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特許7568437ソースの製造方法、ソースの艶だし方法及びソース
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】ソースの製造方法、ソースの艶だし方法及びソース
(51)【国際特許分類】
   A23L 23/00 20160101AFI20241008BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20241008BHJP
   A23L 27/20 20160101ALI20241008BHJP
   A23L 29/10 20160101ALI20241008BHJP
   A23D 9/00 20060101ALN20241008BHJP
【FI】
A23L23/00
A23L27/00 D
A23L27/20 D
A23L29/10
A23D9/00 518
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020123467
(22)【出願日】2020-07-20
(65)【公開番号】P2022020137
(43)【公開日】2022-02-01
【審査請求日】2023-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 太一
(72)【発明者】
【氏名】岡田 孝宏
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-300858(JP,A)
【文献】特開2002-300868(JP,A)
【文献】特開2020-048506(JP,A)
【文献】特開2020-048552(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 23/00-23/10
A23L 27/00-27/60
A23D 7/00-9/06
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油分が25質量%以下のソース(ただし、サラダ向けソースは除く)の製造方法であって、
下記の乳化剤Aを0.3~8.0質量%、乳化剤Bを0.05~2.0質量%含有する油脂組成物を、ソース中に0.5~12質量%含まれるように混合する、
ソースの製造方法。
(乳化剤A)ポリグリセリン縮合リシノレート
(乳化剤B)構成脂肪酸の20質量%以上がベヘン酸であり、構成脂肪酸の50質量%未満が不飽和脂肪酸である、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又はグリセリン脂肪酸エステル
【請求項2】
前記油脂組成物の25℃における粘度が60~3000mPa・sである、
請求項に記載のソースの製造方法。
【請求項3】
油分が25質量%以下のソース(ただし、サラダ向けソースは除く)の艶だし方法であって、
下記の乳化剤Aを0.3~8.0質量%、乳化剤Bを0.05~2.0質量%含有する油脂組成物を、ソース中に0.5~12質量%含まれるように混合する、
ソースの艶だし方法。
(乳化剤A)ポリグリセリン縮合リシノレート
(乳化剤B)構成脂肪酸の20質量%以上がベヘン酸であり、構成脂肪酸の50質量%未満が不飽和脂肪酸である、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又はグリセリン脂肪酸エステル
【請求項4】
前記油脂組成物の25℃における粘度が60~3000mPa・sである、
請求項に記載のソースの艶だし方法。
【請求項5】
油分が25質量%以下のソース(ただし、サラダ向けソースは除く)であって、
油脂組成物をソース中に0.5~12質量%含有し、
該油脂組成物が、下記の乳化剤Aを0.3~8.0質量%、乳化剤Bを0.05~2.0質量%含有する、
ソース。
(乳化剤A)ポリグリセリン縮合リシノレート
(乳化剤B)構成脂肪酸の20質量%以上がベヘン酸であり、構成脂肪酸の50質量%未満が不飽和脂肪酸である、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又はグリセリン脂肪酸エステル
【請求項6】
ソース中に前記油脂組成物が分散しているものである、
請求項に記載のソース。
【請求項7】
前記油脂組成物の25℃における粘度が60~3000mPa・sである、
請求項又はのいずれかに記載のソース
