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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20241009BHJP
【FI】
G03G15/20 510
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021040423
(22)【出願日】2021-03-12
(65)【公開番号】P2022139860
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2024-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100182453
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 英明
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 隆
(72)【発明者】
【氏名】山口 嘉紀
(72)【発明者】
【氏名】藤本 一平
(72)【発明者】
【氏名】吉永 洋
(72)【発明者】
【氏名】山下 賢太郎
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-187599(JP,A)
【文献】特開2000-268940(JP,A)
【文献】特開2021-021935(JP,A)
【文献】特開2017-161880(JP,A)
【文献】特開2011-113013(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0170957(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な無端状の定着ベルトと、
前記定着ベルトの外周面に接触し定着ニップを形成する回転可能な加圧部材と、
前記定着ベルトを加熱する加熱源と、
前記定着ニップの位置において前記定着ベルトの内周面に直接的又は間接的に接触する熱移動補助部材と、
を備える定着装置であって、
前記熱移動補助部材は、
前記定着ベルトの内周面に直接的又は間接的に接触するベース部と、
前記ベース部の長手方向に伸びる端の一部から前記加圧部材側とは反対側へ伸びる連結部と、
前記連結部の先端から前記連結部が伸びる方向に対して交差する方向に広がる面状部と、
を有し、
前記ベース部の長手方向における前記連結部の幅は、前記ベース部の長手方向における前記面状部の幅よりも小さく、
前記連結部は、前記定着ニップを通過する記録媒体の通過領域のうち、少なくとも最小記録媒体通過領域の外側に配置されることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
回転可能な無端状の定着ベルトと、
前記定着ベルトの外周面に接触し定着ニップを形成する回転可能な加圧部材と、
前記定着ベルトを加熱する加熱源と、
前記定着ニップの位置において前記定着ベルトの内周面に直接的又は間接的に接触する熱移動補助部材と、
を備える定着装置であって、
前記熱移動補助部材は、
前記定着ベルトの内周面に直接的又は間接的に接触するベース部と、
前記ベース部の長手方向に伸びる端の一部から前記加圧部材側とは反対側へ伸びる連結部と、
前記連結部の先端から前記連結部が伸びる方向に対して交差する方向に広がる面状部と、
を有し、
前記ベース部の長手方向における前記連結部の幅は、前記ベース部の長手方向における前記面状部の幅よりも小さく、
前記連結部は、前記ベース部の長手方向に渡って複数設けられることを特徴とする定着装置。
【請求項3】
前記ベース部と前記面状部との間に配置されるニップ形成部材を備え、
前記面状部は、前記ニップ形成部材に対して係合可能な係合部を有する請求項1又は2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記係合部は、前記ニップ形成部材に設けられた凸部と係合可能な孔部、又は、前記ニップ形成部材に設けられた孔部に係合可能な凸部であって、
前記孔部は、前記ベース部の長手方向に伸びる長孔である請求項3に記載の定着装置。
【請求項5】
前記ニップ形成部材は、前記熱移動補助部材が前記ニップ形成部材に取り付けられる際に前記面状部との干渉を回避するための凹部を有する請求項3又は4に記載の定着装置。
【請求項6】
前記連結部は、前記定着ニップを通過する記録媒体の搬送方向において、前記ベース部の上流側の端部に設けられる請求項1から5のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項7】
