(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】筋肉電気刺激装置およびトレーニングシステム
(51)【国際特許分類】
A61N 1/36 20060101AFI20241009BHJP
【FI】
A61N1/36
(21)【出願番号】P 2020097157
(22)【出願日】2020-06-03
【審査請求日】2023-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】599083411
【氏名又は名称】株式会社 MTG
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】竹下 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】竹井 裕介
(72)【発明者】
【氏名】小林 健
(72)【発明者】
【氏名】白井 智之
(72)【発明者】
【氏名】成田 高世
【審査官】滝沢 和雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-122598(JP,A)
【文献】特開2020-074917(JP,A)
【文献】特開2017-035241(JP,A)
【文献】特開2016-154864(JP,A)
【文献】特開2014-018445(JP,A)
【文献】特開平10-263093(JP,A)
【文献】特表2019-512333(JP,A)
【文献】特表2013-530776(JP,A)
【文献】特表2017-503576(JP,A)
【文献】特表2008-535554(JP,A)
【文献】特表2019-535350(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0121924(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0296834(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0269328(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0257496(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109984915(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0358135(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気刺激を筋肉に与える筋肉電気刺激装置であって、
随意運動中のユーザの筋音を計測するためのセンサと、
前記センサによる計測結果に基づいて電極間へ印加する電圧
の大きさを
変更する制御部と、
を備え
、
前記制御部は、前記センサが計測した筋音の振幅のピークの大きさに基づいて電極間へ印加する電圧の大きさを変更する、
筋肉電気刺激装置。
【請求項2】
前記制御部は、筋音の振幅のうちの少なくとも1つのピークの平均値が所定の閾値以上の場合、第1電圧を電極間へ印加し、すべてのピークの平均値が前記閾値未満の場合、前記第1電圧よりも低い第2電圧を電極間へ印加する、
請求項1に記載の筋肉電気刺激装置。
【請求項3】
前記制御部は、筋音の振幅のうちのすべてのピークの平均値が前記閾値の50%以上の場合、前記第1電圧を電極間へ印加し、少なくとも1つのピークの平均値が前記閾値の50%未満の場合、前記第2電圧よりも低い第3電圧を電極間へ印加する、
請求項2に記載の筋肉電気刺激装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の筋肉電気刺激装置と、
前記筋肉電気刺激装置とネットワークを介して接続される運動制御装置と、
を備え、
前記運動制御装置は、前記筋肉電気刺激装置の前記センサによる計測結果に基づいて随意運動メニューを決定し、決定された随意運動メニューを所定の表示部に表示する、
トレーニングシステム。
【請求項5】
前記運動制御装置は、筋音の振幅に基づいて随意運動メニューを決定する、
