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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】通信システムおよび制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 52/02 20090101AFI20241009BHJP
   H04W 84/10 20090101ALI20241009BHJP
【FI】
H04W52/02 111
H04W52/02 130
H04W84/10 110
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023549316
(86)(22)【出願日】2021-09-27
(86)【国際出願番号】 JP2021035463
(87)【国際公開番号】W WO2023047602
(87)【国際公開日】2023-03-30
【審査請求日】2023-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮武 遼
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 健太
(72)【発明者】
【氏名】桂井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】深田 陽一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 智暁
【審査官】青木 健
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/203810(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/207362(WO,A1)
【文献】特表2014-519236(JP,A)
【文献】特開2017-103650(JP,A)
【文献】特開2010-62846(JP,A)
【文献】特開2015-222877(JP,A)
【文献】特開2005-328439(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
H04M 1/24-1/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
親機および子機のうちの少なくとも親機が充電可能な蓄電池で駆動する通信システムであって、
前記親機は、
省電力動作が可能な状態であって通信不可となるスリープ状態に移行する際に、前記スリープ状態で動作するスリープ期間に関して、前記スリープ期間が取り得る最短の期間である最短スリープ期間を、前記蓄電池の残量と、前記残量に応じて必要となる充電量とに基づいて決定する最短スリープ期間決定部と、
前記最短スリープ期間決定部により決定された前記最短スリープ期間を示す期間情報を、前記スリープ状態に移行する前における前記子機との通信信号に含めることで前記子機に通知するスリープ制御部と、
を備え、
前記子機は、前記親機から通知された前記最短の期間において省電力動作を行うものであり、
前記最短スリープ期間決定部は、前記親機と前記子機との間において単位量の通信を実現するために必要となる電力量と前記蓄電池の現在の残量とに基づいて、前記単位量の通信を実行した後の前記蓄電池の残量を推定し、推定した前記残量に応じて必要となる充電量の充電に必要な時間を前記最短スリープ期間として決定する、
通信システム。
【請求項2】
親機および子機のうちの少なくとも親機が充電可能な蓄電池で駆動する通信システムであって、
前記親機は、省電力動作が可能な状態であって通信不可となるスリープ状態に移行する際に、前記スリープ状態で動作するスリープ期間に関して、前記スリープ期間が取り得る最短の期間である最短スリープ期間を示す期間情報を、前記スリープ状態に移行する前における前記子機との通信信号に含めることで前記子機に通知し、
前記子機は、前記親機から通知された前記最短の期間において省電力動作を行い、
光源からの光給電により前記親機に前記蓄電池の充電用の電力を供給するものであり、
前記親機には、前記光源から到来する電力光の強度の変化に関する復帰条件が事前に設定され、
前記親機は、前記最短スリープ期間の満了時以降において、前記復帰条件が満たされたタイミングで前記スリープ状態から復帰することができる、
信システム。
【請求項3】
前記親機は、
太陽光発電、光給電、またはその他のエナジーハーベスティング技術を適用した給電手段により前記蓄電池に充電用の電力を供給する電源部をさらに備える、
請求項1または2に記載の通信システム。
【請求項4】
前記親機は、
光加入者線終端装置に接続するための光通信部と、
光加入者線ネットワーク装置としての機能を実現する通信回路と、
をさらに備える、
請求項1からのいずれか一項に記載の通信システム。
【請求項5】
前記通信システムは、前記親機が、受信した通知信号を送信した子機に接続を要求することで通信接続を確立するものであって、
前記子機は、前記親機から通知された前記最短スリープ期間においては前記通知信号の送信を行わないことで前記省電力動作を実現する、
請求項1からのいずれか一項に記載の通信システム。
【請求項6】
親機および子機のうちの少なくとも親機が充電可能な蓄電池で駆動する通信システムにおける前記親機および前記子機の制御方法であって、
前記親機が、
省電力動作が可能な状態であって通信不可となるスリープ状態に移行する際に、前記スリープ状態で動作するスリープ期間に関して、前記スリープ期間が取り得る最短の期間である最短スリープ期間を、前記蓄電池の残量と、前記残量に応じて必要となる充電量とに基づいて決定し、
決定した前記最短スリープ期間を示す期間情報を、前記スリープ状態に移行する前における前記子機との通信信号に含めることで前記子機に通知し、
前記子機が、前記親機から通知された前記最短の期間において省電力動作を行うものであり、
前記親機は、前記親機と前記子機との間において単位量の通信を実現するために必要となる電力量と前記蓄電池の現在の残量とに基づいて、前記単位量の通信を実行した後の前記蓄電池の残量を推定し、推定した前記残量に応じて必要となる充電量の充電に必要な時間を前記最短スリープ期間として決定する、
