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特許7568662注射デバイスでの電子機器のスリープ解除
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】注射デバイスでの電子機器のスリープ解除
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/31 20060101AFI20241008BHJP
   A61M 5/24 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
A61M5/31
A61M5/24
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021577933
(86)(22)【出願日】2020-06-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-01
(86)【国際出願番号】 EP2020067851
(87)【国際公開番号】W WO2021001254
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2023-04-28
(31)【優先権主張番号】19305890.6
(32)【優先日】2019-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・シャーバッハ
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス・アルペルス
(72)【発明者】
【氏名】ガネッシュ・アプサミー・ヴェダチャラム
(72)【発明者】
【氏名】イェルク・ビガルケ
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・ラウシュ
(72)【発明者】
【氏名】アンナ・バッカロ
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0312430(US,A1)
【文献】国際公開第2019/096726(WO,A2)
【文献】国際公開第2018/104289(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/121608(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/31
A61M 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射デバイス(102)であって:
少なくとも1つの電子構成要素(128c、128d)を含む電子システム(105)と;
1つまたはそれ以上のセンサ(127a、127b、128b)による起動の後、該電子システム(105)に電力供給するように構成されたエネルギー源(104)と;
該エネルギー源(104)と通信する1つまたはそれ以上のセンサ(127a、127b、128b)であって、エネルギー源(104)への起動信号の提供を引き起こし、エネルギー源(104)をスリープ状態から電力供給状態に移行させることによりエネルギー源(104)を起動するように構成された1つまたはそれ以上のセンサ(127a、127b、128b)と;
注射デバイス(102)が電力供給状態にあるときに注射デバイス(102)の1つまたはそれ以上の機能を制御するように構成されたプロセッサ(128a)と
を含む前記注射デバイス。
【請求項2】
磁石(130)を含むキャップ(118)をさらに含み、ここで、1つまたはそれ以上のセンサ(127a、127b、128b)は磁気センサ(127b)である、請求項1に記載の注射デバイス(102)。
【請求項3】
起動信号は、1つまたはそれ以上のセンサ(127a、127b、128b)によって測定された磁場強度が所定の閾値を下回ったことに応答して提供される、請求項1または2に記載の注射デバイス(102)。
【請求項4】
1つまたはそれ以上のセンサ(127a、127b、128b)は、リードスイッチまたはホール効果センサを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の注射デバイス(102)。
【請求項5】
磁石(130)は、キャップ(118)が注射デバイス(102)に取り付けられるときに、1つまたはそれ以上のセンサ(127a、127b、128b)に近接して位置する、請求項2~4のいずれか1項に記載の注射デバイス(102)。
【請求項6】
静電素子(202)を含むキャップ(218)をさらに含み、ここで、1つまたはそれ以上のセンサ(127a、127b、128b)は、電極(127a)を含む、請求項1に記載の注射デバイス(102)。
【請求項7】
静電素子(202)と電極(127a)とは、キャップ(218)が注射デバイス(102)に取り付けられたときに接触するように構成される、請求項6に記載の注射デバイス(102)。
【請求項8】
静電素子(202)は、該静電素子(202)が注射デバイス(102)の一部と擦れたときに静電放電を生成するように構成され、電極(127a)は、静電放電を検出し、それに応答してエネルギー源(104)への起動信号の提供を引き起こすように構成される、請求項6または7に記載の注射デバイス(102)。
【請求項9】
1つまたはそれ以上のセンサ(127a、127b、128b)は、運動センサ(128b)を含む、請求項1に記載の注射デバイス(102)。
【請求項10】
運動センサは、注射デバイス(102)の特定の運動を検出し、それに応答してエネルギー源(104)への起動信号の提供を引き起こすように構成される、請求項9に記載の注射デバイス(102)。
【請求項11】
特定の運動は、注射デバイス(102)の回転である、請求項10に記載の注射デバイス(102)。
【請求項12】
1つまたはそれ以上のセンサ(127a、127b、128b)は、振動センサ(128b)を含む、請求項1に記載の注射デバイス(102)。
【請求項13】
振動センサは、注射デバイス(102)の特定の音または振動を検出し、それに応答してエネルギー源(104)への起動信号の提供を引き起こすように構成され、特定の音または振動は、注射デバイス(102)によって注射される予定の薬剤の用量のダイヤル設定中に発生する、請求項12に記載の注射デバイス(102)。
【請求項14】
包装(302)が開かれて、温度センサ(312)が所定の閾値を満たす温度を測定したときに、エネルギー源(104)への起動信号の提供を引き起こすように構成された温度センサ(312)を含む耐熱性の包装(302)内に提供される、請求項1に記載の注射デバイス(102)。
【請求項15】
1つまたはそれ以上の機能は、薬剤を投薬させること、注射デバイス(102)内の薬剤の量を決定すること、注射デバイス(102)によって投薬される薬剤の量を決定すること、または外部デバイス(130)と通信することを含む、請求項1に記載の注射デバイス(102)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子機器のスリープ解除を対象とし、より詳細には、注射デバイスでの電子機器のスリープ解除を対象とする。
【背景技術】
【0002】
電子的に有効にされる注射デバイスは、ユーザが薬剤を安全に投与するのを支援し、医療スタッフへの治療データの送信を可能にすることもできる。電子的に有効にされる注射デバイスは、エネルギー供給を必要とする機能である継続的な能動センシングおよび接続特性を提供するように構成された電子構成要素を含む。エネルギー供給源は、電気部品に電力を供給する電池でありうる。電子的に有効にされる注射デバイスの構成は、エネルギー供給源の容量を制限することがあり、これはエネルギー供給源の寿命に影響を及ぼす。
【0003】
電子的に有効にされる注射デバイスの寿命は、そのエネルギー供給源の寿命によって制限されることがある。電子的に有効にされる注射デバイスのなかには、使用される前に長期間保管されているものもある。電子的に有効にされる注射デバイスの現在の構成は、エネルギー供給源のアイドル時漏出(idle drainage)につながり、その結果、電子的に有効にされる注射デバイスが使用されていなくても、長い貯蔵期間によりエネルギー供給源の寿命が使い果たされる可能性がある。低バッテリ状態は、デバイスの機能停止または機能不良、誤った用量につながる可能性があり、用量の不足につながる可能性があり、または電子構成要素の動作を停止することによって、電子的に有効にされる注射デバイスを使用できなくする可能性さえある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の実装形態は、エネルギー源のアイドル時漏出を防止することによって電子的に有効にされる注射デバイスの寿命を延ばすように構成された結合機構およびシステムを含む。本発明の一態様によれば、注射デバイスは、注射デバイスの電子システムに電力供給するように構成されたエネルギー源と、エネルギー源と通信する1つまたはそれ以上のセンサであって、エネルギー源への起動信号の提供を引き起こし、エネルギー源をスリープ状態から電力供給状態に移行させるように構成された1つまたはそれ以上のセンサと、注射デバイスが電力供給状態にあるときに注射デバイスの1つまたはそれ以上の機能を促進するように構成されたプロセッサとを含む。実装形態は、以下の構成の1つまたはそれ以上を含むことができる。いくつかの実装形態では、1つまたはそれ以上の機能は、薬剤を投薬させること、注射デバイス内の薬剤の量を決定すること、注射デバイスによって投薬される薬剤の量を決定すること、または外部デバイスと通信することを含む。
