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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】ハードコート用硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20241009BHJP
   C08G 65/333 20060101ALI20241009BHJP
   C08J 7/046 20200101ALI20241009BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20241009BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20241009BHJP
   C09D 171/00 20060101ALI20241009BHJP
   C09D 171/02 20060101ALI20241009BHJP
   C09D 201/02 20060101ALI20241009BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20241009BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
C08F290/06
C08G65/333
C08J7/046 A CER
C08J7/046 A CEZ
C09D5/00
C09D7/65
C09D171/00
C09D171/02
C09D201/02
C09D4/02
C09K3/00 R
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2022542584
(86)(22)【出願日】2021-06-09
(86)【国際出願番号】 JP2021021913
(87)【国際公開番号】W WO2022034733
(87)【国際公開日】2022-02-17
【審査請求日】2024-03-06
(31)【優先権主張番号】P 2020136859
(32)【優先日】2020-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020195926
(32)【優先日】2020-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】脇田 健吾
(72)【発明者】
【氏名】辻本 晴希
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第09441183(US,B1)
【文献】米国特許第03671497(US,A)
【文献】国際公開第2003/002628(WO,A1)
【文献】特開2004-331704(JP,A)
【文献】特開2012-241060(JP,A)
【文献】国際公開第2015/060458(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/163479(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/056370(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/213485(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/008956(WO,A1)
【文献】Yong-Seok CHOI et al.,“Antibacterial and biocompatible ABA-triblock copolymers containing perfluoropolyether and plant-based cardanol for versatile coating applications”,RSC Advances,2017年,Vol. 7、No. 60,p.38091-38099,DOI: 10.1039/C7RA07689D(参考文献)
【文献】S. NADJI et al.,“Aromatic diamines of high fluorine content”,Journal of Fluorine Chemistry,1991年08月,Vol. 53, No. 3,p.327-338,DOI: 10.1016/S0022-1139(00)80957-4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
C08G
C08J
C09D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)活性エネルギー線硬化性多官能モノマー100質量部、
(b)ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖の末端に、活性エネルギー線重合性基を有するパーフルオロポリエーテル(但し、後述する(c)パーフルオロポリエーテルを除く)0.05質量部乃至5質量部、
(c)ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖の末端それぞれに、下記式[1]、式[2]又は式[3]で表される基を有する分子量1000以上のパーフルオロポリエーテル0.05質量部乃至5質量部、及び
(d)活性エネルギー線によりラジカルを発生する重合開始剤1質量部乃至20質量部を含む、硬化性組成物。
【化1】
(上記式[1]、式[2]及び式[3]中、Rはトリフルオロメチル基、フルオロ基、トリフルオロメトキシ基又はニトロ基を表し、Rがトリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基又はニトロ基を表す場合、mは1乃至5の整数を表し、Rがフルオロ基を表す場合、mは2乃至5の整数を表し、Rはメチル基又はメトキシ基を表し、nは1、2又は3を表し、Rは炭素原子数3乃至10のアルキル基を表し、*は前記(c)パーフルオロポリエーテルのポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖との結合手を表す。)
【請求項2】
前記(c)パーフルオロポリエーテルが前記活性エネルギー線重合性基を有さないものである、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記(b)パーフルオロポリエーテルのポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基及び前記(c)パーフルオロポリエーテルのポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基が、繰り返し単位-[CFO]-及び/又は繰り返し単位-[CFCFO]-を有し、双方の繰り返し単位を有する場合は、これら繰り返し単位をブロック結合、ランダム結合、又は、ブロック結合及びランダム結合にて結合してなる基である、請求項1又は請求項に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記(b)パーフルオロポリエーテルのポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖、及び前記(c)パーフルオロポリエーテルのポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖が、下記式[4]又は式[5]で表される構造を有する、請求項に記載の硬化性組成物。
【化2】
(上記式[4]及び式[5]中、pは、繰り返し単位-[CFCFO]-の数と、繰り返し単位-[CFO]-の数との総数であって3乃至30の整数を表し、前記繰り返し単位-[CFCFO]-と、前記繰り返し単位-[CFO]-は、ブロック結合、ランダム結合、又は、ブロック結合及びランダム結合にて結合してなり、qはオキシエチレン基の数であって0乃至10の整数を表す。)
【請求項5】
前記(c)パーフルオロポリエーテルの含有量に対する前記(b)パーフルオロポリエーテルの含有量の比は0.5乃至4である、請求項1乃至請求項のうち何れか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
(e)溶媒をさらに含む、請求項1乃至請求項のうち何れか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
請求項1乃至請求項のうち何れか一項に記載の硬化性組成物より得られる硬化膜。
【請求項8】
フィルム基材の少なくとも一方の面にハードコート層を備えるハードコートフィルムであって、該ハードコート層が請求項に記載の硬化膜からなる、ハードコートフィルム。
【請求項9】
フィルム基材の少なくとも一方の面にハードコート層を備えるハードコートフィルムであって、該ハードコート層が、請求項1乃至請求項のうち何れか一項に記載の硬化性組成物をフィルム基材上に塗布し塗膜を形成する工程と、該塗膜に活性エネルギー線を照射し硬化する工程とを含む方法により形成されてなる、ハードコートフィルム。
【請求項10】
フィルム基材の少なくとも一方の面にハードコート層を備えるハードコートフィルムであって、該ハードコート層が、請求項に記載の硬化性組成物をフィルム基材上に塗布し塗膜を形成する工程と、加熱により該塗膜から前記溶媒を除去する工程と、該塗膜に活性エネルギー線を照射し硬化する工程とを含む方法により形成されてなる、ハードコートフィルム。
【請求項11】
前記フィルム基材が複数の層から成る、請求項乃至請求項10のうち何れか一項に記載のハードコートフィルム。
【請求項12】
前記フィルム基材が樹脂製フィルムの表面に前記ハードコート層の下層を有する、請求項乃至請求項11のうち何れか一項に記載のハードコートフィルム。
【請求項13】
