(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】銅張積層板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/22 20060101AFI20241009BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20241009BHJP
B32B 37/06 20060101ALI20241009BHJP
H05K 3/18 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
H05K3/22 Z
B32B15/08 P
B32B37/06
H05K3/18 N
H05K3/18 G
(21)【出願番号】P 2020178361
(22)【出願日】2020-10-23
【審査請求日】2023-05-11
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】弁理士法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西山 芳英
【審査官】黒田 久美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-002296(JP,A)
【文献】特開2016-050324(JP,A)
【文献】特開2015-108187(JP,A)
【文献】特開2007-287994(JP,A)
【文献】特開2012-001793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/22
B32B 15/08
B32B 37/06
H05K 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面に銅めっき被膜を成膜して銅張積層板を得る電解めっき工程と、
前記電解めっき工程の後、前記銅張積層板に付着した液を切る液切工程と、
前記液切工程の後、前記銅張積層板をロールツーロールにより搬送しつつ加熱する加熱工程と、を備え、
前記加熱工程において、搬送張力を50~105N/mとし、加熱温度を134~170℃とするか、搬送張力を105~160N/mとし、加熱温度を113~170℃とする
ことを特徴とする銅張積層板の製造方法。
【請求項2】
ロールツーロールによる前記基材の搬送経路に、前記電解めっき工程を行なうめっき槽と、前記液切工程を行なう液切装置と、前記加熱工程を行なう加熱炉とを配置する
ことを特徴とする請求項1記載の銅張積層板の製造方法。
【請求項3】
前記加熱工程において、搬送張力を50~105N/mとし、加熱温度を152~170℃とするか、搬送張力を105~160N/mとし、加熱温度を125~170℃とする
ことを特徴とする請求項1または2記載の銅張積層板の製造方法。
【請求項4】
前記加熱工程において、搬送張力を50~105N/mとし、加熱温度を162~170℃とするか、搬送張力を105~160N/mとし、加熱温度を140~170℃とする
ことを特徴とする請求項1または2記載の銅張積層板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅張積層板の製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、フレキシブルプリント配線板(FPC)などの製造に用いられる銅張積層板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネル、ノートパソコン、デジタルカメラ、携帯電話などの電子機器には、樹脂フィルムの表面に配線パターンが形成されたフレキシブルプリント配線板が用いられる。フレキシブルプリント配線板は樹脂フィルムに銅泊を積層した銅張積層板から製造される。また、銅張積層板は樹脂フィルムに乾式めっきにより下地金属層を成膜した後、電解めっきにより銅めっき被膜を成膜することにより得られる(例えば、特許文献1)。
【0003】
電子機器が処理する情報量は年々増加しており、電子機器は高周波信号の処理が求められている。これに伴い、フレキシブルプリント配線板は高周波信号の処理における伝送損失を低く抑えることが求められている。例えば、スマートフォンなどの携帯端末は、近年のデータ送受信量の増大に対応するため、高速なデータ通信が求められている。そして、携帯端末に用いられるフレキシブルプリント配線板は高周波無線通信を行なう際の伝送損失を低く抑えることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
配線に流れるパルスが高周波領域になると、表皮効果により配線の表面に多くの電流が流れる。そのため、配線の表面抵抗率を低くすれば、伝送損失を低く抑えることができる。配線の表面抵抗率は配線を構成する銅めっき被膜の結晶子が大きいほど低くなる。銅めっき被膜の結晶子は、めっき直後は小さく、時間の経過とともに進行する室温再結晶により大きくなる。しかし、室温再結晶により結晶子が十分な大きさとなるには長時間(例えば、数週間)を要する。