制御方法。
【請求項7】
親機および子機のうちの少なくとも親機が充電可能な蓄電池で駆動する通信システムにおける前記親機および前記子機の制御方法であって、
前記親機が、省電力動作が可能な状態であって通信不可となるスリープ状態に移行する際に、前記スリープ状態で動作するスリープ期間に関して、前記スリープ期間が取り得る最短の期間である最短スリープ期間を示す期間情報を、前記スリープ状態に移行する前における前記子機との通信信号に含めることで前記子機に通知し、
前記子機が、前記親機から通知された前記最短の期間において省電力動作を行い、
光源からの光給電により前記親機に前記蓄電池の充電用の電力を供給するものであり、
前記親機には、前記光源から到来する電力光の強度の変化に関する復帰条件が事前に設定されており、
前記親機が、前記最短スリープ期間の満了時以降において、前記復帰条件が満たされたタイミングで前記スリープ状態から復帰することができる、
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システムおよび制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、低電力での無線通信を実現する手段の一つとしてBLE(Bluetooth Low Energy)(Bluetoothは登録商標、以下同様)が知られている。BLEでは、ペリフェラルからアドバタイズ信号を受信したセントラルが、そのアドバタイズ信号を送信したペリフェラルに対して接続要求を行うことにより通信接続を確立する(例えば非特許文献1参照)。BLEではペリフェラル(例えば無線端末)とセントラル(例えばアクセスポイント)とが1対1で接続を確立し、通信を行う(GATT(Generic Attribute Profile)通信)(例えば非特許文献1参照)。
【0003】
一方で、無線端末がアクセスポイントを介して通信する形態の無線通信システムにおいて、機器の消費電力を削減するために、アクセスポイントを所定のタイミングでスリープ状態(低電力動作状態)に移行させたりスリープ状態から復帰させたりするスリープ制御が行われている。このようなスリープ制御では、アクセスポイントは、スリープ状態から復帰したタイミングでアドバタイズ信号を検出して通信接続を確立するため、スリープ制御を行わない場合に比べて、スリープ状態で動作している期間の分だけ消費電力を削減することができる(例えば非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Chaoshun Zuo, Haohuang Wen, Zhiqiang Lin, Yinqian Zhang ,“Automatic Fingerprinting of Vulnerable BLE IoT Devices with Static UUIDs from Mobile Apps,”CCS ’19, November 11‐15, 2019, London, United Kingdom.
【文献】GAOYANG SHAN AND BYEONG-HEE ROH,“Advertisement Interval to Minimize Discovery Time of Whole BLE Advertisers,”,IEEE Received February 4, 2018, accepted March 12, 2018, date of publication March 19, 2018, date of current version April 23, 2018.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のスリープ制御では、機器の電力消費を必ずしも十分に抑制できない場合があった。図8は、通信後にスリープ動作を行うことにより省電力化を図るアクセスポイント(セントラル)に対し、従来のBLE通信を適用した場合の動作の一例を示す図である。なお、図8に示すBLE通信の流れは、非特許文献1の記載に基づくものである。まず、ペリフェラル(無線端末)がアドバタイズ信号と呼ばれるブロードキャスト信号を送信する(ステップS90:アドバタイズ)。アドバタイズ信号は「通知信号」の一例である。セントラル(アクセスポイント)は、ステップS90で送信されたアドバタイズ信号を受信したことに応じて、ペリフェラルにBLE接続の確立を要求する(ステップS91:接続要求)。ペリフェラルは、ステップS90でのアドバタイズに対してステップS91でセントラルから接続要求が受信されると、要求元のセントラルとの間でBLE通信の接続を確立する(ステップS92:BLE接続確立)。ステップS92でBLE接続が確立されると、セントラルおよびペリフェラルは、必要な通信を1対1のBLE通信(一般に「GATT(Generic Attribute Profile)通信」と呼ばれる)で実施し(ステップS93)、通信が終了するとBLE接続を切断する(ステップS94)。BLE接続の切断後、アクセスポイントは省電力化のためスリープ動作を行う(ステップS95)。
【0006】
一方、従来のBLE通信におけるペリフェラルは、セントラルがスリープ状態へ移行したとしてもアドバタイズ信号を送信し続け(ステップS96-1、S96-2、S96-3、・・・)、セントラルがスリープ状態から復帰した後に送信したアドバタイズ信号(ステップS96-n)によりセントラルから接続要求を受信し(ステップS97)、再度セントラルとBLE接続を確立し(ステップS98)、GAT通信を実施する(ステップS99)。
【0007】
このように、スリープ動作を行うアクセスポイントに対し、従来のBLE通信を適用した場合、アクセスポイントに接続する無線端末は、アクセスポイントがスリープ状態であるときでも接続確立のためにアドバタイズ信号を送り続ける(例えばBLE(Bluetooth Low Energy)(登録商標、以下同様)通信の場合)ので、そのための消費電力が無駄になっていた。これに対応するための方法として、アクセスポイントと無線端末との間で同期をとりながら一定周期でアクセスポイントをスリープ状態に移行させることが考えられるが、この場合、同期通信以外の通信が不要であっても一定周期でスリープ状態から復帰するため、そのための消費電力が無駄になる。また、この場合、スリープ状態から復帰する同期タイミング以外では通信を行うことができない。