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソースの製造方法、ソースの艶だし方法及びソースに関する。
【背景技術】
【0002】
艶(光沢)を有する食品は食欲をそそる。また、食品の艶は、劣化とも相関があるとの認識があるため、艶を長期間維持することで食品の商品価値を高めることができる。
【0003】
例えば、特許文献1には、米飯の艶や食味改良のために、乳化剤としてポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルとオレイン酸を主構成脂肪酸に持つポリグリセリン脂肪酸エステルとの組合せの米飯類用油脂が提案され、特許文献2には、ポリグリセリン脂肪酸エステルとポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル等の組合せの麺用品質改良剤が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平3-175940号公報
【文献】特開2006-067253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1、2の方法は、米飯、麺等の固形物表面をコーティングすることで食品への艶の付与を達成することを想定したものであるが、ソースのように液体あるいはペースト状であり、表面に水相がある食品の場合、コーティングした油滴が集合(合一)して大きな油滴のある表面と油滴の少ない表面が混在するようになり、艶(光沢)のある十分な表面積を得ることができなくなる。さらに、コーティングする方法は、食品に上掛けされるソースの場合、食品にソースを上掛けした後にスプレー等で艶出し剤をコーティングする工程が必要になり、さらに、ソース表面の流動性により、食品の凹凸によりコーティングした艶出し成分が流れることで、艶が維持できない問題もあった。
本発明の課題は、艶を有するソースの製造方法、容易にソースの艶を出す方法、及び艶を有するソースを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、油脂と特定の乳化剤を含有する油脂組成物をソースに配合することで、上記の課題を解決することを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、下記の[1]~[9]を提供する。
[1] 油分が25質量%以下のソース(ただし、サラダ向けソースは除く)の製造方法であって、
下記の乳化剤Aを0.1~8.0質量%、乳化剤Bを0.0~2.0質量%含有する油脂組成物を、ソース中に0.5~12質量%含まれるように混合する、
ソースの製造方法。
(乳化剤A)ポリグリセリン縮合リシノレート
(乳化剤B)構成脂肪酸の20質量%以上が炭素数16~22の飽和直鎖脂肪酸である、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又はグリセリン脂肪酸エステル
[2] 前記乳化剤Bが、構成脂肪酸の20質量%以上がベヘン酸であり、構成脂肪酸の50質量%未満が不飽和脂肪酸である、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又はグリセリン脂肪酸エステルである、
[1]のソースの製造方法。
[3] 前記油脂組成物の25℃における粘度が60~3000mPa・sである、
[1]又は[2]のソースの製造方法。
[4] 油分が25質量%以下のソース(ただし、サラダ向けソースは除く)の艶だし方法であって、
下記の乳化剤Aを0.1~8.0質量%、乳化剤Bを0.0~2.0質量%含有する油脂組成物を、ソース中に0.5~12質量%含まれるように混合する、
ソースの艶だし方法。
(乳化剤A)ポリグリセリン縮合リシノレート
(乳化剤B)構成脂肪酸の20質量%以上が炭素数16~22の飽和直鎖脂肪酸である、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又はグリセリン脂肪酸エステル
[5] 前記乳化剤Bが、構成脂肪酸の20質量%以上がベヘン酸であり、構成脂肪酸の50質量%未満が不飽和脂肪酸である、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又はグリセリン脂肪酸エステルである、
[4]のソースの艶だし方法。
[6] 前記油脂組成物の25℃における粘度が60~3000mPa・sである、
[4]又は[5]のソースの艶だし方法。
[7] 油分が25質量%以下のソース(ただし、サラダ向けソースは除く)であって、