前記ハードコート層が1μm乃至20μmの膜厚を有する、請求項乃至請求項12のうち何れか一項に記載のハードコートフィルム。
【請求項14】
請求項1乃至請求項のうち何れか一項に記載の硬化性組成物をフィルム基材上に塗布し塗膜を形成する工程と、該塗膜に活性エネルギー線を照射し硬化する工程とを含む、該フ
ィルム基材とハードコート層との積層体の製造方法。
【請求項15】
前記フィルム基材が複数の層から成る、請求項14に記載の積層体の製造方法。
【請求項16】
前記フィルム基材が樹脂製フィルムの表面に前記ハードコート層の下層を有する、請求項14又は請求項15に記載の積層体の製造方法。
【請求項17】
ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖の両末端それぞれに、下記式[1]、式[2]又は式[3]で表される基を有する分子量1000以上のパーフルオロポリエーテル化合物、及び下記式[4]又は式[5]で表される構造を有するポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖の末端に、活性エネルギー線重合性基を有するパーフルオロポリエーテル化合物(但し、前記分子量1000以上のパーフルオロポリエーテル化合物を除く)を含む、表面改質剤。
【化3】
(上記式[1]、式[2]及び式[3]中、R はトリフルオロメチル基、フルオロ基、トリフルオロメトキシ基又はニトロ基を表し、R がトリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基又はニトロ基を表す場合、mは1乃至5の整数を表し、R がフルオロ基を表す場合、mは2乃至5の整数を表し、R はメチル基又はメトキシ基を表し、nは1、2又は3を表し、R は炭素原子数3乃至10のアルキル基を表し、*は前記(c)パーフルオロポリエーテルのポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖との結合手を表す。)
【化4】
(上記式[4]及び式[5]中、pは、繰り返し単位-[CFCFO]-の数と、繰
り返し単位-[CFO]-の数との総数であって3乃至30の整数を表し、前記繰り返し単位-[CFCFO]-と、前記繰り返し単位-[CFO]-は、ブロック結合、ランダム結合、又は、ブロック結合及びランダム結合にて結合してなり、qはオキシエチレン基の数であって0乃至10の整数を表す。)
【請求項18】
前記分子量1000以上のパーフルオロポリエーテル化合物のポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖が前記式[4]又は式[5]で表される構造を有する、請求項17に記載の表面改質剤。
【請求項19】
前記分子量1000以上のパーフルオロポリエーテル化合物が前記活性エネルギー線重合性基を有さないものである、請求項17又は請求項18に記載の表面改質剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種表示素子の表面に適用されるハードコート層の形成材料として有用な硬化性組成物に関し、滑り性、耐擦傷性、耐摩耗性及び撥水性に優れるハードコート層を形成可能で、浮遊物及び沈降物のない均質な硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機、タブレット型コンピュータ等の携帯情報端末機器、ノート型パソコン、家電製品、自動車内外装品など様々な分野にタッチパネルが導入され、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の表示素子のタッチパネルの表面を指又はペンで触れて操作することが多くなっている。指で操作することを想定した場合、タッチパネルの表面には、付着した指紋の除去を容易にするため撥水撥油性が求められ、さらに指で繰り返し摩擦されても撥水撥油性が維持される耐摩耗性が求められる。加えて、タッチパネルの表面を指又はペンで操作する場合、指又はペンの触り心地の観点から、滑り性が求められる。また、タッチパネルの表面の傷つき防止のため、耐擦傷性が求められる。これらの特性をタッチパネルの表面に付与するため、表面コート層、例えばハードコート層が設けられる。
【0003】
含フッ素化合物は、高い滑り性及び撥水撥油性を示すことから、ハードコート層の形成材料として用いられ、例えばハードコート層を形成する塗布液にフッ素系表面改質剤を少量添加する手法が用いられている。フッ素系表面改質剤は、フッ素原子の低表面エネルギーによりハードコート層の表面に偏析することが知られている。
【0004】
一般に、ハードコート層に耐擦傷性及び耐摩耗性を付与するには、高密度な架橋構造を形成することで、ハードコート層の表面硬度を高め、外力への抵抗性を与える手法が採られる。このようなハードコート層の形成材料として、現在、活性エネルギー線照射により発生したラジカルにより三次元架橋する、多官能アクリレート系材料が最も用いられている。ハードコート層を形成する塗布液に添加されるフッ素系表面改質剤も、該ハードコート層に耐擦傷性及び耐摩耗性を付与するため活性エネルギー線重合性基を有する材料が一般的に用いられる(特許文献1)。
【0005】
一方、特許文献2に記載がある通り、ハードコート層に耐擦傷性、耐摩耗性等の耐久特性を求めるため、例えば架橋性基を有するフッ素系表面改質剤を用いた場合、フッ素原子を含む分子鎖の固定化が起こり、ハードコート層の滑り性は低下する。つまり、耐擦傷性、耐摩耗性等の耐久特性と滑り性とはトレードオフ関係にあり、高い特性水準を両立することは難しい。トレードオフ関係の改善手法として、分子鎖例えばフッ素原子を含む分子鎖の片末端に架橋性基を導入する手法があるが、満足できる特性水準ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2016/163479号
【文献】特許第6497449号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明では、トレードオフ関係にある耐久特性と滑り性とを高い特性水準で両立するハードコート層が形成可能な硬化性組成物を提供することを課題とする。これらに加え、実使用を想定する上で、ハードコート層が高い撥液特性を兼ね備えることが必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1態様は、(a)活性エネルギー線硬化性多官能モノマー100質量部、(b)ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖の末端に、活性エネルギー線重合性基を有するパーフルオロポリエーテル(但し、後述する(c)パーフルオロポリエーテルを除く)0.05質量部乃至5質量部、(c)ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖の末端に、下記式[1]、式[2]又は式[3]で表される基を有する分子量1000以上のパーフルオロポリエーテル0.05質量部乃至5質量部、(d)活性エネルギー線によりラジカルを発生する重合開始剤1質量部乃至20質量部を含む、硬化性組成物である。
【化1】
(上記式[1]、式[2]及び式[3]中、Rはトリフルオロメチル基、フルオロ基、トリフルオロメトキシ基又はニトロ基を表し、Rがトリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基又はニトロ基を表す場合、mは1乃至5の整数を表し、Rがフルオロ基を表す場合、mは2乃至5の整数を表し、Rはメチル基又はメトキシ基を表し、nは1、2又は3を表し、Rは炭素原子数3乃至10のアルキル基を表し、*は前記(c)パーフルオロポリエーテルのポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖との結合手を表す。)
【0009】
前記(c)パーフルオロポリエーテルが、例えば前記ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖の両末端それぞれに前記式[1]、式[2]又は式[3]で表される基を有する。
【0010】
前記(c)パーフルオロポリエーテルが、例えば前記ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖の片末端に前記式[1]、式[2]又は式[3]で表される基を有する。
【0011】
前記(c)パーフルオロポリエーテルが、例えば前記活性エネルギー線重合性基を有さないものである。
【0012】
前記(b)パーフルオロポリエーテルのポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基及び前記(c)パーフルオロポリエーテルのポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基が、例えば、繰り返し単位-[CFO]-及び/又は繰り返し単位-[CFCFO]-を有し、双方の繰り返し単位を有する場合は、これら繰り返し単位をブロック結合、ランダム結合、又は、ブロック結合及びランダム結合にて結合してなる基である。
【0013】
前記(b)パーフルオロポリエーテルのポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖、及び前記(c)パーフルオロポリエーテルのポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖が、例えば下記式[4]又は式[5]で表される構造を有する。
【化2】
(上記式[4]及び式[5]中、pは、繰り返し単位-[CFCFO]-の数と、繰り返し単位-[CFO]-の数との総数であって3乃至30の整数を表し、前記繰り返し単位-[CFCFO]-と、前記繰り返し単位-[CFO]-は、ブロック結合、ランダム結合、又は、ブロック結合及びランダム結合にて結合してなり、qはオキシエチレン基の数であって0乃至10の整数を表す。)
