(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】ケイ素化合物、及びそのケイ素化合物を使用する膜を堆積するための方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/316 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
H01L21/316 X
(21)【出願番号】P 2022509119
(86)(22)【出願日】2020-08-14
(86)【国際出願番号】 US2020046318
(87)【国際公開番号】W WO2021034641
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2023-05-26
(32)【優先日】2019-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517114182
【氏名又は名称】バーサム マテリアルズ ユーエス,リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【氏名又は名称】岩田 純
(72)【発明者】
【氏名】レイモンド ニコラス バーティス
(72)【発明者】
【氏名】スレシュ ケー. ラジャラマン
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム ロバート エントレー
(72)【発明者】
【氏名】ジェニファー リン アン アチタイル
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ゴードン リッジウェイ
【審査官】原島 啓一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-274052(JP,A)
【文献】特開2009-194037(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/316
H01L 21/205
H01L 21/31
H01L 21/312-21/314
H01L 21/318-21/32
H01L 21/365
H01L 21/469-21/475
H01L 21/86
C23C 16/00-16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体膜を製造するための化学気相堆積方法であって、
基材を反応チャンバー中に提供する工程;
ガス状の試剤を前記反応チャンバー中に導入する工程であって、前記ガス状の試剤が、
R
nH
4-nSiを含み、式中、Rが直鎖、分岐鎖又は環状のC
2~C
10アルキルからなる群から選択され、nが2~3であるケイ素前駆体と、
少なくとも1つの酸素源と
を含
み、100ppm以下のハライドイオン又は水を有する、工程;及び
前記反応チャンバー中の前記ガス状の試剤にエネルギーを適用して、前記ガス状の試剤の反応を誘起して、それによって膜を前記基材に堆積するエネルギー適用工程
を含み、前記膜が約2.5~3.3の誘電率を有する、方法。
【請求項2】
前記ケイ素前駆体が、トリエチルシラン、ジエチルシラン、トリ-n-プロピルシラン、ジ-n-プロピルシラン、エチルジ-n-プロピルシラン、ジエチル-n-プロピルシラン、ジ-n-プロピルシラン、ジ-n-ブチルシラン、トリ-n-ブチルシラン、トリ-イソ-プロピルシラン、ジエチルシクロペンチルシラン、ジエチルシクロヘキシルシランからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
堆積方法が、プラズマ強化化学気相堆積方法である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記酸素源が、O
2、N
2O、NO、NO
2、CO
2、水、H
2O
2及びオゾンからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記エネルギー適用工程の間に、He、Ar、N
2、Kr、Xe、NH
3、H
2、CO
2又はCOからなる群から選択される少なくとも1つのガスが、前記反応チャンバー中で前記ガス状の試剤と組み合わせられる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
堆積された膜にさらなるエネルギーを適用する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記さらなるエネルギーが、熱処理、紫外光(UV)処理、電子ビーム処理及びガンマ照射処理からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記さらなるエネルギーがUV処理及び熱処理を含み、前記UV処理が、前記熱処理の少なくとも一部の間に行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記膜が、組成Si
vO
wC
xH
yF
zを含み、式中、v+w+x+y+z=100%であり、vが10~35at%であり、wが10~65at%であり、xが5~40at%であり、yが10~50at%であり、zが0~15at%である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
化学気相堆積プロセスによって誘電体膜を製造するためのガス状の試剤であって、R
nH
4-nSiを含み、式中、Rが直鎖、分岐鎖又は環状のC
2~C
10アルキルからなる群から選択され、nが2~3であるケイ素前駆体を含み、100ppm以下のハライドイオン又は水を有する、ガス状の試剤。
【請求項11】
1ppm以下のハライドイオン又は水を有する、請求項10に記載のガス状の試剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年8月16日に提出された米国仮出願第62/888019号に対する優先権の利益を主張するものであり、その米国仮出願は、参照によって、その全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