【0005】
いくつかの実装形態では、注射デバイスは、磁石を含むキャップをさらに含む。1つまたはそれ以上のセンサは磁気センサであり、1つまたはそれ以上のセンサによって測定された磁場強度が所定の閾値を下回ったことに応答して起動信号が提供される。いくつかの実装形態では、磁気センサは、リードスイッチまたはホール効果センサである。磁石は、キャップが注射デバイスに取り付けられるときに、1つまたはそれ以上のセンサに近接して位置する。
【0006】
いくつかの実装形態では、注射デバイスは、静電素子を含むキャップをさらに含む。1つまたはそれ以上のセンサは、電極を含む。静電素子と電極とは、キャップが注射デバイスに取り付けられたときに接触するように構成される。静電素子は、静電素子が注射デバイスの一部と擦れたときに静電放電を生成するように構成され、電極は、静電放電を検出し、それに応答してエネルギー源への起動信号の提供を引き起こすように構成される。
【0007】
いくつかの実装形態では、1つまたはそれ以上のセンサは運動センサを含む。運動センサは、注射デバイスの特定の運動を検出し、それに応答してエネルギー源への起動信号の提供を引き起こすように構成される。特定の運動は、注射デバイスの回転である。
【0008】
いくつかの実装形態では、1つまたはそれ以上のセンサは、振動センサを含む。振動センサは、注射デバイスの特定の音または振動を検出し、それに応答してエネルギー源への起動信号の提供を引き起こすように構成される。特定の音または振動は、注射デバイスによって注射される予定の薬剤の用量のダイヤル設定中に発生する。
【0009】
いくつかの実装形態では、注射デバイスは、包装が開かれて、温度センサが所定の閾値を満たす温度を測定したときに、エネルギー源への起動信号の提供を引き起こすように構成された温度センサを含む耐熱性の包装内に提供される。
【0010】
本開示によるシステムは、本明細書で述べる態様および構成の任意の組合せを含むことができることを理解されたい。すなわち、本開示による方法は、本明細書で具体的に述べる態様および構成の組合せに限定されず、提供される態様および構成の任意の組合せも含む。
【0011】
本開示の1つまたはそれ以上の実施形態の詳細を、添付図面および本明細書で以下に記載する。本開示の他の構成および利点は、本明細書および図面、ならびに特許請求の範囲から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示によるデバイスの例の分解図である。
図2】本開示によるデバイスの例の分解図である。
図3】本開示によるデバイスの例の分解図である。
図4】本開示の動作を実施するために実行することができる例示的なプロセスを示すフローチャートである。
図5】本開示の実装形態を実行するために使用することができる例示的なコンピュータシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
様々な図面における同様の参照符号は、同様の要素を示す。
【0014】
本開示の実装形態は、一般に、エネルギー源のアイドル時漏出を防止するために、注射デバイスのエネルギー源を制御下で起動することを対象とする。より詳細には、本開示の実装形態は、トリガ信号を受信し、トリガ信号の受信に応答して、電子構成要素に対する注射デバイスのエネルギー源を起動するためのインスタンス化信号(instantiation signal)を生成するように構成された機構を対象とする。
【0015】
いくつかの注射デバイスでは、注射デバイスの意図された使用の前に、誤ったトリガ信号に応答して注射デバイスのエネルギー源が起動されて、エネルギー源のアイドル時漏出を招く可能性がある。したがって、電子注射デバイスの使用が、エネルギー源のアイドル時漏出によって妨げられる可能性がある。いくつかの注射デバイスでは、注射デバイスのエネルギー源の起動プロセスは、注射デバイスがプライミングされた後、長時間かかることがある。起動プロセスが長引くと、注射デバイスが実用的でなくなることがある。本明細書でさらに詳細に述べるように、本開示の実装形態は、これらの課題に対処する。たとえば、いくつかの実装形態によれば、エネルギー源のアイドル時漏出を防止するために、(たとえば薬剤投与のプライミング工程中に)トリガ信号が開始されるまで互いに分離されている反応物によって生成された信号に応答して、電子注射デバイスを迅速に(たとえば数秒以内に)起動させることができる。
【0016】
図1~3は、例示的な流体送達システム100、200、300の分解図を示す。特に図1を参照すると、例示的な流体送達システム100は、ユーザが流体(たとえば薬剤)を注射するのを支援し、医療データの共有を容易にするように構成することができる。例示的な流体送達システム100は、注射デバイス102および外部デバイス130を含むことができる。注射デバイス102は、エネルギー源104のアイドル時漏出を防止するように構成された電子的に有効にされる注射デバイスでありうる。注射デバイス102は、充填済みの使い捨て注射ペンでも、交換可能な薬剤リザーバ106を有する再利用可能な注射ペンでもよい。注射デバイス102は、外部デバイス130と通信するように構成することができる。注射デバイス102は、動作データ(たとえば、注射デバイス102の使用開始時間、使用および保管中の注射デバイス102の温度などに関連するデータ)および対応する治療データ(たとえば、投薬される薬剤の量、注射デバイス102によって薬剤が投薬される経過時間など)を外部デバイス130に送信することができる。いくつかの実装形態では、注射デバイス102は、注射デバイス102を一意に識別するために外部デバイス130によって使用される識別子に関連付けることができる。
【0017】
注射デバイス102は、ハウジング110およびニードルアセンブリ115を含むことができる。ハウジング110は、エネルギー源104、電子システム105、薬剤リザーバ106、ストッパ107、プランジャロッド108、プランジャヘッド109、プライミング構成要素(たとえば投与量ノブ)112、投与量窓114、および注射ボタン120を含むことができる。ハウジング110は、液晶ポリマーなど医療グレードのプラスチック材料から成形することができる。
【0018】
薬剤リザーバ106は、流体薬剤を含むように構成することができる。薬剤リザーバ106は、薬剤や麻酔薬など調製された流体を包装するために使用されるカートリッジまたはシリンジのような、従来の概して円筒形の使い捨て容器でよい。薬剤リザーバ106は、一対の端部を備えることができ、一方の端部は、封止係合で針113の内向きの端部を受け入れる穿孔可能な膜を有する。含まれる薬剤の用量は、投与量ノブ112を回すことによって注射デバイス102から排出することができ、次いで、選択された用量は、たとえばいわゆる国際単位(IU)の倍数で投与量窓114を通して表示される。ここで、1IUは、約45.5マイクログラム(たとえば1/22mg)の純結晶薬剤の生物学的当量である。投与量窓114に表示される選択された用量の例は、たとえば図1に示されるように30IUでありうる。いくつかの実装形態では、選択された用量は、たとえば電子ディスプレイによって別の形態で表示することができる(たとえば、投与量窓114は、電子ディスプレイの形態を取ることができる)。投与量ノブ112を回すことにより、機械的なクリック音が生じて、ユーザへの音響フィードバックの提供を引き起こすことができる。投与量窓114に表示される数字は、ハウジング110に含まれ、プランジャヘッド109と機械的に相互作用するスリーブに印刷することができ、プランジャヘッド109は、プランジャロッド108の端部に固定され、薬剤リザーバ106のストッパ107を押す。
【0019】
プランジャヘッド109(たとえばプランジャロッド108の後端)は、薬剤リザーバ106内に含まれるストッパ107を変位させることによって流体の一部を排出するように構成することができ、ストッパ107の位置は、注射デバイス102内の流体の量に関連付けられる。プランジャロッド108はプランジャヘッド109に取り付けられ、プランジャヘッド109はストッパ107に取り付けられる。
【0020】
ストッパ107は、ゴム製ストッパなどの可撓性ストッパ、または封止構成要素を備える剛性ストッパでよい。ストッパ107は、エネルギー源104の幾何形状および寸法に一致する外方に突出するリムを有することができる。ストッパ107は、プランジャヘッド109によって係合されたときにストッパ107が裂けるまたはねじれることがないように十分な長さにすることができる。ストッパ107は、以下でより詳細に述べる構成要素のなかでもとりわけエネルギー源104および電子システム105を含むことができる検出システム103を収容するのに十分な体積でありうる。
【0021】