前記連結部は、前記定着ニップを通過する記録媒体の搬送方向において、前記ベース部の下流側の端部に設けられる請求項1から5のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項8】
前記面状部は、前記ベース部と交差する方向から見て、前記ベース部と重なるように配置される請求項1から7のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項9】
前記面状部は、前記加熱源からの光が直接照射される領域外に配置される請求項1から8のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の定着装置を備えることを特徴とする画像形成装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機又はプリンタなどの画像形成装置においては、用紙にトナー画像を定着させる定着装置が搭載されている。
【0003】
一般的に、定着装置は、互いに接触する一対の回転体を備えており、回転体同士の間(定着ニップ)に用紙を通過させることにより、用紙が加熱及び加圧され、用紙上のトナー画像が定着される。
【0004】
近年、省エネルギー化又はウォームアップ時間短縮などのために、回転体として、ローラよりも熱容量の小さい定着ベルトを用いた定着装置が開発されている。しかしながら、この種の定着装置においては、小サイズの用紙を連続通紙した場合に、用紙が通過しない非通紙領域において定着ベルトの温度上昇が顕著になる問題がある。
【0005】
斯かる問題に対して、特許文献1(特開2018-169467号公報)においては、熱伝導性が良い熱移動補助部材を定着ベルトに接触させることにより、定着ベルトの熱をその長手方向に移動させて非通紙領域における温度上昇を抑制する方法が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、熱移動補助部材を設けることにより、非通紙領域における定着ベルトの局部的な温度上昇を抑制することが可能である。しかしながら、このような熱移動補助部材を備える構成においても、画像形成装置の高速化に伴って単位時間当たりの通紙枚数が多くなると、定着ベルトの局部的な温度上昇が発生する虞がある。
【0007】
これに対して、熱移動補助部材の体積を大きくすれば、熱移動補助部材における熱移動量を増大させることができ、定着ベルトの局部的な温度上昇をより効果的に抑制できるようになる。しかしながら、熱移動補助部材の体積を大きくすると、装置が大型化する問題がある。また、熱移動補助部材の体積を大きくすると、画像形成装置の電源投入後のウォームアップ時などにおいて、定着ベルトの熱が熱移動補助部材によって奪われるため、ウォームアップ時間が長くなる問題も発生する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、回転可能な無端状の定着ベルトと、前記定着ベルトの外周面に接触し定着ニップを形成する回転可能な加圧部材と、前記定着ベルトを加熱する加熱源と、前記定着ニップの位置において前記定着ベルトの内周面に直接的又は間接的に接触する熱移動補助部材と、を備える定着装置であって、前記熱移動補助部材は、前記定着ベルトの内周面に直接的又は間接的に接触するベース部と、前記ベース部の長手方向に伸びる端の一部から前記加圧部材側とは反対側へ伸びる連結部と、前記連結部の先端から前記連結部が伸びる方向に対して交差する方向に広がる面状部と、を有し、前記ベース部の長手方向における前記連結部の幅は、前記ベース部の長手方向における前記面状部の幅よりも小さく、前記連結部は、前記定着ニップを通過する記録媒体の通過領域のうち、少なくとも最小記録媒体通過領域の外側に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、装置の大型化と、ウォームアップ時などにおける定着ベルトの加熱時間の増大を回避しつつ、定着ベルトの局部的な温度上昇を効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
図2】本実施形態に係る定着装置の概略構成図である。
図3】本実施形態に係る均熱板の斜視図である。
図4】中央基準搬送方式の定着装置における突片部の配置を示す平面図である。
図5】端部基準搬送方式の定着装置における突片部の配置を示す平面図である。
図6】異なる幅の通紙領域に対応して複数対の突片部が配置された例を示す平面図である。
図7】均熱板がニップ形成部材に対して取り付けられた状態を示す平面図である。