【0014】
前記(c)パーフルオロポリエーテルの含有量に対する前記(b)パーフルオロポリエーテルの含有量の比は、例えば0.5乃至4である。
【0015】
本発明の第1態様の硬化性組成物は、(e)溶媒をさらに含むことができる。
【0016】
本発明の第2態様は、本発明の第1態様の硬化性組成物より得られる硬化膜である。
【0017】
本発明の第3態様は、フィルム基材の少なくとも一方の面にハードコート層を備えるハードコートフィルムであって、該ハードコート層が本発明の第2態様の硬化膜からなる、ハードコートフィルムである。
【0018】
前記ハードコート層が、例えば、本発明の第1態様の硬化性組成物をフィルム基材上に塗布し塗膜を形成する工程と、該塗膜に活性エネルギー線を照射し硬化する工程とを含む方法により形成されてなる。
【0019】
前記ハードコート層が、例えば、本発明の第1態様の硬化性組成物をフィルム基材上に塗布し塗膜を形成する工程と、加熱により該塗膜から前記溶媒を除去する工程と、該塗膜に活性エネルギー線を照射し硬化する工程とを含む方法により形成されてなる。
【0020】
前記フィルム基材が、例えば複数の層から成り、例えば樹脂製フィルムの表面に前記ハードコート層の下層を有する。
【0021】
前記ハードコート層が、例えば1μm乃至20μmの膜厚を有する。
【0022】
本発明の第4態様は、本発明の第1態様の硬化性組成物をフィルム基材上に塗布し塗膜を形成する工程と、該塗膜に活性エネルギー線を照射し硬化する工程とを含む、該フィルム基材とハードコート層との積層体の製造方法である。
【0023】
前記フィルム基材が、例えば複数の層から成り、例えば樹脂製フィルムの表面に前記ハードコート層の下層を有する。
【0024】
本発明の第5態様は、ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖の末端に、前記式[1]、式[2]又は式[3]で表される基を有する、パーフルオロポリエーテル化合物である。
【0025】
前記ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖が、例えば前記式[4]又は式[5]で表される構造を有する。
【0026】
前記パーフルオロポリエーテル化合物が、例えば前記ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖の両末端それぞれに前記式[1]、式[2]又は式[3]で表される基を有する。
【0027】
前記パーフルオロポリエーテル化合物が、例えば前記ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖の片末端に前記式[1]、式[2]又は式[3]で表される基を有する。
【0028】
前記パーフルオロポリエーテル化合物が、例えば活性エネルギー線重合性基を有さないものである。
【0029】
本発明の第6態様は、本発明の第5態様のパーフルオロポリエーテル化合物、及び前記式[4]又は式[5]で表される構造を有するポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖の末端に、前記活性エネルギー線重合性基を有するパーフルオロポリエーテル化合物を含む、表面改質剤である。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、厚さ1μm乃至20μmの薄膜においても、優れた耐擦傷性・耐摩耗性と優れた滑り性とを両立する硬化膜及びハードコート層の形成に有用な硬化性組成物を提供することができる。また、本発明によれば、前記硬化性組成物から得られる硬化膜又は該硬化膜からなるハードコート層を備えるハードコートフィルムを提供することができ、トレードオフの関係にある耐擦傷性、耐摩耗性等の耐久特性と滑り性とが共に優れるハードコートフィルムを提供することができる。更に本発明によれば、上記両特性の両立に加え、高い撥液特性をも付与した硬化膜及びハードコート層の形成に有用な硬化性組成物、並びにこれら特性に優れるハードコート層を備えるハードコートフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
<硬化性組成物>
本発明の硬化性組成物の各成分について、以下に説明する。
[(a)活性エネルギー線硬化性多官能モノマー]
(a)成分の活性エネルギー線硬化性多官能モノマー(以下、単に「(a)多官能モノマー」とも称する。)とは、紫外線等の活性エネルギー線を照射することで重合反応が進行し、硬化する活性エネルギー線重合性基を2つ以上有するモノマーを指す。前記活性エネルギー線重合性基として、例えば、(メタ)アクリロイル基及びビニル基が挙げられる。
【0032】
本発明の硬化性組成物において好ましい(a)多官能モノマーとして、多官能(メタ)アクリレート化合物からなる群から選択されるモノマーを挙げることができ、また、後述する多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物からなる群から選択されるモノマー、及びラクトン変性多官能(メタ)アクリレート化合物からなる群から選択されるモノマーを挙げることができる。本発明では、(a)多官能モノマーとして、上記多官能(メタ)アクリレート化合物からなる群から一種を単独で、或いは二種以上を組合せて使用することができる。なお、本発明において(メタ)アクリレート化合物とは、アクリレート化合物とメタクリレート化合物の両方を含み、例えば(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及びメタクリル酸を含む。
【0033】
また(a)多官能モノマーはオキシアルキレン変性多官能モノマーであってよく、該オキシアルキレン変性として、例えば、オキシメチレン変性、オキシエチレン変性、及びオキシプロピレン変性が挙げられる。前記オキシアルキレン変性多官能モノマーとして、上記多官能(メタ)アクリレート化合物または多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物において、オキシアルキレン変性した化合物を挙げることができる。前記オキシアルキレン変性多官能モノマーも、一種を単独で、或いは二種以上を組合せて使用することができる。
【0034】
また本発明では、(a)多官能モノマーとして、活性エネルギー線重合性基を少なくとも3つ、例えば、少なくとも4つ有する多官能モノマーを使用することができる。本発明では、(a)多官能モノマーとして、活性エネルギー線重合性基を少なくとも3つ有する、オキシアルキレン変性多官能(メタ)アクリレート化合物からなる群から選択されるモノマーを用いることができる。
【0035】
上記多官能(メタ)アクリレート化合物(但し、ウレタン結合を有していない化合物)として、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-1-アクリロイルオキシ-3-メタクリロイルオキシプロパン、2-ヒドロキシ-1,3-ジ(メタ)アクリロイルオキシプロパン、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、ビス[4-(メタ)アクリロイルチオフェニル]スルフィド、ビス[2-(メタ)アクリロイルチオエチル]スルフィド、1,3-アダマンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-アダマンタンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、及びポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートを挙げることができる。これらの中で、好ましい多官能(メタ)アクリレート化合物として、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0036】
上記オキシアルキレン変性多官能(メタ)アクリレート化合物として、例えば、オキシアルキレンで変性されたポリオールの(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。前記ポリオールとして、例えば、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、デカグリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、及びジペンタエリスリトールが挙げられる。
【0037】
上記多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、1分子内にアクリロイル基又はメタクリロイル基を複数有し、ウレタン結合[-NHC(=O)O-]を一つ以上有する化合物である。前記多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物として、例えば、多官能イソシアネートとヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートとの反応により得られる化合物、及び多官能イソシアネートとヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートとポリオールとの反応により得られる化合物が挙げられるが、本発明で使用可能な多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物はこれらの例示のみに限定されない。
【0038】