【0008】
上記事情に鑑み、本発明は、有限の電源で動作する通信システムの消費電力をより低減することができる技術の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、親機および子機のうちの少なくとも親機が有限の電源で駆動する通信システムであって、前記親機は、省電力動作が可能な状態であって通信不可となるスリープ状態に移行する際に、前記スリープ状態で動作するスリープ期間に関して、前記スリープ期間が取り得る最短の期間である最短スリープ期間を示す期間情報を、前記スリープ状態に移行する前における前記子機との通信信号に含めることで前記子機に通知し、前記子機は、前記親機から通知された前記最短の期間において省電力動作を行う、通信システムである。
【0010】
本発明の一態様は、親機および子機のうちの少なくとも親機が有限の電源で駆動する通信システムにおける前記親機および前記子機の制御方法であって、前記親機が、省電力動作が可能な状態であって通信不可となるスリープ状態に移行する際に、前記スリープ状態で動作するスリープ期間に関して、前記スリープ期間が取り得る最短の期間である最短スリープ期間を示す期間情報を、前記スリープ状態に移行する前における前記子機との通信信号に含めることで前記子機に通知し、前記子機が、前記親機から通知された前記最短の期間において省電力動作を行う、制御方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、有限の電源で動作する通信システムの消費電力をより低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態の通信システムの構成例を示す図である。
図2】セントラルであるアクセスポイントとペリフェラルである無線端末とがスリープ状態を繰り返しながら無線通信を行う流れを示すシーケンスチャートである。
図3】アクセスポイントがスリープ制御に関して実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図4】対応テーブルの一例を示す図である。
図5】無線端末がスリープ制御に関して実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図6】第2実施形態の通信システムの構成例を示す図である。
図7】BLEの動作モードであるコネクトモードおよびブロードキャストモードの概略を示す図である。
図8】従来のBLE通信においてセントラルがスリープ状態を繰り返しながらペリフェラルと無線通信を行う流れを示すシーケンスチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0014】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の通信システム1Aの構成例を示す図である。通信システム1Aは、アクセスポイント100Aと、無線端末200と、光源30と、光ファイバ40とを備える。アクセスポイント100Aおよび無線端末200は、有限の電源で動作する通信装置の一例である。アクセスポイント100Aと無線端末200とは、BLE(Bluetooth Low Energy)(Bluetoothは登録商標、以下同様。)による無線通信により互いに通信可能である。アクセスポイント100Aおよび無線端末200は、省電力動作が可能なスリープ状態への移行とスリープ状態からの復帰とを繰り返すことにより、電力消費を抑制するものである。
【0015】
ここで「スリープ状態」とは、少なくとも通信機能への電力供給が停止された状態であり、且つ、その状態から復帰するための条件が満たされたか否かを判定することができる状態を意味するものとし、通信機能への電力供給が停止されていない状態を「通常状態」ということにする。また、以下では、スリープ状態から通常状態に復帰することを「起動」という場合がある。
【0016】
光源30は、光給電によりアクセスポイント100Aに充電用の電力を供給する。光ファイバ40は、光源30が出力した給電用の光(電力光)をアクセスポイント100Aに伝送する伝送路である。
【0017】
以下、アクセスポイント100Aおよび無線端末200の構成についてより詳細に説明する。まず、アクセスポイント100Aの構成について説明する。アクセスポイント100Aは「親機」の一例である。アクセスポイント100Aは、電源部110と、通信部120と、最短スリープ期間決定部130と、記憶部140と、スリープ制御部150とを備える。
【0018】
電源部110は、アクセスポイント100Aに動作用の電力を供給する電源である。電源部110は、光源30から供給される電力光を、光ファイバ40を介して入力し、入力した電力光を電力に変換してアクセスポイント100Aの各部に供給する。具体的には、電源部110は、例えば、光電変換部111と、蓄電池112とを備える。蓄電池112は「有限の電源」の一例である。
【0019】
光電変換部111は、光ファイバ40から入力された電力光を電力に変換して蓄電池112に出力する。蓄電池112は、充電可能な電池である。蓄電池112は、電池を複数備えたバッテリであってもよい。蓄電池112は、光電変換部111から出力される電力で充電し、充電によって蓄えた電力をアクセスポイント100A内の通信部120、最短スリープ期間決定部130、記憶部140およびスリープ制御部150等の各回路に供給する。
【0020】
また、電源部110は、蓄電池112の残量の測定機能を有し、蓄電池112の残量情報を最短スリープ期間決定部130に供給する。なお、電源部110は、光電変換部111に代えて太陽光発電機を備え、太陽光発電機が発電する電力によって蓄電池112を充電するように構成されてもよい。また、電源部110は、光電変換部111と太陽光発電機の両方を備え、両者を用いてアクセスポイント100Aに電力を供給するように構成されてもよい。
【0021】