請求項4に記載のトレーニングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筋肉電気刺激方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、筋電気刺激による不随意運動と、意識的に身体を動かす随意運動を組み合わせたハイブリッドトレーニングが注目されている。ハイブリッドトレーニングによれば、短時間で効率的に筋肉を鍛えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はこうした状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、ハイブリッドトレーニングの効果をより高める技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の筋肉電気刺激方法は、随意運動中のユーザの筋音を計測するステップと、計測された筋音に基づいて筋肉に与える電気刺激に関する設定を決定するステップと、決定された設定にしたがって随意運動中のユーザの筋肉に電気刺激を与えるステップと、を含む。
【0006】
本発明の別の態様もまた、筋肉電気刺激方法である。この方法は、随意運動中のユーザの筋音を計測するステップと、計測された筋音に基づいて随意運動メニューを決定するステップと、決定された随意運動メニューをユーザに提示するステップと、を含む。
【0007】
本発明のさらに別の態様は、筋肉電気刺激装置である。この装置は、電気刺激を筋肉に与える筋肉電気刺激装置であって、随意運動中のユーザの筋音を計測するためのセンサと、センサによる計測結果に基づいて電極間へ印加する電圧を制御する制御部と、を備える。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ハイブリッドトレーニングの効果をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態に係るトレーニングシステムを示す模式図である。
【
図2】
図1の筋肉電気刺激装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3(a)、(b)は、筋肉を電気刺激したときに筋音センサによって検出される筋音信号の波形を示す図である。
【
図4】
図1の運動制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図5】筋肉電気刺激装置を利用した運動プログラムの一例を説明する図である。
【
図6】トレーニングフェーズにおける筋音の振幅を示すグラフである。
【
図7】
図7(a)~(c)は、トレーニングフェーズにおける筋音の振幅の平均を示すグラフである。
【
図8】
図1の管理サーバの機能構成を示すブロック図である。
【
図9】変形例に係るトレーニングシステム100を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。
【0012】
随意運動中のユーザの筋肉の活動状況をモニタリングできれば、ハイブリッドトレーニングの効果をより高めることが可能となる。具体的には、ハイブリッドトレーニングにおける電気刺激の設定をより適切にすることが可能となる。あるいは、ハイブリッドトレーニングにおける随意運動メニューとして、筋肉の活動状態に応じたより適切なメニューを選択することが可能となる。
【0013】
筋肉の活動状況をモニタリングする手段として、筋肉が収縮する際に筋線維から発生する活動電位である筋電を計測する方法が一般的である。しかしながら、筋電気刺激のために印加する電圧は筋電の電圧の数万~数十万倍であるため、筋電気刺激した瞬間の筋電の電圧は筋電気刺激のために印加する電圧に埋もれて検出できない。
【0014】
そこで発明者達は、鋭意検討した結果、筋肉の活動状況をモニタリングする手段として、筋肉が収縮する際に発する音である「筋音」に着目し、筋音に基づいて、ハイブリッドトレーニングにおける電気刺激に関する設定を決定し、あるいはハイブリッドトレーニングにおける随意運動メニューを決定することに想到した。以下、具体的に説明する。
【0015】
図1は、実施の形態に係るトレーニングシステム100の模式図である。トレーニングシステム100は、少なくとも1つの筋肉電気刺激装置10と、運動制御装置12と、管理サーバ14と、を備える。
【0016】
筋肉電気刺激装置10は、ユーザの身体に装着される。
図1では、筋肉電気刺激装置10は、腹、両腕、両脚に装着される。筋肉電気刺激装置10は、それが装着された身体部位の筋肉に電気刺激を与える。
【0017】
運動制御装置12は、ユーザ82に装着された筋肉電気刺激装置10と無線通信を介して接続される。無線通信は、例えば、Bluetooth(登録商標)などの近距離無線通信である。運動制御装置12は、特に限定しないが、ディスプレイを兼ねたスマートフォンやタブレット端末などの携帯端末である。
【0018】
運動制御装置12は、筋肉電気刺激装置10を制御し、ユーザ82に電気刺激を与える。また、運動制御装置12は、ハイブリッドトレーニングにおける随意運動メニューの動きを示すお手本映像を表示する。