油脂組成物をソース中に0.5~12質量%含有し、
該油脂組成物が、下記の乳化剤Aを0.1~8.0質量%、乳化剤Bを0.0~2.0質量%含有する、
ソース。
(乳化剤A)ポリグリセリン縮合リシノレート
(乳化剤B)構成脂肪酸の20質量%以上が炭素数16~22の飽和直鎖脂肪酸である、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又はグリセリン脂肪酸エステル
[8] ソース中に前記油脂組成物が分散しているものである、
[7]に記載のソース。
[9] 前記油脂組成物の25℃における粘度が60~3000mPa・sである、
[7]又は[8]のソースの艶だし方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明のソースの製造方法を用いることで、艶(光沢)のあるソースを得ることができる。また、ソースの艶だし方法を用いることで、コーティング工程を経ずに簡便にソース表面に艶(光沢)が発生する。また、本発明のソースは、艶(光沢)があり、ソース中に光沢成分となる油脂組成物が分散しており、仮にソース表面の流動性によりソース表面の油脂組成物が流れても、ソース中から油脂組成物が供給されるので、艶も長期間維持できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に例示説明する。なお、本発明の実施の形態において、A(数値)~B(数値)は、A以上B以下を意味する。なお、以下で例示する好ましい態様やより好ましい態様等は、「好ましい」や「より好ましい」等の表現にかかわらず適宜相互に組み合わせて使用することができる。また、数値範囲の記載は例示であって、好ましい」や「より好ましい」等の表現にかかわらず各範囲の上限と下限並びに実施例の数値とを適宜組み合わせた範囲も好ましく使用することができる。さらに、「含有する」又は「含む」等の用語は、適宜「本質的になる」や「のみからなる」と読み替えてもよい。
【0010】
[ソースの製造方法]
本発明のソースの製造方法は、艶だし効果を有する油脂組成物をソース中に混合させることで、ソースに艶を付与することができる。これは、艶だし効果を有する油脂組成物をソース中に混合させることで、ソース表面に存在する油脂組成物の油滴が集合し難くなり、ソース表面に均一に油滴が分散している状態を維持できるためと考えられる。また、流動性のあるソース中に油脂組成物が分散しているために、常時、ソース表面に油脂組成物が供給できるため、ソース表面の艶だし効果を高め、且つ、維持することができると考えられる。
【0011】
本発明のソースの製造方法は、油分が25質量%以下のソース(ただし、サラダ向けソースは除く)の製造方法であって、ソース中に、下記の乳化剤A、又は、乳化剤Aと乳化剤Bを特定量含有する油脂組成物を、ソースに対して0.5~12質量%となるように混合する、ソースの艶だし方法である。なお、油分が25質量%以下のソースにおいて、油脂組成物は油分に含まれるものとする。
【0012】
本発明のソースの製造方法が対象とするソースはペースト状又は液体状の調味料であり、他の食品に添える、あるいは調理等に用いられるものである。一般的に、サラダ向けソース(マヨネーズやドレッシング類)のように油分が25質量%を超えるソースは油分が多いため、ある程度の艶を有し、本発明の効果が弱い。そのため、本発明が適用されるソースは、油分が25質量%以下のソース(ただし、サラダ向けソースは除く)であり、好ましくは油分が20質量%以下のソースであり、より好ましくは油分が5~18質量%のソースであり、さらに好ましくは油分が5~15質量質量%のソースである。このようなソースとして、例えば、パスタ用のソース、ケチャップ、ウスターソース、みそ、醤油、醤油ベースの和風タレ、中華スープのあんかけ等が挙げられる。また、ペースト状あるいは固形分を含むソースは、後述する油脂組成物を均一に保持する効果が見込めるため、好ましい。
【0013】
<油脂組成物>
本発明で用いる油脂組成物は、油脂と乳化剤を含む。乳化剤として、乳化剤A(ポリグリセリン縮合リシノレート)、又は、乳化剤Aと乳化剤B(構成脂肪酸の20質量%以上が炭素数16~22の飽和直鎖脂肪酸である、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又はグリセリン脂肪酸エステル)を含有する。
【0014】
