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特許7569001駆動装置、エンコーダユニット、及びロボット装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】駆動装置、エンコーダユニット、及びロボット装置
(51)【国際特許分類】
   G01L 3/12 20060101AFI20241009BHJP
   G01L 5/00 20060101ALI20241009BHJP
   H02P 29/00 20160101ALI20241009BHJP
   B25J 17/00 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
G01L3/12
G01L5/00 H
H02P29/00
B25J17/00 A
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020047022
(22)【出願日】2020-03-17
(65)【公開番号】P2021148518
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100098165
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 聡
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 博士
【審査官】松山 紗希
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-209099(JP,A)
【文献】特開2017-223528(JP,A)
【文献】特開2018-165650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 3/00-3/26
G01L 5/00-5/28
H02P 29/00
B25J 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータにより駆動される第1軸と、前記第1軸に連動して回転する第2軸と、を備える駆動装置であって、
前記モータの駆動による前記第1軸の回転が前記第2軸に伝達される前記第1軸から前記第2軸までの経路に配置され、前記第2軸の回転方向に弾性変位する弾性体と、
前記弾性体の変位量に基づいて前記第2軸の回転方向への負荷の情報を求める演算部と、を有し、
前記弾性体は、前記第1軸に連結される第1回転体と、前記第1回転体の外周方向又は内周方向に配置されて前記第2軸に連結され、前記第1軸又は前記第2軸の回転方向への負荷により前記第1回転体に対し弾性変位する第2回転体と、を有する、駆動装置。
【請求項2】
前記第1回転体の前記第2回転体と対向する面には、前記第2回転体側を押圧する少なくとも1つの第1凸部が形成され、及び/又は、前記第2回転体の前記第1回転体と対向する面には、前記第1回転体を押圧する少なくとも1つの第2凸部が形成されている、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記第2回転体の前記第1回転体と対向する面には、少なくとも1つの凹部が形成され、前記第1回転体の前記第2回転体と対向する面には、前記凹部を押圧する少なくとも1つの凸部が形成されている、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記第1回転体の前記第2回転体と対向する面には、少なくとも1つの凹部が形成され、前記第2回転体の前記第1回転体と対向する面には、前記凹部を押圧するすくなくとも1つの凸部が形成さている、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記第1回転体には、前記第1軸の回転軸回りに少なくとも3つの前記凸部又は凹部が形成され、及び/又は、前記第2回転体には、前記第2軸の回転軸回りに少なくとも3つの前記凸部又は凹部が形成されている、請求項2から4のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記第1回転体の前記第2回転体と対向する面は、前記第1軸の回転軸に対して非回転対称な形状を有し、前記第2回転体の前記第1回転体と対向する面は、前記第2軸の回転軸に対して非回転対称な形状を有する、請求項1からのいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記第1回転体の前記第2回転体と対向する面、及び、前記第2回転体の前記第1回転体と対向する面のそれぞれは、楕円形又は多角形である、請求項1からのいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項8】
前記弾性体は、回転軸受から構成され、前記第1回転体は、前記回転軸受の内輪又は外輪であり、前記第2回転体は、前記回転軸受の外輪又は内輪である、請求項1からのいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項9】
前記弾性体は、前記第1回転体と前記第2回転体とを連結する弾性軸を有し、前記弾性軸は、回転軸に垂直な方向に前記第1回転体と前記第2回転体とを挿通し、前記第2軸に対する負荷による前記弾性軸の弾性変形により、前記第2回転体が前記第1回転体に対して弾性変位する、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項10】
前記第1軸の回転量を変換して前記第2軸に伝達する伝達部を備え、前記弾性体は、前記モータの駆動による前記伝達部の回転が前記第2軸に伝達される前記伝達部から前記第2軸までの経路、又は、前記モータの駆動による第1軸の回転が前記伝達部に伝達される前記第1軸から前記伝達部までの経路に配置される請求項1からのいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項11】
前記第1軸の第1回転情報を検出する第1検出部と、
前記第2軸の第2回転情報を検出する第2検出部と、を備え、
前記演算部は、前記第1回転情報及び前記第2回転情報を用いて前記第2軸の回転方向の負荷の情報を求める請求項1から10のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項12】
前記負荷はトルクである請求項1から11のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項13】
