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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】光モジュール
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/025 20060101AFI20241008BHJP
   G02B 6/12 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
G02F1/025
G02B6/12 301
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020159954
(22)【出願日】2020-09-24
(65)【公開番号】P2022053241
(43)【公開日】2022-04-05
【審査請求日】2023-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長島 和哉
(72)【発明者】
【氏名】神徳 正樹
(72)【発明者】
【氏名】黒部 立郎
(72)【発明者】
【氏名】清田 和明
(72)【発明者】
【氏名】有賀 麻衣子
(72)【発明者】
【氏名】伊澤 敦
(72)【発明者】
【氏名】石川 陽三
【審査官】堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-003670(JP,A)
【文献】特開2017-026988(JP,A)
【文献】特開2013-145338(JP,A)
【文献】特開2000-089054(JP,A)
【文献】特表2007-532980(JP,A)
【文献】特開2010-015041(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0339468(US,A1)
【文献】特開2014-038173(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0103938(US,A1)
【文献】特開2017-098362(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00 - 1/125
G02F 1/21 - 1/39
G02B 6/12 - 6/14
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
InP系半導体材料を含み、入力された光を変調する変調信号付与部を備えた変調器と、
前記変調器と光学結合をし、シリコン系半導体材料を含む複数の導波路および複数の光学素子が集積された光集積回路と、
前記光集積回路に入力されるレーザ光を出力する光源と、
を備え、
前記光集積回路は、前記導波路のいずれかまたは前記光学素子のいずれかを通過した前記レーザ光を前記変調器に出力し、前記変調器が前記レーザ光を変調して生成した変調光を受付け、前記導波路の他のいずれかまたは前記光学素子の他のいずれかを通過した前記変調光を出力し、
前記光源は、1530nm~1625nmの波長帯域内の範囲で前記レーザ光の波長を変更できるように構成された半導体レーザ素子を含む波長可変光源であり、
前記変調器は、前記光源とは別に、前記変調信号付与部に入力される光または前記変調光を増幅する光増幅器を備え
前記光集積回路は、シリコンプラットフォームであるベースと一体に構成されており、前記ベースは、前記変調器を実装する座繰り部である変調器実装部と、光ファイバを実装する光ファイバ実装部と、前記光源を実装する座繰り部である光源実装部と、の全てを一体に備える、
光モジュール。
【請求項2】
前記光学結合はバットジョイントまたは光学結合素子によってなされている
請求項1に記載の光モジュール。
【請求項3】
前記光学結合素子は、レンズ、GRINレンズ、光ファイバ、導波路、またはフォトニックワイヤを含む
請求項2に記載の光モジュール。
【請求項4】
前記光集積回路は、前記光学素子としてレンズ、受光素子、偏波合成素子、または可変光減衰素子を備える
請求項1~のいずれか一つに記載の光モジュール。
【請求項5】
前記光集積回路は、前記光学素子として、受光素子と、通過する光の一部を分岐して前記受光素子に出力する光分岐素子とを備える
請求項1~のいずれか一つに記載の光モジュール。
【請求項6】
前記変調器は、前記変調信号付与部として、2つの変調信号付与部を備え、
前記光集積回路は、前記光学素子として偏波合成素子と2つの可変光減衰素子とを備え、