本発明で用いる油脂組成物は、ソース中に、ソースに対して0.5~12質量%となるように混合する。0.5質量%以上あれば、ソースに艶を付与することができる。また、12質量%を超えると油脂組成物が十分混合状態を維持できない恐れがある。油脂組成物の混合量(配合量)は、ソースに対して0.5~10質量%が好ましく、ソースに対して1~8質量%がより好ましく、ソースに対して2~7質量%がさらに好ましい。混合方法としては、特に制限はないが、ソースの原料となる他の成分と同時に添加、撹拌することが好ましい。また、ソースの最後の製造工程において、添加、撹拌することができる。撹拌の程度は、油脂組成物が、ソース中に分散する程度でよい。また、ソースの上澄み等に多量の油相が分離しない程度に分散することが好ましい。
【0015】
(油脂)
本発明で用いる油脂組成物は、油脂を含む。油脂を含むことで、油脂組成物の粘度を低下させ、艶の付与の一助となる。油脂としては、動植物油脂、グリセリンと脂肪酸から合成した油脂及びそれらの分別油、エステル交換油、水素添加油などを単独あるいは組み合わせて用いることができる。
動植物油脂としては、例えば、大豆油、なたね油、ハイオレイックなたね油、ひまわり油、ハイオレイックひまわり油、オリーブ油、サフラワー油、ハイオレイックサフラワー油、コーン油、綿実油、米油、ゴマ油、エゴマ油、亜麻仁油、落花生油、グレープシード油、牛脂、乳脂、魚油、ヤシ油、パーム油、パーム核油などが挙げられる。
グリセリンと脂肪酸から合成した油脂としては、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)などが挙げられる。
分別油としては、パームオレイン、パームスーパーオレイン、パームステアリン、パームミッドフラクションなどのパーム油の分別油が挙げられる。
エステル交換油としては、パーム油あるいはパーム油の分別油と他の液状油脂のエステル交換油、あるいはMCTと植物油などとのエステル交換油を用いることができる。
水素添加油は、動植物油、動植物油の分別油の水素添加油の他、エステル交換油の水素添加油などが挙げられる。
【0016】
油脂組成物中の油脂は、室温で流動性を失うものは、ソースあるいはソース原料への添加時に加熱により溶解させる必要があるので、30℃で流動性を有する態様のものが好ましい。油脂の一部が30℃で固体であっても、他の油脂と併用して用いることによって、油脂全体として流動性を有していれば好適に使用できる。25℃で流動性を有する油脂がより好ましく、25℃で液状である油脂がさらに好ましい。特に、融点の低い液状油でありながら、酸化安定性も良好であるという利点を有することから、なたね油、パームオレイン、これらの混合物などを好適に使用することができる。
【0017】
油脂組成物は、前述の油脂を、油脂組成物中に40.0~99.9質量%含有することが好ましい。油脂組成物は、油脂を90~99.1質量%含有することがより好ましく、95.0~99.8質量%含有することがさらに好ましく、96.0~99.5質量%含有することがことさらに好ましい。
【0018】
(乳化剤A)
本発明において、乳化剤Aは、ポリグリセリン縮合リシノレートである。
【0019】
油脂組成物は、乳化剤Aを0.1~8.0質量%含有する。乳化剤Aが0.1質量%以上で、ソースへ艶が付与される。一方、乳化剤Aが過剰であると、粘度が高くなることでソースへの分散が難しくなり、また、ソース中に存在する油脂組成物がソース表面に移動しにくくなるため、ソースへの艶付与が不十分となる。油脂組成物は、乳化剤Aを0.3~8.0質量%含有することがより好ましく、0.3~5.0質量%含有することがさらに好ましく、0.3~2.0質量%含有することが最も好ましい。
【0020】
一般的に、ポリグリセリン縮合リシノレートは、縮合リシノール酸部分の寄与により油脂との相溶性は高い。なお、ポリグリセリン縮合リシノレートにおいて、HLB値の違いによる艶だし効果に大きな差異はないが、市場から容易に入手できることから、HLB4以下であることが好ましく、より好ましくはHLB1~3である。
【0021】
なお、HLBとは、親水性疎水性バランス(Hydrophile Lipophile Balance)の略であって、乳化剤が親水性か親油性かを知る指標となるもので、0~20の値をとる。HLB値が小さい程、親油性が強いことを示す。本発明において、HLB値の算出はアトラス法の算出法を用いる。アトラス法の算出法は、
HLB=20×(1-S/A)
S:ケン化価
A:エステル中の脂肪酸の中和価
からHLB値を算出する方法を言う。同算出方法では、HLB値は、算術平均として算出される。そのため、本発明においても、乳化剤A、及び/又は乳化剤Bが複数のHLB成分を有するものである場合、HLB値は平均HLBを意味する。