【0019】
ユーザは、筋肉電気刺激装置10から電気刺激を与えられながら、随意運動メニューのお手本映像の通りに自ら身体を動かすことで、筋電気刺激による不随意運動と、意識的に身体を動かす随意運動を組み合わせたハイブリッドトレーニングを実現する。
【0020】
運動制御装置12は、インターネットなどのネットワークを介して管理サーバ14に接続される。管理サーバ14は、筋肉電気刺激装置10を製造、販売している企業またはその企業から委託を受けた企業によって管理、運営される。
【0021】
図2は、筋肉電気刺激装置10の機能構成を示すブロック図である。筋肉電気刺激装置10は、制御ユニット128と、少なくとも1つの電極30と、筋音センサ38と、を備える。
【0022】
筋音センサ38は、筋肉電気刺激装置10が装着されたすなわち筋肉電気刺激装置10が電気刺激を与える身体部位の筋肉の筋音を検出する。筋音センサ38は、特に限定されず、例えば音響センサであってもよく、また例えば加速度センサであってもよい。無線通信部58は、筋音センサ38が検出した筋音情報を運動制御装置12へ送信する。
【0023】
図3(a)、(b)は、筋肉を電気刺激したときに筋音センサ38によって検出される筋音信号の波形を示す図である。
図3(a)は、筋肉が疲労する前の筋音信号の波形を示し、
図3(b)は、筋肉が疲労した後の筋音信号の波形を示す。
図3(a)、(b)には、電気刺激信号の波形も示す。
図3(a)、(b)において、横軸は時間を表し、左側の縦軸は電気刺激信号の大きさを表し、右側の縦軸は筋音信号の大きさを表す。筋音信号の波形は、第1ピークP
1、第2ピークP
2および第3ピークP
3の3つのピークを有する。
【0024】
図3(a)と
図3(b)との比較より明らかなように、筋音は、筋肉が疲労するほど小さくなる。すなわち、筋音の第1ピークP
1、第2ピークP
2および第3ピークP
3の値は、筋肉が疲労するほど小さくなる。また、筋肉に電気刺激を与えてから第1ピークP
1、第2ピークP
2および第3ピークP
3のそれぞれが現れるまでの時間は、筋肉が疲労するほど早くなる。したがって、筋音から、具体的には筋音のピークの値やピークが現れるまでの時間から、筋肉の疲労度合いがわかる。
【0025】
図2に戻り、制御ユニット128は、電極30に筋肉刺激用の電圧を供給する電子ユニットである。
図2に示す制御ユニット128の各ブロックは、ハードウェア的には、集積回路をはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、本明細書に触れた当業者には理解されるところである。
図4の各ブロックについても同様である。
【0026】
制御ユニット128は、電源部22と、制御部28と、無線通信部58と、を備える。電源部22は、リチウムイオン電池等の二次電池であるが、交換可能な一次電池であってもよい。電源部22は、無線通信部58、制御部28および筋音センサ38に電気的に接続され、それらに電力を供給する。なお、制御ユニット128に電源ボタンが設けられてもよく、その電源ボタンの操作に応じて電源部22をオン/オフしてもよい。
【0027】
無線通信部58は、運動制御装置12の無線通信部71(後述)との間で無線通信により、例えばBluetooth(登録商標)などの近距離無線通信により、情報を送受信する。
【0028】
制御部28は、電源制御部50と、通電検知部52と、電気刺激制御部54と、を含む。電源制御部50は、電源部22の充電を制御するとともに、充電状態を示す情報を無線通信部58を介して運動制御装置12へ送信する。
【0029】
通電検知部52は、電極30と電極30との間の抵抗値を検出し、検出した抵抗値が閾値未満の場合は電極30が肌に接しているすなわち電極30に通電可能であると判定し、検出した抵抗値が閾値以上のときは電極30が肌に接していないすなわち電極30に通電不可であると判定する。
【0030】
電気刺激制御部54は、電極30に通電可能であると判定されると、所定の動作時間(例えば20分)、所定の周期(例えば、周波数が20Hzとなる周期)で、電極30と電極30との間に後述のようにして決定される電圧を印加する。すなわち、各電極が配置された箇所、例えばユーザの腹筋、腕、脚に電気刺激を与える。
【0031】
図4は、運動制御装置12の機能構成を示すブロック図である。運動制御装置12は、制御部70と、無線通信部71と、表示部74と、を含む。
【0032】
表示部74は、液晶パネルや有機ELパネルなどのタッチパネル式表示装置であり、情報を画面に表示するとともに、ユーザの操作入力を受け付ける。
【0033】
