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特許7568982光増幅システム、光増幅装置及び光増幅方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】光増幅システム、光増幅装置及び光増幅方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/39 20060101AFI20241009BHJP
   H04B 10/291 20130101ALI20241009BHJP
【FI】
G02F1/39
H04B10/291
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023522175
(86)(22)【出願日】2021-05-21
(86)【国際出願番号】 JP2021019408
(87)【国際公開番号】W WO2022244255
(87)【国際公開日】2022-11-24
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 新平
(72)【発明者】
【氏名】風間 拓志
(72)【発明者】
【氏名】小林 孝行
(72)【発明者】
【氏名】宮本 裕
(72)【発明者】
【氏名】梅木 毅伺
【審査官】野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-064134(JP,A)
【文献】特開2017-219749(JP,A)
【文献】特開2018-019350(JP,A)
【文献】UMEKI et al.,Simultaneous nonlinearity mitigation in 92 × 180-Gbit/s PDM-16QAM transmission over 3840 km using P-based guard-band-less optical phase conjugation,Optics Express,米国,Optical Society of America,2016年07月25日,Vol.24, No.15,pp.16945-16951
【文献】UMEKI et al.,PDM Signal Amplification Using PPLN-Based Polarization-Independent Phase-Sensitive Amplifier,Journal of Lightwave Technology,IEEE,2015年04月01日,Vol.33, No.7,pp.1326-1332
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00-1/125
1/21-7/00
IEEE Xplore
Scopus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦続接続された複数の光増幅部を有する光増幅システムであって、
前記光増幅部は、
光信号を異なる二つの帯域の光信号に分割する帯域分割部と、
分割された光信号を互いに直交する2つの偏波成分に分離させる偏波分波部と、
前記偏波分波部によって分離された前記光信号と励起光とを合波する励起光合波部と、
光パラメトリック増幅過程を発生させ、前記光信号を増幅させる増幅媒体と、
前記増幅媒体によって増幅された前記光信号と前記励起光とを分離させる励起光分離部と、
分離された前記二つの偏波成分を合成する偏波合成部と、
分割された前記二つの帯域を合波する帯域合波部と、
を備え
前記複数の光増幅部は、飽和出力電力が低く、飽和出力時の利得が高いものほど、より前段に配置されるように縦続接続される
光増幅システム。
【請求項2】
前記光増幅部によって増幅された前記光信号の利得特性を平坦化させる利得等化部
をさらに有する請求項に記載の光増幅システム。
【請求項3】
前記光パラメトリック増幅過程で生じた不要な光成分を除去する帯域通過フィルタ
をさらに有する請求項1又は2に記載の光増幅システム。
【請求項4】
縦続接続された複数の光増幅媒体を有する光増幅装置であって、
光信号を異なる二つの帯域の光信号に分割する帯域分割部と、
分割された光信号を互いに直交する2つの偏波成分に分離させる偏波分波部と、
前記偏波分波部によって分離された前記光信号と励起光とを合波する励起光合波部と、
光パラメトリック増幅過程を発生させ、前記光信号を増幅させる第1の増幅媒体と、
前記光パラメトリック増幅過程を発生させ、前記第1の増幅媒体によって増幅された前記光信号を増幅させる第2の増幅媒体と、
前記第2の増幅媒体によって増幅された前記光信号と前記励起光とを分離させる励起光分離部と、
分離された前記二つの偏波成分を合成する偏波合成部と、
分割された前記二つの帯域を合波する帯域合波部と、
を備え
前記複数の光増幅媒体は、飽和出力電力が低く、飽和出力時の利得が高いものほど、より前段に配置されるように縦続接続される
光増幅装置。
【請求項5】
飽和出力電力が低く、飽和出力時の利得が高いものほど、より前段に配置されるように縦続接続された複数の光増幅部を有する光増幅システムによる光増幅方法であって、
前記光増幅部が、光信号を異なる二つの帯域の光信号に分割する帯域分割ステップと、
前記光増幅部が、分割された光信号を互いに直交する2つの偏波成分に分離させる偏波分波ステップと、
前記光増幅部が、前記偏波分波ステップにおいて分離された前記光信号と励起光とを合波する励起光合波ステップと、
前記光増幅部が、光パラメトリック増幅過程を発生させ、前記光信号を増幅させる増幅ステップと、
前記光増幅部が、前記増幅ステップにおいて増幅された前記光信号と前記励起光とを分離させる励起光分離ステップと、
前記光増幅部が、分離された前記二つの偏波成分を合成する偏波合成ステップと、
前記光増幅部が、分割された前記二つの帯域を合波する帯域合波ステップと、
を有する光増幅方法。
【請求項6】
飽和出力電力が低く、飽和出力時の利得が高いものほど、より前段に配置されるように縦続接続された複数の光増幅媒体を有する光増幅装置による光増幅方法であって、
光信号を異なる二つの帯域の光信号に分割する帯域分割ステップと、
分割された光信号を互いに直交する2つの偏波成分に分離させる偏波分波ステップと、
前記偏波分波ステップにおいて分離された前記光信号と励起光とを合波する励起光合波ステップと、
第1の増幅媒体により、光パラメトリック増幅過程を発生させ、前記光信号を増幅させる第1の増幅ステップと、
第2の増幅媒体により、光パラメトリック増幅過程を発生させ、前記第1の増幅ステップにおいて増幅された前記光信号を増幅させる第2の増幅ステップと、
前記第2の増幅ステップにおいて増幅された前記光信号と前記励起光とを分離させる励起光分離ステップと、
分離された前記二つの偏波成分を合成する偏波合成ステップと、
分割された前記二つの帯域を合波する帯域合波ステップと、
を有する光増幅方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光増幅システム、光増幅装置及び光増幅方法に関する。
【背景技術】
【0002】
長距離の光ファイバ伝送では、一定間隔で設けられた光増幅器によって光信号を増幅させる光増幅中継伝送方式が用いられている。光増幅器は、光信号が光ファイバ中を伝搬するときに生じる光損失を補償する。そのため、光ファイバ伝送システムの伝送帯域は、光増幅器の増幅帯域によって制限される。一般的な光増幅器の1つとして、光ファイバに希土類元素が添加された希土類添加型光増幅器がある。代表的な希土類添加型光増幅器であるエルビウム添加光ファイバ増幅器(EDFA:Erbium-Doped Fiber Amplifier)の増幅帯域は、C-band(1530~1565[nm]程度)内の約4[THz]の帯域であり、長距離の光ファイバ伝送において一般的に使用される波長帯域である。
【0003】
上記のような光増幅器の増幅帯域に起因する伝送帯域の制限を回避し、広帯域な光増幅を実現する方法として、異種増幅器を並列させて伝送帯域を拡張させる方法が考えられる。ここでいう異種増幅器とは、例えば光ファイバに添加される希土類元素を異ならせること等によって増幅帯域がシフトされた光増幅器である。しかしながら、この方法ではC-band以外の帯域においては、利得が低く、かつ雑音指数が高くなってしまうという課題がある。また、光ファイバ伝送システムの装置コスト及びオペレーションコスト等の増大を抑えるためには、単一種類の光増幅器が用いられることが望ましい。
