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特許7568736SiCでできたキャリア基板の上に単結晶SiCでできた薄層を備える複合構造を製造するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】SiCでできたキャリア基板の上に単結晶SiCでできた薄層を備える複合構造を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20241008BHJP
   H01L 21/20 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
H01L21/02 C
H01L21/20
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022554256
(86)(22)【出願日】2021-01-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-10
(86)【国際出願番号】 FR2021050047
(87)【国際公開番号】W WO2021191512
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-11-13
(31)【優先権主張番号】2003026
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】598054968
【氏名又は名称】ソイテック
【氏名又は名称原語表記】Soitec
【住所又は居所原語表記】Parc Technologique des fontaines chemin Des Franques 38190 Bernin, France
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ビアード, ヒューゴ
(72)【発明者】
【氏名】ラドゥ, イオヌット
(72)【発明者】
【氏名】ランドル, ディディエ
【審査官】平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0264374(US,A1)
【文献】特開2007-273524(JP,A)
【文献】特開2012-178548(JP,A)
【文献】特開2007-137689(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0199845(US,A1)
【文献】国際公開第2019/086504(WO,A1)
【文献】特表2021-501477(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
H01L 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化ケイ素でできたキャリア基板(20)の上に配置された、単結晶炭化ケイ素でできた薄層(10)を備える複合構造(1)を製造するための方法であって、
a)単結晶炭化ケイ素でできたドナー基板(111)を用意するステップであり、前記ドナー基板(111)が、エピタキシャル成長によって製造されたドナー層(110)を初期基板(11)の上に備え、前記ドナー層(110)が、前記初期基板(11)の結晶欠陥密度より低い結晶欠陥密度を示す、ステップと、
b)埋め込まれた脆い平面(12)を形成するために前記ドナー層(110)に軽いエンティティをイオン注入するステップであり、前記埋め込まれた脆い平面(12)が前記埋め込まれた脆い平面(12)と前記ドナー層(110)の自由面との間の前記薄層(10)の範囲を定める、ステップと、
c)複数のキャリア層(20’)を形成するための連続するn個のステップであり、nは2以上であり、n個のキャリア層(20’)が前記ドナー層(110)の上に互いに連続的に配置されて前記キャリア基板(20)を形成し、多結晶炭化ケイ素でできたキャリア層(20’)を形成するために、個々の形成するステップが400℃と1100℃との間の温度における化学気相堆積を含み、n回の化学気相堆積がn通りの異なる温度で実施される、連続するn個のステップと、
d)一方では、前記薄層(10)を備える複合構造(1)を前記キャリア基板(20)の上に形成し、他方では前記ドナー基板の残りの部分(111’)を形成するために、前記埋め込まれた脆い平面(12)に沿って分離するステップと、
e)前記薄層(10)の自由面(10a)を滑らかにするために、及び/又は前記複合構造(1)の厚さの一様性を修正するために、前記複合構造(1)に(1つ又は複数の)機械的処理及び/又は化学的処理を施すステップと、
を含む方法。
【請求項2】
ステップc)の前記堆積が600℃と900℃との間の温度で実施され、実際には700℃と800℃との間であることがさらに好ましい、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
ステップc)の前記堆積が、大気圧化学気相堆積技法、低圧化学気相堆積技法又はプラズマ増速化学気相堆積技法に基づく、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
ステップc)の前記n回の堆積がn通りの上昇する温度で実施される、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