制御部70は、表示制御部61と、装置制御部63と、を含む。装置制御部63は、複数の筋肉電気刺激装置10のそれぞれの制御ユニット128に、それぞれの制御内容を示す情報を送信することにより、それぞれの制御ユニット128ひいてはそれぞれの筋肉電気刺激装置10による電気刺激を制御する。装置制御部63は、複数の筋肉電気刺激装置10に対してそれぞれ別個の制御内容を送信できる。制御内容には、電気刺激の開始信号、一時停止信号または停止信号や、電気刺激強度信号(すなわち電圧値信号)を含む。装置制御部63は、後述するように、電気刺激強度を筋音情報に基づいて決定してもよい。
【0034】
表示制御部61は、表示部74への表示を制御する。例えば表示制御部61は、ハイブリッドトレーニングにおける随意運動メニューのお手本映像を表示部74に表示する。表示制御部61は、表示する随意運動メニューを、電気刺激する身体部位に応じて決定してもよい。また、表示制御部61は、後述するように、表示する随意運動メニューを筋音情報に基づいて決定してもよい。
【0035】
また例えば表示制御部61は、後述するように、日頃のトレーニングによる効果の評価支援のための情報を表示部74に表示する。また例えば表示制御部61は、後述するように、会員ポイントの獲得数のランキングを表示部74に表示する。
【0036】
図5は、筋肉電気刺激装置10を利用した運動プログラムの一例を説明する図である。運動プログラムは、トレーニングを実施するトレーニングフェーズF10と、トレーニングの効果を評価する評価フェーズF20と、を含む。
【0037】
トレーニングフェーズF10は、第1診断フェーズF11、第1トレーニングフェーズF12、第2診断フェーズF13、第2トレーニングフェーズF14、第3診断フェーズF15、クールダウンフェーズF16を含む。
【0038】
第1診断フェーズF11では、筋肉に電気刺激を与えた状態で診断のための随意運動メニューを実施し、このときに計測される筋音に基づいて後続の第1トレーニングフェーズF12での電気刺激強度および随意運動メニューを決定する。
【0039】
詳しくは、表示制御部61は、診断のための随意運動メニューのお手本映像を表示部74に表示する。装置制御部63は、筋肉電気刺激装置10を制御し、診断のための随意運動メニューを実施しているユーザの筋肉に電気刺激を与える。電気刺激の周波数は、例えば1Hzである。
【0040】
診断のための随意運動メニューは、特に限定しないが、以下が例示される。
腹:寝転がった状態から上半身を45°程度起こし、その状態を所定時間(例えば10秒間)キープする。
腕:両腕を上に曲げて上腕二頭筋を張った状態を所定時間(例えば10秒間)キープする。
脚:片足ずつ、太ももを90度の角度まで上げた状態を所定時間(例えば5秒間)キープする。
【0041】
例えば装置制御部63は、各筋肉電気刺激装置10について、診断のための随意運動メニューを実施しているときに計測される筋音の第1ピークP1~第3ピークP3のうちの少なくとも1つのピークの平均値が所定の閾値(以下、筋音閾値という)以上の場合、言い換えると筋肉が比較的疲労していない場合、第1トレーニングフェーズF12での電気刺激強度を「第1強度」に決定する。また、装置制御部63は、各筋肉電気刺激装置10について、筋音の第1ピークP1~第3ピークP3のうちのすべてのピークの平均値が筋音閾値未満の場合、言い換えると筋肉が比較的疲労している場合、第1トレーニングフェーズF12での電気刺激強度を、第1強度よりも低強度の「第2強度」に決定する。
【0042】
また、装置制御部63は、第1トレーニングフェーズF12での随意運動メニューは、いずれの場合も「第1随意運動メニュー」に決定する。
【0043】
なお変形例として、装置制御部63は、筋音の第1ピークP1~第3ピークP3のうちの少なくとも1つのピークの平均値が筋音閾値の場合、第1トレーニングフェーズF12での随意運動メニューを「第1随意運動メニュー」に決定し、第1ピークP1~第3ピークP3のうちのすべてのピークの平均値が筋音閾値未満の場合、第1トレーニングフェーズでの随意運動メニューを第1随意運動メニューよりも低負荷である「第2随意運動メニュー」に決定してもよい。
【0044】
この場合における第1ピークP1~第3ピークP3の平均値は、例えば、複数の筋肉電気刺激装置10のうちの代表となる特定の筋肉電気刺激装置10の筋音センサ38によって計測された筋音の第1ピークP1~第3ピークP3の平均値であってもよく、また例えば、複数の筋肉電気刺激装置10のうちのすべての筋肉電気刺激装置10の筋音センサ38によって計測された筋音の第1ピークP1~第3ピークP3の平均値であってもよい。後続の診断フェーズにおける随意運動メニューやクールダウンメニューの決定においても同様である。