なお上記多官能イソシアネートとして、例えば、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、及びヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。また上記ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートとして、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、及びトリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレートが挙げられる。さらに上記ポリオールとして、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のジオール類;これらジオール類とコハク酸、マレイン酸、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸類又はジカルボン酸無水物類との反応生成物であるポリエステルポリオール;ポリエーテルポリオール;及びポリカーボネートジオールが挙げられる。
【0039】
(a)多官能モノマーはラクトン変性多官能(メタ)アクリレート化合物であってもよく、変性するラクトンとしてε-カプロラクトンが好ましい。前記ラクトン変性多官能(メタ)アクリレート化合物として、例えば、ε-カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、及びε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0040】
[(b)ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖の末端に、活性エネルギー線重合性基を有するパーフルオロポリエーテル]
(b)成分のポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖の末端に、活性エネルギー線重合性基を有するパーフルオロポリエーテルを以下、単に「(b)パーフルオロポリエーテル」とも称する。(b)パーフルオロポリエーテルは、後述する(c)パーフルオロポリエーテルを除くものである。本発明の硬化性組成物において好ましい(b)パーフルオロポリエーテルは、ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖の末端に、ウレタン結合を介して活性エネルギー線重合性基を有する。前記ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖の末端は、該分子鎖の全ての末端及び一部の末端、いずれでもよい。前記分子鎖が直鎖状である場合、該分子鎖の全ての末端及び一部の末端は、それぞれ該直鎖状の分子鎖の両末端及び片末端である。前記ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基と前記ウレタン結合との間の連結基として、例えば、エーテル結合を有する炭化水素基が挙げられ、該炭化水素基は、水素原子の少なくとも1つがフッ素原子で置換されていてもよい。
【0041】
(b)パーフルオロポリエーテルは、後述する(c)成分を伴って、本発明の硬化性組成物から形成されるハードコート層における表面改質剤としての役割を果たす。また、(b)パーフルオロポリエーテルは、(a)多官能モノマーとの相溶性に優れるため、白濁が抑制され、透明な外観を呈するハードコート層の形成を可能とする。
【0042】
上記ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基として、耐擦傷性が良好となる硬化膜が得られる観点から、-[CFO]-(オキシパーフルオロメチレン基)と-[CFCFO]-(オキシパーフルオロエチレン基)の双方を繰り返し単位として有する基が好ましい。その場合、これらのオキシパーフルオロアルキレン基の結合は、ブロック結合及びランダム結合の何れであってもよい。
【0043】
上記ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖として、下記式[4]又は式[5]で表される構造を有することが好ましい。
【化3】
上記式[4]及び式[5]中のpは、繰り返し単位-[CFCFO]-の数と、繰り返し単位-[CFO]-の数との総数であって、例えば3乃至30、好ましくは7乃至21の整数を表し、前記繰り返し単位-[CFCFO]-と、前記繰り返し単位-[CFO]-との結合は、ブロック結合及びランダム結合の何れであってもよい。上記式[5]中のqは、オキシエチレン基の数であって0乃至10の整数を表す。
【0044】
上記活性エネルギー線重合性基として、例えば(メタ)アクリロイル基及びビニル基が挙げられる。(b)パーフルオロポリエーテルは、ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖の末端に、1つの活性エネルギー線重合性基を有するものに限らず、2つ以上の活性エネルギー線重合性基を有するものであってもよい。活性エネルギー線重合性基を含む末端構造として、例えば、以下に示す式[A1]乃至式[A5]の構造、及びこれらの構造中のアクリロイル基をメタクリロイル基に置換した構造が挙げられる。これらの構造のうち、活性エネルギー線重合性基を2つ以上有する、式[A3]、式[A4]及び式[A5]の構造、並びにこれらの構造中のアクリロイル基をメタクリロイル基に置換した構造が好ましい。
【化4】
【0045】
本発明の硬化性組成物において(b)パーフルオロポリエーテルの含有量は、前記(a)多官能モノマー100質量部に対して、0.05質量部乃至5質量部、好ましくは0.1量部乃至5質量部、より好ましくは0.1質量部乃至1質量部である。(b)パーフルオロポリエーテルの含有量が0.05質量部以上であることで、ハードコート層に十分な耐擦傷性を付与することができ、また(b)パーフルオロポリエーテルの含有量が5質量部以下であることで、(a)多官能モノマーと十分に相溶し、白濁の少ないハードコート層を得ることができる。
【0046】
(b)パーフルオロポリエーテルは、一種を単独で、或いは二種以上を組み合わせて用いることができる。二種以上を組み合わせる場合、ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖の片末端(一方の末端)に、ウレタン結合を介して活性エネルギー線重合性基を有し、且つその分子鎖の他端(もう一方の末端)にヒドロキシ基を有するパーフルオロポリエーテルが含まれていてもよい。
【0047】
[(c)ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖の末端に、式[1]、式[2]又は式[3]で表される基を有する分子量1000以上のパーフルオロポリエーテル]
(c)成分のポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖の末端に、式[1]、式[2]又は式[3]で表される基を有する分子量1000以上、例えば1000乃至4000のパーフルオロポリエーテルを以下、単に「(c)パーフルオロポリエーテル」とも称する。(c)パーフルオロポリエーテルは、前記ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖の末端に下記式[1]、式[2]又は式[3]で表される基を有し、且つ分子量1000以上であることが、前記(b)パーフルオロポリエーテルと相違する。一方、(c)パーフルオロポリエーテルのポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖、及びその末端の定義については、前記(b)パーフルオロポリエーテルと共通する。したがって、前記ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖として、前記式[4]又は式[5]で表される構造を有することが好ましい。
【化5】
上記式[1]中のRは、トリフルオロメチル基、フルオロ基、トリフルオロメトキシ基又はニトロ基を表し、Rがトリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基又はニトロ基を表す場合、mは1乃至5の整数を表し、Rがフルオロ基を表す場合、mは2乃至5の整数を表す。上記式[2]中のRは、メチル基又はメトキシ基、好ましくはメチル基を表し、nは1、2又は3を表す。上記式[3]中のRは、炭素原子数3乃至10のアルキル基、例えば3乃至6のアルキル基を表す。上記式[1]、式[2]及び式[3]中の*は、前記ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖との結合手を表す。
【0048】
(c)パーフルオロポリエーテルは、例えば、前記式[4]又は式[5]で表される構造の末端にヒドロキシ基を有するパーフルオロポリエーテルと下記式[1a]、式[2a]又は式[3a]で表されるイソシアネート化合物とを反応させて得られる。
【化6】
上記式[1a]中のR及びm、上記式[2a]中のR及びn、並びに上記式[3a]中のRは、それぞれ前記式[1]、式[2]及び式[3]におけるR、R、R、m及びnの定義と同義である。
【0049】
(c)パーフルオロポリエーテルは、前記(b)パーフルオロポリエーテルを伴って、本発明の硬化性組成物から形成されるハードコート層における表面改質剤としての役割を果たす。また、(c)パーフルオロポリエーテルは、(b)パーフルオロポリエーテルとの相溶性に優れるため、白濁が抑制され、透明な外観を呈するハードコート層の形成を可能とする。
【0050】
(c)パーフルオロポリエーテルの分子量が1000以上であることで、本発明の硬化性組成物から得られるハードコート層の表面に(c)パーフルオロポリエーテルが留まりやすくなり、滑り性に優れたハードコート層を得ることができる。また、(c)パールフルオロポリエーテルの分子量が例えば4000以下であることで、(a)多官能モノマーと十分に相溶し、白濁の少ないハードコート層を得ることができる。