【0022】
(乳化剤B)
乳化剤Bは、構成脂肪酸の20質量%以上が炭素数16~22の飽和直鎖脂肪酸である、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又はグリセリン脂肪酸エステルである。炭素数16~22の飽和直鎖脂肪酸を有するポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又はグリセリン脂肪酸エステルは、室温で固形あるいは粘度が高く、ソース表面の油脂組成物、あるいはソース中の油脂組成物がソース表面に移動した際に、ソース表面から流れ落ちることを抑えることができると考えられる。そのため、乳化剤Aと組合わせることで、艶の付与効果が高まり、食品の艶が一定レベルを維持するのを助けるものと考えられる。
ポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又はグリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸は、好ましくは、20~100質量%が炭素数16~22の飽和直鎖脂肪酸であり、より好ましくは、25~95質量%が炭素数16~22の飽和直鎖脂肪酸であり、さらに好ましくは30~80質量%が炭素数16~22の飽和直鎖脂肪酸である。炭素数16~22の飽和直鎖脂肪酸として、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸などが挙げられ、これらから選ばれる1種、又は2種以上であることが好ましい。より好ましくは、ステアリン酸、ベヘン酸から選ばれる1種、又は2種以上である。特に、ベヘン酸のエステルは、一般的に融点が高く、構成脂肪酸にベヘン酸を有するポリグリセリン及び/又はグリセリン脂肪酸エステルは油脂を室温でゲル化及び/又は増粘する効果が高いのでさらに好ましい。例えば、構成脂肪酸の20質量%以上がベヘン酸であり、構成脂肪酸の50質量%未満が不飽和脂肪酸である、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又はグリセリン脂肪酸エステルであることが好ましい。
【0023】
ポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又はグリセリン脂肪酸エステルは、ポリグリセリンやグリセリンのエステルであるが、油脂組成物中の油脂への溶解性、分散性等から、平均エステル化度が高いものが好ましい。平均エステル化度(百分率)は、ポリグリセリン及び/又はグリセリンの水酸基がどの程度エステル化されているかを示すもので、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又はグリセリン脂肪酸エステルのけん化価と水酸基価を測定し、(けん化価)÷(けん化価+水酸基価)×100で算出することができる。なお、ケン化価は、基準油脂分析試験法(日本油化学会制定「2.3.2.1-2013 けん化価」)に準じて測定することができる。また、水酸基価は、基準油脂分析試験法(日本油化学会制定「2.3.6.2-1996 ヒドロキシル価(ピリジン-無水酢酸法)」)に準じて測定することができる。なお、この時のHLBは、HLB8以下となることが油脂への溶解性の点で好ましい。また、HLB1~7.5が好ましく、HLB2~7がより好ましい。
ポリグリセリン脂肪酸エステルの平均エステル化度は、30%以上であることが好ましく、50%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましい。また、ポリグリセリン脂肪酸エステルの平均エステル化度は、99%以下が好ましく、95%以下がより好ましく、90%以下がさらに好ましい。グリセリン脂肪酸エステルの平均エステル化度は、30%以上であることが好ましく、50%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましい。グリセリン脂肪酸エステルの平均エステル化度は、90%以下であることが好ましく、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。グリセリン脂肪酸エステルは、グリセリンモノ脂肪酸エステルが好ましい。
【0024】