前記2つの可変光減衰素子は、それぞれ、前記2つの変調信号付与部で生成された2つの変調光を減衰し、
前記偏波合成素子は、減衰した前記2つの変調光を偏波合成する
請求項1~のいずれか一つに記載の光モジュール。
【請求項7】
前記光集積回路は、光フィルタならびに光イコライザを備える
請求項1~のいずれか一つに記載の光モジュール。
【請求項8】
前記光集積回路と光学結合をする光ファイバを備える
請求項1~のいずれか一つに記載の光モジュール。
【請求項9】
前記光源から出力された光の波長を検出するための波長検出器を備える
請求項1~のいずれか一つに記載の光モジュール。
【請求項10】
前記波長検出器は前記光集積回路に集積されている
請求項に記載の光モジュール。
【請求項11】
前記光集積回路は、前記光学素子として、コヒーレントミキサを備える
請求項1~10のいずれか一つに記載の光モジュール。
【請求項12】
前記光集積回路は、前記光学素子として、前記コヒーレントミキサから出力された光を受光する受光素子を備える
請求項11に記載の光モジュール。
【請求項13】
前記変調器と、前記光集積回路の前記変調器と光学結合をしている部分の周辺とに熱的に接触している温度調節素子を備える
請求項1~12のいずれか一つに記載の光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光通信に使用される光モジュールとして、複数の要素が集積された構成が知られている(特許文献1、2)。また、シリコンフォトニクスと呼ばれる技術を利用して、シリコン基板に導波路や光学素子を集積した光モジュールが知られている。当該光モジュールはシリコンプロセスを利用して高精度かつ低コストかつ大量生産が可能であると考えられている。当該光モジュールは、光学素子として変調器を含む場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許公開第2019/0103938号明細書
【文献】国際公開第2016/166971号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光通信ではさらなる高速化が求められている。しかしながら、シリコンフォトニクスによる変調器では、変調速度の制限から、高速化が制限される可能性がある。これに対して、InP系半導体材料を用いた変調器は、たとえば96Gbdを超える変調速度を実現可能と考えられるが、シリコンフォトニクスとの組み合わせる場合は、構成材料の相違などによって、光学的な位置ずれによる光損失が発生するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、高速変調に適するとともに、低コストで光損失が抑制された光モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、InP系半導体材料を含み、入力された光を変調する変調信号付与部を備えた変調器と、前記変調器と光学結合をし、シリコン系半導体材料を含む複数の導波路および複数の光学素子が集積された光集積回路と、を備え、前記光集積回路は、前記導波路のいずれかまたは前記光学素子のいずれかを通過した光を前記変調器に出力し、前記変調器が前記光を変調して生成した変調光を受付け、前記導波路の他のいずれかまたは前記光学素子の他のいずれかを通過した前記変調光を出力する光モジュールである。
【0007】
前記光学結合はバットジョイントまたは光学結合素子によってなされているものでもよい。
【0008】
前記光学結合素子は、レンズ、GRINレンズ、光ファイバ、導波路、またはフォトニックワイヤを含むものでもよい。
【0009】
前記変調器は、前記変調信号付与部に入力される光または前記変調光を増幅する光増幅器を備えるものでもよい。
【0010】
前記光集積回路は、前記光学素子としてレンズ、受光素子、偏波合成素子、または可変光減衰素子を備えるものでもよい。
【0011】
前記光集積回路は、前記光学素子として、受光素子と、通過する光の一部を分岐して前記受光素子に出力する光分岐素子とを備えるものでもよい。
【0012】
前記変調器は、前記変調信号付与部として、2つの変調信号付与部を備え、前記光集積回路は、前記光学素子として偏波合成素子と2つの可変光減衰素子とを備え、前記2つの可変光減衰素子は、それぞれ、前記2つの変調信号付与部で生成された2つの変調光を減衰し、前記偏波合成素子は、減衰した前記2つの変調光を偏波合成するものでもよい。
【0013】
前記光集積回路は、光フィルタならびに光イコライザを備えるものでもよい。
【0014】
前記光集積回路と光学結合をする光ファイバを備えるものでもよい。
【0015】