【0051】
本発明の硬化性組成物において(c)パーフルオロポリエーテルの含有量は、前記(a)多官能モノマー100質量部に対して、0.05質量部乃至5質量部であり、また(c)パーフルオロポリエーテルの含有量に対する前記(b)パーフルオロポリエーテルの含有量の比が0.5乃至4であることが好ましい。(c)パーフルオロポリエーテルの含有量が0.05質量部以上であることで、本発明の硬化性組成物から得られるハードコート層の表面に(c)パーフルオロポリエーテルが十分に存在するため、滑り性に優れたハードコート層を得ることができる。また(c)パーフルオロポリエーテルの含有量が5質量部以下であることで、(b)パーフルオロポリエーテルと十分に相溶し、白濁の少ないハードコート層を得ることができる。
【0052】
(c)パーフルオロポリエーテルは、一種を単独で、或いは二種以上を組み合わせて用いることができる。二種以上を組み合わせる場合、ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖の片末端(一方の末端)に、前記式[1]、式[2]又は式[3]で表される基を有し、且つその分子鎖の他端(もう一方の末端)に活性エネルギー線重合性基又はヒドロキシ基を有するパーフルオロポリエーテルが含まれていてもよい。なお、(c)パーフルオロポリエーテルは、前記(b)パーフルオロポリエーテルが有する活性エネルギー線重合性基を有さないものがより好ましい。
【0053】
[(d)重合開始剤]
本発明の硬化性組成物において好ましい(d)重合開始剤は、例えば、電子線、紫外線、X線等の活性エネルギー線により、特に紫外線照射によりラジカルを発生する重合開始剤である。
【0054】
(d)重合開始剤として、例えば、ベンゾイン類、アルキルフェノン類、チオキサントン類、アゾ類、アジド類、ジアゾ類、o-キノンジアジド類、アシルホスフィンオキシド類、オキシムエステル類、有機過酸化物、ベンゾフェノン類、ビスクマリン類、ビスイミダゾール類、チタノセン類、チオール類、ハロゲン化炭化水素類、トリクロロメチルトリアジン類、及びヨードニウム塩、スルホニウム塩等のオニウム塩類が挙げられる。これらの重合開始剤は、一種を単独で、或いは二種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明では、透明性、表面硬化性及び薄膜硬化性の観点から、(d)重合開始剤としてアルキルフェノン類を使用することが好ましい。アルキルフェノン類を使用することにより、耐擦傷性がより向上した硬化膜を得ることができる。
【0055】
上記アルキルフェノン類として、例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-2-メチルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)-2-メチルプロパン-1-オン等のα-ヒドロキシアルキルフェノン類;2-メチル-1-(4-(メチルチオ)フェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン等のα-アミノアルキルフェノン類;2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン;及びフェニルグリオキシル酸メチルが挙げられる。
【0056】
本発明の硬化性組成物において(d)重合開始剤の含有量は、前記(a)多官能モノマー100質量部に対して、1質量部乃至20質量部、好ましくは2質量部乃至10質量部である。
【0057】
[(e)溶媒]
本発明の硬化性組成物は、任意成分として(e)溶媒を含有してもよく、すなわちワニスの形態としてもよい。(e)溶媒としては、前記(a)成分乃至(d)成分の溶解・分散性、また、後述する硬化膜(ハードコート層)の形成に係る硬化性組成物の塗工時の作業性、硬化前後の乾燥性等を考慮して適宜選択すればよい。
【0058】
上記(e)溶媒として、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素類;n-ヘキサン、n-ヘプタン、ミネラルスピリット、シクロヘキサン等の脂肪族又は脂環式炭化水素類;塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、o-ジクロロベンゼン等のハロゲン化物類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)等のエステル類又はエステルエーテル類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ジ-n-ブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、ベンジルアルコール、エチレングリコール等のアルコール類;N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等のアミド類;及びジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホキシド類、並びにこれらの溶媒のうち二種以上を混合した溶媒が挙げられる。
【0059】
本発明の硬化性組成物において(e)溶媒の含有量は特に限定されないが、例えば、本発明の硬化性組成物の固形分濃度が1質量%乃至70質量%、好ましくは5質量%乃至50質量%となる濃度である。ここで固形分濃度(不揮発分濃度とも称する。)とは、本発明の硬化性組成物の前記(a)成分乃至(e)成分、及びその他添加剤の総質量(合計質量)に対する固形分(全成分から溶媒成分を除いたもの)の含有量を表す。
【0060】
[その他添加剤]
また、本発明の硬化性組成物には、本発明の効果を損なわない限り、必要に応じて一般的に添加される添加剤、例えば、重合禁止剤、光増感剤、レベリング剤、界面活性剤、密着性付与剤、可塑剤、紫外線吸収剤、貯蔵安定剤、帯電防止剤、無機充填剤、顔料、染料等のうち一種を単独で、或いは二種以上を組み合わせて適宜配合してもよい。
【0061】
<硬化膜>
本発明の硬化性組成物は、基材上に塗布(コーティング)して塗膜を形成し、該塗膜に活性エネルギー線を照射して重合(硬化)させることにより、硬化膜を形成でき、該硬化膜も本発明の対象である。また後述するハードコートフィルムにおけるハードコート層として、上記硬化膜からなるものを用いることができる。
【0062】
上記基材として、例えば、各種樹脂(ポリカーボネート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリウレタン、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS)、ノルボルネン系樹脂)、金属、木材、紙、ガラス、スレートを挙げることができる。これら基材の形状は板状、フィルム状又は3次元成形体でもよい。また、上記基材の表面に、例えば、プライマー層、紫外線吸収層、赤外線吸収層、近赤外線吸収層、電磁波吸収層、色補正層、屈折率調整層、耐候性層、反射防止層、帯電防止層、変色防止層、ガスバリア層、水蒸気バリア層、光散乱層、電極層等がハードコート層の下層として形成されていてもよく、該ハードコート層の下層が複数積層されていてもよい。上記基材の表面に形成される層としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限されない。
【0063】
上記基材上への塗布方法は、キャストコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、ロールコート法、スプレーコート法、バーコート法、ダイコート法、インクジェット法、印刷法(凸版印刷法、凹版印刷法、平版印刷法、スクリーン印刷法等)等を適宜選択し得、中でもロール・ツー・ロール(roll-to-roll)法に利用でき、また薄膜塗布性の観点から、凸版印刷法、特にグラビアコート法を用いることが望ましい。なお事前に孔径が0.2μm程度のフィルタなどを用いて、本発明の硬化性組成物を濾過した後、塗布に供することが好ましい。なお塗布する際、必要に応じて該硬化性組成物に溶剤をさらに添加してもよい。この場合の溶剤としては前述の[(e)溶媒]で挙げた種々の溶媒を挙げることができる。
【0064】
基材上に本発明の硬化性組成物を塗布し塗膜を形成した後、必要に応じてホットプレート、オーブン等の加熱手段で塗膜を予備乾燥して溶媒を除去する(溶媒除去工程)。この際の加熱乾燥の条件としては、例えば、40℃乃至120℃で、30秒乃至10分程度とすることが好ましい。乾燥後、紫外線等の活性エネルギー線を照射して、上記塗膜を硬化させる。活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、電子線及びX線が挙げられ、特に紫外線が好ましい。紫外線照射に用いる光源としては、例えば、太陽光線、ケミカルランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、及びUV-LEDが使用できる。さらにその後、ポストベークを行うことにより、具体的にはホットプレート、オーブン等の加熱手段を用いて加熱することにより、重合を完結させてもよい。
【0065】
なお、形成される硬化膜の厚さは、乾燥、硬化後において、通常0.1μm乃至50μm、好ましくは0.5μm乃至20μmである。
【0066】
<ハードコートフィルム>
本発明の硬化性組成物を用いて、フィルム基材の少なくとも一方の面(表面)にハードコート層を備えるハードコートフィルムを製造することができる。該ハードコートフィルムも本発明の対象であり、該ハードコートフィルムは、例えば、タッチパネル、液晶ディスプレイ等の各種表示素子の表面を保護するために好適に用いられる。
【0067】