モータに駆動される第1軸と、前記第1軸に連動して回転する第2軸と、を備える駆動装置に設けられるエンコーダユニットであって、
前記モータの駆動による前記第1軸の回転が前記第2軸に伝達される前記第1軸から前記第2軸までの経路に配置され、前記第2軸の回転方向に弾性変位する弾性体と、
前記第1軸の第1回転情報を検出する第1検出部と、
前記第2軸の第2回転情報を検出する第2検出部と、
前記第1回転情報及び前記第2回転情報を用いて前記第2軸の回転方向の負荷の情報を求める演算部と、を備え、
前記弾性体は、前記第1軸に連結される第1回転体と、前記第1回転体の外周方向又は内周方向に配置されて前記第2軸に連結され、前記第1軸又は前記第2軸の回転方向への負荷により前記第1回転体に対し弾性変位する第2回転体を有する、エンコーダユニット。
【請求項14】
前記弾性体は、前記第1回転体の前記第2回転体と対向する面の少なくとも一部は、前記第2回転体側に突出する第1凸部を有し、及び/又は、前記第2回転体の前記第1回転体と対向する面の少なくとも一部は、前記第1回転体側に突出する第2凸部を有する、請求項13に記載のエンコーダユニット。
【請求項15】
前記第1回転体の前記第2回転体と対向する面は、前記第1軸の回転軸に対して非回転対称な形状を有し、前記第2回転体の前記第1回転体と対向する面は、前記第2軸の回転軸に対して非回転対称な形状を有する、請求項13又は14に記載のエンコーダユニット。
【請求項16】
前記第1回転体の前記第2回転体と対向する面、及び、前記第2回転体の前記第1回転体と対向する面のそれぞれは、楕円形又は多角形である、請求項13又は14に記載のエンコーダユニット。
【請求項17】
前記弾性体は、前記第1回転体と前記第2回転体とを連結する弾性軸を有し、前記弾性軸は、回転軸に垂直な方向に前記第1回転体と前記第2回転体とを挿通し、前記第1軸又は前記第2軸の回転方向への負荷による前記弾性軸の弾性変形により、前記第2回転体が前記第1回転体に対して弾性変位する、請求項13に記載のエンコーダユニット。
【請求項18】
前記負荷はトルクである請求項13から17のいずれか一項に記載のエンコーダユニット。
【請求項19】
請求項1から12のいずれか一項に記載の駆動装置と、前記駆動装置によって駆動されるアームと、前記駆動装置を制御するロボット制御部と、を備えるロボット装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばエンコーダを備えた駆動装置、エンコーダユニット、及び駆動装置を備えたロボット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用ロボット又は工作機械等の駆動部に用いられるモータの回転角の制御を高精度に行うために、モータの入力軸にはエンコーダ(例えばロータリーエンコーダ)が取り付けられ、エンコーダの検出結果に基づいてモータの制御が行われている。また、モータの組立調整時及び稼働時等に、モータの状態をモニタするためには、トルク検出装置を用いてモータに対する負荷のトルクを検出することが好ましい。従来のトルク検出装置として、モータの入力軸と出力軸とをコイルばねで連結し、その入力軸及び出力軸の回転角の情報からモータのトルクを求める装置が知られている(例えば、引用文献1参照)。
【0003】
最近では、エンコーダを取り付けたモータはより様々な用途で使用されるとともに、より高精度な制御が求められている。そのため、モータの負荷を簡単な構成で高精度に検出することを考慮することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-166887号公報
【発明の概要】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、モータにより駆動される第1軸と、その第1軸に連動して回転する第2軸と、を備える駆動装置であって、そのモータの駆動によるその第1軸の回転がその第2軸に伝達されるその第1軸からその第2軸までの経路に配置され、その第2軸の回転方向に弾性変位する弾性体と、その弾性体の変位量に基づいてその第2軸の回転方向への負荷の情報を求める演算部と、を有し、その弾性体は、その第1軸に連結される第1回転体と、その第1回転体の外周方向又は内周方向に配置されてその第2軸に連結され、その第1軸又はその第2軸の回転方向への負荷によりその第1回転体に対し弾性変位する第2回転体と、を有する、駆動装置が提供される。
【0006】
最2の態様によれば、モータに駆動される第1軸と、その第1軸に連動して回転する第2軸と、を備える駆動装置に設けられるエンコーダユニットであって、そのモータの駆動によるその第1軸の回転がその第2軸に伝達されるその第1軸からその第2軸までの経路に配置され、その第2軸の回転方向に弾性変位する弾性体と、その第1軸の第1回転情報を検出する第1検出部と、その第2軸の第2回転情報を検出する第2検出部と、その第1回転情報及びその第2回転情報を用いてその第2軸の回転方向の負荷の情報を求める演算部と、を備え、その弾性体は、その第1軸に連結される第1回転体と、その第1回転体の外周方向又は内周方向に配置されてその第2軸に連結され、その第1軸又はその第2軸の回転方向への負荷によりその第1回転体に対し弾性変位する第2回転体を有する、エンコーダユニットが提供される。
【0007】
第3の態様によれば、第1の態様の駆動装置と、その駆動装置によって駆動されるアームと、その駆動装置を制御するロボット制御部と、を備えるロボット装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態の一例に係る駆動装置を示す断面図である。
図2】(A)は図1中の弾性部材を示す正面図、(B)は弾性部材を示す斜視図である。
図3】(A)は外輪部が回転を始めた弾性部材を示す図、(B)は内輪部も追従して回転を始めた弾性部材を示す図、(C)は時計回りに回転している弾性部材を示す図、(D)は反時計回りに回転している弾性部材を示す図である。
図4図1の駆動装置の制御方法の一例を示すフローチャートである。
図5】(A)は図1の駆動装置の力学モデルを示す図、(B)は実施形態における弾性部材のトルクとねじれ量との関係の一例を示す図、(C)は比較例のトルクとねじれ量との関係を示す図である。
図6】(A)は円形の回転軸受を示す図、(B)は回転軸受及び弾性部材製造用の2つの治具を示す斜視図である。
図7】(A)は内輪部用の治具を示す正面図、(B)は外輪部用の治具を示す正面図、(C)は他の例の2つの治具を示す正面図である。