また、電源部110には、上述の光電変換部111や太陽光発電機だけではなく「可視光発電」や「力学的エネルギー発電」、「熱エネルギー発電」、「電波エネルギー発電」、「微生物やバイオ燃料、微生物燃料等による発電」等のエナジーハーベスティング技術(下記参考文献1参照)を利用した種々の発電方法と、蓄電池112と同様の蓄電池とを使用する構成が採用されてもよい。ここで、「可視光発電」は可視光等を利用した発電方法であり、「力学的エネルギー発電」は電磁誘導や圧電効果、逆磁歪効果、スイッチの押し込みエネルギー等を利用した発電方法である(参考文献1:2016年 NTTデータ経営研究所「エネルギーハーベスティングの最新動向」、<URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj/67/7/67_334/_article/-char/ja/>)。
【0022】
通信部120は、アクセスポイント100Aが無線端末200とBLEによる無線通信を行うための通信インタフェースである。具体的には、通信部120は、例えば、AP用BLEモジュール121と、アンテナ122とを備える。
【0023】
AP用BLEモジュール121は、BLE通信に関するデジタル信号処理を実現する回路である。例えば、AP用BLEモジュール121は、セントラル(Central)として無線端末200との間で通信接続を確立する処理や、送受信信号の変復調処理、パケット処理などを実行する。AP用BLEモジュール121は、変調後の送信信号をアンテナ122に出力するとともに、アンテナ122から受信信号を取得して復調処理を実行する。アンテナ122は、AP用BLEモジュール121から出力された送信信号をアナログの無線信号に変換して出力するとともに、受信した無線信号を電気信号に変換してAP用BLEモジュール121に供給する。
【0024】
最短スリープ期間決定部130は、アクセスポイント100Aをスリープ状態とする期間(以下「スリープ期間」という。)に関して、最低限必要なスリープ期間(以下「最短スリープ期間」という。)を決定するものである。最短スリープ期間は、蓄電池112の残量と、その残量に応じて必要となる充電量とに基づいて決定される。最短スリープ期間の決定方法の詳細については後述する。最短スリープ期間決定部130は、決定した最短スリープ期間をスリープ制御部150に通知する。
【0025】
記憶部140は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等の記憶装置である。記憶部140は、アクセスポイント100Aが実行するプログラムや各種設定情報など、アクセスポイント100Aの動作に関する各種情報を記憶する。記憶部140は、対応テーブル141を記憶する。対応テーブル141は、最短スリープ期間と、蓄電池112の残量と、その残量に応じて必要となる充電量との関係性を示す情報である。
【0026】
スリープ制御部150は、最短スリープ期間決定部130から通知された最短スリープ期間に基づいてアクセスポイント100Aのスリープ制御を実施する。具体的には、スリープ制御部150は、少なくとも最短スリープ期間の間はスリープ状態を取るようにアクセスポイント100Aを制御する。スリープ制御部150は、最短スリープ期間の満了後においては、アクセスポイント100Aを必要に応じてスリープ状態から復帰させる。例えば、スリープ状態は、少なくとも電源部110の通信部120に対する電力供給が休止された状態、または、通信部120が通常状態よりも少ない消費電力で動作する状態である。
【0027】
また、スリープ制御部150は、アクセスポイント100Aをスリープ状態に移行させる際に、最短スリープ期間決定部130から通知された最短スリープ期間を無線端末200に通知する。例えば、スリープ制御部150は、最短スリープ期間を示す期間情報を、スリープ状態に移行する前における無線端末200との通信信号に含めることで最短スリープ期間を無線端末200に通知する。
【0028】
続いて、無線端末200の構成について説明する。無線端末200は「子機」の一例である。無線端末200は、例えば、蓄電池210と、通信部220と、スリープ制御部230とを備える。蓄電池210は、無線端末200に動作用の電力を供給する電源である。蓄電池210は、アクセスポイント100Aの蓄電池112と同様に充電可能な蓄電池であってもよいし、取り換え可能な蓄電池であってもよい。蓄電池210は、通信部220やスリープ制御部230などの無線端末200内の各種回路に電力を供給する。
【0029】
通信部220は、無線端末200がアクセスポイント100AとBLEによる無線通信を行うための通信インタフェースである。具体的には、通信部220は、例えば、端末用BLEモジュール221と、アンテナ222とを備える。
【0030】
端末用BLEモジュール221は、BLE通信に関するデジタル信号処理を実現する回路である。例えば、端末用BLEモジュール221は、ペリフェラル(Peripheral)としてアクセスポイント100Aとの間で通信接続を確立する処理や、送受信信号の変復調処理、パケット処理などを実行する。端末用BLEモジュール221は、変調後の送信信号をアンテナ222に出力するとともに、アンテナ222から受信信号を取得して復調処理を実行する。アンテナ222は、端末用BLEモジュール221から出力された送信信号をアナログの無線信号に変換して出力するとともに、受信した無線信号を電気信号に変換して端末用BLEモジュール221に供給する。
【0031】
スリープ制御部230は、アクセスポイント100Aから通知された最短スリープ期間をスリープ期間として無線端末200のスリープ制御を実施する。具体的には、スリープ制御部230は、最短スリープ期間において無線端末200をスリープ状態で動作させる。例えば、スリープ状態は、少なくとも蓄電池210の通信部220に対する電力供給が休止された状態、または通信部220が通常状態よりも少ない消費電力で動作する状態である。
【0032】
図2は、実施形態の通信システム1Aにおいて、セントラルであるアクセスポイント100Aとペリフェラルである無線端末200とがスリープ状態を繰り返しながら無線通信を行う流れを示すシーケンスチャートである。まず、無線端末200がアドバタイズ信号を送信する(ステップS10:アドバタイズ)。アドバタイズ信号は「通知信号」の一例である。アクセスポイント100Aは、ステップS10で送信されたアドバタイズ信号を受信したことに応じて、無線端末200にBLE接続の確立を要求する(ステップS11:接続要求)。無線端末200は、ステップS10でのアドバタイズに対してステップS11でアクセスポイント100Aから接続要求が受信されると、要求元のアクセスポイント100Aとの間でBLE通信の接続を確立する(ステップS12:BLE接続確立)。ステップS12でBLE接続が確立されると、アクセスポイント100Aおよび無線端末200は、必要な通信を1対1のBLE通信(一般に「GATT(Generic Attribute Profile)通信」と呼ばれる)で実施し(ステップS13)、通信が終了するとBLE接続を切断する(ステップS14)。