検出システム103は、1つまたはそれ以上のセンサ127a、127bを含むことができる。同様に、電子システム105(たとえば検出システム103の一部でありうる)は、センサ128bなどの1つまたはそれ以上のセンサを含むことができる。センサ127a、127b、128bは、エネルギー源104を有効にする特性を検出するように構成および配置することができる。言い換えると、センサ127a、127b、128bのうちの1つまたはそれ以上は、(たとえば、注射デバイス102によってエネルギーがまったくまたはほとんど消費されていないディープスリープ状態から)注射デバイス102をスリープ解除させるように構成されることがある。各センサ127a、127b、128bは、ウェイクアップ信号の提供を引き起こすのに十分に動作可能であるように(たとえばごくわずかな電力によって)電力供給されるように構成されることがある。いくつかの実装形態では、エネルギー源104自体は、センサ127a、127b、128bが十分に動作できる最低限の電力を提供することができる。いくつかの実装形態では、センサ127a、127b、128bは、個別の電源を有することもあり、またはそれら独自の電源を有することもある。
【0022】
1つまたはそれ以上のセンサ127a、127b、128bのタイプは、注射デバイス102がスリープ解除されることを示す特定の特性を検出するために採用される特定の機構に基づくことができる。たとえば、注射デバイス102をスリープ解除させるために磁気システムが採用される場合、センサ127a、127b、128bのうちの1つまたはそれ以上は、磁気センサでありうる;注射デバイス102をスリープ解除させるために光検出システムが採用される場合、センサ127a、127b、128bのうちの1つまたはそれ以上は、光センサ(たとえばフォトダイオードまたは光依存性抵抗)でありうる;それぞれが注射デバイス102をスリープ解除させることができる複数の検出システムが採用される場合、複数のタイプのセンサが提供されることがある。
【0023】
検出システム機能の任意の組合せが可能である。しかし、例示の目的で、センサ127a、127b、128bのうちの特定のものを含む実装形態を特定のシステムおよび/または実装形態に関して述べ、注射デバイス102をスリープ解除させる特性を検出するための各可能なシステムを個別に順次に述べる。しかし、複数の異なる刺激に応答して注射デバイス102をスリープ解除させるために複数のシステムが検出システム103に組み込まれることがあることを理解すべきであり、また、本明細書で述べる機能を実現するために複数のセンサおよび/または様々なセンサを採用することができることを理解すべきである。たとえば、特定のウェイクアップ技法をセンサ128bに関して述べることがあるが、それでも、センサ127aおよび/または127bを使用して同様のウェイクアップ技法を同様に容易に実装することができる。
【0024】
検出システム103は、センサ127a、127b、128bのうちの1つまたはそれ以上によって提供される信号に基づいて起動信号(たとえば、エネルギー源104をスリープ解除させる、電源オンにする、または電力消費をスリープ/ディープスリープ状態から電源オン状態に高める信号)を生成し、その信号をエネルギー源104に(たとえば直接または間接的に)送信して、電子システム105の起動を引き起こすように構成することができる。
【0025】
エネルギー源104は、1.5V~5Vの酸化銀もしくはリチウム電池(たとえば、SR626、SR516、SR416)またはスーパーキャパシタなど、使い捨てまたは再充電可能な電池でありうる。いくつかの実装形態では、エネルギー源104は、複数の電池(たとえば2つの1.5V電池)を含むことができる。エネルギー源104は、検出システム103からの起動信号の受信後など、特定の条件下で電子システム105にエネルギーを供給するように構成することができる。
【0026】
電子システム105は、エネルギー源104と結合したときに注射デバイス102の1つまたはそれ以上の機能(たとえば薬剤の排出)を実施および/または支援するように構成された1つまたはそれ以上の電子構成要素を含むことができる。たとえば、電子システム105は、1つまたはそれ以上のプロセッサ128a、センサ128b(たとえば上述し、より詳細に後述する)、アンテナ128c、およびモータ128dを含むことができる。モータ128dは、特定の量の薬剤を投薬するためにマイクロステップの増分で進むように構成することができる。いくつかの実装形態では、センサ128bは、投薬された薬剤の量または薬剤リザーバ106に残っている薬剤の量に比例する信号(たとえば電圧)を1つまたはそれ以上のプロセッサ128aに提供することができる。そのような機能は、本明細書でより詳細に述べる「ウェイクアップ」機能に加えて提供されることがある。他方、いくつかの実装形態では、電子システム105は、それぞれが特定の機能(たとえば、エネルギー源104のスリープ解除を促進する、注射デバイス102の他の機能を促進するなど)を提供するように構成された複数のセンサを含むことがある。
【0027】
1つまたはそれ以上のプロセッサ128aは、マイクロプロセッサを含むことができる。いくつかの実装形態では、マイクロプロセッサはマイクロコントローラであり、たとえば、単一のパッケージに形成されたマイクロプロセッサコンポーネントと他のコンポーネントとの組合せである。マイクロプロセッサは、算術および/または論理ユニットアレイでありうる。1つまたはそれ以上のプロセッサ128aは、電子システム105の他の電子構成要素(または他のセンサ127a、127b)から受信された1つまたはそれ以上の信号を処理し、信号をアンテナ128cに送信することができる。たとえば、1つまたはそれ以上のプロセッサ128aは、受信されたデータに対して処理を実行して出力データを生成するように構成することができる。1つまたはそれ以上のプロセッサ128aは、少なくとも一部は電気信号に基づいて注射デバイス102内の流体の量を決定し、流体の量に関連する情報を含むデータをアンテナ128cに送信するように構成することができ、アンテナ128cは、データを外部デバイス130に送信することができる。
【0028】
アンテナ128cは、Bluetoothまたは近距離無線通信(NFC)アンテナでありうる。アンテナ128cは、1つまたはそれ以上のプロセッサ128aおよび外部デバイス130に信号を送信するように構成することができる。アンテナ128cによって送信される信号は、薬剤リザーバ106内の流体の量、センサ128bによって測定された値、および注射デバイス102の識別子を含むことができる。通信フィールド134は、外部デバイス130によって生成されたBluetoothフィールドまたはNFCフィールドでありうる。外部デバイス130は、BluetoothまたはRFモジュール、送信機、受信機、および外部プロセッサ132を含むことができる。外部プロセッサ132は、注射デバイス102によって送信されたデータを処理するように構成することができる。外部デバイス130は、注射デバイス102から受信され、外部プロセッサ132によって処理されたデータを(たとえばグラフィカルユーザインタフェースを介して)表示するように構成することができる。
【0029】
ニードルアセンブリ115は、ハウジング110に取り付けることができる針113を含む。針113は、内側ニードルキャップ116および外側ニードルキャップ117によって覆うことができ、外側ニードルキャップ117はさらにキャップ118によって覆うことができる。針113が患者の皮膚部分に刺され、次いで注射ボタン120が押されると、投与量窓114に表示された薬剤用量が注射デバイス102から排出されることがある。注射ボタン120が押された後に注射デバイス102の針113が皮膚部分に一定時間留まると、高い割合(たとえば90%を超える)の用量が患者の体内に実際に注射される。薬剤用量の排出は、機械的なクリック音を生成することができ、このクリック音は、投与量ノブ112を使用するときに生成される音とは異なるものにすることができる。
【0030】
注射デバイス102は、薬剤リザーバ106が空になる、または注射デバイス102の有効期限(たとえば初回使用から28日後)に達するまで、数回の注射プロセスに使用することができる。注射デバイス102を初めて使用する前に、プライミング操作を実施して、エネルギー源104を電気部品に結合すること、ならびに/または薬剤リザーバ106および針113から空気を除去することが必要となりうる。たとえば、プライミング操作は、2単位の薬剤を選択し、針113を上に向けた状態で注射デバイス102を保持しながら注射ボタン120を押すことを含むことができる。いくつかの実装形態では、2単位の薬剤を選択すること、または注射ボタン120を押すことによって生成されるインパルスが、機械的手段(たとえば機械的スイッチ)によるエネルギー源104と電子システム105との電気的結合をトリガすることができる。
【0031】
いくつかの実装形態では、電子システム105の電子構成要素は、単一の位置で、または複数の位置で(たとえば、プランジャロッド108内に、またはプランジャロッド108に取り付けられて、およびプランジャヘッド109の空洞に)、ハウジング110内に組み込むことができる。いくつかの実装形態では、電子システム105の1つまたはそれ以上の構成要素をストッパ107内に含めることができる。いくつかの実装形態では、電子システム105の1つまたはそれ以上の構成要素をプランジャヘッド109内に含めることができる。