図8】均熱板の取り付け方法を説明するための断面図である。
図9】均熱板の取り付け方法を説明するための断面図である。
図10】均熱板の取り付け方法を説明するための平面図である。
図11】均熱板の取り付け方法を説明するための平面図である。
図12】均熱板がニップ形成部材に対して取り付けられた状態を示す断面図である。
図13】凸部の変形例を示す断面図である。
図14】均熱板とニップ形成部材との係合箇所を拡大して示す平面図である。
図15】突片部がベース部の用紙搬送方向における下流側の端に設けられた例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材及び構成部品などの構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0012】
図1は、本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係る画像形成装置1は、画像形成部2と、記録媒体供給部3と、転写部4と、定着部5と、記録媒体排出部6と、を備える、電子写真方式のプリンタである。なお、本発明に係る画像形成装置は、プリンタのほか、複写機、ファクシミリ、あるいは、これらのいずれか2つ又は3つの機能を備える複合機などであってもよい。
【0014】
画像形成部2においては、画像を形成する4つの作像ユニット7Y,7M,7C,7Kと、各作像ユニット7Y、7M,7C,7Kが備える感光体10の表面に静電潜像を形成する露光装置8と、が設けられている。4つの作像ユニット7Y,7M,7C,7Kは、像担持体としての感光体10のほか、感光体10の表面を帯電させる帯電部材11と、感光体10の表面に現像剤を供給する現像装置12と、感光体10の表面をクリーニングするクリーニング部材13と、を備えている。各作像ユニット7Y,7M,7C,7Kは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の異なる色の現像剤を収容している以外、同様の構成である。露光装置8は、光源、ポリゴンミラー、f-θレンズ、反射ミラーなどを備えている。
【0015】
記録媒体供給部3においては、記録媒体としての用紙Pを収容する給紙トレイ18と、給紙トレイ18から用紙Pを1枚ずつ送り出す給紙ローラ19と、が設けられている。給紙トレイ18に収容される用紙Pには、普通紙のほか、厚紙、薄紙、はがき、封筒、塗工紙(コート紙又はアート紙など)、又は、トレーシングペーパなどが含まれる。また、記録媒体として、用紙以外に、OHPシートなどの樹脂製シートが用いられてもよい。
【0016】
転写部4においては、給紙トレイ18から供給された用紙Pに画像を転写する転写装置14が設けられている。転写装置14は、中間転写ベルト15と、一次転写ローラ16と、二次転写ローラ17を備えている。中間転写ベルト15は、無端状のベルト部材であり、複数の支持ローラによって張架されている。一次転写ローラ16は、各感光体10に対応して中間転写ベルト15の内側に4つ設けられている。各一次転写ローラ16が中間転写ベルト15を介して各感光体10に接触することにより、中間転写ベルト15と各感光体10との間に一次転写ニップが形成されている。二次転写ローラ17は、中間転写ベルト15の外周面に接触し、二次転写ニップを形成している。
【0017】
定着部5においては、用紙Pに画像を定着させる定着装置20が設けられている。定着装置20は、無端状の定着ベルト21と、加圧部材としての加圧ローラ22などを備えている。定着ベルト21と加圧ローラ22は互いに圧接されており、これらの間に定着ニップが形成されている。
【0018】
記録媒体排出部6においては、用紙Pを装置外に排出する一対の排紙ローラ23が設けられている。
【0019】
続いて、図1を参照して画像形成装置の印刷動作について説明する。
【0020】
印刷動作開始の指示があると、各作像ユニット7Y,7M,7C,7Kにおいて、感光体10が回転を開始し、帯電部材11によって感光体10の表面が均一な高電位に帯電される。次いで、原稿読取装置によって読み取られた原稿の画像情報、あるいは端末からプリント指示されたプリント情報に基づいて、露光装置8が各感光体10の表面へレーザ光を照射する。これにより、レーザ光が照射された部分の電位が低下し、各感光体10の表面に静電潜像が形成される。そして、この静電潜像に対して現像装置12からトナーが供給され、各感光体10上にトナー画像が形成される。
【0021】