ステップc)の前記n回の堆積がn通りの下降する温度で実施される、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
ステップc)で堆積される前記n個のキャリア層(20’)のうちの少なくとも2つのキャリア層(20’)が異なるドーピングレベルを示す、請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
ステップc)の前記堆積の結果として、前記キャリア基板(20)が50ミクロン以上の厚さを示し、100ミクロン以上の厚さを示し、実際にはさらには200ミクロン以上の厚さを示す、請求項1~6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
ステップa)が、前記初期基板(11)の基底面転位タイプの欠陥を貫通刃状転位タイプの欠陥に変換するために、前記ドナー層(110)の前記エピタキシャル成長に先立って、前記初期基板(11)の上に単結晶変換層(13)を形成するステップを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
ステップa)で、1500℃と1650℃との間の温度であることが好ましい1200℃より高い温度で前記ドナー層(110)の前記エピタキシャル成長が実施される、請求項1~8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
ステップc)で、前記複数のキャリア層(20’)を形成するための前記n個のステップのうちの少なくとも1つのステップが、前記ステップの前記化学気相堆積の後に実施されるアニールステップを含み、前記アニールの温度が前記堆積温度より高く、ステップd)の分離の達成をもたらす分離温度より低い、請求項1~9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
ステップc)とステップd)との間で、前記キャリア基板(20)の裏面(20b)に化学エッチング、機械ラッピング及び/又は化学機械研磨が施される、請求項1~10のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
ステップd)の前記分離の後に、前記キャリア基板(20)を厚くするために新しい化学気相堆積が実施される、請求項1~11のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項13】
ステップe)が前記複合構造(1)のおもて面(10a)及び裏面(20b)を同時に化学機械研磨するステップを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項14】
初期基板(11)として、又はドナー基板(111)として再使用するために、前記ドナー基板の前記残りの部分(111’)を再生するステップを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超小型電子構成要素のための半導体材料の分野に関する。本発明は、特に、炭化ケイ素でできたキャリア基板の上に単結晶炭化ケイ素でできた薄層を備える複合構造を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ここ数年、炭化ケイ素(SiC)に対する関心が著しく高まっているが、それは、この半導体材料がエネルギーを処理する能力を高めることができることによるものである。SiCは、特に電気車両などの電子工学における上昇分野のニーズに合致する革新的電力デバイスを製造するためにますます広範囲に使用されている。
【0003】
単結晶炭化ケイ素に基づく電力デバイス及び統合電力供給システムは、ケイ素でできた従来の電力デバイス及び統合電力供給システムと比較すると、はるかに高い電力密度を管理することができ、その管理は、より小さい能動ゾーン寸法で実施することができる。SiC上の電力デバイスの寸法をさらに制限するためには、横方向の構成要素の代わりに垂直方向の構成要素を製造することが有利である。そのためには、SiC構造は、前記SiC構造のおもて面に配置された電極と裏面に配置された電極との間の垂直方向の電気伝導を可能にしなければならない。
【0004】
しかしながら超小型電子工学産業のために意図された単結晶SiC基板は依然として高価であり、また、大きいサイズで供給することが困難である。したがって薄層転写解決法を利用して、単結晶SiCでできた薄層を典型的に備える複合構造をより低コストのキャリア基板の上に準備することが有利である。よく知られている薄層転写解決法の1つは、軽いイオンの注入に基づき、直接接合による組立てに基づくスマートカット(Smart Cut)(商標)プロセスである。このようなプロセスによれば、例えば、多結晶SiC(p-SiC)でできたキャリア基板との直接接触で、c-SiCでできたドナー基板から取り出された、単結晶SiC(c-SiC)でできた薄層を備える複合構造を製造することができ、垂直方向の電気伝導を可能にすることができる。しかしながら2つのc-SiC基板とp-SiC基板との間の分子接着によって良好な品質の直接接合を製造することは、前記基板の表面状態及び粗さの管理が複雑であるため、依然として困難である。
【0005】