図8】(A)は第1変形例の弾性部材を示す正面図、(B)は第2変形例の弾性部材を示す正面図、(C)は第3変形例の弾性部材を示す正面図である。
図9】第4変形例の弾性部材を示す正面図である。
図10】ロボット装置の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態の一例につき図1図7を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る駆動装置10を示す。図1において、駆動装置10は、例えばロボット装置が設置された工場の床面(不図示)に不図示の支持部材(例えばアームなど)を介して固定された広く深い皿状の蓋部材40(保持部材)と、蓋部材40の開口側に固定されたモータケース30を有するモータ部14とを備えている。モータ部14は、細長い円筒状の入力軸(第1軸又はモータ軸)18Aを回転駆動する。以下では、入力軸18Aの中心軸に沿ってZ軸を取り、Z軸に垂直な平面内で図1の紙面に垂直な方向にX軸を、図1の紙面に平行な方向にY軸を取って説明する。入力軸18Aはモータ部14によってZ軸の回りに回転駆動される。さらに、一例として、入力軸18Aの両端部は、それぞれモータケース30のZ方向の両側の端面の外側に突き出ている。
【0010】
また、駆動装置10は、モータ部14のモータケース30の-Z方向の端面に固定された円筒状の支持部材32Aと、入力軸18Aの-Z方向の端部18Aaの外面に設けられた減速機34と、減速機34の外面に連結された円筒状の連結部材32Bと、連結部材32Bの-Z方向側の面の複数箇所にそれぞれボルトB1を介して連結された弾性部材36と、弾性部材36の-Z方向の面の複数箇所にそれぞれボルトB2を介して連結された円板状の端部18Baと、端部18Baの+Z方向の面の中心に固定された円筒状の軸部18Bbと、支持部材32Aの内面に連結部32BをZ軸の回りに回転可能に支持する回転軸受28Cとを備えている。回転軸受28Cは、例えば玉軸受やクロスローラ軸受である。なお、弾性部材36と円板状の端部18BaをボルトB2を介して連結する代わりに両者を一体として形成してもよい。
【0011】
出力軸18B(第2軸)は、端部18Ba及び軸部18Bbから構成され、出力軸18Bは、減速機34及び弾性部材36によって入力軸18Aに連動して減速されてZ軸の回りに回転駆動される。端部18Baには、例えばロボットアームやエンドエフェクタのような被駆動部(不図示)が連結される。減速機34による減速比は一例として1/100程度である。本実施形態では、入力軸18Aは中空の円筒状であり、出力軸18Bの軸部18Bbは、入力軸18Aの内部を通過するように配置されている。なお、一例として軸部18Bbは円筒状であるが、軸部18Bbは円柱状であってもよい。入力軸18A、出力軸18B、モータケース30、及び支持部材36(詳細後述)等は例えば金属製である。
【0012】
また、駆動装置10は、入力軸18A及び出力軸18Bの回転角及び回転速度等の回転情報、並びに出力軸18Bの端部18Baに加わるZ軸の回りの負荷としてのトルクの情報を検出するエンコーダ部12と、エンコーダ部12の検出信号を処理する演算装置46と、演算装置46の処理結果を用いてモータ部14を駆動するモータ制御装置24とを備えている。なお、負荷の情報としては、トルクの情報に限定されず、出力軸18Bの端部18Baに作用するモーメントの情報や作用力の情報であってもよい。
【0013】
また、モータ部14のモータケース30は、ほぼ円筒状の保持部材30Aと、保持部材30Aの+Z方向の側面を覆うように保持部材30Aに連結されたリング状の押さえ部材30Bとを有し、モータケース30の対向する2つの側面部の開口に1対の回転軸受28A及び28Bを介して回転可能に入力軸18Aが支持されている。蓋部材40は、モータケース30の+Z方向の端面を覆うように設けられている。また、モータ部14は、入力軸18Aの中央の軸部の外面に装着された複数のマグネット20と、マグネット20を囲むようにモータケース30の内面に配置された複数のコイル22とを有する。コイル22が複数の信号ライン26を介してモータ制御装置24に接続されている。一例として、モータ部14は3相交流モータであるが、モータ部14としては直流モータ等も使用できる。
【0014】
また、本実施形態の減速機34は、例えば波動歯車(ハーモニックドライブ(登録商標))である。すなわち、減速機34は、入力軸18Aの端部18Aaの外面に固定された断面が楕円の円筒状の第1回転部34aと、第1回転部34aの外面に配置されて可撓性を有し断面が楕円の円筒状の第2回転部34bと、第1回転部34aと第2回転部34bとの間に配置された複数の球体(ベアリング)34cと、支持部材32Aの円形の内面に形成された歯車と、第2回転部34bと連結部材32Bとを連結する連結部34dとを有する。第1回転部34a、複数の球体34c、及び第2回転部34bから回転軸受が構成されていて、第1回転部は第2回転部に対して、回転軸回りに互いに独立して回転する第2回転部34bの外面の歯車が支持部材32Aの内面の歯車に係合され、第2回転部34b及び連結部34d(連結部材32B)が、入力軸18A(第1回転部34a)に対して所定の減速比で回転する。なお、ここでは、回転軸受が互いに独立して回転する一方で、連結部材32Bが入力軸18Aに対して減速されて回転する原理についての説明を省略する。なお、減速機34としては、波動歯車以外の任意の構成の減速機が使用可能である。
【0015】
また、図2(A)は図1中の弾性部材36を示す正面図、図2(B)は弾性部材36を示す斜視図、図3(A)から(D)は回転する弾性部材36を示す正面図である。図1から図2(B)において、弾性部材36は、出力軸18Bの端部18BaにボルトB2を介して固定され、外形が楕円状で中央に楕円状の開口が形成された内輪部35Aと、内輪部35Aを覆うようにボルトB1を介して連結部材32Bに固定され、外形が楕円状の外輪部35Cと、内輪部35Aと外輪部35Cとの間に回転可能に配置された複数の球体35Bと、複数の球体35Bの間隔を所定間隔に保つための保持器35Dとを有する。内輪部35Aの外面及び外輪部35Cの内面にはそれぞれ球体35Bを安定に保持するための溝部が形成されている。このように本実施形態の弾性部材36は、円形の回転軸受を一方向に引き延ばし、その一方向に直交する他方向に圧縮した形状である。また、内輪部35Aの中央の開口内に出力軸18Bの軸部18Bbが配置されている。
【0016】