各感光体10上に形成されたトナー画像は、各感光体10の回転に伴って一次転写ニップ(一次転写ローラ16の位置)に至り、回転する中間転写ベルト15上に順次重なり合うように転写される。そして、中間転写ベルト15上に転写されたトナー画像は、中間転写ベルト15の回転に伴って二次転写ニップ(二次転写ローラ17の位置)に至り、用紙Pに転写される。
【0022】
この用紙Pは、記録媒体供給部3から供給されたものである。記録媒体供給部3においては、印刷動作開始の指示があった後、給紙ローラ19が回転することにより、給紙トレイ18から用紙Pが1枚ずつ送り出される。そして、送り出された用紙Pは、一対のタイミングローラ24によって一旦停止された後、中間転写ベルト15上のトナー画像が二次転写ニップに至るタイミングに合わせて二次転写ニップへ搬送される。かくして、用紙P上にフルカラーのトナー画像が転写される。また、トナー画像が転写された後、各感光体10上に残留するトナーは各クリーニング部材13によって除去される。
【0023】
トナー画像が転写された用紙Pは、定着部5へと搬送される。そして、定着部5において、用紙Pは定着ベルト21と加圧ローラ22によって挟持されながら搬送されることにより、トナー画像が用紙Pに定着される。その後、用紙Pは、記録媒体排出部6へ搬送され、排紙ローラ23によって装置外に排出される。これにより、一連の印刷動作が完了する。
【0024】
以下、図2に基づき、本実施形態に係る定着装置20の構成について詳しく説明する。
【0025】
図2に示すように、本実施形態に係る定着装置20は、定着ベルト21及び加圧ローラ22のほか、ハロゲンヒータ25と、ニップ形成部材26と、ステー27と、反射部材28と、温度センサ29と、均熱板30と、を備えている。
【0026】
定着ベルト21は、用紙Pの未定着画像担持面側に配置され、用紙P上の未定着画像を定着させる定着部材である。定着ベルト21は、無端状のベルト部材によって構成され、その長手方向両端に挿入される一対のベルト保持部材によって回転可能に保持されている。このため、定着ベルト21は、非回転時においては基本的に定着ベルト21に張力が作用しない、いわゆるフリーベルト方式で保持されている。また、定着ベルト21の内側には、加熱源としてのハロゲンヒータ25が配置されている。このため、ハロゲンヒータ25が発熱すると、定着ベルト21はその内側から加熱される。
【0027】
加圧ローラ22は、定着ベルト21の外周面に接触する回転体である。具体的に、加圧ローラ22は、芯金と、芯金の表面に設けられた発泡性シリコーンゴム、シリコーンゴム、又はフッ素ゴムなどから成る弾性層と、弾性層の表面に設けられたPFA又はPTFEなどから成る離型層によって構成されている。加圧ローラ22は、バネなどの付勢部材によって定着ベルト21に対して加圧(圧接)され、定着ベルト21と加圧ローラ22との間に、定着ニップNが形成されている。また、加圧ローラ22は、画像形成装置本体に設けられた駆動源によって回転駆動するように構成されている。加圧ローラ22が回転駆動すると、その駆動力が定着ニップNにおいて定着ベルト21に伝達されることにより、定着ベルト21が従動回転する。このため、図2に示すように、未定着画像を担持する用紙Pが、定着ベルト21と加圧ローラ22との間(定着ニップN)に進入すると、回転する定着ベルト21と加圧ローラ22とによって用紙Pが矢印Y方向に搬送されると共に、加熱及び加圧され、未定着画像が用紙Pに定着される。
【0028】
本実施形態においては、加圧ローラ22を中実のローラとしているが、加圧ローラ22は中空のローラであってもよい。加圧ローラ22が中空のローラである場合、加圧ローラ22の内部にヒータを配置してもよい。また、加圧ローラ22が弾性層を有しない場合は、熱容量が小さくなるため、定着性が向上する。一方で、加圧ローラ22が弾性層を有しないことにより、未定着トナーを定着させるときに、ベルト表面の微小な凹凸が画像に転写されて、画像のベタ部に光沢ムラが生じる可能性がある。これを防止するには、加圧ローラ22は厚さ100μm以上の弾性層を有することが好ましい。加圧ローラ22が厚さ100μm以上の弾性層を有することにより、加圧ローラ22の表面が定着ベルト21の微小な凹凸に対応して密着するため、光沢ムラの発生を抑制できる。また、加圧ローラ22の弾性層に用いられる材料は、ソリッドゴムでもよいが、加圧ローラ22の内部にヒータが無い場合は、スポンジゴムを用いることも可能である。ソリッドゴムに比べてスポンジゴムの方が、断熱性が高まり定着ベルト21の熱が奪われにくくなる点で好ましい。
【0029】