このプロセスに由来する様々な方法もまた、先行技術から知られている。例えばF. Muらの(ECS Transactions、86(5)、3-21、2018)は、アルゴンを使用したボンバードメントによって組み立てられる表面を活性化した後の直接接合を使用しており(SAB:「表面活性化接合(Surface Activation Bonding)」)、接合に先立つこのような処理は、極めて高い密度のサイド結合を生成し、この極めて高い密度のサイド結合は組立て界面に共有結合の形成を促進し、したがって高い結合エネルギーの形成を促進する。しかしながらこの方法には、単結晶SiCでできたドナー基板の表面にアモルファス層を生成する欠点があり、このアモルファス層は、c-SiCでできた薄層とp-SiCでできたキャリア基板との間の垂直方向の電気伝導に好ましくない影響を及ぼす。
【0006】
この問題を解決するための解決法が提案されており、特に文書欧州特許第3 168 862号は、前記アモルファス層の電気特性を回復するために、前記アモルファス層へのドーパントエンティティの注入を使用している。この手法の主な欠点は、この手法の複雑性であり、したがってそのコストである。
【0007】
さらに、文書米国特許第8 436 363号が知られており、この文書は、金属キャリア基板の上に配置された、c-SiCでできた薄層を備えた複合構造を製造するための方法を記述しており、この複合構造の熱膨張係数は薄層の熱膨張係数に一致している。この製造方法は、
埋め込まれた脆い平面をc-SiCドナー基板の中に形成するステップであって、埋め込まれた脆い平面が前記埋め込まれた脆い平面とドナー基板の前方表面との間の薄層の範囲を定める、ステップと、
補強体として作用するよう、十分な厚さを有するキャリア基板を形成するために、例えばタングステン又はモリブデンでできた金属層をドナー基板の前方表面に堆積させるステップと、
一方では、金属キャリア基板と、c-SiCでできた薄層とを備える複合構造を形成し、他方ではc-SiCでできたドナー基板の残りの部分を形成するために、埋め込まれた脆い平面に沿って分離するステップと
を含む。
【0008】
しかしながらこのような製造方法は、キャリア基板を形成している材料がp-SiCであって、1200℃(p-SiCを製造するための通常の温度)より高い温度での堆積を必要とする場合は両立しない。とりわけ、これらの高い温度では、埋め込まれた脆い平面に存在する空洞の成長の動力学が、p-SiCでできた層の成長の動力学よりも速く、空洞の真上の層の変形に関連するふくれ現象が出現するまで、補強効果のために必要な厚さに達しない。
【0009】
使用される層転写技法が何であれ、極めて高い品質のc-SiCでできた薄層を備える複合構造を提供する問題、特に、拡張された欠陥がない(又は欠陥の極めて低い密度を示す)問題が追加提起され、これらは、前記薄層の上に準備されることが意図された電力デバイスの性能品質及び信頼性に影響を及ぼす原因になっている。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、先行技術の解決法に対する代替解決法に関し、上で言及した欠点を完全に、又は部分的に克服することを目標としている。本発明は、特に、多結晶SiCでできたキャリア基板の上に配置された、高品質のc-SiCでできた薄層を備える複合構造を製造するための方法に関する。
【0011】
本発明は、炭化ケイ素でできたキャリア基板の上に配置された、単結晶炭化ケイ素でできた薄層を備える複合構造を製造するための方法に関する。方法は、
a)単結晶炭化ケイ素でできたドナー基板を用意するステップであって、ドナー基板が、エピタキシャル成長によって製造されたドナー層を初期基板の上に備え、ドナー層は、初期基板の結晶欠陥の密度より低い結晶欠陥の密度を示す、ステップと、
b)埋め込まれた脆い平面を形成するためにドナー層に軽いエンティティをイオン注入するステップであって、埋め込まれた脆い平面が、前記埋め込まれた脆い平面と前記ドナー層の自由面との間の薄層の範囲を定める、ステップと、
c)複数のキャリア層を形成するための連続するn個のステップであって、nは2以上であり、n個のキャリア層がドナー層の上に互いに連続的に配置されてキャリア基板を形成し、多結晶炭化ケイ素でできたキャリア層を形成するために、個々の形成するステップが400℃と1100℃との間の温度における化学気相堆積を含み、n回の化学気相堆積がn通りの異なる温度で実施される、連続するn個のステップと、
d)一方では、薄層を備える複合構造をキャリア基板の上に形成し、他方ではドナー基板の残りの部分を形成するために、埋め込まれた脆い平面に沿って分離するステップと、
e)薄層の自由面を滑らかにするために、及び/又は複合構造の厚さの一様性を修正するために、複合構造に(1つ又は複数の)機械的処理及び/又は化学的処理を施すステップと
を含む。
【0012】
単独で捉えた本発明の他の有利な非制限の特徴によれば、或いは技術的に達成可能な任意の組合せによれば、
ステップc)の堆積が600℃と900℃との間の温度で実施され、実際には700℃と800℃との間であることがさらに好ましく、
ステップc)の堆積が、大気圧化学気相堆積技法、低圧化学気相堆積技法又はプラズマ増速化学気相堆積技法に基づき、
ステップc)のn回の堆積がn通りの上昇する温度で実施され、
ステップc)のn回の堆積がn通りの下降する温度で実施され、
ステップc)で堆積されるn個のキャリア層のうちの少なくとも2つのキャリア層が異なるドーピングレベルを示し、
ステップc)の堆積の結果として、キャリア基板が50ミクロン以上の厚さを示し、100ミクロン以上の厚さを示し、実際にはさらには200ミクロン以上の厚さを示し、
ステップa)が、初期基板の基底面転位タイプの欠陥を貫通刃状転位タイプの欠陥に変換するために、ドナー層のエピタキシャル成長に先立って、初期基板の上に単結晶変換層を形成するステップを含み、