弾性部材36の内輪部35Aが出力軸18B(端部18Ba)に連結され、外輪部35Cが減速機34の連結部34d(第2回転部34b)に連結されている。また、入力軸18A及び減速機34によって、図2(A)において、外輪部35CがZ軸の回りのθ方向に回転駆動されると、外輪部35C及び内輪部35Aの弾性変形によって、内輪部35Aは外輪部35Cと相対的にθ方向に弾性変位し、ある角度遅れて外輪部35Cに連動してθ方向に回転する。また、内輪部35Aと外輪部35Cの相対トルクTが大きくなるほど、外輪部35Cの回転角に対する内輪部35Aの回転角の遅れ(以下、ねじれ量Δθという。)は大きくなる。このように本実施形態の弾性部材36においては、外輪部35Cの回転に連動して(追従して)内輪部35Aが回転する。これに対して通常の円形の回転軸受では、外輪と内輪とは互いに独立して自由に回転できる点が異なっている。
【0017】
すなわち、例えば、出力軸18Bが、端部18Baに接続された被駆動部によってZ軸回りの回転方向の摩擦抵抗のみを受けている場合、図3(A)に示すように、外輪部35Cが停止状態から時計回りにモータの回転駆動を受けて回転すると、被駆動部による出力軸18Bに対する負荷によって内輪部35Aは摩擦抵抗により回転規制されるため、内輪部35Aと外輪部35Cの弾性変形によって外輪部35Cが内輪部35Aに対して弾性変位し、Z軸の回りの時計回りにねじれ量Δθが生じる。外輪部35Cが更に回転を続け、ねじれ量Δθが所定の角度θ’を超えたとき、内輪部35Aは連動して時計回りに回転を始める。このとき、角度θ’は内輪部35Aと外輪部35Cの間の復元力が摩擦抵抗と等しくなる角度である。その後、図3(B)に示すように、さらに、外輪部35Cが角度θ1回転したとき、内輪部35Aは連動して時計回りに角度θ1回転するが、外輪部35Cに対しては、ねじれ量Δθだけ遅れて回転している。これ以降も、図3(C)に示すように、外輪部35Cの回転角に対して内輪部35Aの回転角は、弾性変位に相当するねじれ量Δθだけ遅れて回転することになる。そのねじれ量Δθは内輪部35Aと外輪部35Cの相対トルクTの関数である。同様に、図3(D)に示すように、外輪部35Cが反時計回りにトルクTで回転すると、内輪部35Aの回転角は逆方向に同じねじれ量Δθだけ遅れて回転する。このため、本実施形態では、例えば予め実測によってトルクTとねじれ量Δθとの関係を求めておくことによって、駆動装置10の稼働時にはそのねじれ量ΔθからトルクTを求めることができる。また、そのように求められるトルクTは、モータ部14に作用するトルク、又は外部から出力軸18B(軸部18Bb)に作用するトルクとみなすこともできる。このため、以下ではねじれ量Δθから求められるトルクを出力軸18Bのトルクと称する。
【0018】
また、出力軸18Bに接続される被駆動部によって出力軸18Bに対して回転方向に負荷が発生した場合においても、内輪部35Aと外輪部35Cの弾性変形によって外輪部35Cが内輪部35Aに対して弾性変位が生じる。このように、入力軸18A(第1軸)又は出力軸18B(第2軸)の回転方向へ負荷が生じている状態においては、外輪部35Cと内輪部35Aとの間に相対的なトルクが生じている状態でもある。また、前述のように、外輪部35Cが停止状態から時計回りにモータの回転駆動を受けて回転すると、外輪部35Cが内輪部35Aに対してZ軸の回りの時計回りにねじれ量Δθが生じるが、その後、例えばモータの回転駆動を停止させると、回転方向への負荷がなくなり、内輪部35Aと外輪部35Cの間で復元力が働く。このため、外輪部35Cは内輪部35Aに対してZ軸の回りの反時計回りにねじれ量Δθ回転し、外輪部35Cの内輪部35Aに対するねじれ(弾性変位)は解消されることになる。また、前述の説明では、出力軸18Bが摩擦抵抗のみを受けている場合について述べたが、出力軸18Bが端部18Baに接続された被駆動部によって慣性負荷のみを受けている場合、モータの回転速度が一定になると内輪部35Aと外輪部35Cの間の復元力によって、それまでに生じていたねじれ量Δθは無くなる(ほぼゼロ)ことになるが、その後、再度モータの回転を加速させると、出力軸18Bに作用している慣性負荷により、Z軸の回りの時計回りにねじれ量Δθが再び生じることになる。
【0019】
また、入力軸18Aの+Z方向の端部18Abはモータケース30の+Z方向の側面の外側に突き出ており、出力軸18Bの軸部18Bbの+Z方向の端部は端部18Abの外側に突き出ている。そして、入力軸18Aの端部18Abの+Z方向の端面に、回転方向の位置(回転角)を検出するための透過型のパターン(不図示。以下、回転型の検出パターンとも称する)が形成された輪帯状の第1の回転板42Aが取り付けられている。出力軸18Bの軸部18Bbは、回転板42Aの中心の開口を通過している。また、出力軸18Bの軸部18Bbの+Z方向の端面に、回転角を検出するための透過型のパターン(回転型の検出パターン)が形成された輪帯状の第2の回転板42Bが取り付けられている。蓋部材40の内面には、回転板42Aのパターンを検出する第1検出部44A、及び回転板42Bのパターンを検出する第2検出部44Bが設けられている。第1、第2検出部(位置検出用センサ)44A及び44Bは、それぞれ回転板42A,42Bのパターンに検出光を照射する光源と、そのパターンからの光(例えば透過光)を受光する複数の受光素子とを有する。回転板42A,42Bのパターンは、例えばインクリメンタル式のパターン及びアブソリュート型のパターンを含む。なお、検出部44A,44Bは透過型の光学センサであるが、回転板42A,42Bのパターンを反射型のパターンとして、検出部44A,44Bとして反射型の光学センサを使用してもよい。
【0020】
エンコーダ部12は、回転板42A,42Bと、検出部44A,44Bと、検出部44A及び44Bのそれぞれの検出信号S1及びS2を処理する演算装置46とを有する。演算装置46は、モータ部14に対する入力軸18A及び出力軸18BのZ軸の回りの回転情報(回転角、角速度、及び/又は入力軸18Aが何回回転したかを示す多回転情報を含む変位情報)(以下、エンコーダ情報ともいう)を求めるとともに、出力軸18BのZ軸の回りのトルクTの情報を求める。なお、入力軸18A及び出力軸18Bに回転板42A,42Bを設ける代わりに、入力軸18A及び出力軸18Bの外面に反射型で回転型のパターンを設け、これらのパターンを検出してもよい。また、駆動装置10には、入力軸18A及び出力軸18Bの回転情報を検出するエンコーダ部12を設けずに、駆動装置10の外部に入力軸18A及び出力軸18Bの回転情報を検出する検出器を設けてもよい。
【0021】