【0045】
第1随意運動メニューは、特に限定しないが、以下が例示される。
腹:バイシクルクランチ、リバースクランチ、クランチ
腕:腕立て、軽めのウェイトを用いた筋トレ、ゴムを引っ張るトレーニング
脚:反復横とび、ジャンプスクワット、フィットネスバイク
【0046】
第2随意運動メニューは、特に限定しないが、以下が例示される。
腹:エキスパンダー
腕:スクワット&アーム・カール、スクワット&フライ
足:ランジ・ツイスト
【0047】
エキスパンダーは、両腕を閉じた状態から左右に広げる運動である。スクワット&アーム・カールは、両前腕を上げながら腰を落とす動作をし、2秒間の一時停止の後、両前腕を下げながら腰を上げる動作をし、2秒間、一時停止をする運動である。スクワット&フライは、上半身は肘を90度に曲げた状態で腕を上にあげ、両腕を閉じたり広げたりし、下半身は腕を閉じる動きに合わせて腰を落とし、広げる動きに合わせて腰を上げる運動である。ランジ・ツイストは、腰を捻りながら腰を落とす動作をし、2秒間の一時停止の後、腰の捻りを戻しながら腰を上げる動作をし、2秒間、一時停止をする運動である。
【0048】
第1診断フェーズF11において計測される筋音情報は、運動制御装置12に送信される。運動制御装置12は、受信した筋音情報をさらに管理サーバ14に送信する。管理サーバ14は、受信した筋音情報を記憶する。第1トレーニングフェーズF12、第2診断フェーズF13、第2トレーニングフェーズF14、第3診断フェーズF15およびクールダウンフェーズF16において計測される筋音情報についても同様である。
【0049】
第1トレーニングフェーズF12では、筋肉に電気刺激を与えた状態でトレーニングのためすなわち当該筋肉を鍛えるための随意運動メニュー(すなわち第1随意運動メニュー)を実施する。
【0050】
詳しくは、第1トレーニングフェーズF12では、表示制御部61は、トレーニングのための随意運動メニューのお手本映像を表示部74に表示する。装置制御部63は、筋肉電気刺激装置10を制御し、それが装着された身体部位の筋肉であってトレーニングのための随意運動メニューを実施しているユーザの筋肉に、第1診断フェーズF11において決定された電気刺激強度の電気刺激を与える。電気刺激については、効率よく筋肉に刺激を与える周波数であれば、特に限定されない。具体的には電気刺激の周波数は、20Hzである。
【0051】
第2診断フェーズF13では、第1診断フェーズF11と同様に、筋肉に電気刺激を与えた状態で診断のための運動メニューを実施し、このときに計測される筋音に基づいて後続の第2トレーニングフェーズF14での電気刺激強度および随意運動メニューを決定する。第2診断フェーズF13における診断のための運動メニューは、第1診断フェーズF11のそれと同じである。
【0052】
詳しくは、表示制御部61は、診断のための運動メニューを表示部74に表示する。装置制御部63は、筋肉電気刺激装置10を制御し、診断のための随意運動メニューを実施しているユーザの筋肉に電気刺激を与える。電気刺激の周波数は、第1診断フェーズF11と同じく、例えば1Hzである。
【0053】
例えば装置制御部63は、各筋肉電気刺激装置10について、筋音の第1ピークP1~第3ピークP3のうちのすべてのピークの平均値が筋音閾値の50%以上の場合、言い換えると、筋肉が比較的疲労していない場合、第2トレーニングフェーズF14での電気刺激強度を「第1強度」に決定する。つまり、第1トレーニングフェーズF12と同じ電気刺激強度に決定する。また、装置制御部63は、各筋肉電気刺激装置10について、筋音の第1ピークP1~第3ピークP3のうちの少なくとも1つのピークの平均値が筋音閾値の50%未満の場合、言い換えると筋肉が比較的疲労している場合、第2トレーニングフェーズF14での電気刺激強度を「第3強度」に決定する。なお、第3強度は第2強度よりも低強度である。
【0054】
また、装置制御部63は、筋音の第1ピークP1~第3ピークP3のうちのすべてのピークの平均値が筋音閾値の50%以上の場合、第2トレーニングフェーズF14での随意運動メニューを「第1随意運動メニュー」に決定し、筋音の第1ピークP1~第3ピークP3のうちの少なくとも1つのピークの平均値が筋音閾値の50%未満の場合、第2トレーニングフェーズF14での随意運動メニューを「第2随意運動メニュー」に決定してもよい。
【0055】
第2トレーニングフェーズF14では、第1トレーニングフェーズF12と同様に、筋肉に電気刺激を与えた状態で、トレーニングのための随意運動メニュー(すなわち第1随意運動メニューまたは第2随意運動メニュー)を実施する。