ステップa)で、1500℃と1650℃との間であることが好ましい1200℃より高い温度でドナー層のエピタキシャル成長が実施され、
ステップc)で、複数のキャリア層を形成するためのn個のステップのうちの少なくとも1つのステップが、そのステップの化学気相堆積の後に実施されるアニールステップを含み、アニールの温度が堆積温度より高く、ステップd)の分離の達成をもたらす分離温度より低く、
ステップc)とステップd)との間で、キャリア基板の自由面に化学エッチング、機械ラッピング及び/又は化学機械研磨が施され、
ステップd)の分離の後に、キャリア基板を厚くするために新しい化学気相堆積が実施され、
ステップe)は、複合構造のおもて面及び裏面を同時に化学機械研磨するステップを含み、
製造方法は、初期基板として、又はドナー基板として再使用するために、ドナー基板の残りの部分を再生するステップを含む。
【0013】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図を参照した、本発明についての以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明による製造方法に従って準備される複合構造を示す図である。
図2a】本発明による製造方法のステップを示す図である。
図2b】本発明による製造方法のステップを示す図である。
図2c(i)】本発明による製造方法のステップを示す図である。
図2c(ii)】本発明による製造方法のステップを示す図である。
図2c(iii)】本発明による製造方法のステップを示す図である。
図2d】本発明による製造方法のステップを示す図である。
図2e】本発明による製造方法のステップを示す図である。
図2f】本発明による製造方法のステップを示す図である。
図3a】本発明による製造方法のステップを示す図である。
図3b】本発明による製造方法のステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
説明部分では、同じタイプの要素に対しては図の同じ参照番号を使用することができる。図は略図であり、読みやすくするためにスケール通りではない。特に、z軸線に沿った層の厚さは、x軸線及びy軸線に沿った横方向の寸法に対してスケール通りではなく、互いに対する層の相対厚さも、図では必ずしもスケール通りではない。
【0016】
本発明は、炭化ケイ素でできたキャリア基板20の上に配置された、単結晶炭化ケイ素でできた薄層10を備える複合構造1(図1)を製造するための方法に関する。キャリア基板20は多結晶であることが有利である(以下、「p-SiC」を使用して多結晶SiCが参照される)。
【0017】
方法は、最初に、単結晶炭化ケイ素でできたドナー基板111を用意するステップa)を含む。後続する説明では、「c-SiC」を使用して単結晶炭化ケイ素が参照される。
【0018】
ドナー基板111はc-SiCでできた初期基板11を備えている(図2a)。初期基板11は、直径が100mm、150mm、200mm、実際にはさらには300mm、さらには450mmであり、典型的な厚さが300ミクロンと800ミクロンとの間であるウェーハの形態で用意されることが好ましい。図2aはおもて面11a及び裏面11bを示している。おもて面11aの表面粗さは、20ミクロン×20ミクロンの走査で原子間力顕微鏡法(AFM)で測定して、1nm Ra(平均粗さ)未満になるように選択されることが有利である。
【0019】
ドナー基板111は、エピタキシャル成長によって製造された、c-SiCでできたドナー層110を初期基板11の上にも備えている。エピタキシャル成長ステップは、ドナー層110が初期基板11の結晶欠陥の密度より低い結晶欠陥の密度を示すように実施される。
【0020】
一例として、c-SiCでできた初期基板11は、<11-20>結晶軸線に対して4.0°±0.5°以下のオフカット角を示し、5/cm以下、実際にはさらには1/cm未満の貫通転位(マイクロパイプ)の密度を示す、4H又は6Hポリタイプの初期基板11である。ドープされたN(窒素)型では、初期基板11は、0.015オームcmと0.030オームcmとの間であることが好ましい抵抗率を示す。基底面転位、即ちBPDタイプの低い欠陥の密度、典型的には3000/cm以下の欠陥密度を示す初期基板11を選択することができる。1500/cm程度のBPD密度を示すc-SiC基板を合理的に利用可能であり、c-SiC基板の供給を容易にすることができる。
【0021】
本発明の主題である方法の結果として、複合構造1のc-SiCでできた薄層10が形成されることになるドナー層110の場合、前記薄層10の上に準備されることが意図された垂直方向の構成要素に対して要求される仕様に合致するために、初期基板11の結晶品質に優る結晶品質を示すことが望ましい。これは、様々なタイプの拡張された欠陥がc-SiCでできた層又は基板に存在することによるものである。これらの拡張された欠陥は、構成要素の性能品質及び信頼性に影響を及ぼし得る。特に、バイポーラ構成要素の場合、BPDタイプの欠陥は致命的であり、とりわけShockley積層欠陥(SSF)は、電子-正孔対を再結合するためのエネルギーを利用することができる場合、転位から拡張される。構成要素の能動領域の内側のSSF積層欠陥の拡大は、構成要素の通過状態抵抗の増加をもたらす。
【0022】
したがってc-SiCでできたドナー層が、1/cm以下のBPDタイプの欠陥の密度を示すように準備される。
【0023】