ハロゲンヒータ25は、定着ベルト21の内周面に赤外線光を照射し、定着ベルト21を加熱する加熱源である。加熱源としては、ハロゲンヒータのほか、カーボンヒータ又はセラミックヒータなどの他の輻射熱式のヒータであってもよい。また、電磁誘導加熱方式の加熱源を用いることも可能である。本実施形態においては、ハロゲンヒータ25が定着ベルト21内に2つ配置されているが、加熱源の数は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0030】
ニップ形成部材26は、定着ベルト21の内側から加圧ローラ22の加圧力を受けて定着ニップNを形成する部材である。ニップ形成部材26の材料としては、耐熱温度200℃以上の耐熱性部材を用いることが好ましい。例えば、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリアミドイミド(PAI)、又は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの一般的な耐熱性樹脂が挙げられる。このような耐熱性材料をニップ形成部材26の材料として用いることにより、定着温度域におけるニップ形成部材26の熱変形を防止でき、定着ニップNの形状を安定させることができる。
【0031】
ステー27は、ニップ形成部材26を加圧ローラ22側とは反対側から支持する支持部材である。ステー27がニップ形成部材26を支持していることにより、加圧ローラ22の加圧によるニップ形成部材26の撓み(特に定着ベルト21の長手方向に渡る撓み)が抑制される。これにより、均一な幅の定着ニップNが得られる。ステー27の材料としては、剛性を確保するため、SUS又はSECCなどの鉄系金属材料が好ましい。
【0032】
反射部材28は、ハロゲンヒータ25から放射される熱又は赤外線光を反射する部材である。反射部材28によってハロゲンヒータ25の熱又は赤外線光が定着ベルト21に向かって反射されることにより、定着ベルト21が効率良く加熱される。また、反射部材28は、ステー27とハロゲンヒータ25との間に介在して、ステー27への熱伝達を抑制する機能も兼ねる。また、このような反射部材28の機能を、ステー27に持たせてもよい。例えば、ハロゲンヒータ25に対向するステー27の面を鏡面処理することにより、ステー27の鏡面部によってハロゲンヒータ25からの熱又は赤外線光を定着ベルト21へ反射できる。この場合、反射部材28を別途設けなくてもよくなるので、装置の小型化及び低コスト化を図れる。
【0033】
温度センサ29は、定着ベルト21の温度を検知する温度検知部材である。温度センサ29が検知した温度に基づいて、ハロゲンヒータ25の発熱が制御され、定着ベルト21の温度が所定の温度(定着温度)に維持される。本実施形態においては、温度センサ29が、定着ベルト21を介して各ハロゲンヒータ25に対向する位置に2つ配置されているが、温度センサ29の数及び配置は適宜変更可能である。温度センサ29としては、例えば、サーモパイル、サーモスタット、サーミスタ又はNCセンサなどの接触式又は非接触式の公知の温度センサを用いることが可能である。
【0034】
均熱板30は、定着ニップNの位置において定着ベルト21の内周面に接触し、定着ベルト21の熱をその長手方向に移動させて均熱化を図る熱移動補助部材である。均熱板30は、ニップ形成部材26よりも熱伝導率が高い材料によって構成されている。具体的に、均熱板30の材料としては、銅、アルミニウム、あるいは銀などの高熱伝導材料が用いられる。本実施形態においては、均熱板30が、定着ベルト21の内周面に対して直接的に接触しているが、グリースなどの潤滑剤を介して間接的に接触していてもよい。均熱板30が定着ベルト21の内周面に直接的又は間接的に接触していることにより、定着ベルト21の熱が均熱板30に伝わり長手方向に拡散される。
【0035】
ところで、定着ベルト21は、ハロゲンヒータ25によって全体的にほぼ均一な温度に加熱されるが、定着ニップNを用紙が通過すると、用紙が通過する通紙領域において、定着ベルト21の熱が用紙によって奪われる。一方、用紙が通過しない非通紙領域においては、定着ベルト21の熱が用紙によって奪われにくいため、用紙を連続通紙すると、定着ベルト21が蓄熱され、過剰に温度上昇する虞がある。特に、ローラなどに比べて熱容量が小さく温度上昇しやすい定着ベルト21を用いた構成においては、非通紙領域における温度上昇が顕著になりやすい。
【0036】
そのため、本実施形態においては、熱移動補助部材としての均熱板30を、定着ベルト21の長手方向に渡って配置することにより、非通紙領域における定着ベルト21の熱を長手方向に移動させ、局部的な定着ベルト21の温度上昇を抑制するようにしている。しかしながら、このような均熱板30を用いた構成においても、単位時間当たりの通紙枚数が多くなると、非通紙領域における定着ベルト21の蓄熱量が均熱板30の熱移動量よりも上回り、定着ベルト21が局部的に温度上昇する虞がある。