【0004】
その他、広帯域な光増幅を実現する光増幅器として、半導体光増幅器(SOA:Semiconductor optical amplifier)がある。SOAは、12[THz]以上の増幅帯域を実現
できることが実証されている。しかしながらSOAは、信号の入力パワーの増減によって信号歪みが生じることが報告されている。波長チャネルのアドドロップ等を考慮した光ネットワークへの適用を考えた場合、このように信号の入力パワーの増減によって信号歪みが生じる特性を光増幅器が有していることは望ましくない。
【0005】
そこで近年、光パラメトリック増幅器(OPA:Optical Parametric Amplifier)が注目されている。OPAは、2次の非線形光学媒質であるニオブ酸リチウムや、3次の非線形光学媒質である光ファイバ等の非線形光学媒質中の非線形光学効果を利用して、異なる波長の光どうしを相互作用させることで、入力光を増幅させる光増幅器である。広帯域性と高利得とを共に実現するためには、特に周期分極反転ニオブ酸リチウム(PPLN:Periodically Poled Lithium Niobate)を増幅媒体とする構成が有望である。PPLNを増幅媒体とするOPAによって、15[dB]の増幅利得で10[THz]を超える広帯域な中継増幅伝送を実現できることが実証されている(非特許文献1参照)。また、光パラメトリック増幅過程は、反応速度が非常に速い。そのため、OPAは、信号の入力パワーの増減に対しても堅牢性の高い光増幅特性を実現することができる。
【0006】
PPLNをはじめとする2次の非線形光学媒質では、特定方向の偏波状態に対してのみ非線形光学効果が発現する。そのため、光信号を、増幅させる前に偏波ビームスプリッタ等によって偏波分離し、増幅させた後に合波する偏波ダイバーシティ構成が必要となる。また、3次の非線形光学媒質であっても、励起光の偏波状態に応じた利得が生じる。そのため、偏波間利得差(PDG:Polarization Differential Gain)を抑えるために、上記のような偏波ダイバーシティ構成が用いられることが望ましい。
【0007】
OPAでは、入力された光信号の増幅時に発現する副次的な効果として、光信号の位相共役光であるアイドラ光が生じる。信号伝送のためには、元の光信号及びアイドラ光のうちいずれか一方の光成分が伝送されればよい。信号伝送に用いられないほうの光成分は、波長フィルタによってカットされる。
【0008】
アイドラ光が信号伝送に用いられる場合、OPAは、光位相共役変換器(OPC:Optical Phase Conjugator)として機能し、非線形位相歪みのような位相方向の光雑音を補償することができる(非特許文献2参照)。また、このような非線形位相歪み等の補償効果が利用されない場合であっても、OPAは、波長変換器として利用することが可能である(特許文献1参照)。位相共役光を新たな伝送光信号とすることで、これまでの伝送で生じた非線形位相歪みのような位相方向の雑音を、位相共役変換後の伝送で生じる雑音で相殺することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2020-086031号公報
【非特許文献】
【0010】
【文献】T. Kobayashi et al., “Wide-band Inline-Amplified WDM Transmission Using PPLN-Based Optical Parametric Amplifier,” Journal of Lightwave Technology, Vol.39, No.3, IEEE, pp.787-794, February 2021.
【文献】T. Umeki et al., “Simultaneous nonlinearity mitigation in 92 × 180-Gbit/s PDM-16QAM transmission over 3840 km using PPLN-based guard-band-less optical phase conjugation,” Optics Express, Vol.24, No.15, pp.16945-16951, July 2016.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
アイドラ光は、増幅媒体の位相整合特性の中心周波数である基本周波数を境にして、光信号と対称な周波数に発生する。そのため、OPAでの増幅時には、アイドラ光が発生する帯域は空けておく必要があり、当該帯域には光信号を配置することができない。したがって、OPAの増幅帯域を最大限に利用するためには、基本周波数を中心として光信号を2つのバンドに分け、各光信号を互いに異なる非線形媒体によって増幅し、不要な光成分を波長フィルタでカットしてから合波する構成が必要になる。ここでいう不要な光成分とは、前述の通り、元の光信号及びアイドラ光のうち信号伝送に用いられないほうの光成分である。
【0012】
OPAの利得を上げるためには、例えば、励起光の光電力を高める、媒体長を長くする、又は、媒体の非線形定数を大きくする、等の方法が考えられる。光ファイバベースのOPAでは、励起光を高パワー化するために、高出力な1.55[μm]帯のEDFAを使用することができる。しかしながら、高パワーな励起光は、3次の非線形効果である、自己位相変調や相互位相変調、不要な四光波混合を誘発する。これにより、高パワーな励起光は、光信号に対するパラメトリック増幅効率の低下や、波長チャネル間のクロストークを誘発してしまう。
【0013】
2次の非線形媒体では、3次の非線形効果の影響は比較的小さいが、励起光の波長帯は1.55[μm]帯の信号の2倍の周波数であり、EDFAのような高出力の光増幅器を直接利用することができない。そこで、EDFAを用いて1.55[μm]帯の高パワーな励起光を生成した後で、生成された励起光を2次の非線形効果である第2高調波発生を用いて2倍の周波数の励起光に変換する構成が用いられる。そのため、励起光の電力は、EDFAの出力だけでなく、第2高調波発生の効率によっても制限されてしまう。
【0014】
媒体長を長くする場合、光ファイバ中の各種分散によって位相整合関係が劣化する。そのため、効率的に利得を高めることは難しい。2次の非線形媒体では周期分極反転構造による疑似位相整合によって、位相整合を保ちつつ媒体長を長くすることできる。しかしながら、ポンプデプレッションによる利得飽和によって、利得は制限される。媒体の非線形定数を大きくすることによっても、利得を大きくすることはできるが、やはりポンプデプレッションによる利得飽和によって、利得は制限される。
【0015】
一方で、光通信においては、長距離の基幹伝送網における増幅中継器間のスパンロスは、フィルタ及び利得等化器のような構成要素の損失も含めて20~30[dB]程度である。光増幅器には、このスパンロスを補償する利得が求められる。また、空間光通信のようなロスの大きい無中継伝送等も考慮すると、40[dB]以上の利得が必要になる場合も考えられる。さらに、波長多重によって光信号全体のトータルパワーが上昇すると、増幅利得だけでなく、利得飽和特性による飽和出力パワーも重要になる。利得飽和領域で光信号を増幅する場合、時間的なパワーの変動に対して線形に増幅がなされず、変調パターンが大きく歪んでしまうことが問題となる。前述の通り、光パラメトリック増幅においては、励起光のポンプデプレッションによって利得飽和が生じるため、これによって飽和出力パワーは制限される。この様子は、光の伝搬方向(z方向)に対して理想的な位相整合特性をもつ2次非線形媒体の場合、以下の(1)~(3)式の連立微分方程式のように記述することができる。
【0016】
【数1】
【0017】
【数2】
【0018】
【数3】
【0019】
ここで、A、A、及びAは、それぞれ、励起光、信号光、及びOPAに伴って成長する信号光の位相共役光(アイドラ光)の振幅である。また、κは、非線形過程の発生効率を表す定数である。これらの式から、非線形過程の発生効率が上昇した場合、増幅利得が大きくなるが、その分、励起光の消費が加速し、急速なポンプデプレッションによって飽和出力パワーは減少する傾向になることがわかる。
【0020】