そのために、ドナー層110のエピタキシャル成長は、1500℃と1650℃との間であることが好ましい1200℃より高い温度で実施される。使用される先駆体は、シラン(SiH)、プロパン(C)又はエチレン(C)であり、キャリアガスは、アルゴンを有する、或いはアルゴンを有さない水素であってもよい。
【0024】
BPD欠陥の含有量が少ないドナー層110は、初期基板11に存在するBPD欠陥の貫通刃状転位(TED)への変換を支持することによって得られる。
【0025】
特定の実施形態によれば、ステップa)は、ドナー層110の成長に先立って、c-SiCでできていることが好ましい単結晶変換層13を初期基板11の上に形成するステップを含む。変換層13の目的は、初期基板11のBPDタイプの欠陥のTEDタイプの欠陥への変換を最大化することである(図3a)。そのためには、速い成長速度(典型的には5μm/hより速い成長速度)を達成するために、c-SiCでできた初期基板11に対しては4°に近い小さい切断角を選択して、エピタキシャル成長の前に実施されるin situエッチングを多くすることが有利であり、最後に、先駆体ストリームにおけるC/Si比率が1に近い単結晶変換層13のための成長条件を選択することが有利である。
【0026】
引き続いて前記変換層13の上のドナー層110のエピタキシャル成長を実施することができる(図3b)。この特定の実施形態によれば、1/cm以下、実際にはさらには0.1/cm未満のBPDタイプの欠陥密度を示すc-SiCでできたドナー層110を得ることも可能である。さらに、本発明による方法の結果として、バイポーラ劣化の確率(BPD/TED変換点の下で正孔が到達する確率)は無視することができ(0.1%未満)、単結晶変換層13は、複合構造1に転写されることは意図されていない。バイポーラ劣化の低減を目的としている先行技術は、変換層と能動層との間に再結合層(118at/cmを超える窒素ドープ層)を組み込むことからなっている。この層は、10μmの厚さ及び518/cmを超える濃度と引き換えに、この再結合層を備えていない基本構造に対して、正孔が存在する確率を0.1%まで小さくすることができる。本発明では単結晶変換層13は転写されないため、バイポーラ劣化の核化点(BPD-TED変換点又は任意のBPD点)に正孔が到達する確率は、最小で0.1%未満、実際にはさらには0%に近い。
【0027】
初期基板11のおもて面11aに潜在的に存在する、微粒子、金属又は有機汚染物質、或いは固有酸化物の層のすべて又は一部を除去することを目的とした、初期基板11の従来の浄化シーケンス又はエッチングシーケンスは、エピタキシャル成長に先立って実施することができることに留意されたい。
【0028】
本発明による製造方法は、薄層10の所望の厚さを表す予め定められた深さまで、ドナー層110に軽いエンティティをイオン注入するステップb)をさらに含む。この深さは、常に、ドナー層110の厚さ未満に維持されることになることに留意されたい。この注入により、埋め込まれた脆い平面12がドナー層110の中に生成され、埋め込まれた脆い平面12は、前記埋め込まれた脆い平面12と前記ドナー層110の自由表面11aとの間の薄層10の範囲を定める(図2b)。
【0029】
注入される軽いエンティティは、水素、ヘリウム又はこれらの2つのエンティティの共注入であることが好ましい。スマートカット(商標)プロセスを参照して、よく知られているように、これらの軽いエンティティは、ほぼ予め定められた深さに、ドナー層110の自由表面11aに対して平行の、即ち図の(x,y)平面に対して平行の薄層中に分散した微小空洞を形成することになる。この薄層は、簡潔にするために、埋め込まれた脆い平面12として参照される。
【0030】
軽いエンティティを注入するためのエネルギーは、ドナー基板111中の決定済みの深さに到達するように選択される。典型的には、水素イオンは、100~1500nm程度の厚さを示す薄層10の範囲を定めるために、10keVと250keVとの間のエネルギーで、516/cmと117/cmとの間のドーズ量で注入される。
【0031】
イオン注入ステップに先立って、ドナー層110の自由表面11aに保護層を堆積させることができることに留意されたい。この保護層は、例えば酸化ケイ素又はチッ化ケイ素などの材料から構成することができる。
【0032】
本発明による方法は、引き続いて、複数のキャリア層20’を形成するための連続するn個のステップであって、nは2以上であり、3以上であることが有利である、連続するn個のステップを含む。n個のキャリア層20’がドナー層110の自由面11aに互いに連続的に配置されて、キャリア基板20を形成する。言い換えると、第1のキャリア層20’はドナー層110のおもて面11aと直接接触し、次に、第2のキャリア層20’は第1のキャリア層20’と接触し、以下、キャリア基板20が得られるまでn個のキャリア層20’に対して同様である(図2c(i)、図2c(ii)、図2c(iii))。
【0033】
個々の形成するステップは、多結晶炭化ケイ素でできたキャリア層20’を形成するために化学気相堆積(CVD)を含む。
【0034】
個々のCVD堆積は、400℃と1100℃との間の温度、好ましくは600℃と900℃との間の温度、実際にはさらに有利には700℃と800℃との間で実施される。ステップc)の堆積は、大気圧化学気相堆積(APCVD)技法、低圧化学気相堆積(LPCVD)技法又はプラズマ増速化学気相堆積(PECVD)技法に基づくことが有利である。
【0035】