前記光集積回路は、シリコン系半導体材料を含み、前記変調器を実装する変調器実装部を備えるベースと一体に構成されているものでもよい。
【0016】
前記ベースは、光ファイバを実装する光ファイバ実装部を備えるものでもよい。
【0017】
前記光集積回路に入力され前記変調器に出力される光を出力する光源を備えるものでもよい。
【0018】
前記光源から出力された光の波長を検出するための波長検出器を備えるものでもよい。
【0019】
前記波長検出器は前記光集積回路に集積されているものでもよい。
【0020】
前記光集積回路は、前記光学素子として、コヒーレントミキサを備えるものでもよい。
【0021】
前記光集積回路は、前記光学素子として、前記コヒーレントミキサから出力された光を受光する受光素子を備えるものでもよい。
【0022】
前記変調器と、前記光集積回路の前記変調器と光学結合をしている部分の周辺とに熱的に接触している温度調節素子を備えるものでもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、高速変調に適するとともに、低コストで光損失が抑制された光モジュールを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、実施形態1に係る光モジュールの構成を示す模式図である。
図2図2は、実施形態2に係る光モジュールの構成を示す模式図である。
図3図3は、実施形態3に係る光モジュールの構成を示す模式図である。
図4図4は、実施形態4に係る光モジュールの構成を示す模式図である。
図5図5は、実施形態5に係る光モジュールの構成を示す模式図である。
図6図6は、実施形態6に係る光モジュールの構成を示す模式図である。
図7図7は、図6に示す光モジュールの一部の側面図である。
図8図8は、シリコンプラットフォームの構成を示す模式図である。
図9図9は、図8に示すシリコンプラットフォームの実装状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、図面を参照して実施形態について説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一または対応する要素には適宜同一の符号を付している。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0026】
(実施形態1)
実施形態1に係る光モジュールの構成を示す模式図である。光モジュール100は、波長可変光源1と、変調器2と、光集積回路3と、波長ロッカ4と、光ファイバ5、6と、光学結合素子11、12、13、14、15とを備えている。
【0027】
波長可変光源1は、たとえば半導体レーザ素子を含んでおり、出力するレーザ光の波長をたとえば1530nm~1625nmの波長帯域内の所定の範囲で変更できるように構成されている。波長可変光源1は、光集積回路3に入力され、変調器2に出力されるレーザ光を出力する。
【0028】
変調器2は、たとえばMZ(マッハツェンダ)型の位相変調器であり、外部から変調信号を付与されてIQ変調器として機能する公知のものである。変調器2は、光分岐部2aと、変調信号付与部2b、2cと、変調器2の内部の光接続を実現する複数の導波路とを備えている。光分岐部2aは、変調器2に入力された光を2つに分岐する。変調信号付与部2b、2cは、光分岐部2aで分岐された2つの光がそれぞれ入力され、入力された光を変調して変調光を生成し、出力する。2つの変調光は互いに直交する直線偏波状態を有する。変調器2は、InP系変調器とも呼ばれるものであって、少なくとも変調信号付与部2b、2cがInP系半導体材料を含む。
【0029】
光集積回路3は、シリコン系半導体材料を含む複数の導波路および複数の光学素子が集積された光集積回路であって、SiPh(Silicon Photonics)回路とも呼ばれるものである。シリコン系半導体材料には、たとえばSiGe系半導体材料も含まれる。また、光集積回路3は、酸化シリコンからなる絶縁層が含まれてもよい。複数の導波路は、光集積回路3の内部の光接続を実現する。また、光集積回路3は、光学素子として、光分岐素子3aと、ビームスプリッタ(Beam Splitter:BS)3b、3cと、可変光減衰素子(Variable Optical Attenuator:VOA)3d、3eと、光分岐素子3f、3gと、偏波合成素子(Polarization Beam Combiner:PBC)3hと、光分岐素子3iと、光イコライザ3jと、コヒーレントミキサ3kと、光分岐素子3lと、受光素子である高速PD(Photo Diode)3mと、受光素子であるモニタPD3n、3o、3p、3q、3rと、光フィルタ3s、3tとを含む。これらの光学素子の機能については後に詳述する。