【0033】
ここで、アクセスポイント100Aは、GATT通信実施後における蓄電池112の残量を推定し、推定した残量に基づいて最短スリープ期間を決定する。アクセスポイント100Aは、決定した最短スリープ期間を示す情報をGATT通信における通信信号に含めて送信することで最短スリープ期間を無線端末200に通知する。無線端末200は、ステップS14でBLE接続を切断すると、アクセスポイント100Aから通知された最短スリープ期間をスリープ期間としてスリープ状態に移行する(ステップS15)。
【0034】
一方、アクセスポイント100Aは、最短スリープ期間(S15)(t=t)の経過後の任意タイミング(t=t+α)でスリープから復帰することができる。ここで重要なのは、αは事前に決定される必要はないということであり、アクセスポイント100Aが最短スリープ期間(S15)(t=t)以降において、自身の復帰タイミングを任意の基準に基づいて任意のタイミングに設定できるということである。例えば、アクセスポイント100Aは、自装置において無線端末200宛ての送信要件が発生した場合などに復帰することができるし、予め定められたタイミングで復帰することもできるし、自装置内で生成したランダムなタイミングで復帰することもできる。また、例えば、アクセスポイント100Aは、光源30から到来する電力光の強度の変化等をトリガとして事前設定しておき当該トリガを基に復帰することもできるし、アクセスポイント100Aにスリープ状態からの復帰を指示する復帰信号を生成する外部装置をアクセスポイント100Aに追加接続し、当該外部装置から出された復帰信号を元に復帰することもできる。また、他の構成として、αを事前に設定しておき、αの設定値に従ってスリープ期間(S16)を決定する構成も考えられる。すなわちαは0以上の任意の値であってよい。このような構成によれば、常に最短スリープ期間の満了時においてスリープ状態から復帰する場合よりもスリープ状態での動作時間が長くなるため、省電力効果をより高めることができる。
【0035】
アクセスポイント100Aは、このように事前決定した、もしくは事後で結果的に決定されたスリープ期間の間、スリープ状態を取る(ステップS16)。
【0036】
続いて、無線端末200は、スリープ状態から復帰すると、アクセスポイント100Aに対するアドバタイズを再開する。アドバタイズ再開後に送信されたアドバタイズ信号は、時刻t=t+αにおいてアクセスポイント100Aがスリープ状態から復帰した後にアクセスポイント100Aによって受信される。すなわち図2の例では、ステップS21のアドバタイズ信号はアクセスポイント100Aによって受信されず、ステップS22以降のアドバタイズ信号がアクセスポイント100Aによって受信されることになる。アドバタイズ信号を受信したアクセスポイント100Aは、ステップS11~S13と同様に、無線端末200との間でBLE接続を確立し、GATT通信を行う(ステップS23~S25)。アクセスポイント100Aと無線端末200とは、このような、アドバタイズ→接続要求→BLE接続確立→GATT通信→BLE接続切断→スリープ状態→アドバタイズの流れを繰り返すことにより、消費電力を削減することができる。
【0037】
例えば、図8に例示した従来方法のBLE通信では、仮にアクセスポイント(セントラル)がBLE接続の切断後にスリープを実施しても、無線端末(ペリフェラル)はスリープを行わずにアドバタイズ信号を送信し続ける(ステップS96)。しかし、このときアクセスポイントはスリープしているのでアドバタイズ信号を受信できないので無線端末の電力が必要以上に消費される問題が発生する。これに対し、本実施形態の通信システム1Aによれば、無線端末200もアクセスポイント100Aに同期してスリープを行うので、無線端末200において少なくとも従来方法で浪費されていた分の消費電力を削減することができる。なお、簡単のため、ここでは1台の無線端末200を図示しているが、無線端末200は複数であってもよい。
【0038】
図3は、アクセスポイント100Aがスリープ制御に関して実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。図3のフローは、アクセスポイント100Aおよび無線端末200がスリープ状態から復帰している状態で、かつBLE通信接続を確立する前の段階で開始されるものである。まず、スリープ制御部150が、無線端末200との通信に関して、アクセスポイント100Aが単位量の通信を実行するのに要する電力量(以下「単位電力量」という。)を取得する(ステップS201)。
【0039】
ここでは、簡単のため、1回のBLE通信を単位量の通信として、1回のBLE通信に要する電力量を単位電力量として取得する。ここで取得する単位電力量の情報は、単位量の通信が完了する前にその完了後の蓄電池112の残量を推定する(予測する)ために使用されるものであり、より具体的には、アクセスポイント100Aがスリープ状態に移行するタイミング(以下「移行タイミング」という。)における蓄電池112の残量を推定するために使用されるものである。そのため、単位量の通信は、移行タイミングにおける蓄電池112の残量を推定することができれば、必ずしも1回のBLE通信に要する電力量である必要はない。また、移行タイミングにおける蓄電池112の残量を推定することができれば、1回のBLE通信は、1回のデータ送信(または送受信)や1データの送信など、どのような単位で定義されてもよい。
【0040】
スリープ制御部150は、通信部120に単位量の通信またはそれと同等の動作を実際に行わせ、その前後の蓄電池112の残量を比較することにより単位電力量の値を算出してもよい。この場合、スリープ制御部150は、算出結果を記憶部140に記録することにより、通信条件が変化しない場合には、次回以降の単位電力量の算出を省略してもよい。
