接合部30から延在している複数の延在部40を備えると、ベーパーチャンバ1の機械的強度はさらに向上する。
【0026】
また、
図2に示すように、延在部40の少なくとも1つは、接合部30からベーパーチャンバ1の内部空間Sに向かって延在していることが好ましい。内部空間Sに向かって延在している延在部40は、第1周縁壁部12および第2周縁壁部22をベーパーチャンバ1の内部から支持する。
【0027】
延在部40が接合部30からベーパーチャンバ1の内部空間Sに向かって延在していると、延在部40の全体がベーパーチャンバ1の内部に設けられる。そのため、ベーパーチャンバ1はさらに小型化できる。
【0028】
さらに、延在部40がベーパーチャンバ1の内部空間Sに向かって延在すると、ベーパーチャンバ1の外側、すなわちベーパーチャンバ1の側壁の外面には、従来のベーパーチャンバの周縁接合部に相当する構成が設けられていない。そのため、従来のような周縁接合部を除去する後工程が不要である。さらに、ベーパーチャンバ1の側壁の外面には、バリが設けられていない。そのため、面出し加工が不要である。このように、ベーパーチャンバ1の製造を簡便化できる。
【0029】
延在部40の全てが接合部30からベーパーチャンバ1の内部空間Sに向かって延在していると、ベーパーチャンバ1の小型化や製造方法の簡便性がさらに向上する。
【0030】
また、延在部40は、第1金属板10の板部11の内面11aおよび第2金属板20の板部21の内面21aの少なくとも一方の内面に接触していることが好ましい。
【0031】
図5に示すように、例えば、延在部40の先端42は、第1金属板10の板部11の内面11aに接触していることが好ましい。ベーパーチャンバ1の内部空間Sに向かって延在している延在部40が第1金属板10の板部11の内面11aに接触していると、延在部40は、第1周縁壁部12に加えて、板部11についても、ベーパーチャンバ1の内部から支持する。そのため、ベーパーチャンバ1の機械的強度はさらに向上する。
【0032】
また、延在部40の先端42が第2金属板20の板部21の内面21aに接触していると、延在部40は、第2周縁壁部22に加えて、板部21についても、ベーパーチャンバ1の内部から支持する。そのため、ベーパーチャンバ1の機械的強度はさらに向上する。
【0033】
図6に示すように、ベーパーチャンバ1が、第1金属板10の板部11の内面11aに接触している延在部40、および第2金属板20の板部21の内面21aに接触している延在部40を備えると、これらの延在部40は、第1周縁壁部12および第2周縁壁部22、ならびに板部11および板部21をベーパーチャンバ1の内部から支持する。そのため、ベーパーチャンバ1の機械的強度はさらに向上する。
【0034】
また、延在部40は、表面に設けられ、接合部30から離れる方向に向かって延在する少なくとも1つ以上の溝部43を備えることが好ましい。
【0035】
図7は、ベーパーチャンバを構成する延在部40の他の例を示す拡大断面図である。
図8は、
図7の延在部40をベーパーチャンバ1の内部空間Sからみた正面図である。
図7では、液相の作動流体F(L)の流れる方向を黒塗り矢印で示している。
図7~8に示すように、例えば、延在部40は、延在部40の第1表面40aに設けられ、延在部40の基端41から先端42に向かって延在する少なくとも1つ以上の溝部43を備えることが好ましい。溝部43の溝幅43wが非常に微細であるため、溝部43は液相の作動流体に対する毛細管現象を発揮する。
【0036】
先端42が板部11の内面11aに接触している延在部40に溝部43を設けると、ベーパーチャンバ1の内部空間に封入されている液相の作動流体は、溝部43による毛細管現象によって、矢印F(L)で示すように、板部11の内面11aから溝部43に容易に浸入し、溝部43に沿って延在部40の基端41の方に移動する。このように、液相の作動流体は、板部11の内面11aから吸い上げられて不図示の熱源に向かって移動する。このように、液相の作動流体が内部空間Sを良好に循環するため、ベーパーチャンバ1の熱輸送特性は向上する。