本発明のハードコートフィルムにおけるハードコート層は、本発明の硬化性組成物をフィルム基材上に塗布し塗膜を形成する工程と、必要に応じて加熱により溶媒を除去する工程と、該塗膜に紫外線等の活性エネルギー線を照射し、該塗膜を硬化させる工程とを含む方法により形成することができる。これらの工程を含む、フィルム基材の少なくとも一方の面にハードコート層を備えるハードコートフィルムの製造方法も本発明の対象である。
【0068】
上記フィルム基材としては、前述の<硬化膜>で挙げた基材のうち、光学用途に使用可能な各種の透明な樹脂製フィルムが用いられる。好ましい樹脂製フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリウレタン、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリカーボネート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、トリアセチルセルロース(TAC)等のフィルムが挙げられる。
【0069】
上記フィルム基材としては、複数の層が積層して形成されていてもよい。例えば、上記樹脂製フィルムの表面に、プライマー層、紫外線吸収層、赤外線吸収層、近赤外線吸収層、電磁波吸収層、色補正層、屈折率調整層、耐候性層、反射防止層、帯電防止層、変色防止層、ガスバリア層、水蒸気バリア層、光散乱層、電極層等の、該樹脂製フィルムとは異なる層がハードコート層の下層として積層されていてもよく、該ハードコート層の下層が複数積層されていてもよい。上記樹脂製フィルムの表面に積層される層としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限されない。
【0070】
また上記フィルム基材上への、本発明の硬化性組成物の塗布方法(塗膜形成工程)、及び塗膜への活性エネルギー線照射方法(硬化工程)は、前述の<硬化膜>で挙げた方法を用いることができる。また本発明の硬化性組成物に溶媒が含まれる(ワニス形態の)場合、塗膜形成工程の後、必要に応じて該塗膜を乾燥し溶媒を除去する工程を含むことができる。その場合、前述の<硬化膜>で挙げた塗膜の乾燥方法(溶媒除去工程)を用いることができる。
【0071】
こうして得られたハードコート層の層厚(膜厚)は、例えば1μm乃至20μm、好ましくは1μm乃至10μmである。
【0072】
<表面改質剤>
ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖の末端に、前記式[1]、式[2]又は式[3]で表される基を有するパーフルオロポリエーテル化合物、及び前記式[4]又は式[5]で表される構造を有するポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖の末端に、活性エネルギー線重合性基を有するパーフルオロポリエーテル化合物を含む表面改質剤も、本発明の対象である。前記活性エネルギー線重合性基は、前記(b)パーフルオロポリエーテルが有する活性エネルギー線重合性基である。前者のパーフルオロポリエーテル化合物は、前記活性エネルギー線重合性基を有さないものが好ましい。さらに、前者のパーフルオロポリエーテル化合物自体も本発明の対象である。
【実施例
【0073】
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、実施例において、試料の調製及び物性の分析に用いた装置及び条件は、以下の通りである。
【0074】
(1)バーコーターによる塗布
装置:(株)エスエムテー製 PM-9050MC
バー:オーエスジーシステムプロダクツ(株)製 A-Bar OSP-30、最大ウエット膜厚30μm
塗布速度:4m/分
(2)オーブン
装置:三基計装(株)製 2層式クリーンオーブン(上下式)PO-250-45-D
(3)UV硬化
装置:ヘレウス(株)製 CV-110QC-G
ランプ:ヘレウス(株)製 無電極ランプH-bulb
(4)耐擦傷性試験及び耐摩耗性試験
装置:新東科学(株)製 往復摩耗試験機 TRIBOGEAR TYPE:30S
走査速度:3200mm/分
走査距離:50mm
(5)接触角
装置:協和界面科学(株)製 DropMaster DM-501
測定温度:23℃
(6)動摩擦係数μk測定
装置:新東科学(株)製 荷重変動型摩擦磨耗試験システム TRIBOGEAR(登録商標)TYPE:HHS2000
プローブ:0.6mmR サファイアピン
荷重:200g
走査速度:2mm/秒
走査距離:10mm
(7)全光線透過率、ヘーズ
装置:日本電色工業(株)製 ヘーズメーター NDH5000
【0075】
また、略記号は以下の意味を表す。
多官能アクリレートPA1:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート/ヘキサアクリレート混合物 [東亞合成 (株) 製 アロニックス(登録商標) M-403、ペンタ体割合50%乃至60%(カタログ値)]
多官能アクリレートPA2:オキシエチレン変性多官能アクリレート[第一工業製薬(株)製 ニューフロンティア(登録商標)MF-001]
多官能アクリレートPA3:多官能ウレタンアクリレート[根上工業(株)製 アートレジン(登録商標)UN-3320HS]
多官能アクリレートPA4:カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート[日本化薬(株)製 DPCA30]
PFPE1:ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖の両末端それぞれにポリ(オキシアルキレン)基を介さずヒドロキシ基を2つ有するパーフルオロポリエーテル[ソルベイスペシャルティポリマーズ社製 Fomblin(登録商標)T4 NMRによる分析結果から算出された数平均分子量2200]
PFPE2:ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖の両末端それぞれにポリ(オキシアルキレン)基を介してヒドロキシ基を2つ有するパーフルオロポリエーテル[ソルベイスペシャルティポリマーズ社製 Fluorolink(登録商標)E10H NMRによる分析結果から算出された数平均分子量1818]
PFPE3:ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖の両末端それぞれにポリ(オキシアルキレン)基を介さずヒドロキシ基を1つ有するパーフルオロポリエーテル[ソルベイスペシャルティポリマーズ社製 Fomblin(登録商標)D2 NMRによる分析結果から算出された数平均分子量1500]
PFPE4:片末端にポリ(オキシアルキレン)基を介さずヒドロキシ基を1つ有するパーフルオロポリエーテル(1H,1H-パーフルオロ-3,6,9-トリオキサトリデカン-1-オール)[Exfluor Research社製 C10GOL 分子量548.1(カタログ値)]
N1:1,1-ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート[昭和電工(株)製 カレンズ(登録商標)BEI]
N2:プロピルイソシアネート[東京化成工業(株)]
N3:ブチルイソシアネート[東京化成工業(株)]
N4:ヘキシルイソシアネート[東京化成工業(株)]
N5:2,4-ジフルオロフェニルイソシアネート[東京化成工業(株)]
N6:4-(トリフルオロメチル)フェニルイソシアネート[東京化成工業(株)]
N7:3-(トリフルオロメチル)フェニルイソシアネート[東京化成工業(株)]
N8:3-(トリフルオロメトキシ)フェニルイソシアネート[東京化成工業(株)]
N9:パラ-トルエンスルフォニルイソシアネート[東京化成工業(株)]
N10:4-ニトロフェニルイソシアネート[東京化成工業(株)]
N11:4-フルオロフェニルイソシアネート[東京化成工業(株)]
N12:フェニルイソシアネート[東京化成工業(株)]
N13:パラ-トリルイソシアネート[東京化成工業(株)]
N14:パラ-メトキシフェニルイソシアネート[東京化成工業(株)]
N15:3,5-ジメチルフェニルイソシアネート[東京化成工業(株)]
N16:2,6-ジメチルフェニルイソシアネート[東京化成工業(株)]
DOTDD:ジネオデカン酸ジオクチル錫[日東化成(株)製 ネオスタン(登録商標)U-830]
SMA2:ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖の両末端に活性エネルギー線重合性基を合計4つ有するパーフルオロポリエーテル[ソルベイスペシャルティポリマーズ社製 Fluorolink(登録商標)AD-1700、不揮発分70質量%溶液]
SMA3: ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖の片末端に活性エネルギー線重合性基を有するパーフルオロポリエーテル[ダイキン(株)製 オプツールDAC-HP、不揮発分20質量%溶液]
O2959:2-ヒドロキシ-1-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-2-メチルプロパン-1-オン[IGM Resins社製 OMNIRAD(登録商標)2959]
MEK:メチルエチルケトン
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
【0076】
[製造例1]表面改質剤の成分SMA1の製造
スクリュー管に、PFPE1 1.19g(0.5mmol)、N1 0.52g(2.0mmol)、DOTDD 0.017g(PFPE1及びN1の合計質量の0.01倍量)、及びMEK 1.67gを仕込んだ。この混合物を、スターラーチップを用いて室温(およそ23℃)で72時間撹拌して、目的のパーフルオロポリエーテル化合物SMA1の50質量%MEK溶液を得た。得られたSMA1は、本発明の硬化性組成物の(b)成分に該当する。