ヒドリドアルキルシラン化合物を使用する、誘電体膜の形成のための組成物及び方法が本明細書において説明される。より具体的には、低誘電率(「低k」膜又は約3.2以下の誘電率を有する膜)の膜を形成するための組成物及び方法が本明細書において説明され、膜を堆積するのに使用される方法は、化学気相堆積(CVD)方法である。本明細書において説明される組成物及び方法によって製造される低誘電性膜は、例えばエレクトロニクス装置における絶縁層として使用することができる。
【0003】
エレクトロニクス産業は、集積回路(IC)及び関連するエレクトロニクス装置の回路と構成要素との間の絶縁層として、誘電体材料を利用する。マイクロエレクトロニクス装置(例えばコンピュータチップ)の速度及びメモリ記憶容量を向上するために、配線の寸法は小さくされている。配線の寸法が小さくなるにつれて、層間誘電体(ILD)についての絶縁要求は、より非常に厳しくなる。間隔を縮小するには、RC時定数(Rは導電性配線の抵抗であり、Cは絶縁性誘電体中間層のキャパシタンスである)を最小化するための、より低い誘電率を必要とする。キャパシタンス(C)は、間隔に反比例し、層間誘電体(ILD)の誘電率(k)に比例する。従来の、SiH4又はTEOS(Si(OCH2CH3)4、テトラエチルオルトシリケート)と、O2とから製造されるシリカ(SiO2)CVD誘電体膜は、4.0超の誘電率kを有する。より低い誘電率を有するシリカベースのCVD膜を製造するために産業が試みてきた幾つかの手法が存在し、絶縁性酸化ケイ素膜の、有機基によるドープが最も成功していて、約2.7~約3.5の誘電率をもたらす。典型的には、この有機シリカガラスは、緻密膜(密度~1.5g/cm3)として、有機ケイ素前駆体、例えばメシチレン又はシロキサンと、酸化剤、例えばO2又はN2Oとから堆積される。本明細書において、有機ケイ素ガラスは、OSGといわれる。OSGの炭素含有量が増加するにつれて、膜の機械強度、例えば膜の硬度(H)及び弾性率(EM)は、誘電率が減少するにつれて急速に低下する傾向がある。
【0004】
本産業において認識されている難点は、典型的には、より低い誘電率を有する膜が、より低い機械強度を有し、このことは、狭いピッチの膜におけるさらなる欠陥、例えば層間剥離、座屈、例えば低下した機械特性を有する誘電体膜に埋め込まれた銅から製造された導電性配線について観察される増加したエレクトロマイグレーション、をもたらす。このような欠陥は、誘電体の早期の破壊、又は早期の装置の不具合を引き起こす導電性銅配線のボイド形成、を引き起こす場合がある。さらに、OSG膜における炭素欠乏は、以下の問題:膜の誘電率の増加、湿式洗浄工程の間の膜のエッチング及び形状の曲がり、疎水性の喪失に起因する膜中への水分吸着、パターンエッチングの後で湿式洗浄工程の間の微細な特徴のパターン崩壊、並びに/又は次の層、例えば、以下に限定するものではないが、銅拡散バリア、例えばTa/TaN若しくは高度のCo若しくはMnNバリア層を堆積する際の集積の問題、のうち1つ又は複数を引き起こす場合がある。
【0005】
これらの問題のうち1つ又は複数に対するあり得る解決策は、増加した炭素含有量を有するが、機械強度を維持しているOSG膜を使用することである。残念ながら、典型的には、増加したSi-Me含有量は、低下した機械特性をもたらし、従って、より多くのSi-Meを有する膜は、集積のために重要である機械強度に対して、負に影響を与える。
【0006】
提案された1つの解決策は、一般式Rx(RO)3-xSi(CH2)ySiRz(OR)3-z(式中、x=0~3、y=1又は2、z=0~3)のエチレン又はメチレン架橋アルコキシシランを使用することである。架橋された種の使用は、架橋酸素を架橋炭素鎖で置換することによって、網目構造連結性が同じままであるため、機械特性に対する負の影響を回避すると考えられる。このことは、架橋酸素を末端メチル基で置換することが、網目構造連結性を低下させることによって機械強度を低下させるという考えに起因する。この手法において、酸素原子を1~2個の炭素原子で置換して、機械強度を低下させることなく、Cの原子重量パーセント(%)を増加させることができる。しかし、一般に、これらの架橋前駆体は、2つのケイ素基を有することによる増加した分子量に起因する非常に高い沸点を有する。上昇した沸点は、化学前駆体を、気相輸送ライン又はプロセスポンプ排出において凝結させずに、ガス相試剤として反応チャンバー中に輸送することを困難にすることによって、製造プロセスに対して負に影響を与える場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、当分野において、堆積に際して増加した炭素含有量を有する膜を提供する、さらに上記の欠点を有しない誘電体前駆体のための要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書において説明される方法及び組成物は、1つ又は複数の上記の要求を満たす。本明細書において説明される方法及び組成物は、ヒドリドアルキルシラン、例えばトリエチルシラン又はトリ-n-プロピルシランを、堆積されたときに低k層間誘電体を提供するのに使用することができるか、又は続いて熱、プラズマ若しくはUVエネルギー源によって処理されて膜の特性を変化させて、例えば化学架橋を提供して、機械強度を向上することができるケイ素前駆体として使用する。さらに、1つ又は複数のケイ素前駆体として、本明細書において説明されるケイ素化合物を使用して堆積される膜は、比較的多量の炭素を含む。加えて、本明細書において説明される1つ又は複数のケイ素化合物は、本来2つのケイ素基を有する、より高い分子量(mw)及びより高い沸点を有する他の先行技術のケイ素前駆体、例えば架橋前駆体(例えばアルコキシシラン前駆体)に対して、より低い分子量(mw)を有し、それによって、本明細書において説明される、250℃以下、より好ましくは200℃以下の沸点を有するケイ素前駆体を、プロセスに、例えば大量製造プロセスに、より利用しやすくする。
【0009】
単一の前駆体ベースの誘電体膜であって、式SivOwCxHyFzによって表され、式中、v+w+x+y+z=100%であり、vが10~35at%であり、wが10~65at%であり、xが5~45at%であり、yが10~50at%であり、zが0~15at%である材料を含み、0~30%の空孔率を有するポア、2.5~3.2の誘電率並びに1.0~7.0ギガパスカル(GPaの硬度及び4.0~40.0GPaの弾性率などの機械特性、を有する膜が、本明細書において説明される。特定の実施態様において、膜は、X線光電子分光法(XPS)によって測定した場合に、より高い炭素含有量(10~40%)を含み、XPS深さプロファイルによって決定した炭素含有量を分析することによって測定した場合に、例えばO2又はNH3プラズマに暴露されたときに、減少した炭素除去の深さを示す。