このように、OPAの高利得化及び飽和出力パワーの高出力化には、様々な要因による制限がある。そのため、様々な領域においてOPAを適用するためには、高利得化、及び高出力化が課題となる。
【0021】
上記事情に鑑み、本発明は、より高利得、及びより高出力のパラメトリック増幅を行うことができる光増幅システム、光増幅装置及び光増幅方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の一態様は、縦続接続された複数の光増幅部を有する光増幅システムであって、前記光増幅部は、光信号を異なる二つの帯域の光信号に分割する帯域分割部と、分割された光信号を互いに直交する2つの偏波成分に分離させる偏波分波部と、前記偏波分波部によって分離された前記光信号と励起光とを合波する励起光合波部と、光パラメトリック増幅過程を発生させ、前記光信号を増幅させる増幅媒体と、前記増幅媒体によって増幅された前記光信号と前記励起光とを分離させる励起光分離部と、分離された前記二つの偏波成分を合成する偏波合成部と、分割された前記二つの帯域を合波する帯域合波部と、を備える光増幅システムである。
【0023】
本発明の一態様は、縦続接続された複数の光増幅媒体を有する光増幅装置であって、光信号を異なる二つの帯域の光信号に分割する帯域分割部と、分割された光信号を互いに直交する2つの偏波成分に分離させる偏波分波部と、前記偏波分波部によって分離された前記光信号と励起光とを合波する励起光合波部と、光パラメトリック増幅過程を発生させ、前記光信号を増幅させる第1の増幅媒体と、前記光パラメトリック増幅過程を発生させ、前記第1の増幅媒体によって増幅された前記光信号を増幅させる第2の増幅媒体と、前記第2の増幅媒体によって増幅された前記光信号と前記励起光とを分離させる励起光分離部と、分離された前記二つの偏波成分を合成する偏波合成部と、分割された前記二つの帯域を合波する帯域合波部と、を備える光増幅装置である。
【0024】
本発明の一態様は、縦続接続された複数の光増幅部を有する光増幅システムによる光増幅方法であって、前記光増幅部が、光信号を異なる二つの帯域の光信号に分割する帯域分割ステップと、前記光増幅部が、分割された光信号を互いに直交する2つの偏波成分に分離させる偏波分波ステップと、前記光増幅部が、前記偏波分波ステップにおいて分離された前記光信号と励起光とを合波する励起光合波ステップと、前記光増幅部が、光パラメトリック増幅過程を発生させ、前記光信号を増幅させる増幅ステップと、前記光増幅部が、前記増幅ステップにおいて増幅された前記光信号と前記励起光とを分離させる励起光分離ステップと、前記光増幅部が、分離された前記二つの偏波成分を合成する偏波合成ステップと、前記光増幅部が、分割された前記二つの帯域を合波する帯域合波部と、を有する光増幅方法である。
【0025】
本発明の一態様は、縦続接続された複数の光増幅媒体を有する光増幅装置による光増幅方法であって、光信号を異なる二つの帯域の光信号に分割する帯域分割ステップと、分割された光信号を互いに直交する2つの偏波成分に分離させる偏波分波ステップと、前記偏波分波ステップにおいて分離された前記光信号と励起光とを合波する励起光合波ステップと、第1の増幅媒体により、光パラメトリック増幅過程を発生させ、前記光信号を増幅させる第1の増幅ステップと、第2の増幅媒体により、光パラメトリック増幅過程を発生させ、前記第1の増幅ステップにおいて増幅された光信号を増幅させる第2の増幅ステップと、前記第2の増幅ステップにおいて増幅された前記光信号と前記励起光とを分離させる励起光分離ステップと、分離された前記二つの偏波成分を合成する偏波合成ステップと、分割された前記二つの帯域を合波する帯域合波ステップと、を有する光増幅方法である。
【発明の効果】
【0026】
本発明により、より高利得、及びより高出力のパラメトリック増幅を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1の実施形態における光増幅システム1の全体構成図である。
図2】本発明の第1の実施形態における光増幅装置11の構成を示す図である。
図3】本発明の第1の実施形態における光増幅システム1の動作を示すフローチャートである。
図4】本発明の第1の実施形態における光増幅装置11の動作を示すフローチャートである。
図5】本発明の第1の実施形態の変形例における光増幅装置11aの構成を示す図である。
図6】本発明の第2の実施形態における光増幅システム1aの全体構成図である。
図7】二次非線形媒体の飽和出力パワーの計算結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0029】
EDFAを用いた伝送システムでは、低雑音かつ高出力な光増幅を実現させる方法として、複数のEDFAが縦続接続された構成が用いられることがある。EDFAは、高利得となるように動作させると雑音指数が増加するという傾向がある。そのため、縦続接続された複数のEDFAのうち、前段のEDFAは低利得及び低雑音となるように動作させ、後段のEDFAは高利得となるように動作させる。
【0030】
増幅器において付加される過剰雑音は、入力信号パワーに依存する。そのため、例えば縦続接続された2つのEDFAでの増幅における雑音指数は、縦続接続された複数のEDFAのうち初段のEDFAでの増幅における雑音指数の影響が支配的となる。これにより、低雑音と高利得とを両立することが可能となる。
【0031】
以下に説明する各実施形態における光増幅システム及び光増幅装置では、上記のようなEDFAの構成に倣い、OPAを縦続接続する構成である。これにより、以下に説明する実施形態における光増幅システム及び光増幅装置は、高利得及び高出力なパラメトリック増幅を実現する。
【0032】
OPAでは、入力信号パワーによらず一定の増幅利得が得られるため、飽和出力パワー内であれば、光増幅システム全体の増幅利得は各OPAの利得の和と等しくなる。また前述の通り、利得の高い高効率なOPAは飽和出力パワーが小さく、低効率なOPAは飽和出力パワーが大きいという傾向がある。そのため、前段に高効率のOPAを配置し、後段になるにつれてより低効率のOPAを配置することによって、光増幅システム全体の高出力化を図ることができる。OPAは、EDFAとは異なり、利得による雑音指数の変化は少ない。そのため、より低利得なOPAを後段に配置する構成を採用することによる雑音面におけるペナルティは大きくないものと考えらえる。
【0033】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態について説明する。
【0034】
[光増幅システムの構成]
以下、本実施形態における光増幅システム1の構成について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態における光増幅システム1の全体構成図である。図1に示されるように、光増幅システム1は、第1光増幅装置11-1と、利得等化器12-1と、第2光増幅装置11-2と、利得等化器12-2と、を備える。
【0035】
なお、以下の説明において、第1光増幅装置11-1と第2光増幅装置11-2とを区別して説明する必要がない場合には、単に「光増幅装置11」という。また、以下の説明において、利得等化器12-1と利得等化器12-2とを区別して説明する必要がない場合には、単に「利得等化器12」という。
【0036】
光増幅装置11は、例えば光増幅中継伝送方式の光ファイバ伝送システムにおいて一定間隔で設けられた光増幅器である。光増幅装置11は、光信号が光ファイバ中を伝搬するときに生じる光損失を補償する。図1に示されるように、光増幅システム1は、縦続接続された第1光増幅装置11-1及び第2光増幅装置11-2の2つの光パラメトリック増幅器(以下、「OPA」という。)によって光信号を増幅させるシステムである。
【0037】
初段のOPAである第1光増幅装置11-1には、光ファイバ伝送路から伝送信号(光信号)が入射される。第1光増幅装置11-1は、入射された光信号を増幅し、利得等化器12-1へ出力する。第1光増幅装置11-1から出力された光信号は、OPAの利得スペクトルに従ってチルトがついている。
【0038】
利得等化器12-1には、第1光増幅装置11-1から出力された光信号が入力される。利得等化器12-1は、例えば利得を等化させるフィルタを含んで構成される。利得等化器12-1は、入力された(チルトがついた)光信号を平坦化(利得等化)する。利得等化器12-1は、平坦化された光信号を第2光増幅装置11-2へ出力する。