【0037】
また、先端42が板部21の内面21aに接触している延在部40に溝部43を設けると、液相の作動流体は、溝部43による毛細管現象によって、矢印F(L)で示すように、板部21の内面21aから溝部43に容易に浸入し、溝部43に沿って延在部40の基端41の方に移動する。このように、液相の作動流体は、板部21の内面21aから吸い込まれて不図示の熱源に向かって移動する。このように、液相の作動流体が内部空間Sを良好に循環するため、ベーパーチャンバ1の熱輸送特性は向上する。
【0038】
溝部43が延在部40の基端41から先端42まで延在すると、液相の作動流体の循環がさらに良好になるため、ベーパーチャンバ1の熱輸送特性はさらに向上する。先端42が板部11の内面11aに接触している延在部40と、先端42が板部21の内面21aに接触している延在部40とのどちらにも溝部43を設けると、ベーパーチャンバ1の内面から移動する液相の作動流体の量が増加するため、ベーパーチャンバ1の熱輸送特性はさらに向上する。
【0039】
図7~8では、延在部40において、延在部40同士が互いに対向する面、換言するとベーパーチャンバ1の内側に向いている面である第1表面40aに溝部43が設けられている例を示しているが、溝部43は延在部40の第2表面40bに設けられてもよい。第2表面40bは、第1表面の背面であり、ベーパーチャンバ1の外側に向いている面である。
【0040】
溝部43が延在部40の第2表面40bに設けられても、第1表面40aに設けられる溝部43と同様の効果を発揮する。第2表面40bに設けられる溝部43に比べて、第1表面40aに設けられる溝部43は、液相の作動流体を効率的に循環するため、ベーパーチャンバ1の熱輸送特性は向上する。
【0041】
図9は、ベーパーチャンバ1を構成する延在部40の他の例を示す斜視図である。
図10は、
図9のB面の拡大断面図である。
図9~10に示すように、延在部40の少なくとも1つは、接合部30からベーパーチャンバ1の外部に向かって延在していてもよい。
【0042】
上記のように、延在部40は、第1金属板の周縁部と第2金属板の周縁部とが接合されている従来のベーパーチャンバにおける周縁接合部とは異なり、非常に小さい。接合部30に接合する延在部40がベーパーチャンバ1の外部に延在していても、従来のベーパーチャンバに比べて、実施形態のベーパーチャンバ1は小型化できる。
【0043】
例えば、ベーパーチャンバ1は、
図11に示すように、接合部30からベーパーチャンバ1の内部空間Sに向かって延在している延在部40、および接合部30からベーパーチャンバ1の外部に向かって延在している延在部40を備えてもよい。
【0044】
ベーパーチャンバ1の小型化および機械的強度を向上する接合部30および延在部40の形成には、レーザーを用いた加工が好ましく、その中でもファイバレーザーを用いた加工がより好ましい。レーザーによる加工では、第1金属板10の第1周縁壁部12と第2金属板20の第2周縁壁部22とを局所的に短時間で接合することができる。その結果、ベーパーチャンバ1の小型化および機械的強度の向上を達成できる。
【0045】
また、第1金属板10および第2金属板20を構成する材料は、高い熱伝導率やレーザーによる加工容易性などの観点から、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼が好ましい。その中でも、軽量化を図る目的のためには、アルミニウム、アルミニウム合金がより好ましく、機械的強度を高める目的のためには、ステンレス鋼がより好ましい。また、使用環境に応じて、第1金属板10および第2金属板20には、スズ、スズ合金、チタン、チタン合金、ニッケル、ニッケル合金などを使用してもよい。
【0046】
第1金属板10の外面10bや第2金属板20の外面20bには、不図示の発熱体が装着される。ベーパーチャンバ1と発熱体とが熱的に接続されると、発熱体がベーパーチャンバによって冷却される。発熱体は、例えば半導体素子など、稼動中に熱を発生する電子部品のような部材である。