【0010】
1つの態様において、誘電体膜を製造するための化学気相堆積方法であって、基材を反応器中に提供する工程;ガス状の試剤を反応チャンバー中に導入する工程であって、ガス状の試剤が、少なくとも1つの酸素源と、式RnH4-nSiを有し、式中、それぞれのRが直鎖、分岐鎖又は環状のC2~C10アルキルからなる群から独立に選択され、nが2~3であるヒドリドアルキルケイ素化合物を含むケイ素前駆体とを含む工程;及び反応チャンバー中のガス状の試剤にエネルギーを適用して、ガス状の試剤の反応を誘起して、膜を基材上に堆積するエネルギー適用工程、を含む方法が提供される。堆積されたままの膜は、さらなる処理、例えば熱アニール、プラズマ暴露又はUV硬化を伴ってか、又は伴わずに使用することができる。
【0011】
別の態様において、低k誘電体膜を製造するための化学気相堆積又はプラズマ強化化学気相堆積方法であって、基材を反応チャンバー中に提供する工程;ガス状の試剤を反応チャンバー中に導入する工程であって、ガス状の試剤が、少なくとも1つの酸素源と、式RnH4-nSiを有し、式中、それぞれのRが直鎖、分岐鎖又は環状のC2~C10アルキルからなる群から独立に選択され、nが2~3であるヒドリドアルキルケイ素化合物とを含む工程;及び反応チャンバー中のガス状の試剤にエネルギーを適用して、ガス状の試剤の反応を誘起して、膜を基材上に堆積する工程、を含む方法が提供される。任意選択で、方法は、堆積された膜にエネルギーを適用するさらなる工程であって、さらなるエネルギーが、熱アニール、プラズマ暴露及びUV硬化からなる群から選択され、さらなるエネルギーが、化学結合を変えて、それによって膜の機械特性を向上するさらなる工程、を含む。本明細書において開示される方法によって堆積されるケイ素含有膜は、3.3未満の誘電率を有する。特定の実施態様において、ケイ素前駆体は、硬化添加剤をさらに含む。
【発明を実施するための形態】
【0012】
誘電体膜を製造するための化学気相堆積方法であって、基材を反応チャンバー中に提供する工程;ガス状の試剤を反応チャンバー中に導入する工程であって、ガス状の試剤が、式RnH4-nSiを有し、式中、それぞれのRが直鎖、分岐鎖又は環状のC2~C10アルキルからなる群から独立に選択され、nが2~3であるヒドリドアルキルケイ素化合物を含むケイ素前駆体と、少なくとも1つの酸素源とを含む工程;及び反応チャンバー中のガス状の試剤にエネルギーを適用して、ガス状の試剤の反応を誘起して、膜を基材上に堆積する工程、を含む方法が、本明細書において説明される。膜は、堆積されたまま使用することができるか、又は続いて、熱エネルギー(アニール)、プラズマ暴露及びUV硬化からなる群から選択されるさらなるエネルギーによって処理して、膜の機械強度を向上させること及び3.3未満の誘電率をもたらすことによって、膜の化学特性を変えることができる。
【0013】
本明細書において説明されるヒドリドアルキルシラン化合物は、ジエトキシメチルシラン(DEMS)などの前駆体を形成する先行技術の構造と比較して、低k誘電体膜の機械特性に対して小さい影響を伴って、誘電体膜中に、より多くの炭素含有量を包含させることを可能とする固有の性質を提供する。例えば、DEMSは、反応性サイトのバランスをもたらす2つのアルコキシ基、1つのケイ素-メチル(Si-Me)及び1つのケイ素-ヒドリドとともに、DEMS中の混合された錯体系を提供し、所望の誘電率を保持しつつ、より機械的に強固な膜の形成を可能とする。ヒドリドアルキルシラン化合物の使用は、機械強度を低下させる傾向がある、前駆体中のケイ素-メチル基が存在しないという利点を提供し、一方で、より高次のアルキル基中の炭素は、OSG膜の誘電率を低下させ、疎水性を付与する。前駆体中にはメチル基は存在しないが、得られたOSG膜中には、2つの異なるケイ素原子を架橋する幾つかのアルキル基及び幾つかのメチル基が存在し、これらの基は、プラズマ自体において起こるフラグメンテーションの結果として形成されると推定される。
【0014】
低k誘電体膜は、有機シリカガラス(「OSG」)膜又は材料である。有機シリケートは、低k材料の候補である。有機ケイ素前駆体の種類は膜の構造及び組成に対して強い効果を有しているため、要求される膜特性を提供する前駆体を使用して、所望の誘電率に達するまでに要求される量の炭素の添加が機械的に不安定である膜を製造しないことを確実にすることは有益である。本明細書において説明される方法及び組成物は、電気特性及び機械特性、並びに高い炭素含有量などの他の有益な膜の特性の所望のバランスを有していて、改善された統合プラズマ損傷抵抗を提供する低k誘電体膜を生成する手段を提供する。
【0015】
本明細書において説明される方法及び組成物の特定の実施態様において、ケイ素含有誘電体材料の層が、化学気相堆積(CVD)又はプラズマ強化化学気相堆積(PECVD)、好ましくは反応チャンバーを用いるPECVDプロセスを介して、基材の少なくとも一部に堆積される。適した基材は、半導体材料、例えばヒ化ガリウム(「GaAs」)、ケイ素、並びに結晶性ケイ素、ポリシリコン、非晶質ケイ素、エピタキシャルシリコン、二酸化ケイ素(「SiO2」)、シリコンガラス、窒化ケイ素、溶融シリカ、ガラス、石英、ボロシリケートガラス及びそれらの組み合わせなどのケイ素を含む組成物を含むが、それらに限定されない。他の適した材料は、クロム、モリブデン、及び半導体、集積回路、フラットパネルディスプレイ及びフレキシブルディスプレイの用途において一般に用いられる他の金属を含む。基材は、さらなる層、例えばケイ素、SiO2、有機シリケートガラス(OSG)、フッ素化シリケートガラス(FSG)、炭窒化ホウ素、炭化ケイ素、水素化炭化ケイ素、窒化ケイ素、水素化窒化ケイ素、炭窒化ケイ素、水素化炭窒化ケイ素、窒化ホウ素、有機-無機複合材料、フォトレジスト、有機ポリマー、多孔性の有機及び無機の材料及び複合体、酸化アルミニウム及び酸化ゲルマニウムなどの金属酸化物を有してよい。さらに、さらなる層は、ゲルマノシリケート、アルミノシリケート、銅及びアルミニウム、並びに拡散バリア材料、例えば、以下に限定するものではないが、TiN、Ti(C)N、TaN、Ta(C)N、Ta、W又はWN、であってもよい。
【0016】