【0032】
いくつかの実装形態では、エネルギー源104の位置および/または電子システム105の1つまたはそれ以上の電子構成要素の位置は、電子システム105とエネルギー源104との結合とは独立して選択することができる。いくつかの実装形態では、電子システム105の1つもしくはそれ以上の電子構成要素の1つもしくはそれ以上の特性および/またはエネルギー源104の1つもしくはそれ以上の特性を選択して、電子システム105をエネルギー源104と結合するおよび/またはエネルギー源104から結合解除することができる。
【0033】
いくつかの実装形態では、注射デバイス102のハウジング110は、エネルギー源104へのユーザアクセスを提供するために複数のセグメントに分離または分割されるように構成することができ、エネルギー源104の個別の廃棄を可能にする。いくつかの実装形態では、注射デバイス102と組立て予定の薬剤リザーバ106は、挿入されたストッパ107を備えて製造され、流体薬剤で充填され、圧着シールで閉じられる。
【0034】
注射デバイス102との組立て前の薬剤リザーバ106の製造および保管中、エネルギー源104は起動されない(または、たとえばスリープ状態もしくはディープスリープ状態にある)。エネルギー源104を停止状態に保つことによって、薬剤リザーバ106の製造および生じうる長期保管中に、エネルギーのアイドル時漏出が生じることはない。デバイスプライミング(または本明細書で述べる何らかの他のアクション)の後続の工程において、注射デバイス102のエネルギー源104が起動され(またはたとえばスリープ解除され)、電子システム105に電力供給する。いくつかの実装形態では、エネルギー源104を電子システム105に接続して、起動信号の受信時に注射デバイス102の機能の制御を有効にすることができる。いくつかの実装形態では、エネルギー源104は、注射デバイス102および電子システム105の適切な動作を確認するために、組立て中に一時的にスリープ解除されることがある。製造工程としてのエネルギー源104への接続は、電子システム105をウェイクアップし、適切なシステム機能を確認するフィードバック信号を生成することを可能にする。そのようなインプロセス制御を実施した後、エネルギー源104が再び切断されることがあり、または、電子システム105をウェイクアップするためのプライミング工程が実施されるまで、もしくは何らかの他のアクションが発生するまで、エネルギー消費を低減する適切なソフトウェア機能によって電子システム105がスリープモードに設定されることがある。
【0035】
いくつかの実装形態では、センサ127a、127b、128bのうちの1つまたはそれ以上が磁気センサでありうる。たとえば、引き続き図1を参照すると、センサ127bは、磁場を感知し、感知された磁場に対応する信号を提供するように構成された磁気センサでありうる。磁気センサ127bは、エネルギー源104と通信している。したがって、磁気センサ127bは、本明細書で述べるように、エネルギー源104をスリープ解除させる起動信号を提供することができる。たとえば、磁気閾値が満たされる場合(たとえば、感知された磁場強度が閾値磁気値を下回る場合)、磁気センサ127bは、起動信号の生成を引き起こす信号を提供することができる。いくつかの実装形態では、磁気センサ127bは、リードスイッチまたはホール効果センサの一方または両方を含む。
【0036】
例示的実装形態では、注射デバイス102のキャップ118上/内に磁石130を設けることができる。磁石130は、キャップ118が閉位置にあるとき(たとえば、キャップ118が薬剤リザーバ106を大部分覆っているとき)に磁石130が磁気センサ127bに近接するような位置でキャップ118に埋め込まれることがある。キャップ118が閉位置にあるとき、磁石130によって生成される磁場は、磁気センサ127bに起動信号の発出を控えさせるのに十分である。言い換えると、キャップ118が注射デバイス102に被さって閉じられるとき、所定の磁気閾値が満たされる。キャップ118が注射デバイスから取り外されると、磁石130は、磁気センサ127bから離れて移動し、それにより、磁気センサ127bによって感知された磁場が磁気閾値をもはや満たさなくなり、さらに、磁気センサ127bは、エネルギー源104に起動信号を提供する。さらに、エネルギー源104は、(たとえば、そのような起動信号に応答してスリープ解除するようにプログラムされたエネルギー源104に組み込まれた電子機器により)スリープ解除するように指示される。
【0037】
いくつかの実装形態では、磁石130および/または磁気センサ127bは、他の場所に位置することがある。たとえば、磁石130は、注射デバイス102の着脱可能な構成要素が存在する場所に位置することがある。そのような着脱可能な構成要素は、注射デバイス102の初回使用時に取り外されるように構成されることがある。したがって、注射デバイス102の初回使用の前に着脱可能な構成要素が取り外されたときに起動信号を提供することができ、それによって、注射デバイス102が早期に(たとえば使用のためにエネルギー消費が必要になる前に)スリープ解除するのを防止する。いくつかの実装形態では、磁石130は、他の場所のなかでもとりわけ、内側ニードルキャップ116および/または外側ニードルキャップ117に組み込まれることがある。いくつかの実装形態では、磁石は、注射デバイス102の包装内に位置することがある。注射デバイス102が包装から取り出されると、磁気閾値はもはや満たされなくなり、磁気センサ127bは起動信号を提供する。
【0038】
いくつかの実装形態では、注射デバイス102のキャップ118の取外しは、エネルギー源104を、(たとえば磁気センサ127bからの起動信号の受信以外の)他の手段によってスリープ解除することができる。いくつかの実装形態では、静電放電の検出が、エネルギー源104をスリープ解除させることがある。図2は、薬剤注射システム200の別の例を示し、注射デバイス102がキャップ218を含み、キャップ218は、注射デバイス102の別の構成要素との相互作用時に静電放電を引き起こすための構成要素を含む。特に、キャップ218は、内面でキャップ218の開口部の周縁に位置する静電素子202を含む。静電素子202は、センサの1つ、たとえば検出システム103のセンサ127aとインタフェースするように構成される。センサ127aは、電極でよく、または電極を含むことがある。センサ127aは、図1に示されるように、ストッパ107を通して露出されることがある(たとえば、電極127aの表面は、電極127aが静電素子202と接触することができるように露出させることができる)ので、そのような目的に適していることがある。静電素子202は、それが電極127aと擦られたときに静電放電を生成するように構成された金属材料を含むことがある。いくつかの実装形態では、静電素子202は、それが注射デバイス102の別の部分と擦られたときに静電放電を生成するように構成され、電極127aは、そのような静電放電を検出するように構成される。同様に、いくつかの実装形態では、電極127aは、状況に応じてそのような静電放電を生成するように構成された材料を含むことがあり、また、静電放電が検出されたときにエネルギー源104への起動信号の提供を引き起こすための機能を含むこともある。そのような起動信号は、磁気センサ127bに関して上述した起動信号と同様に機能することができる。キャップ218がその閉位置から取り外されると、静電素子202が電極127aと擦れ、静電放電が生成される。次いで、電極127aにより、エネルギー源104aは、スリープ解除するように指示される。
【0039】
いくつかの実装形態では、キャップ118、218の取外しは、他の手段によってエネルギー源104をスリープ解除させることもある。たとえば、キャップ118、218を取り外すために必要とされる力/動き/加速が、エネルギー源104のスリープ解除をトリガすることがある。いくつかの実装形態では、センサの1つ(たとえばセンサ128b)は、1つもしくはそれ以上の加速度計および/または1つもしくはそれ以上のジャイロスコープを含む運動センサ128bでありうる。運動センサ128bは、非常に低い電力モード(たとえばスタンバイモード)で動作するように構成される。運動センサ128bは、キャップ118、218の取外し時に本来的に及ぼされる力を検出するように構成されることがある。たとえば、キャップ118、218が取り外されるとき、触覚的な「クリック」感が生成される。そのようなクリックは、運動センサ128bによって検出することができ、運動センサ128bは、エネルギー源104に起動信号を提供することがある。
【0040】
いくつかの実装形態では、運動センサ128bがエネルギー源104に起動信号を提供するために、運動センサ128bによって検出される動きは、特定のプロファイル(たとえばキャップ取外しプロファイル)と十分に一致しなければならない。そのような要件は、エネルギー源104が、注射デバイス102の輸送中、発送中、および/または単純な動き中に誤ってウェイクアップするのを防止することができる。いくつかの実装形態では、キャップ取外しに関するプロファイルは、(たとえば試験や較正などによって)事前に決定することができる。キャップ取外しによって生成された「クリック」に一致する運動プロファイルを識別することができ、さらに、それに応答してエネルギー源104をスリープ解除させることができる。