【0047】
次に、上記のベーパーチャンバ1の製造方法について説明する。
【0048】
ベーパーチャンバ1の製造方法は、接合部30と延在部40とをレーザーで形成するレーザー加工工程を有する。レーザー加工工程では、ファイバレーザーで接合部30と延在部40とを形成することが好ましい。レーザー加工では、第1金属板10の第1周縁壁部12と第2金属板20の第2周縁壁部22とを局所的に接合する加工制御に優れ、接合部30を短時間で形成できる。また、第1周縁壁部12および第2周縁壁部22はレーザー照射の標的になるため、ベーパーチャンバの小型化および薄型化に伴って第1金属板10および第2金属板20が薄型化されても、薄型化された第1周縁壁部12と第2周縁壁部22との接合は容易である。さらに、接合部30を形成しながら、延在部40を同時に形成できる。レーザーの中でも、ファイバレーザーは、加工制御および短時間加工がさらに優れている。
【0049】
具体的には、板部11の内面11aと板部21の内面21aとが互いに対向し、第1周縁壁部12と第2周縁壁部22とが互いに接触している状態で、第1周縁壁部12と第2周縁壁部22との接触部分に対してレーザーを照射する。例えば、第1周縁壁部12と第2周縁壁部22とが互いに接触している状態で、外部からレーザーを照射する。第1周縁壁部12と第2周縁壁部22との接触部分の全てに対してレーザーを走査しながら照射すると、一度のレーザー照射でベーパーチャンバ1を製造することができる。延在部40の延在方向、延在部40の有無などは、第1周縁壁部12と第2周縁壁部22との接触力、レーザーの照射条件などによって、容易に制御できる。
【0050】
こうして製造したベーパーチャンバ1は、様々な姿勢であっても良好な熱輸送特性を求められている、携帯電話などの電子機器に好適に用いられる。ベーパーチャンバ1を備える電子機器は、様々な使用状態であっても、ベーパーチャンバ1の高い熱輸送特性を有する。
【0051】
以上説明した実施形態によれば、第1金属板の第1周縁壁部と第2金属板の第2周縁壁部とが接合部を介して接合されている。そのため、ベーパーチャンバは小型化できる。また、接合部に接続されている延在部によって、第1金属板の第1周縁壁部と第2金属板の第2周縁壁部とがベーパーチャンバの厚み方向内側から支持されている。そのため、ベーパーチャンバは、小型化を図りながら、優れた機械的強度を有する。
【0052】
なお、
図9~11に示すベーパーチャンバ1の外部に向かって延在している延在部40は、上記のように非常に小さい。そのため、ベーパーチャンバ1は、このような延在部40を除去しなくてもよい。但し、所望の要求に応じて、ベーパーチャンバ1の外部に向かって延在している延在部40は、ベーパーチャンバ1から除去してもよい。
【0053】
以上、実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の概念および特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本開示の範囲内で種々に改変することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 ベーパーチャンバ
10 第1金属板
11 板部
11a 板部の内面
11b 板部の外面
11c 板部の周縁
12 第1金属板の周縁壁部(第1周縁壁部)
12a 第1周縁壁部の内面
12b 第1周縁壁部の外面
20 第2金属板
21 板部
21a 板部の内面
21b 板部の外面
21c 板部の周縁
22 第2金属板の周縁壁部(第2周縁壁部)
22a 第2周縁壁部の内面
22b 第2周縁壁部の外面
30 接合部
40 延在部
40a 延在部の表面(第1表面)
40b 延在部の表面(第2表面)
41 延在部の基端
42 延在部の先端
43 溝部
S 内部空間
F(L) 液相の作動流体の流れ