【0039】
後段のOPAである第2光増幅装置11-2には、利得等化器12-1から出力された光信号が入力される。第2光増幅装置11-2は、入射された光信号を増幅し、利得等化器12-2へ出力する。第2光増幅装置11-2から出力された光信号は、OPAの利得スペクトルに従ってチルトがついている。
【0040】
利得等化器12-2には、第1光増幅装置11-1から出力された光信号が入力される。利得等化器12-2は、例えば利得を等化させるフィルタを含んで構成される。利得等化器12-2は、入力された(チルトがついた)光信号を平坦化(利得等化)する。利得等化器12-2は、平坦化された光信号を光ファイバ伝送路へ出力する。
【0041】
増幅後のスペクトルにチルトがついている場合、高利得な周波数と低利得な周波数とが生じる。高品質な増幅中継を行うためには、最終的に、低利得な周波数が所望の電力となるように光信号を増幅させ、利得等化器によって高利得な周波数成分を減衰させてスペクトルを平坦にさせる必要がある。
【0042】
初段のOPAによってチルトがついた状態の光信号が後段のOPAに入力されると、高利得な周波数成分のパワーがOPAの出力を必要以上に消費してしまう。これにより、光増幅システム全体としての高利得化及び高出力化が困難になる。そのため、増幅の度に利得等化器を用いてスペクトルを平坦化させることが望ましい。
【0043】
一方で、OPAにおける利得の周波数依存性は、EDFA等における利得の周波数依存性に比べて小さい。そのため、OPAの特性、利得等化器の動作範囲、及び所望の利得等によっては、縦続接続された複数のOPAのうち最終段のOPAから出力された光信号のみに対して、1度だけ利得等化を行うような構成とすることも考えられる。
【0044】
なお、図1に示される光増幅システム1は、2つの光増幅装置11(OPA)を備える構成であるが、光増幅装置11の個数は、これに限定されるものではない。光増幅装置11の個数は、3つ以上であってもよい。
【0045】
なお、第1光増幅装置11-1及び第2光増幅装置11-2から出力される光増幅がなされた後の光信号に対して、帯域通過フィルタを適用する構成にしてもよい。帯域通過フィルタは、信号帯域外に生じた雑音成分をカットし、信号成分のみを抽出する。
【0046】
[光増幅装置の構成]
以下、本実施形態における光増幅装置11の構成について説明する。図2は、本発明の第1の実施形態における光増幅装置11の構成を示す図である。
【0047】
図2に示されるように、光増幅装置11は、帯域分波部111と、偏波分離部112-1~偏波分離部112-2と、励起光合波部113-1~励起光合波部113-4と、光増幅部115-1~光増幅部115-4と、励起光分離部117-1~励起光分離部117-4と、偏波合成部118-1~偏波合成部118-2と、帯域合波部119と、を備える。
【0048】
光増幅装置11には、光ファイバ伝送路又は利得等化器12から光信号が入力される。光増幅装置11は、入力された光信号を増幅して利得等化器12へ出力する。前述の通り、光増幅装置11は、例えば光増幅中継伝送方式の光ファイバ伝送システムにおいて一定間隔で設けられた光増幅器である。光増幅装置11は、光信号が光ファイバ中を伝搬するときに生じる光損失を補償する。
【0049】
帯域分波部111は、光増幅装置11に入力された光信号を分波する。帯域分波部111は、光信号を、増幅媒体の位相整合条件の中心周波数(以下、「基本周波数」という。)を境にした二つの帯域成分である成分Aと成分Bとに分波する。帯域分波部111は、成分Aの光信号を偏波分離部112-1へ出力し、成分Bの光信号を偏波分離部112-2へ出力する。
【0050】
なお、上記のように帯域分波部111が光信号を2つの帯域に分割するのは、後述される光パラメトリック増幅に伴って、入力された光信号の位相共役光であるアイドラ光が、基本周波数に対して対称な周波数に発生するためである。OPAでは、入力された光信号の増幅時に発現する副次的な効果として、光信号の位相共役光であるアイドラ光が生じる。信号伝送のためには、元の光信号及びアイドラ光のうちいずれか一方の光成分が伝送されればよい。従来、信号伝送に用いられないほうの光成分は波長フィルタによってカットされるため、信号伝送用の光ファイバが励振されることはない。光信号とアイドラ光とは、互いに位相共役関係にある点を除いては互いに完全なコピーである。
【0051】
偏波分離部112-1は、帯域分波部111から出力された成分Aの光信号を、例えば偏波ビームスプリッタ等を用いて分離する。これは、非線形媒体中での非線形現象には偏波依存性があるためである。偏波分離部112-1は、成分Aの光信号を、直交する二つの偏波状態の成分である成分Axと成分Ayとに分離する。偏波分離部112-1は、成分Axの光信号を励起光合波部113-1へ出力し、成分Ayの光信号を励起光合波部113-2へ出力する。
【0052】
偏波分離部112-2は、帯域分波部111から出力された成分Bの光信号を、偏波ビームスプリッタ等を用いて分離する。前述の通り、これは、非線形媒体中での非線形現象には偏波依存性があるためである。偏波分離部112-2は、成分Bの光信号を、直交する二つの偏波状態の成分である成分Bxと成分Byとに分離する。偏波分離部112-2は、成分Bxの光信号を励起光合波部113-3へ出力し、成分Byの光信号を励起光合波部113-4へ出力する。
【0053】
励起光合波部113-1~励起光合波部113-4は、例えば波長多重フィルタ又はダイクロイックミラー等を含んで構成される。
【0054】
励起光合波部113-1には、偏波分離部112-1から出力された成分Axの光信号と励起光とが入力される。励起光合波部113-1は、成分Axの光信号と励起光とを合波する。励起光合波部113-1は、励起光と合波された光信号を光増幅部115-1へ出力する。
【0055】
励起光合波部113-2には、偏波分離部112-2から出力された成分Ayの光信号と励起光とが入力される。励起光合波部113-2は、成分Ayの光信号と励起光とを合波する。励起光合波部113-2は、励起光と合波された光信号を光増幅部115-2へ出力する。
【0056】
励起光合波部113-3には、偏波分離部112-3から出力された成分Bxの光信号と励起光とが入力される。励起光合波部113-3は、成分Bxの光信号と励起光とを合波する。励起光合波部113-3は、励起光と合波された光信号を光増幅部115-3へ出力する。
【0057】
励起光合波部113-4には、偏波分離部112-4から出力された成分Byの光信号と励起光とが入力される。励起光合波部113-4は、成分Byの光信号と励起光とを合波する。励起光合波部113-4は、励起光と合波された光信号を光増幅部115-4へ出力する。
【0058】
光増幅部115-1~光増幅部115-4は、2次又は3次の高非線形媒体を有する光パラメトリック増幅器を含む。
【0059】
光増幅部115-1には、励起光合波部113-1から出力された光信号が入力される。光増幅部115-1は、入力された光信号に対し、光パラメトリック増幅を行う。光パラメトリック増幅に伴い、成分Axの光信号の位相共役成分であるアイドラ光(位相共役光)が発生する。このアイドラ光は、増幅媒体の基本周波数を境にして、成分Axの光信号の周波数と対称な周波数に発生する。光増幅部115-1は、光パラメトリック増幅された光信号を、励起光分離部117-1へ出力する。
【0060】
光増幅部115-2には、励起光合波部113-2から出力された光信号が入力される。光増幅部115-2は、入力された光信号に対し、光パラメトリック増幅を行う。光パラメトリック増幅に伴い、成分Ayの光信号の位相共役成分であるアイドラ光(位相共役光)が発生する。このアイドラ光は、増幅媒体の基本周波数を境にして、成分Ayの光信号の周波数と対称な周波数に発生する。光増幅部115-2は、光パラメトリック増幅された光信号を、励起光分離部117-2へ出力する。
【0061】
光増幅部115-3には、励起光合波部113-3から出力された光信号が入力される。光増幅部115-3は、入力された光信号に対し、光パラメトリック増幅を行う。光パラメトリック増幅に伴い、成分Bxの光信号の位相共役成分であるアイドラ光(位相共役光)が発生する。このアイドラ光は、増幅媒体の基本周波数を境にして、成分Bxの光信号の周波数と対称な周波数に発生する。光増幅部115-3は、光パラメトリック増幅された光信号を、励起光分離部117-3へ出力する。