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、短時間で銅めっき被膜の結晶子を大きくできる銅張積層板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の銅張積層板の製造方法は、基材の表面に銅めっき被膜を成膜して銅張積層板を得る電解めっき工程と、前記銅張積層板をロールツーロールにより搬送しつつ加熱する加熱工程と、を備え、前記加熱工程において、搬送張力を50~105N/mとし、加熱温度を134~170℃とするか、搬送張力を105~160N/mとし、加熱温度を113~170℃とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電解めっき工程の後に行なわれる加熱工程において、特定の加熱温度、搬送張力とすることにより、銅めっき被膜の結晶子を大きくできる。そのため、短時間で銅めっき被膜の結晶子を大きくできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る銅張積層板の断面図である。
【
図2】加熱炉の加熱温度と銅めっき被膜の結晶子径との関係を示すグラフである。
【
図3】銅めっき被膜の結晶子径と表面抵抗率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る方法により製造される銅張積層板1は、基材10と、基材10の表面に成膜された銅めっき被膜20とからなる。
図1に示すように基材10の片面のみに銅めっき被膜20が成膜されてもよいし、基材10の両面に銅めっき被膜20が成膜されてもよい。
【0011】
基材10は絶縁性を有するベースフィルム11の表面に金属層12が成膜されたものである。ベースフィルム11としてポリイミドフィルム、液晶ポリマー(LCP)フィルムなどの樹脂フィルムを用いることができる。金属層12は、例えば、スパッタリング法により成膜される。金属層12は下地金属層13と銅薄膜層14とからなる。下地金属層13と銅薄膜層14とはベースフィルム11の表面にこの順に積層されている。一般に、下地金属層13はニッケル、クロム、またはニッケルクロム合金からなる。特に限定されないが、ベースフィルム11の厚さは30~40μmが一般的であり、下地金属層13の厚さは5~50nmが一般的であり、銅薄膜層14の厚さは50~400nmが一般的である。
【0012】
なお、下地金属層13はなくてもよい。銅薄膜層14はベースフィルム11の表面に下地金属層13を介して成膜されてもよいし、下地金属層13を介さずベースフィルム11の表面に直接成膜されてもよい。
【0013】
銅めっき被膜20は銅薄膜層14の表面に成膜されている。特に限定されないが、銅めっき被膜20の厚さは、サブトラクティブ法により加工される銅張積層板1の場合8~12μmが一般的であり、セミアディティブ法により加工される銅張積層板1の場合0.1~5μmが一般的である。なお、金属層12と銅めっき被膜20とを合わせて「導体層」と称する。
【0014】
本実施形態に係る銅張積層板1の製造方法は電解めっき工程と加熱工程とを有している。また、ロールツーロール方式のめっき装置が用いられる。このめっき装置は、ロールツーロールにより長尺帯状の基材10を搬送しつつ、基材10に対して電解めっきを行なう装置である。
【0015】
めっき装置はロール状に巻回された基材10を繰り出す供給装置と、めっき後の基材10(銅張積層板1)をロール状に巻き取る巻取装置とを有する。供給装置と巻取装置との間の搬送経路には、前処理槽、めっき槽、後処理槽、液切装置、加熱炉を、上流から下流に向かってこの順に配置することが好ましい。前処理槽では基材10の酸洗を行なう。めっき槽では電解めっき工程を行なう。後処理槽では銅張積層板1の防錆処理を行なう。液切装置で銅張積層板1に付着した液を切る。加熱炉では加熱工程を行なう。
【0016】
このように、基材10の搬送経路にめっき槽と加熱炉とを配置すれば、基材10を一回搬送するだけで電解めっき工程と加熱工程とが完了する。そのため、加熱工程も含め銅張積層板1の製造を短時間で完了できる。また、基材10の搬送経路において加熱炉の前後に張力カット機構を設けることが好ましい。これにより、加熱炉における銅張積層板1の搬送張力を任意に設定できる。
【0017】
(電解めっき工程)
めっき槽では電解めっき工程が行なわれる。基材10はめっき槽内を搬送されつつ、電解めっきよりその表面に銅めっき被膜20が成膜される。これにより、長尺帯状の銅張積層板1が得られる。
【0018】
めっき槽には銅めっき液が貯留されている。銅めっき液は水溶性銅塩を含む。銅めっき液に一般的に用いられる水溶性銅塩であれば特に限定されず用いられる。銅めっき液は硫酸を含んでもよい。硫酸の添加量を調整することで、銅めっき液のpHおよび硫酸イオン濃度を調整できる。銅めっき液は一般的にめっき液に添加される添加剤を含んでもよい。添加剤として、ブライトナー成分、レベラー成分、ポリマー成分、塩素成分などから選択された1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