特定の実施態様において、ケイ素含有誘電体材料の層は、ポロゲン前駆体を伴わずに、ケイ素化合物を含む少なくとも1つのケイ素前駆体を含むガス状の試剤を反応チャンバー中に導入することによって、基材の少なくとも一部に堆積される。別の実施態様において、ケイ素含有誘電体材料の層は、硬化添加剤を有するヒドリドアルキルシラン化合物を含む少なくとも1つのケイ素前駆体を含むガス状の試剤を反応チャンバー中に導入することによって、基材の少なくとも一部に堆積される。
【0017】
本明細書において説明される方法及び組成物は、式RnH4-nSi(式中、それぞれのRが直鎖、分岐鎖又は環状のC2~C10アルキルからなる群から独立に選択され、nが2~3である)のケイ素前駆体を用いる。
【0018】
上の式において、及び本明細書を通じて、用語「アルキル」は、2~10個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖又は環状の官能基を意味する。例示的な直鎖のアルキル基は、エチル、n-プロピル、ブチル、ペンチル及びヘキシル基を含むが、それらに限定されない。例示的な分岐鎖のアルキル基は、イソ-プロピル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソ-ペンチル、tert-ペンチル、イソ-ヘキシル及びネオ-ヘキシルを含むが、それらに限定されない。例示的な環状のアルキル基は、シクロペンチル、シクロヘキシル又はメチルシクロペンチルを含むが、それらに限定されない。
【0019】
本明細書を通じて、用語「酸素源」は、酸素(O2)、酸素及びヘリウムの混合物、酸素及びアルゴンの混合物、二酸化炭素、一酸化炭素又はそれらの組み合わせを含むガスをいう。
【0020】
本明細書を通じて、用語「誘電体膜」は、SivOwCxHyFz(v+w+x+y+z=100%であり、vが10~35at%であり、wが10~65at%であり、xが5~40at%であり、yが10~50at%であり、zが0~15at%である)の組成を有する、ケイ素及び酸素原子を含む膜をいう。
【0021】
式RnH4-nSi(式中、それぞれのRが直鎖、分岐鎖又は環状のC2~C10アルキルからなる群から独立に選択され、nが2~3である)の実施態様の例は、以下:トリエチルシラン、ジエチルシラン、トリ-n-プロピルシラン、ジ-n-プロピルシラン、エチルジ-n-プロピルシラン、ジエチル-n-プロピルシラン、ジ-n-プロピルシラン、ジ-n-ブチルシラン、トリ-n-ブチルシラン、トリ-イソ-プロピルシラン、ジエチルシクロペンチルシラン又はジエチルシクロヘキシルシランである。
【0022】
本明細書において説明されるヒドリドアルキルシラン、並びにそれを含む方法及び組成物は、好ましくは、1つ又は複数の不純物、例えば、以下に限定するものではないが、ハライドイオン及び水を実質的に含有しない。本明細書において使用されるとき、用語「実質的に含有しない」は、それぞれの不純物に関するとき、100パーツパーミリオン(ppm)以下、50ppm以下、10ppm以下、5ppm以下及び1ppm以下のそれぞれの不純物、例えば、以下に限定するものではないが、塩化物又は水、を意味する。
【0023】
幾つかの実施態様において、本明細書において開示されるヒドリドアルキルシラン化合物は、ハライドイオン(又はハライド)、例えば塩化物、フッ化物、臭化物及びヨウ化物、を実質的に含有しないか、又は含有しない。本明細書において使用されるとき、用語「実質的に含有しない」は、100パーツパーミリオン(ppm)以下、50ppm以下、10ppm以下、5ppm以下又は1ppm以下のハライド不純物を意味する。本明細書において使用されるとき、用語「含有しない」は、0ppmのハライドを意味する。例えば、塩化物は、ヒドリドアルキルシラン化合物についての分解触媒、並びに製造されたエレクトロニクス装置の性能に対して有害である場合がある汚染物質、として作用することが知られている。ヒドリドアルキルシラン化合物の緩やかな分解は、膜の堆積プロセスに直接的に影響を与え、半導体製造者が膜の仕様を満たすことを困難にする場合がある。加えて、貯蔵寿命又は安定性は、ケイ素化合物の、より速い分解速度によって負に影響を受け、それによって1~2年間の貯蔵寿命を保証することを困難にする。従って、ヒドリドアルキルシラン化合物の加速した分解は、これらの可燃性及び/又は自然発火性のガス状の副生成物の形成に関連する安全性及び性能の懸念をもたらす。好ましくは、さらに、ケイ素化合物は、金属イオン、例えばAl3+イオン、Fe2+、Fe3+、Ni2+、Cr3+、を実質的に含有しない。本明細書において使用されるとき、用語「実質的に含有しない」は、Al3+イオン、Fe2+、Fe3+、Ni2+、Cr3+に関するとき、(重量で)5ppm未満、好ましくは3ppm未満、より好ましくは1ppm未満、最も好ましくは0.1ppm未満を意味する。
【0024】
ハライドを実質的に含有しない本発明による組成物は、(1)化学合成の間に塩化物源を減少若しくは排除すること、及び/又は(2)最終の精製された生成物が塩化物を実質的に含有しないように、有効な精製プロセスを行って粗生成物から塩化物を除去すること、によって達成することができる。塩化物源は、合成の間に、ハライドを含有しない試剤、例えばクロロジシラン、ブロモジシラン又はヨードジシランを含有しない試剤を使用して、それによってハライドイオンを含有する副生成物の生成を回避することによって、減少させることができる。加えて、上記の試剤は、得られる粗生成物が塩化物不純物を実質的に含有しないように、塩化物不純物を実質的に含有しないべきである。同様に、合成は、ハライドベースの溶媒、触媒、又は許容できない高いレベルのハライド汚染物質を含有する溶媒、を使用するべきではない。粗生成物を種々の精製方法によって処理して、最終生成物を、ハライド、例えば塩化物を実質的に含有しないものにすることもできる。このような方法は先行技術においてよく説明されていて、以下に限定するものではないが、蒸留又は吸着などの精製プロセスを含んでよい。一般に、蒸留が使用されて、沸点の差を用いることによって、所望の生成物から不純物を分離する。最終生成物がハライドを実質的に含有しないように、吸着もまた使用することができ、構成要素の異なる吸着特性を利用して分離に作用する。吸着材、例えば商業的に入手可能であるMgO-Al2O3ブレンドを使用して、ハライド、例えば塩化物を除去することができる。
【0025】