【0030】
波長ロッカ4は、波長可変光源1から出力された光の波長を検出するための波長検出器の一例である。波長ロッカ4は、たとえば平面光波回路(Planar Lightwave Circuit:PLC)とPDアレイとからなる公知のものである。PLCは、入力された光を3つに分岐し、その一つをPDアレイに出力し、他の二つのそれぞれを、波長に対して透過特性が略周期的に変化し、波長弁別特性を有する2つのフィルタのそれぞれを通過させてからPDアレイに出力する。2つのフィルタはたとえばリング共振器やMZ干渉計からなり、互いに異なる透過波長特性を有する。PDアレイは、3つのPDがアレイ状に配列されて構成されている。PDアレイの3つのPDのそれぞれは、PLCが出力する3つの光のそれぞれを受光し、受光強度に応じた電流信号を出力する。各電流信号は、配線パターンを通じて外部の制御器に送信され、光の波長の検出と制御のために使用される。
【0031】
光ファイバ5は、光集積回路3と光学結合しており、光集積回路3から出力された光を外部に出力する。光ファイバ6は、光集積回路3と光学結合しており、外部からの光を光集積回路3に入力する。光ファイバ5、6はたとえば公知の通信用シングルモード光ファイバである。
【0032】
光学結合素子11は、波長可変光源1と光集積回路3とを光学結合させている。光学結合素子12は、変調器2と光集積回路3とを光学結合させている。光学結合素子13は、波長ロッカ4と光集積回路3とを光学結合させている。光学結合素子14は、光ファイバ5と光集積回路3とを光学結合させている。光学結合素子15は、光ファイバ6と光集積回路3とを光学結合させている。光学結合素子11~15は、レンズ、GRIN(Gradient INdex)レンズ、光ファイバ、導波路、またはフォトニックワイヤを含む。フォトニックワイヤは、樹脂などからなり光を導光するワイヤである。レンズは、単レンズや単レンズの組み合わせなどで構成される。レンズ、GRINレンズおよび導波路は、それぞれアレイ状に配列され、アレイ素子として構成されていてもよい。
【0033】
つぎに、光モジュール100の機能の一例を説明する。図1には、光モジュール100における光の光路を概略的に矢印で示している。波長可変光源1や変調器2や光集積回路3が備える導波路は、これらの光を許容できる範囲の光損失で導波するように構成されており、たとえば曲げ半径が許容曲げ損失以下に設計されている。
【0034】
波長可変光源1は直線偏波のレーザ光を出力する。光学結合素子11は、波長可変光源1からのレーザ光を光集積回路3の導波路に結合させる。
【0035】
光集積回路3において、光分岐素子3aは、光集積回路3の導波路を導波されたレーザ光のほとんどを通過させてビームスプリッタ3bに出力するとともに、一部を分岐してモニタPD3nに出力する。モニタPD3nは受光強度に応じた電流信号を出力する。電流信号は、配線パターンを通じて外部の制御器に送信され、波長可変光源1の出力のモニタのために使用される。
【0036】
ビームスプリッタ3bは、光分岐素子3aからのレーザ光のほとんどを通過させて、導波路を介してビームスプリッタ3cに出力するとともに、一部を分岐して、導波路を介してコヒーレントミキサ3kに出力する。
【0037】
ビームスプリッタ3cは、ビームスプリッタ3bからのレーザ光のほとんどを通過させて、導波路を介して光学結合素子12に出力するとともに、一部を分岐して、導波路を介して波長ロッカ4に出力する。
【0038】
光学結合素子12は、ビームスプリッタ3cからのレーザ光を変調器2の導波路に結合させる。
【0039】
変調器2において、光分岐部2aは、光学結合素子12からのレーザ光を2つに分岐する。変調信号付与部2b、2cは、光分岐部2aで分岐された2つのレーザ光がそれぞれ入力され、入力されたレーザ光をそれぞれIQ変調して、互いに直交する直線偏波状態の変調光を生成し、導波路を介して光学結合素子12に出力する。
【0040】
光学結合素子12は、変調器2からの2つの変調光を、導波路を介して可変光減衰素子3d、3eのそれぞれに出力する。可変光減衰素子3d、3eは、入力された変調光をそれぞれ減衰して、導波路を介して光分岐素子3f、3gにそれぞれ出力する。可変光減衰素子3d、3eの減衰量は、配線パターンを通じて外部の制御器から送信された電気信号によって制御される。
【0041】