本発明によれば、ステップc)のn回の堆積はn通りの異なる温度で実施される。そのようにすることにより、以下で2つの実施形態を参照して説明されるように、n個のキャリア層20’の重畳によって得られるキャリア基板20の品質を改善することができる。
【0036】
個々のキャリア層20’は、150ミクロン以下、100ミクロン以下、実際にはさらには50ミクロン以下の厚さを示すことが好ましい。
【0037】
第1の実施形態によれば、ステップc)のn回の堆積は、n通りの上昇する温度で実施される。一例として、700℃~1000℃までの範囲の温度で4回の連続する堆積を実施することができる。連続する堆積の間に堆積するキャリア層20’の厚さは全く同じであっても、或いは異なっていてもよいことに留意されたい。
【0038】
この実施形態は、キャリア層20’の形成の開始時、即ちこれらの層の補強効果が高くない時点で、ドナー基板111に加えられる熱履歴を制限する点で有利であり、したがって埋め込まれた脆い平面12に空洞が成長することによってもたらされる気泡化によってドナー層110が損傷する危険が著しく低減される。
【0039】
さらに、堆積した第1のキャリア層20’の結晶品質が低下しても(堆積温度がより低い結果として)、上昇した温度で実施される後続する堆積によって結晶品質を回復することができ(少なくとも部分的に)、及び/又は(1つ又は複数の)第1の堆積の結晶性を改善することができる。
【0040】
最高温度、即ち最後の堆積nの間に加えられる温度は、分離を実施するための後続するステップd)で加えられることになる温度未満であることが好ましい。
【0041】
第2の実施形態によれば、ステップc)のn回の堆積は、n通りの下降する温度で実施される。一例として、1000℃~700℃までの範囲の温度で、3回と5回との間で連続する堆積を実施することができる。
【0042】
最高温度、即ち第1の堆積の間に加えられる温度は、分離を実施するための後続するステップd)で加えられることになる温度未満であることが有利である。
【0043】
この第2の実施形態の目的は、極めて良好な結晶品質のドナー層110の上に第1のキャリア層20’を形成し、これらの2つの層の間の界面の導電率を改善することである。後続するキャリア層20’の品質は、潜在的により貧弱になることになる(堆積温度がより低いことに鑑みて)が、堆積温度を低くすることにより、キャリア基板20の所望の厚さに到達するまでの間、埋め込まれた脆い平面12の空洞の成長を制限することができる。高くなる程度が小さい温度で堆積したキャリア層20’は、周囲温度に冷却している間、高くなる程度が小さい熱機械的応力を生成することを考慮することも可能である。
【0044】
任意選択で、説明されている実施形態のうちのいずれか一方では、複数のキャリア層20’を形成するためのn個のステップのうちの少なくとも1つは、化学気相堆積の後に実施されるアニールステップを含む。アニールの温度は、堆積温度より高いが、埋め込まれた脆い平面12に沿って分離する後続するステップd)の間に加えられることになる分離温度より低くなるように選択されることが有利である。
【0045】
一般に、どちらの実施形態を取り入れても、キャリア層20’を形成するn個のステップのうちの任意の1つのステップの間にスタック211に加えられる熱履歴は、薄層10及びその上に形成された(1つ又は複数の)n個のキャリア層20’を変形させることになる、埋め込まれた脆い平面12の空洞の成長をもたらす熱履歴未満である。
【0046】
さらに、複数のキャリア層を20’を形成するためのn個のステップの間にスタック211に加えられる総熱履歴は、埋め込まれた脆い平面12に沿った自発的分離をもたらす熱履歴未満を維持する。
【0047】
方法のステップc)は、ドナー層110と、第1のCVD堆積の間に堆積した第1のキャリア層20’との間に非絶縁界面を画定することが有利である。言い換えると、ステップc)は、少なくとも最終複合構造1では、ドナー層110と第1のキャリア層20’との間の界面が導電界面を形成することができるように実施され、例えば典型的には1ミリオームcm未満の固有界面抵抗が目標とされることになる。界面の導電率を保証するためには、ウェットルート又はドライルートによって、HF(フッ化水素酸)脱酸によって、ドナー層110の自由面11aに存在する固有酸化物の除去が実施されることが有利である。
【0048】
脱酸に先立って、及び/又は第1のキャリア層20’の形成に先立ってドナー基板111に浄化シーケンスを施し、ドナー基板111の自由面に潜在的に存在する、微粒子、金属又は有機汚染物質のすべて又は一部を除去することができる。
【0049】
ドナー基板111との界面の導電率をさらに改善するためには、第1のCVD堆積の間に堆積したキャリア層20’が高いドーピングレベルを示すことが有利である。典型的には、堆積した第1のキャリア層20’は、114/cmと122/cmとの間のN型又はP型のドーパントの濃度を示すことができる。堆積される後続するキャリア層20’は、ドーパントの異なる濃度及び/又は異なる型を示すことができる。したがってステップc)で堆積したn個のキャリア層20’のうちの少なくとも2つのキャリア層20’は、全く異なるドーピングレベルを示すことができる。
【0050】