先行技術のケイ素含有ケイ素前駆体、例えばDEMSは、反応チャンバー中で励起された後にポリマー化して、ポリマー主鎖中に-O-結合(例えば-Si-O-Si-又は-Si-O-C-)を有する構造を形成する一方で、ヒドリドアルキルシラン化合物、例えばトリエチルシラン分子は、ポリマー化して、主鎖中の-O-架橋のうち幾つかが-CH2-メチレン又は-CH2CH2-エチレン架橋によって置換された構造を形成すると考えられる。炭素が末端Si-Me基の形態で主に存在する、構造形成前駆体としてDEMSを使用して堆積される膜において、Si-Meの%(直接的にはCの%に関連する)と、機械強度との間には関係があり、2つの末端Si-Me基による架橋Si-O-Si基の置換は、網目構造が破壊されるために、機械特性を低下させる。さらに、同様に、例えばトリエチルシランのプラズマ堆積の間に、架橋メチレン又はエチレン基による幾つかのSi-Me基の形成があると考えられる。これと同様に、機械強度の観点から、膜中の炭素含有量を増加させることによって、網目構造が破壊されないように、架橋基の形態で炭素を組み込むことができる。特定の理論によって拘束されることを意図するものではないが、これは膜に炭素を添加することに起因し、このことは、膜のエッチング、フォトレジストのプラズマアッシング及び銅表面のNH3プラズマ処理などのプロセスによる多孔性OSG膜の炭素欠乏に対して、膜をより回復可能にすることができると考えられる。OSG膜における炭素欠乏は、膜の不完全な誘電率の増加、並びに膜のエッチング、及び湿式洗浄工程の間の特徴の曲がりを伴う問題、及び/又は銅拡散バリアを堆積するときの集積の問題、を引き起こす場合がある。
【0026】
「ガス状の試剤」という言い回しが、試剤を説明するために本明細書において使用されることがあるが、この言い回しは、ガスとして反応器に直接的に輸送される試剤、気化された液体、昇華された固体として輸送される試剤、及び/又は不活性キャリアガスによって反応器中に輸送される試剤を強調することを意図するものである。
【0027】
加えて、試剤は、別個の供給源から独立して、又は混合物として、反応器中に運ぶことができる。試剤は、幾つもの手段によって、好ましくは、適したバルブを備え、プロセス反応器への液体の輸送を可能とするのに適した加圧可能なステンレス鋼容器を使用して、反応器システムへと輸送することができる。
【0028】
構造形成種(すなわち式Iの化合物)に加えて、さらなる材料を、堆積反応の前、間及び/又は後に、反応チャンバー中に導入することができる。このような材料は、例えば不活性ガス(例えばより低揮発性の前駆体のためのキャリアガスとして用いることができるか、及び/又は堆積されたままの材料の硬化を促進し、かつより安定な最終的な膜を提供することができるHe、Ar、N2、Kr、Xeなど)、並びに反応性物質、例えば酸素含有源、例えばO2、O3及びN2O、ガス状又は液体の有機物質、CO2又はCOを含む。1つの特定の実施態様において、反応チャンバー中に導入される反応混合物は、O2、N2O、NO、NO2、CO2、水、H2O2、オゾン及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの酸化剤を含む。代替の実施態様において、反応混合物は酸化剤を含まない。
【0029】
ガス状の試剤にエネルギーが適用されて、ガスを反応させて、基材上に膜を形成する。このようなエネルギーは、例えばプラズマ、パルスプラズマ、ヘリコンプラズマ、高密度プラズマ、誘導結合プラズマ、リモートプラズマ、ホットフィラメント及び熱(すなわちノンフィラメント)及び方法によって提供することができる。二次rf周波数源を使用して、基材表面におけるプラズマ特性を改質することができる。好ましくは、膜は、プラズマ強化化学気相堆積(「PECVD」)によって形成される。
【0030】
ガス状の試剤のそれぞれについての流量は、好ましくは、単一の200mmのウエハ当たりに10~5000sccm、より好ましくは30~1000sccmである。個々の量は、膜中の所望の量のケイ素、炭素及び酸素を提供するように選択される。必要とされる実際の流量は、ウエハサイズ及びチャンバーの構成に応じてよく、決して、200mmウエハ又は単一のウエハチャンバーに限定されるものではない。
【0031】
幾つかの実施態様において、膜は、約50ナノメートル(nm)/分の堆積速度で堆積される。
【0032】
堆積の間の反応チャンバーにおける圧力は、約0.01~約600torr又は約1~15torrである。
【0033】
膜は、好ましくは0.002~10ミクロンの厚さで堆積されるが、厚さは要求に応じて変えることができる。パターニングされていない表面に堆積されたブランケット膜は、妥当なエッジイクスクルージョン(edge exclusion)を有する基材にわたって、1標準偏差当たり2%未満の厚さの変化を有する優れた均一性を有し、ここで、例えば5mmの、基材の最外部のエッジは均一性の統計的な計算には含まれない。
【0034】
本発明の好ましい実施態様は、低誘電率と、当分野において公知である他の構造形成前駆体を使用して堆積される他の多孔性低k誘電体膜と比較して改善された機械特性、熱安定性及び(酸素、水性酸化環境などに対する)化学抵抗性とを有する薄膜材料を提供する。前述の式を有する1つ又は複数のヒドリドアルキルシラン化合物を含む、本明細書において説明される構造形成前駆体は、(好ましくは主に有機炭素の形態(-CHx、式中、xは1~3)で)膜中へのより多量の炭素の組み込みを提供し、それによって、具体的な前駆体又は網目形成化学物質が膜を堆積するのに使用される。特定の実施態様において、膜中の水素の多くは炭素に結合されている。
【0035】
本明細書において説明される組成物及び方法によって堆積される低k誘電体膜は、(a)約10~約35at%、より好ましくは約20~約30at%のケイ素;(b)約10~約65at%、より好ましくは約20~約45at%の酸素;(c)約10~約50at%、より好ましくは約15~約40at%の水素;(d)約5~約40at%、より好ましくは約10~約45at%の炭素を含む。膜は、材料の特性のうち1つ又は複数を改善するために、約0.1~約15at%、より好ましくは約0.5~約7.0at%のフッ素をさらに含んでよい。本発明の特定の膜中には、より少量の他の元素も存在してよい。OSG材料は、それらの誘電率が、産業において従来使用される標準的な材料-シリカガラスの誘電率よりも小さい場合に、低k材料とみなされる。
【0036】