【0041】
いくつかの実装形態では、エネルギー源104は、注射デバイス102の特定の特徴的な動きに応答してスリープ解除されることがある。すなわち、ウェイクアップは、患者が初めてペンを使用するときに行う特別な動きによってトリガすることができる。いくつかの例では、そのような動きは、たとえば、注射デバイス102を製造業者の包装から開封すること、注射デバイス102を箱入り包装から取り出すこと、注射デバイス102をプライミングすること、および/または注射デバイス102をダイヤル設定して特定の用量の薬剤を受け入れることを含むことができる。注射デバイス102のそのような動きは、特定の運動プロファイルに対応することができ、注射デバイス102がそのような運動を行うとき、運動センサ128bは、エネルギー源104への起動信号の提供を引き起こすことができる。いくつかの実装形態では、特定の動きは、その動きが、注射デバイス102の意図された起動の前に起こる動きではないように選択される。たとえば、特定の動きは、注射デバイス102が発送または荷降ろし中に誤ってスリープ解除されないように十分に複雑でありうる。
【0042】
いくつかの実装形態では、特定の動きは、注射デバイス102の回転を含むことがある。たとえば、ユーザは、注射デバイスを軸方向に360度、または注射デバイスの長さに沿って360度回転させるように指示されることがある。そのような運動は、注射デバイス102の発送中には行われにくい運動でありうる。運動センサ128bは、そのような運動を検出し、エネルギー源104への起動信号の提供を引き起こすことがある。
【0043】
上述したように、センサ127a、127b、128bは、それらがウェイクアップイベントを検出するために十分に動作できるようにする最小電力を受け取るように構成されることがある。しかし、そのような電力は最小限であり、過度の電力損失を生じない。電力は、ディープスリープ状態にあるエネルギー源104からのものでよいが、いくつかの実装形態では、センサ127a、127b、128bは、別個の電源を有する、またはそれら独自の電源を有することがある。
【0044】
いくつかの実装形態では、運動センサは、キャップ118、218の取外しを検出するために他の場所に位置することがある。たとえば、運動センサは、注射デバイス102のハウジング110やキャップ118、218などに位置することがある。
【0045】
いくつかの実装形態では、センサの1つ(たとえばセンサ127a)は、注射デバイス102から発する特定の特徴的な音を検出するように構成された音響センサ(たとえばマイクロフォン)でありうる。たとえば、プライミングまたはダイヤル設定プロセスによって生成された特定のノイズを音響センサ127aによって検出することができ、それに応答して、音響センサ127aは、エネルギー源104への起動信号の提供を引き起こすことができる。いくつかの実装形態では、注射デバイス102に用量がダイヤル設定されるときに発生する「クリック」音は、音響センサ127aによって検出される特定のシグネチャを有することがある。いくつかの実装形態では、音響センサ127aは、代替として、用量ダイヤル設定またはプライミング中に発生する振動を検出するように構成された振動センサでもよく、振動センサは、一致する振動プロファイルの検出に応答してエネルギー源104への起動信号の提供を引き起こすことがある。いくつかの実装形態では、音響センサ127aおよび/または振動センサは、センサが起動信号の生成を引き起こすのに必要な最小電力を提供するために使用されるMEMSベースの圧電素子でありうる。
【0046】
いくつかの実装形態では、センサの1つ(たとえばセンサ127a)は、フォトダイオード127aなどの光センサでありうる。センサ127aは、露出されることがあるので、フォトダイオード127aに適切でありうる(たとえば、ストッパ107の空隙または窓が、光をフォトダイオード127aに通すことがある)。注射デバイス102の使用前に、注射デバイス102は、キャップ118、218によって覆われている。キャップ118、218は、光がフォトダイオード127aに達するのを妨げる。キャップ118、218が取り外されると、光は通常、フォトダイオード127aに達する。光が閾値を満たしている場合(たとえば、フォトダイオード127aは通常であれば真っ暗であるので、比較的低い閾値)、フォトダイオード127aは、エネルギー源104をそのスリープ状態からスリープ解除させる信号をエネルギー源104に提供することがある。
【0047】
フォトダイオード127aは、光を直接(たとえば空隙または窓を通して)受け取るものとして説明してきたが、いくつかの実装形態ではストッパ107に埋め込まれることがあり、光は、(たとえばゴム製の)ストッパ107を通過できるような波長のものでありうる。言い換えると、光は、キャップ118、218を通過することはできないが、ゴムストッパ107を通過することができるという特性を有することがある。このようにして、キャップ118、218の存在は、エネルギー源104がスリープ解除するのを防止することができるが、キャップ118、218を取り外してストッパ107を光に露出すると、エネルギー源104がスリープ解除されることがある。いくつかの実装形態では、光は、注射デバイス102をスリープ解除させるために特に設計されることがある。たとえば、光は、ゴム透過スペクトル(たとえば赤外線スペクトル)を満たすことがあり、特別なデバイスを使用して、そのような光を注射デバイス102に印加することができる。
【0048】
上で簡単に述べたように、いくつかの実装形態では、注射デバイス102は、エネルギー源104のウェイクアップ機能を支援するように構成された包装を備えることがある。図3は、注射デバイス102と、注射デバイス102を収容するように構成された包装302とを含む流体送達システム300の別の例を示す。包装302は、注射デバイス102が包装302内に(たとえばぴったりと)収まることができるように、注射デバイス102を収容するようなサイズおよび形状の切抜き部分を有することがある。包装302は、ラッピング(たとえば紙やプラスチックなど)を含むことがあり、ラッピングを取り除かないと包装302を開くことができず、注射デバイス102を取り出すことができない。いくつかの実装形態では、包装302および/またはラッピングは、温度変化に耐性のある材料から形成されることがある。たとえば、包装302は、内部の温度を約7℃未満に保っておくことができる。包装302が閉じられ、ラッピングが所定位置にあるとき、注射デバイス102は、7℃未満の温度を保っておくことができる。包装302に十分な断熱材を使用することにより、輸送中およびデバイスの意図された初回使用の前にデバイスが予期せず7℃よりも高い温度に上昇するのを防ぐことができる。
【0049】
包装302は、包装302内の温度を感知し、注射デバイス102が7℃未満の温度に維持されることを保証するように構成された温度センサ312を含むことがある。温度が上昇して7℃を超える場合(たとえば、包装302が開かれ、注射デバイス102が包装302から取り出されたとき)、注射デバイス102はスリープ解除するように構成されることがある(たとえば、温度センサ312は、エネルギー源104への起動信号の提供を引き起こし、それにより注射デバイス102をそのスリープ状態からスリープ解除させるように構成される)。いくつかの実装形態では、温度センサ302は、起動信号を生成するように温度センサ302が指示することを可能にするために注射デバイス102と無線通信するように構成されることがある。いくつかの実装形態では、温度センサ302は、注射デバイス102自体に(たとえば、センサ127a、127b、128bのうちの1つとして)組み込まれることがある。このようにすると、温度センサ302は、エネルギー源104に信号を放出する必要がなく、センサ127a、127b、128bが、(たとえば有線接続を介して)直接の信号を単に提供して、エネルギー源に起動信号を受信させることができる。
【0050】
注射デバイス102をスリープ解除させるための様々な可能な技法を述べてきたが、他の技法も可能である。いくつかの実装形態では、注射デバイスは、注射デバイスを直立姿勢で取り付けることができるように構成されたドッキングステーションを備えていることがある。注射デバイス102を初めて取付けステーションに配置することで、エネルギー源104への起動信号の提供を引き起こすことができる。いくつかの実装形態では、ドッキングステーションは、注射デバイス102の検出システム103および/または電子システム105、ならびに家庭内のWiFiネットワークへの接続機能を備えていることもある。いくつかの実装形態では、容量性手段、NFC、磁気スイッチ、または他の技法を実装してエネルギー源104をスリープ解除させることができ、そのような対話は、2つのデバイスが対話することを許可されているので容易に実装することができる。
【0051】