【0077】
[実施例1]表面改質剤の成分SMB1の製造
スクリュー管に、PFPE2 2.22g(1.5mmol)、N2 0.25g(3.0mmol)、DOTDD 0.025g(PFPE2及びN2の合計質量の0.01倍量)、及びMEK 2.5gを仕込んだ。得られた混合物を、スターラーチップを用いて室温(およそ23℃)で72時間撹拌して、目的のパーフルオロポリエーテル化合物SMB1の50質量%MEK溶液を得た。得られたSMB1は、本発明の硬化性組成物の(c)成分に該当する。
【0078】
[実施例2]表面改質剤の成分SMB2の製造
スクリュー管に、PFPE2 2.19g(1.5mmol)、N3 0.29g(3.0mmol)、DOTDD 0.025g(PFPE2及びN3の合計質量の0.01倍量)、及びMEK 2.5gを仕込んだ。得られた混合物を、スターラーチップを用いて室温(およそ23℃)で72時間撹拌して、目的のパーフルオロポリエーテル化合物SMB2の50質量%MEK溶液を得た。得られたSMB2は、本発明の硬化性組成物の(c)成分に該当する。
【0079】
[実施例3]表面改質剤の成分SMB3の製造
スクリュー管に、PFPE2 2.12g(1.4mmol)、N4 0.36g(2.8mmol)、DOTDD 0.025g(PFPE2及びN4の合計質量の0.01倍量)、及びMEK 2.5gを仕込んだ。得られた混合物を、スターラーチップを用いて室温(およそ23℃)で72時間撹拌して、目的のパーフルオロポリエーテル化合物SMB3の50質量%MEK溶液を得た。得られたSMB3は、本発明の硬化性組成物の(c)成分に該当する。
【0080】
[実施例4]表面改質剤の成分SMB4の製造
スクリュー管に、PFPE2 2.05g(1.4mmol)、N5 0.42g(2.8mmol)、DOTDD 0.025g(PFPE2及びN5の合計質量の0.01倍量)、及びMEK 2.5gを仕込んだ。得られた混合物を、スターラーチップを用いて室温(およそ23℃)で72時間撹拌して、目的のパーフルオロポリエーテル化合物SMB4の50質量%MEK溶液を得た。得られたSMB4は、本発明の硬化性組成物の(c)成分に該当する。
【0081】
[実施例5]表面改質剤の成分SMB5の製造
スクリュー管に、PFPE2 1.98g(1.3mmol)、N6 0.49g(2.6mmol)、DOTDD 0.025g(PFPE2及びN6の合計質量の0.01倍量)、及びMEK 2.5gを仕込んだ。得られた混合物を、スターラーチップを用いて室温(およそ23℃)で72時間撹拌して、目的のパーフルオロポリエーテル化合物SMB5の50質量%MEK溶液を得た。得られたSMB5は、本発明の硬化性組成物の(c)成分に該当する。
【0082】
[実施例6]表面改質剤の成分SMB6の製造
スクリュー管に、PFPE2 1.98g(1.3mmol)、N7 0.49g(2.6mmol)、DOTDD 0.025g(PFPE2及びN7の合計質量の0.01倍量)、及びMEK 2.5gを仕込んだ。得られた混合物を、スターラーチップを用いて室温(およそ23℃)で72時間撹拌して、目的のパーフルオロポリエーテル化合物SMB6の50質量%MEK溶液を得た。得られたSMB6は、本発明の硬化性組成物の(c)成分に該当する。
【0083】
[実施例7]表面改質剤の成分SMB7の製造
スクリュー管に、PFPE2 2.34g(1.6mmol)、N8 0.63g(3.2mmol)、DOTDD 0.030g(PFPE2及びN8の合計質量の0.01倍量)、及びMEK 3.0gを仕込んだ。得られた混合物を、スターラーチップを用いて室温(およそ23℃)で72時間撹拌して、目的のパーフルオロポリエーテル化合物SMB7の50質量%MEK溶液を得た。得られたSMB7は、本発明の硬化性組成物の(c)成分に該当する。
【0084】
[実施例8]表面改質剤の成分SMB8の製造
スクリュー管に、PFPE2 4.09g(2.2mmol)、N9 1.10g(4.4mmol)、DOTDD 0.052g(PFPE2及びN9の合計質量の0.01倍量)、及びMEK 5.3gを仕込んだ。得られた混合物を、スターラーチップを用いて室温(およそ23℃)で72時間撹拌して、目的のパーフルオロポリエーテル化合物SMB8の50質量%MEK溶液を得た。得られたSMB8は、本発明の硬化性組成物の(c)成分に該当する。
【0085】
[実施例9]表面改質剤の成分SMB9の製造
スクリュー管に、PFPE2 2.44g(1.6mmol)、N10 0.53g(3.2mmol)、DOTDD 0.030g(PFPE2及びN10の合計質量の0.01倍量)、及びMEK 3.0gを仕込んだ。得られた混合物を、スターラーチップを用いて室温(およそ23℃)で72時間撹拌して、目的のパーフルオロポリエーテル化合物SMB9の50質量%MEK溶液を得た。得られたSMB9は、本発明の硬化性組成物の(c)成分に該当する。
【0086】
[実施例10]表面改質剤の成分SMB10の製造
スクリュー管に、PFPE1 1.87g(0.8mmol)、N6 0.41g(3.2mmol)、DOTDD 0.025g(PFPE1及びN6の合計質量の0.01倍量)、及びMEK 2.5gを仕込んだ。得られた混合物を、スターラーチップを用いて室温(およそ23℃)で72時間撹拌して、目的のパーフルオロポリエーテル化合物SMB10の50質量%MEK溶液を得た。得られたSMB10は、本発明の硬化性組成物の(c)成分に該当する。
【0087】
[実施例11]表面改質剤の成分SMB11の製造
スクリュー管に、PFPE3 4.17g(2.1mmol)、N6 1.01g(4.2mmol)、DOTDD 0.052g(PFPE3及びN6の合計質量の0.01倍量)、及びMEK 5.2gを仕込んだ。得られた混合物を、スターラーチップを用いて室温(およそ23℃)で72時間撹拌して、目的のパーフルオロポリエーテル化合物SMB11の50質量%MEK溶液を得た。得られたSMB11は、本発明の硬化性組成物の(c)成分に該当する。
【0088】
[実施例12]表面改質剤の成分SMB12の製造
スクリュー管に、PFPE3 4.34g(2.2mmol)、N9 0.86g(4.4mmol)、DOTDD 0.052g(PFPE3及びN9の合計質量の0.01倍量)、及びMEK 5.3gを仕込んだ。得られた混合物を、スターラーチップを用いて室温(およそ23℃)で72時間撹拌して、目的のパーフルオロポリエーテル化合物SMB12の50質量%MEK溶液を得た。得られたSMB12は、本発明の硬化性組成物の(c)成分に該当する。
【0089】
[実施例13]表面改質剤の成分SMB13の製造
スクリュー管に、PFPE2 4.11g(2.7mmol)、N6 0.51g(2.7mmol)、N1 0.66g(2.7mmol)、DOTDD 0.053g(PFPE2、N6及びN1の合計質量の0.01倍量)、及びMEK 4.67gを仕込んだ。得られた混合物を、スターラーチップを用いて室温(およそ23℃)で72時間撹拌して、目的のパーフルオロポリエーテル化合物SMB13の50質量%MEK溶液を得た。得られたSMB13は、本発明の硬化性組成物の(c)成分に該当する。
【0090】
[実施例14]表面改質剤の成分SMB14の製造
スクリュー管に、PFPE4 4.85g(3.4mmol)、N6 0.63g(3.4mmol)、DOTDD 0.025g(PFPE4及びN6の合計質量の0.01倍量)、及びMEK 2.5gを仕込んだ。得られた混合物を、スターラーチップを用いて室温(およそ23℃)で72時間撹拌して、目的のパーフルオロポリエーテル化合物SMB14の50質量%MEK溶液を得た。
【0091】
[比較例1]SMB15の製造
スクリュー管に、PFPE2 2.09g(1.4mmol)、N11 0.38g(2.8mmol)、DOTDD 0.025g(PFPE2及びN11の合計質量の0.01倍量)、及びMEK 2.5gを仕込んだ。得られた混合物を、スターラーチップを用いて室温(およそ23℃)で72時間撹拌して、目的のパーフルオロポリエーテル化合物SMB15の50質量%MEK溶液を得た。
【0092】
[比較例2]SMB16の製造
スクリュー管に、PFPE2 2.14g(1.4mmol)、N12 0.34g(2.8mmol)、DOTDD 0.025g(PFPE2及びN12の合計質量の0.01倍量)、及びMEK 2.5gを仕込んだ。得られた混合物を、スターラーチップを用いて室温(およそ23℃)で72時間撹拌して、目的のパーフルオロポリエーテル化合物SMB16の50質量%MEK溶液を得た。
【0093】
[比較例3]SMB17の製造
スクリュー管に、PFPE2 2.10g(1.4mmol)、N13 0.37g(2.8mmol)、DOTDD 0.025g(PFPE2及びN13の合計質量の0.01倍量)、及びMEK 2.5gを仕込んだ。得られた混合物を、スターラーチップを用いて室温(およそ23℃)で72時間撹拌して、目的のパーフルオロポリエーテル化合物SMB17の50質量%MEK溶液を得た。
【0094】
[比較例4]SMB18の製造
スクリュー管に、PFPE2 2.48g(1.7mmol)、N14 0.49g(3.4mmol)、DOTDD 0.030g(PFPE2及びN14の合計質量の0.01倍量)、及びMEK 3.0gを仕込んだ。得られた混合物を、スターラーチップを用いて室温(およそ23℃)で72時間撹拌して、目的のパーフルオロポリエーテル化合物SMB18の50質量%MEK溶液を得た。
【0095】
[比較例5]SMB19の製造
スクリュー管に、PFPE2 2.07g(1.4mmol)、N15 0.41g(2.8mmol)、DOTDD 0.025g(PFPE2及びN15の合計質量の0.01倍量)、及びMEK 2.5gを仕込んだ。得られた混合物を、スターラーチップを用いて室温(およそ23℃)で72時間撹拌して、目的のパーフルオロポリエーテル化合物SMB19の50質量%MEK溶液を得た。