【0062】
光増幅部115-4には、励起光合波部113-4から出力された光信号が入力される。光増幅部115-4は、入力された光信号に対し、光パラメトリック増幅を行う。光パラメトリック増幅に伴い、成分Byの光信号の位相共役成分であるアイドラ光(位相共役光)が発生する。このアイドラ光は、増幅媒体の基本周波数を境にして、成分Byの光信号の周波数と対称な周波数に発生する。光増幅部115-4は、光パラメトリック増幅された光信号を、励起光分離部117-4へ出力する。
【0063】
励起光分離部117-1~励起光分離部117-4は、例えば波長多重フィルタ又はダイクロイックミラー等を含んで構成される。
【0064】
励起光分離部117-1には、光増幅部115-1から出力された光信号が入力される。励起光分離部117-1は、入力された光信号を、成分Axの光信号と励起光とに分離する。励起光分離部117-1は、分離された成分Axの光信号を偏波合成部118-1へ出力する。
【0065】
励起光分離部117-2には、光増幅部115-2から出力された光信号が入力される。励起光分離部117-2は、入力された光信号を、成分Ayの光信号と励起光とに分離する。励起光分離部117-2は、分離された成分Ayの光信号を偏波合成部118-1へ出力する。
【0066】
励起光分離部117-3には、光増幅部115-3から出力された光信号が入力される。励起光分離部117-3は、入力された光信号を、成分Bxの光信号と励起光とに分離する。励起光分離部117-3は、分離された成分Bxの光信号を偏波合成部118-2へ出力する。
【0067】
励起光分離部117-4には、光増幅部115-4から出力された光信号が入力される。励起光分離部117-4は、入力された光信号を、成分Byの光信号と励起光とに分離する。励起光分離部117-4は、分離された成分Byの光信号を偏波合成部118-2へ出力する。
【0068】
偏波合成部118-1は、励起光分離部117-1から出力された成分Axの光信号と励起光分離部117-2から出力された成分Ayの光信号とを、例えば偏波ビームスプリッタを用いて合波する。偏波合成部118-1は、合波された成分Aの光信号を帯域合波部119へ出力する。
【0069】
偏波合成部118-2は、励起光分離部117-3から出力された成分Bxの光信号と励起光分離部117-4から出力された成分Byの光信号とを、例えば偏波ビームスプリッタを用いて合波する。偏波合成部118-2は、合波された成分Bの光信号を帯域合波部119へ出力する。
【0070】
帯域合波部119は、偏波合成部118-1から出力された成分Aの光信号と、偏波合成部118-2から出力された成分Bの光信号とを合波する。帯域合波部119は、合波された光信号を利得等化器12へ出力する。
【0071】
なお、帯域合波部119が有するフィルタ(不図示)によって、光信号とアイドラ光のうち信号伝送に用いられないほうの光成分はカットされる。なお通常は、帯域合波部119は、光信号を抽出して合波するが、アイドラ光を抽出して合波させることで、光増幅装置11を光位相共役変換器及び波長変換器として利用することができる。
【0072】
また、非線形媒体からの反射光を抑えるため、非線形媒体の前段と後段にそれぞれアイソレータを設置してもよい。すなわち、図2に示されるように、光増幅部115-1の前段にアイソレータ114-1、及び光増幅部115-1の後段にアイソレータ116-1が備えられた構成であってもよい。また、図2に示されるように、光増幅部115-2の前段にアイソレータ114-2、及び光増幅部115-2の後段にアイソレータ116-2が備えられた構成であってもよい。図2に示されるように、光増幅部115-3の前段にアイソレータ114-3、及び光増幅部115-3の後段にアイソレータ116-3が備えられた構成であってもよい。図2に示されるように、光増幅部115-4の前段にアイソレータ114-4、及び光増幅部115-4の後段にアイソレータ116-4が備えられた構成であってもよい。
【0073】
なお、アイソレータは、図2に示されるように光増幅部(非線形媒体)の直前と直後とに設置されていてもよいし、光増幅部のほかに帯域分波部及び偏波分波部等の他の構成要素についても2つのアイソレータによって挟まれる形で設置されていてもよい。また、送信側への反射光の逆伝搬を防ぐことを目的として、光増幅部(非線形媒体)の前段にアイソレータが一つだけ配置されるような構成であってもよい。
【0074】
[光増幅システムの動作]
以下、本実施形態における光増幅システム1の動作の一例について説明する。図3は、本発明の第1の実施形態における光増幅システム1の動作を示すフローチャートである。
【0075】
初段のOPAである第1光増幅装置11-1には、光ファイバ伝送路から伝送信号が入力される(ステップS01)。第1光増幅装置11-1は、入力された光信号を増幅し、利得等化器12-1へ出力する(ステップS02)。なお、光増幅装置11の動作の詳細については後述される。
【0076】
利得等化器12-1には、第1光増幅装置11-1から出力された光信号が入力される。利得等化器12-1は、入力された(チルトがついた)光信号を平坦化(利得等化)する(ステップS03)。利得等化器12-1は、平坦化された光信号を第2光増幅装置11-2へ出力する。
【0077】
後段のOPAである第2光増幅装置11-2には、利得等化器12-1から出力された光信号が入力される。第2光増幅装置11-2は、入射された光信号を増幅し、利得等化器12-2へ出力する(ステップS04)。
【0078】
利得等化器12-2には、第1光増幅装置11-1から出力された光信号が入力される。利得等化器12-2は、入力された(チルトがついた)光信号を平坦化(利得等化)する(ステップS05)。利得等化器12-2は、平坦化された光信号を光ファイバ伝送路へ出力する(ステップS06)。以上で、図3のフローチャートが示す光増幅システム1の動作が終了する。
【0079】
[光増幅装置の動作]
以下、本実施形態における光増幅装置11の動作の一例について説明する。図4は、本発明の第1の実施形態における光増幅装置11の動作を示すフローチャートである。図4に示される光増幅装置11の動作は、前述の図3に示される光増幅システム1の動作を示すフローチャートのステップS02及びステップS04の動作に相当する。
【0080】
光ファイバ伝送路又は利得等化器12から光増幅装置11に光信号が入力される(ステップS201)。帯域分波部111は、光信号を、基本周波数を境にした二つの帯域成分である成分Aと成分Bとに分波する(ステップS202)。帯域分波部111は、成分Aの光信号を偏波分離部112-1へ出力し、成分Bの光信号を偏波分離部112-2へ出力する。
【0081】
偏波分離部112-1は、成分Aの光信号を、直交する二つの偏波状態の成分である成分Axと成分Ayとに分離する。偏波分離部112-1は、成分Axの光信号を励起光合波部113-1へ出力し、成分Ayの光信号を励起光合波部113-2へ出力する。偏波分離部112-2は、成分Bの光信号を、直交する二つの偏波状態の成分である成分Bxと成分Byとに分離する。偏波分離部112-2は、成分Bxの光信号を励起光合波部113-3へ出力し、成分Byの光信号を励起光合波部113-4へ出力する(ステップS203)。
【0082】
励起光合波部113-1には、偏波分離部112-1から出力された成分Axの光信号と励起光とが入力される。励起光合波部113-1は、成分Axの光信号と励起光とを合波する。励起光合波部113-1は、励起光と合波された光信号を光増幅部115-1へ出力する。励起光合波部113-2には、偏波分離部112-2から出力された成分Ayの光信号と励起光とが入力される。励起光合波部113-2は、成分Ayの光信号と励起光とを合波する。励起光合波部113-2は、励起光と合波された光信号を光増幅部115-2へ出力する。励起光合波部113-3には、偏波分離部112-3から出力された成分Bxの光信号と励起光とが入力される。励起光合波部113-3は、成分Bxの光信号と励起光とを合波する。励起光合波部113-3は、励起光と合波された光信号を光増幅部115-3へ出力する。励起光合波部113-4には、偏波分離部112-4から出力された成分Byの光信号と励起光とが入力される。励起光合波部113-4は、成分Byの光信号と励起光とを合波する。励起光合波部113-4は、励起光と合波された光信号を光増幅部115-4へ出力する(ステップS204)。