油脂組成物中の乳化剤Aは、乳化剤Bと組あわせなくても、ある程度のソースの艶が期待できるが、乳化剤Bとの組み合わせにより、ソースの艶がより高まる。また、長期間保持することもできる。したがって、本発明において、油脂組成物中に、乳化剤Bを0.0~2.0質量%含有する。乳化剤Bの含有量が高いほど、油脂組成物のゲル化及び/又は増粘が期待でき、食品への艶の付与が高まる。一方、2.0質量%超では、乳化剤Bの結晶量が多くなり、油脂組成物の流動性が著しく劣るともに、油脂組成物が白濁し、艶だし効果に劣る。油脂組成物は、乳化剤Bを0.003~2.0質量%含有することが好ましく、0.05~1.5質量%含有することがより好ましく、0.03~1.0質量%含有することがさらに好ましく、0.05~0.8質量%含有することがことさらに好ましい。
【0025】
本発明で用いる油脂組成物において、艶を長期間保持するために油脂と乳化剤の組合せが必要であるが、その際に、油脂組成物の25℃における粘度が60mPa・s以上であることが好ましい。油脂組成物は、25℃における粘度が150mPa・s以上であることがより好ましく、25℃における粘度が300mPa・s以上であることがさらに好ましく、25℃における粘度が500mPa・s以上であることがことさらに好ましい。また、粘度の上限は、25℃において3000mPa・s以下であることが好ましく、2000mPa・s以下であることがより好ましく、1000mPa・s以下であることがさらに好ましく、800mPa・s以下であることがことさらに好ましく、700mPa・s以下であることが最も好ましい。これらの粘度は、「日本油化学会制定 基準油脂分析試験法:2.2.10.5-2013 粘度(ブルックフィールド法)」に準拠して測定することができる。なお、B形粘度計とデータ互換のある粘度計を用いて分析することもでき、例えば、東機産業株式会社製のTVB-10形粘度計、あるいはTVK-15型粘度計が挙げられる。
【0026】
(その他成分)
本発明で用いる油脂組成物は、本発明の効果に影響を及ぼさない範囲で、適宜、他の成分を含有することができる。例えば、上記乳化剤A及び乳化剤B以外の乳化剤を添加してもよい。乳化剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ポリソルベート、レシチン等が挙げられる。また、pH調整剤、調味剤、着色料、香料、酸化防止剤、糖類、糖アルコール類、安定剤等を使用することができる。これらの成分の量は、本発明の効果を損なわない限り任意の量とすることができるが、例えば、油脂組成物中に10質量%以下含有させることができ、好ましくは0~3質量%、より好ましくは0~1質量%含有させることができる。
【0027】
[ソースの艶だし方法]
本発明のソースの艶だし方法は、艶だし効果を有する油脂組成物をソース中に混合させることで、ソースに艶を付与することができる。これは、艶だし効果を有する油脂組成物をソース中に混合させることで、ソース表面に存在する油脂組成物の油滴が集合し難くなり、ソース表面に均一に油滴が分散している状態を維持できるためと考えられる。また、流動性のあるソース中に油脂組成物が分散しているために、常時、ソース表面に油脂組成物が供給できるため、ソース表面の艶だし効果を高め、且つ、維持することができると考えられる。
【0028】
本発明のソースの艶だし方法は、油分が25質量%以下のソース(ただし、サラダ向けソースは除く)の艶だし方法であって、ソース中に、下記の乳化剤A、又は、乳化剤Aと乳化剤Bを特定量含有する油脂組成物を、ソースに対して0.5~12質量%となるように混合する、ソースの艶だし方法である。なお、油分が25質量%以下のソースにおいて、油脂組成物は油分に含まれるものとする。
【0029】
本発明のソースの艶だし方法が対象とするソースはペースト状又は液体状の調味料であり、他の食品に添える、あるいは調理等に用いられるものである。一般的に、サラダ向けソース(マヨネーズやドレッシング類)のように油分が25質量%を超えるソースは油分が多いため、ある程度の艶を有し、本発明の効果が弱い。そのため、本発明が適用されるソースは、油分が25質量%以下のソース(ただし、サラダ向けソースは除く)であり、好ましくは油分が20質量%以下のソースであり、より好ましくは油分が5~18質量%のソースであり、さらに好ましくは油分が5~15質量質量%のソースである。このようなソースとして、例えば、パスタ用のソース、ケチャップ、ウスターソース、みそ、醤油、醤油ベースの和風タレ、中華スープのあんかけ等が挙げられる。また、ペースト状あるいは固形分を含むソースは、後述する油脂組成物を均一に保持する効果が見込めるため、好ましい。
【0030】