膜の合計のポロシティは、プロセス条件及び所望の最終の膜の特性に応じて、0~15%以上であってよい。好ましくは、本発明の膜は、2.3g/ml未満、又は代替として、2.0g/ml未満若しくは1.8g/ml未満の密度を有する。OSG膜の合計のポロシティは、熱又はUV硬化、プラズマ源にさらされることを含む後堆積処理によって影響を与えることができる。本発明の好ましい実施態様は、膜の堆積の間にポロゲンの添加を含まないが、UV硬化などの後堆積処理によって、ポロシティを誘起することができる。例えば、UV処理は、約15から約20%へと達する、好ましくは約5から約10%へと達するポロシティをもたらすことができる。
【0037】
本発明の膜は、無機フッ素(例えばSi-F)の形態で、フッ素を含有してもよい。好ましくは、フッ素は、存在する場合には、約0.5~約7at%の量で含有される。
【0038】
本発明の膜は、熱的に安定であり、良好な化学抵抗性を有する。特に、アニールの後の好ましい膜は、N2の下で、425℃の等温で、1.0wt%/時間未満の平均重量損失を有する。さらに、膜は、好ましくは、空気の下で、425℃の等温で、1.0wt%/時間未満の平均重量損失を有する。
【0039】
膜は、種々の使用のために適している。膜は、半導体基材への堆積のために特に適していて、例えば絶縁体層、層間誘電体層及び/又は層間金属誘電体層としての使用のために特に適している。膜は、コンフォーマルなコーティングを形成することができる。これらの膜が示す機械特性は、膜を、Al減少技術及びCuダマシン又はデュアルダマシン技術における使用のために特に適したものとする。
【0040】
膜は、化学機械平坦化(CMP)及び異方性エッチングと両立可能であり、種々の材料、例えばケイ素、SiO2、Si3N4、OSG、FSG、炭化ケイ素、水素化炭化ケイ素、窒化ケイ素、水素化窒化ケイ素、炭窒化ケイ素、水素化炭窒化ケイ素、窒化ホウ素、反射防止コーティング、フォトレジスト、有機ポリマー、多孔性有機及び無機材料、金属、例えば銅及びアルミニウム、拡散バリア層、例えば、以下に限定するものではないが、TiN、Ti(C)N、TaN、Ta(C)N、Ta、W、WN又はW(C)N、に付着することができる。好ましくは、膜は、前述の材料のうち少なくとも1つに、従来のプル試験、例えばASTM D3359-95aのテーププル試験をパスするのに十分に付着することができる。サンプルは、膜の認識可能な除去がない場合に、試験をパスしたとみなされる。
【0041】
従って、特定の実施態様において、膜は、集積回路における絶縁体層、層間誘電体層、層間金属誘電体層、キャップ層、化学機械平坦化(CMP)若しくはエッチング停止層、バリア層又は付着層である。
【0042】
本発明は、膜を提供するために特に適していて、本発明の製品は、本明細書においては多くが膜として説明されているが、本発明はそれらに限定されない。本発明の製品は、CVDによって堆積することができる任意の形態、例えばコーティング、複数層の集合体、及び必ずしも平らではなく、又は必ずしも薄くはない他の種類の物品の形態で提供することができ、物品のうち複数は、必ずしも集積回路において使用される訳ではない。好ましくは、基材は半導体である。
【0043】
本発明のOSG製品に加えて、本開示は、その製品を製造するプロセス、その製品を使用する方法、並びにその製品を調製するために有用な化合物及び組成物を含む。例えば、半導体装置上に集積回路を製造するためのプロセスは、米国特許第6583049号明細書において開示されていて、米国特許第6583049号明細書は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0044】
本発明の組成物は、例えば、適したバルブを備え、RnH4-nSi(式中、Rは直鎖、分岐鎖又は環状のC2~C10アルキルからなる群から独立に選択することができ、nは2~3であってよい)を有するケイ素前駆体、例えばトリエチルシラン、をプロセス反応器に輸送することを可能とするのに適した(好ましくはステンレス鋼製の)少なくとも1つの加圧可能な容器をさらに含んでよい。
【0045】
予備的な(又は堆積されたままの)膜は、硬化工程、すなわち膜にさらなるエネルギー源を適用する工程によってさらに処理することができ、硬化工程は、熱アニール、化学処理、インサイチュ若しくはリモートプラズマ処理、光硬化(例えばUV)及び/又はマイクロ波を含んでよい。他のインサイチュ処理又は後堆積処理を使用して、硬度、(収縮、大気暴露、エッチング、湿式エッチングなどに対する)安定性、整合性、均一性及び付着性などの材料特性を向上することができる。従って、用語「後処理」は、本明細書において使用されるとき、膜をエネルギー(例えば熱、プラズマ、フォトン、電子、マイクロ波など)又は化学物質によって処理して、材料特性を向上することを意味する。
【0046】
後処理が行われる条件は、大きく変化してよい。例えば、後処理は、高圧の下で、又は真空環境の下で行うことができる。
【0047】
UVアニールは好ましい硬化の方法であり、典型的には以下の条件の下で行われる。
【0048】
環境は、不活性(例えば窒素、CO2、貴ガス(He、Ar、Ne、Kr、Xe)など)、酸化性(例えば酸素、空気、希薄酸素環境、富化酸素環境、オゾン、亜酸化窒素など)又は還元性(希薄又は濃縮水素、炭化水素(飽和、不飽和、直鎖若しくは分岐鎖、芳香族)、アンモニア、ヒドラジン、メチルヒドラジンなど)であってよい。圧力は、好ましくは約1Torr~約1000Torr、より好ましくは大気圧である。しかし、熱アニール並びに任意の他の後処理手段については真空環境も可能である。温度は、好ましくは200~500℃であり、温度のランプレートは0.1~100℃/分である。合計のUVアニール時間は、好ましくは0.01分~12時間である。
【0049】
OSG膜の化学処理は、以下の条件の下で行われる。
【0050】
フッ素化(HF、SiF4、NF3、F2、COF2、CO2F2など)、酸化(H2O2、O3など)、化学乾燥、メチル化、又は最終の材料の特性を向上する他の化学処理の使用。このような処理において使用される化学物質は、固体、液体、ガス状及び/又は超臨界流体の状態であってよい。
【0051】
OSG膜のあり得る化学修飾のためのプラズマ処理は、以下の条件の下で行われる。
【0052】
環境は、不活性(窒素、CO2、貴ガス(He、Ar、Ne、Kr、Xe)など)、酸化性(例えば酸素、空気、希薄酸素環境、富化酸素環境、オゾン、亜酸化窒素など)又は還元性(例えば希釈若しくは濃縮水素、炭化水素(飽和、不飽和、直鎖若しくは分岐鎖、芳香族)、アンモニア、ヒドラジン、メチルヒドラジンなど)であってよい。プラズマ電力は、好ましくは0~5000Wである。温度は、好ましくは約周囲温度~約500℃である。圧力は、好ましくは10mtorr~大気圧である。合計の硬化時間は、好ましくは0.01分~12時間である。