光分岐素子3f、3gは、それぞれ、可変光減衰素子3d、3eからの変調光のほとんどを通過させて、導波路を介して偏波合成素子3hに出力するとともに、一部を分岐してモニタPD3o、3pにそれぞれ出力する。モニタPD3o、3pは受光強度に応じた電流信号を出力する。電流信号は、配線パターンを通じて外部の制御器に送信され、可変光減衰素子3d、3eの出力のモニタおよび減衰量の制御のために使用される。
【0042】
偏波合成素子3hは、光分岐素子3f、3gからの変調光を偏波合成して、導波路を介して光分岐素子3iに出力する。
【0043】
光分岐素子3iは、偏波合成素子3hからの変調光のほとんどを通過させて、導波路を介して光イコライザ3jに出力するとともに、一部を分岐してモニタPD3qに出力する。モニタPD3qは受光強度に応じた電流信号を出力する。電流信号は、配線パターンを通じて外部の制御器に送信され、偏波合成素子3hの出力のモニタのために使用される。
【0044】
光イコライザ(Optical Equalizer)3jは、光分岐素子3iからの変調光がスペクトル的に平坦などの所望の形状になるように所定のスペクトル特性の減衰を与えて、導波路、光フィルタ3sを介して光学結合素子14に出力するものであり、ラティス型光回路などにより導波路上に容易に構成する事ができる。光イコライザ3jは、たとえば、非特許文献であるECOC2019、Dublin、IrelandのTu2.D.2や、Tu3.B.1に開示されたものである。また、光イコライザ3jは、LCOS(Liquid Crystal On Silicon)と回折格子とを含んで構成された公知のものでもよいが、本構成のように導波路上に形成する事で経済的に小型な光モジュールを実現する上で高い効果を有する。
【0045】
光学結合素子14は、光フィルタ3sを透過した変調光を光ファイバ5に結合させる。光ファイバ5は、変調光を外部に伝搬する。
【0046】
一方、光ファイバ6は、外部からの信号光を伝搬し、光学結合素子15に出力する。光学結合素子15は、光ファイバ6からの信号光を、光フィルタ3tを介して光集積回路3の導波路に結合させる。
【0047】
光集積回路3において、光分岐素子3lは、光集積回路3の導波路を導波された信号光のほとんどを通過させてコヒーレントミキサ3kに出力するとともに、一部を分岐してモニタPD3rに出力する。モニタPD3rは受光強度に応じた電流信号を出力する。電流信号は、配線パターンを通じて外部の制御器に送信され、信号光のパワーをモニタするために使用される。
【0048】
コヒーレントミキサ3kは、90°光ハイブリッド回路を含んでおり、光分岐素子3lから導波路を介して入力された信号光と、ビームスプリッタ3bから導波路を介して入力されたレーザ光(局発光)とを干渉させて処理し、処理信号光を生成し、高速PD3mに出力する。処理信号光は、X偏波のI成分に対応するIx信号光、X偏波のQ成分に対応するQx信号光、Y偏波のI成分に対応するIy信号光、およびY偏波のQ成分に対応するQy信号光、の4つである。
【0049】
高速PD3mは、4つのバランスドPDを有しており、4つの処理信号光のそれぞれを受光して、電流信号に変換して出力する。電流信号は、配線パターンを通じて制御器またはさらに上位の制御装置に送信され、信号光の復調のために使用される。
【0050】
なお、光フィルタ3s、3tは、信号光や変調光が含まれる波長帯の光を主に透過し、当該波長帯の範囲外の波長を有するノイズ光をカットする特性を有する。ノイズ光は、たとえば光伝送路や光源などで生じ得る。光フィルタ3s、3tは、ラティス型、AWG(Arrayed Waveguide Gratings)型、グレーティングなどの多様な構成により簡単に形成できる(たとえば、非特許文献であるOptics Express Vol. 24, Issue 26, pp. 29577-29582(2016))。
【0051】
以上のように構成された光モジュール100では、SiPh回路である光集積回路3が、集積された複数の導波路および複数の光学素子を通過したレーザ光をInP系の変調器2に出力し、変調器2が変調光を生成し、光集積回路3が変調光を受付け、集積された複数の導波路および複数の光学素子を通過した変調光を出力する。したがって、InP系の変調器2によって高速変調に適するとともに、SiPh回路である光集積回路3によって空間伝搬する箇所を可能な限り削減し、内部の導波路伝搬を活用することで、組み立て時や経時的な光学的位置ずれを抑制し、結合損失などの光損失を抑制できる。特に、異なる材料系で構成された変調器2と光集積回路3とが最小限の光学結合箇所で結合されるので、光損失の抑制効果は顕著である。さらには、光モジュール100では、部品点数および部品コストが削減され、低コスト化が実現される。
【0052】