【0037】
そこで、本実施形態においては、均熱板30の熱移動量を増大させるため、次のような対策を講じている。以下、本実施形態に係る均熱板30の構成について詳しく説明する。
【0038】
図3は、本実施形態に係る均熱板30の斜視図である。
【0039】
まず、図3において、矢印Y方向は、用紙Pが定着ニップNを通過する方向である用紙搬送方向(記録媒体搬送方向)、矢印X方向は、用紙搬送方向Yに対して直交する用紙幅方向(記録媒体幅方向)である。図3に示すように、用紙Pが定着ニップNを通過すると、用紙Pが通過しない非通紙領域Q(特に通紙領域の幅方向端部付近のハッチング部H)においては、定着ベルト21の温度が上昇する傾向にある。そのため、本実施形態においては、均熱板30の非通紙領域Qの部分に、熱を逃がす突片部32を設けている。
【0040】
突片部32は、均熱板30のベース部31に対して平行又は略平行に配置される面状部33と、面状部33とベース部31とを連結する連結部34と、を有している。ベース部31は、定着ベルト21の内周面に直接的又は間接的に接触して定着ニップNを形成する平面部を有し、定着ベルト21の長手方向(用紙幅方向X)に連続して伸びるように配置されている部分である。また、用紙搬送方向Yにおけるベース部31の両端31a,31b及びその近傍部分は、定着ベルト21に倣って湾曲するように形成されている。連結部34は、ベース部31の長手方向(用紙幅方向X)に伸びる両端31a,31bのうち、用紙搬送方向上流側の端31aの一部から突出するように設けられている。また、連結部34は、ベース部31の用紙搬送方向流側の端31aから加圧ローラ22側とは反対側(図3における矢印Z方向)へ伸び、その伸びる方向の連結部34の先端には、面状部33が設けられている。面状部33は、連結部34の先端から用紙搬送方向Yに向かって屈曲するように設けられ、連結部34が伸びる方向Zとは交差する方向(用紙搬送方向Y及び用紙幅方向X)に広がるように形成されている。
【0041】
このように、本実施形態においては、均熱板30の非通紙領域Qの部分に、熱を逃がす突片部32が設けられているので、この突片部32を介して定着ベルト21の非通紙領域Qにおける熱を効果的に逃がすことができる。このため、本実施形態においては、多数枚の用紙Pが連続通紙される場合であっても、定着ベルト21の非通紙領域Qにおける蓄熱を抑制でき、定着ベルト21の過剰な温度上昇を回避することが可能である。また、これにより、定着ベルト21の温度が低下するまで通紙を停止したり、通紙速度を低下させたりするなどの対処が不要になる。あるいは、そのような対処の必要性が少なくなるため、生産性を向上させることができる。
【0042】
図4に示すように、本実施形態においては、各種幅サイズW1,W2の用紙Pがそれぞれの幅方向中央Cを基準に合わせて搬送される、いわゆる中央基準搬送方式が採用されているため、突片部32が、幅方向中央Cを基準に対称に配置されている。すなわち、中央基準搬送方式の場合は、各種幅サイズW1,W2に対応した各通紙領域R1,R2の両外側が非通紙領域Q1,Q2となるので、突片部32が両外側の各非通紙領域Q1,Q2に1つずつ、合計2つ配置されている。
【0043】
これに対して、図5に示すように、各種幅サイズW1,W2の用紙Pがそれぞれの幅方向一端を基準に合わせて搬送される、いわゆる端部基準搬送方式の場合は、主に通紙領域R1,R2の片方の外側領域のみが非通紙領域Q1,Q2となる。このため、端部基準搬送方式の場合は、通紙領域R1,R2の片側(非通紙領域Q1,Q2)のみに突片部32が配置されていればよい。
【0044】
また、図6に示すように、通紙される用紙Pの種類が多い場合は、突片部32を4つ又はそれ以上配置してもよい。具体的に、図6に示す例においては、定型サイズである、B5縦幅サイズW1、A4縦幅サイズW2、B4縦幅サイズW3、A3縦幅サイズW4の各種幅サイズの用紙Pが通紙される。そして、これらの幅サイズのうち、A4縦幅サイズW2とB4縦幅サイズW3のそれぞれの通紙領域の両端近傍(非通紙領域)に、突片部32が配置されている。この場合、主に内側の各突片部32Bによって、B5縦幅サイズW1及びA4縦幅サイズW2の通紙時における非通紙領域の温度上昇が抑制される。また、B4縦幅サイズW3の通紙時における非通紙領域の温度上昇は、主に外側の各突片部32Aによって抑制される。
【0045】