【0053】
有機シリケート膜の化学架橋のためのUV硬化は、典型的には以下の条件の下で行われる。
【0054】
環境は、不活性(例えば窒素、CO2、貴ガス(He、Ar、Ne、Kr、Xe)など)、酸化性(例えば酸素、空気、希薄酸素環境、富化酸素環境、オゾン、亜酸化窒素など)又は還元性(例えば希薄若しくは濃縮炭化水素、水素など)であってよい。温度は、好ましくは約周囲温度~約500℃である。電力は、好ましくは0~約5000Wである。波長は、好ましくはIR、可視、UV又は深UV(<200nmの波長)である。合計のUV硬化時間は、好ましくは0.01分~12時間である。
【0055】
有機シリケート膜のマイクロ波後処理は、典型的には以下の条件の下で行われる。
【0056】
環境は、不活性(例えば窒素、CO2、貴ガス(He、Ar、Ne、Kr、Xe)など)、酸化性(例えば酸素、空気、希薄酸素環境、富化酸素環境、オゾン、亜酸化窒素など)又は還元性(例えば希薄若しくは濃縮炭化水素、水素など)であってよい。温度は、好ましくは約周囲温度~約500℃である。電力及び波長は、具体的な結合に対して変えられ、調節可能である。合計の硬化時間は、好ましくは0.01分~12時間である。
【0057】
膜の特性を改善するための電子ビーム後処理は、典型的には以下の条件の下で行われる。
【0058】
環境は、真空、不活性(例えば窒素、CO2、貴ガス(He、Ar、Ne、Kr、Xe)など)、酸化性(例えば酸素、空気、希薄酸素環境、富化酸素環境、オゾン、亜酸化窒素など)又は還元性(例えば希薄若しくは濃縮炭化水素、水素など)であってよい。温度は、好ましくは周囲温度~500℃である。電子密度及びエネルギーは、具体的な結合に対して変えられ、調節可能である。合計の硬化時間は、好ましくは0.001分~12時間であり、連続的であるか、又はパルスであってよい。電子ビームの一般的な使用に関するさらなる案内は、刊行物、例えばS.Chattopadhyayら、Journal of Materials Science、36(2001)4323-4330;G.Klosterら、Proceedings of IITC、6月3-5、2002、SF、CA;並びに米国特許第6207555号、6204201号及び6132814号明細書において得られる。電子ビーム処理の使用は、ポロゲンの除去、マトリックス中の結合形成プロセスを通じた膜の機械特性の向上を提供することができる。
【0059】
本発明は、以下の例を参照して、より詳細に例示されるが、本発明が以下の例に限定されるようには認められないと理解されるべきである。
【実施例】
【0060】
例示的な膜又は200mmウエハ処理を、種々の異なる化学前駆体及びプロセス条件から、Advance Energy 200 RF生成器を備えた200mmのDxZ若しくはDxL反応チャンバー又は真空チャンバー中のApplied Materials Precision-5000システムを使用するプラズマ強化CVD(PECVD)プロセスを介して形成した。一般に、PECVDプロセスは、以下の基本的な工程:ガス流の初期セットアップ及び安定化、シリコンウエハ基材への膜の堆積、並びに基材の取り出しの前のチャンバーのパージ/排気、を包含していた。堆積の後に、膜のうち幾つかにUVアニールを受けさせた。広帯域UVバルブを有するFusion UVシステムを使用して、ヘリウムガス流の下でウエハを用いて、<10torrの1つ又は複数の圧力で、<400℃の1つ又は複数の温度で、UVアニールを行った。p型Siウエハ(抵抗範囲=8~12Ω・cm)に対して実験を行った。
【0061】
厚さ及び屈折率を、SCI FilmTek 2000反射率計において測定した。誘電率を、中位の抵抗のp型ウエハ(8~12Ω・cmの範囲)に対してHgプローブ技術を使用して決定した。例1及び例2において、機械特性を、MTS Nano Indenterを使用して決定した。
【0062】
例1:次ぐUV硬化を伴わない、トリエチルシラン(3ES)からのOSG膜の堆積
3ESから、以下のプロセス条件を使用して、200mmのSiウエハに、OSG膜を堆積した。1400mg/分の流量で直接液体注入(DLI)を介して反応チャンバーに前駆体を輸送し、200sccmのヘリウムキャリアガス流、60sccmのO2、ウエハ空間への350ミリインチのシャワーヘッド、390℃のウエハチャック温度、8Torrのチャンバー圧力で、700Wのプラズマを60秒間適用した。得た膜は、1.49の屈折率(RI)及び3.0の誘電率(k)であり、704nm厚さであった。膜の硬度は2.7GPaと測定され、ヤング率は16.3GPaであった。元素組成をXPSによって測定した。膜の組成は、32.7%C、36.6%O及び30.7%Siであった。
【0063】
例2:次ぐ4分の後堆積UV硬化を伴う、トリエチルシラン(3ES)からのOSG膜の堆積
3ESから、以下のプロセス条件を使用して、200mmのSiウエハに、OSG膜を堆積した。1400mg/分の流量で直接液体注入(DLI)を介して反応チャンバーに前駆体を輸送し、200sccmのヘリウムキャリアガス流、60sccmのO2、ウエハ空間への350ミリインチのシャワーヘッド、390℃のウエハチャック温度、8Torrのチャンバー圧力で、700Wのプラズマを60秒間適用した。堆積の後に、ロードロックによって、UV硬化チャンバーへとウエハを取り出して、UV照射によって、400℃で4分間、膜を硬化した。得た膜は、1.48の屈折率(RI)及び3.0の誘電率(k)であり、646nm厚さであった。膜の硬度は3.2GPaと測定され、ヤング率は18.8GPaであった。元素組成をXPSによって測定し、膜の組成は、26.8%C、41.2%O及び32%Siであった。
【0064】
例3:次ぐUV硬化を伴わない、トリ-n-プロピルシラン(3nPS)からのOSG膜の堆積
3nPSから、以下のプロセス条件を使用して、200mmのSiウエハに、OSG膜を堆積した。1500mg/分の流量で直接液体注入(DLI)を介して反応チャンバーに3nPS前駆体を輸送し、200sccmのヘリウムキャリアガス流、60sccmのO2、ウエハ空間への350ミリインチのシャワーヘッド、390℃のウエハチャック温度、6Torrのチャンバー圧力で、600Wのプラズマを60秒間適用した。得た膜は、1.45の屈折率(RI)及び3.0の誘電率であり、528nm厚さであった。膜の硬度は2.6GPaと測定され、ヤング率は15.6GPaであった。元素組成をXPSによって測定し、膜の組成は、26.1%C、43.0%O及び30.9%Siであった。