銅めっき液の各成分の含有量は任意に選択できる。ただし、銅めっき液は銅を15~70g/L、硫酸を20~250g/L含有することが好ましい。そうすれば、銅めっき被膜20を十分な速度で成膜できる。銅めっき液はブライトナー成分を1~50mg/L含有することが好ましい。そうすれば、析出結晶を微細化し銅めっき被膜20の表面を平滑にできる。銅めっき液はレベラー成分を1~300mg/L含有することが好ましい。そうすれば、突起を抑制し平坦な銅めっき被膜20を成膜できる。銅めっき液はポリマー成分を10~1,500mg/L含有することが好ましい。そうすれば、基材10端部への電流集中を緩和し均一な銅めっき被膜20を成膜できる。銅めっき液は塩素成分を20~80mg/L含有することが好ましい。そうすれば、異常析出を抑制できる。
【0020】
銅めっき液の温度は20~35℃が好ましい。また、めっき槽内の銅めっき液を撹拌することが好ましい。例えば、ノズルから噴出させた銅めっき液を基材10に吹き付けることで、銅めっき液を撹拌できる。
【0021】
(加熱工程)
加熱炉では加熱工程が行なわれる。すなわち、銅めっき被膜20の成膜後、銅めっき被膜20の温風加熱を行なう。加熱工程は、銅張積層板1をロールツーロールにより搬送しつつ銅めっき被膜20に温風を吹き付けて加熱することにより行なわれる。
【0022】
加熱工程の目的は、通常、銅めっき被膜20の乾燥である。そのため、通常の加熱温度(銅張積層板1の温度)は50~70℃、処理時間は1分程度である。
【0023】
ところが、本願発明者が、通常は行なわない高温での加熱を行なったところ、加熱温度を高くするほど銅めっき被膜20の結晶子が大きくなることが確認された。また、高温での加熱を行なう場合、銅張積層板1の搬送張力を高くするほど銅めっき被膜20の結晶子が大きくなることが確認された。これより、本願発明者は、加熱工程における加熱温度および搬送張力を特定の条件とすることで、銅めっき被膜20の結晶子を大きくすることの着想を得た。すなわち、本実施形態における加熱工程は、銅めっき被膜20の再結晶を進行させ、結晶子を大きくすることを目的としている。
【0024】
具体的には、搬送張力を50~105N/mとし、加熱温度を134~170℃とするか、搬送張力を105~160N/mとし、加熱温度を113~170℃とすればよい。そうすれば、銅めっき被膜20の結晶子径を1,500Å以上にできる。銅めっき被膜20の結晶子径を1,500Å以上にすれば、表面抵抗率が0.25Ω/□以下となる。そのため、銅張積層板1から製造されるフレキシブルプリント配線板の高周波信号の処理における伝送損失を低く抑えることができる。
【0025】
製造コストの観点からは加熱温度が低い方が好ましい。そこで、上記の範囲で、搬送張力を高くしつつ、加熱温度を低くすることが好ましい。そうすれば、銅めっき被膜20の結晶子径を所望の大きさにしつつ、加熱によるコスト増を抑えることができる。
【0026】
以上のように、電解めっき工程の後に行なわれる加熱工程において、特定の加熱温度、搬送張力とすることにより、銅めっき被膜20の結晶子を大きくできる。加熱工程の処理時間は1~2分でよい。室温再結晶により結晶子を十分な大きさとするには数週間を要する。これに比べると、極めて短時間で銅めっき被膜20の結晶子を大きくできる。
【0027】
なお、電解めっき工程と加熱工程とを別々の装置で行なってもよい。すなわち、めっき装置で銅張積層板1を製造して巻取装置でロール状に巻き取った後、別の加熱装置で銅張積層板1をロールツーロールにより搬送しつつ加熱してもよい。ただし、この場合、基材10(銅張積層板1)の繰り出し、巻き取りを2回行なわなければならないので、作業が煩雑になり、また処理時間が長くなる。
【0028】
また、ロール状に巻回された銅張積層板1をその状態のまま加熱すると、ロールの外側と内側とで温度差が生じ、銅めっき被膜20を均一に加熱できない。しかも、ロールの内部まで加熱しようとすると、長時間(例えば、数時間)を要する。これに対し、ロールツーロールで搬送しながら加熱すれば、銅めっき被膜20を均一に加熱できるし、短時間(1~2分)で処理を完了できる。
【実施例】
【0029】
(共通の条件)
ベースフィルムとして、厚さ35μmの長尺帯状のポリイミドフィルム(宇部興産社製 Upilex-35SGAV1)を用意した。ベースフィルムをマグネトロンスパッタリング装置にセットした。マグネトロンスパッタリング装置内にはニッケルクロム合金ターゲットと銅ターゲットとが設置されている。ニッケルクロム合金ターゲットの組成はCrが20質量%、Niが80質量%である。真空雰囲気下で、ベースフィルムの両面に、厚さ25nmのニッケルクロム合金からなる下地金属層を形成し、その上に厚さ100nmの銅薄膜層を形成した。
【0030】
ロールツーロール方式のめっき装置を用いて基材の両面に銅めっき被膜を成膜して銅張積層板を得た。基材の搬送経路にはめっき槽と循環式温風加熱炉とが配置されており、基材の一回の搬送で電解めっきと加熱とが行なわれるようになっている。
【0031】