【0083】
光増幅部115-1には、励起光合波部113-1から出力された光信号が入力される。光増幅部115-1は、入力された光信号に対し、光パラメトリック増幅を行う。光増幅部115-1は、光パラメトリック増幅された光信号を、励起光分離部117-1へ出力する。光増幅部115-2には、励起光合波部113-2から出力された光信号が入力される。光増幅部115-2は、入力された光信号に対し、光パラメトリック増幅を行う。光増幅部115-2は、光パラメトリック増幅された光信号を、励起光分離部117-2へ出力する。光増幅部115-3には、励起光合波部113-3から出力された光信号が入力される。光増幅部115-3は、入力された光信号に対し、光パラメトリック増幅を行う。光増幅部115-3は、光パラメトリック増幅された光信号を、励起光分離部117-3へ出力する。光増幅部115-4には、励起光合波部113-4から出力された光信号が入力される。光増幅部115-4は、入力された光信号に対し、光パラメトリック増幅を行う。光増幅部115-4は、光パラメトリック増幅された光信号を、励起光分離部117-4へ出力する(ステップS205)。
【0084】
励起光分離部117-1には、光増幅部115-1から出力された光信号が入力される。励起光分離部117-1は、入力された光信号を、成分Axの光信号と励起光とに分離する。励起光分離部117-1は、分離された成分Axの光信号を偏波合成部118-1へ出力する。励起光分離部117-2には、光増幅部115-2から出力された光信号が入力される。励起光分離部117-2は、入力された光信号を、成分Ayの光信号と励起光とに分離する。励起光分離部117-2は、分離された成分Ayの光信号を偏波合成部118-1へ出力する。励起光分離部117-3には、光増幅部115-3から出力された光信号が入力される。励起光分離部117-3は、入力された光信号を、成分Bxの光信号と励起光とに分離する。励起光分離部117-3は、分離された成分Bxの光信号を偏波合成部118-2へ出力する。励起光分離部117-4には、光増幅部115-4から出力された光信号が入力される。励起光分離部117-4は、入力された光信号を、成分Byの光信号と励起光とに分離する。励起光分離部117-4は、分離された成分Byの光信号を偏波合成部118-2へ出力する(ステップS206)。
【0085】
偏波合成部118-1は、励起光分離部117-1から出力された成分Axの光信号と励起光分離部117-2から出力された成分Ayの光信号とを合波する。偏波合成部118-1は、合波された成分Aの光信号を帯域合波部119へ出力する。偏波合成部118-2は、励起光分離部117-3から出力された成分Bxの光信号と励起光分離部117-4から出力された成分Byの光信号とを合波する。偏波合成部118-2は、合波された成分Bの光信号を帯域合波部119へ出力する(ステップS207)。
【0086】
帯域合波部119は、偏波合成部118-1から出力された成分Aの光信号と、偏波合成部118-2から出力された成分Bの光信号とを合波する(ステップS08)。帯域合波部119は、フィルタにより光信号とアイドラ光のうち信号伝送に用いられないほうの光成分を除去する(ステップS209)。帯域合波部119は、合波された光信号を利得等化器12へ出力する(ステップS210)。以上で、図4のフローチャートが示す光増幅装置11の動作が終了する。
【0087】
以上説明したように、第1の実施形態における光増幅システム1では、複数のOPAが縦続接続される。これにより、光増幅システム1は、光パラメトリック増幅において高利得化を実現することができる。
【0088】
<第1の実施形態の変形例>
前述の第1の実施形態における光増幅システム1は、偏波分離から偏波合成までの偏波ダイバーシティにの構成を有するOPA(光増幅装置11)が複数個、従属接続されている構成であった。これに対し、以下に説明する第1の実施形態の変形例における光増幅装置11aは、偏波分離後の経路に増幅媒体(光増幅部115)が複数個、従属接続されている構成である。
【0089】
[光増幅装置の構成]
以下、本変形例における光増幅装置11aの構成について説明する。図5は、本発明の第1の実施形態の変形例における光増幅装置11aの構成を示す図である。なお、図5に示される光増幅装置11aの構成要素のうち、前述の図2に示される第1の実施形態における光増幅装置11の構成要素と同一の構成を有する構成要素については、第1の実施形態と同一の符号を付し、説明を省略する。
【0090】
図5に示されるように、光増幅装置11aは、帯域分波部111と、偏波分離部112-1~偏波分離部112-2と、励起光合波部113-1~励起光合波部113-4と、光増幅部115-1~光増幅部115-4と、励起光分離部117-1~励起光分離部117-4と、不要帯域分離部120-1~不要帯域分離部120-4と、励起光合波部113a-1~励起光合波部113a-4と、光増幅部115a-1~光増幅部115a-4と、励起光分離部117a-1~励起光分離部117a-4と、偏波合成部118-1~偏波合成部118-2と、帯域合波部119と、を備える。
【0091】
不要帯域分離部120-1~不要帯域分離部120-4は、光信号とアイドラ光とを分離し、いずれか一方の光成分を除去するフィルタを含んで構成される。
【0092】
不要帯域分離部120-1には、励起光分離部117-1から出力された光信号が入力される。不要帯域分離部120-1は、光信号とアイドラ光とを分離し、いずれか一方の光成分を除去する。不要帯域分離部120-1は、一方の光成分が除去された光信号を、励起光合波部113a-1へ出力する。
【0093】
不要帯域分離部120-2には、励起光分離部117-2から出力された光信号が入力される。不要帯域分離部120-2は、光信号とアイドラ光とを分離し、いずれか一方の光成分を除去する。不要帯域分離部120-2は、一方の光成分が除去された光信号を、励起光合波部113a-2へ出力する。
【0094】
不要帯域分離部120-3には、励起光分離部117-3から出力された光信号が入力される。不要帯域分離部120-3は、光信号とアイドラ光とを分離し、いずれか一方の光成分を除去する。不要帯域分離部120-3は、一方の光成分が除去された光信号を、励起光合波部113a-3へ出力する。
【0095】
不要帯域分離部120-4には、励起光分離部117-4から出力された光信号が入力される。不要帯域分離部120-4は、光信号とアイドラ光とを分離し、いずれか一方の光成分を除去する。不要帯域分離部120-3は、一方の光成分が除去された光信号を、励起光合波部113a-4へ出力する。
【0096】
励起光合波部113a-1~励起光合波部113a-4は、例えば波長多重フィルタ又はダイクロイックミラー等を含んで構成される。
【0097】
励起光合波部113a-1には、不要帯域分離部120-1から出力された成分Axの光信号と励起光とが入力される。励起光合波部113a-1は、成分Axの光信号と励起光とを合波する。励起光合波部113a-1は、励起光と合波された光信号を光増幅部115a-1へ出力する。
【0098】
励起光合波部113a-2には、不要帯域分離部120-2から出力された成分Ayの光信号と励起光とが入力される。励起光合波部113a-2は、成分Ayの光信号と励起光とを合波する。励起光合波部113a-2は、励起光と合波された光信号を光増幅部115a-2へ出力する。
【0099】
励起光合波部113a-3には、不要帯域分離部120-3から出力された成分Bxの光信号と励起光とが入力される。励起光合波部113a-3は、成分Bxの光信号と励起光とを合波する。励起光合波部113a-3は、励起光と合波された光信号を光増幅部115a-3へ出力する。
【0100】
励起光合波部113a-4には、不要帯域分離部120-4から出力された成分Byの光信号と励起光とが入力される。励起光合波部113a-4は、成分Byの光信号と励起光とを合波する。励起光合波部113a-4は、励起光と合波された光信号を光増幅部115a-4へ出力する。
【0101】
光増幅部115a-1~光増幅部115a-4は、2次又は3次の高非線形媒体を有する光パラメトリック増幅器を含む。
【0102】