各突片部32の配置は、通紙可能な用紙Pの幅サイズ又はその種類数に応じて適宜変更可能である。ただし、非通紙領域における温度上昇を抑制する目的からすれば、突片部32は、少なくとも最小通紙領域よりも外側(非通紙領域)に配置される必要がある。また、突片部32は、非通紙領域における熱を逃がすことができればよいので、少なくとも連結部34が最小幅用紙の非通紙領域にあれば、面状部33は最小幅用紙の通紙領域内にあってもよい。
【0046】
上述のように、均熱板30に突片部32を設けることによって、連続通紙時における非通紙領域の温度上昇を効果的に抑制できる。特に、面状部33を大きく形成した場合は、面状部33への熱の移動量が増大するので、より効果的である。しかしながら、定着ベルト21を常温状態から定着温度にまで加熱するウォームアップ時においては、定着ベルト21を効果的に加熱してウォームアップ時間の短縮を図れるように、定着ベルト21から面状部33への熱の移動を抑えることが好ましい。そのため、本実施形態においては、図3に示すように、ベース部31の長手方向(用紙幅方向X)における連結部34の幅D1を、ベース部31の長手方向(用紙幅方向X)における面状部33の幅D2よりも小さくしている。すなわち、連結部34における伝熱経路の幅を小さくしている。これにより、温度のばらつきが小さく定着ベルト21の熱勾配が低いウォームアップ時においては、連結部34を経由する面状部33への熱移動が抑制される。このため、定着ベルト21を効率良く加熱することができ、ウォームアップ時間の短縮を図れる。
【0047】
また、図3に示すように、本実施形態においては、面状部33が、連結部34の先端から連結部34が伸びる方向(図3における矢印Z方向)に対して交差する方向に広がるように設けられているため、均熱板30が厚くなるのを回避できる。すなわち、本実施形態においては、面状部33が、連結部34と同じ方向(矢印Z方向)に伸びるように設けられていないため、矢印Z方向における均熱板30の厚さ(用紙搬送方向Y及び用紙幅方向Xの両方向に対して交差する方向の寸法)の増大を抑えつつ、面状部33の大きさを確保できる。このため、定着装置の小型化を図りつつ、定着ベルトの局部的な温度上昇の抑制が可能である。
【0048】
また、本実施形態においては、面状部33が、連結部34の先端から用紙搬送方向Yへ向かって屈曲しているため、図4に示すように、面状部33は、ベース部31と交差する方向から見て、ベース部31と重なるように配置されている。このように、本実施形態においては、面状部33がベース部31と重なるように配置されているため、用紙搬送方向Y及び用紙幅方向Xにおける均熱板30の小型化も図れる。また、面状部33がベース部31と重なるように配置されていることにより、面状部33は、ハロゲンヒータ25の赤外線光が直接照射される領域E(図2参照)を避けて配置される。このように、本実施形態においては、面状部33がハロゲンヒータ25の直接照射領域外に配置されるため、面状部33がハロゲンヒータ25によって加熱されるのを防止できる。これにより、定着ベルト21から面状部33への熱の移動が確実に行えるので、定着ベルト21の局部的な温度上昇を効果的に抑制できる。なお、面状部33がベース部31に対して重なる部分は、面状部33の全体である場合に限らず、その一部であってもよい。
【0049】
また、本実施形態に係る均熱板30は、ニップ形成部材26に対して取り付け可能に構成されている。図2に示すように、ニップ形成部材26に対して均熱板30が取り付けられた状態においては、均熱板30のベース部31と面状部33とによってニップ形成部材26が挟まれるように保持(収容)される。
【0050】
図7は、均熱板30がニップ形成部材26に対して取り付けられた状態を示す平面図である。
【0051】
図7に示すように、均熱板30の面状部33には、ニップ形成部材26に対して係合可能な係合部としての孔部35が設けられている。一方、ニップ形成部材26には、孔部35と係合可能な凸部36が設けられている。また、ニップ形成部材26には、均熱板30がニップ形成部材26に取り付けられる際に面状部33との干渉を回避するための凹部37が形成されている。
【0052】
ニップ形成部材26に対して均熱板30を取り付けるには、図8に示すように、まず、均熱板30の面状部33をニップ形成部材26の凹部37内に挿入する。次いで、図9に示すように、均熱板30のベース部31がニップ形成部材26に対して接近又は接触するように、均熱板30を回転させる。
【0053】