本発明のソースの艶だし方法において、用いる油脂組成物、該油脂組成物中の油脂、乳化剤A、乳化剤B、その他成分は、前述の[ソースの製造方法]に記載された通りである。
【0031】
なお、本発明のソースの艶だし方法において、油脂組成物をソースに混合する方法は、特に制限はないが、ソースの製造工程において、原料となる他の成分と同時に添加、撹拌することができる。また、ソースの最後の製造工程において、あるいは、市販のソースに対して添加、撹拌してもよい。撹拌の程度は、油脂組成物が、ソース中に分散する程度でよい。また、ソースの上澄み等に多量の油相が分離しない程度に分散することが好ましい。
【0032】
[ソース]
本発明のソースは、油分が25質量%以下のソース(ただし、サラダ向けソースは除く)であって、油脂組成物をソース中に0.5~12質量%含有し、該油脂組成物が、下記の乳化剤Aを0.1~8.0質量%、乳化剤Bを0.0~2.0質量%含有する、ソースである。
(乳化剤A)ポリグリセリン縮合リシノレート
(乳化剤B)構成脂肪酸の20質量%以上が炭素数16~22の飽和直鎖脂肪酸である、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又はグリセリン脂肪酸エステル
【0033】
本発明のソースはペースト状又は液体状の調味料であり、他の食品に添える、あるいは調理等に用いられるものである。一般的に、サラダ向けソース(マヨネーズやドレッシング類)のように油分が25質量%を超えるソースは油分が多いため、ある程度の艶を有し、本発明の効果が弱い。そのため、本発明が適用されるソースは、油分が25質量%以下のソース(ただし、サラダ向けソースは除く)であり、好ましくは油分が20質量%以下のソースであり、より好ましくは油分が5~18質量%のソースであり、さらに好ましくは油分が5~15質量質量%のソースである。このようなソースとして、例えば、パスタ用のソース、ケチャップ、ウスターソース、みそ、醤油、醤油ベースの和風タレ、中華スープのあんかけ等が挙げられる。また、ペースト状あるいは固形分を含むソースは、後述する油脂組成物を均一に保持する効果が見込めるため、好ましい。
【0034】
本発明のソースは、前述の[ソースの製造方法]に記載されて製造方法で製造されたソース、あるいは前述の[ソースの艶だし方法]に記載されて得られたソースである。ソース中の油脂組成物、該油脂組成物中の油脂、乳化剤A、乳化剤B、その他成分は、前述の通りである。
【実施例
【0035】
次に、実施例、比較例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに何ら制限されるものではない。また。以下において「%」とは、特別な記載がない場合、質量%を示す。
【0036】
[試料(油脂組成物)]
油脂1を試料1とした。また、表1、2の配合にて60℃で均一溶解するまで加熱混合し、試料(油脂組成物)2~9を得た。なお、使用した原材料は以下の通りである。
油脂1(精製菜種(キャノーラ)油)、
乳化剤A1(ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル)
乳化剤B1(ポリグリセリン脂肪酸エステル:ベヘン酸45%、ステアリン酸45%、オレイン酸6%、エステル化度84%)
乳化剤B2(モノステアリン酸グリセリド:HLB4.1)
(粘度の測定)
各試料120gを25℃で、スピンドル型粘度計(VISCOMETER TVB-15M:東機産業株式会社 25℃)で測定した。なお、試料1、2、4、5は、ローターM1を用い、試料3、6はローターM2を用い、それぞれ12rpmで測定した。試料1~6の粘度を表1、2に示した。
【0037】
[油脂組成物の評価1]
(ソースの製造)
パスタ用ソース(「マ・マー トマトの果肉たっぷりのミートソース マッシュルーム入り」日清フーズ株式会社製、脂質2.3g/130g当り)95質量部に、各試料(油脂組成物)5質量部を添加し、混合した。
(光沢の測定)
ソースをタッパーに充填し、光沢を測定した。測定は、ソースの上から光沢計(日本電色工業株式会社製 HANDY GLOSS METER PG-1M:測定入射角 85°)を用いて測定した。測定値は、基準値(ガラス)に対する相対値(Gloss Unit)で、数値の大きい方が光沢(艶)を有することを示す。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
実施例1~6は、参考例、比較例に比べて、光沢(艶)があった。また、乳化剤B1、B2のみでは光沢はあまりないが、乳化剤A1と組合わせることで、光沢がより良好になることが確認できた。