次に、図1において、一例として演算装置46は、検出信号S1,S2をそれぞれ増幅する増幅器54A,54Bと、増幅器54A,54Bで増幅された検出信号S1,S2を内挿してそれぞれ回転板42A,42Bの回転角を例えばパターンの最小周期よりも微細な分解能で求める内挿部56A,56Bと、内挿部56A,56Bで求められた角度の補正テーブルを記憶している補正部58A,58Bとを有する。その補正テーブルは、例えば入力軸18A及び出力軸18Bの回転角の正確な計測値(例えば不図示の校正済みの基準となるロータリーエンコーダで計測される値)と、内挿部56A,56Bで求められた角度との差分(角度補正値)を、所定の角度間隔で記録したものである。
【0022】
補正部58A,58Bは、それぞれ内挿部56A,56Bで求められた角度に、対応する補正テーブルの対応する角度の角度補正値(又は補間した補正値)を加算して正確な角度を算出する。補正部58Aで補正された回転角(検出部44Aで検出された回転角)に乗算部60Aで減速機34の既知の減速比を乗ずることで、入力軸18Aの回転角を減速機34で減速した入力軸18Aの回転角CT1が求められる。さらに、演算装置46は、回転角CT1及び補正部58Bで補正された回転角(検出部44Bで検出された回転角)CT2の加重平均を行う加重平均部60Bと、回転角CT1と回転角CT2との差分(ねじれ量Δθ)を求める差分計算部60Cと、例えばねじれ量Δθに予め求めてある係数kを乗算してトルクT及びその方向(時計回り又は反時計回り)を求めるトルク換算部60Dと、求められたトルクT及びその方向を処理するエンコーダ制御部52とを有する。
【0023】
なお、ねじれ量ΔθとトルクTとの関係が非線形である場合には、例えばねじれ量ΔθとトルクTとの関係を示すテーブルをトルク換算部60D内の記憶部に記憶しておき、トルク換算部60Dではねじれ量Δθ及びそのテーブルを用いて例えば補間によってトルクTを求めてもよい。また、ねじれ量Δθが比較的大きい場合には、加重平均部60Bでは、補正部58Bで補正された回転角CT2の重みを回転角CT1の重みより大きく設定してもよい。乗算部60A及び加重平均部60Bから回転角演算部48が構成され、差分計算部60C及びトルク換算部60Dからトルク演算部50が構成されている。一例として、エンコーダ制御部52では、求められたトルクが所定の許容値を超えた場合に、アラーム情報AR1を駆動装置10の制御部等(不図示)に供給してもよい。
【0024】
加重平均部60B(回転角演算部48)から出力される回転角は、出力軸18Bの回転角の検出値としてモータ制御装置24に出力される。モータ制御装置24では、一例として加重平均部60Bから出力される回転角と制御部(不図示)から供給される目標回転角との差分を求め、この差分を減少させるようにモータ部14を駆動する。
また、図5(A)は本実施形態の駆動装置10の簡易的な力学モデルを示し、図5(A)において、入力軸18Aの回転角が第1検出部44Aで検出される。また、図1のモータ部14で駆動される入力軸18Aの回転が減速機34及び弾性部材36を介して出力軸18Bに伝達され、出力軸18Bの回転角が第2検出部44Bで検出される。第1検出部44A及び第2検出部44Bの検出信号がトルク演算部50に供給され、これらの検出信号を用いてトルク演算部50が出力軸18Bに作用する負荷トルクを求める。この力学モデルにおいて、減速機34と出力軸18Bとの間に弾性部材36が設けられているため、第1検出部44A及び第2検出部44Bの検出信号から求められる入力軸18A及び出力軸18Bの回転角の差分(ねじれ量)が大きくなり、高精度に負荷トルクを求めることができる。また、弾性部材36の弾性率を適宜変更することにより、図5(B)における、出力軸18Bに作用するトルクTと、そのねじれ量との関係を表す直線C1の傾きを、駆動装置の駆動力に合わせて変更することができる。例えば、小さい駆動力の駆動装置においては、弾性体36の弾性率を小さくすることで、小さいトルクに対してもねじれ量を大きくとることができるため、より高精度に負荷トルクを求めることができる。
【0025】
次に、本実施形態の駆動装置10の制御方法の一例につき図4のフローチャートを参照して説明する。まず、図4のステップ102において、モータ制御装置24内で被駆動部(不図示)及び出力軸18Bの目標回転角が設定される。次のステップ104において、モータ制御装置24はモータ部14による入力軸18Aの回転駆動を開始させる。そして、ステップ106において、エンコーダ部12の検出部44A及び検出部44Bが入力軸18A及び出力軸18Bの回転角CT1,CT2を検出し、回転角演算部48がそれらの回転角を用いて出力軸18Bの回転角を求める。出力軸18Bの回転角の情報はモータ制御装置24に供給される。ステップ108において、モータ制御装置24は、出力軸18Bの回転角から目標回転角を減算して回転角の補正量を算出する。そして、ステップ110において、モータ制御装置24はその補正量を相殺するようにモータ部14を駆動する。その後、動作はステップ106に移行し、ステップ106,108,110の動作が繰り返される。
【0026】
一方、ステップ104に続くステップ114においては、エンコーダ部12の検出部44A及び検出部44Bが入力軸18A及び出力軸18Bの回転角CT1,CT2を検出し、ステップ116において、トルク演算部50はそれらの回転角の差分(ねじれ量)から出力軸18Bに作用するZ軸の回りのトルクの方向及び大きさを求める。トルクの方向及び大きさはエンコーダ制御部52に供給される。次のステップ118において、エンコーダ制御部52は、そのトルクの大きさが許容範囲内かどうかを判定する。そして、トルクの大きさが許容範囲内である場合には、動作はステップ114に移行し、ステップ114,116,118の動作が繰り返される。なお、ステップ116において回転角CT1,CT2からトルクを求める代わりに、回転角CT1,CT2の差分と、出力軸18Bに作用するトルクの大きさ(及び方向)との関係をルックアップテーブル等に作成して予め記憶部等に記憶しておき、ステップ116では、ステップ114で求められた回転角の差分(ねじれ量)に応じたトルクをルックアップテーブルから読み出してもよい。
【0027】