光増幅部115a-1には、励起光合波部113a-1から出力された光信号が入力される。光増幅部115a-1は、入力された光信号に対し、光パラメトリック増幅を行う。光パラメトリック増幅に伴い、成分Axの光信号の位相共役成分であるアイドラ光(位相共役光)が発生する。このアイドラ光は、増幅媒体の基本周波数を境にして、成分Axの光信号の周波数と対称な周波数に発生する。光増幅部115a-1は、光パラメトリック増幅された光信号を、励起光分離部117a-1へ出力する。
【0103】
光増幅部115a-2には、励起光合波部113a-2から出力された光信号が入力される。光増幅部115a-2は、入力された光信号に対し、光パラメトリック増幅を行う。光パラメトリック増幅に伴い、成分Ayの光信号の位相共役成分であるアイドラ光(位相共役光)が発生する。このアイドラ光は、増幅媒体の基本周波数を境にして、成分Ayの光信号の周波数と対称な周波数に発生する。光増幅部115a-2は、光パラメトリック増幅された光信号を、励起光分離部117a-2へ出力する。
【0104】
光増幅部115a-3には、励起光合波部113a-3から出力された光信号が入力される。光増幅部115a-3は、入力された光信号に対し、光パラメトリック増幅を行う。光パラメトリック増幅に伴い、成分Bxの光信号の位相共役成分であるアイドラ光(位相共役光)が発生する。このアイドラ光は、増幅媒体の基本周波数を境にして、成分Bxの光信号の周波数と対称な周波数に発生する。光増幅部115a-3は、光パラメトリック増幅された光信号を、励起光分離部117a-3へ出力する。
【0105】
光増幅部115a-4には、励起光合波部113a-4から出力された光信号が入力される。光増幅部115a-4は、入力された光信号に対し、光パラメトリック増幅を行う。光パラメトリック増幅に伴い、成分Byの光信号の位相共役成分であるアイドラ光(位相共役光)が発生する。このアイドラ光は、増幅媒体の基本周波数を境にして、成分Byの光信号の周波数と対称な周波数に発生する。光増幅部115a-4は、光パラメトリック増幅された光信号を、励起光分離部117a-4へ出力する。
【0106】
励起光分離部117a-1~励起光分離部117a-4は、例えば波長多重フィルタ又はダイクロイックミラー等を含んで構成される。
【0107】
励起光分離部117a-1には、光増幅部115a-1から出力された光信号が入力される。励起光分離部117a-1は、入力された光信号を、成分Axの光信号と励起光とに分離する。励起光分離部117a-1は、分離された成分Axの光信号を偏波合成部118-1へ出力する。
【0108】
励起光分離部117a-2には、光増幅部115a-2から出力された光信号が入力される。励起光分離部117a-2は、入力された光信号を、成分Ayの光信号と励起光とに分離する。励起光分離部117a-2は、分離された成分Ayの光信号を偏波合成部118-1へ出力する。
【0109】
励起光分離部117-3aには、光増幅部115a-3から出力された光信号が入力される。励起光分離部117a-3は、入力された光信号を、成分Bxの光信号と励起光とに分離する。励起光分離部117a-3は、分離された成分Bxの光信号を偏波合成部118-2へ出力する。
【0110】
励起光分離部117a-4には、光増幅部115a-4から出力された光信号が入力される。励起光分離部117a-4は、入力された光信号を、成分Byの光信号と励起光とに分離する。励起光分離部117a-4は、分離された成分Byの光信号を偏波合成部118-2へ出力する。
【0111】
以上説明したように、第1の実施形態の変形例における光増幅装置11aでは、当該光増幅装置11aが備える複数の光増幅部が縦続接続される。これにより、光増幅装置11aは、光パラメトリック増幅において高利得化を実現することができる。
【0112】
なお、前段のOPAにおいて増幅に使用され、非線形媒体を通過してきた励起光が、後段のOPAにおいて増幅に用いられる構成であってもよい。また同様に、後段のOPAにおいて増幅に使用された励起光が、前段のOPAにおいて増幅に用いられる構成であってもよい。
【0113】
なお、前述の図1に示される第1の実施形態における光増幅システム1の構成と、図5に示される第1の実施形態の変形例における光増幅装置11aの構成とが組み合わされた構成であってもよい。すなわち、複数の光増幅装置が縦続接続され、さらに光増幅装置内において複数の光増幅部が縦続接続された構成であってもよい。
【0114】
<第2の実施形態>
以下、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態における光増幅システムでは、高効率なOPAを前段に、低効率なOPAを後段に配置される。このような構成を有することで、本実施形態における光増幅システムは、低効率なOPAの高い飽和出力パワーで光信号を出力することができる。
【0115】
[光増幅システムの構成]
以下、本実施形態における光増幅システム1aの構成について説明する。図6は、本発明の第2の実施形態における光増幅システム1aの全体構成図である。なお、図6に示される光増幅システム1aの構成要素のうち、前述の図1に示される第1の実施形態における光増幅システム1の構成要素と同一の構成を有する構成要素については、第1の実施形態と同一の符号を付し、説明を省略する。
【0116】
図6に示されるように、光増幅システム1aは、高効率光増幅装置13と、低効率光増幅装置14と、利得等化器12と、を備える。
【0117】
高効率光増幅装置13及び低効率光増幅装置14は、例えば光増幅中継伝送方式の光ファイバ伝送システムにおいて一定間隔で設けられた光増幅器である。高効率光増幅装置13及び低効率光増幅装置14は、光信号が光ファイバ中を伝搬するときに生じる光損失を補償する。図6に示されるように、光増幅システム1aは、縦続接続された高効率光増幅装置13及び低効率光増幅装置14の2つのOPA(光パラメトリック増幅器)によって光信号を増幅させるシステムである。
【0118】
初段のOPAである高効率光増幅装置13には、光ファイバ伝送路から伝送信号(光信号)が入射される。高効率光増幅装置13は、入射された光信号を増幅し、低効率光増幅装置14へ出力する。高効率光増幅装置13は、低効率光増幅装置14と比べて、より高効率なOPAである。
【0119】
後段のOPAである低効率光増幅装置14には、高効率光増幅装置13から出力された光信号が入力される。低効率光増幅装置14は、入射された光信号を増幅し、利得等化器12へ出力する。低効率光増幅装置14は、高効率光増幅装置13と比べて、より低効率なOPAである。
【0120】
利得等化器12は、入力された(チルトがついた)光信号を平坦化(利得等化)する。
【0121】
なお、前述の通り、初段のOPAによってチルトがついた状態の光信号が後段のOPAに入力されると、高利得な周波数成分のパワーがOPAの出力を必要以上に消費してしまう。これにより、光増幅システム全体としての高利得化及び高出力化が困難になる。そのため、前述の第1の実施形態における光増幅システム1のように、本実施形態における光増幅システム1aにおいても、増幅の度に利得等化器を用いてスペクトルを平坦化させる構成にしてもよい。
【0122】
なお、図6に示される光増幅システム1aは、2つの光増幅器(OPA)を備える構成であるが、光増幅器の個数は、これに限定されるものではない。OPAの個数は、3つ以上であってもよい。その場合であっても、高効率なOPAであるほど、より前段に配置され、低効率なOPAであるほど、より後段に配置される。
【0123】
なお、高効率光増幅装置13及び低効率光増幅装置14から出力される光増幅がなされた後の光信号に対して帯域通過フィルタを適用する構成にしてもよい。帯域通過フィルタは、信号帯域外に生じた雑音成分をカットし、信号成分のみを抽出する。
【0124】
なお、前述の第1実施形態における光増幅システム1と同様に、本実施形態における光増幅システム1aにおいても、元の光信号の光成分ではなくアイドラ光の光成分を抽出することによって、光増幅装置を位相共役変換器及び波長変換器として利用することができる。
【0125】
図7は、前述の(1)~(3)式の連立微分方程式を用いて計算された二次非線形媒体の飽和出力パワーの計算結果の一例を示す図である。図7において、横軸の「効率」は、非線形過程の発生効率を表す。縦軸(左側)の「飽和出力パワー」は、小信号入力時の媒体の増幅利得を最大として入力パワーを大きくしていき、利得が1[dB]減少したときの出力パワーと定義した。