この光モジュール100は、波長可変光源1と変調器2とを含む部分が光送信部を構成し、コヒーレントミキサ3kを含む部分が光受信部を構成している。このような光モジュール100は、たとえばOIF(Optical Internetworking Forum)によるIC-TROSA(integrated coherent transmitter-receiver optical sub-assembly)のType-IIに適用できる。
【0053】
(実施形態2)
図2は、実施形態2に係る光モジュールの構成を示す模式図である。光モジュール100Aは、図1に示す光モジュール100の構成において、光集積回路3を光集積回路3Aに置き換え、ビームスプリッタ7Aと光学結合素子16Aとを追加した構成を有する。光集積回路3Aは、光集積回路3の構成において、ビームスプリッタ3b、光イコライザ3jおよび光フィルタ3s、3tを削除した構成を有する。
【0054】
光モジュール100Aの機能の一例を説明する。
光学結合素子16Aは、波長可変光源1からのレーザ光を、空間結合によってビームスプリッタ7Aに結合させる。ビームスプリッタ7Aは、集積されていない光学素子であって、光学結合素子11と空間結合している。ビームスプリッタ7Aは、レーザ光のほとんどを通過させて、光学結合素子11と光集積回路3Aの導波路とを介してビームスプリッタ3cに出力するとともに、一部を分岐して、光学結合素子11と光集積回路3Aの導波路とを介して光分岐素子3aに出力する。光分岐素子3aは、光集積回路3の導波路を導波されたレーザ光のほとんどを通過させて、導波路を介してコヒーレントミキサ3kに出力するとともに、一部を分岐してモニタPD3nに出力する。
【0055】
光モジュール100Aのその他の機能は、光モジュール100の機能と同様なので、説明を省略する。
【0056】
以上のように構成された光モジュール100Aにおいても、光損失を抑制でき、部品点数および部品コストが削減され、低コスト化が実現される。また、このような光モジュール100Aは、たとえばIC-TROSAのType-IIに適用できる。
【0057】
(実施形態3)
図3は、実施形態3に係る光モジュールの構成を示す模式図である。光モジュール100Bは、図1に示す光モジュール100の構成において、光集積回路3を光集積回路3Bに置き換え、波長ロッカ4と光学結合素子13とを削除した構成を有する。
【0058】
光集積回路3Bは、光集積回路3の構成において、波長ロッカ3uを追加し、光イコライザ3jを削除した構成を有する。波長ロッカ3uは、波長ロッカ4と同様の構成、機能を有するが、シリコン系半導体材料を含んで構成されており、光集積回路3Bに集積されている点で異なる。
【0059】
光モジュール100Bの機能の一例は、光モジュール100の機能と同様であるが、ビームスプリッタ3cが、ビームスプリッタ3bからのレーザ光の一部を分岐して、導波路を介して波長ロッカ3uに出力する点が異なる。
【0060】
以上のように構成された光モジュール100Bにおいても、光損失を抑制でき、部品点数および部品コストが削減され、低コスト化が実現される。また、このような光モジュール100Bは、たとえばIC-TROSAのType-IIに適用できる。
【0061】
(実施形態4)
図4は、実施形態4に係る光モジュールの構成を示す模式図である。光モジュール100Cは、図1に示す光モジュール100の構成において、光集積回路3を光集積回路3Cに置き換え、波長可変光源1と波長ロッカ4と光学結合素子11、13とを削除し、光学結合素子17Cと光ファイバ8Cとを追加した構成を有する。
【0062】
光集積回路3Cは、光集積回路3の構成において、ビームスプリッタ3Cbを追加し、ビームスプリッタ3b、3cと光イコライザ3jとモニタPD3nと光フィルタ3s、3tとを削除した構成を有する。
【0063】
光モジュール100Cの機能の一例を説明する。
光ファイバ8Cは、外部からのレーザ光を伝搬し、光学結合素子15に出力する。レーザ光は、波長可変光源1が出力するレーザ光と同様の特性を有する。光学結合素子17Cは、光ファイバ8Cからのレーザ光を光集積回路3Cの導波路に結合させる。
【0064】
光集積回路3Cにおいて、ビームスプリッタ3Cbは、光集積回路3Cの導波路を導波されたレーザ光のほとんどを通過させて光学結合素子12に出力するとともに、一部を分岐してコヒーレントミキサ3kに出力する。
【0065】
すなわち、光ファイバ8Cから入力される光は、一部が変調器2によって変調されて変調光になるとともに、一部がコヒーレントミキサ3kにおいて局発光として使用される。
【0066】