【0056】
詳しくは、表示制御部61は、第2診断フェーズF13において決定されたトレーニングのための随意運動メニューのお手本映像を表示部74に表示する。装置制御部63は、筋肉電気刺激装置10を制御し、第2診断フェーズF13において決定された電気刺激強度の電気刺激を与える。電気刺激の周波数は、例えば20Hzである。
【0057】
第3診断フェーズF15では、第1、第2診断フェーズF13と同様に、筋肉に電気刺激を与えた状態で診断のための運動メニューを実施し、このときに計測される筋音に基づいて後続のクールダウンフェーズF16での電気刺激強度および随意運動メニューを決定する。第3診断フェーズF15における診断のための運動メニューは、第1、第2診断フェーズF13のそれと同じである。
【0058】
詳しくは、表示制御部61は、診断のための運動メニューを表示部74に表示する。装置制御部63は、筋肉電気刺激装置10を制御し、診断のための随意運動メニューを実施しているユーザの筋肉に電気刺激を与える。電気刺激の周波数は、第1、第2診断フェーズF13と同じく、例えば1Hzである。
【0059】
例えば装置制御部63は、第3診断フェーズF15において計測された筋音と、第1診断フェーズF11において計測された筋音とを比較することにより、後続のクールダウンフェーズF16でのクールダウンメニューを決定する。
【0060】
より具体的には、装置制御部63は、第3診断フェーズF15において計測された筋音の第1ピークP1~第3ピークP3のうちのすべてのピークの平均値がそれぞれ、第1診断フェーズF11において計測された筋音の第1ピークP1~第3ピークP3の平均値以上の場合、言い換えると、筋肉が比較的疲労していない場合、後続のクールダウンメニューを「第1クールダウンメニュー」に決定する。また、装置制御部63は、第3診断フェーズF15において計測された筋音の第1ピークP1~第3ピークP3のうちの少なくとも1つのピークの平均値が、第1診断フェーズF11において計測された筋音の第1ピークP1~第3ピークP3の平均値の30%未満の場合、言い換えると、筋肉が比較的疲労している場合、後続のクールダウンメニューを「第2クールダウンメニュー」に決定する。なお、第2クールダウンメニューは、第1クールダウンメニューよりも低負荷である。
【0061】
第1クールダウンメニューは、特に限定しないが、以下が例示される。
ハイ・ニー、ニー&エルボー
【0062】
ハイ・ニーは、5秒間、姿勢を固定し、10秒間、腿上げダッシュをし、3秒間、一時停止をする運動である。ニー&エルボーは、5秒間、姿勢を固定し、10秒間、肘と膝を近づける動作を繰り返し、3秒間、一時停止をする運動である。
【0063】
第2クールダウンメニューは、特に限定しないが、以下が例示される。
ストレッチまたはウォーキング
【0064】
クールダウンフェーズF16では、筋肉に電気刺激を与えた状態で、クールダウンのための運動メニュー(すなわち第1クールダウンメニューまたは第2クールダウンメニュー)を実施する。
【0065】
詳しくは、クールダウンフェーズF16では、表示制御部61は、第3診断フェーズF15において決定されたクールダウンメニューのお手本映像を表示部74に表示する。装置制御部63は、筋肉電気刺激装置10を制御し、それが装着された身体部位の筋肉であってクールダウンメニューを実施しているユーザの筋肉に所定の電気刺激強度の電気刺激を与える。電気刺激の周波数は、例えば2Hzである。
【0066】
詳しくはクールダウンフェーズF16では、制御部は、第3診断フェーズF15において決定されたクールダウンメニューを表示部に表示するとともに、筋肉に電気刺激を与える。電気刺激の周波数は、例えば2Hzである。
【0067】
(評価フェーズ)
評価フェーズでは、日頃のトレーニングによる効果を評価する。運動制御装置12はその評価を支援する。具体的には、表示制御部61は、表示部74に筋音の振幅を比較表示することにより、評価を支援する。表示制御部61は、比較表示する筋音情報を、管理サーバ14から取得すればよい。
【0068】
図6は、トレーニングフェーズF10における筋音の振幅を示すグラフである。
図6では、今回計測された筋音の振幅のグラフとともに、比較対象として、1週間前のトレーニングで計測された筋音の振幅および1ヶ月前のトレーニングで計測された筋音の振幅がそれぞれグラフ表示されている。
図6の例では、過去の筋音の振幅よりも今回の筋音の振幅が大きいことから、過去の自分よりも筋肉が疲労していないこと、すなわち過去の自分よりも筋肉が鍛えられて疲れにくくなっていることがわかる。
【0069】