【0041】
続いて、AP用BLEモジュール121が無線端末200からアドバタイズ信号が受信されたか否かを判定する(ステップS202)。ここでアドバタイズ信号が受信されなかったと判定した場合(ステップS202-NO)、AP用BLEモジュール121は無線端末200からアドバタイズ信号が受信されるまでステップS202を繰り返し実行する。一方、アドバタイズ信号が受信されたと判定した場合(ステップS202-YES)、AP用BLEモジュール121は、受信したアドバタイズ信号を送信した無線端末200(ペリフェラル)に対してBLE接続の確立を要求する接続要求信号を送信する(ステップS203)ことにより、無線端末200との間でBLE接続を確立する。BLE接続の確立後、AP用BLEモジュール121は無線端末200との間でGATT通信を開始する(ステップS204)。
【0042】
アクセスポイント100Aと無線端末200との間でGATT通信が開始されると、続いて、スリープ制御部150が、これから実行するBLE通信の実施後における蓄電池112の残量を推定する(ステップS205)。具体的には、スリープ制御部150は、電源部110から蓄電池112の現在の残量を取得するとともに、単位電力量に基づいて、これから実行するBLE通信に要する電力を算出する。スリープ制御部150は、現在の残量から、算出した所要電力を減算することにより、BLE通信後の蓄電池112の残量を推定することができる。
【0043】
続いて、スリープ制御部150は、記憶部140に保持されている対応テーブル141を参照し、単位電力量と、ステップS205で推定した蓄電池112の残量とに基づいて最短スリープ期間を決定する(ステップS206)。ここで、対応テーブル141の一例を図4に示す。図4の対応テーブル141において、第1列C1は蓄電池112の残量を表し、第1行R1は蓄電池112の充電時間を表し、その他の行および列は、対応する残量の蓄電池112に対して、対応する充電時間の充電を実施した後の残量を表す。例えば、対応テーブル141は、通信システム1Aの運用開始前にアクセスポイント100Aを予備試験的に動作させて、その際の消費電力と蓄電池残量を測定したものをテーブル化することにより作成することができる。
【0044】
ここで例えば、対応テーブル141が図4の内容で登録されている場合において、単位電力量(本実施形態では1回のBLE通信に要する電力量)が120mAhであるとする。この場合、例えば、蓄電池112の残量が140mAhであるときに、1回のBLE通信を実施しようとしている場合、スリープ制御部150は、現在の残量である140mAhから単位電力量である120mAhを減算することにより、1回のBLE通信を実施した後の蓄電池112の残量が20mAh(=140mAh-120mAh)になると推定することができる。
【0045】
続いて、スリープ制御部150は、推定残量20mAhをもとに対応テーブル141を参照し、蓄電池112の残量が推定残量の20mAhから単位電力量である120mAhにまで増加するのに必要な充電時間が1000秒であることを認識し、この充電時間1000秒を最短スリープ期間として決定することができる。このようにして決定された最短スリープ期間の間スリープ状態に移行して充電を行うことにより、アクセスポイント100Aは、少なくとも1回のBLE通信を実施することができる状態でスリープ状態から復帰することができる。
【0046】
図3の説明に戻る。続いて、スリープ制御部150は、ステップS206で決定した最短スリープ期間を示す情報を、実施しようとしているBLE通信の通信信号に含めて送信することで最短スリープ期間を無線端末200に通知する(ステップS207)。より具体的には、スリープ制御部150は、BLE通信のパケットのヘッダ部もしくはデータ部に最短スリープ期間を示す情報を含めて送信する。なお、スリープの前に実施するBLE通信がない場合には、最短スリープ期間を無線端末200に通知するための通信を新たに発生させてもよい。ここで無線端末200に通知された最短スリープ期間は、無線端末200のスリープ期間として用いられる。AP用BLEモジュール121は、BLE通信が終了すると無線端末200とのBLE接続を切断する(ステップS208)。
【0047】
続いて、スリープ制御部150は、最短スリープ期間に基づいて決定される任意のスリープ期間においてスリープを実施するようにアクセスポイント100Aを制御し(ステップS209)、スリープ期間が満了すると、アクセスポイント100Aをスリープ状態から復帰させる(ステップS210)。
【0048】
このような処理によれば、スリープ制御部150は、少なくとも単位量の通信が可能な電力が充電されるまでの最短スリープ期間はアクセスポイント100Aをスリープさせ、その期間が経過した任意のタイミングでアクセスポイント100Aをスリープ状態から復帰させることができる。このため、アクセスポイント100Aを規定時間スリープ状態とするよりもより多くの消費電力を削減することができる。また、スリープ制御部150は、アクセスポイント100Aに同期させて、最短スリープ期間の間、無線端末200をスリープ状態とすることができる。このため、無線端末200はアクセスポイント100Aに同期してスリープ状態に移行することとなり、アドバタイズ信号を送信する回数が減るので、消費電力を削減することができる。
【0049】
図5は、無線端末200がスリープ制御に関して実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。図5のフローは、少なくとも無線端末200がスリープ状態から復帰している(起動している)状態で、かつアクセスポイント100Aとの間でBLE通信接続を確立する前の段階で開始されるものである。まず、通信部220が、アドバタイズを実施するとともに(ステップS301)、実施したアドバタイズに対してアクセスポイント100Aから接続要求が応答されたか否かを判定する(ステップS302)。
【0050】