いくつかの実装形態では、プルタブがエネルギー源104の近くに位置することがあり、プルタブが所定位置にある状態では、注射デバイス102を通って電力が十分に流れることが防止される。初回使用の前に、ユーザはプルタブを取り除き、それにより注射デバイスをそのスリープ状態からスリープ解除させ、完全な機能を実現することができる。
【0052】
いくつかの実装形態では、手動スイッチが注射デバイス102に提供されることがある。初回使用の前に、ユーザはスイッチを押す/フリップすることができ、それにより、起動信号がエネルギー源104に提供され、デバイスをそのスリープ状態からスリープ解除させる。いくつかの実装形態では、スイッチは、タッチボタン(たとえば静電容量式タッチボタン)でありうる。
【0053】
いくつかの実装形態では、別個のデバイス(たとえば図1の外部デバイス130)を使用して、エネルギー源104をそのスリープ状態からスリープ解除させることができる。たとえば、外部デバイス130は、患者が対話して注射デバイス102をスリープ解除させることができるスマートフォンまたはタブレットでよい。外部デバイスは、アンテナ128cを介して(たとえば、WiFi、NFC、RFIDなどの短距離無線プロトコルを介して)注射デバイスと通信することができる。特に、外部デバイス130は、注射デバイス102との接続を形成することがあり、ユーザは、外部デバイス130と対話して、注射デバイスをスリープ解除させるように外部デバイス130に指示することができ、外部デバイス130は、起動信号を注射デバイス102に提供することができ、次いでユーザは、注射デバイスを初回使用することができる。
【0054】
図4は、図1~3を参照して述べるデバイスおよびシステムによって実行することができる例示的なプロセス400を示すフローチャートである。本明細書で述べる技法の1つまたはそれ以上によって、インスタンス化信号が生成される(402)。一例として磁気的な実装形態を使用すると、磁石を備えるキャップが取り外され、磁気センサによって感知される磁場が所定の閾値を下回る。光誘起ウェイクアップの例を使用すると、キャップが注射デバイスから取り外されることがあり、フォトダイオードが光に露出されることがある。静電放電の例を使用すると、キャップを注射デバイスから取り外すことができ、電極が、(たとえば電極によって一部引き起こされる)静電放電を感知することができる。運動センサキャップ取外し検出の例を使用すると、キャップが注射デバイスから取り外されたというシグネチャが、キャップ取外しを示す所定のシグネチャと一致することがある。
【0055】
1つまたはそれ以上のセンサを含む検出システムによって、インスタンス化信号が検出される(404)。いくつかの実装形態では、インスタンス化信号の検出は、2つのセンサの測定値の差を決定することを含むことができる。いくつかの実装形態では、組み合わせた複数のセンサによる複数の測定値が検出されることがある。
【0056】
インスタンス化信号が1つまたはそれ以上の要件を満たしているかどうかが判断される(406)。いくつかの実装形態では、インスタンス化信号(たとえば1つまたはそれ以上のセンサからの測定値)が閾値と比較され、閾値は満たされることも満たされないこともある。いくつかの実装形態では、シグネチャ(たとえば、運動センサまたは振動センサからの読取り)が、所定のモーションシグネチャまたは音/振動シグネチャと比較される。測定値が起動閾値を満たすこと、または特定のシグネチャに一致することを比較が示す場合、プロセス400は、次の工程(408)に進む。要件が満たされない場合、プロセス400は、インスタンス化信号を検出する工程(404)に戻り、プロセス400は、1つまたはそれ以上のセンサからの別の信号の生成を待機する。
【0057】
信号によって要件が満たされていることを比較が示す場合、検出システムによって起動信号が生成されて、電子システムの起動を引き起こし、注射デバイスが電力供給される(408)(またはたとえばスリープもしくはディープスリープ状態からスリープ解除される)。いくつかの実装形態では、エネルギー源は、機構(たとえば歯車機構)によって電子構成要素と結合することができる。いくつかの実装形態では、機構は、エネルギー源が電子構成要素から電気的にデカップリングされる1つの位置から、エネルギー源が電子構成要素と電気的に結合される第2の位置にエネルギー源をシフトするように構成された1つまたはそれ以上の構成要素(たとえば、図1~3を参照して述べたプランジャロッド108、プランジャヘッド109)を含むことができる。いくつかの実装形態では、機構は、エネルギー源を電子構成要素に電気的に結合するために起動されるように構成されたスイッチ(たとえば、電子スイッチ、リレー、ソフトウェアスイッチなど)を含むことができる。
【0058】
エネルギー源と電子構成要素との結合に応答して、場合により電気信号が生成される(410)。電気信号は、注射デバイスの動作を支援および/もしくは実施する(たとえば薬剤の投与を制御する)ため、ならびに/または注射デバイスに関連する1つもしくはそれ以上のパラメータ(たとえば薬剤の量や温度など)を測定するために生成することができる。電気信号は、注射デバイスデータの生成を含むことができる。注射デバイスデータは、注射デバイスに関する一意の識別子、投与された薬剤の量、カートリッジおよび/または注射デバイス内の薬剤の量、薬剤温度、エネルギー源を電子構成要素に結合するタイムスタンプ、場所、および/または注射デバイスに関する状況特有のデータを含むことができる。そのような工程は、すぐに行う必要はないという意味で任意選択であるが、後の時点で、起動後に行われることがある。
【0059】
図5は、例示的なコンピューティングシステム500の概略図を示す。システム500は、本明細書で述べる実装形態に関連して述べる動作に使用することができる。たとえば、システム500は、本明細書で論じるサーバコンポーネントのいずれかまたはすべてに含まれることがある。システム500は、プロセッサ510、メモリ520、記憶デバイス530、および入出力デバイス540を含む。各構成要素510、520、530、および540は、システムバス550を使用して相互接続される。プロセッサ510は、システム500内で実行するために命令を処理することができる。一実装形態では、プロセッサ510はシングルスレッドプロセッサである。別の実装形態では、プロセッサ510はマルチスレッドプロセッサである。プロセッサ510は、メモリ520または記憶デバイス530に記憶された命令を処理して、ユーザインタフェースに関するグラフィック情報を入出力デバイス540に表示することができる。
【0060】
メモリ520は、システム500内に情報を記憶する。一実装形態では、メモリ520はコンピュータ可読媒体である。一実装形態では、メモリ520は揮発性メモリユニットである。別の実装形態では、メモリ520は不揮発性メモリユニットである。記憶デバイス530は、システム500に大容量記憶を提供することができる。一実装形態では、記憶デバイス530はコンピュータ可読媒体である。様々な異なる実装形態では、記憶デバイス530は、フロッピーディスクデバイス、ハードディスクデバイス、光ディスクデバイス、またはテープデバイスでありうる。入出力デバイス540は、システム500に関する入出力動作を提供する。一実装形態では、入出力デバイス540は、キーボードおよび/またはポインティングデバイスを含む。別の実装形態では、入出力デバイス540は、図1~5を参照して述べたように収集、記憶、および照会された項目に関連するデータにユーザがアクセスできるようにするグラフィカルユーザインタフェースを表示するための表示ユニットを含む。
【0061】
上述した機能は、デジタル電子回路、コンピュータのハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、またはそれらの組合せで実装することができる。装置は、プログラム可能なプロセッサによって実行するために、情報キャリア、たとえば機械可読記憶デバイスに有形で具現化されたコンピュータプログラム製品に実装することができる;方法工程は、プログラム可能なプロセッサが命令のプログラムを実行して、入力データを操作して出力を生成することにより上述した実装形態の機能を実施することによって実施することができる。上述した機能は、有利には、データ記憶システム、少なくとも1つの入力デバイス、および少なくとも1つの出力デバイスからデータおよび命令を受信するため、ならびにそれらにデータおよび命令を送信するために結合された少なくとも1つのプログラム可能なプロセッサを含むプログラム可能なシステム上で実行可能な1つまたはそれ以上のコンピュータプログラムに実装することができる。コンピュータプログラムは、特定のアクティビティを実施するため、または特定の結果をもたらすために、コンピュータで直接または間接的に使用することができる1組の命令である。コンピュータプログラムは、コンパイル言語または解釈言語を含む任意の形態のプログラミング言語で記述することができ、スタンドアロンプログラムとして、またはモジュール、コンポーネント、サブルーチン、もしくはコンピューティング環境での使用に適した他のユニットとしてなど任意の形態で展開することができる。
【0062】