また、ステップ118において、トルクの大きさが許容範囲を超える場合には、エンコーダ制御部52は、トルクの大きさが許容範囲を超えたことを示すアラーム情報AR1を例えば不図示の上位の制御装置又は不図示の駆動装置のオペレータに出力する。これに応じて、一例として、その制御部が自動的に、又はそのオペレータが手動により駆動装置10の動作を停止し、例えば被駆動部(不図示)の負荷が軽減された後、駆動装置10の駆動が開始される。なお、駆動装置10の動作を停止する代わりに、モータ部14の回転速度を低減させてもよい。本実施形態の制御方法によれば、駆動装置10の入力軸18Aの回転角(減速機34の減速比で補正した値)と出力軸18Bの回転角との間のねじれ量Δθから出力軸18Bに作用するトルクTを求め、トルクTの大きさが許容範囲を超える場合には、アラーム情報を出力している。このため、トルクTが大きくなり過ぎて駆動装置10が損傷を受けることを防止できる。
【0028】
本実施形態の駆動装置10においては、出力軸18Bに作用するトルクTと、そのねじれ量Δθとの関係は図5(B)の直線C1のようになり、ねじれ量Δθは、減速機34の弾性に起因するねじれ量C1aと弾性部材36に起因するねじれ量C1bとの和になる。これに対して、仮に本実施形態の弾性部材36を設けない例(以下、比較例という。)では、出力軸18Bに作用するトルクTと、そのねじれ量Δθとの関係は図5(C)の直線C2のようになり、ねじれ量Δθは、減速機34の弾性に起因するねじれ量のみとなる。本実施形態によれば、減速機34の他に弾性部材36が設けられているため、単位トルクあたりのねじれ量Δθが大きくなり、高精度にトルクTを求めることができる。さらに、弾性部材36は、外輪と内輪とを円周方向に組み合わせた構成であることから、トルクが作用したときに外輪の倒れが生じ難くなる。この特性により、弾性変形は正確にZ軸の回りの回転方向に生じるため、入力軸18A及び出力軸18Bの回転中心が常に合致している。このため、トルク及びZ軸以外の方向の外力が大きい場合でも出力軸18Bを高精度に回転駆動できる。これに対して例えば弾性部材36の代わりに比較的剛性の大きい大型の渦巻きばねを使用するような場合には、弾性変形がZ軸の回りの回転方向以外にも生じる恐れがあるために、入力軸18Aの回転軸に対して出力軸18Bの回転軸が傾斜して、被駆動物の位置が目標位置からずれる恐れがある。また、Z軸の回りの回転方向以外の方向の外力を受ける場合に、出力軸18Bの回転軸の傾斜を抑制しようとすると、倒れ防止のための部材を別途備える必要がありコスト増となる。
【0029】
次に、図6(A)から図7(B)を参照して本実施形態の弾性部材36として使用できる弾性部材の製造方法の一例につき説明する。その製造方法において、まず図6(A)に示すように外形が円形の回転軸受36Sを用意する。回転軸受36Sは、円形の内輪35SAと、これを囲むように配置された円形の外輪35SCと、内輪35SAと外輪35SCとの間に配置された複数の球体35Bと、これらの球体35Bを保持する保持器35Dとを有する。さらに、図6(B)に示すように、内輪35SAの形状を変形させるためのリング状の第1の治具72、及び外輪35SCの形状を変形させるためのリング状の第2の治具74を用意する。治具72,74は例えば金属製である。
【0030】
図7(A)に示すように、第1の治具72の基本的な外形は回転軸受36Sの内輪35SAの内面の形状(内形)SA1よりもわずかに小さい円形であり、その外形の4箇所に内形SA1に対して回転軸の外側に突出した凸部72a,72b,72c,72dが形成されている。また、図7(B)に示すように、第2の治具74の基本的な外形は回転軸受36Sの外輪35SCの外面の形状(外形)SC1よりもわずかに大きい円形であり、その外形の4箇所に外形SC1に対して回転軸方向側に突出した凸部74a,74b,74c,74dが形成されている。
【0031】
そして、図6(B)に示すように、回転軸受36Sの内輪35SAの内部に第1の治具72を圧入することによって、凸部72a~72dが内輪35SAの内側を押圧して、内輪35SAの凸部72a~72dとの接触部周辺を半径方向外側に丸みを帯びた形状に変形させ、図7(A)に示すように、内輪35SAの外形の4箇所が当初の外形SA2に対して外側に突き出る変形部35SAa,35SAb,35SAc,35SAdとなり、この変形部35SAa~35SAdが外輪35SCを押圧する。同様に、外輪35SCの外側に第2の治具74を圧入することによって、凸部74a~74dが外輪35SCの外側を押圧して、外輪35SCの凸部74a~74dとの接触部周辺を回転軸方向に丸みを帯びた形状に変形させ、図7(B)に示すように、外輪35SCの内形の4箇所が当初の内形SC2に対して内側に突き出る変形部35SCa,35SCb,35SCc,35SCdとなり、この変形部35SCa~35SCdが内輪35SAを押圧する。このように、内輪35SAと外輪35SCの変形によって、それらの独立した回転が阻害されるとともに、内輪35SAと外輪35SCの接触部(押圧部)の弾性変形によって、回転軸受36Sをから製造される弾性部材は弾性体として機能する。上述のように治具72,74の圧入によって回転軸受36Sを変形させて容易に弾性部材36として使用できる弾性部材を製造できる。この際に、回転軸受36Sに治具72及び74を圧入し易くするために、治具72の凸部72a~72dの回転軸受36S側の面、及び治具74の凸部74a~74dの回転軸受36S側の面にそれぞれ傾斜部(面取り部)を形成しておくことが好ましい。また、第1の治具72の外面に形成する凸部の個数は任意であり、その外面には1箇所の凸部(例えば凸部72a)を形成しておくのみでもよい。同様に、第2の治具74の内面に形成する凸部の個数は任意であり、その内面には1箇所の凸部(例えば凸部74a)を形成しておくのみでもよい。また、第1の治具72の外面に形成される凸部が、第1の治具72に配置される回転軸回りの角度間隔は任意である。同様に、第2の治具74の内面に形成する凸部が回転軸回りに第2の治具72に配置される角度間隔も任意である。さらに、第1の治具の凸部が配置される第1の治具の回転軸回りの角度位置と、第2の治具の凸部が配置される回転軸回りの角度位置が同じ角度位置であってもよく、また、異なる位置でもよい。また、回転軸受36Sを変形させる治具は、第1の治具72及び第2の治具74のいずれか1つでもよいが、3つから8つの範囲であることが好ましい。
【0032】
図7(C)では、第1の治具72Aに凸部72a,72cが回転軸回りに略180度間隔で2箇所設けられ、同様に、第2の治具74Aに凸部74a,74cが、回転軸回りに略180度間隔で2箇所設けられている。治具72A,74Aを用いる場合、回転軸受36Sの内輪35SAの内部に第1の治具72Aを圧入することによって、凸部72a,72cが内輪35SAの内側を押圧して、内輪35SA全体を楕円形状又は楕円に近い細長い形状に変形させ、この変形した内輪35SAの長軸付近が外輪35SCを押圧する。同様に、外輪35SCの外側に第2の治具74Aを圧入することによって、凸部74a,74cが外輪35SCの外側を押圧して、外輪35SC全体を楕円形状又は楕円に近い細長い形状に変形させ、この変形した外輪35SCの短軸付近が内輪35SAを押圧する。このように、内輪35SAと外輪35SCの変形によって、それらの独立した自由な回転が阻害されるとともに、内輪35SAと外輪35SCの接触部(押圧部)の弾性変形によって、回転軸受36Sから製造される弾性部材36は弾性体として機能する。なお、回転軸受36Sを変形させる治具は、第1の治具72及び第2の治具74のいずれか1つでもよい。