なお、比較対象は、自身の過去の筋音に限定されず、自身の過去の筋音、モデルの筋音、他のユーザの筋音の少なくとも1つであってもよい。
【0070】
図7(a)~(c)は、トレーニングフェーズF10における筋音の振幅の平均を示すグラフである。
図7(a)は、各診断フェーズの第1ピークの振幅の平均を示し、
図7(b)は、各診断フェーズの第2ピークの振幅の平均を示し、
図7(c)は、各診断フェーズの第3ピークの振幅の平均を示す。
図7(a)~(c)では、今回計測された筋音の振幅の平均に加え、比較対象として、1週間前のトレーニングで計測された筋音の振幅の平均およびモデル(理想的な筋肉)の筋音の振幅の平均がそれぞれ示されている。
図7の例では、モデルの筋音の振幅の平均よりも、自身の今回の筋音の振幅が概ね大きいことから、モデルよりも筋肉が疲労していないこと、モデルと同程度以上に筋肉が鍛えられて疲れにくくなっていることがわかる。
【0071】
図8は、管理サーバ14の機能構成を示すブロック図である。管理サーバ14は、通信部84と、制御部86と、記憶部88と、を含む。
【0072】
記憶部88は、ユーザ情報記憶部90と、筋音情報記憶部92と、ポイント情報記憶部94と、を含む。ユーザ情報記憶部90は、筋肉電気刺激装置10のユーザに関する情報(以下、「ユーザ情報」と呼ぶ)を保持する。ユーザ情報には、例えば、ニックネーム、性別、年齢、生年月日、メールアドレスが含まれる。
【0073】
筋音情報記憶部92は、ユーザごとに、トレーニングフェーズにおいて計測された筋音情報を記憶する。筋音情報記憶部92は特に、筋音情報を、フェーズ名、電気刺激強度およびトレーニング日時と対応付けて記憶する。
【0074】
ポイント情報記憶部94は、ユーザごとに会員ポイントを保持する。会員ポイントは、筋肉電気刺激装置10を利用した運動プログラムを実施することにより付与される。会員ポイントは、景品に交換可能である。景品は、例えばトレーニングに関するグッズであってもよく、また例えばフィットネスジムの1回トレーニング無料券であってもよい。
【0075】
制御部86は、ポイント付与部96と、ランキング提示部98と、を含む。ポイント付与部96は、ユーザに、会員ポイントを付与する。例えば、ポイント付与部96は、筋肉電気刺激装置10を利用した運動プログラムの実行回数に応じた会員ポイントを付与してもよい。また例えば、ポイント付与部96は、運動プログラムの診断フェーズにおいてより高強度の電気刺激強度が選択されるほど、あるいはより高負荷の随意運動が選択されるほど、高い会員ポイントを付与してもよい。また例えば、ポイント付与部96は、評価フェーズにおける評価の結果に応じて、具体的には過去の自分あるいはモデルよりも筋音の振幅の平均が大きい(すなわち筋肉が疲労していない)場合に、会員ポイントを付与してもよい。
【0076】
ランキング提示部98は、会員ポイントの獲得数のランキングを提示する。ランキングは、例えば、所定期間(例えば1ヶ月間)の会員ポイントの総獲得数の上位者を示すものであってもよく、あるいは身体部位別の獲得数の上位者を示すものであってもよい。ランキングの上位者には、会員ポイントが付与されてもよい。運動制御装置12の表示制御部61は、提示されたランキングを表示部74に表示する。
【0077】
つづいて、本実施の形態が奏する効果について説明する。本実施の形態によれば、筋肉に電気刺激を与えた状態で随意運動したときの筋音に基づいて電気刺激の強度やハイブリッドトレーニングにおける随意運動メニューが決定される。すなわち、随意運動中のユーザの筋肉の活動状況のモニタリング結果に基づいて電気刺激強度やハイブリッドトレーニングにおける随意運動メニューが決定される。これにより、そうではない場合と比べて、より適切な電子刺激強度や随意運動メニューでハイブリッドトレーニングを実施できる。
【0078】
また、本実施の形態によれば、評価フェーズF20において日頃のトレーニングの効果が可視化される。トレーニングの実行に応じて会員ポイントが付与される。さらに、会員ポイントの獲得数のランキングが提示され、上位者にはさらに会員ポイントが付与される。これらは、ユーザがトレーニングを継続するモチベーションの維持に寄与しうる。
【0079】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0080】
(変形例1)
実施の形態では、筋音情報に基づいて、ハイブリッドトレーニング(トレーニングフェーズ)における電気刺激強度すなわち電圧値を決定する場合について説明したが、これに限られず、筋音情報に基づいて、トレーニングフェーズにおける電気刺激の周波数またはトレーニングフェーズの時間を決定してもよい。
【0081】