【0126】
図7に示される計算結果から、効率の良い増幅媒体ほど飽和出力時の利得が大きいことが分かる。また、飽和出力パワーはある程度の効率までは単調増加であるが、その後は減少傾向にあることが分かる。一方で、飽和出力パワーが最も大きい付近では、飽和出力時の利得は小さくなっている、そのため、初段に高効率かつ高利得なOPAが配置され、より後段になるにつれて低効率かつ低利得なOPAが配置されることで、高利得と高出力との両立を実現することができる。
【0127】
一般的に、光増幅システムでは、システムの立ち上げ時、及び所望の利得が変化した時等に、光増幅システム全体の利得を制御する自動利得制御(AGC:Automatic gain control)が用いられる。そのため、OPAにおいても、AGCが用いられることが想定される。本実施形態における光増幅システム1aの場合には、先に前段のOPAが飽和出力となるようにAGCを適用し、その後に後段のOPAにAGCを適用することで、光増幅システム全体で所望の利得となるように利得を制御する方法が考えられる。
【0128】
以上説明したように、第2の実施形態における光増幅システム1aによれば、複数のOPA(高効率光増幅装置13及び低効率光増幅装置14)が縦続接続されることによって、光パラメトリック増幅による光増幅の高利得化を実現することができる。また、高効率な増幅媒体であるほどより前段に、低効率な増幅媒体であるほどより後段に縦続接続される構成であるため、本実施形態における光増幅システム1aは、光パラメトリック増幅による光増幅の高出力化を実現することができる。
【0129】
上述した実施形態によれば、光増幅システムは、縦続接続された複数の光増幅部を有する。光増幅部は、帯域分割部と、偏波分波部と、励起光合波部と、増幅媒体と、励起光分離部と、偏波合成部と、帯域合波部と、を備える。例えば、光増幅システムは、実施形態における光増幅システム11aであり、光増幅部は、実施形態における第1光増幅装置11-1及び第1光増幅装置11-2であり、帯域分割部は、実施形態における帯域分割部111であり、偏波分波部は、実施形態における偏波分波部112-1及び偏波分波部112-2であり、励起光合波部は、実施形態における励起光合波部113-1~励起光合波部113-4であり、増幅媒体は、実施形態における光増幅部115-1~光増幅部115-4であり、励起光分離部は、実施形態における励起光分離部117-1~117-4であり、偏波合成部は、実施形態における偏波合成部119であり、帯域合波部は、実施形態における帯域合波部119である。
【0130】
帯域分割部は、光信号を異なる二つの帯域の光信号に分割する。例えば、異なる二つの帯域の光信号は、実施形態における増幅媒体の位相整合条件の中心周波数(基本周波数)を境にした二つの帯域成分である成分A及び成分Bの光信号である。偏波分波部は、分割された光信号を互いに直交する2つの偏波成分に分離させる。例えば、互いに直交する2つの偏波成分は、実施形態における、互いに直交する二つの偏波状態の成分である成分Ax及び成分Ay、互いに直交する二つの偏波状態の成分である成分Bx及び成分Byである。励起光合波部は、偏波分波部によって分離された光信号と励起光とを合波する。増幅媒体は、光パラメトリック増幅過程を発生させ、光信号を増幅させる。励起光分離部は、増幅媒体によって増幅された光信号と励起光とを分離させる。偏波合成部は、分離された二つの偏波成分を合成する。例えば、分離された二つの偏波成分は、実施形態における、成分Ax及び成分Ayの偏波成分、成分Bx及び成分Byの偏波成分である。帯域合波部は、分割された二つの帯域を合波する。例えば、分割された二つの帯域は、実施形態における成分A及び成分Bの帯域である。
【0131】
なお、上記の光増幅システムにおいて、複数の光増幅部は、飽和出力電力(飽和出力パワー)が低く、飽和出力時の利得が高いものほど、より前段に配置されるように縦続接続されてもよい。例えば、複数の光増幅部は、実施形態における、高効率光増幅装置13及び低効率光増幅装置14である。
【0132】
なお、上記の光増幅システムは、利得等化部をさらに有していてもよい。例えば、利得等化部は、実施形態における利得等化器12-1及び利得等化器12-2である。利得等化部は、光増幅部によって増幅された光信号の利得特性を平坦化させる。
【0133】
なお、上記の光増幅システムは、帯域通過フィルタをさらに有していてもよい。帯域通過フィルタは、光パラメトリック増幅過程で生じた不要な光成分を除去する。
【0134】
また、上述した実施形態によれば、光増幅装置は、縦続接続された複数の光増幅媒体を有する。光増幅装置は、帯域分割部と、偏波分波部と、励起光合波部と、第1の増幅媒体と、第2の増幅媒体と、励起光分離部と、偏波合成部と、帯域合波部と、を備える。例えば、光増幅装置は、実施形態における光増幅装置11aであり、帯域分割部は、実施形態における帯域分割部111であり、偏波分波部は、実施形態における偏波分波部112-1及び偏波分波部112-2であり、励起光合波部は、実施形態における励起光合波部113-1~励起光合波部113-4及び励起光合波部113a-1~励起光合波部113a-4であり、第1の増幅媒体は、実施形態における光増幅部115-1~115-4であり、第2の増幅媒体は、実施形態における光増幅部115a-1~115a-4であり、励起光分離部は、励起光分離部117-1~励起光分離部117-4及び励起光分離部117a-1~励起光分離部117a-4であり、偏波合成部は、実施形態における偏波合成部118-1及び偏波合成部118-2であり、帯域合波部は、実施形態における帯域合波部119である。
【0135】
帯域分割部は、光信号を異なる二つの帯域の光信号に分割する。例えば、異なる二つの帯域の光信号は、実施形態における増幅媒体の位相整合条件の中心周波数(基本周波数)を境にした二つの帯域成分である成分A及び成分Bの光信号である。偏波分波部は、分割された光信号を互いに直交する2つの偏波成分に分離させる。例えば、互いに直交する2つの偏波成分は、実施形態における、互いに直交する二つの偏波状態の成分である成分Ax及び成分Ay、互いに直交する二つの偏波状態の成分である成分Bx及び成分Byである。励起光合波部は、偏波分波部によって分離された光信号と励起光とを合波する。第1の増幅媒体は、光パラメトリック増幅過程を発生させ、光信号を増幅させる。第2の増幅媒体は、光パラメトリック増幅過程を発生させ、第1の増幅媒体によって増幅された光信号を増幅させる。励起光分離部は、第2の増幅媒体によって増幅された光信号と励起光とを分離させる。偏波合成部は、分離された二つの偏波成分を合成する。例えば、分離された二つの偏波成分は、実施形態における、成分Ax及び成分Ayの偏波成分、成分Bx及び成分Byの偏波成分である。帯域合波部は、分割された二つの帯域を合波する。例えば、分割された二つの帯域は、実施形態における成分A及び成分Bの帯域である。
【0136】
なお、上記の光増幅装置において、複数の増幅媒体は、飽和出力電力が低く、飽和出力時の利得が高いものほど、より前段に配置されるように縦続接続されてもよい。
【0137】
上述した各実施形態における光増幅システム及び光増幅装置の一部又は全部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイス
を用いて実現されるものであってもよい。
【0138】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0139】
1,1a…光増幅システム,11,11a…光増幅装置,11-1…第1光増幅装置,11-2…第2光増幅装置,12,12-1~12-2…利得等化器,13…高効率光増幅装置,14…低効率光増幅装置,111…帯域分波部,112-1~112-4…偏波分離部,113-1~113-4,113a-1~113a-4…励起光合波部,114-1~114-4,116-1~116-4…アイソレータ,115,115-1~115-4,115a-1~115a-4…光増幅部,117-1~117-4,117a-1~117a-4…励起光分離部,118-1~118-2…偏波合成部,119…帯域合波部,120-1~120-4…不要帯域分離部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7