命令プログラムの実行に適したプロセッサは、例として、汎用マイクロプロセッサと専用マイクロプロセッサとの両方、および任意の種類のコンピュータの単一のプロセッサまたは複数のプロセッサのうちの1つを含む。一般に、プロセッサは、読み出し専用メモリもしくはランダムアクセスメモリ、またはそれら両方から命令およびデータを受信する。コンピュータの重要な要素は、命令を実行するためのプロセッサと、命令およびデータを記憶するための1つまたはそれ以上のメモリである。一般に、コンピュータは、データファイルを記憶するための1つもしくはそれ以上の大容量記憶デバイスも含む、または大容量記憶デバイスと通信するように動作可能に結合される;そのようなデバイスには、内蔵ハードディスクやリムーバブルディスクなどの磁気ディスク;光磁気ディスク;および光ディスクが含まれる。コンピュータプログラム命令およびデータを有形に具現化するのに適した記憶デバイスには、すべての形態の不揮発性メモリが含まれ、例として、EPROM、EEPROM、およびフラッシュメモリデバイスなどの半導体メモリデバイス;内蔵ハードディスクやリムーバブルディスクなどの磁気ディスク;光磁気ディスク;ならびにCD-ROMおよびDVD-ROMディスクが挙げられる。プロセッサおよびメモリは、ASIC(特定用途向け集積回路)によって補完する、またはASICに組み込むことができる。
【0063】
ユーザとの対話を可能にするために、ユーザに情報を表示するためのCRT(陰極線管)またはLCD(液晶ディスプレイ)モニタなどの表示デバイスと、ユーザがコンピュータに入力を提供できるようにするキーボードおよびポインティングデバイス、たとえばマウスやトラックボールとを備えたコンピュータに機能を実装することができる。
【0064】
機能は、データサーバなどのバックエンドコンポーネント、アプリケーションサーバやインターネットサーバなどのミドルウェアコンポーネント、もしくはグラフィカルユーザインタフェースもしくはインターネットブラウザを備えたクライアントコンピュータなどのフロントエンドコンポーネント、またはそれらの任意の組合せを含むコンピュータシステムに実装することができる。システムのコンポーネントは、通信ネットワークなどの任意のデジタルデータ通信形式または媒体によって接続することができる。通信ネットワークの例には、たとえば、LAN、WAN、ならびにインターネットを形成するコンピュータおよびネットワークが含まれる。
【0065】
コンピュータシステムは、クライアントとサーバとを含むことができる。クライアントとサーバとは通常、互いに遠隔にあり、典型的には上述したようなものなどネットワークを介して対話する。クライアントとサーバとの関係は、コンピュータプログラムがそれぞれのコンピュータで実行され、互いにクライアント-サーバ関係を有することによって生じる。
【0066】
さらに、図に示されている論理フローは、望ましい結果を実現するために、示されている特定の順番または順序を必要としない。さらに、他の工程が提供されることもあり、または上述したフローから工程がなくされることもあり、上述したシステムに他のコンポーネントが追加される、もしくはシステムからコンポーネントが除去されることもある。したがって、他の実装形態は、以下の特許請求の範囲内にある。
【0067】
「薬物」または「薬剤」という用語は、本明細書では1つまたはそれ以上の薬学的に活性な化合物を記述するために使用される。以下に記載されるように、薬物または薬剤は、1つもしくはそれ以上の疾患の治療のために各種タイプの製剤中に少なくとも1つの低分子もしくは高分子またはそれらの組合せを含みうる。例示的な薬学的に活性な化合物としては、低分子、ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(たとえば、ホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素)、炭水化物および多糖、ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(ネイキッドおよびcDNAを含む)、RNA、アンチセンス核酸たとえばアンチセンスDNAおよびRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、ならびにオリゴヌクレオチドが挙げられうる。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに取り込み可能である。これらの薬物の1つまたはそれ以上の混合物も企図される。
【0068】
「薬物送達デバイス」という用語は、ある体積の薬物を人体または動物体に投薬するように構成された任意のタイプのデバイスまたはシステムを含むものとする。体積は通常、約0.5ml~約10mlの範囲でありうる。限定はしないが、薬物送達デバイスは、シリンジ、針安全システム、ペン型注射器、自動注射器、大容量デバイス(LVD)、ポンプ、かん流システム、または薬物の皮下、筋肉内、もしくは血管内送達のために構成された他のデバイスを含むことがある。そのようなデバイスはしばしば針を含み、針は小ゲージ針(たとえば、約24ゲージよりも大きく、27、29、または31ゲージを含む)を含むことができる。
【0069】
特定の薬剤と組み合わせて、本明細書で述べるデバイスは、必要なパラメータ内で、たとえば、特定の期間内(たとえば注射器の場合は約3~約20秒、LVDの場合は約5分~約60分)、不快感レベルが低いもしくは最小、または人的要因、貯蔵寿命、有効期限、生体適合性、環境への配慮などに関連する特定の条件内で動作するようにカスタマイズすることもできる。そのような変動は、たとえば粘度が約3cPから約50cPの範囲の薬物など、様々な要因により生じる可能性がある。
【0070】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスでの使用に適合化された一次パッケージまたは「薬物容器」に包含可能である。薬物容器は、たとえば、1つもしくはそれ以上の薬学的に活性な化合物の収納(たとえば、短期または長期の収納)に好適なチャンバを提供するように構成されたカートリッジ、シリンジ、リザーバ、または他のベッセルでありうる。たとえば、いくつかの場合には、チャンバは、少なくとも1日間(たとえば、1日間~少なくとも30日間)にわたり薬物を収納するように設計可能である。いくつかの場合には、チャンバは、約1カ月~約2年間にわたり薬物を収納するように設計可能である。収納は、室温(たとえば、約20℃)または冷蔵温度(たとえば、約-3℃~約3℃)で行うことが可能である。いくつかの場合には、薬物容器は、薬物製剤の2つ以上の成分(たとえば、薬物と希釈剤、または2つの異なるタイプの薬物)を各チャンバに1つずつ個別に収納するように構成されたデュアルチャンバカートリッジでありうるか、またはそれを含みうる。かかる場合には、デュアルチャンバカートリッジの2つのチャンバは、人体もしくは動物体への投薬前および/または投薬中に薬物もしくは薬剤の2つ以上の成分間の混合が可能になるように構成可能である。たとえば、2つのチャンバは、互いに流体連通するように(たとえば、2つのチャンバ間の導管を介して)かつ所望により投薬前にユーザによる2つの成分の混合が可能になるように構成可能である。代替的または追加的に、2つのチャンバは、人体または動物体への成分の投薬時に混合が可能になるように構成可能である。
【0071】
本発明に記載の薬物送達デバイスおよび薬物は、多くの異なるタイプの障害の治療および/または予防のために使用可能である。例示的な障害としては、たとえば、糖尿病または糖尿病に伴う合併症たとえば糖尿病性網膜症、血栓塞栓障害たとえば深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症が挙げられる。さらなる例示的な障害は、急性冠症候群(ACS)、アンギナ、心筋梗塞、癌、黄斑変性、炎症、枯草熱、アテローム硬化症および/または関節リウマチである。
【0072】
糖尿病または糖尿病に伴う合併症の治療および/または予防のための例示的な薬物としては、インスリン、たとえば、ヒトインスリン、もしくはヒトインスリンアナログもしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1アナログもしくはGLP-1レセプターアゴニスト、もしくはそのアナログもしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、もしくはそれらの薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物、またはそれらのいずれかの混合物が挙げられる。本明細書で用いられる場合、「誘導体」という用語は、元の物質と実質的に同様の機能性または活性(たとえば、治療効果)を有するように、構造的に十分同様である任意の物質を指す。
【0073】
例示的なインスリンアナログは、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3)、Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28)、Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;位置B28のプロリンがAsp、Lys、Leu、ValまたはAlaに置き換えられたうえに位置B29のLysがProに置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28-B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0074】