【0065】
例4:次ぐ4分の後堆積UV硬化を伴う、トリ-n-プロピルシラン(3nPS)からのOSG膜の堆積
3nPSから、以下のプロセス条件を使用して、200mmのSiウエハに、OSG膜を堆積した。1500mg/分の流量で、直接液体注入(DLI)を介して反応チャンバーに前駆体を輸送し、200sccmのヘリウムキャリアガス流、60sccmのO2、ウエハ空間への350ミリインチのシャワーヘッド、390℃のウエハチャック温度、6Torrのチャンバー圧力で、600Wのプラズマを60秒間適用した。堆積の後、ロードロックによって、UV硬化チャンバーへとウエハを移動し、UV照射によって、400℃で4分間、膜を硬化した。得た膜は、1.437の屈折率(RI)及び3.2の誘電率で、495nm厚さであった。膜の硬度は3.7GPaと測定され、ヤング率は23.4GPaであった。元素組成をXPSによって測定し、膜の組成は、18.8%C、49%O及び32.2%Siであった。
【0066】
比較例1:次ぐUV硬化を伴わない、1-メチル-1-エトキシ-1-シラシクロペンタン(MESCAP)からのOSG膜の堆積
1-メチル-1-エトキシ-1-シラシクロペンタンから、200mmの処理のために、DxZチャンバー中で、以下のプロセス条件を使用して、OSG膜を堆積した。1500ミリグラム/分(mg/分)の流量で、直接液体注入(DLI)を介して反応チャンバーに前駆体を輸送し、200標準立方センチメートル(sccm)のヘリウムキャリアガス流、10sccmのO2、350ミリインチのシャワーヘッド/ウエハ空間、400℃のウエハチャック温度、7Torrのチャンバー圧力で、600Wのプラズマを適用した。得た堆積したままの膜は、3.03の誘電率(k)、2.69GPaの硬度(H)及び1.50の屈折率(RI)を有していた。
【0067】
比較例2:次ぐUV硬化を伴う、1-メチル-1-エトキシ-1-シラシクロペンタン(MESCAP)からのOSG膜の堆積
1-メチル-1-エトキシ-1-シラシクロペンタンから、200mmの処理のために、DxZチャンバー中で、以下のプロセス条件を使用して、OSG膜を堆積した。1000ミリグラム/分(mg/分)の流量で、直接液体注入(DLI)を介して反応チャンバーに前駆体を輸送し、200標準立方センチメートル(sccm)のヘリウムキャリアガス流、10sccmのO2、350ミリインチのシャワーヘッド/ウエハ空間、400℃のウエハチャック温度、7Torrのチャンバー圧力で、400Wのプラズマを適用した。得た堆積したままの膜は、3.01の誘電率(k)、2.06GPaの硬度(H)及び1.454の屈折率(RI)を有していた。UV硬化後には、kは3.05、Hは3.58GPa、RIは1.46であった。この例は、kの極めて小さい増加量での、機械強度の有意な改善を示している。
【0068】
特定の具体的な実施態様及び例を参照して、上で例示及び説明されたが、しかしながら、本発明は示された詳細に限定されることを意図されない。むしろ、特許請求の範囲の均等物の範囲及びレンジにおいて、本発明の趣旨から逸脱することなく、詳細において種々の変更をすることができる。例えば、本文献において広く記載された全ての範囲は、それらの範囲内に、その広い範囲内にある全てのより狭い範囲を含むことが、明確に意図されている。
本発明の実施形態としては、以下の実施形態を挙げることができる。
(付記1)
誘電体膜を製造するための化学気相堆積方法であって、
基材を反応チャンバー中に提供する工程;
ガス状の試剤を前記反応チャンバー中に導入する工程であって、前記ガス状の試剤が、
R
n
H
4-n
Siを含み、式中、Rが直鎖、分岐鎖又は環状のC
2
~C
10
アルキルからなる群から選択され、nが2~3であるケイ素前駆体と、
少なくとも1つの酸素源と
を含む工程;及び
前記反応チャンバー中の前記ガス状の試剤にエネルギーを適用して、前記ガス状の試剤の反応を誘起して、それによって膜を前記基材に堆積するエネルギー適用工程
を含み、前記膜が約2.5~3.3の誘電率を有する、方法。
(付記2)
前記ケイ素前駆体が、トリエチルシラン、ジエチルシラン、トリ-n-プロピルシラン、ジ-n-プロピルシラン、エチルジ-n-プロピルシラン、ジエチル-n-プロピルシラン、ジ-n-プロピルシラン、ジ-n-ブチルシラン、トリ-n-ブチルシラン、トリ-イソ-プロピルシラン、ジエチルシクロペンチルシラン、ジエチルシクロヘキシルシランからなる群から選択される少なくとも1つである、付記1に記載の方法。
(付記3)
堆積方法が、プラズマ強化化学気相堆積方法である、付記1に記載の方法。
(付記4)
前記酸素源が、O
2
、N
2
O、NO、NO
2
、CO
2
、水、H
2
O
2
及びオゾンからなる群から選択される少なくとも1つを含む、付記1に記載の方法。
(付記5)
前記エネルギー適用工程の間に、He、Ar、N
2
、Kr、Xe、NH
3
、H
2
、CO
2
又はCOからなる群から選択される少なくとも1つのガスが、前記反応チャンバー中で前記ガス状の試剤と組み合わせられる、付記1に記載の方法。
(付記6)
堆積された膜にさらなるエネルギーを適用する工程をさらに含む、付記1に記載の方法。
(付記7)
前記さらなるエネルギーが、熱処理、紫外光(UV)処理、電子ビーム処理及びガンマ照射処理からなる群から選択される少なくとも1つである、付記6に記載の方法。
(付記8)
前記さらなるエネルギーがUV処理及び熱処理を含み、前記UV処理が、前記熱処理の少なくとも一部の間に行われる、付記7に記載の方法。
(付記9)
前記膜が、組成Si
v
O
w
C
x
H
y
F
z
を含み、式中、v+w+x+y+z=100%であり、vが10~35at%であり、wが10~65at%であり、xが5~40at%であり、yが10~50at%であり、zが0~15at%である、付記1に記載の方法。
(付記10)
化学気相堆積プロセスによって誘電体膜を製造するためのガス状の試剤であって、R
n
H
4-n
Siを含み、式中、Rが直鎖、分岐鎖又は環状のC
2
~C
10
アルキルからなる群から選択され、nが2~3であるケイ素前駆体を含み、100ppm以下のハライドイオン又は水を有する、ガス状の試剤。
(付記11)
1ppm以下のハライドイオン又は水を有する、付記10に記載のガス状の試剤。