ステップc)の堆積のパラメータは、前記キャリア基板20が良好な導電率、即ち0.03オームcm以下、実際にはさらには0.01オームcm以下の導電率を示し、高い熱伝導率、即ち150W.m-1.K-1以上、実際にはさらには200W.m-1.K-1以上の熱伝導率を示し、薄層10の熱膨張係数と同様の熱膨張係数、即ち典型的には周囲温度で3.8-6/Kと4.2-6/Kとの間の熱膨張係数を示すように決定されることが有利である。これらの特性を得るためには、キャリア基板20は、多結晶構造、3C SiCタイプの粒子、111配向、基板の平面における平均サイズ1~50μm、0.03オームcm以下の最終抵抗率のためのN型ドーピングである構造的特徴を示すことが好ましい。
【0051】
ステップc)の結果として、キャリア基板20は10ミクロン以上の厚さを示し、50ミクロン以上の厚さを示し、100ミクロン以上の厚さを示し、実際にはさらには200ミクロン以上の厚さを示す。ステップc)によって得られたスタック211は、ドナー基板111の上に配置されたキャリア基板20を備えている。
【0052】
本発明による方法は、引き続いて、一方では複合構造1を形成し、他方ではドナー基板の残りの部分111’を形成するために、埋め込まれた脆い平面12に沿って分離するステップd)を含む(図2d)。
【0053】
有利な実施形態によれば、分離するステップd)は、ステップc)の堆積の温度及び(1つ又は複数の)アニールの温度(実施される場合)より高い分離温度でスタック211に熱処理を施すことによって実施される。これは、埋め込まれた脆い平面12に存在する微小空洞が、埋め込まれた脆い平面12の全範囲にわたって伝搬する破砕波が発生して、複合構造1と初期基板111’の残りの部分との間が分離することになるまでの間、成長動力学に従うことによるものである。実際には、温度は、ステップb)の注入条件の関数として、950℃と1200℃との間、好ましくは1000℃と1200℃との間であってもよい。
【0054】
代替実施形態によれば、分離ステップd)はスタック211に機械的応力を加えることによって実施される。応力は、例えば埋め込まれた脆い平面12の近くにツール(例えばブレード又はベベルの形態)を挿入することによって付与され得る。一例として、分離応力は数GPa程度、好ましくは2GPaを超える応力であってもよい。
【0055】
キャリア基板20をさらに厚くするために、ステップd)の分離の後に、少なくとも1回の新しいCVD堆積を実施することを計画することも任意選択で可能であることに留意されたい。
【0056】
ステップd)の後、多結晶炭化ケイ素でできたキャリア基板20の上に配置された、単結晶炭化ケイ素でできた薄層10を備えた複合構造1が得られる。
【0057】
自ずから分かるように、分離ステップd)の結果として、複合構造1の薄層10の自由面10aは、5nm RMSと100nm RMS(20ミクロン×20ミクロンの走査で原子間力顕微鏡(AFM)で測定して)との間の表面粗さを示す。
【0058】
したがって複合構造1に(1つ又は複数の)機械的処理及び/又は化学的処理を施すステップe)は、薄層10の自由表面10aを滑らかにし、及び/又は前記構造1の厚さの一様性を修正するために用意されている(図2e)。
【0059】
ステップe)は、薄層10の自由面10aの化学機械研磨(CMP)を含むことができ、典型的には50nm~1000nm程度の材料が除去されて、0.5nm RMS未満(20×20μmのAFM視野で)、実際にはさらには0.3nm未満の最終粗さが得られる。ステップe)は、薄層10の自由面10aの品質をさらに改善するために、化学的又はプラズマ(浄化又はエッチング)処理をも含むことができ、例えばSC1/SC2(標準浄化1、標準浄化2)及び/又はHF(フッ化水素酸)タイプ、又はN、Ar、CF、等々、プラズマの浄化を含むことができる。
【0060】
さらに、ステップe)は、キャリア基板20の裏面20bの化学機械研磨(CMP)及び/又は化学的処理(エッチング又は浄化)及び/又は機械的処理(研削)を含むことができる。このような処理により、前記キャリア基板20の厚さの一様性を改善することができ、また、前記キャリア基板20の裏面20b粗さをも改善することができる。少なくとも1つの金属電極が複合基板1の裏面20bに存在することになる垂直方向の構成要素を準備するためには、0.5nm RMS(20ミクロン×20ミクロンの視野で原子間力顕微鏡(AFM)で測定して)未満の粗さが望ましい。
【0061】
キャリア基板20の裏面20bに施されるこれらの処理は、分離ステップd)の直前、即ち複合構造1のおもて面10aが露出される前に任意選択で実施することも可能であり、そうすることにより、特に化学エッチング又は機械ラッピング(或いは機械研削)などの汚染処理又は制限処理中におけるおもて面10aの汚染を制限することも可能であることに留意されたい。
【0062】
複合構造1の円形輪郭の形状及びエッジ不要物の形状を超小型電子製造プロセスの要件と両立させるために、このステップe)の間に複合構造1のエッジの研磨又は研削をも実施することができる。
【0063】
有利な実施形態によれば、化学機械処理のステップe)は、前記構造1の厚さを滑らかにし、厚さの一様性を改善するために、複合構造1のおもて面10a及び裏面20bの同時研磨(CMP)を含む。研磨パラメータは、おもて面10aと裏面20bとの間で異なっていてもよい。c-SiC表面及びp-SiC表面の円滑化には、通常、異なる消耗品が必要である。キャリア基板20がp-SiCでできている場合、研磨の化学成分による粒子境界に対する優先的攻撃を制限するために、特に裏面20bに対しては研磨の機械成分が好ましい。一例として、機械成分の効果を強めるために、回転速度(プレート及び研磨ヘッド)、圧力、濃度、及び研磨材の物理的特性(即ちほぼ10nmと1μmとの間のダイヤモンドナノ粒子の直径)などの研磨パラメータを修正することができる。