【0033】
なお、そのように治具72,74を用いることなく、回転軸受36Sの内部及び外部から圧力を加えて回転軸受36Sの内輪35SA及び外輪35SCを楕円形等に塑性変形させてもよい。さらに、最初に外形が楕円形等の内輪部35A及び外輪部35Cを製造しておき、それらの間に複数の球体35B及び保持器35Dを配置してもよい。この場合、内輪部35A及び外輪部35Cをそれぞれ回転軸に垂直な平面で2分割しておき、分割された内輪部及び外輪部の間に球体35B及び保持器35Dを配置した後、その分割された内輪部及び外輪部を溶接等で連結してもよい。
上述のように、本実施形態の駆動装置10は、モータ部14により駆動される入力軸18A(第1軸)と、入力軸18Aに連動して回転する出力軸18B(第2軸)と、を備える駆動装置であって、モータ部14の駆動による入力軸18Aの回転が出力軸18Bに伝達される入力軸18Aから出力軸18Bまでの経路(入力軸18Aと出力軸18Bとの間)に配置され、出力軸18Bの回転方向(Z軸の回りの方向)に弾性変位する弾性部材36(弾性体)と、弾性部材36の変位量(ねじれ量Δθ)に基づいて出力軸18Bの回転方向への負荷の情報(トルク)を求めるトルク演算部50と、を有し、弾性部材36は、入力軸18Aに連結される外輪部35C(第1回転体)と、外輪部35Cの内周方向に配置されて出力軸18Bに連結され、入力軸18A又は出力軸18Bの回転方向への負荷により外輪部35Cに対し弾性変位する内輪部35A(第2回転体)と、を有する。
【0034】
また、本実施形態のエンコーダ部12は、モータ部14により駆動される入力軸18A(第1軸)と、入力軸18Aに連動して回転する出力軸18B(第2軸)と、を備える駆動装置10に設けられるエンコーダユニットであって、モータ部14の駆動による入力軸18Aの回転が出力軸18Bに伝達される入力軸18Aから出力軸18Bまでの経路(入力軸18Aと出力軸18Bとの間)に配置され、出力軸18Bの回転方向(Z軸の回りの方向)に弾性変位する弾性部材36と、入力軸18Aの第1回転情報を検出する第1検出部44Aと、出力軸18Bの第2回転情報を検出する第2検出部44Bと、その第1回転情報及びその第2回転情報を用いて入力軸18A又は出力軸18Bの回転方向への負荷の情報(トルク)を求めるトルク演算部50と、を備え、弾性部材36は、入力軸18Aに連結される外輪部35C(第1回転体)と、外輪部35Cの内周方向に配置されて出力軸18Bに連結され、出力軸18Bの回転方向への負荷により外輪部35Cに対し弾性変位する内輪部35A(第2回転体)と、を有する。
【0035】
本実施形態の駆動装置10又はエンコーダ部12によれば、入力軸18Aと出力軸18Bとの間に弾性部材36が設けられているため、出力軸18Bにトルクが作用する場合に、入力軸18Aの回転角と出力軸18Bの回転角との差分(ねじれ量Δθ)を大きくすることができ、簡単な構成でそのトルクを高精度に求めることができる。また、弾性部材36は入力軸18Aの回転軸(Z軸)の回りに正確に弾性変形し、かつZ軸以外の方向の外力に対する剛性が高いため、入力軸18Aの回転軸に対する出力軸18Bの回転軸の傾斜等がなく、出力軸18Bを高精度に回転駆動できる。
【0036】
なお、上述の実施形態では、以下のような変形が可能である。
まず、上述の実施形態では、弾性部材36の内輪部35Aに出力軸18Bに連結され、外輪部35Cに減速機34を介して入力軸18Aが連結されている。これに対して、例えば内輪部35Aに減速機34を介して入力軸18Aを連結し、外輪部35Cに出力軸18Bを連結してもよい。この場合、弾性部材36は、入力軸18Aに連結される内輪部35A(第1回転体)と、内輪部35Aの外周方向に配置されて出力軸18Bに連結される外輪部35C(第2回転体)とを有することになる。
【0037】
また、上述の実施形態では、モータ部14の駆動による入力軸18Aの回転が出力軸18Bに伝達される経路において、減速機34と出力軸18Bとの間に弾性部材36が配置されているが、減速機34と入力軸18Aとの間に弾性部材36を配置してもよい。
また、上述の実施形態では、入力軸18Aと出力軸18Bとの間に減速機34が設けられているが、減速機34を設けることなく、入力軸18Aと出力軸18Bとの間に弾性部材36を配置してもよい。
【0038】
また、上述の実施形態では、弾性部材36は内輪部35Aと外輪部35Cとの間に球体35Bが設置された転がり軸受方式であるが、弾性部材36の代わりに、内輪部35Aと外輪部35Cとの間に円柱、ニードル、又は円錐状の転動体等を配置した転がり軸受を使用することもできる。さらに、弾性部材36の代わりに、内輪部35Aと外輪部35Cとの間に転動体を介在させない滑り軸受方式の部材を使用することもできる。
また、上述の実施形態において、検出部44A,44Bとしては、光学式の反射型又は透過型のロータリーエンコーダが使用されている。これに対して、検出部44A,44Bの少なくとも一方として、磁気式又は静電容量式等の任意の形式のロータリーエンコーダを使用してもよい。
【0039】
また、弾性部材としては、図8(A)の第1変形例の正三角形状の弾性部材36Aを使用してもよい。弾性部材36Aは、正三角形状の内輪部35AAと正三角形状の外輪部35ACとの間に複数の球体35B及び保持器(不図示)を設置したものである。さらに、弾性部材36の代わりに、外形がn角形(nは3以上の整数)の多角形状の弾性部材を使用してもよい。このように多角形状の弾性部材を使用した場合でも、トルクによる弾性変形によって内輪部35AAと外輪部35ACとの間にねじれ量Δθが生じるため、高精度にトルクを求めることができる。
【0040】