ここで、アクセスポイント100Aから接続要求が応答されなかったと判定した場合(ステップS302-NO)、通信部220はアクセスポイント100Aから接続要求が応答されたと判定するまでステップS301を繰り返し実行する。一方、アクセスポイント100Aから接続要求が応答されたと判定した場合(ステップS302-YES)、通信部220は、アクセスポイント100Aとの間でBLE接続を確立し、GATT通信を実施する(ステップS303)。GATT通信の実施後、アクセスポイント100Aと無線端末200との間のBLE接続は切断される。
【0051】
続いて、スリープ制御部230は、GATT通信において、アクセスポイント100Aから最短スリープ期間が通知されたか否かを判定する(ステップS304)。ここで、最短スリープ期間が通知されなかったと判定した場合(ステップS304-NO)、スリープ制御部230はステップS301に処理を戻す。一方、アクセスポイント100Aから最短スリープ期間が通知されたと判定した場合(ステップS304-YES)、スリープ制御部230は、通知された最短スリープ期間をスリープ期間とし、そのスリープ期間の間、無線端末200をスリープ状態に移行させ(ステップS305)、スリープ期間が満了すると、無線端末200をスリープ状態から復帰させる(ステップS306)。
【0052】
なお、ステップS301において、通信部220は、無線端末200においてセントラルへの送信要件が発生した場合にアドバタイズを実施するように構成されてもよい。例えば、この場合、スタートとステップS301の間にセントラルへの送信要件が発生したか否かを判定するステップを追加し、この判定結果が真となるまで通信部220が同ステップを繰り返し、判定結果が真の場合にステップS301に進むように構成されてもよい。
【0053】
このように構成された第1実施形態の通信システム1Aによれば、アクセスポイント100Aおよび無線端末200のうちの少なくともアクセスポイント100Aが有限の電源で駆動する場合に、アクセスポイント100Aがスリープ状態に移行する際に最短スリープ期間を決定し、決定した最短スリープ期間を示す情報をスリープ状態に移行する前における無線端末200との通信信号に含めることで最短スリープ期間を無線端末200に通知し、無線端末200がアクセスポイント100Aから通知された最短スリープ期間においてスリープ状態で動作することにより、アクセスポイント100Aと無線端末200との通信タイミングを確保しつつ両者の消費電力を削減することができる。
【0054】
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態の通信システム1Bの構成例を示す図である。通信システム1Bは、アクセスポイント100Aに代えてアクセスポイント100Bを備える点、光送受信機50および光ファイバ60をさらに備える点で第1実施形態の通信システム1Aと異なる。また、アクセスポイント100Bは、光通信部160をさらに備える点でアクセスポイント100Aと異なる。その他の機能部は、第1実施形態と同様のため、図1と同じ符号を付すことにより説明を省略する。
【0055】
光送受信機50は、光ファイバ60を介してアクセスポイント100Bとの間で光通信を行う。例えば、光送受信機50は、局舎等に設置されたOLT(Optical Line Terminal:光加入者線終端装置)である。光ファイバ60は、通信用の光ファイバである。ここでは、給電用の光ファイバ40と通信用の光ファイバ60を別々に記載しているが、波長分割多重により給電光と通信光とを多重化する場合、光ファイバ40と光ファイバ60は同じ光ファイバであってもよい。
【0056】
光通信部160は、光ファイバ60を介して光送受信機50と通信する。また、光通信部160は、通信部120を介して無線端末200と通信する。光通信部160は、無線端末200の通信を光送受信機50に中継してもよいし、光送受信機50の通信を無線端末200に中継してもよい。光通信部160は、蓄電池112から供給される電力によって動作し、通信部120と同様に、スリープ状態においては電力供給が停止される。
【0057】
より具体的には、光通信部160は、例えば、光トランシーバ161と、通信回路162とを備える。光トランシーバ161は、光ファイバ60との間での光信号を入出力する。光トランシーバ161は、光ファイバ60から入力される光信号を電気信号に変換して通信回路162に出力し、通信回路162から出力される電気信号を光信号に変換して光ファイバ60に出力する。
【0058】
通信回路162は、光トランシーバ161との間で入出力する電気信号に関し、信号の変復調や補償、プロトコル処理等を行うことによりデータの送受信を実現する回路である。通信回路162は、AP用BLEモジュール121との間で送受信データをやり取りすることにより、光送受信機50と無線端末200と間の通信を中継してもよい。また、通信回路162は、光回線終端装置としての光送受信機50に対して、アクセスポイント100BをONU(Optical Network Unit:光加入者線ネットワーク装置)として動作させるための機能を含んでもよい。
【0059】
なお、第2実施形態においても、アクセスポイント100Bがスリープ状態から復帰するタイミングは任意の基準に基づいて任意のタイミングに設定されてよい。例えば、第2実施形態のアクセスポイント100Bは、第1実施形態に記載の方法に加え、次のような方法でスリープ状態から復帰することができる。例えば、アクセスポイント100Bは、送受信機50においてアクセスポイント100Bや無線端末200宛ての送信要件が発生した場合などに送受信機50から供給される信号をトリガとして復帰することができる。また、例えば、アクセスポイント100Bは、送信要件が発生していない場合であっても、送受信機50がスリープ状態からの復帰を要求する信号を送ってきた場合には、当該信号を受信したタイミングで復帰することもできる 。これらのように、アクセスポイント100Bに対してスリープ状態からの復帰を要求する信号が送受信機50から供給される場合、当該信号は通信光60を用いて伝送されてもよい。
【0060】
このように構成された第2実施形態の通信システム1Bによれば、第1実施形態の通信システム1Aと同様にアクセスポイント100Bおよび無線端末200による消費電力を削減することができるとともに、有限のバッテリで動作するアクセスポイント100Bを光通信回線に接続することが可能となる。この場合、アクセスポイント100Bに接続する無線端末200は、アクセスポイント100B、またはアクセスポイント100Bに接続する他の無線端末200との通信に加え、光送受信機50を介して光通信回線に接続する他の装置と通信することが可能となる。