【0064】
さらに有利な実施形態によれば、ステップe)の後に、1000℃と1800℃との間の温度で、ほぼ1時間にわたり、最長で数時間にわたる熱処理のステップe’)が実施される。このステップの目的は、構造1が薄層10上の構成要素の製造に必要な後続する高温熱処理と両立するよう、薄層10の中及び/又は薄層10の上に依然として存在している構造欠陥又は表面欠陥を直すことによって、及び、適切である場合、キャリア基板20の結晶構成を変化させることによって複合構造1を安定させることである。
【0065】
本発明による方法は、複合構造1の薄層10の上に単結晶炭化ケイ素の追加層10’をエピタキシャル成長させるステップf)を含むことができる(図2f)。このようなステップは、構成要素を製造するために比較的厚いワーキング層100、典型的には5~50ミクロン程度の厚さのワーキング層100が必要である場合に適用される。エピタキシー条件は、ステップa)のエピタキシー条件と同じように任意選択で選択することができ、複合構造1の不均質材料の結果としてワーキング層100(薄層10と追加層10’との組立てに対応する)に誘導される応力を制限するためにはより低い温度におけるエピタキシーであることが好ましい。
【0066】
最後に、製造方法は、初期基板11として、又はドナー基板111として再使用するために、ドナー基板の残りの部分111’を再生するステップを含むことができる。このような再生ステップは、表面若しくはエッジの化学機械研磨、及び/又は機械研削、及び/又はドライ若しくはウェット化学エッチングによる面110’(図2d)のうちの1つ又は複数の処理に基づく。ステップa)で形成されるドナー層110の厚さは、ドナー基板111の残りの部分111’をドナー基板111として少なくとも2回再使用することができるように画定されることが好ましい。変換層13が存在している場合、前記層をそのままの状態で維持するための注意が必要であり、即ちドナー層10の一部を常にドナー基板の残りの部分111’の上に維持することが好ましい。したがってドナー層10のその部分が複合構造1を準備するには不十分である場合、ドナー層10をエピタキシャル成長させるステップのみが必要であり、変換層13を成長させる先行するステップは不要である。
【0067】
(実施例)
非制限の例示的実施形態によれば、初期基板11は4Hポリタイプのc-SiCのウェーハであり、<11-20>軸線に対して4.0°±0.5°で配向され、直径150mm、厚さ350μmである。
【0068】
c-SiCでできたドナー層110のエピタキシャル成長に先立って、RCAタイプ(標準浄化1+標準浄化2)、次にカロー酸(硫酸と過酸化水素の混合物)、次にHF(フッ化水素酸)の従来の浄化シーケンスが初期基板11に対して実施される。
【0069】
エピタキシーチャンバで、1650℃の温度で、シラン(SiH)及びプロパン(C)又はエチレン(C)などの先駆体を使用して成長が実施され、c-SiCでできた、厚さ30ミクロンのドナー層110を生成する(成長速度:10ミクロン/h)。ドナー層は、1/cm程度のBPD欠陥の密度を示す。
【0070】
150keVのエネルギー、及びドナー層110の自由表面全体に616H/cmのドーズ量で水素イオンの注入が実施される。したがって埋め込まれた脆い平面12がドナー層110のほぼ800nmの深さに作り出される。
【0071】
ドナー層110の自由面の潜在的な汚染物質を除去するために、RCA+カロー酸タイプの浄化シーケンスがドナー基板111に対して実施される。
【0072】
第1のキャリア層20’のための50ミクロンの厚さを達成するために、700℃の温度で、メチルシラン(MS)(CHSiH)先駆体を使用して、3.7トルの圧力の下で60分にわたって第1のLPCVD堆積がドナー層110に対して実施される。これらの条件の下で前記支持層20’が多結晶SiCで構築される。
【0073】
p-SiCでできた第2のキャリア層20’のための100ミクロンの厚さを達成するために、800℃の温度で、MS先駆体を使用して、4トルの圧力の下で30分にわたって第2のLPCVD堆積が第1のキャリア層20’に対して実施される。
【0074】
p-SiCでできた第3のキャリア層20’のための250ミクロンの厚さを達成するために、850℃の温度で、MS先駆体を使用して、4トルの圧力の下で45分にわたって第3のLPCVD堆積が第2のキャリア層20’に対して実施される。
【0075】
3つのキャリア層20’の重畳によって形成されたキャリア基板20は400ミクロンの厚さを示す。
【0076】
引き続いて、ドナー基板111及びキャリア基板20で形成されたスタック211に、50分にわたる1000℃のアニールが施される。前記アニールの間、埋め込まれた脆い平面12のレベルで分離が実施される。この分離ステップd)の結果として、薄層10及びキャリア基板20で形成された複合構造1がドナー基板の残りの部分111’から分離される。
【0077】
キャリア基板20の裏面20bでは50ミクロン程度の厚さが除去される。次に、薄層10の表面粗さ及びキャリア基板20の裏面20bの表面粗さを回復するために両面研磨が実施される。
【0078】
当然、本発明は実施形態に限定されず、説明されている例に限定されず、特許請求の範囲によって定義されている本発明の範囲を逸脱することなく、代替実施形態をそれらに導入することが可能である。
図1
図2a
図2b
図2c(i)】
図2c(ii)】
図2c(iii)】
図2d
図2e
図2f
図3a
図3b