図10は、図9に示す回転後の状態をベース部31と交差する方向から見た図である。図10に示す状態においては、一対の面状部33がニップ形成部材26の各凹部37に配置されている。そして、この状態から、図11に示すように、均熱板30をニップ形成部材26の長手方向にスライド移動させ、各面状部33の孔部35に対してニップ形成部材26の凸部36を係合させる。また、このとき、各面状部33は、その先端に設けられた傾斜面33a(図3参照)によって各凸部36を円滑に乗り越えることができる。このため、各面状部33の先端が各凸部36に引っ掛かることなく、凸部36を孔部35に係合させることができる。以上の手順を経て、ニップ形成部材26に対する均熱板30の取り付けが完了する。
【0054】
また、図12の断面図に示すように、均熱板30が取り付けられた状態においては、ニップ形成部材26の凸部36と均熱板30の孔部35とが係合すると共に、ニップ形成部材26が均熱板30の面状部33とベース部31によって挟まれるように保持されるため、ニップ形成部材26に対する均熱板30の離脱が防止される。また、本実施形態においては、均熱板30自体が、ニップ形成部材26と係合する係合部(孔部35)を有しているため、均熱板30をニップ形成部材26に取り付けるための部材を別途設ける必要が無く、簡単に均熱板30の取り付けを行える。
【0055】
なお、本実施形態とは反対に、ニップ形成部材26に係合部としての孔部が設けられ、均熱板30に孔部と係合可能な凸部が設けられてもよい。また、凸部36の形状は、図12に示すような半球状のほか、図13に示すような円柱状であってもよい。また、孔部35は、底部を有しない貫通孔に限らず、底部を有する孔部であってもよい。
【0056】
ここで、均熱板30は熱膨張しにくいアルミニウムなどの金属材料によって構成されているのに対し、ニップ形成部材26は熱膨張しやすい樹脂材料によって構成されている。このため、これらの線膨張係数の違いにより、凸部36に対する孔部35の位置がベース部31の長手方向に変化すると、凸部36と孔部35が干渉し、均熱板30又はニップ形成部材2に撓みが生じる虞がある。そのため、本実施形態においては、図14に示すように、孔部35を、ベース部31の長手方向(図の横方向)に伸びる長孔に形成している。これにより、均熱板30が熱膨張して、凸部36に対する孔部35の位置が変化しても、凸部36と孔部35との干渉を回避でき、均熱板30又はニップ形成部材26の撓みを防止できる。なお、長孔に形成される孔部35は、各面状部33に設けられた2つの孔部35のうち、いずれか一方であってもよい。
【0057】
また、図2に示すように、本実施形態においては、突片部32が、ベース部31の用紙搬送方向Yにおける上流側の端に設けられている。このため、定着ベルト21の回転に伴って均熱板30が回転方向の移動力を受けても、ニップ形成部材26に対する突片部32の接触により、回転方向(用紙搬送方向Y)への均熱板30の移動を規制できる。
【0058】
また、図15に示す例のように、突片部32が、ベース部31の用紙搬送方向Yにおける下流側の端に設けられていてもよい。このような構成は、例えば定着ニップNにおける圧力が用紙搬送方向Yの上流側よりも下流側において大きくなる場合に好適である。すなわち、定着ニップNにおける圧力が下流側において大きくなる場合は、定着ニップNの下流側の温度が高くなりやすいので、図15に示す構成を採用することにより、下流側の熱を突片部32を介して効果的に逃がせるようになる。
【0059】
以上、本発明の実施形態及び各実施例について説明したが、本発明は、上述の実施形態又は各実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。また、上述の実施形態では、定着ベルトがその長手方向両端に挿入された一対のベルト保持部材によって保持されるフリーベルト方式の定着装置を例に説明したが、本発明は、フリーベルト方式の構成に限らず、定着ベルトが複数のローラなどに掛け回されて張架される構成にも適用可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 画像形成装置
20 定着装置
21 定着ベルト
22 加圧ローラ(加圧部材)
25 ハロゲンヒータ(加熱源)
26 ニップ形成部材
30 均熱板(熱移動補助部材)
31 ベース部
32 突片部
33 面状部
34 連結部
35 孔部(係合部)
36 凸部
37 凹部
P 用紙(記録媒体)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0061】
【文献】特開2018-169467号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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