【0061】
<各実施形態に共通の変形例>
以下では、第1実施形態の通信システム1Aおよび第2実施形態の通信システム1Bに共通の変形例について説明する。以下では、特に区別しない場合、実施形態の別を表す符号のアルファベット(具体的には「A」または「B」)を省略する。例えば、第1実施形態の通信システム1Aおよび第2実施形態の通信システム1Bを区別しない場合、両者を総称して通信システム1と記載する。
【0062】
図7は、BLEの動作モードであるコネクトモードおよびブロードキャストモードの概略を示す図である。コネクトモードは、双方向通信を行う動作モードであり、ペリフェラル(実施形態でば無線端末200)がアドバタイズし、セントラルが(実施形態ではアクセスポイント100)アドバタイズしたペリフェラルに要求して通信接続を確立するものである。一方、ブロードキャストモードは、単方向通信(ペリフェラル→セントラル)を行う動作モードであり、ペリフェラルが送信データをアドバタイズ信号に載せてセントラルに送信する動作モードである。すなわち、実施形態の通信システム1は、アクセスポイント100と無線端末200とがコネクトモードで通信する場合を想定したものである。
【0063】
コネクトモードでは、ペリフェラルはセントラル側からのコネクトを待つ必要があるため、一般にはディープスリープができず、電力消費を抑えにくい。これに対して実施形態の通信システム1は、上述のとおり、アクセスポイント100が、蓄電池112の推定残量に基づいて最短スリープ期間を決定して無線端末200に通知し、この最短スリープ期間に基づいてアクセスポイント100と無線端末200とが同期してスリープ状態に移行することにより消費電量の削減を可能としたものである。
【0064】
このように構成された実施形態の通信システム1において、最短スリープ期間の更新頻度が、アクセスポイント100と無線端末200との間の通信頻度よりも低い場合には、アクセスポイント100と無線端末200との間のBLE通信をコネクトモードに代えてブロードキャストモードで実施するように構成されてもよい。ブロードキャストモードではGATT通信等が省略されるため、ブロードキャストモードはコネクトモードよりも消費電力が少ない。このため、コネクトモードに代えてブロードキャストモードでBLE通信を行うことにより、実施形態の通信システム1の消費電力をさらに少なくすることができる。
【0065】
ただし、ブロードキャストモードでの通信は、無線端末200からアクセスポイント100への単方向通信であるため、ブロードキャストモードでは、アクセスポイント100は最短スリープ期間を通知することができない。そのため、アクセスポイント100は、最短スリープ期間を更新する場合にはコネクトモードで無線端末200と通信し、それ以外ではブロードキャストモードで無線端末200と通信するように構成されるとよい。例えば、アクセスポイント100と無線端末200が100回通信するごとに最短スリープ期間を1回更新する場合には、100回の通信はブロードキャストモードで行い、その後の1回の通信をコネクトモードで行い、コネクトモードでの通信信号に最短スリープ期間の情報を含めるようにすることができる。
【0066】
以上説明した実施形態の通信システム1またはその変形例によれば、有限の電源で動作する通信システム1の消費電力を、アクセスポイント100および無線端末200のスリープによる省電力動作で低減しつつ、アクセスポイント100側は任意のタイミングにてスリープ状態から非スリープ状態へ遷移して通信できるので省電力かつ自由度の高い通信が可能となる。
【0067】
アクセスポイント100(親機)と無線端末200(子機)との間の通信は有線通信であってもよい。このように構成される場合、アクセスポイント100は、図1及び図6に示す「AP用BLEモジュール121」の代わりに「親機用有線通信モジュール」を備え、無線端末200は「端末用BLEモジュール」の代わりに「端末用有線通信モジュール」を備える。そして、親機用有線通信モジュールと端末用有線通信モジュールとの間を有線ケーブルでつなぎ、BLEによる無線通信の代わりに有線通信を行う等の構成が考えられる。
【0068】
「親機用有線通信モジュール」及び「端末用有線通信モジュール」は、アクセスポイント100(親機)と無線端末200(子機)との間で有線による通信を可能にする通信モジュールである。「親機用有線通信モジュール」及び「端末用有線通信モジュール」は、アクセスポイント100(親機)と無線端末200(子機)との間で通信信号を送受信する。また、使用する有線ケーブルとしては、光ファイバやLAN(Local Area Network)ケーブル、USB(Universal Serial Bus)ケーブル等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく通信が可能な市場に存在する各種有線ケーブルであれば種別は問わない。
【0069】
上述したアクセスポイント100および無線端末200の一部または全部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0070】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、有限の電源で動作する通信システムに適用可能である。
【符号の説明】
【0072】
1,1A,1B……通信システム、100,100A,100B…アクセスポイント、110…電源部、111…光電変換部、112…蓄電池、120…通信部、121…AP用BLEモジュール、122…アンテナ、130…最短スリープ期間決定部、140…記憶部、141…対応テーブル、150…スリープ制御部、160…光通信部、161…光トランシーバ、162…通信回路、200…無線端末、210…蓄電池、220…通信部、221…端末用BLEモジュール、222…アンテナ、230…スリープ制御部、30…光源、40…光ファイバ(給電用)、50…光送受信機、60…光ファイバ(通信用)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8