具体的には例えば、装置制御部63は、実施の形態ではトレーニングフェーズでの随意運動メニューとしてより高負荷の第1随意運動メニューを実施するかより低負荷の第2随意運動メニューを実施するかを決定したが、その代わりに、随意運動メニューの実施時間の長さをより長時間の第1時間にするかより短時間の第2時間にするかを決定してもよい。この場合は、随意運動メニューは、計測された筋音によらずに固定にすればよい。つまり、負荷の高い随意運動メニューを実施する代わりに所定の随意運動メニューを長時間実施し、負荷の低い随意運動メニューを実施する代わりに当該所定の随意運動メニューを短時間実施してもよい。
【0082】
(変形例2)
実施の形態では、診断フェーズにおいて計測される筋音に基づいて、後続のトレーニングフェーズでの電気刺激強度および随意運動メニューを決定する場合について説明したが、これに限られず、当該筋音に基づいて電気刺激強度および随意運動メニューの一方のみを決定してもよい。この場合、電気刺激強度および随意運動メニューの他方は、計測される筋音によらず、固定であってもよい。
【0083】
(変形例3)
実施の形態では言及しなかったが、ノーマルモードと、より筋肉を鍛えたいユーザ向けのアスリートモードとの2つのモードが選択可能であってもよい。
【0084】
アスリートモードにおける筋音閾値とノーマルモードにおける筋音閾値とは、異なっていてもよい。例えば、アスリートモードにおける筋音閾値はノーマルモードにおける筋音閾値よりも低くてもよい。この場合、例えば第1診断フェーズF11において、ノーマルモードであれば第2強度が選択される場合でも、アスリートモードであれば第1強度が選択される場合がある。すなわち、アスリートモードでは、ノーマルモードと比べて、比較的筋肉が疲労していても、より高い電気刺激強度が選択されうる。
【0085】
また、アスリートモードでの第1強度、第2強度、第3強度はそれぞれ、ノーマルモードでの第1強度、第2強度、第3強度と異なっていてもよい。例えば、アスリートモードでの第1強度、第2強度、第3強度はそれぞれ、ノーマルモードでの第1強度、第2強度、第3強度よりも高強度であってもよい。つまり、アスリートモードではより高強度の電気刺激が与えられてもよい。
【0086】
また、トレーニングフェーズにおける随意運動について、アスリートモードの場合は、実施の形態と同様にして第1随意運動または第2随意運動が選択され、ノーマルモードの場合は、常に第2随意運動が選択されてもよい。
【0087】
あるいはまた、トレーニングフェーズにおける随意運動は、アスリートモードの場合もノーマルモードの場合も実施の形態と同様にして第1随意運動または第2随意運動が選択されてもよく、ただし、アスリートモードでの第1随意運動、第2随意運動はそれぞれ、ノーマルモードでの第1随意運動、第2随意運動と異なっていてもよい。例えば、アスリートモードでの第1随意運動、第2随意運動はそれぞれ、ノーマルモードでの第1随意運動、第2随意運動よりも低負荷であってもよい。
【0088】
これらの変形例によれば、個人の嗜好にあった電気刺激設定や随意運動メニューが選択される。
【0089】
また、アスリートモードを選択した場合は、ノーマルモードを選択した場合よりも高い会員ポイントが付与されてもよい。
【0090】
(変形例4)
図9は、変形例に係るトレーニングシステム100を示す模式図である。トレーニングシステム100は、少なくとも1つの筋肉電気刺激装置10と、複数の運動制御装置12と、複数のミラーディスプレイ105と、管理サーバ14と、を備える。
【0091】
本変形例では、運動制御装置12は、フィットネスジムに設定される端末であり、フィットネスジムのトレーナー83により操作される。
【0092】
運動制御装置12は、随意運動メニューのお手本映像をミラーディスプレイ105に表示させる。ミラーディスプレイ105は、不図示のカメラを含み、運動を実行中のユーザの映像を撮影する。その映像もしくはユーザの動きの分析に基づく骨格の動きを再現した映像がミラーディスプレイ105に表示される。
【0093】
本変形例によれば、実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0094】
上述した実施の形態と変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施の形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【符号の説明】
【0095】
10 筋肉電気刺激装置、 12 運動制御装置、 14 管理サーバ、 61 表示制御部、 63 装置制御部、 70 制御部、 100 トレーニングシステム。