光モジュール100Cのその他の機能は、光モジュール100の機能と同様なので、説明を省略する。
【0067】
以上のように構成された光モジュール100Cにおいても、光損失を抑制でき、部品点数および部品コストが削減され、低コスト化が実現される。また、このような光モジュール100Bは、たとえばIC-TROSAのType-Iに適用できる。
【0068】
(実施形態5)
図5は、実施形態5に係る光モジュールの構成を示す模式図である。光モジュール100Dは、図4に示す光モジュール100Cの構成において、光集積回路3Cを光集積回路3Dに置き換え、光学結合素子15と光ファイバ6とを削除した構成を有する。
【0069】
光集積回路3Dは、光集積回路3Cの構成において、ビームスプリッタ3Cbとコヒーレントミキサ3kと光分岐素子3lと高速PD3mとモニタPD3rを削除した構成を有する。
【0070】
光モジュール100Dの機能の一例を説明する。
光ファイバ8Cは、外部からのレーザ光を伝搬し、光学結合素子15に出力する。レーザ光は、波長可変光源1が出力するレーザ光と同様の特性を有する。光学結合素子17Cは、光ファイバ8Cからのレーザ光を光集積回路3Cの導波路に結合させる。
【0071】
光集積回路3Cにおいて、導波路は、導波したレーザ光を光学結合素子12に出力する。
【0072】
すなわち、光ファイバ8Cから入力される光は、変調器2によって変調されて変調光になる。また、光モジュール100Dはコヒーレントミキサに関わる機能は無い。
【0073】
光モジュール100Dのその他の機能は、光モジュール100Cの機能と同様なので、説明を省略する。
【0074】
以上のように構成された光モジュール100Dにおいても、光損失を抑制でき、部品点数および部品コストが削減され、低コスト化が実現される。また、このような光モジュール100Bは、たとえばOIFによるHB-CDM(High Bandwidth Coherent Driver Modulator)に適用できる。
【0075】
(実施形態6)
図6は、実施形態6に係る光モジュールの構成を示す模式図である。図7は、図6に示す光モジュールの一部の側面図である。光モジュール100Eは、図1に示す光モジュール100の構成において、温度調節素子21とスペーサ22とを追加した構成を有する。
【0076】
温度調節素子21は、波長可変光源1と波長ロッカ4と変調器2とを搭載している。また、温度調節素子21は、光集積回路3の一部を搭載している。具体的には、温度調節素子21は、光集積回路3の、波長可変光源1、変調器2、および波長ロッカ4と光学結合をしている部分の周辺の部分を搭載している。ここで搭載は熱的な接触を実現する態様の一例である。
【0077】
スペーサ22は、光集積回路3を搭載している。スペーサ22の高さは、光集積回路3の一部が温度調節素子21に搭載できるように調節されている。
【0078】
光モジュール100Eの機能は、光モジュール100Cの機能と同様なので、説明を省略する。
【0079】
以上のように構成された光モジュール100Eにおいても、光損失を抑制でき、部品点数および部品コストが削減され、低コスト化が実現される。また、光モジュール100Eでは、温度調節素子21が、変調器2と熱的に接触しているので、変調器2の温度を略一定の温度に維持することができ、変調器2の変調特性を安定にすることができる。また、温度調節素子21が、光集積回路3の、変調器2と光学結合をしている部分の周辺とに熱的に接触しているので、光学結合をしている部分が変調器2と略同じ温度に保たれる。その結果、温度調節素子21と光集積回路3との熱膨張係数の違いにより位置ずれが生じて光損失が増加してしまう、という事態の発生が抑制される。また、波長可変光源1や波長ロッカ4についても同様に、温度調節素子21が熱的に接触しているので、波長可変光源1や波長ロッカ4の特性を安定にすることができるとともに、光損失が増加してしまうという事態の発生が抑制される。
【0080】
光集積回路3のうち温度調節素子21と熱的に接触している部分は、光集積回路3の導波路のうち、波長可変光源1と光学結合している光学結合素子11、変調器2と光学結合している光学結合素子12、および波長ロッカ4と光学結合している光学結合素子13のそれぞれと光学結合している各導波路の端面を含む。また、光集積回路3のうち温度調節素子21と熱的に接触している部分の大きさは、許容される位置ずれなどによって適宜設定されるが、たとえば、光学結合素子11、12、13と光学結合している端面から0.5mm程度の領域である。また、光集積回路3の全てが温度調節素子21と熱的に接触していると、温度調節素子21の消費電力が過度に大きくなるため、温度調節素子21に搭載される光集積回路3の面の面積の50%以下とすることが好ましい。