例示的なインスリン誘導体は、たとえば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(N-リトコリル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリンおよびB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。例示的なGLP-1、GLP-1アナログおよびGLP-1レセプターアゴニストは、たとえば、リキシセナチド/AVE0010/ZP10/リキスミア、エキセナチド/エキセンジン-4/バイエッタ/ビデュリオン/ITCA650/AC-2993(ヒラモンスターの唾液腺により産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド/ビクトーザ、セマグルチド、タスポグルチド、シンクリア/アルビグルチド、デュラグルチド、rエキセンジン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド/HM-11260C、CM-3、GLP-1エリゲン、ORMD-0901、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン、ビアドール-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、TT-401、BHM-034、MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、エキセナチド-XTENおよびグルカゴン-Xtenである。
【0075】
例示的なオリゴヌクレオチドは、たとえば、家族性高コレステロール血症の治療のためのコレステロール低下アンチセンス治療剤ミポメルセン/キナムロである。
【0076】
例示的なDPP4阻害剤は、ビダグリプチン、シタグリプチン、デナグリプチン、サキサグリプチン、ベルベリンである。
【0077】
例示的なホルモンとしては、脳下垂体ホルモンもしくは視床下部ホルモンまたはレギュラトリー活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニスト、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(Somatropine)(ソマトロピン(Somatropin))、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、リュープロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンが挙げられる。
【0078】
例示的な多糖としては、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリンもしくは超低分子量ヘパリンもしくはそれらの誘導体、もしくは硫酸化多糖たとえばポリ硫酸化形の上述した多糖、および/またはそれらの薬学的に許容可能な塩が挙げられる。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容可能な塩の例は、エノキサパリンナトリウムである。ヒアルロン酸誘導体の例は、ハイランG-F20/シンビスク、ヒアルロン酸ナトリウムである。
【0079】
本明細書で用いられる「抗体」という用語は、イムノグロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。イムノグロブリン分子の抗原結合部分の例としては、抗原への結合能を保持するF(ab)およびF(ab’)2フラグメントが挙げられる。抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、組換え抗体、キメラ抗体、脱免疫化もしくはヒト化抗体、完全ヒト抗体、非ヒト(たとえばネズミ)抗体、または一本鎖抗体でありうる。いくつかの実施形態では、抗体は、エフェクター機能を有するとともに補体を固定可能である。いくつかの実施形態では、抗体は、Fcレセプターへの結合能が低減されているか、または結合能がない。たとえば、抗体は、Fcレセプターへの結合を支援しない、たとえば、Fcレセプター結合領域の突然変異もしくは欠失を有するアイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは突然変異体でありうる。
【0080】
「フラグメント」または「抗体フラグメント」という用語は、完全長抗体ポリペプチドを含まないが依然として抗原に結合可能な完全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を含む抗体ポリペプチド分子由来のポリペプチド(たとえば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)を指す。抗体フラグメントは、完全長抗体ポリペプチドの切断部分を含みうるが、この用語は、かかる切断フラグメントに限定されるものではない。本開示に有用な抗体フラグメントとしては、たとえば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、線状抗体、単一特異的または多重特異的な抗体フラグメント、たとえば、二重特異的、三重特異的、および多重特異的抗体(たとえば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)、ミニボディ、キレート化組換え抗体、トリボディまたはビボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュール免疫医薬(SMIP)、結合ドメインイムノグロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体が挙げられる。抗原結合抗体フラグメントの追加の例は当技術分野で公知である。
【0081】
「相補性決定領域」または「CDR」という用語は、特異的抗原認識を媒介する役割を主に担う、重鎖および軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。「フレームワーク領域」という用語は、CDR配列でないかつ抗原結合が可能になるようにCDR配列の適正配置を維持する役割を主に担う、重鎖および軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、典型的には抗原結合に直接関与しないが、当技術分野で公知のように、ある特定の抗体のフレームワーク領域内のある特定の残基は、抗原結合に直接関与しうるか、またはCDR内の1つもしくはそれ以上のアミノ酸と抗原との相互作用能に影響を及ぼしうる。
【0082】
例示的な抗体は、抗PCSK-9 mAb(たとえば、アリロクマブ)、抗IL-6 mAb(たとえば、サリルマブ)、および抗IL-4 mAb(たとえば、デュピルマブ)である。
【0083】
本明細書に記載の化合物は、(a)化合物またはその薬学的に許容可能な塩、および(b)薬学的に許容可能な担体を含む医薬製剤に使用可能である。化合物は、1つもしくはそれ以上の他の活性医薬成分を含む医薬製剤、または本化合物もしくはそれらの薬学的に許容可能な塩が唯一の活性成分である医薬製剤にも使用可能である。したがって、本開示の医薬製剤は、本明細書に記載の化合物と薬学的に許容可能な担体を混合することによって作られる任意の製剤を包含する。
【0084】
本明細書に記載のいずれの薬物の薬学的に許容可能な塩も、薬物送達デバイスで使用することが企図される。薬学的に許容可能な塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩は、たとえば、HClまたはHBr塩である。塩基性塩は、たとえば、アルカリもしくはアルカリ土類金属、たとえば、Na+、もしくはK+、またはCa2+、またはアンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)、(式中、R1からR4は互いに独立して:水素、場合により置換されたC1~C6-アルキル基、場合により置換されたC2~C6-アルケニル基、場合により置換されたC6~C10-アリール基、または場合により置換されたC6~C10-ヘテロアリール基を意味する)から選択されるカチオンを有する塩である。薬学的に許容可能な塩のさらなる例は当業者には公知である。
【0085】
薬学的に許容可能な溶媒和物は、たとえば、水和物またはメタノラート(methanolate)もしくはエタノラート(ethanolate)などのアルカノラート(alkanolate)である。
【0086】
本開示の多くの実装形態を述べてきた。それにもかかわらず、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、様々な修正を施すことができることが理解されよう。したがって、他の実装形態は、以下の特許請求の範囲内にある。
図1
図2
図3
図4
図5