【0096】
[比較例6]SMB20の製造
スクリュー管に、PFPE2 2.07g(1.4mmol)、N16 0.41g(2.8mmol)、DOTDD 0.025g(PFPE2及びN16の合計質量の0.01倍量)、及びMEK 2.5gを仕込んだ。得られた混合物を、スターラーチップを用いて室温(およそ23℃)で72時間撹拌して、目的のパーフルオロポリエーテル化合物SMB20の50質量%MEK溶液を得た。
【0097】
[実施例1乃至実施例14、比較例1乃至比較例6]
各パーフルオロポリエーテル化合物の50質量%MEK溶液の均質性を評価した。評価の手順を以下に示す。結果を表1に併せて示す。
[溶液の均質性]
得られた各パーフルオロポリエーテル化合物の50質量%MEK溶液の外観を目視で確認し、以下の基準に従い評価した。
A:透明溶液(浮遊物及び沈降物何れも無し)
C:浮遊物及び沈降物何れも有り
【表1】
【0098】
表1に示すように、パーフルオロポリエーテルPFPE1乃至PFPE4のうち何れか1つに対し、少なくとも下記イソシアネート化合物群N2乃至N10のうち何れか1つを反応させて得られた実施例1乃至実施例14(実施例13はさらにイソシアネート化合物N1を反応させた)のパーフルオロポリエーテル化合物SMB1乃至SMB14は、凝集力が比較的弱いため溶解性が高い結果となった。
【化7】
【0099】
一方、表1に示すように、パーフルオロポリエーテルPFPE2に対し、下記イソシアネート化合物群N11乃至N16のうち何れか1つを反応させて得られた比較例1乃至比較例6のパーフルオロポリエーテル化合物SMB15乃至SMB20は、凝集力が高く溶解性が低い結果となった。
【化8】
【0100】
[実施例15乃至実施例38、比較例7乃至比較例15]
表2に記載の各成分を混合し、表2に記載の固形分濃度の硬化性組成物を調製した。ここで固形分とは溶媒以外の成分を指す。また、表2中、[部]とは[質量部]を、[%]は[質量%]を表す。なお、表2中の多官能アクリレート及び表面改質剤はそれぞれ固形分を表す。
【0101】
【表2】
【0102】
これらの硬化性組成物を、両面を易接着処理してプライマー層が形成されたA4サイズのPETフィルム[東レ(株)製 ルミラー(登録商標)U403(別称U40)、厚み100μm]上にバーコーターにより塗布し、塗膜を得た。この塗膜を60℃のオーブンで8分間乾燥させ溶媒を除去した。得られた膜を、窒素雰囲気下、露光量300mJ/cmのUV光を照射し露光することで、ハードコート層(硬化膜)を有するハードコートフィルムを作製した。
【0103】
各硬化性組成物の均質性、並びに得られたハードコートフィルムの耐擦傷性、撥水性、耐摩耗性、滑り性、及びヘーズを評価した。評価の手順を以下に示す。結果を表3に併せて示す。
[組成物均質性]
調製した各硬化性組成物の外観を目視で確認し、以下の基準に従い評価した。
A:透明溶液(浮遊物、沈降物及び相分離何れも無し)
C:浮遊物、沈降物及び相分離のうち何れか有り
[耐擦傷性]
得られたハードコートフィルムのハードコート層表面を、往復摩耗試験機に取り付けたスチールウール[ボンスター(BONSTAR)(登録商標)#0000(超極細)]で1kgの荷重を掛けてストローク50mmで5000往復擦った。その後、前記ストローク50mmの両端5mm幅の範囲を除いた領域内における傷の程度を目視で確認し、以下の基準A、B及びCに従い評価した。なお、ハードコート層として実際の使用を想定した場合、少なくともBであることが求められ、Aであることが望ましい。
A:傷無し(傷0本)
B:傷発生(長さ1mm乃至9mmの傷1本乃至4本)
C:傷発生(長さ1mm乃至9mmの傷5本以上、又は長さ1cm以上の傷1本以上)
[撥水性]
水1μLをハードコート層表面に付着させ、その10秒後の接触角θを5回測定し、その平均値から以下の基準に従い評価した。なお、ハードコート層として実際の使用を想定した場合、少なくともBであることが求められ、Aであることが望ましい。
A:θ≧105°
B:90°≦θ<105°
C:θ<90°
[耐摩耗性]
ハードコート層表面を、往復摩耗試験機に取り付けた円筒形消しゴム[Minoan社製 RUBBER STICK、φ6.0mm]で1kgの荷重を掛けて2,500往復擦った。その擦った部分に水1μLを付着させ、その5秒後の接触角θを5点測定し、その平均値を接触角値とし、以下の基準に従い評価した。なお、ハードコート層として実際の使用を想定した場合、少なくともBであることが求められ、Aであることが望ましい。
A:θ≧90°
B:80°≦θ<90°
C:80°<θ
[滑り性]
ハードコート層表面の5箇所の動摩擦係数μkを測定し、その平均値から以下の基準に従い評価した。なお、動摩擦係数値は、その値が小さいほど使用プローブとの摩擦が小さいことを示し、滑り性の一目安となる。動摩擦係数値が小さいほど触った際の滑り性が良好となるため、動摩擦係数値が小さいほど好ましい。
A:μk≦0.05
B:0.05<μk≦0.07
C:μk>0.07
[ヘーズ]
参考値として、ハードコート層表面の3箇所のヘーズを測定し、その平均値を算出した。尚、基材として、今回使用したPETフィルム[東レ(株)製 ルミラー(登録商標)U403(別称U40)、厚み100μm]のヘーズは1.6である。
【0104】
【表3】
【0105】
表2に示すように、実施例15乃至実施例36の硬化性組成物は、多官能アクリレートPA1乃至PA4、パーフルオロポリエーテル化合物SMA1乃至SMA3、及びパーフルオロポリエーテルPFPE1乃至PFPE3のうち何れか1つに対し前記イソシアネート化合物群N2乃至N10のうち何れか1つを反応させて得られるパーフルオロポリエーテル化合物SMB1乃至SMB12を含むものである。そして、表3に示すように、実施例15乃至実施例36の硬化性組成物は優れた均質性を示し、該硬化性組成物から得られたハードコート層を備えるハードコートフィルムは、優れた滑り性、耐擦傷性、撥水性及び耐摩耗性を示した。
【0106】
表2に示すように、実施例37及び実施例38の硬化性組成物は、多官能アクリレートPA1、パーフルオロポリエーテル化合物SMA1、及びパーフルオロポリエーテルPFPE2に対し前記イソシアネート化合物N6及びN1を反応させて得られるパーフルオロポリエーテル化合物SMB13を含むものである。そして、表3に示すように、実施例37及び実施例38の硬化性組成物は優れた均質性を示し、該硬化性組成物から得られたハードコート層を備えるハードコートフィルムは、優れた滑り性、耐擦傷性、撥水性及び耐摩耗性を示した。
【0107】
一方、表2に示すように、比較例7乃至比較例9の硬化性組成物は、多官能アクリレートPA1、及びパーフルオロポリエーテル化合物SMA1乃至SMA3を含み、前記SMB1乃至SMB13のような(c)成分を含まないものである。そして、表3に示すように、比較例7乃至比較例9の硬化性組成物は、実施例15乃至実施例38の硬化性組成物と比較して同等水準の均質性を示すと共に、比較例7乃至比較例9の硬化性組成物から得られたハードコート層を備えるハードコートフィルムは、実施例15乃至実施例38の硬化性組成物から得られたハードコート層を備えるハードコートフィルムと比較して同等水準の耐擦傷性及び撥水性を示すが、滑り性に劣る結果となった。
【0108】
また、表2に示すように、比較例10及び比較例11の硬化性組成物は、多官能アクリレートPA1、及びパーフルオロポリエーテルPFPE2に対し、前記イソシアネート化合物N7又はN8を反応させて得られるパーフルオロポリエーテル化合物SMB6又はSMB7を含み、前記SMA1乃至SMA3のような(b)成分を含まないものである。そして、表3に示すように、比較例10及び比較例11の硬化性組成物は、浮遊物が生じたことに起因する白濁が生じ、実施例15乃至実施例38の硬化性組成物と比較して均質性が劣ると共に、比較例10及び比較例11から得られたハードコート層を備えるハードコートフィルムは、実施例15乃至実施例38の硬化性組成物から得られたハードコート層を備えるハードコートフィルムと比較して、滑り性、耐擦傷性、撥水性及び耐摩耗性が劣る結果となった。
【0109】
さらに、表2に示すように、比較例12乃至比較例14の硬化性組成物は、多官能アクリレートPA1、パーフルオロポリエーテル化合物SMA1、及びパーフルオロポリエーテルPFPE1乃至PFPE3を含むものである。そして、表3に示すように、比較例12乃至比較例14の硬化性組成物は、上記パーフルオロポリエーテルPFPE1乃至PFPE3の溶解性が低いため、浮遊物が生じたことに起因する硬化性組成物の白濁、及び相分離が生じ、実施例15乃至実施例38の硬化性組成物と比較して均質性が劣る結果となった。
【0110】
また、表2に示すように、比較例15の硬化性組成物は、多官能アクリレートPA1、パーフルオロポリエーテル化合物SMA1、及び分子量548.1のパーフルオロポリエーテルPFPE4に対し、前記イソシアネート化合物N6を反応させて得られるパーフルオロポリエーテル化合物SMB14を含むものである。そして、表3に示すように、比較例15の硬化性組成物は実施例15乃至実施例38の硬化性組成物と比較して同等水準の均質性を示すと共に、比較例15の硬化性組成物から得られたハードコート層を備えるハードコートフィルムは、実施例15乃至実施例38の硬化性組成物から得られたハードコート層を備えるハードコートフィルムと比較して同等水準の耐擦傷性、撥水性及び耐摩耗性を示すが、滑り性が劣る結果となった。パーフルオロポリエーテル化合物SMB14は、分子量が1000未満であり、他のパーフルオロポリエーテル化合物SMB1乃至SMB13と比較して低分子量のため、SMB14の分子自体の運動性が高く、ハードコート層の表面に留まりにくいことに起因して、滑り性が劣る結果となったと考えられる。