また、弾性部材としては、図8(B)の第2変形例の非回転対称の弾性部材36B、又は図8(C)の第3変形例の非回転対称の弾性部材36Cを使用することもできる。図8(B)の弾性部材36Bにおいて、外輪部35BC(第1回転体)の内輪部35BA(第2回転体)と対向する面の少なくとも一部は、内輪部35BA側に突出する凸部35aを有し、内輪部35BAの外輪部35BCと対向する面の少なくとも一部は、外輪部35BCと反対側に変形した凹部35cを有する。また、外輪部35BCの外面は、外輪部35BCの少なくとも一部を加圧して、凸部35aを形成するための第1加圧部35bを有する。また、外輪部35BCと内輪部35BAとの間に複数の球体35B及び保持器35Dを設置してもよい。また、第1加圧部35bを備える代わりに、凸部35aと凹部35cを外輪部35BCと内輪部35BAのそれぞれに形成していてもよい。
【0041】
また、図8(C)の弾性部材36Cにおいて、外輪部35CCの内輪部35CAと対向する面の少なくとも一部は、凹部35eを有し、内輪部35CAの外輪部35CCと対向する面の少なくとも一部は、外輪部35CC側に突出した凸部35gを有する。また、内輪部35CAの内面は、内輪部35CAの少なくとも一部を加圧して、凸部35gを形成するための第2加圧部35hを有する。また、外輪部35CCと内輪部35CAとの間に複数の球体35B及び保持器35Dを設置してもよい。また、第2加圧部35hを備える代わりに、凹部35eと凸部35gを外輪部35CCと内輪部35CAのそれぞれに形成していてもよい。
【0042】
弾性部材36B又は弾性部材36Cを用いた場合にも、外輪部35BC(35CC)の回転に連動して内輪部35BA(35CA)が回転し、外輪部35BC(35CC)及び内輪部35BA(35CA)の回転方向の弾性変形によってねじれ量Δθが生じるため、内輪部35BA(35CA)(出力軸18B)に作用するトルクを高精度に求めることができる。なお、弾性部材36B又は36Cにおいて、凸部35a(又は35g)又は凹部35C(又は35e)を出力軸18Bの回りに少なくとも3個設けてもよい。
【0043】
次に、弾性部材としては、図9の第4変形例の弾性部材36Dのように、弾性変形可能な棒状部材76A,76B,76C(弾性軸)を用いてもよい。弾性部材36Dにおいて、円形の外輪部35DCと円形の内輪部35DAとが等角度間隔で3箇所に配置された棒状部材76A,76B,76Cで連結されている。また、棒状部材76A~76Cは、回転軸に垂直な方向に外輪部35DCと内輪部35DAを挿通している。また、外輪部35DCと内輪部35DAとの間の棒状部材76A,76B,76Cの間にそれぞれ複数の球体35Bが保持器35Dに保持されて配置されている。弾性部材36Dによれば、内輪部35DA(出力軸18B)の回転方向への負荷による棒状部材76A~76Cの弾性変形により、内輪部35DAが外輪部35DCに対して弾性変位する。このため、外輪部35DCの回転に連動して内輪部35DAが回転し、その弾性変位による外輪部35DCと内輪部35DAとのねじれ量(Δθ)によって出力軸18Bのトルクを高精度に求めることができる。
【0044】
また、上述の各実施形態の駆動装置及びエンコーダユニットは各種工作機械又はロボット装置の駆動機構又はその一部として使用できる。
図10は、上記の実施形態の駆動装置10と同様の駆動装置10C,10D,10Eが使用されたロボット装置RBTを示す斜視図である。なお、図10において、上記した実施形態と同一または同等の構成部分については同一符号を付してその説明を省略する。
【0045】
ロボット装置RBTは、第1の駆動装置10Cと、この駆動装置10Cの出力軸の端部18CBaに連結された第1アーム82と、第1アーム82の先端部に設置された第2の駆動装置10Dと、この駆動装置10Dに連結された第2アーム84と、第2アーム84の先端部に上下動可能に装着されたハンドリング部86と、ハンドリング部86の下端に連結された第3の駆動装置10Eと、装置全体の動作を制御するロボット制御部80とを備えている。この場合、駆動装置10Dの出力軸の端部18DBaが第1アーム82の先端に固定され、駆動装置10Eの出力軸の端部18EBaに対向する位置に被駆動部としてのボルト88が配置されている。端部18EBaには電磁吸着部(不図示)も設けられ、端部18EBaでボルト88のヘッド部を吸着し、端部18EBaを回転することによって、ボルト88を対応するネジ穴(不図示)に締めることができる。
【0046】
本実施形態においては、駆動装置10Cの出力軸を回転軸AX1の回りに回転駆動することで、回転軸AX1の回りに第1アーム82が回転し、駆動装置10Dの出力軸を回転軸AX2の回りに回転駆動することで、回転軸AX2の回りに第2アーム84が回転し、ハンドリング部86を駆動装置10Eの回転軸AX3に沿って上下動することで、ボルト88を3次元的に位置決めすることができる。また、駆動装置10C~10Eのエンコーダ制御部52(図1参照)からロボット制御部80に、それぞれ第1アーム82に作用するトルクの方向及び大きさ、第2アーム84に作用するトルクの方向及び大きさ、並びに駆動装置10Eの端部18EBaに作用するトルクTEの方向及び大きさの情報が供給される。
【0047】
そこで、一例として第1アーム82のトルク又は第2アーム84のトルクが予め設定されている閾値を超えた場合に、ロボット制御装置80では、駆動装置10Cによる第1アーム82の回転速度又は駆動装置10Dによる第2アーム84の回転速度を低減させてもよい。又は、ロボット制御部80では、第1アーム及び第2アーム84の回転を停止させてもよい。又は、ロボット制御部80では、ワーク88の荷重を軽減させるようにアラームを発してもよい。さらに、ロボット制御部80では、駆動装置10Eによってボルト88の締め付けを行っている際に、端部18EBaに作用するトルクTEの大きさが予め定められている一定の値になるように駆動装置10Eを駆動してもよい。これによって、常にボルト88を安定に締め付けることができる。
【0048】
なお、ロボット装置RBTは、上記の構成に限定されず、駆動装置10C,10D,10Eは、関節を備える各種ロボット装置(例、組立ロボット、自動搬送装置(AGV)、人間協調型ロボット等)に適用できる。
【符号の説明】
【0049】
10,10C~10E…駆動装置、12…エンコーダ部、14…モータ部、18A…入力軸、18B…出力軸、20…マグネット、22…コイル、24…モータ制御装置、30…モータケース、34…減速機、36,36A~36D…弾性部材、35A…内輪部、35B…球体、35C…外輪部、42A,42B…回転板、44A…第1検出部、44B…第2検出部、46…演算装置、48…回転角演算部、50…トルク演算部、52…エンコーダ制御部、RBT…ロボット装置
図1
図2
図3
図4
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図6
図7
図8
図9
図10