めっき槽に貯留される銅めっき液は硫酸銅を120g/L、硫酸を70g/L、ブライトナー成分を16mg/L、レベラー成分を20mg/L、ポリマー成分を1,100mg/L、塩素成分を50mg/L含有する。ブライトナー成分としてビス(3-スルホプロピル)ジスルフィド(RASCHIG GmbH社製の試薬)を用いた。レベラー成分としてジアリルジメチルアンモニウムクロライド-二酸化硫黄共重合体(ニットーボーメディカル株式会社製 PAS-A―5)を用いた。ポリマー成分としてポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール共重合体(日油株式会社製 ユニルーブ50MB-11)を用いた。塩素成分として塩酸(和光純薬工業株式会社製の35%塩酸)を用いた。
【0032】
めっき槽に基材を供給し、電解めっきにより基材の両面に厚さ2.0μmの銅めっき被膜を成膜した。電解めっきにおける電流条件は、電流密度1.0A/dm2で1分、3.0A/dm2で1分、5.0A/dm2で1分とした。ここで、銅めっき液の温度を31℃とした。また、電解めっきを施す間、ノズルから噴出させた銅めっき液を基材の表面に対して略垂直に吹き付けることで、銅めっき液を撹拌した。電解めっき中の搬送張力は105N/mに設定した。
【0033】
循環式温風加熱炉により加熱工程を行なった。加熱炉の前後には、搬送張力をカットできるサクションローラーを備えており、炉内の搬送張力を任意に設定できる。加熱処理時間は1分とした。
【0034】
得られた銅張積層板の銅めっき被膜の結晶子径を測定した。測定は、株式会社リガク製の全自動多目的X線回折装置SmartLabを用い、(200)面ピークの半値幅からScherrerの式により算出した。なお、測定は、電解めっき完了から18時間後に行なった。
【0035】
(試験1)
加熱工程における搬送張力を50N/mとした。また、加熱温度を80、100、11
0、130、150、170℃のいずれかとした。各条件で製造した銅張積層板の結晶子径を表1および
図2に示す。
【0036】
(試験2)
加熱工程における搬送張力を105N/mとした。また、加熱温度を50、60、70、80、100、110、130、150、170℃のいずれかとした。各条件で製造した銅張積層板の結晶子径を表1および
図2に示す。
【0037】
(試験3)
加熱工程における搬送張力を160N/mとした。また、加熱温度を80、100、110、130、150、170℃のいずれかとした。各条件で製造した銅めっき被膜の結晶子径を表1および
図2に示す。
【0038】
【0039】
表1および
図2のグラフから分かるように、加熱温度が50~70℃の範囲では銅めっき被膜の結晶子径は加熱温度によりほとんど変化しない。これに対し、加熱温度を80℃以上とすれば、銅めっき被膜の結晶子径は加熱温度を高くするほど大きくなる。また、加熱温度を80℃以上とした場合、銅めっき被膜の結晶子径は搬送張力を高くするほど大きくなる。
【0040】
銅めっき被膜の結晶子径が大きいほど、表面抵抗率が低くなり、高周波パルスの伝送損失を低減できる。そのため、銅めっき被膜の結晶子径は大きいほど好ましい。
【0041】
銅めっき被膜の結晶子径を1,500Å以上にするには、搬送張力を50~105N/mとし、加熱温度を134~170℃とするか、搬送張力を105~160N/mとし、加熱温度を113~170℃とすればよい。
【0042】
銅めっき被膜の結晶子径を2,000Å以上にするには、搬送張力を50~105N/mとし、加熱温度を152~170℃とするか、搬送張力を105~160N/mとし、加熱温度を125~170℃とすればよい。
【0043】
銅めっき被膜の結晶子径を2,500Å以上にするには搬送張力を50~105N/mとし、加熱温度を162~170℃とするか、搬送張力を105~160N/mとし、加熱温度を140~170℃とすればよい。
【0044】
図3に、銅めっき被膜の結晶子径と表面抵抗率との関係を示す。なお、
図3のグラフはつぎの手順で行なった試験により得られたものである。共通の条件に記載の手順および条件で基材を作成し、基材の両面に銅めっき被膜を成膜した。循環式温風加熱炉における加熱温度は50℃とし、搬送張力は105N/mとした。得られた銅張積層板に対して、電解めっき完了から2時間後、40時間後、85時間後、229時間後に、結晶子径および表面抵抗率の測定を行なった。表面抵抗率の測定には三菱ケミカルアナリティック製ロレスタAX MCP-T370を用いた。
【0045】
図3のグラフより、銅めっき被膜の結晶子径が大きいほど、表面抵抗率が低いことが分かる。銅めっき被膜の結晶子径を1,500Å以上にすれば、表面抵抗率を0.25Ω/□以下にできる。銅めっき被膜の結晶子径を2,000Å以上にすれば、表面抵抗率を0.23Ω/□以下にできる。銅めっき被膜の結晶子径を2,500Å以上にすれば、表面抵抗率を0.22Ω/□以下にできる。
【0046】
なお、室温再結晶により銅めっき被膜の結晶子径が1,500Åとなるには約1週間を要し、3,000Åとなるには約2週間を要する。これに比べれば、本実施例によれば極めて短時間で銅めっき被膜の結晶子を大きくできる。
【符号の説明】
【0047】
1 銅張積層板
10 基材
11 ベースフィルム
12 金属層
13 下地金属層
14 銅薄膜層
20 銅めっき被膜