【0081】
(シリコンプラットフォーム)
上記各実施形態に記載の光集積回路は、シリコン系半導体材料を含むベースと一体に構成されていてもよい。図8は、一例として、光集積回路3とベース31とが一体に構成された部分を含むシリコンプラットフォーム30の構成を示す模式図である。このシリコンプラットフォーム30は、平板状のベース31の主表面の一部に光集積回路3が設けられた構成を有する。また、シリコンプラットフォーム30は、主表面の一部に、座繰り部31a、31bおよび光ファイバ実装部31c、31dを備える。光ファイバ実装部31c、31dはベース31の主表面から突出しており、その上面には溝31ca、31daがそれぞれ設けられている。本実施形態では溝31ca、31daはV溝であるが、U溝でもよい。
【0082】
図9は、シリコンプラットフォーム30の実装状態を示す模式図である。図9では、一例として、座繰り部31aに変調器2が実装され、座繰り部31bに波長可変光源1が実装されている。座繰り部31aは変調器実装部の一例であり、座繰り部31bは波長可変光源実装部の一例である。また、光ファイバ実装部31cには、溝31caに一部が収容されるように光ファイバ5が実装されている。光ファイバ実装部31dには、溝31daに一部が収容されるように光ファイバ6が実装されている。
【0083】
光集積回路3、座繰り部31a、31bおよび光ファイバ実装部31c、31dは、シリコンプロセスによって相対位置が高精度になるように形成されたものである。このようなシリコンプラットフォーム30を用いた光モジュールであれば、変調器2、光集積回路3、および光ファイバ5、6の相対位置の精度が高く、光損失がさらに抑制される。
【0084】
なお、上記実施形態では、波長可変光源1や変調器2や波長ロッカ4が、光学結合素子によって光集積回路と光学結合しているが、バットジョイント(butt joint)接合によって光学結合がなされていてもよい。この場合は、光学結合素子の使用数をさらに削減できる。たとえば、変調器2と光集積回路とは、互いに光を入出力させる導波路同士がバットジョイント接合とによって光学結合がされる。
【0085】
また、上記実施形態において、変調器2は、変調信号付与部2b、2cに入力される光または変調光を増幅する光増幅器を備えていてもよい。光増幅器は、たとえばInP系半導体材料を含んで構成された半導体光増幅器である。このような半導体光増幅器は変調信号付与部2b、2cとともに集積することも可能である。
【0086】
また、上記実施形態において、光集積回路に光学素子としてシリコンレンズを集積させてもよい。また、上記光集積回路またはプラットフォームに、高速PD3mから出力される電流信号を電圧信号に変換するトランスインピーダンスアンプ(TIA)や、変調器2を駆動するDRV(Digital Modulator Driver)や、制御器としての制御ICなどが集積されていてもよい。また、光集積回路に光アイソレータやDCブロッキングや終端器が集積されてもよい。また、光イコライザは、光集積回路の外部に設けられていてもよい。
【0087】
また、上記実施形態では、光集積回路を単一のチップで構成しているが、コヒーレントミキサとその他の部分とを別々のチップに構成し、これらをバットジョイントまたは光学結合素子によって光学接合してもよい。
【0088】
また、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0089】
1 :波長可変光源
2 :変調器
2a :光分岐部
2b、2c :変調信号付与部
3、3A、3B、3C :光集積回路
3b、3c、3Cb、7A :ビームスプリッタ
3D :光集積回路
3a :光分岐素子
3d、3e :可変光減衰素子
3f、3g、3i :光分岐素子
3h :偏波合成素子
3j :光イコライザ
3k :コヒーレントミキサ
3l :光分岐素子
3m :高速PD
3n、3o、3p、3q、3r :モニタPD
3s、3t :光フィルタ
3u、4 :波長ロッカ
5、6、8C :光ファイバ
11、12、13、14、15、16A、17C :光学結合素子
21 :温度調節素子
22 :スペーサ
30 :シリコンプラットフォーム
31 :ベース
31a、31b :座繰り部
31c、31d :光ファイバ実装部
31ca、31da :溝
100、100A、100B、100C、100D、100E :光モジュール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9